説明

フルオロシリコーンおよび含フッ素含ケイ素表面処理剤

ビニル官能性オルガノポリシロキサンと、含フッ素単量体とのフルオロシリコーン反応生成物、および、そのようなフルオロシリコーンの製造方法が開示されている。本発明のフルオロシリコーン製造物は、撥油性を繊維製品に付与するために、繊維製品などの基材(特に、布)に適用するために好適である。本発明のフルオロシリコーン反応生成物は、(A)式:CH=C(X)COOYRfで示される含フッ素単量体、および、(B)ビニル官能性オルガノポリシロキサンから製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビニル官能性オルガノポリシロキサンおよび含フッ素単量体からなるフルオロシリコーン反応生成物、ならびに、そのようなフルオロシリコーンの製造方法に関する。本発明のフルオロシリコーン製造物は、繊維製品(特に、布)などの基材に適用して、撥油性(疎油性)を繊維製品に付与するために好適である。
【0002】
本発明のフルオロシリコーン反応生成物(すなわち、フッ素およびケイ素を含有する重合体)は、優れた撥水撥油性、防汚性および感触(風合い)を繊維製品などの基材に付与する表面処理剤のために有用である。
【背景技術】
【0003】
様々なフルオロカーボンポリマーが、疎油性/撥油性を布に付与するために繊維産業で広く使用されている。例えば、米国特許第5247008号には、アクリル酸またはメタクリル酸のパーフルオロアルキルエステルと、アクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステルと、アクリル酸またはメタクリル酸のアミノアルキルエステルとの共重合体の水性分散物である、繊維製品、皮革、紙および鉱物基材のための仕上げ剤が記載されている。
【0004】
米国特許第5068295号には、アクリル酸またはメタクリル酸のパーフルオロアルキルエステルと、ビニル基を含有するポリ有機シロキサンと、イソシアネート基またはブロックイソシアネート基を含有するビニル単量体との共重合体を含む撥水撥油剤が記載されている。
【0005】
米国特許第6582620号および米国特許第5883185号には、(A)フッ素化アルキルを有するアルコキシシランと、(B)アミノを有するアルコキシシランと、(C)アルコキシシリルを有するポリ有機シロキサンとの共加水分解および縮合によって得られる、繊維製品を撥水性および撥油性にするための繊維製品用の処理用組成物が記載されている。
【0006】
米国特許第5536304号には、繊維製品に撥油性を与えるために、コハク酸無水物を末端に有するポリジメチルシロキサンと、ポリ(メタクリル酸フルオロアルキル)との配合物を綿に適用することが記載されている。
米国特許第6472019号には、繊維製品を、含フッ素重合体および硫酸化脂肪酸化合物を含んでなる撥水撥油剤で処理することが記載され、国際特許出願公開WO2004/069935および同WO2004/069955には、繊維製品を処理するための水性分散物として供給される含フッ素重合体が記載されている。
【0007】
フルオロカーボンポリマーを用いて製造された局所的仕上げ剤の大きな欠点の1つが、そのような仕上げ剤は、ざらざらした風合いを布表面に与えることである。ざらざらした風合いを布表面に与えることなく、疎油性および撥油性を布に付与し、また、好ましくは、一方で、処理されていない布と比較して、風合いにおける改善を同時にもたらす繊維製品処理剤が求められている。
従来、撥水撥油性および柔らかさの両方を繊維製品などの基材に与えるために、撥水撥油性を与えるパーフルオロアルキル基と、柔らかさを与えるシリコーン化合物とを含む撥水撥油性の組成物が広範囲に使用されている。例えば、特開昭58−42682、特開昭60−190408、特開昭63−075082、特開平09−143877および米国特許第4070152を参照できる。
【0008】
例えば、含フッ素アクリレート単量体と、シリコーンアクリレート単量体との共重合体を同じ目的のために使用する方法がある(例えば、特開平02−214791および特開平03−231986)。しかしながら、この方法では、撥水撥油性が低下するという問題がある。
【0009】
ところで、従来の表面処理剤として使用されるフルオロアクリレートポリマーは、充分な撥水撥油性を与えるためにフルオロアルキル基の炭素数が8以上であることが必要である。前記のフルオロアクリレートポリマーは大きい疎水性を有するので、乳化重合の場合には、使用される乳化剤の量が大きくなることが避けられないこと、乳化剤の種類が限定されるという問題、および、別の非フッ素単量体との相溶性が悪いために、補助溶剤を使用しなければならないことが避けられないことが存在する。溶液重合の場合には、重合溶媒への溶解性が同じ理由から低下するという問題が存在する。
【0010】
これまでの種々の研究結果は、表面処理剤(特に、撥水撥油剤)の繊維への実用処理では、その表面特性として、静的な接触角ではなく、動的接触角、特に後退接触角が重要であることを示している。すなわち、水の前進接触角はフルオロアルキル基の側鎖炭素数に依存しないが、水の後退接触角は、側鎖の炭素数8以上に比較して7以下では著しく小さくなることを示している。これと対応してX線解析は、側鎖の炭素数が7以上では側鎖の結晶化が起こることを示している。実用的な撥水性が側鎖の結晶性と相関関係を有していること、および表面処理剤分子の運動性が実用性能発現の重要な要因であることが知られている(例えば、前川隆茂、ファインケミカル、Vol23,No.6,P12(1994))。したがって、側鎖の炭素数が7以下(特に、6以下)と短いフルオロアルキル基をもつアクリレート系ポリマーでは側鎖の結晶性が低いため実用性能(特に撥水性)を満足しないと考えられていた。
【0011】
従来、α位がフッ素、塩素等で置換されている含フッ素アクリレート系ポリマーは基材等への接着性が良好で膜強度も強靭で撥水撥油性が良好であるなど優れた特性をもつということが知られている(特開昭63-90588、特開昭63-99285および特開平1-315471)。これら公報においても、実施例において使用されているフルオロアルキル基の炭素数は8以上であり、6以下の炭素数のフルオロアルキル基を有するアクリレート系単量体を用いるということは考えられていない。
【0012】
炭素数4以下のフルオロアルキル基を有し、α位がフッ素または塩素などで置換されている含フッ素アクリレートポリマーを使用することが提案されている(例えば、国際特許出願公開WO2004−096939)。しかしながら、そのポリマー薄膜は強いので、処理された繊維製品の風合いは問題となるほどに低下する。
良好な撥水撥油性および風合いの両方を与えるために、シリコーンポリマーを添加するか、または、含ケイ素単量体を共重合する方法が、炭素数4以下のフルオロアルキルアルキル基について提案されている(例えば、国際特許出願公開WO2004−108855)。しかしながら、シリコーンポリマー含有量の増大は撥水撥油性を問題となるほどに低下させる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、基材が撥水撥油剤により処理された場合に、優れた撥水撥油性および防汚性を基材に付与する、含フッ素アクリレート重合体を含む撥水撥油剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記の目的が、含フッ素単量体を含んでなる単量体から誘導され、ビニル官能性オルガノポリシロキサンの存在下で重合される重合体によって達成され得ることを見いだした。
【0015】
本発明は、含フッ素単量体を含む単量体から誘導された繰り返し単位を有する含フッ素重合体であって、ビニル官能性オルガノポリシロキサンが有するシリコーン残基を有する含フッ素重合体を提供する。
また、本発明は、含フッ素単量体を含んでなる単量体から誘導された繰り返し単位を有する含フッ素重合体を製造する方法であって、そのような含フッ素重合体を与えるために、前記単量体をビニル官能性オルガノポリシロキサンの存在下で重合することを含む方法を提供する。
【0016】
本発明は、
(A)(a)式:
CH=C(X)COOYRf
[式中、Xは、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
Yは直接結合または二価の有機基であり、
Rfは、炭素数1〜21のフルオロアルキル基である。]
で示される含フッ素単量体を含んでなる単量体から誘導された繰り返し単位、および
(B)ビニル官能性オルガノポリシロキサン
を有してなる含フッ素重合体を提供する。
【0017】
本発明はまた、
(A)(a)式:
CH=C(X)COOYRf
[式中、Xは、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
Yは直接結合または二価の有機基であり、
Rfは、炭素数1〜21のフルオロアルキル基である。]
で示される含フッ素単量体を含んでなる単量体を、
(B)ビニル官能性オルガノポリシロキサン
の存在下で重合することを含んでなる、含フッ素重合体を製造する方法を提供する。
【0018】
本発明の含フッ素重合体(すなわち、フルオロシリコーン製造物)は、撥油性を様々な表面に提供するために有用である。繊維製品が処理されたとき、本発明のフルオロシリコーンはまた、従来のフルオロカーボン系撥油剤処理よりも柔らかい手触りまたは風合いを提供することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、基材を処理した場合に、含フッ素アクリレート重合体を含む撥水撥油剤は、優れた撥水撥油性および防汚性を基材に付与することができる。基材が繊維製品である場合に、処理された繊維製品は良好な風合いを有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明において、含フッ素重合体を形成する単量体(A)は、
(a)含フッ素単量体、
(b)必要により存在する、架橋性単量体とは異なる非フッ素単量体、および
(c)必要により存在する、架橋性単量体
を含んでなる。
【0021】
含フッ素重合体は、1種類の単量体から形成される単独重合体、または、2種類以上の単量体から形成される共重合体であってよい。
単独重合体は、含フッ素単量体(a)から誘導された繰り返し単位を有する。共重合体は、2種類以上の含フッ素単量体(a)から誘導された繰り返し単位を有してよく、または、含フッ素単量体(a)から誘導された繰り返し単位に加えて、非フッ素単量体(b)と、必要により、架橋性単量体(c)とから誘導された繰り返し単位を有してよい。
【0022】
含フッ素重合体は、単量体(A)をビニル官能性オルガノポリシロキサン(B)の存在下で重合することによって製造することができる。
【0023】
本発明の表面処理剤を構成する含フッ素重合体は、
(a)含フッ素単量体、および
必要により、(b)架橋性単量体とは異なる非フッ素単量体、および
必要により、(c)架橋性単量体
を含んでなる。
【0024】
(A)単量体
(a)含フッ素単量体
本発明の成分(a)は式:
CH=C(X)COO−Y−Rf
[式中、Rfは、炭素数1〜21のフルオロアルキル基であり、
Xは、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
Yは直接結合または二価の有機基である。]
で示される含フッ素単量体である。Yは、例えば、炭素数1〜20の直鎖アルキレン基または分枝状アルキレン基、例えば、式−(CH−(式中、xは1〜10である。)で示される基、あるいは、式−SON(R)R−または式−CON(R)Rで示される基(式中、Rは、炭素数1〜10のアルキル基であり、Rは、炭素数1〜10の直鎖アルキレン基または分枝状アルキレン基である。)、あるいは、式−CHCH(OR)CH−(式中、Rは、水素原子、または、炭素数1〜10のアシル基(例えば、ホルミルまたはアセチルなど)を表す。)で示される基、あるいは、式−Ar−CH−(式中、Arは、置換基を必要により有するアリーレン基である。)で示される基であってよい。Xは、例えば、H、Me(メチル基)、Cl、Br、I、F、CNおよび/またはCFであってよい。本明細書において、「Me」はメチル基を意味する。
【0025】
含フッ素単量体(a)は、式:
【化1】

[式中、Xは、水素原子、炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のアルキル基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、CFX12基(但し、X1およびX2は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である。)、シアノ基、炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基、置換または非置換のベンジル基、置換または非置換のフェニル基、
Yは、直接結合、炭素数1〜10の脂肪族基、炭素数6〜10の芳香族基または環状脂肪族基、
−CH2CH2N(R1)SO2−基(但し、R1は炭素数1〜4のアルキル基である。)または−CH2CH(OY1)CH2−基(但し、Y1は水素原子またはアセチル基である。)、
Rfは炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基である。]
で示される化合物であることが好ましい。
【0026】
含フッ素単量体のα位はハロゲン原子などで置換されていてもよい。したがって、式(I)において、Xは、炭素数2〜21の直鎖状または分岐状のアルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、CFX12基(但し、X1およびX2は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である。)、シアノ基、炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基、置換または非置換のベンジル基、置換または非置換のフェニル基であってよい。
【0027】
式(I)において、Rf基が、パーフルオロアルキル基であることが好ましい。Rf基の炭素数は、1〜21、例えば1〜6、特に1〜5、特別には1〜4である。
Yは、好ましくは、炭素数1〜10の脂肪族基、炭素数6〜10の芳香族基または環状脂肪族基、−CH2CH2N(R1)SO2−基(但し、R1は炭素数1〜4のアルキル基である。)または−CH2CH(OY1)CH2−基(但し、Y1は水素原子またはアセチル基である。)である。脂肪族基はアルキレン基(特に炭素数1〜4、例えば、1または2)であることが好ましい。芳香族基および環状脂肪族基は、置換されていてもあるいは置換されていなくてもどちらでもよい。
【0028】
含フッ素単量体(a)の例は、次のとおりである。
【化2】

【0029】
【化3】

【0030】
【化4】

【0031】
【化5】


[式中、Rfは、炭素数1〜21、例えば1〜6の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基である。]
【0032】
含フッ素単量体(a)の具体例としては以下のものが挙げられるが、これらに限定されない。
CF3(CF2)7(CH2)2OCOCH=CH2
CF3(CF2)7(CH2)2OCOC(CH3)=CH2
CF3(CF2)7(CH2)10OCOCH=CH2
CF3(CF2)7(CH2)10OCOC(CH3)=CH2
CF3(CF2)6CH2OCOCH=CH2
CF3(CF2)8CH2OCOCH=CH2
(CF3)2CF(CF2)6(CH2)2OCOCH=CH2
(CF3)2CF(CF2)8(CH2)2OCOCH=CH2
(CF3)2CF(CF2)10(CH2)2OCOCH=CH2
(CF3)2CF(CF2)6(CH2)2OCOC(CH3)=CH2
(CF3)2CF(CF2)8(CH2)2OCOC(CH3)=CH2
(CF3)2CF(CF2)10(CH2)2OCOC(CH3)=CH2
CF3(CF2)9(CH2)2OCOCH=CH2
CF3(CF2)9(CH2)2OCOC(CH3)=CH2
CF3(CF2)11(CH2)2OCOCH=CH2
CF3(CF2)11(CH2)2OCOC(CH3)=CH2
CF3(CF2)7SO2N(CH3)(CH2)2OCOCH=CH2
CF3(CF2)7SO2N(C2H5)(CH2)2OCOCH=CH2
(CF3)2CF(CF2)8CH2CH(OCOCH3)CH2OCOC(CH3)=CH2
(CF3)2CF(CF2)6CH2CH(OH)CH2OCOCH=CH2
C8F17-O-Ph-CH2OCOCH=CH2 (ここで Ph は1,4-フェニレンである。)
【0033】
C5F11-O-Ph-CH2OCOC(CH3)=CH2
C8F17-O-Ph-COOCH2CH(OH)CH2OCOC(CH3)=CH2
(CF3)2CFOCOC(CH3)=CH2
(CF3)2CF(CH2)2OCOC(CH3)=CH2
CF3(CF2)7SO2N(CH3)(CH2)2OCOC(F)=CH2
CF3(CF2)7SO2N(CH3)(CH2)2OCOC(Cl)=CH2
CF3(CF2)7SO2N(CH3)(CH2)2OCOC(Br)=CH2
CF3(CF2)7SO2N(CH3)(CH2)2OCOC(I)=CH2
CF3(CF2)7SO2N(CH3)(CH2)2OCOC(CF3)=CH2
CF3(CF2)7SO2N(CH3)(CH2)2OCOC(CN)=CH2
CF3(CF2)7SO2N(CH3)(CH2)2OCOC(C6H5)=CH2
CF3(CF2)7 (CH2)2OCOC(F)=CH2
CF3(CF2)7(CH2)2OCOC(Cl)=CH2
CF3(CF2)7 (CH2)2OCOC(Br)=CH2
CF3(CF2)7 (CH2)2OCOC(I)=CH2
CF3(CF2)7 (CH2)2OCOC(CF3)=CH2
CF3(CF2)7 (CH2)2OCOC(CN)=CH2
CF3(CF2)7 (CH2)2OCOC(C6H5)=CH2
【0034】
(b)非フッ素単量体
本発明の含フッ素重合体は、非フッ素単量体(b)から誘導された繰り返し単位を有してよい。非フッ素単量体(b)は、架橋性単量体(c)とは異なる。単量体(b)は、好ましくは、炭素−炭素二重結合を有する非フッ素単量体である。単量体(b)は、好ましくは、フッ素を含まないビニル単量体である。非フッ素単量体(b)は一般には、1つの炭素−炭素二重結合を有する化合物である。非フッ素単量体(b)の好ましい例には、例えば、エチレン、酢酸ビニル、ハロゲン化ビニル(例えば、塩化ビニルなど)、ハロゲン化ビニリデン(例えば、塩化ビニリデンなど)、アクリロニトリル、スチレン、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ビニルアルキルエーテルおよびイソプレンが含まれる。非フッ素単量体(b)はこれらの例に限定されない。非フッ素単量体(b)はハロゲン化ビニルおよび/またはハロゲン化ビニリデンを含有してよい。
【0035】
非フッ素単量体(b)は、アルキル基を有する(メタ)アクリレートエステルであってよい。アルキル基の炭素原子の数は1〜30であってよく、例えば、6〜30(例えば、10〜30)であってよい。例えば、非フッ素単量体(b)は、一般式:
CH=CACOOA
[式中、Aは、水素原子、メチル基、または、フッ素原子以外のハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子)であり、
は、C2n+1(n=1〜30)によって表されるアルキル基である。]
で示されるアクリレートであってよい。
【0036】
(c)架橋性単量体
本発明の含フッ素重合体は、架橋性単量体(c)から誘導された繰り返し単位を有していてよい。架橋性単量体(c)は、少なくとも2つの反応性基および/または炭素−炭素二重結合を有し、フッ素を含有しない化合物であってよい。架橋性単量体(c)は、少なくとも2つの炭素−炭素二重結合を有する化合物、あるいは少なくとも1つの炭素−炭素二重結合および少なくとも1つの反応性基を有する化合物であってよい。反応性基の例は、ヒドロキシル基、エポキシ基、クロロメチル基、ブロックイソシアネート基、アミノ基、カルボキシル基、などである。
【0037】
架橋性単量体(c)としては、例えば、ジアセトンアクリルアミド、(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ブタジエン、クロロプレン、グリセロール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートなどが例示されるが、これらに限定されるものでない。
【0038】
単量体(b)および/または単量体(c)を共重合させることにより、撥水撥油性や防汚性およびこれらの性能の耐クリーニング性、耐洗濯性、溶剤への溶解性、硬さ、感触などの種々の性質を必要に応じて改善することができる。
【0039】
含フッ素重合体において、含フッ素単量体(a)100重量部に対して、非フッ素単量体(b)の量が0.1〜100重量部、例えば0.1〜50重量部であり、架橋性単量体(c)の量が50重量部以下、例えば20重量部以下、特に0.1〜15重量部であってよい。
【0040】
単量体(A)をビニルオルガノポリシロキサン(B)の存在下で重合することができる。単量体(A)に含まれるオレフィン性不飽和コモノマーの例には、炭素数1〜30のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルまたはメタクリル酸アルキルエステル(例えば、アクリル酸ブチル、アクリル酸エチル、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチルまたはメタクリル酸ブチルなど)が含まれる。アクリル酸アルキルまたはメタクリル酸アルキルは、含フッ素単量体(A)およびビニル官能性オルガノポリシロキサン(B)の反応から生じる得られた製造重合体のガラス転移温度(Tg)を調節するために使用することができる;例えば、炭素数4〜20(特に、8〜20)の長鎖アルキル基を有するアクリル酸エステル(例えば、アクリル酸ステアリルまたはメタクリル酸ステアリアル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、あるいは、アクリル酸ドデシルまたはメタクリル酸ドデシルなど)を、より低いTgを有するより軟らかい重合体を形成させるために使用することができる。アクリル酸アルキル系単量体またはメタクリル酸アルキル系単量体との共重合体は様々な特性を改善することができ、例えば、撥水撥油性および汚れ脱離性、そのような撥水撥油性および汚れ脱離性のクリーニング耐久性、洗濯耐久性および耐摩耗性、溶媒に対する溶解性、硬さおよび感触(手触り)などを改善することができる。
【0041】
使用してよい他のアクリレート系コモノマーまたはメタクリレート系コモノマーには、ポリエチレングリコールアクリレートまたはポリエチレングリコールメタクリレート、プロピレングリコールアクリレートまたはプロピレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレートまたはメトキシポリエチレングリコールメタクリレート、および、メトキシプロピレングリコールアクリレートまたはメトキシプロピレングリコールメタクリレートが含まれる。使用してよい他のオレフィン性不飽和コモノマーには、塩化ビニル、塩化ビニリデン、スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エチレン、ビニルアルキルエーテル、イソプレン、または、ビニルエステル(例えば、酢酸ビニルまたはプロピオン酸ビニルなど)が含まれる。
【0042】
繊維製品および他の基材における増大した持続性(耐久性)などの特性を与えるために、アミン基との反応性を有しないが、他の官能基との反応性を有し得る官能基を含有するオレフィン性不飽和コモノマーを使用してよい。そのような官能基の例には、ヒドロキシル、アミノおよびアミドがあり、そのような官能基を含有するオレフィン性不飽和コモノマーの例には、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルまたはメタクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチルまたはメタクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、および、アクリル酸ジエチルアミノエチルまたはメタクリル酸ジエチルアミノエチルがある。
【0043】
(B)ビニル官能性オルガノポリシロキサン
本発明の成分(B)は、ビニル官能性オルガノポリシロキサン、すなわち、ビニル官能性有機基が分子に存在するオルガノポリシロキサンである。本明細書中で使用される「ビニル官能性有機基」は、−CH=CH2である。
【0044】
ビニル基含有シリコーン(B)(すなわち、ビニル官能性オルガノポリシロキサン(B))は、少なくとも1つ、(例えば、1〜500,特に2〜50)のビニル基および2つ以上のシロキサン結合を有するシリコーン残基を有するシロキサン化合物である。ビニル基含有シリコーン(B)は、連鎖移動剤として機能する。重合反応によって、ビニル基含有シリコーン(B)は、ビニル官能性有機基を介して含フッ素重合体に結合する。
【0045】
様々なオルガノポリシロキサンがこの分野では広く知られており、それらは一般式RSiO(4−n)/2によって示されることが多く、この場合、オルガノポリシロキサンは、任意の数の「M」(モノ官能性)シロキシ単位(RSiO0.5)、「D」(二官能性)シロキシ単位(RSiO)、「T」(三官能性)シロキシ単位(RSiO1.5)、または、「Q」シロキシ単位(SiO)を含んでよい(式において、Rは独立して、一価の有機基である)。これらのシロキシ単位は、環状構造、線状構造または分枝状構造を形成させるために、様々な様式で組み合わせることができる。得られるポリマー構造体の化学的性質および物理的性質は変化し得る。例えば、オルガノポリシロキサンは、揮発性または低粘度の液体、高粘度の液体/ガム、エラストマーまたはゴム、および、樹脂であり得る。Rは独立して、一価の有機基であり、あるいは、Rは、炭素数1〜30の炭化水素基であり、あるいは、Rは、炭素数1〜30のアルキル基であり、あるいは、Rはメチルである。
【0046】
本発明において成分(B)として有用なオルガノポリシロキサンは、式RSiO(4−n)/2におけるR基の少なくとも1つがビニル基であることによって、あるいは、R基の少なくとも1つがビニル基であり、R基の1つが有機官能基であることによって、あるいは、R基の1つが、ビニル基もまた含有する有機官能基であることによって特徴づけられる。有機官能基およびビニル官能基は、R置換基を有する任意のシロキシ単位に存在させることができる。すなわち、有機官能基およびビニル官能基は、任意のM単位、D単位またはT単位に存在させることができる。典型的には、有機官能基およびビニル基はDシロキシ単位におけるR置換基として存在する。
【0047】
本明細書中で使用される「有機官能基」は、任意の数の炭素原子を含有する有機基を意味し、しかし、この基は、炭素および水素とは異なる少なくとも1つの原子を含有する。そのような有機官能基の代表的な例には、少数の例を挙げると、ヒドロキシル系、アミン系、アミド系、スルホンアミド系、第四級基、エーテル系、エポキシ系、フェノール系、エステル系、カルボキシル系、ケトン系、ハロゲン置換アルキル系およびアリール系の基が含まれる。あるいは、有機官能基はアミノ官能性の有機基である。
【0048】
有機官能基がアミノ官能性の有機基であるとき、アミノ官能性の有機基は本明細書中ではRとして式において示され、式−RNHR、式−RNRまたは式−RNHRNHR(式中、それぞれのRは独立して、炭素数2以上の二価の炭化水素基であり、Rは水素またはアルキル基である。)を有する基によって例示される。それぞれのRは典型的には、炭素数2〜20のアルキレン基である。Rは、例えば、−CHCH−、−CHCHCH−、−CHCHCH−、−CHCHCHCH−、−CHCH(CH)CH−、−CHCHCHCHCH−、−CHCHCHCHCHCH−、−CHCHCH(CHCH)CHCHCH−、−CHCHCHCHCHCHCHCH−、および、−CHCHCHCHCHCHCHCHCHCH−などの基によって例示される。アルキル基Rは、Rについて上記で例示される通りである。Rがアルキル基であるとき、Rは典型的にはメチルである。
【0049】
好適なアミノ官能性炭化水素基のいくつかの例には、
−CHCHNH、−CHCHCHNH
−CHCHCHNH、−CHCHCHCHNH
−CHCHCHCHCHNH、−CHCHCHCHCHCHNH
−CHCHNHCH、−CHCHCHNHCH
−CH(CH)CHCHNHCH、−CHCHCHCHNHCH
−CHCHNHCHCHNH、−CHCHCHNHCHCHCHNH
−CHCHCHCHNHCHCHCHCHNH
−CHCHNHCHCHNHCH
−CHCHCHNHCHCHCHNHCH
−CHCHCHCHNHCHCHCHCHNHCH、および
−CHCHNHCHCHNHCHCHCHCHがある。典型的には、アミノ官能基は−CHCHCHNHである。
【0050】
ビニル官能性の有機基は本明細書中ではRとして式において示される。ビニル官能性基は、−CH=CH2である。
【0051】
好ましい実施形態において、ビニル官能性オルガノポリシロキサン(B’として示される)は、下記の平均式を有するシロキシ単位を有する:
(RSiO)(RRSiO)(RRSiO)
[式中、aは、0〜4000、あるいは、1〜1000、あるいは、2〜400であり、
bは、1〜1000、あるいは、2〜100、あるいは、3〜50であり、
cは、1〜1000、あるいは、2〜100、あるいは、3〜50であり;
それぞれのRは独立して、一価の有機基であり、
あるいは、それぞれのRは、炭素数1〜30の炭化水素であり、
あるいは、それぞれのRは、炭素数1〜12の一価アルキル基であり、
あるいは、それぞれのRはメチル基であり;
それぞれのRは、上記で定義されるような一価のアミノ官能性の有機基であり、
それぞれのRは、上記で定義されるような一価のビニル官能性の有機基である。]。
【0052】
はRであってよく、ここでRは上記のような一価の有機官能基、例えば、ヒドロキシル系、アミン系、アミド系、スルホンアミド系、第四級基、エーテル系、エポキシ系、フェノール系、エステル系、カルボキシル系、ケトン系、ハロゲン置換アルキル系およびアリール系の基であってよい。ビニル官能性オルガノポリシロキサンは、平均式:
(RSiO)(RRSiO)(RRSiO)
[式中、基および下付添字(すなわち、a、bおよびc)は、上記と同意義である。]
【0053】
オルガノポリシロキサン(B’)は、末端が水素原子であってもよく(これは、ターポリマーの末端シロキシ単位におけるシラノール基となる。)、または、炭素数1〜30のアルキル基であってもよい(これは、ターポリマーの末端シロキシ単位におけるアルコキシ基となる。)。アルキル基が使用されるとき、アルキル基は、炭素数1〜30の直鎖アルキルまたは分枝状アルキルであってよく、あるいは、アルキル基は、炭素数4〜20(あるいは、8〜20)の長鎖アルキル基(例えば、ステアリルなど)であってよい。あるいは、オルガノポリシロキサンはトリメチルシリル基を末端に有してよい。
【0054】
ビニル基含有シリコーン(B)は、例えば、式:
【化6】


[式中、R1は、メチル基、メトキシ基、フェニル基またはヒドロキシル基、
R2は、メチル基、メトキシ基、フェニル基またはヒドロキシル基、
R3は、メチル基、メトキシ基、フェニル基またはヒドロキシル基、
R'は、水素原子、炭素数1〜40のアルキル基またはMe3Si、
Aは、1または2つのエーテル結合が介在してよい炭素数1〜10の二価の飽和炭化水素基、
Bは、1または2つのエーテル結合が介在してよい炭素数1〜10の二価の飽和炭化水素基、
Cは、ヒドロキシル系、アミン系、アミド系、スルホンアミド系、第四級基、エーテル系、エポキシ系、フェノール系、エステル系、カルボキシル系、ケトン系、ハロゲン置換アルキル系またはアリール系の基、
a、 bおよびcは、繰り返し単位の数を示す整数であり、aは1〜4000、例えば2〜2000、bは1〜1000、好ましくは2〜800、cは0〜1000、好ましくは1〜800である。
【0055】
ビニル基含有シリコーン(B)の例は次のとおりである。
【化7】


[式中、R1基などの基および下付の符号は上記と同意義である。]
【0056】
官能基Cはアミノ基であることが特に好ましい(すなわち、ビニル基含有シリコーン(B)は、ビニルアミノシリコーンである。)。アミノ基は、化粧料を構成する他の物質との親和性および人体の肌との親和性を顕著に改良する効果を有する。
【0057】
この好ましい実施形態のオルガノポリシロキサン(B’)は、例えば、平均式:
【化8】

[式中、aは、0〜4000、あるいは、1〜1000、あるいは、2〜400であり、
bは、1〜1000、あるいは、2〜100、あるいは、3〜50であり、
cは、1〜1000、あるいは、2〜100、あるいは、3〜50であり;
それぞれのR’は、同一または異なって、H、炭素数1〜40のアルキル基またはMeSiである。]
で示されるものであってよい。
【0058】
この好ましい実施形態のビニルアミノ官能性オルガノポリシロキサンターポリマー(B’)は、アミノ官能基および/またはビニル官能基を含有するオルガノポリシロキサンターポリマーを製造するためにこの分野で知られている任意の技術によって製造することができる。典型的には、オルガノポリシロキサンターポリマー(B’)は、下記の一般的な反応スキームによって例示されるように、アミノ官能性アルコキシシランと、ビニル官能性シラン単量体と、アルコキシ末端またはシラノール末端を有するオルガノポリシロキサンとの縮重合反応によって製造される。
【0059】
【化9】

【0060】
オルガノポリシロキサンの縮合はこの分野では広く知られており、典型的には、強塩基(例えば、アルカリ金属水酸化物など)またはスズ化合物の添加によって触媒される。あるいは、官能基化されたシクロシロキサン化合物の共重合を使用することができる。
本発明の含フッ素重合体は2,000〜5,000,000の重量平均分子量を有していてよく、特に、3,000〜5,000,000の重量平均分子量、とりわけ、10,000〜1,000,000の重量平均分子量を有していてよい。
【0061】
含フッ素重合体は、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体またはグラフト共重合体であってよい。1つの態様において、含フッ素重合体は、幹がビニル官能性オルガノポリシロキサンを含んでなり、枝が含フッ素モノマーを含んでなるモノマーを含んでなるグラフト重合体であってよい。
【0062】
含フッ素重合体の例としては、次のものが挙げられる:
【化10】

[式中、xは1-4000であり、yは1-1000であり、zは1-1000であり、aは1〜4000であり、b, c, d および e は0〜1000である。含フッ素重合体において、繰り返し単位は化学式のとおりに配置してなくてよく、含フッ素重合体はランダム共重合体またはブロック共重合体であってよい。]
【0063】
含フッ素重合体は、塊状重合、溶液重合および乳化重合によって製造できる。
【0064】
塊状重合では、単量体とビニルシリコーンの混合物を窒素置換して、重合開始剤を添加し、混合物を30〜80℃の範囲で数時間(2〜15時間)にわたって撹拌して重合する方法が採用される。重合開始剤としては、例えばアゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、ラウリルパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、t−ブチルパーオキシピバレート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネートなどが挙げられる。重合開始剤は単量体100重量部に対して、0.01〜20重量部、例えば0.01〜10重量部の範囲で用いられる。
【0065】
溶液重合の場合、単量体とビニルシリコーンの混合物を、溶解可能でかつ不活性である適切な有機溶剤に溶解し、上記と同様に重合する。有機溶剤の例としては、炭化水素系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、アルコール系溶媒、シリコーン系溶媒および含フッ素溶媒が挙げられる。有機溶剤としては、単量体に不活性でこれらを溶解するものであり、例えば、アセトン、クロロホルム、HCHC225、イソプロピルアルコール、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、石油エーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、1,1,2,2−テトラクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、テトラクロロジフルオロエタン、トリクロロトリフルオロエタンなどが挙げられる。有機溶剤は単量体の合計100重量部に対して、50〜2000重量部、例えば、50〜1000重量部の範囲で用いられる。
【0066】
溶液重合では、重合開始剤の存在下で、単量体を有機溶剤に溶解させ、窒素置換後、30〜120℃の範囲で1〜10時間、加熱撹拌する方法が採用される。
【0067】
乳化重合の場合、適当な乳化剤を使用して単量体とビニルシリコーンの混合物を水に乳化した後、上記と同様に重合する。単量体(a)〜(c)とビニルシリコーンのいくつかの組合せにおいて、水中における単量体とビニルシリコーンの弱い相溶性は、劣った共重合性につながる。そのような場合、適当な補助溶媒、例えばグリコールとアルコールおよび/または低分子量の単量体を混合物の相溶性を高めるために加える方法を採用できる。乳化重合で使用される乳化剤における疎水性基は、炭化水素型、ケイ素含有型およびフッ素含有型のいずれでもよい。親水性基のイオン性に関しては、ノニオン性基、アニオン性基、カチオン性基および両性基のいずれかを使用できる。乳化重合用の重合開始剤は、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、t−ブチルパーベンゾエート、1−ヒドロキシシクロヘキシルヒドロ過酸化物、3−カルボキシプロピオニル過酸化物、過酸化アセチル、アゾビスイソブチルアミジン−二塩酸塩、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの水溶性のものやアゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、ラウリルパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、t−ブチルパーオキシピバレート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネートなどの油溶性のものが用いられる。重合開始剤は単量体100重量部に対して、0.01〜10重量部の範囲で用いられる。
【0068】
乳化重合では、重合開始剤および乳化剤の存在下で、単量体を水中に乳化させ、窒素置換後、例えば30〜120℃、特に50〜80℃の範囲で1〜10時間、撹拌して共重合させる方法が採用される。
【0069】
単量体が完全に相溶しない場合は、これら単量体に充分に相溶させるような相溶化剤、例えば、水溶性有機溶剤や低分子量の単量体を添加することが好ましい。相溶化剤の添加により、乳化性および共重合性を向上させることが可能である。
【0070】
水溶性有機溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、エタノールなどが挙げられ、水100重量部に対して、1〜50重量部、例えば10〜40重量部の範囲で用いてよい。また、低分子量の単量体としては、メチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレートなどが挙げられ、単量体の総量100重量部に対して、1〜50重量部、例えば10〜40重量部の範囲で用いてよい。
【0071】
乳化剤としてはアニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤あるいはノニオン性乳化剤などの各種乳化剤を用いることができ、単量体100重量部に対して、0.5〜20重量部の範囲で用いられる。乳化重合で使用する乳化剤は、炭化水素、シリコーンまたは含フッ素化合物であってよい疎水性基、そして、ノニオン性、アニオン性、カチオン性または両性であってよい親水基を有することができる。アニオン性乳化剤とノニオン性乳化剤の組合せが、エマルジョンの安定性および皮膚への安全性の両方を得るために好ましい。アニオン性乳化剤の量は、アニオン性乳化剤およびノニオン性乳化剤の合計に基づいて、5〜80重量%、好ましくは10〜60重量%であってよい。好ましくは、アニオン性乳化剤はポリオキシエチレンアルキル(好ましくはC〜C30アルキル)エーテル硫酸塩であり、ノニオン性乳化剤は脂肪酸ソルビタンエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸ソルビタンエステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油および/またはポリオキシエチレン脂肪酸ソルビットエステルである。
【0072】
高い重合体含量を有しかつ非常に微細で安定な粒子を有する共重合体水分散液を得るためには、高圧ホモジナイザーや超音波ホモジナイザーのような強力な破砕エネルギーを付与できる乳化装置を用いて、単量体とビニルシリコーンの混合物を水に分散して混合物の微粒子を調製し、次いで重合することが望ましい。
【0073】
含フッ素単量体(A)およびビニルオルガノポリシロキサン(B)のフルオロシリコーン反応生成物は、そのような単量体の重合を行うためにこの分野で知られている任意の反応方法によって製造することができる。好ましくは、フルオロシリコーンを、
I)(A)式:
CH=C(X)COOYRf
(Xは、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
Yは、直接結合、または、炭素数1〜20の二価の有機基であり、
Rfは、炭素数1〜21のフルオロアルキル基である)
で示される含フッ素単量体を含んでなる単量体を、
(B)ビニル官能性オルガノポリシロキサン
の存在下、重合反応によって、好ましくは、ラジカル重合反応によって反応することを含んでなる本発明の方法によって製造することができる。
【0074】
この方法における成分(A)および成分(B)は、上記のとおりである。
この方法はまた、極性有機溶媒の存在下で行うことができる。極性有機溶媒は、ブタノール、t−ブタノール、イソプロパノール、ブトキシエタノール、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、酢酸ブチルまたは酢酸エチルから選択される1つまたは複数のアルコール系溶媒、ケトン系溶媒またはエステル系溶媒、ならびに/または、芳香族炭化水素(例えば、キシレン、トルエンまたはトリメチルベンゼンなど)、これらの1つまたは複数の混合物であってよい。
【0075】
ラジカル重合反応のための開始剤は、ラジカル反応を開始させるための、この分野で知られている任意の化合物(例えば、有機過酸化物またはアゾ化合物など)であってよい。代表的な限定されない例として、アゾ化合物、例えば、アゾビスイソブチロニトリルまたはアゾビスイソバレロニトリル(AIVN)など、過酸化物、例えば、ベンゾイルペルオキシドなどがある。重合温度は典型的には50℃〜120℃の範囲である。
【0076】
あるいは、重合反応生成物は、すべての成分が、水、界面活性剤および重合開始剤の存在下で重合される乳化重合の技術を使用して得ることができる。
フルオロシリコーン反応生成物は、それぞれの成分(A)および成分(B)の量によって制御されるように、含フッ素単量体(A)とビニルオルガノポリシロキサン(B)の様々な比率を含有してよい。フルオロシリコーンは、5重量%〜99.9重量%(好ましくは、10重量%〜95重量%)の単量体(A)と、0.1重量%〜95重量%(好ましくは、5重量%〜90重量%)のビニル官能性オルガノポリシロキサン(B)とを含有してよい(ここで、(A)および(B)の合計(重量%)は100%に等しい)。大きい割合のビニルオルガノポリシロキサンを有するフルオロシリコーン製造物は、繊維状基材に対するより大きい持続性、または、処理された材料の手触りの柔らかさを提供することができる。大きい割合の含フッ素単量体を有する製造重合体は最大限の疎水性および疎油性を提供することができる。
【0077】
フルオロシリコーン反応生成物は一般には溶液として得られる。フルオロシリコーン反応生成物を、溶媒を蒸発させることによって単離することができる。撥油剤として適用するために、フルオロシリコーン反応生成物は一般には液体形態であることが必要であり、反応によって得られた溶液は、多くの場合、繊維製品への適用に好適な溶液に希釈することができる。あるいは、フルオロシリコーン反応生成物は、繊維製品への適用のために、異なる溶媒に、例えば、高沸点の極性有機溶媒に溶解することができる。あるいは、フルオロシリコーン反応生成物は、水および乳化剤(例えば、カチオン性界面活性剤および/またはノニオン性界面活性剤またはアニオン性界面活性剤など)と混合することによって乳化させることができる。フルオロシリコーン反応生成物は乳化前に単離することができ、または、重合生成物の溶液は、必要により溶媒の除去により乳化させることができる。生成重合体が乳化重合によって得られるならば、生成重合体を単離することなく、乳化物が一般には使用され、必要に応じて希釈される。
【0078】
フルオロシリコーン反応生成物の溶液または乳化物は、繊維製品を液体で処理するために知られている方法のいずれかによって繊維状基材(例えば、繊維製品など)に適用することができる。繊維製品に適用される溶液におけるフルオロシリコーン反応生成物の濃度は、例えば、0.5重量%〜20重量%、あるいは、1重量%〜5重量%であってよい。繊維製品が布であるときには、布を溶液に浸してよく、あるいは、布に溶液を付着または噴霧してよい。処理された繊維製品は、撥油性を発現させるために、乾燥され、好ましくは、例えば、100℃〜200℃で加熱される。
【0079】
あるいは、フルオロシリコーン反応生成物はクリーニング法によって繊維製品に適用してよく、例えば、洗濯適用またはドライクリーニング法などにおいて繊維製品に適用してよい。
処理される繊維製品は、典型的には、布であり、これには、織物、編物および不織布、衣料品形態の布およびカーペットが含まれるが、繊維または糸または中間繊維製品(例えば、スライバーまたは粗糸など)であってもよい。繊維製品材料は、天然繊維(例えば、綿または羊毛など)、化学繊維(例えば、ビスコースレーヨンまたはレオセルなど)、または、合成繊維(例えば、ポリエステル、ポリアミドまたはアクリル繊維など)であってよく、あるいは、繊維の混合物(例えば、天然繊維および合成繊維の混合物など)であってよい。本発明の製造重合体は、セルロース系繊維(例えば、綿またはレーヨンなど)を疎油性および撥油性にすることにおいて特に効果的である。また、本発明の方法は一般に、繊維製品を疎水性および撥水性にする。本発明の重合体による繊維処理は撥油性を布に付与し、一方では、同時に、処理されていない布と比較して、風合いにおける改善を付与し、また、知られているフルオロポリマー系繊維処理剤により処理された布と比較して、風合いにおける改善もまた付与する。
【0080】
あるいは、繊維状基材は皮革であってよい。製造重合体を、皮革を疎水性および疎油性にするために、皮革加工の様々な段階で、例えば、皮革の湿潤加工の期間中に、または、皮革の仕上げの期間中に、水溶液または水性乳化物から皮革に適用してよい。
あるいは、繊維状基材は紙であってもよい。製造重合体を、予め形成した紙に適用してよく、または、製紙の様々な段階で、例えば、紙の乾燥期間中に適用してもよい。
【0081】
本発明の表面処理剤は、溶液、エマルションまたはエアゾールの形態であることが好ましい。表面処理剤は、含フッ素重合体(表面処理剤の活性成分)および媒体(特に、液状媒体、例えば、有機溶媒および/または水)を含んでなる。表面処理剤において、含フッ素重合体の濃度は、例えば、0.1〜50重量%であってよい。
【0082】
本発明の表面処理剤は、従来既知の方法により被処理物に適用することができる。通常、該表面処理剤を有機溶剤または水に分散して希釈して、浸漬塗布、スプレー塗布、泡塗布などのような既知の方法により、被処理物の表面に付着させ、乾燥する方法が採られる。また、必要ならば、適当な架橋剤と共に適用し、キュアリングを行ってもよい。さらに、本発明の表面処理剤に、防虫剤、柔軟剤、抗菌剤、難燃剤、帯電防止剤、塗料定着剤、防シワ剤などを添加して併用することも可能である。基材と接触させる処理液における含フッ素化合物の濃度は0.01〜10重量%(特に、浸漬塗布の場合)、例えば0.05〜10重量%であってよい。
【0083】
本発明の表面処理剤(例えば、撥水撥油剤)で処理される被処理物としては、繊維製品が好ましい。繊維製品としては種々の例を挙げることができる。例えば、綿、麻、羊毛、絹などの動植物性天然繊維、ポリアミド、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレンなどの合成繊維、レーヨン、アセテートなどの半合成繊維、ガラス繊維、炭素繊維、アスベスト繊維などの無機繊維、あるいはこれらの混合繊維が挙げられる。
【0084】
繊維製品は、繊維、糸、布等の形態のいずれであってもよい。
【0085】
「処理」とは、処理剤を、浸漬、噴霧、塗布などにより被処理物に適用することを意味する。処理により、処理剤の有効成分である含フッ素重合体が被処理物の内部に浸透するおよび/または被処理物の表面に付着する。
【実施例】
【0086】
下記の製造例および実施例は本発明を詳しくさらに例示するが、発明の範囲を限定するものと解釈してはならない。別途示されない限り、これらの例におけるすべての部および百分率は重量に基づいており、すべての測定値は約23℃で得られた。
【0087】
1.シャワー撥水性試験(JIS−L−1092)
シャワー撥水性試験をJIS−L−1092に従って行った。シャワー撥水性試験は(下記に記載されている表1に示されるように)撥水性No.によって表された。
体積が少なくとも250mlであるガラス漏斗、および、250mlの水を20秒間〜30秒間にわたって噴霧することができるスプレーノズルを使用する。試験片フレームは、直径が15cmの金属フレームである。サイズが約20cmx20cmである3枚の試験片シートを準備し、シートを試験片ホルダーフレームに固定し、シートにしわがないようにする。噴霧の中心をシートの中心に置く。室温の水(250mL)をガラス漏斗に入れ、試験片シートに(25秒〜30秒の時間にわたって)噴霧する。保持フレームを台から取り外し、保持フレームの一方の端をつかんで、前方表面を下側にし、反対側の端を堅い物質で軽くたたく。保持フレームを180°さらに回転させ、同じ手順を繰り返して、過剰な水滴を落とす。湿った試験片を、撥水性が不良から優れた順で、0、50、70、80、90および100の評点をつけるために、湿潤比較標準物と比較する。結果を3回の測定の平均から得る。
【0088】
【表1】

【0089】
2.撥水性試験(AATCC試験法118-1992に準じる。)
処理済み試験布を温度21℃、湿度65%の恒温恒湿機に4時間以上保管する。試験液(イソプロピルアルコール(IPA)、水、およびその混合液、表2に示す。)も温度21℃で保存したものを使用する。試験は温度21℃、湿度65%の恒温恒湿室で行う。試験液を試験布上に 0.05ml静かに滴下し、30秒間放置後、液滴が試験布上に残っていれば、その試験液をパスしたものとする。撥水性は、パスした試験液のイソプロピルアルコール(IPA)含量(体積%)の最大なものをその点数とし、撥水性不良なものから良好なレベルまでFail、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、及び10の12段階で評価する。
【0090】
【表2】

【0091】
3.撥油性試験(AATCC試験法118-1992に準じる。)
処理済み試験布を温度21℃、湿度65%の恒温恒湿機に4時間以上保管する。試験液(表3に示す)も温度21℃で保存したものを使用する。試験は温度21℃、湿度65%の恒温恒湿室で行う。試験液を試験布上に 0.05ml静かに滴下し、30秒間放置後、液滴が試験布上に残っていれば、その試験液をパスしたものとする。撥油性は、パスした試験液の最高点数とし、撥油性不良なものから良好なレベルまでFail、1、2、3、4、5、6、7および8の9段階で評価する。
【0092】
【表3】

【0093】
4.撥水撥油性の洗濯耐久性
JIS L-0217-103法による洗濯を10, 20回繰り返して行い、その後の撥水撥油性を評価する(HL10, HL20)。
【0094】
5.風合い
処理されたPET布の風合いを下記の判断基準に従って手触りによって評価した。
非常に良好:処理されていない布よりも顕著に柔らかい
良好:処理されていない布と同じ柔らかさまたはそれよりも柔らかい
不良:処理されていない布よりも硬い
【0095】
6.処理液の安定性
処理のために調製された処理液の沈降物の有無を観察する。
良好:沈降物が存在しない
不良:沈降物が存在する
【0096】
ビニルアミノ官能性シロキサンの合成:
ビニルアミノシロキサン1
冷却器、上部攪拌機および熱電対を取り付けた三つ口丸底フラスコに、オクタメチルシクロテトラシロキサン(1437g)、ヘキサメチルジシロキサン(63g)、アミノプロピルメチルジエトキシシラン(41g)、2,4,6,8-テトラメチル-2,4,6,8-テトラビニルシクロテトラシロキサン(40 g) および水酸化カリウム水溶液 (4.5 g, 40% w/w)を仕込んだ。反応混合物を75℃に加熱し、この温度で6時間保ち、次いで、酢酸(4.5g)を添加した。30分後、揮発物を、170℃で90分間、減圧(5mbar)下で除いて、ビニルアミノシロキサンターポリマーを得た。
【0097】
ビニルアミノシロキサン2
冷却器、上部攪拌機および熱電対を取り付けた三つ口丸底フラスコに、オクタメチルシクロテトラシロキサン(1134g)、ヘキサメチルジシロキサン(66g)、アミノプロピルメチルジエトキシシラン(46g)、2,4,6,8-テトラメチル-2,4,6,8-テトラビニルシクロテトラシロキサン(102 g) および水酸化カリウム水溶液 (4.5 g, 40% w/w) を仕込んだ。反応混合物を75℃に加熱し、この温度で6時間保ち、次いで、酢酸(4.5g)を添加した。30分後、揮発物を、170℃で90分間、減圧(5mbar)下で除いて、ビニルアミノシロキサンターポリマーを得た。
【0098】
ビニルアミノシロキサン3
冷却器、上部攪拌機および熱電対を取り付けた三つ口丸底フラスコに、オクタメチルシクロテトラシロキサン(1129g)、ヘキサメチルジシロキサン(63g)、アミノプロピルメチルジエトキシシラン(48g)、2,4,6,8-テトラメチル-2,4,6,8-テトラビニルシクロテトラシロキサン(217 g) および水酸化カリウム水溶液 (4.5 g, 40% w/w) を仕込んだ。反応混合物を75℃に加熱し、この温度で6時間保ち、次いで、酢酸(4.5g)を添加した。30分後、揮発物を、170℃で90分間、減圧(5mbar)下で除いて、ビニルアミノシロキサンターポリマーを得た。
ビニルアミノシロキサンの物理的性質および構造的性質を下記の表に記載する:
【0099】
【表4】

【0100】
製造例1
1LオートクレーブにCF3CF2-(CF2CF2)n-CH2CH2OCOC(CH3)=CH2 (n=2.0) 184g、ステアリルアクリレート23.1g、グリセロールモノメタクリレート4.3g、グリシジルメタクリレート1.4g、ビニルアミノシロキサン1 28.4g、純水500g、トリプロピレングリコール79.4g、アルキルトリメチルアンモニウムクロリド3.7g、ソルビタンモノパルミテート4.5g、ポリオキシエチレンオレイルエーテル4.5g、ポリオキシエチレンラウリルエーテル18.0gを入れ、攪拌下に60℃で15分間、超音波で乳化分散させた。フラスコ内を窒素置換後、塩化ビニル67gを圧入充填した。さらに2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩3.6gを添加し、60℃で5時間反応させ、重合体の水性分散液を得た。
【0101】
製造例2
1LオートクレーブにCF3CF2-(CF2CF2)n-CH2CH2OCOC(CH3)=CH2 (n=2.0) 184g、ステアリルアクリレート23.1g、グリセロールモノメタクリレート4.3g、グリシジルメタクリレート1.4g、ビニルアミノシロキサン2 28.4g、純水500g、トリプロピレングリコール79.4g、アルキルトリメチルアンモニウムクロリド3.7g、ソルビタンモノパルミテート4.5g、ポリオキシエチレンオレイルエーテル4.5g、ポリオキシエチレンラウリルエーテル18.0gを入れ、攪拌下に60℃で15分間、超音波で乳化分散させた。フラスコ内を窒素置換後、塩化ビニル67gを圧入充填した。さらに2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩3.6gを添加し、60℃で5時間反応させ、重合体の水性分散液を得た。
【0102】
製造例3
1LオートクレーブにCF3CF2-(CF2CF2)n-CH2CH2OCOC(CH3)=CH2 (n=2.0) 184g、ステアリルアクリレート23.1g、グリセロールモノメタクリレート4.3g、グリシジルメタクリレート1.4g、ビニルアミノシロキサン3 28.4g、純水500g、トリプロピレングリコール79.4g、アルキルトリメチルアンモニウムクロリド3.7g、ソルビタンモノパルミテート4.5g、ポリオキシエチレンオレイルエーテル4.5g、ポリオキシエチレンラウリルエーテル18.0gを入れ、攪拌下に60℃で15分間、超音波で乳化分散させた。フラスコ内を窒素置換後、塩化ビニル67gを圧入充填した。さらに2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩3.6gを添加し、60℃で5時間反応させ、重合体の水性分散液を得た。
【0103】
比較製造例1
1LオートクレーブにCF3CF2-(CF2CF2)n-CH2CH2OCOCH=CH2 (n=3.2) 204g、ステアリルアクリレート25.6g、N―メチロールアクリルアミド6.4g、3―クロロ―2−ヒドロキシプロピルメタクリレート1.5g、純水486g、トリプロピレングリコール88g、アルキルトリメチルアンモニウムクロリド3.4g、ソルビタンモノパルミテート4.6g、ポリオキシエチレンオレイルエーテル4.9g、ポリオキシエチレンラウリルエーテル20.0gを入れ、攪拌下に60℃で15分間、超音波で乳化分散させた。フラスコ内を窒素置換後、塩化ビニル67gを圧入充填した。さらに2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩3.6gを添加し、60℃で5時間反応させ、重合体の水性分散液を得た。
【0104】
比較製造例2
1LオートクレーブにCF3CF2-(CF2CF2)n-CH2CH2OCOC(CH3)=CH2 (n=2.0) 184g、ステアリルアクリレート23.1g、グリセロールモノメタクリレート4.3g、グリシジルメタクリレート1.4g、メルカプトシリコーン1(分子中にメルカプト−およびアミノ−官能性有機基を有するオルガノポリシロキサン)28.4g、純水500g、トリプロピレングリコール79.4g、アルキルトリメチルアンモニウムクロリド3.7g、ソルビタンモノパルミテート4.5g、ポリオキシエチレンオレイルエーテル4.5g、ポリオキシエチレンラウリルエーテル18.0gを入れ、攪拌下に60℃で15分間、超音波で乳化分散させた。フラスコ内を窒素置換後、塩化ビニル67gを圧入充填した。さらに2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩3.6gを添加し、60℃で5時間反応させ、重合体の水性分散液を得た。
【0105】
比較製造例3
1LオートクレーブにCF3CF2-(CF2CF2)n-CH2CH2OCOC(CH3)=CH2 (n=2.0) 184g、ステアリルアクリレート23.1g、グリセロールモノメタクリレート4.3g、グリシジルメタクリレート1.4g、純水500g、トリプロピレングリコール79.4g、アルキルトリメチルアンモニウムクロリド3.7g、ソルビタンモノパルミテート4.5g、ポリオキシエチレンオレイルエーテル4.5g、ポリオキシエチレンラウリルエーテル18.0gを入れ、攪拌下に60℃で15分間、超音波で乳化分散させた。フラスコ内を窒素置換後、塩化ビニル67gを圧入充填した。さらに2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩3.6gを添加し、60℃で5時間反応させ、重合体の水性分散液を得た。
【0106】
比較製造例4
1LオートクレーブにCF3CF2-(CF2CF2)n-CH2CH2OCOC(CH3)=CH2 (n=2.0) 204g、ステアリルアクリレート25.6g、N―メチロールアクリルアミド6.4g、3―クロロ―2−ヒドロキシプロピルメタクリレート1.5g、純水486g、トリプロピレングリコール88g、アルキルトリメチルアンモニウムクロリド3.4g、ソルビタンモノパルミテート4.6g、ポリオキシエチレンオレイルエーテル4.9g、ポリオキシエチレンラウリルエーテル20.0gを入れ、攪拌下に60℃で15分間、超音波で乳化分散させた。フラスコ内を窒素置換後、塩化ビニル67gを圧入充填した。さらに2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩2.2gを添加し、60℃で5時間反応させ、重合体の中間水性分散液を得た。
中間分散液15gにアミノ変性シリコーン油(東レダウコーニング株式会社製のSF8417)0.23gを加えた。混合物を1時間攪拌し、水性分散液を得た。
【0107】
比較製造例5
1LオートクレーブにCF3CF2-(CF2CF2)n-CH2CH2OCOC(CH3)=CH2 (n=2.0) 204g、ステアリルアクリレート25.6g、N―メチロールアクリルアミド6.4g、3―クロロ―2−ヒドロキシプロピルメタクリレート1.5g、ポリジメチルシロキサンメタクリレート(チッソ社製、サイラプレーンFM0721)31.5g、純水486g、トリプロピレングリコール88g、アルキルトリメチルアンモニウムクロリド3.4g、ソルビタンモノパルミテート4.6g、ポリオキシエチレンオレイルエーテル4.9g、ポリオキシエチレンラウリルエーテル20.0gを入れ、攪拌下に60℃で15分間、超音波で乳化分散させた。フラスコ内を窒素置換後、塩化ビニル67gを圧入充填した。さらに2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩2.2gを添加し、60℃で5時間反応させ、重合体の水性分散液を得た。
【0108】
比較製造例6
1LオートクレーブにCF3CF2-(CF2CF2)n-CH2CH2OCOC(CH3)=CH2 (n=2.0) 184g、ステアリルアクリレート23.1g、グリセロールモノメタクリレート4.3g、グリシジルメタクリレート1.4g、ビニルシロキサン1 28.4g、純水500g、トリプロピレングリコール79.4g、アルキルトリメチルアンモニウムクロリド3.7g、ソルビタンモノパルミテート4.5g、ポリオキシエチレンオレイルエーテル4.5g、ポリオキシエチレンラウリルエーテル18.0gを入れ、攪拌下に60℃で15分間、超音波で乳化分散させた。フラスコ内を窒素置換後、塩化ビニル67gを圧入充填した。さらに2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩3.6gを添加し、60℃で5時間反応させ、重合体の水性分散液を得た。
【0109】
実施例1
製造例1で製造した水性分散液4.8gをそれぞれ純水で希釈して100gの試験溶液を調製した。この試験溶液にナイロン試験布(510mm×205mm)×1枚を浸漬後、マングルに通し、ピンテンターで160℃処理(2分間)を行った。その後、試験布を1/3に切断した(それぞれの寸法は170mm×205mm)。夫々の試験布を未洗濯、洗濯10回、20回に用いた。夫々についてシャワー撥水試験、撥水試験、撥油試験に使用した。同じ操作をPET試験布(510mm×205mm)×1枚、綿試験布(510mm×205mm)×1枚について行った。結果を表4に示す。
【0110】
実施例2および3
製造例2および製造例3のそれぞれで得られたポリマーを実施例1と同様に処理後、シャワー撥水試験、撥水試験、撥油試験をおこなった。結果を表4に示す。
【0111】
比較例1〜6
比較製造例1〜比較製造例1のそれぞれで得られたポリマーを実施例1と同様に処理後、シャワー撥水試験、撥水試験、撥油試験をおこなった。結果を表4に示す。
【0112】
【表5】

【0113】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(a)式:
CH=C(X)COOYRf
[式中、Xは、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
Yは直接結合または二価の有機基であり、
Rfは、炭素数1〜21のフルオロアルキル基である。]
で示される含フッ素単量体を含んでなる単量体から誘導された繰り返し単位、および
(B)ビニル官能性オルガノポリシロキサン
を有してなる含フッ素重合体。
【請求項2】
単量体(A)が、含フッ素単量体(a)に加えて、さらに、
(b)非フッ素単量体、および
(c)必要により存在する、架橋性単量体
を含んでなる請求項1に記載の含フッ素重合体。
【請求項3】
含フッ素単量体(a)が、式:
【化1】

[式中、Xは、水素原子、炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基、置換または非置換のベンジル基、置換または非置換のフェニル基、CFX12基(但し、X1およびX2は、水素原子またはハロゲン原子である。)、
Yは、直接結合、炭素数1〜10の脂肪族基、
炭素数6〜10の芳香族基または環状脂肪族基、
−CH2CH2N(R1)SO2−基(但し、R1は炭素数1〜4のアルキル基である。)または−CH2CH(OY1)CH2−基(但し、Y1は水素原子またはアセチル基である。)、
Rfは炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基である。]
で示される化合物である請求項1に記載の含フッ素重合体。
【請求項4】
非フッ素単量体(b)が、一般式:
CH=CACOOA
[式中、Aは、水素原子、メチル基、または、フッ素原子以外のハロゲン原子であり、
は、炭素数1〜30の炭化水素基、特にC2n+1(n=1〜30)によって表されるアルキル基である。]
で示されるアクリレートである請求項1〜3のいずれかに記載の含フッ素重合体。
【請求項5】
架橋性単量体(c)が、少なくとも2つの反応性基を有する単量体、少なくとも2つの炭素−炭素二重結合を有する単量体、あるいは少なくとも1つの炭素−炭素二重結合および少なくとも1つの反応性基を有する単量体である請求項1〜4のいずれかに記載の含フッ素重合体。
【請求項6】
架橋性単量体(c)が、フッ素を含有しない請求項5に記載の含フッ素重合体。
【請求項7】
Xが塩素である請求項1に記載の含フッ素重合体。
【請求項8】
ビニル官能性オルガノポリシロキサン(B)が、平均式:
(RSiO)(RRSiO)(RRSiO)
[式中、aは、0〜4000であり、bは、1〜1000であり、cは、1〜1000であり、
Rは、独立して、一価の有機基であり、
は、一価のアミノ官能性の有機基であり、
は、一価のビニル官能性の有機基である。]
を有するシロキシ単位を有してなるビニルアミノ官能性オルガノポリシロキサンである請求項1に記載の含フッ素重合体。
【請求項9】
ビニルアミノ官能性オルガノポリシロキサンが、平均式:
【化2】

[式中、aは、0〜4000であり、bは、1〜1000であり、cは、1〜1000であり、それぞれのR’は、H、炭素数1〜40のアルキル基またはMeSiである。]
で示される請求項3に記載の含フッ素重合体。
【請求項10】
(A)(a)式:
CH=C(X)COOYRf
[式中、Xは、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
Yは直接結合または二価の有機基であり、
Rfは、炭素数1〜21のフルオロアルキル基である。]
で示される含フッ素単量体を含んでなる単量体を、
(B)ビニル官能性オルガノポリシロキサン
の存在下で重合することを含んでなる、含フッ素重合体を製造する方法。
【請求項11】
含フッ素単量体(a)が、式:
【化3】

[式中、Xは、水素原子、炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基、置換または非置換のベンジル基、置換または非置換のフェニル基、CFX12基(但し、X1およびX2は、水素原子またはハロゲン原子である。)、
Yは、直接結合、炭素数1〜10の脂肪族基、
炭素数6〜10の芳香族基または環状脂肪族基、
−CH2CH2N(R1)SO2−基(但し、R1は炭素数1〜4のアルキル基である。)または−CH2CH(OY1)CH2−基(但し、Y1は水素原子またはアセチル基である。)、
Rfは炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基である。]
で示される化合物である請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ビニル官能性オルガノポリシロキサン(B)が、平均式:
(RSiO)(RRSiO)(RRSiO)
[式中、aは、0〜4000であり、bは、1〜1000であり、cは、1〜1000であり、
Rは、独立して、一価の有機基であり、
は、一価のアミノ官能性の有機基であり、
は、一価のビニル官能性の有機基である。]
を有するシロキシ単位を有してなるビニルアミノ官能性オルガノポリシロキサンである請求項10に記載の方法。
【請求項13】
ビニルアミノ官能性オルガノポリシロキサンが、平均式:
【化4】

[式中、aは、0〜4000であり、bは、1〜1000であり、cは、1〜1000であり、それぞれのR’は、H、炭素数1〜40のアルキル基またはMeSiである。]
で示される請求項12に記載の方法。
【請求項14】
単量体(A)が、含フッ素単量体(a)に加えて、さらに、
(b)非フッ素単量体、および
(c)必要により存在する、架橋性単量体
を含んでなる請求項10に記載の方法。
【請求項15】
非フッ素単量体(b)が、一般式:
CH=CACOOA
[式中、Aは、水素原子、メチル基、または、フッ素原子以外のハロゲン原子であり、
は、C2n+1(n=1〜30)によって表されるアルキル基である。]
で示されるアクリレートである請求項14に記載の方法。
【請求項16】
架橋性単量体(c)が、少なくとも2つの反応性基を有する単量体、少なくとも2つの炭素−炭素二重結合を有する単量体、あるいは少なくとも1つの炭素−炭素二重結合および少なくとも1つの反応性基を有する単量体である請求項14に記載の方法。
【請求項17】
架橋性単量体(c)が、フッ素を含有しない請求項14に記載の方法。
【請求項18】
Xが塩素である請求項10に記載の方法。
【請求項19】
5重量%〜99.9重量%の単量体(A)と、0.1重量%〜95重量%のビニル官能性オルガノポリシロキサン(B)とを使用する(ただし、(A)および(B)のwt%の和は100%に等しい)請求項10〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれかに記載の方法によって製造された含フッ素重合体。
【請求項21】
請求項1または20に記載の含フッ素重合体を含んでなる表面処理剤。
【請求項22】
さらに液状媒体を含む請求項21に記載の表面処理剤。
【請求項23】
請求項21または22に記載の表面処理剤で基材を処理する方法。
【請求項24】
請求項21または22に記載の表面処理剤で処理された繊維製品。

【公表番号】特表2011−514911(P2011−514911A)
【公表日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−531184(P2010−531184)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【国際出願番号】PCT/JP2009/052251
【国際公開番号】WO2009/099241
【国際公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【出願人】(596012272)ダウ・コーニング・コーポレイション (347)
【Fターム(参考)】