説明

プラズマ処理装置及び基板処理方法

【課題】高周波電源の異常を検出することが出来るプラズマ処理装置及び基板処理方法の提供。
【解決手段】高周波電源2の出力側に設置された反射波パワーメータ6及び進行波パワーメータ8によって検出される反射波電力、進行波電力および供給電力の設定に基づき、高周波電源2の異常を検出する機能を備えてお
り、例えば、高周波電源2の4.5KWの設定出力に対し、1000ms経過後、進行波電力の値が4455〜4545Wの範囲(±1%の範囲)にない場合、または、反射波電力の値が進行波電力の値の3%以上に達した場合は、高周波電源2の異常と判別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周波数整合器に関するものであり、詳しくは、プラズマ処理装置などの高周波共振装置の負荷インピーダンスの変動に追従して高周波電源の発振周波数を整合させる周波数整合器であって、当該周波数整合器自体による電力損失がなく、かつ、高周波共振装置に対し、極めて高い転送効率で電源から電力を供給させ得る周波数整合器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開平3−322501号、特開平6−168896号、特開平6−168910号、特開平8−8234号、特開平8−148540号、特開平9−184338号などの公報には、半導体基板にドライエッチング、イオンエッチング、アッシング、プラズマ蒸着などの種々の乾式処理を施すための高周波共振装置としてのプラズマ処理装置が記載されている。
【0003】
上記プラズマ装置は、概略、ガス導入管と真空系に連結されたガス排出管とを有する反応容器(真空チャンバー)、および、反応容器の内部に配置された金属円筒体から主として構成され、金属円筒体を内部電極またはエッチトンネルとして利用し、高周波電力が供給されることによって反応容器内でプラズマを励起する装置である。
【0004】
そして、上記プラズマ処理装置の様な高周波共振装置には、通常、真空チャンバー側のプラズマ発生回路(プラズマ源)におけるプラズマ励起時のインピーダンスの変動に対応して電力の転送効率を高めるため、可変式コンデンサを含むLC回路によって構成されたマッチング装置(周波数整合回路)が付設される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記マッチング装置は、可変式コンデンサの駆動によって負荷インピーダンスを調整するため、実際、応答速度が遅く、電源側に対するインピーダンスの完全な整合が得られない。その結果、マッチング装置によっては、負荷インピーダンスに完全に一致した周波数の電力を供給し難く、電力の転送効率が低いと言う問題がある。特に、上記プラズマ処理装置などにおいては、プラズマ状態が常に変動するため、電源側との周波数のずれにより、安定したプラズマが保持できない場合もある。また、上記マッチング装置においては、可変コンデンサ自体による電力損失も生じる。
【0006】
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、高周波共振装置の負荷インピーダンスの変動に追従して高周波電源の発振周波数を整合させる周波数整合器であって、当該周波数整合器自体による電力損失がなく、かつ、高周波共振装置に対し、極めて高い転送効率で電源から電力を供給させ得る周波数整合器を提供することにある。また、本発明の目的は、プラズマ放電中に負荷インピーダンスが変動し易いプラズマ処理装置に好適な周波数整合器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は2つの要旨から成り、その第1の要旨は、高周波共振装置に電力供給する高周波電源の発振周波数を前記高周波共振装置の負荷インピーダンスに整合させる周波数整合器であって、当該周波数整合器は、前記高周波電源の出力側に設置された反射波パワーメータによって検出される反射波電力が最小となる様に、前記高周波電源の発振周波数を調整する機能を備えていることを特徴とする周波数整合器に存する。
【0008】
上記の周波数整合器は、反射波パワーメータによって検出された反射波電力が最小となる様に、高周波電源の発振周波数を調整し、高周波共振装置における負荷インピーダンスのずれを高周波電源側で補完させる。
【0009】
また、本発明の第2の要旨は、高周波共振装置に電力供給する高周波電源の発振周波数を前記高周波共振装置の負荷インピーダンスに整合させる周波数整合器であって、当該周波数整合器は、前記高周波電源の出力側に設置された位相検出器によって検出される電圧と電流の位相差が0°となる様に、前記高周波電源の発振周波数を調整する機能を備えていることを特徴とする周波数整合器に存する。
【0010】
上記の第2の要旨に係る周波数整合器は、位相検出器によって検出される電圧と電流の位相差が0°となる様に、高周波電源の発振周波数を調整し、高周波共振装置における負荷インピーダンスのずれを高周波電源側で補完させる。
【0011】
また、上記の第2の要旨に係る周波数整合器は、高周波電源の出力側に設置された反射波パワーメータによって検出される反射波電力が最小となる様に、前記高周波電源の発振周波数を調整する機能を備えていてもよい。斯かる態様において、周波数整合器は、反射波電力が最小となる様に且つ電圧と電流の位相差が0°となる様に、高周波電源の発振周波数を調整し、高周波共振装置における負荷インピーダンスのずれを高周波電源側で補完させる。
【0012】
上記の各周波数整合器における好ましい態様は、高周波共振装置がプラズマ処理装置である。そして、プラズマ処理装置の場合、周波数整合器は、高周波電源の発振周波数をプラズマ励起前には負荷インピーダンスが最大となる反共振周波数に調整し、プラズマの励起と共に共振周波数に調整する機能を備えていることにより、プラズマ処理装置の作動開始の際に一層効率的に電力を供給できる。
【0013】
更に、上記の各態様において、プラズマ処理装置には、真空チャンバーの真空度を検出する圧力検出手段が設けられ、周波数整合器は、予め記憶させた真空度に対する共振周波数の関係に基づき、前記圧力検出手段によって検出された真空度に応じて高周波電源の発振周波数を調整する機能を備えていることにより、より迅速な応答が可能である。
【0014】
高周波共振装置がプラズマ処理装置の場合の各態様においては、より短時間でプラズマを励起させるため、周波数整合器は、予め記憶した供給電力に対する共振周波数の関係に基づき、高周波電源の出力に応じて発振周波数を調整する機能を備えていてもよい。
【0015】
更に、上記の各態様において、周波数整合器は、高周波電源の出力側に設置された反射波パワーメータ及び進行波パワーメータによって検出される反射波電力および進行波電力に基づき、前記高周波電源の異常を検出する機能を備えていてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明に係る周波数整合器の実施形態を図面に基づいて説明する。図1〜図4は、周波数整合器の各種態様を示すブロック図であり、各々、図1は、反射波電力によって電源の発振周波数を調整する態様の図、図2は、電圧と電流の位相差によって電源の発振周波数を調整する態様の図、図3は、反射波電力ならびに電圧と電流の位相差によって電源の発振周波数を調整する態様の図、図4は、真空度によって電源の発振周波数を調整する態様ならびに反射波電力および進行波電力によって電源の異常を検出する態様の図である。
【0017】
また、図5〜図9は、高周波共振装置の共振の諸条件を示す参考のグラフであり、各々、図5は、高周波共振装置の共振特性の一例を示すグラフ、図6は、高周波共振装置の共振周波数の変動を示すグラフ、図7は、高周波共振装置としてのプラズマ処理装置におけるチャンバーの真空度とプラズマ周波数の関係を示すグラフ、図8は、チャンバーの所定真空度における供給電力と共振周波数の関係を示すグラフ、図9は、反射波電力および進行波電力の発生状態の一例を示すグラフである。
【0018】
本発明の周波数整合器は、図1に符号(3)で示す様に、高周波共振装置(1)に電力供給する高周波電源(2)の発振周波数を高周波共振装置(1)の負荷インピーダンスに整合させる周波数整合器であり、斯かる周波数整合器(3)は、特定の条件を満足する様に、高周波電源(2)の発振周波数を調整する機能を備えている。
【0019】
高周波共振装置(1)としては、例えば、高輝度放電ランプ、誘導加熱装置などが挙げられるが、典型的には、上記の従来例で示した各公報に記載のプラズマ処理装置が挙げられる。プラズマ処理装置は、プラズマリアクター、ウェハー処理装置、基板処理装置、熱処理装置、加熱処理装置などの呼称で知られた装置であり、基板の処理方式によってバッチ方式、枚葉方式があるが、電極を中心としたプラズマの発生構造から、同軸給電型、対向電極型などの装置が一般的である。
【0020】
また、エッチング、アッシング、蒸着などの基板処理において、ラジカルによる反応を促進し且つイオンダメージを極力低減したり、あるいは、エッチング処理などにおいて、高精度に選択比を規定するためにイオン衝撃を避ける必要がある場合には、全波長モードで共振する共振コイルを使用した螺旋共振装置が好適である。
【0021】
上記の螺旋共振装置(プラズマ処理装置)によれば、共振コイルにより定在波を誘導し、チャンバー内部に発生させさた誘導電界によって位相電圧と逆位相電圧を互いに相殺し、電位がゼロのノードにおいて誘導性結合により極めて電位の低いプラズマを励起できる。螺旋共振装置に関する技術は、国際公開
WO97/21332号公報の「誘導結合によるプラズマ放電処理方法」において開示されている。なお、上記の各プラズマ処理装置におけるインピーダンスは、使用基準などから、通常は50オームに設定される。
【0022】
高周波電源(2)としては、高周波共振装置(1)に必要な電圧および周波数の電力を供給できる電源である限り、Rfゼネレータ等の適宜の電源を使用し得る。例えば、上記の共振コイルを備えたプラズマ処理装置に対しては、周波数80kHz〜800MHzで0.5〜5KW程度の電力を供給可能な高周波発生器が使用される。
【0023】
具体的には、上記の電源としては、コムデル社(Comdel Inc)製の商品名「CX−3000」として知られる固定周波数型の高周波電源(周波数:27.12MHz、出力:3KW)が挙げられる。また、IFI社製の商品名「TCCX3500」として知られる高出力の高帯域増幅をヒューレットパッカード社製の商品名「HP116A」として知られる0〜50MHzのパルス発生器と共に使用することにより、800kHz〜50MHzの周波数域で2kWの出力が可能な可変周波数電源を構成できる。
【0024】
高周波電源(2)は、図中に回路の一部が示されており、通常、少なくとも出力を規定するためのプリアンプを含む制御回路(図示省略)と、所定出力に増幅するための増幅器(4)とを備えている。すなわち、高周波電源(2)において、制御回路は、操作パネル(図示省略)を通じて予め設定された出力条件に基づいて増幅器(4)の出力を制御し、増幅器(4)は、高周波共振装置(1)に伝送線路(5)を介して一定の高周波電力を出力する。
【0025】
本発明の周波数整合器(3)は、図1(a)に示す様に、制御用アナログ信号を周波数信号にデジタル変換するA/Dコンバータ(31)、変換された周波数信号の値と予め設定記憶された発振周波数の値に基づいて発振周波数を演算する演算処理回路(32)、演算処理して得られた周波数の値を電圧信号にアナログ変換するD/Aコンバータ(33)、および、D/Aコンバータ(33)からの印加電圧に応じて発振する電圧制御発振器(34)によって構成される。
【0026】
また、周波数整合器(3)は、D/Aコンバータ(33)及び電圧制御発振器(34)に代え、図1(b)に示す様に、演算処理して得られた周波数の値をデジタル出力するデジタルI/O(35)、および、デジタルI/O(35)からの信号に応じてデジタル信号を合成し、斯かる合成信号に基づいて周波数信号を発生させる直接デジタル合成方式の周波数発生器(36)によって構成されていてもよい。
【0027】
すなわち、図1中、ブロック図(a)は、アナログ方式の電圧制御発振器が使用された周波数整合器(3)の態様を示し、ブロック図(b)は、デジタル方式の周波数発生器が使用された周波数整合器(3)の態様を示す。以下、図2〜図4中におけるブロック図の(a)及び(b)の区分も図1と同様の態様区分を示す。
【0028】
本発明の第1の態様において、周波数整合器(3)は、高周波電源(2)の出力側に設置された反射波パワーメータ(6)によって検出される反射波電力が最小となる様に、高周波電源(2)の発振周波数を調整する機能を備えている。これにより、実効負荷電力の低下を確実に補完できる。
【0029】
具体的には、増幅器(4)の出力側には、高周波電源(2)の一部としての反射波パワーメータ(6)が設けられ、伝送線路(5)における反射波電力を検出し、その電圧信号を周波数整合器(3)のA/Dコンバータ(31)にフィードバックする様になされている。そして、反射波電力が最小となる様に高周波電源(2)の周波数を増加または減少させる様になされている。これにより、高周波共振装置(1)で生じた共振点のずれ等によるインピーダンスの不整合を高周波電源(2)側で補完できる。
【0030】
例えば、高周波共振装置(1)としての上記の螺旋共振装置においては、高周波電源(2)から高周波電力を供給されることによりプラズマを生成する。その際、反射波パワーメータ(6)は、プラズマの容量性結合などによる反射波電力を検出し、周波数整合器(3)のA/Dコンバータ(31)にフィードバックする。演算処理回路(32)は、反射波電力に相当する共振周波数のずれ分を演算し、伝送線路(5)における反射波電力がゼロに近づく様に、補正された周波数信号を出力する。
【0031】
そして、図1(a)の態様において、演算処理回路(32)は、D/Aコンバータ(33)を介して電圧制御発振器(34)に電圧出力し、電圧制御発振器(34)は、螺旋共振装置に適した共振周波数の周波数信号を増幅器(4)に与える。一方、図1(b)の態様において、演算処理回路(32)は、デジタルI/O(35)を介して周波数発生器(36)にデジタル出力し、周波数発生器(36)は、上記と同様の補正された周波数信号を増幅器(4)に与える。その結果、螺旋共振装置においては、実際の共振周波数の電力が供給されるため、一層正確な定在波を形成でき、電気的ポテンシャルの極めて低い安定したプラズマを維持できる。
【0032】
上記の様に、本発明の周波数整合器(3)は、高周波共振装置(1)の作動時における共振状態のずれ、すなわち、インピーダンスの変動に対応し、信号処理によって迅速に応答して正確に共振する周波数の高周波電力を高周波電源(2)に出力させるため、電力の転送効率を最大限に高めることが出来る。また、機械的な駆動部分がなく且つ伝送線路(5)の途中に介在しないため、整合器自体による電力損失がない。
【0033】
また、本発明の周波数整合器(3)は、高周波電源(2)から出力される電圧と電流の位相差によって発振周波数を調整する様に構成されていてもよい。すなわち、図2に示す様に、本発明の第2の態様において、周波数整合器(3)は、高周波共振装置(1)との間に設置された伝送線路(5)上の位相検出器(7)によって検出される電圧と電流の位相差が0°となる様に、高周波電源(2)の発振周波数を調整する機能を備えている。
【0034】
具体的には、高周波電源(2)の出力側には、位相検出器(7)が介装され、伝送線路(5)における電圧と電流の位相差を検出し、その電圧信号を周波数整合器(3)のA/Dコンバータ(31)にフィードバックする様になされている。そして、電圧と電流の位相差が0°となる様に発振周波数を増加または減少させる様になされている。これにより、周波数整合器(3)は、高周波共振装置(1)におけるインピーダンスの変動を高周波電源(2)側で補完することが出来る。
【0035】
上記と同様の螺旋共振装置において、高周波電力によってプラズマを励起させた場合、位相検出器(7)は、進行波電力の電圧と電流の位相差を検出し、周波数整合器(3)のA/Dコンバータ(31)にフィードバックする。演算処理回路(32)は、位相ずれに相当する周波数のずれ分を演算し、伝送線路(5)における進行波電力の位相差が0°となる様に、前記の所定周波数を増減させる。
【0036】
そして、図1の回路と同様に、図2(a)の態様において、演算処理回路(32)は、D/Aコンバータ(33)を介して電圧制御発振器(34)に電圧出力し、補正された周波数信号を増幅器(4)に与える。同様に、図2(b)の態様において、演算処理回路(32)は、デジタルI/O(35)を介して周波数発生器(36)にデジタル出力し、補正された周波数信号を増幅器(4)に与える。その結果、上記の螺旋共振装置においては、一層正確な定在波を形成でき、電気的ポテンシャルの極めて低い安定したプラズマを形成できる。
【0037】
すなわち、図2に示す本発明の周波数整合器(3)は、図1の態様と同様に、電力損失がなく、かつ、信号処理によって迅速に応答し、正確に共振する周波数の高周波を高周波電源(2)に出力させるため、電力の転送効率を最大限に高めることが出来る。
【0038】
また、図3に示す様に、本発明の周波数整合器(3)は、図2に例示した態様において、図1に示す機能を併用して高周波電源(2)の発振周波数を調整する様になされていてもよい。すなわち、本発明の第3の態様は、図2に示した周波数整合器(3)において、高周波電源(2)の出力側に設置された反射波パワーメータ(6)によって検出される反射波電力が最小となる様に、高周波電源(2)の発振周波数を調整する機能を備えている。
【0039】
図3に示す周波数整合器(3)は、図1及び図2に示す整合器の各構成を備えたものであり、斯かる構成により、高周波共振装置(1)の作動時におけるインピーダンスの変動に一層正確に応答でき、より正確な共振周波数の高周波電力を高周波電源(2)に出力させることが出来るため、電力の転送効率を一層高めることが出来る。
【0040】
上記の様な図1〜図3に示す周波数整合器は、周波数の不整合によって大きな影響を受ける高周波共振装置に特に好適であり、本発明の第4の態様としては、高周波共振装置(1)がプラズマ処理装置である場合が挙げられる。
【0041】
ところで、プラズマ処理装置においては、最初にプラズマを発生させる際、電圧モードで作動させることによって高い励起エネルギーを与える必要がある。例えば、上記の螺旋共振装置においては、共振コイルを含むプラズマ源の共振点が約29.2MHzに設定された処理装置の真空チャンバーに誘導プラズマを形成する場合、図5に示す様に、約28.8MHzに反共振点、すなわち、負荷インピーダンスが最大となる点が存在する。そして、共振周波数よりも若干低い反共振点に相当する周波数の電力を印加することによって容易にプラズマを励起させ得る。
【0042】
そこで、プラズマ処理装置に適用される本発明の周波数整合器(3)においては、特定の周波数変更機能が備えられているのが好ましい。すなわち、本発明の第5の態様において、周波数整合器(3)は、発振周波数をプラズマ励起前には負荷インピーダンスが最大となる反共振周波数に調整し、プラズマの励起と共に共振周波数に調整する機能を備えている。斯かる構成により、本発明の周波数整合器(3)は、より効率的にプラズマを励起でき、しかも、励起後は共振モードの高周波電力によって安定したプラズマを持続させることが出来る。
【0043】
また、プラズマ処理装置においては、均一に基板を処理するため、プラズマ種を生成するための原料ガス(材料ガス)の供給流量を制御することにより、真空チャンバー内を一定の真空度に保持し、安定したプラズマを保持する必要がある。そして、真空チャンバーにおいて励起されたプラズマの周波数は、真空チャンバーの圧力および供給電力が一定の場合、真空チャンバーの電気的特性に応じて一定の値となる。
【0044】
例えば、図6に示す様に、9標準リットル/分の流量で酸素を供給し、真空チャンバーの真空度を2000ミリトールに維持しつつ、4.5KWの所定周波数の高周波電力を供給した場合、約27.02MHzで誘導結合型プラズマが放電し、数分後は約27.12MHz以下の周波数で安定したプラズマを維持する。そして、酸素流量の調整により真空チャンバーの圧力を変化させ、その他は上記と同様の条件でプラズマを励起させた場合には、図7に示す様に、プラズマ周波数の上限値は圧力の上昇と伴に漸次下降する傾向がある。しかも、真空チャンバー(プラズマ源)側からの反射波電力は、真空チャンバーの圧力が約2000〜4000ミリトールの範囲で最も小さくなる。
【0045】
そこで、プラズマ処理装置に適用する本発明の好ましい態様においては、真空チャンバーの真空度によって発振周波数を調整する様になされている。すなわち、本発明の第6の態様においては、安定したプラズマをより短時間で励起させるため、図4に示す様に、高周波共振装置(1)としてのプラズマ処理装置には、真空チャンバーの真空度を検出する連成圧力計などの圧力検出手段(9)が設けられ、そして、周波数整合器(3)は、予め記憶させた真空度に対する共振周波数の関係に基づき、圧力検出手段(9)によって検出された真空度に応じて高周波電源(2)の発振周波数を調整する機能を備えている。
【0046】
具体的には、周波数整合器(3)の演算処理回路(32)には、データを格納するための記憶部が設けられており、演算処理回路(32)には、前記の記憶部を利用し、真空チャンバーの真空度(圧力)と当該真空度における適切なプラズマの共振周波数の関係データ、および、真空チャンバーの電気的特性と電源側の発振周波数の関係データが予め記憶される。
【0047】
上記の周波数整合器(3)は、電力を供給する際、検出された真空度に応じ、真空チャンバーにおける共振周波数が適切な周波数となる様に予め記憶されたデータに基づいて高周波電源(2)の発振周波数を調整する。その結果、本発明の周波数整合器(3)は、安定したプラズマを短時間で励起させことが出来かつ高周波電力を制御する際により迅速な応答が可能である。
【0048】
また、プラズマ処理装置においては、真空チャンバーに対する供給電力の大きさによっても励起されたプラズマの周波数が変化する。具体的には、図8に示す様に、一定の流量で酸素を供給し、真空チャンバーの真空度を一定に維持しつつ、供給する高周波電力の大きさを変化させた場合には、プラズマの発生上限の周波数も変化する。
【0049】
図8は、真空度を1500ミリトールに保持し、高周波電源(2)の電力を2.5〜4.5KWの範囲で漸次大きくした場合、プラズマ周波数が約27.08〜27.18MHzの範囲で変化し、また、真空度を2000ミリトールに保持し、電力を同様の範囲で大きくした場合、プラズマ周波数が約27.08〜27.13MHzの範囲で変化することを示している。
【0050】
そこで、本発明の更に好ましい態様においては、供給電力の大きさによって発振周波数を調整する様になされている。すなわち、本発明の第7の態様に係る周波数整合器(3)においては、上記と同様にプラズマをより一層短時間で励起させるため、周波数整合器(3)は、予め記憶した供給電力に対する共振周波数の関係に基づき、高周波電源(2)の出力に応じて発振周波数を調整する機能を備えている。
【0051】
具体的には、周波数整合器(3)の演算処理回路(32)には、上記の記憶部を利用し、供給電力とプラズマの共振周波数の関係データ、および、真空チャンバーの電気的特性と電源側の発振周波数の関係データが予め記憶される。そして、周波数整合器(3)は、高周波電源(2)から高周波電力を供給する際、出力される電力の大きさに応じて真空チャンバーにおける共振周波数が適切な周波数となる様に発振周波数を調整する。その結果、本発明の周波数整合器(3)は、より一層短時間でプラズマを励起させことが出来る。
【0052】
上記の各態様に係る本発明の周波数整合器(3)は、演算処理回路(32)の演算処理によって発振周波数を制御するため、当該周波数整合器自体による電力損失がなく、しかも、負荷インピーダンスの変動に追従して発振周波数を適切な共振周波数に制御するため、高周波共振装置(1)に対して極めて高い転送効率で高周波電力を供給することが出来る。従って、本発明の周波数整合器(3)は、特に、安定したプラズマが要求され且つ励起したプラズマによって負荷インピーダンスが容易に変動するプラズマ処理装置などに好適であり、また、プラズマ処理装置などにおいては、可変コンデンサを利用したマッチング装置を設ける必要がない。
【0053】
更に、上述の各態様に示す様に、本発明の周波数整合器(3)は、発振周波数を制御し、高周波共振装置(1)の共振状態の変動を電源側で補完するものであるが、周波数整合器(3)の上記の様な機能から、高周波電源(2)の異常を検出することも出来る。すなわち、本発明の周波数整合器(3)は、図4に示す様に、高周波電源(2)の出力側に設置された反射波パワーメータ(6)及び進行波パワーメータ(8)によって検出される反射波電力、進行波電力および供給電力の設定に基づき、高周波電源(2)の異常を検出する機能を備えていてもよい。
【0054】
本発明の周波数整合器によって高周波電源(2)の発振周波数を制御し、例えば上記プラズマ処理装置に高周波電力を供給してプラズマを励起させた場合、伝送線路(5)(図4参照)における進行波電力および反射波電力は、図9に示す様な経時変化を示す。すなわち、設定出力を4.5KWに設定した場合、安定したプラズマが発生した後は、進行波電力が略4.5KWとなり、反射波電力が略0となる。
【0055】
そこで、例えば、高周波電源(2)の4.5KWの設定出力に対し、1000ms経過後、進行波電力の値が4455〜4545Wの範囲(±1%の範囲)にない場合、または、反射波電力の値が進行波電力の値の3%以上に達した場合は、高周波電源(2)の異常と判別することが出来る。すなわち、本発明の周波数整合器(3)においては、高周波電源(2)の出力に応じた一定時間経過後の設定出力に対する進行波電力および反射波電力の許容値を予め設定することにより、高周波電源(2)の異常を検出することが出来る。更に、進行波電力と反射波電力から実効負荷電力を検出し、高周波共振装置(1)の異常を検出することも出来る。
【0056】
なお、本発明の周波数整合器は、別個に設けられた電圧制御発振器や周波数発生器に出力したり、あるいは、周波数制御可能な発振器を高周波電源に予め設け、これを制御する様に構成してもよい。また、本発明の周波数整合器は、高周波電源装置の制御回路の一部として構成することも出来、更に、本発明を利用し、高周波共振装置に応じて周波数を自動調整可能な高周波電源装置を構成することも出来る。
【0057】
以上説明した様に、本発明の周波数整合器によれば、演算処理によって発振周波数を制御するため、当該周波数整合器自体による電力損失がなく、しかも、負荷インピーダンスの変動に追従して高周波電源の発振周波数を適切な共振周波数に制御するため、高周波共振装置に対して極めて高い転送効率で高周波電力を供給し得る。従って、本発明の周波数整合器は、特に、安定したプラズマが要求され且つ励起したプラズマによって負荷インピーダンスが容易に変動するプラズマ処理装置などに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】反射波電力によって電源の発振周波数を調整する周波数整合器の周波数制御手段を示すブロック図
【図2】電圧と電流の位相差によって電源の発振周波数を調整するを示すブロック図
【図3】反射波電力ならびに電圧と電流の位相差によって電源の発振周波数を調整するを示すブロック図
【図4】真空度によって電源の発振周波数を調整する周波数整合器の周波数制御手段ならびに電源の異常を検出する周波数制御手段を示すブロック図
【図5】高周波共振装置の共振特性の一例を示すグラフ
【図6】高周波共振装置の共振周波数の変動を示すグラフ
【図7】プラズマ処理装置におけるチャンバーの真空度とプラズマ周波数の関係を示すグラフ
【図8】チャンバーの所定真空度における供給電力と共振周波数の関係を示すグラフ
【図9】反射波電力および進行波電力の発生状態の一例を示すグラフ
【符号の説明】
【0059】
1 :高周波共振装置
2 :高周波電源
3 :周波数整合器
32:演算処理回路
33:D/Aコンバータ
34:電圧制御発振器
35:デジタルI/O
36:周波数発生器
4 :増幅器(RF増幅器)
5 :伝送線路
6 :反射波パワーメータ
7 :位相検出器
8 :進行波パワーメータ
9 :圧力検出手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導性結合によりプラズマを励起し、基板を処理する螺旋共振装置に電力供給する高周波電源と、当該高周波電源の発振周波数を負荷インピーダンスに整合させる周波数整合器とを有するプラズマ処理装置であって、
前記周波数整合器は、前記高周波電源から高周波電力を供給する際
、高周波電源の設定出力に対し、所定の時間経過後、予め設定された進行波電力の許容値、または反射波電力の許容値に達した場合、前記高周波電源の異常と判断することを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
前記整合器は記憶部を有する演算処理回路を有し、前記高周波電力は、前記記憶部に予め記憶した供給電力に対する共振周波数の関係に基づき、発信周波数を調整する請求項1記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
誘導性結合によりプラズマを励起し、基板を処理する螺旋共振装置に電力供給する高周波電源と、当該高周波電源の発振周波数を負荷インピーダンスに整合させる周波数整合器とを有する基板処理装置であって、
前記周波数整合器は、前記高周波電源から高周波電力を供給する際
、高周波電源の設定出力に対し、所定の時間経過後、予め設定された進行波電力の許容値、または反射波電力の許容値に達した場合、前記高周波電源の異常と判断する基板処理方法。






【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−23356(P2011−23356A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−170441(P2010−170441)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【分割の表示】特願2008−174723(P2008−174723)の分割
【原出願日】平成10年7月31日(1998.7.31)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】