説明

プラスチック製の管状部品と燃料タンクのネック部との連結方法

本発明は、抵抗効果により加熱できる抵抗要素(3)を用いる溶着によって、プラスチック製の管状部品(2)をプラスチック製の燃料タンクのネック部(1)に連結する方法に関する。連結すべき2つの部品の寸法形状をこれらの各々の一方の表面が他方の部品の対応する表面に接触させるような仕方で選択し、抵抗要素(3)を2つの表面のうちの一方に組み込み、2つの表面を互いに接触させ、抵抗要素(3)を2つの表面の構成材料を溶融させて2つの表面を互いに溶着するのに十分に高い温度まで加熱できるような強さで電流を抵抗要素(3)に流し、管状部品(2)及びネック部(1)は各々、バリヤ層(4)を有し、管状部品(2)及びネック部(1)を2つの接触表面が同軸であり且つこの領域におけるバリヤ層(4)が互いに平行であるような仕方で溶着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック製の管状部品をプラスチック製の燃料タンクのネック部に連結する方法及びかかる方法により得ることができる燃料タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
種々の車両に搭載されている燃料タンクは、一般に、これら燃料タンクの設計対象である使用の仕方と関連した不透性及び透過性に関する基準、並びに、燃料タンクが満足しなければならない環境的要件を満たさなければならない。現在、欧州と世界の他の国々の両方において、大気中及び一般的に言って環境中への汚染物質の放出の制限と関連した要求がかなり厳しくなっている。したがって、燃料タンクの設計は、様々な使用条件下において、不透性及び安全性をよりよく保証できる技術に向かって急速の進歩を遂げている。さらに、燃料タンクと関連したパイプ及び種々の付属品に起因する損失を最小に抑える試みも行われている。例えば、燃料タンクへの管、特に充填管の取付けでは、透過性の問題が生じる場合がある。これらの問題を軽減することを目的として、種々の解決策が提案されたが、これら解決策の殆どにおいて、充填管を、好ましくは燃料タンクと一体に形成された中間部品又はネック部に溶着することが必要である。
【0003】
かくして、特許文献1(米国特許出願公開第2003/0168853号明細書)は、抵抗要素(加熱フィラメント)を備えた中間カップリングを用いて、プラスチック製の管、特に燃料充填管をプラスチック製の燃料タンクに固定する技術を開示しており、この抵抗要素は、燃料充填管と上述したネック部との間に挿入される。かかるカップリング装置では、3つの部品を互いに嵌合させるので、制御すべき2ヶ所の溶着用インターフェースが存在する。加熱フィラメントにより形成される溶着部において、材料の膨張により圧力が加わり、種々の部品と部品との間の距離の安定度により、溶着部の良否が定められ、したがって、3部品システムでは、公差に由来する欠陥が内在することがある。さらに、連結すべき2つの部品がバリヤ層を有している場合、この技術に関する欠点は、この技術により2つのバリヤ層の間の透過経路が拡大することにある。
【0004】
特許文献2(仏国特許出願第2853861号明細書)は、加熱フィラメントを、タンク充填管と組み立てられる機能コンポーネントの中にどのように直接組み込むかを開示している。しかしながら、この特許文献2は、表面処理(弗素化)が施されたタンクに限定され、この特許文献2に記載された組立てモードによって漏れ経路が問題にならないというわけではない。
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/0168853号明細書
【特許文献2】仏国特許出願第2853861号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、バリヤ層を備えた部品に使用でき、中間カップリングを使用せずに、連結すべき部品のうちの一方に抵抗要素を直接巻き付けることによって、漏れ経路が短い組立体を得るための組立て方法を提案することにより上述の問題を解決することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的のため、本発明は、抵抗効果によって加熱できる抵抗要素を用いる溶着によって、プラスチック製の管状部品をプラスチック製の燃料タンクのネック部に連結する方法であって、連結すべき管状部品及びネック部の寸法及び形状を、管状部品及びネック部の一方の1つの表面が他方の対応する表面に接触するように選択する工程と、抵抗要素を上記1つの表面及び上記対応する表面のうちの一方に組み込む工程と、上記1つの表面及び上記対応する表面を互いに接触させる工程と、抵抗要素に電流を流す工程と、を有し、この電流の強さは、上記1つの表面及び上記対応する表面を構成するプラスチックを溶融させて上記1つの表面及び上記対応する表面を互いに溶着させるのに十分に高い温度まで抵抗要素を加熱できる強さであり、管状部品及びネック部は各々、バリヤ層を有し、管状部品及びネック部は、互いに接触した上記1つの表面及び上記対応する表面が同軸であり且つこの領域におけるバリヤ層が互いに平行になるように溶着される、方法を提供する。
【0008】
「燃料タンク」という用語は、燃料を、変化する種々の環境及び使用上の条件下において貯蔵できる密閉タンクを意味するものである。このタンクの一例は、自動車両に取り付けられるタンクである。
【0009】
本発明の方法によれば、燃料タンクは、プラスチックで作られる。
【0010】
「プラスチック」という用語は、少なくとも1種類の合成樹脂ポリマーを含む任意の材料を意味するものである。
【0011】
全ての種類のプラスチックが適している。特に適したプラスチックは、熱可塑性樹脂のカテゴリーから得られる。
【0012】
「熱可塑性樹脂」という用語は、熱可塑性エラストマーを含む任意の熱可塑性ポリマー並びにこれらの混合物を意味する。「ポリマー」という用語は、ホモポリマーとコポリマー(特に、2成分又は3成分コポリマー)の両方を意味している。かかるコポリマーの例は、非限定的に言えば、ランダムコポリマー、リニアブロックコポリマー、他のブロックコポリマー及びグラフトコポリマーである。
【0013】
融点が分解温度よりも低い任意の種類の熱可塑性ポリマー又はコポリマーが適している。少なくとも10℃の幅のある融点を持つ合成熱可塑性樹脂が、特に適している。かかる材料の例としては、これらの分子量に多分散性を示す材料が挙げられる。
【0014】
特に、ポリオレフィン、熱可塑性ポリエステル、ポリケトン、ポリアミド及びこれらのコポリマーを用いるのがよい。ポリマー又はコポリマーの混合物が使用されてもよく、例えば、ポリマー材料と、無機充填剤又はフィラー、有機フィラー及び/又は天然フィラーの混合物が使用され、フィラーの例は、カーボン、塩及び他の無機誘導体、天然繊維、ガラス繊維及びポリマー繊維を含むが、これらに限定されるものではない。上記ポリマー又はコポリマーの少なくとも1つを有する積層結合層からなる多層構造を使用することができる。
【0015】
用いられる場合の多いポリマーの1つは、ポリエチレンである。燃料タンクの基本成分として高密度ポリエチレン(HDPE)を用いた場合に優れた結果が得られた。
【0016】
本発明によれば、このタンクは、更に、液体及び/又は気体に対するバリヤを形成する材料の少なくとも1つの層を有する。好適例として、バリヤ層の性状及び厚さは、タンクの内面と接触状態にある液体及び気体の透過性をできるだけ制限するような仕方で選択される。バリヤ層は、金属、ポリマー又は任意その他のバリヤ材料のものであってよい。好適例として、この層は、ポリマー(樹脂)層であり、最も好ましくは、バリヤ樹脂、即ち、燃料を通さない樹脂、例えばEVOH(エチレン及び部分加水分解ビニルアセテートのコポリマー)を基本成分としている。その代わりの別の好ましい実施形態として、この層は、通常の樹脂(例えばHDPEのような非バリヤ樹脂)を基本成分とし、この樹脂が、バリヤ特性をこの樹脂に与える添加剤を含有していてもよい。かかる添加剤の例は、ナノメートルサイズの粒子(例えば粘土状のもの)である。
【0017】
したがって、本発明の好ましい実施形態では、プラスチックは、HDPE(高密度ポリエチレン)からなり、バリヤ層の基本成分は、EVOH(エチレン及び部分加水分解ビニルアセテートのコポリマー)、又は、HDPEナノ組成物、即ち、HDPEを基本成分としてナノメートルサイズの添加剤を含む組成物である。
【0018】
本発明の方法が適用されるタンクは、例えば熱成形又はブロー成形により任意公知の仕方で製造される。通常、タンクは、パリソンのブロー成形又は2枚のシートの熱成形によって製造される。ナノ組成物がバリヤ層として用いられる場合、同時射出法を使用してもよい。
【0019】
「パリソン」という用語は、一般に押出成形された予備成形物を意味するものとして理解されるべきであり、この予備成形物は、所要の寸法形状にブロー成形された後、タンクの壁を形成するようになっている。この予備成形物は、例えば押出成形管状パリソンを用いる「従来型」ブロー成形法のように単一部品として作られる必要は必ずしもない。かくして、有利には、パリソンは、実際、2つの別々の部分又は部品で構成され、これらは、例えば2枚のシートであるのがよい。しかしながら、特に好ましくは、本出願人名義の欧州特許出願第1110697号明細書に記載されているように、これら部分又は部品は、同一の押出成形管状パリソンの切断により得られる。なお、この特許文献をここに援用し、本発明の目的に関する限り、その記載内容を本明細書の一部とする。この形態によれば、単一パリソンをいったん押出成形すると、このパリソンをその全長にわたって2つの直径方向反対側の線に沿って切断して、2つの別々の部分又は部品(シート)を得る。この方式は、厚さが一定である2枚の別々の押出成形シートによる成形と比較すれば、適当な押出装置(一般に、パンチの位置を調節できるダイを備えた押出機)を用いる徐々に厚さが変わる(即ち、厚さがパリソンの長さ方向に沿って一定ではない)パリソンを用いることが可能である。かかるパリソンは、ブロー成形作業中に材料が型内で変形する非一定速度の結果としてパリソン上の或る特定の箇所において生じる厚さの減少を考慮に入れている。
【0020】
本発明の関連において、「ネック部」という用語は、実質的に管の形をした任意の部品を示し、実際には、タンクに直接組み込まれ、好ましくは、タンクと一体成形されてもよいし、タンクに取り付けられ、即ち、固定されてもよい、。第1の場合(一体部品)、ネック部は、一般的に、カップリングタイプの比較的短い部品である。第2の場合(取付け部品)、ネック部は、長い部品、例えば充填管である。
【0021】
好適には、第1の場合、したがって、用いられる成形法がどのようなものであれ管が連結されたネック部は、タンクを製造しているときにタンクとの一体品として製造される。特に有利な形態によれば、パリソン(ブロー成形の場合)又はシート(熱成形の場合)は、圧縮によりこのネック部を成形するために局所的に変形される。この変形は、以下に説明し、本出願人名義の別の出願の要部をなす装置を用いて容易に達成できる。
【0022】
この装置は、コア及び型を有し、コア及び型は、それらのうちの一方がカウンタ凹形成形部品を備え、他方がネック部を成形するためにカウンタ凹形成形部品に侵入できる可動要素を備える。
【0023】
好適例として、これら2つの要素は、ネック部の圧縮成形に適すると共に、当然のことながら材料の流れの効果を受けて薄肉化傾向を有するネック部の端部のところの厚さの減少の阻止に適した寸法形状を有する。最後に可動部品を引っ込めるとき、ネック部の周りに局所圧縮を加えることができるようにするために、可動部品は、好ましくは、少なくとも1つのばねを備えた支持体に固定される。この場合、この支持体は、有利には、可動部品を引っ込めているときに、支持体がばねによってネック部の周りでパリソンに押し付けられてその領域の局所圧縮状態を維持するような寸法形状及び場所を有する。この圧縮の強さ及び持続時間は、ばねの定格で決まる。
【0024】
有利には、本発明のこの形態のタンクのネック部は、凹形ネック部、即ち、多かれ少なかれこの領域におけるタンクの壁に直角にタンクの容積部内へ延びるネック部である。以下に説明するネック部がタンクの製造時に圧縮成形される方法は、凹形ネック部の製造に特に適している。好適には、凹形ネック部は、実質的に円筒形であり、吸込コーンを有し、即ち、タンクの表面と円筒形ネック部の表面との間の移行部が、丸みを有している。好適例として、この丸みを帯びた特徴は、ネック部をタンクに接合する表面の曲率半径として定義され、少なくとも5mm、それどころか10mmの半径を有する。しかしながら、この半径は、有利には、20mmを超えない。この半径は、周りの車両内にスペースがある場合、これよりも大きくてもよい。というのは、それにより、耐衝撃性が向上するからである。かかる吸込コーンが存在することにより、部品を組み立てるのが容易になると共に応力集中の恐れが制限される。
【0025】
ネック部に連結されるべき管状部品は、バリヤ層を含む任意の管状部品であるのがよい。好ましくは、カップリングタイプのネック部の場合、かかる管状部品は、一般にタンクと別個に成形される比較的複雑な幾何学的形状を有する部品であるタンク充填管である。また、ネック部が取付け部品である場合、管状部品は、例えば、ネック部の上に固定されるヘッドから成る。かくして、本発明の方法は、例えば、タンク充填管をタンクに組み込まれたカップリング(ネック部)に固定するのに適しており、且つ、管のヘッドを充填管に固定するのに適している。したがって、本発明は、ネック部又は管状部品のいずれかがタンク充填管である場合に特に適している。
【0026】
これら部品(ネック部及び管状部品)を互いに直接溶着できるようにするためには、これら部品が少なくとも溶融状態において相溶性である材料を基本成分とすることが重要である。特に好適な例として、ネック部及び管状部品は、同一のプラスチックを用いている。
【0027】
ネック部及び管状部品は、一般に、少なくともこれらの相互連結部の領域では実質的に円筒形(真っ直ぐな円筒形)である。これが意味することは、これらの側面が実質的に円筒形であり、即ち、母線がこれらの軸線に平行であり、テーパしていないことである。しかしながら、これら2つの部品のうち一方の表面の少なくとも一部に組立てを容易にするための円錐形テーパを施すと有利な場合のあることが判明している。また、ネック部及び/又は管にこれらの組立てを容易にするために、又は、後述する機能コンポーネントを組み込むために、特定の凹みを設けることが有利な場合のあることが判明している。
【0028】
本発明によれば、溶着は、溶着部の領域で互いに連結されるべき部品のうちの少なくとも一方に組み込まれた抵抗要素、即ち、電流が流されると抵抗効果により発熱してプラスチックを溶融させて溶着部を生じさせるほど十分昇温する要素によって行われる。一般に、これは、金属フィラメントである。
【0029】
この金属フィラメントは、代表的には、直径が0.1〜0.5mmの銅で作られる。
【0030】
変形例として、抵抗要素は、部品の製造中に複合成形される金属部品(任意の形状のもの)であってもよいし、或いは、蒸着(表面処理)により少なくとも一方の部品の表面に被着されてもよい。また、抵抗要素は、例えば部品に外部層として追加可能な導電性添加剤を含む樹脂組成物であってもよい。この添加剤は又、ナノメートルサイズのものであるのがよい。
【0031】
金属フィラメントの場合、その取付けは、一般に、機械加工によりあらかじめ溝を部品に形成し、次に電流を用いてフィラメントを加熱させてフィラメントが少なくとも部分的に材料中に入り込むようにすることによって行われる。この入り込みは、溶着作業中、金属フィラメントを定位置に保持するのに役立つ。溝は、好ましくは、電源へのフィラメントの2つの端部の結合を促進するよう2重螺旋の形をしている。金属フィラメントの断面及び巻線相互間の間隔は、材料の性状及び溶着するべき部品の厚さ(この溶着部の場所のところの厚さ)で決まる。溝の深さは、金属フィラメントの断面で決まる。この深さは、何はともあれ、組み立てられるべき部品のバリヤ層に悪影響を及ぼしてはならない。
【0032】
抵抗要素をネック部か管状部品かのいずれかに組み込むのがよい。後者の形態が、種々の理由で好ましい。また、抵抗要素を両方の部品に設けてもよい。
【0033】
まず最初に、金属フィラメントの場合、上述した機械加工は、特にネック部がタンクに組み込まれている場合、ネック部ではなく管状部品に対して実施するのが容易である。このようにするため、必要なことは、例えば、管状部品をマンドレル上に位置決めし、機械加工により溝を形成するために適当なカッタと接触状態で回転させることである。次に、この作業にすぐ続けて、連結されるようになった部品の端部への加熱されたフィラメントの巻き付け(好ましくは、2重螺旋の状態、即ち、まず最初に上から下へ、次に下から上へ)を行う。
【0034】
次に、抵抗要素を有する管を準備し、管をネック部に適切に挿入すると、部品及び抵抗要素の適当なレイアウトにより、溶着時、機能要素をネック部と管状部品との間の連結部に組み込むことができる。タンクに連結された管の端部が弁(通常、逆流防止弁)を有している場合が多いので、本発明のこの機能要素は、好ましくは弁である。管状部品が充填管である場合、この弁は、ICV(内部逆止弁)であるのがよい。この管状部品は、当業者に知られている任意形式のものであってよく、能動要素、例えば、一般に同一材料を用いていないボール、シール又は適当な形状のダイヤフラムを含む(その逆流防止機能を実行するため)がよい(ボールを金属で作り、シールをエラストマーで作るのがよい等である)。
【0035】
本発明のこの形態の機能要素は、好ましくは、組み立てられるべき部品と同一のプラスチック(又は、これと相溶性のある材料)を用いる。かくして、この機能要素は、抵抗要素を用いるか又は別個の溶着部を用いるかのいずれかによって、少なくとも部分的に部品に溶着される。また、この機能要素は、その構成材料が何であれ、組み立てられるべき部品のうちの少なくとも一方に単に挿入されるのがよい。しかしながら、これが一体である場合、好ましくは、機能要素が2つの接触表面相互間に介在して設けられないように注意が払われる。というのは、この領域におけるバリヤ層相互間の距離を広げないようにすることが重要だからである。これは、機能要素、少なくとも機能要素の外側ケーシング又は覆いが、単一のプラスチックを射出成形することにより作られる場合が多く、したがって、一般にバリヤ層を備えないからである。最後に、ネック部及び/又は管に突起、即ち、これら円筒形部品に実質的に垂直なエルボ、フランジ又は円形部品を用いることにより、コンポーネントの組み込みが容易になる場合がある。ネック部の場合、かかる突起は、上述の方法(ネック部の圧縮成形)を用いることにより容易に成形できる。
【0036】
本発明によれば、連結されるべき部品は、これら部品の各々の表面を他方の部品の対応する表面に接触させることができるような寸法形状を有することが必要であり、これは、当然のことながら溶着領域である。「接触させる」という表現は、製造上の公差を与え又は得るためにできるだけ近くに配置することを意味するものとして理解されるべきである。この目的のため、上述した圧縮成形ネック部の場合の一利点は、その壁が、特に均質であり再現性のある溶着部を得ることができるようにする実質的に一定の厚さを有することにある。
【0037】
関心のある部品は、一般に、2つの部品の内面及び外面(この逆の関係も成り立つ)の少なくとも一部である。ネック部が凹形ネック部である好ましい状態では、この部品は、ネック部の内面の一部及びこれに連結されるべき管状部品の外面の一部である。極めて明らかなこととして、2つの部品を互いに接触させ、したがって、部品のうちの一方を他方の内部に挿入できるようにすることが必要である。それ故、有利には、部品に関する公差を厳しくすることが考えられる。この目的のため、本発明の方法により成形されたネック部の正確な寸法(特に、厳しい公差)は、この溶着方法の利用に特に良好に役立ち、しかも、特に均質な溶着部を再現性よく得ることができるようにする。同じ理由で、抵抗要素が側面から過度に突き出すことがないような手段を講じるべきである。かくして、例えば、抵抗要素が1mmの数十分の一のオーダだけ突き出る場合、本発明の方法は、良好な結果をもたらす。
【0038】
部品をいったん互いに接触させると、溶着は、適当な強さの電流を抵抗要素に流すことにより得られる。
【0039】
主要な溶着パラメータは、電圧、電流、適用される溶着時間、及び溶着すべき部品間の距離、特に、この距離の安定度である。この最後のパラメータは、これが上述した溶着部の品質を決めるので特に重要である。この理由で、良好な溶着部を保証することができるようにするため、直径に関し1mmの1/10のオーダの公差で部品を製造することが好ましい。
【0040】
本発明の方法では、溶着部の領域における2つのバリヤ層の間の距離は、好ましくは、最大で5mm、更に好ましくは、最大で4mmであり、特に好適な例としては、最大3mmであり、これは、漏れ経路をできるだけ狭くするためである。
【0041】
好適には、溶着部の長さ(即ち、円筒形部品の間の溶着「帯」の平均幅)は、少なくとも10mm、好ましくは、少なくとも15mm、特に好適な例としては、少なくとも20mmであり、これは、漏れ経路の長さを最大にすると共に強固な溶着部を保証するためである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
本発明を、図1〜図6に非限定的に示す。
【0043】
これらの図の各々において、同一の符号は、同一の部品を示しており、即ち、次の通りである。
1=充填用ネック部を備えた燃料タンク
2=充填管
3=加熱フィラメント
4=バリヤ層
5=溶着カップリング
6=ICV(内部逆止弁)
【0044】
図1は、一体形ネック部を備えた燃料タンク1の壁を示しており、この一体形ネック部に充填管2が、加熱フィラメント3を用いた溶着によって連結されている。燃料タンク1と充填管2は両方とも、バリヤ層4を有し、これら2つのバリヤ層4は、溶着領域では互いに平行であり、即ち、同軸である。これら2つのバリヤ層4の間の距離は、漏れ経路又は透過経路と称されているものを構成している。理解できるように、この距離は、バリヤ層4を用いないで、中間コネクタが2つの部品の間に導入されているときの距離よりも短く、又、バリヤ層の同軸性がない組立て用部品を有している場合と比較しても短い。
【0045】
図2は、充填管2への加熱フィラメント3の巻き付けの一例を示している。これは、2重螺旋巻きであり、理解できるように、この2重螺旋の2つの端部が、互いに閉じており、それにより、これら2つの端部を電圧源(その極の符号によってのみ示されている)に接続すること、及び、溶着部を生じさせるために、抵抗効果を介して加熱フィラメントを実際に加熱させることが容易である。
【0046】
図3に示す部品の組立体は、従来技術によって作られたICV(内部逆止弁)を組み込むのに、弁6を燃料タンク1のネック部に挿入し、加熱フィラメント3を有する溶着カップリング5を頂部の上に挿入し、充填管2を溶着カップリング5に挿入し、加熱フィラメント3に電流を流すことによって、燃料タンク1、充填管2、及び弁6を溶着カップリング5に溶着する。
【0047】
この種の組立てでは、バリヤ層4の間の距離は、バリヤ層4を備えていない溶着カップリング5が設けられている結果として拡大される。したがって、ここに漏れ経路が生じる。
【0048】
他方、図4〜図6は、本発明によって弁6を組み込んだ組立て形態を示している。これらの形態が共通して有しているポイントは、加熱フィラメント3が充填管2に組み込まれていること、及び、ネック部が一種の内向きフランジを有することであり、内向きフランジは、充填管2の軸線に平行な部分があるため、エルボとして図示されている。
【0049】
図4に示す部品を組み立てるのに、加熱フィラメント3を備えた充填管2を燃料タンク1のネック部に挿入し、弁6を充填管2内に挿入し、加熱フィラメント3に電流を流すことによって、燃料タンク1、充填管2、及び弁6を溶着させる。
【0050】
図5に示す部品を組み立てるのに、フランジ(図ではエルボ)を備えた弁6を燃料タンク1のネック部に挿入し、加熱フィラメント3を備えた充填管2を、燃料タンク1のネック部の中に且つ弁6の頂部の上に挿入し、加熱フィラメント3に電流を流すことによって、燃料タンク1、充填管2、及び弁6を溶着させる。
【0051】
図6に示す部品を組み立てるのに、弁6を、加熱フィラメント3を備えたエルボ付き充填管2の底部の周りに配置し、充填管2を、燃料タンク1のネック部に挿入し、加熱フィラメント3を備えたエルボ付き充填管2の或る長さ(エルボに続くビット)が、燃料タンク1から突き出たままにし、加熱フィラメント3に電流を流すことによって、燃料タンク1、充填管2、及び弁6を溶着させる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】一体形ネック部を備えた燃料タンクの壁を示す図である。
【図2】管への加熱フィラメントの巻き付けの一例を示す図である。
【図3】先行技術に従って作られたICV(内部逆止弁)を組み込んだ組立体を示す図である。
【図4】弁を組み込んだ本発明による組立て形態を示す図である。
【図5】弁を組み込んだ本発明による組立て形態を示す図である。
【図6】弁を組み込んだ本発明による組立て形態を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抵抗効果によって加熱できる抵抗要素を用いる溶着によって、プラスチック製の管状部品をプラスチック製の燃料タンクのネック部に連結する方法であって、
連結すべき前記管状部品及び前記ネック部の寸法及び形状を、前記管状部品及び前記ネック部の一方の1つの表面が他方の対応する表面に接触するように選択する工程と、
前記抵抗要素を前記1つの表面及び前記対応する表面のうちの一方に組み込む工程と、
前記1つの表面及び前記対応する表面を互いに接触させる工程と、
前記抵抗要素に電流を流す工程と、を有し、この電流の強さは、前記1つの表面及び前記対応する表面を構成するプラスチックを溶融させて前記1つの表面及び前記対応する表面を互いに溶着させるのに十分に高い温度まで前記抵抗要素を加熱できる強さであり、
前記管状部品及び前記ネック部は各々、バリヤ層を有し、前記管状部品及び前記ネック部は、互いに接触した前記1つの表面及び前記対応する表面が同軸であり且つこの領域における前記バリヤ層が互いに平行になるように溶着される、方法。
【請求項2】
前記プラスチックは、HDPE(高密度ポリエチレン)であり、前記バリヤ層の基本成分は、EVOH(エチレンと部分加水分解ビニルアセテートとのコポリマー)、又は、HDPEナノ組成物、即ち、HDPEを基本成分としてナノメートルサイズの添加剤を含む組成物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記燃料タンクの製造時、コア及び型を有する装置内で、パリソンをブロー成形することによって又は2枚のシートを熱成形することによって、前記ネック部と前記燃料タンクとを単一部品として成形し、前記コア及び前記型は、その一方がカウンタ凹形部品を備え、他方が前記ネック部を成形するために前記カウンタ凹形部品に侵入できる可動要素を備える、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記ネック部は、凹み、実質的に円筒形であり、入口コーンを有する、請求項1〜3のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項5】
前記管状部品又は前記ネック部は、タンク充填管である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
接触した前記1つの表面及び前記対応する表面は、実質的に円筒形(真っ直ぐな円筒形)である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記抵抗要素は、金属フィラメントであり、溝を前記管状部品又は前記ネック部にあらかじめ機械加工し、電流を用いて前記金属フィラメントを加熱し、高温の前記金属フィラメントを前記ネック部の中に配置することによって、前記金属フィラメントを前記管状部品又は前記ネック部に組み込む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記溝は、2重螺旋の形状を有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記抵抗要素は、金属部品、又は、導電性添加剤を含む樹脂組成物である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
溶着中、前記管状部品を前記ネック部に挿入し、機能要素を前記ネック部と前記管状部品との間の連結部に組み込む、請求項1〜9のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記機能要素は弁である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記溶着部の領域の前記バリヤ層は、最大で5mmの間隔をおく、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記溶着部の最小長さは10mmである、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2008−524013(P2008−524013A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−546045(P2007−546045)
【出願日】平成17年12月13日(2005.12.13)
【国際出願番号】PCT/EP2005/056751
【国際公開番号】WO2006/064005
【国際公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(502294138)イネルジー オートモーティヴ システムズ リサーチ (41)
【Fターム(参考)】