説明

プリプレグの切断方法

【課題】 切断時における切断粉の発生を防止できると共に、切断後の取り扱い時におけるガラス繊維粉の発生を防止できるようにする。
【解決手段】 ガラス繊維基材2に熱硬化性樹脂を含浸し半硬化させたプリプレグPにレーザ光6,9を照射してこのプリプレグPを切断する一方、切断後の熱硬化性樹脂の硬化により、この熱硬化性樹脂によってガラス繊維基材2の切断端部側を包んだ状態で固める。その際、レーザ光6,9をプリプレグPに対して切断方向に相対的に移動させながらプリプレグPを切断し、またプリプレグPに対してレーザ光6,9の照射域を含む噴射領域に冷却用ガスを噴射して、この冷却用ガスによりプリプレグPの切断箇所を冷却する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス繊維基材に熱硬化性樹脂を含浸し半硬化させたプリプレグをレーザにより切断するプリプレグの切断方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリプレグは、ガラス布、ガラス不織布、ガラスマット等のガラス繊維基材に、エポシキ樹脂、ポリイミド樹脂、不飽和ポリエステル、ポリフェニレンオキシド等の熱硬化性樹脂層樹脂を含浸し半硬化させたものであり、多層プリント配線板を製造する際に、内層プリント配線板と内層プリント配線板、内層プリント配線板と外層プリント配線板とを接着して絶縁層を形成するために使われる。
【0003】
このプリプレグは長尺状に製作されており、通常はその長尺のプリプレグを長手方向及び幅方向に切断することにより、所定寸法の正方形、長方形に裁断して使用される。このプリプレグの切断は、回転刃、シャーリング刃その他の切断刃を用いて行われる。
【0004】
しかし、プリプレグはガラス繊維基材に樹脂を含浸し半硬化したものであって、ガラス繊維基材、樹脂の両者とも非常に脆いため、切断刃で切断すれば、その切断時にガラス繊維、樹脂の切断粉が発生し易い。そして、これらの切断粉は、周囲に飛散すれば作業環境の悪化を招き、また切断粉がプリプレグの表面に付着すれば、多層プリント配線板の製造工程で異物として混入して、製品不良の発生原因となる。
【0005】
そこで、この切断粉の発生の防止策として、従来、プリプレグの切断箇所を赤外線ヒーター等で加熱して、その切断箇所を含む周辺部分の樹脂を軟化させ、その軟化後に切断刃で切断する方法が考えられている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2001−138288
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の切断方法でも、切断箇所を含む周辺部分の樹脂を軟化させた後に切断するため、樹脂の切断粉の発生は極力防止できる。しかし、依然として切断刃による切断であり、その切断刃でガラス繊維基材を切断するため、切断時にガラス繊維の切断粉が多量に発生する上に、ガラス繊維の切断端部が脆化した状態となり、その後のプリプレグの取り扱い時に、ガラス繊維の脆化した部分が粉状となって空気中に飛散し、又はプリプレグの表面に付着する等の惧れがある。
【0007】
本発明は、このような従来の問題点に鑑み、切断時における切断粉の発生を防止できると共に、切断後の取り扱い時におけるガラス繊維粉の発生を防止できるプリプレグの切断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ガラス繊維基材に熱硬化性樹脂を含浸し半硬化させたプリプレグを所定寸法に切断するプリプレグの切断方法において、前記プリプレグにレーザ光を照射して該プリプレグを切断する一方、切断後の前記熱硬化性樹脂の硬化により、該熱硬化性樹脂により前記ガラス繊維基材の切断端部側を包んだ状態で該ガラス繊維基材の切断端部を固めるものである。
【0009】
その際、前記レーザ光を前記プリプレグに対して切断方向に相対的に移動させながら前記プリプレグを切断すると共に、前記プリプレグに対して前記レーザ光の照射域を含む噴射領域に冷却用ガスを噴射して、該冷却用ガスにより前記プリプレグの切断箇所を冷却してもよい。
【0010】
また前記冷却用ガスを前記プリプレグに対してその既切断側から相対移動方向に噴射してもよい。更に前記レーザ光により前記プリプレグを切断しながら、その切断時に発生する煙その他の発生物を吸引して排除することも可能である。また前記プリプレグを吸着テーブル上に吸着して固定しておき、その吸着部位間の切断線に沿って前記レーザ光を照射してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、ガラス繊維基材に樹脂を含浸し半硬化させたプリプレグを所定寸法に切断するに際し、プリプレグにレーザを照射してプリプレグを切断するため、ガラス繊維、樹脂を溶かして切断することになり、従来の切断刃により切断する場合に比較して、ガラス繊維、樹脂の切断粉の発生を極力防止できる。
【0012】
また切断後の熱硬化性樹脂の硬化により、熱硬化性樹脂によりガラス繊維基材の切断端部側を包ん状態で該ガラス繊維基材の切断端部を固めるため、その後の取り扱い時に切断端部のガラス繊維がガラス繊維粉となって飛散するようなこともなくなり、ガラス繊維粉の発生を防止できると共に、その後のプリプレグの取り扱いも容易にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳述する。図1〜図8は本発明の第1の実施例を例示する。原反プリプレグP1から所定のプリプレグPを裁断する場合には、次のようにする。即ち、原反プリプレグP1は、図1及び図2に示すように、ガラス繊維束1を縦横に配置したガラス繊維基材2にエポキシ樹脂その他の熱硬化性樹脂を含浸し半硬化させたものであって、薄板状又はシート状の熱硬化性樹脂層3の内部にガラス繊維基材2が介在されており、通常はロール状に巻き取った原反ロール4となっている。
【0014】
例えば長さL、幅Wの長方形のプリプレグPを裁断する場合には、図1に示すように原反ロール4から原反プリプレグP1を繰り出した後、原反プリプレグP1の横切断位置の長さLを計測し、その横切断位置で横切断レーザヘッド5から原反プリプレグP1に対してレーザ光6を照射しながら、横切断レーザヘッド5を切断線7に沿って横方向に相対的に移動させて、そのレーザ光6の熱エネルギーにより原反プリプレグP1を横方向に切断する。
【0015】
次に原反プリプレグP1から切り離された単位長さのプリプレグPを、横方向の複数箇所、例えば4箇所の縦切断位置に配置された各縦切断レーザヘッド8からプリプレグPに対してレーザ光9を照射しながら、各縦切断レーザヘッド8を切断線10に沿って縦方向に相対的に移動させて、そのレーザ光9の熱エネルギーによりプリプレグPを縦方向に切断して、3個の単位プリプレグPとその両側の耳部P2とに分離する。
【0016】
このようにしてレーザ光6,9を照射してプリプレグPを縦横に切断する一方、図3に示すようにその熱硬化性樹脂の熱硬化により、切断時に一時的に溶融した熱硬化性樹脂層3によりガラス繊維基材2の切断端部2a側を包んだ状態で、ガラス繊維基材2の切断端部2aを固める。
【0017】
また同時に図4及び図5に示すように、プリプレグPに対してレーザ光6,9の照射域11を含む噴射領域12に冷却用空気噴射部(冷却用ガス噴射部)13から冷却用空気(冷却用ガス)14を噴射して、その冷却用空気14によりプリプレグPの切断箇所及びその近傍を冷却すると共に、プリプレグPの切断時に発生する煙その他の発生物を排気用吸引部15により吸引して外部へと排除する。
【0018】
図6及び図7は本発明の切断方法を採用したプリプレグ切断装置の一例を示す。このプリプレグ切断装置は、基台20上にプリプレグPを供給する供給部21と、この供給部21により供給されたプリプレグPを吸着して横方向(幅方向)に切断する横切断部22と、プリプレグPを吸着して縦方向(長手方向)に切断する縦切断部23と、横切断部22で切断された後のプリプレグPを縦切断部23に移載する移載部24と、切断後のプリプレグPをその上下両面の付着物を除去しながら取り出す取り出し部25とを備えている。
【0019】
供給部21は、支持手段26の原反ロール4から繰り出された原反プリプレグP1をダンサーローラ27、蛇行修正ローラ28、案内ローラ29、計測ローラ30等を経て横切断部22へと供給するようになっている。
【0020】
支持手段26は、原反ロール4の両側に相対向して回転自在に配置され且つ原反ロール4の中心をその軸心方向の両側から着脱自在に支持する一対の支持具31と、その一方の支持具31を駆動する繰り出しモータ32とを備えている。ダンサーローラ27は原反ロール4の支持手段26と蛇行修正ローラ28間の下側に配置され、一対の上下方向に揺動自在に枢支された一対の揺動アーム33の先端部に設けられ、テンショナー34により、プリプレグPを略一定の張力状態に保つようになっている。
【0021】
蛇行修正ローラ28は、その軸心方向の一端側の調整手段35を備え、この調整手段35により他端側を中心に一端側を前後方向に調整することによって、プリプレグPの蛇行を修正するようになっている。案内ローラ29は、軸心方向の一端の駆動モータ36により駆動される。計測ローラ30は案内ローラ29の一端側に配置されており、案内ローラ29との間でプリプレグPを挟んで、案内ローラ29により案内されるプリプレグPの供給量を計測するようになっている。
【0022】
横切断部22は案内ローラ29の下手側に近接して配置された固定吸着テーブル37と、固定吸着テーブル37の上手側上方に配置された2個の横切断レーザヘッド5と、2個の横切断レーザヘッド5を横方向に移動自在に案内する案内手段38と、2個の横切断レーザヘッド5を案内手段38に沿って横方向に駆動するモータ等の横駆動手段(図示省略)とを備え、横切断レーザヘッド5の横方向への移動により、プリプレグP上にレーザ光6を照射して横方向に半分ずつ切断するようになっている。なお、横切断レーザヘッド5ルは1個でもよい。固定吸着テーブル37は、その上のプリプレグPを下側から吸着するように吸引源に接続されている。
【0023】
縦切断部23は固定吸着テーブル37の下手側近傍の受け取り位置Aと取り出し部25側の受け渡し位置Bとの間で縦方向(プリプレグPの長手方向)に移動可能な可動吸着テーブル39と、受け取り位置Aの下手側の近傍上に配置された横方向に4個の縦切断レーザヘッド8と、4個の縦切断レーザヘッド8を横方向に移動自在に支持する案内手段42と、切断後のプリプレグPの横幅に応じて各縦切断レーザヘッド8間の間隔を案内手段42に沿って横方向に調整する調整手段(図示省略)とを備え、可動吸着テーブル39の縦方向の移動により、可動吸着テーブル39上に吸着されたプリプレグPに対して縦切断レーザヘッド8からレーザ光9を照射しながら、このレーザ光9でプリプレグPを縦方向に切断するようになっている。
【0024】
なお、縦切断レーザヘッド8は、プリプレグPの横方向の切断箇所の数と同じでもよいし、切断箇所の数よりも少ない数とし、可動吸着テーブル39と縦切断レーザヘッド8とを複数回移動させることにより、プリプレグPを縦方向に切断するようにしてもよい。可動吸着テーブル39は、その上のプリプレグPを下側から吸着するように吸引源に接続されている。
【0025】
横切断部22の固定吸着テーブル37、縦切断部23の可動吸着テーブル39には、図8に示すように、その上面のプリプレグPに対応する部分の略全体でプリプレグPを吸着できるように多数の吸着口40が形成されると共に、各切断レーザヘッド5,8のレーザ発射部5a,8aから照射されるレーザ光6,9を避けるように、プリプレグPの切断方向に対応して横方向、縦方向に所定幅の凹入溝41が設けられている。なお、凹入溝41の両側近傍には、プリプレグPの切断端側を確実に吸着すべく吸着口40が列状に設けられている。従って、レーザ発射部5a,8aは、プリプレグPに対してその吸着部位間の切断線7,10に沿ってレーザ光6,9を照射可能でる。
【0026】
横切断レーザヘッド5、縦切断レーザヘッド8は、図4、図5に示すようにプリプレグPに対してレーザ光6,9を発射するレーザ発射部5a,8aの他に、レーザ発射部5a,8aに対して切断方向の両側に冷却用空気噴射部13と排気用吸引部15とを備えている。
【0027】
冷却用空気噴射部13はスポット状のレーザ光6,9の照射域11を含む噴射領域12に冷却用空気14を噴射してプリプレグPの切断箇所及びその周辺を冷却するように、レーザ発射部5a,8aを基準にしてプリプレグPの既切断44側の上方に切断方向に沿って斜めに配置されている。排気用吸引部15はレーザ発射部5a,8aを基準にして冷却用空気噴射部13と反対側、即ちプリプレグPの未切断側に配置され、プリプレグPの切断時に発生する煙、樹脂飛沫その他の発生物を、冷却用空気噴射部13からプリプレグPに噴射された冷却用空気14と一緒に吸引して排除するようになっている。なお、冷却用空気噴射部13は噴射領域12の中心がレーザ光6,9の照射域11よりも若干既切断44側となるように設定することが好ましい。
【0028】
移載部24は昇降自在に構成され且つ案内手段45により固定吸着テーブル37と可動吸着テーブル39との間で縦方向に往復移動自在に設けられた移載吸着ヘッド46を備え、この移載吸着ヘッド46の昇降動作と縦方向の往復移動との組み合わせにより、固定吸着テーブル37のプリプレグPを受け取り位置Aの可動吸着テーブル39上の所定位置へと移載するようになっている。
【0029】
取り出し部25は、縦横に切断された所定寸法のプリプレグPを積層して取り出す取り出しテーブル47と、昇降自在に構成され且つ案内手段48により受け渡し位置B及び取り出しテーブル47の上方間で縦方向に往復移動自在に設けられた取り出し吸着ヘッド49と、受け渡し位置Bの上手側に配置され且つ可動吸着テーブル39上に吸着されたプリプレグPの上面の付着物を除去する上面ブラシ50と、取り出し吸着ヘッド49に吸着されたプリプレグPの下面の付着物を除去する下面ブラシ51と、取り出しテーブル47の横方向の両側に配置されたスクラップ受け部52とを備えている。
【0030】
取り出しテーブル47はプリプレグPの受け取り高さが略一定するように昇降自在であって、横方向の両側に突出する耳部P2が下方に落下するように、取り出し時のプリプレグPの寸法に合わせて横幅を調整する幅調整部47aが横方向の両側に設けられ、この幅調整部47aから突出する耳部P2をスクラップとしてスクラップ受け部52で回収できるようになっている。スクラップ受け部52は箱その他の容器により構成されている。上面ブラシ50、下面ブラシ51はフード50a,51a内に設けられており、各ブラシ50,51でプリプレグPから除去した付着物を外部に回収するようになっている。
【0031】
なお、移載吸着ヘッド46、取り出し吸着ヘッド49は、上手ヘッド部と下手ヘッド部とからなり、プリプレグPの縦方向の長さの長短に応じてその長さが短い場合には上手ヘッド部を使い、長い場合には両ヘッド部を使うように使い分け可能である。
【0032】
原反プリプレグP1から所定の大きさの正方形、長方形のプリプレグPを裁断する場合には、次のようにする。即ち、プリプレグPの裁断に際しては、先ず支持手段26に原反プリプレグP1の原反ロール4を装着しておき、その原反ロール4から繰り出された原反プリプレグP1のプリプレグPをダンサーローラ27、蛇行修正ローラ28、案内ローラ29、計測ローラ30等を経て横切断部22の固定吸着テーブル37上へと供給する。このとき計測ローラ30により、プリプレグPの送り方向の前端から横切断位置までの縦方向の長さLを計測する。
【0033】
原反プリプレグP1の縦方向の長さLが所定長さになれば、原反プリプレグP1の繰り出しを停止し、固定吸着テーブル37の上面にプリプレグPを吸着する。これにより固定吸着テーブル37上のプリプレグPを固定吸着テーブル37上に確実に固定でき、切断中に冷却用空気14の噴射等によって固定吸着テーブル37上のプリプレグPが不安定に動くことはない。
【0034】
次に2個の横切断レーザヘッド5のレーザ発射部5aからプリプレグP上にレーザ光6を照射しながら、各横切断レーザヘッド5をプリプレグPの横方向へと移動させて、そのレーザ光6によりプリプレグPを横方向に切断する。この場合、プリプレグPの幅方向に2個の横切断レーザヘッド5があり、その各横切断レーザヘッド5からレーザ光6を照射してプリプレグPの全幅を横方向に切断するので、各横切断レーザヘッド5が1個の場合に比較してその移動量を少なくできる。
【0035】
プリプレグPの横切断が完了すれば、固定吸着テーブル37によるプリプレグPの吸着を解除する一方、そのプリプレグP上へと移載吸着ヘッド46を下ろし、この移載吸着ヘッド46によりプリプレグPの上面側を吸着する。そして、移載吸着ヘッド46を上昇させながら案内手段45により受け取り位置Aへと移動させた後、その受け取り位置Aで停止中の可動吸着テーブル39上へと移載吸着ヘッド46を下降させる。次いで移載吸着ヘッド46によるプリプレグPの吸着を解除して、移載吸着ヘッド46を上昇させると共に、可動吸着テーブル39によりその上側のプリプレグPを吸着して、プリプレグPを可動吸着テーブル39上の所定位置に固定する。
【0036】
そして、可動吸着テーブル39上にプリプレグPを固定した後、4個の縦切断レーザヘッド8のレーザ発射部8aからレーザ光9を発射させながら、可動吸着テーブル39を受け取り位置Aから受け渡し位置Bへと縦方向に移動させて、そのレーザ光9によりプリプレグPを縦方向に切断する。
【0037】
プリプレグPの縦切断後、可動吸着テーブル39が上面ブラシ50の下側を通過するときに、プリプレグPの移動方向に対して順方向に回転する上面ブラシ50により、プリプレグPの上面の付着物を除去してフード50aから回収する。そして、可動吸着テーブル39が受け渡し位置Bに到達し停止すると、取り出し吸着ヘッド49を可動吸着テーブル39上に下降させて、可動吸着テーブル39によるプリプレグPの吸着を解除した後、取り出し吸着ヘッド49によりプリプレグPの上面側を吸着する。
【0038】
次に下面ブラシ51がプリプレグPの下面に接触可能な高さまで取り出し吸着ヘッド49を上昇させて、その状態で取り出し吸着ヘッド49を案内手段48に沿って取り出しテーブル47へと移動させる。そして、その移動中に、プリプレグPの移動方向に対して順方向に回転する下面ブラシ51により、プリプレグPの下面の付着物を除去しフード51aから回収する。
【0039】
そして、取り出し吸着ヘッド49が取り出し位置に到達すると、取り出し吸着ヘッド49によるプリプレグPの吸着を解除し、各プリプレグPを取り出しテーブル47上に積層する。このとき取り出しテーブル47の横幅を3個のプリプレグPに合わせて調整しておけば、取り出し吸着ヘッド49による吸着を解除したときに、横方向の両側の耳部P2は取り出しテーブル47上に載らずに、その両側のスクラップ受け部52へと落下する。このため耳部P2をスクラップ受け部52によりスクラップとして回収できる。
【0040】
プリプレグPの横切断、縦切断に際して、切断レーザヘッド5,8からプリプレグPに対してレーザ光6,9を照射すると、プリプレグPの熱硬化性樹脂層3とガラス繊維基材2とではその溶解温度は異なるが、そのレーザ光6,9の熱エネルギーにより、切断粉等を発生させることなくプリプレグPの熱硬化性樹脂層3とガラス繊維基材2とを切断する一方、その切断時に溶融した熱硬化性樹脂層3の溶融樹脂が、ガラス繊維基材2の切断端部2a側のガラス繊維間に浸透し且つ切断端部2aを外側から包んだ状態にあり、その熱硬化性樹脂の熱硬化によりガラス繊維基材2の切断端部2aを固める。
【0041】
即ち、熱硬化性樹脂層3が半硬化状態であるプリプレグPにレーザ光6,9を照射すると、その熱エネルギーによりレーザ光6,9の照射部位の熱硬化性樹脂層3が溶融して切断され、続いて露出したガラス繊維束1が溶断されることになり、切断レーザヘッド5,8の移動に伴ってプリプレグPを容易且つ確実に切断でき、しかも多量の切断粉が発生するようなこともない。
【0042】
またレーザ光6,9の照射部位の中心部分等の熱硬化性樹脂は溶融した後に煙等となって消失するが、その消失部分の両側の切断端部では、熱硬化性樹脂層3の端面側に一時的に溶融した樹脂があり、その溶融樹脂がガラス繊維束1の突出部分に含浸し且つ切断端部2aを外側から包んだ状態となるので、その後の熱硬化性樹脂の硬化によりガラス繊維基材2の突出部分を覆った状態で固めることができる。このためプリプレグPの切断後の取り扱い時にガラス繊維基材2の切断端部2a側が他の物に接触しても、そのガラス繊維が粉塵等となるようなこともなく、その後の取り扱いを容易にできる。
【0043】
更にレーザ光6,9を照射しながら、プリプレグPのレーザ光6,9の照射域11を含む噴射領域12に対し、レーザ発射部5a,8aの後方側の冷却用空気噴射部13から斜め方向に冷却用空気14を噴射して、この冷却用空気14により、プリプレグPの切断端部及びその両側近傍を冷却する。これによってプリプレグPの切断端部及びその両側近傍部分の熱硬化性樹脂層3の極端な温度上昇を防止でき、プリプレグPの切断端部側、取り分け熱硬化性樹脂層3の切断端部側の炭化、硬化等を極力抑制することができる。
【0044】
なお、冷却用空気噴射部13から噴射する空気は冷却用であって、プリプレグPの切断端部を空冷式で冷却できる程度の低圧でよく、レーザ光6,9により溶融状態の熱硬化性樹脂層3を飛沫として吹き飛ばす程の高圧ではない。
【0045】
一方、レーザ光6,9の照射、冷却用空気14の噴射と同時に、プリプレグPの切断時に発生する溶融樹脂の消失分の煙、煤等を、プリプレグP上に噴射された後の冷却用空気14と一緒に排気用吸引部15により吸引して、外部へと排出する。このため冷却後の空気を効率的に排除でき、冷却用空気噴射口から噴射される新しい冷却用空気14によりプリプレグPの切断端部等を効率的に冷却でき、また粉塵の発生を防止できる他、煙、煤等によるプリプレグPの切断端部の近傍部分の汚れを防止できる。
【0046】
レーザ光6,9によりプリプレグPの熱硬化性樹脂層3及びガラス繊維基材2を溶断する場合、レーザ光6,9の照射域11を含む噴射領域12に冷却用空気14を噴射してプリプレグPを極力冷却するが、レーザ光6,9の熱により切断端部近傍の熱硬化性樹脂層3が硬化する惧れある。
【0047】
このような場合には、図9に示すようにプリプレグPの必要領域Xの外周に所定幅L1,W1の硬化防止代PL,PWを確保して、その硬化防止代PL,PWを含む大きさで縦横に裁断すればよい。これによってプリプレグPの必要領域Xを半硬化状態に維持でき、後工程でのプリプレグPの接着性の低下を十分に防止できる。なお、硬化防止代PL,PWは、プリプレグPの厚さ、材質、レーザ光6,9の熱エネルギー量等を考慮して、レーザ光6,9の照射による熱影響が必要領域XのプリプレグPに及ばないように決定すればよい。
【0048】
図10は本発明の第2の実施例を例示する。この実施例では、プリプレグPの切断時に一対の冷却手段53によりプリプレグPの切断線7,10の両側を冷却する。固定吸着テーブル37、可動吸着テーブル39には、図10に示すようにプリプレグPの切断端側を下側から冷却する冷却手段53が切断線7,10に沿って長手方向の略全長に設けられている。
【0049】
冷却手段53は熱伝導性の良い材料から成り、且つ内部の冷媒孔54に冷媒(液体又は気体)を通すように構成された冷却体55を備え、凹入溝41内の両側に所定間隔を置いて一対配置されている。各冷却体55の上面はテーブル37,39上のプリプレグPの下面に接触しており、切断時にその冷熱によりプリプレグPの切断端の両側近傍を冷却するようになっている。他の構成は第1の実施例と同様である。この場合には、切断時のレーザ光6,9の熱によるプリプレグPの切断端側の硬化領域を極力少なくできる。
【0050】
図11は本発明の第3の実施例を例示する。この実施例では、図11に示すようにプリプレグPの切断の直後に、上下一対の押圧ローラ56によりプリプレグPの切断端及びその両側近傍の所定領域を上下両側から加圧して、切断時の熱硬化性樹脂層3の溶融、硬化によりプリプレグPの切断端側の上下両側にできる盛り上がり部分57を除去して平坦状にする。このようにすれば、プリプレグPの切断端側の盛り上がり部分57がなくなるため、多層プリント配線板の製造工程でのプリプレグPとプリント配線板との接着状態を良好にできる。
【0051】
上下の押圧ローラ56はプリプレグPに対して切断レーザヘッド5,8と略同一速度で同一方向に相対的に移動するように設ければよい。また各押圧ローラ56はその内部に冷媒を通して冷却するようにしてもよい。他の構成は第1の実施例と同様である。なお、押圧ローラ56はレーザ光6,9の照射域11と冷却用空気14の噴射位置との間に配置することが望ましい。
【0052】
以上、本発明の一実施例について詳述したが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施することができる。例えば、実施例では、ガラス繊維基材2を使用したプリプレグPの切断について例示しているが、アラミド繊維基材を使用したプリプレグPを同様に切断する場合にも応用可能である。ガラス繊維基材2はガラス布、ガラス不織布、ガラスマットの何れでもよい。
【0053】
またレーザ発生装置はプリプレグPの熱硬化性樹脂層3への熱影響を極力防止するためには、小出力用の炭酸ガスレーザ式レーザ発生装置が適当であるが、その他のレーザ発生装置を利用することも可能である。プリプレグPをレーザ光6,9により縦横に切断する場合、横切断レーザヘッド5を一直線上に複数個配置してもよいし、複数個の横切断レーザヘッド5を縦方向に所定の間隔をおいて配置し、その各横切断レーザヘッド5から照射されるレーザ光6,9により、複数の位置でプリプレグPを横方向に切断してもよい。
【0054】
1個又は複数個の縦切断レーザヘッド8の横移動と、可動吸着テーブル39の縦移動を組み合わせて、プリプレグPを複数個の縦切断箇所で縦方向に切断してもよい。切断レーザヘッドとプリプレグPは切断方向に相対的に移動できれば十分である。
【0055】
冷却用空気噴射部13、排気用吸引部15は、プリプレグPの切断箇所を含む噴射範囲に冷却用空気14を噴射でき、また切断箇所から発生する煙等を吸引して排気できる位置であれば、レーザ発射部5a,8aに対してどのような位置、方向に配置してもよい。
【0056】
冷却用空気に代替して窒素ガス等の不活性ガスを冷却用ガスとして利用してもよい。またレーザ光6,9はプリプレグPに対して切断方向に連続的に照射する他、照射域11の一部が切断方向に重なるように間欠的に照射してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の第1の実施例を示すプリプレグの切断過程の説明図である。
【図2】本発明の第1の実施例を示すプリプレグの第1の部破断平面図である。
【図3】本発明の第1の実施例を示すプリプレグの切断部の断面図である。
【図4】本発明の第1の実施例を示すプリプレグの切断状態の断面図である。
【図5】本発明の第1の実施例を示すプリプレグの切断状態の平面図である。
【図6】本発明の第1の実施例を示す切断装置の正面図である。
【図7】本発明の第1の実施例を示す切断装置の平面図である。
【図8】本発明の第1の実施例を示すテーブルの説明図である。
【図9】本発明の第1の実施例を示すプリプレグの説明図である。
【図10】本発明の第2の実施例を示すテーブルの説明図である。
【図11】本発明の第3の実施例を示すプリプレグの切断状態の断面図である。
【符号の説明】
【0058】
P プリプレグ
2 ガラス繊維基材
2a 切断端部
3 熱硬化性樹脂層
5 横切断レーザヘッド
6,9 レーザ光
8 縦切断レーザヘッド
11 照射域
12 噴射領域
14 冷却用空気
37 固定吸着テーブル
39 可動吸着テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス繊維基材に熱硬化性樹脂を含浸し半硬化させたプリプレグを所定寸法に切断するプリプレグの切断方法において、前記プリプレグにレーザ光を照射して該プリプレグを切断する一方、切断後の前記熱硬化性樹脂の硬化により、該熱硬化性樹脂により前記ガラス繊維基材の切断端部側を包んだ状態で該ガラス繊維基材の切断端部を固めることを特徴とするプリプレグの切断方法。
【請求項2】
前記レーザ光を前記プリプレグに対して切断方向に相対的に移動させながら前記プリプレグを切断すると共に、前記プリプレグに対して前記レーザ光の照射域を含む噴射領域に冷却用ガスを噴射して、該冷却用ガスにより前記プリプレグの切断箇所を冷却することを特徴とする請求項1に記載のプリプレグの切断方法。
【請求項3】
前記冷却用ガスを前記プリプレグに対してその既切断側から相対移動方向に噴射することを特徴とする請求項1又は2に記載のプリプレグの切断方法。
【請求項4】
前記レーザ光により前記プリプレグを切断しながら、その切断時に発生する煙その他の発生物を吸引して排除することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のプリプレグの切断方法。
【請求項5】
前記プリプレグを吸着テーブル上に吸着して固定しておき、その吸着部位間の切断線に沿って前記レーザ光を照射することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のプリプレグの切断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−38274(P2007−38274A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−226722(P2005−226722)
【出願日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(591135989)カワムラ精機株式会社 (3)
【Fターム(参考)】