説明

フッ化マグネシウム薄膜の製造方法、フッ化マグネシウム薄膜、積層膜、透明プラスチックフィルム、および有機EL素子

大気圧または大気圧近傍の圧力下、対向する電極間にフッ素化合物と有機マグネシウム化合物を含有する反応性ガスを供給し、高周波電圧をかけて、前記反応性ガスを励起状態とし、励起状態の反応性ガスに基材を晒すフッ化マグネシウム薄膜の製造方法。および、前記フッ化マグネシウム薄膜が第1のフッ化マグネシウム薄膜上に、第2のフッ化マグネシウム薄膜を有し、前記第1のフッ化マグネシウム薄膜は炭素と酸素の混入比の少なくともいずれかが10原子%以上であり、前記第2のフッ化マグネシウム薄膜の炭素と酸素の混入比の少なくともいずれかが10原子%以下であることを特徴とするフッ化マグネシウム積層膜。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性が高く、水蒸気バリア性に優れ、屈折率が低く、平面性の高いフッ化マグネシウム薄膜の製造方法に関する。また、プラスチック基材との密着性の高いフッ化マグネシウム薄膜またはその積層膜に関する。また、透明プラスチックフィルム、および光取り出し効率の高い有機EL素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示素子、有機EL表示素子、プラズマディスプレイ、電子ペーパー等の電子ディスプレイ素子用基材、あるいはCCD、CMOSセンサー等の電子光学素子用基材、あるいは太陽電池用基材としては、熱安定性、透明性の高さ、水蒸気透過性の低さからガラスが用いられてきた。しかし、最近携帯電話あるいは携帯用の情報端末の普及に伴い、それらの基材用として割れやすく比較的重いガラスに対し屈曲性に富み割れにくく軽量な基材が求められるようになった。
【0003】
しかしながら、プラスチック基材はガス透過性を有しているため、特に有機エレクトロルミネッセンス表示装置のように、水分や酸素によって劣化して性能が低下してしまう用途には適用が難しく、如何に封止するかが問題になっていた。
【0004】
こうした水蒸気や酸素の透過を抑制するために、各種ガスがプラスチック基材を透過することを抑制する層(ガスバリア膜)を設けることが知られており、そのような層としては、酸化ケイ素膜、窒化ケイ素膜、酸窒化ケイ素膜、炭化珪素膜、酸化アルミニウム膜、酸窒化アルミニウム膜、酸化チタン膜、酸化ジルコニウム膜、酸化マグネシウム、窒化硼素膜、窒化炭素膜、ダイヤモンドライクカーボン膜、フッ化マグネシウム、フッ化アルミニウム膜などが知られている。また、これらのガスバリア性の高い無機薄膜と柔軟な有機薄膜を積層するガスバリア膜なども知られている(国際公開特許WO00−36665号)。
【0005】
これらのセラミックス膜の中でも、フッ化マグネシウム膜は、紫外域までの高い透明性をもち、かつ無機物の中ではもっとも低い屈折率(1.36〜1.39)を持つ材料の一つであり、空気との屈折率差が小さいためにフッ化マグネシウム層と空気の界面での臨界角は広く、外光の反射率を低減することができる。
【0006】
このようなフッ化マグネシウム薄膜を成膜する方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、熱CVD法、塗布法などが知られている。
【0007】
Applied Optics,vol.24(1985),p2674では、フッ化マグネシウム膜を製膜する手法として電子ビーム蒸着法、RFスパッタ法、熱CVD法、塗布法の4種の手法を比較している。
【0008】
RFスパッタによるフッ化マグネシウム膜は、還元された金属マグネシウムのコンタミネーションにより茶色の着色が起こること、また膜質が柔らかく耐久性が低い膜であったと述べられている。
【0009】
電子ビーム真空蒸着では透明で固い膜が得ることができたが、電子ビームを発生させるには通常1.33×10−3Pa以下の高真空が必要であり生産性が低い。またフッ化マグネシウムを製膜する基材の温度も300℃が必要である。
【0010】
高真空を必要としない大気圧下のプロセスとして熱CVDも試みており、光学的・強度的にも十分な膜質のフッ化マグネシウム膜が得られているが、基材温度は600℃であり、プラスチック基材上への製膜へは応用することができない。また、トリフルオロ酢酸マグネシウム溶液の塗布・焼成といった塗布法も大気圧プロセスとして試みられているが、塗布したフッ化マグネシウム前駆体の焼成に450℃程度の加熱が必要であり、やはりプラスチック基材上への製膜には応用することができない。
【0011】
無機化合物薄膜を製膜する基材温度を下げる手法として、プラズマCVD法が挙げられ、特許文献1においてプラズマCVD法によって、金属フッ化物薄膜の製膜が開示されている。
【0012】
しかしながら、前記文献においてはフッ化アルミニウム以外の製膜実施例は示されていない。また製膜する基材温度も300℃の高温であり、プラスチック基材への製膜例は示されていない。さらに電子ビーム蒸着法ほどの高真空ではないものの、1.33〜133Pa程度の真空条件が必要であるため、装置が複雑かつ大掛かりであり、生産性が低く、フッ化マグネシウム薄膜の付与は高価なものとなっていた。
【特許文献1】特開平11−223707号公報
【発明の開示】
【0013】
本発明の第1の目的は、真空プロセスを用いず、生産性の高い方法によって透明で高いガスバリア性を有するフッ化マグネシウム薄膜の製造方法とそれにより得られるフッ化マグネシウム薄膜を提供することである。
【0014】
また第2の目的は、透明プラスチック基材と密着性が高く、ガスバリア性が高く、外光反射率の低い、さらには導電性をも有する透明プラスチックフィルムを提供することである。
【0015】
また第3の目的は、フッ化マグネシウム薄膜の積層膜と光取り出し効率の高い有機EL素子を提供することである。
【0016】
上記した如く、近年、液晶或いは有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、電子光学デバイス等においては、割れやすく重いガラスよりも、フレキシブルで可撓性が高く割れにくく軽いためプラスチック基材の採用が検討されている。
【0017】
本発明者らは、これら課題に対し鋭意検討を行った結果、ある特定条件下では大気圧下でプラズマCVD法によるフッ化マグネシウム膜の製膜が可能であることを見出し、かつ従来の電子ビーム蒸着法で成膜されたフッ化マグネシウム膜よりもガスバリア性が高く、さらに表面硬度や平面性も良好であって、その製膜速度が高速であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態に係る薄膜形成装置の概略構成を表す図である。
【図2】薄膜形成装置に備わる支持部材を表す斜視図である。
【図3】薄膜形成装置に備わる薄膜形成ユニットを表す側面図である。
【図4】薄膜形成ユニットを表す他方の側面図である。
【図5】薄膜形成ユニットに備わる電極を表す斜視図である。
【図6】薄膜形成装置の主制御部分を表すブロック図である。
【図7】薄膜形成装置によって薄膜が形成される際に、クリーニングフィルムに含まれる薄膜形成用原料の放出状態を表す説明図である。
【図8】薄膜形成装置の変形例を表す概略構成図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の目的は、下記構成によって達成される。
(1)大気圧または大気圧近傍の圧力下、対向する電極間にフッ素化合物と有機マグネシウム化合物を含有する反応性ガスを供給し、高周波電圧をかけることにより、前記反応性ガスを励起状態とし、励起状態の反応性ガスに基材を晒すことを特徴とするフッ化マグネシウム薄膜の製造方法。
(2)前記高周波電圧が、1kHz〜2500MHzの範囲で、かつ、供給電力が1〜50W/cmの範囲であることを特徴とする前記(1)に記載のフッ化マグネシウム薄膜の製造方法。
(3)前記高周波電圧が、1kHz〜1MHzの範囲の周波数の交流電圧と、1〜2500MHzの周波数の交流電圧を重畳させたことを特徴とする前記(1)または(2)に記載のフッ化マグネシウム薄膜の製造方法。
(4)前記フッ化マグネシウム薄膜を構成するフッ素が、フッ素含有高分子フィルムから供給されることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載のフッ化マグネシウム薄膜の製造方法。
(5)前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載のフッ化マグネシウム薄膜の製造方法で製膜したフッ化マグネシウム薄膜への炭素・酸素の混入比率がいずれも10原子%以下であることを特徴とするフッ化マグネシウム薄膜。
(6)前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載のフッ化マグネシウム薄膜の製造方法で製膜したフッ化マグネシウム薄膜であって、該薄膜の水蒸気透過率が1.0g/m/d以下であることを特徴とするフッ化マグネシウム薄膜。
(7)前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載のフッ化マグネシウム薄膜の製造方法で製膜したフッ化マグネシウム薄膜であって、該薄膜の酸素透過率が1.0ml/m/d以下であることを特徴とするフッ化マグネシウム薄膜。
(8)前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載のフッ化マグネシウム薄膜の製造方法で製膜したフッ化マグネシウム薄膜であって、該薄膜の屈折率が1.35〜1.40であることを特徴とするフッ化マグネシウム薄膜。
(9)前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載のフッ化マグネシウム薄膜の製造方法で製膜したフッ化マグネシウム薄膜であって、該薄膜表面の平均表面粗さが3.0nm以下であることを特徴とするフッ化マグネシウム薄膜。
(10)前記(5)〜(9)のいずれか1項に記載のフッ化マグネシウム薄膜が、透明なプラスチックフィルム基材表面に形成されていることを特徴とする透明プラスチックフィルム。
(11)前記(5)〜(9)のいずれか1項に記載のフッ化マグネシウム薄膜が形成され、外光反射率が1.0%以下であることを特徴とする透明プラスチックフィルム。
(12)前記(5)〜(9)のいずれか1項に記載のフッ化マグネシウム薄膜が、透明プラスチックフィルム基材上に形成され、かつその反対側の面に透明導電膜が形成されていることを特徴とする透明プラスチックフィルム。
(13)大気圧または大気圧近傍の圧力下、フッ素化合物と有機マグネシウム化合物を含有する反応性ガスを対向する電極間に供給し、高周波電圧をかけることにより、前記反応性ガスを励起状態とし、前記励起状態の反応性ガスに基材を晒すことにより形成された積層膜であって、第1のフッ化マグネシウム薄膜上に、第2のフッ化マグネシウム薄膜を有し、前記第1のフッ化マグネシウム薄膜は炭素と酸素の混入比の少なくともいずれかが10原子%以上であり、前記第2のフッ化マグネシウム薄膜の炭素と酸素の混入比の少なくともいずれかが10原子%以下であることを特徴とする積層膜。
(14)前記(13)に記載の積層膜が、透明プラスチックフィルム基材上に形成されていることを特徴とする透明プラスチックフィルム。
(15)透明プラスチックフィルム基材のガラス転移温度が180℃以上であることを特徴とする前記(10)〜(12)のいずれか1項に記載の透明プラスチックフィルム。
(16)透明プラスチックフィルム基材の屈折率が、1.6以上であることを特徴とする前記(10)〜(12)または(14)、(15)のいずれか1項に記載の透明プラスチックフィルム。
(17)透明プラスチックフィルム基材が、ポリエーテルスルホン(PES)であることを特徴とする前記(10)〜(12)または(14)、(15)のいずれか1項に記載の透明プラスチックフィルム。
(18)前記(13)に記載の積層膜が素子表面に形成されていることを特徴とする有機EL素子。
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0021】
本発明により、第1には、真空プロセスを用いず、生産性の高い方法によって透明で高いガスバリア性を有するフッ化マグネシウム薄膜の製造方法とそれにより得られるフッ化マグネシウム薄膜を提供することができる。
【0022】
また第2には、透明プラスチック基材と密着性が高く、ガスバリア性が高く、外光反射率の低い、さらには導電性をも有する透明プラスチックフィルムを提供することができる。
【0023】
また第3には、フッ化マグネシウム薄膜の積層膜と光取り出し効率の高い有機EL素子を提供することができる。
【0024】
通常生産されているプラスチック基材は、ガラス基材と比較して水分や酸素の透過性が高いため、プラスチック基材を有機エレクトロルミネッセンス表示装置に用いた場合、その水分が徐々に表示装置内に拡散し、拡散した水分の影響により表示装置等の耐久性が低下するというような問題が発生する。
【0025】
これを避けるため、プラスチックシート基材上に、水蒸気透過性の低い無機薄膜、例えばガラス、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、炭化珪素、酸化アルミニウム、酸窒化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、窒化硼素、窒化炭素、フッ化マグネシウム、フッ化アルミニウム、ダイヤモンドライクカーボン等の薄膜を形成させた複合材料を得る試みがなされており、中でも酸化珪素薄膜が多く用いられている。
【0026】
これらの無機膜やプラスチック基材はそれぞれ固有の屈折率を持ち、例えば、酸化チタンでは屈折率は2.35、酸化ジルコニウムでは2.07、代表的な透明導電膜であるインジウム・錫オキシドITOでは2.05、窒化珪素では2.0、酸化アルミニウムでは1.67、酸化珪素では1.46、フッ化マグネシウムで1.38である(ただし、上記無機物の屈折率は炭素などの不純物が混入すると多少変化する)。プラスチック材料ではPMMAが1.49であり、またプラスチックフィルムではPES(ポリエーテルスルホン)が1.65、PET(ポリエチレンテレフタレート)が1.60、ポリカーボネイトが1.59、シクロオレフィンポリマーが1.51、TAC(トリアセチルセルロース)が1.48、テフロン(登録商標)が1.30である。
【0027】
これらの材料を組み合わせることによって透明導電性フィルムが形成されているが、このように屈折率が異なるものが適切に組み合わされなかった場合、特に屈折率差が大きいものを積層した場合は、その二層の界面間で光の反射が起きやすく、透明導電性フィルムの透過率は低下し、外光の反射率は高くなる。
【0028】
特に有機EL素子においては、光源が透明導電性フィルムに極めて近い位置にあり、無限遠にある光源とは異なり、大半の発光は透明導電性フィルムに垂直に入射せずある程度の角度を持って入射することになる。界面間の屈折率差が大きいと、入射光に対して全反射する臨界角も大きくなり、結果、有機EL素子から発光した光の大半は、透明導電性フィルムの前面から出ずに導波して透明導電性フィルムの端部から出射することとなり、有機EL素子の光取りだし効率は低いもの(20〜25%)に留まっていた。
【0029】
透明導電性フィルムにおいて屈折率差が大きい界面は、透明導電膜(n=2.05)とプラスチックフィルム(n=1.4〜1.7)の間、空気(n=1.0)とプラスチックフィルム(n=1.4〜1.7)の間である。
【0030】
特に空気とプラスチックフィルムとの界面は、外光の写りこみとも関係するため、低屈折率の材料、あるいは高屈折率の材料と低屈折率の材料を組み合わせて反射防止膜を形成することで低反射率のプラスチックフィルムが得られることが知られている。
【0031】
これら反射防止膜を形成する低屈折率層、高屈折率層には、ガスバリア層と同様に各種の無機物薄膜が用いられている。それゆえ、ガスバリア層が反射防止膜も兼ねることは、好ましいディスプレイ用フィルムの態様である。
【0032】
ガスバリア層が反射防止層を兼ねるためには、下記の式(1)に表わされる式を満たすことが好ましい。
【0033】
n1/nb=nb/n2・・・・・式(1)
(ガスバリア層の屈折率をnb、ガスバリア層と接する一方の材料の屈折率をn1、ガスバリア層と接する他方の材料の屈折率をn2する)
これは、ガスバリア層の上面からと下面からの反射2光束が完全に打ち消し合うためには、まず2光束の強度が相等しくなる必要があり、そのためには各界面における屈折率比が等しいことが必要であるためである。上記式(1)をnbについて解くと、nb=√(n1×n2)が成立する必要がある。
【0034】
次に、反射率を少なくする光の波長λは、光学膜厚nd=λ/4で表わされるため、ガスバリア層の膜厚も重要である。
【0035】
例えばPESと空気の界面にガスバリア層を製膜する場合には、PESの屈折率が1.65、空気の屈折率が1.00であるため、ガスバリア層の屈折率は1.28である必要がある。さらにこの透明導電性フィルム上に緑色発光素子を形成する場合、緑色発光素子の発光波長を550nmと仮定すると、107nmの膜厚に製膜する必要がある(1.28×107=550/4)。
【0036】
しかし、実際には屈折率が1.28である無機物は、多孔質のシリカエアロゲルなどのような充填率が低くガスバリア性のない材料以外は存在せず、充填率が高くガスバリア性を有する材料は存在しないため、好ましくは1.28に近い屈折率をもち、かつ高いガスバリア性を有する材料がガスバリア層を構成する材料として好ましい。
【0037】
上記条件を満たす材料としては、フッ化マグネシウムが好ましい。フッ化マグネシウムは無機物の中では最も低い屈折率(n=1.38)を有する材料の一つであり、また高い水蒸気・酸素バリア性を有するためである。
【0038】
このようなフッ化マグネシウム薄膜をプラスチックフィルム上に設ける手法としては、真空蒸着法以外には実質的な選択肢は存在しなかった。前述のApplied Optics,vol.24(1985),p2674に示されているように、熱CVD法・塗布法ではフッ化マグネシウム前駆体がフッ化マグネシウムに変換されるために450℃以上の高い温度が必要であるために使用できず、スパッタ法ではフッ化マグネシウム膜が着色するために使用することができず、真空蒸着法においてのみ製膜温度の低温化が進められたためである。
【0039】
真空蒸着法は、原料であるフッ化マグネシウムを電子ビームや抵抗加熱方式によって蒸発させ、比較的大きなフッ化マグネシウムのクラスターが比較的低い運動エネルギーで基材上に飛来して付着するというプロセスで製膜される。したがって、比較的空隙の多い膜となりやすいこと、基材との密着性が悪いことが課題であった。また真空蒸着法には高い減圧度が必要であり、生産性の低い手法であった。
【0040】
本発明の発明者らは、大気圧下かつプラスチックフィルムに製膜できるような温度で製膜が可能な製膜方法として、大気圧プラズマCVD法を適用することで、所望の物性を満たすフッ化マグネシウム膜が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0041】
以下更に、大気圧或いは大気圧近傍でのプラズマCVD法を用いたフッ化マグネシウムからなる膜を形成する装置について詳述する。本発明において大気圧近傍とは、20〜110kPaの圧力を表し、更に好ましくは93〜104kPaである。
【0042】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。図1は、薄膜形成装置1の概略構成を表す図である。
【0043】
この薄膜形成装置1は、大気圧又は大気圧近傍の圧力下で、放電プラズマを発生させることによって基材上に薄膜を形成する薄膜形成装置であり、基材がプラズマ空間に侵入しないプラズマジェット方式、基材がプラズマ空間に侵入するダイレクトプラズマ方式のどちらにも適用可能な薄膜形成装置である。
【0044】
以下、ダイレクトプラズマ方式で薄膜を形成する場合について説明する。
【0045】
薄膜形成装置1には、図1に示すように、シート状の基材2をその周面に密着させて搬送する支持部材10が回転自在に設けられている。
【0046】
図2は、支持部材10を表す斜視図であり、この支持部材10は、導電性の金属質母材11の表面に誘電体12が被覆されたロール状誘電部材である。支持部材10の内部には、表面温度を調節するため、例えば、水やシリコーンオイル等の温度調節用の媒体が循環できるようになっており、この循環部分には、図1に示すように、配管3を介して温度調節装置4が接続されている。また、支持部材10の周縁には、基材2を支持部材10の周面に密着させて搬送するために基材用搬送機構13と、基材2上に薄膜を形成するための複数の薄膜形成ユニット20が設けられている。
【0047】
基材用搬送機構13には、基材2を支持部材10の周面に案内する第1ガイドローラ14及びニップローラ15と、前記周面に密着した基材2を剥がして、次行程まで案内する第2ガイドローラ16と、第1ガイドローラ14、第2ガイドローラ16及び支持部材10を連動するように回転させる駆動源51(図6参照)とが設けられている。
【0048】
図3はダイレクトプラズマ方式の薄膜形成ユニット20を表す側面図である。この薄膜形成ユニット20に備わる支持部材10は、フィルタ8を介して第1の電源9が接続されており、基材2を搬送するとともに電極として機能し、電極21A,21Bの支持部材10に対向する面21a,21bが放電面として機能するようになっている。つまり、ガス供給部24からガスを噴出して、支持部材10と電極21A,21Bとの間隔hにガスを充満させ、支持部材10A及び電極21A,21Bに電界を印加すれば、この間隔h内で放電プラズマが発生する。そして、プラズマ空間内には1基材2が配置されているので、基材2は活性化したガスに晒されてその表面に薄膜が形成されるものである。なお放電プラズマの発生を単周波で行う際には第1の電源9は電圧を印加されずアース電位に接続される。
【0049】
放電空間を成す電極間の距離としては、プラズマジェット方式またはダイレクトプラズマ方式のどちらの場合も、均一な放電を行う観点から0.3mm〜20mmが好ましく、特に好ましくは1mm±0.5mmである。この電極間の距離は、電極周囲の誘電体の厚さ、印加電圧の大きさを考慮して決定される。
【0050】
図5は、電極21A,21Bを表す斜視図であり、電極21A,21Bは導電性の金属質母材211の表面に誘電体212が被覆された四角柱状電極である。電極21A,21Bは内部が中空となっており、この中空部分213には、図1に示すように、配管5を介して温度調節装置6が接続されている。中空部分213に温度調節用の媒体を流すことにより、電極表面の温度調節ができるようになっている。そして、各薄膜形成ユニット20の電極21A,21Bには、フィルタ22を介して第2の電源23が接続されている。
【0051】
また、薄膜形成ユニット20には、図3に示すように、一対の電極21A,21Bの隙間bに向けて放電ガスを噴出するガス供給部24が、前記隙間bに対向するように配置されている。つまり、隙間bがガス供給部24から供給された放電ガスを、支持部材10上の基材2まで案内する流路として機能するようになっている。ガス供給部24には、内部にガス流路が形成されたノズル本体部25と、ノズル本体部25から流路に向けて突出し、ガス流路に連通して放電ガスを噴出するガス噴出部26とが設けられている。
【0052】
また薄膜形成ユニット20には、クリーニングフィルム27を電極21A,21Bに密着させながら連続的若しくは間欠的に搬送するフィルム用搬送機構30が、各電極21A,21Bに応じて設けられている。
【0053】
プラズマCVD法においては、プラズマ空間中において生成した原料微粒子は、目的とする基材上だけでなく放電電極上にもデポジットする。このような電極上の汚れを放置すると、放電状態が不安定となり、安定・均質なグロー放電から不安定・局所的なアーク放電に移行し、アーク放電下では均質な薄膜が得られなくなる。クリーニングフィルムによって放電電極を覆い、放電電極上へ汚れが付着することを防止し、放電電極を常にクリーンに保つことは、均質な薄膜を得る上で非常に効果的である。
【0054】
このクリーニングフィルム用搬送機構30には、ガス供給部24の近傍で、クリーニングフィルム27を案内する第1クリーニングフィルム用ガイドローラ31が設けられている。この第1クリーニングフィルム用ガイドローラ31の上流側には、図示しないクリーニングフィルム27の巻き出しローラ若しくはクリーニングフィルム27の元巻が設けられている。
【0055】
また、ガス供給部24に対して、第1クリーニングフィルム用ガイドローラ31よりも遠方には、第2クリーニングフィルム用ガイドローラ32を介してクリーニングフィルム27を巻き取る巻取部29(図6参照)が設けられている。第1クリーニングフィルム用ガイドローラ31、第2クリーニングフィルム用ガイドローラ32及びクリーニングフィルム27の全幅は、図4に示すように、支持部材10の全幅よりも長く設定されている。具体的には、クリーニングフィルム27の全幅長は、両端が支持部材10の両端から1〜100mmではみ出すように設定されていることが好ましい。これにより、クリーニングフィルム27が放電空間Bよりも大きくなる。つまり電極21A,21Bは、クリーニングフィルム27に覆われることにより、放電プラズマに晒されなくなり、電極21A,21Bに対する汚れを防止できる。また、クリーニングフィルム27のエッジが放電空間B内に侵入しないために、放電集中によるアーク放電を防止できる。
【0056】
また、薄膜形成ユニット20には、クリーニングフィルム27が放電面21a,21bに接触する際に生じるツレや皺を防止するために、電極21A,21Bの放電面21a,21bに対してクリーニングフィルム27の搬送方向の上流側に、クリーニングフィルム27を加熱する加熱部材28が設けられている。
【0057】
つまり、クリーニングフィルム27は、クリーニングフィルム用搬送機構30によって、巻出ローラから引き出された後、第1クリーニングフィルム用ガイドローラ31に案内されて、ガス供給部24のノズル本体部25の周縁に接触した後に、加熱部材28の表面に接触して加熱されてから、電極21A,21Bの角部215を介して放電面21a,21bに接触し、その後、第2クリーニングフィルム用ガイドローラ32に案内されて、巻取部29で巻き取られるようになっている。この際、角部215が円弧状に形成されているので、クリーニングフィルム27が前記放電面21a以外の表面(角部215表面)から放電面21a,21bまで移動する際に引っかかることを防止でき、スムーズに搬送させることができる。なお、本実施形態では、電極21A,21Bの放電面21a,21bが平面であるが、この放電面21a,21bを、他方の放電面21a,21bに向かって凸となる曲面に形成してもよい。こうした場合、電極21A,21Bの放電面21a,21bとクリーニングフィルム27との密着性をさらに高めることができる。
【0058】
そして、上記のように、クリーニングフィルム27とノズル本体部25とが接触しているので、ガス供給部24から放電空間Bまでの空間は、クリーニングフィルム27によって仕切られることになって、放電ガスが流路外に流れることを防止できる。
【0059】
このようなクリーニングフィルム27の材質としては、例えばセルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートプロピオネートまたはセルロースアセテートブチレートのようなセルロースエステル、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートのようなポリエステル、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコールコポリマー、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリエーテルイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ポリメチルアクリレート、アクリレートコポリマー等が挙げられる。
【0060】
プラズマ空間中では、プラズマを構成する各種ガスの励起・再結合が発生しており、それらの反応によって熱が発生するため、放電ガスの供給温度や放電電極の温度以上に高温になるため、高い耐熱性を有することが好ましい。このようなフィルムとして、上記のフィルムの中でもセルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートプロピオネートようなセルロースエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリエーテルイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、等が好ましい。
【0061】
またクリーニングフィルムは、角型の形状の放電電極上を搬送されるため、滑り性の高いフィルムが好ましい。しかしこの滑り性は、クリーニングフィルム基材自身の滑り性が悪くても、シリコーンオイルなどの滑り剤を放電電極と接する面に塗布することで滑り性を付与しても良く、また滑り性の高いテフロン(登録商標)のような高分子を薄くラミネートすることによって滑り性を付与してもよい。
【0062】
薄膜形成装置1には、図6に示すように、各駆動部を制御する制御装置50が設けられている。制御装置50には、駆動源51、記憶部52、第1の電源9、第2の電源23、ガス供給部24、加熱部材28、温度調節装置4,6、巻取部29が電気的に接続されている。なお、制御装置50には、これら以外にも薄膜形成装置1の各駆動部などが接続されている。そして、制御装置50は、記憶部52中に書き込まれている制御プログラムや制御データに従い各種機器を制御するようになっている。
【0063】
なお図1、図6の電源23などの本発明の膜の形成に用いるプラズマ製膜装置の電源としては、製膜速度を大きくしたり、炭素含有率を所定割合内に制御するために、本発明においては高周波電圧で、ある程度大きな電力を供給できる電源が好ましい。具体的には、1kHz以上2500MHz以下の高周波の電源を用い、さらには1kHz〜1MHzの間のいずれかの周波数の電圧と、1〜2500MHzの間のいずれかの周波数の電圧を重畳して印加することがより好ましい。これは、放電空間中に存在する各種のガスの励起に必要な周波数が異なることがあるため、複数の周波数が印加されているほうが原料ガスの分解が速く、製膜速度も速くなるためである。なお複数の周波数を用いる場合、支持部材10に接続する第1の電源の方が低周波電源である方が好ましい。支持部材10のように回転する部材には低周波数の方が効率的に電力を伝達できるためである。
【0064】
また、電極間に供給する電力の下限値は、0.1W/cm以上50W/cm以下であることが好ましく、下限は0.5W/cm以上であればより一層好ましい。また、1kHz〜1MHzの周波数の電圧と1〜2500MHzの周波数の電圧を重畳する際には、1〜2500MHzの電圧は1kHz〜1MHzの周波数の電圧よりも小さいことが好ましく、1kHz〜1MHzの電圧の2割〜8割の電圧であることが好ましい。尚、電極における電圧の印加面積(cm)は放電が起こる範囲の面積のことである。
【0065】
又、電極間に印加する高周波電圧は、断続的なパルス波であっても、連続したサイン波であってもよいが、製膜速度が大きくなることから、サイン波であることが好ましい。
【0066】
このような電源としては、特に限定はないが、神鋼電機社製高周波電源(3kHz)、神鋼電機社製高周波電源(5kHz)、神鋼電機社製高周波電源(15kHz)、神鋼電機社製高周波電源(50kHz)、ハイデン研究所社製高周波電源(連続モード使用、100kHz)、パール工業社製高周波電源(200kHz)、パール工業社製高周波電源(800kHz)、パール工業社製高周波電源(2MHz)、日本電子社製高周波電源(13.56MHz)、パール工業社製高周波電源(27MHz)、パール工業社製高周波電源(150MHz)等を使用できる。また、433MHz、800MHz、1.3GHz、1.5GHz、1.9GHz、2.45GHz、5.2GHz、10GHz、28GHzを発振する電源を用いてもよい。しかし、2500MHz以上の電源ではプラズマ空間への効率的な導入、均一な導入が難しいため、2500MHz以下の電源が好ましい。
【0067】
また温度調節装置4,6は、放電時の高温による悪影響を抑制するため、あるいは製膜される薄膜の組成・膜質を調整するために、基材の温度を常温〜250℃に調整できるよう、必要に応じて放電電極21A、21B、支持部材10などを冷却または加熱する。
【0068】
次に、支持部材10及び電極21A,21Bを形成する金属質母材11,211及び誘電体12,212について説明する。
【0069】
金属質母材11,211と誘電体12,212と組み合わせとしては、両者の間に特性が合うものが好ましく、その一つの特性として、金属質母材11,211と誘電体12,212との線熱膨張係数の差が10×10−6/℃以下となる組み合わせのものである。好ましくは8×10−6/℃以下、更に好ましくは5×10−6/℃以下、更に好ましくは2×10−6/℃以下である。なお、線熱膨張係数とは、周知の材料特有の物性値である。
【0070】
線熱膨張係数の差が、この範囲にある導電性の金属質母材と誘電体との組み合わせとしては、例えば、(1)金属質母材が純チタンまたはチタン合金で、誘電体がセラミックス溶射被膜、(2)金属質母材が純チタンまたはチタン合金で、誘電体がガラスライニング、(3)金属質母材がステンレススティールで、誘電体がセラミックス溶射被膜、(4)金属質母材がステンレススティールで、誘電体がガラスライニング、(5)金属質母材がセラミックスおよび鉄の複合材料で、誘電体がセラミックス溶射被膜、(6)金属質母材がセラミックスおよび鉄の複合材料で、誘電体がガラスライニング、(7)金属質母材がセラミックスおよびアルミの複合材料で、誘電体がセラミックス溶射皮膜、(8)金属質母材がセラミックスおよびアルミの複合材料で、誘電体がガラスライニング、等が挙げられる。線熱膨張係数の差という観点では、上記(1)または(2)および(5)〜(8)が好ましく、特に(1)が好ましい。
【0071】
そして、金属質母材11,211は、チタンまたはチタン合金が特に有用である。金属質母材11,211をチタンまたはチタン合金とし、誘電体12,212を上記組み合わせに応じる素材とすることにより、使用中の電極の劣化、特にひび割れ、剥がれ、脱落等がなく、過酷な条件での長時間の使用に耐えることが可能となる。
【0072】
本発明に有用な電極の金属質母材11,211は、チタンを70質量%以上含有するチタン合金またはチタン金属である。本発明において、チタン合金またはチタン金属中のチタンの含有量は、70質量%以上であれば、問題なく使用できるが、好ましくは80質量%以上のチタンを含有しているものが好ましい。本発明に有用なチタン合金またはチタン金属は、工業用純チタン、耐食性チタン、高力チタン等として一般に使用されているものを用いることができる。工業用純チタンとしては、例えばTIA、TIB、TIC、TID等が挙げられ、何れも鉄原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子、水素原子等を極僅か含有しているものであり、チタンの含有量は99質量%以上を有している。耐食性チタン合金としては、T15PBを好ましく用いることができ、上記含有原子の他に鉛を含有しており、チタン含有量は98質量%以上である。また、チタン合金としては、鉛を除く上記の原子の他に、例えば、アルミニウムを含有し、その他バナジウムや錫を含有しているT64、T325、T525、TA3等を好ましく用いることができ、これらのチタン含有量としては、85質量%以上を含有しているものである。これらのチタン合金またはチタン金属はステンレススティール、例えばAISI316に比べて、熱膨張係数が1/2程度小さく、金属質母材11,211としてチタン合金またはチタン金属の上に施された誘電体12,212との組み合わせがよく、高温、長時間での使用に耐えることができる。
【0073】
一方、誘電体12,212の求められる特性としては、具体的には、比誘電率が6〜45の無機化合物であることが好ましく、また、このような誘電体としては、例えば、アルミナ、窒化珪素等のセラミックス、あるいは、ケイ酸塩系ガラス、ホウ酸塩系ガラス等のガラスライニング材等が挙げられる。この中では、セラミックスを溶射したものやガラスライニングにより設けたものが好ましい。特にアルミナを溶射して設けた誘電体12,212が好ましい。
【0074】
または、大電力に耐えうる仕様の一つとして、誘電体12,212の空隙率が10体積%以下、好ましくは8体積%以下であることで、好ましくは0体積%を越えて5体積%以下である。また、大電力に耐えうる別の好ましい仕様としては、誘電体12,212の厚みが0.5〜2mmであることである。この膜厚変動は、5%以下であることが望ましく、好ましくは3%以下、更に好ましくは1%以下である。
【0075】
〔反応性ガス〕
次に、フッ化マグネシウム膜を得るために好ましい反応性ガスについて説明する。フッ化マグネシウム膜の原料としては、マグネシウムを含む化合物とフッ素を含む化合物を混合して用いる方法と、フッ素とマグネシウムの双方を含む化合物を用いる場合がある。
【0076】
またこれらの原料は、常温常圧下で気体、液体、固体いずれの状態であっても構わない。気体の場合にはそのまま放電空間に導入できるが、液体、固体の場合は、加熱、バブリング、減圧、超音波照射、気化器等の手段により気化させて使用する。又、溶媒によって希釈して使用してもよく、溶媒は、メタノール、エタノール、n−ヘキサンなどの有機溶媒及びこれらの混合溶媒が使用出来る。尚、これらの希釈溶媒は、プラズマ放電処理中において、分子状、原子状に分解されるため、影響は殆ど無視することができる。
【0077】
しかし、好ましくは大気圧下0〜250℃の温度域で蒸気圧を有する化合物であり、さらに好ましくは0〜250℃の温度域に液体状態を呈する化合物である。これはプラズマ製膜室内が大気圧近傍の圧力であるために、大気圧下で気化できないとプラズマ製膜室内にガスを送り込むことが難しいためである。また、原料化合物が液体の方が、プラズマ製膜室内に送りこむ量を精度良く管理できるためである。特に原料化合物が液体である場合は気化器を用いることができ、気化器では液体から直接気化することができ、±1%の精度で気化量を管理できる。なおガスバリア層を製膜するプラスチックフィルムの耐熱性が270℃以下の場合は、プラスチックフィルム耐熱温度からさらに20℃以下の温度で蒸気圧を有する化合物であることが好ましい。
【0078】
このような有機マグネシウム化合物としては、ビス(シクロペンタジエニル)マグネシウム、ビス(エチルシクロペンタジエニル)マグネシウム、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)マグネシウム、ビス(n−プロピルシクロペンタジエニル)マグネシウム、マグネシウムメトキシド、マグネシウムエトキシド、マグネシウム−n−プロポキシド、マグネシウムイソプロポキシド、マグネシウムメトキシエトキシド、マグネシウムメチルカルボネート、酢酸マグネシウム無水物、酢酸マグネシウム4水和物、アクリル酸マグネシウム、メタクリル酸マグネシウム、乳酸マグネシウム、ナフテン酸マグネシウム、ビス(アセチルアセトナート)マグネシウム、ビス(ジピバロイルメタナート)マグネシウムなどがある。
【0079】
また、フッ素源としては、フッ素ガス(F)、フッ化水素(HF)、フロンガス(CF)、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロパン、トリフルオロエタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、トリフルオロトルエン、トリフルオロ酢酸、トリフルオロ酢酸無水物、トリフルオロ酢酸メチル、トリフルオロ酢酸エチルなどがある。
【0080】
また、炭素−フッ素の結合はプラズマ中で切断されやすい結合であるためか、プラズマ空間中に存在する高分子からも発生させることができ、前述のクリーニングフィルムにフッ素系高分子フィルムを用いると、プラズマによりクリーニングフィルムがエッチングされてフッ素含有低分子またはフッ素ラジカルが発生し、フッ素源とすることができる。そのようなフッ素系高分子フィルムとしては、テフロン(登録商標)、ポリ(パーフルオロアルコキシエチレン)、ポリ(三フッ化エチレン)、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニルなどが挙げられる。
【0081】
また、マグネシウムとフッ素を共に含む分子としては、トリフルオロ酢酸マグネシウム、トリフルオロメタンスルホン酸マグネシウム、マグネシウムトリフルオロペンタンジオナート、マグネシウムヘキサフルオロペンタンジオナート、マグネシウムヘキサフルオロペンタンジオネートジメチルエーテル錯体などがある。
【0082】
しかしプラズマ中で発生するフッ素ラジカルやフッ化水素は活性が高く、原料ガスの有機成分を分解・ガス化して製膜速度を高める反面、プラスチック基材をもエッチングしてしまうこと、また金属基材も腐食することなどから、フッ素成分は必要最小限の使用量にとどめることが好ましい。したがって、フッ素とマグネシウムの双方を含む化合物を用いることが好ましい。
【0083】
更に、膜中の炭素、水素の含有率を調整するために前記の如く混合ガス中に水素ガス等を混合してもよく、これらの反応性ガスに対して、窒素ガスおよび/または周期表の第18属原子、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等、特に、ヘリウム、アルゴンが好ましく用いられるが、不活性ガスを混合し、混合ガスとしてプラズマ放電発生装置(プラズマ発生装置)に供給することで膜形成を行う。不活性ガスと反応性ガスの割合は、得ようとする膜の性質によって異なるが、混合ガス全体に対し、不活性ガスの割合を90.0〜99.9%として反応性ガスを供給する。
【0084】
大気圧下におけるプラズマCVD法に限らず、CVD法においては原料ガスにフッ素、マグネシウム以外にも水素、炭素、酸素などの元素が存在するため、得られる薄膜にも水素、炭素、酸素のコンタミネーションが起きる可能性がある。本発明における大気圧プラズマCVD法によるフッ化マグネシウム膜の製膜においても、膜中に水素、炭素、酸素の混入が観測される。
【0085】
フッ化マグネシウム膜の炭素、酸素、フッ素、マグネシウム原子の割合は、X線光電子分光法(ESCAまたはXPSとも呼ばれる)、X線マイクロ分光法、オージェ電子分光法、ラザホード後方散乱法などにより分析、決定される。これらの手法では水素原子の割合を測定することはできないが、フッ素、マグネシウム以外の元素が存在するフッ化マグネシウム膜ではある程度の割合で水素原子も膜中に存在していると推測される。
【0086】
しかし、本発明者らの検討によれば、フッ化マグネシウム中に炭素あるいは酸素が10原子%以下であれば、所望の屈折率、ガスバリア性を示すことが確認された。したがって、好ましくはフッ化マグネシウム膜中の炭素、酸素の混入率はの少なくともいずれかが10原子%以下が好ましい。
【0087】
炭素・酸素を10原子%以上含む膜ではガスバリア性が悪くなるが、膜中に有機物を含むと考えられ、炭素・酸素を10原子%未満しか含まないフッ化マグネシウム膜よりも柔軟性に富むと考えられ、応力緩和層として有用である。応力緩和層はフッ化マグネシウム膜に加えられる曲げ応力などを緩和し、フッ化マグネシウム層全体が割れることを防ぐことができるため、耐クラック性などの観点から有用である。また有機物であるプラスチックフィルムとの密着性にも優れるため、フッ化マグネシウム膜の密着性向上のためにも有用である。
【0088】
また炭素・酸素含有率が10〜30原子%の間では屈折率はあまり変化しないため、ガスバリア性の高い炭素・酸素混入率の低い膜と積層しても光学的な界面は発生せず、反射率を大きくしないために好ましい。さらにガスバリア性の悪い膜でもガスバリア性の良い膜との積層によってガスの透過経路を長くすることができ、同じ膜厚の単層膜よりも高いガスバリア性を発揮することができることが見出された。
【0089】
このような、組成が異なるフッ化マグネシウム膜を簡単に積層することができることも大気圧プラズマCVD法のメリットの一つである。
【0090】
このように、フッ化マグネシウム膜は単層、または2層以上積層されてよいが、膜全体の厚みの合計は、しなやかさを保ち折り曲げに対する耐性を保つ点で10μm以下が好ましい。
【0091】
また1層の厚みは、膜厚が厚いと曲げ応力などがかかった際に応力を緩和できずクラックが発生してしまうため、各層の厚みは500nm以下であることが好ましく、より好ましくは100nm以下である。また、5nmより薄くなると均一に膜を形成することが困難となるため好ましくない。
【0092】
フッ化マグネシウム膜の膜厚は、大気圧プラズマCVD法による製膜時間を増やしたり、処理回数を重ねること、或いは、混合ガス中の原料化合物の分圧を高めることによって調整することができる。
【0093】
大気圧プラズマCVD法により、炭素・酸素含有率の異なるフッ化マグネシウム膜を積層する方法としては、例えば図1のプラズマ放電処理室の中を基材を搬送させある組成のフッ化マグネシウム膜を設け、巻き取った後、さらに上記プラズマ放電処理装置の条件を替えて製膜することを必要な回数だけ繰り返す方法、図1のプラズマ放電処理室を複数台用意し、基材を搬送させそれぞれを通過するごとに1層ずつ複数層を設ける方法、基材を複数台のプラズマ放電処理装置に通し、基材の先頭と後尾をつなげ、搬送することにより各プラズマ放電処理装置で層を設けることを複数回行う方法等が挙げられる。プラズマ放電処理装置の条件としては、成膜する基材温度、プラズマに供給する電力、周波数などが挙げられ、これらを変更することにより生成するフッ化マグネシウム膜の組成・性質を変化させることができる。
【0094】
〔透明プラスチック基材〕
本発明のフッ化マグネシウム薄膜を形成するプラスチック(樹脂)基材としては、実質的に透明であれば特に限定はなく、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートフタレート、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類又はそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリスルホン類、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリル或いはポリアリレート類、あるいはこれらの樹脂とシリカなどとの有機無機ハイブリッド樹脂等をあげることが出来る。
【0095】
しかし、大気圧プラズマCVD法により成膜されるフッ化マグネシウム膜は、製膜温度が高いほどガスバリア性が高くなること、またディスプレイ用透明支持体として透明導電膜の形成等各種加熱プロセスをうけることがあるため、フッ化マグネシウム膜を形成する樹脂は、高い耐熱性を有していることが好ましい。
【0096】
耐熱性としては、ガラス転移温度が180℃以上であることが好ましい。このような条件を満たす樹脂基材としては、一部のポリカーボネイト、一部のシクロオレフィンポリマー、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、フッ素樹脂、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、またこれらの樹脂とシリカの有機無機ハイブリッド樹脂等が挙げられる。
【0097】
なお樹脂基材のガラス転移温度を測定する方法としてはDSC(示差走査熱量測定)、TMA(熱応力歪み測定)、DMA(動的粘弾性測定)などで測ることができる。
【0098】
しかし、フッ化マグネシウムをプラスチックフィルム上に製膜する場合、最適なプラスチックフィルムの屈折率は、(1.38)=1.90となる。屈折率が1.90ほど高いプラスチックフィルムは存在しないが、プラスチックフィルムの屈折率はなるべく高い方が得られるフィルムの積層反射率が低くなり好ましい。好ましくは屈折率が1.60以上のプラスチックフィルムであり、例えばPETやPESが好ましい。屈折率が1.60以上であればフッ化マグネシウム膜積層時に外光反射率を1.0%以下にすることが出来るからである。さらに耐熱性を考え合わせると、最も好ましくはPESである。
【0099】
透明導電膜(n=2.05)、プラスチックフィルム(n=1.4〜1.7)、ガスバリア層(フッ化マグネシウム、n=1.3〜1.4)からなる透明導電性フィルムの層構成としては、
A)プラスチックフィルム、ガスバリア層、透明導電層
B)ガスバリア層、プラスチックフィルム、透明導電層
の2種類が考えられるが、各層の屈折率を考えた場合、B)の構成の方が好ましい。これは前述の屈折率が異なる層の界面での反射を防ぐことができ、ディスプレイの光源からの光を効率良く取り出すことができるためである。
【0100】
本発明において、樹脂基材は直接プラズマ雰囲気にさらされるため、対プラズマエッチング層あるいはハードコート層として、片面または両面に下引き層を有していてもよい。下引き層の具体例としては、ポリマーの塗布等により形成された有機層等があげられる。有機層としてはたとえば重合性基を有する有機材料膜に紫外線照射や加熱等の手段で後処理を施した膜を含む。
【0101】
〔薄膜の作製〕
上記の反応ガス、基材フィルム、本実施形態の薄膜形成装置1を用いたフッ化マグネシウム薄膜の製膜について説明する。
【0102】
先ず、薄膜形成の開始に伴って、制御装置50は、各ガス供給部24から放電ガスを噴出させて、放電空間hにガスを供給させる。この際、ガス供給部24から噴出されたガスは、クリーニングフィルム27により仕切られた空間を介して、一対の電極21A,21Bにより形成された放電空間hにまで至る。
【0103】
そして、放電空間hにガスが供給されると、制御装置50は、駆動源51を制御して、第1ガイドローラ14、第2ガイドローラ16及び支持部材10を回転させて、基材2を支持部材10の周面に密着させて搬送させるとともに、巻取部29を制御して、クリーニングフィルム27を電極21A,21Bに表面に密着させて搬送させる。
【0104】
基材2の搬送が開始されると、制御装置50は、電源23をONにして、電極21A,21Bに電界を印加し、放電空間hに放電プラズマを発生させる。放電プラズマは、図4に示すように、ガス供給部24からの噴出力によって放電空間hから基材2に向けて噴出される。放電プラズマが発生する空間をプラズマ空間Hといい、上述の噴出力により電極21A,21Bの放電面21a,21bから上方、側方に向けてはみ出すことになる。
【0105】
さらに、支持部材10及び電極21A,21Bは、それぞれ温度調節装置4、6によってその表面温度が制御され、かつ加熱部材28においてもその表面温度が制御されているために、基材2及びクリーニングフィルム27がプラズマ空間Hに進入する以前に予め連続的に加熱されることとなる。このため、プラズマ空間Hに基材2及びクリーニングフィルム27が進入したとしても急激かつ過剰に熱影響を受けることを防止でき、放電プラズマの熱による収縮を抑えることができる。したがって、基材2及びクリーニングフィルム27に皺やツレが発生することを、さらに防止することができる。なお、連続的に加熱しなくても段階的に加熱してもよい。
【0106】
そして、基材2が、電極21A,21Bと支持部材10で挟まれたプラズマ空間H内を通過することで、基材2上には薄膜が形成される。具体的に説明すると、プラズマ空間H内では、フッ素化合物、有機マグネシウム化合物など、放電ガスに含有されているものが活性化している。さらに、プラズマ空間H内にはクリーニングフィルム27が進入しているために、図7に示すように、フッ素、炭素などのクリーニングフィルム27の表層に含まれる元素Gが放出されることがある。つまり、プラズマ空間H内には薄膜の原料となる各種物質が存在しているため、基材2がプラズマ空間Hを通過すれば基材2上に各種物質が堆積して薄膜が形成される。
【0107】
ここで、プラズマ放電処理中の基材2の温度によっては、得られる薄膜の物性や組成が変化する場合もあるので、薄膜形成中においても、温度調節装置4によって温度制御された媒体を支持部材10内に循環させて、支持部材10の表面温度を制御し、基材2の温度を適宜調節することが好ましい。ここで、温度調節装置4は、基材2が所定の性能を発揮できる温度となるように、温度調節用の媒体を20℃〜250℃、好ましくは80℃〜200℃に温度調節している。一方、温度調節装置6においても、温度調節用の媒体を20℃〜250℃、好ましくは80℃〜200℃に温度調節する。ただし、下限温度としては、使用する原料化合物の気化条件温度を下回らないように前記媒体を温度調節しなければならない。
【0108】
そして、薄膜が形成された基材2は、ガイドローラ16を介し、必要に応じて次行程へと搬送される。次工程のない場合は巻き取られる。
なお、本発明は上記実施形態に限らず適宜変更可能であるのは勿論である。
【0109】
例えば、本実施形態では、支持部材10及び電極21A,21Bの間に電界を印加することによって放電空間とし、基材2上に薄膜を形成するダイレクトプラズマ方式について例示したが、電極21A,21Bの間隙を放電空間とし、活性化されたガスを噴出することにより支持部材10に支持された基材2に対して薄膜を形成するプラズマジェット方式についても適用可能である。
【0110】
以下、プラズマジェット方式の薄膜形成装置について図8を参照にして説明するが、この薄膜形成装置においては、上記実施形態の薄膜形成装置1における支持部材を電極として機能させたものである。このため、以下の説明では上記実施形態の薄膜形成装置1と同一部分においては同一符号を付して説明を省略する。
【0111】
図8は、プラズマジェット方式の薄膜形成ユニットの側面図である。
【0112】
薄膜形成ユニットには、支持部材10の周面に間隔hを空けて対向し、支持部材10よりも幅の大きい一対の電極21A,21Bが配置されている。また、これら一対の電極21A,21Bは、互いに隙間bを空けて配置されている。この隙間bが放電空間であり、放電空間Bを成す電極21A,21Bが対向する面をそれぞれ放電面21a′、21b′とする。この放電空間を通った原料ガスは活性化され、支持部材10上の基材フィルム2に吹きつけられ、基材フィルム2上に薄膜が形成される。
なお本発明のフッ化マグネシウム薄膜の製造方法は、フッ化マグネシウム薄膜の製膜部分だけでなく、基材フィルム・クリーニングフィルムの搬送装置なども含まれるために比較的複雑な装置となるが、プラズマ発生が大気圧下で行われるために装置全体を減圧にする必要がないため、装置の運用・保守・点検が容易であり、高い生産性をあげることができる。
【0113】
本発明で得られる高いガスバリア性と低反射率のフィルムを必要とするものとして、有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子が挙げられる。有機EL素子は、湿気に対し敏感なために封止が必要である。これらの素子を封止する膜としても本発明におけるフッ化マグネシウム膜を用いることができる。
なお、有機EL素子は、陽極と陰極の一対の電極の間に発光層を挾持する構造をとる。具体的には、陰極と陽極からなる電極に電流を流した際に発光する有機化合物を含有する層のことを指す。陰極、発光層が水分に弱いため、有機EL素子を形成した後、陰極側の封止膜として、陰極上に直接、あるいはエポキシ樹脂等で封止を行った更にその上に、本発明のフッ化マグネシウム膜を形成することで、水分の浸透が抑えられ、有機EL表示装置の耐湿性がより一層向上し、ダークスポットの発生、成長を抑制することができ、長寿命の有機EL素子を得ることができる。また発光を取り出す側である陽極(ITO)側のフィルムの空気界面にも本発明のフッ化マグネシウム膜を形成することで、有機EL素子への水分・酸素の透過を防ぎ、かつ低屈折率であるフッ化マグネシウム層により光取り出し効率を向上させる効果も得られるものである。
【実施例】
【0114】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが本発明はこれにより限定されるものではない。
【0115】
実施例1(フッ化マグネシウム膜単層)
厚さ100μmの、PESフィルム上にフッ化マグネシウム膜を表1に記載の条件で形成し、下記の評価を行った。
【0116】
〈フッ化マグネシウム膜の製膜〉
大気圧プラズマCVDによるフッ化マグネシウム膜の形成は、それぞれ図1に示す薄膜形成装置1を用い、プラズマ発生には、第1の電源としてハイデン研究所社製高周波電源PHF−2K(100kHz)、また第2の電源として日本電子社製高周波電源JRF−10000(13.56MHz)を用いて行った。フッ化マグネシウム膜の原料としては、下記の原料ガス1〜5を20slm(20℃におけるガス流量:L/min)、135℃で放電空間に送り込むことで製膜を行った。放電ガス種およびそれ以外の放電条件は、表1に記載し、それぞれ条件A〜Kとした。またクリーニングフィルムとしては、反応性ガス1〜4の場合は厚さ25μmのポリイミドフィルムの裏面にシリコーン離型剤を塗布したフィルムを、シリコーン離型剤塗布面が放電電極と接するようにして用いた。原料ガス5の場合は、厚さ30μmのテフロン(登録商標)フィルムをクリーニングフィルムとして用いた。なおクリーニングフィルムの搬送速度は3cm毎分で搬送した。
【0117】
なお各条件とも最初に製膜時間と膜厚の検量線を作成して製膜速度を算出し、再度膜厚が100nmとなるように製膜を行った。なお膜厚は、大塚電子社製FE3000を用いて測定した。
〈フッ化マグネシウム反応性ガス1〉
放電ガス:ヘリウム 99.3体積%
分解ガス:水素 0.5体積%
原料ガス:マグネシウムヘキサフルオロペンタンジオネート・ジメチルエーテル錯体
0.2体積%
*マグネシウムヘキサフルオロペンタンジオネート・ジメチルエーテル錯体は100℃で溶解し、液体として気化器に送りこみ、ヘリウム・水素混合気体中に気化させた。
【0118】
〈フッ化マグネシウム反応性ガス2〉
放電ガス:アルゴン 99.3体積%
分解ガス:水素 0.5体積%
原料ガス:マグネシウムヘキサフルオロペンタンジオネート・ジメチルエーテル錯体
0.2体積%
〈フッ化マグネシウム反応性ガス3〉
放電ガス:窒素 99.3体積%
分解ガス:水素 0.5体積%
原料ガス:マグネシウムヘキサフルオロペンタンジオネート・ジメチルエーテル錯体
0.2体積%
〈フッ化マグネシウム反応性ガス4〉
放電ガス:窒素 99.3体積%
分解ガス:水素 0.5体積%
原料ガス1:マグネシウムメトキシエトキシド/メトキシエタノール
0.1体積%
原料ガス2:トリフルオロエタノール 0.1体積%
*マグネシウムメトキシエトキシドはメトキシエタノールの25%溶液として、トリフルオロエタノールと共に50℃で気化器に送りこみ、窒素・水素混合気体中に気化させた。
【0119】
〈フッ化マグネシウム反応性ガス5〉
放電ガス:窒素 99.4体積%
分解ガス:水素 0.5体積%
原料ガス1:マグネシウムメトキシエトキシド/メトキシエタノール
0.1体積%
原料ガス2:テフロン(登録商標)フィルム(クリーニングフィルム)
*マグネシウムメトキシエトキシドはメトキシエタノールの25%溶液として50℃で気化器に送りこみ、窒素・水素混合気体中に気化させた。
【0120】
また、比較例としてフッ化マグネシウムの電子ビーム蒸着をPESフィルム上に製膜した(条件L)。減圧度は1.33×10−3Paで製膜した。
【0121】
〈組成分析〉
VGサイエンティフィック社製X線光電子分光分析測定機(ESCA)を用いて、炭素、酸素、フッ素、マグネシウムの比率を測定した。
【0122】
〈水蒸気透過率試験〉
モダンコントロール社製水蒸気透過率測定装置PERMATRAN−W1Aを用いて、37℃、90%RHの条件で測定した。
【0123】
〈酸素透過率試験〉
モダンコントロール社製酸素透過率測定装置OX−TRAN100を用いて、23℃、0%RHの条件で測定した。
【0124】
〈中心線平均表面粗さの測定〉
ガスバリア膜表面を日本電子社製JSM6100を用いて走査型電子顕微鏡写真を撮影し、中心線平均表面粗さRaを算出した。
【0125】
〈碁盤目試験(密着性)〉
JIS K5400に準拠した碁盤目試験を行った。形成された薄膜の表面に片刃のカミソリの刃を面に対して90度の切り込みを1mm間隔で縦横に11本ずつ入れ、1mm角の碁盤目を100個作成した。この上に市販のセロファンテープを貼り付け、その一端を手でもって垂直にはがし、切り込み線からの貼られたテープ面積に対する薄膜の剥がされた面積の割合を以下のランクで評価した。
【0126】
A:全く剥がされなかった。
【0127】
B:剥離された面積割合が10%未満であった。
【0128】
C:剥離された面積割合が10%以上であった。
【0129】
【表1】

【0130】
表1から、大気圧プラズマCVD法によるフッ化マグネシウム膜の製膜速度は電子ビーム蒸着の製膜速度よりも速いことがわかる。また電子ビーム蒸着のフッ化マグネシウム膜は密着性に劣る膜であった。
また大気圧プラズマCVD法の中でも高周波・低周波の一方のみの周波数を印加した場合よりも、高周波・低周波の双方を重畳して印加した場合のほうが速くなることがわかる。
【0131】
2周波を重畳して大気圧プラズマCVD法によってフッ化マグネシウム膜を製膜する際には、製膜速度・水蒸気透過率・酸素透過率などは印加電圧よりも基材温度の上昇が効果あることがわかる。基材が高温なほど有機物が分解しやすいため、デポジットせずに製膜空間より排出される有機マグネシウム化合物が減少し、かつ、フッ化マグネシウム膜内への炭素、酸素の残存が少なくなるためと推測される。
【0132】
しかし、マグネシウム原料とフッ素原料を別の分子で送りこんだ場合(条件J)では、炭素混入率の高い膜が得られた。これはフッ素とマグネシウムの比率を合わせることが難しいこと、マグネシウム原料の化合物の炭素量が多いことが関係していると推測される。一方、フッ素をテフロン(登録商標)フィルムから供給した場合(条件K)においては、比較的コンタミネーションの低いフッ化マグネシウム膜が得られている。詳細は不明であるが、テフロン(登録商標)フィルムのプラズマエッチングによってフッ素を発生させた場合、低分子化合物を気化させてプラズマ空間に送りこむよりも多量のフッ素を発生させられるためと推測される。
【0133】
一方、製膜される膜の屈折率はどの条件においてもあまり変化せず、1.35〜1.39と低屈折率の膜を得ることができた。
【0134】
以上のように、本発明の放電条件によれば、高い製膜速度で高いガスバリア性、低屈折率の膜を得ることができる。
【0135】
実施例2(積層膜)
実施例1で炭素含有量が少ない膜が得られる条件1と、炭素含有量が多い膜が得られる条件Jと、を、表2に示すような膜厚で交互に連続的に製膜することで、合計膜厚が100nm程度であるフッ化マグネシウム積層膜201〜206を作製した。
【0136】
また、国際公開特許WO00−36665号に従って比較例の透明積層フィルム207を作製した。
【0137】
〈比較例の透明積層フィルム207〉
厚さ100μmのPESフィルム上に国際公開特許WO00−36665号に記載された方法に従ってガスバリア層の製膜を行った。
【0138】
真空蒸着装置内に導入ノズルからポリメチルメタクリレートオリゴマーを導入して、これを蒸着したのち、真空蒸着装置から取り出し、乾燥窒素気流下で紫外線を照射して重合させ、PMMA膜を形成した。PMMA膜の厚みは25nmに調整した。この膜上に、酸化珪素をスパッタリングターゲットとするRFスパッタリング法(周波数13.56MHz)を用いて酸化珪素膜を膜厚25nmまで成膜した。更に、上記PMMA膜、酸化珪素膜をそれぞれ25nmの厚みで形成して全4層(100nm厚)の積層膜を形成し、比較例の透明積層フィルム207とした。
【0139】
得られた積層フィルム201〜207の水蒸気透過率、碁盤目試験、反射率、透過率の測定を行った。
【0140】
〈反射率〉
視感度の高い550nm(緑色)の波長における反射率を、大塚電子社製FE3000を用いて測定した。
【0141】
〈透過率〉
視感度の高い550nm(緑色)の波長における透過率を、日立製作所社製分光光度計U−3310を用いて測定した。
【0142】
【表2】

【0143】
表2から明らかなように、トータル膜厚を一定(約100nm)として、炭素含有量が多い膜と少ない膜を組み合わせた層の数を多くしていったところ、層数が多いほど透湿度が低減され、効果的なガスバリア層であった。
【0144】
より効果的であったのは冷熱サイクル後の結果で、層数が多いものほど冷熱サイクルの影響が小さかった。これはガスバリア層と支持体の線膨張率の差を、柔らかいフッ化マグネシウム膜が応力緩和層として働いているためと考えられる。
【0145】
一方、比較例の透明積層フィルム207は、冷熱サイクル後の透湿度の劣化が大きい。これは支持体だけでなく、応力緩和層であるPMMAの耐熱性が低いこと、線膨張率が大きいこと、が原因ではないかと推測される。
【0146】
また膜の密着性は、比較例の透明積層フィルム207と硬度の高い条件Aの単膜(本発明の透明積層フィルム201)は密着性に劣る膜であったが、本発明のフィルム202〜306は良好な密着性を有していた。
【0147】
さらに、比較例の透明積層フィルム207は、屈折率に差のある2層(PMMAの屈折率1.49、SiOの屈折率1.46)を積層しているため、層間の界面反射により反射率が高く、透過率の低い透明フィルムであった。一方、本発明の透明フィルムは、ガスバリア層の屈折率が小さく空気との屈折率差が小さいこと、また層数は多くてもほとんど屈折率の差がない膜を積層していること、などから反射率の上昇・透過率の低下を引き起こさず、反射防止機能も兼ね備えた好ましいガスバリアフィルムであった。
【0148】
実施例3(有機EL素子の作製)
実施例3で作製した本発明の透明積層フィルム301〜306、比較例の透明積層フィルム307上に有機EL素子を作製した。
【0149】
〈透明導電膜の製膜〉
有機EL表示装置の構成は、先ず、透明な基材1として実施例2で作製した透明積層フィルム201〜207を用いて、フッ化マグネシウム膜を有する面と反対側にスパッタリングターゲットとして酸化インジウムと酸化すずとの混合物(Snの原子比Sn/(In+Sn)=0.08)からなる焼結体を用い、DCマグネトロンスパッタリング法にて透明導電膜であるITO(Indium Tin Oxide)膜を形成した。即ち、スパッタリング装置の真空装置内を1×10−3Pa以下にまで減圧し、アルゴンガスと酸素ガスとの体積比で1000:2.8の混合ガスを真空装置内が1×10−1Paになるまで真空装置内に導入した後、ターゲット印加電圧420V、基材温度60℃でDCマグネトロン法にて透明導電膜であるITO膜を厚さ250nm形成した。このITO膜に、パターニングを行いアノード(陽極)2とした後、この透明導電膜を設けた透明支持基材をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った。
【0150】
〈有機EL素子の製膜〉
得られた透明導電膜上に、方形穴あきマスクを介して真空蒸着法により、有機EL層として、α−NPD層(膜厚25nm)、CBPとIr(ppy)の蒸着速度の比が100:6の共蒸着層(膜厚35nm)、BC層(膜厚10nm)、Alq層(膜厚40nm)、フッ化リチウム層(膜厚0.5nm)を順次積層した、更に別のパターンが形成されたマスクを介して、膜厚100nmのアルミニウムからなるカソード(陰極)を形成した。
【0151】
【化1】

【0152】
〈封止〉
このように得られた積層体に、乾燥窒素気流下、基材として前記と同じ基材301〜307をフッ化マグネシウム膜側が外側となるように密着させ、周囲を光硬化型接着剤(東亞合成社製ラックストラックLC0629B)によって封止し、有機EL素子(表示装置OLED)301〜307を得た。
【0153】
これらの有機EL素子の発光部について、以下の評価を行った。
【0154】
〈評価項目1〉
封入直後に、これらの有機EL素子に10V直流電圧を印加した際の輝度を評価した。
【0155】
〈評価項目2〉
封入直後に50倍の拡大写真を撮影した。80℃、300時間保存後50倍の拡大写真を撮影し観察されたダークスポットの面積増加率を評価した。
【0156】
〈評価項目3〉
封入直後に50倍の拡大写真を撮影した。素子を45°に折り曲げて元に戻す、折り曲げ試験を1000回繰り返した後に、評価項目2と同様の保存試験を行い、ダークスポット面積の増加率を評価した。
【0157】
面積増加率は評価項目2及び3とも以下の基準で評価した。
ダークスポットの増加率がOLED307と同等以上の場合 ×
ダークスポットの増加率がOLED307の50%以上100%未満 △
ダークスポットの増加率がOLED307の30%以上50%未満 ○△
ダークスポットの増加率がOLED307の15%以上30%未満 ○
ダークスポットの増加率がOLED307の15%未満 ◎
【0158】
【表3】

【0159】
これらの結果から、炭素含有率の多いフッ化マグネシウム膜と、炭素含有率の少ないフッ化マグネシウム膜を交互に積層する層数を多くした有機EL表示装置ほど、ダークスポットの面積増加率を低く抑えることができることがわかる。
【0160】
また、実施例2の膜の密着性評価の結果と考え合わせると、単層の膜あるいは積層する膜ともに、各層の間の密着性が良いものほどダークスポットの面積増加率を低く抑えることができることがわかる。
【0161】
また、本発明のガスバリアフィルムを用いることで、光の取り出し効率が高く、輝度の高い有機EL素子を得ることができる。これはITO膜の屈折率(n=2.05)とPES(n=1.65)、フッ化マグネシウム(n=1.37)、空気(n=1.00)の層構成が光の反射を抑える屈折率条件に近い(√(1.37×2.05)=1.68、√(1.00×1.65)=1.28)ためであると考えられる。
【0162】
なお本実施例には、素子内に水分を吸着或いは水分と反応する材料(例えば酸化バリウム)を封入しなかったが、これらの材料を素子内に封入することを妨げるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0163】
本発明により、透明性が高く、水蒸気バリア性に優れ、反射率が低く、表面の中心線平均粗さが小さく、プラスチック基材などとの密着性に優れ、製膜速度の速いフッ化マグネシウム膜の製造方法を提供することができた。また、本発明のフッ化マグネシウム膜をガスバリア層として用いた透明積層フィルムは、電子ディスプレイ用の基材として有用な基材であり、それを用いて長寿命かつ光取り出し効率の高い有機EL素子を得ることができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気圧または大気圧近傍の圧力下、対向する電極間にフッ素化合物と有機マグネシウム化合物を含有する反応性ガスを供給し、高周波電圧をかけることにより、前記反応性ガスを励起状態とし、励起状態の反応性ガスに基材を晒すことを特徴とするフッ化マグネシウム薄膜の製造方法。
【請求項2】
前記高周波電圧が、1kHz〜2500MHzの範囲で、かつ、供給電力が1〜50W/cmの範囲であることを特徴とする請求の範囲第1項に記載のフッ化マグネシウム薄膜の製造方法。
【請求項3】
前記高周波電圧が、1kHz〜1MHzの範囲の周波数の交流電圧と、1〜2500MHzの周波数の交流電圧を重畳させたことを特徴とする請求の範囲第1項に記載のフッ化マグネシウム薄膜の製造方法。
【請求項4】
前記フッ化マグネシウム薄膜を構成するフッ素が、フッ素含有高分子フィルムから供給されることを特徴とする請求の範囲第1項に記載のフッ化マグネシウム薄膜の製造方法。
【請求項5】
請求の範囲第1項に記載のフッ化マグネシウム薄膜の製造方法で製膜したフッ化マグネシウム薄膜への炭素・酸素の混入比率がいずれも10原子%以下であることを特徴とするフッ化マグネシウム薄膜。
【請求項6】
請求の範囲第1項に記載のフッ化マグネシウム薄膜の製造方法で製膜したフッ化マグネシウム薄膜であって、該薄膜の水蒸気透過率が1.0g/m/d以下であることを特徴とするフッ化マグネシウム薄膜。
【請求項7】
請求の範囲第1項に記載のフッ化マグネシウム薄膜の製造方法で製膜したフッ化マグネシウム薄膜であって、該薄膜の酸素透過率が1.0ml/m/d以下であることを特徴とするフッ化マグネシウム薄膜。
【請求項8】
請求の範囲第1項に記載のフッ化マグネシウム薄膜の製造方法で製膜したフッ化マグネシウム薄膜であって、該薄膜の屈折率が1.35〜1.40であることを特徴とするフッ化マグネシウム薄膜。
【請求項9】
請求の範囲第1項に記載のフッ化マグネシウム薄膜の製造方法で製膜したフッ化マグネシウム薄膜であって、該薄膜表面の平均表面粗さが3.0nm以下であることを特徴とするフッ化マグネシウム薄膜。
【請求項10】
請求の範囲第5項に記載のフッ化マグネシウム薄膜が、透明なプラスチックフィルム基材表面に形成されていることを特徴とする透明プラスチックフィルム。
【請求項11】
請求の範囲第5項に記載のフッ化マグネシウム薄膜が形成され、外光反射率が1.0%以下であることを特徴とする透明プラスチックフィルム。
【請求項12】
請求の範囲第5項に記載のフッ化マグネシウム薄膜が、透明プラスチックフィルム基材上に形成され、かつその反対側の面に透明導電膜が形成されていることを特徴とする透明プラスチックフィルム。
【請求項13】
大気圧または大気圧近傍の圧力下、フッ素化合物と有機マグネシウム化合物を含有する反応性ガスを対向する電極間に供給し、高周波電圧をかけることにより、前記反応性ガスを励起状態とし、前記励起状態の反応性ガスに基材を晒すことにより形成された積層膜であって、第1のフッ化マグネシウム薄膜上に、第2のフッ化マグネシウム薄膜を有し、前記第1のフッ化マグネシウム薄膜は炭素と酸素の混入比の少なくともいずれかが10原子%以上であり、前記第2のフッ化マグネシウム薄膜の炭素と酸素の混入比の少なくともいずれかが10原子%以下であることを特徴とする積層膜。
【請求項14】
請求の範囲第13項に記載の積層膜が、透明プラスチックフィルム基材上に形成されていることを特徴とする透明プラスチックフィルム。
【請求項15】
透明プラスチックフィルム基材のガラス転移温度が180℃以上であることを特徴とする請求の範囲第10項に記載の透明プラスチックフィルム。
【請求項16】
透明プラスチックフィルム基材の屈折率が、1.6以上であることを特徴とする請求の範囲第10項に記載の透明プラスチックフィルム。
【請求項17】
透明プラスチックフィルム基材の屈折率が、1.6以上であることを特徴とする請求の範囲第14項に記載の透明プラスチックフィルム。
【請求項18】
透明プラスチックフィルム基材が、ポリエーテルスルホン(PES)であることを特徴とする請求の範囲第10項に記載の透明プラスチックフィルム。
【請求項19】
透明プラスチックフィルム基材が、ポリエーテルスルホン(PES)であることを特徴とする請求の範囲第14項に記載の透明プラスチックフィルム。
【請求項20】
請求の範囲第13項に記載の積層膜が素子表面に形成されていることを特徴とする有機EL素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【国際公開番号】WO2005/061757
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【発行日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−516464(P2005−516464)
【国際出願番号】PCT/JP2004/018617
【国際出願日】平成16年12月14日(2004.12.14)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】