説明

フレキシブル半導体装置およびその製造方法

【課題】生産性に優れたフレキシブル半導体装置を提供する。
【解決手段】表面12aに第1の銅層23が形成されたフレキシブル基板10を用意する工程(a)と、第1の銅層23をパターニングすることによって、フレキシブル基板10の表面12aにゲート電極20gを形成する工程(b)と、フレキシブル基板10の表面12aの上に、少なくとも表面に接着性がある絶縁層30を転写によって形成する工程(c)と、フレキシブル基板10における表面12aの絶縁層30の上に、第2の銅層25を積層する工程(d)と、フレキシブル基板10の表面12aの上の第2の銅層25をパターニングすることによってソース電極20s及びドレイン電極20dを形成する工程(e)と、を含む、フレキシブル半導体装置100の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機半導体を有するフレキシブル半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
情報端末の普及に伴い、コンピュータ用のディスプレイとしてフラットパネルディスプレイに対するニーズが高まっている。また、さらに情報化の進展に伴い、従来、紙媒体で提供されていた情報が電子化される機会が増え、薄くて軽い、手軽に持ち運びが可能なモバイル用表示媒体として、電子ペーパーあるいはデジタルペーパーへのニーズも高まりつつある(特許文献1など)。
【0003】
一般に平板型のディスプレイ装置においては、液晶、有機EL(有機エレクトロルミネッセンス)、電気泳動等を利用した素子を用いて表示媒体を形成している。また、こうした表示媒体では画面輝度の均一性や画面書き換え速度等を確保するために、画像駆動素子としてアクティブ駆動素子(TFT素子)を用いる技術が主流になっている。例えば、通常のコンピュータディスプレイではガラス基板上にこれらTFT素子を形成し、液晶、有機EL素子等が封止されている。
【0004】
ここで、TFT素子には主にa−Si(アモルファスシリコン)、p−Si(ポリシリコン)等の半導体を用いることができ、これらのSi半導体(必要に応じて金属膜も)を多層化し、ソース、ドレイン、ゲート電極を基板上に順次形成していくことでTFT素子が製造される。こうしたTFT素子の製造には通常、スパッタリング、その他の真空系の製造プロセスが必要とされる。
【0005】
しかしながら、このようなTFT素子の製造では、真空チャンバーを含む真空系の製造プロセスを何度も繰り返して各層を形成せざるを得ず、装置コスト、ランニングコストが非常に膨大なものとなっていた。例えば、TFT素子では、通常それぞれの層の形成のために真空蒸着、ドープ、フォトリソグラフ、現像等の工程を何度も繰り返す必要があり、何十もの工程を経て素子を基板上に形成している。スイッチング動作の要となる半導体部分に関しても、p型、n型等、複数種類の半導体層を積層している。こうした従来のSi半導体による製造方法ではディスプレイ画面の大型化のニーズに対し、真空チャンバー等の製造装置の大幅な設計変更が必要とされる等、設備の変更が容易ではない。
【0006】
また、このような従来からのSi材料を用いたTFT素子の形成には高い温度の工程が含まれるため、基板材料には工程温度に耐える材料であるという制限が加わることになる。このため実際上はガラスを使用せざるをえず、先に述べた電子ペーパーあるいはデジタルペーパーといった薄型ディスプレイを、こうした従来知られたTFT素子を利用して構成した場合、そのディスプレイは重く、柔軟性に欠け、落下の衝撃で割れる可能性のある製品となってしまう。ガラス基板上にTFT素子を形成することに起因するこれらの特徴は、情報化の進展に伴う手軽な携帯用薄型ディスプレイへのニーズを満たすにあたり望ましくないものである。
【0007】
一方、近年において高い電荷輸送性を有する有機化合物として、有機半導体材料の研究が精力的に進められている。これらの化合物は有機EL素子用の電荷輸送性材料のほか、有機レーザー発振素子や、有機薄膜トランジスタ素子(有機TFT素子)への応用が期待されている。
【0008】
これら有機半導体デバイスを実現できれば、比較的低い温度での真空ないし低圧蒸着による製造プロセスの簡易化や、さらにはその分子構造を適切に改良することによって、溶液化できる半導体を得る可能性があると考えられ、有機半導体溶液をインク化することによりインクジェット方式を含む印刷法による製造も考えられる。
【0009】
これらの低温プロセスによる製造は、従来のSi系半導体材料については不可能と考えられてきたが、有機半導体を用いたデバイスにはその可能性があり、従って前述の基板耐熱性に関する制限が緩和され、透明樹脂基板上にも例えばTFT素子を形成できる可能性がある。また、透明樹脂基板上にTFT素子を形成し、そのTFT素子により表示材料を駆動させることができれば、ディスプレイを従来のものよりも軽く、柔軟性に富み、落としても割れない(もしくは非常に割れにくい)ディスプレイとすることができる。
【特許文献1】特開2007−67263号公報
【特許文献2】特開2005−294300号公報
【特許文献3】特開2006−186294号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したような有機半導体デバイスないしはフレキシブル半導体デバイスを実現する上、現在、印刷エレクトロニクスが注目されている。
【0011】
図1は、印刷方式を利用した有機半導体140を含むフレキシブル半導体デバイス1000の断面構成を模式的に示している。図1に示したフレキシブル半導体デバイス1000は、樹脂基板(例えば、PET,PI)110の上に、印刷によって各層(120、130、140、150)が積層された構造を有している。図示した構成では、樹脂基板110の上に、順次、配線層120、有機半導体層130、絶縁膜140、配線層150が形成されている。具体的な構成は、適宜改変されるものの、有機半導体層130の周辺には、ソース電極120s、ドレイン電極120d、ゲート電極150gが配置され、有機トランジスタが構築される。
【0012】
このような印刷方式を用いた印刷エレクトロニクス技術は、真空プロセスの緩和(脱真空)、低温プロセスの実施(脱高温)などの種々の利点を有しており、また、印刷方式の活用により、フォトリソグラフ工程を実施しないプロセス(脱フォトリソ)を行うこともできる。このように印刷エレクトロニクスは、種々の利点を有しているがゆえに注目されているが、本願発明者の検討によれば、以下のようなまだまだ乗り越えなければならない壁がある。
【0013】
まず、印刷方式を用いて配線層120を形成する場合、インクジェット方式によってナノペースト材料による配線を形成する必要がある。ナノペースト材料は高価であるとともに、ナノペースト材料からなる配線は高抵抗であり、したがって、その点において問題が残る。
【0014】
また、特許文献2又は3では、ゲート絶縁膜に高分子フィルムを用いた薄膜トランジスタが開示されている。しかしながら、ゲート電圧を下げるためにはゲート絶縁膜は薄い方が好ましいが、このような薄膜の高分子フィルムからなるゲート絶縁膜をどう取り扱うのか(例えば、ゲート絶縁膜の好適な搬送方法や好適な形成方法など)といった生産技術上の問題については、改善の余地が大きい。特に、大画面用のフレキシブル半導体装置では、その問題がさらに顕著となる。
【0015】
一方、本願発明者は、上記検討した課題に対して、印刷エレクトロニクス技術の延長線上のものを追求するのではなく、新たな方向で対処し、それらの課題を解決するように試みた。本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、生産性に優れたフレキシブル半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の製造方法は、有機半導体を有するフレキシブル半導体装置の製造方法である。かかる製造方法は、表面に第1の銅層が形成されたフレキシブル基板を用意する工程(a)と、上記第1の銅層をパターニングすることによって、上記フレキシブル基板の表面にゲート電極を形成する工程(b)と、上記フレキシブル基板の上記表面の上に、少なくとも表面に接着性がある絶縁層を転写によって形成する工程(c)と、上記フレキシブル基板における上記表面の前記絶縁層の上に、第2の銅層を積層する工程(d)と、上記フレキシブル基板の上記表面の上の上記第2の銅層をパターニングすることによってソース電極及びドレイン電極を形成する工程(e)と、を含む。
【0017】
ある好適な実施形態において、上記工程(e)の後、上記ソース電極と上記ドレイン電極とに接触し、かつ、上記絶縁層を介して上記ゲート電極の上に、有機半導体層を形成する工程(f)を実行する。
【0018】
ある好適な実施形態において、上記工程(f)の前に、上記ソース電極および上記ドレイン電極のうち、上記有機半導体層と接触する部分に、貴金属メッキを行う。
【0019】
ある好適な実施形態では、上記工程(b)における上記パターニングによって、上記ゲート電極とともに、配線層を形成する工程を実行する。
【0020】
ある好適な実施形態において、さらに、上記工程(c)の後、上記工程(b)にて形成された配線層に電気的に接続されるペーストビアを形成する。
【0021】
ある好適な実施形態では、さらに、上記工程(d)の後、上記工程(b)にて形成された配線層に電気的に接続され、かつ、上記工程(d)にて積層された上記第2の銅層に電気的に接続されるメッキビアを形成する。
【0022】
ある好適な実施形態において、上記工程(e)において、上記ソース電極及びドレイン電極は、櫛形電極構造にパターニングされる。
【0023】
ある好適な実施形態では、上記工程(d)において、上記絶縁層の上に積層される上記第2の銅層は、保護フィルム上に形成された銅膜を転写することによって形成される。
【0024】
ある好適な実施形態において、上記保護フィルムに対する上記銅膜の接着強度は、上記フレキシブル基板に対する上記第1の銅層の接着強度よりも小さい。
【0025】
ある好適な実施形態では、上記保護フィルムに対する上記銅膜の接着強度は、0.2KN/m以下であり、上記フレキシブル基板に対する上記第1の銅層の接着強度は、0.3KN/m以上である。
【0026】
ある好適な実施形態において、上記銅膜は、上記保護フィルム上に蒸着によって形成された銅蒸着膜である。
【0027】
ある好適な実施形態では、上記銅膜は、上記保護フィルム上に蒸着によって形成された銅蒸着膜である。
【0028】
ある好適な実施形態において、上記第1の銅層は、上記フレキシブル基板の表面にスパッタによって形成された銅層である。
【0029】
また、本発明は、有機半導体を有するフレキシブル半導体装置を提供する。フレキシブル半導体装置は、フレキシブル基板と、上記フレキシブル基板の表面に形成され、ゲート電極を含む第1の銅層と、上記フレキシブル基板の表面に形成され、上記ゲート電極を含む第1の銅層を埋設する絶縁層と、上記絶縁層の上に形成され、ソース電極及びドレイン電極を含む第2の銅層とを備え、上記絶縁層を介して上記ゲート電極の上には、有機半導体を含む有機半導体層が形成されており、上記有機半導体層は、上記ソース電極と上記ドレイン電極とに接触するように設けられている。また、上記第1の銅層はスパッタによって形成され、上記第2の銅層は蒸着によって形成されている。
【0030】
ある好適な実施形態において、上記フレキシブル基板には、当該フレキシブル基板の上面と下面とを電気的に接続するビアが形成されている。
【0031】
ある好適な実施形態では、上記ビアは、上記フレキシブル基板の貫通孔に充填された導電性ペーストからなる。
【0032】
ある好適な実施形態において、上記ビアは、上記フレキシブル基板の貫通孔の壁面に形成された金属メッキからなる。
【0033】
ある好適な実施形態では、上記第1の銅層の上記絶縁層に接する面の表面粗さ(Ra)は、0.2μm以下であり、上記第2の銅層の上記絶縁層に接する面の表面粗さ(Ra)は、0.2μm以下である。
【発明の効果】
【0034】
本発明のフレキシブル半導体装置の製造方法によれば、フレキシブル基板の表面の上に、少なくとも表面に接着性がある絶縁層を転写によって形成し、これをゲート絶縁膜として使用するので、ゲート絶縁膜としての絶縁層の取り扱いが容易となる。具体的には、保護フィルムの上に形成された絶縁層をフレキシブル基板に転写しているので、薄いゲート絶縁膜を保護フィルムとともに簡易に搬送することができ、フレキシブル半導体装置を良好な生産性にて製造することができる。特に、大画面の画像表示装置に搭載されるフレキシブル半導体装置においては、薄膜で、且つ、大サイズのゲート絶縁膜を用いてフレキシブル半導体装置を構築する必要があるため、ゲート絶縁膜の搬送(ひいては形成)を容易に行うことができるメリットはさらに大きくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面においては、説明の簡潔化のため、実質的に同一の機能を有する構成要素を同一の参照符号で示す。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0036】
図2を参照しながら、本発明の実施形態に係るフレキシブル半導体装置100について説明する。図2は、本発明の実施形態に係るフレキシブル半導体装置100の断面構成を模式的に示している。
【0037】
フレキシブル半導体装置100は、有機半導体を有するフレキシブル半導体装置である。フレキシブル半導体装置100は、図2に示すように、フレキシブル基板10と、フレキシブル基板10の表面(図では上面12a)に形成され、ゲート電極20gを含む第1の銅層23と、フレキシブル基板10の表面(図では上面12aおよび下面12b)の上に形成され、第1の銅層23を埋設する絶縁層30と、絶縁層30の上に形成され、ソース電極20s及びドレイン電極20dを含む第2の銅層25とを備える。絶縁層30は、ゲート絶縁膜35として機能する。すなわち、ゲート絶縁膜35を介してゲート電極20gの上には、有機半導体からなる有機半導体層40が形成されている。有機半導体層40は、ゲート絶縁膜35の上に形成されたソース電極20sとドレイン電極20dとに接触するように配置されている。
【0038】
本実施形態においては、フレキシブル基板10には、当該フレキシブル基板10の上面12aと下面12bとを電気的に接続するビア16が形成されている。この実施形態では、ビア16は、所謂ペーストビアであり、フレキシブル基板10の貫通孔13に充填された導電性ペーストからなる。ペーストビア16は、上側の第2の銅層25と、下側の第2の銅層25とを電気的に接続している。また、第1の銅層23は、ゲート電極20gに加えて配線層24を有している。配線層24は、ゲート電極20gとともに絶縁膜30に埋設されている。この実施形態では、配線層24は、右側のペーストビア16を介して第2の銅層25に電気的に接続されている。配線層24は、ゲート電極20gと電気的に接続されてもよい。
【0039】
本実施形態のフレキシブル半導体装置100においては、ゲート電極20gに電圧を加えると,ゲート電極近傍の有機半導体層40内で加えた電圧の極性に反発する電荷のキャリアが追い払われ(空乏層が発生し)、さらに、ある一定以上の電圧を加えると、ゲート絶縁膜35と有機半導体層40の界面にゲート電極20gに印加した電圧と同じ極性のキャリアが誘起され蓄積される。このような状態でソース電極20sとドレイン電極20dとの間に電圧を加えると、上記界面に蓄積されたキャリアはソース電極―ドレイン電極間の電界によって移動してドレインに吸収され、ソース電極―ドレイン電極間を電流が流れることになる。
【0040】
ゲート電極20gに印加される電圧を制御して上記界面に蓄積されたキャリア量を変調することにより,ドレイン電極20dとソース電極20sの間を流れる電流量を変化させて、スイッチング動作を行うことができる。
【0041】
次に、図3〜図5を参照しながら、本実施形態のフレキシブル半導体装置100の製造方法について説明する。図3〜図5は、本実施形態に係るフレキシブル半導体装置100の製造方法を説明するための工程断面図である。
【0042】
まず、図3(a)に示すように、フレキシブル基板10を用意(製造、購入など)する。この実施形態では、厚さ50μmのポリエチレンナフタレート樹脂(PEN)フィルムを用いている。ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN)フィルムに代えて、他の樹脂フィルム(例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、アラミド樹脂フィルムを用いてもよい。
【0043】
フレキシブル基板10の表面(図では上面12a)には、第1の銅層23が形成されている。銅層23の形成方法としては、例えば、ターゲットに銅を用いたスパッタ法が挙げられる。第1の銅層23の厚さは、例えば、0.5μm以下である。
【0044】
次に、図3(b)に示すように、第1の銅層23をパターニングすることによって、フレキシブル基板10の表面12にゲート電極20gを形成する。銅層23のパターニングは、例えば、所定パターンのエッチングレジストを用いて銅層23の一部をエッチングすることにより行うことができる。第1の銅層23をエッチングするためのエッチャントとしては、例えば、塩化第2銅溶液または塩化第2鉄溶液を用いることができる。また、上記第1の銅層23のパターニングによって、ゲート電極20gとともに、配線層24を形成してもよい。配線層24は、例えば、ゲート電極20gに電気的に接続された配線であってもよい。
【0045】
次に、図3(c)に示すように、絶縁層30が付着した保護フィルム34を用意する。絶縁層30を構成する材料は、絶縁性を有し、且つ、ゲート電極20gを含む第1の銅層23を埋設し得る程度の可塑性を持つ材料が好ましい。このような絶縁性の材料として、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シアネート樹脂などの熱硬化樹脂が挙げられる。
【0046】
また、絶縁層30の少なくとも表面32は、フレキシブル基板10に対して良好な接着性を有している。絶縁層30の表面32の接着性は、当該絶縁層30を構成する材料自体が持っていてもよく、或いは、当該絶縁層30の表面に接着剤を塗布することによって付与してもよい。絶縁層30の表面に塗布する接着剤としては、例えば、前記と同様の液状エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シアネート樹脂などの熱硬化樹脂等が挙げられる。なお、保護フィルム34としては、例えば、厚さ12.5μmのポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)フィルムが挙げられる。また絶縁層の形成方法は、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)フィルム上に、バーコータ法、ドクターブレード法、ダイコータ法、グラビア(凹版)印刷法などによって形成することができる。当該絶縁層30はゲート電圧を低くするため極力薄い方がいいため、グラビア(凹版)印刷法、バーコータ法などが利用される。
【0047】
次に、図3(d)に示すように、フレキシブル基板10の表面の上に、絶縁層30を転写によって形成する。詳細には、絶縁層30をフレキシブル基板10の表面(図では上面12a及び下面12b)の上に圧接し、絶縁層30とフレキシブル基板10とを接着する。このとき、ゲート電極20gを含む第1の銅層23は、絶縁層30の表面32に圧接され、当該絶縁層30の内部に埋め込まれる。その後、保護フィルム34を絶縁層30から剥離することにより、フレキシブル基板10の表面12a、12bの上に絶縁層30を転写することができる。かかる絶縁層30のうち、ゲート電極20gの上に配置された領域は、ゲート絶縁膜35として機能する。
【0048】
絶縁層30の厚さは、ゲート電極20gよりも厚いサイズであればよく、特に制限はないが、ゲート電圧を下げるためには絶縁層30は薄い方が好ましい。例えば、ゲート電極20gの厚さが0.5μmの場合、絶縁層30の厚さは、0.5μmよりも大きければよい。ゲート電圧の実用上の範囲から2μmよりも小さいことが好ましい。またゲート電圧を下げ、絶縁耐圧を高く保つためには、絶縁材料の誘電率が高い方が良く、そのために前記絶縁材料に微細な無機フィラーを添加することも有効である。誘電率の高い無機フィラーとしてはナノスケールのチタン酸バリウム粉末やチタン酸鉛粉末などが挙げられる。
【0049】
また、第1の銅層23の表面粗さ(特に、絶縁層30が圧接される側の表面粗さ)は、0.2μm以下であればよく、さらに好ましくは、0.1μm以下である。ここでいう「表面粗さ」とは、算術平均粗さRa(粗さ曲線の中心線からの偏差の絶対値の平均値)のことである。第1の銅層23の表面粗さ(Ra)を0.2μm以下とすることにより、ゲート電極20gの上のゲート絶縁膜35の膜厚を均一にすることができる。加えて、第1の銅層23を絶縁層30に埋め込む際に、第1の銅層23の厚さバラツキによって厚肉となった部位が絶縁層30を貫通する事態を回避することができ、フレキシブル半導体装置100を安定して製造することができる。
【0050】
次に、図4(a)に示すように、フレキシブル基板10に、当該フレキシブル基板10の上面12aと下面12bとを貫通する貫通孔13を形成する。貫通孔13の形成は、例えば、保護フィルム34の上からレーザーを照射することによって行うことができる。貫通孔13の直径は、例えば50μmである。
【0051】
次に、図4(b)に示すように、フレキシブル基板10の貫通孔13に導電性ペーストを充填する。導電性ペーストとしては、例えば液状エポキシ樹脂に銅粉及び硬化剤などを混練したものを使用することができる。導電性ペーストの充填は、例えば、保護フィルム34の上から導電性ペーストを塗布し貫通孔の下面から吸引しながらスキージで押圧することによって行うことができる。その後、図4(c)に示すように、保護フィルム34を絶縁層30から剥離することによって、ペーストビア16の形成が完了する。なお、ペーストビア16は、絶縁層30に埋設したゲート電極20gを含む第1の銅層23と電気的に接続してもよい。この例では、右側のペーストビア16は、第1の銅層23の配線層24に電気的に接続する。
【0052】
次に、図5(a)に示すように、銅箔25を用意する。銅箔25は、例えば、銅インゴットを圧延して形成した圧延銅箔である。そして、図5(b)に示すように、当該銅箔25を絶縁層30の上に圧接し、銅箔25と絶縁層30とを接着する。このようにして、フレキシブル基板10における表面(図では上面12aおよび下面12b)の絶縁層30の上に、第2の銅層25を積層する。第2の銅層25の厚さは、例えば、2μm以下であり、好ましくは、1.5μm以下である。
【0053】
次に、図5(c)に示すように、フレキシブル基板10の表面12の上の第2の銅層25をパターニングすることによって、ソース電極20s及びドレイン電極20dを形成する。第2の銅層25のパターニングは、例えば、所定パターンのエッチングレジストを用いて銅層25の一部をエッチングすることにより行うことができる。第2の銅層23をエッチングするためのエッチャントとしては、例えば、塩化第2銅溶液または塩化第2鉄溶液を用いることができる。
【0054】
また、上記第2の銅層25のパターニングによって、ソース電極20s及びドレイン電極20dを形成するとともに、配線層26を形成してもよい。配線層26は、例えば、ソース電極20s及びドレイン電極20dに電気的に接続された配線層であってもよい。図示した例では、下側の第2の銅層25が含む配線層26aは、右側のペーストビア16を介してドレイン電極20dと電気的に接続している。
【0055】
このようにして、ゲート絶縁膜35、ゲート電極20g、ソース電極20s、及びドレイン電極20dを備えた、有機半導体が形成される前の構造を有するフレキシブル半導体装置用組立体90が得られる。このフレキシブル半導体装置用組立体90は、評価用TEG(Test−Element−Group)としても好適に利用することができる。
【0056】
その後、図5(d)に示すように、ソース電極20sとドレイン電極20dとに接触し、かつ、絶縁層30を介してゲート電極20gの上に、有機半導体層40を形成する。この実施形態では、有機半導体層40は、ソース電極20sとドレイン電極20dとの隙間に供給され、ソース電極20s及びドレイン電極20dの端部(上面の一部と壁面)と、ゲート絶縁膜35の上面とを覆うように形成されている。有機半導体層40の形成は、例えば有機半導体層40を構成する有機半導体の印刷によって行うことができるし、有機半導体材料によってはマスク蒸着によって形成することができる。このようにして、本実施形態に係るフレキシブル半導体装置100が構築される。なお、ソース電極20sおよびドレイン電極20dのうち、有機半導体層40と接触する部分に、貴金属メッキを行ってもよい。貴金属メッキは、例えば金メッキである。これにより、ソース、ドレイン電極20s、20dと有機半導体層40との間の接触抵抗を下げることができる。
【0057】
有機半導体層40を構成する有機半導体としては、種々のものを使用することが可能である。ただし、その有機半導体としては、移動度が高い材料が好ましく、例えば、ペンタセンを挙げることができる。また、有機半導体を大別して説明すると、高分子材料(例えば、ポリチオフェン又はその誘導体)、低分子材料(例えば、ペンタセン、可溶化ペンタセン)、その他、ナノカーボン材料(例えば、カーボンナノチューブ、SiGeナノワイヤー、フラーレン、修飾フラーレン)、無機有機混合材料(例えば、(CNH)とSnIとの複合系)を挙げることができる。有機半導体の他の例は、後述する。
【0058】
有機半導体の材料が高分子有機半導体(例えば、ポリチオフェン又はその誘導体)の場合、印刷プロセスによって有機半導体層40を形成することが好ましいことが多い。また、有機半導体が低分子有機半導体(例えば、ペンタセン)の場合、蒸着プロセスによって有機半導体層40を形成することが好ましいことが多い。
【0059】
本実施形態のフレキシブル半導体装置100の製造方法によれば、フレキシブル基板10の表面12aの上に、少なくとも表面32に接着性がある絶縁層30を転写によって形成し、これをゲート絶縁膜35として使用するので、ゲート絶縁膜35としての絶縁層30の取り扱いが容易となる。具体的には、図3(c)に示したように、保護フィルム34の上に形成された絶縁層30をフレキシブル基板10に転写しているので、例えば、厚さ5μm以下の薄いゲート絶縁膜35を保護フィルム34とともに簡便に搬送することができ、フレキシブル半導体装置100を良好な生産性にて提供することができる。
【0060】
特に、大画面用(例えば、50インチ以上の大画面用)のフレキシブル半導体装置においては、薄膜で、且つ、大サイズのゲート絶縁膜を用いてフレキシブル半導体装置を構築する必要があるため、ゲート絶縁膜の搬送(ひいては形成)を容易に行うことができるメリットはさらに大きくなる。
【0061】
なお、図6に示すように、ソース電極20sと、ドレイン電極20dとは、互いに対向する部位を有しているが、その対向する部位は、フレキシブル基板10の法線方向から見て(すなわち、フレキシブル基板10の上方から見て)、櫛形形状で形成することができる。ソース電極20sとドレイン電極20dとの対向する部位を、櫛形形状に形成することにより、チャンネル幅を大きくすることができ、その結果、有機ELの発光に必要な大電流を得ることができる。
【0062】
さらに説明すると、電界効果トランジスタ(FET)のソースドレイン電流は、以下の式によって表される。
【0063】
FETのソースドレイン電流の式
DS=WCμ{(V−Vth)VDS−VDS/2}/L
μ:電界効果移動度
W:チャンネル幅、L:チャンネル長さ
:ゲート絶縁層の電気容量
DS:ドレインーソース間電圧、Vth:閾値電圧
上述したように、ダイオードである有機ELの発光には大電流のドライブが必要であるが、上記式に示すように、有機ELに流れるソースドレイン電流IDSは、移動度μ、チャネル幅W、及びゲート容量Cに比例し、チャネル長Lに反比例する。図6に示した構成によれば、ソース電極とドレイン電極との対向する部位を櫛形形状に形成することにより、所定寸法を維持しつつ、櫛形電極長さであるチャンネル幅Wを長くすることができる。そのため、有機ELの発光に必要な大電流を効果的に取り出すことができる。なお、かかる櫛形形状は、図5(c)に示した第2の銅層25のパターニングにおいて、ソース電極20s及びドレイン電極20dを櫛形電極構造にパターニングすることによって容易に形成することができる。
【0064】
次に、図7を参照しながら、本実施形態に係るフレキシブル半導体装置100の製造方法の改変例について説明する。この改変例では、ソース電極20s及びドレイン電極20dを含む第2の銅層25が、保護フィルム上に形成された銅膜を絶縁層30の上に転写することによって形成される点において、上述した実施形態とは異なる。
【0065】
すなわち、この改変例では、図7(a)に示すように、銅膜25が形成された保護フィルム28を用意する。銅膜25は、例えば、保護フィルム28の上に蒸着によって形成された銅蒸着膜である。保護フィルム28としては、例えば、厚さ12.5μmのPETフィルムを好適に使用することができる。
【0066】
また、上記保護フィルム28とともに、フレキシブル基板10を用意する。フレキシブル基板10は、その表面12aにゲート電極20gを含む第1の銅層23が形成され、その内部にはペーストビア16が形成されている。このフレキシブル基板10は、図3(a)〜図3(d)及び図4(a)〜図4(c)の製造工程を経て作製され得る。
【0067】
次に、図7(b)に示すように、銅蒸着膜25をフレキシブル基板10の上の絶縁層30に圧接し、銅蒸着膜25と絶縁層30とを接着する。このとき、銅蒸着膜25を、フレキシブル基板10に形成されたペーストビア16と接触するように圧接し、第2の銅層25とペーストビア16とを接続する。そして、保護フィルム28を第2の銅層としての銅蒸着膜25から剥離する。このようにして、絶縁層30の上に銅蒸着膜25の転写により第2の銅層25を形成することができる。
【0068】
次いで、図7(c)に示すように、銅蒸着膜からなる銅層25をパターニングしてソース電極20s及びドレイン電極20dを形成する。この際、配線層26a、26bを同時に形成してもよい。その後、図7(d)に示すように、ゲート電極20gの上に絶縁層30を介して有機半導体層40を印刷、蒸着、塗布等の手段によって形成することにより、フレキシブル半導体装置100が得られる。
【0069】
上記製造方法によれば、ソース電極20s及びドレイン電極20dを含む第2の銅層25を銅蒸着膜の転写によって形成することができる。蒸着によって形成された銅層(銅蒸着膜)25は、圧延銅箔に比べて表面平滑性に優れ、その表面粗さ(Ra)が小さくなる(例えば、0.2μm以下となる)。そのため、銅蒸着膜25を絶縁層30の上に転写する際、銅蒸着膜25の厚さバラツキによって厚肉となった部位が絶縁層30(特にゲート絶縁膜35)を貫通する事態を回避することができ、フレキシブル半導体装置100を安定して製造することができる。
【0070】
なお、保護フィルム28に対する銅膜25の接着強度は、フレキシブル基板10に対する第1の銅層23の接着強度よりも小さいことが好ましい。例えば、保護フィルム28に対する銅膜25の接着強度を0.2KN/m以下とし、フレキシブル基板10に対する第1の銅層23の接着強度を0.3KN/m以上とすることが好ましい。かかる構成によれば、転写時に保護フィルム28を銅膜25から剥がす際、第1の銅層23が保護フィルム28に引っ張られてフレキシブル基板10の表面から浮き上ったり、さらには剥がれたりする事態を回避することができる。その結果、フレキシブル半導体装置100を安定して製造することができる。
【0071】
なお、第1の銅層23の0.3KN/m以上の接着強度は、例えば、フレキシブル基板10の表面にスパッタによって銅を堆積することにより容易に得ることができる。また、銅膜25(第2の銅層25)の0.2KN/m以下の接着強度は、例えば、保護フィルム28の上に蒸着によって銅を堆積することにより容易に得ることができる。
【0072】
さらに、図8を参照しながら、本実施形態に係るフレキシブル半導体装置100の製造方法の別の改変例について説明する。この改変例では、フレキシブル基板10に設けられたビア16が、ペーストビアではなく、メッキビアである点において、上述した実施形態とは異なる。この場合、メッキビア16の形成は、第2の銅層25を積層した後に実行される。以下、説明する。
【0073】
すなわち、この改変例では、図8(a)に示すように、銅膜25が形成された保護フィルム28を用意する。銅膜25は、例えば、保護フィルム28の上に蒸着によって形成された銅蒸着膜である。また、上記保護フィルム28とともに、フレキシブル基板10を用意する。かかるフレキシブル基板10は、図3(a)〜図3(d)の製造工程を経て作製されたものであり、その表面12aにはゲート電極20を含む第1の銅層23が形成されている。このフレキシブル基板10には、ペーストビア16は形成されていない。
【0074】
次に、図8(b)に示すように、銅蒸着膜25をフレキシブル基板10の上の絶縁層30に圧接して銅蒸着膜25と絶縁層30とを接着し、保護フィルム28を第2の銅層としての銅蒸着膜25から剥離する。このようにして、絶縁層30の上に銅蒸着膜25の転写により第2の銅層25を形成することができる。
【0075】
そして、図8(c)に示すように、フレキシブル基板10に、当該フレキシブル基板10の上面12aと下面12bとを貫通する貫通孔13を形成する。貫通孔13の形成は、例えば、所定位置にレーザーを照射することによって行うことができる。
【0076】
次に、図8(d)に示すように、フレキシブル基板10の貫通孔13に金属メッキ処理を施し、メッキビア16を形成する。この実施形態では、銅メッキ処理を施し、銅メッキを形成する。このとき、銅メッキは、上側の第2の銅層25の上面と、貫通孔13の壁面と、下側の第2の銅層25の下面とを覆うように積層され、これによって、上側の銅層25と下側の銅層とを電機的に接続するメッキビア16を形成する。また、メッキビア16は、絶縁層30に埋設したゲート電極20gを含む第1の銅層23と電気的に接続してもよい。図示した例では、右側のメッキビア16は、絶縁層30内の配線層24に電気的に接続している。
【0077】
その後、図8(d)に示すように、第2の銅層25をエッチング等によってパターニングし、ソース及びドレイン電極20s、20dを形成する。このとき、第2の銅層25のパターニングによって、ソース電極20s及びドレイン電極20dを形成するとともに、配線層26を形成してもよい。配線層26は、例えば、ソース電極20s及びドレイン電極20dに電気的に接続された配線層であってもよい。図示した例では、配線層26aは、メッキビア16を介してドレイン電極20dと電気的に接続している。このようにして、フレキシブル基板10の上面12aと下面12bとが電気的に接続されたメッキビア16を備えたフレキシブル半導体装置100を構築することができる。
【0078】
なお、本実施形態の有機半導体層40を構成する有機半導体材料としては、上記説明と重複する内容もあるが、例えば、次のようなものを挙げることができる。
【0079】
(1)ナフタレン、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセンおよびそれらの誘導体からなる群から選択されるアセン分子材料、(2)フタロシアニン系化合物、アゾ系化合物およびペリレン系化合物からなる群から選択される顔料およびその誘導体、(3)ヒドラゾン化合物、トリフェニルメタン化合物、ジフェニルメタン化合物、スチルベン化合物、アリールビニル化合物、ピラゾリン化合物、トリフェニルアミン化合物およびトリアリールアミン化合物からなる群から選択される低分子化合物およびその誘導体、(4)ポリ−N−ビニルカルバゾール、ハロゲン化ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルピレン、ポリビニルアントラセン、ピレンホルムアルデヒド樹脂およびエチルカルバゾールホルムアルデヒド樹脂からなる群から選択される高分子化合物である。あるいは、有機半導体材料は、フルオレノン系、ジフェノキノン系、ベンゾキノン系、インデノン系、ポルフィリン系、ポリチオフェン系およびポリフェニレン系化合物であってもよい。
【0080】
また、フレキシブル基板10を構成する樹脂フィルムは、例えば、ポリイミド樹脂(PI)、ポリアミド樹脂(PA)、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN)、またはアラミド樹脂から構成されており、これらの樹脂材料は、耐熱性、寸法安定性、ガスバリア性の性質に優れており、本実施形態のフレキシブル半導体装置100におけるフレシキブル基板の材料として好ましい。
【0081】
次に、図9を参照しながら、本実施形態のフレキシブル半導体装置100を備えた画像表示装置について説明する。図9は、本実施形態のフレキシブル半導体装置(有機半導体装置)100を備えた画像表示装置200の全体の外観を示す外観斜視図である。図10は、画像表示装置200の一部を模式的に示す断面図である。
【0082】
画像表示装置200は、例えば、有機ELディスプレイである。図9に示すように、画像表示装置200は、TFT部120と、ドライバ部(130,135)と、EL部140とから構成され、そして、TFT部120の各画素に、フレキシブル半導体装置100が含まれている。
【0083】
上記画像表示装置200の一部の断面を示すと図10の通りである。図10では、本実施形態のフレキシブル半導体装置(有機半導体装置)100を2つ有しており、一つは、スイッチングトランジスタ100Aで、もう一つはドライバトランジスタ100Bとなっている。また、フレキシブル半導体装置100(100A、100B)は、補強フィルム86(例えば、PET、PENなどの樹脂フィルム)の上に配置されている。また、フレキシブル半導体装置100(100A、100B)は、EL部が備える有機EL素子80の下に形成されており、フレキシブル半導体装置100(この例では「100B」)は、有機EL素子80に接続されている。なお、有機EL素子80の上には、透明電極82が形成されている。加えて、その上には、保護フィルム(例えば、PET、PENなどの樹脂フィルム)84が形成されている。また、フレキシブル半導体装置100(この例では「100B」)は、フレキシブル基板10の内部にコンデンサ70を備えている。このコンデンサ70には、スイッチングトランジスタ100Aによって選択された期間に電荷が保持され,その電荷によって生じた電圧がドライバトランジスタ100Bのゲートに印加され,その電圧に応じたドレイン電流が有機EL素子に流れて画素を発光させる。コンデンサ70の誘電体層72は、絶縁層30から構成されている。コンデンサ70の上部電極74は第2金属層25から構成され、コンデンサ70の下部電極76は第1金属層23から構成されている。図示した例では、上部電極74はソース電極20sであり、下部電極76はゲート電極20gである。
【0084】
また、図10に示した構造の等価回路を図11に表している。図10に示した配線92は、データラインであり、配線94は、選択ラインである。各画像表示装置の画素毎に、本実施形態のフレキシブル半導体装置100は形成されている。有機ELディスプレイの構成によっては、トランジスタは各画素に2個だけでなく、それ以上設けられることもあるので、それに対応して本実施形態のフレキシブル半導体装置100を設けることも可能である。なお、本実施形態のフレキシブル半導体装置100は、有機ELディスプレイに限らず、他の画像表示装置(例えば、液晶表示装置)に用いることもでき、また、電子ペーパーにも用いることができる。加えて、本実施形態のフレキシブル半導体装置100は、現在、印刷エレクトロニクスで適用が検討されている各種用途(例えば、RF−ID、メモリ、MPU、太陽電池、センサなど)に適応することができる。
【0085】
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の改変が可能である。例えば、上記実施形態では、フレキシブル半導体装置100を1デバイスに対応した形で作製するような例を示したが、それに限らず、複数のデバイスに対応した形で作製する手法を実行してもよい。そのような作製手法として、ロール・ツー・ロール製法を用いることができる。また、本実施形態の構成による効果は、将来開発されると予想される高移動度の有機半導体材料を用いることにより、より顕著なものとして利用することができ、より大きな技術的価値を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の製造方法によれば、生産性に優れたフレキシブル半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】フレキシブル半導体デバイス1000の断面構成を模式的に示す図
【図2】本実施形態に係るフレキシブル半導体装置100の一例を模式的に示す断面図
【図3】(a)から(d)は、本実施形態に係るフレキシブル半導体装置100の製造工程の一例を示す断面図
【図4】(a)から(c)は、本実施形態に係るフレキシブル半導体装置100の製造工程の一例を示す断面図
【図5】(a)から(d)は、本実施形態に係るフレキシブル半導体装置100の製造工程の一例を示す断面図
【図6】本実施形態に係るフレキシブル半導体装置100の一例を模式的に示す上面図
【図7】(a)から(d)は、本実施形態に係るフレキシブル半導体装置100の製造工程の改変例を示す断面図
【図8】(a)から(e)は、本実施形態に係るフレキシブル半導体装置100の製造工程の別の改変例を示す断面図
【図9】フレキシブル半導体装置100を備えた画像表示装置200の外観を模式的に示す図
【図10】フレキシブル半導体装置100を備えた画像表示装置200の模式的に示す断面図
【図11】図10に示した構成の等価回路を示す図
【符号の説明】
【0088】
10 フレキシブル基板
12a 上面
12b 下面
13 貫通孔
16 ビア
20g ゲート電極
20s ソース電極
20d ドレイン電極
23 第1の銅層
25 第2の銅層
26 配線層
28 保護フィルム
30 絶縁層
34 保護フィルム
35 ゲート絶縁膜
40 有機半導体層
70 コンデンサ
72 誘電体層
74 上部電極
76 下部電極
100 フレキシブル半導体装置
200 画像表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機半導体を有するフレキシブル半導体装置の製造方法であって、
表面に第1の銅層が形成されたフレキシブル基板を用意する工程(a)と、
前記第1の銅層をパターニングすることによって、前記フレキシブル基板の表面にゲート電極を形成する工程(b)と、
前記フレキシブル基板の前記表面の上に、少なくとも表面に接着性がある絶縁層を転写によって形成する工程(c)と、
前記フレキシブル基板における前記表面の前記絶縁層の上に、第2の銅層を積層する工程(d)と、
前記フレキシブル基板の前記表面の上の前記第2の銅層をパターニングすることによってソース電極及びドレイン電極を形成する工程(e)と
を含む、フレキシブル半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記工程(e)の後、前記ソース電極と前記ドレイン電極とに接触し、かつ、前記絶縁層を介して前記ゲート電極の上に、有機半導体層を形成する工程(f)を実行する、請求項1に記載のフレキシブル半導体の製造方法。
【請求項3】
前記工程(f)の前に、前記ソース電極および前記ドレイン電極のうち、前記有機半導体層と接触する部分に、貴金属メッキを行う、請求項2に記載のフレキシブル半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記工程(b)における前記パターニングによって、前記ゲート電極とともに、配線層を形成する工程を実行する、請求項1から3の何れか一つに記載のフレキシブル半導体装置の製造方法。
【請求項5】
さらに、前記工程(c)の後、前記接着性のある絶縁層を形成した前記フレキシブル基板に貫通孔を形成し、当該貫通孔に、前記工程(b)にて形成された配線層に電気的に接続されるペーストビアを形成する、請求項4に記載のフレキシブル半導体装置の製造方法。
【請求項6】
さらに、前記工程(d)の後、前記接着性のある絶縁層を形成した前記フレキシブル基板に貫通孔を形成し、当該貫通孔に、前記工程(b)にて形成された配線層に電気的に接続され、かつ、前記工程(d)にて積層された前記第2の銅層に電気的に接続されるメッキビアを形成する、請求項4に記載のフレキシブル半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記工程(e)において、前記ソース電極及びドレイン電極は、櫛形電極構造にパターニングされる、請求項1から6の何れか一つに記載のフレキシブル半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記工程(a)における第1の銅層の厚さは0.5μm以下であり、前記工程(c)における絶縁層の厚さは2μm以下であり、前記工程(d)における第2の銅層の厚さは5μm以下である、請求項1から7の何れか一つに記載のフレキシブル半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記工程(a)における第1の銅層の前記絶縁層に接する面の表面粗さ(Ra)は、0.2μm以下であり、前記工程(d)における第2の銅層の前記絶縁層に接する面の表面粗さ(Ra)は、0.2μm以下である、請求項1または8に記載のフレキシブル半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記工程(d)において、前記絶縁層の上に積層される第2の銅層は、保護フィルム上に形成された銅膜を転写することによって形成される、請求項1から9の何れか一つに記載のフレキシブル半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記保護フィルムに対する前記銅膜の接着強度は、前記フレキシブル基板に対する前記第1の銅層の接着強度よりも小さい、請求項10に記載のフレキシブル半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記銅膜は、前記保護フィルム上に蒸着によって形成された銅蒸着膜である、請求項10または11に記載のフレキシブル半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記第1の銅層は、前記フレキシブル基板の表面にスパッタによって形成された銅層である、請求項10から12の何れか一つに記載のフレキシブル半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記保護フィルムに対する前記銅膜の接着強度は、0.2KN/m以下であり、前記フレキシブル基板に対する前記第1の銅層の接着強度は、0.3KN/m以上である、請求項11から13の何れか一つに記載のフレキシブル半導体装置の製造方法。
【請求項15】
有機半導体を有するフレキシブル半導体装置であって、
フレキシブル基板と、
前記フレキシブル基板の表面に形成され、ゲート電極を含む第1の銅層と、
前記フレキシブル基板の表面の上に形成され、前記第1の銅層を埋設する絶縁層と、
前記絶縁層の上に形成され、ソース電極及びドレイン電極を含む第2の銅層と
を備え、
前記絶縁層を介して前記ゲート電極の上には、有機半導体を含む有機半導体層が形成されており、
前記有機半導体層は、前記ソース電極と前記ドレイン電極とに接触するように設けられており、
前記第1の銅層はスパッタによって形成され、前記第2の銅層は蒸着によって形成されている、フレキシブル半導体装置。
【請求項16】
前記フレキシブル基板には、前記第1の銅層と電気的に接続するビアが形成されている、請求項15に記載のフレキシブル半導体装置。
【請求項17】
前記ビアは、前記フレキシブル基板の貫通孔に充填された導電性ペーストからなる、請求項16に記載のフレキシブル半導体装置。
【請求項18】
前記ビアは、前記フレキシブル基板の貫通孔の壁面に形成された金属メッキからなる、請求項16に記載のフレキシブル半導体装置。
【請求項19】
前記第1の銅層の前記絶縁層に接する面の表面粗さ(Ra)は、0.2μm以下であり、前記第2の銅層の前記絶縁層に接する面の表面粗さ(Ra)は、0.2μm以下である、請求項15から18の何れか一つに記載のフレキシブル半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−23376(P2011−23376A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−297571(P2007−297571)
【出願日】平成19年11月16日(2007.11.16)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】