説明

フルオロポリマー物品

【課題】層状シート、燃料または化学物質を移送するためのホースなどに有用なフルオロポリマー−フルオロポリマー組立体を提供すること。
【解決手段】本発明は、第1の実質的に中実の部分フッ素化熱可塑性ポリマーを含む第1の層と、第2の実質的に中実の部分フッ素化熱可塑性ポリマーを含む第2の層とを含み、前記第2の層は前記第1の層と接合しており、前記第1のポリマーと前記第2のポリマーとは異なる組成を有する物品を提供する。本発明は、層状物品、および層状物品の製造方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、層状シート、燃料または化学物質を移送するためのホースなどに有用なフル
オロポリマー−フルオロポリマー組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
フルオロポリマーは、それらの耐薬品性および低燃料透過などの性質のために使用され
る。燃料ホースなどの自動車用途では、蒸発ガスを最小限にし、より厳しい環境基準に適
合するため、燃料透過をより低くすることが求められている。これらの用途ではフルオロ
ポリマーが必要とされている。フルオロポリマーの薄層は他の材料と併用されることが多
く、それによって弾力性、強度、耐久性、およびその他の所望の性質が複合材料に付与さ
れる。しかし、フルオロポリマーは接合が困難であることが知られている。フルオロポリ
マーと非フルオロポリマーとの間の接着、ならびにTHVおよびFKMなどの2種類のフ
ルオロポリマーの間の接着を促進するために種々の方法が使用されている。これらの方法
としては、層の一方または両方の表面の処理、ポリアミドとTHVなどの2種類のポリマ
ーの混合物の使用、ポリアミドおよび極性官能基を有するグラフトフルオロポリマーの混
合、連結層の使用、ならびに接着剤の使用が挙げられる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
簡潔に述べると、本発明は、第1の実質的に中実の部分フッ素化熱可塑性ポリマーを含
む第1の層と、第2の実質的に中実の部分フッ素化熱可塑性ポリマーを含む第2の層とを
含み、前記第2の層は前記第1の層と接合しており、前記第1のポリマーと前記第2のポ
リマーとは異なる組成を有する物品を提供する。
【0004】
本発明は、層状物品の製造方法であって、部分フッ素化ポリマーを含む第1の層を提供
するステップと、部分フッ素化ポリマーを含み前記第1の層と接触する第2の層を提供す
るステップと、前記層を接合させるのに十分な時間、少なくとも1つの層をその軟化点ま
たは融点よりも高温まで加熱するステップと、任意に前記第1の層を前記第2の層に押し
付けるステップとを含み、前記第1の層と前記第2の層との間の接合界面は、前記第1の
層の組成を有する第1の材料と前記第2の層の組成を有する第2の材料とから本質的にな
る方法も提供する。
【0005】
別の態様では、本発明は、層状物品の製造方法であって、部分フッ素化熱可塑性ポリマ
ーを含む第1の層を含む第1の層を押し出すステップと、部分フッ素化熱可塑性ポリマー
を含む第2の層を前記第1の層の表面上に押し出すステップとを含み、前記第1の層と前
記第2の層との間の接合界面は、前記第1の層の組成を有する第1の材料と前記第2の層
の組成を有する第2の材料とから本質的になり、少なくとも1つの層がその融点または軟
化点よりも高温である間に前記第1の層と前記第2の層とが接合される方法を提供する。
【0006】
この文書において、「フッ素化熱可塑性」とは、明確な融点を有することを意味し、こ
れによって、通常はこのような融点を有さないフッ素化エラストマーなどの非晶質材料か
ら区別され、「部分フッ素化」とは、炭素原子と結合する水素原子の少なくとも4分の1
がフッ素原子で置き換えられることを意味し、「実質的に中実の」とは、発泡構造体中に
は一般的であるような封入された空隙または気体が30体積%未満であることを意味する

【0007】
本発明の利点の1つは、十分な接合強度を得るための表面処理、接着剤、連結層、ポリ
マーのグラフト化、混合などを使用しなくても、シート、管材料、ホース、およびその他
の形状の物品などの、接合が困難であることが知られている2つのフルオロポリマー層を
有する多層フルオロポリマー物品が提供されることである。
【0008】
本発明のその他の特徴および利点は、以下の本発明の詳細な説明および請求の範囲から
明らかとなるであろう。開示される原理の上記要約は、本発明の開示の例示されるすべて
の実施態様またはすべての実施に関して説明することを意図したものではない。以下の詳
細な説明は、本明細書に開示される原理を使用したある好ましい実施態様を特により詳細
に例示している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、テトラフルオロエチレン−エチレン(ETFE)、テトラフルオロエチレン
−ヘキサフルオロプロピレン−エチレン(HTE)などのフルオロポリマー、またはテト
ラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、およびフッ化ビ
ニリデン(VDF)から誘導されるコポリマー、たとえばミネソタ州オークデール(Oa
kdale MN)のダイニオンLLC(Dyneon LLC)より入手可能なTHV
シリーズなどの層を、第1の層に使用されるフルオロポリマーよりも低い融点を有するT
HVなどのフッ素化熱可塑性物質の別の層とともに含む多層複合構造体を提供する。この
ような低融点フッ素化熱可塑性物質と、ETFE、HTEなどの他のフッ素化熱可塑性物
質、またはより高融点のTHVとの間の層間接着力は、良好から優秀までとなる。この構
造体は、炭化水素ポリマー被覆材料と接合させて、たとえばフィルム、シート、燃料ホー
スおよび給油口、管材料などの種々の有用な物品を製造することができるため好都合であ
る。したがって、本発明によって、接合が困難であることが知られているフルオロポリマ
ー層を有する多層物品を製造することができる。さらに、本発明は、あらゆる公知の接着
層、連結層、またはその他の接合系と併用することができる。
【0010】
一態様において、本発明は、第1の実質的に中実の部分フッ素化熱可塑性ポリマーを含
む第1の層と、第2の実質的に中実の部分フッ素化熱可塑性ポリマーを含む第2の層とを
含み、前記第2の層は前記第1の層と接合しており、前記第1のポリマーと前記第2のポ
リマーとは異なる組成を有する物品を提供する。
【0011】
本発明の物品中の第1および第2の層は、実質的に中実であり、層の体積の30%未満
の、発泡構造体に見られるような封入された空隙または気体を含む。他の実施態様では、
層の体積の20%未満、10%未満、さらには0%の封入されたまたは気体を含む。
【0012】
あらゆる公知の部分フッ素化熱可塑性ポリマーを本発明に使用することができる。たと
えば、これらのポリマーは、TFE、HFP、VDF、パーフルオロアルキルまたはアル
コキシビニルエーテル(PAVEまたはPAOVE)、および非フッ素化オレフィンの共
重合単位の種々の組み合わせを含む。この種の材料としては、ETFE、HTE、ポリフ
ッ化ビニリデン(PVDF)、TFE/P、ポリエチレンクロロトリフルオロエチレン(
ECTFE)、および当技術分野ではTHV材料として知られているTFE/HFP/V
DFコポリマーが挙げられる。
【0013】
第1および/または第2の層中の部分フッ素化ポリマーは、式I:−CF(X)−CX
2−の共重合単位を含んでもよく、式中、各Xは独立して、水素、ハロゲン原子、または
線状でも分岐していてもよくフッ素化されてもよいC1〜C8アルキル基である。これらは
、ホモポリマー、および2種類以上の異なる式Iの共重合単位を有するコポリマーを含ん
でいる。
【0014】
一実施態様においては、少なくとも1種類のフルオロポリマーは、その共重合単位の少
なくとも35重量%(wt%)の式Iを含む。別の実施態様においては、少なくとも1種
類のフルオロポリマーは、その共重合単位の少なくとも70重量%の式Iを含む。別の実
施態様においては、少なくとも1種類のフルオロポリマーは、その共重合単位の少なくと
も80重量%の式Iを含む。フルオロポリマーは、他のモノマーから誘導される共重合単
位を種々の組み合わせでさらに含んでもよい。
【0015】
一態様においては、少なくとも1つの層は、フッ化ビニリデンのpH以下のpHを有す
る水素含有モノマーの共重合単位を含む。
【0016】
VDF、HFP、およびTFEの部分フッ素化ポリマーは、相間移動触媒の存在下で塩
基によって容易に脱フッ化水素化することが知られている。VDFのメチレン基はフルオ
ロカーボン(フッ化ビニリデンモノマーの共重合により得られる)に囲まれており、これ
は電子吸引基であることが知られているので、このようなことが起こると考えられる。こ
の結果、メチレン単位の水素はより酸性になり、および塩基と反応して脱フッ化水素化が
起こりやすい。新しく形成された炭素−炭素二重結合は、求核性官能基を有する有機およ
び無機物質と結合することができる。この態様において、本発明のポリマーに有用なVD
Fと類似したモノマーとしては、CFH=CF2、CH2=CHF、CH2=CHRf、パー
フルオロアリールビニルエーテル、CF2=CHRfが挙げられ、式中RfはC1〜C10
ーフルオロアルキル基である。好適な部分フッ素化モノマーの具体例としては、フッ化ビ
ニルおよびVDFが挙げられる。
【0017】
一態様においては、第1および第2の層のより低いpHを有する層は、より高いpHを
有する層の上で炭化水素物質および無機物質と改善された接着性で接合することができる

【0018】
本発明の部分フッ素化ポリマーは式II:
【化2】

の共重合単位を含んでもよく、式中、各Yは独立して、結合、酸素、またはCF2であり
、各Zは独立して、FまたはRfであり、各Rfは独立して、線状でも分岐していてもよい
1〜C10フルオロアルキル基であり、nは0〜3である。この実施態様においては、別
の部分フッ素化共重合単位も、本発明のフルオロポリマー中に存在する。
【0019】
本発明の部分フッ素化ポリマーは、式III:
CF2=CFO(RfO)af (III)
の過フッ素化ビニルエーテルの共重合単位も含んでよく、式中、各Rfは独立して、線状
または分岐のC1〜C6パーフルオロアルキル基であり、aは0または1〜20の整数であ
る。これらの過フッ素化アルコキシビニルエーテルおよび過フッ素化アルキルビニルエー
テルは、本発明のフルオロポリマー中の追加の部分フッ素化共重合単位として使用される

【0020】
好適な過フッ素化モノマーの具体例としては、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、
3−クロロペンタフルオロプロペン、および過フッ素化ビニルエーテル、たとえばCF2
=CFOCF3、CF2=CFOCF2CF2OCF3、CF2=CFOCF2CF2CF2OC
3、CF2=CFOCF2CF2CF3、CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2
3、およびCF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF(CF3)OCF2CF2CF3
が挙げられる。
【0021】
本発明の別の態様においては、第1および/または第2の層中の部分フッ素化ポリマー
は、テトラフルオロエチレン、および非フッ素化オレフィン、たとえば、エチレンおよび
/またはプロピレン、および任意にヘキサフルオロプロピレン、ならびに任意にパーフル
オロアルキルビニルエーテル(PAVE)またはパーフルオロアルコキシビニルエーテル
(PAOVE)などのパーフルオロビニルエーテルから誘導される共重合単位を有するポ
リマーを含む。本発明の別の態様においては、第1および/または第2の層中の部分フッ
素化ポリマーは、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、およびエチレン
、および任意にPAOVEまたはPAVEから誘導される共重合単位を有するポリマーを
含む。本発明の別の態様においては、第1および/または第2の層中の部分フッ素化ポリ
マーは、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、およびフッ化ビニリデン
、および任意にパーフルオロアルキルまたはアルコキシビニルエーテルから誘導される共
重合単位を有するポリマーを含む。本発明の別の態様においては、第1および/または第
2の層中の部分フッ素化ポリマーは、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレ
ン、フッ化ビニリデン、および任意にパーフルオロビニルエーテルから本質的になる共重
合単位を有するポリマーを含む。
【0022】
本発明の別の態様においては、第1および/または第2の層中の部分フッ素化ポリマー
は、約30重量%(wt%)未満のVDFを有するポリマーを含み、好ましくはその共重
合単位の約10〜約25重量%の間がVDFから誘導され、第2の層中部分フッ素化ポリ
マーは、その共重合単位の100重量%以下がVDFから誘導されるPVDFホモポリマ
ーなどのポリマーを含むか、またはその共重合単位の約25〜60重量%の間がフッ化ビ
ニリデンから誘導されるVDF含有ポリマーを含む。この分類のポリマーとしては、C1
〜C5非フッ素化オレフィンの共重合単位とともに、前述のようなフッ素化および/また
は過フッ素化共重合単位を有するポリマー、およびETFE、HTE、TFE/Pなどの
ポリマー、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0023】
本発明の種々の多層物品は、第3および/または第4の層を含み、これらの追加層は、
前述したような部分フッ素化ポリマー、非フッ素化ポリマー、およびその組み合わせから
選択されるポリマーを含む。このような第3および第4の層は、互いに接合されたり、本
発明のコア2層物品の互いに反対側の面に接合されたりしてよい。ある実施態様において
は、5層以上の層も有用となる。
【0024】
非フッ素化ポリマーとしては、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリオレフィ
ン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリケトン、ポリウレア、ポリア
クリレート、ポリメタクリレート、アクリロニトリルブタジエン、ブタジエンゴム、塩素
化およびクロロスルホン化ポリエチレン、クロロプレン、EPM、EPDM、PE−EP
DM、PP−EPDM、EVOH、エピクロリヒドリン(epichlorihydri
n)、イソブチレンイソプレン、イソプレン、ポリスルフィド、シリコーン、NBR/P
VC、スチレンブタジエン、および酢酸ビニルエチレン、およびその組み合わせが挙げら
れる。連結層、接着剤、表面処理、脱フッ化水素化剤、および当技術分野で公知の接着性
を向上させる同様のものを使用して、このような非フッ素化ポリマーと本発明の層状物品
との接合を促進させることができる。
【0025】
本発明では、補強材料も使用することができる。このような材料は任意に、独立した層
として使用してもよいし、または本発明の多層の実施態様中の層中に含まれてもよい。こ
のようなものとしては、たとえば、ワイヤまたはガラス繊維の編物が挙げられる。
【0026】
本発明の多層物品中の層は、公知の補助剤、たとえば、酸化防止剤、導電性材料、カー
ボンブラック、黒鉛、フィラー、潤滑剤、顔料、可塑剤、加工助剤、安定剤など、および
このような材料の組み合わせを含んでよい。本発明の物品の第1および第2の層の組成物
から本質的になる接合界面を含むある実施態様では、これらの補助剤は、これら2層の間
の接合性を実質的に向上させることがない。
【0027】
本発明の物品は、前記第1の層と前記第2の層との間に接合界面を含んでもよい。この
接合界面は、前記第1の層の組成を有する第1の材料と前記第2の層の組成を有する第2
の材料とから本質的になる。すなわち、この実施態様では、エッチング、コロナ放電、接
着促進剤、あるいは1種類以上の化学種の添加、または1つ以上のフッ素原子または他の
原子の除去を行うその他の表面処理、またはいずれかの層の組成のその他の変更は行われ
ない。同様に、本発明のこの実施態様の物品の第1および第2の層は、フルオロポリマー
と別の材料の間の接着性を向上させることが知られている種々の他の要素、たとえば連結
層および/または接着剤、あるいは一方または両方の層の材料に付加される反応性基を含
まない。
【0028】
本発明の物品は、第1の層と第2の層との間の層間接着力が、少なくとも約1ニュート
ン/センチメートル(N/cm)であり、好ましくは少なくとも約2N/cmであり、よ
り好ましくは少なくとも約5N/cmである。本発明のある実施態様においては、層間接
着力は約15N/cmを超え、さらには約30または40N/cmを超える。この層間接
着レベルは、後述のASTM D 1876剥離試験によって測定される。
【0029】
別の態様では、本発明は、前述の多層物品を含む燃料ホースを提供する。さらに、第1
または第2の層のいずれかに外層を接合させてもよい。また、部分フッ素化ポリマーを含
む中間層を第2の層に接合させることができ、任意にこの中間層を中間層に接合させるこ
とができる。内層は部分フッ素化エラストマーを含んでもよい。
【0030】
本発明の層状フルオロポリマーを特徴とする多層物品を製造する方法の1つは、前述の
フルオロポリマーを含む第1の層を提供するステップと、第1の層と接合する第2の層を
提供するステップであって、第2の層が前述のフルオロポリマーを含むステップと、少な
くとも1つの層およびこれらの層の間の界面とを少なくとも1つの層の軟化点または融点
よりも高温まで加熱するステップとを含む。一般に、本発明の混合物中に使用されるすべ
ての成分の最高の融点または軟化点が、多層物品の製造に好ましい最低温度となる。たと
えば、フッ素熱可塑性物質が混合物中に使用される場合、この層はその過フッ素熱可塑性
物質の融点以上に加熱されることが好ましく、フルオロエラストマーが層中に使用される
場合は、この層はフルオロエラストマーの軟化点または溶融加工範囲まで加熱されること
が好ましい。さらに、ニップまたはプラテンまたはその他の公知の手段でこれらの層が互
いに加圧されることが好ましい。一般に、時間、温度、および/または圧力を増加させる
と、層間の接着性を向上させることができる。任意の2つの層を接合させるための条件は
、日常的な実験によって最適化することができる。
【0031】
本発明のフルオロポリマー層を特徴とする多層物品を製造するための別の方法は、2つ
以上の層をダイから同時押出して物品を形成することを含む。このような同時押出方法は
、たとえば、シート、管材料、容器などの製造に有用である。
【0032】
本発明のフルオロポリマー層を特徴とする多層物品を製造するためのさらに別の方法は
、1つの層をダイから押し出して、ある長さの管材料を形成することを含む。第2の押出
機はクロスヘッドダイを備え、溶融したフルオロポリマーの別の層を管材料の表面にコー
ティングする。追加の層も同様の手段によって加えることができる。押出操作の後、冷却
浴への浸漬などによって多層物品を冷却してもよい。この方法は、当技術分野で公知の押
出ダイ形状を使用することによって、本発明の多層シートおよびその他の形状に使用する
ことができる。
【0033】
好ましくは、本発明の物品の1つの層は、本発明の物品の他の層とはVFまたはVDF
の量が異なり、またはこの逆の場合もある。ある実施態様では、このようなモノマー量の
差は、少なくとも約5重量%であり、好ましくは少なくとも約10重量%、20重量%、
あるいはこれらをさらに超える。フルオロポリマーのVFまたはVDFの量が少ない(ま
たは存在しない)場合、そのポリマーの残りの部分は、TFEおよび非フッ素化オレフィ
ンで構成されることが好ましい。このような場合、他の層のフルオロポリマーは少なくと
も約5〜20重量%を有する。
【0034】
本発明により製造される多層物品は、シート、フィルム、容器、ホース、管などの多種
多様な形状で提供することができる。本発明の物品は、耐薬品性および/またはバリア性
が望まれるあらゆる場合に特に有用である。本発明の物品の具体的な使用例としては、反
射材料、塗装交換フィルム、抵抗抑制フィルム、燃料ラインおよび供給口ホース、燃料タ
ンク、排出ホースなどへの使用が挙げられる。本発明の物品は、化学物質の取り扱いおよ
び加工の用途、ならびにワイヤおよびケーブルの被覆材としても有用である。
【0035】
本発明の目的および利点を、以下の実施例によってさらに説明するが、これらの実施例
に記載される個々の材料およびそれらの量、ならびにその他の条件および詳細は、本発明
を不当に限定するために構成されたものではない。
【実施例】
【0036】
材料
Aは、42.0のTFE、20.0のHFP、および38.0のVDF(重量%)のコポ
リマーであり、Tm125℃である
Bは、60.0のTFE、18.0のHFP、および22.0のVDF(重量%)のコポ
リマーであり、Tm165℃である
Cは、ミネソタ州オークデール(Oakdale MN)のダイニオンLLC(Dyne
on LLC)よりダイニオンTMHTE−1500(DyneonTM HTE−1500
)として入手可能なTFE、HFP、およびエチレンのコポリマーである
Dは、91.0重量%のTFEおよび9.0のプロピレンのコポリマーである
Eは、73.0のTFE、11.5のHFP、11.5のVDF、および4.0のPPV
E(wt%)のコポリマーのコポリマーであり、Tm222℃、MFI4.8である
Fは、ソルベイ(Solvay)(フランス、パリ)より入手可能なVDFのホモポリマ
ーであるソレフTM PVDF 1010(SolefTM PVDF 1010)である
Gは、ダイキン(Daikin)よりETFE−EP610として入手可能なTFEおよ
びエチレンのコポリマーである
Hは、59.9のTFE、21.5のHFP、および18.6のVDF(wt%)のコポ
リマーであり、Tm185℃である
【0037】
試験方法
熱積層
T型剥離試験による層間接着力の試験を容易にするため、厚さ0.05mmのポリイミ
ドフィルムの1枚のシート(テキサス州パサディナ(Pasadena TX)のカネカ
・ハイテック・マテリアルズ・インコーポレイテッド(Kaneka High−Tec
h Materials、Inc.)よりアピカル(Apical)として入手可能)を
、加熱プレスする前の後述の2枚のフィルムの間に短辺に沿って約0.25インチ(6.
4mm)挿入した。初期の試料では、PTFEをコーティングした繊維のシートを使用し
たが、これは本発明のフィルムに付着した。場合によっては、フィルム間の接触を良好に
維持するために軽い力が必要であった。各材料からこのポリイミドシートを剥離し、これ
は得られた積層体のタブを形成するためのみに使用し、これらのタブは後に試験装置のジ
ョーに挿入した。
【0038】
ウォバシュ・ハイドローリック・プレス(Wabash Hydraulic pre
ss)のプラテンの間で、2層シートを加圧下で250〜300℃に2〜3分間加熱して
、約30kPaの圧力を使用して層を接合させ、この直後に冷圧プレスに移動させた。「
冷圧」によって室温まで冷却し、得られた試料についてT型剥離測定を行った。これらの
結果を表1に示す。
【0039】
剥離接着力
ASTM D 1876(T型剥離試験)に準拠して層間の剥離力を測定した。T型剥
離試験による層間の接着力の試験を容易にするため、厚さ0.05mmのポリイミドフィ
ルムの1枚のシート(テキサス州パサディナ(Pasadena TX)のカネカ・ハイ
テック・マテリアルズ・インコーポレイテッド(Kaneka High−Tech M
aterials、Inc.)よりアピカル(Apical)として入手可能)を、プレ
スする前の積層試料の一端に沿ってフィルムの間に約2.54cm挿入した。各材料から
ポリイミドシートを剥離し、これは得られた積層体のタブを形成するためのみに使用し、
これを試験装置のジョーに挿入した。試料は、幅25.4mm×長さ約2〜2.5インチ
(5〜6.3cm)のストリップに切断した。
【0040】
シンテック・テスター20(Sintech Tester 20)(MTSシステム
ズ・コーポレーション(MTS Systems Corporation)、ミネソタ
州イーデンプレーリー(Eden Prairie,MN))を取り付けた、4インチ/
分(100mm/分)のクロスヘッド速度のモデル1125試験機(マサチューセッツ州
カントン(Canton MA)のインストロン・コーポレーション(Instron
Corp.)より入手可能)を試験装置として使用した。以下の表に報告される剥離強度
値は、少なくとも2つの試料の平均であった。
【0041】
実施例
表1に示される材料のポリマーフィルムを、表1に示される時間および温度のプレス条
件を使用して、前述の熱積層の項に記載されるように積層した。剥離接着力に関して前述
したように試料を切断して試験を行った。
【0042】
【表1】

【0043】
本発明の範囲および原理から逸脱しない本発明の種々の修正および変形は当業者には明
らかであろうし、以上に記載の説明的実施態様に本発明が不当に限定されるべきでないこ
とも理解できるであろう。すべての刊行物および特許は、それぞれの刊行物または特許が
具体的かつ個々に示され、援用されるのと同程度に、本明細書に援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の実質的に中実の部分フッ素化熱可塑性ポリマーを含む第1の層と、
第2の実質的に中実の部分フッ素化熱可塑性ポリマーを含む第2の層とを含み、
前記第2の層は前記第1の層と接合しており、前記第1のポリマーと前記第2のポリマ
ーとは異なる組成を有する物品。
【請求項2】
前記第1の層の組成を有する第1の材料と前記第2の層の組成を有する第2の材料とか
ら本質的になる、前記第1の層と前記第2の層との間の接合界面をさらに含む請求項1に
記載の物品。
【請求項3】
前記第1および第2の層が、少なくとも約1ニュートン/センチメートル(N/cm)
、少なくとも約2N/cm、および少なくとも約5N/cmから選択される層間接着レベ
ルを有する請求項1に記載の物品。
【請求項4】
前記第1および/または第2の層中の部分フッ素化ポリマーが式I:
−CF(X)−CX2− (I)
の共重合単位を含み、式中、各Xは独立して、水素、ハロゲン原子、またはフッ素化され
てもよいC1〜C8アルキル基である請求項1に記載の物品。
【請求項5】
前記第1および/または第2の層中の部分フッ素化ポリマーは、式Iのその共重合単位
の少なくとも70重量%(wt%)または少なくとも80重量%を含む請求項1に記載の
物品。
【請求項6】
前記第1および/または第2の層中の前記部分フッ素化ポリマーは、式II:
【化1】

の共重合単位を含むフッ素化ポリマーをさらに含み、式中、各Yは独立して、結合、酸素
、またはCF2であり、各Zは独立して、FまたはRfであり、各Rfは独立して、C1〜C
10フルオロアルキル基であり、nは0〜3である請求項1に記載の物品。
【請求項7】
前記第1および/または第2の層中の前記部分フッ素化ポリマーが、テトラフルオロエ
チレン、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、過フッ素化アル
コキシビニルエーテル、過フッ素化アルキルビニルエーテル、およびその組み合わせから
誘導される共重合単位を有するポリマーを含む請求項1に記載の物品。
【請求項8】
前記第1および/または第2の層中の前記部分フッ素化ポリマーが、フッ化ビニリデン
のpH以下のpHを有する水素含有モノマーから誘導される共重合単位を有するポリマー
を含む請求項1に記載の物品。
【請求項9】
前記第1および/または第2の層中の前記部分フッ素化ポリマーが、テトラフルオロエ
チレン、および非フッ素化オレフィン、および任意にヘキサフルオロプロピレン、および
任意にパーフルオロビニルエーテルから誘導される共重合単位を有するポリマーを含む請
求項1に記載の物品。
【請求項10】
前記第1および/または第2の層中の前記部分フッ素化ポリマーが、テトラフルオロエ
チレン、ヘキサフルオロプロピレン、およびフッ化ビニリデン、および任意にパーフルオ
ロアルキルまたはアルコキシビニルエーテルから誘導される共重合単位を有するポリマー
を含む請求項1に記載の物品。
【請求項11】
前記第1および/または第2の層中の前記部分フッ素化ポリマーが、テトラフルオロエ
チレン、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン、および任意にパーフルオロビニ
ルエーテルから本質的になる共重合単位を有するポリマーを含む請求項1に記載の物品。
【請求項12】
前記第1の層中の前記部分フッ素化ポリマーが、その共重合単位の約30重量%未満が
フッ化ビニリデンから誘導されるポリマーを含み、前記第2の層中の前記部分フッ素化ポ
リマーが、その共重合単位の100重量%以下がフッ化ビニリデンから誘導されるポリマ
ーを含む請求項1に記載の物品。
【請求項13】
前記第1または第2の層と接合した、ポリマーを含む第3の層をさらに含む請求項1に
記載の物品。
【請求項14】
ポリマーを含む第4の層をさらに含み、前記第4の層は、前記第2の層とは反対側の表
面上の前記第1の層、または前記第3の層と接合している請求項13に記載の物品。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の物品を含み、任意に層が導電性材料をさらに含
む燃料ホース。
【請求項16】
任意に非フッ素化ポリマーを含む外層をさらに含み、独立した層としてまたは層中に混
入された補強材料を任意にさらに含む請求項15に記載の燃料ホース。
【請求項17】
前記第1の層が前記外層に接合され、
a)部分フッ素化ポリマーを含み前記第2の層と接合した中間層と、任意に
b)前記中間層と接合した内層とをさらに含み、
前記内層は任意に部分フッ素化エラストマーを含み、任意に導電性材料を含む請求項1
6に記載の燃料ホース。
【請求項18】
前記外層が、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリスチレン
、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリケトン、ポリウレア、ポリアクリレート、ポリ
メタクリレート、アクリロニトリルブタジエン、ブタジエンゴム、塩素化およびクロロス
ルホン化ポリエチレン、クロロプレン、EPM、EPDM、PE−EPDM、PP−EP
DM、EVOH、エピクロリヒドリン、イソブチレンイソプレン、イソプレン、ポリスル
フィド、シリコーン、NBR/PVC、スチレンブタジエン、および酢酸ビニルエチレン
、ならびにその組み合わせから選択される材料を含む請求項16に記載の燃料ホース。
【請求項19】
層状物品の製造方法であって、
a)請求項1〜14のいずれか一項に記載の実質的に中実の部分フッ素化ポリマーを含
む第1の層を提供するステップと、
b)請求項1〜14のいずれか一項に記載の実質的に中実の部分フッ素化ポリマーを含
み前記第1の層と接触する第2の層を提供するステップと、
c)前記層を接合させるのに十分な時間、少なくとも1つの層をその軟化点または融点
よりも高温まで加熱するステップと、
d)任意に前記第1の層を前記第2の層に押し付けるステップとを含み、
前記第1の層と前記第2の層との間の接合界面は、前記第1の層の組成を有する第1の
材料と前記第2の層の組成を有する第2の材料とから本質的になる方法。
【請求項20】
層状物品の製造方法であって、
a)請求項1〜14のいずれか一項に記載の実質的に中実の部分フッ素化熱可塑性ポリ
マーを含む第1の層を含む第1の層を押し出すステップと、
b)請求項1〜14のいずれか一項に記載の実質的に中実の部分フッ素化熱可塑性ポリ
マーを含む第2の層を前記第1の層の表面上に押し出すステップとを含み、
前記第1の層と前記第2の層との間の接合界面は、前記第1の層の組成を有する第1の
材料と前記第2の層の組成を有する第2の材料とから本質的になり、
少なくとも1つの層がその融点または軟化点よりも高温である間に前記第1の層と前記
第2の層とが接合され、任意に、前記押出ステップが同時押出によって実施される方法。
【請求項21】
前記第2の層の露出面上に外層を押し出すことをさらに含む請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記第1の層が管形状に押し出され、前記第1の層を囲む管形状に前記第2の層が押し
出される請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記第2の層の露出面上に外層を押し出すステップをさらに含む請求項20に記載の方
法。
【請求項24】
層が導電性材料をさらに含む請求項20に記載の方法。

【公開番号】特開2010−120386(P2010−120386A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−2306(P2010−2306)
【出願日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【分割の表示】特願2003−585965(P2003−585965)の分割
【原出願日】平成15年3月31日(2003.3.31)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】