説明

プラズマアクチュエータを備えた圧縮機およびガスタービンエンジン

中心軸線の周りに配列された、動翼エーロフォイルおよび動翼端をそれぞれ有する複数の動翼を有するロータと、動翼上に位置する少なくとも1つのプラズマアクチュエータとを備える圧縮システムが開示される。圧縮システムのロータの不安定性を検出するための検出システム、ならびにロータの安定性の改善を容易にする動翼上に取り付けられた少なくとも1つのプラズマアクチュエータを含む緩和システムの例示的実施形態が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にガスタービンエンジンに関し、より具体的には、ガスタービンエンジンに使用されるファンまたは圧縮機などの圧縮システムにおける失速などの不安定性を検出するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ターボファン航空機のガスタービンエンジンでは、動作の間、ファンモジュール、ブースタモジュール、および圧縮モジュールを備える圧縮システムにおいて空気が加圧される。大型のターボファンエンジンでは、ファンモジュールを通過する空気は、主にバイパスストリームに流入し、飛行中の航空機を推進するのに必要な推進力の大半を発生させるのに使用される。ブースタモジュールおよび圧縮モジュールを介して運ばれた空気は、燃焼器内で燃料と混合され、点火されて、タービン段を流れる高温の燃焼ガスを発生させ、タービン段において、ファン、ブースタ、および圧縮機のロータに動力を供給するエネルギーが燃焼ガスから抽出される。ファン、ブースタ、および圧縮機のモジュールは、一連のロータ段およびステータ段を有する。ファンおよびブースタのロータは、一般的に低圧タービンによって駆動され、圧縮機のロータは高圧タービンによって駆動される。ファンおよびブースタのロータは圧縮機のロータに空気力学的に結合されるが、これらは通常、異なる機械的速度で動作する。
【0003】
広範な作動条件での運転能力(operability)は、ファン、ブースタ、および圧縮機などの圧縮システムの設計における基本的要件である。最新の航空機における現代の開発では、機体中に埋め込まれたエンジンを使用することが必要とされており、空気は、特有の幾何学形状を有する入口を介してエンジンに流入し、これらの入口は、入口気流に激しい偏流(distortion)を引き起こす。これらのエンジンには、面積固定の排気ノズルを有するものもあり、これも、これらのエンジンの運転能力を制限する。これらの圧縮システムの設計における基本は、離陸から、巡航、および着陸という運行の飛行エンベロープ全体にわたる、十分な失速マージン(stall margin)を有する空気圧縮時の効率である。しかし、圧縮効率および失速マージンは、通常、反比例しており、効率が増加すると、一般に、失速マージンがそれに対応して減少する。失速マージンと効率の相反する要件は、激しい入口偏流、面積固定の排気ノズル、および補助動力抽出の増加など、困難な作動条件下で動作し、なおかつ依然として飛行エンベロープ全体を通して高レベルの安定余裕を必要とする、高性能ジェットエンジンにおいて特に強く求められる。
【0004】
失速などの不安定性は、一般に、ファン、圧縮機、およびブースタなどの圧縮システムの動翼および静翼のエーロフォイル上における流れの崩壊によって引き起こされる。ガスタービンエンジンの圧縮システムのロータでは、回転する動翼端と動翼端を取り囲む固定のケーシングまたは囲い板との間に翼端クリアランスがある。エンジンの動作中、空気は、動翼の正圧面から翼端クリアランスを通って負圧面に向かって漏れる。これらの漏れ流は、動翼の翼端領域で渦を生じさせることがある。翼端渦は、動翼および静翼上において翼長方向および翼弦方向で成長し広がる可能性がある。ステータおよびロータのエーロフォイル上での境界層はがれは、圧縮システムに流入する空気に激しい入口偏流があるとき、またはエンジンを絞ったときに生じ、圧縮機の失速に結び付き、著しい運転能力の問題および性能の損失を引き起こすことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許第1672966号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、圧縮システムにおける流れの不安定性などの動的プロセスを測定し制御する能力を有することが望ましいであろう。動翼端または他の場所付近の動圧など、流れの不安定性の始まりに関連する圧縮システムパラメータを測定するとともに、測定データを処理して、ファン、ブースタ、および圧縮機などの圧縮システムにおける失速などの不安定性の始まりを検出することができる、検出システムを有することが望ましいであろう。飛行エンベロープの臨界点における特定の機動飛行に対して、検出システムの出力に基づいて圧縮システムの不安定性を緩和して、失速およびサージなどの不安定性を伴わずにその機動を完了できるようにする、緩和システムを有することが望ましいであろう。検出システムおよび緩和システムを制御し管理することができる、不安定性緩和システムを有することが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の1つまたは複数の必要性は、静翼エーロフォイルを有する静翼の円周方向列を有するステータ段であって、ロータの軸線方向前方または機尾側に位置するステータ段と、動翼エーロフォイルをそれぞれ有する動翼の円周方向列を有するロータと、動作中のロータの不安定性を検出するための検出システムと、圧縮システムの安定性の改善を容易にする、動翼上に取り付けられた少なくとも1つのプラズマアクチュエータを含む緩和システムと、緩和システムの動作を制御するための制御システムと備える圧縮システムを提供する例示的実施形態によって満たすことができる。
【0008】
1つの例示的実施形態では、ファン部と、ファン部の動作中に不安定性を検出するための検出システムと、ファン部の安定性の改善を容易にする緩和システムとを備えるガスタービンエンジンが開示される。
【0009】
別の例示的実施形態では、動翼の列の翼端を取り囲むケーシング上に位置する圧力センサを備え、圧力センサが、動翼端付近の場所における動圧に対応する入力信号を発生させることができる、多段の圧縮システムロータにおける不安定性の始まりを検出するための検出システムが開示される。
【0010】
別の例示的実施形態では、圧縮システムの安定動作範囲を増加させるための、圧縮システムの不安定性を緩和する緩和システムであって、圧縮システムのロータ段上に位置する少なくとも1つのプラズマ発生器を含む緩和システムが提供される。プラズマ発生器は、誘電材料によって分離された第1の電極および第2の電極を含む。プラズマ発生器は、第1の電極と第2の電極との間でプラズマを形成するように動作可能である。
【0011】
別の例示的実施形態では、プラズマアクチュエータは、ほぼ翼長方向でロータエーロフォイル上に取り付けられる。別の例示的実施形態では、プラズマアクチュエータシステムは、入口案内翼の可動フラップ上に取り付けられたプラズマアクチュエータを備える。
【0012】
本発明と見なされる主題は、本明細書の結び部分において特に指摘され明確に請求される。しかし、本発明は、添付図面と併せて以下の記載を参照することによって最も良く理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の例示的実施形態を用いたガスタービンエンジンの概略断面図である。
【図2】ロータおよびステータのエーロフォイル上に取り付けられたプラズマアクチュエータの例示的実施形態を示す、図1に示されるガスタービンエンジンのファン部の一部分の拡大断面図である。
【図3】図1に示されるガスタービンエンジン内の圧縮システムの例示的な動作マップである。
【図4】静的構成部品上に取り付けられた例示的な検出システムを示す、本発明の例示的実施形態の概略断面図である。
【図5】図2に示されるプラズマアクチュエータが通電されている緩和システムの概略図である。
【図6】プラズマアクチュエータの例示的な配列を有する2つのステータ段と、動翼端領域付近で静的構成部品内に取り付けられた検出システムとを示す図である。
【図7】エーロフォイル上に取り付けられた複数のプラズマアクチュエータの例示的な配列を有する動翼の断面図である。
【図8】ほぼ翼長方向で取り付けられた2つのプラズマアクチュエータの例示的な配列を有する動翼の等角図である。
【図9】ケーシング上に取り付けられた複数のセンサと、ロータ段およびステータ段上に取り付けられたプラズマアクチュエータとの例示的な配列を示す、不安定性緩和システムの例示的実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
様々な図面全体を通して同一の参照番号が同じ要素を示す図面を参照すると、図1は、本発明の例示的実施形態を組み込んだ、例示的なターボファンガスタービンエンジン10を示す。これは、エンジン中心軸線8と、周囲空気14を受け入れるファン部12と、高圧圧縮機(HPC)18と、高圧タービン(HPT)22を介して下流へと流れる燃焼ガスまたはガス流を発生させるため、HPC18によって加圧された空気と燃料を混合する燃焼器20と、燃焼ガスがそこから放出されてエンジン10から出る低圧タービン(LPT)24とを備える。多くのエンジンは、ファン部とHPCとの間に取り付けられたブースタまたは低圧圧縮機(図1には図示なし)を有する。ファン部12を通過する空気の一部分は、ファン部12と高圧圧縮機18との間に入口またはスプリッタ23を有するバイパスダクト21を介して、高圧圧縮機18の周りを迂回する。HPT22は、HPC18に接合されて、高圧ロータ29を実質的に形成する。低圧シャフト28は、LPT24をファン部12およびブースタ(使用される場合)に接合する。第2のまたは低圧シャフト28は、第1のまたは高圧ロータと同軸で、かつその半径方向内側に回転可能に配置される。図1および2に示される本発明の例示的実施形態では、多くのガスタービンエンジンと同様に、ファン部12は、第1、第2、および第3のファンロータ段12a、12b、および12cによって示される多段のファンロータと、31a、31b、および31cなどの静翼の円周方向列をそれぞれ有する複数のステータ段31とを有する。各ステータ段は、12aなどのロータの軸線方向前方または機尾側に位置する。例えば、図2に示されるように、静翼31aの円周方向列を有するステータ段は、ロータ12aよりも軸線方向機尾側に位置する。図2に示されるように、圧縮システムへの入口に入口案内翼(IGV)の円周方向列を有するのが一般的である。IGVは、図2に示されるように、その機尾側端部に位置する可動フラップ32を有してもよい。
【0015】
そこを介して流れる空気を加圧するファン部12は、長手方向中心軸線8を中心にして軸対称である。図2に示されるファン部12は、長手方向中心軸線8の周囲に円周方向で配列された、複数の入口案内翼(IGV)30と複数の静翼31a、31b、31cとを含む。ファン部12の複数のロータ段12a、12b、12cは、あらゆる従来の様式の、別個のディスク、または一体のブリスク、または環状ドラムの形態の対応するロータハブ39a、39b、39cから半径方向外向きに延在する、対応するファン動翼40a、40b、40cを有する。
【0016】
図2に示されるファンロータ段12a、12b、12cは、複数の円周方向で離間した静翼31a、31b、31cを備える対応するステータ段31と協働する。静翼および動翼の例示的な配列は図2に示される。動翼40および静翼31a、31b、31cは、軸線方向の段において気流を連続的に加圧するための、対応する空気力学的プロファイルまたは輪郭を有するエーロフォイルを有する。各ファン動翼40は、動翼付根45から動翼端46まで半径方向外向きに延在するエーロフォイル34と、凹面側(「正圧面」とも呼ばれる)43と、凸面側(「負圧面」とも呼ばれる)44と、前縁41と、後縁42とを備える。動翼エーロフォイル34は、前縁41と後縁42との間を翼弦方向で延在する。エーロフォイル34の翼弦Cは、動翼の各半径方向断面における前縁41と後縁42との間の長さである。エーロフォイル34の正圧面43は、ファンロータの一般的な回転方向に面し、負圧面44はエーロフォイルの他方の側にある。
【0017】
ステータ段31は、例えば項目12bなど、ロータに軸線方向で近接して位置する。図2に項目31a、31b、31cとして示されるような、ステータ段31の各静翼は、動翼付根45と動翼端46との間の翼長に対応する、ほぼ翼長方向で半径方向に延在するエーロフォイル35を備える。項目31aなどの各静翼は、静翼凹面側(vane concave side)(「正圧面」とも呼ばれる)57と、静翼凸面側(vane convex side)(「負圧面」とも呼ばれる)58と、静翼前縁36と、静翼後縁37とを有する。静翼エーロフォイル35は、前縁36と後縁37との間に翼弦方向で延在する。エーロフォイル35の翼弦は、静翼の各半径方向断面における前縁36と後縁37との間の長さである。ファン部12などの圧縮システムの前方に、気流を圧縮システム内へと受け入れる一組の入口案内翼30(「IGV」)を有するステータ段がある。入口案内翼30は、気流を第1段のロータ12a内へと案内する、適切に形作られた空気力学的プロファイルを有する。気流を圧縮システム内へと適切に配向するため、入口案内翼30は、それらの機尾側端部付近に位置する可動のIGVフラップ32を有してもよい。IGVフラップ32は、図2においてIGV30の機尾側端部に示される。それは、圧縮システムの動作の間可動であるように、半径方向内側端部と外側端部とで2つのヒンジの間に支持される。
【0018】
動翼は、図2に示されるように、動翼端から半径方向に離間して位置し、かつそこを取り囲む、ケーシングまたは囲い板などの静的構造内で回転する。前段の動翼40は、動翼端を取り囲む環状ケーシング50内で回転する。図1に項目18として示される高圧圧縮機など、多段圧縮システムの機尾側の段の動翼は、一般的には、動翼端46の周りで円周方向に配列される囲い板セグメント51によって形成される環状通路内で回転する。動作の際、空気が減速し、ステータおよびロータのエーロフォイルを介して拡散するにつれて、空気の圧力が増加する。
【0019】
入口修正流量(inlet corrected flow rate)が水平軸線に沿い、圧力比が垂直軸線上にある、例示的なガスタービンエンジン10のファン部12などの例示的な圧縮システムの動作マップが、図3に示される。例示的な動作線(operating lines)114、116、および失速線(stall line)112が、例示的な定速線(constant speed lines)122、124とともに示される。線124はより低速の線を表し、線122はより高速の線を表す。圧縮システムが定速線124などの定速で絞られるにつれて、入口修正流量が減少するとともに圧力比が増加し、圧縮システムの動作は失速線112に近付くように移動する。各作動条件は、所与の圧力比を達成するのに必要な、理想的な(等エントロピーの)圧縮機作業入力と実際の作業入力との比として従来的に定義される、対応する圧縮システムの効率を有する。各作動条件の圧縮機効率は、図3に示される項目118、120など、一定効率の輪郭の形態で動作マップ上にプロットされている。性能マップは、最も小さな輪郭120として図3に描かれたピーク効率の領域を有し、可能な限りピーク効率の領域内で圧縮システムを動作させることが望ましい。ファン部12に入る入口気流14の偏流は、ファン動翼(および圧縮システムの動翼)によって空気が圧縮されるにつれて流れの不安定性を引き起こす傾向があり、失速線112はさらに降下する傾向がある。本明細書にてさらに後述するように、本発明の例示的実施形態は、偏流などによるファン部12における流れの不安定性を検出し、ファン部からの情報を処理して、ファンロータの差し迫った失速を予測するためのシステムを提供する。本明細書に示される本発明の実施形態によって、必要に応じて応答することができるエンジン内の他のシステムが、図3の項目113によって表されるように、失速線を上昇させることによって、ファンロータおよび他の圧縮システムの失速マージンを管理することが可能になる。
【0020】
入口偏流によるファンロータの失速、および絞られた他の圧縮システムにおける失速は、図2に示されるファンロータ12a、12b、12cなど、特にロータの翼端領域52付近の、ステータおよびロータのエーロフォイルにおける流れの崩壊または境界層はがれによって引き起こされることが知られている。動翼端付近での流れの崩壊は、負の軸流速度を有する翼端漏れ渦(tip leakage vortex)と関連付けられ、即ち、この領域の流れは流れの主体に反し、非常に望ましくない。中断されなければ、翼端渦は、軸線方向で機尾側へ、また動翼の負圧面44から隣接した動翼の正圧面43へと接線方向で伝播する。入口偏流が激しくなるにつれて、または圧縮システムが絞られるにつれて、隣接した動翼および静翼の間の流路内での遮断が次第に大きくなり、最終的にはロータの圧力比がその設計水準未満に降下するほど大きくなって、圧縮システムを失速させる。
【0021】
圧縮システムにおける流れの不安定性など、動的プロセスを制御する能力は、継続的な測定方法を使用して、または十分な数の個別の測定のサンプルを使用して、プロセスの特性を測定することを必要とする。安定余裕が小さいか負である飛行エンベロープの臨界点における、特定の機動飛行に対するファンの減速を緩和するため、最初に、図2に示される多段ファンの段における失速の始まりを予測するのに直接、または何らかの追加の処理を伴って使用することができる、エンジンの流れパラメータが測定される。
【0022】
図4は、ガスタービンエンジン10の圧縮段における、失速またはサージなどの空気力学的不安定性の始まりを検出するためのシステム500の例示的実施形態を示す。図2に示される例示的実施形態では、ロータ12a、12b、および12cを有する三段のファンと、静翼31a、31b、31cを有するステータ段と、IGV30とを備えるファン部12が示される。本発明の実施形態は、単一段のファンに、または、高圧圧縮機18もしくは低圧圧縮機もしくはブースタなど、ガスタービンの他の圧縮システムに使用することもできる。本明細書に示される例示的実施形態では、エンジンの動作中、ファン動翼端46の翼端領域52付近の局所的な動圧を測定する圧力センサ502が使用される。流れパラメータの測定に単一のセンサ502を使用することができるが、エンジンが長期間動作する間にいくつかのセンサが動作不能になることがあるので、少なくとも2つのセンサ502を使用することが好ましい。図2に示される例示的実施形態では、ファンロータ12a、12b、および12cの翼端の周辺で複数の圧力センサ502が使用される。
【0023】
図4に示される例示的実施形態では、圧力センサ502は、ファン動翼端46から半径方向外側に離間したケーシング50上に位置する。あるいは、圧力センサ502は、動翼端46から半径方向外側に離間して位置する囲い板51上に位置してもよい。ケーシング50または複数の囲い板51は、動翼の列47の翼端を取り囲む。圧力センサ502は、図9に示されるように、ケーシング50または囲い板51上に円周方向で配列される。ロータ段上の複数のセンサを使用する例示的実施形態では、センサ502は、図9に示されるように、ケーシングまたは囲い板内でほぼ直径方向で向かい合った場所に配列される。あるいは、本発明の他の実施形態では、センサ502がステータ段31内の位置に取り付けられて、ステータにおける流れパラメータを測定してもよい。適切なセンサはまた、ステータエーロフォイルの凸面側58もしくは凹面側57、または動翼40上に取り付けられてもよい。
【0024】
エンジンの動作中、ファン動翼端とケーシング50または囲い板51との間には有効クリアランスCLがある(図4を参照)。センサ502は、動翼端46付近の動翼端領域52における動圧など、流れパラメータに対応する入力信号504をリアルタイムで発生させることができる。動翼通過周波数(blade passing frequency)よりも高い応答能力を有する、適切な高応答性のトランスデューサが使用される。一般的に、これらのトランスデューサは1000Hzより高い応答能力を有する。本明細書に示される例示的実施形態では、使用されるセンサ502はKulite Semiconductor Products製であった。トランスデューサは約0.1インチの直径を有し、長さ約0.375インチである。それらは、約50ポンド/平方インチの圧力に対して約0.1ボルトの出力電圧を有する。信号を約10ボルトに増幅するのには従来の信号調整器が使用される。例えば、約10倍の動翼通過周波数など、動圧測定の高周波サンプリングを使用することが好ましい。
【0025】
センサ502からの流れパラメータを測定することによって、相関プロセッサ510によって入力信号504として使用される信号が発生する。相関プロセッサ510はまた、図1、4、および9に示されるような、ファンロータ12a、12b、12cの回転速度に対応するファンロータ速度信号506を入力として受信する。本明細書に示される例示的実施形態では、ファンロータ速度信号506は、ガスタービンエンジンで使用されるエンジン制御システム74によって供給される。あるいは、ファンロータ速度信号506は、デジタル電子制御システム、または航空機エンジンに使用される全機能デジタルエンジン制御(FADEC)システムによって供給されてもよい。
【0026】
相関プロセッサ510は、センサ502から入力信号504と、制御システム74からロータ速度信号506とを受信し、従来の計算方式を使用してリアルタイムで安定性相関信号512を発生させる。公表文献において利用可能な自己相関方法がこの目的に使用されてもよい。本明細書に示される例示的実施形態では、相関プロセッサ510のアルゴリズムは、エンジン制御システム74からの既存の速度信号をサイクル同期に使用する。個別の圧力トランスデューサ502について、ロータ12a、12b、12cの動翼端46、および入力信号504a、504b、504cに対する相関基準が計算される。本明細書に記載される例示的実施形態における自己相関システムは、200KHzの周波数で圧力センサ502からの信号をサンプリングした。サンプリング周波数のこの比較的高い値によって、ファン動翼40の通過周波数の少なくとも10倍の速度でデータがサンプリングされることが確実にされる。72個のサンプルのウィンドウを使用して、動作線116に沿って1に近い値を有し、動作が失速/サージ線112に近付くとゼロに向かって降下する(図3を参照)自己相関を計算した。特定のファン段12a、12b、12cの場合、安定余裕がゼロに近付くと、特定のファン段が失速寸前であり、相関基準は最小である。圧縮システムの失速またはサージなどの不安定性を回避するように設計された、本明細書に開示される例示的な不安定性緩和システム700(図9を参照)では、相関基準が選択されプリセットされた閾値レベル未満に降下すると、不安定性制御システム600が安定性相関信号512を受信し、電気信号602を例えばFADECシステムなどのエンジン制御システム74に送信し、電気信号606を電子コントローラ72に送信し、それが次に、本明細書に記載されるような失速線を上昇させることによって、失速またはサージなどの不安定性からエンジンを遠ざけるように、利用可能な制御装置を使用して修正動作を行うことができる。相関プロセッサ510が、本明細書に示される例示的実施形態において空気力学的安定性のレベルを測るのに使用する方法は、文献「Development and Demonstration of a Stability Management System for Gas Turbine Engines」、Proceedings of GT2006 ASME Turbo Expo 2006, GT2006-90324に記載されている。
【0027】
図4は、動翼40の動翼端翼弦中央(blade tip mid−chord)付近のケーシング50内に位置するセンサ502を使用する、本発明の例示的実施形態を概略的に示す。センサは、ケーシング50内に位置するので、ファン動翼端46とケーシング50の内表面53との間のクリアランス48内における空気の動圧を測定することができる。1つの例示的実施形態では、センサ502はケーシング50の環状溝54内に位置する。他の例示的実施形態では、例えば安定性のために翼端の流れを修正するためなど、ケーシング50に複数の環状溝54を有することが可能である。複数の溝が存在する場合、圧力センサ502は、本明細書に開示されるのと同じ原理および実施例を使用して、これらの溝の1つまたは複数の中に位置する。センサは、図4ではケーシング50内に位置するものとして示されるが、他の実施形態では、圧力センサ502は、動翼端46から半径方向外側に離間して位置する囲い板51内に位置してもよい。圧力センサ502はまた、動翼40の前縁41端または後縁42端付近でケーシング50(もしくは囲い板51)内に位置してもよい。圧力センサ502はまた、ステータ段31内に、または31a、31b、31cなどの静翼上に位置してもよい。
【0028】
図9は、図2の項目40aなど、ファン段の複数のセンサ502を使用する、本発明の例示的実施形態を概略的に示す。複数のセンサ502は、センサ502の対がほぼ直径方向で向かい合って位置するように、円周方向でケーシング50(または囲い板51)内に配列される。相関プロセッサ510は、これらのセンサ対から入力信号504を受信し、対からの信号を併せて処理する。対になった直径方向で向かい合ったセンサからの測定データにおける差は、安定性相関信号512を展開して、エンジンの入口偏流によるファンの失速の始まりを検出するのに特に有用であり得る。
【0029】
図1、6、および9は、不安定性が上述したような検出システム500によって検出されたとき、圧縮システムの安定性の改善を容易にする緩和システム300の例示的実施形態を示す。本発明のこれらの例示的実施形態は、本明細書に開示されるプラズマアクチュエータを使用して、静翼エーロフォイル35または動翼エーロフォイル34における境界層はがれを低減し、また、本明細書にて上述した動翼翼端漏れ渦による遮断の始まりおよび成長を遅延する。本発明の例示的実施形態に示されるような、使用されるプラズマアクチュエータは、静翼および動翼のエーロフォイル内の流体に作用する、イオンの流れおよび体積力を生み出して、所望の流体流れの方向で動翼流路を通過させて境界層はがれを低減する。
【0030】
用語「プラズマアクチュエータ」および「プラズマ発生器」は、本明細書で使用するとき、同じ意味を有し、置換え可能に使用される。図5は、本明細書に示される、通電されたときのプラズマアクチュエータ82、84、86(図1、2、6、7、8、9を参照)を概略的に示す。図5に示される例示的実施形態は、動翼40に取り付けられたプラズマ発生器86を示し、誘電材料63によって分離された第1の電極62および第2の電極64を含む。AC(交流)電源70が電極に接続されて、約3〜20kVの範囲の高電圧AC電位を電極62、64に供給する。AC振幅が十分に大きいと、最大電位の領域で空気がイオン化して、プラズマ68を形成する。プラズマ68は、一般に、空気に暴露されている第1の電極62の縁部65付近で起こり、誘電材料63によって被覆された第2の電極64によって突出したエリア104全体に広がる。プラズマ68(イオン化した空気)は、電界勾配の存在下で、エーロフォイル付近を流れる空気に対する力を生み出して、エーロフォイル表面に沿って圧力分布を変化させる仮想の空気力学的形状を誘発するので、流れはエーロフォイル表面に付着したままで、境界層はがれを低減させる傾向がある。電極付近の空気は弱イオン化され、通常、空気の加熱はほとんどまたはまったくない。
【0031】
図6は、圧縮システムの安定性を改善するための、かつ/または圧縮システムの効率を向上させるための、プラズマアクチュエータシステム100の例示的実施形態を断面図で概略的に示す。用語「圧縮システム」は、本明細書で使用するとき、そこを介して流れる流体の圧力を増加させるために使用されるデバイスを含み、また、図1に示されるガスタービンエンジンに使用される高圧圧縮機18、ブースタ、およびファン12を含む。本明細書に示される例示的実施形態は、失速マージンの増加を容易にし、かつ/または、図1の断面図に示される航空機ガスタービンエンジンなどのガスタービンエンジン10における圧縮システムの効率を向上する。図6に示される例示的なガスタービンエンジンのプラズマアクチュエータシステム100は、動翼40b上に取り付けられたプラズマ発生器86、ならびに静翼31aおよび31b上に取り付けられたプラズマ発生器82を含む。図6に示されるプラズマアクチュエータは、動翼付根付近からエーロフォイルの翼端まで、ほぼ翼長方向で動翼40b内に取り付けられる。プラズマアクチュエータ86は、動翼エーロフォイルの負圧面44に位置する溝内に取り付けられるので、プラズマアクチュエータ付近の局所的な気流を妨害するのを回避するため、表面はほぼ平滑なままである。エーロフォイル表面上における滑らかな気流を容易にするため、プラズマアクチュエータが取り付けられた後に、従来の材料を使用する適切な外被が溝上に適用されてもよい。各溝セグメントは、溝セグメント内に配置されて、プラズマアクチュエータ86を形成する第1の電極62と第2の電極64とを分離する溝セグメント内に配置された誘電材料63を有する。本発明の別の実施形態では、複数のプラズマアクチュエータ82も、図6の項目31aおよび31bなどの静翼の静翼エーロフォイル35上に位置する。プラズマアクチュエータは、エーロフォイルの正圧面および負圧面の周りの気流を従来の方式で空気力学的に分析することによって決定される、気流の分離の傾向に基づいて選択された場所で、動翼前縁41から選択された翼弦長さで取り付けられる。図7に示される本発明の別の実施形態では、プラズマアクチュエータ86はまた、動翼エーロフォイル49の凹面側43上に、特に後縁42付近に位置してもよい。図8は、プラズマアクチュエータ86が、動翼エーロフォイル49の凸面側上に取り付けられ、ほぼ翼弦方向に向けられた、本発明の例示的実施形態を有する動翼40を示す。あるいは、プラズマ68の方向を、従来の空気力学的分析によって決定されるような他の適切な流れ方向に沿って位置合わせするように、プラズマアクチュエータを他の向きで取り付けるのが有利なことがある。図8および9は、回転動翼40上に取り付けられたプラズマアクチュエータ86に対して電気的に接続するのに使用されてもよい、従来のスリップリング88および89を概略的に示す。回転動翼上のプラズマアクチュエータ86に電源を供給する他の適切な方法も使用されてもよい。
【0032】
図9は、本発明による不安定性緩和システム700の例示的実施形態を概略的に示す。例示的な不安定性緩和システム700は、検出システム500と、緩和システム300と、不安定性制御システム600を含む検出システム500および緩和システム300を制御するための制御システム74とを備える。動翼端付近の動圧などの流れパラメータを測定する1つまたは複数のセンサ502を有する検出システム500、および相関プロセッサ510は、本明細書にて上述している。相関プロセッサ510は、失速などの不安定性の始まりが特定のロータ段において検出されているか否かを示す相関信号512を不安定性制御システム600に送信し、それが次に、状態信号604を制御システム74にフィードバックする。制御システム74は、ロータ速度などの圧縮システム動作に関連する情報信号506を相関プロセッサ510に供給する。不安定性の始まりが検出され、緩和システム300を作動させるべきであると制御システム74が判断すると、コマンド信号602が不安定性制御システム600に送信され、それが、不安定性緩和動作を行うべき場所、タイプ、程度、持続時間を判断し、それに対応する不安定性制御システム信号606を実行のために電子コントローラ72に送信する。電子コントローラ72は、プラズマアクチュエータシステム100および電源70の動作を制御する。上述したこれらの動作は、検出システム500によって確認されるような不安定性の緩和が達成されるまで継続する。緩和システム300の動作はまた、制御システム74によって決定される予め定められた動作点において終了してもよい。
【0033】
図1に示されるガスタービンエンジン10の例示的な不安定性緩和システム700システムでは、エンジンの動作中、不安定性制御システム600および電子コントローラ72によって命令されると、プラズマアクチュエータシステム100は、プラズマ発生器86、82(図6および9を参照)をオンにして、第1の電極62と第2の電極64との間にプラズマ68を形成する。電子コントローラ72は、例えば全機能デジタルエンジン制御(FADEC)など、エンジンのファン速度、圧縮機速度、タービン速度、および燃料システムを制御するエンジン制御システム74にも連結させることができる。電子コントローラ72は、プラズマ発生器60をオンオフすることによって、または別の方法で必要に応じてそれを変調することによってプラズマ発生器60を制御して、圧縮システムの失速マージンを増加させるか、または効率を向上させることによって圧縮システムの安定性を向上させるのに使用される。電子コントローラ72はまた、高電圧AC電位を電極に供給するように電極に接続されたAC電源70の動作を制御するのに使用されてもよい。
【0034】
動作の際、プラズマアクチュエータシステム100は、オンにされると、プラズマ68を形成するイオンの流れと、空気を押しやり、静翼エーロフォイルの正圧面および負圧面付近で圧力分布を変更する体積力とを生じる。プラズマ68によって加えられる体積力は、正の流れの所望の方向で隣接した動翼間の流路に空気を流して、エーロフォイル表面および動翼端付近の境界層はがれを低減する。これによって、ファンまたは圧縮機のロータ段の、またその結果として圧縮システムの安定性が増加する。例えば図6に示されるものなどのプラズマ発生器82、86は、失速が生じる傾向がある、いくつかの選択されたファンまたは圧縮機のステータ段およびロータ段のエーロフォイル上に取り付けられてもよい。あるいは、プラズマ発生器は、すべての圧縮段の動翼40および静翼31aの長さに沿って位置し、エンジン制御システム74または電子コントローラ72を使用して、エンジンの動作中に不安定性制御システム600によって選択的に作動してもよい。図2に示される本発明の別の例示的実施形態では、プラズマアクチュエータ84は、IGVフラップ32上に取り付けられ、ほぼ翼長方向に向けられる。第1のファンロータ12aに入る気流の方向を配向するため、IGVフラップ32は可動である。プラズマアクチュエータ84、86を通電することによって、境界層はがれなしにIGVフラップ32に対して達成することができる移動範囲を拡張することが可能である。これは、特定の状況下で激しい入口偏流が存在するガスタービンエンジン用途において特に有用である。
【0035】
本発明の他の例示的実施形態では、動翼エーロフォイル49および静翼エーロフォイル35上に取り付けられたプラズマアクチュエータに加えて、圧縮機のケーシング50または囲い板セグメント51内の複数の場所に複数のプラズマアクチュエータを位置させることが可能である。
【0036】
本明細書に開示されるプラズマアクチュエータシステムは、例えば図3の向上した失速線113によって示されるような、失速線を上昇させることによって、エンジン中の圧縮システムの失速マージンの増加をもたらすように動作させることができる。エンジンの動作中にプラズマアクチュエータを継続的に動作させることは可能であるが、失速マージンを改善するために、必ずしもプラズマアクチュエータを継続的に動作させなくてもよい。正常な作動条件では、動翼翼端渦および逆流の小さな領域がロータ翼端領域52に存在することがある。最初に、失速が生じる傾向があるファンまたは圧縮機の動作点を特定することが必要である。これは、従来の分析および試験方法によって行うことができ、例えば図3に示されるような動作マップ上に結果を表すことができる。図3を参照すると、例えば、動作線116上の正常な動作点では、失速線112に対する失速マージンは適当であり、プラズマアクチュエータをオンにする必要はない。しかし、例えば定速線122に沿ってなど、圧縮システムが絞られるにつれて、または激しい入口偏流の間、静翼長または動翼長全体にわたって、特に翼端領域52において、圧縮システムの段における空気の軸流速度は減少する。動翼端46における高圧上昇と結び付けられるこの軸流速度の降下は、動翼端全体にわたる流れと翼端渦の強度とを増加させて、失速が生じる条件を作り出す。圧縮システムの動作が、一般的には失速線112付近である条件に近付くと、プラズマアクチュエータはオンにされる。プラズマアクチュエータは、検出システム500からの測定および相関分析が失速またはサージなどの不安定性の始まりを示すとき、検出システム500の入力に基づいて、不安定性制御システム600によってオンにされてもよい。制御システム74および/または電子コントローラは、圧縮機が失速する傾向がある失速線112に動作点が近付くよりもかなり前に、プラズマアクチュエータシステムをオンにするように設定される。プラズマアクチュエータを早期に、失速線112に達するよりもかなり前にオンにすることによって、絶対的な絞りマージン(throttle margin)能力が増加するので、そのようにすることが好ましい。しかし、圧縮機が、動作線116上などの正常な定常条件で動作しているとき、アクチュエータを稼働させるのに必要な電力を消費する必要はない。
【0037】
あるいは、ロータプラズマアクチュエータ86、ステータプラズマアクチュエータ82、およびIGVプラズマアクチュエータ84を上述したような継続モードで動作させる代わりに、プラズマアクチュエータをパルスモードで動作させることができる。パルスモードでは、プラズマアクチュエータ82、84、86の一部またはすべては、(「パルス状」の)いくつかの予め定められた周波数でパルスオンオフ(pulsed on and off)される。圧縮機の失速に結び付く翼端渦は、一般に、流れ(flow stream)の中に配置されたシリンダの流出周波数(shedding frequency)にある程度類似したいくつかの固有周波数を有することが知られている。所与のロータの幾何学形状の場合、これらの固有周波数は、不定の流量センサを使用した試験中に分析的に計算または測定することができる。これらは、FADECもしくは他のエンジン制御システム74、またはプラズマアクチュエータの電子コントローラ72の動作ルーチンにプログラムすることができる。その結果、プラズマアクチュエータ82、84、86は、例えば、様々な圧縮機段の渦流出周波数または動翼通過周波数に関連する、選択された周波数で制御システムによって迅速にパルスオンオフすることができる。あるいは、プラズマアクチュエータは、渦流出周波数の「倍数」または動翼通過周波数の「倍数」に対応する周波数でパルスオンオフすることができる。用語「倍数」は、本明細書で使用するとき、任意の数または分数であることができ、1に等しい、1より大きい、または1未満の値を有することができる。プラズマアクチュエータ82、84、86のパルス化は互いに同位相で行うことができる。あるいは、プラズマアクチュエータ82、84、86のパルス化は、互いに対して選択された位相角において位相外れで行うことができる。位相角は約0°〜180°の間で変動してもよい。プラズマアクチュエータを、渦周波数に対して約180°の位相外れでパルス化して、翼端渦が形成されると迅速にそれを崩壊させることが好ましい。プラズマアクチュエータの位相角および周波数は、本明細書にて上述したように、ステータ段に、または動翼端付近に取り付けられたプローブを使用して、検出システム500による翼端渦信号の測定値に基づいて選択されてもよい。
【0038】
エンジンの動作中、緩和システム300は、ロータプラズマアクチュエータ8などのプラズマ発生器をオンにして、第1の電極62と第2の電極64との間でプラズマ68を形成する。電子コントローラ72は、プラズマ発生器82、84、86と、プラズマ発生器のオンオフとを制御するのに使用されてもよい。電子コントローラ72はまた、電極62、64に接続されたAC電源70の動作を制御して、高電圧AC電位を電極62、64に供給するのに使用されてもよい。
【0039】
環状ケーシング50(または囲い板セグメント51)と動翼端46との間のコールドクリアランスは、高温および遠心荷重の結果として動翼板および動翼が拡張する離陸の間など、エンジンの高出力動作の間、動翼端が環状ケーシング50(または囲い板セグメント51)に擦れないように設計される。本明細書に示されるプラズマアクチュエータシステムの例示的実施形態は、激しい入口偏流条件の間、またはファンもしくは圧縮機の失速を回避するために向上した失速マージンが必要な、動作線が上昇する(図3の項目114を参照)ときのエンジン遷移の間、または例えば航空機の巡航状態がエンジンによって動力供給されているなど、クリアランス48を制御しなければならない飛行計画の間、プラズマ発生器82、84、86を作動させてプラズマ68を形成するように設計され、またそのように動作可能である。本明細書に示される例示的なプラズマアクチュエータシステムの他の実施形態は、船舶などのガスタービンエンジン、または恐らくは工業用ガスタービンエンジンの他のタイプに使用されてもよい。
【0040】
本明細書における本発明の例示的実施形態は、環状ケーシングまたは囲い板および動翼端を有する、ブースタ、低圧圧縮機(LPC)、高圧圧縮機(HPC)18、およびファン12など、エンジン10のあらゆる圧縮部に使用することができる。
【0041】
この文書による記載は、実施例を使用して、最良の形態を含む本発明を開示するとともに、当業者が本発明を作成し使用することを可能にする。本発明の特許可能な範囲は、特許請求の範囲によって規定され、また、当業者が思いつく他の実施例を含むことができる。他のそのような実施例は、それらが特許請求の範囲の文言と異ならない構造的要素を有する場合、または特許請求の範囲の文言とはわずかしか違わない均等な構造的要素を含む場合、特許請求の範囲内にあるものとする。
【符号の説明】
【0042】
8 中心軸線
10 エンジン
12 ファン部
14 周囲空気
18 高圧圧縮機(HPC)
20 燃焼器
21 バイパスダクト
22 高圧タービン(HPT)
23 スプリッタ
24 低圧タービン(LPT)
28 低圧シャフト
29 高圧ロータ
30 入口案内翼(IGV)
31 静翼
32 IGVフラップ
40 動翼
47 動翼の列
70 AC電源
72 電子コントローラ
74 エンジン制御システム
82 プラズマ発生器
84 プラズマアクチュエータ
300 緩和システム
500 検出システム
504 入力信号
506 ファンロータ速度信号
510 相関プロセッサ
512 安定性相関信号
600 不安定性制御システム
602 コマンド信号
604 状態信号
606 不安定性制御システム信号
700 不安定性緩和システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸線の周りに配列された、動翼エーロフォイルおよび動翼端をそれぞれ有する複数の動翼を有するロータと、
中心軸線の周りに配列された、静翼エーロフォイルをそれぞれ有する複数の静翼の円周方向列を有するステータ段であって、前記ロータの軸線方向前方に位置するステータ段と、
前記動翼端から半径方向外側に離間して位置する静的構成部品と、
前記ロータの動作中に前記ロータの不安定性を検出するための検出システムと、
前記検出システムによって不安定性が検出されたとき、前記ロータの安定性の改善を容易にする緩和システムであって、少なくとも1つの動翼上に取り付けられた少なくとも1つのプラズマアクチュエータを含む緩和システムとを備える、圧縮システム。
【請求項2】
前記検出システムが、前記静的構成部品上に位置するセンサを含む、請求項1記載の圧縮システム。
【請求項3】
前記センサが、前記翼端付近の場所における動圧に対応する圧力信号を発生させることができる圧力センサである、請求項2記載の圧縮システム。
【請求項4】
前記ロータの回転軸線の周りで前記静的構成部品上に円周方向で配列された、前記動翼の列の翼端から半径方向外側に離間した複数のセンサをさらに備える、請求項1記載の圧縮システム。
【請求項5】
前記検出システムが前記ステータ段上に位置するセンサを含む、請求項1記載の圧縮システム。
【請求項6】
前記ロータがファンロータである、請求項1記載の圧縮システム。
【請求項7】
前記ロータが圧縮機ロータである、請求項1記載の圧縮システム。
【請求項8】
前記緩和システムが、前記ステータ段上に位置する少なくとも1つのプラズマアクチュエータを含む、請求項1記載の圧縮システム。
【請求項9】
少なくとも1つのプラズマアクチュエータが前記静翼エーロフォイル上に位置する、請求項1記載の圧縮システム。
【請求項10】
前記プラズマアクチュエータが、誘電材料によって分離された第1の電極および第2の電極を含む、請求項1記載の圧縮システム。
【請求項11】
前記緩和システムが、前記動翼エーロフォイルの凸面側上に位置する少なくとも1つのプラズマアクチュエータを含む、請求項1記載の圧縮システム。
【請求項12】
前記緩和システムが、前記動翼エーロフォイル上に位置する複数のプラズマアクチュエータを含む、請求項1記載の圧縮システム。
【請求項13】
前記緩和システムが、入口案内翼の後縁付近に位置するフラップ上に位置する少なくとも1つのプラズマアクチュエータを含む、請求項1記載の圧縮システム。
【請求項14】
中心軸線の周りに配列された、静翼エーロフォイルをそれぞれ有する複数の静翼の列を有するステータ段と、
前記ステータ段上に位置する少なくとも1つのプラズマアクチュエータとを備える、圧縮システム。
【請求項15】
前記プラズマアクチュエータが前記静翼エーロフォイルの凸面側上に位置する、請求項14記載の圧縮システム。
【請求項16】
前記プラズマアクチュエータが前記静翼エーロフォイルの凹面側上に位置する、請求項14記載の圧縮システム。
【請求項17】
入口案内翼上に位置する少なくとも1つのプラズマアクチュエータを有する複数の入口案内翼の列をさらに備える、請求項14記載の圧縮システム。
【請求項18】
フラップとフラップ上に位置する少なくとも1つのプラズマアクチュエータとをそれぞれ有する、複数の入口案内翼の列をさらに備える、請求項14記載の圧縮システム。
【請求項19】
中心軸線の周りに配列された動翼の円周方向列を有する少なくとも1つのファンロータを有するファン部と、
前記動翼の翼端から半径方向に離間して位置する静的構成部品と、
前記中心軸線の周りに配置された、静翼エーロフォイルをそれぞれ有する複数の静翼の列を有するステータ段と、
少なくとも1つの動翼上に位置する少なくとも1つのプラズマアクチュエータとを備える、ガスタービンエンジン。
【請求項20】
中心軸線の周りに配列された動翼の円周方向列を有する少なくとも1つのファンロータを有するファン部と、
前記動翼の翼端から半径方向に離間して位置する静的構成部品と、
前記中心軸線の周りに配置された、静翼エーロフォイルをそれぞれ有する複数の静翼の列を有するステータ段と、
前記ファン部の動作中に不安定性を検出するための検出システムと、
前記検出システムによって不安定性が検出されたとき、前記ファン部の安定性の改善を容易にする緩和システムであって、動翼上に位置する少なくとも1つのプラズマアクチュエータを含む緩和システムとを備える、ガスタービンエンジン。
【請求項21】
前記検出システムが、前記ファン部における流れパラメータに対応する信号を発生させることができるセンサを含む、請求項20記載のガスタービンエンジン。
【請求項22】
前記センサが、前記翼端付近の場所における動圧に対応する圧力信号を発生させることができる圧力センサである、請求項20記載のガスタービンエンジン。
【請求項23】
前記緩和システムが、前記ステータ段上に位置する少なくとも1つのプラズマ発生器を含む、請求項20記載のガスタービンエンジン。
【請求項24】
前記プラズマ発生器が誘電材料によって分離された第1の電極および第2の電極を含む、請求項20記載のガスタービンエンジン。
【請求項25】
前記第1の電極および前記第2の電極に接続された、高電圧AC電位を前記第1の電極および前記第2の電極に供給するAC電源をさらに備える、請求項24記載のガスタービンエンジン。
【請求項26】
前記第1の電極および前記第2の電極に接続された、高電圧AC電位を前記第1の電極および前記第2の電極に供給するAC電源をさらに備える、請求項10記載の圧縮システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2011−508154(P2011−508154A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−540853(P2010−540853)
【出願日】平成20年12月23日(2008.12.23)
【国際出願番号】PCT/US2008/088112
【国際公開番号】WO2009/086349
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】