説明

プログラム可能論理装置及びその論理回路構成方法

【課題】プログラマブル論理装置おいて、相互接続配線の交差部のスイッチング素子に、オン・オフの制御信号を送信する制御配線の数を大幅に削減する手段を提供する。
【解決手段】入出力リードを備えた複数個の論理素子、該論理素子間を相互に接続する相互接続線、前記入出力リードを前記相互接続線に第1制御信号によって接続させる第1接続手段と、前記相互接続線を互いに第2制御信号によって接続させるプログラム可能な第2接続手段とを備えたプログラム可能論理装置において、前記第1制御信号及び/又は第2制御信号がアナログ多値信号であることを特徴とするプログラム可能論理装置。また、前記第1接続手段及び/又は前記第2接続手段が、アナログ多値信号を1組のディジタル信号に変換するA/D変換手段を含む上記の装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プログラムにより論理回路を再構成可能なプログラマブル論理装置に関し、特に、論理回路を構成する論理素子間を相互に接続する相互接続手段へ制御信号を伝送する方法を改良したプログラマブル論理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特定用途の演算処理には、汎用のCPUよりも特定用途向けIC(ASIC,Application Specific IC)やプログラム可能な論理デバイス(PLD,Programmable Logic Device)が用いられるが、演算機能の複雑化に伴い、論理回路構成を自由に変更しうるPLDが多用されるようになっている。
【0003】
論理ゲート数が数万〜数十万の大規模なPLDは、FPGA(Field Programmable Gate Array)と呼ばれているが、PLD、FPGA等はいずれもプログラムにより所望の論理回路を再構成可能であることから、プログラマブル論理装置と呼ぶことができる。
【0004】
プログラマブル論理装置の基本構造は、ゲート回路を形成する基本セルである多数の論理ブロックが、チップ内にマトリックス状に配置され、その論理ブロック周辺には相互接続線が配置されるものである。ここで論理ブロックとは、例えば、andゲート、フリップフロップ、ラッチ、インバータ、norゲート、排他的orゲート等である。
【0005】
プログラマブル論理装置には、縦方向に延在する相互接続線と横方向に延在する相互接続線が設けられ、縦横の相互接続線が交差する部分には、交点のマトリックスが形成される。かかる交点には、パストランジスタ等のスイッチング素子からなる配線接続手段が交点の数だけ設けられている。
【0006】
プログラマブル論理装置は、配線接続手段のパストランジスタをオン・オフすることにより、相互接続線間の接続の形態や論理ブロックの入出力線と相互接続線の接続形態を変更し、これにより所望の論理回路の構成を実現している(特許文献1)。
【0007】
【特許文献1】特開平11−317659号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記スイッチ・マトリックスは、交差する縦配線の数と横配線の数の積に相当する数の配線接続手段が必要となるが、各配線接続手段には、図1(c)に示すように、6方向の接続方向の選択があり、この6方向のそれぞれにパストランジスタ等のスイッチング素子が必要である。したがって、各スイッチ・マトリックスに配置されるスイッチング素子の数は、上記接続ポイント数の6倍ということになる。
【0009】
スイッチ・マトリックスの数は、論理ブロックの数とともに増大し、縦横配線の数も論理ブロック数に伴って増大する。また、各スイッチング素子のオン・オフの指令は、チップ内のRAMやROM等のメモリからの制御信号によって行われるので、メモリとスイッチング素子とを接続し、スイッチング素子に制御信号を送信する配線の数は膨大なものとなる。
【0010】
論理ブロック間を接続する相互接続配線数が膨大となる上に、上記の制御信号用の配線が膨大となれば、チップ上に占める配線領域の割合が多くなり、論理回路を実現する論理素子の占める面積割合が少なくなる。このためチップの小型化が難しくなるとともに、集積回路の構造が複雑になって、その製造コストが増大することになる。一方において、これを避けるために、ユーザが自由に変更しうる範囲を大幅に制限しなければならないという結果にもなる。
【0011】
したがって、上記の各スイッチング素子のオン・オフの制御信号を伝える配線数を減らすことができれば、チップの小型化、構造の簡易化、製造コストの低減や回路設計の自由度が増すことができる。
【0012】
そこで本発明の課題は、複数の論理ブロック間を相互に接続する相互接続配線の接続形態を変更し、所望の論理機能を実現するプログラマブル論理装置おいて、相互接続配線の交差部に形成される交点のマトリクスに設けられるスイッチング素子にオン・オフの制御信号を送信する制御配線の数を大幅に削減することを可能ならしめる相互接続配線切り替え制御信号送信手段、及びかかる手段を備えたプログラマブル論理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための本発明のプログラム可能論理装置は、
(1)入出力リードを備えた複数個の論理素子、該論理素子間を相互に接続する相互接続線、前記入出力リードを前記相互接続線に第1制御信号によって接続させる第1接続手段と、前記相互接続線を互いに第2制御信号によって接続させるプログラム可能な第2接続手段とを備えたプログラム可能論理装置において、
前記第1制御信号及び/又は第2制御信号はアナログ多値信号であることを特徴とするものである。ここでアナログ多値信号とは、パルス高さが異なる連続した信号である。かかるアナログ多値信号を制御信号として用いることにより、単一の制御配線で複数の信号を送ることが可能となり、制御配線数を大幅に減少できる。
【0014】
また、(2)前記第1接続手段及び/又は前記第2接続手段が、アナログ多値信号を1組のディジタル信号に変換するA/D変換手段を含むことを特徴とする上記(1)項に記載のプログラム可能論理装置である。
【0015】
また、(3)前記第1接続手段及び/又は前記第2接続手段が、前記1組のディジタル信号により前記相互接続線の接続方向を変換する複数のスイッチング素子を含むことを特徴とする上記(1)又は(2)項に記載のプログラム可能論理装置である。
【0016】
さらに、上記(1)から(3)項のいずれかに記載のプログラマブル論理装置と同一チップ内に、1組のディジタル信号を前記アナログ多値信号に変換するD/A変換手段を備えたことを特徴とするプログラム可能論理装置である。
【0017】
本発明のプログラム可能論理装置の論理回路構成方法は、複数の論理素子間を相互に接続する第一方向に延在する複数個の第一相互接続線と、該第一方向とは異なる方向に延在する複数個の第二相互接続線と、前記第一相互接続線と前記第二相互接続線との各接続点に接続方向を切り替える複数のスイッチング素子からなるスイッチ回路とを設け、前記スイッチ回路に制御信号を送信し、ユーザの所望する論理回路を構成可能とするプログラム可能論理装置の論理回路構成方法において、
前記制御信号はアナログ多値信号であることを特徴とするものである。
【0018】
上記の論理回路構成方法は、前記アナログ多値信号を1組のディジタル信号に変換し、前記スイッチ回路を制御することを特徴とするものであってもよい。
【0019】
また、前記アナログ多値信号は、同一チップ内に設けられたアナログ/ディジタル変換装置により1組のディジタル信号から変換されたものであってもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、複数の論理ブロック間の接続形態を変更して所望の論理機能を実現するプログラマブル論理装置おいて、相互接続配線の交差部のスイッチング素子に、オン・オフの制御信号を送信する制御配線の数を大幅に削減することが可能になった。これにより、プログラマブル論理装置において、チップの小型化、構造の簡易化、製造コストの低減や回路設計の自由度の拡大を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照して説明する。
【0022】
図1は、本発明のプログラマブル論理装置の構成の一例を模式的に示した図である。図1(a)は論理回路の全体構成を示す模式図、図1(b)はその一部の拡大図、図1(c)は各接続ポイントにおける配線接続の説明図である。
本実施形態のプログラマブル論理装置の構成は、一般的なPLDと同様のものであり、図1(a)に示すように、基板上に複数のプログラム可能な論理回路素子(PLE:Programmable Logic Element)1がマトリックス状に配置され、各PLE1間は、相互接続線である縦配線(VL)2と横配線(HL)3とで相互に接続されている。図1(b)では、PLE1はそれぞれVL2にスイッチを介して接続している。VL2とHL3との交差部分は、図1(b)に示すように、スイッチ・マトリックス(SW)4が形成され、VL2とHL3との交点が接続ポイント5である。
【0023】
図1(c)に示すように、各接続ポイント5では、両側のVL2a,2bとHL3a,3bの4本の相互接続線が交差しており、6通りの接続方向(パターン)がある。このため、1接続ポイントに通常は6個のスイッチング素子S1〜S6が配置される。論理回路の再構成は、制御信号をスイッチング素子S1〜S6に送信し、これらのスイッチング素子をオン・オフ制御することで行う。
【0024】
図2は、本発明の一実施例におけるスイッチング素子への制御信号の伝送系統の構成を示した図である。本実施例においては、RAM等に格納されているディジタル制御信号6は、D/A変換部7でパルス高さが異なる連続した信号である多値のアナログ信号に変換される。このアナログ多値信号は信号線8でA/D変換部9に伝送される。
【0025】
このアナログ多値信号は、スイッチング素子S1〜S6の周辺に配置されたA/D変換部9で、複数の2値信号の組合せに変換され、この信号によりスイッチング素子S1〜S6のオン・オフ制御が行われ、相互接続線の接続パターンを変更する。
【0026】
本実施例では、6個のスイッチング素子S1〜S6は2グループ(S1〜S3とS4〜S6)に分けられ、各グループ毎にD/A変換部7a,7b、信号線8a,8b、及びA/D変換部9a,9bが配置されている。すなわち、信号線8aの信号でS1〜S3、信号送線8bの信号によりS4〜S6の各3個のスイッチング素子のオン・オフの制御が行われる。
【0027】
図3は、本実施例におけるD/A変換部の構成を示した図である。図のD1,D2,D3がスイッチ制御信号であり、それぞれスイッチング素子1個にオン・オフの指令を与えるものである。このD1〜D3のディジタル信号の組合せを、一旦多値のアナログ信号に変換することが、このD/A変換部の機能である。
【0028】
D1〜D3の信号は、それぞれ対応して配置されたパストランジスタP1〜P3をオン・オフする。パストランジスタP0〜P3のソースには1.5Vの電源電圧が3段階に分圧されて印加されている。即ち、P0には0V、P1には0.5V、P2には1.0V、P3には1.5Vの直流電圧がそれぞれ印加されている。また、D1〜D3はNOR回路11に入力され、その出力はパストランジスタP0(電圧レベル0V)をオン・オフする。
【0029】
4個のパストランジスタP0〜P3の出力は、クロックゲート10に並列に入力されており、D1〜D3のいずれかがHの時は、P1〜P3の3段階の電圧のいずれかがクロックゲート10に印加される。D1〜D3のすべてがLの時は0電圧が印加される。クロックゲート10はクロックパルスによって作動し、ゲート10の出力信号A1は、3水準の高さのパルスが連続した多値のアナログ信号となる。
【0030】
図4及び図5は、本実施例におけるA/D変換部の構成を示した図である。図4は論理閾値制御を行なうインバータアレイの構成を、図5(a)は各インバータの作動特性を、図5(b)はインバータの構成を示した図である。
【0031】
図3に示したD/A変換部からの信号A1は、それぞれ閾値電圧の異なる3個のインバータINV1〜INV3に並列に入力される。これらのインバータの作動電圧の閾値は、図5(a)に示すように、それぞれ1.25V,0.75V,0.25Vの3レベルに設定されている。なおインバータは、図5(b)に示すように本実施例ではCMOSトランジスタであり、その閾値電圧は、これを構成するNMOSとPMOSの一方又は双方のゲート幅(W)/ゲート長(L)比で任意に変えられる。したがって、上述のような閾値電圧の異なるインバータを、基板上に並べて形成することは何ら困難ではない。
【0032】
このインバータアレイにおいて、INV1の出力側にはNOT回路14が、INV2及びINV3の出力側にはNOR回路12及び13が接続されて、それぞれS1〜S3のディジタル信号を出力する。図6は、かかる構成のA/D変換部の論理回路の特性を示す真理値表である。
【0033】
まず、A1の信号が1.5Vの場合、INV1〜INV3の出力は全てLとなる。S1の信号は、NOT回路14でL→Hに変換されるから、S1の信号はHであるが、NOR回路12の入力は(H,L)である。NOR回路13の入力は(H,L,L)であるから、S2及びS3の信号はともにLである。
【0034】
A1の信号が1.0Vの場合、INV1〜INV3の出力は(H,L,L)であり、S1の信号はLとなる。NOR回路12の入力は(L,L)であるから、S2はHとなる。NOR回路13の入力は(L,H,L)であるから、S3はLとなる。
【0035】
A1の信号が0.5Vの場合には、INV1〜INV3の出力は(H,H,L)である。S1の信号はLとなり、NOR回路12の入力は(L,H)であるから、S2はLとなる。NOR回路13の入力は(L,L,L)であるから、S3はHとなる。A1の信号が0Vの場合には、INV1〜INV3の出力は(H,H,H)でS1〜S3の信号はともにLとなる。
【0036】
したがって、D/A変換部7からの出力である多値アナログ信号A1のパルス高さが、1.5V,1.0V,0.5Vのいずれであるかによって、それぞれS1,S2,S3のスイッチング素子のいずれか1個のみがオンになり、多値アナログ信号が0Vの時は、S1〜S3の全てがオフになる。
【0037】
一方、D/A変換部7に入力されるスイッチ制御信号D1,D2,D3は、多値アナログ信号A1のパルス高さを、それぞれ1.5V,1.0V,0.5Vのいずれかのレベルにするから、D1,D2,D3の信号で、スイッチング素子S1,S2.S3のオン・オフを制御することと等価になる。
【0038】
A/D変換部9は、図1(b)に示したスイッチ・マトリックス4の領域内で、スイッチング素子の周辺に形成できるから、その間の配線に殆どスペースを要しない。すなわち、3個のスイッチング素子に対して、A1の多値アナログ信号を伝送する1本の伝送線を設ければよいことになる。したがって、3個のスイッチング素子のそれぞれに配線して、スイッチ制御信号を伝送するという従来の方式と比較すると、制御信号配線の数を大幅に減ずることができ、これにより、チップの小型化、配線構造の簡略化や設計自由度の拡大等に与える効果は大きい。
【0039】
以上、本実施例においては3水準の高さのパルスを用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。2水準の高さのパルスや、4水準以上のパルスの高さのパルスであってもよい。例えば、2水準の高さのパルスを実現するには、パルスの高さを1.5V、0.75Vとし、A/D変換部の構成要素である閾値を1.1V、0.4Vに設定すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明のプログラマブル論理装置の構成の一例を模式的に示した図である。
【図2】本発明の一実施例におけるスイッチング素子への制御信号の伝送系統の構成を示した図である。
【図3】本実施例におけるD/A変換部の構成を示した図である。
【図4】本実施例におけるA/D変換部のインバータアレイの構成を示した図である。
【図5】本実施例におけるA/D変換部のインバータアレイの動作特性を示した図である。
【図6】本実施例におけるA/D変換部の論理回路の特性を示す真理値表である。
【符号の説明】
【0041】
1 論理回路素子(PLE)
2 縦配線(VL)
3 横配線(HL)
4 スイッチ・マトリックス(SW)
5 接続ポイント
6 ディジタル制御信号
7,7a,7b D/A変換部
8,8a,8b 信号線
9,9a,9b A/D変換部
10 クロックゲート
11,12,13 NOR回路
14 NOT回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入出力リードを備えた複数個の論理素子、該論理素子間を相互に接続する相互接続線、
前記入出力リードを前記相互接続線に第1制御信号によって接続させる第1接続手段と、前記相互接続線を互いに第2制御信号によって接続させるプログラム可能な第2接続手段とを備えたプログラム可能論理装置において、
前記第1制御信号及び/又は第2制御信号はアナログ多値信号であることを特徴とするプログラム可能論理装置。
【請求項2】
前記第1接続手段及び/又は前記第2接続手段は、アナログ多値信号を1組のディジタル信号に変換するA/D変換手段を含むことを特徴とする請求項1に記載のプログラム可能論理装置。
【請求項3】
前記第1接続手段及び/又は前記第2接続手段は、前記1組のディジタル信号により前記相互接続線の接続方向を変換する複数のスイッチング素子を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のプログラム可能論理装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のプログラマブル論理装置と同一チップ内に、1組のディジタル信号を前記アナログ多値信号に変換するD/A変換手段を備えたことを特徴とするプログラム可能論理装置。
【請求項5】
複数の論理素子間を相互に接続する第一方向に延在する複数個の第一相互接続線と、該第一方向とは異なる方向に延在する複数個の第二相互接続線と、前記第一相互接続線と前記第二相互接続線との各接続点に接続方向を切り替える複数のスイッチング素子からなるスイッチ回路とを設け、前記スイッチ回路に制御信号を送信し、ユーザの所望する論理回路を構成可能とするプログラム可能論理装置の論理回路構成方法において、
前記制御信号はアナログ多値信号であることを特徴とするプログラム可能論理装置の論理回路構成方法。
【請求項6】
前記アナログ多値信号を1組のディジタル信号に変換し、前記スイッチ回路を制御することを特徴とする請求項5に記載のプログラム可能論理装置の論理回路構成方法。
【請求項7】
前記アナログ多値信号は、同一チップ内に設けられたディジタル/アナログ変換装置により1組のディジタル信号から変換されたものであることを特徴とする請求項5又は6に記載のプログラム可能論理装置の論理回路構成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−325017(P2006−325017A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−147052(P2005−147052)
【出願日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】