説明

フレームレスドアのドアウエザストリップ及びその製造方法

【課題】ガラスシールの損傷を抑止することのできるフレームレスドアのドアウエザストリップ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】フレームレスドアの外周に沿って設けられるドアウエザストリップは、ベルトラインに対応して配置される後側の端末部において後型成形部13を備えている。後型成形部13は、ドアガラスの後縁部をシールする横断面略コ字状のガラスシール32を備え、ガラスシール32の内側面には摺動テープ51が貼着されている。また、後型成形部13は、型成形時においてガラスシール32の上縁部から上方に延出する肉余り部52をガラスシール32と一体的に形成し、摺動テープ51をガラスシール32と肉余り部52とにかけて取着し、ガラスシール32と肉余り部52との境界部を切断して、肉余り部52及び摺動部材51のうち肉余り部52に貼着された部位をガラスシール32から除去することにより構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードトップ車等に採用されるフレームレスドアに設けられるドアウエザストリップ及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車に設けられるドアの周縁部にはドアウエザストリップが取付けられている。ドアウエザストリップは、ドアの外周に沿ってクリップによって取付けられる取付基部と、中空部を有するシール部とを備えている。そして、ドアの閉鎖時には、ドアウエザストリップのシール部が自動車ボディに形成されたドア用開口部の周縁部に圧接され、ドアと自動車ボディとの間がシールされるようになっている。
【0003】
また、ハードトップ車やオープントップ車に採用されるフレームレスのドアに関しては、ドアの前縁部、下縁部、及び後縁部に沿ってドアウエザストリップが取付けられる。また、図4に示すように、ベルトラインに対応して配置されるドアウエザストリップ3の端末部のうち後側の端末には、ドア(ドアインナパネル)の車内側の面を被覆する後型成形部13が設けられている。後型成形部13は、ドアガラスの昇降をガイドするとともに、ベルトラインにおいてドアガラスの後縦縁部をシールする横断面略コ字状のガラスシール32を備えている。また、ドアガラスの摺動性を向上させるべく、ガラスシール32の内側面に滑性剤を塗布したり、ガラスシール32を滑性剤が配合された素材により構成したりする等の技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平5−238329号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ガラスシール32はドアガラスと摺接する部位であるため、ドアガラスの昇降の繰返し等により、ガラスシール32が破れてしまうおそれがある。特に、ドアガラスの摺動性を向上させるべく、ガラスシール32を比較的硬質の(弾性に乏しい)素材により構成したり、ガラスシール32を薄肉に構成したりする場合、かかる不具合がより顕著なものとなる。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ガラスシールの損傷を抑止することのできるフレームレスドアのドアウエザストリップ及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題等を解決するのに適した各手段を項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果等を付記する。
【0007】
手段1.フレームレスドアの外周に沿って取付けられる取付基部と、前記取付基部と一体的に成形され、ドアの閉鎖時において車両本体に形成されたドア用開口部の周縁部に圧接されるシール部とを備えたフレームレスドアのドアウエザストリップであって、
ベルトラインに対応して配置される両端末部において型成形部を備え、
前記型成形部のうち少なくとも一方は、ドアガラスの縦縁部をシールする断面略コ字状のガラスシールを備え、
前記ガラスシールのうち昇降するドアガラスと摺接する部位である内側面には、シート状の摺動部材が取着される構成であって、
前記型成形部の成形時において、前記ガラスシールの上縁部から上方に延出する肉余り部を前記ガラスシールと一体的に形成し、
前記摺動部材を、前記ガラスシールと前記肉余り部とにかけて取着し、
前記ガラスシールと前記肉余り部との境界部を切断して、前記肉余り部及び前記摺動部材のうち前記肉余り部に取着された部位を前記ガラスシールから除去することで、前記ガラスシールの上縁部にまで前記摺動部材が取着されたフレームレスドアのドアウエザストリップ。
【0008】
手段1によれば、ガラスシールの内側面に摺動部材が取着されることにより、ドアガラスの摺動性を向上させるとともに、ガラスシールの剛性を高めることができ、ドアガラスの昇降の繰返し等により、ガラスシールが損傷してしまうといった事態を抑制することができる。
【0009】
特に、本手段によれば、ガラスシールの上縁部と摺動部材の上縁部とがぴったりと揃った型成形部を得ることができる。従って、ガラスシールの上縁部から摺動部材が上方にはみ出して外観品質の低下を招いてしまうといった事態を回避しつつ、ガラスシールの上縁部の剛性を高め、ドアガラスの昇降によってガラスシールの上縁部が破れてしまうといった事態を防止することができる。また、本手段では、摺動部材がガラスシールの上縁部にまで取着されているので、ドアガラスの摺動性を向上させるといった作用効果が一層確実に奏される。
【0010】
また、肉余り部は、ガラスシールの構成材料を金型のキャビティに注入する際の圧力や、型締めの力を適宜調節することにより形成することができる。この場合、従来の金型装置をそのまま使用することができる。
【0011】
手段2.前記肉余り部は前記ガラスシールよりも薄肉に構成され、前記ガラスシールと前記肉余り部との境界部に沿って段差が形成されていることを特徴とする手段1に記載のフレームレスドアのドアウエザストリップ。
【0012】
手段2によれば、ガラスシールと肉余り部との境界部に沿って段差が形成されることにより、切除の目印が形成されることとなる。従って、切除する部分(肉余り部)を確実に切除するとともに、切除してはいけない部分(ガラスシール本体)を切除してしまうといった事態を抑制することができる。また、段差に沿って切除すれば、肉余り部を切除した後のガラスシールの上縁部が歪んでしまう(波打つような形状になってしまう)といった事態を抑止することができ、品質の向上を図ることができる。
【0013】
手段3.前記ガラスシールと前記肉余り部との境界部において、前記摺動部材が取着される前記ガラスシールの内側面と、前記肉余り部の内側面とが面一であることを特徴とする手段1又は2に記載のフレームレスドアのドアウエザストリップ。
【0014】
例えば、摺動部材が取着される内側面において、ガラスシールと肉余り部との境界部に段差が形成されてしまうと、摺動部材が当該境界部において浮いてしまう、或いは段差に倣って取着されてしまうおそれがある。この場合、境界部に沿って切断しても、ガラスシールの上端縁と摺動部材の端縁とがきれいに揃わないことが懸念される。これに対し、本手段3によれば、ガラスシールと肉余り部との境界部において、ガラスシールの内側面と肉余り部の内側面とが面一であるため、上記不具合を払拭することができ、上記手段1の作用効果がより確実に奏される。
【0015】
手段4.フレームレスドアの外周に沿って取付けられる取付基部と、前記取付基部と一体的に成形され、ドアの閉鎖時において車両本体に形成されたドア用開口部の周縁部に圧接されるシール部とを備えたフレームレスドアのドアウエザストリップであって、
ベルトラインに対応して配置される両端末部において型成形部を備え、
前記型成形部のうち少なくとも一方は、ドアガラスの縦縁部をシールする断面略コ字状のガラスシールを備え、
前記ガラスシールのうち昇降するドアガラスと摺接する部位である内側面には、シート状の摺動部材が取着される構成であって、
前記摺動部材を、前記ガラスシールの上縁部から上方に突出させて取着し、
前記摺動部材のうち前記ガラスシールから上方に突出した部位を前記ガラスシールから除去することで、前記ガラスシールの上縁部にまで前記摺動部材が取着されたフレームレスドアのドアウエザストリップ。
【0016】
手段4によれば、ガラスシールの上縁部にまで摺動部材が取着されているため、ドアガラスの昇降の繰返し等によりガラスシールの上縁部が損傷してしまうといった事態を抑制することができる。従って、基本的に上記手段1と同様の作用効果が奏される。
【0017】
手段5.フレームレスドアの外周に沿って取付けられる取付基部と、前記取付基部と一体的に成形され、ドアの閉鎖時において車両本体に形成されたドア用開口部の周縁部に圧接されるシール部とを備えるとともに、
ベルトラインに対応して配置される両端末部において型成形部を備え、
前記型成形部のうち少なくとも一方は、ドアガラスの縦縁部をシールする断面略コ字状のガラスシールを備え、
前記ガラスシールのうち昇降するドアガラスと摺接する部位である内側面には、シート状の摺動部材が取着されるフレームレスドアのドアウエザストリップの製造方法であって、
前記型成形部を成形する金型のうち前記ガラスシールを成形する部位(金型の中板)に対して、前記摺動部材を、その一部が型成形後において前記ガラスシールの上縁部から上方に延出するように装着する工程と、
前記金型のキャビティに前記型成形部の形成用材料を充填し、当該形成用材料と前記摺動部材とを接合する工程と、
前記金型を開いて前記型成形部を取出す工程と、
前記摺動部材の延出部分を前記ガラスシールの上縁部で切除する工程とを備えたフレームレスドアのドアウエザストリップの製造方法。
【0018】
手段5によれば、上記手段4のドアウエザストリップを確実に得ることができる。また、ガラスシールと摺動部材とを強固に固定することができ、ドアガラスの昇降の繰返しにより、ガラスシールに対して摺動テープが位置ずれしたり、剥がれたりしてしまうといった事態を防止することができる。
【0019】
手段6.フレームレスドアの外周に沿って取付けられる取付基部と、前記取付基部と一体的に成形され、ドアの閉鎖時において車両本体に形成されたドア用開口部の周縁部に圧接されるシール部とを備えるとともに、
ベルトラインに対応して配置される両端末部において型成形部を備え、
前記型成形部のうち少なくとも一方は、ドアガラスの縦縁部をシールする断面略コ字状のガラスシールを備え、
前記ガラスシールのうち昇降するドアガラスと摺接する部位である内側面には、シート状の摺動部材が取着されるフレームレスドアのドアウエザストリップの製造方法であって、
前記型成形部を成形する金型のうち前記ガラスシールを成形する部位(金型の中板)に対して、前記摺動部材を、その一部が型成形後において前記ガラスシールの上縁部から上方に延出するように装着する工程と、
前記金型のキャビティに前記型成形部の形成用材料を充填し、前記ガラスシールの上縁部から上方に延出する肉余り部を前記ガラスシールと一体的に形成するとともに、当該形成用材料と前記摺動部材とを接合する工程と、
前記金型を開いて前記型成形部を取出す工程と、
前記ガラスシールと前記肉余り部との境界部を切断して、前記肉余り部及び前記摺動部材のうち前記肉余り部に取着された部位を前記ガラスシールから除去する工程とを備えたフレームレスドアのドアウエザストリップの製造方法。
【0020】
手段6によれば、上記手段1のドアウエザストリップを確実に得ることができる。また、ガラスシールと摺動部材とを強固に固定することができ、ドアガラスの昇降の繰返しにより、ガラスシールに対して摺動テープが位置ずれしたり、剥がれたりしてしまうといった事態を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1はドア1の概略構成を示す正面模式図である。図2はドアウエザストリップ3を示す図1のJ−J線断面図である。図3は車外側(取付面側)から見た後型成形部13を示す斜視図である。図4は車内側(露出面側)から見た後型成形部13を示す斜視図である。図5はガラスシール32を示す図1のL−L線断面図である。図6、図7はガラスシール32の製造過程を示す断面図である。尚、図5では、便宜上、ガラスウエザストリップ9等の図示を省略している。
【0022】
車両としての自動車には、車両本体としての自動車ボディに形成されたドア用開口部を開閉するフロントドアが設けられている。図1に示すように、フロントドア(以下、単に「ドア1」と称する)は、昇降して窓部Wを開閉するドアガラスDGと、ドア1の外周に沿って取付けられるドアウエザストリップ3とを備えている。本実施形態におけるドア1は、ベルトラインの上方において窓部Wを囲うドアフレームが設けられていない所謂フレームレスタイプのドアである。尚、ドア1は、自動車ボディに対して前部が軸支され、後側が開放される構成となっている。
【0023】
また、ドアウエザストリップ3は、ドア1の前縁部、下縁部、及び後縁部に沿って取付けられる押出成形部11と、押出成形部11の前側の端末に一体形成された前型成形部12、及び、押出成形部11の後側の端末に一体形成された後型成形部13とを備えている。本実施形態では、ドアウエザストリップ3は、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム)により構成されている。
【0024】
図2に示すように、押出成形部11は、ドア1の外周に沿って設けられるリテーナ部5に取付けられる取付基部15と、取付基部15と一体形成され、中空部を有してなるシール部16とを備えている。そして、ドア1が閉鎖されたときに、シール部16が自動車ボディのドア用開口部の周縁部に圧接して変形し、これにより自動車ボディ及びドア1間がシールされるようになっている。尚、押出成形部11の取付基部15には、押出成形部11の長手方向に沿って所定間隔毎にクリップ19が取付けられており、当該クリップ19をリテーナ部5に形成された取付孔20に嵌め込むことでドアウエザストリップ3がドア1に取付けられている。
【0025】
また、図1に示すように、ドア1には、ベルトラインに沿ってガラスウエザストリップ9が設けられている。ガラスウエザストリップ9は、ドアアウタパネルの上縁部に取付けられるガラスアウタウエザストリップと、ドアインナパネルの上縁部に取付けられるガラスインナウエザストリップとから構成されている(図示略)。尚、図示しないが、ガラスアウタウエザストリップ及びインナウエザストリップは、それぞれパネル上縁部に取付けられる断面略コ字状の基部と、基部から突出するシールリップとを備えており、ドアガラスDGにより窓部Wが閉鎖されると、シールリップにより、ベルトラインにおいてドアガラスDGの外内側面がシールされるようになっている。
【0026】
さて、図3、図4に示すように、後型成形部13は、ドアインナパネルの車内側の面に取付けられ、ドアインナパネルの車内側の面を被覆する本体部31と、ドアガラスDGの昇降をガイドするとともに、ベルトラインにおいてドアガラスDGの後縁部をシールする横断面(横方向に切ったときの断面)略コ字状のガラスシール32と、ガラスインナウエザストリップの後側の端末を収容する端末収容部33とを備え、型成形によりこれらが一体的に形成されている。
【0027】
本体部31は、ドアインナパネルの車内側の面に合致する断面形状を有しており、ドアガラスDGよりも車外側に位置し、ドアインナパネルの後上の隅部と当接する第1板状部34と、第1板状部34の前縁部から車内側に延出する第2板状部35と、ドアガラスDGよりも車内側に位置し、第2板状部35の車内側の端縁から前方に延出する第3板状部36とを備えている。また、本体部31(第1〜第3板状部34、35、36)には、後型成形部13(EPDM)よりも硬質な樹脂材料(例えばポリプロピレン等)よりなり、型成形時にインサート成形される図示しない埋設部材が設けられている。加えて、第1板状部34及び第3板状部36には車幅方向に貫通する挿通孔37が形成されており、当該挿通孔37とドアインナパネルに形成された取付孔とを位置合わせしてクリップ(図示略)を取付けることにより、後型成形部13がドア1に固定されている。また、第2板状部35は、ドアインナパネルの形状に合わせて、上方かつ前方に向けて部分的に湾曲しつつ延びているが、第2板状部35のうち上部前方部位においては、ドアガラスDGとの干渉を避けるべく、後方に突出する断面略L字状の凹み部39が形成されている。
【0028】
図4、図5等に示すように、ガラスシール32は、第2板状部35の凹み部39の上部後端縁から上方に向けて延び、ドアガラスDGの後端縁に対向して、ドアガラスDGの外周面に摺接する基底部41と、基底部41の車内側の端縁から(凹み部39の上部車内側端縁に沿って)前方に延び、ドアガラスDGの車内側の面に摺接する車内側シール部42(図4参照)と、基底部41の車外側の端縁から前方に延び、ドアガラスDGの車外側の面に摺接する車外側シール部43とを備えている。また、ガラスシール32は、上縁部に向けて次第に薄肉になっている。加えて、車外側シール部43には、後型成形部13の成形に際してインサート成形される金属製の芯部46が埋設されている(図5参照)。芯部46は、本体部31に埋設された埋設部材と一体的に形成されている。
【0029】
図3に示すように、端末収容部33は、第3板状部36の上部から車外側に突出するようにして、第2板状部35の上部前方位置に設けられ、ガラスインナウエザストリップの基部を収容可能な断面略コ字状の受部48と、ガラスインナウエザストリップの後側の端末(後端面)と突き合わされる被覆部49とを備えている。車内側シール部42は、端末収容部33の車外側の壁部と連続的に形成されている(図4参照)。
【0030】
尚、窓部Wを閉めた状態で車室外に配置されるガラスアウタウエザストリップは、雨水の浸入や風切り音の発生を防止する等の機能を十分に発揮させるべく、後型成形部13よりも後方のドア1の後端縁にまで延びている。一方、ガラスインナウエザストリップは、ガラスアウタウエザストリップよりも短く構成され、ガラスインナウエザストリップの後端末は、窓部Wを閉鎖した状態にあるドアガラスDGの後縁部よりも前方に配置される端末収容部33に収容されている。
【0031】
さて、図5に示すように、本実施形態では、ドアガラスDGと摺接するガラスシール32の内側面に対し、ガラスシール32よりも硬質な素材よりなる(摩擦係数の低い)摺動部材としての摺動テープ51が貼り付けられている。摺動テープ51は、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレンを配合した樹脂)により構成されており、該摺動テープ51を貼着することで、ドアガラスDGの摺動性の向上が図られる。
【0032】
また、摺動テープ51は、基底部41、車内側シール部42、及び車外側シール部43に沿って折り曲げられて貼り付けられ、本実施形態では、ガラスシール32の上縁部と摺動テープ51の上縁部とがぴったりと揃っている。
【0033】
次に、後型成形部13(ガラスシール32)の製造過程について説明する。まず、後型成形部13を成形する金型に押出成形部11の後端末をセットして型締めする。続いて、未加硫のEPDMを金型のキャビティに注入し、充填させる。加硫後、型開きして、成形された後型成形部13を金型から取外す。図6に示すように、本実施形態では、後型成形部13を型成形した時点で、ガラスシール32の上縁部の全域から上方に延出する肉余り部52がガラスシール32と一体的に形成される。当該肉余り部52は所謂「バリ」と称されるものであるが、本実施形態では、ガラスシール32の上縁部全域に肉余り部52が確実に形成されるように、未加硫のEPDMを金型のキャビティに注入する際の圧力や、型締めの力が適宜調節される。
【0034】
その後、図7に示すように、型成形された後型成形部13に対し、摺動テープ51を、ガラスシール32と肉余り部52とにかけて貼着する。本実施形態では、ガラスシール32と肉余り部52との境界部において、摺動テープ51が貼着されるガラスシール32の内側面と、肉余り部52の内側面とが面一となっている。また、肉余り部52はガラスシール32よりも薄肉であり、ガラスシール32の外側面と肉余り部52の外側面との境界部に沿って段差53が形成されている。
【0035】
そして、ガラスシール32と肉余り部52との境界部を切断して、肉余り部52及び摺動テープ51のうち肉余り部52に貼着された部位をガラスシール32から除去する。以上のようにして、ガラスシール32の上縁部と摺動テープ51の上縁部とがぴったりと揃った後型成形部13を得ることができる。
【0036】
以上詳述したように、本実施形態によれば、ガラスシール32の上縁部と摺動テープ51の上縁部とがぴったりと揃っている。従って、ガラスシール32の上縁部から摺動テープ51が上方にはみ出して外観品質の低下を招いてしまうといった事態を回避しつつ、ガラスシール32の上縁部の剛性を高め、ドアガラスDGの昇降の繰返し等によってガラスシール32の上縁部が破れてしまうといった事態を防止することができる。また、ガラスシール32の内側面に摺動テープ51が貼着されることにより、ドアガラスDGの摺動性を向上させることができる。特に、本実施形態では、摺動テープ51がガラスシール32の上縁部にまで貼着されているので、ドアガラスDGの摺動性を向上させるといった作用効果が一層確実に奏される。
【0037】
加えて、肉余り部52は、ガラスシール32の構成材料を金型のキャビティに注入する際の圧力や、型締めの力を適宜調節することにより形成されている。このため、従来の金型装置をそのまま使用することができる。
【0038】
尚、肉余り部52を意図的に形成しなくても、金型の突き合せ部に肉余り部52(所謂「バリ」)が形成される場合がある。但し、ガラスシール32の上縁部において一部分でも肉余り部52が形成されなかった場合、ガラスシール32の上縁部と摺動テープ51の上縁部とをぴったりと揃えることが困難になってしまうことが懸念される。また、無理に揃えようとして、ガラスシール32本体を切断してしまったり、丁寧に切断しようとして作業性の低下を招いたりするおそれがある。これに対し、本実施形態のように、意図的に肉余り部52をガラスシール32の上縁部全域に形成しておくことで、かかる不具合を回避することができる。
【0039】
また、摺動テープ51が貼着されるガラスシール32の内側面と肉余り部52の内側面とが面一となっている。このため、例えば、摺動テープ51が貼着される内側面において、ガラスシール32と肉余り部52との境界部に段差が形成される場合に、摺動テープ51が当該境界部において浮いてしまったり、段差に倣って貼り付けられてしまったりすることに起因して、境界部に沿って切断しても、ガラスシール32の上端縁と摺動テープ51の端縁とがきれいに揃わないといった事態を防止することができる。
【0040】
さらに、肉余り部52はガラスシール32よりも薄肉に構成され、ガラスシール32の外側面と肉余り部52の外側面との境界部に沿って段差53が形成されている。このため、当該段差53が切除の目印となり、切除する部分(肉余り部52)を確実に切除するとともに、切除してはいけない部分(ガラスシール32本体)を切除してしまうといった事態を抑制することができる。また、段差53に沿って切除すれば、肉余り部52を切除した後のガラスシール32の上縁部が歪んでしまう(波打つような形状になってしまう)といった事態を抑止することができ、品質の向上を図ることができる。
【0041】
また、本記実施形態では、ガラスシール32に対し上縁部にまできっちりと摺動テープ51が貼着されるため、ガラスシール32の上縁部を薄肉としても、ガラスシール32の上縁部が破れてしまうといった事態を防止することができる。また、摺動テープ51はガラスシール32よりも高剛性なので、摺動テープ51自体の肉厚が薄くても、十分にかかる作用効果が奏される。従って、摺動テープ51を含めたガラスシール32が厚肉となってしまうことに起因して、ガラスシール32とドアガラスDGとが圧接した際に、ドアガラスDGとガラスシール32との間に比較的大きな段差ができてしまい、外観品質の低下を招いてしまうといった事態を防止することができる。さらに、摺動テープ51自体の摩擦係数が低いため、摺動テープ51が貼着されることでガラスシール32の剛性が高くなったとしても、ドアガラスDGの摺動性の低下を招くことはない。
【0042】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0043】
(a)上記実施形態では、上記実施形態では、後型成形部13(ガラスシール32)の成形後に摺動テープ51を取着しているが、型成形に際し、摺動テープ51をガラスシール32と一体に接合してもよい。
【0044】
この場合の後型成形部13の製造方法としては、先ず、後型成形部13を成形する金型のうち、ガラスシール32を成形する部位(金型の中板)に対して、摺動テープ51を、その一部が型成形後においてガラスシール32の上縁部から上方に延出するように装着する。次に、金型のキャビティに未加硫のEPDMを充填して加硫することで、ガラスシール32の上縁部から上方に延出する肉余り部52をガラスシール32と一体的に形成するとともに、ガラスシール32と摺動テープ51とを接合する。そして、金型を開いて後型成形部13を取出す。
【0045】
その後、ガラスシール32と肉余り部52との境界部を切断して、肉余り部52及び摺動テープ51のうち肉余り部52に取着された部位をガラスシール32から除去する。以上のようにして、ガラスシール32の上縁部と摺動テープ51の上縁部とがぴったりと揃った後型成形部13を得ることができる。当該構成を採用する場合、ガラスシール32と摺動テープ51とを強固に固定することができ、ドアガラスDGの昇降の繰返しにより、ガラスシール32に対して摺動テープ51が位置ずれしたり、剥がれたりしてしまうといった事態を防止することができる。
【0046】
(b)上記実施形態では、ガラスシール32の上縁部に対して肉余り部52を意図的(積極的)に形成しているが、ガラスシール32の上縁部に肉余り部52を形成することを目的として後型成形部13(ガラスシール32)を成形しなくてもよい(意図することなく結果的に肉余り部52が形成される場合も含む)。当該構成においても、摺動テープ51をガラスシール32の上縁部から上方に突出するようにして取着し、摺動テープ51のうちガラスシール32から上方に突出した部位(肉余り部52が形成されている場合には肉余り部52についても)を切除することで、ガラスシール32の上縁部にまで摺動テープ51が取着された後型成形部13を得ることができる。
【0047】
(c)図7では、摺動テープ51が肉余り部52から上方にはみ出さないように貼り付けられているが、はみ出して貼り付けてもよい。但し、コスト削減の観点からすれば、摺動テープ51が肉余り部52から上方にはみ出さないように貼り付けることが望ましい。尚、コスト削減の観点からすれば、ガラスシール32から上方に突出する肉余り部52の延出長や、肉余り部52に貼り付けられる摺動テープ51の量が少ない方が望ましいのであるが、少なすぎると、ガラスシール32の上縁部を上手く切断することができないおそれがあるため、ある程度肉余り部52の突出長や肉余り部52に貼り付けられる摺動テープ51の量を確保することが望ましい。
【0048】
(d)上記実施形態では特に言及していないが、ガラスシール32が上縁部以外の端縁部(車外側シール部43の前縁部)においてもドアガラスDGと摺接する構成の場合には、かかる端縁部にも肉余り部を形成するとともに、当該肉余り部とガラスシール32とにかけて摺動テープ51を貼着し、肉余り部とガラスシール32との境界部を切断することとしてもよい。
【0049】
(e)上記実施形態では、フッ素樹脂よりなる摺動テープ51を採用しているが、その他、ポリウレタン、ポリプロピレン等よりなる摺動テープを採用してもよい。但し、上記(a)の構成を採用する場合、摺動テープ51は加硫時に融解しない材料(例えば、ポリアミド、ポリイミド等)により構成されることとする。また、上記実施形態ではドアウエザストリップ3をEPDMにより構成しているが、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)等の別の素材により構成してもよい。また、芯部46が金属により構成されているが、後型成形部13よりも硬質な樹脂材料(本体部31に埋設される埋設部材と同じ材料)により構成してもよい。加えて、本体部31に埋設される埋設部材を金属により構成してもよい。但し、ドアウエザストリップ3の軽量化を図るべく、樹脂材料を採用することが望ましい。
【0050】
(f)上記実施形態では、フロントドアに取付けられるドアウエザストリップ3に具体化しているが、その他のドア(リアドア等)に取付けられるドアウエザストリップ及びガラスアウタウエザストリップに適用することとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】ドアの概略構成を示す正面模式図である。
【図2】ドアウエザストリップを示す図1のJ−J線断面図である。
【図3】車外側(取付面側)から見た後型成形部を示す斜視図である。
【図4】車内側(露出面側)から見た後型成形部を示す斜視図である。
【図5】ガラスシールを示す図1のL−L線断面図である。
【図6】ガラスシールの製造過程を示す断面図である
【図7】ガラスシールの製造過程を示す断面図である
【符号の説明】
【0052】
1…ドア、3…ドアウエザストリップ、5…リテーナ部、11…押出成形部、13…後型成形部、15…取付基部、16…シール部、31…本体部、32…ガラスシール、51…摺動テープ、52…肉余り部、53…段差、DG…ドアガラス、W…窓部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームレスドアの外周に沿って取付けられる取付基部と、前記取付基部と一体的に成形され、ドアの閉鎖時において車両本体に形成されたドア用開口部の周縁部に圧接されるシール部とを備えたフレームレスドアのドアウエザストリップであって、
ベルトラインに対応して配置される両端末部において型成形部を備え、
前記型成形部のうち少なくとも一方は、ドアガラスの縦縁部をシールする断面略コ字状のガラスシールを備え、
前記ガラスシールのうち昇降するドアガラスと摺接する部位である内側面には、シート状の摺動部材が取着される構成であって、
前記型成形部の成形時において、前記ガラスシールの上縁部から上方に延出する肉余り部を前記ガラスシールと一体的に形成し、
前記摺動部材を、前記ガラスシールと前記肉余り部とにかけて取着し、
前記ガラスシールと前記肉余り部との境界部を切断して、前記肉余り部及び前記摺動部材のうち前記肉余り部に取着された部位を前記ガラスシールから除去することで、前記ガラスシールの上縁部にまで前記摺動部材が取着されたフレームレスドアのドアウエザストリップ。
【請求項2】
前記肉余り部は前記ガラスシールよりも薄肉に構成され、前記ガラスシールと前記肉余り部との境界部に沿って段差が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のフレームレスドアのドアウエザストリップ。
【請求項3】
前記ガラスシールと前記肉余り部との境界部において、前記摺動部材が取着される前記ガラスシールの内側面と、前記肉余り部の内側面とが面一であることを特徴とする請求項1又は2に記載のフレームレスドアのドアウエザストリップ。
【請求項4】
フレームレスドアの外周に沿って取付けられる取付基部と、前記取付基部と一体的に成形され、ドアの閉鎖時において車両本体に形成されたドア用開口部の周縁部に圧接されるシール部とを備えたフレームレスドアのドアウエザストリップであって、
ベルトラインに対応して配置される両端末部において型成形部を備え、
前記型成形部のうち少なくとも一方は、ドアガラスの縦縁部をシールする断面略コ字状のガラスシールを備え、
前記ガラスシールのうち昇降するドアガラスと摺接する部位である内側面には、シート状の摺動部材が取着される構成であって、
前記摺動部材を、前記ガラスシールの上縁部から上方に突出させて取着し、
前記摺動部材のうち前記ガラスシールから上方に突出した部位を前記ガラスシールから除去することで、前記ガラスシールの上縁部にまで前記摺動部材が取着されたフレームレスドアのドアウエザストリップ。
【請求項5】
フレームレスドアの外周に沿って取付けられる取付基部と、前記取付基部と一体的に成形され、ドアの閉鎖時において車両本体に形成されたドア用開口部の周縁部に圧接されるシール部とを備えるとともに、
ベルトラインに対応して配置される両端末部において型成形部を備え、
前記型成形部のうち少なくとも一方は、ドアガラスの縦縁部をシールする断面略コ字状のガラスシールを備え、
前記ガラスシールのうち昇降するドアガラスと摺接する部位である内側面には、シート状の摺動部材が取着されるフレームレスドアのドアウエザストリップの製造方法であって、
前記型成形部を成形する金型のうち前記ガラスシールを成形する部位に対して、前記摺動部材を、その一部が型成形後において前記ガラスシールの上縁部から上方に延出するように装着する工程と、
前記金型のキャビティに前記型成形部の形成用材料を充填し、当該形成用材料と前記摺動部材とを接合する工程と、
前記金型を開いて前記型成形部を取出す工程と、
前記摺動部材の延出部分を前記ガラスシールの上縁部で切除する工程とを備えたフレームレスドアのドアウエザストリップの製造方法。
【請求項6】
フレームレスドアの外周に沿って取付けられる取付基部と、前記取付基部と一体的に成形され、ドアの閉鎖時において車両本体に形成されたドア用開口部の周縁部に圧接されるシール部とを備えるとともに、
ベルトラインに対応して配置される両端末部において型成形部を備え、
前記型成形部のうち少なくとも一方は、ドアガラスの縦縁部をシールする断面略コ字状のガラスシールを備え、
前記ガラスシールのうち昇降するドアガラスと摺接する部位である内側面には、シート状の摺動部材が取着されるフレームレスドアのドアウエザストリップの製造方法であって、
前記型成形部を成形する金型のうち前記ガラスシールを成形する部位に対して、前記摺動部材を、その一部が型成形後において前記ガラスシールの上縁部から上方に延出するように装着する工程と、
前記金型のキャビティに前記型成形部の形成用材料を充填し、前記ガラスシールの上縁部から上方に延出する肉余り部を前記ガラスシールと一体的に形成するとともに、当該形成用材料と前記摺動部材とを接合する工程と、
前記金型を開いて前記型成形部を取出す工程と、
前記ガラスシールと前記肉余り部との境界部を切断して、前記肉余り部及び前記摺動部材のうち前記肉余り部に取着された部位を前記ガラスシールから除去する工程とを備えたフレームレスドアのドアウエザストリップの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−76632(P2010−76632A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−248092(P2008−248092)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】