説明

フッ化モノマーおよび炭化水素モノマーのポリマー

フッ化モノマーおよび炭化水素モノマーのポリマーを提供する。フッ化モノマーおよび炭化水素モノマー、かつ別の生体適合性ポリマーから形成されるポリマーを含むポリマーブレンドもまた提供する。本明細書に記載のポリマーまたはポリマーブレンド、および場合によって生理活性剤は、アテローム硬化症、血栓症、再狭窄、出血、血管解離または穿孔、血管動脈瘤、不安定プラーク、慢性完全閉塞、跛行、静脈および人工移植片に対する吻合部増殖、胆管閉塞、尿管閉塞、腫瘍閉塞、あるいはそれらの組合せなどの疾患の治療または予防に使用できる、ステントなどの埋込型装具、または薬物送達ステントなどの埋込型装具上のコーティングを形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[発明の分野]
本発明は一般に、ステントなどの埋込型装具をコーティングするのに有用なポリマー材料に関する。
[背景の説明]
ステントは機械的には良好に機能するが、再狭窄、および程度は低いがステント血栓症の、慢性的問題が残っている。薬物送達ステント方式での薬物治療は、これら生物学的に由来した問題に取り組むための実行可能な手段に見える。ステント上へ配置されたポリマーコーティングは、薬物貯蔵として働き、かつ薬物の放出を制御するという両方の働きをする。ポリマーをコーティングした市販の製品の1つが、Boston Scientific社製造のステントである。例えば、Boston Scientific Corporationに譲渡された米国特許第5869127号、第6099563号、第6179817号、および第6197051号明細書に、医療装具をコーティングする種々の組成物が記述されている。これらの組成物は、そこに記述されたステントに向上した生体適合性を付与し、場合によっては生理活性剤を含んでもよい。Scimed Life Systems Inc.の米国特許第6231590号明細書には、生理活性剤、コラーゲン材料を含むコーティング組成物、または場合により他の生理活性剤を含み、または他の生理活性剤でコーティングしてあるコラーゲンコーティングが記述されている。
【0002】
コーティングポリマーの性質は、コーティングの表面特性を規定する上で重要な役割を果たす。例えば、Tが非常に低い非晶質コーティング材は、クリンピング、バルーンの膨張等などの機械的摂動等に、許容できない流体力学的挙動を誘発する。一方、高Tまたは高結晶のコーティング材は、ステント型の高緊張領域で、脆性破壊を誘導する。さらに、Tが非常に低い非晶質コーティング材は、薬物の許容できない程の高い放出速度につながる、薬物の高透過性を有し得る。一方、高Tまたは高結晶のコーティング材は、薬物の許容できない程の低い放出速度につながる、非常に低いポリマー透過性を有し得る。これらは、ポリマーおよび組織中における薬物の溶解性などの薬物の特性とも組み合せなければならない一般原則である。
【0003】
現在使用されているポリマー材料には、ステント上で使用するのに十分な伸び、または薬物に対する低い透過性などのいくつかの望ましくない特性を有しているものがある。こうした1つのポリマーが、ポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)である。したがって、埋込型装具上のコーティング材としての使用に適する新規のポリマー材料が必要とされている。
【0004】
本発明は、埋込型装具をコーティングするためのポリマー材料を提供することにより、こうした問題に対処する。
[発明の概要]
本発明では、ステントなどの埋込型装具をコーティングするのに有用な、フッ化モノマーおよび炭化水素モノマーを含むポリマーを提供する。フッ化モノマーは、ポリマーに機械的強度を付与することができる。本明細書に記載の炭化水素モノマーは、ポリマーにたわみ性を与える。
【0005】
一実施形態では、該ポリマーは下記に示すような一般式(式I)を有するランダムまたはブロックポリマーであってよい。
【0006】
【化1】

【0007】
式中、mおよびnは範囲1〜100000の自然数でよい。
【0008】
フルオロモノマーは一般にフッ化アルキレンモノマーであり、非置換または置換フッ化エチレンでよい。一実施形態では、フルオロモノマーは、−CF−CRF−、−CHF−CRF−、−CH−CRF−、−CF−CRH、および−CFH−CRH−などの置換基(R)を有する置換フッ化エチレンである。Rは、水素、Cl、Br、I、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、短鎖アルキル基、フェニル、置換フェニル、環状アルキル、複素環、ヘテロアリール、短鎖フッ化アルキル基、フッ化フェニル、環状フッ化アルキル、フッ化複素環、またはそれらの組合せでもよい。いくつかの典型的なフッ化アルキレンモノマーとしては、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、ペンタフルオロプロペン、ヘキサフルオロプロペン、フッ化ビニル、および−CHF−CHF−が挙げられる。
【0009】
炭化水素モノマーは、生体適合性ポリマーを形成できる、炭化水素ビニルモノマーまたは置換炭化水素ビニルモノマーのいずれであってもよい。炭化水素ビニルモノマーは一般に式CHR=CHまたはCR=CHを有し、式中Rは、水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、短鎖アルキル基、フェニル、置換フェニル、環状アルキル、複素環、ヘテロアリール、またはそれらの組合せでもよい。代表的な炭化水素ビニルモノマーとしては、イソブチレン、スチレン、メチルスチレン、およびアルキル置換スチレンが挙げられる。生体適合性ポリマーを生じる他の炭化水素モノマーとしては、限定はされないが、エチレン、プロピレン、およびブチレンが挙げられる。
【0010】
別の実施形態では、炭化水素モノマーは、非ビニルモノマーであってもよい。有用な非ビニルモノマーとしては、CHR=CHRまたはCR=CHRが挙げられ、式中Rは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、短鎖アルキル基、フェニル、置換フェニル、環状アルキル、複素環、ヘテロアリール、またはそれらの組合せでもよい。代表的な非ビニルモノマーとしては、限定はされないが、2−ブチレン、2−ペンテン、2−ヘキセン、および3−ヘキセンが挙げられる。
【0011】
式Iのポリマーにおいて、フルオロモノマーは一般に、ポリマーを形成する全モノマーの約25.01モル%〜約99.99モル%、またはより限定すると、50.01モル%〜約94.99%を占め、炭化水素モノマーは一般に、ポリマーを形成する全モノマーの約0.01モル%〜約74.99モル%、またはより限定すると、5.01モル%〜約49.99モル%を占める。ポリマーの成分2種のモルパーセントを変化させることにより、ポリマーの物理的性質を微調整することができる。本明細書に記載のポリマーは、ランダムまたはブロックコポリマーであってよい。
【0012】
別の実施形態では、フッ化モノマーを有するポリマー、および少なくとも1つの他の生体適合性ポリマーを含むポリマーブレンドを提供する。一実施形態では、フッ化モノマーを有するポリマーは、上記に明示した式Iの構造を有する。
【0013】
本明細書に記載のポリマーまたはポリマーブレンドは、場合によっては生理活性剤を含み、ステントなどの埋込型装具、またはステントなどの埋込型装具上のコーティング(複数も)を形成するのに使用することができる。いくつかの典型的な生理活性剤は、パクリタキセル、ドセタキセル、エストラジオール、一酸化窒素供与体、スーパーオキシドジスムターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ模倣剤、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−l−オキシル(4−アミノ−TEMPO)、タクロリムス、デキサメタゾン、ラパマイシン、ラパマイシン誘導体、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン(エベロリムス)、40−O−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシン、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシン、および40−O−テトラゾール−ラパマイシン、ABT−578、クロベタゾール、それらのプロドラッグ、それらの補助薬、ならびにそれらの組合せである。埋込型装具は、アテローム硬化症、血栓症、再狭窄、出血、血管解離または穿孔、血管動脈瘤、不安定プラーク、慢性完全閉塞、跛行、静脈および人工移植片に対する吻合部増殖、胆管閉塞、尿管閉塞、腫瘍閉塞、またはそれらの組合せなどの疾患を治療、予防、または寛解するために患者に移植することができる。
【詳細な説明】
【0014】
本発明では、フッ化モノマーおよび炭化水素モノマーを含むポリマーを提供する。フッ化モノマーは、ポリマーに機械的強度を付与する。炭化水素モノマーは、ポリマーにたわみ性を与える。本明細書に記載のポリマーまたはポリマーブレンドは、場合によっては生理活性剤を含み、ステントなどの埋込型装具、またはステントなどの埋込型装具のコーティング(複数も)を形成するのに使用できる。いくつかの典型的な生理活性剤は、パクリタキセル、ドセタキセル、エストラジオール、一酸化窒素供与体、スーパーオキシドジスムターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ模倣剤、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−l−オキシル(4−アミノ−TEMPO)、タクロリムス、デキサメタゾン、ラパマイシン、ラパマイシン誘導体、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン(エベロリムス)、40−O−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシン、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシン、および40−O−テトラゾール−ラパマイシン、ABT−578、クロベタゾール、それらのプロドラッグ、それらの補助薬、ならびにそれらの組合せである。埋込型装具は、患者に埋め込み、アテローム硬化症、血栓症、再狭窄、出血、血管解離または穿孔、血管動脈瘤、不安定プラーク、慢性完全閉塞、跛行、静脈および人工移植片に対する吻合部増殖、胆管閉塞、尿管閉塞、腫瘍閉塞、またはそれらの組合せなどの疾患を治療、予防、または寛解することができる。
【0015】
フッ化モノマーおよび親水性モノマーのポリマー
一実施形態では、該ポリマーは、下記に示すような一般式(式I)を有するランダムまたはブロックポリマーであってよい。
【0016】
【化2】

【0017】
式中、mおよびnは、例えば範囲1〜100000の自然数でよい。
【0018】
フルオロモノマーは一般にフッ化アルキレンモノマーであり、非置換または置換フッ化エチレンでよい。一実施形態では、フルオロモノマーは、−CF−CRF−、−CHF−CRF−、−CH−CRF−、−CF−CRH−、および−CFH−CRH−などの置換基(R)を有する置換フッ化エチレンである。Rは、水素、Cl、Br、I、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、短鎖アルキル基、フェニル、置換フェニル、環状アルキル、複素環、ヘテロアリール、短鎖フッ化アルキル基、フッ化フェニル、環状フッ化アルキル、フッ化複素環、またはそれらの組合せでよい。いくつかの典型的なフッ化アルキレンモノマーとしては、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、ペンタフルオロプロペン、ヘキサフルオロプロペン、フッ化ビニル、および−CHF−CHF−が挙げられる。
【0019】
炭化水素モノマーは、生体適合性ポリマーを形成できる、炭化水素ビニルモノマーまたは置換炭化水素ビニルモノマーのいずれでもよい。炭化水素ビニルモノマーは一般にCHR=CHまたはCR=CHの式を有し、式中Rは、水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、短鎖アルキル基、フェニル、置換フェニル、環状アルキル、複素環、ヘテロアリール、またはそれらの組合せでもよい。代表的な炭化水素ビニルモノマーとしては、イソブチレン、スチレン、メチルスチレン、およびアルキル置換スチレンが挙げられる。生体適合性ポリマーを生じると思われる他の炭化水素モノマーとしては、限定はされないが、エチレン、プロピレン、ブチレンが挙げられる。
【0020】
式Iのポリマーにおいて、フルオロモノマーは一般に、ポリマーを形成する全繰り返し単位の約25.01モル%〜約99.99モル%、またはより限定すると、50.01モル%〜約94.99%を占め、炭化水素モノマーは一般に、ポリマーを形成する全繰り返し単位の約0.01モル%〜約74.99モル%、またはより限定すると、5.01モル%〜約49.99モル%を占める。ポリマーの成分2種のモルパーセントを変化させることにより、ポリマーの物理的性質を微調整することができる。本明細書に記載のポリマーは、ランダムまたはブロックコポリマーであってよい。
【0021】
一実施形態では、式Iのポリマーは、式IIまたは式IIIの構造を有する:
【0022】
【化3】

【0023】
本明細書に記載のポリマーは、当技術分野で公知の方法(例えば、D.Braunら著、Polymer Synthesis:Theory and Practice.Fundamentals,Methods,Experiments、第3版、Springer出版、2001年;Hans R.Kricheldorf著、Handbook of Polymer Synthesis、Marcel Dekker Inc.出版、1992年参照)により合成することができる。例えば、該ポリマーを作製するのに用いられる一方法は、フリーラジカル法(例えば、D.Braunら著、Polymer Synthesis:Theory and Practice.Fundamentals,Methods,Experiments、第3版、Springer出版、2001年、Hans R.Kricheldorf著、Handbook of Polymer Synthesis、Marcel Dekker Inc.出版、1992年参照)が可能である。溶媒中での重合は、本明細書に記載のポリマーを合成するのにも使用できる。
【0024】
共重合は相分離を大幅に防止する。反応性比が大きく異なる系では、ランダム重合の結果、ブロック構造がますます増加することになろう。別法では、プレポリマーの形成を経て段階的に進行する重合を用いて、ブロック構造を実現してもよい(例えば、J.Kopecekら著、Prog.Polym.Sci、9:34(1983年)参照)。
【0025】
ポリマーブレンド
別の実施形態では、式I〜IIIのポリマーは、埋込型装具のためのコーティング材を形成するために、別の生体適合性ポリマーとブレンドできる。生体適合性ポリマーは、生物分解性または非分解性でよい。これら生体適合性ポリマーの代表的な例としては、限定はされないが、ポリ(エステルアミド)、ポリエステル、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリ(3−ヒドロキシプロパノエート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシバレレート)、ポリ(3−ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3−ヒドロキシヘプタノエート)、およびポリ(3−ヒドロキシオクタノエート)などのポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)、ポリ(4−ヒドロキシブチレート)、ポリ(4−ヒドロキシバレレート)、ポリ(4−ヒドロキシヘキサノート)、ポリ(4−ヒドロキシヘプタノエート)、ポリ(4−ヒドロキシオクタノエート)、および本明細書に記載の3−ヒドロキシアルカノエートまたは4−ヒドロキシアルカノエートモノマーあるいはそれらの混合物のいずれかを含むコポリマーなどのポリ(4−ヒドロキシアルカノエート(alknaotes))、ポリ(D,L−ラクチド)、ポリ(L−ラクチド)、ポリグリコリド、ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(L−ラクチド−co−グリコリド)、ポリカプロラクトン、ポリ(ラクチド−co−カプロラクトン)、ポリ(グリコリド−co−カプロラクトン)、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(酸無水物)、ポリ(チロシンカーボネート)およびその誘導体、ポリ(チロシンエステル)およびその誘導体、ポリ(イミノカーボネート)、ポリ(グリコール酸−co−トリメチレンカーボネート)、ポリリン酸エステル、ポリリン酸エステルウレタン、ポリ(アミノ酸)、ポリシアノアクリレート、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(イミノカーボネート)、ポリウレタン、ポリホスファゼン、シリコーン、ポリオレフィン、ポリイソブチレンおよびエチレン−αオレフィンコポリマー、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(イソプロピルメタクリレート)、ポリ(n−プロピルメタクリレート)、ポリ(n−ブチルメタクリレート)、メタクリルポリマーおよびコポリマー、アクリルポリマーおよびコポリマー、ポリ塩化ビニルなどのハロゲン化ビニルポリマーおよびコポリマー、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(フッ化ビニリデン−co−ヘキサフルオロプロピレン)、ポリビニルメチルエーテルなどのポリビニルエーテル、ポリ塩化ビニリデンなどのポリハロゲン化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルケトン、ポリスチレンなどのポリビニル芳香族、ポリ酢酸ビニルなどのポリビニルエステル、エチレン−メチルメタクリレートコポリマー、アクリロニトリル−スチレンコポリマー、ABS樹脂、およびエチレン−酢酸ビニルコポリマーなどのビニルモノマー同士およびオレフィンとのコポリマー、ナイロン66およびポリカプロラクタムなどのポリアミド、アルキド樹脂、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ポリイミド、ポリエーテル、ポリ(グリセリルセバケート)、ポリ(プロピレンフマレート)、エポキシ樹脂、ポリウレタン、レーヨン、レーヨン−トリアセテート、セルロースアセテート、セルロースブチレート、セルロースアセテートブチレート、セロハン、硝酸セルロース、セルロースプロピオネート、セルロースエーテル、カルボキシメチルセルロース、ポリ(エチレングリコール)(PEG)などのポリエーテル、コポリ(エーテル−エステル)、例えばコポリ(エチレンオキシド−co−乳酸)(PEO/PLA)、ポリ(エチレンオキシド)およびポリ(プロピレンオキシド)などのポリアルキレンオキシド、ポリアルキレンオキサレート、ホスホリルコリン、コリン、ポリ(アスピリン)、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)、ヒドロキシプロピルメタクリルアミド、PEGアクリレート(PEGA)、PEGメタクリレート、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)およびn−ビニルピロリドン(VP)などの水酸基を有するモノマーのポリマーおよびコポリマー、メタクリル酸(MA)、アクリル酸(AA)、アルコキシメタクリレート、アルコキシアクリレート、および3−トリメチルシリルプロピルメタクリレート(TMSPMA)などのカルボン酸を有するモノマー、ポリ(スチレン−イソプレン−スチレン)−PEG(SIS−PEG)、ポリスチレン−PEG、ポリイソブチレン−PEG、ポリカプロラクトン−PEG(PCL−PEG)、PLA−PEG、ポリ(メチルメタクリレート)−PEG(PMMA−PEG)、ポリジメチルシロキサン−co−PEG(PDMS−PEG)、ポリ(フッ化ビニリデン)−PEG(PVDF−PEG)、PLURONIC(商標)界面活性剤(ポリプロピレンオキシド−co−ポリエチレングリコール)、ポリ(テトラメチレングリコール)、ヒドロキシ官能性ポリ(ビニルピロリドン)、コラーゲン、キトサン、アルギネート、フィブリン、フィブリノゲン、セルロース、スターチ、コラーゲン、デキストラン、デキストリン、ヒアルロン酸の断片および誘導体、ヘパリン、ヘパリンの断片および誘導体、グリコサミノグリカン(GAG)、GAG誘導体、多糖類、エラスチン、キトサン、アルギネートなどの生体分子およびそれらの組合せなどが挙げられる。いくつかの実施形態では、ポリマーは前述のポリマーのいずれか1つを除外することができる。
【0026】
本明細書で使用する場合、ポリ(D,L−ラクチド)(PDLL)、ポリ(L−ラクチド)(PLL)、ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)(PDLLG)、およびポリ(L−ラクチド−co−グリコリド)(PLLG)の用語は、ポリ(D,L−乳酸)(PDLLA)、ポリ(L−乳酸)(PLLA)、ポリ(D,L−乳酸−co−グリコール酸)(PDLLAGA)、およびポリ(L−乳酸−co−グリコール酸)(PLLAGA)の用語と、それぞれ相互に交換可能なものとして使われる。
【0027】
生理活性剤
本発明のさらなる一実施形態に従って、本明細書に記載のポリマーまたはポリマーブレンドは、1つまたは複数の活性剤を任意に含めてよいコーティングを形成することができる。生理活性剤は、生物学的に活性であるいずれかの作用物質、例えば、治療薬、予防薬、または診断薬でよい。
【0028】
適する治療薬および予防薬の例としては、治療的、予防的、または診断的活性を有する、合成無機化合物および合成有機化合物、タンパク質およびペプチド、多糖類および他の糖類、脂質、ならびにDNAおよびRNA核酸配列が挙げられる。核酸配列には、遺伝子、転写を阻害する相補DNAに結合しているアンチセンス分子、およびリボザイムが挙げられる。広範囲の分子量を有する化合物は、例えば、モル当り100〜500000グラム間、またはそれ以上で封入することができる。適する材料の例としては、抗体、受容体リガンド、酵素などのタンパク質、接着ペプチドなどのペプチド、糖類および多糖類、合成有機薬剤または合成無機薬剤、ならびに核酸が挙げられる。封入できる材料の例としては、酵素、血液凝固因子、ストレプトキナーゼおよび組織プラスミノーゲンアクチベーターなどの阻害剤または血栓溶解剤、免疫用の抗原、ホルモンおよび成長因子、ヘパリンなどの多糖類、遺伝子治療に使用されるアンチセンスオリゴヌクレオチドなどのオリゴヌクレオチド、およびリボザイム、ならびにレトロウイルスベクターが挙げられる。ポリマーはまた細胞および組織を封入するために使用することもできる。代表的な診断薬は、X線、蛍光、磁気共鳴画像法、放射能、超音波、コンピュータ断層撮影法(CT)、およびポジトロン放出断層撮影法(PET)により検出可能な薬剤である。超音波診断薬は一般に、空気、酸素、またはペルフルオロカーボンなどの気体である。
【0029】
制御放出の場合、広範囲の異なる生理活性剤を、制御放出用具に組み入れることができる。これらには、タンパク質などの疎水性、親水性、および高分子量の巨大分子が挙げられる。生理活性化合物は、0.01重量%〜70重量%、より好ましくは5重量%〜50重量%の百分率荷重で、ポリマーコーティングに組み入れることができる。
【0030】
一実施形態では、生理活性剤は、血管平滑筋細胞の活性を阻害することを目的としてよい。さらに詳しくは、生理活性剤は、再狭窄を抑制するために、平滑筋細胞の異常または不適切な遊走および/または増殖の阻害を目的とすることができる。生理活性剤はまた、本発明の実施に際して、治療効果または予防効果を発揮できるいずれかの物質を含んでいてよい。例えば、生理活性剤は、血管部位の創傷治癒を高めるか、または血管部位の構造特性および弾性特性を改善することを目的としてよい。活性剤の例としては、アクチノマイシンDなどの抗増殖物質、またはその誘導体および類似体(Sigma−Aldrich社、1001West Saint Paul Avenue、Milwaukee製造のWI53233、またはMerck社から入手可能なCOSMEGEN)が挙げられる。アクチノマイシンDの異名としては、ダクチノマイシン、アクチノマイシンIV、アクチノマイシンI、アクチノマイシンX、およびアクチノマイシンCが挙げられる。生理活性剤は、抗悪性腫瘍性、消炎性、抗血小板性、抗凝血性、抗線維素溶解性、抗トロンビン、抗有糸分裂性、抗菌性、抗アレルギー性、および抗酸化性の物質属に分類することもできる。こうした抗悪性腫瘍薬および/または抗有糸分裂薬の例としては、パクリタキセル、(例えば、TAXOL(登録商標)、Bristol−Myers Squibb Co.社、Stamford、Conn.)、ドセタキセル(例えば、Taxotere(登録商標)、Aventis S.A.社、Frankfurt、Germany)メトトレキセート、アザチオプリン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、フルオロウラシル、塩酸ドキソルビシン(例えば、Adriamycin(登録商標)、Pharmacia&Upjohn社、Peapack、N.J.)、およびマイトマイシン(例えば、Mutamycine(登録商標)、Bristol−Myers Squibb Co.社、Stamford、Conn.)が挙げられる。こうした抗血小板薬、抗凝血剤、抗線維素溶解性剤、および抗トロンビンの例としては、ヘパリンナトリウム、低分子量ヘパリン、ヘパリン類似物質、ヒルジン、アルガトロバン、フォルスコリン、バピプロスト、プロスタサイクリンおよびプロスタサイクリン類似体、デキストラン、D−phe−pro−arg−クロロメチルケトン(合成抗トロンビン)、ジピリダモール、糖タンパク質IIb/IIIa血小板膜受容体アンタゴニスト抗体、組換え型ヒルジン、およびアンジオマックスa(Biogen,Inc.社、Cambridge、Mass.)などのトロンビン阻害剤が挙げられる。こうした細胞分裂阻害剤または抗増殖剤の例としては、アンジオペプチン、カプトプリル(例えば、Capoten(登録商標)およびCapozide(登録商標)、Bristol−Myers Squibb Co.社、Stamford、Conn.)などのアンジオテンシン変換酵素阻害剤、シラザプリルまたはリシノプリル(例えば、Prinivil(登録商標)およびPrinzide(登録商標)、Merck&Co.,Inc.社、Whitehouse Station、NJ)、カルシウムチャネル遮断薬(ニフェジピンなど)、コルヒチン、タンパク質、ペプチド、線維芽細胞成長因子(FGF)アンタゴニスト、魚油(ω3−脂肪酸)、ヒスタミンアンタゴニスト、ロバスタチン(HMG−CoA還元酵素の阻害剤、コレステロール低下薬、商標名Mevacor(登録商標)、Merck&Co.,Inc.社、Whitehouse Station、NJ)、モノクローナル抗体(血小板由来増殖因子(PDGF)受容体に特異的なものなど)、ニトロプルシド、ホスホジエステラーゼ阻害剤、プロスタグランジン阻害剤、スラミン、セロトニン遮断薬、ステロイド薬、チオプロテアーゼ阻害剤、トリアゾロピリミジン(PDGFアンタゴニスト)、および一酸化窒素が挙げられる。抗アレルギー薬剤の例としては、ペルミロラスト(permirolast)カリウムが挙げられる。適切な薬剤の可能性がある他の治療物質または治療薬としては、α−インターフェロン、遺伝子改変上皮細胞、抗炎症剤、ステロイド性抗炎症剤、非ステロイド性抗炎症剤、抗ウイルス剤、抗癌剤、抗凝血剤、フリーラジカルスカベンジャー、エストラジオール、抗生剤、一酸化窒素供与体、スーパーオキシドジスムターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ模倣剤、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4−アミノ−TEMPO)、タクロリムス、デキサメタゾン、ラパマイシン、ラパマイシン誘導体、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン(エベロリムス)、40−O−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシン、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシン、および40−O−テトラゾール−ラパマイシン、ABT−578、クロベタゾール、細胞分裂阻害剤、それらのプロドラッグ、それらの補助薬、またはそれらの組合せが挙げられる。
【0031】
前述の物質は、例として列挙しているが、限定を意味するものではない。現在入手可能な、または将来開発されることもある他の活性剤も同様に適用される。
【0032】
好ましい治療効果を生じさせるために必要な生理活性剤の投与量または濃度は、生理活性剤が毒性効果を生ずる量より少なく、かつ治療的な結果が得られない量より多くすべきである。血管領域の目的の細胞活性を阻害するのに必要な生理活性剤の投与量または濃度は、患者の特定の環境、外傷の性質、目的とする治療の性質、投与された成分が血管部位に留まる時間、あるいは他の活性剤を使用した場合、物質または物質の組合せの性質および種類などの因子によって決められる。治療に効果的な投与量は、例えば、適当な動物モデル系の血管に注入し、薬剤およびその効果を検出する免疫組織化学的な蛍光分析法または電子顕微鏡法を用いるか、あるいは適当なインビトロ研究を行うことにより、実験的に決定できる。投与量を決定する標準的な薬理学試験の手順は、当業者には理解されよう。
【0033】
埋込型装具の例
本明細書で使用する場合、埋込型装具は、ヒトまた動物の患者に埋め込むことができる、任意の適切な医療基材でよい。こうした埋込型装具の例としては、自動拡張型ステント、バルーン拡張型ステント、ステントグラフト、移植片類(例えば、大動脈グラフト)、人工心臓弁、卵円孔開存用閉鎖装置、脳脊髄液シャント、ペースメーカーの電極、および心内膜リード(例えば、Guidant Corporation社、Santa Clara、CA.から入手可能なFINELINEおよびENDOTAK)が挙げられる。該装具の下部構造は、実質的にはいずれの設計のものでもよい。該装具は、限定はされないが、コバルトクロム合金(ELGILOY)、ステンレス鋼(316L)、高窒素ステンレス鋼、例えば、BIODUR108、コバルトクロム合金L−605、「MP35N」「MP20N」ELASTINITE(ニチノール)、タンタル、ニッケル−チタンの合金、白金−イリジウムの合金、金、マグネシウム、またはそれらの組合せなどの金属材料または合金で作製することができる。「MP35N」および「MP20N」は、Standard Press Steel Co.社 Jenkintown、PAから入手可能な、コバルト、ニッケル、クロム、およびモリブデンの合金類の商品名である。「MP35N」はコバルト35%、ニッケル35%、クロム20%、およびモリブデン10%から成る。「MP20N」は、コバルト50%、ニッケル20%、クロム20%、およびモリブデン10%から成る。生体吸収性または生体安定性のポリマーから作製された装具は、本発明の実施形態でも使用することができる。
【0034】
使用方法
本発明の実施形態に従い、様々な前記実施形態のコーティングを、埋込型装具または補綴物、例えばステント上に形成することができる。1つまたは複数の活性剤を含むコーティングでは、薬剤は送達中、および装具の膨張中にステントなどの医療用具上に保持され、埋め込み部位に所望の速度で所定の持続時間放出されることとなる。医療用具はステントが好ましい。上記コーティングを有するステントは、一例として、胆管、食道、気管/気管支、および他の生体通路内で腫瘍が引き起こす閉塞症の治療を含み、種々の医療手順に有用である。上記コーティングを有するステントは、平滑筋細胞の異常または不適当な遊走および増殖、アテローム硬化症、血栓症、および再狭窄により引き起こされる血管の閉塞領域を治療するために、特に有用である。ステントは、動脈と静脈両方の多様な血管に設置することが可能である。部位の代表的な例としては、腸骨、腎臓、頸動脈、および冠血管の動脈が挙げられる。
【0035】
ステントの埋め込みでは、最初に血管造影図を撮り、ステント治療のための適切な位置を決定する。血管造影図は一般に、X線を撮影する際に動脈または静脈内へ挿入されるカテーテルを介して、放射線不透過性造影剤を注入することにより得られる。次いで治療の病変部位または予定した部位に、ガイドワイヤを通過させる。ガイドワイヤ上に送達カテーテルを通し、それにより収縮した形状のステントを通路に挿入することが可能になる。送達カテーテルは、経皮的に、または手術によって、大腿動脈、上腕動脈、大腿静脈、または上腕静脈へ挿入され、透視下で血管系にカテーテルを通すことにより、適切な血管内へと進ませられる。次いで上記のコーティングを有するステントを、目的の治療領域で拡張することができる。挿入後の血管造影図を利用し、適切な位置決めを確認することができる。
【実施例】
【0036】
本発明の実施形態を、以下に記載の予測例により例示することにする。全てのパラメータおよびデータは、本発明の実施形態の範囲を必要以上に制限していると解釈すべきものではない。
実施例1:ポリ(ブロック−フッ化ビニリデン−co−ブロック−イソブチレン)の合成
フルオロポリマーは一般に、懸濁液またはエマルジョン法を用いて、ラジカル重合により合成され、一方ポリイソブチレンは一般に、カチオン重合法を経て生成される(G.Odian著、Principles of Polymerization、第3版、John Wiley&Sons社、NY、1991年参照)。しかしフルオロポリマーは、ヨウ素または臭素の官能性開始剤を使用し、原子移動ラジカル重合(ATRP)によっても合成できる。これら重合の結果、末端ヨウ素基または末端臭素基を有するPVDFとなる。次いでこれらの末端基は、直接使用されるかまたは官能化し、イソブチレンのカルボカチオン開始剤として働くことができる。ブロックコポリマーは、ATRP技術によってブロモ末端ポリ(フッ化ビニリデン)を最初に合成することにより、作製することができる(Z.Zhangら著、「Synthesis of fluorine−containing block copolymers via ATRP 1、Synthesis and characterization of PSt−PVDF−PSt triblock copolymers」Polymer(40)(1999)1341−1345を参照)。得られたブロモ末端PVDFは、四塩化チタン、四臭化チタン、または三塩化アルミニウムなどのルイス酸を触媒とするカチオン重合で、開始剤として使用することができる(J.P.Kennedyら著、「Design Polymers by carbocationic Macromolecular Engineering」Hanser出版、NY、Munich、1992を参照)。フッ化ビニリデン対イソブチレンの有用な重量比は75/25である。
【0037】
実施例2.ポリ(フッ化ビニリデン−co−スチレン)の合成
両モノマーは、ラジカル重合を受け易い。この重合は、懸濁または乳化重合の技術によって可能になる。有用な開始剤は、過酸化物、可溶性有機過酸化物、過硫酸化合物、およびアゾ化合物である。第一鉄、亜硫酸、または亜硫酸水素のイオンを含む化合物などのレドックス系は、低温度で所望の開始速度を実現するのに使用することができる。有用な1手段は、オートクレーブ内での懸濁重合である。フッ化ビニリデン/スチレンコポリマー分散は、フッ化ビニリデン90重量%およびスチレン10重量%の組成で、調製することができる。10ガロンのグラスライニング製オートクレーブに、脱イオン水5ガロンを添加し、フッ化ビニリデン(VDF)2.2kgおよびスチレン0.24kgを注入する。窒素を散布して全酸素を取り除き、高速攪拌した後、脱イオン水で100mlに希釈した第三級ブチルヒドロペルオキシド(TBHP)70%溶液20gの溶液を添加する。次いで、脱イオン水100mlに溶解した、メタ重亜硫酸ナトリウム(MBS)15gおよび硫酸第一鉄・七水和物2.2gの溶液を添加する。オートクレーブを15〜20℃に保持する。開始触媒の添加後、過フッ化アンモニウムオクトアネート(octoanate)触媒(活性固体20%)300mlをオートクレーブに注入する。脱イオン水で700mlに希釈したTBHP100g、および脱イオン水で750mlに希釈したMBS80gからなる2つの別個の溶液をゆっくりと添加することにより、重合を継続させる。これら開始剤を1:8ml/分の速さで添加する。VDFおよびスチレンの初期投与量を消費後、VDF18kgおよびスチレン2kgを、5時間かけて添加する。オートクレーブを開栓し、ポリマー分散水を生成し、それをふるいにかけて分離し、濯ぐ。
【0038】
実施例3:実施例2の組成物によるステントのコーティング
下記成分を混合することにより、組成物を調製できる。
【0039】
(a)ポリ(ブチルメタクリレート)(PBMA)約2.0%(w/w)、および(b)バランスが、50/50(w/w)のアセトンとシクロヘキサノンのブレンド。該組成物を、最小12mmの小さいVISION(登録商標)ステント(Guidant Corp.社)の表面上へ塗布する。コーティングを吹付け、乾燥して、下塗層を形成することができる。0.014円形ノズルを有する吹付塗布機は、周囲温度に保持し、フィード圧2.5psi(0.17atm)および噴霧圧力約15psi(1.02atm)で使用することができる。噴霧1パス当り約20μgのコーティングを塗布することができる。液状のコーティング約80μgを塗布し、噴霧パス間にステントを約50℃の空気流中で約10秒間乾燥することができる。ステントを約80℃で約1時間焼成して、PBMA60μg程度からなる薬剤貯蔵層を生成することができる。
【0040】
第2組成物は、下記成分を混合することにより調製できる。
(a)実施例2のポリマー約2.0%(w/w)、
(b)エバロリムス約1.0%(w/w)、
(c)バランスが50/50(w/w)のアセトンとジメチルホルムアミドのブレンド。
【0041】
第2組成物を、貯蔵層を塗布するために使用するのと同様の吹付け技術および装置を用いて、乾燥した下塗層上に施し、薬物貯蔵層を形成することができる。液状のコーティング約200μgを塗布後乾燥し、約50℃で約2時間焼成し、固体分約180μgを有しエベロリムス約60μgを含む乾燥薬物貯蔵層を生成することができる。
【0042】
本発明の特定の実施形態を示し説明してきたが、より広範な態様において本発明から逸脱することなく、変更および修正を行うことができることは、当業者には明らかであろう。したがって、添付の請求項の範囲は、本発明の真の精神および範囲内である変更および修正全てを、その範囲内に含むことになる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ化モノマーおよび炭化水素モノマーを含む生体適合性ポリマーであって、
前記フッ化モノマーが、前記ポリマーの反復単位約25.01モル%〜約99.99モル%を形成し、
前記炭化水素モノマーが、前記ポリマーの反復単位約74.99モル%〜約0.01モル%を形成する、
生体適合性ポリマー。
【請求項2】
フッ化モノマーおよび炭化水素モノマーを含む生体適合性ポリマーであって、
前記フッ化モノマーが、前記ポリマーの単位約50.01モル%〜約94.99モル%を形成し、
前記炭化水素モノマーが、前記ポリマーの反復単位約49.99モル%〜約5.01モル%を形成する、
生体適合性ポリマー。
【請求項3】
次式I
【化1】


(式中、mおよびnは範囲1〜100000の自然数であり、
前記フルオロモノマーはフッ化アルキレンモノマーであり、
前記炭化水素モノマーは炭化水素ビニルモノマーである)
の構造を有する、請求項1に記載の生体適合性ポリマー。
【請求項4】
前記フルオロモノマーが、−CF−CF−、−CH−CF−、−CH−CHF−、−CHF−CHF−、−CClF−CF−、−CF−C(CF)F−、−CHF−C(CF)F−、−CF−C(CF)H−、−CF−CRF−、−CHF−CRF−、−CF−CRH−、−CH−CRF−、および−CFH−CRH−、(式中Rは、水素、Cl、Br、I、メチル、エチル、n−プロピル、イオソ(ioso)プロピル、短鎖アルキル基、フェニル、置換フェニル、環状アルキル、複素環、ヘテロアリール、短鎖フッ化アルキル基、フッ化フェニル、環状フッ化アルキル、フッ化複素環)からなる群またはそれらの組合せから選択され、
前記炭化水素モノマーが、CHR=CHまたはCR=CH、(式中Rが水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、短鎖アルキル基、フェニル、置換フェニル、環状アルキル、複素環、ヘテロアリール)またはそれらの組合せとなり得る、
請求項3に記載の生体適合性ポリマー。
【請求項5】
前記炭化水素モノマーが、1つまたは複数のイソブチレン、スチレン、メチルスチレン、アルキル置換スチレン、エチレン、プロピレン、およびブチレン類である、請求項3に記載の生体適合性ポリマー。
【請求項6】
次式II〜III
【化2】


(式中、mおよびnは範囲1〜100000の自然数である)
のいずれかの構造を有する、請求項3に記載の生体適合性ポリマー。
【請求項7】
請求項1に記載の生体適合性ポリマーおよび少なくとも1種の他の生体適合性ポリマーを含む、生体適合性ポリマーブレンド。
【請求項8】
請求項3に記載の生体適合性ポリマーおよび少なくとも1種の他の生体適合性ポリマーを含む、生体適合性ポリマーブレンド。
【請求項9】
請求項4に記載の生体適合性ポリマーおよび少なくとも1種の他の生体適合性ポリマーを含む、生体適合性ポリマーブレンド。
【請求項10】
前記他の生体適合性ポリマーが、ポリ(エステルアミド)、ポリエステル、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)、ポリ(3−ヒドロキシプロパノエート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシ吉草酸)、ポリ(3−ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3−ヒドロキシヘプタノエート)、ポリ(3−ヒドロキシオクタノエート)、ポリ(4−ヒドロキシアルカノエート)、ポリ(4−ヒドロキシブチレート)、ポリ(4−ヒドロキシ吉草酸)、ポリ(4−ヒドロキシヘキサノート)、ポリ(4−ヒドロキシヘプタノエート)、本明細書に記載の3−ヒドロキシアルカノエート、4−ヒドロキシアルカノエートのモノマーまたはそれらのブレンドを含むポリ(4−ヒドロキシオクタノエート)コポリマー、ポリ(D,L−ラクチド)、ポリ(L−ラクチド)、ポリグリコリド、ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(L−ラクチド−co−グリコリド)、ポリカプロラクトン、ポリ(ラクチド−co−カプロラクトン)、ポリ(グリコリド−co−カプロラクトン)、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(酸無水物)、ポリ(チロシンカーボネート)およびその誘導体、ポリ(チロシンエステル)およびその誘導体、ポリ(イミノカーボネート)、ポリ(グリコール酸−co−トリメチレンカーボネート)、ポリリン酸エステル、ポリリン酸エステルウレタン、ポリ(アミノ酸)、ポリシアノアクリレート、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(イミノカーボネート)、ポリウレタン、ポリホスファゼン、シリコーン、ポリオレフィン、ポリイソブチレンおよびエチレン−αオレフィンコポリマー、メタクリルポリマーおよびコポリマー、アクリルポリマーおよびコポリマー、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(イソプロピルメタクリレート)、ポリ(n−プロピルメタクリレート)、ポリ(n−ブチルメタクリレート)、ハロゲン化ビニルポリマーおよびコポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(フッ化ビニリデン−co−ヘキサフルオロプロピレン)、ポリビニルエーテル、ポリビニルメチルエーテル、ポリハロゲン化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルケトン、ポリビニル芳香族、ポリスチレン、ポリビニルエステル、ポリ酢酸ビニル、ビニルモノマーのコポリマー、エチレン−メチルメタクリレートコポリマー、アクリロニトリル−スチレンコポリマー、ABS樹脂、およびエチレン酢酸ビニルコポリマー、ポリアミド、ナイロン66およびポリカプロラクタム、アルキド樹脂、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ポリイミド、ポリエーテル、ポリ(グリセリルセバケート)、ポリ(プロピレンフマレート)、エポキシ樹脂、ポリウレタン、レーヨン、レーヨン−トリアセテート、セルロースアセテート、セルロースブチレート、セルロースアセテートブチレート、セロハン、硝酸セルロース、セルロースプロピオネート、セルロースエーテル、カルボキシメチルセルロース、ポリエーテル、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、コポリ(エーテルエステル)、コポリ(エチレンオキシド−co−乳酸)(PEO/PLA)、ポリアルキレンオキシド、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、ポリアルキレンオキサレート、ホスホリルコリン、コリン、ポリ(アスピリン)、ヒドロキシルを含有するモノマーのポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)のポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)のポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシプロピルメタクリルアミドのポリマーおよびコポリマー、PEGアクリレート(PEGA)のポリマーおよびコポリマー、PEGメタクリレートのポリマーおよびコポリマー、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)のポリマーおよびコポリマー、n−ビニルピロリドン(VP)のポリマーおよびコポリマー、カルボン酸を含有するモノマーのポリマーおよびコポリマー、メタクリル酸(MA)のポリマーおよびコポリマー、アクリル酸(AA)のポリマーおよびコポリマー、アルコキシメタクリレートのポリマーおよびコポリマー、アルコキシアクリレートのポリマーおよびコポリマー、3−トリメチルシリルプロピルメタクリレート(TMSPMA)のポリマーおよびコポリマー、ポリ(スチレン−イソプレン−スチレン)−PEG(SIS−PEG)、ポリスチレン−PEG、ポリイソブチレン−PEG、ポリカプロラクトン−PEG(PCL−PEG)、PLA−PEG、ポリ(メチルメタクリレート)−PEG(PMMA−PEG)、ポリジメチルシロキサン−co−PEG(PDMS−PEG)、ポリ(フッ化ビニリデン)−PEG(PVDF−PEG)、PLURONIC(商標)界面活性剤(ポリプロピレンオキシド−co−ポリエチレングリコール)、ポリ(テトラメチレングリコール)、ヒドロキシ官能性ポリ(ビニルピロリドン)、バイオ分子、コラーゲン、キトサン、アルギネート、フィブリン、フィブリノゲン、セルロース、スターチ、コラーゲン、デキストラン、デキストリン、ヒアルロン酸の断片および誘導体、ヘパリン、ヘパリンの断片および誘導体、グリコサミノグリカン(GAG)、GAG誘導体、多糖類、エラスチン、キトサン、アルギネート、ならびにそれらの組合せからなる群から選択される、請求項9に記載のポリマーブレンド。
【請求項11】
請求項1に記載の生体適合性ポリマーを含む生体適合性コーティングをその上に有する埋込型装具。
【請求項12】
請求項2に記載の生体適合性ポリマーを含む生体適合性コーティングをその上に有する埋込型装具。
【請求項13】
請求項3に記載の生体適合性ポリマーを含む生体適合性コーティングをその上に有する埋込型装具。
【請求項14】
請求項4に記載の生体適合性ポリマーを含む生体適合性コーティングをその上に有する埋込型装具。
【請求項15】
請求項5に記載の生体適合性ポリマーを含む生体適合性コーティングをその上に有する埋込型装具。
【請求項16】
請求項6に記載の生体適合性ポリマーを含む生体適合性コーティングをその上に有する埋込型装具。
【請求項17】
請求項7に記載の生体適合性ポリマーブレンドを含む生体適合性コーティングをその上に有する埋込型装具。
【請求項18】
請求項10に記載の生体適合性ポリマーブレンドを含む生体適合性コーティングをその上に有する埋込型装具。
【請求項19】
前記コーティングがさらに生理活性剤を含む薬物送達ステントである、請求項13に記載の埋込型装具。
【請求項20】
前記生理活性剤が、パクリタキセル、ドセタキセル、エストラジオール、一酸化窒素供与体、スーパーオキシドジスムターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ模倣剤、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4−アミノ−TEMPO)、タクロリムス、デキサメタゾン、ラパマイシン、ラパマイシン誘導体、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン(エベロリムス)、40−O−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシン、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシン、および40−O−テトラゾール−ラパマイシン、ABT−578、クロベタゾール、それらのプロドラッグ、それらの補助薬、ならびにそれらの組合せからなる群から選択される、請求項19に記載の薬物送達ステント。
【請求項21】
請求項1に記載の組成物を含む材料から形成されるステント。
【請求項22】
請求項3に記載の組成物を含む材料から形成されるステント。
【請求項23】
請求項10に記載の組成物を含む材料から形成されるステント。
【請求項24】
さらに生理活性剤を含む請求項23に記載のステント。
【請求項25】
請求項13に記載の埋込型装具を患者に埋め込むステップを含む、患者の疾患を治療する方法であって、
前記疾患が、アテローム硬化症、血栓症、再狭窄、出血、血管解離または穿孔、血管動脈瘤、不安定プラーク、慢性完全閉塞、跛行、静脈および人工移植片に対する吻合部増殖、胆管閉塞、尿管閉塞、腫瘍閉塞、ならびにそれらの組合せからなる群から選択される方法。
【請求項26】
請求項20に記載の埋込型装具を患者に埋め込むステップを含む、患者の疾患を治療する方法であって、
前記疾患が、アテローム硬化症、血栓症、再狭窄、出血、血管解離または穿孔、血管動脈瘤、不安定プラーク、慢性完全閉塞、跛行、静脈および人工移植片に対する吻合部増殖、胆管閉塞、尿管閉塞、腫瘍閉塞、ならびにそれらの組合せからなる群から選択される方法。


【公表番号】特表2008−525588(P2008−525588A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−548361(P2007−548361)
【出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【国際出願番号】PCT/US2005/045982
【国際公開番号】WO2006/069010
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(307020763)アボット・カーディオヴァスキュラー・システムズ・インコーポレーテッド (10)
【Fターム(参考)】