説明

プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法

【課題】複数の基板を搬送可能なトレイを備えるプラズマ処理装置において、トレイの効果的な冷却と消耗抑制を実現する。
【解決手段】トレイ3の基板収容孔27A〜27Iの孔壁には基板5の下面cの外周縁部分を支持する基板支持部11が設けられている。ステージ21の基板載置部27A〜27Iは、基板収容孔4A〜4Iに挿入され、基板載置面28に基板支持部11から基板5が受け渡される。基板支持部11の下側部は、突出量がトレイ3の上面3a側に向けて漸次増加するテーパ状面11bである。基板載置部11の側面はテーパ状面11bと適合する傾斜面29であり、ステージ21の基部21aとトレイ3との間に間隔S1が形成されるように、テーパ状面11bに当接して支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の基板を搬送可能なトレイを利用することでバッチ処理を実現しているドライエッチング装置が知られている。例えば、特許文献1には、トレイに設けた複数の厚さ方向に貫通する基板収容孔に基板を収容して搬送するプラズマ処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第436105号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
太陽電池の基板の形状は一般に四角形状ないし角型である。しかし、特許文献1に記載のプラズマ処理装置は、主として複数の丸型基板のバッチ処理を意図しているので、比較的大型の角型基板に適用した場合をも含む、トレイの冷却とトレイの消耗抑制の両方の実現は、十分に考慮されていない。
【0005】
基板の外周縁付近の領域は基板収容孔の孔壁に臨んでいる。そのため、プラズマ処理中にトレイが高温となると、この領域はトレイ(基板収容孔の孔壁及び孔壁から突出する基板支持部)からの輻射熱の影響を大きく受ける。具体的には、輻射熱により基板の外周縁付近の領域が高温となるとレジスト焼け(熱によりレジストマスクに変形等の劣化が生じる現象)が起こり、歩留まり低下の原因となる。
【0006】
現在の太陽電池の基板は125mm角が主流である。例えば、このサイズの9枚の角型基板を3×3の配置で特許文献9のトレイに配置する場合、必然的にトレイは大型化する。トレイが大型化した場合、トレイの消耗を効果的に抑制しなければ、プラズマ処理装置を所有するコスト(CoO: Cost of Ownership)が大幅に悪化する。
【0007】
本発明は、複数の基板を搬送可能なトレイを備えるプラズマ処理装置において、トレイの効果的な冷却と消耗抑制を実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、厚み方向に貫通するように設けられて少なくとも1枚の基板が収容される少なくとも1個の基板収容孔と、この基板収容孔の孔壁から突出し、前記基板収容孔内に収容された前記基板の下面の外周縁部分を支持する上側部を有する基板支持部とを備える、搬送可能なトレイと、前記トレイが搬入されるチャンバ内にプラズマを発生させるプラズマ発生源と、前記チャンバ内に配置され、基部と、前記基部から上向きに突出し、前記トレイの下面側から前記基板収容孔に挿入され、上端面である基板載置面に前記基板支持部から受け渡された前記基板の前記下面が載置される基板載置部とを有するステージと、前記ステージに対して高周波バイアスを印加するバイアス印加部とを備え、前記基板載置部の側面に設けられたトレイ支持部は、前記基部と前記トレイの前記下面側との間に間隔が形成されるように、前記トレイの前記基板支持部の下側部に当接して支持することを特徴とする、プラズマ処理装置を提供する。
【0009】
トレイの基板支持部の下側部は、ステージの基板載置部の側面に設けられたトレイ支持部に当接して支持される。トレイとステージが高い密接度で当接するので、ステージへの熱伝導によりトレイが効果的に冷却される。その結果、トレイ(基板収容孔の孔壁及び孔壁から突出する基板支持部)からの基板収容孔内の基板への輻射熱の影響を、効果的に抑制できる。
【0010】
ステージに対して高周波バイアスを印加することより、基板だけでなくトレイの上面にもバイアスシースが形成される。ステージの基板載置部の側面に設けられたトレイ支持部が、トレイの基板支持部の下側部を支持すると、ステージの基部とトレイの下面側との間には間隔が形成される。ステージの基部とトレイの下面側との間に形成された間隔は、トレイに作用する電界を制御する空間として機能し、トレイの上面におけるバイアスシースを基板の上面におけるバイアスシースよりも抑制できる。バイアスシースの抑制によりトレイの消耗を抑制できる。
【0011】
前記トレイは前記基板収容孔に前記基板を複数枚収容し、前記基板載置部は前記基板載置面に前記複数枚の基板を載置してもよい。
【0012】
この場合、前記トレイは、隣接する前記基板の突き合わせ部が互いに突き合わされた状態で前記複数枚の基板を前記基板収容孔に収容し、前記基板載置部は、隣接する前記基板の前記突き合わせ部が互いに突き合わされた状態で前記複数枚の基板を載置する。
【0013】
例えば、前記トレイの前記基板支持部の下側部は、前記基板収容孔の前記孔壁からの突出量が前記トレイの前記下面側から前記上面側に向けて漸次増加するテーパ状面であり、前記基板載置部の前記トレイ支持部は、前記テーパ状面と適合する傾斜面である。
【0014】
トレイの基板支持部の下側部をテーパ状面とし、基板載置部のトレイ支持部をテーパ状面と適合する傾斜面とすることで、トレイをステージに向けて降下させた際に、基板載置部側の傾斜面にトレイ側のテーパ状面が円滑に案内される。その結果、基板載置部はトレイの下面側からトレイの基板収容孔に円滑かつ確実に挿入され、基板載置面にトレイの基板支持部から基板が確実に受け渡されると共に、トレイ側のテーパ状面は基板載置部側の傾斜面に確実に当接して支持される。つまり、トレイの基板支持部の下側部をテーパ状面とし、基板載置部のトレイ支持部をテーパ状面と適合する傾斜面とすることで、トレイのステージに対するアラインメント性能を向上できる。
【0015】
1つの基板収容孔に収容された複数の基板を基板支持部から基板載置部の基板載置面に受け渡す場合には、より良好なアラインメント性能が要求される。トレイの基板支持部の下側部をテーパ状面とし、基板載置部のトレイ支持部をテーパ状面と適合する傾斜面とすることで、このような場合に要求されるアラインメント性能を実現できる。
【0016】
あるいは、前記トレイの前記基板支持部の下側部は、前記基板支持部の前記上側部に支持された前記基板の前記下面に沿って延びる第1の面と、前記第1の面から下向きに突出する第2の面とを備え、前記基板載置部の前記トレイ支持部は、前記トレイ支持部の前記第1の面が載置されるトレイ載置面と、前記トレイ支持部の前記第1の面が前記トレイ載置面に載置された状態で前記トレイの前記第2の面と間隔を隔てて対向する側面とを備える。
【0017】
トレイの基板支持部の第2の面が基板載置部のトレイ支持部の側面で案内されることで、基板載置面にトレイの基板支持部から基板が確実に受け渡されると共に、トレイ側の第1の面が基板載置部側のトレイ支持面に確実に当接して支持される。つまり、この構成によっても、トレイのステージに対するアラインメント性能を向上できる。
【0018】
本発明の第2の態様は、厚み方向に貫通するように設けられて少なくとも1枚の基板が収容される少なくとも1個の基板収容孔と、この基板収容孔の孔壁から突出する基板支持部を有するトレイを準備し、前記トレイの前記基板収容孔に前記基板を収容し、前記基板の下面の外周縁部分を前記基板支持部の上側部に支持させ、チャンバ内のステージに向けて前記トレイを降下させ、前記ステージの基部から上向きに突出する基板載置部を前記トレイの下面側から前記基板収容孔に進入させ、前記基板載置部の上端面である基板載置面に、前記基板収容孔内に収容された前記基板の下面を載置し、前記基部と前記トレイの前記下面側との間に間隔が形成されるように、前記基板載置部の側面に設けられたトレイ支持部に対して、前記トレイの前記基板支持部の下側部を当接させて支持させ、前記チャンバ内にプラズマを発生させる共に前記ステージに高周波バイアスを印加する、プラズマ処理方法を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明のプラズマ処理装置及びプラズマ処理方法では、厚み方向に貫通するようにトレイに設けられた基板収容孔の孔壁から突出する基板支持部を設け、ステージの基板載置部の側面に設けられたトレイ支持部は、ステージの基部とトレイの下面側との間に間隔が形成されるように、トレイの基板支持部の下側部に当接して支持する。そのため、ステージーの熱伝導によりトレイを効果的な冷却でき、トレイの上面におけるバイアスシースの抑制によりトレイの消耗を抑制できる。
【0020】
また、基板支持部の下側部をテーパ状面とし、基板載置部の側面をテーパ状面と適合する傾斜面とすることで、トレイのステージに対するアラインメント性能を向上できる。基板支持部の下側部が基板の下面に沿って延びる第1の面と、第1の面から下向きに突出する第2の面とを設け、基板載置部のトレイ支持部にそれに対応するトレイ載置面と側面とを設けることでも、トレイのステージに対するアラインメント性能を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態に係るドライエッチング装置の模式図。
【図2】ステージ及びトレイの斜視図。
【図3A】第1実施形態のトレイがステージに配置される前の状態での図2のX軸に直交する断面の部分断面図。
【図3B】第1実施形態のトレイがステージに配置された状態での図2のX軸に直交する断面の部分断面図。
【図4A】第2実施形態のトレイがステージに配置される前の状態での部分断面図。
【図4B】第2実施形態のトレイがステージに配置された状態での部分断面図。
【図5】ステージ及びトレイの代案の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1実施形態)
図1から図4Bは本発明の実施形態に係るプラズマ処理装置の一例であるドライエッチング装置1を示す。このドライエッチング装置1は、プラズマを発生させる減圧可能なチャンバ(チャンバ)2に対し、図示しない出入口を介して搬入出可能なトレイ3を備える。
【0023】
図2を参照すると、トレイ3は、全体として外形が矩形状で厚みが一定の板状である。本実施形態におけるトレイ3には、平面視で概ね正方形状である9個の基板収容孔4A,4B,4C,4D,4E,4F,4G,4H,4Iが上面3aから下面3bまで厚み方向に貫通するように設けられている。これらの基板収容孔4A〜4Iは同一の形状及び寸法を有し、個々の基板収容孔4A〜4Iには、1枚の基板5が収容される。
【0024】
図2を参照すると、基板5は、四隅に角面取を施した角型基板であり、平面視で直線状の4個の辺5aを備える。基板5のサイズは特に限定されないが、例えば太陽電池用の125mm角のものでもよい。
【0025】
トレイ3の9個の基板収容孔4A〜4Iは、平面視で3×3の配置で2方向(図2ではX軸及びY軸の方向)にマトリクス状に配置されている。トレイ3は、9個の基板収容孔4A〜4Iの外側領域を構成する外枠6A,6B,6C,6Dと、図2においてX方向に延びる2つの中間枠7A,7Bと同図においてY方向に延びる2つの中間枠8A,8Bとを備える。これらの枠6A〜6D,7A,7B,8A,8Bにより9個の基板収容孔4A〜4Iが画定されている。
【0026】
個々の基板収容孔4A〜4Iの孔壁の平面視で全周に基板支持部11が設けられている。この基板支持部11で支持されることにより、基板5は基板収容孔4A〜4Iに収容された状態で保持される。前述のように基板収容孔4A〜4Iは厚み方向に貫通するように形成されている。そのため、トレイ3の上面3a側から見たときに、基板収容孔4A〜4Iに収容された基板5の上面5bが露出しているだけでなく、トレイ3の下面3b側から見たときにも収容された基板5の下面5cが露出している。
【0027】
図3Aを参照すると、基板支持部11は上面側(上側部)が実質的に水平な支持面11aであり、下面側(下側部)がテーパ状面11bである。このテーパ状面11bはトレイ3の下面3bから上面3aに向けて基板収容孔4A〜4Iの孔壁からの突出量が漸次増大する向きに傾いている。言い換えれば、テーパ状面11bは基板収容孔4A〜4Iの孔径がトレイ3の下面3bから上面3aに向けて漸次減少する向きに傾いている。
【0028】
トレイ3の外枠6A〜6Dの下面側にも下面3bから上面3aに向けて外側へ広がる向きに傾斜する傾斜面6aが設けられている。
【0029】
図1を参照とすると、ドライエッチング装置1のチャンバ2の頂部を閉鎖する誘電体壁18の上方には、上部電極としてのアンテナ(プラズマ源)17が配置されている。アンテナ17は第1の高周波電源19Aに電気的に接続されている。一方、チャンバ2内の底部側には、基板5を保持したトレイ3が載置されるステージ21が配置されている。チャンバ2のガス導入口2aにはプロセスガス源22が接続され、排気口2bにはチャンバ22内を真空排気するための真空ポンプを含む減圧機構23が接続されている。
【0030】
ステージ21は金属ブロック24上に配置され、金属ブロック24はベース部25内に収容されている。金属ブロック24は第2の高周波電源部19Bに電気的に接続されて下部電極として機能する。
【0031】
図2を参照すると、ステージ21は扁平な直方体状の基部21aを備え、この基部21aの上面21bの外周に沿って平面視で矩形枠状のトレイガイド26が設けられている。基部21aの上面21bのトレイガイド26で囲まれた領域にトレイ3が配置される。トレイガイド26の内側面は、トレイ3の外枠6A〜6Dの傾斜面6aと適合する傾斜を有しており、トレイ3を案内するトレイガイド面26aとして機能する。
【0032】
ステージ21の基部21aの上面21aには、トレイ3の基板収容孔4A〜4Iと対応する平面視で概ね正方形状の島状に隆起した9個の基板載置部27A,27B,27C,27D,27E,27F,27G,27H,27Iが設けられている。個々の基板載置部27A〜27Iの実質的な水平な上端面は、トレイ3の対応する基板収容孔4A〜4Iの基板支持部11から受け渡された基板5が載置される基板載置面28として機能する。ステージ21の基部21aの上面21bから基板載置面28までの高さは、トレイ3の下面3bから基板支持部11の支持面11aの高さよりも十分に大きく設定している。
【0033】
個々の基板載置部27A〜27Iの側部は、基板支持部11のテーパ状面11bと適合する傾斜を有する傾斜面29で構成されている。後に詳述するように、基板支持部11のテーパ状面11bが傾斜面29に密接することにより、トレイ3がステージ21上に保持される。
【0034】
図3A及び図3Bにのみ概念的に示すように、ステージ21には、基板載置部27A〜27Iの上端面(基板載置面28)付近に、基板5とトレイ3を静電吸着するための静電吸着用電極32が備えられている。この静電吸着用電極32には、駆動電源33が電気的に接続されている。基板5とトレイ3を確実に静電吸着できる限り、静電吸着用電極32は単極型でも双極型でもよい。静電吸着用電極32はステージ21の表面に溶射等の手段で設けてもよい。
【0035】
図1を参照すると、ドライエッチング装置1は、ステージ21の冷却装置34を備える。この冷却装置34は、金属ブロック24内に形成された冷媒流路35と、温調された冷媒を冷媒流路35中で循環させる冷媒循環装置36とを備える。
【0036】
図1及び図2を参照すると、個々の基板載置部27A〜27Iの基板載置面28には、載置される3枚の基板5に対応した位置に伝熱ガスの供給孔37が設けられている。これらの供給孔37は共通の伝熱ガス源38に接続されている。
【0037】
チャンバ2内には、ベース部25、金属ブロック24、及びステージ21を貫通し、かつ駆動装置39で駆動されて昇降するリフトピン40が設けられている。
【0038】
コントローラ45は、第1及び第2の高周波電源19A,19B、プロセスガス源22、伝熱ガス源38、減圧機構23、冷却装置34、駆動電源33、及び駆動装置39を含むドライエッチング装置1を構成する要素の動作を制御する。
【0039】
次に、本実施形態のドライエッチング装置1の動作を説明する。
【0040】
まず、トレイ1の基板収容孔4A〜4Iにそれぞれ基板5が収容される。基板収容孔4A〜4Iに収容された基板5は、下面5cの外周縁部分が基板支持部11の支持面11aに支持される
【0041】
基板5を収容済みのトレイ3はチャンバ2内に搬入され、先端がステージ21の基部21aの上面21bよりも十分に上方に位置する位置まで突出したリフトピン40に受け渡される。つまり、図3Aに示すように、ステージ21の基部21aの上面21bの上方に基板5を収容済みのトレイ3が位置する。
【0042】
続いて、リフトピン40が降下することでトレイ3はステージ21に向けて降下する。外枠6A〜6Dの傾斜面6aがステージ21のトレイガイド26のガイド面26aに案内されることで、トレイ3はステージ21に対して適切な姿勢を維持しつつ円滑に降下する。図3Bを参照すると、トレイ3は基板支持部11の下側部であるテーパ状面11bがステージ21の基板載置部27A〜27Iの側壁である傾斜面29(本実施形態におけるトレイ支持部)の上に載置されるまで降下する。つまり、トレイ3はステージ21の基板載置部27A〜27Iの傾斜面29で支持される位置に達するとそれ以上は降下しない。図3Bに示すように、ステージ21の基部21aの上面21aと、基板載置部27A〜27Iの傾斜面29で支持されたトレイ3の下面3bとの間には間隔S1が形成されている。
【0043】
トレイ3がステージ21に向けて降下する際に、ステージ21の基板載置部27A〜27Iがトレイ3の対応する基板収容孔4A〜4I内にトレイ3の下面3b側から進入する。トレイ3がステージ21の基部21aに近付くのに伴い、基板載置部27A〜27Iの先端である基板載置面28は基板収容孔4A〜4I内をトレイ3の上面3aに向かって進む。
【0044】
図3Bに示すように、トレイ3の基板支持部11のテーパ状面11bがステージ21の基板載置部27A〜27Cの傾斜面29に載置されると、個々の基板収容孔4A〜4I内の基板3は基板載置部27A〜27Iによって基板支持部11の支持面11aから持ち上げられる。詳細には、基板5はその下面5cが基板載置部27A〜27Iの基板載置面28に載置され、トレイ3の基板支持部11の支持面11aに対して間隔をあけて上方に配置される。要するに、基板5はトレイ3の基板支持部11から基板載置部27A〜27Iの基板載置面28に受け渡される。
【0045】
前述のようにトレイ3がステージ21に向けて降下する際、トレイ3がステージ21の基部21aに近付くのに伴い、基板載置部27A〜27Iの先端である基板載置面28が基板収容孔4A〜4I内をトレイ3の上面3aに向かって進む。この際、基板収容孔4A〜4Iの孔壁から突出する基板支持部11の下側部をテーパ状面11bとし、基板載置部27A〜27Iの周側部をテーパ状面11bと適合する傾斜面29としているので、基板載置部27A〜27I側の傾斜面29にトレイ3側のテーパ状面11bが円滑に案内される。その結果、基板載置部27A〜27Iはトレイ3の下面側3bからトレイ3の基板収容孔4A〜4Iに円滑かつ確実に挿入される。その結果、基板載置面28に対してトレイ3の基板支持部11から基板5が確実に受け渡されると共に、トレイ3側のテーパ状面11aは基板載置部27A〜27I側の傾斜面29に確実に密接して支持される。つまり、トレイ3の基板支持部11の下側部をテーパ状面11bとし、基板載置部27A〜27Bにテーパ状面11bと適合する傾斜面29を設けることで、トレイ3のステージ21に対するアラインメント性能を向上できる。
【0046】
トレイ3のステージ21への配置完了後、静電吸着用電極32に対して駆動電源33から直流電圧が印加され、基板載置部27A〜27Iの基板載置面28にそれぞれ基板5が静電吸着される。また、トレイ3のうち基板載置部27A〜27Iの側周部である傾斜面29に密接している基板支持部11のテーパ状面11bも、静電吸着用電極32への給電により基板載置部27A〜27Iに傾斜面29に対して静電吸着される。
【0047】
続いて、供給孔37を通って伝熱ガス源38から伝熱ガスが供給される。その後、プロセスガス源22からチャンバ2内にプロセスガスが供給され、減圧機構23によりチャンバ2内は所定圧力に維持される。また、高周波電源19Aからアンテナ17に高周波電圧を印加してチャンバ3内にプラズマを発生させると共に、高周波電源19Bによりステージ21側の金属ブック24に高周波バイアスが印加され、プラズマによって基板2がエッチングされる。
【0048】
エッチング中は、冷媒循環装置36によって冷媒流路35中で冷媒を循環させて金属ブロック24を冷却し、それによってステージ21が備える基板載置部27A〜27Iの基板載置面28に保持された基板5を冷却する。前述のように、基板5はその下面5bがトレイ3を介することなく基板載置面28に直接載置され、高い密着度で保持されている。従って、伝熱ガスを介した基板5と基板載置面28との間の熱伝導性が良好である。その結果、個々の基板載置部27A〜27Iの基板載置面28に保持された基板5を高い冷却効率で冷却できると共に、基板2の温度を高精度で制御できる。
【0049】
前述のように、トレイ3の基板支持部11の下側部であるテーパ状面11bは基板載置部27A〜27Iの傾斜面29に密接して支持されている。また、トレイ3はテーパ状面11bと傾斜面29とが密接する部分でステージ29に対して静電吸着されている。このように、テーパ状面11bと傾斜面29の部分でトレイ3とステージ22が高い密接度で密接しているので、前述のように冷却装置34によって冷却されるステージへの熱伝導によりトレイ3が効果的に冷却される。その結果、トレイ3(基板収容孔4A〜4Iの孔壁及び孔壁から突出する基板支持部11)からの基板収容孔4A〜3I内の基板3への輻射熱の影響を効果的に抑制できる。このように、本実施形態のドライエッチング装置1では、トレイ3を効果的に冷却できる。
【0050】
図3Bを参照とすると、ステージ21を配置した金属ブロック24に対して高周波電源部19Bから高周波バイアスを印加することより、基板5の上面5bだけでなくトレイ3の上面3aにもバイアスシース41が形成される。前述のように本実施形態では、ステージ21の基板載置部27A〜27Iの傾斜面29にトレイ3のテーパ状面11bが支持された状態では、ステージ21の基部21aの上面21bとトレイ3の下面3b側との間に間隔S1が形成される。この間隔S1は、トレイ3に作用する電界を弱める空間として機能し、トレイ3の上面3aにおけるバイアスシース41を基板5の上面5bにおけるバイアスシース41よりも抑制できる。バイアスシース41の抑制によりトレイ3の上面3aがエッチングされて消耗するのを抑制できる。このように、本実施形態のドライエッチング装置1では、トレイ3の消耗抑制できる。
【0051】
(第2実施形態)
図4A及び図4Bに示す本発明の第2実施形態は、トレイ3の基板支持部11の下側部の構造と、それに対応する基板載置部27A〜27Iの側部の構造が第1実施形態とは異なる。
【0052】
トレイ3の基板支持部11の上面側(上側部)は、実質的に水平な支持面11aである。一方、トレイ3の基板支持部11の下面側(下側部)は、支持面11aと同様に実質的に水平な平面である第1の面11cと、この第1の面11cから実質的に垂直に下向きに突出する平面である第2の面11dとを備える。言い換えれば、第1の面11cは基板支持部11の支持面11aに支持された基板5の下面5bに沿って延び、第2の面11dはそこから下方へ延びる垂直な面である。
【0053】
個々の基板載置部27A〜27Iの側部は、先端面である基板載置面28と同様に実質的に水平なトレイ載置面43と、トレイ載置面43から下向きに延びる平面である側面44とを備える。
【0054】
トレイ3が降下してステージ21の基部21aに近付くのに伴い、基板載置部27A〜27Iの先端である基板載置面28は基板収容孔4A〜4I内をトレイ3の上面3aに向かって進む。この際、トレイ3の基板支持部11の第2の面11dが基板載置部27A〜27Iの側面44で案内されることで、トレイ3はステージ21に対して適切な姿勢を維持しつつ円滑に降下する。
【0055】
図4Bを参照すると、トレイ3は基板支持部11の下側部の一部である第1の面11cがステージ21の基板載置部27A〜27Iの側部の一部であるトレイ載置面43の上に載置されるまで降下する。つまり、トレイ3はステージ21の基板載置部27A〜27Iのトレイ載置面43で支持される位置に達するとそれ以上は降下しない。このとき、ステージ21の基部21aの上面21bと、基板載置部27A〜27Iのトレイ載置面43で支持されたトレイ3の下面3bとの間には間隔S1が形成されている。また、トレイ3の基板支持部11の下側部の一部である側面11dと基板載置部27A〜27Iとの間にも間隔S2が形成されている。
【0056】
トレイ3の基板支持部11の第2の面11dが基板載置部27A〜27Iの側面44で案内されることで基板載置部27A〜27Iはトレイ3の下面側3bからトレイ3の基板収容孔4A〜4Iに円滑かつ確実に挿入される。その結果、基板載置面28に対してトレイ3の基板支持部11から基板5が確実に受け渡されると共に、トレイ3側の第1の面11cは基板載置部27A〜27I側のトレイ載置面43上に確実に密接して支持される。つまり、トレイ3の基板支持部11の下側部の第2の面11dとそれに対応する基板載置部27A〜27Iの側面44を設けることで、トレイ3のステージ21に対するアラインメント性能を向上できる。
【0057】
第2実施形態のその他の構成及び作用は第1実施形態と同様である。
【0058】
第1実施形態ではトレイ3の個々の基板収容孔4A〜4Iに1枚の基板5が収容され、個々の基板載置部27A〜27Iの基板載置面28に1枚の基板5が載置される構成である。しかし、第1及び第2実施形態はいずれも、トレイ3の個々の基板収容孔に複数枚の基板5が収容され、ステージ21の個々の基板載置部に複数枚の基板5が載置される構成でも適用できる。以下、図5に示すそのような構成のドライエッチング装置を説明する。
【0059】
図5の例では、トレイ3には平面視で概ね長方形状である3個の基板収容孔4A,4B,4Cが上面3aから下面3bまで厚み方向に貫通するように設けられる。個々の基板収容孔4A〜4Cにはそれぞれ3枚の基板5が収容される。個々の基板収容孔4A〜4Cに収容された3枚の基板5は、辺(突き合わせ部)5aどうしを互いに突き合わせて互いに密接した状態で配置している。また、トレイ3は基板5の中央部下側の撓みを防ぐためのロッド12A,12B,12Cと、基板5の角面取に相当する貫通部分を塞ぐ遮蔽板14を備える。
【0060】
ステージ21には、トレイ3の基板収容孔4と対応する平面視で概ね長方形状の島状に隆起した3個の基板載置部27A,27B,27Cが設けられている。個々の基板載置部27A〜27Cには、トレイ3をステージ21に載せた際にロッド12A〜12Cを進入させて収容するために、それぞれ3本の収容溝31A,31B,31Cが設けられている。
【0061】
トレイ3がステージ21に向けて降下する際に、ステージ21の基板載置部27A〜27Cがトレイ3の対応する基板収容孔4A〜4C内にトレイ3の下面3b側から進入する。トレイ3がステージ21に近付くのに伴い、基板載置部27A〜27Cの先端の基板載置面28は基板収容孔4A〜4C内をトレイ3の上面3aに向かって進む。また、トレイ3のロッド12A〜12Cは基板載置部27A〜27Cの収容溝31A〜31C内に進入する。
【0062】
トレイ3の基板支持部11のテーパ状面11b(図3A〜図4B参照)がステージ21の基板載置部27A〜27Cの傾斜面29に載置されると、個々の基板収容孔4A〜4A内の基板5は基板載置部27A〜27Cによって基板支持部11の支持面11aから持ち上げられる。個々の基板載置部27A〜27Cには基板載置面28には3枚の基板5が辺(突き合わせ部)5aどうしを互いに突き合わせて互いに密接した状態で配置される。
【0063】
図5の構成のように個々の基板収容孔4A〜4Cに収容された複数枚(この例では3枚)の基板5を基板支持部11から基板載置部27A〜27Cの基板載置面28に受け渡す場合には、より良好なアラインメント性能が要求される。トレイ11の基板支持部11の下側部をテーパ状面11aとし、基板載置部27A〜27Cの側部をテーパ状面11aと適合する傾斜面29とすることで、このような場合に要求されるアラインメント性能を実現できる。
【符号の説明】
【0064】
1 ドライエッチング装置
2 チャンバ
2a ガス導入口
2b 排気口
3 トレイ
3a 上面
3b 下面
4A〜4I 基板収容孔
5 基板
5a 辺
5b 上面
5c 下面
6A〜6D 外枠
6a 傾斜面
7A,7B,8A,8B 中間枠
11 基板支持部
11a 支持面
11b テーパ状面
11c 第1の面
11d 第2の面
12A,12B,12C ロッド
14 遮蔽版
17 アンテナ
18 誘電体壁
19A,19B 高周波電源
21 ステージ
21a 基部
22 プロセスガス源
23 減圧機構
24 金属ブロック
25 ベース
26 トレイガイド
26a トレイガイド面
27A〜27I 基板載置部
28 基板載置面
29 傾斜面
31A〜31C 収容溝
32 静電吸着用電極
33 駆動電源
34 冷却装置
35 冷媒流路
36 冷媒循環装置
37 供給孔
38 伝熱ガス源
39 駆動装置
40 リフトピン
41 バイアスシース
43 トレイ載置面
44 側面
45 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み方向に貫通するように設けられて少なくとも1枚の基板が収容される少なくとも1個の基板収容孔と、この基板収容孔の孔壁から突出し、前記基板収容孔内に収容された前記基板の下面の外周縁部分を支持する上側部を有する基板支持部とを備える、搬送可能なトレイと、
前記トレイが搬入されるチャンバ内にプラズマを発生させるプラズマ発生源と、
前記チャンバ内に配置され、基部と、前記基部から上向きに突出し、前記トレイの下面側から前記基板収容孔に挿入され、上端面である基板載置面に前記基板支持部から受け渡された前記基板の前記下面が載置される基板載置部とを有するステージと、
前記ステージに対して高周波バイアスを印加するバイアス印加部と
を備え、
前記基板載置部の側面に設けられたトレイ支持部は、前記基部と前記トレイの前記下面側との間に間隔が形成されるように、前記トレイの前記基板支持部の下側部に当接して支持することを特徴とする、プラズマ処理装置。
【請求項2】
前記トレイは前記基板収容孔に前記基板を複数枚収容し、
前記基板載置部は前記基板載置面に前記複数枚の基板を載置することを特徴とする、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記トレイは、隣接する前記基板の突き合わせ部が互いに突き合わされた状態で前記複数枚の基板を前記基板収容孔に収容し、
前記基板載置部は、隣接する前記基板の前記突き合わせ部が互いに突き合わされた状態で前記複数枚の基板を載置することを特徴とする、請求項2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記トレイの前記基板支持部の下側部は、前記基板収容孔の前記孔壁からの突出量が前記トレイの前記下面側から前記上面側に向けて漸次増加するテーパ状面であり、
前記基板載置部の前記トレイ支持部は、前記テーパ状面と適合する傾斜面である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記トレイの前記基板支持部の下側部は、前記基板支持部の前記上側部に支持された前記基板の前記下面に沿って延びる第1の面と、前記第1の面から下向きに突出する第2の面とを備え、
前記基板載置部の前記トレイ支持部は、前記トレイ支持部の前記第1の面が載置されるトレイ載置面と、前記トレイ支持部の前記第1の面が前記トレイ載置面に載置された状態で前記トレイの前記第2の面と間隔を隔てて対向する側面とを備える、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
厚み方向に貫通するように設けられて少なくとも1枚の基板が収容される少なくとも1個の基板収容孔と、この基板収容孔の孔壁から突出する基板支持部を有するトレイを準備し、
前記トレイの前記基板収容孔に前記基板を収容し、前記基板の下面の外周縁部分を前記基板支持部の上側部に支持させ、
チャンバ内のステージに向けて前記トレイを降下させ、前記ステージの基部から上向きに突出する基板載置部を前記トレイの下面側から前記基板収容孔に進入させ、前記基板載置部の上端面である基板載置面に、前記基板収容孔内に収容された前記基板の下面を載置し、
前記基部と前記トレイの前記下面側との間に間隔が形成されるように、前記基板載置部の側面に設けられたトレイ支持部に対して、前記トレイの前記基板支持部の下側部を当接させて支持させ、
前記チャンバ内にプラズマを発生させる共に前記ステージに高周波バイアスを印加する、プラズマ処理方法。
【請求項7】
前記トレイの前記基板収容孔に複数枚の基板を収容し、前記基板載置部の前記基板載置面に複数枚の基板を載置することを特徴とする、請求項6に記載のプラズマ処理方法。
【請求項8】
前記トレイの前記基板収容孔に前記複数枚の基板を収容する際に、隣接する前記基板の突き合わせ部を互いに突き合わされた状態とし、
前記基板載置部の前記基板載置面に前記複数の基板を載置する際に、隣接する前記基板の突き合わせ部を互いに突き合わされた状態とする、請求項7に記載のプラズマ処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−45936(P2013−45936A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−183528(P2011−183528)
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】