説明

プロジェクター

【課題】電源投入後すぐに投写画像を投写することが可能で、動きぼけのない滑らかな投写画像を投写することが可能で、かつ、投写面全面にわたってピントぼけのないシャープな投写画像を投写することが可能なプロジェクターを提供する。
【解決手段】1次元的に配列される複数のレーザー光源を有する1次元レーザー光源アレイ10R,10G,10Bを備える照明装置100R,100G,100Bと、各照明装置から射出される光を導光するリレー光学系300と、各照明装置から射出される光を2次元投写画像を形成するように走査する1次元走査装置400と、各照明装置から射出される光を投写面に投写する投写光学系600とを備えるプロジェクターであって、投写光学系600は、1次元走査装置400の走査により発生する像面湾曲を補償するような像面湾曲収差を有することを特徴とするプロジェクター1000。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、所定の方向に沿って1次元的に配列され、画像情報に応じて点滅する複数のレーザー光源を有する1次元レーザー光源アレイを備える照明装置と、照明装置から射出される光を導光するリレー光学系と、照明装置から射出される光を投写面において2次元画像を形成するように走査する1次元走査装置とを備え、1次元レーザー光源アレイの像を投写面に投写するプロジェクターが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
従来のプロジェクターによれば、光源ランプと違って瞬時点灯可能なレーザー光源を光源として用いているため、電源投入後すぐに投写画像を投写することが可能となる。また、高速点滅可能な1次元レーザー光源アレイと、高速走査可能な1次元走査装置とを用いて2次元画像を形成することとしているため、動きぼけのない滑らかな投写画像を投写することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−21804号公報(特に、図1及び請求項5参照。)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のプロジェクターにおいては、1次元走査装置の走査により像面湾曲が発生するため、投写面全面にわたってピントぼけのないシャープな投写画像を投写することが困難であるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は上記の問題を解決するためになされたもので、電源投入後すぐに投写画像を投写することが可能で、動きぼけのない滑らかな投写画像を投写することが可能で、かつ、投写面全面にわたってピントぼけのないシャープな投写画像を投写することが可能なプロジェクターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]本発明のプロジェクターは、所定の第1方向に沿って1次元的に配列され、画像情報に応じて点滅する複数のレーザー光源を有する1次元レーザー光源アレイを備える照明装置と、前記照明装置から射出される光を導光するリレー光学系と、前記照明装置から射出される光を、投写面において2次元投写画像を形成するように走査する1次元走査装置と、前記照明装置から射出される光を前記投写面に投写する投写光学系とを備えるプロジェクターであって、前記リレー光学系及び前記投写光学系のうち少なくとも一方は、前記1次元走査装置の走査により発生する像面湾曲を補償するような像面湾曲を発生させる像面湾曲収差を有することを特徴とする。
【0008】
このため、本発明のプロジェクターによれば、1次元走査装置の走査により発生する像面湾曲と、リレー光学系及び投写光学系のうち少なくとも一方の像面湾曲収差により発生する像面湾曲とが互いに打ち消し合うため、投写面全面にわたって像面湾曲が解消され、これにより、投写面全面にわたってピントぼけのないシャープな投写画像を投写することが可能となる。
【0009】
また、本発明のプロジェクターによれば、従来のプロジェクターの場合と同様に、光源ランプと違って瞬時点灯可能なレーザー光源を光源として用いているため、電源投入後すぐに投写画像を投写することが可能となる。また、本発明のプロジェクターによれば、従来のプロジェクターの場合と同様に、高速点滅可能な1次元レーザー光源アレイと、高速走査可能な1次元走査装置とを用いて2次元画像を形成することとしているため、動きぼけのない滑らかな投写画像を投写することが可能となる。
【0010】
その結果、本発明のプロジェクターは、電源投入後すぐに投写画像を投写することが可能で、動きぼけのない滑らかな投写画像を投写することが可能で、かつ、投写面全面にわたってピントぼけのないシャープな投写画像を投写することが可能なプロジェクターとなる。
【0011】
なお、本発明のプロジェクターにおいて、「画像情報に応じて点滅する」とは、画像情報に応じて光源が任意の明るさで点灯したり消灯したりすることを意味する。
【0012】
[2]本発明のプロジェクターにおいては、前記リレー光学系は、前記1次元走査装置の走査により発生する像面湾曲とは逆方向の像面湾曲を発生させる非球面レンズを備えることが好ましい。
【0013】
このように構成することにより、1次元走査装置の走査により発生する像面湾曲がリレー光学系の働きにより適切に補償されることとなる。
【0014】
[3]本発明のプロジェクターにおいては、前記投写光学系は、前記1次元走査装置の走査により発生する像面湾曲とは逆方向の像面湾曲を発生させる非球面レンズを備えることが好ましい。
【0015】
このように構成することにより、1次元走査装置の走査により発生する像面湾曲が投写光学系の働きにより適切に補償されることとなる。
【0016】
[4]本発明のプロジェクターにおいては、前記リレー光学系として、前記1次元走査装置の走査により発生する像面湾曲と同じ方向の像面湾曲を発生させる回転対称の非球面レンズを備え、前記投写光学系として、前記リレー光学系の像面湾曲収差により発生する像面湾曲及び前記1次元走査装置の走査により発生する像面湾曲のいずれをも補償する像面湾曲を発生させる回転対称の非球面レンズを備えることが好ましい。
【0017】
このように構成することにより、リレー光学系の像面湾曲収差により発生する像面湾曲(後述する図16(a)参照。)と、一次元走査装置の走査により発生する像面湾曲(後述する図16(b)参照。)とを合成して、回転対称の像面湾曲を発生させることが可能となる(後述する図16(b)参照。)。その結果、投写光学系としては、入手容易な回転対称の非球面レンズを用いることにより像面湾曲を解消させることが可能となる。また、リレー光学系としても、1次元レーザー光源アレイの像が配列する方向と直交する方向には像面湾曲収差による像面湾曲がほとんど発生しないため、入手容易な回転対称の非球面レンズを用いることが可能となる。
【0018】
[5]本発明のプロジェクターにおいては、前記リレー光学系の像面湾曲収差により発生する像面湾曲の曲率中心に、前記1次元走査装置が配置されていることが好ましい。
【0019】
このように構成することにより、リレー光学系の像面湾曲収差により発生する像面湾曲と、一次元走査装置の走査により発生する像面湾曲とを合成して、回転対称の像面湾曲を発生させることが可能となる。
【0020】
[6]本発明のプロジェクターにおいては、前記1次元走査装置は、ガルバノミラーであることが好ましい。
【0021】
ガルバノミラーは高速で高精度の走査が可能であるため、このような構成とすることにより、動きぼけのない滑らかな投写画像の投写を実現することが可能となる。
【0022】
[7]本発明のプロジェクターにおいては、前記1次元走査装置は、前記リレー光学系と前記リレー光学系の中間画像形成面との間の光路中に配置されていることが好ましい。
【0023】
このような構成とすることにより、前記リレー光学系からの光を1次元走査装置で走査することが可能となる。
【0024】
なお、リレー光学系の中間画像形成面とは、投写光学系が投写面に拡大投写する対象となる中間画像が形成される面を意味する。
【0025】
[8]本発明のプロジェクターにおいては、前記1次元走査装置は、前記リレー光学系の中間画像形成面と前記投写光学系との間の光路中に配置されていることが好ましい。
【0026】
このような構成とすることにより、前記リレー光学系からの光を1次元走査装置で走査することが可能となる。
【0027】
[9]本発明のプロジェクターにおいては、前記1次元走査装置は、前記照明装置と前記リレー光学系との間の光路中に配置されていることが好ましい。
【0028】
このような構成とすることにより、前記照明装置からの光を1次元走査装置で走査することが可能となる。
【0029】
[10]本発明のプロジェクターにおいては、前記照明装置として、複数の赤色レーザー光源を有する赤色1次元レーザー光源アレイと、前記赤色レーザー光源に近接して配置され、前記赤色レーザー光源からの光の拡がりを抑制する赤色光用コリメーターレンズとを備える赤色照明装置と、複数の緑色レーザー光源を有する緑色1次元レーザー光源アレイと、前記緑色レーザー光源に近接して配置され、前記緑色レーザー光源からの光の拡がりを抑制する緑色光用コリメーターレンズとを備える緑色照明装置と、複数の青色レーザー光源を有する青色1次元レーザー光源アレイと、前記青色レーザー光源に近接して配置され、前記青色レーザー光源からの光の拡がりを抑制する青色光用コリメーターレンズとを備える青色照明装置との3つの照明装置を備え、前記3つの照明装置から射出される各色光を合成する色合成プリズムをさらに備え、前記色合成プリズムは、前記1次元走査装置より前段の光路中に配置されていることが好ましい。
【0030】
このような構成とすることにより、フルカラー画像を投写可能なプロジェクターとすることが可能となる。
【0031】
[11]本発明のプロジェクターにおいては、前記色合成プリズムは、ダイクロイック膜が形成された略X字状の界面を有するクロスダイクロイックプリズムであり、前記3つの照明装置のうち、前記略X字状の界面をともに通過する色光を射出する照明装置は、p偏光成分からなる色光を射出するように構成され、前記略X字状の界面のうち少なくとも1つの界面で反射される色光を射出する照明装置は、s偏光成分からなる色光を射出するように構成されていることが好ましい。
【0032】
ダイクロイック膜においてはp偏光からなる光よりもs偏光からなる光の方が反射されやすいため、このような構成とすることにより、クロスダイクロイックプリズムにおける反射損を低減し、より高輝度なプロジェクターとすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施形態1に係るプロジェクター1000を説明するために示す図。
【図2】実施形態1における赤色照明装置100Rを説明するために示す図。
【図3】実施形態1における赤色1次元レーザー光源アレイ10Rを説明するために示す図。
【図4】実施形態1における赤色光用コリメーターレンズ50Rを説明するために示す図。
【図5】実施形態1並びに変形例1及び2におけるリレー光学系300が中間画像を形成する様子を示す図。
【図6】実施形態1に係るプロジェクター1000による投写画像を説明するために示す図。
【図7】実施形態1における投写光学系600により像面湾曲が補償される原理を示す図。
【図8】実施形態2に係るプロジェクター1002を説明するために示す図。
【図9】実施形態2における投写光学系600により像面湾曲が補償される原理を示す図。
【図10】実施形態3に係るプロジェクター1004を説明するために示す図。
【図11】実施形態3における投写光学系600により像面湾曲が補償される原理を示す図。
【図12】実施形態4に係るプロジェクター1006を説明するために示す図。
【図13】実施形態4におけるリレー光学系302により像面湾曲が補償される原理を示す図。
【図14】実施形態5に係るプロジェクター1008を説明するために示す図。
【図15】実施形態5におけるリレー光学系304及び投写光学系604により像面湾曲が補償される原理を示す図。
【図16】実施形態5におけるリレー光学系304及び投写光学系604により像面湾曲が補償される原理を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の照明装置及びプロジェクターについて、図に示す実施の形態に基づいて説明する。
【0035】
[実施形態1]
1.プロジェクター1000の構成
図1は、実施形態1に係るプロジェクター1000を説明するために示す図である。図1(a)はプロジェクター1000の光学系を示す側面図であり、図1(b)はプロジェクター1000の光学系を投写光学系600側から見た正面図である。図1及び後述する図5、図7、図8、図9、図10、図11、図12、図13、図14、図15及び図16において符号Pで示すのは、中間画像形成面である。
図2は、実施形態1における赤色照明装置100Rを説明するために示す図である。図2(a)は赤色照明装置100Rの斜視図であり、図2(b)は赤色照明装置100Rの部分拡大上面図であり、図2(c)は赤色照明装置100Rの部分拡大側面図である。なお、図2並びに後述する図3においては、一方の端部における1つの赤色レーザー光源30Rのみを符号で示し、残りの赤色レーザー光源30Rについては符号の表示を省略する。また、図2並びに後述する図4においては、一方の端部における1つの平凸レンズ60のみを符号で示し、残りの平凸レンズ60については符号の表示を省略する。
【0036】
図3は、実施形態1における赤色1次元レーザー光源アレイ10Rを説明するために示す図である。図3(a)は赤色1次元レーザー光源アレイ10Rの斜視図であり、図3(b)は赤色1次元レーザー光源アレイ10Rの部分拡大斜視図である。
図4は、実施形態1における赤色光用コリメーターレンズ50Rを説明するために示す図である。図4(a)は赤色光用コリメーターレンズ50Rの斜視図であり、図4(b)は赤色光用コリメーターレンズ50Rの部分拡大斜視図である。
【0037】
図5は、リレーレンズ300が中間画像を形成する様子を示す図である。図5(a)は実施形態1におけるリレー光学系300の結像関係を示す模式図であり、図5(b)は変形例1におけるリレー光学系300の結像関係を示す模式図であり、図5(c)は変形例2におけるリレー光学系300の結像関係を示す模式図である。図5においては、結像に関係しない光学要素(ダイクロイックプリズム200等)の図示を省略する。図5において符号oで示すのは光通過領域又は発光領域であり、符号iで示すのは光通過領域の像又は発光領域の像である。なお、明るい場所ほど白に近い色で示し、暗い場所ほど黒に近い色で示す。
図6は、実施形態1に係るプロジェクター1000による投写画像を説明するために示す図である。図6(a)は投写画像を展開し始めるときにおけるスクリーンSCRの様子を示す模式図であり、図6(b)は投写画像を途中まで展開したときにおけるスクリーンSCRの様子を示す模式図であり、図6(c)は投写画像を展開し終わったときにおけるスクリーンSCRの様子を示す模式図である。
図7は、実施形態1における投写光学系600により像面湾曲が補償される原理を示す図である。図7(a)は1次元走査装置400により像面湾曲が発生する様子を示す図であり、図7(b)は投写光学系600の像面湾曲収差により像面湾曲が発生する様子を示す図であり、図7(c)は投写光学系600によって1次元走査装置400の走査により発生する像面湾曲が補償される様子を示す図である。
【0038】
なお、以下の説明においては、互いに直交する3つの方向をそれぞれz軸方向(図1におけるクロスダイクロイックプリズム200から1次元走査装置400までの光軸に平行な方向)、x軸方向(図1(a)における紙面に垂直かつz軸に垂直な方向)及びy軸方向(図1(a)における紙面に平行かつz軸に垂直な方向)とする。
【0039】
実施形態1に係るプロジェクター1000は、図1に示すように、3つの照明装置(赤色照明装置100R、緑色照明装置100G及び青色照明装置100B)、クロスダイクロイックプリズム200、リレー光学系300、1次元走査装置400、フィールドレンズ500及び投写光学系600を備える。
【0040】
赤色照明装置100Rは、図1及び図2に示すように、赤色1次元レーザー光源アレイ10Rと、赤色光用コリメーターレンズ50Rとを備える。赤色照明装置100Rは、s偏光成分からなる赤色光を射出する。s偏光成分からなる赤色光を射出するために、s偏光成分からなる赤色光を射出する赤色1次元レーザー光源アレイ10Rを用いてもよいし、p偏光成分からなる赤色光を射出する赤色1次元レーザー光源アレイ10Rと、p偏光成分からなる光をs偏光成分からなる光に変換するλ/2板とを用いてもよい。
【0041】
赤色1次元レーザー光源アレイ10Rは、図2及び図3に示すように、基板20R及び複数の赤色レーザー光源30Rを有する。なお、赤色レーザー光源の個数については、投写する投写画像の総画素数及び縦横比並びに1次元走査装置の方式により必要な個数が決まる。例えば、後述するように投写面に対して縦方向に走査することにより、縦1080画素、横1920画素からなる投写画像を投写する場合には、最低で1920個の赤色レーザー光源が必要となる。
【0042】
基板20Rは、複数の赤色レーザー光源30Rを搭載する機能を有する。詳細な説明は省略するが、基板20Rは、複数の赤色レーザー光源30Rに対する電力の供給を仲介する機能や、複数の赤色レーザー光源30Rで発生する熱を放熱する機能等を併せて有する。
複数のレーザー光源30Rは、赤色照明装置100Rにおける所定の第1方向dR(z軸方向と平行な方向)に沿って1次元的に配列され、画像情報に応じて点滅する。
レーザー光源30Rは、赤色光を射出する半導体レーザーからなる。当該半導体レーザーは、図2及び図3に示すように、長方形形状の発光領域を有し、当該発光領域の長辺が、赤色照明装置100Rにおける第1方向dRと略平行になるように配置されている。
半導体レーザーにおける発光領域の大きさは、例えば、長辺が8μm、短辺が2μmである。また、ある赤色レーザー光源30Rの中心から隣接する赤色レーザー光源30Rの中心までの距離は、例えば20μmであり、つまりこの場合、ある赤色レーザー光源30Rと隣接する赤色レーザー光源30Rとの間には、12μmの隙間があることになる。
【0043】
赤色光用コリメーターレンズ50Rは、図2及び図4に示すように、赤色1次元レーザー光源アレイ10Rに近接して配置され、赤色レーザー光源30Rからの光の拡がりを抑制する。赤色光用コリメーターレンズ50Rは、赤色照明装置100Rにおける第1方向dRに沿って1次元的に配列され、赤色レーザー光源30Rのそれぞれに対応する複数の平凸レンズ60を有する1次元レンズアレイからなる。赤色光用コリメーターレンズ50Rは、複数の平凸レンズ60における凸面側を赤色1次元レーザー光源アレイ10Rに向けて配置されている。
【0044】
平凸レンズ60は、図2(c)及び図4(b)に示すように、入射面62、入射面の表面64及び射出面66を有する。
平凸レンズ60においては、凸面が赤色1次元レーザー光源アレイ10Rの方向を向いているため、入射面62及び入射面の表面64は図2(c)及び図4(b)に示す位置となる。
なお、射出面66は平面であるため、射出面と当該射出面の表面とは同一の面となる。
【0045】
複数の平凸レンズ60の形状は、光通過領域の像が略正方形形状となるような形状(非球面形状)である。このような構成とすることにより、投写面において、投写光学系600が投写面に拡大投写する中間画像を、所定の方向と垂直な方向に沿ってもほぼ隙間無く配列することが可能となり、ひいては、一層自然な投写画像を投写することが可能となる。
【0046】
緑色照明装置100Gは、図1に示すように、緑色照明装置100Gにおける所定の第1方向dG(x軸に平行な方向。図示せず。)に沿って1次元的に配列され、画像情報に応じて点滅する複数の緑色レーザー光源30G(図示せず。)を有する緑色1次元レーザー光源アレイ10Gと、緑色レーザー光源30Gからの光の拡がりを抑制する緑色光用コリメーターレンズ50Gとを備える。緑色照明装置100Gは、p偏光からなる緑色光を射出する点以外は基本的に赤色照明装置100Rと同様の構成を有するため、説明を省略する。
青色照明装置100Bは、青色照明装置100Bにおける所定の第1方向(z軸に平行な方向。図示せず。)に沿って1次元的に配列され、画像情報に応じて点滅する複数の青色レーザー光源30B(図示せず。)を有する青色1次元レーザー光源アレイ10Bと、青色レーザー光源30Bからの光の拡がりを抑制する青色光用コリメーターレンズ50Bとを備える。青色照明装置100Bは、青色光を射出する点以外は基本的に赤色照明装置100Rと同様の構成を有するため、説明を省略する。
【0047】
なお、実施形態1に示す赤色照明装置100R、緑色照明装置100G及び青色照明装置100Bの配置は一例であり、各照明装置の位置を入れ替えてもよい。その際においても、略X字状の界面をともに通過する色光を射出する照明装置をp偏光成分からなる色光を射出するように構成し、略X字状の界面のうち少なくとも1つの界面で反射される色光を射出する照明装置をs偏光成分からなる色光を射出するように構成すれば、実施形態1に係るプロジェクター1000が有する効果(後述)を損なうこともない。
【0048】
クロスダイクロイックプリズム200は、3つの照明装置(赤色照明装置100R、緑色照明装置100G及び青色照明装置100B)から射出される各色光を合成する色合成プリズムである。クロスダイクロイックプリズム200は、図1に示すように、1次元走査装置400より前段の光路中に配置されている。
クロスダイクロイックプリズム200は、ダイクロイック膜である誘電体多層膜が形成された略X字状の界面を有する。略X字状の一方の界面に形成された誘電体多層膜は、赤色光を反射し、緑色光を通過させるものであり、他方の界面に形成された誘電体多層膜は、青色光を反射し緑色光を通過させるものである。これらの誘電体多層膜により赤色光及び青色光は反射され、緑色光の進行方向と揃えられることにより、3つの色光が合成される。
【0049】
リレー光学系300は、3つの照明装置から射出される光を導光する。リレー光学系300は、凸レンズからなる。なお、リレー光学系は複数の光学素子からなるものであってもよい。
【0050】
赤色光用コリメーターレンズ50Rにおける射出面62と、リレー光学系300における中間画像形成面Pとは、図5(a)に示すように、光学的に共役の位置にある。図示は省略するが、緑色光用コリメーターレンズ50Gにおける射出面62及び青色光用コリメーターレンズ50Bも赤色光用コリメーターレンズ50Rと同様に、リレー光学系300における中間画像形成面Pと光学的に共役の位置にある。このため、リレー光学系300における中間画像形成面Pにおいては、各コリメーターレンズの射出面における複数の光通過領域の像iが所定の方向に沿ってほぼ隙間無く配列された中間画像を形成することが可能となり、ひいては、自然な投写画像を投写することが可能となる。なお、図5においては、説明を簡単にするために5つの光通過領域の像iのみを表示するが、実際にはさらに多数の光通過領域の像(例えば、投写面に対して縦方向に走査することにより、縦1080画素、横1920画素からなる投写画像を投写する場合には、1920個の光通過領域の像)が投写される。なお、図5(b)及び図5(c)に図示する、変形例1に係るプロジェクター1000a及び変形例2に係るプロジェクター1000bにつていては後述する。
【0051】
1次元走査装置400は、3つの照明装置から射出される光を、スクリーンSCRにおける投写面において2次元投写画像を形成するように走査する。1次元走査装置400は、リレー光学系300とリレー光学系300の中間画像形成面Pとの間の光路中に配置されている。1次元走査装置400は、ガルバノミラーからなり、光を反射するミラー部410と、電気信号によりミラー部410を駆動する駆動部420とを有する。
1次元走査装置400は、後述するように(図6参照。)スクリーンSCRにおける投写面に対して投写画像が縦方向に走査されるように1次元的な走査を行う。
投写光学系600は、3つの照明装置から射出される光をフィールドレンズ500とともにスクリーンSCRにおける投写面に投写する。投写光学系600は、1次元走査装置400の走査により発生する像面湾曲とは逆方向の像面湾曲を発生させる非球面レンズを備える。
【0052】
プロジェクター1000による投写画像の投写を、図6を用いて説明する。
まず、3つの光源装置からの光は、図6(a)に示すように、リレー光学系300、1次元走査装置400、フィールドレンズ500及び投写光学系600により、スクリーンSCRにおける投写面の上端に投写される。
次に、1次元走査装置の走査により、投写される光は下に移動する。このとき、投写される光の移動に合わせて各1次元レーザー光源アレイにおけるレーザー光源が画像情報に応じて点滅する。図6(b)の状態を経て図6(c)の状態になると、投写領域全体に1枚の2次元投写画像が展開される。以降、上記した方法に沿って投写画像の展開を繰り返す。展開を繰り返す頻度は任意に決定することができるが、例えば、1秒間に60回程度とすることができる。
【0053】
実施形態1における投写光学系600により像面湾曲が補償される原理を、図7を用いて説明する。
中間画像形成面Pにおいては、1次元走査装置400の走査により像面湾曲が発生する。このとき、通常の投写光学系602を用いた場合には、図7(a)に示すように、像面湾曲を有する中間画像がそのまま投写面に投写されるため、投写面の周縁部分でピントぼけが発生し、投写面全面にわたってピントぼけのないシャープな投写画像を投写することが困難となる。
そこで、実施形態1においては、通常の投写光学系602に代えて、1次元走査装置400の走査により発生する像面湾曲を補償するような像面湾曲を発生させる像面湾曲収差を有する投写光学系600を用いることとしている(図7(b)参照。)。このため、実施形態1に係るプロジェクター1000によれば、1次元走査装置400の走査により発生する像面湾曲と、投写光学系600の像面湾曲収差により発生する像面湾曲とが互いに打ち消し合うため、図7(c)に示すように、投写面全面にわたって像面湾曲が解消され、これにより、投写面全面にわたってピントぼけのないシャープな投写画像を投写することが可能となる。
【0054】
2.プロジェクター1000の効果
実施形態1に係るプロジェクター1000によれば、上記したように、1次元走査装置400の走査により発生する像面湾曲と、投写光学系600の像面湾曲収差により発生する像面湾曲とが互いに打ち消し合うため、投写面全面にわたって像面湾曲が解消され、これにより、投写面全面にわたってピントぼけのないシャープな投写画像を投写することが可能となる。
【0055】
また、実施形態1に係るプロジェクター1000によれば、従来のプロジェクターの場合と同様に、光源ランプと違って瞬時点灯可能なレーザー光源を光源として用いているため、電源投入後すぐに投写画像を投写することが可能となる。また、実施形態1に係るプロジェクター1000によれば、従来のプロジェクターの場合と同様に、高速点滅可能な1次元レーザー光源アレイと、高速走査可能な1次元走査装置とを用いて2次元画像を形成することとしているため、動きぼけのない滑らかな投写画像を投写することが可能となる。
【0056】
その結果、実施形態1に係るプロジェクター1000は、電源投入後すぐに投写画像を投写することが可能で、動きぼけのない滑らかな投写画像を投写することが可能で、かつ、投写面全面にわたってピントぼけのないシャープな投写画像を投写することが可能なプロジェクターとなる。
【0057】
また、実施形態1に係るプロジェクター1000によれば、投写光学系600が、1次元走査装置400の走査により発生する像面湾曲を補償するような像面湾曲を発生させる非球面レンズを備えるため、1次元走査装置の走査により発生する像面湾曲が投写光学系の働きにより適切に補償されることとなる。
【0058】
また、実施形態1に係るプロジェクター1000によれば、1次元走査装置400がガルバノミラーからなるため、動きぼけのない滑らかな投写画像の投写を実現することが可能となる。
【0059】
また、実施形態1に係るプロジェクター1000によれば、1次元走査装置400は、リレー光学系300とリレー光学系300の中間画像形成面Pとの間の光路中に配置されているため、リレー光学系からの光を1次元走査装置で走査することが可能となる。
【0060】
また、実施形態1に係るプロジェクター1000によれば、赤色照明装置100Rと、緑色照明装置100Gと、青色照明装置100Bとの3つの照明装置と、クロスダイクロイックプリズム(色合成プリズム)とを備えるため、フルカラー画像を投写可能なプロジェクターとすることが可能となる。
【0061】
また、実施形態1に係るプロジェクター1000によれば、色合成プリズムがクロスダイクロイックプリズム200であり、3つの照明装置のうち、略X字状の界面をともに通過する色光を射出する照明装置(緑色照明装置100G)はp偏光成分からなる色光を射出するように構成され、略X字状の界面のうち少なくとも1つの界面で反射される色光を射出する照明装置(赤色照明装置100R及び青色照明装置100B)は、s偏光成分からなる色光を射出するように構成されているため、クロスダイクロイックプリズム200における反射損を低減し、より高輝度なプロジェクターとすることが可能となる。
【0062】
なお、各レーザー光源とリレー光学系における中間画像形成面とが光学的に共役の位置にあるプロジェクター(「各照明装置がコリメーターレンズを備えない、変形例1に係るプロジェクター1000a(上記した図5(b)参照。)」及び「各照明装置がコリメーターレンズを備える、変形例2に係るプロジェクター1000b(上記した図5(c)参照。)」)においては、実施形態1に係るプロジェクター1000の場合とは異なり、リレー光学系300の中間画像形成面Pの位置で複数の光通過領域の像が所定の方向に沿って離散的に配列された状態で形成されることとなる。
【0063】
しかしながら、これらのプロジェクター(変形例1に係るプロジェクター1000a及び変形例2に係るプロジェクター1000b)によっても、実施形態1に係るプロジェクター1000の場合と同様に、1次元走査装置400の走査により発生する像面湾曲と、投写光学系600の像面湾曲収差により発生する像面湾曲とが互いに打ち消し合うため、図7(c)に示すように、投写面全面にわたって像面湾曲が解消され、これにより、投写面全面にわたってピントぼけのないシャープな投写画像を投写することが可能となる。
【0064】
[実施形態2]
図8は、実施形態2に係るプロジェクター1002を説明するために示す図である。図8(a)はプロジェクター1002の光学系を示す側面図であり、図8(b)はプロジェクター1002の光学系を投写光学系600側から見た正面図である。
図9は、実施形態2における投写光学系600により像面湾曲が補償される原理を示す図である。図9(a)は1次元走査装置400の走査により像面湾曲が発生する様子を示す図であり、図9(b)は投写光学系600の像面湾曲収差により像面湾曲が発生する様子を示す図であり、図9(c)は投写光学系600によって1次元走査装置400の走査により発生する像面湾曲が補償される様子を示す図である。
【0065】
実施形態2に係るプロジェクター1002は、基本的には実施形態1に係るプロジェクター1000と同様の構成を有するが、1次元走査装置の配置位置が実施形態1に係るプロジェクター1002の場合とは異なる。すなわち、実施形態2に係るプロジェクター1002においては、図8及び図9に示すように、1次元走査装置400は、リレー光学系300の中間画像形成面Pと投写光学系600との間の光路中に配置されている。
【0066】
このように、実施形態2に係るプロジェクター1002は、1次元走査装置400の配置位置が実施形態1に係るプロジェクター1000の場合とは異なるが、1次元走査装置400の走査により発生する像面湾曲と、投写光学系600の像面湾曲収差により発生する像面湾曲とが互いに打ち消し合うため、実施形態1に係るプロジェクター1000の場合と同様に、投写面全面にわたって像面湾曲が解消され、これにより、投写面全面にわたってピントぼけのないシャープな投写画像を投写することが可能なプロジェクターとなる。
【0067】
なお、実施形態2に係るプロジェクター1002は、1次元走査装置の配置位置以外の点においては実施形態1に係るプロジェクター1000と同様の構成を有するため、実施形態1に係るプロジェクター1000が有する効果のうち該当する効果をそのまま有する。
【0068】
[実施形態3]
図10は、実施形態3に係るプロジェクター1004を説明するために示す図である。図10(a)はプロジェクター1004の光学系を示す側面図であり、図10(b)はプロジェクター1004の光学系を投写光学系600側から見た正面図である。
図11は、実施形態3における投写光学系600により像面湾曲が補償される原理を示す図である。図11(a)は1次元走査装置400の走査により像面湾曲が発生する様子を示す図であり、図11(b)は投写光学系600の像面湾曲収差により像面湾曲が発生する様子を示す図であり、図11(c)は投写光学系600によって1次元走査装置400の走査により発生する像面湾曲が補償される様子を示す図である。
【0069】
実施形態3に係るプロジェクター1004は、基本的には実施形態1に係るプロジェクター1000と同様の構成を有するが、1次元走査装置の配置位置が実施形態1に係るプロジェクター1000とは異なる。すなわち、実施形態3に係るプロジェクター1004においては、図10及び図11に示すように、1次元走査装置400は、3つの照明装置とリレー光学系300との間の光路中に配置されている。
【0070】
このように、実施形態3に係るプロジェクター1004は、1次元走査装置の配置位置が実施形態1に係るプロジェクター1000の場合とは異なるが、1次元走査装置400の走査により発生する像面湾曲と、投写光学系600の像面湾曲収差により発生する像面湾曲とが互いに打ち消し合うため、実施形態1に係るプロジェクター1000の場合と同様に、投写面全面にわたって像面湾曲が解消され、これにより、投写面全面にわたってピントぼけのないシャープな投写画像を投写することが可能なプロジェクターとなる。
【0071】
なお、実施形態3に係るプロジェクター1004は、1次元走査装置の配置位置以外の点においては実施形態1に係るプロジェクター1000と同様の構成を有するため、実施形態1に係るプロジェクター1000が有する効果のうち該当する効果をそのまま有する。
【0072】
[実施形態4]
図12は、実施形態4に係るプロジェクター1006を説明するために示す図である。図12(a)はプロジェクター1006の光学系を示す側面図であり、図12(b)はプロジェクター1006の光学系を投写光学系602側から見た正面図である。
図13は、実施形態4におけるリレー光学系302により像面湾曲が補償される原理を示す図である。図13(a)は1次元走査装置400の走査により像面湾曲が発生する様子を示す図であり、図13(b)はリレー光学系302の像面湾曲収差により像面湾曲が発生する様子を示す図であり、図13(c)はリレー光学系302によって1次元走査装置400の走査により発生する像面湾曲が補償される様子を示す図である。
【0073】
実施形態4に係るプロジェクター1006は、基本的には実施形態3に係るプロジェクター1004と同様の構成を有するが、投写光学系に代えてリレー光学系に像面湾曲収差を持たせた点が実施形態3に係るプロジェクター1004とは異なる。すなわち、実施形態4に係るプロジェクター1006においては、図12及び図13に示すように、1次元走査装置400の走査により発生する像面湾曲を補償するような像面湾曲を発生させる非球面レンズを備えるリレー光学系302を用いている。また、これに伴い、投写光学系として、像面湾曲収差を有しない通常の投写光学系602を用いている。
【0074】
実施形態4におけるリレー光学系302により像面湾曲が補償される原理を、図13を用いて説明する。
通常のリレー光学系300を用いた場合には、図13(a)に示すように、中間画像形成面Pにおいて像面湾曲が発生する。このため、投写面の周縁部分でピントぼけが発生し、投写面全面にわたってピントぼけのないシャープな投写画像を投写することが困難となる。
そこで、実施形態4においては、通常のリレー光学系300に代えて、1次元走査装置400の走査により発生する像面湾曲を補償するような像面湾曲を発生させる像面湾曲収差を有するリレー光学系302を用いることとしている(図13(b)参照。)。このため、実施形態4に係るプロジェクター1006によれば、1次元走査装置400の走査により発生する像面湾曲と、リレー光学系302の像面湾曲収差により発生する像面湾曲とが互いに打ち消し合うため、図13(c)に示すように、投写面全面にわたって像面湾曲が解消され、これにより、投写面全面にわたってピントぼけのないシャープな投写画像を投写することが可能となる。
【0075】
このように、実施形態4に係るプロジェクター1006は、投写光学系に代えてリレー光学系に像面湾曲収差を持たせた点で実施形態3に係るプロジェクター1004の場合とは異なるが、1次元走査装置400の走査により発生する像面湾曲と、リレー光学系302の像面湾曲収差により発生する像面湾曲とが互いに打ち消し合うため、実施形態3に係るプロジェクター1004の場合と同様に、投写面全面にわたって像面湾曲が解消され、これにより、投写面全面にわたってピントぼけのないシャープな投写画像を投写することが可能となる。
【0076】
なお、実施形態4に係るプロジェクター1006は、投写光学系に代えてリレー光学系に像面湾曲収差を持たせた点以外の点においては実施形態3に係るプロジェクター1004と同様の構成を有するため、実施形態3に係るプロジェクター1004が有する効果のうち該当する効果をそのまま有する。
【0077】
[実施形態5]
図14は、実施形態5に係るプロジェクター1008を説明するために示す図である。図14(a)はプロジェクター1008の光学系を示す側面図であり、図14(b)はプロジェクター1008の光学系を投写光学系604側から見た正面図である。
図15及び図16は、実施形態5におけるリレー光学系304及び投写光学系604により像面湾曲が補償される原理を示す図である。図15(a)は1次元走査装置400の走査により像面湾曲が発生する様子を示す図であり、図15(b)はリレー光学系304の像面湾曲収差により像面湾曲が発生する様子を示す図であり、図15(c)は投写光学系604によって1次元走査装置400の走査により発生する像面湾曲が補償される様子を示す図である。図16(a)はリレー光学系304の像面湾曲収差により発生する(横方向の)像面湾曲を示す模式図であり、図16(b)は1次元走査装置400の走査により(縦方向の)像面湾曲が発生する様子を示す模式図であり、図16(c)は投写光学系604により像面湾曲が補償される様子を示す模式図である。なお、図16においては、結像に関係しない光学要素(ダイクロイックプリズム200等)の図示を省略する。
【0078】
実施形態5に係るプロジェクター1008は、基本的には実施形態1に係るプロジェクター1000と同様の構成を有するが、リレー光学系及び投写光学系に所定の像面湾曲収差を持たせた点が実施形態1に係るプロジェクター1000とは異なる。すなわち、実施形態5に係るプロジェクター1008においては、図14、図15及び図16に示すように、リレー光学系304として、1次元走査装置400の走査により発生する像面湾曲と同じ方向の像面湾曲を発生させる回転対称の非球面レンズを備え、投写光学系604として、リレー光学系304の像面湾曲収差により発生する像面湾曲及び1次元走査装置400の走査により発生する像面湾曲のいずれをも補償する像面湾曲を発生させる回転対称の非球面レンズを備える。
【0079】
実施形態5におけるリレー光学系304及び投写光学系604により像面湾曲が補償される原理を、図15及び図16を用いて説明する。
通常のリレー光学系300及び投写光学系602を用いた場合には、図15(a)に示すように、中間画像形成面Pにおいて像面湾曲が発生する。このため、投写面の周縁部分でピントぼけが発生し、投写面全面にわたってピントぼけのないシャープな投写画像を投写することが困難となる。
そこで、実施形態5においては、図15(b)及び図15(c)に示すように、通常のリレー光学系300及び投写光学系602に代えて、1次元走査装置410の走査により発生する像面湾曲と同じ方向の像面湾曲を発生させる回転対称の非球面レンズを備えるリレー光学系304と、リレー光学系304の像面湾曲収差により発生する像面湾曲及び1次元走査装置400の走査により発生する像面湾曲のいずれをも補償する像面湾曲を発生させる回転対称の非球面レンズを備える投写光学系604を備える。このため、実施形態5に係るプロジェクター1008によれば、リレー光学系304の像面湾曲収差により発生する横方向の像面湾曲(図16(a)参照。)と、1次元走査装置400の走査により発生する縦方向の像面湾曲(図16(b)参照。)とを合成して、回転対称の像面湾曲を発生させることが可能となる(図16(c)参照。)。その結果、投写光学系として、入手容易な回転対称の非球面レンズを備える投写光学系604を用いることにより像面湾曲を解消させることが可能となる。また、リレー光学系304としても、1次元レーザー光源アレイの像が配列する方向と直交する方向には像面湾曲収差による像面湾曲がほとんど発生しないため、入手容易な回転対称の非球面レンズを備えるリレー光学系を用いることが可能となる。
【0080】
このように、実施形態5に係るプロジェクター1008は、リレー光学系及び投写光学系に所定の像面湾曲収差を持たせた点が実施形態1に係るプロジェクター1000の場合とは異なるが、1次元走査装置400の走査により発生する像面湾曲と、リレー光学系304及び投写光学系604の像面湾曲収差により発生する像面湾曲とが互いに打ち消し合うため、実施形態1に係るプロジェクター1000の場合と同様に、投写面全面にわたって像面湾曲が解消され、これにより、投写面全面にわたってピントぼけのないシャープな投写画像を投写することが可能なプロジェクターとなる。
【0081】
なお、実施形態5に係るプロジェクター1008は、リレー光学系及び投写光学系に所定の像面湾曲収差を持たせた点以外の点においては実施形態1に係るプロジェクター1000の場合と同様の構成を有するため、実施形態1に係るプロジェクター1000が有する効果のうち該当する効果をそのまま有する。
【0082】
以上、本発明を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。その趣旨を逸脱しない範囲において種々の様態において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0083】
(1)上記各実施形態においては、投写面に対して投写画像が縦方向に走査されるように1次元的な走査を行う1次元走査装置400を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。投写面に対して投写画像が横方向に走査されるように1次元的な走査を行う1次元走査装置を用いてもよい。
【0084】
(2)上記各実施形態においては、長方形形状の発光領域を有する半導体レーザーを用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、正方形形状の発光領域を有する半導体レーザーを用いてもよい。
【0085】
(3)上記各実施形態においては、照明装置として3つの照明装置を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。照明装置として3つより少ない照明装置を用いてもよいし、3つより多い照明装置を用いてもよい。
【0086】
(4)上記各実施形態においては、色合成プリズムとしてクロスダイクロイックプリズム200を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。色合成プリズムとして他の種類のプリズムを用いてもよい。
【0087】
(6)上記各実施形態においては、凸面側を各1次元レーザー光源アレイに向けて配置されているコリメーターレンズを用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。平面側を1次元レーザー光源アレイに向けて配置されているコリメーターレンズを用いてもよい。
【0088】
(7)上記各実施形態においては、ガルバノミラーからなる1次元走査装置400を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ポリゴンミラーからなる1次元走査装置を用いてもよい。
【0089】
(8)上記各実施形態においては、各コリメーターレンズにおける射出面とリレー光学系における中間画像形成面とが光学的に共役の位置にある光学系を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。コリメーターレンズにおける入射面とリレー光学系における中間画像形成面とが光学的に共役の位置にある光学系を用いてもよい。
【0090】
(9)本発明は、投写画像を観察する側から投写するフロント投写型プロジェクターに適用する場合にも、投写画像を観察する側とは反対の側から投写するリア投写型プロジェクターに適用する場合にも可能である。
【符号の説明】
【0091】
10R…赤色1次元レーザー光源アレイ、20R…基板、30R…赤色レーザー光源、10G…緑色1次元レーザー光源アレイ、10B…青色1次元レーザー光源アレイ、50R…赤色光用コリメーターレンズ、50G…緑色光用コリメーターレンズ、50B…青色光用コリメーターレンズ、60…平凸レンズ、62…入射面、64…入射面の表面、66…射出面、100R…赤色照明装置、100G…緑色照明装置、100B…青色照明装置、300,302,304…リレー光学系、400…1次元走査装置、410…ミラー部、420…駆動部、500…フィールドレンズ、600,602,604…投写光学系、1000,1002,1004,1006,1008…プロジェクター、dR…赤色照明装置における第1方向、i…光通過領域の像、P…中間画像形成面、SCR…スクリーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の第1方向に沿って1次元的に配列され、画像情報に応じて点滅する複数のレーザー光源を有する1次元レーザー光源アレイを備える照明装置と、
前記照明装置から射出される光を導光するリレー光学系と、
前記照明装置から射出される光を、投写面において2次元投写画像を形成するように走査する1次元走査装置と、
前記照明装置から射出される光を前記投写面に投写する投写光学系とを備えるプロジェクターであって、
前記リレー光学系及び前記投写光学系のうち少なくとも一方は、前記1次元走査装置の走査により発生する像面湾曲を補償するような像面湾曲を発生させる像面湾曲収差を有することを特徴とするプロジェクター。
【請求項2】
請求項1に記載のプロジェクターにおいて、
前記リレー光学系は、前記1次元走査装置の走査により発生する像面湾曲とは逆方向の像面湾曲を発生させる非球面レンズを備えることを特徴とするプロジェクター。
【請求項3】
請求項1に記載のプロジェクターにおいて、
前記投写光学系は、前記1次元走査装置の走査により発生する像面湾曲とは逆方向の像面湾曲を発生させる非球面レンズを備えることを特徴とするプロジェクター。
【請求項4】
請求項1に記載のプロジェクターにおいて、
前記リレー光学系として、前記1次元走査装置の走査により発生する像面湾曲と同じ方向の像面湾曲を発生させる回転対称の非球面レンズを備え、
前記投写光学系として、前記リレー光学系の像面湾曲収差により発生する像面湾曲及び前記1次元走査装置の走査により発生する像面湾曲のいずれをも補償する像面湾曲を発生させる回転対称の非球面レンズを備えることを特徴とするプロジェクター。
【請求項5】
請求項4に記載のプロジェクターにおいて、
前記リレー光学系の像面湾曲収差により発生する像面湾曲の曲率中心に、前記1次元走査装置が配置されていることを特徴とするプロジェクター。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のプロジェクターにおいて、
前記1次元走査装置は、ガルバノミラーであることを特徴とするプロジェクター。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のプロジェクターにおいて、
前記1次元走査装置は、前記リレー光学系と前記リレー光学系の中間画像形成面との間の光路中に配置されていることを特徴とするプロジェクター。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載のプロジェクターにおいて、
前記1次元走査装置は、前記リレー光学系の中間画像形成面と前記投写光学系との間の光路中に配置されていることを特徴とするプロジェクター。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれかに記載のプロジェクターにおいて、
前記1次元走査装置は、前記照明装置と前記リレー光学系との間の光路中に配置されていることを特徴とするプロジェクター。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載のプロジェクターにおいて、
前記照明装置として、
複数の赤色レーザー光源を有する赤色1次元レーザー光源アレイと、前記赤色レーザー光源に近接して配置され、前記赤色レーザー光源からの光の拡がりを抑制する赤色光用コリメーターレンズとを備える赤色照明装置と、
複数の緑色レーザー光源を有する緑色1次元レーザー光源アレイと、前記緑色レーザー光源に近接して配置され、前記緑色レーザー光源からの光の拡がりを抑制する緑色光用コリメーターレンズとを備える緑色照明装置と、
複数の青色レーザー光源を有する青色1次元レーザー光源アレイと、前記青色レーザー光源に近接して配置され、前記青色レーザー光源からの光の拡がりを抑制する青色光用コリメーターレンズとを備える青色照明装置との3つの照明装置を備え、
前記3つの照明装置から射出される各色光を合成する色合成プリズムをさらに備え、
前記色合成プリズムは、前記1次元走査装置より前段の光路中に配置されていることを特徴とするプロジェクター。
【請求項11】
請求項10に記載のプロジェクターにおいて、
前記色合成プリズムは、ダイクロイック膜が形成された略X字状の界面を有するクロスダイクロイックプリズムであり、
前記3つの照明装置のうち、
前記略X字状の界面をともに通過する色光を射出する照明装置は、p偏光成分からなる色光を射出するように構成され、
前記略X字状の界面のうち少なくとも1つの界面で反射される色光を射出する照明装置は、s偏光成分からなる色光を射出するように構成されていることを特徴とするプロジェクター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−197211(P2011−197211A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−62089(P2010−62089)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】