説明

プレーナ型アクチュエータ

【課題】ねじれモードおよび垂直モードの動作を同時に行わせることで装置の小型化を可能とするプレーナ型アクチュエータを提供する。
【解決手段】一対のトーションバー3を介して枠状の固定部2に固定された可動部4を揺動してねじれモードで駆動するための可動部4上に形成された駆動コイル5と、可動部4を垂直モードで駆動するための、前記一対のトーションバー3上に設置された垂直駆動用圧電体6とを備えた構造にすることで、垂直方向の往復動とトーションバー3を回動軸としたねじれ運動を同時に行わせることを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプレーナ型アクチュエータに係り、特に、枠状の固定部に平板状の可動部を揺動可能に軸支し、この可動部の揺動位置を検出することを可能としたプレーナ型アクチュエータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、枠状の固定部に平板状の可動部を揺動可能に軸支する構造のアクチュエータとして、例えば半導体製造技術を利用し、シリコン基板を異方性エッチングし、枠状の固定部と平板状の可動部と固定部に可動部を軸支するトーションバーとを一体に形成し、可動部に駆動コイルを設け、可動部の駆動コイルに静磁界を付与する例えば永久磁石のような静磁界発生手段を設け、通電により駆動コイルに発生する磁界と静磁界発生手段による静磁界との相互作用により発生するローレンツ力を利用して可動部を揺動させる電磁駆動タイプのプレーナ型アクチュエータがある(例えば、特許文献1参照)。
そして、このようなアクチュエータは、例えば、可動部にミラーを設けることで光ビームを偏向走査する光スキャナなどに適用される。
【0003】
また、このようなアクチュエータとして、従来、固定部の内側に、第2のトーションバーを介して内部可動枠を支持するとともに、内部可動枠の内側に、第1のトーションバーを介して可動部を支持し、この可動部および内部可動枠を圧電体により駆動することにより、可動部を二次元方向に揺動駆動させるようにした技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2722314号公報
【特許文献2】特開2005−148459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の技術においては、可動部を揺動駆動させるねじれモードで動作させるものであるが、その他、可動部を垂直方向に駆動させる垂直モードにより駆動することも行われている。しかしながら、従来、1つの可動部について、ねじれモードおよび垂直モードによる両方の動作を同時に行うアクチュエータは開示されていない。
【0006】
また、このようなアクチュエータにおいて、ねじれモードおよび垂直モードによる駆動をさせようとすると、装置の大型化を招いてしまうという問題を有している。
【0007】
本発明は前記した点に鑑みてなされたものであり、ねじれモードおよび垂直モードの動作を同時に行うことのできるプレーナ型アクチュエータを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は前記目的を達成するために、請求項1の発明に係るプレーナ型アクチュエータは、デバイス基板に設置された枠状の固定部と、
前記固定部の内側にトーションバーを介して可動自在に支持された可動部と、
前記可動部を揺動駆動するためのねじれ駆動手段と、
前記可動部を垂直駆動するための垂直駆動手段と、
を備えていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1において、前記垂直駆動手段は、前記トーションバーに設置された圧電体であることを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2において、前記ねじれ駆動手段は、前記可動部に設置された駆動コイルであることを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項において、前記固定部の内側に前記トーションバーを支持する支持梁を設け、前記ねじれ駆動手段は、前記支持梁に設置された圧電体であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によれば、可動部を揺動駆動するためのねじれ駆動手段と、可動部を垂直駆動するための垂直駆動手段とを設け、ねじれモードおよび垂直モードの2種類の駆動モードにより同時に駆動することができるようにしているので、あらゆる用途に使用することが可能となる。しかも、構造が簡単であり、ユニットの小型化を図ることができる。
【0013】
請求項2に係る発明によれば、垂直駆動手段をトーションバーに設置された圧電体により構成するようにしているので、圧電体に通電することにより、可動部を垂直モードで駆動することが可能となる。
【0014】
請求項3に係る発明によれば、ねじれ駆動手段を可動部に設置された駆動コイルにより構成するようにしているので、駆動コイルに通電することにより、可動部をねじれモードで駆動することが可能となる。
【0015】
請求項4に係る発明によれば、ねじれ駆動手段を固定部の内側に設けられた支持梁に設置された圧電体により構成するようにしているので、圧電体に通電することにより、可動部をねじれモードで駆動することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るプレーナ型アクチュエータの第1実施形態を示す概略図である。
【図2】本発明に係るプレーナ型アクチュエータの第2実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1は本発明に係るプレーナ型アクチュエータの第1実施形態を示す概略図である。
【0019】
図1に示すように、本実施形態のプレーナ型アクチュエータ1は、図示しないデバイス基板上に設置された枠状の固定部2を備えている。固定部2の内側には、一対のトーションバー3を介して可動部4が揺動自在に支持されている。なお、これら固定部2、可動部4、トーションバー3は、一体的に形成されている。
【0020】
また、可動部4の一面側には、可動部4を駆動するための渦巻き状に形成されたねじれ駆動手段としての駆動コイル5が設置されており、この駆動コイル5の両端部は、トーションバー3を通って固定部2から引き出されるように構成されている。そして、この駆動コイル5に直流電流を流すことにより、駆動電流量に応じた回動位置で可動部4を停止させることができ、駆動コイル5に交流電流を流すことにより、可動部4を揺動させるねじれモードで駆動させることができるものである。なお、固定部2の周囲には、可動部4を挟んで互いに反対磁極を対向させて配置される二対の静磁界発生部材(図示せず)が配置されている。
【0021】
また、本実施形態においては、トーションバー3の一面側には、垂直駆動手段としての垂直駆動用圧電体6が貼着されている。垂直駆動用圧電体6に通電し、垂直駆動用圧電体6を収縮または伸張動作させることにより、可動部4は、図1において紙面垂直方向に移動する垂直モードで駆動させることができるものである。
【0022】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0023】
このプレーナ型アクチュエータ1の駆動原理は、例えば、特許第2722314号公報等で詳述されているので、以下簡潔に説明する。
【0024】
可動部4の駆動コイル5に電流を流すと磁界が発生し、この磁界と静磁界発生手段による静磁界との相互作用によりローレンツ力が発生し、トーションバー3の軸方向と平行な可動部4の対辺部分に互いに逆方向の回転力が発生し、この回転力とトーションバー3の復元力とが釣合う位置まで可動部4が回動される。
【0025】
そして、駆動コイル5に直流電流を流すことにより、駆動電流量に応じた揺動位置で可動部4を停止させることができるものである。一方、駆動コイル5に交流電流を流すことにより、可動部4を揺動させることができるものである。可動部4を揺動させるための回転力は、駆動コイル5に流す駆動電流値に比例するので、駆動コイル5に供給する駆動電流値を制御することで、可動部4の振れ角を制御することが可能となる。
【0026】
また、トーションバー3の垂直駆動用圧電体6に通電すると、垂直駆動用圧電体6が収縮または伸張するので、可動部4は、図1において紙面垂直方向に移動する垂直モードで駆動させることができるものである。すなわち、垂直駆動用圧電体6が収縮されると、垂直駆動用圧電体6が形成された面側に可動部4が垂直に移動することになり、垂直駆動用圧電体6が伸張させると垂直駆動用圧電体6が形成されていない面側に可動部4が垂直に移動することになる。
また、垂直駆動用圧電体6の収縮動作を連続して行うことにより、可動部4を垂直駆動用圧電体6が形成された面側に移動した状態に保持することができ、垂直駆動用圧電体6の伸張動作を連続して行うことにより、可動部4を垂直駆動用圧電体6が形成されていない面側に移動した状態に保持することができる。さらに、垂直駆動用圧電体6の収縮および伸張動作を繰り返して行うことにより、可動部4を垂直方向に往復移動させることが可能となる。そして、垂直駆動用圧電体6への通電量を制御することにより、可動部4の垂直移動量を制御することが可能となる。そして、駆動コイル5への通電と、垂直駆動用圧電体6への通電を同時に行うことにより、可動部4を揺動させるねじれモードと垂直方向に移動させる垂直モードの両方で可動部4を駆動することができるものである。
【0027】
このようなプレーナ型アクチュエータ1は、例えば、フェムト秒レーザの波形成形などに用いられる。すなわち、プレーナ型アクチュエータ1の可動部4に反射ミラーを設置し、フェムト秒レーザ光を回折格子に照射して、この回折格子により異なる波長ごとに分散されたレーザ光の照射位置に、プレーナ型アクチュエータ1を配置して使用するものである。そして、プレーナ型アクチュエータ1の可動部4を、回折格子により分散された各レーザ光の波長に合わせて垂直モードで駆動することにより、可動部4の反射ミラーにより反射されるレーザ光の波長が特定の波長となるように制御するものである。さらに、可動部4を、回折格子により分散された各レーザ光を反射した際に1カ所に集束するようにねじれモードで駆動するように制御する。このようにプレーナ型アクチュエータ1をねじれモードおよび垂直モードで駆動することにより、フェムト秒レーザの分散している波長を特定の波長に揃えることができ、フェムト秒レーザの波形成形を容易に行うことが可能となる。
【0028】
また、その他、可動部4をねじれモードおよび垂直モードで駆動することにより、光の制御を行うものであれば、いずれの用途にも使用することができる。
【0029】
以上述べたように、本実施形態においては、ねじれモードおよび垂直モードの2種類の駆動モードにより同時に駆動することができるので、あらゆる用途に使用することが可能となる。しかも、構造が簡単であり、ユニットの小型化を図ることができる。
【0030】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
【0031】
図2は本発明の第2実施形態を示したものであり、本実施形態においては、固定部2の内側には、固定部2の互いに対向する内側辺に対してほぼ平行な一対の支持梁が固定部2と一体に形成されている。この支持梁の間には、支持梁に直交する方向に延在するトーションバー3を介して可動部4が揺動自在に支持されている。
【0032】
そして、トーションバー3の一面側には、前記実施形態と同様に、垂直駆動手段としての垂直駆動用圧電体6が設置されている。さらに、本実施形態においては、支持梁には、垂直駆動用圧電体6の両側に位置するねじれ駆動手段としてのねじれ駆動用圧電体7が設置されている。そして、ねじれ駆動用圧電体7に通電して、ねじれ駆動用圧電体7を収縮または伸張動作させることにより、可動部4をねじれモードで駆動させることができるものである。
【0033】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0034】
本実施形態においても前記第1実施形態と同様に、垂直駆動用圧電体6に通電して、垂直駆動用圧電体6を収縮または伸張させることにより、可動部4を、図2において紙面垂直方向に移動させる垂直モードで駆動させることができるものである。また、ねじれ駆動用圧電体7に通電して、ねじれ駆動用圧電体7を収縮または伸張させることにより、可動部4を揺動させてねじれモードにより駆動させることができるようになっている。
【0035】
すなわち、垂直駆動用圧電体6の一側に配置されたねじれ駆動用圧電体7を収縮させるとともに、他側に配置されたねじれ駆動用圧電体7を伸張されることにより、トーションバー3をねじれ動作させることができ、これにより、可動部4を揺動させることができるものである。また、これとは逆に、一側のねじれ駆動用圧電体7を伸張させるとともに、他側のねじれ駆動用圧電体7を収縮させることにより、可動部4を逆方向に揺動させることができるものである。
【0036】
そして、ねじれ駆動用圧電体7の収縮、伸張動作を連続して行うことにより、可動部4を揺動した状態に保持することができ、さらに、圧電体の収縮および伸張動作を繰り返して行うことにより、可動部4を往復揺動駆動させることが可能となる。そして、圧電体への通電量を制御することにより、可動部4の揺動量を制御することが可能となる。
【0037】
以上述べたように、本実施形態においては、垂直駆動用圧電体6およびねじれ駆動用圧電体7にそれぞれ通電することにより、ねじれモードおよび垂直モードの2種類の駆動モードにより同時に駆動することができ、その結果、あらゆる用途に使用することが可能となり、しかも、構造が簡単であり、ユニットの小型化を図ることができる。
【0038】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 プレーナ型アクチュエータ
2 固定部
3 トーションバー
4 可動部
5 駆動コイル
6 垂直駆動用圧電体
7 ねじれ駆動用圧電体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デバイス基板に設置された枠状の固定部と、
前記固定部の内側にトーションバーを介して可動自在に支持された可動部と、
前記可動部を揺動駆動するためのねじれ駆動手段と、
前記可動部を垂直駆動するための垂直駆動手段と、
を備えていることを特徴とするプレーナ型アクチュエータ。
【請求項2】
前記垂直駆動手段は、前記トーションバーに設置された圧電体であることを特徴とする請求項1に記載のプレーナ型アクチュエータ。
【請求項3】
前記ねじれ駆動手段は、前記可動部に設置された駆動コイルであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のプレーナ型アクチュエータ。
【請求項4】
前記固定部の内側に前記トーションバーを支持する支持梁を設け、前記ねじれ駆動手段は、前記支持梁に設置された圧電体であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のプレーナ型アクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−88238(P2011−88238A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−242183(P2009−242183)
【出願日】平成21年10月21日(2009.10.21)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【Fターム(参考)】