説明

ブレーキ制御装置

【課題】マスタシリンダと液圧ユニットを繋ぐ配管側と、液圧ユニットとホイルシリンダとを繋ぐ配管側とでは液圧剛性が異なるため、圧力変化に基づく演算に誤差が生じ、適切なベース圧が得られず、運転者に違和感を与えるという問題があった。運転者に違和感を与えることなくブレーキアシストが可能なブレーキ制御装置を提供すること。
【解決手段】ブレーキ制御装置において、ポンプの吐出流量に応じてマスタシリンダ圧を補正し、補正されたマスタシリンダ圧に基づいてホイルシリンダ圧を増減圧制御することとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホイルシリンダの液圧を制御するブレーキ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、運転者のブレーキペダル操作時に所定条件が成立したときは、ポンプの作動によりホイルシリンダを増圧するブレーキアシスト制御が開示されている。そして、マスタシリンダ圧センサ値とポンプ増圧量に基づいて運転者のブレーキ操作量の推定値としてベース圧を算出し、このベース圧に基づいてホイルシリンダ圧制御を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−107612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、ベース圧をポンプの駆動指令に基づいて演算された増圧量に基づいて算出している。しかしながら、マスタシリンダと液圧ユニットを繋ぐ配管側と、液圧ユニットとホイルシリンダとを繋ぐ配管側とでは液圧剛性が異なるため、圧力変化に基づく演算に誤差が生じ、適切なベース圧が得られず、運転者に違和感を与えるという問題があった。
【0005】
本発明は、運転者に違和感を与えることなくブレーキアシストが可能なブレーキ制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明のブレーキ制御装置では、ポンプの吐出流量に応じてマスタシリンダ圧を補正し、補正されたマスタシリンダ圧に基づいてホイルシリンダ圧を増減圧制御することとした。
【発明の効果】
【0007】
よって、運転者の意図に沿った減速度が得られ、運転者に与える違和感を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1のブレーキ制御装置を備えた車両全体システム図である。
【図2】実施例1の液圧制御ユニット内の液圧回路である。
【図3】実施例1の運転者のブレーキペダル操作に基づくブレーキ液の流れを示す概略モデル図である。
【図4】実施例1の液圧制御ユニットによる圧力制御に基づくブレーキ液の流れを示す概略モデル図である。
【図5】実施例1のブレーキ制御装置における圧力と液量との関係を表す特性図である。
【図6】実施例1のブレーキアシスト制御処理を表すフローチャートである。
【図7】実施例1のブレーキアシスト制御処理を表すフローチャートである。
【図8】実施例1のブレーキアシスト制御処理を表すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0009】
図1は実施例1のブレーキ制御装置を備えた車両全体システム図である。実施例1の車両は駆動源としてモータジェネレータを備えたハイブリッド車両もしくは電気自動車である。統合制御コントロールユニット34では、運転者のアクセルペダル操作等に応じて駆動力を出力する制御を実行する。回生制御コントロールユニット33では、ブレーキペダルBPの操作時に、液圧制動力と電気的な回生制動力とを協調制御して、ブレーキコントロールユニット32及び統合制御コントロールユニット34に制御指令を出力し、所望の減速度を達成する。尚、ブレーキコントロールユニット32、回生制御コントロールユニット33及び統合制御コントロールユニット34はCAN通信線CANに接続され、コントロールユニット相互にセンサ情報や制御信号を送受信して車両の走行状態を制御する。
各輪(FR,FL,RR,RL)には、液圧制動力を発生させるホイルシリンダW/Cと、各輪の車輪速を検出する車輪速センサ43とを有する。また、運転者の操舵角を検出する舵角センサ42と、車両挙動(横加速度、前後加速度、ヨーレイト等)を検出する車両挙動センサ41と、運転者のブレーキペダル操作状態を表すマスタシリンダ圧を検出するマスタシリンダ圧センサ1と、を有する。尚、運転者のブレーキペダル操作量としては、マスタシリンダ圧力に限らずブレーキペダルストロークやブレーキペダル踏力を検出してもよい。また、前後加速度の検出信号の代用としてブレーキランプスイッチのON信号を使用してもよい。ブレーキコントロールユニット32では、CAN通信線CANを介して受信した制御信号に加え、検出された各センサ信号に基づいて制御信号を演算し、液圧制御ユニット31に対して制御指令信号を出力する。尚、液圧制御ニット31内の構成については後述する。
【0010】
ブレーキペダルBPには、運転者のブレーキペダルBP操作によって圧力を発生させるタンデム型のマスタシリンダM/Cが接続され、マスタシリンダ内部は図示しないプライマリシリンダ室とセカンダリシリンダ室とに分離されている。プライマリシリンダ室には左前輪と右後輪との制動力を確保するP系統配管U1が接続され、セカンダリシリンダ室には右前輪と左後輪との制動力を確保するS系統配管U2が接続されている(以下、上流側配管Uと記載する)。上流側配管Uは、液圧制御ユニット31に接続されている。液圧制御ユニット31は、各ホイルシリンダW/Cと配管L1,L2,L3及びL4を介して接続されている(以下、下流側配管Lと記載する)。図1に示すように、マスタシリンダM/Cから液圧制御ユニット31までの配管距離は、液圧制御ユニット31から各ホイルシリンダW/Cまでの配管距離よりも短い。
【0011】
[ブレーキ制御装置の全体構成]
図2は実施例1の液圧制御ユニット内の液圧回路である。液圧制御ユニット31のP系統には、左前輪のホイルシリンダW/C(FL)、右後輪のホイルシリンダW/C(RR)が接続され、S系統には、右前輪のホイルシリンダW/C(FR)、左後輪のホイルシリンダW/C(RL)が接続されている。また、P系統、S系統それぞれに、ギヤポンプ19P及びギヤポンプ19Sが設けられ(以下、ギヤポンプ19と記載する。)、このギヤポンプ19は、モータM1によって駆動される。マスタシリンダM/Cとギヤポンプ19の吸入側とは、配管U1に接続された管路11Pと、配管U2に接続された管路11S(以下、管路11)とによって接続されている。この各管路11上には、常閉型の電磁弁であるゲートインバルブ2P,2Sが設けられている。また、管路11上であって、ゲートインバルブ2P,2S(以下、ゲートインバルブ2)とギヤポンプ19との間にはチェックバルブ6P,6S(以下、チェックバルブ6)が設けられ、各チェックバルブ6は、ゲートインバルブ2からギヤポンプ19へ向かう方向へのブレーキ液の流れを許容し、反対方向の流れを禁止する。
【0012】
各ギヤポンプ19の吐出側と各ホイルシリンダW/C(下流側配管L)とは、管路12P,12S(以下、管路12)によって接続されている。この各管路12上には、各ホイルシリンダW/Cに対応する常開型の比例制御電磁弁であるソレノイドインバルブ4FL,4RR,4FR,4RL(以下、ソレノイドインバルブ4)が設けられている。また、各管路12上であって、各ソレノイドインバルブ4とギヤポンプ19との間にはチェックバルブ7P,7S(以下、チェックバルブ7)が設けられている。この各チェックバルブ7は、ギヤポンプ19からソレノイドインバルブ4へ向かう方向へのブレーキ液の流れを許容し、反対方向の流れを禁止する。ソレノイドインバルブ4のマスタシリンダ側にはオリフィス4FL1,4RR1,4FR1及び4RL1が設けられている。
更に、各管路12には、各ソレノイドインバルブ4を迂回する管路17FL,17RR,17FR,17RL(以下、管路17)が設けられ、この管路17には、チェックバルブ10FL,10RR,10FR,10RL(以下、チェックバルブ10)が設けられている。この各チェックバルブ10は、ホイルシリンダW/Cからギヤポンプ19へ向かう方向へのブレーキ液の流れを許容し、反対方向の流れを禁止する。
【0013】
マスタシリンダM/Cと管路12とは管路13P,13S(以下、管路13)によって接続され、管路12と管路13とはギヤポンプ19とソレノイドインバルブ4との間において合流する。この各管路13上には、常開型の比例制御電磁弁であるゲートアウトバルブ3P,3S(以下、ゲートアウトバルブ3)が設けられ、マスタシリンダM/Cとゲートアウトバルブ3との間にはオリフィス3P1及び3S1が設けられている。
また各管路13には、各ゲートアウトバルブ3を迂回する管路18P,18S(以下、管路18)が設けられ、この管路18には、チェックバルブ9P,9S(以下、チェックバルブ9)が設けられている。この各チェックバルブ9は、マスタシリンダM/C側からホイルシリンダW/Cへ向かう方向のブレーキ液の流れを許容し、反対方向の流れを禁止する。
【0014】
ギヤポンプ19の吸入側にはリザーバ16P,16S(以下、リザーバ16)が設けられ、このリザーバ16とギヤポンプ19とは管路15P,15S(以下、管路15)によって接続されている。リザーバ16とギヤポンプ19との間にはチェックバルブ8P,8S(以下、チェックバルブ8)が設けられて、この各チェックバルブ8は、リザーバ16からギヤポンプ19へ向かう方向のブレーキ液の流れを許容し、反対方向の流れを禁止する。ホイルシリンダW/Cと管路15とは管路14P,14S(以下、管路14)によって接続され、管路15と管路14とはチェックバルブ8とリザーバ16との間において合流する。この各管路14には、それぞれ常閉型の電磁弁であるソレノイドアウトバルブ5FL,5RR,5FR,5RL(以下、ソレノイドアウトバルブ5)が設けられている。ソレノイドアウトバルブ5のホイルシリンダ側にはオリフィス5FL1,5RR1,5FR1及び5RL1が設けられている。
各ソレノイドバルブ(ゲートインバルブ2、ゲートアウトバルブ3、ソレノイドインバルブ4、ソレノイドアウトバルブ5)は、ブレーキコントロールユニット32によって制御される。ブレーキコントロールユニット32は、他のコントロールユニットからの制御信号や、各センサの入力信号等に基づいて、制動力を上乗せするブレーキアシスト制御、車輪のロックを回避するアンチスキッドブレーキ制御(ABS)、車両の挙動を安定化させる車両挙動安定化制御(VDC)を行う。また、他のコントローラから車間距離制御および障害物回避制御等車両の情報を用いてタイヤのスリップや車両挙動を制御するための演算を行い、車両として必要な制動力(全ての輪)を算出し、各車輪に必要な制動力目標値を演算して制御指令を出力する。
【0015】
(ブレーキアシスト制御について)
図3は実施例1の運転者のブレーキペダル操作に基づくブレーキ液の流れを示す概略モデル図、図4は実施例1の液圧制御ユニットによる圧力制御に基づくブレーキ液の流れを示す概略モデル図である。図3に示すように、非制御状態のときは、ゲートインバルブ2及びソレノイドアウトバルブ5は閉じた状態であり、ゲートアウトバルブ3及びソレノイドインバルブ4は開いた状態である。運転者がブレーキペダルBPをある踏力Fで踏み込むと、それに応じてブレーキペダルBPがストロークし、マスタシリンダM/C内のブレーキ液を上流側配管U内に押し出す。上流側配管U内に押し出されたブレーキ液は、ゲートアウトバルブ3を通って管路13(管路18)を通り、ソレノイドインバルブ4を通って下流側配管Lに供給され、ホイルシリンダW/Cに供給される。
この状態で、ブレーキアシスト制御が実行されると、図4に示すように、ゲートアウトバルブ3を閉じ、ゲートインバルブ2を開き、ポンプ19を駆動する。そして、マスタシリンダ内のブレーキ液を上流側配管U,管路11及びゲートインバルブ2を介して吸入し、管路12に吐出する。管路12に接続された管路13内にはポンプ19から吐出されたブレーキ液が下流側配管L内に供給され、ホイルシリンダ圧は増圧する。尚、ゲートアウトバルブ3にはマスタシリンダ側とホイルシリンダ側との差圧を維持できる程度の電磁力を作用させる。
【0016】
一方、ゲートアウトバルブ3よりもマスタシリンダ側(上流側配管U内を含む)は、ポンプ19による吸入によってブレーキ液が減少するため、マスタシリンダ圧は低下する。尚、運転者としては同じ制動力の意識でブレーキペダルBPを踏み込んでいても、ポンプ19の吸入によるブレーキ液減少速度が速く、上流側配管Uは液圧剛性も高いことから、実際にブレーキペダルBPにストロークが発生する前に液量が低下するため、液圧低下が生じる。一般に、運転者はブレーキペダルBPを操作する際、実際に車両に発生する減速度等を体感し、それに応じたブレーキペダル操作を行う。言い換えると、踏力やブレーキペダルストロークを制御しているのではなく、発生している減速度に基づくブレーキペダル操作を実行している。よって、マスタシリンダ圧が変化しても、減速度が発生していれば、運転者として特段の違和感を持つことは無い。
【0017】
図5は実施例1のブレーキ制御装置における圧力と液量との関係を表す特性図である。図5中、太い実線はマスタシリンダM/Cにおけるマスタシリンダ圧−液量特性を表し、細い実線(もしくは一点鎖線)は、ホイルシリンダW/Cにおけるホイルシリンダ圧−液量特性を表す。マスタシリンダM/Cは、上流側配管Uも短く、液圧剛性が高いため、マスタシリンダM/Cにおいて液量Δc1だけ変化すると、圧力としてはΔp1だけ変化する。言い換えると、液量変化に対する圧力変化が極めて大きい。
これに対し、ホイルシリンダW/Cは、特に制動初期において、ホイルシリンダ内のピストンストローク、すなわちブレーキパッドをブレーキロータにしっかりと押し付けるまでの間は容積変化が生じやすく、また、下流側配管Lは上流側配管Uに比べて非常に長いことから、制動初期の液圧剛性が低い。この液圧剛性は、配管の長さやホイルシリンダ容量の違いによっても若干特性が異なる。よって、ホイルシリンダW/Cにおいて液量Δc1だけ変化したとしても、圧力としてはΔp1よりも小さなΔp2程度しか変化しない。言い換えると、液量変化に対する圧力変化が極めて小さい。
【0018】
ここで、ブレーキアシスト制御とは、運転者がブレーキペダルBPを踏み込んだとき、その踏力に応じて発生する制動力に対し、ポンプ駆動によって制御的にホイルシリンダ圧を上乗せして減速度を維持または増大することで、運転者は十分な減速度を体感することができる。しかし、ポンプによってマスタシリンダ側からブレーキ液を吸い込んでホイルシリンダ側に供給し、これにより制動力を上乗せするため、マスタシリンダ内の液圧が変動すると、制御中に運転者の正確な制動意図が不明確となるおそれがある。そこで、マスタシリンダ圧センサ値を制御に応じて補正し、補正マスタシリンダ圧を運転者の意図を表す値として制御する。実施例1では、補正マスタシリンダ圧の算出にあたり、ポンプ吐出流量に基づいて制御することで、運転者の意図を精度よく検出する。以下、ブレーキアシスト制御処理について詳述する。
【0019】
(ブレーキアシスト制御処理)
図6及び図7は実施例1のブレーキアシスト制御処理を表すフローチャートである。本制御はブレーキコントロールユニット32内において所定制御周期毎に繰り返し演算され、演算された指令値に基づいて液圧制御ユニット31に制御信号を出力する。
ステップS101では、各センサ信号の入力処理を実行する。センサ信号の生値は、各コントローラ等の読み取り周期に対応して、エリアシングノイズの影響を受けないハード的なローパスフィルタを通過後の信号として読み込まれる。そして、車体振動、電気的ノイズの重畳を除去するソフト的ローパスフィルタ処理を行う。ローパスフィルタ周波数特性は、運転者が急峻な操作をした場合でも、圧力の変化や挙動の変化を十分に検出できる程度の周波数に設定する。
ステップS102では、入力処理されたセンサ信号のうち、運転者のブレーキペダル操作が検出されるマスタシリンダ圧センサ1の信号を常時検出する。また、検出した圧力が予め設定された所定圧力Px(例えば、0のように踏み増し操作を表す値)よりも大きいときは運転者のブレーキペダル操作が有ると判定する。尚、所定圧力Pxは、マスタシリンダ圧センサ1の誤差を考慮し、誤検出を回避できる余裕を持った値とすることが好ましい。
ステップS103では、CAN通信線CANにて送信された外部のコントロールユニットからの制動要求に基づく等価マスタシリンダ圧を検出する。検出信号はマスタシリンダ相当圧力の他、車体減速度、車両制動力等でもよく、車両のブレーキ諸元よりマスタシリンダ相当圧に換算して扱うことができる。
ステップS104では、ステップS102で検出したブレーキペダル操作の有無に基づいて、ブレーキペダル操作有りと判定されたときはステップS105へ進み、ブレーキペダル操作が無いと判定されたときは本制御フローを終了する。
【0020】
ステップS105では、ブレーキアシスト制御による制動力制御が実行中か否かを判定し、実行中のときはステップS106へ進み、実行中でないときはステップS110へ進む。
ステップS106では、ポンプ19の吐出流量を算出する。具体的には、現在の制御周期における各ホイルシリンダ圧力と、次回制御周期にて要求すべき各ホイルシリンダ圧力との差を算出し、予め既知のホイルシリンダ圧力−液量特性に基づいて、今回の制御周期にて吐出すべき液量を算出する。
ステップS107では、ポンプ19の吐出によって低下すると考えられるマスタシリンダ圧を算出する。具体的には、ステップS106にて算出された吐出流量がマスタシリンダ側からホイルシリンダ側に移動する液量によって変動するマスタシリンダ圧を、予め既知のマスタシリンダ圧力−液量特性に基づいて算出する。
ステップS108では、現在の制御周期にて低下すると考えられる圧力の低下分を積分して低下量積分値を算出する。これにより、時間経過と共に加算されるマスタシリンダ圧低下量を算出する。言い換えると、所定時間毎に低下するマスタシリンダ圧を積分したマスタシリンダ圧低下量積分値を算出する。尚、本補正はブレーキアシスト制御実行中のみ行う。ブレーキアシスト制御が解除されるときは、ステップS110へ進み、補正マスタシリンダ圧を予め設定したマスタシリンダ圧減少量に基づいて所定の勾配で減少させ、最終的に補正マスタシリンダ圧と実マスタシリンダ圧とを一致させる。
ステップS109では、マスタシリンダ圧センサ1により検出された実マスタシリンダ圧にステップS108で算出されたマスタシリンダ圧低下量積分値を加算して補正マスタシリンダ圧を算出する。
【0021】
ステップS111では、補正マスタシリンダ圧に基づいて運転者操作安定判断を行う。具体的には、補正マスタシリンダ圧の時間変化量が所定値(ΔPa)以下である場合には、運転者のブレーキペダル操作が安定していると判断する。言い換えると、本フローチャートは所定周期で繰り返し演算されていることから、後述するステップS112におけるブレーキ踏み増し判断、ステップS113におけるブレーキ踏み戻し判断によって踏み増し及び踏み戻しが所定時間検出されない場合に運転者操作状態安定と判定する。
ステップS112では、運転者が踏み増し要求(ブレーキペダルBPをストロークさせる、もしくは踏力を増大させるといった操作をし、減速度の増大を要求すること)をしたか否かを判断する。具体的には、補正マスタシリンダ圧の時間変化量が所定値ΔPaよりも大きく、急減速要求を表すΔPbよりも低い所定範囲内であり、かつ、上昇傾向を示すときを検出する。このときは、運転者が減速度の不足感を感じて制動力を増大させようとしている状態であると判断する。
ステップS113では、運転者が踏み戻し要求(ブレーキペダルBPをストロークさせる、もしくは踏力を減少させるといった操作をし、減速度の減少を要求すること)をしたか否かを判断する。具体的には、補正マスタシリンダ圧の時間変化量が所定値(−ΔPa)以下であり、かつ、下降傾向を示すとき、運転者は減速度としては十分もしくは減速度を減少させたい状態であると判断する。
【0022】
ステップS114では、ステップS111において運転者の操作が安定していると判断したかどうかを判断し、安定していると判断したときはステップS115に進んで目標減速度を算出し、それ以外のときはステップS116に進む。具体的には、運転者操作が安定しているときの前後加速度センサ値又は車輪速度変化から求めた推定減速度の平均値を算出し、これを目標減速度に設定する。すなわち、安定していると判断した時点における減速度を目標減速度に設定する。
ステップS116では、目標減速度と現在減速度との偏差を算出する。現在減速度とは、現時点における前後加速度センサ値又は現時点において算出された推定減速度の平均値である。
ステップS117では、ステップS112において運転者の操作が踏み増し要求と判断したかどうかを判断し、踏み増し要求と判断したときはステップS118に進み、それ以外のときはステップS123に進む。
ステップS118では、増加要求前期増圧量を算出する。具体的には、踏み増し要求と判断されてから予め設定された所定時間の間、所定勾配ΔPsによって増圧量が上昇するように算出する。
ステップS119では、増加要求後期増加量を算出する。具体的には、前期増圧が実施される所定時間の経過後、初期増圧時の所定勾配より緩やかな所定勾配ΔPaによって増圧量が上昇するように算出する。
【0023】
ステップS120では、前期増圧期間中か否かを判断し、前期増圧期間中と判断したときはステップS121へ進み、前期増圧期間経過後と判断したときはステップS122に進む。
ステップS121では、補正マスタシリンダ圧に増加要求前期増圧量を加算して、最終的なホイルシリンダ圧要求値を作成する。
ステップS122では、補正マスタシリンダ圧に増加要求後期増圧量を加算して、最終的なホイルシリンダ圧要求値を作成する。
【0024】
図8は実施例1のブレーキアシスト制御処理を表すタイムチャートである。初期状態は運転者がある車速でブレーキペダルBPを操作することなく走行している状態とする。このときは、ステップS101からステップS104へと進む処理を繰り返す。
時刻t1において、運転者がブレーキペダルBPを踏み増し始め、マスタシリンダ圧が所定圧力Pxを超えると、ブレーキペダル操作有りと判断される。これにより、ステップS104→S105→S110へと進む。尚、補正マスタシリンダ圧は実マスタシリンダ圧であり、特に減算されることはない。その後、運転者がブレーキペダルBPを更に強く踏み込んで、ある程度の制動力を要求後、制動力要求が一定となり、安定したブレーキペダル操作状態が保たれる。
時刻t2において、運転者のブレーキペダル操作が安定していると判断されると(ステップS111)、ステップS115において目標減速度が算出され、時刻t2において発生している減速度が目標減速度に設定される。そして、ステップS116→ステップS123と進み、減速度フィードバック制御が実行される。これにより、ポンプ19の駆動によってホイルシリンダ圧が増圧されるため、実減速度が低下し始めると、目標減速度との偏差に応じ、減速度不足分を補うブレーキ液圧(減速分補助ブレーキ液圧)が付与される。このとき、マスタシリンダ側からブレーキ液が吸い込まれるため、マスタシリンダ圧は低下していく。そして、ポンプ駆動量、すなわち吐出流量から図5に示す特性図に基づいて低下するマスタシリンダ圧を算出し、これを積分していくことで低下分積分値を算出する。そして、マスタシリンダ圧センサ1の値に低下分積分値を加算することで、補正マスタシリンダ圧を算出する。この場合、運転者は特に減速度の増加要求を出していないため、マスタシリンダ圧センサ1の値が低下したとしても、補正マスタシリンダ圧は一定となっている。これに対し、比較例では、マスタシリンダ圧の低下に伴って減速度も徐々に低下してしまい、運転者にとっては減速度が十分に得られていないという違和感が生じてしまう。
【0025】
時刻t3において、減速度フィードバック制御を実行しているときに、補正マスタシリンダ圧が上昇傾向を示し、要求制動力も増加傾向を示しているときは、踏み増し要求有りと判断し、所定時間Tbの間、比較的上昇勾配の大きな増加要求前期増圧量を付与する。そして、所定時間Tb経過後は、比較的上昇勾配の小さな増加要求後期増圧量を付与する。
時刻t4において、運転者がブレーキペダルBPを強く踏み込むと、増加要求後期増圧量は保持された状態で、マスタシリンダ圧がホイルシリンダ圧より大きくなる。すると、チェックバルブ9を介してホイルシリンダ側にブレーキ液が供給され、ホイルシリンダ圧も上昇していく。
【0026】
時刻t5において、運転者がブレーキペダルを踏み戻しはじめ、補正マスタシリンダ圧の時間変化量が所定値以下であり、かつ下降傾向を示すと、ブレーキアシスト制御を解除し、補正マスタシリンダ圧を所定の勾配で減少させ、減速度を減少させる。具体的には、ゲートアウトバルブ3を差圧制御し、要求減速度の減少に応じてホイルシリンダ圧を減少させる。
【0027】
以上説明したように、実施例1にあっては下記に列挙する作用効果を得ることができる。
(1)運転者のブレーキ操作によって発生したマスタシリンダM/Cの圧力を検出するマスタシリンダ圧センサ1(マスタシリンダ圧検出部)と、マスタシリンダ内のブレーキ液を吸入して車輪に設けられたホイルシリンダW/Cに向けてブレーキ液を吐出するポンプ19と、検出されたマスタシリンダM/Cの圧力に対してホイルシリンダW/Cの圧力が高くなるようにホイルシリンダ圧力をコントロールするブレーキコントロールユニット32(コントロールユニット)を備え、ブレーキコントロールユニット32は、ポンプ19の吐出流量に応じて検出されたマスタシリンダM/Cの圧力を補正するステップS106〜S109(以下、マスタシリンダ圧補正部と記載する。)と、補正された補正マスタシリンダ圧に基づきポンプ19から吐出したブレーキ液によって車輪のホイルシリンダ圧を増減圧制御するステップS114〜S122(以下、ホイルシリンダ圧制御部と記載する。)と、を有する。
すなわち、ポンプ吐出流量に基づいてマスタシリンダ圧を補正するため、液圧剛性の違い等によって生じる誤差を抑制することができ、運転者の意図に沿った減速度が得られ、運転者に与える違和感を回避することができる。
【0028】
(2)ポンプ19の吐出流量は、ホイルシリンダ圧制御部によってホイルシリンダ圧を制御するために必要な流量を、ホイルシリンダの圧力と流量の特性に基づいて算出する。
よって、上流側配管Uや下流側配管Lの液圧剛性に応じてマスタシリンダ圧を補正することができ、精度の高い制御を実現することができる。
(3)ステップS106及びS107において、ポンプ19の吐出流量に基づいてポンプ19の吸入によって低下するマスタシリンダ圧の推定を行い、マスタシリンダ圧補正部は、推定された低下するマスタシリンダ圧に基づいてマスタシリンダ圧を補正する。
よって、ブレーキ制御装置の構成に応じた精度の高い補正マスタシリンダ圧を得ることができる。
(4)ステップS108及びS109において、低下するマスタシリンダ圧は、所定時間毎に低下するマスタシリンダ圧を積分したマスタシリンダ圧低下量積分値であり、マスタシリンダ圧補正部は、ホイルシリンダ圧制御部による制御中はマスタシリンダ圧低下量積分値に基づきマスタシリンダ圧を補正する。
よって、減少した流量に応じた精度の高い補正マスタシリンダ圧を得ることができる。
【0029】
(5)マスタシリンダ圧補正部は、ホイルシリンダ圧制御部による制御中以外は、マスタシリンダ圧低下量積分値により補正された補正マスタシリンダ圧を、予め設定したマスタシリンダ圧減少量に基づき減少させて、検出されたマスタシリンダ圧に補正マスタシリンダ圧を変化させる。
よって、マスタシリンダ圧低下量積分値が溜まることがなく、精度の高い補正マスタシリンダ圧を得ることができる。
(6)ブレーキコントロールユニット32は、運転者のブレーキ操作を行うブレーキペダルBPの踏み増しを検出するステップS112(以下、ブレーキ踏み増し検出部と記載する。)と、ブレーキペダルBPの踏み戻しを検出するステップS113(以下、ブレーキペダル踏み戻し検出部と記載する。)とを備え、ブレーキペダル踏み増し検出部とブレーキペダル踏み戻し検出部によって踏み増し及び踏み戻しが所定時間検出されない場合に、運転者操作状態安定と判定するステップS111(以下、運転者操作状態安定判定部と記載する。)を備え、ステップS114において、運転者操作状態安定判定部により安定と判定したことを制御介入条件としてホイルシリンダ圧制御部によってホイルシリンダ圧を制御する。
よって、運転者の意図に沿ったブレーキアシスト制御を行うことができる。
【0030】
(7)ブレーキコントロールユニット32は、車体の減速度を算出するステップS115(以下、車体減速度算出部と記載する。)と、運転者操作状態安定判定部により安定と判定したときの算出された車体減速度を目標車体減速度とするステップS116(以下、目標車体減速度算出部と記載する。)と、を有し、ホイルシリンダ圧制御部は、算出された目標車体減速度が車体減速度より大きいときにホイルシリンダ圧を増圧し、算出された目標車体減速度が車体減速度より小さいときにホイルシリンダ圧を減圧する。
よって、運転者の操作状態が安定しているときは、目標減速度となるように減速度を達成することができる。
(8)制御介入中にブレーキペダル踏み増し検出部により踏み増しが検出された場合、ホイルシリンダ圧制御部によりホイルシリンダ圧を増圧制御する。
よって、運転者の意図に沿ったブレーキアシスト制御を行うことができる。
【0031】
以下、実施例から把握しうる本発明の特徴を示す。
(9)運転者のブレーキ操作によって発生したマスタシリンダの圧力を検出するマスタシリンダ圧検出部と、
前記マスタシリンダ内のブレーキ液を吸入して車輪に設けられたホイルシリンダに向けてブレーキ液を吐出するポンプと、
前記ポンプの吐出流量から前記ポンプのブレーキ液の吸入による前記マスタシリンダ圧力の低下量を推定し、前記推定したマスタシリンダ圧の低下量に相当する圧力を前記検出されたマスタシリンダの圧力に対し増加補正するマスタシリンダ圧補正部と、
前記検出されたマスタシリンダの圧力の所定変化状態を検出すると、前記補正されたマスタシリンダ圧に基づき前記ポンプを駆動し、前記ホイルシリンダの圧力が高くなるようにコントロールするホイルシリンダ圧制御部と、
を有するコントロールユニットを備えたことを特徴とするブレーキ制御装置。
すなわち、運転者によりブレーキペダル操作がなされ、検出されたマスタシリンダの圧力が所定変化したときは、制動意図があると判断し、ポンプを駆動して補正マスタシリンダ圧に基づいてホイルシリンダの圧力を制御することで、運転者の意図に沿った、もしくは運転者の意図に対して十分な減速度が得られ、運転者に与える違和感を回避することができる。
(10)上記(9)に記載のブレーキ制御装置において、前記ポンプの吐出流量は、前記ホイルシリンダ圧制御部によってホイルシリンダ圧を制御するために必要な流量を、ホイルシリンダの圧力と流量の特性に基づいて算出することを特徴とするブレーキ制御装置。
よって、上流側配管Uや下流側配管Lの液圧剛性に応じてマスタシリンダ圧を補正することができ、精度の高い制御を実現することができる。
(11)上記(10)に記載のブレーキ制御装置において、前記マスタシリンダ圧の低下量は所定時間毎に低下するマスタシリンダ圧を積分したマスタシリンダ圧低下量積分値であることを特徴とするブレーキ制御装置。
よって、ブレーキ制御装置の構成に応じた精度の高い補正マスタシリンダ圧を得ることができる。
【0032】
(12)上記(11)に記載のブレーキ制御装置において、前記マスタシリンダ圧補正部は、前記ホイルシリンダ圧制御部による制御中以外は前記積分値により補正された補正マスタシリンダ圧を予め設定したマスタシリンダ圧減少量に基づき減少させて、前記検出されたマスタシリンダ圧に補正マスタシリンダ圧を変化させることを特徴とするブレーキ制御装置。
よって、マスタシリンダ圧低下量積分値が溜まることなく、精度の高い補正マスタシリンダ圧を得ることができる。
(13)上記(10)に記載のブレーキ制御装置において、前記コントロールユニットは、前記運転者のブレーキ操作を行うブレーキペダルの踏み増しを検出するブレーキペダル踏み増し検出部と、前記ブレーキペダルの踏み戻しを検出するブレーキペダル踏み戻し検出部とを備え、前記所定変化状態は、前記ブレーキペダル踏み増し検出部と前記ブレーキペダル踏み戻し検出部によって踏み増し及び踏み戻しが所定時間検出されない場合であることを特徴とするブレーキ制御装置。
よって、運転者の意図に沿ったブレーキアシスト制御を行うことができる。
(14)上記(13)に記載のブレーキ制御装置において、前記コントロールユニットは、車体の減速度を算出する車体減速度算出部と、前記運転者操作状態安定判定部により安定と判定したときの前記算出された車体減速度を目標車体減速度とする目標車体減速度算出部と、前記ホイルシリンダ圧制御部は、前記算出された目標車体減速度が車体減速度より大きいときにホイルシリンダ圧を増圧し、算出された目標車体減速度が車体減速度より小さいときにホイルシリンダ圧を減圧することを特徴とするブレーキ制御装置。
よって、運転者の操作状態が安定しているときは、目標減速度となるように減速度を達成することができる。
【0033】
(15)上記(14)に記載のブレーキ制御装置において、前記制御介入中に前記ブレーキペダル踏み増し検出部により踏み増しが検出された場合、前記ホイルシリンダ圧制御部によりホイルシリンダ圧を増圧制御することを特徴とするブレーキ制御装置。
よって、運転者の意図に沿ったブレーキアシスト制御を行うことができる。
(16)運転者のブレーキ操作によって発生したマスタシリンダの圧力を検出するマスタシリンダ圧検出部と、前記マスタシリンダ内のブレーキ液を吸入して車輪に設けられたホイルシリンダに向けてブレーキ液を吐出するポンプと、前記ポンプの吐出流量から前記ポンプのブレーキ液の吸入による前記マスタシリンダ圧力の低下量を推定し、前記推定したマスタシリンダ圧の低下量に相当する圧力を前記検出されたマスタシリンダの圧力に対し増加補正するマスタシリンダ圧補正部と、前記補正されたマスタシリンダ圧を基準圧力として前記ポンプを駆動し、前記ホイルシリンダの圧力が前記基準圧力に対して高くなるようにコントロールするホイルシリンダ圧制御部とを有するコントロールユニットを備えたことを特徴とするブレーキ制御装置。
すなわち、補正マスタシリンダ圧を基準圧力とし、この基準圧力に対してホイルシリンダ圧力が高くなるように制御することで、運転者の意図に対して十分な減速度を与えることができる。
(17)上記(16)に記載のブレーキ制御装置において、前記ポンプの吐出流量は、前記ホイルシリンダ圧制御部によってホイルシリンダ圧が制御するために必要な流量をホイルシリンダの圧力と流量の特性に基づいて算出することを特徴とするブレーキ制御装置。
よって、上流側配管Uや下流側配管Lの液圧剛性に応じてマスタシリンダ圧を補正することができ、精度の高い制御を実現することができる。
(18)上記(16)に記載のブレーキ制御装置において、前記ポンプの吐出流量に基づいて前記ポンプの吸入によって低下する前記マスタシリンダ圧の推定を行い、前記マスタシリンダ圧補正部は、推定された前記低下するマスタシリンダ圧に基づいてマスタシリンダ圧を補正することを特徴とするブレーキ制御装置。
よって、ブレーキ制御装置の構成に応じた精度の高い補正マスタシリンダ圧を得ることができる。
【0034】
(19)上記(16)に記載のブレーキ制御装置において、前記コントロールユニットは前記運転者のブレーキ操作を行うブレーキペダルの踏み増しを検出するブレーキペダル踏み増し検出部と、前記ブレーキペダルの踏み戻しを検出するブレーキペダル踏み戻し検出部とを備え、前記ブレーキペダル踏み増し検出部と前記ブレーキペダル踏み戻し検出部によって踏み増し及び踏み戻しが所定時間検出されない場合に運転者操作状態安定と判定する運転者操作状態安定判定部を備え、前記運転者操作状態安定判定部により安定と判定したことを制御介入条件として前記ホイルシリンダ圧制御部によってホイルシリンダ圧を制御することを特徴とするブレーキ制御装置。
よって、運転者の意図に沿ったブレーキアシスト制御を行うことができる。
(20)上記(16)に記載のブレーキ制御装置において、前記コントロールユニットは、車体の減速度を算出する車体減速度算出部と、前記運転者操作状態安定判定部により安定と判定したときの前記算出された車体減速度を目標車体減速度とする目標車体減速度算出部と、前記ホイルシリンダ圧制御部は前記算出された目標車体減速度が車体減速度より大きいときにホイルシリンダ圧を増圧し、算出された目標車体減速度が車体減速度より小さいときにホイルシリンダ圧を減圧することを特徴とするブレーキ制御装置。
よって、運転者の操作状態が安定しているときは、目標減速度となる減速度を達成することができる。
【0035】
尚、実施例では、ゲートインバルブを備えた液圧回路構成を用いたが、この液圧回路構成は、マスタシリンダ側から吸い込んだブレーキ液をホイルシリンダ側に供給可能な構成であれば他の構成であってもよく、特に限定しない。ブレーキ液の移動に伴うマスタシリンダ側の圧力変化とホイルシリンダ側の圧力変化とを、それぞれの液圧剛性を考慮しつつポンプ吐出流量から算出することで、精度の高いブレーキアシスト制御を実現できる。
【符号の説明】
【0036】
1 マスタシリンダ圧センサ
2 ゲートインバルブ
3 ゲートアウトバルブ
4 ソレノイドインバルブ
5 ソレノイドアウトバルブ
16 リザーバ
19 ギヤポンプ
31 液圧制御ユニット
32 ブレーキコントロールユニット
33 回生制御コントロールユニット
34 統合制御コントロールユニット
41 車両挙動センサ
42 舵角センサ
43 車輪速センサ
BP ブレーキペダル
CAN 通信線
L 下流側配管
L1 配管
M/C マスタシリンダ
U 上流側配管
W/C ホイルシリンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者のブレーキ操作によって発生したマスタシリンダの圧力を検出するマスタシリンダ圧検出部と、
前記マスタシリンダ内のブレーキ液を吸入して車輪に設けられたホイルシリンダに向けてブレーキ液を吐出するポンプと、
前記検出されたマスタシリンダの圧力に対して前記ホイルシリンダの圧力が高くなるようにホイルシリンダ圧力をコントロールするコントロールユニットを備え、
前記コントロールユニットは、
前記ポンプの吐出流量に応じて前記検出されたマスタシリンダの圧力を補正するマスタシリンダ圧補正部と、
前記補正されたマスタシリンダ圧に基づき前記ポンプから吐出したブレーキ液によって車輪のホイルシリンダ圧を増減圧制御するホイルシリンダ圧制御部と、
を有することを特徴とするブレーキ制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のブレーキ制御装置において、
前記ポンプの吐出流量は、前記ホイルシリンダ圧制御部によってホイルシリンダ圧を制御するために必要な流量を、ホイルシリンダの圧力と流量の特性に基づいて算出することを特徴とするブレーキ制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載のブレーキ制御装置において、
前記ポンプの吐出流量に基づいて前記ポンプの吸入によって低下する前記マスタシリンダ圧の推定を行い、
前記マスタシリンダ圧補正部は、推定された前記低下するマスタシリンダ圧に基づいてマスタシリンダ圧を補正することを特徴とするブレーキ制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載のブレーキ制御装置において、
前記低下するマスタシリンダ圧は、所定時間毎に低下するマスタシリンダ圧を積分したマスタシリンダ圧低下量積分値であり、
前記マスタシリンダ圧補正部は、前記ホイルシリンダ圧制御部による制御中は前記積分値に基づきマスタシリンダ圧を補正することを特徴とするブレーキ制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載のブレーキ制御装置において、
前記マスタシリンダ圧補正部は、前記ホイルシリンダ圧制御部による制御中以外は、前記積分値により補正された補正マスタシリンダ圧を予め設定したマスタシリンダ圧減少量に基づき減少させて、前記検出されたマスタシリンダ圧に補正マスタシリンダ圧を変化させることを特徴とするブレーキ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−17049(P2012−17049A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−156527(P2010−156527)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】