説明

プリント回路基板外観検査方法、プリント回路基板外観検査プログラム及びプリント回路基板外観検査装置

【課題】プリント回路基板上に実装された電子部品の外観検査において、シルクスクリーン印刷部による悪影響を除去可能な構成を提供する。
【解決手段】該当する電子部品100の周囲にシルク検査ウインドウを設定する。次に予め登録されているシルクスクリーン印刷部210の色/輝度のデータに基づき、シルク検査ウインドウ内の画像データを二値化する。プリント回路基板上の部品100の周囲のシルクスクリーン印刷部210を検出し、検出されたシルクスクリーン印刷部210と重複しないように所定の検査領域W1を画定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプリント回路基板外観検査方法、プリント回路基板外観検査プログラム及びプリント回路基板外観検査装置に係り、特にシルクスクリーン印刷部等のプリント基板模様部を有するプリント回路基板について特に効果的なプリント回路基板外観検査方法、プリント回路基板の外観検査プログラム及びプリント回路基板の外観検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子装置等に使用されるプリント回路基板の製品出荷時等において実施される、当該プリント回路基板上に実装された各電子部品の検査は、所定の電子部品の有無、その取り付け位置の良否、電子部品の電極とプリント回路基板上に設けられた導体パターンのランドとの間の半田付けによる接続の良否等の判定を含む。これらの判定作業を行なうにあたり、個々の電子部品が非常に小さい(例えばコンマ数ミリメートルオーダー)点、及び限られた時間内に多数の製品の検査を行なう必要がある点等の理由により、当該作業を直接人間が肉眼の目視にて行なうには限界がある。そこで、被検査プリント回路基板をカメラ等にて撮影し、その結果得られた画像をコンピュータプログラムを利用した画像処理によって解析することで当該作業を自動処理にて効率的に実行することが望ましい。
【0003】
図1は、被検査プリント回路基板の一例の拡大写真を示す。又、図2は、図1の一部を抽出して分かり易く書き起こした図である。これらの図に示す如く、部品本体と電極とよりなる電子部品は予め導体パターン(図中、単に「パターン」として示される)及びランドが形成されたプリント回路基板状に搭載され、その電極とランドとの間が半田付け(図中、「半田」として示される)されることで、両者が電気的に接続されると共に、当該電極を有する電子部品がプリント回路基板状に固定される。尚、実際には半田の下にプリント回路基板上に形成されたランドが存在するが、半田がこのランド上の全体に濡れ広がっているため、隠れて見えない状態となっている。
【0004】
例えばこのようなプリント回路基板上に実装された電子部品の位置ずれやその有無を検査する実装部品検査装置に関する技術が特許文献1に開示されている。この技術による方法は、本体部と電極部とよりなる電子部品に対し、それら本体部と電極部との間の境界線を除く電極部のエッジ部分から抽出されたマッチングプレートを用いて電子部品を実装した基板画像に対して照合処理を行ない、もって部品の有無、誤実装、部品の実装状態を検査する構成を有する。
【0005】
又、特許文献2では、ラテックス状粒子集合体、繊維集合体等を構成する断面形状を有する物体の形状に関する情報の取得のため当該物体のエッジ部情報を入手するにあたり、物体の背景にあるノイズ情報を確実に除去しながら正確なエッジ検出を迅速に行なうことを目指した技術が開示されている。
【0006】
又、特許文献3では、鏡面体などの外観検査において、被検査物を含む領域の画像から検査対象物を抽出するにあたり、背景ノイズが多い場合でも正確且つ高速にエッジ成分を検出することを目指した技術が開示されている。
【0007】
尚、本願明細書において「電子部品」とは、IC等の能動的電子部品のみでなく、能動素子を含まない抵抗器等の受動的電子部品をも含む広い概念を有する用語として解釈するものとする。
【特許文献1】特開2003−110298号公報
【特許文献2】特開昭63−229577号公報
【特許文献3】特開2003−346165号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
プリント回路基板上には、上記の如くシルクスクリーン印刷部210(図2参照)が存在する。これは単に「シルク」と称されることもあり、プリント回路基板上に電子部品を配置する際の位置確認、或いはプリント回路基板上の電子部品の極性の正誤を確認する等の際、その確認の目安にするために予めシルクスクリーン印刷によってプリント回路基板上の所定の位置に形成されるものである。
【0009】
このシルクスクリーン印刷部の形成位置やそのサイズには、印刷時の誤差により、ある程度のバラツキが生ずる場合がある。しかしながら上記の如く、あくまでシルクスクリーン印刷部の目的は部品実装位置等の確認の目安の提供であり、本来その位置精度はさほど厳しく要求されないものとされるのが一般的である。仮にシルクスクリーン印刷部の形成位置、サイズ等にずれが生じたとしても、実際に電子部品の実装位置さえ正確であれば何ら当該プリント回路基板の機能上問題が生ずることがないからである。
【0010】
しかしながら上記の如くプリント回路基板の外観検査において被検査品であるプリント回路基板をカメラ等により撮影し、そこで得られた画像を情報処理することで種々の検査を自動的に行なおうとする際、以下の如くの問題が生じ得る。
【0011】
図3は、この問題点を説明するための図である。同図は既にプリント回路基板上に電子部品100が実装されており、その外観検査を行なう段階の状態を示す。
【0012】
同図に示す如く、当該電子部品100はその電極110が、プリント回路基板上予め設けられたランド200と半田付けにて電気的に接続されると共に、当該プリント回路基板上の固定されている。上記の如く、この電子部品100の外観検査を行う際、先ず、これを撮影し、そこで得られた画像上に検査ウインドウW1を設定することで、所定の検査領域を画定する(図3(a)参照)。そして、この検査ウインドW1にて画定された所定の検査領域内の画像データを画像処理等にて分析することで、当該検査領域に含まれる電極とランドとの半田による電気的接続の良否等を判定する。
【0013】
ところが、シルクスクリーン印刷部の印刷位置誤差により、図3(b)に示す如くシルクスクリーン印刷部210が実際の電子部品実装位置に近付き過ぎていたような場合、予め設定してある電子部品の検査ウィンドウW1にて画定された検査領域に、このシルクスクリーン印刷部が含まれてしまうことがあり得る。即ち、図3(b)の例の場合、電子部品100の左上のシルクスクリーン印刷部210が、検査ウインドウW1によって画定された検査領域に含まれてしまっている。このように検査領域にシルクスクリーン印刷部が含まれてしまった場合、この検査領域内の画像データに対しコンピュータによって画像処理のよる分析を行なう際、このシルクスクリーン印刷部210がランド200と誤識別されてしまう等の誤認識が生じ、その結果データ分析が正しくなされずプリント回路基板上に実装された電子部品の外観検査の検査精度が低下する虞がある。
【0014】
本発明は上記課題に鑑み、シルクスクリーン印刷部等のプリント基板模様部が形成されたプリント回路基板上に実装された電子部品の外観検査を行なう際、当該プリント基板模様部によって検査精度が低下することを効果的に防止し得るための構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明では、所定の検査領域を画定する際、プリント回路基板に形成された、部品実装位置周囲のプリント基板模様部を検出し、検出されたプリント基板模様部と重複しないように所定の検査領域を画定する。このように、本発明では、予め検査領域を画定する段階でプリント基板模様部が当該検査領域内に存在することがないように検査領域の画定を行なう。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば上記の如く予め検査領域を画定する段階でプリント基板模様部が当該検査領域内に存在することがないように検査領域の画定を行なうため、プリント基板模様部によって検査精度の低下が生ずることを効果的に防止し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図4,5と共に本発明の実施の形態につき、以下に説明を行なう。
【0018】
尚、本実施の形態及び後述の実施例では、後述するプリント基板模様部の一例として、シルクスクリーン印刷部を例にとって本発明を説明する。
【0019】
図4は、本発明の実施の形態による、プリント回路基板上に実装された電子部品の外観検査を行なうにあたって部品検査用ウインドウを設定する方法を示すフローチャートである。
【0020】
ステップS1で、先ず、該当する電子部品100の周囲にシルク検査ウインドウを設定する。このシルク検査ウインドウは、該当する電子部品100の周囲の領域であって、当該電子部品が有する電極110及びその電極と半田付けにて接続されるプリント回路基板上のランド200の周辺の領域であり,且つ電極100及びランド200自体の範囲を除いた所定領域とされる。
【0021】
次に、ステップS2にて、予め登録されているシルクスクリーン印刷部の色/輝度のデータに基づき、上記シルク検査ウインドウ内の画像データを二値化する。即ち、予め測定等により得られたシルクスクリーン印刷部の色/輝度データの分析により、プリント回路基板上に形成されたシルクスクリーン印刷部を撮影した場合に得られる色/輝度に関する画像データの採り得る範囲を求める。そしてその範囲の外縁をなす値により、シルクスクリーン印刷部とそれ以外の部分とを識別するための閾値を求める。そしてその閾値を指標として画像データを二値化する。
【0022】
次に、ステップS3にて、当該二値化後の画像データから、シルクスクリーン印刷部の画像データを検索することにより、シルクスクリーン印刷部が形成された位置を抽出する。
【0023】
ステップS4では、図5に示す如く、ステップS3にて抽出されたシルクスクリーン印刷部の位置の内側範囲内(具体的には内接矩形範囲内)に部品検査ウィンドウW1を設定する。以後この部品検査法ウインドウにより画定された画像データを画像処理にて分析することにより、基板上の部品の有無、半田付けの良否等の実装部品検査において、シルクスクリーン印刷部による悪影響を効果的に回避でき、良好な実装部品検査の実現が可能となる。
【0024】
これらステップS1乃至S4の処理は、コンピュータプログラムの命令にしたがってコンピュータに自動実施させることが望ましい。
【0025】
尚、上記ステップS2,S3におけるシルクスクリーン印刷部形成位置抽出(検出)処理において適用される画像データとしては、モノクロ画像における輝度値、カラー画像における色データ、或いは輝度値と色データとの双方が適用可能である。或いは又、これら色・輝度データ等の画像データに限られず、プリント回路基板の画像上に現われた(例えば図1,図2に示される如くの)模様形状から、パターンマッチングの手法等にてシルクスクリーン印刷部を識別するようにしても良い。尚、この場合、例えばプリント回路基板を立体的に撮影することによってプリント回路基板上の3次元的な模様形状、即ち、プリント回路基板上に現われる高さ(厚さ)要素をも識別指標として加味することにより、より精度良くシルクスクリーン印刷部の形成位置の抽出を行なうことが可能となる
更に、これらの識別指標を適宜組み合わせることにより、効果的なシルクスクリーン印刷部形成位置検出を行なうことも可能である。即ち、プリント回路基板を2次元的或いは3次元的に撮影し、当該プリント回路基板の画像上に現われた2次元的或いは3次元的模様形状と、その輝度及び又は色データとを総合的に分析することにおり、当該プリント回路基板上に形成されたシルクスクリーン印刷部の位置をより精度良く抽出することが可能となる
【実施例1】
【0026】
以下、図6乃至9と共に本発明の実施例について説明する。
【0027】
図6は、本発明の実施例によるプリント回路基板外観検査工程の概略を示す。
【0028】
同工程では、最初にプリント回路基板に実装された各部品本体の有無、その極性、実装位置等を検出し、それらが適当か否かを検査する(ステップS21)。次にステップS22にて、各電子部品の電極やリード自体の異常の有無を検査する。その後ステップS23にて、各電子部品と基板との間の接合部である半田付け部の検査を行う。そしてステップS24にて、各電子部品の電極やリードの間の短絡の有無の判定、即ちブリッジ検査を実施する。尚、ステップS21乃至S24の順序は、必ずしも上記のものに限られない。
【0029】
前記本発明による「プリント回路基板上に形成されたシルクスクリーン印刷部を抽出し、これを含まないように部品検査ウインドウを設定する方法」は、上記ステップS21の「部品本体検査」ステップに適用される。ここで上述の如く、プリント回路基板(基板)の撮影画像から上記の如くの方法によってシルクスクリーン印刷部の形成位置を抽出し、これを避けるようにして部品検査ウインドウを設定する。そして、当該ウインドウにて画定された画像部分について更に詳細に画像データの分析をすることにより、当該部品の電極間の短絡の発見等が高精度に実施され得る。
【0030】
図7は、図6と共に上述したプリント回路基板外観検査工程を実施する検査装置の構成例のブロック図を示す。同図に示す如く、本発明の実施例による検査装置は、被検査品としてのプリント回路基板の製品(ワーク)17を載置するメカニカルテーブル16と、当該テーブル上のプリント回路基板17を照らす照明12と、このようにして照明されたプリント回路基板17を撮影するカメラ11とを有する。
【0031】
尚ここでメカニカルテーブル16及びカメラ11との間の位置関係、並びにメカニカルテーブルとこの上に載置される被検査品のプリント回路基板17との間の位置関係は、予め決められた基準にしたがって設定され得る。その結果、所定の設計条件にて製造されたプリント回路基板を上記基準に従ってメカニカルテーブル上に載置する限り、これをカメラ11にて撮影することにより得られる撮影画像中の、プリント回路基板に搭載された各電子部品のおおよその位置が推定可能となる。
【0032】
同実施例による検査装置は更に、照明12及びメカニカルテーブル16を制御する制御装置14,カメラ11自体の制御及びカメラ11で撮影された画像に対する上記二値化処理等を行なう画像処理装置13、並びに被検査品毎の設計データ等を格納したデータベース15を含む。
【0033】
制御装置14は最初に、被検査品(ワーク)17に関し、データベース15から必要な情報を呼び出す。その後、制御装置14は照明12やテーブル16を制御しながら、画像処理装置13に信号を送り、もって画像処理装置13がカメラ11に信号を送って被検査品の撮影を行ない、その画像を得る。ここで得た画像は画像処理装置13で処理され、その結果は制御装置14に送られる。その検査結果は制御装置14または画像処理装置13の一部であるモニタに表示される一方、必要に応じて装置内の記憶装置に保存される。データベース15にはプリント回路基板17に実装される各電子部品や基板の検査に必要な情報が予め登録されている。
【0034】
尚、画像撮像手段としては、必ずしもカメラ11である必要はなく、被検査品の画像情報を取り込む機能を有する他の装置構成を適用することも可能である。又、図7の例はテーブル16を制御することにより被検査品17を移動し、被検査品としてのプリント回路基板上の任意の位置の画像をカメラ11にて撮影可能とする構成を有するが、この構成に限らず、テーブル16を固定しておき、被検査品17を撮影するカメラ11の側を移動することで、テーブル16上に載置された被検査品17としてのプリント回路基板上の任意の位置の画像を撮影可能とする構成としても良い。
【0035】
又、画像処理装置13、制御装置14及びデータベース15は同一装置として一体的に構成することが可能である。
【0036】
尚、上記構成中、制御装置14が、「プリント回路基板に実装された部品を含む当該基板の画像に所定の検査領域を画定する手段」、「該画定された検査領域の画像データを分析することにより当該部品に関する外観検査を行なう手段」として機能する。したがって、同様に制御装置14が、「プリント回路基板上の前記部品の周囲のプリント基板模様部を検出する手段」及び「検出されたプリント基板模様部と重複しないように所定の検査領域を画定する手段」としても機能することになる。又、これ以外にも、画像処理装置13が上記「プリント回路基板に実装された部品を含む当該基板の画像に所定の検査領域を画定する手段」、「該画定された検査領域の画像データを分析することにより当該部品に関する外観検査を行なう手段」として機能するように構成することも可能である。
【0037】
次に、図8,図9と共に、本発明の実施例による、シルクスクリーン印刷部形成位置を抽出し、これを避けるように部品検査用ウインドウを設定する方法の動作フローにつき、説明する。
【0038】
先ず、ステップS31にて、予めデータベース15に登録済みの、該当電子部品100の周囲のシルクスクリーン印刷部210を含む構成とされたウィンドウW11の領域(矩形)を当該電子部品を含むプリント回路基板の撮影入力画像に設定する。次に、その領域W11から、プリント回路基板上に形成された当該部品100周辺のランド200を含む最小範囲(外接矩形範囲)のウィンドウW12の領域(図9(b)参照)を除外した領域を求め、これをシルク検出ウィンドウとして設定する。(図9(b)参照)。
【0039】
尚、ここで被検査品としてのプリント回路基板の設計データは予めデータベース15に格納されている。制御装置14ではそのデータを参照することにより、テーブル16上の所定の位置に載置され且つ所定の位置に設定されたカメラ11にて撮影されたプリント回路基板の画像上のどの位置にどの電子部品が実装されているかにつき、部品実装位置誤差範囲内で認識可能である。このため、図9(a)、(b)に示す如く、該当する電子部品100のシルクスクリーン印刷部210を含む範囲、或いは当該電子部品100の電極110及び対応するランド200の外接矩形範囲につき、所定のウインドウを設定することが可能となる。
【0040】
ステップS32にて、上記シルク検出ウィンドウの範囲内の画像データにつき、予めシルクスクリーン印刷部のコントラストを確保できるよう登録しておいた閾値で二値化を行う。即ち、上記の如く、予め計測等によって得たシルクスクリーン印刷部の画像の輝度値の採り得る範囲を包含する外縁をなす値による閾値を設定し、これを指標にして画像データを二値化する。
【0041】
尚、当該二値化用の閾値は、撮影入力画像データから自動的に適正値を算出する構成としてもよい。即ち、プリント回路基板の撮影画像中、当該電子部品100周辺の撮影画像を分析することにより、上記二値化閾値を製品毎に個別に求めることも可能である。本来プリント回路基板上に形成されるシルクスクリーン印刷部210,ランド200夫々の形成位置、並びにその上に実装される電子部品100の実装位置はプリント回路基板製品毎に予め定められた基準に従っており、その形成時或いは実装時の位置ずれ誤差の範囲内で概ね当該基準位置に形成又は実装されているものと予測される。したがって、撮影画像中の該当する電子部品100の実装基準位置周辺の画像データを分析することにより、その部分のシルクスクリーン印刷部の色、輝度のデータを推定により求めることが可能であり、これを利用して該当するシルクスクリーン印刷部識別用の閾値を求めることが可能である。
【0042】
このようにして二値化されることで得られた複数のシルクスクリーン印刷部候補領域の各々につき一旦ラベリングする(ステップS33)。そして、このようにラベリングされた各候補領域の各々につき、予め登録されたシルクスクリーン印刷部の基準サイズ条件を満足するか否かにつき判定する。そして、当該基準サイズ条件を満足する領域が見出されれば、それをシルクスクリーン印刷部として認識する(ステップS34)。尚、シルクスクリーン印刷部の検出においては、このように候補領域のサイズで判定する方法の他、例えば各候補領域の外周長等をキーにしてシルクスクリーン印刷部の認識を行なうようにしても良い。
【0043】
また、二値化は必須ではなく、撮影入力画像に対し、直接パターンマッチング等の手法を適用してシルクスクリーン印刷部の認識を行ってもよい。
【0044】
このようにしてシルクスクリーン印刷部が検出できた場合(ステップS35のOK)、検出されたシルクスクリーン印刷部の内側、即ち、当該部品100の電極110/ランド200側(内接矩形)に部品検査用ウインドウW13を生成する。以後、実際の当該部品の外観検査に係る処理は、この部品検査用ウインドウW13によって画定された領域内の画像データに対して行なう。
【0045】
このように設定した部品検査用ウインドウW13内の画像データを分析することによって、例えば、当該電子部品の部品エッジの検出を行えば、そのエッジサーチの際、シルクスクリーン印刷部による悪影響を受けることなく、正確なエッジ検出が可能となる。その結果、プリント回路基板上に実装された電子部品の正確な外観検査が可能となる。
【0046】
尚、ステップS34,S35にてシルクスクリーン印刷部が検出できなかった場合(NG)は、上記シルクスクリーン印刷部を包含するウィンドウW11或いはランド200を包含する最小範囲のウィンドウW12を部品検査用ウインドウW13として適用する。
【0047】
尚、上記エッジ検出とは、例えば図2に示す例において、部品本体100の上下端位置を検出することを言い、このような部品本体100のエッジ検出を行なうことにより、例えば当該電子部品100に係る半田付けの良否を判定する場合には、ここで検出された部品本体100の上下端位置を基準として更に検査用ウインドウを設定することが可能となる。このように部品本体100の上下端位置を確実に検出した後に検査用ウインドウを設定することにより、「半田」が本来形成されているべき電極110上の位置の検出を確実に行なうことが可能となり、もって半田付けの良否(隣接する電極の短絡を意味するブリッジの有無の判定を含む)を正確に行なうことが可能となる。
【0048】
又、エッジ検出自体は、上記のシルクスクリーン印刷部の検出同様、部品本体の色/輝度データ等を指標として画像データを二値化し、二値化後の画像データから、所定のサイズ条件等を満たす領域を検索する処理等により実行可能である。この場合もエッジ検出用のウインドウを設定するが、このウインドウによって画定された領域中にシルクスクリーン印刷部210が含まれていた場合、これが画像データ上のノイズとなり、部品本体100のエッジ(上下端)位置の正確な検出が困難となる虞がある。本発明によるシルクスクリーン印刷部抽出及びこれを避けた検査用ウインドウの生成によれば、このような問題を解決し、正確なエッジ検出が可能となる。
【0049】
尚、図8、図9と共に説明した処理動作は、例えば制御装置14或いは画像処理装置13に含まれるCPU(図示せぬ)が、予め所定の記録媒体(CD−ROM等)に格納された「シルクスクリーン印刷部を検出し、これを除外した部品検査用ウインドウを設定するプログラム」をそこから読み出し、或いは同プログラムをインターネット、LAN等の通信網を介して外部サーバからダウンロードし、同じく制御装置14或いは画像処理装置13に含まれるハードディスク装置(図示せぬ)に書き込んだ後、そのプログラムに含まれる命令を順次読み出すことにより、自動的に実行させることが可能である。
【0050】
尚、上記シルクスクリーン印刷部(通称「シルク」)は、人間が目視により様々な情報を確認可能な目的でプリント回路基板上に形成されるものであり、その用途として、例えば以下のものが挙げられる。
【0051】
部品実装位置の表示
部品名称の表示
部品極性の表示
部品ピン番号の表示
図番の表示(バーコードの付加有り)
メーカー名の表示
部品実装禁止領域の表示
又、シルクスクリーン印刷部の代用手段として、以下のものが考えられ、それらに対しても、シルクスクリーン印刷部に対する場合同様、本発明が適用可能である。
【0052】
例えば単一の半導体素子のみを実装するような場合等、表記すべき内容が非常に少ない場合、配線パターン形成過程にてプリント回路基板上に図番等の表記を行なうことが考えられる。その場合、配線パターン材料にてプリント回路基板上に必要な情報の表記を行なう。このようにすることにより、シルクスクリーン印刷部形成過程を省略可能となる。
【0053】
本願の明細書及び特許請求の範囲において、上記シルクスクリーン印刷部に加え、上記代用手段としての配線パターン等、プリント回路基板表面上に描かれる視覚性を有する様々な表示等を含む広い概念として「プリント基板模様部」の用語を使用する。即ち、本発明は、シルクスクリーン印刷部、上記その代用手段としての配線パターン等のプリント基板模様部が形成されたプリント回路基板上のプリント基板模様部を検出し、この検出されたプリント基板模様部を避けた領域に所定の検査領域を設けることにより、プリント基板模様部による誤認識等を防止するものである。
【0054】
本発明は以下の付記に記載の構成を採り得る。
(付記1)
プリント回路基板に実装された部品を含む当該基板の画像に所定の検査領域を画定する段階と、
該画定された検査領域の画像データを分析することにより当該部品に関する外観検査を行なう段階とよりなり、
前記所定の検査領域を画定する段階は、
プリント回路基板上の前記部品の周囲のプリント基板模様部を検出する段階と、
検出されたプリント基板模様部と重複しないように所定の検査領域を画定する段階とよりなるプリント回路基板外観検査方法。
(付記2)
前記所定の検査領域は矩形領域とされ、検出されたプリント基板模様部の内接矩形範囲内に画定することを特徴とする付記1に記載のプリント基板外観検査方法。
(付記3)
前記所定の検査領域を画定する段階は、
当該部品に関わるプリント基板模様部を含む第1の領域を画定する段階と、
当該部品の電極用のランドを含む第2の領域を画定する段階と、
前記第1の領域中に前記第2の領域と重複しない第3の領域を画定する段階と、
前記第3の領域につき、所定のプリント基板模様部の画像の特徴を指標にしてプリント基板模様部を検出する段階と、
検出されたプリント基板模様部と重複しないように所定の検査領域を画定する段階とよりなる付記1又は2に記載のプリント回路基板外観検査方法。
(付記4)
前記第1の領域、第2の領域及び所定の検査領域は夫々矩形領域とされ、
そのうち所定の検査領域は検出されたプリント基板模様部の内接矩形範囲内に画定することを特徴とする付記3に記載のプリント基板外観検査方法。
(付記5)
前記プリント基板模様部の検出は、プリント回路基板上の色、輝度及び形状のうちの少なくともいずれか一の指標により行なうことを特徴とする付記1乃至4のうちのいずれかに記載のプリント基板外観検査方法。
(付記6)
前記プリント基板模様部の検出は、パターンマッチングにより行なうことを特徴とする付記1乃至5のうちのいずれかに記載のプリント基板外観検査方法。
(付記7)
コンピュータにプリント回路基板外観検査を実行させるためのプログラムであって、
プリント回路基板に実装された部品を含む当該基板の画像に所定の検査領域を画定するステップと、
該画定された検査領域の画像データを分析することにより当該部品に関する外観検査を行なうステップとをコンピュータに実行させる命令よりなり、
前記所定の検査領域を画定するステップは、
プリント回路基板上の前記部品の周囲のプリント基板模様部を検出するステップと、
検出されたプリント基板模様部と重複しないように所定の検査領域を画定するステップとよりなる構成とされてなるプログラム。
(付記8)
前記所定の検査領域は矩形領域とされ、検出されたプリント基板模様部の内接矩形範囲内に画定するステップをコンピュータに実行させる命令を更に含む付記5に記載のプログラム。
(付記9)
前記所定の検査領域を画定するステップは、
当該部品に関わるプリント基板模様部を含む第1の領域を画定するステップと、
当該部品の電極用のランドを含む第2の領域を画定するステップと、
前記第1の領域中に前記第2の領域と重複しない第3の領域を画定するステップと、
前記第3の領域につき、所定のプリント基板模様部の画像の特徴を指標にしてプリント基板模様部を検出するステップと、
検出されたプリント基板模様部と重複しないように所定の検査領域を画定するステップとよりなる構成とされてなる付記7又は8に記載のプログラム。
(付記10)
前記第1の領域、第2の領域及び所定の検査領域は夫々矩形領域とされ、
そのうち所定の検査領域は、検出されたプリント基板模様部の内接矩形範囲内に画定する構成とされたステップをコンピュータに実行させる命令を更に含む付記9に記載のプログラム。
(付記11)
前記プリント基板模様部の検出は、プリント回路基板上の色、輝度及び高さのうちの少なくともいずれか一の指標により行なうことを特徴とする付記7乃至10のうちのいずれかに記載のプログラム。
(付記12)
前記プリント基板模様部の検出は、パターンマッチングにより行なう構成とされてなる付記7乃至11の内の何れかに記載のプログラム。
(付記13)
プリント回路基板に実装された部品を含む当該基板の画像に所定の検査領域を画定する手段と、
該画定された検査領域の画像データを分析することにより当該部品に関する外観検査を行なう手段とよりなり、
前記所定の検査領域を画定する手段は、
プリント回路基板上の前記部品の周囲のプリント基板模様部を検出する手段と、
検出されたプリント基板模様部と重複しないように所定の検査領域を画定する手段とよりなるプリント回路基板外観検査装置。
(付記14)
前記所定の検査領域は矩形領域とされ、検出されたプリント基板模様部の内接矩形範囲内に画定することを特徴とする付記13に記載のプリント基板外観検査装置。
(付記15)
前記所定の検査領域を画定する手段は、
当該部品に関わるプリント基板模様部を含む第1の領域を画定する手段と、
当該部品の電極用のランドを含む第2の領域を画定する手段と、
前記第1の領域中に前記第2の領域と重複しない第3の領域を画定する手段と、
前記第3の領域につき、所定のプリント基板模様部の画像の特徴を指標にしてプリント基板模様部を検出する手段と、
検出されたプリント基板模様部と重複しないように所定の検査領域を画定する手段とよりなる付記13又は14に記載のプリント回路基板外観検査装置。
(付記16)
前記第1の領域、第2の領域及び所定の検査領域は夫々矩形領域とされ、
そのうち所定の検査領域は、検出されたプリント基板模様部の内接矩形範囲内に画定する構成とされてなる付記15に記載のプリント基板外観検査装置。
(付記17)
前記プリント基板模様部の検出は、プリント回路基板上の色、輝度及び高さのうちの少なくともいずれか一の指標により行なうことを特徴とする付記13乃至16のうちのいずれかに記載のプリント基板外観検査装置。
(付記18)
前記プリント基板模様部の検出は、パターンマッチングにより行なうことを特徴とする付記13乃至16のうちのいずれかに記載のプリント基板外観検査装置。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】基板上に実装された部品及びその周辺の様子を示す図である。
【図2】図1中の一部について分かり易く説明するための図である。
【図3】従来の問題点を説明するための図である。
【図4】本発明の実施の形態による動作を説明するためのフローチャートである。
【図5】図4のフローチャートを説明するための図である。
【図6】本発明の実施例の形態によるプリント回路基板外観検査方法を説明するための処理フローチャートである。
【図7】本発明の実施の形態による部品プリント回路基板外観検査装置の一例のブロック図である。
【図8】本発明の実施の形態による動作を更に詳細に説明するためのフローチャートである。
【図9】図8に示す動作の説明用の図である。
【符号の説明】
【0056】
1 プリント回路基板外観検査装置
11 カメラ
12 照明
13 画像処理装置
14 制御装置
15 データベース
16 メカニカルテーブル
17 プリント回路基板
100 電子部品
110 電極
200 ランド
210 シルクスクリーン印刷部
W1、W13 部品検査用ウインドウ
W11 シルクスクリーン印刷部を含む範囲のウインドウ
W12 ランドを包含する最小範囲のウインドウ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント回路基板に実装された部品を含む当該基板の画像に所定の検査領域を画定する段階と、
該画定された検査領域の画像データを分析することにより当該部品に関する外観検査を行なう段階とよりなり、
前記所定の検査領域を画定する段階は、
プリント回路基板上の前記部品の周囲のプリント基板模様部を検出する段階と、
検出されたプリント基板模様部と重複しないように所定の検査領域を画定する段階とよりなるプリント回路基板外観検査方法。
【請求項2】
前記所定の検査領域を画定する段階は、
当該部品に関わるプリント基板模様部を含む第1の領域を画定する段階と、
当該部品の電極用のランドを含む第2の領域を画定する段階と、
前記第1の領域中に前記第2の領域と重複しない第3の領域を画定する段階と、
前記第3の領域につき、所定のプリント基板模様部の画像の特徴を指標にしてプリント基板模様部を検出する段階と、
検出されたプリント基板模様部と重複しないように所定の検査領域を画定する段階とよりなる請求項1に記載のプリント回路基板外観検査方法。
【請求項3】
前記プリント基板模様部の検出は、プリント回路基板上の色、輝度及び形状のうちの少なくともいずれか一の指標により行なうことを特徴とする請求項1又は2に記載のプリント基板外観検査方法。
【請求項4】
コンピュータにプリント回路基板外観検査を実行させるためのプログラムであって、
プリント回路基板に実装された部品を含む当該基板の画像に所定の検査領域を画定するステップと、
該画定された検査領域の画像データを分析することにより当該部品に関する外観検査を行なうステップとをコンピュータに実行させる命令よりなり、
前記所定の検査領域を画定するステップは、
プリント回路基板上の前記部品の周囲のプリント基板模様部を検出するステップと、
検出されたプリント基板模様部と重複しない所定の検査領域を画定するステップとよりなる構成とされたプログラム。
【請求項5】
プリント回路基板に実装された部品を含む当該基板の画像に所定の検査領域を画定する手段と、
該画定された検査領域の画像データを分析することにより当該部品に関する外観検査を行なう手段とよりなり、
前記所定の検査領域を画定する手段は、
プリント回路基板上の前記部品の周囲のプリント基板模様部を検出する手段と、
検出されたプリント基板模様部と重複しないように所定の検査領域を画定する手段とよりなるプリント回路基板外観検査装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図1】
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【公開番号】特開2006−49348(P2006−49348A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−223927(P2004−223927)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】