説明

プロジェクタ用光学系

【課題】 明るく高品質な画像の提供を保証しつつも3板式の反射型液晶プロジェクタの小型化や軽量化に寄与することができるプロジェクタ用光学系を提供すること。
【解決手段】 プロジェクタ光学系は、所定の画像信号に基づいて投影画像を生成するプロジェクタ用光学系において、第一の直線偏光状態にある白色光を照射する光源部と、色の三原色に対応する第一から第三の色成分を、所定の画像信号に基づいて変調すると共に、第一の直線偏光状態を90°回転した第二の直線偏光状態にする、各色成分に対応した第一から第三の反射型液晶素子と、第一色分離合成面および第二色分離合成面によって、光源部から照射された白色光を偏光状態を維持したまま第一から第三の色成分に分離し、かつ第一から第三の各反射型液晶素子によって変調された第一から第三の色成分を合成する色分離合成手段と、を有する構成にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、所定の画像信号に基づいて投影画像を生成するプロジェクタ用光学系に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カラー3板式プロジェクタとして、白色光を照射する光源、該白色光をR(赤色)、G(緑色)、B(青色)の三つの成分に分離する色分離手段、各成分をそれぞれ独立して変調する3つの反射型液晶素子、各液晶素子により変調された各色成分を合成する色合成手段を備える反射型液晶プロジェクタが知られている。反射型液晶プロジェクタは、以下の特許文献1に例示される。
【0003】
【特許文献1】特開2002−98937号公報
【0004】
特許文献1に記載の反射型液晶プロジェクタは、色分離手段と色合成手段を合わせると多数の反射面を持つ。反射面が多くなればなるほど、プロジェクタ全体が大型化、重量化するだけでなく、無用な光量損失を招くおそれがある。そこで近年、上記プロジェクタに対して、画像の明るさや鮮明さは保持しつつも、持ち運びを容易にする等の利便性向上のため、より一層の小型化、軽量化を図ることが強く要望されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は上記の事情に鑑み、明るく高品質な画像の提供を保証しつつも3板式の反射型液晶プロジェクタの小型化や軽量化に寄与することができるプロジェクタ用光学系を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、請求項1に記載のプロジェクタ光学系は、所定の画像信号に基づいて投影画像を生成するプロジェクタ用光学系において、第一の直線偏光状態にある白色光を照射する光源部と、色の三原色に対応する第一から第三の色成分を、所定の画像信号に基づいて変調すると共に、第一の直線偏光状態を90°回転した第二の直線偏光状態にする、各色成分に対応した第一から第三の反射型液晶素子と、第一色分離合成面および第二色分離合成面によって、光源部から照射された白色光を偏光状態を維持したまま第一から第三の色成分に分離し、かつ第一から第三の各反射型液晶素子によって変調された第一から第三の色成分を合成する色分離合成手段と、を有することを特徴とする。
【0007】
請求項1に記載のプロジェクタ用光学系によれば、第一と第二の二つの色分離合成面のみによって、光源部から照射された光の色分離、および分離され変調された各色成分の合成を達成している。従って、光源部、液晶素子間に配設される色分離および合成のための光学部材の数を従来よりも大きく低減することができる。結果として本発明に係るプロジェクタ用光学系によれば、プロジェクタ全体の小型化、軽量化に寄与することができる。
【0008】
請求項2に記載のプロジェクタ用光学系によれば、第一色分離合成面は、第一および第二の色成分と、第三の色成分とに関する分離および合成を行い、第二色分離合成面は、第一色分離合成面により第三の色成分と分離された第一の色成分と第二の色成分に関する分離および合成を行う。
【0009】
請求項3に記載のプロジェクタ用光学系によれば、第一色分離合成面により合成された光をスクリーン上に投影する投影レンズ群を有し、該第一色分離合成面を合成された光を投影レンズ群に導く偏向手段としても使用することができる。これにより、3板式プロジェクタについてより一層の小型化が図られる。
【0010】
請求項4に記載のプロジェクタ用光学系によれば、第一の直線偏光をS偏光、第二の直線偏光をP偏光として構成することができる。
【0011】
なお、請求項5に記載のプロジェクタ用光学系によれば、第一色分離合成面は、一対の透明基体を貼り合わせることにより形成される偏光ビームスプリッタにおける貼り合わせ面であって、該貼り合わせ面には、高屈折率層および低屈折率層からなり層数15以上の多層膜が施されており、該多層膜は、下記式(1)、(2)および(3)、
nL<nS、nH ・・・(1)
θ≧sin-1(nL/nS) ・・・(2)
dLmax<λmax ・・・(3)
但し、nLは前記低屈折率層の屈折率を、
nSは前記透明基体の屈折率を、
nHは前記高屈折率層の屈折率を、
θは一方の透明基体に垂直入射した光の前記多層膜との界面における反射角を、
λmaxは利用波長の最大値を、
dLmaxは低屈折率層の最大光学層厚を、それぞれ示す。
を満たし、第一の波長帯域においてはS偏光の透過率がP偏光の透過率より高く、第二の波長帯域においてはP偏光の透過率がS偏光の透過率より高くなるように構成されている。
【0012】
また、請求項6に記載のプロジェクタ用光学系によれば、第一の波長帯域と第二の波長帯域は、一方が上記第一の色成分に対応し、他方が、上記第二の色成分および第三の色成分に対応する。
【0013】
請求項7に記載のプロジェクタ用光学系によれば、偏光ビームスプリッタは、第一の波長帯域においてはS偏光の透過率が80%以上であってP偏光の透過率が20%以下であり、第二の波長帯域においてはP偏光の透過率が80%以上であってS偏光の透過率が20%以下であるように構成することが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、3板式プロジェクタで必須の構成とされる色分離、合成を、たった二つの面で実現することにより、プロジェクタから投影される画像を明るく、鮮明にするとともに、該プロジェクタの小型化、軽量化を達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は反射型液晶プロジェクタに搭載される本発明の実施形態のプロジェクタ用光学系100の概略構成を表す図である。プロジェクタ用光学系100は、光源1、単一偏光板2、ミラー3、特殊偏光ビームスプリッタ4、ダイクロイックプリズム5、第一から第三の反射型液晶素子6a、6b、6c、投影レンズ群7を有する。
【0016】
光源1は、高圧水銀ランプ1aと楕円リフレクタ1bを有する。高圧水銀ランプ1aから照射された白色光は、楕円リフレクタ1bで反射して単一偏光板2に入射する。なお、図示しないが、光源1と単一偏光板2の間には、光の強度分布を均一する光学部材(例えば、ライトトンネル(登録商標)等)や、光を平行光束に変換する光学部材(例えば、コリメートレンズ等)がそれぞれ配設されている。単一偏光板2は、入射する白色光を特殊偏光ビームスプリッタ4に対して第一の偏光(ここではS偏光)となるように偏光状態を揃える。
【0017】
単一偏光板4によってS偏光状態に変換された白色光束は、ミラー3を介して特殊偏光ビームスプリッタ4に略直角に入射する。
【0018】
図2は、本発明の実施形態の特殊偏光ビームスプリッタ4を示す。特殊偏光ビームスプリッタ4は、台形プリズム4a、4bを有する。図3に台形プリズム4aを示す。台形プリズム4aは一対の台形状の側面41a、42a、水平な底面43a、上面44a、一対の斜面45a、46aとからなる。図1に示す一対の側面41a、42aは互いに平行である。また、各斜面45a、46bと底面43aがなす角は互いに同一である。なお、台形プリズム4bは、上記台形プリズム4aと同一形状であるため、図3を参照し、ここでの説明は省略する。
【0019】
特殊偏光ビームスプリッタ4は、二つの台形プリズム4a、4bを、多層膜20を挟んで各底面43a、43bを貼り合わされることにより形成される。なお、以下の説明では、各底面43a、43bを貼り合わせることにより現れる面を偏光分離面43という。
【0020】
本実施形態の各台形プリズム4a、4bは同じ材料により形成される。但し、両者は、異なる材料により形成されてもよい。各台形プリズム4a、4bの屈折率は、後述する多層膜20の屈折率との関係を満たす限り特に限定されないが、入射光の波長が300〜2000nmである場合、1.35〜2.25程度に設定される。各台形プリズム4a、4bの材料の例として、光学ガラス、透明セラミックス、透明プラスチック等が挙げられる。
【0021】
特殊偏光ビームスプリッタ4は、ミラー3で反射された白色光が台形プリズム4aの斜面45aに対して直角に入射するように配置される。斜面45aに入射したS偏光状態にある白色光の一部の色成分(以下、便宜上、第一の波長帯域という)は、偏光分離面43、台形プリズム4bを透過して斜面46bから射出される。該白色光の残りの色成分(以下、便宜上、第二の波長帯域という)は偏光分離面43で反射し、斜面46aから射出される。なお、図2に示すように、白色光の偏光分離面43での入射角および上記第二の波長帯域の偏光分離面43での反射角をθとする。
【0022】
多層膜20は高屈折率層と、低屈折率層とを交互に有する。高屈折率層および低屈折率層を交互に積層することにより、各層の境界で干渉効果が起こり、特定の波長帯域(ここでは、第二の波長帯域)において、S偏光の透過率が低下するという作用が得られる。ここで、各台形プリズム4a、4bの屈折率をnS、低屈折率層の屈折率をnL、高屈折率層の屈折率をnHとすると、各屈折率は、下記式(1)により表される関係が成り立つ。
nL<nS、nH ・・・(1)
【0023】
なお、高屈折率層の屈折率nHと台形プリズム4a、4bの屈折率nSは、下記式(4)を満たす。
nS<nH ・・・(4)
上記式(4)を満たすように高屈折率層の屈折率nHと台形プリズム4a、4bの屈折率nSを設定することにより、特定の波長帯域(ここでは、第二の波長帯域)におけるS偏光の偏光分離面43での反射率を効率よく上昇させることができる。
【0024】
各屈折率が上記式(1)を満たすことにより、偏光分離面43における反射角θは、以下の条件式(2)を満足する。
θ≧sin-1(nL/nS) ・・・(2)
反射角θがsin−1(nL/nS)、つまり低屈折率層の臨界角未満であると、S偏光の透過率が大きい波長帯域(ここでは、第一の波長帯域)を効果的に得ることができない。
【0025】
層数の合計が15未満であると、S偏光とP偏光の透過率および反射率が可視光の波長で逆転しなくなり十分な色分離効果が得られないため、高屈折率層と低屈折率層の層数の合計は15以上に設定される。
【0026】
また、高屈折率層の各層、低屈折率層の各層は、上記式(1)および(2)を満たすのであれば、それぞれ同じ材料から形成されても良いし、異なる材料から形成されても良い。例えば、台形プリズム4a、4bの屈折率nSが1.5〜1.8である場合、高屈折率層の例として酸化タンタル層、酸化チタン層、酸化ランタン層、酸化イットリウム層、酸化ニオブ層、酸化セリウム層、酸化ジルコニウム層、酸化イッテルビウム層、酸化ハフニウム層や酸化アルミニウム層が挙げられる。低屈折率層の例として酸化ケイ素層、フッ化マグネシウム層、フッ化カルシウム層やフッ化アルミニウム層が挙げられる。
【0027】
各高屈折率層および各低屈折率層の光学層厚は、同じでも良いし異なっても良い。なお光学層厚とは、高屈折率層または低屈折率層の光学的な厚さ(光学膜厚)を意味する。但し、低屈折率層の最大光学層厚dLmaxは、利用波長λの最大値λmaxとの関係において、下記式(3)
dLmax<λmax・・・(3)
を満たすように構成される。利用波長λとは、プロジェクタ用光学系100で用いられる波長つまり可視光領域を示す。低屈折率層の最大光学層厚dLmaxが利用波長の最大値λmax以上になると、偏光分離面43は入射する白色光を全反射してしまう。例えば、利用波長が300〜2000nmの場合、低屈折率層の光学層厚は上記式(3)を満たすように5〜2000nm程度の範囲内から適宜選択される。本実施形態では、高屈折率層の光学層厚も5〜2000nm程度の範囲内から適宜選択される。また、多層膜2の光学膜厚は、1〜1000μm程度である。
【0028】
多層膜20を形成する方法は特に限定されず、周知の方法によって作製される。例えば蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法、熱CVD、プラズマCVD、光CVD等の化学蒸着法が挙げられる。本実施形態では、屈折率の安定性や膜厚制御性の観点から、スパッタリング法やイオンプレーティング法により多層膜20を作製する。
【0029】
スパッタリング法又はイオンプレーティング法によって低屈折率層または高屈折率層を成膜する場合、蒸着時間、加熱温度等を適宜設定することにより、所望の厚さを有する層を形成することができる。
【0030】
図4は、特殊偏光ビームスプリッタ4の分光透過率を概略的に示す。図4中、TsはS偏光の透過率を示し、TpはP偏光の透過率を示す。第一の波長帯域W1においては、S偏光の透過率TsがP偏光の透過率Tpより高い。第二の波長帯域W2においてはP偏光の透過率TpがS偏光の透過率Tsより高い、つまりS偏光の反射率が高い。第一および第二の波長帯域W1、W2の境界は、利用波長λの範囲、つまり可視光領域内に設定される。第一および第二の波長帯域W1、W2を可視光領域内に設定することにより、斜面46aから射出されるS偏光および斜面46bから射出されるS偏光が異なる色成分となる。
【0031】
なお、特殊偏光ビームスプリッタ4は、第一の波長帯域W1におけるS偏光の透過率Tsが80%以上であり、第二の波長帯域W2におけるS偏光の透過率Tsは20%以下であるように構成される。
【0032】
また、図4に示す例では、第一の波長帯域W1が短波長側で、第二の波長帯域W2が長波長側であるが、第一および第二の波長帯域W1、W2はこれに限定されず、第二の波長帯域W2が短波長側で、第一の波長帯域W1が長波長側でもよい。
【0033】
このように、特殊偏光ビームスプリッタ4は、偏光状態に応じて光を分離するだけでなく、波長帯域に応じて光を分離する。つまり、特殊偏光ビームスプリッタ4の偏光分離面43は色分離面として機能する。
【0034】
上述した特殊偏光ビームスプリッタ4の具体的な実施例を以下に提示する。実施例の特殊偏光ビームスプリッタ4は、光学ガラスS−LAH59(株式会社オハラ製、屈折率nd=1.82)によって各台形プリズム4a、4bを形成している。台形プリズム4a、4bの形状は、斜面45a、45bに入射した光に関する偏光分離面43での入射角、反射角、射出角がいずれもθ=55°となるように構成される。
【0035】
実施例の特殊偏光ビームスプリッタ4では、利用波長λを可視光領域である約420〜750nmと想定する。多層膜20の具体的構成を表1に示す。但し、表1において、層No.は台形プリズム4a側からの層番号を意味する。
【0036】
【表1】

【0037】
表1に示すように、多層膜20は、SiO(屈折率nL=1.46)の低屈折率層とTa(屈折率nH=2.25)の高屈折率層を交互に積層して合計48層の膜を有する。従って、多層膜20は、上記式(1)を満たす。また、sin−1(nL/nS)は53.34°(<55°)であるため、上記式(2)も満たす。またdLmaxは第27層の406.50nmであるため、利用波長λの最大値λmax=750nmよりも小さい。つまり実施例の構成は、上記式(3)も満たす。
【0038】
実施例では、一方の台形プリズムの底面に、多層膜20の第48層を当接させて真空チャンバに入れ、チャンバ内を真空引きして多層膜と台形プリズムを接着する。そして二つの台形プリズムを接着することにより、特殊偏光ビームスプリッタ4を作製した。
【0039】
実施例の特殊偏光ビームスプリッタ4の透過率に関する特性を図5に示す。図5に示すグラフにおいて、横軸が特殊偏光ビームスプリッタ4に入射する光の波長を、縦軸が透過率を、それぞれ示す。なお、説明の便宜上、グラフの縦軸に示す透過率は、空気と各台形プリズム4a、4bとの界面における反射の影響を除いた値とする。
【0040】
図5に示すように、実施例の特殊偏光ビームスプリッタ4は、S偏光およびP偏光の透過率が略波長600nmで逆転している。例えば実施例においては、波長420〜590nmの範囲(第一の波長帯域W1)では、S偏光は略100%に近い透過率を示すのに対してP偏光の透過率は5%未満である。また、波長620〜750nmの範囲(第二の波長帯域W2)では、S偏光の透過率はほぼ0%であるのに対してP偏光は90%以上の透過率である。
【0041】
ここで、波長420〜590nmの範囲は、B成分とG成分に相当する。また、波長620〜750nmの範囲は、R成分に相当する。つまり、実施例の特殊偏光ビームスプリッタ4は、図6に示すように、偏光分離面43において、G成分およびB成分のS偏光Sg、Sbは透過し、R成分のS偏光Srは反射する。このように、実施例の特殊偏光ビームスプリッタ4は、可視光域全域において、P偏光とS偏光のいずれか一方を殆ど損失することなく、透過または反射させている。従って実施例の特殊偏光ビームスプリッタ4を持つプロジェクタ用光学系100によれば、R、G、Bの各成分を何ら制限することなくいずれも高い光量のまま変調することができ、非常に高品質な色再現を実現している。
【0042】
偏光分離面43で反射したR成分は、斜面46bに直角に入射し、該斜面46bから屈折作用を受けることなく射出される。斜面46bから射出されたR成分は、第一の反射型液晶素子6aに入射する。第一の反射型液晶素子6aは、図示しない制御部から送信される変調信号に従って、ONビットに入射したR成分を変調する。変調信号は、所定のR用の映像情報に基づいて生成される。
【0043】
なお変調の際、液晶の性質によって、反射光束の偏光状態は、入射光束の偏光状態が90°回転したP偏光状態となる。P偏光状態のR成分は、第一の反射型液晶素子6aで反射して再び特殊偏光ビームスプリッタ4に入射する。
【0044】
また、偏光分離面43を透過したB成分とG成分は、斜面46aに直角に入射し、該斜面46aから屈折作用を受けることなく射出される。斜面46aから射出されたBとGの各成分は、ダイクロイックプリズム5に入射する。ダイクロイックプリズム5は、色分離面51において、入射する二種類の色成分のうち、B成分を何ら偏向することなく透過させ、G成分を略直角に偏向する。
【0045】
ダイクロイックプリズム5で反射したG成分および該プリズム5を透過したB成分は、それぞれ第二の反射型液晶素子6b、第三の反射型液晶素子6cにより変調され、ダイクロイックプリズム5に戻る。そして、ダイクロイックプリズム5の色分離面51で合成され、特殊偏光ビームスプリッタ4に再び入射する。
【0046】
なお、各反射型液晶素子6a、6b、6cは、特殊偏光ビームスプリッタ4からの空気換算長が等しくなる位置に配設されている。具体的には、ダイクロイックプリズム5が配設される分、第二の反射型液晶素子6bや第三の反射型液晶素子6cと特殊偏光ビームスプリッタ4間の距離は、第一の反射型液晶素子6aと特殊偏光ビームスプリッタ4間よりも若干長めに設定される。
【0047】
このように、プロジェクタ用光学系100に配設されたダイクロイックプリズム5の色分離面51は、入射する二つの色成分に関して分離するだけでなく合成も行う色分離合成面(第二色分離合成面)として機能する。
【0048】
図7は、各反射型液晶素子6a〜6cにより変調されP偏光状態となったR、G、Bの各成分Pr、Pg、Pbが実施例の特殊偏光ビームスプリッタ4に入射した状態を示す模式図である。図7に示すように、各成分Pr、Pg、Pbは、偏光分離面43に入射する。上記のように、偏光分離面43は、図5に示す特性を持つ。従って、R成分Prは偏光分離面43を透過し、G成分PgとB成分Pbは偏光分離面43で反射する。ここで、各成分の偏光分離面43での入射角、反射角、射出角はいずれもθ(ここでは55°)である。従って、各色成分は合成されて斜面45bから射出される。
【0049】
このように、プロジェクタ用光学系100に配設された特殊偏光ビームスプリッタ4の偏光分離面43は、入射する白色光を二つの波長帯域W1、W2に分離するだけでなく、該二つの波長帯域W1、W2の合成も行う色分離合成面(第一色分離合成面)として機能する。
【0050】
特殊偏光ビームスプリッタ4から射出された合成光は、投影レンズ群7に入射する。具体的には、R、G、Bの各色のON光成分のみが特殊偏光ビームスプリッタ4によって合成され、投影レンズ群11に入射する。投影レンズ群11によってスクリーンSには、大画面の明るいフルカラー映像が投影される。
【0051】
以上が本発明の実施形態である。本発明にかかるプロジェクタ用光学系は、上記の実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形を行っても同様の効果を奏する。
【0052】
例えば、特殊偏光ビームスプリッタ4は、第一の波長帯域W1と第二の波長帯域W2の一方が二種類の色成分に対応し、他方が残りの一成分に対応すれば、必ずしも図4や図5に示すような特性に限定されるものではない。
【0053】
さらに、上記実施形態では、光源1からの光束は単一偏光板4によりS偏光状態に変換されると説明したが、P偏光状態に変換される構成であってもよい。また、上記実施形態における各色成分の光路は任意に置換可能である。例えば、ダイクロイックプリズム5の特性を変えれば、G成分を反射させ、B成分を透過させることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施形態のプロジェクタ用光学系の概略構成を表す図である。
【図2】本発明の実施形態の特殊偏光ビームスプリッタを示す図である。
【図3】本発明の実施形態の特殊偏光ビームスプリッタを構成する台形プリズムを示す図である。
【図4】本発明の実施形態の特殊偏光ビームスプリッタ4の分光透過率を概略的に示すグラフである。
【図5】実施例の特殊偏光ビームスプリッタ4の透過率に関する特性を示すグラフである。
【図6】光源から照射された白色光が実施例の特殊偏光ビームスプリッタに入射した状態を示す模式図である。
【図7】各反射型液晶素子により変調されP偏光状態となったR、G、Bの各成分が実施例の特殊偏光ビームスプリッタに入射した状態を示す模式図である。
【符号の説明】
【0055】
1 光源
4 特殊偏光ビームスプリッタ
43 偏光分離面(第一色分離合成面)
5 ダイクロイックプリズム
51 色分離面(第二色分離合成面)
6a、6b、6c 反射型液晶素子
7 投影レンズ群
100 3板式プロジェクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の画像信号に基づいて投影画像を生成するプロジェクタ用光学系において、
第一の直線偏光状態にある白色光を照射する光源部と、
色の三原色に対応する第一から第三の色成分を、前記所定の画像信号に基づいて変調すると共に、前記第一の直線偏光状態を90°回転した第二の直線偏光状態にする、各色成分に対応した第一から第三の反射型液晶素子と、
第一色分離合成面および第二色分離合成面によって、前記光源部から照射された前記白色光を偏光状態を維持したまま前記第一から第三の色成分に分離し、かつ前記第一から第三の各反射型液晶素子によって変調された前記第一から第三の色成分を合成する色分離合成手段と、を有することを特徴とするプロジェクタ用光学系。
【請求項2】
請求項1に記載のプロジェクタ用光学系において、
前記第一色分離合成面は、第一および第二の色成分と、第三の色成分とに関する分離および合成を行い、
前記第二色分離合成面は、前記第一色分離合成面により前記第三の色成分と分離された前記第一の色成分と前記第二の色成分に関する分離および合成を行うことを特徴とするプロジェクタ用光学系。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のプロジェクタ用光学系において、
前記第一色分離合成面により合成された光をスクリーン上に投影する投影レンズ群を有し、
前記第一色分離合成面は、合成された光を前記投影レンズ群に導く偏向手段としても機能することを特徴とするプロジェクタ用光学系。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のプロジェクタ用光学系において、
前記第一の直線偏光がS偏光であり、前記第二の直線偏光がP偏光であることを特徴とするプロジェクタ用光学系。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載のプロジェクタ用光学系において、
前記第一色分離合成面は、一対の透明基体を貼り合わせることにより形成される偏光ビームスプリッタにおける貼り合わせ面であって、
前記貼り合わせ面には、高屈折率層および低屈折率層からなり層数15以上の多層膜が施されており、
前記多層膜は、下記式(1)、(2)および(3)、
nL<nS、nH ・・・(1)
θ≧sin-1(nL/nS) ・・・(2)
dLmax<λmax ・・・(3)
但し、nLは前記低屈折率層の屈折率を、
nSは前記透明基体の屈折率を、
nHは前記高屈折率層の屈折率を、
θは一方の透明基体に垂直入射した光の前記多層膜との界面における反射角を、
λmaxは利用波長の最大値を、
dLmaxは低屈折率層の最大光学層厚を、それぞれ示す。
を満たし、第一の波長帯域においてはS偏光の透過率がP偏光の透過率より高く、第二の波長帯域においてはP偏光の透過率がS偏光の透過率より高くなるように構成されていることを特徴とするプロジェクタ用光学系。
【請求項6】
請求項5に記載のプロジェクタ用光学系において、
前記第一の波長帯域と前記第二の波長帯域のいずれか一方は、前記第一の色成分に対応し、他方は、前記第二の色成分および前記第三の色成分に対応することを特徴とするプロジェクタ用光学系。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載のプロジェクタ用光学系において、
前記偏光ビームスプリッタは、前記第一の波長帯域においてはS偏光の透過率が80%以上であってP偏光の透過率が20%以下であり、
第二の波長帯域においてはP偏光の透過率が80%以上であってS偏光の透過率が20%以下であることを特徴とするプロジェクタ用光学系。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−293072(P2006−293072A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−114597(P2005−114597)
【出願日】平成17年4月12日(2005.4.12)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】