説明

プリエンファシス方法、光通信システム、および、制御装置

【課題】WDM方式光信号におけるASEを直接測定することなく測定した光SNRを用いたプリエンファシス方法、光通信システムおよび制御装置を提供する。
【解決手段】光伝送路の間に複数の光増幅手段を備え、この光伝送路に光信号を最初に入射する際に光信号の光レベルを調節するプリエンファシス方法を、複数の局のうち少なくとも2つの局に備えられた測定手段を用いて所定の物理量をそれぞれ求める第1ステップと、測定された所定の物理量に基づいて演算回路が複数の局のそれぞれについて複数の光信号のそれぞれに対する部分光SNRを求める第2ステップと、複数の光信号のそれぞれについて部分光SNRの逆数和を光信号が増幅される局が重複している区間に亘って求め、さらに逆数和の逆数である区間光SNRを求める第3ステップと、区間光SNRが互いに等しくなるように複数の光信号について光レベルを調整する第4ステップとで構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長分割多重方式光信号の光信号対雑音比を測定することにおいて、高密度に光信号を多重した波長分割多重方式光信号の光信号対雑音比を測定する光信号対雑音比測定方法およびこの測定方法を利用した光信号対雑音比測定装置に関する。さらに、この光信号対雑音比測定方法を利用したプリエンファシス方法、光通信システム、測定回路および制御装置に関する。
将来のマルチメディアネットワークの構築を目指し、超長距離でかつ大容量の光通信システムが要求されている。このため、光ファイバの広帯域・大容量性を有効利用できるなどの有利な点から波長分割多重(wavelength-division multiplexing、以下、「WDM」と略記する。)方式の研究開発が進められている。特に、近年では、さらなる大容量化の要求に応えるべく、波長多重される光信号の波長間隔を狭めて高密度化する傾向にある。このようなWDM方式光信号を伝送した場合においても、信号品質を維持するために、高密度に波長多重されたWDM方式光信号の光信号対雑音比(以下、「光SNR」と略記する。)を測定する方法が要求されている。
【背景技術】
【0002】
一般に、光信号を長距離伝送する場合では、光伝送路の伝送損失を補うため、光信号は、光送信局と光受信局との間で光増幅器を備える光中継局によって増幅される。光信号は、増幅される際に光増幅器で発生する自然放出光(amplified spontaneous emission、以下、「ASE」と略記する。)が重畳され、さらに、光増幅器で増幅される度にASEが累積的に重畳される。この累積的に重畳されるASEは、光信号にとって雑音であるため、所定の信号品質を維持するためには、光信号の光SNRを測定する必要が生じる。
【0003】
図20は、従来の光SNR測定方法を説明する図である。
図20は、WDM方式光信号が、いくつかの光増幅器によって増幅され、ASEが重畳された場合を示している。このWDM方式光信号は、チャネル1ないしチャネル4の4波の光信号が波長多重されている。そして、各光信号は、図20に示すように光信号の低光レベルの部分において互いに重ならないように、充分な波長間隔を空けて配置されている。以下、チャネルを「ch.」と略記する。
【0004】
このようなWDM方式光信号では、各ch.間のほぼ中間の波長(図20の×印)における光レベルは、ASEの光レベルとなる。このため、或るch.の光SNRは、このWDM方式光信号のスペクトルをスペクトラムアナライザによって測定し、その測定結果から、この或るch.が配置されている波長(図20の●印)の光レベルと、この或るch.とこれに隣接するch.が配置されている波長のほぼ中間の波長(図20の×印)の光レベルとの比を取ることによって測定することができる。
【0005】
また、一般に、光通信システムのレベルダイヤは、所定の波長における光について設計される。このような光通信システムにWDM方式光信号を伝送すると、WDM方式光信号は、光中継局内の光増幅器における非一様な利得波長特性および利得飽和特性のために、各ch.が相異なる利得で増幅されてしまう。さらに、光伝送路の非一様な損失波長特性のために、各ch.が相異なる損失で光パワーを失う。よって、所定の波長から離れた波長の光信号におけるレベルダイヤほど設計されたレベルダイヤから乖離してしまう。このため、低光パワーのch.に、光通信システムが要求する以上の誤り率(bit error rate)を生じる。
【0006】
そこで、プリエンファシスが、WDM方式光信号に施され、要求される誤り率より低くなるようにしている。
図21は、従来のプリエンファシスを行う光通信システムの構成を示す図である。
図21において、光送信局901内の光送信器911で生成されたWDM方式光信号は、光伝送路902の間に設けられた複数個の光中継局903で光伝送路902の損失や光中継局903の損失などを補償すべく増幅されて、光受信局904に伝送されて受信・処理される。光中継局903の損失は、局内の分散補償ファイバ(以下、「DC」と略記する。)などの各光部品によって生じる。
【0007】
WDM方式光信号は、この光送信局901から光伝送路902へ射出される際に、光送信局901内のプリエンファシス制御回路912によって、プリエンファシスが施される。
【0008】
プリエンファシス制御回路912は、光受信局904からの各ch.の光SNRに基づいて、光送信器911で生成された各ch.に対応する光信号の光レベルを調整することによって、WDM方式光信号にプリエンファシスを施す。そして、この各光信号の光SNRは、光受信局904内に備えられた光SNR測定回路922、例えば、スペクトラムアナライザによって測定され、回線931によって伝送される。
【0009】
ここで、プリエンファシス制御回路912は、例えば、次のようにして各光信号の光レベルを調整する。すなわち、
第1ステップとして、光受信局904における全ch.について光SNRの平均値を求める。
第2ステップとして、この平均値と光受信局904におけるch.1の光SNRとの差を求める。
【0010】
第3ステップとして、光送信局901は、この差を補償するだけの光レベルをch.1に加減して、ch.1の光レベルを調整する。
第4ステップとして、以上の第2ステップおよび第3ステップをWDM方式光信号の各ch.に対応する各光信号について行う。
このように光受信局904における各ch.の光SNRが互いに等しくなるように光送信局901において、各光信号の光レベルを調整すればよい。
【0011】
この各光信号の光レベルを調整することは、各光信号ごとにレベルダイヤが調整されることに相当する。このため、プリエンファシスを施すことによって、WDM方式光信号における各光信号の光SNRが最適化される。
2端局間(point-to-point)の光通信システムにおけるプリエンファシスについては、例えば、特許文献1、特許文献2および特許文献3に開示されている。
【0012】
さらに、近年では、2端局間でWDM方式光信号を送受信する光通信システムだけでなく、光伝送路の途中で設けられた局で、波長多重された光信号のうちのある特定な波長の光信号だけを選択的に通過させ、それを除く波長の光信号をその局で分岐したり、この局から別の光信号を挿入して他の局へ送信したりするADM(add-drop multiplexer)機能を持つ光通信システムの実現が要求されている。そして、このADM機能は、WDM方式光信号を光/電変換することなく光信号のままで分岐・挿入する光分岐・挿入装置(以下、「OADM」と略記する。)によって行う傾向にある。
【0013】
このOADMは、或るch.を分岐・挿入する際に、例えば、その分岐するch.を光フィルタで除去し、その後、挿入すべき光信号をそのch.に挿入する。この場合に、光フィルタは、分岐するch.の光パワーだけでなく、そのch.の波長を中心とする狭い範囲におけるASEも除去する。図22は、OADMでch.3を分岐・挿入したWDM方式光信号のスペクトルを示す図である。
【0014】
例えば、図20に示すような4波のWDM方式光信号からch.3を分岐・挿入する場合では、OADMは、ASEを含めてch.3の波長を中心とする狭い範囲の光を除去し、その後、挿入すべき光信号をch.3の波長に挿入する。このため、ch.3を分岐・挿入後のWDM方式光信号は、図22に示すようなスペクトルを示し、ch.3に隣接するch.との間におけるASEの光レベルは、急激に変化する。
さらに、分岐・挿入されなかった光信号に対するASEと分岐・挿入された光信号に対するASEとは、中継増幅される光増幅器の数が異なるため、ASEの光レベルが異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平06−069891号公報
【特許文献2】特開平09−261205号公報
【特許文献3】特開平11−103287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
ところで、WDM方式光信号は、近年のさらなる大容量化の要求により、波長多重された各光信号の波長間隔をより緊密にする高密度化の傾向にある。そして、光信号は、その高光レベルの部分においては波長幅が狭く、光レベルが低くなるにつれて徐々に波長幅が広くなり、特に、その低光レベルの部分においては広い波長幅を有しているのが普通である。このため、高密度化されたWDM方式光信号における各光信号は、図23に示すように、その各光信号の低光レベルの部分が相互に重なってしまう。この結果、光SNRを測定するために、各ch.のほぼ中央の波長における光レベルを測定したとしても、ASEに光信号の一部が重畳された光の光レベルを測定することとなるため、ASEの光レベルを測定できない。したがって、従来の方法では、光SNRを測定することができないという問題がある。
【0017】
さらに、分岐・挿入した後のWDM方式光信号においては、図22に示すように、分岐・挿入したch.の前後におけるASEは、急激に変化している。このため、このch.の光SNRは、ASEを測定することができないため、測定することができないという問題がある。
そして、光SNRの測定結果に基づいた制御をする光通信システムでは、このように光SNRが測定できないために、最適な制御が困難となる問題がある。
【0018】
そこで、本発明では、光信号におけるASEを直接測定することなく光SNRを測定する方法、その装置および測定回路を提供することを目的とする。
そして、本発明では、WDM方式光信号におけるASEを直接測定することなく測定した光SNRを用いたプリエンファシス方法、光通信システムおよび制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上述の目的は、光伝送路の間に光信号を増幅する光増幅手段を備える複数の局を備えるこの光伝送路の射出側における光信号の光SNRを測定する光SNR測定方法を、複数の局のうち少なくとも2つの局に備えられた測定手段を用いて所定の物理量をそれぞれ求める第1ステップと、測定された所定の物理量に基づいて演算回路が複数の局のそれぞれについて部分光SNRを求める第2ステップと、部分光SNRの逆数和を求め、さらに該逆数和の逆数である光SNRを求める第3ステップとを備えて構成することで達成される。
【0020】
そして、上述の目的は、光伝送路の間に光信号を増幅する光増幅手段を備える複数の局を備えるこの光伝送路の射出側における光信号の光SNRを測定する光SNR装置を、複数の局のうちから少なくとも2個以上の局に備えられ、この局における所定の物理量を測定する測定手段と、測定手段の測定結果から複数の局における所定の物理量を求め、求められたこの所定の物理量に基づいて複数の局のそれぞれについて部分光信号対雑音比を求め、この部分光信号対雑音比の逆数和を求め、さらにこの逆数和の逆数である光SNRを求める演算回路とを備えて構成することで達成される。
【0021】
また、上述の目的は、光伝送路の間に複数の光信号を波長多重したWDM方式光信号を増幅する光増幅手段を備える複数の局を備えるこの光伝送路に波長多重されるべき光信号を最初に入射する際に該光信号の光レベルを調節するプリエンファシス方法を、複数の局のうち少なくとも2つの局に備えられた測定手段を用いて所定の物理量をそれぞれ求める第1ステップと、測定された所定の物理量に基づいて演算回路が複数の局のそれぞれについて複数の光信号のそれぞれに対する部分光SNRを求める第2ステップと、複数の光信号のそれぞれについて部分光SNRの逆数和を光信号が増幅される局が重複している区間に亘って求め、さらに逆数和の逆数である区間光SNRを求める第3ステップと、区間光SNRが互いに等しくなるように複数の光信号について光レベルを調整する第4ステップとを備えて構成することで達成される。
【0022】
さらに、上述の目的は、光伝送路の間に複数の光信号を波長多重したWDM方式光信号を増幅する光増幅手段を備える複数の局を備える光通信システムを、複数の局のうちから少なくとも2個以上の局に備えられ、この局における所定の物理量を測定する測定手段と、測定手段の測定結果に基づいて、上述のように構成されたプリエンファシス方法で、波長多重されるべき光信号を最初にこの光伝送路に入射する際の複数の光信号の光レベルを求める演算回路と、波長多重されるべき光信号を最初に光伝送路に入射する局に備えられ、演算回路で求められた光レベルになるようにこの光信号の光レベルを調整する調整手段とを備えて構成することで達成される。
【0023】
このような光SNR測定方法、光SNR測定装置、プリエンファシス方法および光通信システムでは、例えば、所定の物理量を出力光レベルPout 、雑音指数NFおよび利得Gとし、部分光SNRを、プランク定数h、光信号の波長に対応する周波数νおよび求める光SNRの分解能に相当する周波数Δfのもとに、
【数16】

で定義し、光信号を増幅する局に亘ってこの逆数の和を求めてさらに逆数を求めることによって、ASEを用いないで光SNRを求めることができる。このため、ASEを直接測定することができない場合においても光SNRを測定することができる。そして、測定した光SNRを利用してプリエンファシスをWDM方式光信号に施すことができる。
【発明の効果】
【0024】
以上、本発明によれば、WDM方式光信号の光SNRを測定することができる。そして、この測定された光SNRを利用することによって、分岐・挿入装置を有する光通信システムにおいて、WDM方式光信号に適正なプリエンファシスを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の基本構成を示す図である。
【図2】P.G.内におけるプリエンファシスの1例を説明するための図である。
【図3】第1の実施形態における光通信システムの全体構成とP.G.を示す図である。
【図4】第1の実施形態の光通信システムにおける光送信局の構成を示す図である。
【図5】第1の実施形態の光通信システムにおける光受信局の構成を示す図である。
【図6】第1の実施形態の光通信システムにおける中継増幅装置の構成を示す図である。
【図7】第1の実施形態の光通信システムにおけるOADMの構成を示す図である。
【図8】第1の実施形態の光通信システムにおけるシステム制御回路のフローチャートを示す図である。
【図9】第1の実施形態の光通信システムにおけるOADM制御回路のフローチャートを示す図である。
【図10】第1の実施形態の光通信システムにおける各局の全光信号平均値と各局のP.G.部分光SNRを示す図である。
【図11】ch.数の増減によるプリエンファシスの再設定の場合におけるシステム制御回路のフローチャートを示す図である。
【図12】ch.数の増減によるプリエンファシスの再設定の場合におけるOADM制御回路のフローチャートを示す図である。
【図13】第2の実施形態における光通信システムの全体構成とP.G.を示す図である。
【図14】第2の実施形態の光通信システムにおけるOADMの構成を示す図である。
【図15】第2の実施形態の光通信システムにおけるシステム制御回路のフローチャートを示す図である。
【図16】第2の実施形態の光通信システムにおけるOADM制御回路のフローチャートを示す図である。
【図17】第3の実施形態における光SNR測定装置の全体構成と局の詳細構成を示す図である。
【図18】第3の実施形態における演算回路のフローチャートを示す図である。
【図19】第3の実施形態における局の他の構成を示す図である。
【図20】従来の光SNR測定方法を説明する図である。
【図21】従来のプリエンファシスを行う光通信システムの構成を示す図である。
【図22】OADMでch.3を分岐・挿入したWDM方式光信号のスペクトルを示す図である。
【図23】高密度に光信号を波長多重したWDM方式光信号のスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
まず、本発明の原理を説明する。
図1は、本発明の基本構成を示す図である。
図1(a)は、本発明の基本構成を示し、図1(b)は、パスグループの考え方を示す図である。
最初に、光SNR測定方法および光SNR測定装置について、以下に、説明する。
図1(a)において、光通信システムは、光伝送路11の間に複数の光信号を波長多重したWDM方式光信号を増幅する光増幅手段21を備える複数の局12と、光伝送路11の一方の端に接続される光送信局10と、光伝送路11の他方の端に接続される光受信局14とから構成される。また、光信号は、光送信局10から光受信局14に伝送される場合だけでなく、局12において、局12内に備えられるOADM(不図示)によって分岐・挿入される場合もある。
【0027】
このような光通信システムにおける任意の2個の局12間または光送信局10と光受信局14との間における光信号の光SNRを測定するために、光SNR測定装置は、測定手段22および演算回路16とを備えて構成される。
測定手段22は、複数の局12のうちから少なくとも2個以上の局12に備えられ、この局12における所定の物理量を測定する。さらに、測定手段22は、光受信局14にも備えられる。演算回路16は、測定手段22の測定結果に基づいて、以下に述べる光SNR測定方法で光SNRを求める。
【0028】
すなわち、第1ステップとして、演算回路16は、測定手段22から所定の物理量を受信して、すべての局12における所定の物理量を求める。
ここで、測定手段22がすべての局12に備えられている場合では、各測定手段22からの所定の物理量は、そのまま、各局12における所定の物理量である。一方、第3局12-3のように測定手段22を備えない局12における所定の物理量は、この局12の前後において測定手段22を備える局12で測定された所定の物理量に基づいてこの局12における所定の物理量を求めればよい。
【0029】
例えば、前後の局12における所定の物理量の差分をこの局12に対する前方の光伝送路11の距離と後方の光伝送路11の距離に基づいて比例分配し、前の局12における所定の物理量に加算することによって、求めることができる。または、これら前後の光伝送路11と同等の光伝送路を用意して、この比例配分の値を予め実測してもよい。
第2ステップとして、演算回路16は、すべての局12について求めた所定の物理量に基づいて局12のそれぞれについて部分光SNRを求める。
第3ステップとして、演算回路16は、この求めた部分光SNRの逆数和を求め、さらにこの逆数和の逆数を求める。これが、光SNRである。
【0030】
ここで、部分光SNRを
【数17】

とすれば、所定の物理量は、出力光レベルPout、雑音指数NFおよび利得Gである。なお、hは、プランク定数、νは、光信号の波長に対応する周波数、Δfは、光SNRの分解能に相当する周波数である。
したがって、光信号を複数の光信号を波長多重したWDM方式光信号とすれば、一般に、各光信号の光SNRj、k は、上述の第1ないし第3ステップより、
【数18】

で与えられる。なお、jは、WDM方式光信号における複数の光信号にそれぞれ割り振られたch.番号、kは、局番号である。よって、光SNRj,k は、ch.jの第k局12-kにおける光SNRである。Poutj、k は、ch.jが第k局12-kから射出される場合のch.jの光信号の光レベルである。NFj、k は、ch.jの第k局12-kにおける雑音指数である。Gj、k は、ch.jの第k局12-kにおける利得である。
【0031】
また、Poutj,k=Gj,k・Pinj,kであるから、部分光SNRを
【数19】

とすれば、所定の物理量は、入力光レベルPinおよび雑音指数NFである。そして、各光信号の光SNRj、k は、(式2)で与えられる。なお、Pinj、k は、ch.jが第k局12-kに入射される場合のch.jの光信号の光レベルである。
【0032】
さらに、部分光SNRを
【数20】

とおけば、所定の物理量は、出力光レベルPout および利得Gである。そして、各光信号の光SNRj、k は、(式2)で与えられる。
また、部分光SNRを
【数21】

とおけば、所定の物理量は、出力光レベルPout である。そして、各光信号の光SNRj、k は、(式2)で与えられる。
【0033】
さらに、部分光SNRを
【数22】

とおけば、所定の物理量は、出力光レベルPinである。そして、各光信号の光SNRj,k は、(式2)で与えられる。
以上の(式1)、および、(式3)ないし(式6)のいずれの数式を部分光SNRの定義として用いるかは、光SNR測定方法および光SNR測定装置に要求される精度によって決定される。
【0034】
このようにして、本発明にかかる光SNR測定方法および光SNR測定装置は、ASEを直接測定することなく光SNRを測定することができるから、高密度なWDM方式光信号の光SNRを測定することができる。もちろん、1つの光信号の光SNRを測定することも可能である。
次に、プリエンファシス方法および光通信システムについて、以下に、説明する。
【0035】
図1(a)において、光通信システムは、さらに、調整手段23を備える。そして、演算回路16は、測定手段22の測定結果に基づいて、後述するプリエンファシス方法で、光伝送路11に波長多重されるべき光信号を最初に光伝送路11に入射する際の光レベルを求める。
調整手段23は、光伝送路11に波長多重されるべき光信号を最初に光伝送路11に入射する局12に備えられ、演算回路16で求められた光レベルになるようにこの光信号の光レベルを調整する。さらに、調整手段23は、光送信局10にも備えられる。
【0036】
このような光通信システムにおけるプリエンファシス方法を以下に説明する。
まず、第1ステップとして、演算回路16は、測定手段22から所定の物理量を受信して、すべての局12における所定の物理量を求める。
【0037】
第2ステップとして、演算回路16は、すべての局12について求めた所定の物理量に基づいて局12のそれぞれについて部分光SNRを求める。
第3ステップとして、演算回路16は、複数の光信号のそれぞれについて部分光SNRの逆数和を光信号が増幅される局12が重複している区間に亘って求め、さらに逆数和の逆数である区間光SNRを求める。
【0038】
第4ステップとして、区間光SNRが互いに等しくなるように複数の光信号について光レベルを調整する。
ここで、(式2)は、或る光信号が光伝送路11に最初に入射されてから最終的に射出されるまでの光SNRを求める式であるが、このような或る光信号における任意の2個の局間における光SNRも求めることができる。この任意の2個の局12間における光SNRを区間光SNRと呼称することにする。この場合において、任意の2個の局を、或る光信号が最初に入射される局12または光送信局10、および、最終的に射出される局12または光受信局14とすれば、区間光SNRは、光SNRと一致する。
【0039】
例えば、光送信局10から入射され第4局で射出(分岐)されるch.7の場合では、区間光SNRは、光送信局10から第3局12-3までの(式2)によって求められる値や第1局12-1から第3局12-3までの(式2)によって求められる値や光送信局10から第4局12-4までの(式2)によって求められる値などである。そして、この光送信局10から第4局12-4までの(式2)によって求められる値が光SNRと一致する。
【0040】
そして、上述のプリエンファシス方法をより具体的にした場合を以下に説明する。
まず、第1ステップとして、演算回路16は、測定手段22から所定の物理量を受信して、すべての局12における所定の物理量を求める。
【0041】
第2ステップとして、演算回路16は、すべての局12について求めた所定の物理量に基づいて局12のそれぞれについて部分光SNRを求める。
第3ステップとして、演算回路16は、複数の光信号のそれぞれについて部分光SNRの逆数和を光信号が増幅される局12が重複している区間に亘って求め、さらに逆数和の逆数である区間光SNRを求める。
【0042】
第3ステップとして、演算回路16は、複数の局12のそれぞれについて、部分光SNRの和をこの局で増幅されるすべての光信号に亘って求め、さらにその平均値を求める。
第4ステップとして、演算回路16は、複数の光信号のそれぞれについて、複数の局12のそれぞれにおける平均値とこの光信号の部分光SNRとの差分値を求める。
【0043】
第5ステップとして、演算回路16は、複数の光信号のそれぞれについて、これら差分値の和をこの光信号が増幅される局に亘って求める。
第6ステップとして、複数の光信号のそれぞれについて求められた差分値の和がすべて零となるように複数の光信号について光レベルを調整する。
以上の第1ないし第6ステップを1個の式に纏めると、演算回路16は、
【数23】

となるように複数の光信号について光レベルを調整すればよい。
【0044】
ここで、全光信号平均値j,k は、ch.jが第k局12-kで増幅される場合では、部分光SNRを第k局12-kで増幅されるすべての光信号に亘って求め、その平均値をとった値であり、一方、ch.jが第k局12-kで増幅されない場合では、零である。したがって、ch.jが第k局12-kで増幅されない場合では、(部分光SNRj,k −全光信号平均値j,k )=0 である。
【0045】
このようなプリエンファシス方法によれば、高密度なWDM方式光信号にプリエンファシスを施すことができる。そして、この方法によれば、光送信局10と光受信局14との間にOADMを備える局12があって或る光信号が分岐・挿入される場合でも、WDM方式光信号にプリエンファシスを施すことができる。また、分岐・挿入されなかった光信号に対するASEと分岐・挿入された光信号に対するASEとの光レベルが異なっていたとしても、WDM方式光信号にプリエンファシスを施すことができる。さらに、この方法によれば、WDM方式光信号における各光信号ごとにレベルダイヤが調整されるので、各光信号の光SNRが最適化される。
【0046】
一方、局12にOADMを備える局がある場合には、次のようなプリエンファシス方法が好適である。
WDM方式光信号の各ch.の中には、同じ光送信局10または局12から光伝送路11に挿入され、同じ光受信局14または局12から分岐するch.がある。このような同一経路であるch.同士を一纏めにして、パスグループ(以下、「P.G.」と略記する。)を作る。
【0047】
そして、始めに、P.G.間において、プリエンファシスを行い、その後、そのP.G.内においてさらにプリエンファシスを行って、最終的なプリエンファシスを行うことができる。
例えば、図1(b)は、1例としてch.数が8個の場合について、各ch.のパスを示し、ch.1およびch.2は、光送信局10の第0局から光伝送路11に送信され、第2局から分岐する。ch.3およびch.5は、第2局2から光伝送路11に挿入され、第4局から分岐する。ch.4およびch.7は、光送信局10の第0局から光伝送路11に送信され、第4局から分岐する。ch.6およびch.8は、光送信局10の第0局から光伝送路11に送信され、光受信局14の第n局で受信・処理される。
【0048】
この場合には、ch.1およびch.2をP.G.1として一纏めにすることができる。ch.3およびch.5をP.G.2として一纏めにすることができる。ch.4およびch.7をP.G.3として一纏めにすることができる。ch.6およびch.8をP.G.4として一纏めにすることができる。
【0049】
このようにP.G.を導入した場合のP.G.間のプリエンファシスは、(式1)の部分光SNRj,k の代わりに、P.G.内の全ch.の部分光SNRj、k の平均値である部分PG平均光SNRm,k を用いて、上述の第1ないし第6ステップと同様な過程によって、光信号の光レベルに相当するP.G.部分光SNRを調整する。
【0050】
すなわち、まず、第1ステップとして、演算回路16は、測定手段22から所定の物理量を受信して、すべての局12における所定の物理量を求める。
第2ステップとして、演算回路16は、すべての局12について求めた所定の物理量に基づいて局12のそれぞれについて部分光SNRを求める。
第3ステップとして、演算回路16は、複数の局12のそれぞれについて、部分光SNRの和をこの局で増幅されるすべての光信号に亘って求め、さらにその平均値である全光信号平均値を求める。
【0051】
第4ステップとして、演算回路16は、複数の光信号のうちから光伝送路11に最初に入射されてから最終的に射出されるまでの区間が互いに同じである光信号を1つに纏めたP.G.を作成する。
第5ステップとして、演算回路16は、複数の局12のそれぞれについて、部分光SNRの和をこの局で増幅されるP.G.内の光信号に亘って求め、さらにその平均値であるP.G.部分光SNRを求める。
【0052】
第6ステップとして、演算回路16は、複数のP.G.のそれぞれについて、複数の局12のそれぞれにおける全光信号平均値とP.G.部分光SNRとの差分値を求める。
第7ステップとして、演算回路16は、複数のP.G.のそれぞれについて、差分値の和を求める。
【0053】
第8ステップとして、演算回路16は、複数のP.G.のそれぞれについて求められた差分値の和がすべて零となるようにP.G.部分光SNRを調整する。
第9ステップとして、演算回路16は、調整されたP.G.部分光SNRに基づいて複数の光信号について光レベルを調整する。
そして、第9ステップにおけるP.G.内のプリエンファシスについては、さらに(式1)および(式2)を用いて、求めることもできるが、P.G.内においては、2端局間のプリエンファシスの仕方を用いることができる。すなわち、
第1ステップとして、P.G.の全ch.が分岐される局12(光受信局14)における全ch.について光SNRの平均値を求める。
【0054】
第2ステップとして、この平均値と当該局12(光受信局14)におけるch.1の光SNRとの差を求める。
第3ステップとして、P.G.の全ch.が挿入される局12(光送信局10)は、この差を補償するだけの光レベルをch.1に加減して、ch.1の光レベルを調整する。
【0055】
第4ステップとして、以上の第2ステップおよび第3ステップをP.G.内の全ch.について行う。
また、次のように、P.G.内のプリエンファシスを行ってもよい。
図2は、P.G.内におけるプリエンファシスの一例を説明するための図である。
【0056】
図2(a)は、プリエンファシスを行わない場合の送信P.G.のスペクトルおよび受信P.G.のスペクトルを示す図であり、図2(b)は、図2(a)を基にプリエンファシスを行った場合の送信P.G.のスペクトルを示す図である。これら各図の縦軸は、光レベルであり、横軸は、ch.(波長)である。
なお、図2は、P.G.が、ch.1、ch.4、ch.5、ch.7、ch.9、ch.10、ch.15およびch.16からなる場合を示しているが、P.G.がどのようなch.の組合せでも、同様に、P.G.内のプリエンファシスを行うことができる。
【0057】
P.G.内のプリエンファシスは、簡単にプリエンファシスを行うために、受信P.G.の光レベルの平均値からの偏差を1/2にして、この1/2にした偏差をスペクトル間の大小関係を逆転させた上で送信P.G.のプリエンファシス量として加減する。
すなわち、第1ステップとして、図2(a)に示すように、プリエンファシスを行わない状態(各ch.の光レベルと送信P.G.の光レベルの平均値とが一致する状態)でP.G.を対象となる光通信システムに伝送し、受信P.G.のスペクトルを計測する。
【0058】
第2ステップとして、この計測した受信P.G.のスペクトルを用いて、各ch.について受信P.G.の光レベルの平均値からの偏差を求め(Pdf)、その1/2を各々計算する(Pdf/2)。
第3ステップとして、受信P.G.の光レベルが受信P.G.の光レベルの平均値より小さいch.については、Pdf/2を足し、受信P.G.の光レベルが受信P.G.の光レベルの平均値より大きいch.については、Pdf/2を引く。つまり、図2の場合では、例えば、ch.1は、光レベルが受信P.G.の光レベルの平均値より小さいので、Pdf1 /2を送信P.G.の光レベルの平均値に足す。ch.16は、光レベルが受信P.G.の光レベルの平均値より大きいので、Pdf16/2を送信P.G.の光レベルの平均値から引く。
【0059】
これらのようにして、P.G.内のプリエンファシスを行うことができる。
以上のように、図1に示す光通信システムは、WDM方式光信号にプリエンファシスを施すことができる。ここで、部分光SNRj,k として(式1)、および、(式3)ないし(式6)のいずれの数式を用いるかは、光通信システムに要求される誤り率などに依存する。
【0060】
以下、図面に基づいて本発明における実施の形態を説明する。
(第1の実施形態の構成)
第1の実施形態は、光通信システムの実施形態である。
図3は、第1の実施形態における光通信システムの全体構成とP.G.を示す図である。
図4は、第1の実施形態の光通信システムにおける光送信局の構成を示す図である。
図5は、第1の実施形態の光通信システムにおける光受信局の構成を示す図である。
図6は、第1の実施形態の光通信システムにおける中継増幅装置の構成を示す図である。
図7は、第1の実施形態の光通信システムにおけるOADMの構成を示す図である。
【0061】
まず、第1の実施形態における光通信システムの全体構成について説明し、次に、この光通信システムに使用される光送信局、中継増幅装置、OADMおよび光受信局の構成について詳細に説明する。
【0062】
第1の実施形態における光通信システムの全体構成について説明する。
図3(a)において、第1の実施形態における光通信システムは、光送信局51、中継増幅装置53、OADM54、光受信局55、これら各局間を繋ぎ光信号を伝送する光伝送路52およびシステム制御回路56から構成される。
光送信局51は、32ch.の光信号を生成し、システム制御装置56からの制御信号に基づいて各ch.にプリエンファシスを行った上で、WDM方式光信号にして光伝送路52に送信する。
【0063】
中継増幅装置53は、光伝送路52を伝送するWDM方式光信号を増幅する。
OADM54は、光伝送路52を伝送するWDM方式光信号から所定のch.を分岐・挿入・通過する。そして、OADM54は、OADM54に入射されるWDM方式光信号のスペクトルおよびOADM54から射出されるWDM方式光信号のスペクトルをシステム制御回路56に出力し、システム制御回路56からの制御信号に基づいて挿入すべき各ch.にプリエンファシスを行った上で光伝送路52に挿入する。
【0064】
光受信局55は、WDM方式光信号を受信・処理し、光受信局55に入射されるWDM方式光信号のスペクトルをシステム制御回路56に出力する。
中継増幅装置53およびOADM54は、光送信局51と光受信局55との間に設けられる。そして、OADM54は、WDM方式光信号からch.を分岐・挿入させたい地点に応じて設けられ、中継増幅装置53は、光送信局51とOADM54との間の伝送損、OADM54が複数個設けられた光通信システムではOADM54間の伝送損およびOADM54と光受信局55との間の伝送損に応じてそれぞれの間に必要個数設けられる。
【0065】
次に、第1の実施形態の光通信システムに使用される光送信局の構成について詳細に説明する。
図4において、光送信局51は、レーザダイオード(以下、「LD」と略記する。)101、変調器(以下、「MOD」と略記する。)102、光可変減衰器(以下、「VAT」と略記する。)103、WDMカプラ104、光増幅器108、カプラ105、スペクトラムアナライザ(以下、「SPA」と略記する。)106および光送信局制御回路107から構成される。
【0066】
LD101は、所定波長のレーザ光を発振し、発振されたレーザ光は、それぞれ対応するMOD102-1〜102-32 へ射出される。LD101として、例えば、ファブリペロ型レーザ、分布帰還型レーザ、分布ブラッグ反射型レーザなど各種レーザを利用することができる。
MOD102は、送信すべき情報でLD101からのレーザ光を変調し光信号を生成する。生成された光信号は、VAT103へ射出される。MOD102として、例えば、マッハツェンダ型光変調器や半導体電界吸収型光変調器などの外部変調型の変調器を利用することができる。
【0067】
なお、LD101の駆動電流に送信すべき情報に基づく変調信号を重畳することにより発振するレーザ光の光レベルを変える直接変調を行う場合には、MOD102を省略することができる。
VAT103は、MOD102からの光信号の光レベルを減衰してWDMカプラ104へ射出する。この減衰量は、光送信局制御回路107からの制御信号によって制御される。
【0068】
これらLD101、MOD102およびVAT103からなる構成は、WDM方式光信号のch.数に合わせて、32組用意され、各LD101-1〜101-32 は、対応するch.の波長に合わせた波長のレーザ光を発振する。例えば、LD101-1は、ch.1の波長に対応する波長を発振し、LD101-2は、ch.2の波長に対応する波長を発振する。
【0069】
なお、LD101の発振波長をより安定させる観点から、LD101の駆動電流・素子温度を制御してもよい。また、LD101とMOD102との間に周期的フィルタなどから構成される波長ロッカーを利用してもよい。
WDMカプラ104は、各VATからの各光信号を波長多重してWDM方式光信号を生成する。生成されたWDM方式光信号は、光を増幅する光増幅器108を介して、カプラ105へ射出される。
【0070】
カプラ105は、光増幅器108からのWDM方式光信号を2つに分岐する光分岐結合器である。分岐した一方のWDM方式光信号は、光伝送路52-1へ射出されて次段の局へ伝送され、分岐した他方のWDM方式光信号は、SPA106へ射出される。
SPA106は、入射する光の波長とこの波長における光レベルとを計測するスペクトラムアナライザである。SPA106は、この光送信局51から送信されるWDM方式光信号のスペクトルを計測し、その計測結果を光送信局制御回路107に出力する。
【0071】
光送信局制御回路107は、SPA106からの計測結果をシステム制御回路56へ出力する。そして、光送信局制御回路107は、システム制御回路56からの制御信号に基づいて各VAT103-1〜103-32 の各減衰量を調整することによりWDM方式光信号にプリエンファシスを行う。さらに、光送信局制御回路107は、SPA106からの計測結果に基づいてWDM方式光信号に上述のプリエンファシスが施されているかを判断し、その判断結果に基づいて各VAT103-1〜103-32 の各減衰量を制御する。
【0072】
次に、第1の実施形態の光通信システムに使用される光受信局の構成について詳細に説明する。
図5において、光受信局55は、光増幅器118、カプラ111、SPA112、光受信局制御回路113、WDMカプラ114、フィルタ(filter、以下、「FIL」と略記する。)115、光増幅器116および復調器(demodulator 、以下、「DEM」と略記する。)117から構成される。
【0073】
光増幅器118は、この光受信局55に接続される光伝送路52-nからのWDM方式光信号を増幅して、光伝送路52-nで生じる損失を補償する。
カプラ111は、光増幅器118からのWDM方式光信号を2つに分岐する光分岐結合器である。分岐した一方のWDM方式光信号は、WDMカプラ114へ射出され、分岐した他方のWDM方式光信号は、SPA112へ射出される。
【0074】
WDMカプラ114は、カプラ111からのWDM方式光信号を各ch.に対応する波長ごとに分波する。分波された各ch.の光信号は、それぞれFIL115-1〜115-32 へ射出される。
FIL115は、所定の波長帯域の光を透過する帯域通過フィルタである。FIL115としては、例えば、ファイバグレーティングフィルタ(fiber bragg grating filter、以下、「FBG」と略記する。)や誘電体多層膜フィルタなどを利用することができる。また、このFIL115は、WDMカプラ114により所定の波長帯域の光を精度よく分離することができる場合は、省略することができる。
【0075】
光増幅器116は、カプラ111、WDMカプラ114およびFIL115などによって生じる損失を補償するために、FIL115からの光信号を所定の利得で増幅してDEM117へ射出する。
DEM117は、光増幅器116からの光信号を復調する。
これらFIL115、光増幅器116およびDEM117からなる構成は、WDM方式光信号のch.数に合わせて、32組用意され、各FIL115-1〜115-32 は、対応するch.の波長に合わせた透過波長帯域に設定する。例えば、FIL115-1は、ch.1の波長に対応する波長に透過波長帯域の中心波長を合わせ、FIL115-2は、ch.2の波長に対応する波長に透過波長帯域の中心波長を合わせる。
【0076】
また、SPA112は、この光受信局55に入射されるWDM方式光信号のスペクトルを計測し、その計測結果を光受信局制御回路113に出力する。
光受信局制御回路113は、SPA112からの計測結果をシステム制御回路56へ出力する。
次に、第1の実施形態の光通信システムに使用される中継増幅装置の構成について詳細に説明する。
【0077】
図6において、中継増幅装置53は、光増幅器121、124、光減衰器(以下、「ATT」と略記する。)122および分散補償器(以下、「DC」と略記する。)123から構成される。
光増幅器121は、受光レベルを上げるプリアンプであり、この中継増幅装置53に接続される光伝送路52からのWDM方式光信号を増幅してATT122へ射出する。
【0078】
ATT122は、入射する光に対して所定の減衰率で射出する光減衰器であり、一定の光レベルまで減衰されたWDM方式光信号は、DC123へ射出される。このようにWDM方式光信号を一定の光レベルまで減衰させるのは、過大な光レベルのWDM方式光信号をDC123に入射させると自己位相変調や相互位相変調などの非線形光学現象を生じてしまうからである。
【0079】
DC123は、WDM方式光信号に主に光伝送路52中で生じる波長分散を補償する分散補償器であり、波長分散を補償されたWDM方式光信号は、光増幅器124へ射出される。
光増幅器124は、中継増幅装置53の出力光を所定の光レベルまで増幅するポストアンプである。増幅されたWDM方式光信号は、次段の局へ伝送すべく光伝送路52に射出される。
【0080】
ここで、光増幅器124が光ファイバ増幅器の場合では、光通信システムの構築後にWDM方式光信号のch.を増設する場合に光増幅器124の利得が不十分になる可能性がある。そこで、そのような場合に備えて、光増幅器124に励起光源の出力光レベルを補うための光源であるブースター励起光源を設けてもよい。
【0081】
次に、第1の実施形態の光通信システムに使用されるOADMの構成について詳細に説明する。
図7において、OADM54は、光増幅器130、132、149、151、161、166、ATT131、150、カプラ133、134、146、148、155、168、171、アイソレータ(以下、「ISO」と略記する。)135、VAT136、169、FBG141、FIL142、172、DC145、152、153、モニタ(以下、「MO」と略記する。)147、167、170、スイッチ(以下、「SW」と略記する。)156、SPA157、DEM162、送信器165およびOADM制御回路175から構成される。
【0082】
光増幅器130は、受光レベルを上げるプリアンプであり、このOADM54に接続される光伝送路52からのWDM方式光信号を増幅してATT131へ射出する。
ATT131は、入射する光に対して所定の減衰率で射出する光減衰器であり、一定の光レベルまで減衰されたWDM方式光信号は、光増幅器132へ射出される。
【0083】
光増幅器132は、所定の光レベルまで増幅するポストアンプである。増幅されたWDM方式光信号は、カプラ133へ射出される。
これら光増幅器130とATT131と光増幅器132とからOADM54における前段増幅部を構成する。
カプラ133は、光増幅器132からのWDM方式光信号を2つに分岐する光分岐結合器である。分岐した一方のWDM方式光信号は、カプラ134へ射出され、分岐した他方のWDM方式光信号は、SW156へ射出される。
【0084】
カプラ134は、カプラ133からのWDM方式光信号を2つに分岐する光分岐結合器である。分岐した一方のWDM方式光信号は、ISO135へ射出され、分岐した他方のWDM方式光信号は、DC152へ射出される。
このISO135へ射出されたWDM方式光信号は、後述する各光部品で処理されることによりOADM54を通過するWDM方式光信号となる。一方、DC152へ射出されたWDM方式光信号から後述する各光部品で処理されてOADM54で分岐するch.が取り出される。
【0085】
DC152は、OADM54で分岐するch.に対し、主に光伝送路52中で生じる波長分散を補償する分散補償器であり、波長分散を補償されたWDM方式光信号は、リジェクションフィルタ部140へ射出される。
ISO135は、光を決められた一方向のみに透過させるアイソレータであり、カプラ134からVAT136への一方向のみに光を透過させる。このため、ISO135以降に接続されるOADM内の光部品によって反射された光を遮断することができるので、OADM内における光の多重反射を防止することができる。ISO135は、例えば、45度ずれた状態の2つの偏光子の間にファラデー回転子を配置することによって構成することができる。
【0086】
VAT136は、ISO135からのWDM方式光信号の光レベルを減衰してリジェクションフィルタ部140へ射出する。この減衰量は、OADM制御回路175からの制御信号によって制御される。
リジェクションフィルタ部140は、このOADM54で分岐・挿入することができる光信号のch.および数に合わせてFBGユニットが用意される。本実施形態では、ch.1ないしch.8を分岐・挿入することができるように、8個のFBGユニットが縦続に接続される。
【0087】
FBGユニットは、FBG141とFIL142とからなり、FBG141は、所定の波長帯域のみを反射するFBGであり、FIL142は、所定の波長帯域のみを透過する光フィルタである。そして、FBG141の反射中心波長とFIL142の透過中心波長とは、分岐されるch.の波長に等しく設定される。
図7のリジェクションフィルタ部140は、32波のWDM方式光信号からch.1ないしch.8を分岐する場合を示し、8個のFBGユニットが縦続接続される結果、FBG141-1〜141-8は、順次に縦続接続され、FIL142-1〜142-8も順次に縦続接続される。
【0088】
この図に示すようにDC152によって波長分散を補償された32波のWDM方式光信号は、FIL142-1に入射される。入射したWDM方式光信号は、FIL142-1でch.1だけ透過して光増幅器161-1へ射出され、ch.2ないしch.32は、FIL142-1で反射されてFIL142-2へ射出される。FIL142-2に入射したWDM方式光信号は、FIL142-2でch.2だけ透過して光増幅器161-2へ射出され、ch.3ないしch.32は、FIL142-2で反射されてFIL142-3へ射出される。以下同様に、ch.3ないしch.8は、各FIL142-3〜142-8でそれぞれch.ごとに分離され、各FIL142-3〜142-8のそれぞれに接続される光増幅器161-3〜161-8へ射出される。
【0089】
光増幅器161は、受光レベルを上げるプリアンプであり、各FIL142-1〜142-8からの光信号をそれぞれ増幅して各DEM162-1〜162-8へ射出する。
DEM162は、各光増幅器161-1〜161-8からの光信号をそれぞれ復調し、ch.の情報を取り出す。
【0090】
一方、VAT136によって光レベルを減衰された32波のWDM方式光信号は、FBG141-1に入射される。入射したWDM方式光信号は、FBG141-1でch.1だけ遮断され、ch.2ないしch.32は、FBG141-2へ射出される。FBG141-2に入射したWDM方式光信号は、FBG141-2でch.2だけ遮断され、ch.3ないしch.32は、FBG141-3へ射出される。以下同様に、ch.3ないしch.8は、各FBG141-3〜141-8でそれぞれch.ごとに遮断され、FBG141-8から射出されるWDM方式光信号は、ch.9ないしch.32からなる。
【0091】
リジェクションフィルタ部140内における最終段のFBG141から射出されたWDM方式光信号は、DC145に入射される。
DC145は、OADM54を通過するch.に対して、主に光伝送路52中で生じる波長分散を補償する分散補償器であり、波長分散を補償されたWDM方式光信号は、カプラ146へ射出される。
【0092】
カプラ146は、DC145からのWDM方式光信号を2つに分岐する光分岐結合器である。分岐した一方のWDM方式光信号は、MO147へ射出され、分岐した他方のWDM方式光信号は、WDMカプラ148へ射出される。
【0093】
MO147は、WDM方式光信号の光レベルを検出するモニタであり、検出結果は、OADM制御回路175へ出力される。
OADM制御回路175の1つの機能としてOADM制御回路175は、このMO147からの検出結果に基づいて、この検出結果が所定の閾値を越えないようにVAT136の減衰量を調整する。このように減衰量を調整することによりDC145に入射されるWDM方式光信号の光レベルを制限することができるので、DC145中における非線形光学現象を防止することができる。
【0094】
一方、OADM54で挿入されるch.の光信号は、後述する構成によって生成される。
送信器165は、LDとMODとから構成され所定の波長の光信号を生成する。生成された光信号は、光増幅器166へ射出される。
光増幅器166は、所定の光レベルまで増幅するポストアンプである。増幅された光信号は、カプラ168へ射出される。
【0095】
カプラ168は、光増幅器166からの光信号を2つに分岐する光分岐結合器である。分岐した一方の光信号は、MO167へ射出され、分岐した他方の光信号は、VAT169へ射出される。
MO167は、光信号の光レベルを検出するモニタであり、検出結果は、OADM制御回路175へ出力される。
VAT169は、カプラ168からの光信号の光レベルを減衰してカプラ171へ射出する。この減衰量は、OADM制御回路175からの制御信号によって制御される。
カプラ171は、VAT169からの光信号を2つに分岐する光分岐結合器である。分岐した一方の光信号は、MO170へ射出され、分岐した他方の光信号は、FIL172へ射出される。
【0096】
MO170は、光信号の光レベルを検出するモニタであり、検出結果は、OADM制御回路175へ出力される。
OADM制御回路175のもう1つの機能としてOADM制御回路175は、MO167およびMO170の検出結果に基づいて、VAT136の減衰量を調整することにより、光信号の光レベルを所望の光レベルに調整する。このように減衰量を調整することによりOADM54において挿入される光信号の光レベルを調整することできるので、最適なプリエンファシスを行うことができる。
【0097】
このような送信器165、カプラ168、MO167、VAT169、カプラ171およびMO170からなる構成は、このOADM54で挿入されるべきch.ごとに用意される。本実施形態では、ch.1ないしch.8を挿入することができるようにするため、これらのch.の光信号を生成する構成が用意される。例えば、図7に示す、送信器165-1、カプラ168-1、MO167-1、VAT169-1、カプラ171-1およびMO170-1からなる構成は、WDM方式光信号のch.1の光信号を生成する。
【0098】
FIL172は、このOADM54で挿入すべき光信号の数およびch.に合わせて用意され、順次に縦続接続される。FIL172の透過中心波長は、この挿入すべきch.の波長に合わせて設定される。
図7では、32波のWDM方式光信号からch.1ないしch.8を挿入する場合を示し、8個のFIL172-1〜172-8は、順次に縦続接続される。
この図に示すようにFIL172-1から射出されたch.1は、FIL172-2に入射されてFIL172-2で反射され、FIL172-2を透過したch.2とともにFIL172-3に入射される。入射したch.1およびch.2は、FIL172-3で反射され、FIL172-3を透過したch.3とともにFIL172-4に入射される。以下同様に、ch.4ないしch.8が、各FIL172-4〜172-8でそれぞれ合波され、FIL172-8からch.1ないしch.8を波長多重したWDM方式光信号が射出され、DC153に入射される。
【0099】
DC153は、OADM54において挿入されるch.に対して、主に光伝送路52中で生じる波長分散を補償する分散補償器であり、波長分散を補償されたWDM方式光信号は、WDMカプラ148へ射出される。
WDMカプラ148は、カプラ146からのOADM54を通過するWDM方式光信号とDC153からのOADM54で挿入されるWDM方式光信号とを波長多重する。波長多重されたWDM方式光信号は、光増幅器149へ射出される。光増幅器149は、受光レベルを上げるプリアンプであり、このOADM54内の光部品による損失を補償すべく、WDMカプラ148からのWDM方式光信号を増幅してATT150へ射出する。
【0100】
ATT150は、入射する光に対して所定の減衰率で射出する光減衰器であり、一定の光レベルまで減衰されたWDM方式光信号は、光増幅器151へ射出される。
光増幅器151は、所定の光レベルまで増幅するポストアンプである。増幅されたWDM方式光信号は、カプラ155へ射出される。
これら光増幅器149とATT150と光増幅器151とからOADM54における後段増幅部を構成する。
【0101】
カプラ155は、光増幅器151からのWDM方式光信号を2つに分岐する光分岐結合器である。分岐した一方のWDM方式光信号は、次段の局に伝送されるべく光伝送路52へ射出され、分岐した他方のWDM方式光信号は、SW156へ射出される。
SW156は、2×1光スイッチであり、OADM制御回路175からの制御信号により、カプラ133からのWDM方式光信号またはカプラ155からのWDM方式光信号のいずれか一方をSPA157へ射出する。
SPA157は、入射する光の波長とこの波長における光レベルとを計測するスペクトラムアナライザである。SPA157は、SW156の選択により、前段増幅部から射出されるWDM方式光信号のスペクトルまたは後段増幅部から射出されるWDM方式光信号のスペクトルを計測し、その計測結果をOADM制御回路175に出力する。
【0102】
OADM制御回路175の他の機能として、OADM制御回路175は、システム制御回路56からの制御信号により、SPA157へカプラ133からのWDM方式光信号またはカプラ155からのWDM方式光信号のいずれを射出するかを制御する制御信号をSW156へ出力する。そして、OADM制御回路175は、SPA157からの計測結果をシステム制御回路56へ出力する。さらに、OADM制御回路175は、システム制御回路56からの制御信号に基づいて各VAT169-1〜169-32 とVAT136の各減衰量を調整することにより挿入すべきch.にプリエンファシスを行う。
【0103】
ここで、VAT103、136、169としては、例えば、入射光と射出光との間に減衰円板を挿入し、減衰円板の表面には回転方向に厚みが連続的に変えてある金属減衰膜を蒸着して、この減衰円板を回転させることにより減衰量を調節する光可変減衰器や入射光と射出光との間に磁気光学結晶およびこの磁気光学結晶の射出側に偏光子を挿入し、磁気光学結晶に磁界を印加してこの磁界の強さを変えることにより減衰量を調整する光可変減衰器などを利用することができる。
WDMカプラ104、114、148としては、例えば、誘電体多層膜フィルタやアレイ導波路格子形光合分波器(arrayed waveguide grating )などを利用することができる。
カプラ105、111、133、134、146、155、168、171としては、例えば、ハーフミラーなどの微少光学素子形光分岐結合器や溶融ファイバの光ファイバ形光分岐結合器や光導波路形光分岐結合器などを利用することができる。
【0104】
光増幅器116、121、124、130、132、149、151、161、166としては、例えば、半導体レーザ増幅器や光ファイバ増幅器を利用することができる。
DEM117、162としては、光信号を電気信号に変えるホトダイオードなどの受光素子を利用することができる。
DC123、145、152、153としては、WDM方式光信号に生じた分散を打ち消すように反対符号の分散を持つ分散補償ファイバを利用することができる。
このように第1の実施形態の光通信システムに適用される光送信局は、WDM方式光信号を生成する機能のほか、WDM方式光信号の各ch.の光レベルを調整する機能を持てばよい。
【0105】
そして、第1の実施形態の光通信システムに適用される光受信局は、WDM方式光信号を受信・処理する機能のほか、光受信局に入射されたWDM方式光信号の各ch.の光レベルを計測する機能を持てばよい。
また、第1の実施形態の光通信システムに適用される中継増幅装置は、光伝送路である光ファイバ中で受ける伝送損失を補う機能および波長分散によって劣化した波形を整形する機能を持てばよい。
【0106】
さらに、第1の実施形態の光通信システムに適用されるOADMは、WDM方式光信号から所定のch.を分岐・挿入・通過する機能のほか、OADMに入射されたWDM方式光信号の各ch.の光レベルを計測する機能、OADMから射出されるWDM方式光信号の各ch.の光レベルを計測する機能および挿入すべきch.および通過するch.の光レベルを調整する機能を持てばよい。
【0107】
(本発明と第1の実施形態との対応関係)
以下、本発明と第1の実施形態との対応関係について説明する。
光伝送路は光伝送路52に対応し、局は中継増幅装置53、OADM54および光受信局55に対応する。特に、測定手段はOADM54内のSPA157および光受信局55内のSPA112に対応し、演算回路はシステム制御回路56に対応し、調整手段はOADM54内のVAT136、169および光送信局51内のVAT103に対応する。
【0108】
また、プリエンファシス用制御装置はシステム制御回路56に対応する。
ここで、カプラ133、155をそれぞれ光増幅器130、149の直前に接続し、光増幅器130、149に入射されるWDM方式光信号のスペクトルを計測する構成にしてもよい。また、SPA112、157の代わりに、入射する光をWDM方式光信号のch.数分に分岐するカプラと、分岐した各光がそれぞれ入射されWDM方式光信号の各ch.に対応する波長に透過帯域の中心波長を設定したFBGと、これらFBGのそれぞれに接続されFBGから射出される光の光レベルを計測するホトダイオードとから構成される検出器によって、各ch.の光レベルを計測するようにしてもよい。
【0109】
(第1の実施形態の作用効果)
次に、第1の実施形態の光通信システムにおけるプリエンファシスについて説明する。
図8は、第1の実施形態の光通信システムにおけるシステム制御回路のフローチャートを示す図である。
図9は、第1の実施形態の光通信システムにおけるOADM制御回路のフローチャートを示す図である。
図10は、第1の実施形態の光通信システムにおける各局の全ch.出力光レベル平均値と各局のP.G.出力光レベル平均値を示す図である。
【0110】
初めに、図3ないし図7に示す第1の実施形態における光通信システムを立ち上げる場合には、光通信システムの上流側、すなわち、光送信局51から光受信局55へ、順次に各装置を立ち上げる。
そして、各装置ごとに、信号が到達しているかの確認、ASE補正、DCの入力光レベルの制限の確認、伝送路の損失の波長依存性を補償するスロープ補償などを行う。
さらに、光送信局51およびOADM54において、WDM方式光信号の全ch.を送信する。そして、光送信局51では、送信される各ch.の光レベルは、ほぼ等しくなるように設定される。OADM54では、挿入される各ch.の光レベルは、ほぼ等しくなるように、かつ、OADM54を通過するch.の平均光レベルになるように設定される。
【0111】
そして、OADM54において、増幅器149に入射される全光レベル、前段増幅部のASE補正量、ch.数から、後段増幅部へ入射される平均光レベルが所定の値以上になっていることを確認する。
各装置について、このような初期設定を行った後に、次の手順によって第1の実施形態にかかる光通信システムのプリエンファシスを行う。
【0112】
第1の実施形態におけるプリエンファシスの概略は、P.G.を作成し、P.G.間のプリエンファシスを行い、そして、P.G.内のプリエンファシスを行う。P.G.間のプリエンファシスは、各局で全光信号平均値とPG部分光SNRj,k との差分の和を許容値以内にすることにより、好ましくはほぼ「0」にすることにより行われる。P.G.内のプリエンファシスは、図2を用いて説明したように、分岐する局においてP.G.のch.ごとにP.G.の光レベルの平均値からの偏差を求め、この偏差を1/2にした量をスペクトル間の大小関係を逆転させた上で、光伝送路52にP.G.を挿入する際にプリエンファシス量として各ch.に加減することにより行われる。
【0113】
以下、図8ないし図10を用いて、第1の実施形態におけるプリエンファシスについて詳細に説明する。
図8のS1において、システム制御回路56は、各ch.のパスからP.G.を作成する。
例えば、本実施形態では、図3(b)に示すように、光送信局51から送信され光受信局55で受信されるch.1ないしch.16をP.G.1とする。光送信局51から送信されOADM54-1の局2で分岐するch.17ないしch.32をP.G.2とする。OADM54-1の局2から挿入され光受信局55で受信されるch.17ないしch.24をP.G.3とする。OADM54-1の局2から挿入されOADM54-2の局5で分岐されるch.25ないしch.32をP.G.4とする。OADM54-2の局5から挿入され光受信局55で受信されるch.25ないしch.32をP.G.5とする。
【0114】
図8のS2において、システム制御回路56は、各OADM制御回路175に各OADM54における後段増幅部の出力スペクトルを出力するように指示する。さらに、システム制御回路56は、光送信局制御回路107に出力スペクトルを出力するように指示する。
図9のS20において、各OADM54の局におけるOADM制御回路175は、このシステム制御回路56からの指示を受けて、カプラ155からの光がSPA157に入射するようにSW156を切り換える。そして、各OADM制御回路175は、SPA157の出力(後段増幅部の出力スペクトル)をシステム制御回路56へ出力する。
【0115】
光送信局制御回路107は、SPA106の出力(出力スペクトル)をシステム制御回路56へ出力する。
図8のS3において、システム制御回路56は、各OADM制御回路175から各OADM54における後段増幅部の出力スペクトルを取得する。さらに、システム制御回路56は、光送信局制御回路107から出力スペクトルを取得する。
【0116】
図8のS4において、システム制御回路56は、各OADM制御回路175に各OADM54における前段増幅部の出力スペクトルを出力するように指示する。さらに、システム制御回路56は、光受信局制御回路113に入力スペクトルを出力するように指示する。
図9のS21において、各OADMの局におけるOADM制御回路175は、このシステム制御回路56からの指示を受けて、カプラ133からの光がSPA157に入射するようにSW156を切り換える。そして、各OADM制御回路175は、SPA157の出力(前段増幅部の出力スペクトル)をシステム制御回路56へ出力する。
【0117】
光受信局制御回路113は、SPA112の出力(入力スペクトル)をシステム制御回路56へ出力する。
図8のS5において、システム制御回路56は、各OADM制御回路175から各OADMにおける前段増幅部の出力スペクトルを取得する。さらに、システム制御回路56は、光受信局制御回路113から入力スペクトルを取得する。
ここで、OADM54内の光増幅器において、伝送路の損失波長依存性を補償するスロープ補償を行っている場合は、S3およびS5において後段増幅部の出力スペクトルおよび前段増幅部の出力スペクトルからこの利得等化を補償するスロープ補償量をそれぞれ差し引き、利得等化を行っていない場合の後段増幅部の出力スペクトルおよび前段増幅部の出力スペクトルを求めて、これらを新たにそれぞれ後段増幅部の出力スペクトルおよび前段増幅部の出力スペクトルとする。
【0118】
図8のS6において、システム制御回路56は、各中継増幅装置53の出力スペクトルを計算する。この計算は、次のように行われる。
中継増幅装置53は、図6を用いて説明したように出力スペクトルを測定する手段を備えていないので、出力スペクトルを求めたい中継増幅装置53に対して、最も近い前方のOADM54における後段増幅部の出力スペクトルの平均値と最も近い後方のOADM54における前段増幅部の出力スペクトルの平均値との差分を求め、当該中継増幅装置53の出力スペクトルは、最も近い前方のOADM54における後段増幅部の出力スペクトルにこの求めた差分の1/2を加算したものとする。
【0119】
なお、最も近い前方の装置がOADM54ではなく光送信局51の場合には、光送信局51の出力スペクトルの平均値を用いればよい。また、最も近い後方の装置がOADM54ではなく光受信局55の場合には、光受信局55の入力スペクトルの平均値を用いればよい。
本実施形態において、例えば、図3(a)に示す第1局の出力スペクトルは、第1局が中継増幅装置53-1であるから、前方の光送信局51の出力スペクトルの平均値と後方のOADM54-1における前段増幅部の出力スペクトルの平均値との差分を求め、当該第1局の出力スペクトルは、前方の光送信局51の出力スペクトルにこの求めた差分の1/2を加算したものとする。
【0120】
ここで、2個のOADM54の間に中継増幅装置54が複数個存在する場合には、出力スペクトルを求めたい複数個の中継増幅装置53に対して、最も近い前方のOADM54における後段増幅部の出力スペクトルの平均値と最も近い後方のOADM54における前段増幅部の出力スペクトルの平均値との差分を求める。求めた差分を2個のOADM54の間に存在する中継増幅装置の個数に「1」を足した数(すなわち、2個のOADM54の間に存在する光伝送路52のスパンの数)で割り、1中継増幅装置当たりの変化量を求める。そして、2個のOADM54の間においてn番目の中継増幅装置53の出力スペクトルは、最も近い前方のOADM54における後段増幅部の出力スペクトルに変化量をn倍した量を加算したものとする。例えば、中継増幅装置53が5個存在する場合では、1番目の中継増幅装置53の出力スペクトルは、最も近い前方のOADM54における後段増幅部の出力スペクトルに変化量を1倍した量を加算したものとする。また、4番目の中継増幅装置53の出力スペクトルは、最も近い前方のOADM54における後段増幅部の出力スペクトルに変化量を4倍した量を加算したものとする。
【0121】
第1の実施形態において、例えば、図3(a)に示す第3局および第4局の出力スペクトルは、2個のOADM54-1、54-2の間に中継増幅装置54が2個存在する場合なので、前方のOADM54-1における後段増幅部の出力スペクトルの平均値と後方のOADM54-2における前段増幅部の出力スペクトルの平均値との差分を求める。求めた差分を中継増幅装置の個数に「1」を足した3で割り、1中継増幅装置当たりの変化量を求める。そして、第3局の出力スペクトルは、1番目の中継増幅装置であるから、前方のOADM54-1における後段増幅部の出力スペクトルに変化量を1倍した量を加算したものとする。第4局の出力スペクトルは、2番目の中継増幅装置であるから、前方のOADM54-1における後段増幅部の出力スペクトルに変化量を2倍した量を加算したものとする。
【0122】
第1の実施形態では、このように中継増幅装置52の出力スペクトルを算出することができるので、測定手段が省略されている。なお、中継増幅装置内に光増幅装置124の出力光を計測するスペクトラムアナライザとこのスペクトラムアナライザの出力をシステム制御回路56へ出力する中継増幅装置制御回路をさらに備え、中継増幅装置52の出力スペクトルを計測するようにしてもよい。
このようにしてシステム制御回路56は、光送信局51、各局および光受信局55におけるWDM方式光信号のスペクトルを取得する。
図8のS7において、システム制御回路56は、各局の部分光SNRj 、全光信号平均値およびPG部分光SNRを求める。ここで、第1の実施形態においては、部分光SNRj,k をPoutj,kで定義し、Poutj,kは、S3、S5およびS6で取得した各スペクトルから求める。
【0123】
したがって、全光信号平均値は、各局において、Poutj,kを全ch.について合計し、その平均値を求める。PG部分光SNRは、各局においてP.G.ごとに、Poutj,kを当該局で増幅されるP.G.内の光信号について合計し、その平均値を求める。
例えば、第3局における全光信号平均値は、Poutj,3を第3局で増幅されるch.1ないしch.32について合計し、その平均値を求める。そして、PG部分光SNRは、P.G.1では、Poutj,3をch.1ないしch.16について合計しその平均値を求め、P.G.2では、Poutj,3をch.17ないしch.24について合計しその平均値を求め、Poutj,3をch.25ないしch.32について合計しその平均値を求める。
【0124】
また、Poutj,kを用いるので、SPA157は、各ch.間のASEを測定する必要がない。このため、SPA157は、簡易な構造で安価なスペクトラムアナライザを使用することができる。
図8のS8において、システム制御回路56は、各局において、全光信号平均値とPG部分光SNRとの差分を求める。そして、システム制御回路56は、P.G.が入射されるすべての局について求めた局ごとの差分を加算する。
【0125】
図8のS9において、システム制御回路56は、すべてのP.G.についてS8の加算した結果が許容値以内か否かを判断する。
この許容値は、P.G.間のプリエンファシスにおける精度を決定する許容値であり、光通信システムに要求される誤り率などに依存する。この許容値をほぼ「0」に設定することにより、光通信システムは、誤り率が低く、超長距離を伝送する光通信システムにすることができる。
【0126】
図10に示すように、第1の実施形態においては、光送信局51を第0局と、光受信局55を第n+1局と考えて、各第k局における全光信号平均値をPoutav,k と表示し、PG部分光SNRをPoutgα,kと表示すると、S9は、
【数24】

の各式を同時に満たすようにすることである。
【0127】
システム制御回路56は、判断の結果、許容値以内ではない場合は、図8のS10の処理を行う。また、システム制御回路56は、判断の結果、許容値以内である場合は、図8のS11の処理を行う。
図8のS10において、システム制御回路56は、P.G.を挿入するOADM54において、S8の結果が正の値であるP.G.は、0.5dB下げ、S8の結果が負の値であるP.G.は、0.5dB上げる指示を、P.G.を挿入するOADM54のOADM制御回路175に指示する。プリエンファシスの精度は、この調整量の刻み幅が小さいほど上がる。
【0128】
図9のS22において、OADM制御回路175は、このシステム制御回路56からの指示に基づき、VAT169を用いて各ch.の光レベルを調整する。OADM制御回路175は、調整した結果をMO167、170の出力から確認し、目標とする光レベルとなるようにVAT136、169を調整する。そして、OADM制御回路175は、調整の終了をシステム制御回路56に出力する。
システム制御回路56は、調整の終了を確認すると、図8のS2に処理を戻し、S2ないしS9の処理を行う。
一方、図8のS11において、システム制御回路56は、P.G.内のプリエンファシスが終了しているか否かを判断する。システム制御回路56は、判断の結果、終了していない場合には、図8のS12の処理を行い、終了している場合には、プリエンファシスの処理を終了する。
【0129】
図8のS12において、システム制御回路56は、各OADM制御回路175に各OADM54における前段増幅部の出力スペクトルを出力するように指示する。さらに、システム制御回路56は、光受信局制御回路113に入力スペクトルを出力するように指示する。
図9のS23において、各OADM54の局におけるOADM制御回路175は、このシステム制御回路56からの指示を受けて、カプラ133からの光がSPA157に入射するようにSW156を切り換える。そして、各OADM制御回路175は、SPA157の出力(前段増幅部の出力スペクトル)をシステム制御回路56へ出力する。
【0130】
光受信局制御回路113は、SPA112の出力(入力スペクトル)をシステム制御回路56へ出力する。
図8のS13において、システム制御回路56は、S12の結果からP.G.ごとに分岐するch.のみの光レベルの平均値を求め、各P.G.においてch.ごとにch.の光レベルとその平均値との偏差を計算する。
図8のS14において、システム制御回路56は、この偏差を1/2にした量をスペクトル間の大小関係を逆転させた上で、P.G.内の各ch.におけるプリエンファシス量として各ch.に加減する。そして、システム制御回路56は、この各ch.の光レベルをP.G.を挿入する各OADM54のOADM制御回路175に指示する。
【0131】
図9のS24において、OADM制御回路175は、このシステム制御回路56からの指示に基づいて、VAT136、169で各ch.の光レベルを調整する。OADM制御回路175は、調整した結果をMO167、170の出力から確認し、目標とする光レベルとなるようにVAT169を調整する。そして、OADM制御回路175は、調整の終了をシステム制御回路56に出力する。
システム制御回路56は、調整の終了を確認すると、プリエンファシスの処理を終了する。
このようにシステム制御回路56および各OADM制御回路175は、各ch.の光レベルを制御することにより、所定のch.を分岐・挿入・通過するOADM54を2端局間に有する光通信システムにおいて、最適なプリエンファシスを行うことができる。
【0132】
次に、このような最適なプリエンファシスを設定した後にWDM方式光信号のch.数が増減した結果、プリエンファシスの再設定が必要になった場合について、その手順を説明する。
図11は、ch.数の増減によるプリエンファシスの再設定の場合におけるシステム制御回路のフローチャートを示す図である。
図12は、ch.数の増減によるプリエンファシスの再設定の場合におけるOADM制御回路のフローチャートを示す図である。
図11のS31において、システム制御回路56は、ch.の増減によりP.G.を再作成する。
図11のS32において、システム制御回路56は、各局の光増幅器をAGCモードに切り替えるように指示する。AGCモードとは、光増幅器の利得を制御するモードである。
【0133】
図12のS50において、OADM制御回路175は、OADM54内の光増幅器をAGCモードに切り替える。
図12のS51において、ch.数の増減を行うOADM64におけるOADM制御回路175は、1ch.分を受信・処理するFBG141、光増幅器161およびDEM162の分岐部を組み込み、1ch.分を生成する送信器165、光増幅器166、カプラ168、171、MO167、170、VAT169およびFIL172の挿入部を組み込む。そして、IS状態にする。
【0134】
IS(in-service)状態とは、挿入部を使用可能な状態にすることである。挿入部をIS状態で増設すると、接続完了と同時に送信器から光が送信されてしまい、ほかの光信号に悪影響を与えるなど光通信システムの運用上好ましくないため、挿入部を使用可能ではない状態(OOS;out-of-service)で増設する。このため、増設が完了した場合に、挿入部をIS状態にする。
図12のS52において、OADM制御回路175は、増設したch.の挿入光レベルを初期値に設定する。初期値は、光増幅器をAGCモードからALCモードに戻した場合に既存のch.の光信号に影響を及ばさないようにするため、既存のch.の光レベルの平均値、あるいは、このOADM64から出力されるWDM方式光信号における光レベルの平均値などに設定する。
【0135】
図11のS33において、システム制御回路56は、光送信局51、中継増幅装置53、OADM54および光送信局55内の各種光部品の初期設定を行うプロビジョニングを行う。特に、ch.数が増減したことから光増幅器の設定を変更する。
図11のS34において、システム制御回路56は、各局の光増幅器をALCモードの切り替えるように指示する。ALCモードとは、光増幅器の出力を制御するモードである。
【0136】
図11のS35において、システム制御回路56は、各OADM制御回路175に各OADM54における後段増幅部の出力スペクトルを出力するように指示する。さらに、システム制御回路56は、光送信局制御回路107に出力スペクトルを出力するように指示する。
図12のS53において、各OADM54の局におけるOADM制御回路175は、このシステム制御回路56からの指示を受けて、カプラ155からの光がSPA157に入射するようにSW156を切り換える。そして、各OADM制御回路175は、SPA157の出力(後段増幅部の出力スペクトル)をシステム制御回路56へ出力する。
【0137】
光送信局制御回路107は、SPA106の出力(出力スペクトル)をシステム制御回路56へ出力する。
図11のS36において、システム制御回路56は、各OADM制御回路175から各OADM54における後段増幅部の出力スペクトルを取得する。さらに、システム制御回路56は、光送信局制御回路107から出力スペクトルを取得する。
【0138】
図11のS37において、システム制御回路56は、各OADM制御回路175に各OADM54における前段増幅部の出力スペクトルを出力するように指示する。さらに、システム制御回路56は、光受信局制御回路113に入力スペクトルを出力するように指示する。
図12のS54において、各OADMの局におけるOADM制御回路175は、このシステム制御回路56からの指示を受けて、カプラ133からの光がSPA157に入射するようにSW156を切り換える。そして、各OADM制御回路175は、SPA157の出力(前段増幅部の出力スペクトル)をシステム制御回路56へ出力する。
【0139】
光受信局制御回路113は、SPA112の出力(入力スペクトル)をシステム制御回路56へ出力する。
図11のS38において、システム制御回路56は、各OADM制御回路175から各OADMにおける前段増幅部の出力スペクトルを取得する。さらに、システム制御回路56は、光受信局制御回路113から入力スペクトルを取得する。
ここで、OADM54内の光増幅器において、光増幅器で利得等化を行っている場合にはスロープ補償量を考慮し、利得等化を行っていない場合の後段増幅部の出力スペクトルおよび前段増幅部の出力スペクトルを求めて、これらを新たにそれぞれ後段増幅部の出力スペクトルおよび前段増幅部の出力スペクトルとする。
【0140】
図11のS39において、システム制御回路56は、各中継増幅装置53の出力スペクトルを計算する。なお、この計算は、前述のS6と同様に求めることができるので、その説明を省略する。
図11のS40において、システム制御回路56は、各局の部分光SNRj 、全光信号平均値およびPG部分光SNRを求める。ここで、第1の実施形態においては、部分光SNRj,k をPoutj,kで定義し、Poutj,kは、S36、S38およびS39で取得した各スペクトルから求める。
【0141】
図11のS41において、システム制御回路56は、各局において、全光信号平均値とPG部分光SNRとの差分を求める。そして、システム制御回路56は、ch.数が増減したP.G.に対して、P.G.が入射されるすべての局について求めた局ごとの差分を加算する。
図11のS42において、システム制御回路56は、ch.数の増減したP.G.についてS41の加算した結果が許容値以内か否かを判断する。
【0142】
システム制御回路56は、判断の結果、許容値以内ではない場合は、図11のS43の処理を行う。また、システム制御回路56は、判断の結果、許容値以内である場合は、図11のS44の処理を行う。
図11のS43において、システム制御回路56は、S41の結果が正の値であるP.G.は、0.5dB下げ、S41の結果が負の値であるP.G.は、0.5dB上げる指示を、前述の図12のS51においてDEM162などの分岐部や送信器165などの挿入部を増設したOADM54のOADM制御回路175に指示する。プリエンファシスの精度は、この調整量の刻み幅が小さいほど上がる。
【0143】
図12のS55において、OADM制御回路175は、このシステム制御回路56からの指示に基づき、VAT169を用いて各ch.の光レベルを調整する。OADM制御回路175は、調整した結果をMO167、170の出力から確認し、目標とする光レベルとなるようにVAT169を調整する。そして、OADM制御回路175は、調整の終了をシステム制御回路56に出力する。
システム制御回路56は、調整の終了を確認すると、図11のS35に処理を戻し、S35ないしS42の処理を行う。
一方、図11のS44において、システム制御回路56は、S40の結果からch.数が増減したP.G.において、各ch.ごとに挿入光レベルと分岐光レベルとの和を求める。
【0144】
図11のS45において、システム制御回路56は、ch.数が増減したP.G.において、S44で求めた各ch.の和がほぼ等しくなるように各ch.の挿入光レベルを求め、そのP.G.を挿入するOADM制御回路175に指示する。
図12のS56において、OADM制御回路175は、このシステム制御回路56からの指示に基づいて、VAT136、169を用いて挿入光レベルを調整する。OADM制御回路175は、調整した結果をMO167、170の出力から確認し、目標とする光レベルとなるようにVAT136、169を調整する。そして、OADM制御回路175は、調整の終了をシステム制御回路56に出力する。
【0145】
図11のS46において、図8に示すS1〜S14の手順により、プリエンファシスを行い、システム制御回路56は、処理を終了する。
WDM方式光信号のch.数が増減した場合には、このようにプリエンファシスを再設定する。
なお、第1の実施形態において、プリエンファシスを行う際の各ch.の光レベルの調整は、VAT103、136、169によって行う場合について説明したが、VAT103、136、169の代わりに光増幅器によって各ch.の光レベルの調整を行ってもよい。
【0146】
次に、別の実施の形態について説明する。
(第2の実施形態の構成)
第2の実施形態は、光通信システムの実施形態である。
図13は、第2の実施形態における光通信システムの全体構成とP.G.を示す図である。
図14は、第2の実施形態の光通信システムにおけるOADMの構成を示す図である。
まず、第2の実施形態における光通信システムの全体構成について説明し、次に、この光通信システムに使用されるOADMの構成について詳細に説明する。なお、第2の実施形態の光通信システムに使用される中継増幅装置の構成は、図6に示す中継増幅装置と同一なので、その説明を省略する。
【0147】
第2の実施形態における光通信システムの全体構成について説明する。
図13(a)において、第2の実施形態における光通信システムは、OADM64と、これらのOADM64を接続する光伝送路62とからリング状のネットワークを構成し、OADM64の間には、OADM64間の伝送損失を補うべく、光伝送路62を伝送するWDM方式光信号を増幅する中継増幅装置63が設けられる。
OADM64は、光伝送路62を伝送するWDM方式光信号から所定のch.を分岐・挿入・通過する。そして、OADM64は、OADM64に入射されるWDM方式光信号のスペクトルおよびOADM64から射出されるWDM方式光信号のスペクトルをシステム制御回路65に出力し、システム制御回路65からの制御信号に基づいて挿入すべき各ch.にプリエンファシスを行った上で光伝送路62に挿入する。
【0148】
次に、第2の実施形態の光通信システムに使用されるOADMの構成について詳細に説明する。
図14において、光伝送路62を伝送するWDM方式光信号は、OADM64の光増幅器201に入射され、増幅される。光増幅器201は、主に光伝送路62中で生じる伝送損失を補償するプリアンプである。増幅されたWDM方式光信号は、カプラ202に入射される。
【0149】
カプラ202に入射されたWDM方式光信号は、2つに分岐される。分岐した一方のWDM方式光信号は、SW280に入射され、分岐した他方のWDM方式光信号は、カプラ203に入射される。
カプラ203に入射されたWDM方式光信号は、2つに分岐される。分岐した一方のWDM方式光信号は、MO227に入射され、分岐した他方のWDM方式光信号は、カプラ204に入射される。
【0150】
MO227は、WDM方式光信号の光レベルを検出するモニタであり、検出結果は、OADM制御回路285へ出力される。OADM制御回路285は、このMO227からの出力により、OADM64に入射されるWDM方式光信号の光レベルおよび信号断などを検出することができる。そして、信号断の場合は、必要に応じて警告を発する。この信号断は、光増幅器201とカプラ203の間の障害などによって生じるものである。
【0151】
カプラ204に入射されたWDM方式光信号は、2つに分岐される。分岐した一方のWDM方式光信号は、ATT205に入射され、分岐した他方のWDM方式光信号は、DC231に入射される。
このATT205へ射出されたWDM方式光信号は、後述する各光部品で処理されることによりOADM64を通過するWDM方式光信号となる。一方、DC231へ射出されたWDM方式光信号から後述する各光部品で処理されてOADM64で分岐するch.が取り出される。
【0152】
ATT205に入射されたWDM方式光信号は、その光レベルを減衰されてDC206へ射出される。ATT205の減衰量は、DC206中で生じる非線形光学現象を防止することができるように調整される。
DC206は、OADM64を通過するch.に対して、主に光伝送路62中で生じる波長分散を補償する分散補償器であり、波長分散を補償されたWDM方式光信号は、光増幅器207へ射出される。光増幅器207は、カプラ202、203、204、ATT205およびDC206などで生じる伝送損失を補償するプリアンプである。
【0153】
光増幅器207で増幅されたWDM方式光信号は、カプラ208に入射される。カプラ208に入射されたWDM方式光信号は、2つに分岐される。分岐した一方のWDM方式光信号は、サイクリックフィルタ(以下、「CFIL」と略記する。)210に入射され、分岐した他方のWDM方式光信号は、MO209に入射される。
MO209は、WDM方式光信号の光レベルを検出するモニタであり、検出結果は、OADM制御回路285へ出力される。OADM制御回路285は、このMO209からの出力により、CFIL210に入射されるWDM方式光信号の有無を検出する。これにより、OADM制御回路285は、ATT205、DC206および光増幅器207などの故障や各光部品をコネクタなどで接続している場合にはその脱落などを検出することができ、必要に応じて警告を発する。
【0154】
CFIL210に入射されたWDM方式光信号は、CFIL210で偶数のch.と奇数のch.とに分けられ、それぞれ音響光学チューナブルフィルタ(acousto-optic tunable filter、以下、「AOTF」と略記する。)211、212に入射される。
AOTF211、212は、音響光学効果により誘起される屈折率変化により、入射光を回折効果により分離・選択する音響光学フィルタである。この音響光学効果を生じさせる超音波は、弾性表面波を利用し、弾性表面波は、圧電作用を示す基板上に電極を形成し、この電極にRF周波数の電圧を印加することによって生じさせる。このため、RF周波数を制御することにより、AOTF211、212で遮断されるch.を変更することができる。
【0155】
AOTF211、212は、OADM制御回路285からの制御信号によって遮断されるch.が制御され、遮断されるch.は、このOADM64で分岐するch.が選択される。
ここで、CFILによって偶数のch.と奇数のch.とに分離してからそれぞれAOTF211、212で遮断すべきch.を遮断するのは、偶数のch.と奇数のch.とに分離することによってch.間隔がWDM方式光信号のch.間隔の2倍になるので、1個のAOTFによって遮断する場合よりも容易にかつ確実に遮断すべきch.を遮断することができるからである。
【0156】
所定のch.を遮断されたAOTF211からのWDM方式光信号は、VAT213に入射される。そして、所定のch.を遮断されたAOTF212からのWDM方式光信号は、VAT214に入射される。
VAT213、214は、入射される光の光レベルを減衰して射出する可変減衰器である。この減衰量は、OADM制御回路285からの制御信号によって制御され、VAT213、214は、各AOTF211、212で遮断されるch.数の相違によって生じる光レベルを調整し、AOTF211、212のそれぞれから射出されるWDM方式光信号の光レベルをほぼ等しくしてCFIL215へ射出する。
【0157】
各VAT213、214からCFIL215に入射されたWDM方式光信号は、CFIL215で偶数のch.と奇数のch.とを波長多重され、SW216に入射される。
SW216は、OADM制御回路285によって遮断・透過を制御されるスイッチである。SW216は、遮断状態にすることによって、OADM64内の各光部品を設定する場合やOADM64に障害が発生した場合などに光が光伝送路62に漏れるのを防止することができる。このため、そのような場合に他のOADM64間を伝送するWDM方式光信号にクロストークなどの影響を与えることがない。
【0158】
特に、AOTFは、一般に、遮断波長の温度依存性や経年変化のために適当な間隔でRF周波数と遮断波長との関係を修正する必要があるため、このような設定中に有効である。
SW216からのWDM方式光信号は、光増幅器217に入射される。光増幅器217は、光増幅器207とこの光増幅器217との間の各光部品で生じる伝送損失を補償するプリアンプである。
光増幅器217で増幅されたWDM方式光信号は、カプラ218に入射される。カプラ218に入射されたWDM方式光信号は、2つに分岐される。分岐した一方のWDM方式光信号は、VAT220に入射され、分岐した他方のWDM方式光信号は、MO219に入射される。
【0159】
VAT220は、入射される光の光レベルを減衰して射出する可変減衰器である。減衰されたWDM方式光信号は、カプラ221に入射される。カプラ221に入射されたWDM方式光信号は、2つに分岐される。分岐した一方のWDM方式光信号は、WDMカプラ223に入射され、分岐した他方のWDM方式光信号は、MO222に入射される。
【0160】
MO219、222は、WDM方式光信号の光レベルを検出するモニタであり、検出結果は、OADM制御回路285へ出力される。OADM制御回路285は、MO219およびMO222の検出結果に基づいて、VAT220の減衰量を調整することにより、WDM方式光信号の光レベルを調整する。減衰量は、このOADM64を通過されるWDM方式光信号の平均光レベルと挿入されるWDM方式光信号の平均光レベルとがほぼ等しくなるように調整される。また、OADM制御回路285は、この挿入されるWDM方式光信号の平均光レベルを後述するMO270の出力によって判断する。
【0161】
カプラ223は、カプラ221からのOADM64を通過するWDM方式光信号と後述する構成により生成されたOADM64で挿入されるWDM方式光信号とを波長多重する。波長多重されたWDM方式光信号は、光増幅器224へ射出される。
光増幅器224は、所定の光レベルまで増幅するポストアンプである。増幅されたWDM方式光信号は、カプラ225へ射出される。
カプラ225に入射されたWDM方式光信号は、2つに分岐される。分岐した一方のWDM方式光信号は、次段の局に伝送されるべく光伝送路62へ射出され、分岐した他方のWDM方式光信号は、SW280に射出される。
【0162】
SW280は、2×1光スイッチであり、OADM制御回路285からの制御信号により、カプラ202からのWDM方式光信号またはカプラ225からのWDM方式光信号のいずれか一方をSPA281へ射出する。
SPA281は、入射する光の波長とこの波長における光レベルとを計測するスペクトラムアナライザである。SPA281は、SW280の選択により、OADM64に入射され光増幅器201で増幅されたWDM方式光信号のスペクトルまたはOADM64から光伝送路62へ射出されるWDM方式光信号のスペクトルを計測し、その計測結果をOADM制御回路285に出力する。
【0163】
一方、カプラ204で分岐されたWDM方式光信号は、DC231に入射され、次のようにして、このOADM64で分岐するch.が受信・処理される。
DC231は、OADM64で分岐するch.に対し、主に光伝送路62中で生じる波長分散を補償する分散補償器であり、波長分散を補償されたWDM方式光信号は、カプラ232へ射出される。
【0164】
カプラ232に入射されたWDM方式光信号は、2つに分岐される。分岐した一方のWDM方式光信号は、カプラ234に入射され、分岐した他方のWDM方式光信号は、MO233に入射される。
MO233は、WDM方式光信号の光レベルを検出するモニタであり、検出結果は、OADM制御回路285へ出力される。OADM制御回路285は、このMO233からの出力により、OADM64で分岐するWDM方式光信号の信号断などを検出することができ、必要に応じて警告を発する。
【0165】
カプラ234に入射されたWDM方式光信号は、4つに分岐され、それぞれトリビュータリ(以下、「TRB」と略記する。)290-1〜290-4に入射される。1個のTRB290は、8ch.分の光信号を受信し、8ch.分の光信号を生成することができ、TRB290-1は、ch.1ないしch.8の光信号を受信・生成する。TRB290-2は、ch.9ないしch.16の光信号を受信・生成する。TRB290-3は、ch.17ないしch.24の光信号を受信・生成する。そして、TRB290-4は、ch.25ないしch.32の光信号を受信・生成する。
【0166】
ここで、各TRB290-1〜290-4は、互いに同一の構成なので、TRB290-1について説明し、TRB290-2〜290-4については、その説明を省略する。
カプラ234で4つに分岐されたWDM方式光信号の1つは、TRB290-1の光増幅器235に入射される。光増幅器235は、光増幅器201とこの光増幅器235との間の各光部品で生じる伝送損失を補償するプリアンプである。
【0167】
光増幅器235で増幅されたWDM方式光信号は、カプラ236に入射される。カプラ236に入射されたWDM方式光信号は、2つに分岐される。分岐した各WDM方式光信号は、それぞれカプラ237-1、237-2に入射される。
カプラ237-1に入射されたWDM方式光信号は、さらに4つに分岐され、それぞれTF241-1〜241-4に入射される。TFは、波長可変光フィルタ(tunable filter)の略記である。
【0168】
TF241-1は、所定の波長帯域の光を透過する帯域通過フィルタであり、その透過波長帯域の中心波長は、ch.1の波長に対応する波長に設定される。このため、TF241-1は、32波のWDM方式光信号の中からch.1の光信号だけを透過させる。
TF241-1からのch.1の光信号は、カプラ242-1に入射される。カプラ242-1に入射されたch.1の光信号は、2つに分岐される。分岐した一方のch.1の光信号は、光増幅器244-1に入射され、分岐した他方のch.1の光信号は、MO243-1に入射される。
【0169】
MO243-1は、ch.1の光レベルを検出するモニタであり、検出結果は、OADM制御回路285へ出力される。OADM制御回路285は、このMO243-1からの出力により、ch.1の光信号の有無を確認する。
光増幅器244-1は、受光レベルを上げるプリアンプであり、カプラ242-1からのch.1の光信号を増幅してDEM245-1へ射出する。
【0170】
DEM245-1は、光増幅器244-1からのch.1の光信号を復調し、ch.1の光信号から情報を取り出す。DEM245-1としては、光信号を電気信号に変えるホトダイオードなどの受光素子を利用することができる。
このようなTF241-1、カプラ242-1、MO243-1、光増幅器244-1およびDEM245-1と同一の構成が、カプラ237-1、237-2で分岐される各WDM方式光信号に対して設けられ、各TF241-2〜241-8の透過波長帯域の中心波長は、それぞれch.2〜ch.8の波長に対応する波長に設定される。
【0171】
このようにしてTRB290-1内において、ch.1ないしch.8の光信号が受信・処理される。
また、OADM64で挿入されるch.1ないしch.8の光信号は、次のように、生成される。
TRB290-1内の送信器251-1は、LDとMODとから構成されch.1の波長の光信号を生成する。生成されたch.1の光信号は、光増幅器252-1へ射出される。
光増幅器252-1は、所定の光レベルまで増幅するポストアンプである。増幅されたch.1の光信号は、TF253-1に入射される。
TF253-1は、所定の波長帯域の光を透過する帯域通過フィルタであり、その透過波長帯域の中心波長は、ch.1の波長に対応する波長に設定される。このため、TF253-1は、ch.1の光信号だけを透過させ、光増幅器252-1で発生したASEを除去することができる。
【0172】
TF253-1からのch.1の光信号は、カプラ255-1へ射出される。カプラ255-1は、TF253-1からのch.1の光信号を2つに分岐する光分岐結合器である。分岐した一方のch.1の光信号は、MO254-1へ射出され、分岐した他方の光信号は、VAT256-1へ射出される。
MO254-1は、光信号の光レベルを検出するモニタであり、検出結果は、OADM制御回路285へ出力される。
【0173】
VAT256-1は、カプラ255-1からの光信号の光レベルを減衰してカプラ257-1へ射出する。この減衰量は、OADM制御回路285からの制御信号によって制御される。
カプラ257-1は、VAT256-1からの光信号を2つに分岐する光分岐結合器である。分岐した一方の光信号は、MO258-1へ射出され、分岐した他方の光信号は、カプラ260-1へ射出される。
MO258-1は、光信号の光レベルを検出するモニタであり、検出結果は、OADM制御回路285へ出力される。
カプラ260-1は、VAT256-1からの光信号を2つに分岐する光分岐結合器である。分岐した一方の光信号は、カプラ261-1へ射出され、分岐した他方の光信号は、MO259-1へ射出される。
【0174】
MO259-1は、光信号の光レベルを検出するモニタであり、検出結果は、OADM制御回路285へ出力される。OADM制御回路285は、MO259-1の出力からch.1の光信号の有無を確認する。
OADM制御回路285は、MO254-1およびMO258-1の検出結果に基づいて、VAT256-1の減衰量を調整することにより、ch.1の光信号の光レベルを所望の光レベルに調整する。このように減衰量を調整することによりOADM64において挿入される光信号の光レベルを調整することできるので、最適なプリエンファシスを行うことができる。
【0175】
このような送信器251-1、光増幅器252-1、カプラ255-1、MO254-1、VAT256-1、カプラ257-1、MO258-1、カプラ260-1およびMO259-1からなる構成は、ch.1ないしch.8ごとに用意される。そして、各TF253-2〜253-8の透過波長帯域の中心波長は、それぞれch.2〜ch.8の波長に対応する波長に設定される。
各カプラ260-1〜260-4からのch.1ないしch.4は、カプラ261-1に入射され、波長多重される。波長多重されたch.1ないしch.4のWDM方式光信号は、カプラ262へ射出される。また、各カプラ260-5〜260-8からのch.5ないしch.8は、カプラ261-2に入射され、波長多重される。波長多重されたch.5ないしch.8のWDM方式光信号は、カプラ262へ射出される。
【0176】
カプラ262は、カプラ261-1からのWDM方式光信号とカプラ261-2からのWDM方式光信号とを波長多重し、ch.1ないしch.8のWDM方式光信号を生成する。
このようにしてTRB290-1内において、ch.1ないしch.8の光信号が生成される。
ここで、32波のWDM方式光信号の中からいずれのch.をこのOADM64で分岐して受信・処理するか、および、いずれのch.を生成して挿入するかは、OADM制御回路285によって、DEM245-1〜245-32 、送信器251-1〜251-32 、TF241-1〜241-32 、および、TF253-1〜253-32 を制御することによって行われる。
【0177】
各TRB290-1〜290-4からのWDM方式光信号は、それぞれカプラ264-1〜264-4に入射される。各カプラ264-1は、それぞれWDM方式光信号を2つに分岐する光分岐結合器である。分岐した一方の各WDM方式光信号は、カプラ265へ射出され、分岐した他方の各WDM光信号は、それぞれ対応するMO263-1〜263-4へ射出される。
【0178】
各MO263-1〜263-4は、光信号の光レベルを検出するモニタであり、各検出結果は、OADM制御回路285へ出力される。OADM制御回路285は、各MO263-1〜263-4の出力からそれぞれ対応するTRB290-1〜290-4のWDM方式光信号の有無を確認する。
カプラ265は、それぞれ対応するカプラ264-1〜264-4を介して入射されるTRB290-1〜290-4からのWDM方式光信号を波長多重して、光増幅器266へ射出する。
【0179】
光増幅器266は、TRB290内の光部品によって生じた伝送損失を補償するプリアンプである。光増幅器266で増幅されたWDM方式光信号は、DC267へ射出される。
DC267は、OADM64において挿入されるch.に対して、主に光伝送路52中で生じる波長分散を補償する分散補償器であり、波長分散を補償されたWDM方式光信号は、カプラ269へ射出される。
カプラ269は、WDM方式光信号を2つに分岐する光分岐結合器である。分岐した一方のWDM方式光信号は、WDMカプラ223へ射出され、分岐した他方の各WDM光信号は、MO270へ射出される。
MO270は、光信号の光レベルを検出するモニタであり、各検出結果は、OADM制御回路285へ出力される。OADM制御回路285は、MO270の出力からこのOADM64で挿入すべきch.の光信号の有無を確認する。
【0180】
ここで、光増幅器201、207、217、224、244、252は、増幅媒体に外部からエネルギーを供給することにより反転分布を形成し、この状態で増幅すべき光を入射させて誘導放射を引き起こすことによって、光を所定の利得で増幅する。光増幅器として、例えば、半導体レーザ増幅器や光ファイバ増幅器を利用することができる。
カプラ202、203、204、208、218、221、223、232、242、255、257、260、261、262、264、265、269は、入射する光を2つに分岐する光分岐結合器である。カプラとして、例えば、ハーフミラーなどの微少光学素子形光分岐結合器や溶融ファイバの光ファイバ形光分岐結合器や光導波路形光分岐結合器などを利用することができる。
【0181】
DC206、231、267としては、WDM方式光信号に生じた分散を打ち消すように反対符号の分散を持つ分散補償ファイバを利用することができる。
このように第2の実施形態の光通信システムに適用されるOADM64は、WDM方式光信号から所定のch.を分岐・挿入・通過する機能のほか、OADMに入射されたWDM方式光信号の各ch.の光レベルを計測する機能、OADMから射出されるWDM方式光信号の各ch.の光レベルを計測する機能および挿入すべきch.の光レベルを調整する機能を持つ。
【0182】
(本発明と第2の実施形態との対応関係)
以下、本発明と第2の実施形態との対応関係について説明する。
光伝送路は光伝送路62に対応し、局は中継増幅装置63およびOADM64に対応する。特に、測定手段はOADM64内のSPA281に対応し、演算回路はシステム制御回路65に対応し、調整手段はOADM64内のVAT256に対応する。
【0183】
また、プリエンファシス用制御装置はシステム制御回路65に対応する。
ここで、カプラ202をそれぞれ光増幅器201の直前に接続し、光増幅器201に入射されるWDM方式光信号のスペクトルを計測する構成にしてもよい。
【0184】
(第2の実施形態の作用効果)
次に、第2の実施形態の光通信システムにおけるプリエンファシスについて説明する。
図15は、第2の実施形態の光通信システムにおけるシステム制御回路のフローチャートを示す図である。
図16は、第2の実施形態の光通信システムにおけるOADM制御回路のフローチャートを示す図である。
【0185】
初めに、図13および図14に示す第2の実施形態における光通信システムを立ち上げる場合には、或るOADM64から時計回りまたは反時計回りに順次に各装置を立ち上げる。
そして、各装置ごとに、信号が到達しているかの確認、ASE補正、DCの入力光レベルの制限の確認などを行う。
さらに、OADM64で挿入される各ch.の光レベルは、ほぼ等しくなるように、かつ、OADM64を通過するch.の平均光レベルになるように設定される。
【0186】
そして、OADM64において、光増幅器224に入射される全光レベル、光増幅器201、207のASE補正量およびch.数から、光増幅器217へ入射される平均光レベルが所定の値以上になっていることを確認する。
各装置について、このような初期設定を行った後に、次の手順によって光通信システムのプリエンファシスを行う。このプリエンファシスについて、図15および図16を用いて説明する。
【0187】
図15のS71において、システム制御回路65は、各ch.のパスからP.G.を作成する。
例えば、本実施形態では、図13(b)に示すように、OADM64-1の局2から挿入されOADM64-3の局7で分岐されるch.1ないしch.16をP.G.1とする。OADM64-3の局7から挿入されOADM64-4の局9で分岐されるch.1ないしch.8をP.G.2とする。OADM64-2の局4から挿入されOADM64-4の局9で分岐されるch.17ないしch.32をP.G.3とする。OADM64-4の局9から挿入されOADM64-1の局2で分岐されるch.17ないしch.24をP.G.4とする。OADM64-3の局7から挿入されOADM64-1の局2で分岐されるch.9ないしch.16をP.G.5とする。
【0188】
図15のS72において、システム制御回路65は、各OADM制御回路285に各OADM64における光増幅器201の出力スペクトルを出力するように指示する。
図16のS90において、各OADM64の局におけるOADM制御回路285は、このシステム制御回路65からの指示を受けて、カプラ202からの光がSPA281に入射するようにSW280を切り換える。そして、各OADM制御回路285は、SPA281の出力(光増幅器201の出力スペクトル)をシステム制御回路65へ出力する。
【0189】
図15のS73において、システム制御回路65は、各OADM制御回路285から各OADM64における光増幅器201の出力スペクトルを取得する。
図15のS74において、システム制御回路65は、各OADM64の入力スペクトルを計算する。
S73で取得した光増幅器201の出力スペクトルは、光増幅器のASEと光増幅器201の利得波長特性を等化するためのスロープ補償量とを重畳したスペクトルであるから、各OADM64の入力スペクトルは、光増幅器201の出力スペクトルからこれらASEおよびスロープ補償量を差し引くことによって求めることができる。
【0190】
図15のS75において、システム制御回路65は、各OADM制御回路285に各OADM64の出力スペクトルを出力するように指示する。
図16のS91において、各OADMの局におけるOADM制御回路285は、このシステム制御回路65からの指示を受けて、カプラ225からの光がSPA281に入射するようにSW280を切り換える。そして、各OADM制御回路285は、SPA280の出力(OADM64の出力スペクトル)をシステム制御回路65へ出力する。
【0191】
図15のS76において、システム制御回路65は、各OADM制御回路285から各OADMの出力スペクトルを取得する。
ここで、OADM64内の光増幅器において、ASEによって生じる光増幅器の利得波長特性を等化する利得等化を行っている場合には、S73において光増幅器201の出力スペクトルからこの利得等化を補償するスロープ補償量を差し引き、利得等化を行っていない場合の光増幅器201の出力スペクトルを求めて、これらを新たに光増幅器201の出力スペクトルとする。
【0192】
図15のS77において、システム制御回路65は、各中継増幅装置63の入力スペクトルを計算する。各中継増幅装置63の入力スペクトルは、第1の実施形態における図8のS6と同様に計算されるので、その説明を省略する。
このようにしてシステム制御回路65は、各局におけるWDM方式光信号の入力スペクトルを取得する。
【0193】
図15のS78において、システム制御回路65は、各局の部分光SNRj 、全光信号平均値およびPG部分光SNRを求める。ここで、本実施形態においては、部分光SNRj,k として(式3)を用いるが、S74、S76およびS77の値を用いて下記の(式9)によって光SNRj,k を計算する。
【数25】

(式9)は、(式3)をデシベル単位に変換した式である。また、hνΔfは、定数であり、10log(hνΔf)=57.9である。
図15のS79において、システム制御回路65は、各局において、全光信号平均値とPG部分光SNRとの差分を求める。そして、システム制御回路65は、P.G.が入射されるすべての局について求めた局ごとの差分を加算する。
【0194】
図15のS80において、システム制御回路65は、すべてのP.G.についてS8の加算した結果が許容値以内か否かを判断する。システム制御回路65は、判断の結果、許容値以内ではない場合は、図15のS81の処理を行う。また、システム制御回路65は、判断の結果、許容値以内である場合は、図15のS82の処理を行う。
図15のS81において、システム制御回路65は、P.G.を挿入するOADM64において、S79の結果が正の値であるP.G.は、0.5dB下げ、S79の結果が負の値であるP.G.は、0.5dB上げる指示を、P.G.を挿入するOADM64のOADM制御回路285に指示する。
図16のS92において、OADM制御回路285は、このシステム制御回路65からの指示に基づき、VAT220、256を用いて各ch.の光レベルを調整する。OADM制御回路285は、調整した結果をMO254、258の出力から確認し、目標とする光レベルとなるようにVAT256を調整する。そして、OADM制御回路285は、調整の終了をシステム制御回路65に出力する。
【0195】
システム制御回路65は、調整の終了を確認すると、図15のS72に処理を戻し、S72ないしS80の処理を行う。
一方、図15のS82において、システム制御回路65は、P.G.内のプリエンファシスが終了しているか否かを判断する。システム制御回路65は、判断の結果、終了していない場合には、図15のS83の処理を行い、終了している場合には、プリエンファシスの処理を終了する。
【0196】
図15のS83において、システム制御回路65は、各OADM制御回路285に各OADM64の光増幅器201の出力スペクトルを出力するように指示する。
図16のS93において、各OADM64のOADM制御回路285は、このシステム制御回路65からの指示を受けて、カプラ202からの光がSPA281に入射するようにSW280を切り換える。そして、各OADM制御回路285は、SPA281の出力(光増幅器201の出力スペクトル)をシステム制御回路65へ出力する。
【0197】
図15のS94において、システム制御回路65は、S73の結果から光増幅器201のASEおよびスロープ補償量を引くことによって各OADM64の入力スペクトルを求める。システム制御回路65は、(式9)を用いて、この入力スペクトルからP.G.ごとに分岐するch.のみの部分光SNRj の平均値を求める。そして、システム制御回路65は、各P.G.においてch.ごとに部分光SNRj とその平均値との偏差を計算する。
【0198】
図15のS85において、システム制御回路65は、P.G.内の各ch.におけるプリエンファシス量としてこの偏差の符号を反転した量を各ch.に加算する。そして、システム制御回路65は、この各ch.の部分光SNRj をP.G.を挿入する各OADM64のOADM制御回路285に指示する。
図16のS94において、OADM制御回路285は、このシステム制御回路65からの指示に基づいて部分光SNRj から各ch.のPinj を求め、VAT256を用いて各ch.の光レベルを調整する。OADM制御回路285は、調整した結果をMO254、258の出力から確認し、目標とする光レベルとなるようにVAT256を調整する。そして、OADM制御回路285は、調整の終了をシステム制御回路65に出力する。
【0199】
システム制御回路65は、調整の終了を確認すると、プリエンファシスの処理を終了する。
このようにシステム制御回路65および各OADM制御回路285は、各ch.の光レベルを制御することにより、所定のch.を分岐・挿入・通過するOADM64を有するリングネットワークにおいて、最適なプリエンファシスを行うことができる。
【0200】
次に、別の実施形態について説明する。
(第3の実施形態)
第3の実施形態は、光SNR測定装置の実施形態である。
図17は、第3の実施形態における光SNR測定装置の全体構成と局の詳細構成を示す図である。
図18は、第3の実施形態における演算回路のフローチャートを示す図である。
【0201】
図17(a)において、WDM方式光信号は、光伝送路72を伝送される。光伝送路72の間には、伝送損失を補うべく光を増幅する複数の局73が接続されている。局73は、後述ように監視制御回路316から信号を演算回路76へ送信する。演算回路76は、この信号に基づいて光SNRを測定する。そして、演算回路76には、入力装置77および表示装置78が接続される。入力装置77は、スイッチやキーボードなどの測定開始の指示などを入力する装置である。表示装置78は、CRTや液晶ディスプレイなどの測定結果などを表示する装置である。また、図17(a)では、第1局73-1から第5局73-5までの区間の光SNRを測定する場合を示している。
【0202】
図17(b)において、局73に入射されたWDM方式光信号は、カプラ301、302、303、希土類元素添加光ファイバ304、カプラ305およびISO306を介して、光増幅されて局73から射出される。
カプラ301は、入射されたWDM方式光信号の一部を分配してSPA311に入射させる。SPA311は、受光したWDM方式光信号のスペクトルに対応した信号を監視制御回路316に出力する。
カプラ302は、入射されたWDM方式光信号の一部を分配してホトダイオード(以下、「PD」と略記する。)312に入射させる。PD312は、受光した光の光レベルに対応した信号を監視制御回路316に出力する。
【0203】
また、LD313、314は、希土類元素添加光ファイバを励起するための励起光を発光する。LD313からの励起光は、カプラ303でカプラ302からのWDM方式光信号と合波されて、希土類元素添加光ファイバ304に供給される。LD314からの励起光は、カプラ305を介して、希土類元素添加光ファイバ304に供給される。このようにLD313は、希土類元素添加光ファイバを前方向励起し、LD314は、後方向励起する。
【0204】
なお、増幅すべきWDM方式光信号を充分に増幅することができる程度に1個のLDで希土類元素添加光ファイバを励起することができる場合には、LD313、314は、いずれか一方でよい。
また、光ファイバに添加される希土類元素は、増幅すべきWDM方式光信号の波長によって選定される。そして、LDの発振波長は、選定された希土類元素を励起することができる光の波長が選定される。例えば、WDM方式光信号が1550nm帯である場合には、希土類元素としてエルビウム元素(Er)が選定され、WDM方式光信号が1450帯である場合には、希土類元素としてツリウム元素(Tm)が選定される。なお、エルビウム元素およびツリウム元素は、ともにランタノイドの希土類元素の1つであり、ランタノイドに属する元素は、互いに性質が類似している。
【0205】
希土類元素添加光ファイバ304は、これら励起光を吸収することによりファイバ内の希土類元素が励起され反転分布を形成する。この反転分布を形成した状態でWDM方式光信号が入射するとこのWDM方式光信号に誘導されて誘導放射が起こり、WDM方式光信号が増幅される。
ISO306は、一方向にのみ光を透過する光部品であり、局73内における各光部品の接続部などからの反射光が何処までも伝搬するのを防止する役割を果たす。特に、反射光がLD313、314に戻ってくると、LD313、314は、位相や振幅のまちまちな反射光に誘起されて、発振モードが変化したり、雑音が発生したりする。このため、ISO306によってこの悪影響を防止するものである。
【0206】
一方、監視制御回路316は、SPA311およびPDの出力とメモリ315に格納されている雑音指数などともに演算回路76へ送信する。この雑音指数は、LD313、314、カプラ303、304および希土類元素添加光ファイバから構成される局73における光ファイバ増幅器の雑音指数である。
(本発明と第3の実施形態との対応関係)
以下、本発明と第3の実施形態との対応関係について説明する。
【0207】
光伝送路は光伝送路72に対応し、局は局73に対応する。特に、測定手段はSPA311およびPD312に対応し、演算回路は演算回路76に対応する。
光増幅手段は局73に対応し、測定手段はSAP311およびPD312に対応し、演算回路は演算回路76に対応する。
測定回路は演算回路76に対応する。
(第3の実施形態の作用効果)
次に、第3の実施形態における光SNR測定について説明する。
【0208】
図18において、演算回路76は、入力装置77によって測定開始が指示される。そして、演算回路76は、各局73にSPA311の出力、PD312の出力および雑音指数を伝送するように指示する(S101)。
各局73の監視制御回路316は、この指示により上述の情報内容の信号を演算回路76へ伝送する。
【0209】
演算回路76は、受信したこれら情報に基づいて、各局73ごとに、各ch.の入力光レベルを求める。すなわち、各局73ごとについて、演算回路76は、PDの出力をWDM方式光信号のch.数に割って1個のch.当たりの光レベルを求め、SPA311の出力から求められるch.間の偏差をその光レベルに加算する。こうして演算回路76は、各ch.の入力光レベルを求める。
演算回路76は、各局73ごとに求めた各ch.ごとの入力光レベルに基づいて(式3)、すなわち、(式9)によって各局73の部分光SNRを求める(S103)。
演算回路76は、各ch.ごとに、求めた部分光SNRの逆数を第1局73-1から第5局73-5まで加算することによって逆数和を求める(S104)。
【0210】
演算回路76は、各ch.ごとに、求めた逆数和の逆数を求めることによって、各ch.の光SNRを求める(S105)。そして、求めた光SNRを外部に表示装置78によって表示する。
このようにして、第1局73-1から第5局73-5までの区間における各ch.の光SNRを求めることができる。
【0211】
なお、S104において、和を取る範囲を変更することによって、任意の区間の光SNRを求めることができる。例えば、第2局73-2から第4局73-4までの光SNRを求める場合では、S104において、演算回路76は、各ch.ごとに、求めた部分光SNRの逆数を第2局73-2から第4局73-4まで加算するればよい。
また、第3の実施形態においては、部分光SNRを(式3)によって定義したが、(式5)によって定義してもよい。さらに、局73を図19に示すように構成することにより、(式1)、(式2)、(式4)および(式6)によって定義することもできる。
図19は、第3の実施形態における局の他の構成を示す図である。
【0212】
図19(a)において、局74は、出力光レベルを測定するために、図17(b)に示す局73におけるSPA311およびPD312に相当するSPA318およびPD317をISO306の射出側に備えて構成される。よって、局74に入射されたWDM方式光信号は、カプラ303、希土類元素添加光ファイバ304、カプラ305、ISO306、カプラ307およびカプラ308を介して、局74から射出される。
【0213】
カプラ307は、入射されたWDM方式光信号の一部を分配してPD317に入射させる。PD317は、受光した光の光レベルに対応した信号を監視制御回路316に出力する。
カプラ308は、入射されたWDM方式光信号の一部を分配してSPA318に入射させる。SPA318は、受光したWDM方式光信号のスペクトルに対応した信号を監視制御回路316に出力する。
【0214】
なお、その他の構成は、図17(b)に示す局73と同一なので、その説明を省略する。
このような構成の局74を図17(a)の局73の代わりに使用した場合では、部分光SNRを(式6)によって定義し、光SNRを測定することができる。
また、図19(b)において、局75は、入力光レベルおよび出力光レベルを測定するために、図17(b)に示すSPA311およびPD312、ならびに、図19(a)に示すSPA318およびPD317の両方を備えて構成される。よって、局75に入射されたWDM方式光信号は、カプラ301、302、303、希土類元素添加光ファイバ304、カプラ305、ISO306、カプラ307およびカプラ308を介して、局75から射出される。
【0215】
このような構成の局75を図17(a)の局73の代わりに使用した場合では、部分光SNRを(式1)ないし(式6)のいずれかの式によって定義し、光SNRを測定することができる。
なお、局75の場合では、各ch.に対する利得Gは、PD312、317の出力から求めてもよいし、メモリ315に予め格納しておいてもよい。
【0216】
一方、第2の実施形態において、プリエンファシスを行う際の各ch.の光レベルの調整は、VAT256によって行う場合について説明したが、VAT256の代わりに光増幅器の出力可変機能によって各ch.の光レベルの調整を行ってもよい。
また、第1の実施形態および第2の実施形態においては、ch.数が32のWDM方式光信号の場合について説明したが、これに限定されるものではない。任意のch.数のWDM方式光信号に本発明を適用することができる。
【0217】
そして、第1の実施形態においては各ch.のパスを図3(b)に示すように、また、第2の実施形態においては各ch.パスを図13(b)に示すように、具体的に示して説明したが、これに限定されるものではない。各ch.のパスは、任意に設定することができる。
さらに、第1の実施形態においては、光送信局制御回路107、光受信局制御回路113およびOADM制御回路175とシステム制御回路56との間、第2の実施形態においては、OADM制御回路285とシステム制御回路65との間、ならびに、第3の実施形態においては、各局73と演算回路76との間を専用回線によって通信を行う構成について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、WDM方式光信号の1ch.分を使用して通信してもよい。または、SDH(synchronous digital hierarchy )において、伝送装置間で保守情報、状態モニタなどの光通信システム運用上の情報を収容するセクションオーバヘッド(section over head )の未定義領域などを使用してもよい。
【符号の説明】
【0218】
10、72 局
16、76 演算回路
22 測定手段
23 調整手段
56、65 システム制御回路
103、169、256 可変減衰器
106、112、157、281、311、318 スペクトラムアナライザ
107 光送信局制御回路
113 光受信局制御回路
147、167、170、219、222、254、258 モニタ
175、285 OADM制御回路
312、314 ホトダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光伝送路の間に複数の光信号を波長多重した波長分割多重方式光信号を増幅する光増幅手段を備える複数の局を備える該光伝送路に波長多重されるべき光信号を最初に入射する際に該光信号の光レベルを調節するプリエンファシス方法において、
前記複数の局のうち少なくとも2つの局に備えられた測定手段を用いて所定の物理量をそれぞれ求める第1ステップと、
測定された前記所定の物理量に基づいて演算回路が前記複数の局のそれぞれについて前記複数の光信号のそれぞれに対する部分光信号対雑音比を求める第2ステップと、
前記複数の光信号のそれぞれについて前記部分光信号対雑音比の逆数和を光信号が増幅される局が重複している区間に亘って求め、さらに前記逆数和の逆数である区分光信号対雑音比を求める第3ステップと、
前記区分光信号対雑音比が互いに等しくなるように前記複数の光信号について前記光レベルを調整する第4ステップとを備え、
前記所定の物理量は、
(a)出力光レベルPout、雑音指数NFおよび利得Gである場合、
前記部分光信号対雑音比は、プランク定数h、前記光信号の波長に対応する周波数νおよび求める光信号対雑音比の分解能に相当する周波数Δfのもとに、
【数1】

で定義され、
(b)入力光レベルPinおよび雑音指数NFである場合、
前記部分光信号対雑音比は、プランク定数h、前記光信号の波長に対応する周波数νおよび求める光信号対雑音比の分解能に相当する周波数Δfのもとに、
【数2】

で定義され、
(c)出力光レベルPoutおよび利得Gである場合、
前記部分光信号対雑音比は、
【数3】

で定義され、
(d)出力光レベルPoutである場合、
前記部分光信号対雑音比は、Poutで定義され、または、
(e)入力光レベルPinである場合、
前記部分光信号対雑音比は、Pinで定義されること
を特徴とするプリエンファシス方法。
【請求項2】
光伝送路の間に複数の光信号を波長多重した波長分割多重方式光信号を増幅する光増幅手段を備える複数の局を備える該光伝送路に波長多重されるべき光信号を最初に入射する際に該光信号の光レベルを調節するプリエンファシス方法において、
前記複数の局のうち少なくとも2つの局に備えられた測定手段を用いて所定の物理量をそれぞれ求める第1ステップと、
測定された前記所定の物理量に基づいて演算回路が前記複数の局のそれぞれについて前記複数の光信号のそれぞれに対する部分光信号対雑音比を求める第2ステップと、
前記複数の局のそれぞれについて、前記部分光信号対雑音比の和を該局で増幅されるすべての光信号に亘って求め、さらにその平均値を求める第3ステップと、
前記複数の光信号のそれぞれについて、前記複数の局のそれぞれにおける前記平均値と該光信号の部分光信号対雑音比との差分値を求める第4ステップと、
前記複数の光信号のそれぞれについて、前記差分値の和を該光信号が増幅される局に亘って求める第5ステップと、
前記複数の光信号のそれぞれについて求められた前記差分値の和がすべて零となるように前記複数の光信号について前記光レベルを調整する第6ステップとを備え、
前記所定の物理量は、
(a)出力光レベルPout、雑音指数NFおよび利得Gである場合、
前記部分光信号対雑音比は、プランク定数h、前記光信号の波長に対応する周波数νおよび求める光信号対雑音比の分解能に相当する周波数Δfのもとに、
【数4】

で定義され、
(b)入力光レベルPinおよび雑音指数NFである場合、
前記部分光信号対雑音比は、プランク定数h、前記光信号の波長に対応する周波数νおよび求める光信号対雑音比の分解能に相当する周波数Δfのもとに、
【数5】

で定義され、
(c)出力光レベルPoutおよび利得Gである場合、
前記部分光信号対雑音比は、
【数6】

で定義され、
(d)出力光レベルPoutである場合、
前記部分光信号対雑音比は、Poutで定義され、または、
(e)入力光レベルPinである場合、
前記部分光信号対雑音比は、Pinで定義されること
を特徴とするプリエンファシス方法。
【請求項3】
光伝送路の間に複数の光信号を波長多重した波長分割多重方式光信号を増幅する光増幅手段を備える複数の局を備える該光伝送路に波長多重されるべき光信号を最初に入射する際に該光信号の光レベルを調節するプリエンファシス方法において、
前記複数の局のうち少なくとも2つの局に備えられた測定手段を用いて所定の物理量をそれぞれ求める第1ステップと、
測定された前記所定の物理量に基づいて演算回路が前記複数の局のそれぞれについて前記複数の光信号のそれぞれに対する部分光信号対雑音比を求める第2ステップと、
前記複数の局のそれぞれについて、前記部分光信号対雑音比の和を該局で増幅されるすべての光信号に亘って求め、さらにその平均値である全光信号平均値を求める第3ステップと、
前記複数の光信号のうちから前記光伝送路に最初に入射されてから最終的に射出されるまでの区間が互いに同じである光信号を1つに纏めたパスグループを作成する第4ステップと、
前記複数の局のそれぞれについて、前記部分光信号対雑音比の和を該局で増幅されるパスグループ内の光信号に亘って求め、さらにその平均値であるパスグループ部分光信号対雑音比を求める第5ステップと、
前記複数のパスグループのそれぞれについて、前記複数の局のそれぞれにおける前記全光信号平均値と前記パスグループ部分光信号対雑音比との差分値を求める第6ステップと、
前記複数のパスグループのそれぞれについて、前記差分値の和を求める第7ステップと、
前記複数のパスグループのそれぞれについて求められた前記差分値の和がすべて零となるように前記パスグループ部分光信号対雑音比を調整する第8ステップと、
調整された前記パスグループ部分光信号対雑音比に基づいて前記複数の光信号について前記光レベルを調整する第9ステップとを備え、
前記所定の物理量は、
(a)出力光レベルPout、雑音指数NFおよび利得Gである場合、
前記部分光信号対雑音比は、プランク定数h、前記光信号の波長に対応する周波数νおよび求める光信号対雑音比の分解能に相当する周波数Δfのもとに、
【数7】

で定義され、
(b)入力光レベルPinおよび雑音指数NFである場合、
前記部分光信号対雑音比は、プランク定数h、前記光信号の波長に対応する周波数νおよび求める光信号対雑音比の分解能に相当する周波数Δfのもとに、
【数8】

で定義され、
(c)出力光レベルPoutおよび利得Gである場合、
前記部分光信号対雑音比は、
【数9】

で定義され、
(d)出力光レベルPoutである場合、
前記部分光信号対雑音比は、Poutで定義され、または、
(e)入力光レベルPinである場合、
前記部分光信号対雑音比は、Pinで定義されること
を特徴とするプリエンファシス方法。
【請求項4】
光伝送路の間に複数の光信号を波長多重した波長分割多重方式光信号を増幅する光増幅手段を備える複数の局を備える光通信システムにおいて、
前記複数の局のうちから少なくとも2個以上の局に備えられ、該局における所定の物理量を測定する測定手段と、
前記測定手段の測定結果に基づいて、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のプリエンファシス方法で、波長多重されるべき光信号を最初に前記光伝送路に入射する際の前記複数の光信号の光レベルを求める演算回路と、
前記波長多重されるべき光信号を最初に前記光伝送路に入射する局に備えられ、前記演算回路で求められた前記光レベルになるように該光信号の光レベルを調整する調整手段とを備え、
前記所定の物理量は、
(a)出力光レベルPout、雑音指数NFおよび利得Gである場合、
前記部分光信号対雑音比は、プランク定数h、前記光信号の波長に対応する周波数νおよび求める光信号対雑音比の分解能に相当する周波数Δfのもとに、
【数10】

で定義され、
(b)入力光レベルPinおよび雑音指数NFである場合、
前記部分光信号対雑音比は、プランク定数h、前記光信号の波長に対応する周波数νおよび求める光信号対雑音比の分解能に相当する周波数Δfのもとに、
【数11】

で定義され、
(c)出力光レベルPoutおよび利得Gである場合、
前記部分光信号対雑音比は、
【数12】

で定義され、
(d)出力光レベルPoutである場合、
前記部分光信号対雑音比は、Poutで定義され、または、
(e)入力光レベルPinである場合、
前記部分光信号対雑音比は、Pinで定義されること
を特徴とする光通信システム。
【請求項5】
前記光伝送路の一方の端に接続され、前記調整手段を備える光送信局と、
前記光伝送路の他方の端に接続され、前記測定手段を備える光受信局とをさらに備えること
を特徴とする請求項4に記載の光通信システム。
【請求項6】
光伝送路の間に複数の光信号を波長多重した波長分割多重方式光信号を増幅する光増幅手段を備える複数の局のうちから少なくとも2個以上の局から所定の物理量を受信して、受信された該所定の物理量に基づいて前記複数の局における所定の物理量を求め、求められた該所定の物理量に基づいて前記複数の局のそれぞれについて前記複数の光信号のそれぞれに対する部分光信号対雑音比を求め、前記複数の光信号のそれぞれについて前記部分光信号対雑音比の逆数和を光信号が増幅される局が重複している区間に亘って求め、前記逆数和の逆数である区分光信号対雑音比を求めて、波長多重されるべき光信号を最初に前記光伝送路に入射する局に、前記区分光信号対雑音比が互いに等しくなるように前記光信号の光レベルを調整する制御信号を出力し、
前記所定の物理量は、
(a)出力光レベルPout、雑音指数NFおよび利得Gである場合、
前記部分光信号対雑音比は、プランク定数h、前記光信号の波長に対応する周波数νおよび求める光信号対雑音比の分解能に相当する周波数Δfのもとに、
【数13】

で定義され、
(b)入力光レベルPinおよび雑音指数NFである場合、
前記部分光信号対雑音比は、プランク定数h、前記光信号の波長に対応する周波数νおよび求める光信号対雑音比の分解能に相当する周波数Δfのもとに、
【数14】

で定義され、
(c)出力光レベルPoutおよび利得Gである場合、
前記部分光信号対雑音比は、
【数15】

で定義され、
(d)出力光レベルPoutである場合、
前記部分光信号対雑音比は、Poutで定義され、または、
(e)入力光レベルPinである場合、
前記部分光信号対雑音比は、Pinで定義されること
を特徴とするプリエンファシス用制御装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2010−45807(P2010−45807A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−219468(P2009−219468)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【分割の表示】特願2000−9387(P2000−9387)の分割
【原出願日】平成12年1月18日(2000.1.18)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】