説明

ブロー成形におけるインサート方法

【課題】成形後におけるインサート部材の開口加工にあたってインサート部材を閉じている壁部分を確実かつ精度良く切除することができるブロー成形におけるインサート方法を提供する。
【解決手段】筒状のインサート部品3を嵌挿するための凹溝4がキャビティ5に形成された分割型式の金型1,2を用いる。型開きした金型1のキャビティ5の凹溝4に筒状のインサート部品3を嵌挿して不動状態に保持する。金型1,2間にパリソン6を配置する。次いで型締めしたのちパリソン6内に加圧流体を導入してパリソン6をキャビティ5に沿って膨張させるとともに、パリソン6とインサート部品3のキャビティ5側端部9を溶着一体化させる。金型1,2を開放して成形品を取り出した後にインサート部品3のパリソンによって閉じられている部分13を後加工により切除して開口させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダクト、タンク、ボトルなどのブロー成形される中空成形品であって筒状のインサート部品をブロー成形時にインサートするブロー成形におけるインサート方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ブロー成形されるダクトなどに筒状のインサート部品をインサートする方法としては、両端に開口部をもつ筒状のインサート部品を嵌挿するための凹部を金型のキャビティに形成された金型を用い、金型の凹部にインサート部品を嵌挿して、加圧流体により膨張させるパリソンをインサート部品内にも膨出させて溶着一体化し、成形後にインサート部材内に膨出した部分を切除して開口させる方法が特許第3285952号公報に、また開口部を閉じる隔壁を設けた口部材を金型のキャビティに形成された凹部に嵌挿して、加圧流体により膨張させるパリソンと口部材のキャビティ側端部とを口部材内にパリソンが膨出しない状態で溶着させて一体化する方法が特許第3275102号公報に掲載されている。
【特許文献1】特許第3285952号公報
【特許文献2】特許第3275102号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前掲の特許文献1に記載されているブロー成形におけるインサート方法にあっては、成形後に口部材内に膨出している壁部分を切除して口部材を開口させるが、その切除の際には切除する壁のみが押圧されるので、それによる応力が口部材の端部とパリソンとの溶着部に集中して口部材が剥離することがあったり、あるいは切除する壁部分が切除の際の応力を受け止めるのに十分な剛性をもたないため、切除される開口部が粗雑面となるなどの問題があった。
【0004】
一方、特許文献2に記載されているブロー成形におけるインサート方法によれば、口部材のキャビティ側端部の開口を予め隔壁で閉じてインサート成形することにより、特許文献1に記載されているものにおける不都合は生じないが、成形時に口部材がパリソンにより凹溝内に押し込まれて正しく溶着されない。したがって、成形後に口部材を開口させるには隔壁とその面に形成される樹脂壁との二重壁を切除しなければならず、切除加工が容易でないばかりか、切除時の応力も大きくならざるを得ないところから、口部材の端部とパリソンとの溶着部にやはり応力が集中して口部材が剥離を防止するうえの効果もそれほどでないことが判明するに至っている。
【0005】
本発明は、上述のような問題点の解消に対処するものであって、ブロー成形の金型として筒状のインサート部品を嵌挿するための凹溝がキャビティに形成されたものを用い、金型のキャビティの凹溝に筒状のインサート部品を嵌挿して不動状態に保持してブロー成形することにより、加圧流体により膨張させるパリソンがインサート部材を押し込み変形させることなくインサート部品のキャビティ側端部とパリソンとを強力に溶着させることができるとともに、インサート部品を閉じている壁もパリソンとの溶着部分に形成されてその周囲が強固になっていることにより、成形後におけるインサート部品の開口加工にあたってインサート部品を閉じている壁部分を確実かつ精度良く切除することができ、殊に筒状のインサート部品が軟質素材で成るかあるいは蛇腹状であって可撓性を備えたものであっても、ブロー成形時のブロー圧による筒状のインサート部品の変形、溶着不良その他の不具合を無くし、成形後における筒状のインサート部品の開口加工を精度良くできるブロー成形におけるインサート方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明は次の方法を提供するものである。すなわち、請求項1のブロー成形におけるインサート方法は、筒状のインサート部品を嵌挿するための凹溝がキャビティに形成された分割型式の金型を用い、型開きした前記金型のキャビティの凹溝に前記筒状のインサート部品を嵌挿して不動状態に保持し、前記金型間にパリソンを配置し、次いで、前記金型を型締めしたのちパリソン内に加圧流体を導入してパリソンをキャビティに沿って膨張させるとともに、前記パリソンと前記インサート部品のキャビティ側端部を溶着一体化させ、次いで、金型を開放して成形品を取り出した後にインサート部品のパリソンによって閉じられている部分を切除して開口させることを特徴とするものである。
【0007】
また、請求項1の筒状のインサート部品は、請求項2のように、筒状のインサート部品のキャビティ側端部の外周および内周またはそのいずれか一方に張り出す環状の突起が形成されているものとすることができる。
【0008】
また、請求項1の筒状の筒状のインサート部品は、請求項4のように、そのキャビティ側端部の外周に張り出す環状の突起が形成されているとともに内周には別体のスペーサを介在させてブロー成形し、ブロー成形後に前記スペーサーを除去することができる。
【0009】
また、請求項1または2の筒状のインサート部品は、請求項3のように、一端が薄膜により閉じている筒状のインサート部品を、その閉じている端部を金型のキャビティ側となるように前記金型にインサートしてブロー成形し、ブロー成形後に前記薄膜とパリソンによって閉じられている部分とをともに切除して開口させることができる。
【0010】
また、請求項1または2の筒状のインサート部品は、請求項4のように、そのキャビティ側端部の外周に張り出す環状の突起が形成されているとともに内周には別体のスペーサを介在させてブロー成形し、ブロー成形後に前記スペーサーを除去することができる。
【0011】
また、請求項1、2、3または4の筒状のインサート部品は、請求項5のように、軟質素材で成るかあるいは蛇腹状であって可撓性を備えたものとすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、加圧流体により膨張させるパリソンがインサート部品内に膨出することなくインサート部品のキャビティ側端部とパリソンとを強力に溶着させることができるとともに、インサート部品を閉じている壁もパリソンとの溶着部分に形成されてその周囲が強固になっているので、成形後におけるインサート部品の開口加工にあたってインサート部品を閉じている壁部分を確実かつ精度良く切除することができ、殊に筒状のインサート部品が軟質素材で成るかあるいは蛇腹状であって可撓性を備えたものであっても、ブロー成形時のブロー圧による筒状のインサート部品の変形、溶着不良その他の不具合を無くし、成形後における筒状のインサート部品の開口加工を精度良くできる効果が得られるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図面は本発明に係るブロー成形におけるインサート方法をダクトのブロー成形態様を例として説明するものであって、図1はダクトのブロー成形態様を示す断面図、図2は同上正面図、図3はブロー成形後に開口加工を施して完成させたダクトの断面図、図4は同上部分斜視図である。図5は筒状のインサート部品としてそのキャビティ側端部の外周に張り出す環状の突起が形成されている実施の形態を示すダクトの部分断面図、図6は筒状のインサート部品としてそのキャビティ側端部の外周に張り出す環状の突起が形成されているとともに内周に別体のスペーサを介在させてブロー成形した形態を示すダクトの部分断面図、第7図は図6に示したダクトのブロー成形態様を示す断面図、8は一端が薄膜により閉じている筒状のインサート部品を、その閉じている端部を金型のキャビティ側となるようにインサートしてブロー成形する態様を示す断面図である。
【0014】
図1および図2に示すように、ブロー成形のための分割型式の金型1,2においてその一方の金型1には、筒状のインサート部品3を嵌挿するための凹溝4がキャビティ5に形成されている。6はパリソン、7は押出ダイである。図3および図4において8はダクトであり、このダクト8にはブロー成形時にインサート部品3が溶着されている。
【0015】
ダクト8のブロー成形にあたっては、型開きした前記金型1の凹溝4に、筒状のインサート部品3を嵌挿して不動状態に保持し、金型間にパリソンを配置する。次いで、金型1,2を型締めしたのちパリソン6内に加圧流体を導入してパリソン6をキャビティ5に沿って膨張させるとともに、パリソン6とインサート部品3のキャビティ側端部9を溶着一体化させる。
【0016】
前記筒状のインサート部品3は蛇腹状となっている。この筒状のインサート部品3のキャビティ5側の端部9は、その外周および内周に張り出す環状の突起10,11が形成されており、筒状のインサート部品3をキャビティ5の凹溝4に嵌挿した状態で環状の突起10が凹溝4の外周側のキャビティ面に当接し、環状の突起11が凹溝4の内周側のキャビティ面に当接して、筒状のインサート部品3が凹溝4に嵌挿されたうえキャビティ5に不動状態に保持されるとともに、凹溝4の開口端は環状の突起10,および環状の突起11により塞がれている。筒状のインサート部品3のキャビティ5側の端部9には環状の突起10,11より先端方向に突出する突起12が形成されている。
【0017】
したがって、この態様でパリソン6を加圧流体によりキャビティ5に沿って膨張させると、膨張するパリソン6は筒状のインサート部品3のキャビティ5の側端部9において突起10,11および突起12を取り巻くように溶着一体化される。筒状のインサート部品3のキャビティ5側端部はパリソン6による壁で閉じられている。13はその閉塞壁部分である。この閉塞壁部分13はその全面を切除部分aとして後加工により切除して筒状のインサート部品3を開口し(図3参照)、図4に示すダクト8を得る。前記筒状のインサート部材3を閉じているパリソン6による壁は膨張時に引き延ばされて薄肉になっているうえ、パリソン6との溶着部分に形成されてその周囲が強固になっているので、成形後における筒状のインサート部材3の開口加工にあたって筒状のインサート部材3を閉じている閉塞壁部分13を確実かつ精度良く切除することができる。
【0018】
図1および図2に示すように、筒状のインサート部品3は、そのキャビティ側端部9の外周および内周に張り出した環状の突起10,11を形成しているが、筒状のインサート部品3のキャビティ側端部9には、図5に示すように外周にのみ張り出した環状の突起14を形成したり、あるいは図示しないが内周にのみ張り出した環状の突起とすることもできる。なお、図5に示す実施の形態においても先端方向に突出する突起12を設けてあり、また前記図示しない実施の形態においても先端方向に突出する突起12を設ける。
【0019】
図6に示す実施の形態においては、図5に示す形態の筒状のインサート部品3をキャビティ5の凹溝4に嵌挿した状態で筒状のインサート部品3のキャビティ5側端部の内周側にスペーサー(補強リング)15を嵌挿してブロー成形する。このようにスペーサー15を備えることにより、ダクト8とインサート部品3との溶着一体化の強度が増強されるので、特に高圧用のダクトに好適である。なお、スペーサー15は成形後に除去するが、図6に示すように強度保持のためそのまま残しておいてもよい。
【0020】
図6に示した形態のダクト8は、図7に示す態様で成形するが、スペーサー15はキャビティ5と同一面となるとともに筒状のインサート部品3の蛇腹状内周面と金型1の凹溝4の内側支柱部分との間に介在させるので、金型1にインサートした筒状のインサート部品3は、そのキャビティ5側端部9が金型1のキャビティ5に固定状態となってブロー成形される。このため、筒状のインサート部品3が軟質素材で成るかあるいは蛇腹状であって可撓性を備えたものであっても、ブロー成形時のブロー圧によって筒状のインサート部品3のズレや変形、溶着不良その他の不具合が生じない。なお、閉塞壁部分13の全面を切除部分aとして後加工により切除する。
【0021】
また、図8に示すように、筒状のインサート部品3として一端が薄膜16により閉じている形態のものを予め成形しておき、前記筒状のインサート部品3を、その閉じている端部をキャビティ5側となるようにインサートしてブロー成形する態様によれば、筒状のインサート部品3がその薄膜16の部分でもキャビティ5に支持されるので、金型1の凹溝4はそのキャビティ5側が環状の突起14と薄膜16とにより塞がれる。このため、ブロー圧によってパリソン6の一部が金型1の凹溝4に落ち込むことがなく、インサート部品3のインサート精度を向上させることができる。特にこの効果は、筒状のインサート部品3が軟質素材で成るかあるいは蛇腹状であって可撓性を備えたものの場合において顕著である。なお、ブロー成形後に薄膜16とパリソン6によって閉じられた閉塞壁部分13の全面をともに切除部分aとして切除し、筒状のインサート部品3を開口させる。
【0022】
本発明によるブロー成形におけるインサート方法によれば、筒状のインサート部品3のキャビティ5側端部9に環状の突起10,11または14が形成されているので、筒状のインサート部品3のキャビティ5側端部9がキャビティ5に確実に支持された状態でブロー成形されることになり、筒状のインサート部品3が硬質のものは勿論のこと軟質のものであっても、筒状のインサート部品3とパリソン6との高い溶着一体化を実現できる。
【0023】
本発明において、インサート部品が、軟質の材料をブロー成形・射出成形・押出し成形・圧空成形等で成形される場合における軟質の材料とは、曲げ弾性率が1.0〜700MPaの軟質プラスチックもしくはゴム・熱可塑性エラストマーまたはそれらを含む組成物などである。曲げ弾性率が1MPa未満であれば、金型で突起を支えてもインサート部品がブロー圧に負けて凹溝に落ち込んでしまう。なお、曲げ弾性率が700MPaを超えるものであれば、必ずしも突起を付けて金型に支える必要がない。
【0024】
本発明においては、ブロー成形による成形品の素材とインサート部品の素材として、同系統の樹脂を用いると、ブロー成形時にインサート部品が成形品に強固に溶着するので好適である。例えば、ブロー成形による成形品が、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィン類により形成される場合には、インサート部品もオレフィン系の軟質素材で、エチレン−α−オレフィン系の軟質プラスチックもしくはゴム・熱可塑性エラストマーまたはそれらを主とする組成物を用いて形成する。
【0025】
また、ブロー成形による成形品が、ポリアミドやエステルのような極性ポリマーにより形成される場合には、インサート部品もポリアミド系やポリエステル系の軟質素材で、ポリアミド系やポリエステル系の軟質プラスチックもしくはゴム・熱可塑性エラストマーまたはそれらを主とする組成物を用いて形成する。
【0026】
同様に、インサート部品が蛇腹状の可撓性を備えたものの場合も、蛇腹状のインサート部品とブロー成形品とは同質の素材を用いることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係るブロー成形におけるインサート方法によるダクトのブロー成形態様を示す断面図である。
【図2】同上正面図である。
【図3】ブロー成形後に開口加工を施して完成させたダクトの断面図である。
【図4】同上部分斜視図である。
【図5】筒状のインサート部品としてそのキャビティ側端部の外周に張り出す環状の突起が形成されている実施の形態を示すダクトの部分断面図である。
【図6】筒状のインサート部品としてそのキャビティ側端部の外周に張り出す環状の突起が形成されているとともに内周に別体のスペーサを介在させてブロー成形した形態を示すダクトの部分断面図である。
【図7】図6に示したダクトのブロー成形態様を示す断面図である。
【図8】一端が薄膜により閉じている筒状のインサート部品を、その閉じている端部を金型のキャビティ側となるようにインサートしてブロー成形する態様を示す断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1,2 金型
3 筒状のインサート部品
4 筒状のインサート部品を嵌挿するための凹溝
5 キャビティ
6 パリソン
7 押出ダイ
8 ダクト
9 インサート部品のキャビティ側端部
10,11 環状の突起
12 先端方向に突出する突起
13 閉塞壁部分
14 環状の突起
15 補強リング
16 薄膜
a 切除部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のインサート部品を嵌挿するための凹溝がキャビティに形成された分割型式の金型を用い、
型開きした前記金型のキャビティの凹溝に前記筒状のインサート部品を嵌挿して不動状態に保持し、
前記金型間にパリソンを配置し、
次いで、前記金型を型締めしたのちパリソン内に加圧流体を導入してパリソンをキャビティに沿って膨張させるとともに、
前記パリソンと前記インサート部品のキャビティ側端部を溶着一体化させ、
次いで、金型を開放して成形品を取り出した後にインサート部品のパリソンによって閉じられている部分を切除して開口させる
ことを特徴とするブロー成形におけるインサート方法。
【請求項2】
筒状のインサート部品は、そのキャビティ側端部の外周および内周またはそのいずれか一方に張り出す環状の突起が形成されていることを特徴とする請求項1記載のブロー成形におけるインサート方法。
【請求項3】
一端が薄膜により閉じている筒状のインサート部品を、その閉じている端部を金型のキャビティ側となるように前記金型にインサートしてブロー成形し、ブロー成形後に前記薄膜とパリソンによって閉じられている部分とをともに切除して開口させることを特徴とする請求項1または2記載のブロー成形におけるインサート方法。
【請求項4】
筒状のインサート部品は、そのキャビティ側端部の外周に張り出す環状の突起が形成されているとともに内周には別体のスペーサを介在させてブロー成形し、ブロー成形後に前記スペーサーを除去することを特徴とする請求項1記載のブロー成形におけるインサート方法。
【請求項5】
筒状のインサート部品は、軟質素材で成るかあるいは蛇腹状であって可撓性を備えたものであることを特徴とする請求項1、2、3または4記載のブロー成形におけるインサート方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−132137(P2009−132137A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−120964(P2008−120964)
【出願日】平成20年5月7日(2008.5.7)
【出願人】(000104674)キョーラク株式会社 (292)
【Fターム(参考)】