説明

フッ素樹脂塗膜

【課題】 すぐれた耐磨耗性を維持しながら、耐浸透性が改善されたフッ素樹脂塗膜、およびそれを有する物品を提供すること
【解決手段】 基材上に形成される少なくとも2層からなるフッ素樹脂塗膜であって、少なくとも1層が新モース硬度7以上の充填材及びテトラフルオロエチレン・パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体からなる層であって、該層の直下の層がテトラフルオロエチレン・パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体からなる層であることを特徴とするフッ素樹脂塗膜、およびそれを有する物品を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素樹脂塗膜および該塗膜を有する物品に関する。さらに詳しくは、すぐれた耐磨耗性を維持しながら、耐浸透性が改善されたフッ素樹脂塗膜および該塗膜を有する物品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、アルミニウム等の金属基材にフッ素樹脂コーティングを行う場合、基材上にプライマーを塗装し、さらにその上層にフッ素樹脂のみからなるトップコーティング層を塗装した2層からなるコーティング膜の例がある。しかし、フッ素樹脂コーティングは、フッ素樹脂より硬度が高い物質と接触を繰り返すことでコーティング膜が磨耗してしまう。これを防ぐため、一般的にマイカなど充填材をトップコーティング層に含有させ、耐摩耗性を上げることが行われている。
【0003】
フッ素樹脂コーティング層の耐磨耗性を改善するために、特公平3−14194号公報では、新モース硬度が8以上の無機粉体をフッ素樹脂に添加することが提案されている。また、特開平7−67784号公報では、トップコーティング層に、ダイヤモンド超々微粒子を分散させることで、フッ素樹脂膜に十分な硬さを持たせる方法も提案されている。
しかしながら、これらの提案ではフッ素樹脂中に充填材を含有させることで、熱や水分などが浸入しやすくなり、基材の腐食や、基材とプライマー層又はプライマー層とトップコーティング層もしくはプライマー層内部での剥離が生じるという問題があった。
【特許文献1】特公平3−14194号公報
【特許文献2】特開平7−67784号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、耐磨耗性を持たせたフッ素樹脂膜においても、改善された耐浸透性を有するフッ素樹脂塗膜を得る技術の開発に鋭意注力した結果、本発明に到達したのである。
すなわち、本発明は、すぐれた耐磨耗性を維持しながら、耐浸透性が改善されたフッ素樹脂塗膜を提供することを目的とする。
本発明はさらに、このようなすぐれた耐磨耗性と耐浸透性を有するフッ素樹脂塗膜を有する物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、基材上に形成される少なくとも2層からなるフッ素樹脂塗膜であって、少なくとも1層が新モース硬度7以上の充填材及びテトラフルオロエチレン・パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体からなる層であり、該層の直下の層がテトラフルオロエチレン・パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体からなる層であるフッ素樹脂塗膜を提供する。
【0006】
新モース硬度7以上の充填材が、ダイヤモンド粉末、コランダム粉、ケイ石粉、窒化ホウ素、炭化ホウ素、炭化ケイ素、アルミナ、シリカ粉、及びマイカ粉から選ばれる少なくとも1種である前記フッ素樹脂塗膜は本発明の好ましい態様である。
【0007】
前記基材上に形成されるフッ素樹脂塗膜が、プライマー層を介して該基材上に形成されものである前記フッ素樹脂塗膜は本発明の好ましい態様である。
【0008】
前記プライマー層が、フッ素樹脂を含むものである前記フッ素樹脂塗膜は本発明の好ましい態様である。
【0009】
本発明はまた、前記したフッ素樹脂塗膜を有する物品を提供する。
前記物品が調理用器具である態様は、本発明の好ましい態様である。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、すぐれた耐磨耗性を維持しながら、耐浸透性が改善されたフッ素樹脂塗膜が提供される。
本発明により、ブリスター(ふくれ)や塗膜剥離が発生し難く、かつ塗膜表面に充填材が均一に分散した膜が得られるため、塗膜の硬さが向上し、耐浸透性と耐磨耗性を同時に有するフッ素樹脂塗膜が提供される。
【0011】
本発明のフッ素樹脂塗膜は、すぐれた耐磨耗性を維持しながら、耐浸透性が改善されたフッ素樹脂塗膜であるので、本発明によって提供されるフッ素樹脂塗膜を有する物品はすぐれた耐久性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、基材上に形成される少なくとも2層からなるフッ素樹脂塗膜であって、少なくとも1層が新モース硬度7以上の充填材及びテトラフルオロエチレン・パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体からなる層であり、該層の直下の層がテトラフルオロエチレン・パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体からなる層であるフッ素樹脂塗膜を提供するものである。本発明は、また該フッ素樹脂塗膜を有する器具も提供する。
【0013】
本発明のフッ素樹脂塗膜は、少なくとも2層からなるフッ素樹脂塗膜であり、少なくともその1層が新モース硬度7以上の充填材及びテトラフルオロエチレン・パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(以下PFA樹脂と呼ぶことがある)からなる層である。
【0014】
PFA樹脂には、本発明の目的を損なわない限り、他のフッ素樹脂を混合して使用してもよい。このような他のフッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などを挙げることができる。
【0015】
PFA樹脂に新モース硬度7以上の充填材を混合した層は、フッ素樹脂の本来の非粘着性を維持しながら、すぐれた耐磨耗性を示す層となるので、フッ素樹脂コーティングのトップコート層に好適な層である。
【0016】
本発明で使用される新モース硬度7以上の充填材の好適な例としては、ダイヤモンド粉末、コランダム粉、ケイ石粉、窒化ホウ素、炭化ホウ素、炭化ケイ素、シリカ粉、及びマイカ粉、クリソベリル、トパーズ、ベリル、ガーネット、石英、ざくろ石、溶融ジルコニア、炭化タンタル、チタンカーバイド、アルミナ、タングステンカーバイド、などの粉を挙げることができる。
【0017】
中でもダイヤモンド粉末、コランダム粉、ケイ石粉、窒化ホウ素、炭化ホウ素、炭化ケイ素、アルミナ、シリカ粉、及びマイカ粉などがより好ましく使用され、特にはダイヤモンド粉末の使用が好ましい。これらの充填材は1種で使用してもいいし、2種以上を混合して使用することもできる。
【0018】
新モース硬度7以上の充填材の粒径にはとくには制限がないが、最大粒径が200μm以下、好ましくは100μm以下であれば好適に使用することができる。
【0019】
本発明のフッ素樹脂塗膜では、上記のPFA樹脂に新モース硬度7以上の充填材を混合した層の直下の層がPFA樹脂からなる層である。中間コート層がPFAからなる層であった場合には、比較的軟らかい中間コート層がクッションとなり、外部からの圧力や擦傷力を軽減して、塗膜表面の摩滅を抑制する効果があるため、耐磨耗性がより向上する。
【0020】
フッ素樹脂中に充填材を含有させた被覆層では、水蒸気などが樹脂と充填材との界面などを通って浸透してくるので、それが基材を腐食させたり、プライマーと反応したりするために、長期使用の結果塗膜に膨れが生じるブリスターの発生や塗膜剥離が生じて塗膜寿命を縮めると考えられている。
【0021】
本発明のフッ素樹脂塗膜では、このような水蒸気などの浸透に対してはすぐれた耐浸透性を示し、その結果耐水性にすぐれたフッ素樹脂塗膜となる。本発明のフッ素樹脂塗膜は、この特長によってもフッ素樹脂塗膜の長期使用を可能とするのである。
【0022】
このようなPFA樹脂からなる中間コート層には、テトラフルオロエチレンのホモポリマー(PTFE)、及び/又は1重量%未満程度の微量のヘキサフルオロプロピレン(HFP)、フルオロアルコキシトリフルオロエチレン、フルオロアルキルエチレン、クロロトリフルオロエチレン等の変性剤を含有する変性PTFEを含有してもよい。一般に、耐浸透性は塗膜の結晶化度が高くなるほど改善されることが知られており、中間コート層がPTFE及び/又は変性PTFEを含有する場合には、中間コート層の平均球晶径が減少し結晶化度を高くすることができ、中間コート層として本発明のフッ素樹脂塗膜の耐浸透性により大きく貢献することになる。よって、中間コート層が上記PTFE及び/又は変性PTFEを含有することは、本発明の好ましい態様である。
【0023】
中間コート層に含有される上記PTFE及び/又は変性PTFEは、例えば、「モールディングパウダー」や「ファインパウダー」等のPTFEの放射線照射分解や熱分解、或いは連鎖移動剤の存在下におけるTFEの重合等により得ることができる。上記PTFE及び/又は変性PTFEは、通常平均粒径20μm以下の粉末として入手することができる。
【0024】
このようなPTFE及び/または変性PTFEは、通常、中間コート層のPFAとの合計量に対して0.001重量%以上、好ましくは、0.01重量%以上含有されることが望ましい。また、PTFE及び/または変性PTFEはフッ素樹脂であるため、PFA樹脂との馴染みがよく、水蒸気などが樹脂間の界面などを通って浸透し難い。
PTFE及び/または変性PTFEは、通常PFAとの合計量に対して0.001重量%以上、好ましくは、0.01重量%以上含有されることが望ましい。
【0025】
また本発明のフッ素樹脂塗膜に特に非粘着性が要求される場合には、トップコート層に含まれる新モース硬度7以上の充填材は、フッ素樹脂によりマイクロカプセル化することで、充填材の塗膜表面への露出を抑制でき、目的とする非粘着性が保持されたフッ素樹脂塗膜を構成することができる。とくにマイクロカプセル化したダイヤモンドパウダーが、この目的に好適に使用される。
【0026】
基材とフッ素塗料との密着性を高めるために、通常下塗りとしてプライマーが基材に塗布される。プライマーとしては、フッ素樹脂塗膜の形成のときに使用されてきた従来公知のプライマーから適宜選択して使用することができる。
【0027】
プライマーとして、フッ素樹脂を含むもの、とくにはPFA樹脂を含むものを使用すると、中間コート層となるPFA樹脂からなる層との密着力がより高くなるので、本発明の好ましい態様である。
【0028】
本発明のフッ素樹脂塗膜を形成させる好適な例として、フッ素樹脂塗料と基材との密着性を高めるために下塗りとしてプライマーを塗布した後、乾燥させ、続いて中間層コート用のフッ素樹脂粉末塗料を塗布して焼成処理することによって中間コートを塗装し、さらにその上にトップコート用粉末塗料を塗布して焼成処理する態様を挙げることができる。
【0029】
このようにして本発明のフッ素樹脂塗膜を各種物品の表面に形成させることができる。
得られる本発明のフッ素樹脂塗膜は、すぐれた耐磨耗性を維持しながら、耐浸透性が改善されたフッ素樹脂塗膜であるので、本発明のフッ素樹脂塗膜を有する物品はすぐれた耐久性を有する。
【0030】
本発明のフッ素樹脂塗膜は、器具とくには調理用器具に適用したときに、特にその特徴を発揮するので、本発明のフッ素樹脂塗膜を有する調理用器具は、好適な本発明のフッ素樹脂塗膜の適用例である。
【0031】
たとえば、炊飯器やグリルパンなどの加熱調理器に本発明のフッ素樹脂塗膜を適用した場合、従来の調理器に比べてはるかに硬く、かつ耐磨耗性にすぐれたトップコート表面を形成することができるので、金属製のへらを使用しても、この表面が簡単に剥がれたり傷付いたりすることなく、また長期にわたり被調理物に対する非粘着性を確保することができるとともに、使用中の調味料などを含んだ水分の浸透によるブリスターの発生や塗膜剥離が生じにくいので、快適に長期間使用することができる調理器となる。
【実施例】
【0032】
以下に実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら制限されるものではない。
なお、本発明の物性を測定する方法について、以下に記載する。
【0033】
(1)新モース硬度
各充填材の新モース硬度については、文献に記載されている物質リスト、さらに、各充填材のMSDSを基に、硬度を判定した。
(2)平均粒径
各充填材の平均粒径は、マイクロトラックMT3000(日機装株式会社製)を用いて、湿式レーザー回折・散乱法(湿式)により粒度分布を測定し、50%径の数値を平均粒径とした。
(3)最大粒径
各充填材の最大粒径は、マイクロトラックMT3000(日機装株式会社製)を用いて、湿式レーザー回折・散乱法により粒度分布を測定し、分布表における100%の数値を最大粒径とした。
【0034】
(実施例1および2)
1.粉体塗料
中間コート用粉体塗料として、PFA粉体塗料MP−102(三井・デュポンフロロケミカル株式会社製)を用いた。
トップコート用粉体塗料として、PFA粉体塗料MP−102を主成分とし、平均粒径が3μmのダイヤモンドミクロンパウダー(ダイヤモンドイノベーション製 UF−445)を、重量比が99:1の割合になるように混合した粉体を得た。
【0035】
2.試験板の作成
上記粉体塗料を使用して、下記の手順で試験板を作成した。
基材として純アルミニウム板(A−1100)を用い、その表面をイソプロピルアルコールで脱脂した後、サンドブラストにより表面を十分に粗面化した。続いてエアーブローにより表面のダストを除去した後、PFA樹脂を含み耐食性が良好な水性プライマーPR−915AL(三井・デュポンフロロケミカル株式会社製)を、乾燥後の膜厚が表1記載の厚みとなるように塗布した。
これを約120℃で10分間、熱風乾燥した後、中間コート用粉末塗料を焼成後の膜厚が表1記載の厚みとなるように塗布して、中間コートを塗装した。
続けて中間コートの上にトップコート用粉末塗料を塗布して、400℃で20分間焼成して、トップコートを塗装した。トップコートの膜厚は表1記載の厚みとなるように調整した。
【0036】
3.物性試験
得られた試験板について、下記の試験法によって、耐浸透性の尺度となる耐食性、および耐磨耗性を評価した。
結果を表1に示した。
【0037】
4.試験法
耐食性
試験板を、まず170℃で0.7メガパスカルの水蒸気中に50時間放置した後、常温までゆっくり冷却した。その後おでんの素(エスビー食品製)20gを水1リットルに溶解した溶液中に、試験板を浸漬し、90℃に保温して、ブリスターの発生状況、腐食の有無など塗膜の外観を1週間毎に観察し、下記の基準に基づいて評価した。
結果を表1に示す。
5:4週間後において、目視によるブリスター、腐食がなく、外観良好
4:4週間後において、目視による2mm未満のブリスターが3個以内
3:4週間後において、目視による2mm以上のブリスターが発生
2:3週間後において、目視によるブリスター、腐食が発生
1:2週間以内に、目視によるブリスター、腐食が発生
【0038】
耐磨耗性
スラスト式摩擦磨耗試験方法(JIS K-7218に準拠)で評価した。
試験機は、株式会社オリエンテック製のEFM―III―ENを用いた。相手材円筒は、外径がφ25.6、内径がφ20.0、断面積が2cmの鋳鉄の金属筒を用いた。
常温にて耐磨耗試験片と相手材円筒を接触させ、500mm/secのすべり速度で2分間、荷重ゼロで回転させた後、10kgfの荷重で10分間回転させた後の磨耗減量を測定した。
【0039】
(実施例3および4)
実施例1において、トップコート用粉体塗料として、PFA粉体塗料MP−102と新モース硬度が7のガラスフレークを重量比が99:1の割合になるように混合した粉体を用いるほかは同様にして、表1に示す層厚を有する試験板を作成した。
得られた試験板について、実施例1と同様にして物性試験を行った。結果を表1に示した。
【0040】
(実施例5)
実施例1において、中間コート用粉体塗料として、PFA粉体塗料MP−102(三井・デュポンフロロケミカル株式会社製)に、PTFE TLP−6(三井・デュポンフロロケミカル社製)を、重量比が99:1の割合になるように混合した粉体を用い、トップコート用粉体塗料として、PFA粉体塗料MP−102(三井・デュポンフロロケミカル株式会社製)に、平均粒径が3μmのダイヤモンドミクロンパウダー(ダイヤモンドイノベーション製 UF−445)を、重量比が99:1の割合になるように混合した粉体を用いるほかは同様にして、表1に示す層厚を有する試験板を作成した。
得られた試験板について、実施例1と同様にして物性試験を行った。結果を表1に示した。
【0041】
(実施例6)
実施例1において、中間コート用粉体塗料として、PFA粉体塗料MP−102(三井・デュポンフロロケミカル株式会社製)に、PTFE添加材TLP−6を、重量比が99:1の割合になるように混合した粉体を用い、トップコート用粉体塗料として、PFA粉体塗料MP−102に、新モース硬度が7のガラスフレークを、重量比が99:1の割合になるように混合した粉体を用いるほかは同様にして、表1に示す層厚を有する試験板を作成した。
得られた試験板について、実施例1と同様にして物性試験を行った。結果を表1に示した。
【0042】
(比較例1)
実施例1において、一層コート用粉体塗料として、PFA粉体塗料MP−102(三井・デュポンフロロケミカル株式会社製)を用い、中間コートを省略するほかは同様にして、表1に示す層厚を有する試験板を作成した。
得られた試験板について、実施例1と同様にして物性試験を行った。結果を表1に示した。
【0043】
(比較例2)
実施例1において、中間コート用粉体塗料として、PFA粉体塗料MP−102(三井・デュポンフロロケミカル株式会社製)に、平均粒径が3μmのダイヤモンドミクロンパウダー(ダイヤモンドイノベーション製 UF−445)を、重量比が99:1の割合になるように混合した粉体を用い、トップコート用粉体塗料として、PFA粉体塗料MP−102を用いるほかは同様にして、表1に示す層厚を有する試験板を作成した。
得られた試験板について、実施例1と同様にして物性試験を行った。結果を表1に示した。
【0044】
(比較例3)
実施例1において、中間コート用粉体塗料として、PFA粉体塗料MP−102(三井・デュポンフロロケミカル株式会社製)に、平均粒径が40μmの鱗片形状マイカ(メルク製 イリオジン153)を、重量比が99:1の割合になるように混合した粉体を用い、トップコート用粉体塗料として、PFA粉体塗料MP−102を用いるほかは同様にして、表1に示す層厚を有する試験板を作成した。
得られた試験板について、実施例1と同様にして物性試験を行った。結果を表1に示した。
【0045】
(比較例4)
実施例1において、中間コート用粉体塗料として、PFA粉体塗料MP−102(三井・デュポンフロロケミカル株式会社製)に、平均粒径が40μmの鱗片形状マイカ(メルク製 イリオジン153)を、重量比が99:1の割合になるように混合した粉体を用い、トップコート用粉体塗料として、PFA粉体塗料MP−102を主成分とし、平均粒径が3μmのダイヤモンドミクロンパウダー(ダイヤモンドイノベーション製 UF−445)を、重量比が99:1の割合になるように混合した粉体を用いるほかは同様にして、表1に示す層厚を有する試験板を作成した。
得られた試験板について、実施例1と同様にして物性試験を行った。結果を表1に示した。
【0046】
(比較例5)
実施例1において、一層コート用粉体塗料として、PFA粉体塗料MP−102(三井・デュポンフロロケミカル株式会社製)に、新モース硬度が7のガラスフレークを重量比の重量比が99:1の割合になるように混合した粉体を用い、中間コートを省略するほかは同様にして、表1に示す層厚を有する試験板を作成した。
得られた試験板について、実施例1と同様にして物性試験を行った。結果を表1に示した。
【0047】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明により提供されるフッ素樹脂塗膜は、すぐれた耐磨耗性を維持しながら、耐浸透性が改善されたが提供されたフッ素素樹脂塗膜である。
本発明により提供されるフッ素樹脂塗膜は、ブリスター(ふくれ)や塗膜剥離が発生し難く、かつ塗膜表面に充填材が均一に分散した膜が得られるため、塗膜の硬さが向上し、耐浸透性と耐磨耗性を同時に有するフッ素樹脂塗膜である。
【0049】
本発明のフッ素樹脂塗膜は、すぐれた耐磨耗性を維持しながら、耐浸透性が改善されたフッ素樹脂塗膜であるので、器具の表面に形成させることによって、すぐれた耐久性を有する物品を提供することができる。
本発明のフッ素樹脂塗膜を有する物品はすぐれた耐久性を有するので、調理用器具に好適に適用しうるものである。
本発明によれば、耐磨耗性を維持しながら、耐浸透性が改善されたフッ素樹脂塗膜を有する、すぐれた耐久性を持つ調理用器具が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に形成される少なくとも2層からなるフッ素樹脂塗膜であって、少なくとも1層が新モース硬度7以上の充填材及びテトラフルオロエチレン・パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体からなる層であり、該層の直下の層がテトラフルオロエチレン・パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体からなる層であるフッ素樹脂塗膜。
【請求項2】
新モース硬度7以上の充填材が、ダイヤモンド粉末、コランダム粉、ケイ石粉、人造ダイヤ粉、窒化ホウ素、炭化ホウ素、炭化ケイ素、融解アルミナ、シリカ粉、及びマイカ粉から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載のフッ素樹脂塗膜。
【請求項3】
前記基材上に形成されるフッ素樹脂塗膜が、プライマー層を介して該基材上に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のフッ素樹脂塗膜。
【請求項4】
前記プライマー層が、フッ素樹脂を含むものであることを特徴とする請求項3に記載のフッ素樹脂塗膜。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のフッ素樹脂塗膜を有する物品。
【請求項6】
前記物品が調理用器具である請求項5に記載の物品。

【公開番号】特開2006−297685(P2006−297685A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−120460(P2005−120460)
【出願日】平成17年4月19日(2005.4.19)
【出願人】(000174851)三井・デュポンフロロケミカル株式会社 (59)
【Fターム(参考)】