説明

プラズマ加速装置及び該装置を備えるプラズマ処理システム

【課題】 プラズマビームを工程チャンバー内に位置したエッチングする基板またはスパッタリングするスパッタターゲットに均一に供給できるようにするプラズマ加速装置及び該装置を備えるプラズマ処理システムを提供する。
【解決手段】 プラズマ加速装置は、内壁と所定の間隔を隔てて内壁を外囲する外壁、及び内壁と外壁の一端部を開放する出口を形成するように内壁と外壁の他端部とを連結する端部壁を有するチャンネルと、チャンネル内にガスを供給するガス供給部、及びチャンネル内のガスにイオン化エネルギーを供給してプラズマビームを生成し、生成されたプラズマビームを出口に向かって加速させるプラズマ生成/加速部と、を含み、チャンネルの内壁と外壁の少なくとも一方が、少なくとも出口側部分が中心に近づくように所定の角度にて傾斜してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ加速装置に関し、より詳しくは、基板から薄膜をエッチングして除去し、または基板に薄膜を蒸着する半導体基板処理工程に使われるプラズマ加速装置及び該装置を備えるプラズマ処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、高速のマイクロプロセッサ及び高記録密度のメモリーへの要求が高まる一方で、一つの半導体チップ上に多くの素子が搭載できるようにゲート誘電体の厚さ及びロジック素子の幅方向の寸法を縮小する技術、例えば、トランジスターゲート長を35nm以下に縮小し、ゲートオキサイドの厚さを0.5nm以下に縮小し、金属化レベルを6以上に向上するための研究が盛んに進められてきている。
【0003】
しかしながら、このような技術を実現するためには、半導体チップ製造工程の際、装置の実装密度が高められる高性能の蒸着及び/またはエッチング装置が要求される。このような高性能の蒸着及び/またはエッチング装置の例としては、プラズマ加速装置を使うプラズマエッチャー、プラズマスパッタリングシステムなどが広く知られている。
【0004】
図1は、プラズマエッチャーまたはプラズマスパッタリングシステムに使われる一従来のホール効果プラズマ加速装置10を概略的に示している。このホール効果プラズマ加速装置10は、米国特許第5,847,493号に開示されている。
【0005】
図1を参照すれば、ホール効果プラズマ加速装置10は、遮蔽された上端と開放された下端を有する環状チャンネル22を有する。内・外部環状コイル16、17、18、18'、19は、環状チャンネル22の内・外部に同軸上に並んで位置し、物理的及び磁気的に分離された磁極を持って磁場を形成する。環状陽極24は、ガス供給管25に接続されて供給されるガスをイオン化させる。陰極27は、チャンネル22下端の磁極の上方に位置し、これにガス供給線29が接続されて電子を供給する。
【0006】
外部コイル17、18、18'、19は、チャンネル22を外囲する上部コイル17とチャンネル22の開口を取り囲む分離されたセクションの下部コイル18、18'、19とに分けられ、上部コイル17と内部コイル16の上部とが誘電層23で仕切られることで該領域の磁場を遮蔽し、その結果、チャンネル22全体でないチャンネル22の開口部22a領域においてのみチャンネル22の空間部20を横切る局所的な磁場が誘導されるようにする。下部コイル18、18'、19が位置する部分に形成された磁場は電子を局所的に捕捉する。
【0007】
したがって、ホール効果プラズマ加速装置10では、陽極24と陰極27が存在することで形成された電場では陽イオンのみを加速させることが可能であり、電気的に中性であるプラズマを加速させることは不可能である。また、ホール効果プラズマ加速装置10では、イオンを蒸着したい基板の表面上に電荷を蓄積することで電荷短絡といった損失を生じさせることがあり、微細パターン内のノッチを生じさせることでエッチングプロファイルにバラツキが生じ得る。
【0008】
図2は、プラズマエッチャーまたはプラズマスパッタリングシステムに使われる別の従来の同軸プラズマ加速装置40を概略的に示している。この同軸プラズマ加速装置20は、論文IEEE Tran. On Plasma Sci., VOL. 22, No. 6, 1015, 1994. J. T. Scheuer, et. al.に開示されている。
【0009】
図2を参照すれば、同軸プラズマ加速装置40は、遮蔽された上端と開放された下端を有し、内部に流れ込まれるガスが放電しながら生成するプラズマが加速される環状チャンネル50を有する。円筒状陰極54は、チャンネル50の内部に位置し、円筒状陽極52は、陰極54と所定の間隔を隔てられてチャンネル50の開口部の外側に同軸方向に並んで位置する。
【0010】
また、同軸プラズマ加速装置40は、チャンネル50内のプラズマを制御する制御コイル64と、陰極54の内部に設けられた陰極コイル56、及び陽極52の外部に設けられた陽極コイル58と、を備える。
【0011】
このような同軸プラズマ加速装置40では、陽極52と陰極54がそれぞれ設けられる内壁及び外壁を有するチャンネル50と、チャンネル50の外部に制御コイル64を備えることにより、チャンネル50を横切る電流を内部に形成し、この電流によって陰極54を取り囲む放射状方向に磁場を誘導する。この同軸プラズマ加速装置40には、基本的に出口速度が500eV程度と非常に大きくて陽極と陰極が存在する直流放電を用いるため、チャンネル50内における陽極52から陰極54に向かって加速されるプラズマイオンが陰極54に強くぶつかることでこの陰極54をひどく損傷させ、半導体薄膜蒸着工程におけるエッチング工程のための用途としては不向きである。
【0012】
このような問題を防止するために、陽極と陰極を備えていない誘導結合放電型プラズマ加速装置60(図3)が提案された。
【0013】
図3を参照すれば、プラズマ加速装置60は、プラズマチャンネル77と、上部環状ループインダクター79、及び内・外部環状ループインダクター71、73とを備える。
【0014】
プラズマチャンネル77は、ガスがイオン化され加速化される所であって、下方(図3の上部)に開放された開口部すなわち出口77aを有して環状に形成される。プラズマチャンネル77の出口77aは、プラズマ加速装置60が適用されるプラズマエッチャーまたはスパッタリングシステムの工程チャンバー70(図5参照)と連通する。
【0015】
プラズマチャンネル77の端部壁81には、上部環状ループインダクター79が配置されている。上部環状ループインダクター79は、プラズマチャンネル77内のガスにRFエネルギーを供給し、このRFエネルギーによって発生した電子をガスの中性原子にぶつけてプラズマビームを形成する。
【0016】
プラズマチャンネル77の内壁82と外壁83には、磁場を発生するためにコイルが巻かれた内・外部環状ループインダクター71、73が配設されている。内・外部環状ループインダクター71、73は、同軸状に並んで配設される。
【0017】
このような従来のプラズマ加速装置60の動作について説明すれば、次のとおりである。
【0018】
まず、ガス源(図示せず)からプラズマチャンネル77内へガスが供給されれば、上部環状ループインダクター79は、供給されたガスにRFエネルギーを供給する。その結果、RFエネルギーによって発生する電子がガスの中性原子にぶつかり、ガスがイオン化してプラズマビームを発生する。
【0019】
内・外部環状ループインダクター71、73は、プラズマチャンネル77内へ磁場Bと二次電流Jを誘導し、プラズマビームをプラズマチャンネル77の出口77aに向かって加速させる電磁気力Fを形成する。
【0020】
このような従来のプラズマ加速装置60では、電磁気力Fによって極性に関係なく同一方向にイオンを加速するため、従来の静電型加速器10、40では必須とされていた陽極と陰極を備える必要がなくなることで装置の構成を簡易化でき、また内・外部環状ループインダクター71、73を流れる電流を調節することによって、生成される電磁気力Fを簡単に調節可能であるという長所がある。
【0021】
しかしながら、従来のプラズマ加速装置60では、プラズマチャンネル77が環状であるため、プラズマチャンネル77の出口77aに向かって加速されたプラズマビームが、図5の点線で示すように工程チャンバー70の中心寄りに均一に誘導できなくなる。その結果、通常プラズマチャンネル77の中心の下方で基板ホルダー80に保持された基板85またはスパッタターゲット(図示せず)には、プラズマビームが均一に供給できなくなる。よって、工程チャンバー70内においてエッチングされる基板85の均一なエッチングプロファイルが得られなくなり、またはスパッタターゲットからスパッタされた物質によって基板に蒸着される薄膜の均質度が下がるようになる。
【特許文献1】日本公開特許平2002−151298号公報
【特許文献2】米国特許第5,847,493号公報
【特許文献3】米国特許第6,824,363号公報
【特許文献4】論文IEEE Tran.on Plasma Sci.、VOL.22、NO.6、1015、1994.J.T.Scheuer、et.al.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
そこで、本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであって、その目的としては、エッチング、スパッタリングなどのような半導体基板処理工程の際、工程チャンバーにプラズマビームを均一に供給可能なプラズマ加速装置及び該装置を備えるプラズマ処理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記目的を達成するための本発明の一実施の形態によるプラズマ加速装置は、内壁と、内壁と所定の間隔を隔てて内壁を外囲する外壁、及び内壁と外壁の一端部を開放する出口を形成するように内壁と外壁の他端部とを連結する端部壁を有するチャンネルと、チャンネル内にガスを供給するガス供給部、及びチャンネル内のガスにイオン化エネルギーを供給してプラズマビームを生成し、生成されたプラズマビームを出口に向かって加速させるプラズマ生成/加速部と、を含み、チャンネルの内壁と外壁の少なくとも一方が、少なくとも出口側部分が中心に近づくように所定の角度にて傾斜してなることを特徴とする。
【0024】
好適な実施の形態において、チャンネルの内壁が、少なくとも出口側部分が中心に近づくように所定の角度にて傾斜してなることが好ましい。
【0025】
選択的に、チャンネルの内壁と外壁ともに、少なくとも出口側部分が中心に近づくように所定の角度にて傾斜してなることがよい。
【0026】
プラズマ生成/加速部は、チャンネルの端部壁の軸方向外側に設けられた上部インダクターと、チャンネルの内壁の放射状内側に設けられ、軸方向に沿って誘導磁場が減少するように形成された内部インダクター、及びチャンネルの外壁の放射状外側に内部インダクターに並んで設けられ、軸方向に沿って誘導磁場が減少するように形成された外部インダクターと、から構成すればよい。
【0027】
内・外部インダクターは、それぞれ同じコイル巻き数を有し、それぞれに供給される電流が軸方向に沿って減少するように印加される複数のループコイルから構成されることが好ましい。選択的に、内・外部インダクターは、それぞれコイル巻き数が軸方向に沿って減少するように構成された複数のループコイルから構成すればよい。
【0028】
本発明の他の実施の形態によるプラズマ処理システムは、内壁と、内壁と所定の間隔を隔てて内壁を外囲する外壁、及び内壁と外壁の一端部を開放する出口を形成するように内壁と外壁の他端部とを連結する端部壁を有するチャンネルと、チャンネル内にガスを供給する第1のガス供給部と、チャンネル内のガスにイオン化エネルギーを供給してプラズマビームを生成し、生成されたプラズマビームを出口に向かって移動させるプラズマ生成/加速部、及びチャンネルの出口と連通し、基板を保持する基板ホルダーを有する工程チャンバーと、を含み、チャンネルの内壁と外壁の少なくとも一方が、少なくとも出口側部分が中心に近づくように所定の角度にて傾斜してなることを特徴とする。
【0029】
好適な実施の形態において、チャンネルの内壁が、少なくとも出口側部分が中心に近づくように所定の角度にて傾斜してなることが好ましい。
【0030】
選択的に、チャンネルの内壁と外壁ともに、少なくとも出口側部分が中心に近づくように所定の角度にて傾斜してなることがよい。
【0031】
プラズマ生成/加速部は、チャンネルの端部壁の軸方向外側に設けられた上部インダクターと、チャンネルの内壁の放射状内側に設けられ、軸方向に沿って誘導磁場が減少するように形成された内部インダクター、及びチャンネルの外壁の放射状外側に内部インダクターに並んで設けられ、軸方向に沿って誘導磁場が減少するように形成された外部インダクターと、から構成すればよい。
【0032】
内・外部インダクターは、それぞれ同じコイル巻き数を有し、それぞれに供給される電流が軸方向に沿って減少するように印加される複数のループコイルから構成されることが好ましい。選択的に、内・外部インダクターは、それぞれコイル巻き数が軸方向に沿って減少する複数のループコイルから構成すればよい。
【0033】
選択的に、プラズマ処理システムは、工程チャンバーに工程ガスを供給する第2のガス供給部を更に含むことができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によるプラズマ加速装置及び該装置を備えるプラズマ処理システムは、プラズマチャンネルの内壁と外壁の少なくとも一方が、プラズマチャンネルの中心に近づくように傾斜してなるため、プラズマ生成/加速部によって出口に向かって排出されるプラズマビームをプラズマチャンネルの中心側下方の工程チャンバーに位置したエッチングする基板またはスパッタリングするスパッタターゲットまで均一に供給可能である。よって、基板のエッチングプロファイルが均一になることで基板のエッチングパターンの精度が向上し、またはスパッタリングされた物質によって基板に蒸着される薄膜の均質度が向上するという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、添付図面を参照して、本発明によるプラズマ加速装置及び該装置を備えるプラズマ処理システムを詳述する。
【0036】
図6は、本発明によるプラズマ加速装置を備えるプラズマ処理システム100を概略的に示している。
【0037】
本発明のプラズマ処理システム100は、イオン化された高温のプラズマを用いて基板185にコートされたフォトレジストなどのような薄膜を気化または灰化して除去することで基板185上に選択的なエッチングパターンを形成するプラズマエッチャーである。
【0038】
図6を参照すれば、プラズマ処理システム100は、プラズマチャンネル110と、第1のガス供給部120と、プラズマ生成/加速部130と、工程チャンバー170、及び第2のガス供給部190とを備える。プラズマチャンネル110と、第1のガス供給部120、及びプラズマ生成/加速部130が、本発明によるプラズマ加速装置を構成する。
【0039】
プラズマチャンネル110は、ガスがイオン化され加速化される所であって、ガスの放出方向に開放された出口110aを有して環状に形成される。
【0040】
プラズマチャンネル110は、内壁112と、外壁114、及び内壁112と外壁114とを連結する端部壁116を有する。
【0041】
図6及び図7に示すように、プラズマチャンネル110の内壁112は、出口110a側部分がプラズマチャンネル110の形成する円の中心Oに近づくように所定の角度にて傾斜してなる切頭円錐状を有する。
【0042】
外壁114は、内壁112との間に所定の空間を形成するように端部壁116寄りに位置した内壁112の上部の径より所定の距離だけ大きい径を有する円筒状を有する。
【0043】
内壁112を所定の角度にて傾斜して形成する理由は、プラズマ生成/加速部130によって生成され出口110aに向かって加速されるプラズマビームが、傾斜してなる内壁112によって工程チャンバー170の中心寄りへと誘導できるようにするためである。よって、図3を参照して説明した従来のプラズマ加速装置60のプラズマチャンネル77とは異なって、プラズマ生成/加速部130によってプラズマチャンネル110の出口110aに向かって加速されたプラズマビームが、図10の点線で示すように工程チャンバー110の中心寄りにバラツキなく分布できるようになる。その結果、工程チャンバー170内においてプラズマチャンネル110の中心Oの下方に配置される基板185が、プラズマビームにバラツキなく曝されるようになり、これにより基板185にコートされたフォトレジストなどのエッチングプロファイルが均一になる。
【0044】
選択的に、図8に示すように、プラズマチャンネル110の内壁112と外壁114'ともに、出口110a側の部分が中心Oに近づくように所定の角度にて傾斜して形成することができる。この場合にもプラズマ生成/加速部130によってプラズマチャンネル110'の出口110aに向かって加速されるプラズマビームを、内壁112だけを傾斜して形成した図7に示す構造と同様、工程チャンバー170の中心寄りに均一に分布できる。
【0045】
プラズマチャンネル110の内壁112、外壁114、及び端部壁116は、石英またはパイレックス(登録商標)のような非導電性材料からなる。
【0046】
プラズマチャンネル110の出口110aは、工程チャンバー170と連通する。
【0047】
第1のガス供給部120は、第1のガス注入部125と第1のガス源121からなる。第1のガス注入部125は、プラズマチャンネル110の端部壁116の内側に固設されており、第1の連結管123を介して第1のガス源121に接続された、連結されたガス注入リング126からなる。がス注入リング126には、リング径より小さい径を有し出口110aに臨む多数の吐出穴が形成されている。第1のガス源121では、Arのような第0族ガスと、O及びO混合物のような反応ガスなどのイオン化可能なガス、及びCのような工程ガスを貯蔵している。
【0048】
プラズマチャンネル110の端部壁116、内壁112、及び外壁114の外側には、プラズマ生成/加速部130が配設される。
【0049】
プラズマ生成/加速部130は、上部環状ループインダクター132と内・外部環状ループインダクター140、144を備える。
【0050】
上部環状ループインダクター132は、プラズマチャンネル110の端部壁116の外側(図6中の上部)に複数回巻かれた環状ループコイル133からなる。上部環状ループコイル133は、RF電源150に接続された第1の増幅器151と第1のマッチングネットワーク158を通して供給された約2MHzの周波数で約500W乃至5.0KW、好ましくは、2.0KWのRFエネルギーで作動する。したがって、上部環状ループコイル133は、ガス注入リング126の吐出穴から供給されたガスにRFエネルギーを印加することでこのRFエネルギーによって発生した電子をガスの中性原子にぶつけることによって、ガスをイオン化してプラズマビームを発生する役割を果たすようになる。
【0051】
また、上部環状ループコイル133には、RF電源150に接続された第1の増幅器151と第1のマッチングネットワーク158を介して約40Aの電流が印加される。したがって、上部環状ループコイル133は、後述の図7を参照して内・外部環状ループインダクター140、144によって電磁気力Fが誘導される過程の説明と同様に、付随的にプラズマチャンネル110の内部に磁場Bと二次電流Jを誘導し、プラズマビームをプラズマチャンネル110の出口110aに向かって加速させる電磁気力Fを形成する。
【0052】
内・外部環状ループインダクター140、144は、それぞれプラズマチャンネル110の内壁112の内側(図6の放射状内側)と、外壁114の外側(図6の放射状外側)に配設されている。
【0053】
内・外部環状ループインダクター140、144は、それぞれ1回巻かれた第1、第2、及び第3の内部環状ループコイル141、142、143と、第1、第2、及び第3の外部環状ループコイル145、146、147とからなる。第1、第2、及び第3の内部環状ループコイル141、142、143と、第1、第2、及び第3の外部環状ループコイル145、146、147は、互いに同軸状に並んで配列されている。
【0054】
第1、第2、及び第3の内部環状ループコイル141、142、143と、第1、第2、及び第3の外部環状ループコイル145、146、147は、それぞれRF電源150から第2乃至第7の増幅器152、153、154、155、156、157と第2乃至し第7マッチングネットワーク159、160、161、162、163、164を通して供給された約2MHzの周波数で500W乃至5.0KW、好ましくは、2.0KWのRFエネルギーで作動する。
【0055】
本実施の形態における第1、第2、及び第3の内部環状ループコイル141、142、143と、第1、第2、及び第3の外部環状ループコイル145、146、147は、上部環状ループインダクター132と同じく約2MHzで約500W乃至5.0KWのRFエネルギーで作動するが、それぞれ1回巻かれており、また互いに固定間隔を隔てて離間しているため、ガスにRFFエネルギーを印加しているものの、プラズマビームは殆ど生成しない。
【0056】
また、第1、第2、及び第3の内部環状ループコイル141、142、143と、第1、第2、及び第3の外部環状ループコイル145、146、147には、RF電源150からの電流が第2乃至第7の増幅器152、153、154、155、156、157と第2乃至第7マッチングネットワーク159、160、161、162、163、164を通して順次に減少するように供給される。その理由は、磁場圧力は高い所から低い所に移動する性質をもっているため、第1、第2、及び第3の内部環状ループコイル141、142、143と、第1、第2、及び第3の外部環状ループコイル145、146、147への電流を順次に減少するように供給することによって図9に示すようにプラズマチャンネル110の内部に誘導される磁場が出口110aに向かってすなわち軸方向に沿って減少すれば、第1、第2、及び第3の内部環状ループコイル141、142、143の間、及び第1、第2、及び第3の外部環状ループコイル145、146、147の間で磁場圧力の差が生じ、これによってプラズマビームをプラズマチャンネル110の出口110aに向かって一層早く加速できるためである。
【0057】
例えば、第1、第2、及び第3の内部環状ループコイル141、142、143には、RF電源150から第2乃至第4の増幅器152、153、154と第2乃至第4マッチングネットワーク159、160、161を通じてそれぞれ60A、40A、及び20Aの電流が印加され、第1、第2、及び第3の外部環状ループコイル145、146、147)には、RF電源150から第5乃至第7の増幅器155、156、177と第5乃至第7のマッチングネットワーク162、163、164)を通じてそれぞれ−25A、−15A、及び−5Aの電流が印加される。
【0058】
したがって、図7に示すように、第1、第2、及び第3の内部環状ループコイル141、142、143と、第1、第2、及び第3の外部環状ループコイル145、146、147を流れる電流は、チャンネル110の内部に磁場Bを誘導し、この誘導された磁場Bは、マクスウェル方程式によって二次電流Jを誘導する。
【0059】
二次電流Jと磁場Bは、次(式1)によってプラズマビームを極性に関係なくプラズマチャンネル110の出口110aに向かって加速させるZ軸方向の電磁気力Fを形成する。
【0060】
F=J×B (式1)
また、第1、第2、及び第3の内部環状ループコイル141、142、143と、第1、第2、及び第3の外部環状ループコイル145、146、147に印加される電流が順次に減少するように供給され、これによってプラズマチャンネル110の内部に誘導される磁場が軸方向に沿って減少するため、電磁気力Fによって加速されるプラズマビームは、高い所から低い所に移動する磁場圧力の性質によってプラズマチャンネル110の出口110aに向かって一層加速される。
【0061】
第1、第2、及び第3の内・外部環状ループコイル141、142、143;145、146、147に印加される電流によって生じた電磁気力Fと、第1、第2、及び第3の内・外部環状ループコイル141、142、143;145、146、147の間の磁場圧力の差によって加速されるプラズマビームは、電子と陽イオンとが混合しているため中性を示し、例えば、1011乃至1012エレクトロン/cmのプラズマ密度と20乃至500eVのイオンエネルギーを有する。
【0062】
ここでは、プラズマチャンネル110の内部に誘導される磁場が軸方向に沿って減少されるようにするために、第1、第2、及び第3の内・外部環状ループコイル141、142、143;145、146、147への電流を順次に減少するように供給することについて例示し説明したが、それに替えて軸方向に沿って巻かれる環状ループコイルの巻き数が減少するように構成し、第1、第2、及び第3の内・外部環状ループコイル141、142、143;145、146、147に同一の電流を印加することによってプラズマチャンネル110の内部に誘導される磁場を軸方向に沿って減少させるようにしてもよい。
【0063】
また、第1、第2、及び第3の内・外部環状ループコイル141、142、143;145、146、147がプラズマビームを加速する役割を果たすことについてだけ例示し説明したが、コイルの巻き数を増大することでプラズマビームを生成する役割を果たしてもよい。
【0064】
工程チャンバー170には、プラズマチャンネル110の出口110aと連通し、プラズマ生成/加速部130から発生した電磁気力F及び磁場圧力の差によって移動するプラズマビームが供給される。工程チャンバー170は、0.3乃至3mTorrの圧力を保持する。
【0065】
工程チャンバー170の内部中央には、エッチングするフォトレジストなどのような薄膜がコートされた基板185を保持する基板ホルダー180が配置されている。基板ホルダー180は、加熱/冷却回路(図示せず)で加熱または冷却される銅ブロックからなる。
【0066】
工程チャンバー170の一方側には、工程ガスを工程チャンバー170の内部に供給する第2のガス供給部190の第2のガス注入口197が設けられている。第2のガス注入口197は、連結管196を介して第2のガス源195に連結されている。第2のガス源195では、Cのような工程ガスを貯蔵されている。
【0067】
以上、本発明によるプラズマ加速装置を備えるプラズマ処理システム100を、高温のプラズマを用いて基板185上に選択的なエッチングパターンを形成するプラズマエッチャーとして例示し説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、本発明のプラズマ処理システムを、等しい構成と原理で基板に薄膜を蒸着するプラズマスパッタリングシステム100'(図11)から構成してもよい。この場合、図11に示すように、プラズマスパッタリングシステム100′はさらにスパッタターゲットを有する。バイアス電圧制御器198により生成されるバイアス電圧はスパッタターゲット186に印加される。バイアス電圧は予め決定されている。基板185'は、基板ホルダー180'に保持され、スパッタターゲット186上に位置する。基板ホルダー180'は、スパッタターゲット186からスパッタされた物質を基板185'に均一に蒸着するために固定軸(図示せず)を中心に回転する。また、基板ホルダー180'は、プラズマ生成/加速部130で加速されるプラズマビームがスパッタターゲット186まで誘導されるようにプラズマビームが通る環状開口180a'を有する。第2のガス注入口197上には、基板180'近傍のガス圧力を制御する水平バッフル193が設けられている。
【0068】
また、本発明によるプラズマ処理システム100のプラズマ生成/加速部130のプラズマチャンネル110の構造を、図3を参照して説明した従来のプラズマ加速装置60に適用することについて例示し説明したが、図2及び図3に係わって説明したプラズマ加速装置10、40のチャンネル22、50にも等しい構成と原理で工程チャンバー内のプラズマビームの分布を均一にさせるために適用してもよい。
【0069】
このように構成された本発明によるプラズマ処理システム100の動作を、図6、図7、及び図10を参照して説明すれば、次の通りである。
【0070】
まず、ガス源121からガス注入部125を通してC、O、Arのようなガスがプラズマチャンネル110に供給される。
【0071】
プラズマチャンネル110に供給されたガスは、例えば約2MHzで約2.0KWのRFエネルギーで作動する上部環状ループインダクター132によって印加されたRFエネルギーによって発生する電子とガスの中性原子とがぶつかり、その結果、ガスがイオン化してプラズマビームを発生する。
【0072】
プラズマビームは、内・外部環状ループインダクター140、144によって発生した電磁気力Fと内・外部環状ループインダクター140、144の第1、第2、及び第3の内・外部環状ループコイル141、142、143;145、146、147の間の磁場圧力の差によってプラズマチャンネル110の内部からプラズマチャンネル110の出口110aに向かって加速され、出口110aから工程チャンバー170の内部へ1011乃至1012エレクトロン/cmのプラズマ密度と20乃至500eVのイオンエネルギーとして放出される。
【0073】
このとき、出口110aから工程チャンバー170の内部へ放出されるプラズマビームは、プラズマチャンネル110の内壁112が中心O寄りに傾いて形成されているため、工程チャンバー170の基板ホルダー180に保持された基板185の方に均一に移動し得る。よって、基板185のエッチング工程の際、工程チャンバー170内においてプラズマチャンネル110の中心Oの下方に配置される基板185は、図10に示すようにプラズマビームに均一に曝されるようになる。また、工程ガスは、第2のガス源195から第2のガス注入口197を通って工程チャンバー170に約1mTorrの圧力で供給される。よって、プラズマビームは、工程ガスとぶつかり、方向性をもつか或いは方向性のないエッチングイオンまたは原子となる。その結果、工程チャンバー170内においてプラズマチャンネル110の中心Oの下方に配置される基板185のフォトレジストなどのような薄膜はエッチングイオンまたは原子によって気化または炭化して、約20nm/minのエッチング率にてエッチングされ、エッチングプロファイルが均一になる。
【0074】
以上、本発明の特定の好適な実施の形態について図示し説明した。しかしながら、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲で請求する本発明の要旨を逸脱することなく当該発明に属する技術分野における通常の知識を有する者であれば誰でも各種の修正と変形実施が可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明のプラズマ加速装置及び該装置を備えるプラズマ処理システムは、基板から薄膜をエッチングして除去し、または基板に薄膜を蒸着する半導体基板処理工程に適用され、プラズマビームを工程チャンバー内に位置したエッチングする基板またはスパッタリングするスパッタターゲットに均一に供給できるようにし、それにより基板のエッチングパターンの精度を向上し、またはスパッタリングされた物質によって基板に蒸着される薄膜の均質度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】一従来のプラズマ加速装置の概略切欠斜視図である。
【図2】他の従来のプラズマ加速装置の概略断面図である。
【図3】また他の従来のプラズマ加速装置の概略切欠斜視図である。
【図4】図3に示すプラズマ加速装置の断面図である。
【図5】図3に示すプラズマ加速装置から工程チャンバーに放出されるプラズマビームの分布を例示するグラフである。
【図6】本発明によるプラズマ加速装置を備えるプラズマ処理システムの概略切欠斜視図である。
【図7】図6に示すプラズマ処理システムのプラズマチャンネルの断面図である。
【図8】図6に示すプラズマ処理システムのプラズマチャンネルの変形例を例示する部分断面図である。
【図9】図6に示すプラズマ処理システムのプラズマチャンネルの軸方向距離に応じた磁場の強さを示すグラフである。
【図10】図6に示すプラズマ処理システムから工程チャンバーに放出されるプラズマビームの分布を例示するグラフである。
【図11】本発明によるプラズマ加速装置を備えるプラズマスパッタリングシステムの概略切欠斜視図である。
【符号の説明】
【0077】
100、100':プラズマ処理システム
110:プラズマチャンネル
120、190:ガス供給部
130:プラズマ生成/加速部
132、140、144:環状ループインダクター
150:RF電源
170:工程チャンバー
180、180':基板ホルダー
185、185':基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内壁と、該内壁と所定の間隔を隔てて該内壁を外囲する外壁、及び該内壁と該外壁の一端部を開放する出口を形成するように該内壁と該外壁の他端部とを連結する端部壁を有するチャンネルと、
前記チャンネル内にガスを供給するガス供給部、及び
前記チャンネル内のガスにイオン化エネルギーを供給してプラズマビームを生成し、生成されたプラズマビームを出口に向かって加速させるプラズマ生成/加速部と、を含み、
前記チャンネルの前記内壁と前記外壁の少なくとも一方が、少なくとも出口側部分が中心に近づくように所定の角度にて傾斜してなることを特徴とするプラズマ加速装置。
【請求項2】
前記チャンネルの前記内壁が、少なくとも出口側部分が中心に近づくように所定の角度にて傾斜してなることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ加速装置。
【請求項3】
前記チャンネルの前記内壁と前記外壁ともに、少なくとも出口側部分が中心に近づくように所定の角度にて傾斜してなることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ加速装置。
【請求項4】
前記プラズマ生成/加速部は、
前記チャンネルの前記端部壁の軸方向外側に設けられた上部インダクターと、
前記チャンネルの前記内壁の放射状内側に設けられ、軸方向に沿って誘導磁場が減少するように形成された内部インダクター、及び
前記チャンネルの前記外壁の放射状外側に前記内部インダクターに並んで設けられ、軸方向に沿って誘導磁場が減少するように形成された外部インダクターと、を含むことを特徴とする請求項1に記載のプラズマ加速装置。
【請求項5】
前記内・外部インダクターは、それぞれ同じコイル巻き数を有し、それぞれに供給される電流が軸方向に沿って減少するように印加される複数のループコイルを含むことを特徴とする請求項4に記載のプラズマ加速装置。
【請求項6】
前記内・外部インダクターは、それぞれコイル巻き数が軸方向に沿って減少するように構成された複数のループコイルを含むことを特徴とする請求項4に記載のプラズマ加速装置。
【請求項7】
内壁と、該内壁と所定の間隔を隔てて内壁を外囲する外壁、及び該内壁と該外壁の一端部を開放する出口を形成するように該内壁と該外壁の他端部とを連結する端部壁を有するチャンネルと、
前記チャンネル内にガスを供給する第1のガス供給部と、
前記チャンネル内のガスにイオン化エネルギーを供給してプラズマビームを生成し、生成されたプラズマビームを出口に向かって移動させるプラズマ生成/加速部、及び
前記チャンネルの前記出口と連通し、基板を保持する基板ホルダーを有する工程チャンバーと、を含み、
前記チャンネルの前記内壁と前記外壁の少なくとも一方が、少なくとも出口側部分が中心に近づくように所定の角度にて傾斜してなることを特徴とするプラズマ処理システム。
【請求項8】
前記チャンネルの前記内壁が、少なくとも出口側部分が中心に近づくように所定の角度にて傾斜してなることを特徴とする請求項7に記載のプラズマ処理システム。
【請求項9】
前記チャンネルの前記内壁と外壁ともに、少なくとも出口側部分が中心に近づくように所定の角度にて傾斜してなることを特徴とする請求項7に記載のプラズマ処理システム。
【請求項10】
前記プラズマ生成/加速部は、
前記チャンネルの前記端部壁の軸方向外側に設けられた上部インダクターと、
前記チャンネルの前記内壁の放射状内側に設けられ、軸方向に沿って誘導磁場が減少するように形成された内部インダクター、及び
前記チャンネルの前記外壁の放射状外側に前記内部インダクターに並んで設けられ、軸方向に沿って誘導磁場が減少するように形成された外部インダクターと、を含むことを特徴とする請求項7に記載のプラズマ処理システム。
【請求項11】
前記内・外部インダクターは、それぞれ同じコイル巻き数を有し、それぞれに供給される電流が軸方向に沿って減少するように印加される複数のループコイルを含むことを特徴とする請求項10に記載のプラズマ処理システム。
【請求項12】
前記内・外部インダクターは、それぞれコイル巻き数が軸方向に沿って減少する複数のループコイルを含むことを特徴とする請求項10に記載のプラズマ処理システム。
【請求項13】
前記工程チャンバーに工程ガスを供給する第2のガス供給部を更に含むことを特徴とする請求項7に記載のプラズマ処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−352126(P2006−352126A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−163568(P2006−163568)
【出願日】平成18年6月13日(2006.6.13)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【Fターム(参考)】