説明

フードシールによるシール構造

【課題】エンジンフードの前端部に取り付けられたフードシールによるシール構造において、エンジンフード閉止状態における見栄えを向上させる。
【解決手段】エンジンフード1とラジエータグリル2との隙間α1を封止するフードシール6のうち、取付基部13の前端から加飾ビード10をエンジンフード1の最前端1bに弾接するように前方に向けて突出形成する。加飾ビード10よりも奥まった位置となる取付基部13の前端部下面を根元部16としてシールリップ14を突出形する。加飾ビード10の下方に、それとラジエータグリル2およびシールリップ14の三者によって溝状空間26を形成し、隙間α1と隙間α2との差を目立ちにくくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のエンジンフードの前端部に添設されるフードシールのシール構造に関し、より詳しくは、エンジンフードの前端部裏面にその車幅方向に沿ってフードシールを配設して、エンジンフード閉時にフードシールをその下方側に位置するラジエータグリルやヘッドランプ等の車体外装部材に弾接させることにより、エンジンフードの前端部と車体外装部材との隙間を封止するようにしたシール構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のフードシールによるシール構造として例えば特許文献1,2に記載のものが提案されている。
【0003】
特許文献1に記載の構造では、図5に示すように、エンジンフード40の前端部裏面に固定された舌片状の取付基部41の先端に斜状のシールリップ42を上下両面に突出形成して、その取付基部41の先端形状を実質的に断面矢じり形状のものとして形成してある。
【0004】
また、特許文献2に記載の構造は、上記の斜状のシールリップ42に代えて、シールリップそのものを中空状に形成したものと理解することができ、いずれの文献に記載の構造においても、エンジンフード閉時にはシールリップ42をラジエータグリルやヘッドランプ等の車体外装部材43とエンジンフード40の前端との間に挟み込むことで両者の隙間を閉塞もしくは封止するようになっている。
【特許文献1】特開平2−81745号公報(図1)
【特許文献2】特開平6−298125号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献1,2に代表されるような従来の構造では、エンジンフード閉時に、そのエンジンフード40とラジエータグリルやヘッドランプ等の車体外装部材43とのいわゆる見切り部分(境界部分)において、シールリップ42が車体外装部材43の上面をシール面44としてこれらに弾接もしくは圧接することになるが、上記シール面44は車幅方向を通して必ずしも面一状態にはなく、図5に破線で示すように車体前部の造型上の観点から屈曲もしくは三次元的に変化していることが往々にしてある。
【0006】
このような場合には、シール面44の変化に追従するべくシールリップ42の撓み形状が変化することから、エンジンフード40の最前端と車体外装部材43とがなす寸法αもさることながら、図5に示すようにエンジンフード40とシールリップ42の前端同士のなす寸法Eが漸増もしくは漸減するような形態で車幅方向にて微妙に変化し、これに起因して観者にはシールリップ42のいわゆるうねり感を与えてしまい、見栄えもしくは外観品質の向上が望めない。
【0007】
このような傾向は、上記のシール面44の三次元的な変化に加えてエンジンフード40あるいは車体外装部材等43の建付誤差もしくは組付誤差等が上乗せされると一段と顕著となる。
【0008】
本発明はこのような課題に着目してなされたものであり、見栄えもしくは外観品質を改善したフードシールによるシール構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、先に述べたように、エンジンフードの前端部裏面にその車幅方向に沿ってフードシールを配設し、エンジンフード閉時にそのフードシールを下方側の車体外装部材、例えばラジエータグリルやヘッドランプ等に弾接させることによりエンジンフードの前端部と車体外装部材との隙間を封止するようにしたシール構造であることを前提としている。
【0010】
その上で、上記フードシールの取付基部の前端部下面に、エンジンフード閉時に車体外装部材に弾接するシールリップを突出形成する一方、上記取付基部の前端から前方に向けて少なくともエンジンフード閉時にそのエンジンフードの最前端下面に弾接する加飾ビードを突出形成し、エンジンフード閉時には、加飾ビードの下方にその加飾ビードと車体側外装部材およびシールリップの三者によって溝状空間が形成されるようになっていることを特徴としている。
【0011】
この場合、シールリップや加飾ビードの位置の安定性向上の上では、請求項2に記載のように、上記エンジンフードの前端部裏面には下方に向かって凹形状となる曲折コーナー部を形成する一方、フードシールの取付基部の前後方向中間部には上方に向かって凸形状となる曲折部を形成し、この曲折部を曲折コーナー部に密着させながら合致させることで、エンジンフードに対するフードシールの前後方向での位置決めがなされていることが望ましい。
【0012】
また、上記シールリップのより具体的な形状としては、請求項3に記載のように片持ち式のものとし、取付基部に対するシールリップの根元部が加飾ビードよりも奥まった位置となるように設定するか、請求項4に記載のようにシールリップを中空状のものとし、取付基部に対するシールリップの前側の根元部が加飾ビードよりも奥まった位置となるように設定する。
【0013】
したがって、少なくとも請求項1に記載の発明では、エンジンフード閉止時には、エンジンフード前端と車体外装部材との間にフードシールが介在していて、且つシールリップが車体外装部材に、加飾ビードがエンジンフードの最前端にそれぞれ弾接することで両者の隙間を閉塞もしくは封止している。
【0014】
この状態では、エンジンフードの前端の直下にこれに弾接するようにして幅寸法が一定の加飾ビードが位置している一方、その加飾ビードの下方側には加飾ビードと車体側外装部材およびシールリップの三者によって溝状空間が形成されていて、シールリップそのものは加飾ビードよりも奥まった位置にあって実質的に視認されにくく、加飾ビードのみが直接外部に露出している。
【0015】
そして、先に述べたように、車体外装部材のシール面の変化に追従するべくそれに弾接することになるシールリップの撓み形状が変化した場合、外部に露出している加飾ビードの幅寸法は不変であって車幅方向で一定していることから、従来のようないわゆるうねり感が発生することがなく、見栄えが良好なものとなる。その一方、上記のようにシールリップの撓み形状が変化したときには、加飾ビードの幅寸法は一定であっても、当然のことながらその加飾ビードの下方の溝状空間の幅寸法は変化することになる。しかしながら、加飾ビードの下側の溝状空間は観者にいわゆる影として認識されるだけであり、見栄えに悪影響を及ぼすようなことはない。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、フードシールにおけるシールリップを従来よりも奥まった位置に設定する一方、それよりも前方側に加飾ビードと溝状空間を併存させた構造としたことから、車体外装部材のシール面の変化に追従するべくシールリップの撓み形状が変化したとしても、従来のようなうねり感の発生がなく、その見栄えが大幅に向上する効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1〜3は本発明に係るシール構造の第1の実施の形態を示しており、図1はエンジンフードが閉止状態にある車体前部の部分斜視図を、図2は図1におけるC部の拡大図を、図3は図2のA−A線に沿う拡大断面図およびD−D線に沿う拡大断面図を合成した図をそれぞれ示している。
【0018】
図1〜3に示すように、車体前部には、エンジンルームを覆うエンジンフード1と、車体外装部材であるラジエータグリル2と、同じく車体外装部材であるヘッドランプ3とが備えられており、エンジンフード1とヘッドランプ3がなす隙間α2はエンジンフード1とラジエータグリル2とがなす隙間α1よりも大きくなっている。この隙間α1と隙間α2の差は、エンジンフード1の建付誤差や、ラジエータグリル2あるいはヘッドランプ3の組付誤差に加えて、ラジエータグリル2およびヘッドランプ3の上面となるシール面11が三次元的に変化していることに起因するもので、隙間α1から隙間α2に向かってその大きさが漸増している。なお、図2ではその隙間α1,α2を誇張して描いている。
【0019】
そして、エンジンフード1の前端部1aの裏面には、車幅方向に沿って均一断面形状(略均一断面形状を含む)のフードシール6がベルト状に配設されており、フードシール6によって上記隙間α1および隙間α2が封止されている。なお、上記エンジンフード1は、後ろヒンジ前開き式のものである。
【0020】
エンジンフード1は、アウタパネル7とインナパネル8の周縁部同士をヘミング結合することによって形成されたものであって、そのヘミング結合部9にはシーリング剤9aがビード状に塗布されている。そして、エンジンフード1の前端部1aでは、そのヘミング結合部9よりも後方となる位置にて下方に向かって凹形状となる断面略く字状の曲折コーナー部18が形成されている。
【0021】
一方、フードシール6は、ソリッドゴム製の取付基部13と、スポンジゴム製のシールリップ14と、取付基部13と同じソリッドゴム製の加飾ビード10とから大略構成されており、さらに、その取付基部13は、樹脂クリップ12にてインナパネル8に固定されている断面平板状の後端部15と、断面略弓形状のアーチ部28と、後端部15とアーチ部28との前後方向中間部となる位置にて上方に向かって凸形状になっている断面略く字状の曲折部19とから構成されている。
【0022】
上記シールリップ14は片持ち式のものであって、アーチ部28の前端部下面を根元部16とし、その根元部16から後方に向かって湾曲しつつ下方に向かって凸形状になるように突出形成されている。
【0023】
上記加飾ビード10は、断面半円状の丸みをもって車幅方向に沿って均一断面形状(略均一断面形状を含む)に成形されており、シールリップ14の根元部16よりも前方となる位置にてアーチ部28の前端から前方に向かって突出形成されている。
【0024】
フードシール6のエンジンフード1への取付構造としては、取付基部13の曲折部19をインナパネル8の曲折コーナー部18に密着させながら合致させた上で、上記樹脂クリップ12にてインナパネル8に固定しており、これにより加飾ビード10がエンジンフード1の最前端1bに常時弾接するようにエンジンフード1に対するフードシール6の前後方向での位置決めがなされている。つまり、エンジンフード1の最前端1bに加飾ビード10が常時弾接している状態を維持できるようになっている。また、エンジンフード1に固定する前のいわゆるフリー状態のフードシール6は、曲折部19の曲折角度が予め曲折コーナー部18の曲折角度より小さく形成されており、フードシール6をエンジンフード1に固定した際には、曲折部19を支点として起き上がるような復元力をもって加飾ビード10が最前端1bに押し付けられる。
【0025】
したがって、このように構成されたフードシール6によれば、エンジンフード1の閉止時には加飾ビード10がエンジンフード1の最前端1bに弾接した状態でシールリップ14が実線で示すラジエータグリル2および破線で示すヘッドランプ3に接触し、シールリップ14はアーチ部28と近接しつつ後方に倒れ込むようにして弾性変形する。そして、図2のA−A線に沿う断面では、加飾ビード10の下方(シールリップ14の前方)にて、図3に実線で示すように、加飾ビード10とラジエータグリル2およびシールリップ14の三者によって断面略矩形状の溝状空間26が形成され、一方、D−D線に沿う断面では、図3に破線で示すように、加飾ビード10とヘッドランプ3およびシールリップ14の三者によって同じく断面略矩形状の溝状空間26が形成される。
【0026】
ここで、その溝状空間26の後方となる位置にてラジエータグリル2およびヘッドランプ3と接触することになるシールリップ14は加飾ビード10よりも奥まった位置に形成されているので、外部からは視認されにくく、車体前部を見た観者にはシールリップ14よりも前方側の溝状空間26が影になっているように視認されるにすぎない。
【0027】
より詳しくは、エンジンフード1と破線で示すヘッドランプ3のなす隙間α2と、エンジンフード1とラジエータグリル2のなす隙間α1とが互いに異なっていて、なお且つシールリップ14の撓み形状が変化していも、エンジンフード1の最前端1bに対する加飾ビード10の弾接位置は変わらず、しかも加飾ビード10の幅寸法βもまた車幅方向で一定したままであるから、加飾ビード10とシールリップ14およびラジエータグリル2またはヘッドランプ3の三者によって形成される溝状空間26の幅寸法がh1からh2へと漸増するように変化してはいても、その溝状空間26はあくまで影として認識されるだけであり、従来のように観者にシールリップ14によるうねり感を与えることがない。
【0028】
このように第1の実施の形態によれば、エンジンフード1の建付誤差やラジエータグリル2あるいはヘッドランプ3の組付誤差によって、車幅方向において隙間α1が隙間α2に漸増するように変化している場合であっても、エンジンフード1の最前端1bと加飾ビード10が常時弾接し、直接外部に露出している加飾ビード10の幅寸法βが車幅方向で一定していることから、観者に違和感を与えることがなくなり、外観的な見栄えもしくは外観品質が向上することになる。
【0029】
また、ラジエータグリル2およびヘッドランプ3の上面であるシール面11が三次元的に変化することによって車幅方向において隙間α1が隙間α2に漸増するように変化していても、同様に観者に違和感を与えることがない。
【0030】
図4は本発明に係る第2の実施の形態を示したものであって、図3における片持ち式のシールリップ14に代わって中空状のシールリップ30を取付基部13と一体に成形したものである。なお、図4では先に図3で示した部位と共通する部位には同一符号を付している。
【0031】
図4に示すように、実線で示すラジエータグリル2および破線で示すヘッドランプ3に接触するシールリップ30は中空状のものであって、取付基部13に対するシールリップ30の前方根元部33が加飾ビード10よりも奥まった位置に形成されている一方、前方根元部33よりも後方側に位置することになる後方根元部32はその肉厚が極小のものとして形成されている。
【0032】
さらに、シールリップ30のうち後方側のコーナー部34から上記後方根元部32に向かってその肉厚が漸次小さくなるように設定されているとともに、コーナー部の内壁面にはノッチ31が形成されている。
【0033】
このように、極小肉厚の後方根元部32とノッチ31とを併存させるとともに、ノッチ31の形成位置から後方根元部32に向かってその肉厚が漸次小さくなるように設定することによって、特にシールリップ30の後部側での変形容易性を具備させながら、極小肉厚の後方根元部32とノッチ31とが実質的にシールリップ30の変形の起点となるように考慮されている。
【0034】
したがって、この第2の実施の形態によれば、エンジンフード1の閉止時には、シールリップ30がラジエータグリル2およびヘッドランプ3に接触し、上記ノッチ31と極小肉厚の後方根元部32とが変形の起点となることによって、ノッチ31が形成されているコーナー部34がアーチ部28に近接しつつシールリップ30が後方に倒れ込むようにして弾性変形する。そして、第1の実施の形態と同様に、加飾ビード10とシールリップ30およびラジエータグリル2またはヘッドランプ3の三者によって溝状空間26が形成される。
【0035】
その際に、第1の実施の形態と同様に、エンジンフード1の最前端1bと加飾ビード10が弾接し、直接外部に露出している加飾ビード10の寸法βは車幅方向で一定であることから、加飾ビード10の下方の溝状空間26が観者には影として視認されるにすぎない。その結果として、第1の実施の形態と全く同様の効果が得られることになる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1の実施の形態として、エンジンフードが閉止状態にある車体前部の部分斜視図である。
【図2】図1におけるC部の拡大図である。
【図3】図2におけるA−A線およびD−D線に沿う拡大断面図を合成した図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態として、図3における片持ち式のシールリップを中空状のシールリップに代えた図である。
【図5】従来のフードシールの拡大断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1…エンジンフード
1a…前端部
1b…最前端
2…ラジエータグリル(車体外装部材)
3…ヘッドランプ (車体外装部材)
α1,α2…隙間
6…フードシール
10…加飾ビード
13…取付基部
14…シールリップ
16…根元部
18…曲折コーナー部
19…曲折部
26…溝状空間
30…シールリップ
32…後方根元部
33…前方根元部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンフードの前端部裏面にその車幅方向に沿ってフードシールを配設し、エンジンフード閉時にそのフードシールを下方側の車体外装部材に弾接させることによりエンジンフードの前端部と車体外装部材との隙間を封止するようにしたシール構造において、
上記フードシールの取付基部の前端部下面に、エンジンフード閉時に車体外装部材に弾接するシールリップを突出形成する一方、
上記取付基部の前端から前方に向けて少なくともエンジンフード閉時にそのエンジンフードの最前端下面に弾接する加飾ビードを突出形成し、
エンジンフード閉時には、加飾ビードの下方にその加飾ビードと車体外装部材およびシールリップの三者によって溝状空間が形成されるようになっていることを特徴とするフードシールによるシール構造。
【請求項2】
上記エンジンフードの前端部裏面には下方に向かって凹形状となる曲折コーナー部を形成する一方、
フードシールの取付基部の前後方向中間部には上方に向かって凸形状となる曲折部を形成し、
この曲折部を曲折コーナー部に密着させながら合致させることで、エンジンフードに対するフードシールの前後方向での位置決めがなされていることを特徴とする請求項1に記載のフードシールによるシール構造。
【請求項3】
上記シールリップは片持ち式のものであって、そのシールリップの取付基部に対する根元部が加飾ビードよりも奥まった位置となるように設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載のフードシールによるシール構造。
【請求項4】
上記シールリップは中空状のものであって、そのシールリップの取付基部に対する前側の根元部が加飾ビードよりも奥まった位置となるように設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載のフードシールによるシール構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−21547(P2006−21547A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−198814(P2004−198814)
【出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【出願人】(000158840)鬼怒川ゴム工業株式会社 (171)
【Fターム(参考)】