説明

フォトレジスト用反応性分散剤

【課題】フォトレジストに配合してもフォトレジストの硬化に悪影響を与えず、硬化したフォトレジストの耐エッチング性が良好で、更に発泡性の少ないフォトレジスト用の分散剤を提供すること。
【解決手段】下記の一般式(1)で表されるフォトレジスト用反応性分散剤。


(式中、Rは酸素原子及び/または窒素原子が入ってもよい炭素数8〜22の炭化水素基を表し、Xは炭素数2〜4のアルキレン基を表し、mは2〜100の数を表し、nは1または2の数を表し、Yは水素原子、アクリル基、メタクリル基のいずれかを表す。ただし、(XO)中のオキシエチレン基の割合は50質量%以上であり、Yはアクリル基またはメタクリル基のいずれかが1つ以上入っていなければならない。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトレジストに配合し、硬化して得られる樹脂の物性を低下させず、更にアルカリ現像後の溶液内にスカムを発生させない効果を持つ反応性分散剤に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトレジストは、プリント基板回路、集積回路、カラーフィルター等の配線パターンの形成時に広く利用されている。配線パターンの形成工程は、例えば、ネガ型のフォトレジストの場合であれば、フィルム状又は液状のフォトレジストを基材上にラミネート又は塗布し、次いで、該フォトレジストに紫外線、X線、電子線等の活性放射線を照射して露光し、フォトレジストをパターン状に硬化させた後、現像液で未硬化のレジスト部分(非照射部分)を除去することによりフォトレジストを現像し、パターン状のフォトレジスト膜を形成する。現像液としては、通常、アルカリ性の水溶液が用いられ、現像液のアルカリ剤としては、アルカリ金属炭酸塩、水酸化アルカリ金属等の無機アルカリ性化合物、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の有機アルカリ性化合物等が用いられている。
【0003】
このようなアルカリ性の現像液では、フォトレジストの現像中にフォトレジストの未硬化部分の樹脂成分、フォトレジスト中に含まれている染料、顔料、重合開始剤、架橋剤等が現像液中に溶解分散して混入し、これらが現像液中で凝集し、現像液表面に浮上又は現像液中で沈殿して、現像液中にいわゆるスカムが生成する。このスカムは、現像時に現像装置内に付着して、フォトレジストの現像の妨げになるだけでなく、スカムが現像時に被現像物であるフォトレジストや、フォトレジストが設けられている基材に付着すると、フォトレジストの解像度が低下し、良好なフォトレジストパターンが形成されないという問題がある。従って、フォトレジストには、現像液中に発生するスカムを分散させてスカムの凝集を防止するために分散剤を配合することが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
しかし、分散剤を添加したフォトレジストを硬化させた場合、分散剤がフォトレジストの硬化を阻害するという問題がある。具体的には、分散剤を含有するフォトレジストが硬化すると、現像後のエッチング工程において、硬化したフォトレジストがエッチング液により変形や膨潤(耐エッチング性の低下)を起こしやすくなる。こうした耐エッチング性の低下により、硬化したフォトレジストの下にある銅等の金属の必要な部分まで除去されてしまう等の問題が起こり、その結果、回路の形状不良等の問題が生じてしまう。
また、分散剤をフォトレジストに含有させなければ、上記のような耐エッチング性の低下の問題は生じにくくなるが、現像時の現像槽におけるスカムの発生が防止できない。この場合、現像槽に分散剤を別に添加する方法によってスカムの発生を抑制できるが、新たに添加装置を設置しなければならず、更に、現像槽の状態を常に監視しながら分散剤を添加する必要があり、経済的にも分散剤を後から添加する方法は好まれていない。
更に、通常分散剤を使用すると、現像槽内で発泡するという問題がある。これを解決するために消泡剤を使用するのが一般的であるが、添加剤の種類が多数になって操作が煩雑になることや、経済的にも負担になることから、消泡剤を使用しなくてもよい低泡性の分散剤が求められている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−170928号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明が解決しようとする課題は、フォトレジストに配合してもフォトレジストの硬化に悪影響を与えず、硬化したフォトレジストの耐エッチング性が良好で、更に発泡性の少ないフォトレジスト用の分散剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者等は鋭意検討しフォトレジストに配合する最適な分散剤を見出し、本発明に至った。即ち、本発明は、下記の一般式(1)で表されるフォトレジスト用反応性分散剤である。
【0008】
【化1】

(式中、Rは酸素原子及び/又は窒素原子が入ってもよい炭素数8〜22の炭化水素基を表し、Xは炭素数2〜4のアルキレン基を表し、mは2〜100の数を表し、nは1〜4の数を表し、Yは水素原子、アクリル基、メタクリル基のいずれかを表す。ただし、(XO)中のオキシエチレン基の割合は50質量%以上であり、Yはアクリル基またはメタクリル基のいずれかが1つ以上入っていなければならない。)
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果は、フォトレジストに配合してもフォトレジストの硬化に悪影響を与えず、硬化したフォトレジストの耐エッチング性が良好で、更に発泡性の少ないフォトレジスト用の分散剤を提供したことにある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のフォトレジスト用反応性分散剤は、下記の一般式(1)で表すことができる。
【0011】
【化2】

(式中、Rは酸素原子及び/又は窒素原子が入ってもよい炭素数8〜22の炭化水素基を表し、Xは炭素数2〜4のアルキレン基を表し、mは2〜100の数を表し、nは1又は2の数を表し、Yは水素原子、アクリル基、メタクリル基のいずれかを表す。ただし、(XO)中のオキシエチレン基の割合は50質量%以上であり、Yはアクリル基またはメタクリル基のいずれかが1つ以上入っていなければならない。)
【0012】
一般式(1)のRは、酸素原子及び/又は窒素原子が入ってもよい炭素数8〜22の炭化水素基で表されるが、炭素数8〜22の炭化水素基とは、R−(OH)nで表されるアルコール化合物から水酸基を取り除いた基である。nの値は1又は2であるので、R−(OH)nで表されるアルコール化合物は1価又は2価のアルコール化合物となる。こうしたアルコール化合物としては、例えば、オクタノール、2―エチルヘキサノール、2級オクタノール、ノナノール、2級ノナノール、デカノール、2級デカノール、ウンデカノール、2級ウンデカノール、ドデカノール、2級ドデカノール、トリデカノール、イソトリデカノール、2級トリデカノール、テトラデカノール、2級テトラデカノール、ヘキサデカノール、2級ヘキサデカノール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、エイコサノール、ドコサノール、ジメチルフェノール、エチルフェノール、プロピルフェノール、ターシャリブチルフェノール、ペンチルフェノール、ヘキシルフェノール、ヘプチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、デシルフェノール、ウンデシルフェノール、ドデシルフェノール、フェニルフェノール、ベンジルフェノール、スチレン化フェノール、p―クミルフェノール等の1価のアルコール;オクタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、1,2−デカンジオール、1,2−ドデカンジオール、1,2−テトラデカンジオール、1,2−ヘキサデカンジオール、1,2−オクタデカンジオール、1,12−オクタデカンジオール等の2価アルコールが挙げられる。
【0013】
また、Rに酸素原子及び/又は窒素原子を有するものとしては、下記の一般式(2)〜(5)で表されるものが挙げられる。
【0014】
【化3】

(式中、R及びRは炭素数1〜20の炭化水素基を表し、Xは炭素数2〜4のアルキレン基を表し、mは2〜100の数を表し、nは1又は2の数を表し、Yは水素原子、アクリル基、メタクリル基のいずれかを表す。ただし、(XO)中のオキシエチレン基の割合は50質量%以上であり、Yはアクリル基またはメタクリル基のいずれかが1つ以上入っていなければならず、RとRの合計炭素数は7〜21である。)
【0015】
【化4】

(式中、R及びRは炭素数1〜20の炭化水素基を表し、Xは炭素数2〜4のアルキレン基を表し、mは2〜100の数を表し、nは1又は2の数を表し、Yは水素原子、アクリル基、メタクリル基のいずれかを表す。ただし、(XO)中のオキシエチレン基の割合は50質量%以上であり、Yはアクリル基またはメタクリル基のいずれかが1つ以上入っていなければならず、RとRの合計炭素数は7〜21である。)
【0016】
【化5】

(式中、Rは炭素数8〜22の炭化水素基を表し、Xは炭素数2〜4のアルキレン基を表し、mは2〜100の数を表し、nは1又は2の数を表し、Yは水素原子、アクリル基、メタクリル基のいずれかを表す。ただし、(XO)中のオキシエチレン基の割合は50質量%以上であり、Yはアクリル基またはメタクリル基のいずれかが1つ以上入っていなければならない。)
【0017】
【化6】

(式中、Rは炭素数7〜21の炭化水素基を表し、Xは炭素数2〜4のアルキレン基を表し、mは2〜100の数を表し、Yはアクリル基、メタクリル基のいずれかを表す。ただし、(XO)中のオキシエチレン基の割合は50質量%以上である。)
【0018】
これらの中でも、nが1のものが分散剤としての性能が良好であり、更に、nが1である1価のアルコール化合物が好ましく、炭素数8〜18の1価アルコール化合物がより好ましく、炭素数8〜18の1価の脂肪族アルコールが更に好ましい。炭素数が8未満あるいは22を超えると、分散剤としての性能が不足するため好ましくない。
【0019】
一般式(1)中のXは炭素数2〜4のアルキレン基を表す。こうしたアルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、メチルエチレン基、ブチレン基、1−メチルプロピレン基、2−メチルプロピレン基等が挙げられる。mは2〜100の数であるが、好ましくは3〜50であり、より好ましくは5〜30であり、更に好ましくは5〜15である。mの値が2未満になると分散剤としての性能が得られない場合があり、100を超えると分散剤としての性能が得られない場合や、現像槽内の発泡が大きくなる等の問題が生じる場合がある。
【0020】
ここで、Xで表されるアルキレン基は分子中にm×n個存在するが、これらのアルキレン基中のオキシエチレン基の割合は50質量%以上でなければならず、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましく、100質量%が最も好ましい。オキシエチレン基の割合が50質量%未満になると、分散剤としての性能が不足するため好ましくない。
【0021】
一般式(1)中の(XO)mで表される基には、オキシエチレン基単独の場合とオキシエチレン基とそれ以外の1種又は2種以上の基が混在している場合がある。これらの製造方法としては、例えば、エチレンオキシドやプロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のアルキレンオキシドをR−OHで表されるアルコール化合物に公知の方法で付加重合することによって製造することができる。また(XO)m中のXが2種類以上の基の場合は、ランダム共重合体、ブロック共重合体又はランダム共重合体とブロック共重合体の混合等のいずれの重合形態でもよい。
【0022】
一般式(1)のYは、水素原子、アクリル基、メタクリル基のいずれかを表すが、nが1のときはアクリル基又はメタクリル基のいずれかを表す。nが2のときは、2つあるYの2つともがアクリル基又はメタクリル基のいずれかを表す場合と、2つあるYの一方が水素原子そしてもう一方がアクリル基又はメタクリル基のいずれかを表す場合がある。Yが水素原子になると発泡しやすくなるため、nが2のときは、2つあるYの2つともがアクリル基又はメタクリル基のいずれかであることが好ましい。これらのアクリル基やメタクリル基は反応性基であるとともに、ポリエーテル基の末端を封鎖して分散剤の発泡を抑制する効果もある。
【0023】
本発明のフォトレジスト組成物は、ネガ型及びポジ型のどちらのタイプに配合してもよく、いずれのフォトレジストに配合しても分散剤としての効果を発揮するが、ポジ型の場合はフォトレジストの硬化に対する有用性がないので、ネガ型のフォトレジストに使用することが好ましい。
【0024】
ネガ型のフォトレジスト組成物に本発明のフォトレジスト用反応性分散剤を配合する場合、その配合量は特に規定されず、レジストの種類等に応じて配合量を決めればよいが、本発明のフォトレジスト用反応性分散剤の好ましい配合量としては、本発明のフォトレジスト組成物全量に対して1〜10質量%、より好ましくは2〜8質量%である。配合量が少なすぎると分散剤としての効果に劣る場合があり、配合量が多すぎると配合量に見合う効果が得られない場合や、フォトレジストの硬化に悪影響を与える場合、あるいは現像槽内で発泡する場合がある。また、本発明のフォトレジスト用反応性分散剤は、現像槽内に直接添加しても分散剤として機能するが、反応性基を持っていることからフォトレジスト内に含有させて使用することが好ましい。
【0025】
本発明のフォトレジスト組成物は、公知のフォトレジストに本発明のフォトレジスト用反応性分散剤を配合したものである。公知のフォトレジストとしては、例えば、光カチオン重合開始剤、架橋剤及びアルカリ可溶性樹脂を含有するもの、光ラジカル重合開始剤、架橋剤及びアルカリ可溶性樹脂を含有するもの、光ラジカル重合開始剤及びラジカル重合性基を有するアルカリ可溶性樹脂を含有するもの等のネガ型のフォトレジスト組成物が好ましい。これらはフィルム状に加工しても、溶媒等で希釈してもよい。
【0026】
アルカリ可溶性樹脂としては、フォトレジスト組成物に使用される公知のアルカリ可溶性樹脂であればいずれも使用することができ、例えば、ノボラック樹脂、アクリル樹脂、スチレン−アクリル酸共重合体、ヒドロキシスチレン重合体、イソプロペニルフェノール重合体等が挙げられる。
【0027】
光ラジカル重合開始剤としては、公知の光ラジカル重合開始剤であればいずれも使用することができ、例えば、ベンジル、ジアセチル等のα−ジケトン類;ベンゾイン等のアシロイン類;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のアシロインエーテル類;チオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、チオキサントン−4−スルホン酸、ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4'−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;アセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、α,α'−ジメトキシアセトキシベンゾフェノン、2,2'−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、p−メトキシアセトフェノン、2−メチル[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン等のアセトフェノン類;アントラキノン、1,4−ナフトキノン等のキノン類;フェナシルクロライド、トリブロモメチルフェニルスルホン、トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等のハロゲン化合物;ジ−t−ブチルパーオキサイド等の過酸化物;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドなどのアシルホスフィンオキサイド類等が挙げられる。
【0028】
また、光カチオン重合開始剤としては、公知の光カチオン重合開始剤であればいずれも使用することができ、例えば、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ピリジニウム塩等のオニウム塩化合物や、スルホンイミド化合物、ジアゾメタン化合物、オキシムスルホネート化合物等が挙げられる。
【0029】
架橋剤としては、公知の架橋剤であればいずれも使用することができ、例えば、N−(アルコキシメチル)グリコールウリル化合物、N−(アルコキシメチル)ウレア化合物、N−(アルコキシメチル)メラミン化合物、N−(アルコキシメチル)エチレンウレア化合物等のN−(アルコキシメチル)アミノ化合物が挙げられる。
【0030】
溶媒としては、フォトレジスト組成物に使用される公知の溶媒であればいずれも使用することができ、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、イソプロペニルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、ヒドロキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、イソプロペニルプロピオネート、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−プロピル、乳酸i−プロピル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メチル−3−メトキシブチルブチレート、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、トルエン、キシレン等を挙げることができる。
【0031】
本発明のフォトレジスト組成物に使用される現像液は、アルカリ性現像液である。現像液のアルカリ剤としては、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩;炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩;ホウ酸リチウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム等のアルカリ金属ホウ酸塩;ケイ酸リチウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等のアルカリ金属ケイ酸塩;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ金属等の無機アルカリ性化合物;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ピロリジン、モルホリン、ピペラジン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド等の有機アルカリ性化合物等が挙げられる。これらのアルカリ剤の中でも、アルカリ金属炭酸塩及び有機アルカリ性化合物が好ましく、炭酸ナトリウム及びテトラメチルアンモニウムヒドロキシドが更に好ましい。
【0032】
現像液中のアルカリ剤の濃度は、使用するアルカリ剤の種類や、現像液が適用されるレジストの種類によって異なるが、アルカリ金属炭酸塩の場合には、水100質量部に対して、0.1〜5質量部であることが好ましく、0.3〜3質量部であることが更に好ましく、0.5〜2質量部であることが最も好ましい。また、有機アルカリ性化合物の場合には、現像液中のアルカリ剤の濃度は、水100質量部に対して、0.5〜25質量部であることが好ましく、1〜15質量部であることが更に好ましく、1.5〜10質量部であることが最も好ましい。
【実施例】
【0033】
以下本発明を実施例により、具体的に説明する。尚、以下の実施例等において%は特に記載が無い限り質量基準である。試験には以下に記載した化合物を使用した。
【0034】
化合物1
攪拌装置、温度計及び窒素ガス導入管を備えた3リットルオートクレーブにラウリルアルコール186g(1モル)、及び触媒として水酸化ナトリウム0.4gを仕込み、100℃に昇温した後、2kPa以下で1時間減圧脱水して触媒を溶解させた。その後120℃まで昇温して、反応温度110〜130℃でエチレンオキシド220g(5モル)を1時間かけてフィードし、120℃で3時間熟成することによりエチレンオキシドの反応を完結させた。その後、無機吸着剤として合成ケイ酸アルミニウム(協和化学製、商品名キョーワード700)を8g添加して100℃で1時間攪拌してろ過し、水酸化ナトリウムを吸着させた無機吸着剤をろ過により除去した後、撹拌しながら100℃で1kPa以下に1時間減圧して水分を除去してポリエチレングリコールラウリルエーテルを得た。
【0035】
続いて、上記のポリエチレングリコールラウリルエーテル406g(1モル)とメタクリル酸メチル800g(8モル)及びヒドロキノンモノメチルエーテル0.05gを、攪拌装置、温度計、窒素ガス導入管及び蒸留塔を備えた2リットルのフラスコに仕込み、窒素ガスを吹き込みながら120℃で30分間加熱還流を行って系内を脱水した。次に触媒としてチタン酸テトライソプロピル4gを仕込み、120℃に加熱し、反応で副生するメタノールをアクリル酸メチルとの共沸物として系外に除去しながらエステル交換反応を行った。反応開始4時間後のケン化価を測定し、反応率が97%となった時点で反応を終了し、80℃まで冷却した後に17%の食塩水300gを添加して触媒を加水分解して不溶化した。30分静置後、デカンテーションにより油層を取り出し、油層中に残留しているメタクリル酸メチルをエバポレーターで減圧留去して下記の化合物1を得た。
【0036】
【化7】

【0037】
化合物1と同様の方法で、化合物2〜化合物11を製造した。なお、化合物6はグリセリンモノオレートを原料にエチレンオキシド付加を行い、化合物7及び8はポリエーテル化合物末端のエステル化反応を行わず、化合物11はポリエーテル化反応を行っていない。また、化合物5及び化合物10のオキシアルキレン基はブロック重合である。
【0038】
化合物2
【化8】

【0039】
化合物3
【化9】

【0040】
化合物4
【化10】

【0041】
化合物5
【化11】

【0042】
化合物6
【化12】

【0043】
化合物7
【化13】

【0044】
化合物8
【化14】

【0045】
化合物9
【化15】

【0046】
化合物10
【化16】

【0047】
化合物11
【化17】

【0048】
<フォトレジスト組成物>
試験には以下の組成物を膜圧30μmに加工し、これをフォトレジスト用フィルムとして使用した。なお分散剤には上記の化合物1〜11を使用した。
バインダー樹脂 23部
分子量400のポリエチレングリコールジメタクリレート 20部
トリプロピレングリコールジメタクリレート 20部
ベンゾフェノン 7部
4,4'−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン 0.7部
分散剤 3.5部
*バインダー樹脂:メタクリル酸/メタクリル酸メチル/アクリル酸エチル/メタクリル酸エチル=22/45/27/6(重量比)のコポリマー(重量平均分子量10万)
【0049】
<分散、泡立ち試験>
現像液として1%NaCO水溶液を調整し、この現像液中に上記のフォトレジスト用フィルムを10.5g/lになるように溶解して試験液とし、分散及び泡立ち試験を行った。使用した試験機は、縦10cm×横20cm×高さ50cmの循環型試験機であり、試験液1リットルを試験機に入れ、循環ポンプで液面より30cmの高さまで試験液を上げ、スプレーで試験液を横面に向けて水平に噴射させた。壁にぶつかった試験液は発泡し、壁を伝わって下部の液だまりに落ちて液面上に泡を蓄積させる。試験液の循環量は15リットル/分であり、スプレーと壁面との距離は7cmである。循環及びスプレーを1時間行い、1時間後の液面上にたまった泡の高さ測定して泡立ち試験の結果とした。また、泡立ち試験終了後の試験液を、500mlのガラスビンに400mlとり、30℃の高温槽に7日間保存して、発生するスカムの状態を下記の基準で判断し、これを分散試験結果とした。
【0050】
(分散試験評価基準)
◎:スカムが発生しない。
○:ビン底にわずかにスカムが沈殿しているが、ビン底が見える。
△:ビン底に薄い膜のようになったスカムが沈殿してビン底は見えない。
×:ビン底に大量のスカムが厚く堆積している(膜のように薄い沈殿ではない)。
【0051】
<エッチング試験>
158mm×100mmの銅厚9μmのCOFテープ基材に、アセトンで溶解させた上記のフォトレジスト組成物を塗布、乾燥後、露光装置(UFX−2238;ウシオ電機社製)にて、ピッチ20μmのレジストパターンを形成し、現像液(1%NaCO水溶液)を用いて現像した後、エッチング液を用いて温度45℃、圧力0.05MPaの条件でスプレーエッチングした。得られた銅回路を基材ごと切断し、銅配線の断面をレーザー顕微鏡で観察して、トップ幅(T)とボトム幅(B)を測定し、T−Bの値(単位はμm)を算出した。T−Bの値が0であれば完全な長方形の断面であり、プラスの値ならば銅回路の下部が細くなっていることを示す。
*エッチング液:(塩化第二鉄8.4質量%+塩酸3.45質量%)の水溶液
【0052】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(1)で表されるフォトレジスト用反応性分散剤。
【化1】

(式中、Rは酸素原子及び/または窒素原子が入ってもよい炭素数8〜22の炭化水素基を表し、Xは炭素数2〜4のアルキレン基を表し、mは2〜100の数を表し、nは1または2の数を表し、Yは水素原子、アクリル基、メタクリル基のいずれかを表す。ただし、(XO)中のオキシエチレン基の割合は50質量%以上であり、Yはアクリル基またはメタクリル基のいずれかが1つ以上入っていなければならない。)
【請求項2】
Yがアクリル基またはメタクリル基のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載のフォトレジスト用反応性分散剤。
【請求項3】
Rが炭素数10〜18のアルキル基であり、更にnが1であることを特徴とする請求項1に記載のフォトレジスト用反応性分散剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のフォトレジスト用反応性分散剤を1〜10質量%含有することを特徴とするフォトレジスト組成物。

【公開番号】特開2010−134014(P2010−134014A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−307223(P2008−307223)
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】