説明

プラズマ発生装置、プラズマ処理装置、プラズマ発生方法、およびプラズマ処理方法

【課題】本発明が解決しようとする課題は、より強い電界強度を生じさせることができるプラズマ発生装置、プラズマ処理装置、プラズマ発生方法、およびプラズマ処理方法を提供することである。
【解決手段】実施形態によれば、プラズマを発生させる領域にマイクロ波を放射して前記プラズマを発生させるプラズマ発生装置であって、マイクロ波を発生させるマイクロ波発生部と、前記マイクロ波を共振させる共振部と、前記共振部から前記プラズマを発生させる領域への前記マイクロ波の放射を制御する放射制御部と、を備え、前記放射制御部は、前記マイクロ波の放射を抑制してマイクロ波エネルギーを前記共振部に蓄積し、前記蓄積されたマイクロ波エネルギーを放出することで電界強度を強めることを特徴とするプラズマ発生装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、プラズマ発生装置、プラズマ処理装置、プラズマ発生方法、およびプラズマ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマを利用したドライプロセスは、半導体装置の製造、金属部品の表面硬化、プラスチック部品の表面活性化、無薬剤殺菌など、幅広い技術分野において活用されている。例えば、半導体装置やフラットパネルディスプレイなどの製造に関しては、アッシング、ドライエッチング、薄膜堆積あるいは表面改質などの各種のプラズマ処理が行われている。プラズマを利用したドライプロセスは、低コストで、高速であり、薬剤を用いないために環境汚染を低減できる点でも有利である。
【0003】
このようなプラズマ処理を行う装置の代表的なものとして、周波数が100MHz〜数10GHzのマイクロ波によりプラズマを励起する「マイクロ波励起型」のプラズマ処理装置がある(例えば、特許文献1、2を参照)。
マイクロ波により励起されるプラズマのプラズマ電位は、高周波により励起されるプラズマのプラズマ電位などと比べて低い。そのため、マイクロ波励起型のプラズマ処理装置は、ダメージの少ないレジスト・アッシング(resist ashing)や、バイアス電圧を印加した異方性エッチングなどに広く用いられている。
【0004】
この様なマイクロ波励起型のプラズマ処理においては、空胴共振器を用いて導入されたマイクロ波を共振させて強い電界強度を得る技術が提案されている。
しかしながら、空胴共振器からマイクロ波を放射するために設けられたスロットなどの大きさが大きくなれば、空胴共振器内で強い電界強度を生じさせることが困難となる。そのため、空胴共振器から放射されたマイクロ波により形成される電界の電界強度も弱くなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−35411号公報
【特許文献2】特開2008−41578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、より強い電界強度を生じさせることができるプラズマ発生装置、プラズマ処理装置、プラズマ発生方法、およびプラズマ処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、プラズマを発生させる領域にマイクロ波を放射して前記プラズマを発生させるプラズマ発生装置であって、マイクロ波を発生させるマイクロ波発生部と、前記マイクロ波を共振させる共振部と、前記共振部から前記プラズマを発生させる領域への前記マイクロ波の放射を制御する放射制御部と、を備え、前記放射制御部は、前記マイクロ波の放射を抑制してマイクロ波エネルギーを前記共振部に蓄積し、前記蓄積されたマイクロ波エネルギーを瞬間的に放出することで電界強度を強めることを特徴とするプラズマ発生装置が提供される。
【0008】
また、他の実施形態によれば、上記のプラズマ発生装置と、内部にプラズマを発生させる領域を有する処理容器と、前記処理容器の内部にガスを供給するガス供給部と、被処理物を載置する載置台と、を備えたことを特徴とするプラズマ処理装置が提供される。
【0009】
また、他の実施形態によれば、上記のプラズマ発生装置と、内部にプラズマを発生させる領域を有する処理容器と、前記処理容器の内部に液体を供給する液体供給部と、前記処理容器の内部に供給される液体に気泡を形成する、または形成しやすくする気泡形成部と、を備えたことを特徴とするプラズマ処理装置が提供される。
【0010】
また、他の実施形態によれば、プラズマを発生させる領域にマイクロ波を放射して前記プラズマを発生させるプラズマ発生方法であって、マイクロ波を発生させる工程と、前記マイクロ波を共振させる工程と、前記プラズマを発生させる領域へ前記共振させたマイクロ波を放射する工程と、を備え、前記共振させたマイクロ波を放射する工程において、前記マイクロ波の放射を抑制してマイクロ波エネルギーを蓄積し、前記蓄積されたマイクロ波エネルギーを瞬間的に放出することで電界強度を強めること、を特徴とするプラズマ発生方法が提供される。
【0011】
また、他の実施形態によれば、プラズマを発生させる領域にガスを供給する工程と、上記のプラズマ発生方法により、前記プラズマを発生させる領域にマイクロ波を放射して前記プラズマを発生させる工程と、を備えたことを特徴とするプラズマ処理方法が提供される。
【0012】
また、他の実施形態によれば、液体に気泡を形成する工程と、プラズマを発生させる領域に前記気泡が形成された液体を供給する工程と、上記のプラズマ発生方法により、前記プラズマを発生させる領域にマイクロ波を放射して前記プラズマを発生させる工程と、を備えたことを特徴とするプラズマ処理方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の実施形態によれば、より強い電界強度を生じさせ、放電着火を起こしやすくすることができるプラズマ発生装置、プラズマ処理装置、プラズマ発生方法、およびプラズマ処理方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1の実施形態に係るプラズマ発生装置を例示するための模式図である。
【図2】放射制御部が設けられていない場合を例示するための模式グラフ図である。(a)はマイクロ波発生部から放射されたマイクロ波のパワーの時間変化を例示する模式グラフ図、(b)は放射部の開口率の時間変化を例示する模式グラフ図、(c)は強電界発生部のQ値の時間変化を例示する模式グラフ図、(d)は強電界発生部における電界強度の時間変化を例示する模式グラフ図、(e)は放射領域における電界強度の時間変化を例示する模式グラフ図である。
【図3】放射制御部が設けられている場合を例示するための模式グラフ図である。(a)はマイクロ波発生部から放射されたマイクロ波のパワーの時間変化を例示する模式グラフ図、(b)は放射部の開口率の時間変化を例示する模式グラフ図、(c)は強電界発生部のQ値の時間変化を例示する模式グラフ図、(d)は強電界発生部における電界強度の時間変化を例示する模式グラフ図、(e)は放射領域における電界強度の時間変化を例示する模式グラフ図である。
【図4】第2の実施形態に係るプラズマ発生装置を例示するための模式図である。
【図5】放射制御部が設けられていない場合を例示するための模式グラフ図である。(a)はマイクロ波発生部から放射されたパルス状のマイクロ波のパワーの時間変化を例示する模式グラフ図、(b)は放射部の開口率の時間変化を例示する模式グラフ図、(c)は強電界発生部のQ値の時間変化を例示する模式グラフ図、(d)は強電界発生部における電界強度の時間変化を例示する模式グラフ図、(e)は放射領域における電界強度の時間変化を例示する模式グラフ図である。
【図6】放射制御部が設けられている場合を例示するための模式グラフ図である。(a)はマイクロ波発生部から放射されたパルス状のマイクロ波のパワーの時間変化を例示する模式グラフ図、(b)は放射部の開口率の時間変化を例示する模式グラフ図、(c)は強電界発生部のQ値の時間変化を例示する模式グラフ図、(d)は強電界発生部における電界強度の時間変化を例示する模式グラフ図、(e)は放射領域における電界強度の時間変化を例示する模式グラフ図である。
【図7】第3の実施形態に係るプラズマ処理装置を例示するための模式断面図である。
【図8】第4の実施形態に係るプラズマ処理装置を例示するための模式断面図である。
【図9】第5の実施形態に係るプラズマ処理装置を例示するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について例示をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係るプラズマ発生装置を例示するための模式図である。
図1に示すように、プラズマ発生装置1には、共振部2、導波部3、マイクロ波発生部4、放射制御部5、制御部6が設けられている。なお、図1中の矢印3aはマイクロ波の導波方向を表している。また、200はマイクロ波の放射領域を表している。
【0016】
共振部2は、導入されたマイクロ波を共振させる。
共振部2には、強電界発生部2a、放射部2bが設けられている。
強電界発生部2aは、導入されたマイクロ波を共振させることで強い電界強度を発生させる。強電界発生部2aの構成は特に限定されるわけではなく、例えば、各種の空胴共振器とすることができる。
放射部2bは、例えば、スロットや孔などの開口部とすることができ、強電界発生部2aにおいて共振されたマイクロ波を強電界発生部2aの外部に向けて放射する。
【0017】
導波部3は、マイクロ波発生部4から放射されたマイクロ波を導波して強電界発生部2aに導入する。導波部3の構成は特に限定されるわけではなく、例えば、導波管や同軸ケーブルなどとすることができる。
マイクロ波発生部4は、所定の周波数を有するマイクロ波を連続的に発生させ、導波部3に向けて放射する。
発生させるマイクロ波の周波数は、例えば、2.45GHzとすることができる。
【0018】
放射制御部5は、放射部2bの放射側に設けられ、共振部2からプラズマを発生させる領域Pへのマイクロ波の放射を制御する。
放射制御部5には、遮蔽部5a、移動部5bが設けられている。
遮蔽部5aは、放射部2bからマイクロ波が放射されないように遮蔽する。遮蔽部5aは、例えば、アルミニウムやステンレスなどの金属から形成された板状体などとすることができる。
移動部5bは、放射部2bに対する遮蔽部5aの位置を変化させる。そして、放射部2bを覆う位置に遮蔽部5aを移動させることでマイクロ波の放射を停止させ、放射部2bが露出する位置に遮蔽部5aを移動させることでマイクロ波の放射を行わせる。移動部5bは、例えば、圧電素子やMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)を駆動源に有するものなどとすることができる。
【0019】
すなわち、本実施の形態においては、共振部2は、マイクロ波を放射させる開口部(放射部2b)を有し、放射制御部5は、開口部の開口率を変化させる。
【0020】
制御部6は、放射制御部5を制御する。
この場合、放射制御部5は、共振部2からのマイクロ波の放射を抑制してマイクロ波エネルギーを共振部2に蓄積し、蓄積されたマイクロ波エネルギーを瞬間的に放出することで電界強度を強める。なお、このことに関する詳細は後述する。
なお、連続的なマイクロ波の場合、遮蔽部5aが単純に開閉動作を繰り返すのみでもマイクロ波エネルギーの蓄積と放出とを行うことができる。そのため、この様な場合には、必ずしも移動部5bを制御する必要はなく、移動部5bの制御を行わない場合には制御部6を設けなくてもよい。
【0021】
次に、放射制御部5に関してさらに例示する。
図2は、放射制御部5が設けられていない場合を例示するための模式グラフ図である。 なお、図2(a)はマイクロ波発生部4から放射されたマイクロ波のパワーの時間変化を例示する模式グラフ図、図2(b)は放射部2bの開口率の時間変化を例示する模式グラフ図、図2(c)は強電界発生部2aのQ値の時間変化を例示する模式グラフ図、図2(d)は強電界発生部2aにおける電界強度の時間変化を例示する模式グラフ図、図2(e)は放射領域200における電界強度の時間変化を例示する模式グラフ図である。
【0022】
放射制御部5が設けられていない場合には、図2(b)に示すように放射部2bの開口率は大きい状態で一定である。
この様な場合には、図2(c)に示すように強電界発生部2aのQ値は低い状態で一定となる。すなわち、強電界発生部2aのエネルギー蓄積能力が低いまま一定となる。
そのため、図2(a)に示すような連続的なマイクロ波がマイクロ波発生部4から放射されても強電界発生部2aに蓄積されるマイクロ波エネルギーは少ないものとなる。
【0023】
その結果、図2(d)に示すように、強電界発生部2aにおける電界強度はわずかに高くなる程度となる。
そして、強電界発生部2aにおける電界強度が低いものとなるため、図2(e)に示すように、放射領域200における電界強度もわずかに高くなる程度となる。
【0024】
図3は、放射制御部5が設けられている場合を例示するための模式グラフ図である。 なお、図3(a)はマイクロ波発生部4から放射されたマイクロ波のパワーの時間変化を例示する模式グラフ図、図3(b)は放射部2bの開口率の時間変化を例示する模式グラフ図、図3(c)は強電界発生部2aのQ値の時間変化を例示する模式グラフ図、図3(d)は強電界発生部2aにおける電界強度の時間変化を例示する模式グラフ図、図3(e)は放射領域200における電界強度の時間変化を例示する模式グラフ図である。
【0025】
放射制御部5が設けられている場合には、図3(b)に示すように放射部2bに対する遮蔽部5aの位置により放射部2bの開口率を変化させることができる。すなわち、放射部2bを覆う方向に遮蔽部5aを移動させることで放射部2bの開口率を小さくすることができる。また、放射部2bが露出する方向に遮蔽部5aを移動させることで放射部2bの開口率を大きくすることができる。
【0026】
この様な場合には、図3(c)に示すように強電界発生部2aのQ値を放射部2bの開口率に応じて変化させることができる。すなわち、遮蔽部5aにより放射部2bが覆われることで放射部2bの開口率が小さくなれば強電界発生部2aのQ値が高くなる。このことは、強電界発生部2aに多くのマイクロ波エネルギーを蓄積することができることを意味する。一方、遮蔽部5aを移動させて放射部2bが露出するようにすれば、放射部2bの開口率が大きくなり強電界発生部2aのQ値が低くなる。
【0027】
この場合、例えば、図3(a)に示すような連続的なマイクロ波がマイクロ波発生部4から放射され、マイクロ波が強電界発生部2aに導入されている際に、遮蔽部5aにより放射部2bの開口率を変化させれば、放射領域200における電界強度を瞬間的に極めて強いものとすることができる。
【0028】
すなわち、図3(d)に示すように、遮蔽部5aにより放射部2bの開口率が小さくされている間は、強電界発生部2aにおける電界強度が強くなり、放射部2bの開口率が大きくなると強電界発生部2aにおける電界強度が弱くなる。
そして、強電界発生部2aにおける電界強度が強いところから弱いところへと変化する時点において、図3(e)中のA部に示すように、放射領域200における電界強度が瞬間的に極めて強いものとなる。
【0029】
そのため、制御部6により移動部5bを制御して、放射部2bの開口率を繰り返し変化させれば、放射領域200において極めて強い電界強度を繰り返し発生させることができる。すなわち、強電界発生部2aにマイクロ波エネルギーを貯めてこれを放出する際に極めて強い電界強度を瞬間的に発生させ、この極めて強い電界強度を繰り返し発生させるようにすることができる。
【0030】
次に、プラズマ発生装置1の作用について例示する。
まず、マイクロ波発生部4から連続的なマイクロ波が導波部3を介して強電界発生部2aに導入される。強電界発生部2aにおいては、共振によりマイクロ波の電界強度が強められる。
この際、制御部6により移動部5bを制御することで、放射領域200において極めて強い電界強度を繰り返し発生させる。
すなわち、前述したように、マイクロ波がマイクロ波発生部4から放射され、マイクロ波が強電界発生部2aに導入されている際に、遮蔽部5aにより放射部2bの開口率を変化させ、瞬間的に極めて強い電界強度を放射領域200において発生させる。そして、この極めて強い電界強度の発生を繰り返すことで強い電界強度を実効的に発生させる。
【0031】
ここで、放射領域200において各種のプラズマ処理を行うようにすることができる。 例えば、放射領域200に所望のガスを供給し、供給されたガスを励起、活性化させることで中性活性種、イオン、電子などの反応生成物を生成するようにすることができる。そして、生成された反応生成物を用いて被処理物の処理面などをエッチングするなどの各種の処理を行うようにすることができる。
なお、プラズマ処理に関する詳細は後述する。
【0032】
本実施の形態に係るプラズマ発生装置1によれば、放射領域200において極めて強い電界強度を発生させることができる。そのため、プラズマ発生の安定化や効率化などの向上を図ることができる。
【0033】
[第2の実施形態]
図4は、第2の実施形態に係るプラズマ発生装置を例示するための模式図である。
図4に示すように、プラズマ発生装置11には、共振部2、導波部3、マイクロ波発生部14、放射制御部5、制御部16が設けられている。なお、図4中の矢印3aはマイクロ波の導波方向を表している。また、200はマイクロ波の放射領域を表している。
【0034】
マイクロ波発生部14は、所定の周波数を有するマイクロ波をパルス状に発生させ、導波部3に向けて放射する。
発生させるマイクロ波の周波数は、例えば、2.45GHzとすることができる。
【0035】
制御部16は、マイクロ波発生部14と放射制御部5とを制御する。
この場合、マイクロ波発生部14は、パルス状のマイクロ波を発生させ、導波部3に向けて放射させる。また、放射制御部5は、パルス状のマイクロ波が共振部2に導入されている際に共振部2からのマイクロ波の放射を抑制してマイクロ波エネルギーを共振部2に蓄積し、蓄積されたマイクロ波エネルギーを放出することで電界強度を強める。なお、このことに関する詳細は後述する。
【0036】
次に、放射制御部5に関してさらに例示する。
図5は、放射制御部5が設けられていない場合を例示するための模式グラフ図である。 なお、図5(a)はマイクロ波発生部14から放射されたパルス状のマイクロ波のパワーの時間変化を例示する模式グラフ図、図5(b)は放射部2bの開口率の時間変化を例示する模式グラフ図、図5(c)は強電界発生部2aのQ値の時間変化を例示する模式グラフ図、図5(d)は強電界発生部2aにおける電界強度の時間変化を例示する模式グラフ図、図5(e)は放射領域200における電界強度の時間変化を例示する模式グラフ図である。
【0037】
放射制御部5が設けられていない場合には、図5(b)に示すように放射部2bの開口率は大きい状態で一定である。
この様な場合には、図5(c)に示すように強電界発生部2aのQ値は低い状態で一定となる。すなわち、強電界発生部2aのエネルギー蓄積能力が低いまま一定となる。
そのため、図5(a)に示すようなパルス状のマイクロ波がマイクロ波発生部14から放射されても強電界発生部2aに蓄積されるマイクロ波エネルギーは少ないものとなる。
【0038】
その結果、図5(d)に示すように、強電界発生部2aにおける電界強度は、パルス状のマイクロ波が強電界発生部2aに導入されている間、わずかに高くなる程度となる。
そして、強電界発生部2aにおける電界強度が低いものとなるため、図5(e)に示すように、放射領域200における電界強度も、パルス状のマイクロ波が強電界発生部2aに導入されている間、わずかに高くなる程度となる。
【0039】
図6は、放射制御部5が設けられている場合を例示するための模式グラフ図である。 なお、図6(a)はマイクロ波発生部14から放射されたパルス状のマイクロ波のパワーの時間変化を例示する模式グラフ図、図6(b)は放射部2bの開口率の時間変化を例示する模式グラフ図、図6(c)は強電界発生部2aのQ値の時間変化を例示する模式グラフ図、図6(d)は強電界発生部2aにおける電界強度の時間変化を例示する模式グラフ図、図6(e)は放射領域200における電界強度の時間変化を例示する模式グラフ図である。
【0040】
放射制御部5が設けられている場合には、図6(b)に示すように放射部2bに対する遮蔽部5aの位置により放射部2bの開口率を変化させることができる。すなわち、放射部2bを覆う方向に遮蔽部5aを移動させることで放射部2bの開口率を小さくすることができる。また、放射部2bが露出する方向に遮蔽部5aを移動させることで放射部2bの開口率を大きくすることができる。
【0041】
この様な場合には、図6(c)に示すように強電界発生部2aのQ値を放射部2bの開口率に応じて変化させることができる。すなわち、遮蔽部5aにより放射部2bが覆われることで放射部2bの開口率が小さくなれば強電界発生部2aのQ値が高くなる。このことは、強電界発生部2aに多くのマイクロ波エネルギーを蓄積することができることを意味する。一方、遮蔽部5aを移動させて放射部2bが露出するようにすれば、放射部2bの開口率が大きくなり強電界発生部2aのQ値が低くなる。
【0042】
この場合、例えば、図6(a)に示すようなパルス状のマイクロ波がマイクロ波発生部14から放射され、マイクロ波が強電界発生部2aに導入されている際に、遮蔽部5aにより放射部2bの開口率を変化させれば、放射領域200における電界強度を瞬間的に極めて強いものとすることができる。
【0043】
すなわち、図6(d)に示すように、遮蔽部5aにより放射部2bの開口率が小さくされている間は、強電界発生部2aにおける電界強度が徐々に強くなり、放射部2bの開口率が大きくなると強電界発生部2aにおける電界強度が段階的に弱くなる。
そして、強電界発生部2aにおける電界強度が強いところから弱いところへと変化する時点において、図6(e)中のC部に示すように、放射領域200における電界強度が瞬間的に極めて強いものとなる。
【0044】
そのため、制御部16により移動部5bを制御して、放射部2bの開口率をマイクロ波のパルスと同期させて繰り返し変化させれば、放射領域200において極めて強い電界強度を繰り返し発生させることができる。すなわち、強電界発生部2aにマイクロ波エネルギーを貯めてこれを放出する際に極めて強い電界強度を瞬間的に発生させ、この極めて強い電界強度を繰り返し発生させるようにすることができる。
【0045】
次に、プラズマ発生装置11の作用について例示する。
まず、制御部16によりマイクロ波発生部14を制御することで、マイクロ波発生部14からパルス状のマイクロ波が導波部3を介して強電界発生部2aに導入される。強電界発生部2aにおいては、共振によりマイクロ波の電界強度が強められる。
この際、制御部16により移動部5bを制御することで、放射領域200において極めて強い電界強度を繰り返し発生させる。
すなわち、前述したように、マイクロ波がマイクロ波発生部14から放射され、マイクロ波が強電界発生部2aに導入されている際に、遮蔽部5aにより放射部2bの開口率を変化させ、瞬間的に極めて強い電界強度を放射領域200において発生させる。そして、この極めて強い電界強度の発生を繰り返すことで強い電界強度を実効的に発生させる。
【0046】
ここで、放射領域200において各種のプラズマ処理を行うようにすることができる。 例えば、放射領域200に所望のガスを供給し、供給されたガスを励起、活性化させることで中性活性種、イオン、電子などの反応生成物を生成するようにすることができる。そして、生成された反応生成物を用いて被処理物の処理面などをエッチングするなどの各種の処理を行うようにすることができる。
なお、プラズマ処理に関する詳細は後述する。
【0047】
本実施の形態によれば、放射領域200において極めて強い電界強度を発生させることができる。そのため、プラズマ発生の安定化や効率化などの向上を図ることができる。
【0048】
[第3の実施形態]
図7は、第3の実施形態に係るプラズマ処理装置100を例示するための模式断面図である。
なお、図7は、一例として、半導体ウェーハやガラス基板などの被処理物Wを大気圧プラズマ処理するプラズマ処理装置を例示するものである。また、図1において例示をしたプラズマ発生装置を設けた場合を例示するものである。
図7に示すように、プラズマ処理装置100には、プラズマ発生装置21と処理部23とが設けられている。
【0049】
プラズマ発生装置21には、共振部12、導波部13、マイクロ波発生部4、放射制御部5、制御部6、絶縁部9が設けられている。
処理部23には、プラズマ発生部7(処理容器)、ガス供給部8、配管10、載置台22が設けられている。
共振部12には、強電界発生部12a、放射部12bが設けられている。
強電界発生部12aは、筒状を呈し、軸方向の端面が塞がれている。なお、強電界発生部12aの形態は特に限定されるわけではなく、空胴共振器とできる形状、寸法を有しているものとすることができる。
放射部12bは、例えば、スロットや孔などの開口部とすることができ、強電界発生部12aにおいて共振されたマイクロ波をプラズマ発生部7に向けて放射する。
【0050】
導波部13には、外部導体13a、誘電体部13b、内部導体13cが設けられている。
外部導体13aは、一端が強電界発生部12aに接続され、他端がマイクロ波発生部4に接続されている。
誘電体部13bは、外部導体13aの内部に設けられ、外部導体13aと内部導体13cとを絶縁する。
【0051】
内部導体13cは、一端が強電界発生部12aに接続され、他端がマイクロ波発生部4に接続されている。また、強電界発生部12aの内部において誘電体部13bから内部導体13cが突出している部分13c1がアンテナとして機能する。
【0052】
プラズマ発生部7は、管状を呈し、軸方向の両端が開口されている。プラズマ発生部7の一端には配管10が接続されている。プラズマ発生部7の他端近傍は流路断面積が漸減するようになっており、先端が吐出口7aとなっている。プラズマ発生部7は、石英などの誘電体から形成され、プラズマ発生部7の外部から内部にマイクロ波が導入できるようになっている。
本実施の形態においては、プラズマ発生部7が、内部にプラズマを発生させる領域Pを有する処理容器となる。そして、プラズマ発生部7は、ガス供給部8から供給されたガスを流通させる流路を有し、プラズマを発生させる領域Pはこの流路に設けられることになる。
【0053】
ガス供給部8は、配管10を介してプラズマ発生部7の内部にガスGを供給する。ガス供給部8は、例えば、高圧のガスGを収納したボンベなどとすることができる。なお、ガス供給部8によるガスGの供給は、例えば、圧力差を利用したものであってもよいし、ポンプなどにより圧送されるものであってもよい。
【0054】
また、ガス供給部8には図示しない流量制御弁などを適宜設けるようにすることができる。そして、図示しない流量制御弁などによりガスGの供給の開始、供給の停止、流量や圧力などの調整などを行うようにすることができる。この場合、後述するプラズマを発生させる領域Pの下流側に図示しない流量制御弁などを設けるようにすれば、生成されたプラズマ生成物が失活してしまうおそれがある。そのため、プラズマ生成物の失活を抑制するという観点からは、ガス供給部8に図示しない流量制御弁などを設けるようにすることが好ましい。
【0055】
絶縁部9は、放射部12bの近傍に設けられている。絶縁部9は、プラズマ発生部7の内部にあるガスG以上の絶縁破壊電界強度を有した材料から形成されたものとすることができる。放射部12bの放射側の近傍は放射領域200となるので異常放電が発生するおそれがある。そのため、絶縁部9を設けるようにすれば、異常放電を抑制することができる。絶縁破壊電界強度の高い材料としては、例えば、石英などを例示することができる。
【0056】
配管10は、ガス供給部8とプラズマ発生部7との間に設けられ、ガス供給部8から流出したガスGをプラズマ発生部7の内部に導く。
載置台22の一方の主面は、被処理物Wを載置する載置面22aとなっている。また、載置台22には静電チャックなどの図示しない保持部が設けられており、載置された被処理物Wを保持することができるようになっている。なお、載置面22aの周縁に被処理物Wの周端を支持する図示しない支持部を設けて、被処理物Wの周端を支持することで載置面22aに載置された被処理物Wが保持されるようにしてもよい。
また、載置台22およびプラズマ発生装置21の少なくともいずれかの位置を変化させる図示しない移動部を設けるようにすることもできる。
【0057】
次に、プラズマ処理装置100の作用について例示する。
まず、図示しない搬入搬出装置などにより被処理物Wが搬入される。搬入された被処理物Wは載置台22の載置面22aに載置される。載置面22aに載置された被処理物Wは、静電チャックなどの図示しない保持部により保持される。なお、載置面22aの周縁に被処理物Wの周端を支持する図示しない支持部が設けられている場合には、図示しない支持部により被処理物Wの周端が支持されることで、載置面22aに載置された被処理物Wが保持される。
【0058】
そして、ガス供給部8から配管10を介してプラズマ発生部7にガスGが供給される。 一方、マイクロ波発生部4から導波部13の内部導体13cに連続的なマイクロ波が放射される。内部導体13cに放射されたマイクロ波は、内部導体13cのアンテナとして機能する部分13c1から強電界発生部12aの内部空間に放射される。強電界発生部12aの内部空間に放射されたマイクロ波は、強電界発生部12aにおいて共振される。
強電界発生部12aにおいて共振したマイクロ波は、放射部12bを介してプラズマ発生部7の内部に導入される。
【0059】
この際、制御部6により移動部5bを制御することで、放射領域200において極めて強い電界強度を繰り返し発生させる。
すなわち、前述したように、マイクロ波がマイクロ波発生部4から放射され、マイクロ波が強電界発生部12aに導入されている際に、遮蔽部5aにより放射部12bの開口率を変化させ、瞬間的に極めて強い電界強度を放射領域200において発生させる。そして、この極めて強い電界強度の発生を繰り返すことでより強い電界強度を実効的に発生させる。このようにすれば、プラズマ発生の容易化や安定化を図ることができる。
なお、放射部12bの近傍には絶縁部9が設けられているので、異常放電を抑制することができる。
【0060】
プラズマ発生部7の内部にマイクロ波が導入されると、放射領域200においてプラズマが発生し、ガスGが励起、活性化されてプラズマ生成物(例えば、中性活性種、イオンや電子などの荷電粒子など)が生成される。生成されたプラズマ生成物はガスGの気流にのり、吐出口7aから被処理物Wの処理面Waに向けて放出される。
また、必要に応じて、図示しない移動部により載置台22とプラズマ発生装置21との相対的な位置を変化させて、処理面Waにおけるプラズマ生成物が供給される領域を変化させるようにすることもできる。
【0061】
次に、被処理物Wを図示しない搬入搬出装置などにより搬出する。その後、必要に応じて前述した動作を繰り返すことで被処理物Wの処理を連続的に行うことができる。
【0062】
本実施の形態によれば、放射領域200において極めて強い電界強度を発生させることができる。そのため、プラズマの着火が生じにくい大気圧プラズマ処理を行う場合であってもプラズマ発生の安定化や効率化などの向上を図ることができる。
【0063】
[第4の実施形態]
図8は、第4の実施形態に係るプラズマ処理装置110を例示するための模式断面図である。
なお、図8は、一例として、半導体ウェーハやガラス基板などの被処理物Wをいわゆる液中プラズマ処理するプラズマ処理装置を例示するものである。また、図4において例示をしたプラズマ発生装置を設けた場合を例示するものである。
図8に示すように、プラズマ処理装置110には、プラズマ発生装置31と処理部33とが設けられている。
【0064】
プラズマ発生装置31には、共振部32、導波部13、マイクロ波発生部14、放射制御部5、制御部16、絶縁部39が設けられている。
処理部33には、プラズマ処理部37、液体供給部38、載置台22、配管30が設けられている。
共振部32には、強電界発生部32a、放射部32bが設けられている。
【0065】
強電界発生部32aは、筒状(例えば、円筒状)を呈し、軸方向の端面が塞がれている。また、強電界発生部32aの中央部分にはプラズマ処理部37が貫通するようにして設けられている。強電界発生部32aのプラズマ処理部37が貫通している部分には、マイクロ波を遮蔽する遮蔽部32a1が設けられている。後述する減圧部37bの流出側先端近傍には遮蔽部32a1が設けられておらず、この部分がマイクロ波を放射する放射部32bとなる。強電界発生部32aにおいて共振されたマイクロ波は、放射部32bを介して減圧部37bに向けて放射される。
【0066】
また、強電界発生部32aの軸方向の寸法Hは、マイクロ波の波長の約1/2とされている。この寸法Hは、マイクロ波の共振を起こさせることができるように、調整により決定されるものである。そのため、内部導体13cのアンテナとして機能する部分13c1から強電界発生部32aの内部空間に放射されたマイクロ波を共振させることができる。なお、強電界発生部32aにおいて発生する電界強度は、気泡Bに含まれた気体の絶縁破壊電界強度を超えるものとなっている。
【0067】
導波部13には、外部導体13a、誘電体部13b、内部導体13cが設けられている。
外部導体13aは、一端が強電界発生部32aに接続され、他端がマイクロ波発生部14に接続されている。
誘電体部13bは、外部導体13aの内部に設けられ、外部導体13aと内部導体13cとを絶縁する。
【0068】
内部導体13cは、一端が強電界発生部32aに接続され、他端がマイクロ波発生部4に接続されている。また、強電界発生部32aの内部において誘電体部13bから内部導体13cが突出している部分13c1がアンテナとして機能する。
【0069】
プラズマ処理部37には、流入部37a、減圧部37b、吐出口37cが設けられている。
流入部37aは、管状を呈し、配管30を介して液体供給部38から供給された液体Lを減圧部37bに流入させる。
減圧部37bは、液体Lの流速を上昇させることで液体Lの圧力を減圧させて、液体L自体が気化した気体や溶存していた気体を含む気泡Bを発生させる。あるいは、この様な気体Bを発生しやすくする。
減圧部37bの内部空間の液体Lの流れ方向と垂直な方向における断面積(流路断面積)は、流入部37aの内部空間の液体Lの流れ方向と垂直な方向における断面積(流路断面積)よりも小さくなっている。そのため、流入部37aから減圧部37bに流入した液体Lの流速を上昇させることができるので、減圧部37bにおける液体Lの圧力を減圧することができる。その結果、減圧部37bにおいて液体L中に気泡Bを発生させることができ、気泡Bを含んだ液体Lに強い電界強度を有するマイクロ波を導入することができる。そして、減圧部37bの内部において、気泡Bと導入されたマイクロ波とによりプラズマを発生させる領域Pが形成されることになる。
【0070】
減圧部37bの流出側先端部分は流路断面積が漸減するようになっており、流出側先端が吐出口37cとなっている。
流入部37a、減圧部37bは、例えば、円管状を呈し、石英などの誘電体から形成されたものとすることができる。
【0071】
本実施の形態においては、プラズマ処理部37が内部にプラズマを発生させる領域Pを有する処理容器となる。また、減圧部37bがプラズマ処理部37の内部に供給される液体Lに気泡Bを形成する気泡形成部となる。
【0072】
ここで、直流高電圧が印加される金属電極間においてプラズマを発生させる場合には、金属電極間に絶縁体を設けることができないため金属電極を液体L中に設ける必要がある。そのため、金属電極などが液体Lに触れることで金属腐食したり、金属電極などが金属腐食することで液体Lが金属汚染されたりするおそれがある。
【0073】
これに対し、本実施の形態によれば、減圧部37bの外側から内側にマイクロ波を導入することができる。すなわち、減圧部37bにより液体Lと共振部32の強電界発生部32aとを離隔させることができるので、強電界発生部32aが液体Lに触れることで金属腐食したり、強電界発生部32aが金属腐食することで液体Lが金属汚染されたりすることを抑制することができる。また、後述する微細体が絶縁体であったとしてもプラズマ処理による微細体の生成が可能となる。
【0074】
減圧部37bの流出側先端近傍、すなわち、放射部32bの放射側の近傍は放射領域200となるので、放射領域200の減圧部37b以外の部分には、気泡Bに含まれた気体以上の絶縁破壊電界強度を有した絶縁部39を設けるようにすることができる。絶縁部39を設けるようにすれば、強電界発生部32aにおける異常放電を抑制することができる。絶縁破壊電界強度の高い材料としては、例えば、石英などを例示することができる。
【0075】
液体供給部38は、プラズマ処理部37の内部に液体Lを供給する。すなわち、液体供給部38は、配管30を介して流入部37aに液体Lを供給する。液体供給部38は、例えば、図示しないタンクや送液ポンプなどを備えたものとすることができる。なお、液体供給部38による送液は、例えば、高低差を利用したものであってもよいし、送液ポンプなどにより圧送されるものであってもよい。
【0076】
また、液体供給部38には図示しない流量制御弁などを適宜設けるようにすることができる。液体供給部38に図示しない流量制御弁などを設けて減圧部37bにおける液体Lの流速(圧力)を制御するようにすれば、気泡Bの発生量を制御することができる。また、プラズマ処理された液体Lの供給の開始、供給の停止、流量の調整などを行うこともできる。
【0077】
また、液体供給部38には、液体L中に気体を導入して液体L中に溶存する気体の量を増加させる図示しない気体導入装置などを設けるようにしてもよい。
また、流入部37aの上流側に液体Lに超音波を照射する図示しない超音波発生装置などを設け、超音波発生装置により発生させた気泡を併せて用いるようにしてもよい。
図示しない気体導入装置や超音波発生装置などを設けるようにすれば、プラズマ処理を行う際の気泡量を増加させることができる。
なお、液体Lの圧力を減圧して気泡Bを発生させる場合を例示したが、前述した図示しない気体導入装置、超音波発生装置などにより液体Lに気泡Bを形成するようにしてもよい。この様な場合には、減圧部37bを設ける必要はなく所望の流路断面積を有する流入部と吐出口とを設けるようにすればよい。
すなわち、プラズマ処理部37の内部に供給される液体Lに気泡を形成する気泡形成部が設けられていればよい。
【0078】
液体Lは、特に限定されるわけではなく気体を溶存させることができるものであってもよい。この場合、液体Lは、気体を溶解する能力、比重や比熱などの物理的な性質、被処理物Wなどに対する化学的な性質、後述するプラズマ処理により生成される微細体などを考慮して適宜選択することができる。
液体Lとしては、例えば、水などの無機溶剤、アルコールなどの有機溶剤、無機溶剤と有機溶剤との混合液などを例示することができる。
また、液体Lには、気体以外の物質を含ませるようにすることもできる。
また、液体Lには気体が溶存していなくてもよく、液体Lのみで構成されていてもよい。その場合、液体Lを減圧により沸騰させる、もしくは加熱により沸騰させることによって液体L自体が気化して気体となり、液体L中にその気体を内包した気泡Bを発生させることができる。
【0079】
配管30は、液体供給部38と流入部37aとの間に設けられ、液体供給部38から流入部37aに向けて液体Lを流通させる。
配管30の材料は特に限定されないが、液体Lに対する耐性が高いものとすることが好ましい。配管30の材料は、例えば、フッ素樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン)などとすることができる。
なお、配管30は必ずしも設ける必要はなく、プラズマ処理部37、液体供給部38などの配置に応じて適宜設けるようにすることができる。
【0080】
次に、プラズマ処理装置110の作用について例示する。
まず、図示しない搬入搬出装置などにより被処理物Wが搬入される。搬入された被処理物Wは載置台22の載置面22aに載置される。載置面22aに載置された被処理物Wは、静電チャックなどの図示しない保持部により保持される。なお、載置面22aの周縁に被処理物Wの周端を支持する図示しない支持部が設けられている場合には、図示しない支持部により被処理物Wの周端が支持されることで、載置面22aに載置された被処理物Wが保持される。
【0081】
そして、液体供給部38から配管30を介してプラズマ処理部37の流入部37aに液体Lが供給される。前述したように、流入部37aから減圧部37bに液体Lが流入すると、流入した液体Lの流速が上昇する。そのため、液体Lの圧力が低下することで沸騰現象が生じ、液体L自体が気化した気体や液体Lに溶存していた気体を含む気泡Bが形成される。
【0082】
一方、制御部16によりマイクロ波発生部14を制御することで、マイクロ波発生部14からパルス状のマイクロ波が内部導体13cに放射される。内部導体13cに放射されたマイクロ波は、内部導体13cのアンテナとして機能する部分13c1から強電界発生部32aの内部空間に放射される。強電界発生部32aの内部空間に放射されたマイクロ波は、強電界発生部32aにおいて共振される。
強電界発生部32aにおいて共振したマイクロ波は、放射部32bを介して減圧部37bの内部に導入される。
【0083】
この際、制御部16により移動部5bを制御することで、放射領域200において極めて強い電界強度を繰り返し発生させる。
すなわち、前述したように、パルス状のマイクロ波がマイクロ波発生部14から放射され、マイクロ波が強電界発生部32aに導入されている際に、遮蔽部5aにより放射部32bの開口率を変化させ、瞬間的に極めて強い電界強度を放射領域200において発生させる。そして、この極めて強い電界強度の発生を繰り返すことで強い電界強度を実効的に発生させる。このようにすればプラズマ発生の容易化や安定化を図ることができる。
なお、放射部32bの近傍には絶縁部39が設けられているので、異常放電を抑制することができる。
【0084】
放射部32bから放射されたマイクロ波は、石英などの誘電体から形成された減圧部37bの内部に導入される。ここで、単に液体中にマイクロ波を導入してもプラズマを発生させることは困難であるが、液体Lには気泡Bが含まれているので気泡B中においてプラズマを発生させることができる。この場合、減圧部37bの圧力が減圧されていることになるので、気泡B中の圧力を低下させることができる。そのため、プラズマ発生の容易化を図ることができる。
【0085】
そして、発生したプラズマによりプラズマ処理が行われる。
例えば、気泡B中に含まれる蒸気や気体、あるいは気泡Bと液体Lとの界面にある液体Lや液体Lに含まれている物質などがプラズマによって励起、活性化されてプラズマ生成物(例えば、中性活性種、イオンや電子などの荷電粒子など)が生成される。
また、減圧部37bの内部に所望の材料から形成された部材を設けるようにすれば、荷電粒子などのプラズマ生成物を部材に衝突させることができるので部材の成分からなるナノ粒子などの微細体を生成することもできる。すなわち、減圧部37bの内部に設けられた物質をスパッタリングすることで、ナノ粒子などの微細体を生成することができる。なお、所望の材料から形成された減圧部37b自体の内壁をスパッタリングすることで、ナノ粒子などの微細体を生成することもできる。
また、液体Lに含まれている物質や液体L自体からナノ粒子などの微細体を生成することもできる。例えば、液体Lに含まれている有機物の炭素からカーボンナノファイバーなどの炭素系の微細体を生成することもできる。
また、生成されたプラズマ生成物により液体Lに含まれている有機物、有害物質、細菌類などの物質を分解することもできる。
【0086】
このようにして生成されたプラズマ生成物や微細体は液体L中に拡散され、プラズマ処理された液体Lが生成される。また、生成されたプラズマ生成物により液体Lに含まれている有機物、有害物質、細菌類などの物質を分解する場合には、有機物、有害物質、細菌類などの物質が分解された液体Lがプラズマ処理された液体Lとなる。プラズマ処理された液体Lは、吐出口37cから被処理物Wの処理面Waに向けて放出される。
【0087】
この場合、プラズマ処理された液体Lの供給の開始、供給の停止、流量の調整などは液体供給部38に設けられた図示しない流量制御弁などにより行うことができる。
処理面Waに供給されたプラズマ処理された液体Lは、処理面Waの全域に行きわたり所望の処理が行われる。
例えば、プラズマ生成物を含む液体Lを用いて処理面Waに付着している有機物などを除去するようにすることができる。
また、例えば、被処理物Wの表面改質を行うこともできる。
また、例えば、微細体を含む液体Lを用いて処理面Waに微細体を付着させるようにすることができる。
使用済みの液体Lは被処理物Wの径外方向に排出される。被処理物Wの径外方向に排出された使用済みの液体Lは、図示しない回収部により回収される。
【0088】
なお、図示しない吐出部からリンス液や有機溶媒を処理面Waにさらに供給することもできる。この場合、有機溶媒と処理面Waに残留している液体Lとを置換したり、より蒸散させやすい混合液を形成させたりすることで、ウォータマークなどが抑制された乾燥を行うこともできる。
また、必要に応じて、図示しない移動部により載置台22とプラズマ発生装置31との相対的な位置を変化させて、処理面Waにおけるプラズマ処理された液体Lが供給される領域を変化させるようにすることもできる。
【0089】
次に、被処理物Wを図示しない搬入搬出装置などにより搬出する。その後、必要に応じて前述した動作を繰り返すことで被処理物Wの処理を連続的に行うことができる。
【0090】
本実施の形態によれば、放射領域200において極めて強い電界強度を発生させることができる。そのため、プラズマの着火が生じにくい液中プラズマ処理を行う場合であってもプラズマ発生の安定化や効率化などの向上を図ることができる。
【0091】
[第5の実施形態]
図9は、第5の実施形態に係るプラズマ処理装置120を例示するための模式図である。
なお、図9(a)はプラズマ処理装置の模式断面図、図9(b)は図9(a)におけるD−D矢視断面図である。
また、図9は、一例として、半導体ウェーハやガラス基板などの被処理物Wを減圧環境下においてプラズマ処理するプラズマ処理装置を例示するものである。また、図1において例示をしたプラズマ発生装置を設けた場合を例示するものである。
図9に示すように、プラズマ処理装置120には、プラズマ発生装置41と処理部50とが設けられている。
【0092】
プラズマ発生装置41には、共振部42、導波部43、マイクロ波発生部4、放射制御部5、制御部6、絶縁部49が設けられている。
処理部50には、処理容器51、透過窓52、減圧部53、ガス供給部54、整流板55、載置台22が設けられている。
共振部42には、環状部42a、強電界発生部42bが設けられている。
環状部42aは、中空の環状を呈し、外周面側には導波部43が設けられている。環状部42aの内部空間と導波部43の内部空間とが連通され、導波部43を介して環状部42aにマイクロ波Mが導入されるようになっている。
【0093】
強電界発生部42bは、環状部42aの内周面側に設けられた互いに平行な一対の板状体を有している。強電界発生部42bの一対の板状体間に形成される内部空間と環状部42aの内部空間とが連通され、環状部42aの内部空間から強電界発生部42bの内部空間にマイクロ波Mが導入されるようになっている。
ここで、一対の板状体同士の間の寸法は、環状部42aの軸方向の内部空間の寸法よりも短くなっており、電界強度を強くすることができる。また、環状部42aの内部空間から強電界発生部42bの内部空間に導入されたマイクロ波Mを共振させることができるので、さらに電界強度を強くすることができる。
【0094】
強電界発生部42bの処理容器51側の板状体には放射部42cが設けられている。
放射部42cは、マイクロ波Mの1/2波長のピッチ寸法で設けられたスロットとすることができる。放射部42cは、強電界発生部42bにおいて共振されたマイクロ波Mを強電界発生部42bの外部に向けて放射する。
なお、放射部42cの放射側の近傍は放射領域200となる。
【0095】
導波部43は、管状(例えば、角管状)を呈し、その一端は環状部42aの外周面側に設けられ、その他端はマイクロ波発生部4に設けられている。導波部43は、マイクロ波発生部4において発生させたマイクロ波Mを環状部42aの内部空間に向けて導波する。
環状部42a、強電界発生部42b、導波部43は、例えば、アルミニウム合金や銅合金などから形成されるものとすることができる。
【0096】
絶縁部49は、強電界発生部42bの内部空間を埋めるようにして設けられている。絶縁部49は、高い絶縁破壊電界強度を有した材料から形成されるものとすることができる。そのため、強電界発生部42bの内部空間における異常放電を抑制することができる。絶縁破壊電界強度の高い材料としては、例えば、石英などを例示することができる。
【0097】
処理容器51は、有底の略円筒形状を呈し、大気圧よりも減圧された雰囲気が維持可能な気密構造となっている。そして、処理容器51は、内部にプラズマを発生させる領域Pを有する。また、処理容器51の内部には載置台22が設けられている。
透過窓52は、処理容器51の天井部分に気密となるようにして設けられている。透過窓52は平板状を呈し、マイクロ波Mに対する透過率が高くエッチングされにくい材料から形成されている。例えば、透過窓52をアルミナや石英などの誘電体から形成されるものとすることができる。
【0098】
減圧部53は、処理容器51の内部を所定の圧力まで減圧する。
減圧部53には、圧力制御部53a、排気部53bが設けられている。
排気部53bは圧力制御部53aを介して処理容器51の底面に接続されており、処理容器51の内部を減圧することができるようになっている。
圧力制御部53aは、処理容器51の内圧を検出する図示しない真空計などの出力に基づいて、処理容器51の内圧が所定の圧力となるように制御する。
排気部53bは、例えば、ターボ分子ポンプ(TMP:Turbo Molecular Pump)などとすることができる。
【0099】
ガス供給部54は、配管54aを介して処理容器51の側壁上部に接続されている。そして、ガス供給部54から配管54aを介して処理容器51内のプラズマを発生させる領域PにガスGを供給することができるようになっている。ガス供給部54は、例えば、高圧のガスGを収納したボンベなどとすることができる。
なお、ガス供給部54には図示しないマスフローコントローラ(MFC:Mass Flow Controller)などが接続されており、これによって供給するガスGの流量を制御することができるようになっている。
整流板55は、多数の孔部55aが設けられた略円形の板状体であり、処理容器51の内壁に固定されている。整流板55は、配管54aが接続された位置よりは下方の位置であって、載置台22の載置面22aを覆うように設けられている。
整流板55は、プラズマにより生成されたプラズマ生成物を含んだガスの流れを整流し、被処理物Wの処理面Wa上におけるプラズマ生成物の量が略均一となるようにするためのものである。
また、処理容器51の内壁面、整流板55の表面は、中性活性種と反応しにくい材料(例えば、フッ素樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン)やアルミナ等のセラミック材料など)で覆われている。
整流板55と載置台22の載置面22aとの間の領域が、処理が行われる処理空間となる。
次に、プラズマ処理装置120の作用について例示する。
まず、図示しない搬入搬出装置などにより被処理物Wが処理容器51内に搬入される。搬入された被処理物Wは載置台22の載置面22aに載置される。載置面22aに載置された被処理物Wは、静電チャックなどの図示しない保持部により保持される。なお、載置面22aの周縁に被処理物Wの周端を支持する図示しない支持部が設けられている場合には、図示しない支持部により被処理物Wの周端が支持されることで、載置面22aに載置された被処理物Wが保持される。
【0100】
次に、処理容器51内が排気部53bにより所定圧力まで減圧される。この際、圧力制御器53aにより処理容器51内の圧力が調整される。
【0101】
次に、ガス供給部54から所定量のガスGが、配管54aを介して処理容器51内のプラズマを発生させる領域Pに供給される。
ここで、ガスGとしては、例えば、CF、O、Heやこれらの混合ガスを例示することができるが、これらに限定されるわけではなく被処理物Wやプロセス条件に合わせて適宜変更することができる。
【0102】
一方、マイクロ波発生部4から導波部43にマイクロ波Mが放射される。導波部43に放射されたマイクロ波Mは、共振部42の環状部42aに導入される。環状部42aに導入されたマイクロ波Mは、強電界発生部42bにおいて共振される。
強電界発生部42bにおいて共振したマイクロ波Mは、放射部42cを介して透過窓52に導入される。
この際、制御部6により移動部5bを制御することで、放射領域200において極めて強い電界強度を繰り返し発生させる。
【0103】
すなわち、前述したように、マイクロ波Mがマイクロ波発生部4から放射され、マイクロ波Mが強電界発生部42bに導入されている際に、遮蔽部5aにより放射部42cの開口率を変化させ、瞬間的に極めて強い電界強度を放射領域200において発生させる。そして、この極めて強い電界強度の発生を繰り返すことでより強い電界強度を実効的に発生させる。このようにすれば、プラズマ発生の容易化や安定化を図ることができる。
なお、強電界発生部42bの内部空間には絶縁部49が設けられているので、異常放電を抑制することができる。
【0104】
透過窓52に導入されたマイクロ波Mは、透過窓52の表面を伝搬して、処理容器51内に放射される。このようにして処理容器51内に放射されたマイクロ波Mのエネルギーにより、プラズマが発生する。そして、発生したプラズマ中の電子密度が、透過窓52を介して供給されるマイクロ波Mを遮蔽できる密度(カットオフ密度)以上になると、マイクロ波Mは透過窓52の下面から処理容器51内の空間に向けて一定距離(スキンデプス)だけ入るまでの間に反射されるようになる。そのため、このマイクロ波Mの反射面と放射部42cの下面との間にはマイクロ波Mの定在波が形成されることになる。その結果、マイクロ波Mの反射面がプラズマ励起面となって、このプラズマ励起面で安定的にプラズマが励起されるようになる。
【0105】
このプラズマ励起面で励起された安定的なプラズマ中において、ガスGが励起、活性化されてプラズマ生成物(例えば、中性活性種、イオンや電子などの荷電粒子など)が生成される。生成されたプラズマ生成物は、整流板55で整流されて被処理物Wの処理面Waに到達し、所望の処理(例えば、エッチング処理やアッシング処理など)が行われる。
【0106】
この場合、プラズマ生成物が整流板55を通過する際に、イオンや電子の一部が除去される。そのため、主に中性活性種による等方性処理(例えば、等方性エッチングなど)が行われることになる。なお、バイアス電圧を付加してイオンが整流板55を通過できるようにすることで、異方性処理(例えば、異方性エッチングなど)を行うようにすることもできる。
【0107】
次に、被処理物Wを図示しない搬入搬出装置などにより搬出する。その後、必要に応じて前述した動作を繰り返すことで被処理物Wの処理を連続的に行うことができる。
本実施の形態によれば、放射領域200において極めて強い電界強度を発生させることができる。そのため、プラズマ発生の安定化や効率化などの向上を図ることができる。
【0108】
なお、前述した各実施の形態においては、放射制御部5の一例として、スロットや孔などの開口部(放射部)の開口率を機械的に変化させる遮蔽部5a、移動部5bを有したものを例示したがこれに限定されるわけではない。例えば、共振部からのマイクロ波の放射を電気的に制御する要素を有したものとすることもできる。その様な要素としては、例えば、PINダイオードなどの電子デバイスを例示することができる。
共振部からのマイクロ波の放射を電気的に制御する要素を設ける場合には、遮蔽部5a、移動部5bを設ける必要はない。また、この様な場合には、放射制御部は開口部の開口率を変化させるものではなく、スロットや孔などの開口部(放射部)におけるマイクロ波の透過率を変化させるための電気的な制御を行うものとすることができる。
【0109】
[第6の実施形態]
次に、本実施の形態に係るプラズマ発生方法について例示する。
本実施の形態に係るプラズマ発生方法は、マイクロ波を発生させる工程と、マイクロ波を共振させる工程と、プラズマを発生させる領域Pへ共振させたマイクロ波を放射する工程と、を備えている。そして、共振させたマイクロ波を放射する工程において、マイクロ波の放射を抑制してマイクロ波エネルギーを蓄積し、蓄積されたマイクロ波エネルギーを瞬間的に放出することで電界強度を強めるようにしている。
【0110】
また、共振させたマイクロ波を放射する工程において、マイクロ波を放射する開口部の開口率を変化させることで、マイクロ波エネルギーの蓄積と、蓄積されたマイクロ波エネルギーの放出と、を実行するようにすることができる。
また、共振させたマイクロ波を放射する工程において、PINダイオードなどの電子デバイスを用いて、マイクロ波エネルギーの蓄積と、蓄積されたマイクロ波エネルギーの放出と、を実行するようにすることができる。
【0111】
また、マイクロ波を発生させる工程において、パルス状の前記マイクロ波を発生させ、
マイクロ波を共振させる工程においてパルス状のマイクロ波を共振させ、共振させたマイクロ波を放射する工程においてパルス状のマイクロ波を共振させている際にマイクロ波エネルギーの蓄積と、蓄積されたマイクロ波エネルギーの放出と、を実行するようにすることができる。
なお、各工程の内容の詳細は、前述したプラズマ発生装置やプラズマ処理装置などにおいて例示をしたものと同様とすることができるので説明は省略する。
【0112】
[第7の実施形態]
次に、本実施の形態に係るプラズマ処理方法について例示する。
本実施の形態に係るプラズマ処理方法は、プラズマを発生させる領域Pにガスを供給する工程と、前述したプラズマ発生方法により、プラズマを発生させる領域Pにマイクロ波を放射してプラズマを発生させる工程と、を備えている。
この場合、例えば、いわゆる大気圧プラズマ処理などの場合には、プラズマを発生させる領域Pは、ガスを流通させる流路に設けられるようにすることができる。
また、例えば、減圧環境下におけるプラズマ処理などの場合には、プラズマを発生させる領域Pは、大気圧よりも減圧された雰囲気中に設けられるようにすることができる。
【0113】
そして、例えば、いわゆる液中プラズマ処理などの場合には、液体に気泡を形成するまたは気泡を形成しやすくする工程と、プラズマを発生させる領域Pに気泡が形成された液体を供給する工程と、前述したプラズマ発生方法により、プラズマを発生させる領域Pにマイクロ波を放射してプラズマを発生させる工程と、を備えたものとすることができる。
この場合、液体に気泡を形成する工程において、プラズマを発生させる領域Pに供給される液体の流速を上昇させることで液体の圧力を減圧させて気泡を形成するようにすることができる。
なお、各工程の内容の詳細は、前述したプラズマ発生装置やプラズマ処理装置などにおいて例示をしたものと同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。
【0114】
以上、実施の形態について例示をした。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。
前述の実施の形態に関して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除若しくは設計変更を行ったもの、または、工程の追加、省略若しくは条件変更を行ったものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
例えば、前述した各プラズマ処理装置、各プラズマ発生装置などに設けられた各要素の形状、寸法、材料、配置、数などは、例示をしたものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0115】
1 プラズマ発生装置、2 共振部、2a 強電界発生部、2b 放射部、3 導波部、4 マイクロ波発生部、5 放射制御部、5a 遮蔽部、5b 移動部、6 制御部、7 プラズマ発生部、9 絶縁部、11 プラズマ発生装置、12 共振部、12a 強電界発生部、12b 放射部、13 導波部、13a 外部導体、13b 誘電体部、13c 内部導体、14 マイクロ波発生部、16 制御部、21 プラズマ発生装置、22 載置台、22a 載置面、23 処理部、31 プラズマ発生装置、32 共振部、32a 強電界発生部、32b 放射部、33 処理部、37 プラズマ処理部、37a 流入部、37b 減圧部、37c 吐出口、38 液体供給部、39 絶縁部、41 プラズマ発生装置、42 共振部、42a 環状部、42b 強電界発生部、43 導波部、49 絶縁部、50 処理部、51 処理容器、52 透過窓、53 減圧部、54 ガス供給部、100 プラズマ処理装置、110 プラズマ処理装置、120 プラズマ処理装置、200 放射領域、B 気泡、G ガス、L 液体、W 被処理物、Wa 処理面、P プラズマを発生させる領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマを発生させる領域にマイクロ波を放射して前記プラズマを発生させるプラズマ発生装置であって、
マイクロ波を発生させるマイクロ波発生部と、
前記マイクロ波を共振させる共振部と、
前記共振部から前記プラズマを発生させる領域への前記マイクロ波の放射を制御する放射制御部と、
を備え、
前記放射制御部は、前記マイクロ波の放射を抑制してマイクロ波エネルギーを前記共振部に蓄積し、前記蓄積されたマイクロ波エネルギーを放出することで電界強度を強めることを特徴とするプラズマ発生装置。
【請求項2】
前記共振部は、前記マイクロ波を放射させる開口部を有し、
前記放射制御部は、前記開口部の開口率を変化させることを特徴とする請求項1記載のプラズマ発生装置。
【請求項3】
前記放射制御部は、前記開口部における前記マイクロ波の透過率を電気的に制御する電子デバイスを有したことを特徴とする請求項1記載のプラズマ発生装置。
【請求項4】
前記マイクロ波発生部と、前記放射制御部と、を制御する制御部をさらに備え、
前記制御部は、前記マイクロ波発生部を制御することでパルス状の前記マイクロ波を発生させ、前記放射制御部を制御することで前記パルス状のマイクロ波が前記共振部に導入されている際に前記共振部からの前記マイクロ波の放射を抑制してマイクロ波エネルギーを前記共振部に蓄積し、前記蓄積されたマイクロ波エネルギーを放出することで電界強度を強めることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のプラズマ発生装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載のプラズマ発生装置と、
内部にプラズマを発生させる領域を有する処理容器と、
前記処理容器の内部にガスを供給するガス供給部と、
被処理物を載置する載置台と、
を備えたことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記処理容器は、前記供給されたガスを流通させる流路を有し、
前記プラズマを発生させる領域は、前記流路に設けられたことを特徴とする請求項5記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記処理容器の内部を所定の圧力まで減圧する減圧部をさらに備え、
前記処理容器は、大気圧よりも減圧された雰囲気を維持し、
前記載置台は、前記処理容器の内部に設けられたことを特徴とする請求項5記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれか1つに記載のプラズマ発生装置と、
内部にプラズマを発生させる領域を有する処理容器と、
前記処理容器の内部に液体を供給する液体供給部と、
前記処理容器の内部に供給される液体に気泡を形成する、または形成しやすくする気泡形成部と、
を備えたことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記気泡形成部は、前記処理容器の内部に供給された液体の流速を上昇させることで前記液体の圧力を減圧させて前記気泡を形成すること、を特徴とする請求項8記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
プラズマを発生させる領域にマイクロ波を放射して前記プラズマを発生させるプラズマ発生方法であって、
マイクロ波を発生させる工程と、
前記マイクロ波を共振させる工程と、
前記プラズマを発生させる領域へ前記共振させたマイクロ波を放射する工程と、
を備え、
前記共振させたマイクロ波を放射する工程において、前記マイクロ波の放射を抑制してマイクロ波エネルギーを蓄積し、前記蓄積されたマイクロ波エネルギーを放出することで電界強度を強めること、を特徴とするプラズマ発生方法。
【請求項11】
前記共振させたマイクロ波を放射する工程において、前記マイクロ波を放射する開口部の開口率を変化させることで、前記マイクロ波エネルギーの蓄積と、前記蓄積されたマイクロ波エネルギーの放出と、を実行することを特徴とする請求項10記載のプラズマ発生方法。
【請求項12】
前記共振させたマイクロ波を放射する工程において、前記開口部における前記マイクロ波の透過率を電気的に制御する電子デバイスを用いて、前記マイクロ波エネルギーの蓄積と、前記蓄積されたマイクロ波エネルギーの放出と、を実行することを特徴とする請求項10記載のプラズマ発生方法。
【請求項13】
前記マイクロ波を発生させる工程において、パルス状の前記マイクロ波を発生させ、
前記マイクロ波を共振させる工程において、前記パルス状のマイクロ波を共振させ、
前記共振させたマイクロ波を放射する工程において、前記パルス状のマイクロ波を共振させている際に前記マイクロ波エネルギーの蓄積と、前記蓄積されたマイクロ波エネルギーの放出と、を実行することを特徴とする請求項10〜12のいずれか1つに記載のプラズマ発生方法。
【請求項14】
プラズマを発生させる領域にガスを供給する工程と、
請求項10〜13のいずれか1つに記載のプラズマ発生方法により、前記プラズマを発生させる領域にマイクロ波を放射して前記プラズマを発生させる工程と、
を備えたことを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項15】
前記プラズマを発生させる領域は、前記ガスを流通させる流路に設けられたことを特徴とする請求項14記載のプラズマ処理方法。
【請求項16】
前記プラズマを発生させる領域は、大気圧よりも減圧された雰囲気中に設けられたことを特徴とする請求項14記載のプラズマ処理方法。
【請求項17】
液体に気泡を形成する工程と、
プラズマを発生させる領域に前記気泡が形成された液体を供給する工程と、
請求項10〜13のいずれか1つに記載のプラズマ発生方法により、前記プラズマを発生させる領域にマイクロ波を放射して前記プラズマを発生させる工程と、
を備えたことを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項18】
前記液体に気泡を形成する工程において、前記プラズマを発生させる領域に供給される前記液体の流速を上昇させることで前記液体の圧力を減圧させて前記気泡を形成すること、を特徴とする請求項17記載のプラズマ処理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−142172(P2012−142172A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−293660(P2010−293660)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【出願人】(500433225)学校法人中部大学 (105)
【Fターム(参考)】