説明

プリント配線板用銅箔及びそれを用いた積層板

【課題】ファインピッチ化に適した、裾引きが小さい断面形状の回路を良好な製造効率で製造可能なプリント配線板用銅箔及び電子回路の形成方法を提供する。
【解決手段】銅箔基材と、該銅箔基材表面の少なくとも一部を被覆する被覆層とを備えたプリント配線板用銅箔であって、前記被覆層が、Pt、Pd、及び、Auの少なくともいずれか1種を含み、前記被覆層には、Auが200〜2000μg/dm2、Ptが200〜2000μg/dm2、Pdが120〜1200μg/dm2の付着量で存在し、CCL製造工程の熱履歴を受けると、XPSによる該被覆面表面からの深さ方向分析から得られた深さ方向(x:単位nm)のPt、Pd、及びAuのいずれか1種以上の原子濃度(%)をf(x)、銅の原子濃度をg(x)としたとき、区間[0、5]において0.1≦∫f(x)dx/∫g(x)dx≦0.7を満たすプリント配線板用銅箔。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板用銅箔及びそれを用いた積層板に関し、特にフレキシブルプリント配線板用の銅箔及びそれを用いた積層板に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板はここ半世紀に亘って大きな進展を遂げ、今日ではほぼすべての電子機器に使用されるまでに至っている。近年の電子機器の小型化、高性能化ニーズの増大に伴い搭載部品の高密度実装化や信号の高周波化が進展し、プリント配線板に対して導体パターンの微細化(ファインピッチ化)や高周波対応等が求められている。
【0003】
プリント配線板は銅箔に絶縁基板を接着、もしくは絶縁基板上にNi合金等を蒸着させた後に電気めっきで銅層を形成させて銅張積層板とした後に、エッチングにより銅箔または銅層面に導体パターンを形成するという工程を経て製造されるのが一般的である。そのため、プリント配線板用の銅箔または銅層には絶縁基板との接着性やエッチング性が要求される。
【0004】
ここでの接着性とは、形成された回路が絶縁基板から剥離しないことを言う。このため、銅箔または銅層の樹脂との接着面側には凹凸を形成する粗化処理や、必要に応じてさらにNiめっきやクロメート等の処理が施されるのが一般的である。または、表皮効果等の観点から、粗化処理を行わずにクロメート処理等を銅箔に直接施す方法も知られている(特許文献1)。
【0005】
また、エッチング性とは回路間の絶縁部に表面処理由来の金属が残存しないこと、回路の裾引きが小さいことをいう。回路間の絶縁部に金属が残存していれば、回路間で短絡が起こってしまう。また、回路形成のエッチングでは、回路上面から下(絶縁基板側)に向かって、末広がりにエッチングされ、回路の断面は台形になる。この台形の上底と下底との差(以下「裾引き」と呼ぶ)が小さければ、回路間のスペースを狭くでき、高密度配線基板が得られる。裾引きが大きければ、回路間のスペースを狭くすると回路が短絡するので、高密度実装基板を製造することができない。
【0006】
エッチングは銅箔または銅層の板厚方向及び平面方向の2方向に進行する。板厚方向のエッチング速度が平面方向のそれよりも低いので、回路断面は台形になる。このため、裾引きが小さい回路を得るためには、銅箔または銅層の厚みを薄くしてエッチング時間を短くすれば良い(特許文献2)。
【0007】
銅箔または銅層の他にもフォトレジストの厚みもエッチング時間に影響する。通常、FPC用途であれば厚みが3μm以上のドライフィルムレジストが用いられる。レジストが厚いと開口部にエッチング液が十分に供給されず、エッチングは銅箔または銅層の厚み方向よりも平面方向に進み、十分な幅を有する回路が形成できない。そこで、細線回路を形成する場合には、液体レジストが広く使用されている。液体レジストの厚みは1μm程度なので、ドライフィルムレジストを使用した場合よりも開口部にエッチング液が十分に供給される。
【0008】
また、裾引きを小さくするために、銅箔のエッチング面側に銅よりもエッチング速度が遅い金属又はその合金層を形成する方法がある(特許文献3、4)。これらの候補金属はNi、Co等である。これらを銅箔または銅層のエッチング面に多量に付着させて形成した数10nmの層で回路上部の横方向のエッチングが抑制され、裾引きが小さい回路が形成される。
【0009】
プリント配線板の配線回路のファインピッチ化が進展に伴い、回路間隔も小さくなっていくので、回路の裾引きは小さくなければならない。非特許文献1によれば、回路幅(L、単位はμm)と回路間隔(S、単位はμm)は年々狭まる傾向にあり、フレキシブルプリント配線板に関しては2012年にはL/S=25/25に達するとのことである。配線回路のファインピッチ化に対応するためには、回路の裾引きを小さくするべく銅箔の厚みを薄くしなければならない。しかしながら、銅箔の厚みが薄くなると製造時の取り扱いが困難になるため、電解銅箔や圧延銅箔で対応できる配線パターンはL/S=25/25が限界と言われている。銅箔のエッチング面にNi、Co等の金属層を形成しても、このような回路パターンに対応するのは困難であると予想される。
【0010】
ポリイミド等の樹脂フィルム上にニッケル合金等をスパッタリングで蒸着させることで導電性を付与し、その後銅めっきを施す方法(メタライジング法)は微細配線パターンを形成するのに適している。この方法はめっきで形成した銅層の厚さを容易に変えることが可能なため、配線回路のファインピッチ化に適した素材である。しかしながら、銅層を形成するめっきに時間を要するため、製造コストが高いという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2006−222185号公報
【特許文献2】特開2000−269619号公報
【特許文献3】特開1994−81172号公報
【特許文献4】特開2002−176242号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】2009年度版 日本実装技術ロードマップ プリント配線板編
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
銅箔から回路を形成する方法(サブトラクティブ法)では、従来の厚みでは、銅箔の板厚方向のエッチングが完了するまでに平面方向のエッチングが進行し、裾引きが大きな断面形状の回路しか得ることができない。幅が狭くなった回路上面では電流が集中するので発熱し、場合によっては断線する可能性がある。また、ICチップを搭載するのが困難になると予想される。
【0014】
回路断面の裾引きを小さくするためには、銅箔の厚みを薄くし、エッチング時間を短くすれば良い。しかしながら、銅箔が薄くなるほどCCL製造工程での取り扱いが困難になり、製品歩留まりに悪影響を与える。また、特許文献2のように銅層が薄くなると、回路の断面積が減少するので、必要な導電量を確保できない可能性がある。
【0015】
銅箔のエッチング面にNi、Co層等を設ける技術は、今後進展すると予想される回路パターンの狭ピッチ化には対応できない可能性がある。また、先行技術ではこれらの金属は多量に付着させる必要がある。これらの金属層は強磁性を有するため、電子機器に悪影響を及ぼす可能性がある。従って、回路形成のエッチング、レジスト除去後に、ソフトエッチングでこれらの層を除去する必要があり、製造工程が増えてしまう。
【0016】
また、銅箔または銅層のエッチング面にドライフィルムレジストを熱圧着させて物理的な密着力が得られる場合とは異なり、液体レジストはスピンコート若しくはそれに準ずる方法でエッチング面に塗工される。一般的に液体レジストは銅との密着を想定しているので、エッチング面に施された表面処理との相性が良いとは限らず、レジストが容易に剥離する場合がある。液体レジストを用いる場合は前処理でエッチング面を粗し、物理的な密着力を確保する場合が多い。
【0017】
そこで、本発明は、ファインピッチ化に適した、裾引きが小さい断面形状の回路を良好な製造効率で製造可能なプリント配線板用銅箔及び電子回路の形成方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
従来、ファインピッチの回路をサブトラクティブ法で形成するためには銅箔の厚みを薄くする必要があった。また、裾引きが小さい断面形状の回路を形成するためには、銅箔のエッチング面に強磁性を有するNiやCoを多量に付着させ、数10nmの厚みの層を形成する必要があった。これに対し、本発明者らは鋭意検討の結果、微量の貴金属を銅箔のエッチング面に付着させた場合に、形成された回路の裾引きが小さくなることを見出した。これにより、銅箔の厚みが薄くなくても裾引きが小さい回路を形成することが可能となるため、高密度実装基板の形成が可能となる。さらに貴金属を異種金属で覆うことによって、液体レジストとの密着性が確保される。これにより、従来行われていた前処理の工程が省略可能となるとともに、安定して微細配線パターンが形成できる。
一方、本来耐食性を有する貴金属が多すぎると、レジスト開口部に露出した部分の初期エッチング性が劣化し、回路の直線性が悪くなる。そこで、貴金属量を極微量とするか、又は、熱拡散等によって貴金属層への銅箔基材からの銅の拡散を促進させることで、初期エッチング性を良好にする必要がある。しかしながら、本発明者らは、過度の熱拡散が生じた場合や貴金属量が微量である場合はレジストとの密着性が劣化することを見出した。熱拡散はCCL製造工程で必ず起こるものであり、貴金属はコストが高く工業化のためには極微量である必要がある。詳細は不明であるが、表面処理層の分析結果から、特定の場合にレジストとの密着性に好ましくない構造が形成され、これがエッチング中のレジスト剥離を促進するためだと推定される。
そこで、本発明者らは、表層近傍の貴金属量と銅量との比を制御することで、初期エッチング性が良好で、レジスト剥離が抑制され、微細回路パターンの形成が可能なプリント配線板用銅箔が得られることを見出した。
【0019】
以上の知見を基礎として完成した本発明は一側面において、銅箔基材と、該銅箔基材表面の少なくとも一部を被覆する被覆層とを備えたプリント配線板用銅箔であって、前記被覆層が、Pt、Pd、及び、Auの少なくともいずれか1種を含み、前記被覆層には、Auが200〜2000μg/dm2、Ptが200〜2000μg/dm2、Pdが120〜1200μg/dm2の付着量で存在し、CCL製造工程の熱履歴を受けると、XPSによる該被覆面表面からの深さ方向分析から得られた深さ方向(x:単位nm)のPt、Pd、及びAuのいずれか1種以上の原子濃度(%)をf(x)、銅の原子濃度をg(x)としたとき、区間[0、5]において0.1≦∫f(x)dx/∫g(x)dx≦0.7を満たすプリント配線板用銅箔である。
【0020】
本発明に係るプリント配線板用銅箔は一実施形態において、Ptの付着量が400〜1050μg/dm2以下、Pdの付着量が240〜600μg/dm2以下、Auの付着量が400〜1000μg/dm2以下である。
【0021】
本発明に係るプリント配線板用銅箔は別の一実施形態において、最表層に、クロム層若しくはクロメート層、及び/又は、シラン処理層で構成された防錆処理層が形成されている。
【0022】
本発明に係るプリント配線板用銅箔は更に別の一実施形態において、プリント配線板がフレキシブルプリント配線板である。
【0023】
本発明は別の一側面において、本発明の銅箔と樹脂基板との積層体である。
【0024】
本発明は更に別の一側面において、銅層と樹脂基板との積層体であって、前記銅層の表面の少なくとも一部を被覆する本発明の被覆層を備えた積層体である。
【0025】
本発明に係る積層体は一実施形態において、前記樹脂基板がポリイミド基板である。
【0026】
本発明は更に別の一側面において、本発明の積層体を材料としたプリント配線板である。
【0027】
本発明は更に別の一側面において、銅箔基材の表面の少なくとも一部に、Pt、Pd、及び、Auのいずれか1種以上を含む被覆層を、前記被覆層におけるPtの付着量が200〜2000μg/dm2以下、Pdの付着量が120〜1200μg/dm2以下、Auの付着量が200〜2000μg/dm2以下となるように、リール・ツー・リール方式の連続ラインで乾式成膜法によって形成し、XPSによる該被覆面表面からの深さ方向分析から得られた深さ方向(x:単位nm)のPt、Pd、及びAuのいずれか1種以上の原子濃度(%)をf(x)、銅の原子濃度をg(x)としたとき、区間[0、5]において0.1≦∫f(x)dx/∫g(x)dx≦0.7を満たすようレジストパターン形成までを含むCCL製造の熱履歴を与えた後、エッチングを行い銅の不要部を除去して回路を形成する電子回路の形成方法である。
【0028】
本発明に係る電子回路の形成方法は一実施形態において、前記レジストパターン形成までを含むCCL製造の熱履歴を、XPSによる該被覆面表面からの深さ方向分析から得られた深さ方向(x:単位nm)のPt、Pd、及びAuのいずれか1種以上の原子濃度(%)をf(x)、銅の原子濃度をg(x)としたとき、区間[0、5]において、0.15≦∫f(x)dx/∫g(x)dx≦0.4を満たす。
【0029】
本発明に係る電子回路の形成方法は別の一実施形態において、Ptの付着量が400〜1050μg/dm2以下、Pdの付着量が240〜600μg/dm2以下、Auの付着量が400〜1000μg/dm2以下である。
【0030】
本発明に係る電子回路の形成方法は更に別の一実施形態において、前記被覆層が、Pt、Pd、及び、Auの少なくともいずれか1種からなる層及び前記3種以外の1種以上の金属からなる層で構成されている。
【0031】
本発明に係る電子回路の形成方法は更に別の一実施形態において、プリント配線板がフレキシブルプリント配線板である。
【0032】
本発明に係る電子回路の形成方法は更に別の一実施形態において、前記被覆層を形成する銅箔基材の裏面には樹脂基板が形成されており、該銅箔基材と該樹脂基板とで積層体を構成している。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、ファインピッチ化に適した、裾引きが小さい断面形状の回路を良好な製造効率で製造可能なプリント配線板用銅箔及び電子回路の形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】健全部(レジストと銅基材が剥離していない部分)を示す写真である。
【図2】異常部(レジストと銅基材が一部剥離している部分)を示す写真である。
【図3】回路パターンの一部の表面写真、当該部分における回路パターンの幅方向の横断面の模式図、及び、該模式図を用いたエッチングファクター(EF)の計算方法の概略である。
【図4】実施例22に係る銅箔のXPSによる深さ方向の濃度プロファイルである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
(銅箔基材)
本発明に用いることのできる銅箔基材の形態に特に制限はないが、典型的には圧延銅箔や電解銅箔の形態で用いることができる。一般的には、電解銅箔は硫酸銅めっき浴からチタンやステンレスのドラム上に銅を電解析出して製造され、圧延銅箔は圧延ロールによる塑性加工と熱処理を繰り返して製造される。屈曲性が要求される用途には圧延銅箔を適用することが多い。
銅箔基材の材料としてはプリント配線板の導体パターンとして通常使用されるタフピッチ銅や無酸素銅といった高純度の銅の他、例えばSn入り銅、Ag入り銅、Cr、Zr又はMg等を添加した銅合金、Ni及びSi等を添加したコルソン系銅合金のような銅合金も使用可能である。なお、本明細書において用語「銅箔」を単独で用いたときには銅合金箔も含むものとする。
【0036】
本発明に用いることのできる銅箔基材の厚さについても特に制限はなく、プリント配線板用に適した厚さに適宜調節すればよい。例えば、5〜100μm程度とすることができる。但し、ファインパターン形成を目的とする場合には30μm以下、好ましくは20μm以下であり、典型的には5〜20μm程度である。
【0037】
本発明に使用する銅箔基材は、特に限定されないが、例えば、粗化処理をしないものを用いても良い。従来は特殊めっきで表面にμmオーダーの凹凸を付けて表面粗化処理を施し、物理的なアンカー効果によって樹脂との接着性を持たせるケースが一般的であるが、一方でファインピッチや高周波電気特性は平滑な箔が良いとされ、粗化箔では不利な方向に働くことがある。また、粗化処理をしないものであると、粗化処理工程が省略されるので、経済性・生産性向上の効果がある。
【0038】
(1)被覆層の構成
銅箔基材の絶縁基板との接着面の反対側(回路形成予定面側)の表面の少なくとも一部には、被覆層が形成されている。被覆層は、Pt、Pd、及び、Auの少なくともいずれか1種を含んでいる。また、被覆層は、銅箔基材表面から順に積層した、Pt、Pd、及び、Auの少なくともいずれか1種からなる層及び前記3種以外の1種以上の金属からなる層で構成されていてもよい。Pt、Pd、及び、Au以外の金属としては、Ni、Co、Sn及びZnの何れか1種以上を挙げることができる。また、Pt、Pd、及び、Au以外の金属としては、Ni−V、Ni−Sn、Ni−Zn及びNi−Mn等のNi合金を用いてもよい。このように、微量の貴金属を銅箔のエッチング面に付着させると、形成された回路の裾引きが小さくなる。これにより、銅箔の厚みが薄くなくても裾引きが小さい回路を形成することが可能となるため、高密度実装基板の形成が可能となる。さらに貴金属を異種金属で覆うことによって、液体レジストとの密着性が確保され、これにより、従来行われていた前処理の工程が省略可能となるとともに、安定して微細配線パターンが形成できる。
【0039】
(2)被覆層の同定
被覆層の同定はXPS、若しくはAES等表面分析装置にて表層からアルゴンスパッタし、深さ方向の化学分析を行い、夫々の検出ピークの存在によって同定することができる。
【0040】
(3)付着量
被覆層がPtで構成されている場合は、Ptの付着量が200〜2000μg/dm2であり、400〜1050μg/dm2であるのがより好ましい。被覆層がPdで構成されている場合は、Pdの付着量が120〜1200μg/dm2であり、240〜600μg/dm2であるのがより好ましい。被覆層がAuで構成されている場合は、Auの付着量が200〜2000μg/dm2であり、400〜1000μg/dm2であるのがより好ましい。被覆層のPtの付着量が200μg/dm2未満、被覆層のPdの付着量が120μg/dm2未満、及び、被覆層のAuの付着量が200μg/dm2未満であると、それぞれ効果が十分でない。一方、被覆層のPtの付着量が2000μg/dm2、被覆層のPdの付着量が1200μg/dm2、及び、被覆層のAuの付着量が2000μg/dm2を超えると、それぞれ初期エッチング性に悪影響を及ぼす。
【0041】
また、Pt、Pd、及び、Au以外の金属の層が、Ni、Co、Sn及びZnの何れか1種以上の単体層又は合金層である場合、Niが1500μg/dm2以下、Coが1500μg/dm2以下、Snが1200μg/dm2以下、Znが1200μg/dm2以下の付着量で存在する。被覆層のNiの付着量が1500μg/dm2、被覆層のCoの付着量が1500μg/dm2、被覆層のSnの付着量が1200μg/dm2、被覆層のZnの付着量が1200μg/dm2を超えると、それぞれ初期エッチング性に悪影響を及ぼす。
【0042】
Ni合金層は、付着量が1500μg/dm2以下のNi及び500μg/dm2以下のVからなるNi−V合金層、付着量が1500μg/dm2以下のNi及び500μg/dm2以下のSnからなるNi−Sn合金層、付着量が1500μg/dm2以下のNi及び1100μg/dm2以下のZnからなるNi−Zn合金層、又は、付着量が1500μg/dm2以下のNi及び500μg/dm2以下のMnからなるNi−Mn合金層であってもよい。各金属元素の付着量が上記範囲を超えれば、それぞれ初期エッチング性に悪影響を及ぼす。
【0043】
上述のように、銅箔のエッチング面を貴金属で覆うことで、サイドエッチングが抑制され、矩形に近い断面形状の回路を得ることができる。一方、本来耐食性を有する貴金属が多すぎると、レジスト開口部に露出した部分の初期エッチング性が劣化し、回路の直線性が悪くなる。そこで、貴金属量を極微量とするか、又は、熱拡散等によって貴金属層への銅箔基材からの銅の拡散を促進させることで、初期エッチング性を良好にする必要がある。しかしながら、過度の熱拡散や貴金属量が微量である場合ではレジストとの密着性が劣化する。表面処理層の状態が特定の場合にレジストとの密着性に好ましくない構造が形成され、これがエッチング中のレジスト剥離を促進するためだと考えられる。これに対し、本発明に係るプリント配線板用銅箔は、CCL製造の熱履歴を受けると、XPSによる該被覆面表面からの深さ方向分析から得られた深さ方向(x:単位nm)のPt、Pd、及びAuのいずれか1種以上の原子濃度(%)をf(x)、銅の原子濃度をg(x)としたとき、区間[0、5]において0.1≦∫f(x)dx/∫g(x)dx≦0.7を満たす。このように表層近傍の貴金属量と銅量との比を制御することで、初期エッチング性が良好で、レジスト剥離が抑制され、微細回路パターンの形成が可能となる。また、表層近傍の貴金属量と銅量との比として、好ましくは区間[0、5]において、0.15≦∫f(x)dx/∫g(x)dx≦0.4である。ここで、「CCL製造の熱履歴」とは、CCL製造をキャスト法により行う場合は200〜500℃にて0.5〜10時間程度の加熱を示し、ラミネート法により行う場合は100〜400℃にて1〜600秒程度の加熱を示す。
【0044】
また、銅箔基材と被覆層との間には、初期エッチング性に悪影響を及ぼさない限り、耐加熱変色性の観点から下地層を設けてもよい。下地層としてはニッケル、ニッケル合金、コバルト、銀、マンガンが好ましい。下地層を設ける方法は乾式、湿式法いずれでも良い。
【0045】
被覆層上の最表層には、防錆効果を高めるために、さらに、クロム層若しくはクロメート層、及び/又は、シラン処理層で構成された防錆処理層を形成することができる。また、被覆層と銅箔との間に、さらに加熱処理による酸化を抑制するため、耐酸化性を有する下地層を形成してもよい。
【0046】
(銅箔の製造方法)
本発明に係るプリント配線板用銅箔は、乾式成膜法、例えばスパッタリング法、さらには電気めっきにより形成することができる。このときの銅箔基材の搬送には、リール・ツー・リール方式等の連続搬送方式を用いることができる。これにより銅箔基材の表面の少なくとも一部を、被覆層により被覆する。具体的には、スパッタリング法によって、銅箔のエッチング面側に銅よりもエッチングレートの低いPt、Pd、及び、Auのいずれか1種以上を含む層を形成する。また、好ましくは、Pt、Pd、及び、Auのいずれか1種以上からなる層及び前記3種以外の1種以上の金属からなる層を形成する。
【0047】
(プリント配線板の製造方法)
本発明に係る銅箔を用いてプリント配線板(PWB)を常法に従って製造することができる。以下に、プリント配線板の製造方法の例を示す。
【0048】
まず、銅箔と絶縁基板とを貼り合わせて積層体を製造する。銅箔が積層される絶縁基板はプリント配線板に適用可能な特性を有するものであれば特に制限を受けないが、例えば、リジッドPWB用に紙基材フェノール樹脂、紙基材エポキシ樹脂、合成繊維布基材エポキシ樹脂、ガラス布・紙複合基材エポキシ樹脂、ガラス布・ガラス不織布複合基材エポキシ樹脂及びガラス布基材エポキシ樹脂等を使用し、FPC用にポリエステルフィルムやポリイミドフィルム等を使用する事ができる。
【0049】
貼り合わせの方法は、リジッドPWB用の場合、ガラス布などの基材に樹脂を含浸させ、樹脂を半硬化状態まで硬化させたプリプレグを用意する。銅箔を被覆層の反対側の面からプリプレグに重ねて加熱加圧させることにより行うことができる。
【0050】
フレキシブルプリント配線板(FPC)用の場合、ポリイミドフィルム又はポリエステルフィルムと銅箔とをエポキシ系やアクリル系の接着剤を使って接着することができる(3層構造)。また、接着剤を使用しない方法(2層構造)としては、ポリイミドの前駆体であるポリイミドワニス(ポリアミック酸ワニス)を銅箔に塗布し、加熱することでイミド化するキャスティング法や、ポリイミドフィルム上に熱可塑性のポリイミドを塗布し、その上に銅箔を重ね合わせ、加熱加圧するラミネート法が挙げられる。キャスティング法においては、ポリイミドワニスを塗布する前に熱可塑性ポリイミド等のアンカーコート材を予め塗布しておくことも有効である。
【0051】
本発明に係る積層体は各種のプリント配線板(PWB)に使用可能であり、特に制限されるものではないが、例えば、導体パターンの層数の観点からは片面PWB、両面PWB、多層PWB(3層以上)に適用可能であり、絶縁基板材料の種類の観点からはリジッドPWB、フレキシブルPWB(FPC)、リジッド・フレックスPWBに適用可能である。また、本発明に係る積層体は、銅箔を樹脂に貼り付けてなる上述のような銅張積層板に限定されず、樹脂上にスパッタリング、めっきで銅層を形成したメタライジング材であってもよい。
【0052】
本発明の銅箔は、それを用いたCCLの製造工程における熱履歴を受けて、XPSによる該被覆面表面からの深さ方向分析から得られた深さ方向(x:単位nm)のPt、Pd、及びAuのいずれか1種以上の原子濃度(%)をf(x)、銅の原子濃度をg(x)としたとき、区間[0、5]において0.1≦∫f(x)dx/∫g(x)dx≦0.7を満たす。前記CCLの製造工程における熱履歴は、好ましくは、区間[0、5]において、0.15≦∫f(x)dx/∫g(x)dx≦0.4を満たすように与える。
【0053】
上述のように作製した積層体の銅箔上に形成された被覆層表面にレジストを塗布し、マスクによりパターンを露光し、現像することによりレジストパターンを形成する。このとき、積層体の被覆層表面にPt、Pd、及び、Auの3種以外の1種以上の金属からなる層が形成されていれば、液体レジストとの密着性が良好となり、あらかじめ被覆層表面の前処理を行う必要がない。
続いて、レジストパターンの開口部に露出した被覆層を、試薬を用いて除去する。当該試薬としては、塩酸、硫酸又は硝酸を主成分とするものを用いるのが、入手しやすさ等の理由から好ましい。
次に、積層体をエッチング液に浸漬する。このとき、エッチングを抑制するPt、Pd、及び、Auのいずれか1種以上を含む被覆層は、銅箔上のレジスト部分に近い位置にあり、レジスト側の銅箔のエッチングは、この被覆層近傍がエッチングされていく速度よりも速い速度で、被覆層から離れた部位の銅のエッチングが進行することにより、銅の回路パターンのエッチングがほぼ垂直に進行する。これにより銅の不必要部分を除去されて、次いでエッチングレジストを剥離・除去して回路パターンを露出することができる。
積層体に回路パターンを形成するために用いるエッチング液に対しては、被覆層のエッチング速度は、銅よりも十分に小さいためエッチングファクターを改善する効果を有する。エッチング液は、塩化第二銅水溶液、又は、塩化第二鉄水溶液等を用いることができる。
また、被覆層を形成する前に、あらかじめ銅箔基材表面に耐熱層を形成しておいてもよい。
【0054】
(プリント配線板の銅箔表面の回路形状)
上述のように被覆層側からエッチングされて形成されたプリント配線板の銅箔表面の回路は、その長尺状の2つの側面が絶縁基板上に垂直に形成されるのではなく、通常、銅箔の表面から下に向かって、すなわち樹脂層に向かって、末広がりに形成される(ダレの発生)。これにより、長尺状の2つの側面はそれぞれ絶縁基板表面に対して傾斜角θを有している。現在要求されている回路パターンの微細化(ファインピッチ化)のためには、回路のピッチをなるべく狭くすることが重要であるが、この傾斜角θが小さいと、それだけダレが大きくなり、回路のピッチが広くなってしまう。また、傾斜角θは、通常、各回路及び回路内で完全に一定ではない。このような傾斜角θのばらつきが大きいと、回路の品質に悪影響を及ぼすおそれがある。従って、被覆層側からエッチングされて形成されたプリント配線板の銅箔表面の回路は、長尺状の2つの側面がそれぞれ絶縁基板表面に対して65〜90°の傾斜角θを有し、且つ、同一回路内のtanθの標準偏差が1.0以下であるのが望ましい。また、エッチングファクターとしては、回路のピッチが50μm以下であるとき、1.5以上であるのが好ましく、2.5以上であるのが更に好ましい。
【実施例】
【0055】
以下、本発明の実施例を示すが、これらは本発明をより良く理解するために提供するものであり、本発明が限定されることを意図するものではない。
【0056】
(例1:実施例1〜24)
(銅箔への被覆層の形成)
実施例1〜24の銅箔基材として、厚さ8μmの圧延銅箔(日鉱金属製C1100)を用意した。圧延銅箔の表面粗さ(Rz)は0.5μmであった。
【0057】
神港精機社製のロールコーターで銅箔基材に表面処理を施した。イオンガン処理で銅箔表面の酸化物層を取り除いた後にスパッタリングで被覆層を形成した。被覆層の厚みは搬送速度、出力、Ar圧力を調整することで制御した。
・到達真空度:1.0×10-5Pa
・スパッタリング圧力:Ar 0.2〜0.4Pa
・スパッタリング電力:300〜4000W
・銅箔搬送速度:分速1〜15m
・ターゲット:Ni、Cr、Au、Pt、Pd(3N)
【0058】
被覆層を設けた銅箔に対して、被覆層と反対側の表面にあらかじめ付着している酸化皮膜をイオンガン処理によって取り除きNi層及びCr層を順に成膜した。
上記手順が施された銅箔に、接着剤付きポリイミドフィルム(ニッカン工業製、CISV1215)を7kgf/cm2の圧力、160℃で40分間の加熱プレスで大気雰囲気または不活性雰囲気中で積層させた。CCLはラミネートの他にもキャスティング工法で製造されるため、一部の銅箔は、ポリイミドの硬化を想定して窒素雰囲気下で350℃で2時間又は5時間保持した後に、上記手順でポリイミドフィルムと積層させた。後述するレジストパターン形成まで含めた場合にサンプルが受ける熱履歴は以下の通りである。
熱処理(350℃×n時間(n=0、2、5):窒素中)
→ラミネート(160℃×40分:大気中)
→レジストパターン形成(85℃×30分+125℃×30分:大気中)
【0059】
<付着量の測定>
被覆層のAu、Pd、Ptの付着量測定は、王水で表面処理銅箔サンプルを溶解させ、その溶解液を希釈し、原子吸光分析法で行った。
【0060】
<XPSによる測定>
XPS稼動条件を以下に示す。
・装置:XPS測定装置(アルバックファイ社、型式5600MC)
・到達真空度:3.8×10-7Pa
・励起源:単色化 AlKα
・出力:210W
・検出面積:800μmφ
・入射角:15度、45度
・取出角:75度、45度
・中和条件なし
・スパッタ条件
イオン種:Ar+
加速電圧:3kV
掃引領域:3mm×3mm
レート:2.0nm/min(SiO2換算)
【0061】
(レジストパターン形成)
上記手順で作製したCCLのエッチング面をアセトンで脱脂し、硫酸(100g/L)に30秒浸漬させて、表面の汚れを取り除いた。次にスピンコーターを用いて液体レジスト(東京応化工業製、OFPR−800LB)をエッチング面に滴下し、乾燥(プリベーク85℃、30分)させた。乾燥後のレジストの厚みは1μmとなるように調製した。その後、露光、現像、乾燥(ポストベーク125℃、30分)工程を経て、10本の回路(30μmピッチ回路(レジストL/S=25μm/5μm))を印刷し、さらに銅箔の不要部分を除去するエッチング処理を以下の条件で実施した。
【0062】
<エッチング条件>
・塩化第二鉄水溶液:37wt%(ボーメ度:40°)
・液温:50℃
・スプレー圧:0.25MPa
・仕上がり回路ボトム(底部)幅:15μm前後
【0063】
<耐レジスト剥離性評価>
ここで、図1及び2に、エッチング後のアルカリでレジストを剥離していない回路上部からの写真を示す。このうち、図1は健全部(レジストと銅基材が剥離していない部分)を示し、図2は異常部(レジストと銅基材が一部剥離している部分)を示す。レジストが基材と十分に密着していれば、図1のように金属光沢がレジスト越しに確認できるうえ、回路が直線であることが確認できる。一方、レジストと基材がエッチング中に剥離してしまうと、図2の点線で囲まれた部分のようにレジスト越しに金属光沢は確認できず、さらに健全部と比べるとこの部分は回路の直線性が劣っている。このため、本実施例における耐レジスト剥離性評価では、レジストパターン(L/S=25μm/5μm、10本)中に図3のようなレジスト剥離が5箇所までなら◎、6〜15箇所までなら○、16〜25箇所までなら△、26箇所以上は×とした。耐レジスト剥離性評価後、45℃のNaOH水溶液(100g/L)に1分間浸漬させてレジストを剥離した。
【0064】
<エッチングファクターの測定条件>
エッチングファクターは、末広がりにエッチングされた場合(ダレが発生した場合)、回路が垂直にエッチングされたと仮定した場合の、銅箔上面からの垂線と樹脂基板との交点からのダレの長さの距離をaとした場合において、このaと銅箔の厚さbとの比:b/aを示すものであり、この数値が大きいほど、傾斜角は大きくなり、エッチング残渣が残らず、ダレが小さくなることを意味する。図3に、回路パターンの一部の表面写真と、当該部分における回路パターンの幅方向の横断面の模式図と、該模式図を用いたエッチングファクターの計算方法の概略とを示す。このaは回路上方からのSEM観察により測定し、エッチングファクター(EF=b/a)を算出した。このエッチングファクターを用いることにより、エッチング性の良否を簡単に判定できる。さらに、傾斜角θは上記手順で測定したa及び銅箔の厚さbを用いてアークタンジェントを計算することにより算出した。これらの測定範囲は回路長600μmで、12点のエッチングファクター、その標準偏差及び傾斜角θの平均値を結果として採用した。
【0065】
(例2:比較例1)
厚さ8μmの圧延銅箔(日鉱金属製C1100)に表面処理を施さず、例1と同様の手順でエッチングサンプルを作製し、各種評価を行った。
【0066】
(例3:比較例2〜19)
例1と同様の手順でエッチングサンプルを作製し、各種評価を行った。
例1〜2の各測定結果を表1〜2に示す。
【0067】
【表1】

【0068】
【表2】

【0069】
<評価>
実施例では、いずれもエッチングファクターが大きく且つバラツキもなく、矩形方に近い断面の回路を形成することができた。実施例22に係る銅箔のXPSによる深さ方向の濃度プロファイルを図4に示す。
比較例1は、表面処理が施されておらず、レジスト剥離は起こらなかったものの、裾引きが大きい回路となった。
比較例2〜4、8〜10、14〜16は、区間[0、5]において∫f(x)dx/∫g(x)dxが0.7を超えており、銅箔表面近傍で貴金属が高濃度で存在しているため、レジスト剥離は起こらなかったものの、初期エッチング性が悪く、回路を形成することができなかった。なお、実施例1は比較例2及び3と貴金属の付着量は同程度であるが、実施例1では熱拡散により銅箔表面近傍の貴金属濃度を低くしているため、初期エッチング性が良好となっている。
比較例5〜7、11〜13、17〜19は貴金属の付着量が少ない、又は、貴金属量と銅量との比(∫f(x)dx/∫g(x)dx)が0.1未満であり、レジストが剥離した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅箔基材と、該銅箔基材表面の少なくとも一部を被覆する被覆層とを備えたプリント配線板用銅箔であって、
前記被覆層が、Pt、Pd、及び、Auの少なくともいずれか1種を含み、
前記被覆層には、Auが200〜2000μg/dm2、Ptが200〜2000μg/dm2、Pdが120〜1200μg/dm2の付着量で存在し、
CCL製造工程の熱履歴を受けると、XPSによる該被覆面表面からの深さ方向分析から得られた深さ方向(x:単位nm)のPt、Pd、及びAuのいずれか1種以上の原子濃度(%)をf(x)、銅の原子濃度をg(x)としたとき、区間[0、5]において0.1≦∫f(x)dx/∫g(x)dx≦0.7を満たすプリント配線板用銅箔。
【請求項2】
Ptの付着量が400〜1050μg/dm2以下、Pdの付着量が240〜600μg/dm2以下、Auの付着量が400〜1000μg/dm2以下である請求項1に記載のプリント配線板用銅箔。
【請求項3】
最表層に、クロム層若しくはクロメート層、及び/又は、シラン処理層で構成された防錆処理層が形成された請求項1又は2に記載のプリント配線板用銅箔。
【請求項4】
プリント配線板がフレキシブルプリント配線板である請求項1〜3のいずれかに記載のプリント配線板用銅箔。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の銅箔と樹脂基板との積層体。
【請求項6】
銅層と樹脂基板との積層体であって、前記銅層の表面の少なくとも一部を被覆する請求項1〜4のいずれかに記載の被覆層を備えた積層体。
【請求項7】
前記樹脂基板がポリイミド基板である請求項5又は6に記載の積層体。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれかに記載の積層体を材料としたプリント配線板。
【請求項9】
銅箔基材の表面の少なくとも一部に、Pt、Pd、及び、Auのいずれか1種以上を含む被覆層を、前記被覆層におけるPtの付着量が200〜2000μg/dm2以下、Pdの付着量が120〜1200μg/dm2以下、Auの付着量が200〜2000μg/dm2以下となるように、リール・ツー・リール方式の連続ラインで乾式成膜法によって形成し、
XPSによる該被覆面表面からの深さ方向分析から得られた深さ方向(x:単位nm)のPt、Pd、及びAuのいずれか1種以上の原子濃度(%)をf(x)、銅の原子濃度をg(x)としたとき、区間[0、5]において0.1≦∫f(x)dx/∫g(x)dx≦0.7を満たすようレジストパターン形成までを含むCCL製造の熱履歴を与えた後、
エッチングを行い銅の不要部を除去して回路を形成する電子回路の形成方法。
【請求項10】
前記レジストパターン形成までを含むCCL製造の熱履歴を、XPSによる該被覆面表面からの深さ方向分析から得られた深さ方向(x:単位nm)のPt、Pd、及びAuのいずれか1種以上の原子濃度(%)をf(x)、銅の原子濃度をg(x)としたとき、区間[0、5]において、0.15≦∫f(x)dx/∫g(x)dx≦0.4を満たすように与える請求項9に記載の電子回路の形成方法。
【請求項11】
Ptの付着量が400〜1050μg/dm2以下、Pdの付着量が240〜600μg/dm2以下、Auの付着量が400〜1000μg/dm2以下である請求項9又は10に記載の電子回路の形成方法。
【請求項12】
前記被覆層が、Pt、Pd、及び、Auの少なくともいずれか1種からなる層及び前記3種以外の1種以上の金属からなる層で構成された請求項9〜11のいずれかに記載の電子回路の形成方法。
【請求項13】
プリント配線板がフレキシブルプリント配線板である請求項9〜12のいずれかに記載の電子回路の形成方法。
【請求項14】
前記被覆層を形成する銅箔基材の裏面には樹脂基板が形成されており、該銅箔基材と該樹脂基板とで積層体を構成している請求項9〜13のいずれかに記載の電子回路の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−169547(P2012−169547A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31129(P2011−31129)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(502362758)JX日鉱日石金属株式会社 (482)
【Fターム(参考)】