説明

プリント配線板の接続構造、及びカメラモジュール

【課題】簡単な構成でフレキシブル基板が大きく反ってもはく離することがないプリント配線板の接続構造、及び該プリント配線板の接続構造を有するカメラモジュールを提供すること。
【解決手段】リジッド基板に設けられた第1の接続端子と、フレキシブル基板に設けられた第2の接続端子とが異方性導電材料を介して接合されたプリント配線板の接続構造において、両プリント配線板を接続した端部位置近傍で前記リジッド基板側に穴部を設け、前記フレキシブル基板を該穴部にくぐらせたことを特徴とするプリント配線板の接続構造、及びこのプリント配線板の接続構造を有することを特徴とするカメラモジュール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2枚のプリント配線板にそれぞれ設けた接続端子を異方性導電材料を介して接合したプリント配線板の接続構造、及び該プリント配線板の接続構造を有するカメラモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、超小型のカメラモジュールが携帯電話やPDA(Personal Digital Assistant)等の小型で薄型の携帯端末に搭載されるようになり、これにより音声やメールによる通信だけでなく画像の撮像や画像送信も可能になってきた。
【0003】
このカメラモジュールの一例を図6で概略説明するに、図6(a)は、カメラモジュール60を組み立てる前の構成部品を示し、図6(b)は組み立てた状態を示している。
【0004】
図6(a)において、構成部品は、撮像レンズなどを収納した鏡胴61を、CCDやCMOSなどのイメージセンサが装着されたリジッドなプリント配線板62に接合したカメラヘッド63と、カメラヘッド63を携帯端末に電気接続するためのフレキシブルなプリント配線板64と、プリント配線板62の接続端子62aとプリント配線板64の接続端子64aを接続する異方性導電フィルム(Anisotropic Conductive Film、ACFとも言う)65とである。プリント配線板62とプリント配線板64を異方性導電フィルム65を挟んで熱圧着することにより、両者が接合されてカメラモジュール60が完成する。
【0005】
本発明においては、リジッドなプリント配線板をリジッド基板、フレキシブルなプリント配線板をフレキシブル基板と称し、両者を統合して呼称するときはプリント配線板と言う。また、プリント配線板は、狭義には電子部品を持たない配線板であるが、本発明においては、電子部品を搭載したプリント回路板も含めてプリント配線板と言う。
【0006】
さて、図において、撮像レンズの開口は下側であり、撮像レンズから入射した光はリジッド基板62の裏面に設けられたイメージセンサに導かれて結像する。イメージセンサで光電変換された画像データは、リジッド基板62の接続端子62a、異方性導電フィルム65、フレキシブル基板64の接続端子64aを通り自由端側の接続端子64bから携帯端末の回路に送られる。なお、フレキシブル基板64の自由端表側には、補強板64cが設けられている。
【0007】
ここで、異方性導電フィルムは、耐熱性樹脂から形成された厚み20〜30μmの電気的接合用フィルムである。耐熱性樹脂の内部には複数の導電性粒子が面方向に分散されていて、この導電性粒子は樹脂をニッケル等で被覆した3〜5μmの球体に形成されている。2枚のプリント配線板の間に配置された異方性導電フィルムが熱圧着されると、2枚のプリント配線板の接続端子が各々導電性粒子に当接するので、厚み方向に導電性を有することになる。一方、導電性粒子は耐熱性樹脂の内部に概ね10%以下の比率で分散しており、面方向には圧力がかからないので導電性粒子同士の接触はなく絶縁性が保たれる。従って、2枚のプリント配線板に各々設けた複数の接続端子を接合する際に、対向する接続端子は導通し、隣り合う接続端子は導通しない。
【0008】
異方性導電フィルムを用いて基板を熱圧着する方法としては、下記の特許文献が知られている。
【0009】
特許文献1は、電極パターンが配設されICチップが実装された複数枚のフィルム状基板を異方性導電フィルムを介して1枚の透過性基板に熱圧着する熱圧着実装法を開示している。本文献においては、フィルム状基板が熱膨張によって伸長し、位置ずれを起こすことを防止するため、複数の加熱手段を設け、別個に加熱制御している。
【0010】
また、特許文献2は、複数枚の半導体チップ搭載フィルムを異方性導電フィルムを介して1枚の角形基板に熱圧着する半導体チップ搭載フィルムの接続方法を開示している。本文献によれば、角形基板の傾斜を検知し、傾斜角度に合わせて1枚ずつ半導体チップ搭載フィルムを仮圧着し、その後同時に本圧着している。
【0011】
なお、異方性導電材料としては、フィルムタイプ以外にペーストタイプも知られており、本発明では両者を用いることができる。そのため両者を総称するときは異方性導電材料と言う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平8−204329号公報
【特許文献2】特開平5−144889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
図6(c)は、カメラモジュール60の側面図である。前述の如く、リジッド基板62とフレキシブル基板64とは異方性導電フィルム65を介して接合されているが、フレキシブル基板64は、その自由端側に携帯端末の回路に接続する接続端子64bを有しており、この接続端子64bを携帯端末の回路に接続するときや、カメラモジュール60を携帯電話等に組み込むとき、あるいは運搬するときに、この自由端側を図において上方に反らせてしまうことがある。フレキシブル基板64は、このようなめくれ方向の外力に弱く、はく離してしまう問題がある。
【0014】
このような問題を防止する手段として、リジッド基板62の側壁とフレキシブル基板64の下部とを矢印に示す位置で接着剤接合することも考えられるが、この方法は、接着剤の接着工程や固化工程が必要で原価高になり、好ましくない。例えば、熱硬化性樹脂で接着する場合は、60分程度の加熱時間が必要である。また、紫外線硬化樹脂で接着するには、紫外線照射設備や作業者を有害な紫外線から防護する装備が必要である。
【0015】
本発明は、以上のような課題に鑑みてなされたものであり、簡単な構成でフレキシブル基板が大きく反ってもはく離することがないプリント配線板の接続構造、及び該プリント配線板の接続構造を有するカメラモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的は、フレキシブル基板に働く力をせん断応力のみに制約することで達成される。働く力をせん断応力のみに制約するとは、フレキシブル基板に上述のような外力が働いてもはく離応力や割裂応力とならないようすることであり、このためにリジッド基板側に穴部を設け、フレキシブル基板をこの穴部にくぐらせる構造としている。
【0017】
具体的には、
1.リジッド基板に設けられた第1の接続端子と、フレキシブル基板に設けられた第2の接続端子とが異方性導電材料を介して接合されたプリント配線板の接続構造において、
両プリント配線板を接続した端部位置近傍で前記リジッド基板側に穴部を設け、前記フレキシブル基板の自由端側を該穴部にくぐらせたことを特徴とするプリント配線板の接続構造。
2.前記穴部は、前記リジッド基板の側部に設けられることを特徴とする前記1に記載のプリント配線板の接続構造。
3.前記穴部は、前記リジッド基板に接続される部材に設けられることを特徴とする前記1に記載のプリント配線板の接続構造。
4.前記穴部は、前記リジッド基板を囲う枠体に形成された穴部であることを特徴とする前記1に記載のプリント配線板の接続構造。
5.前記穴部の幅は、前記フレキシブル基板の幅と略同等に形成されることを特徴とする前記1から4のいずれかに記載のプリント配線板の接続構造。
6.前記フレキシブル基板は、前記穴部の内側面に沿うように、少なくとも1つの折り癖が付けられることを特徴とする前記1〜5のいずれかに記載のプリント配線板の接続構造。
7.前記1〜6のいずれかに記載のプリント配線板の接続構造を有することを特徴とするカメラモジュール。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、フレキシブル基板をリジッド基板に接続するに当たって、リジッド基板側に設けた穴部にフレキシブル基板をくぐらせる構造としたため、フレキシブル基板に外力が加わっても、外力は、はく離方向や割裂方向には作用せずせん断方向にのみ制約されるため、フレキシブル基板がはがれることのないプリント配線板の接続構造、及び該プリント配線板の接続構造を有するカメラモジュールを提供できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のカメラモジュールの実施形態を示す断面図(a)と上面図(b)。
【図2】異方性導電フィルム5の接合部に働く外力の作用を示す模式図。
【図3】本発明の第1変形例を示す断面図。
【図4】本発明の第2変形例を示す断面図。
【図5】本発明の第2変形例を示す断面図(a)と上面図(b)。
【図6】従来技術によるカメラモジュールの作成方法を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は本発明のカメラモジュールの実施形態を示す断面図(a)と上面図(b)である。図において、カメラモジュール1は、カメラヘッド2と、リジッド基板3と、フレキシブル基板4と、リジッド基板3とフレキシブル基板4とを接合する異方性導電フィルム5を有する。
【0021】
カメラヘッド2は、鏡胴21の中に固定配置された撮像レンズ22を有しており、そのほか絞り板23、赤外カットフィルタ24などを有している。
【0022】
このカメラヘッド2の上面に、CCDやCMOSなどのイメージセンサ31が裏面に装着されたリジッド基板3が公知の方法で接合されている。
【0023】
リジッド基板3は、フレキシブル基板4の自由端方向に幾分伸びた形状を有し、この部分に穴部32が形成され、リジッド基板3上部で異方性導電フィルム5により接合されたフレキシブル基板4が、この穴部32をくぐって穴部32の下方から水平方向に伸びている。なお、異方性導電フィルム5は、穴部32の縁のぎりぎりまで設けることが望ましい。
【0024】
ここで、フレキシブル基板4の自由端は、水平方向に伸びているが、これは、あらかじめフレキシブル基板4に、穴部32の上部縁と下部縁に沿うように折り癖を付けておくことでこのような状態にできる。折り癖は、必ずしも必要ではないが、携帯端末の回路との接続位置によって、水平方向にフレキシブル基板4が伸びたほうが接続作業に便利な場合に好適である。
【0025】
以上のような構成において、異方性導電フィルム5の接合部に働く外力の作用を、図2を用いて説明する。図2は、リジッド基板3、フレキシブル基板4、及び異方性導電フィルム5のみを示す模式図であり、図2(a)のように相反する方向に力がかかる場合、異方性導電フィルム5の接合部に働く力は、はく離応力となる。あるいは、図2(b)のように接合部端部にリジッド基板3とフレキシブル基板4とを引き剥がす方向に力がかかる場合は、割裂応力となる。異方性導電フィルム5の接合部はこのような力に弱く、フレキシブル基板4ははがれてしまうことになる。
【0026】
本発明は、異方性導電フィルム5の接合部に働く力をせん断応力のみに制約する構造をとるものである。すなわち、図2(c)のように、フレキシブル基板4にF1、F2、F3等のどの方向の力が働いても異方性導電フィルム5の接合部に働く力は、穴部32に拘束されて異方性導電フィルム5の接合平面と平行なせん断方向の力Fとなる。これによりフレキシブル基板4にはめくれ方向の力は作用せずはがれることはない。
【0027】
次に、本発明の第1変形例を、図3を用いて説明する。第1変形例は、フレキシブル基板4の折り癖を2段階に付けたものである。すなわち、図3において、フレキシブル基板4は図1の折り癖に加えて穴部32をくぐった後上方にもう一度折り癖4aを付けられている。この変形例は、携帯端末との接続部がフレキシブル基板4と同一平面にあるような場合に有利である。
【0028】
図4は、第2変形例を示す断面図である。この変形例では、穴部25が鏡胴21の上部に設けられている。この場合も折り癖は、図1の1段階の折り癖でもよく、図3の2段階の折り癖でも良い。いずれにしても、フレキシブル基板近傍の部材に穴部を設け、この穴部にフレキシブル基板をくぐらせることにより本発明の効果は発揮される。
【0029】
図5は、第3変形例を示す断面図(a)と上面図(b)である。この変形例は、リジッド基板3の外周に枠体50をはめ込む構造とし、この枠体50に穴部51を設けたものである。図5(b)の平面図では、枠体50の形状がわかりやすいようにドットハッチングで示している。
【0030】
枠体50は、実際には、四画の枠体であり、フレキシブル基板4の延出部側の内側隅に段差部分52を形成している。従って、枠体50がはめ込まれたとき、枠体50の三方の辺がリジッド基板3を取り囲み、残りの一方の辺は隙間を空けることになる。この隙間が穴部51となる。なお、残りの一辺に穴部を形成してもよい。
【0031】
穴部51の幅は、フレキシブル基板4の幅よりわずかに大きく、リジッド基板3の幅(図5(b)の上下方向)よりわずかに小さく作られる。これによりリジッド基板3の隅部に当たる段差部分52が穴部51の側部にでき、枠体50はリジッド基板3をしっかりと保持できる。
【0032】
この変形例では、リジッド基板3とフレキシブル基板4とを異方性導電フィルム5で接合した後、枠体50をはめ込むだけでよいので作業が簡単となる。
【0033】
以上に図示、説明した実施形態、変形例では、穴部の幅はフレキシブル基板の幅と略同等の幅で示したが、フレキシブル基板の自由端側が、リジッド基板と接合する側より広い幅の場合などは穴部も大きい幅にしてもよい。穴部の幅は、フレキシブル基板の構造や工程の組み方に応じて適宜決めることができる。
【符号の説明】
【0034】
1 カメラモジュール
2 カメラヘッド
3 リジッド基板
4 フレキシブル基板
5 異方性導電フィルム(異方性導電材料)
21 鏡胴
25、32、41 穴部
40 枠体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リジッド基板に設けられた第1の接続端子と、フレキシブル基板に設けられた第2の接続端子とが異方性導電材料を介して接合されたプリント配線板の接続構造において、
両プリント配線板を接続した端部位置近傍で前記リジッド基板側に穴部を設け、前記フレキシブル基板の自由端側を該穴部にくぐらせたことを特徴とするプリント配線板の接続構造。
【請求項2】
前記穴部は、前記リジッド基板の側部に設けられることを特徴とする請求項1に記載のプリント配線板の接続構造。
【請求項3】
前記穴部は、前記リジッド基板に接続される部材に設けられることを特徴とする請求項1に記載のプリント配線板の接続構造。
【請求項4】
前記穴部は、前記リジッド基板を囲う枠体に形成された穴部であることを特徴とする請求項1に記載のプリント配線板の接続構造。
【請求項5】
前記穴部の幅は、前記フレキシブル基板の幅と略同等に形成されることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のプリント配線板の接続構造。
【請求項6】
前記フレキシブル基板は、前記穴部の内側面に沿うように、少なくとも1つの折り癖が付けられることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のプリント配線板の接続構造。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のプリント配線板の接続構造を有することを特徴とするカメラモジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−249710(P2011−249710A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−123904(P2010−123904)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】