説明

プラズマ発生装置

【課題】任意の場所で確実にかつ簡便にプラズマを発生させる装置を提供する。
【解決手段】絶縁体または誘電体により被覆されたワイヤ状の導電性部材からなる第1の電極30とワイヤ状の導電性部材からなる第2の電極60とを、板20の上に略平行に配置する。第1の電極30に電源40によって交流電圧またはパルス電圧を印加する。すると、第1の電極30の周りにプラズマが発生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ発生装置に関し、特に2つの電極を備え、それらの電極には互いに略平行に配置された部分が存するプラズマ発生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より洗浄やエッチング、成膜等を行うのにプラズマを利用して行う方法が知られている。
【0003】
特許文献1には、ヘリウムガスを使用することなく大気中で安定した放電を行うべく、反応ガスを供給する反応管と、反応管を挟んで対向配置され反応ガスに作用する第1,第2の電極とを備え、第1,第2の電極に高周波電力を供給して反応ガスを励起し、発生させたプラズマで被処理基板を処理するプラズマ処理装置が開示されている。
【0004】
特許文献2には、処理の際のガス雰囲気を問わず、大気圧近傍の圧力下で均一な放電プラズマを発生させるため、対向電極の少なくとも一方の対向面に固体誘電体を設置し、対向電極間にパルス化された電界を印加する技術が開示されている。
【0005】
特許文献1に開示されている技術は反応管中を流れる反応ガスをプラズマにして、そのプラズマを反応管から被処理物に噴射させるものであり、特許文献2に開示されている技術は、第2電極板上に載せられた被処理物の表面処理を行うものであり、いずれも比較的大きな装置を前提としている表面処理の技術である。
【0006】
一方、プラズマを滅菌や殺菌に用いる研究も進められている。従来の医療用滅菌方法として、高圧蒸気滅菌、酸化エチレンガス滅菌、放射線滅菌とともに過酸化水素ガスプラズマ滅菌が実際に行われているが、これらは高温であったり、用いるガス(酸化エチレンガス)が危険なものであったり、大気下での使用ができないものであったり、脱気に1週間以上かかったりするなどの問題があった。このような問題を解決するとともに、現在では実用的な滅菌方法がほとんど見当たらない細管内の滅菌を行うために、特許文献3〜5には細管内用のプラズマ滅菌装置が開示されている。
【特許文献1】特開2002−184759号公報
【特許文献2】特開平10−154598号公報
【特許文献3】特開2003−135571号公報
【特許文献4】特開2003−210556号公報
【特許文献5】特開2005−46264号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1,2に記載されている技術は比較的大きな装置を前提としているので、任意の場所、特に装置の入らない狭い場所や装置から離れた場所にプラズマを発生させることは困難である。
【0008】
特許文献3〜5に記載されている技術は細管内用のプラズマ滅菌装置の技術であり、任意の場所でのプラズマ発生に用いることは非常に困難である。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、任意の場所で確実にかつ簡便にプラズマを発生させる装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のプラズマ発生装置は、絶縁体または誘電体により被覆されたワイヤ状の導電性部材を備えた第1の電極と、ワイヤ状の導電性部材からなる第2の電極と、前記第1の電極に交流電圧またはパルス電圧を印加する電源とを備え、前記第1の電極は、前記第2の電極に対して略平行に配置された部分を有しており、前記第1の電極のうち、少なくとも前記第2の電極に対して前記略平行に配置された部分がプラズマを発生させる構成を有している。このような構成を有していると、誘電体バリア放電などの放電によって、第1の電極の絶縁体または誘電体からなる被覆の表面にプラズマが発生する。プラズマを発生させたい場所に2つの電極を配置すればその場所でプラズマが発生する。また略平行に配置されているというのは、数学的に厳密な意味での平行な配置ではなくて、この略平行な配置の全域に亘ってプラズマが発生する程度の平行度合いを意味している。
【0011】
ある好適な実施形態において、前記第2の電極は電気的にフローティング状態である。第2の電極が電気的にフローティング状態であるというのは、第2の電極が電源に接続しておらず、接地もしていなくて、第1の電極と電気的なつながりが無いことである。
【0012】
ある好適な実施形態において、前記電源は、前記第1及び第2の電極の間に交流電圧またはパルス電圧を印加する。
【0013】
ある好適な実施形態において、前記第2の電極は接地されている。
【0014】
前記第2の電極は絶縁体または誘電体により被覆されていることが好ましい。
【0015】
前記第1の電極と第2の電極との間の距離は、略平行に配置された前記部分において最も小さくなっていることが好ましい。
【0016】
ある好適な実施形態において、前記第1の電極と前記第2の電極とは、該電極の長軸方向に分布する複数の接続部によって連結されている。
【0017】
ある好適な実施形態において、前記第1の電極のうち、少なくとも前記第2の電極に対して略平行に配置された前記部分にガスを吹き付けるガス吹きつけ部材をさらに備えている。
【0018】
ある好適な実施形態において、前記第1の電極と第2の電極とが略平行に配置された前記部分を、略平行な配置を保持しつつ移動させる電極移動部材をさらに備えている。
【発明の効果】
【0019】
絶縁体または誘電体からなる被覆を有するワイヤ状の第1の電極にワイヤ状の第2の電極を略平行に配置させてプラズマを発生させるので、装置自体が簡単なものであり、任意の場所でプラズマを発生させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の図面においては、説明の簡潔化のため、実質的に同一の機能を有する構成要素を同一の参照符号で示して説明を省略する場合がある。
【0021】
(実施形態1)
実施形態1のプラズマ発生装置を図1に示す。このプラズマ発生装置は、非処理物である板20をプラズマ処理する装置であり、板20の上方に配置されている第1の電極30および第2の電極60と、第1の電極30に交流電圧あるいはパルス電圧を印加する電源40とを備えている。電源40は接地線50を介して接地されている。第1の電極30に交流電圧あるいはパルス電圧を印加すると、第1の電極30と第2の電極60とが略平行に配置されている部分10における第1の電極30の周りにプラズマが発生する。
【0022】
第1の電極30は、図2に示すようにワイヤ状の導電性部材31の表面に絶縁体または誘電体からなる被覆32が施されている構成を有している。導電性部材31は金属やカーボン、有機導電性材料など導電性を有していればどのようなものであっても構わない。本実施形態では銅線としている。
【0023】
被覆32を構成する絶縁体は、PFAやPTFE、FEPなどのフッ素樹脂、ポリイミド樹脂などの電気絶縁性のポリマー、あるいはダイヤモンドライクカーボン(DLC)のような電気絶縁性の無機物などを挙げることができる。また、被覆32を構成する誘電体としては、チタン酸バリウムなどの誘電率が高い物質を挙げることができる。本実施形態ではフッ素樹脂であるテフロン(登録商標)により被覆32を形成した。
【0024】
第2の電極60は、ワイヤ状の導電性部材からなり、その表面は絶縁体に被覆されておらず導電性部材が剥き出しになっている。第2の電極60を構成する導電性部材は、金属やカーボン、有機導電性材料など導電性を有していればどのようなものであっても構わない。本実施形態では銅線としている。また、本実施形態では、第2の電極60は電源40に接続されておらず、接地もされていないフローティング状態である。
【0025】
本実施形態では、板20の上方1mmの位置に第1の電極30と第2の電極60とが配置されている。そして、板20の上方においては、第1の電極30と第2の電極60とは略平行な配置を保って、板20の全面を覆うようにジグザグ配置となっている。略平行な配置というのは数学的な厳密な意味での平行ではなく、両電極30,60間の距離が多少変化しても、略平行な配置の部分10における第1の電極30の全長に亘ってプラズマが発生するような位置関係であり、このような観点から両電極30,60の配置関係を表しているものである。具体的には、両電極30,60が近づく方向においては、被覆32があるため両電極30,60が接触しても短絡は生じないため両電極30,60が被覆32を介して接触しても構わない。また両電極30,60が離れる方向においては、両電極30,60間の距離の平均値の+200%以内であることが好ましい。なお、両電極30,60の略平行配置された部分全体に亘って電極間距離が均一であればあるほどより均一な強度のプラズマが発生するため好ましい。第1の電極30と第2の電極60との間は1mm離れている。このように第1の電極30と第2の電極60とが配置されることにより、板20の全面がほぼ均一な強度のプラズマにより覆われることになる。
【0026】
板20はプラズマ処理を行いたいものであればどのようなものでもよい。プラズマ処理としては、プラズマによる滅菌処理やエッチングなどを挙げることができる。
【0027】
ここで仮定として、第1の電極30が被覆32を有していない場合を考えると、第1の電極30の導電性部材31の特定部位に放電が集中してしまい、プラズマ発生箇所が当該特定部位の周辺のみとなって第1の電極30と第2の電極60とが略平行に配置されている部分10の全体に亘ってプラズマが生じなかったり、板20が放電により破壊されてしまう可能性が非常に高い。
【0028】
また、第1の電極30に交流電圧あるいはパルス電圧を印加して第1の電極30の周囲にプラズマを発生させると第1の電極30の温度が上がるため、導電性部材31および被覆32は耐熱性が高いもの、具体的には50℃で1時間保持したときに劣化しないものが好ましい。耐熱性の点からは、導電性部材31は金属やカーボン等が好ましく、被覆32はフッ素樹脂やポリイミド樹脂、DLC、チタン酸バリウムなどが好ましい。第2の電極60に関しても導電性部材の耐熱性は高い方が好ましいので、金属やカーボン等であることが好ましい。
【0029】
電源40は交流電圧あるいはパルス電圧を印加するものであるが、第1の電極30の形状や材質、長さなど、第1の電極30と第2の電極60との距離、第1の電極30と板20との距離、第1の電極30の周囲のガス種や温度等々でプラズマが発生するかしないかということや、プラズマが発生する場合はプラズマの強度が大きく影響されるため、また、プラズマの発生にとって重要なのは印加電圧ではなく第1の電極30の周囲の電界強度であるため、さらに、板20の処理のために必要なプラズマ強度は処理の種類や板20の材質や表面状態等に応じて変わるため、交流電圧あるいはパルス電圧の周波数や電圧の大きさは特に限定されない。
【0030】
パルス電圧は図3に示すように、極性の変わる(+から−、または−から+)パルス、あるいは0Vから立ち上がるパルスが好ましく、パルス電圧が時間的に連続して供給されるとプラズマが連続して発生するので、好ましい。このように連続して供給されるパルス電圧は、方形波の交流電圧とも言える。
【0031】
なお、電源40の周波数や電圧は特に限定されないと上で述べたが、電源装置の特性から見ると、周波数は0.1Hz〜100MHzが電源装置として実用上好ましく、プラズマの発生しやすさを考慮すると50Hz〜1MHzが好ましい。電圧は、1V〜500kVがプラズマが発生し易いので好ましく、装置の扱いやすさの点で1V〜100kVが好ましい。また、電源40により交流電圧またはパルス電圧が第1の電極30に印加された際の第1の電極30近辺の電界強度は、10V/m以上1010V/m以下が好ましい。
【0032】
次に本実施形態のプラズマ発生装置を用いたプラズマを発生させる方法を説明する。
【0033】
まず、例えばプラスチックの板20の上に略平行かつジグザグに配置した第1の電極30および第2の電極60を、板20と1mmの隙間をあけて置く。そして、第1の電極30を電源40に接続する。第2の電極60はフローティング状態としておく。
【0034】
それから、第1の電極30に交流電圧またはパルス電圧を印加してプラズマを発生させる。略平行な配置の部分10においては、第1の電極30と第2の電極60との距離は第1の電極30の長さ方向においてどこでもほぼ一定になるので、発生する電界強度は第1の電極30の長さ方向においてほぼ一定になる。従って、第1の電極30の長さ方向において連続してほぼ一定のプラズマが発生する。なお、プラズマの発生度合いは第1の電極30周囲の発光度合いや、第1の電極30の長さ方向における単位長さあたりの放電電流によって判断することができる。
【0035】
これまで説明したように、本実施形態では絶縁体または誘電体により被覆された導電性部材31を備えた第1の電極30を第2の電極60に対して略平行に配置し、この第1の電極30に交流電圧またはパルス電圧を印加させてプラズマを発生させるので、第1の電極30および第2の電極60を平行に配置することで、任意の場所でプラズマを簡単に発生させることが可能である。例えば第1の電極30として導電性部材31に0.08mmの銅線を用い、被覆32として厚み0.06mmのテフロン(登録商標)を用い、第2の電極60として導電性部材に0.08mmの銅線を用いれば、内部空間の径が0.3mmよりも大きい内部が空洞の被処理物であればこの第1の電極30と第2の電極60とをセットで挿入することが可能である。
【0036】
また、同じようにプラズマ処理をしたい場所が狭小なときにも所望の部分にのみプラズマ処理をすることができる。また、本実施形態では第1の電極30の周囲全体にプラズマが発生するので、例えば空洞内であれば内部の全面を一度にプラズマ処理することができ、短時間でプラズマ処理を行うことができる。空洞内に限らず、どのようなところでもどのような形状の被処理物に対しても容易にプラズマ処理を行うことができる。また、本実施形態のプラズマ発生装置は非常に簡単な構造であり、製造コストを低くできる。そして、プラズマ発生も容易にかつ非熟練者でも行える。
【0037】
本実施形態のプラズマ発生装置において、第1の電極30の長さ方向において連続してほぼ均一にプラズマを発生させるためには、第1の電極30の先端の被覆32を、先端以外の部分よりも厚くする又は絶縁性や誘電性が先端以外の部分よりも高い素材とすることが好ましい。
【0038】
また、第1の電極30のうち先端以外の部分においても、ある一部が他の部分よりもプラズマ発生強度が大きかったり小さかったりしても、プラズマ処理の目的によっては何ら問題とならない場合があるので、第1の電極30の長さ方向においてプラズマの発生が均一でなくても構わない。つまり、第1の電極30の長さ方向においてプラズマの発生が不連続であったり、プラズマ発生強度が不均一であっても構わない。
【0039】
(実施形態2)
実施形態2に係るプラズマ発生装置は、図4に示すように、第1の電極34、第2の電極70、電源40に加えてガス吹きつけ部材と電極移動部材90とを備えたものである。2つの電極34,70は略平行に配置された部分11が、電極間距離が最も小さく、少なくともこの部分でプラズマが発生する。
【0040】
本実施形態においては、第1の電極34は、実施形態1の第1の電極30と同じ構造を有している。一方第2の電極70は、実施形態1とは異なり、第1の電極34と同様にワイヤ状の導電性部材に絶縁体又は誘電体の被覆がされている構造を有している。そして、実施形態1とは異なり、第2の電極70も電源40に接続されており、第1の電極34と第2の電極70との間に交流電圧またはパルス電圧が印加される。電源40は実施形態1と同じである。
【0041】
本実施形態では、第1の電極34と第2の電極70とを略平行に配置した部分11を被処理物である板20の上に置き、略平行に配置した部分11に所定のガスを吹きかける構成を有している。両電極34,70を略平行に配置した部分11の近傍にノズル82が置かれ、そこからガスが吹き付けられる。ノズル82はガス供給部80とフレキシブルなチューブで繋がれており、これらがガス吹きつけ部材を構成している。そして、電極移動部材90が第1の電極34および第2の電極70を、略平行の配置を保ったまま板20の上を移動させる。このように両電極34,70を略平行に配置した部分が板20の上を移動していくので、板20の全面を容易にプラズマ処理できる。
【0042】
ガス供給部80としては、例えば圧縮ガス容器に減圧弁を取り付けた装置を例としてあげることができる。所定のガスというのは、種々のガスの中からプラズマ発生の目的によって選択されたガスである。例えばArやHeを吹き付けると大気下よりもプラズマが発生しやすくなる。また、酸素を吹き付けるとオゾンや酸素ラジカルが発生する。板20の表面に例えば特定の有機物分子を結合させたい場合は、当該有機物分子を含むガスを導入すればよい。また、板20の表面に樹脂コーティングしたい場合は、モノマーを含むガスを導入すればよい。
【0043】
次に本実施形態のプラズマ発生装置を用いたプラズマを発生させる方法について説明する。
【0044】
まず、第1の電極34および第2の電極70を略平行に並べて電極移動部材90に固定する。両電極34,70間距離は2mmに設定する。そして、両電極34,70の略平行に配置された部分11が板20上に載るように電極移動部材90をセットする。
【0045】
その次にガス供給部80からノズル82を通して所定のガスを両電極34,70の略平行に配置された部分11に吹きつけるとともに、第1の電極30と第2の電極20との間に交流電圧またはパルス電圧を印加してプラズマを発生させる。
【0046】
次に電極移動部材90により両電極34,70の略平行に配置された部分11を、板20の上を移動させる。この移動に伴って、両電極34,70の略平行に配置された部分11に常にガスが吹き付けられるように、ノズル82も移動させる。両電極34,70の移動速度およびガスの吹きつけ量はプラズマ処理の目的やガスの種類、板20の構成材料などによって適宜最適な速度と量を選択する。
【0047】
それから電圧印加を止めてプラズマの発生を終了させた後に、プラズマ発生中に導入していたガスと同種のあるいは異種のガスをノズル82から板20に吹き付けて、板20の表面近傍に残っているプラズマ発生時導入ガスあるいはプラズマにより化学変化したガスや活性種を全て除去する。なお、ガス・活性種除去が不要な場合にはこの工程を行う必要はない。
【0048】
本実施形態では、簡単な装置によって任意の場所にプラズマを発生させることができ、また、任意のガスを被処理物の表面に導入できるので、プラズマ処理の目的に応じてより有効な処理を行うことができる。例えば、オゾンや他の活性種による滅菌処理を短時間且つ低い電圧で行ったり、被処理物表面のエッチング処理を短時間で且つ全面的に均一に行ったり、被処理物表面に活性基を化学結合させたり、コーティングを行ったり等を行うことができる。また、プラズマ処理後に被処理物表面に残っている活性種や有害気体などを別のガスを流入させることにより速やかに除去できるので、有害物質が残っている心配のないプラズマ処理を行うことができる。さらに、電極移動部材90により、簡単な構造でかつ小型な装置を使って広い面積のプラズマ処理を短時間で効率的に行うことができる。
【0049】
電極移動部材90は、板20の表面を電極34,70の延びる方向に対して垂直に電極34,70を移動させるものに限定されず、電極34,70の延びる方向に電極34,70を移動させるものであってもよいし、移動方向を任意に調節できるものであってもよい。このような電極移動部材を用いると、種々の装置の内部や溝の中など、狭くて電極を挿入しにくい場所であっても容易に電極を入れることができ、その場所でプラズマ処理を行うことができる。
【0050】
本実施形態において、略平行に配置された部分11の第1の電極34の全長に亘ってできるだけ均一にプラズマを発生させるには、第2の電極70の先端の被覆を先端以外の部分よりも厚くする又は絶縁性や誘電性が他の部分よりも高い素材とすることが好ましい。
【0051】
(実施形態3)
実施形態3に係るプラズマ発生装置は、図5に示すように、ガス吹きつけ部材のノズル84出口の部分に第1の電極36及び第2の電極75を略平行に配置して、第1の電極36で発生したプラズマを、ノズル84から吹き付けるガスによって所定の空間に拡散させるものである。
【0052】
本実施形態においては、第1の電極36は、実施形態1および実施形態2の第1の電極30,34と同じ構造を有している。一方第2の電極75は、実施形態2の第2の電極70と同じ構造を有している。そして、実施形態2とは異なり、第2の電極75は電源40に接続されておらず、接地されている。電源40からは第1の電極36に交流電圧またはパルス電圧が印加される。電源40は実施形態1と同じである。また、ガス吹きつけ部材は、ノズル84の吹き出し出口のところに2つの電極36,75が配置されていること以外は実施形態2と同じである。吹き出すガスに関しても実施形態2と同様、プラズマ処理の目的に応じてその種類や流量などが適宜選択される。
【0053】
本実施形態では、まずノズル84の吹き出し出口のところに第1の電極36と第2の電極75とを互いに略平行になるように配置する。つまりノズル84出口に両電極36,75が略平行に配置された部分12が存在することとなる。ここでは、両電極36,75の間の距離は2mmそした。次に第1の電極36と電源40とを接続し、第2の電極75を接地する。
【0054】
それから、ノズル84を所望の位置におき、所望の方向に向ける。所望の位置や方向とは、例えば塗装工程において有機溶剤が洩れ出す乾燥炉の出入り口とその出入りの方向などである。次に第1の電極36に電源40によって交流電圧またはパルス電圧を印加する。この印加により第1の電極36の周囲にプラズマが発生する。それと同時に、あるいは電圧印加の前から、または後にガス供給部80から所定のガスを供給してノズル84からガスを吹き出させる。このようにプラズマを発生させ吹き出させることにより、例えば有害物質の分解を行うことができ、他にも滅菌などを行うことができる。
【0055】
本実施形態ではノズル84出口に略平行に配置された2つの電極36,75を利用してプラズマの発生を行わせ、そのプラズマをガスによって吹き出すので、装置自体の構造が簡単なものになり、容易にプラズマを発生させ吹き出させることができる。なお、空間に吹き出させる替わりに被処理物に対してプラズマを吹き出しても構わない。
【0056】
(実施形態4)
実施形態4に係るプラズマ発生装置は、図6に示すように、接続部100,100,…が存していること以外は実施形態3と同じであるので、実施形態3と異なっている部分のみを説明する。
【0057】
本実施形態においては第1の電極36と第2の電極75とは複数の接続部100,100,…によって連結されている。接続部100,100,…は、絶縁性部材からなっており、両方の電極36,75が略平行な配置になるように両電極36,75の間を一定の距離を保って保持している。そして、両電極36,75の長軸方向にほぼ等間隔で並んでいる。接続部100,100,…により両電極36,75が連結されているので、両電極36,75が曲げられても電極間距離は変わらない。従ってプラズマが安定して発生する。なお、接続部100,100,…の形状やその数は、特に限定されない。
【0058】
(その他の実施形態)
上記の実施形態は本発明の例であり、本発明はこれらの例に限定されない。例えば、実施形態1において2つの電極30,60の配置はジグザグではなく、渦巻き状であっても構わないし、第2の電極60は複数本有ってもよい。
【0059】
第1の電極に発生する放電は、誘電体バリア放電やグロー放電、コロナ放電など特に限定されない。プラズマが発生すればどのような放電形態であっても構わない。
【0060】
実施形態1において、実施形態2のようにガス吹き出し部材を取り付けて、所定のガスを導入してプラズマ処理を行っても構わないし、電極移動部材90を取り付けても構わない。また、第2の電極60を電源40と接続させたり、接地させても構わない。さらに実施形態4のように接続部100,100,…を有していても構わない。
【0061】
実施形態2において、第2の電極70をフローティング状態にしたり、接地させても構わない。また、両電極34,70の略平行に配置された部分11の形状は、ジグザグ状や渦巻き状など、どのような形状であってもよい。また、実施形態4のように接続部100,100,…を有していても構わない。
【0062】
実施形態3又は4において、第2の電極75は接地せずフローティング状態としても構わないし、電源40に接続してもよい。また、電極移動部材90を取り付けても構わない。
【0063】
2つの電極の径や長さ、形状などは特に限定されない。
【0064】
プラズマにより行う処理は、特に限定されず、滅菌や有害物質の分解、被処理物表面の表面処理(粗化、コーティング、親水化など)など、どのようなものであっても構わない。
【0065】
第1の電極と第2の電極間の距離は、両者が平行に配置された部分において最小になり、それ以外の部分は平行配置部分の距離よりも大きいことが好ましい。
【0066】
プラズマ処理を行う被処理物は、板状に限定されない。種々の立体の表面や装置内部の表面などであっても構わない。
【0067】
第1の電極と第2の電極とが略平行に配置された部分において、両電極の間にプラズマ被処理物を置いてもよい。
【0068】
電極移動部材90はどのような構成であっても構わない。例えば、テレビカメラを備えており、外部からその映像をもとに移動方向や移動距離を調節できるものや、自走式のものなどを挙げることができる。
【0069】
第1の電極と第2の電極の略平行に配置された部分は、微視的に平行であれば構わないので、例えば第1の電極のまわりに第2の電極が螺旋状に巻き付いてほぼ等間隔を保っているいる状態であっても構わないし、DNAのように二重螺旋状であっても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0070】
以上説明したように、本発明に係るプラズマ発生装置およびプラズマ発生方法は、細管中で簡単にプラズマを発生させることができ、細管中の滅菌処理や、細管内壁の表面処理等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】実施形態1に係るプラズマ発生装置の模式的な斜視図である。
【図2】第1の電極の断面図である。
【図3】パルス電圧を示す図である。
【図4】実施形態2に係るプラズマ発生装置の模式的な斜視図である。
【図5】実施形態3に係るプラズマ発生装置の模式的な斜視図である。
【図6】実施形態4に係るプラズマ発生装置の模式的な斜視図である。
【符号の説明】
【0072】
10,11,12 略平行に配置された部分
20 板
30、34,36 第1の電極
31 導電性部材
32 被覆
40 電源
50 接地線
60,70,75 第2の電極
80 ガス供給部
82,84 ノズル
90 電極移動部材
100 接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁体または誘電体により被覆されたワイヤ状の導電性部材を備えた第1の電極と、
ワイヤ状の導電性部材からなる第2の電極と、
前記第1の電極に交流電圧またはパルス電圧を印加する電源と
を備え、
前記第1の電極は、前記第2の電極に対して略平行に配置された部分を有しており、
前記第1の電極のうち、少なくとも前記第2の電極に対して略平行に配置された前記部分がプラズマを発生させる、プラズマ発生装置。
【請求項2】
前記第2の電極は電気的にフローティング状態である、請求項1に記載のプラズマ発生装置。
【請求項3】
前記電源は、前記第1及び第2の電極の間に交流電圧またはパルス電圧を印加する、請求項1に記載のプラズマ発生装置。
【請求項4】
前記第2の電極は接地されている、請求項1に記載のプラズマ発生装置。
【請求項5】
前記第2の電極は絶縁体または誘電体により被覆されている、請求項1から4のいずれか一つに記載のプラズマ発生装置。
【請求項6】
前記第1の電極と第2の電極との間の距離は、略平行に配置された前記部分において最も小さくなっている、請求項1から5のいずれか一つに記載のプラズマ発生装置。
【請求項7】
前記第1の電極と前記第2の電極とは、該電極の長軸方向に分布する複数の接続部によって連結されている、請求項1から6のいずれか一つに記載のプラズマ発生装置。
【請求項8】
前記第1の電極のうち、少なくとも前記第2の電極に対して略平行に配置された前記部分にガスを吹き付けるガス吹きつけ部材をさらに備えた、請求項1から7のいずれか一つに記載のプラズマ発生装置。
【請求項9】
前記第1の電極と第2の電極とが略平行に配置された前記部分を、略平行な配置を保持しつつ移動させる電極移動部材をさらに備えている、請求項1から8のいずれか一つに記載のプラズマ発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−47372(P2008−47372A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−220400(P2006−220400)
【出願日】平成18年8月11日(2006.8.11)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【出願人】(391003668)トーヨーエイテック株式会社 (145)
【Fターム(参考)】