説明

ヘッドアップディスプレイ装置及びこれに用いられるミラー一体カバーユニット

【課題】インストルメントパネル内のスペース効率を向上させることができるヘッドアップディスプレイ装置及びこれに用いられるミラー一体カバーユニットを提供する。
【解決手段】使用時には可動部3′が収容部1aの平面状の内壁に沿って起立するように、不使用時には可動部3′が収容部1aの開口部を覆うように、起伏動作可能である。特に、使用時から不使用時への動作にともなって、リンク機構により、可動部3′の下端が収容部1aの内壁1a1に沿って徐々に上方に移動する。このため、可動部3′は、使用時には収容部1aの内壁1a1に沿って起立するにもかかわらず、動作時にもこの内壁1a1に干渉することがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等に搭載されるヘッドアップディスプレイ装置及びこれに用いられるミラー一体カバーユニットに関し、特に、表示像をウインドシールド側に反射させるミラー部が起伏動作可能なヘッドアップディスプレイ装置及びミラー一体カバーユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両等には、インストルメントパネル(略してインパネともよぶ)に埋設された表示デバイスの表示像をミラーによりウインドシールドに反射させて、ドライバに視認させるヘッドアップディスプレイ装置が搭載されることがある。このようなヘッドアップディスプレイ装置では、不使用時に表示デバイスを直射日光やほこり等から防御するために、開閉可能なカバーが備わっていることが多い。
【0003】
例えば、下記特許文献1では、使用時には、表示デバイスを外部に露呈させるが、不使用時には、カバーによって表示デバイスを外部から遮蔽する、シャッター開閉式のヘッドアップディスプレイ装置が提案されている。詳しくは、このヘッドアップディスプレイ装置では、不使用時には、カバーがスライドしてインパネの裏側に収納されるような構造になっている。
【0004】
ところが、上記カバーを収納すべきインパネの裏側近傍には、通常、メータが配置されるうえに、前方視界を妨げないようにするための安全面の観点から、インパネに高さ制限が設けられていることが多いので、この場所以外にカバーを収納することが好ましい。そうすると、例えば、図7に示すように、ミラー30a1とインパネカバー30bとを可動部として一体化することにより、上述のようなミラーの収容スペースを不要とする構成が想定される。図7(A)〜図7(E)は、想定される従来のヘッドアップディスプレイ装置の可動部の起伏動作を示す図である(但し、図7は本発明の公知の従来例ではない)。
【0005】
図7(A)〜図7(E)に示すように、ミラー30a1とインパネカバー30bとが一体化された可動部30′を起伏動作させるためには、この可動部30′を固定的に配置された回転軸AXを中心に起伏動作させることが一般的に想定される。すなわち、図7(A)に示すように、使用状態においては、可動部30′は、表示デバイス4の表示像をミラー30a1によりウインドシールド5に反射させるように、収容部1aの内壁に沿って起立した状態になる。
【0006】
この状態から、不使用状態へ移行させるための所定のスイッチ操作が行われると、可動部30′はその駆動機構により、図7(B)、図7(C)、図7(D)に示す順序で、回転軸AXを中心にして徐々に倒置していき、図7(E)に示すような不使用状態で安定する。なお、図7(E)に示す不使用状態から図7(A)に示す使用状態に移行する場合には、上記と逆の順序で、可動部30′は回転軸AXを中心にして徐々に起立していくことになる。
【0007】
なお、可動部30′の起伏動作にともない、可動部30′が収容部1の内壁に干渉するが、説明上、図7ではこれを無視して描いている。
【0008】
なお、この種のヘッドアップディスプレイ装置として下記特許文献1に記載されたものがある。
【特許文献1】特開2003−237411号公報
【特許文献2】実開昭62−200040号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、上記使用状態と使用状態との間の起伏動作にともない、可動部30′の下端は、図7中、TRで示すような円弧上の軌跡を描くことになる。そうすると、収容部1は、この軌跡TRを包含するように、収容部1aの内壁裏側に張り出したスペースを確保せざるを得なくなる。
【0010】
一般的に、インストルメントパネル1内のスペース7には、エアコン装置に連通するエアダクト、補強部材、ワイヤーハーネス等が配置される。しかしながら、上述のようなヘッドアップディスプレイ装置の構成によると、収容部1aの裏側のスペースが圧迫されて、エアダクト等の配置が困難になってくる。すなわち、上述のようなヘッドアップディスプレイ装置の構成によると、インストルメントパネル1に埋設される収容部1aの占有スペースが大きくなり、インストルメントパネル1内に収容すべき他部材の配置に支障をきたす可能性がでてくる。
【0011】
要するに、近年、インストルメントパネル1内には、メータやエアダクトをはじめ、多くの機器が収容されるので、カバー開閉機構を備えたヘッドアップディスプレイ装置を採用する場合において、スペース効率の向上は重要な課題となっている。
【0012】
よって本発明は、上述した現状に鑑み、インストルメントパネル内のスペース効率を向上させることができるヘッドアップディスプレイ装置及びこれに用いられるミラー一体カバーユニットを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載のヘッドアップディスプレイ装置は、所定の表示像を表示出力する表示デバイスと、前記表示像をウインドシールド側に反射させるミラー部と、インストルメントパネルに埋設され、前記表示デバイス及び前記ミラー部を収容する収容部と、前記収容部の開口部を覆うインパネカバー部と、を備え、前記ミラー部と前記インパネカバー部とを可動部として一体化し、前記可動部を、使用時には起立し、不使用時には前記収容部の開口部を覆うように、起伏動作可能にした、ことを特徴とする。
【0014】
請求項1記載の発明によれば、ミラー部とインパネカバー部とを可動部として一体化し、可動部を、使用時には起立し、不使用時には収容部の開口部を覆うように、起伏動作可能にしたので、ミラー部を収容するための専用スペースが不要となる。
【0015】
上記課題を解決するためになされた請求項2記載のヘッドアップディスプレイ装置は、請求項1記載のヘッドアップディスプレイ装置において、前記可動部の前記使用時から前記不使用時への動作及びその逆の動作にともなって、前記可動部の下端が前記収容部の内壁に沿って徐々に上方及び下方にそれぞれ移動するように、前記可動部と前記収容部側とを連結するリンク機構(3b3、3b4、3d3、3d4)、を備えることを特徴とする。
【0016】
請求項2記載の発明によれば、使用時には可動部が収容部の平面状の内壁に沿って起立するように、不使用時には可動部が収容部の開口部を覆うように、起伏動作可能である。特に、使用時から不使用時への動作にともなって、リンク機構により、可動部の下端が収容部の内壁に沿って徐々に上方に移動する。このため、可動部は、使用時には収容部の内壁に沿って起立するにもかかわらず、動作時にもこの内壁に干渉することがない。
【0017】
上記課題を解決するためになされた請求項3記載のヘッドアップディスプレイ装置は、請求項2記載のヘッドアップディスプレイ装置において、前記リンク機構は、前記動作にともなって、前記可動部の下端を前記収容部の内壁に沿って徐々に上方に移動させ、その上端を前記開口部の上方で弧を描くように移動させる、円弧型及びV字型のガイド溝と、これらガイド溝を移動するガイドピンと、を含む、ことを特徴とする。
【0018】
請求項3記載の発明によれば、リンク機構は、使用時から不使用時への動作にともなって、可動部の下端を収容部の内壁に沿って徐々に上方に移動させ、その上端を開口部の上方で弧を描くように移動させる、円弧型及びV字型のガイド溝と、これらガイド溝を移動するガイドピンと、を含んで構成されるので、大型化、重量化が抑制される。
【0019】
上記課題を解決するためになされた請求項4記載のヘッドアップディスプレイ装置は、請求項3記載のヘッドアップディスプレイ装置において、前記ガイドピンは、前記可動部側に設けられ、前記ガイド溝は、前記収容部側に設けられている、ことを特徴とする。
【0020】
請求項4記載の発明によれば、ガイドピンは、可動部側に設けられ、ガイド溝は、収容部側に設けられているので、可動部が簡素化される。
【0021】
上記課題を解決するためになされた請求項5記載のヘッドアップディスプレイ装置は、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のヘッドアップディスプレイ装置において、前記収容部は、前記内壁の裏側に前記インストルメントパネル内に配置すべき部材が配置可能なスペースを確保して、前記インストルメントパネルに埋設されている、ことを特徴とする。
【0022】
請求項5記載の発明によれば、内壁の裏側にインストルメントパネル内に配置すべき部材が配置可能なスペースを確保して、収容部がインストルメントパネルに埋設されている。これは、上記収容部のコンパクト化により可能になっている。
【0023】
上記課題を解決するためになされた請求項6記載のヘッドアップディスプレイ装置は、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載のヘッドアップディスプレイ装置において、前記可動部に一体化された、運転席に着座したドライバーのアイレンジの高低に応じて、前記使用時における前記ミラー部の前記アイレンジに対する角度を調整可能なアイレンジ調整機構、を更に備えることを特徴とする。
【0024】
請求項6記載の発明によれば、アイレンジ調整機構により、運転席に着座したドライバーのアイレンジの高低に応じてミラー部の角度が調整可能である。特に、アイレンジ調整機構は、ミラー部とインパネカバー部とが一体化された可動部に更に一体化されているので、一旦、ミラー部の角度調整が完了すると、以降、可動部の起伏動作の度に、アイレンジの調整をしなくてもよい。
【0025】
上記課題を解決するためになされた請求項7記載のミラー一体カバーユニットは、インストルメントパネルに埋設され、所定の表示像を表示出力する表示デバイスを収容する収容部を備えるヘッドアップディスプレイ装置に用いられ、前記表示像をウインドシールド側に反射させるミラー部と前記収容部の開口部を覆うインパネカバー部とが一体化されて構成されて、使用時には起立され不使用時には前記収容部の開口部を覆うように倒置される可動部と、前記可動部の駆動機構を含むと共に前記収容部の平面状の内壁に固定される固定部と、を備えることを特徴とする。
【0026】
請求項7記載の発明によれば、ミラー一体カバーユニットを収容部に取り付けると、ミラー部とインパネカバー部とを一体化した可動部が、不使用時には収容部の開口部を覆うように起伏動作可能になるので、ミラー部を収容するための専用スペースが不要となる。
【0027】
上記課題を解決するためになされた請求項8記載のミラー一体カバーユニットは、請求項7記載のミラー一体カバーユニットにおいて、前記可動部の前記使用時から前記不使用時への移行及びその逆の移行にともなって、前記可動部の下端が前記収容部の内壁に沿って徐々に上方及び下方にそれぞれ移動するように、前記可動部と前記固定部とを連結するリンク機構、を備えることを特徴とする。
【0028】
請求項8記載の発明によれば、ミラー一体カバーユニットを収容部に取り付けると、使用時には可動部が収容部の平面状の内壁に沿って起立するように、不使用時には可動部が収容部の開口部を覆うように、起伏動作可能になる。特に、使用時から不使用時への動作にともなって、リンク機構により、可動部の下端が収容部の内壁に沿って徐々に上方に移動可能になる。このため、可動部は、使用時には収容部の内壁に沿って起立するにもかかわらず、動作時にもこの内壁に干渉することがない。
【発明の効果】
【0029】
請求項1記載の発明によれば、ミラー部とインパネカバー部とを可動部として一体化し、可動部を、使用時には起立し、不使用時には収容部の開口部を覆うように、起伏動作可能にしたので、ミラー部を収容するための専用スペースが不要となる。したがって、カバー開閉機構を備えたヘッドアップディスプレイ装置を採用する場合において、インストルメントパネル内のスペース効率を大きく向上する。
【0030】
請求項2記載の発明によれば、使用時には可動部が収容部の平面状の内壁に沿って起立するように、不使用時には可動部が収容部の開口部を覆うように、起伏動作可能である。特に、使用時から不使用時への動作にともなって、リンク機構により、可動部の下端が収容部の内壁に沿って徐々に上方に移動する。このため、可動部は、使用時には収容部の内壁に沿って起立するにもかかわらず、動作時にもこの内壁に干渉することがない。したがって、収容部がコンパクトになり、インストルメントパネル内のスペース効率も向上する。
【0031】
請求項3記載の発明によれば、リンク機構は、使用時から不使用時への動作にともなって、可動部の下端を収容部の内壁に沿って徐々に上方に移動させ、その上端を開口部の上方で弧を描くように移動させる、円弧型及びV字型のガイド溝と、これらガイド溝を移動するガイドピンと、を含んで構成されるので、収容部をよりコンパクトにすることができる。
【0032】
請求項4記載の発明によれば、ガイドピンは、可動部側に設けられ、ガイド溝は、収容部側に設けられている。したがって、可動部が簡素化されるため起伏動作も円滑になる。
【0033】
請求項5記載の発明によれば、内壁の裏側にインストルメントパネル内に配置すべき部材が配置可能なスペースを確保して、収容部がインストルメントパネルに埋設されている。これは、上記収容部のコンパクト化により可能になっている。したがって、インストルメントパネル内に配置すべき部材のための収容スペースを十分確保することができる。
【0034】
請求項6記載の発明によれば、アイレンジ調整機構により、運転席に着座したドライバーのアイレンジの高低に応じてミラー部の角度が調整可能である。特に、アイレンジ調整機構は、ミラー部とインパネカバー部とが一体化された可動部に更に一体化されているので、一旦、ミラー部の角度調整が完了すると、以降、可動部の起伏動作の度に、アイレンジの調整をしなくてもよい。したがって、煩わしい角度調整作業を最小限に抑えて、表示像の視認性を向上させることができる。
【0035】
請求項7記載の発明によれば、ミラー一体カバーユニットを収容部に取り付けると、ミラー部とインパネカバー部とを一体化した可動部が、不使用時には収容部の開口部を覆うように起伏動作可能になるので、ミラー部を収容するための専用スペースが不要となる。したがって、カバー開閉機構を備えたヘッドアップディスプレイ装置を採用する場合において、インストルメントパネル内のスペース効率を大きく向上させることができる。
【0036】
請求項8記載の発明によれば、ミラー一体カバーユニットを収容部に取り付けると、使用時には可動部が収容部の平面状の内壁に沿って起立するように、不使用時には可動部が収容部の開口部を覆うように、起伏動作可能になる。特に、使用時から不使用時への動作にともなって、リンク機構により、可動部の下端が収容部の内壁に沿って徐々に上方に移動可能になる。このため、可動部は、使用時には収容部の内壁に沿って起立するにもかかわらず、動作時にもこの内壁に干渉することがない。したがって、収容部をコンパクト化することが可能になり、インストルメントパネル内のスペース効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。まず、図1を用いて、本発明の一実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置について概略的に説明する。図1(A)及び図1(B)は、本発明の一実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置の使用状態及び不使用状態を概略的に示す図である。
【0038】
図1(A)に示すように、車両のフロント部のインストルメントパネル1には、速度計、回転計等が一体化されたコンビネーションメータ2が配置されている。また、インストルメントパネル1には、本ヘッドアップディスプレイ装置の収容部1aが埋設されている。収容部1aの内壁は、基本的に平面状の箱形に形成されており、上面は開口している。収容部1aには、所定の表示像を表示出力する液晶表示装置からで構成される表示デバイス4が取り付けられている。表示デバイス4の表示面に対向する収容部1aの内壁1a1には、使用状態においてミラー一体カバーユニット3が対向するように配置される。ミラー一体カバーユニット3の可動部3′は、拡大ミラー3a1(以下、単にミラーともよぶ)を擁するミラー部3aとインパネカバー部3bとが一体化されて基本構成されているが、正確には、図2以降で説明するベセル部3cも含んで構成されている。なお、ミラー一体カバーユニット3には、可動部3′の駆動機構を備えると共に収容部1aに固定される固定部も含まれるが、これについても図2以降で説明する。
【0039】
ミラー一体カバーユニット3の可動部3′は、使用時には、図1(A)に示すように収容部1a内で起立するが、不使用時には、図1(B)に示すように、邪魔にならないように、収容部1aの開口部を覆うように倒置可能になっている。
【0040】
すなわち、使用時には、図1(A)に示すように、表示デバイス4の表示像は、起立したミラー3a1によりウインドシールド5に反射されて、着座したドライバのアイレンジERに向かう。これにより、ドライバからは、ウインドシールド5を通過した車両前方の光景と、ウインドシールド5で反射された表示像とが同時に視認可能である。一方、不使用時には、使用時に表示像がドライバのアイレンジERに向かうように設定された光学系を崩して、図1(B)に示すように、収容部1aの開口部を覆うように、インストルメントパネル1と面一になるように倒置可能になっている。
【0041】
次に、本発明の一実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置のミラー一体カバーユニットの構成について、図2〜図5を用いて説明する。図2は、使用状態にあるミラー一体カバーユニットを示す斜視図である。図3は、ミラー一体カバーユニットの可動部の斜視図である。図4は、ミラー一体カバーユニットの可動部の分解斜視図である。図5は、不使用状態にあるミラー一体カバーユニットを示す斜視図である。
【0042】
図2に示すように、ミラー一体カバーユニット3は、ミラー部3a、インパネカバー部3b及びベセル部3cを含む可動部3′と、収容部1aに固定される固定部3dと、から構成されている。このミラー一体カバーユニット3は、固定部3dが上記収容部1aの内壁1a1に沿うようにして取り付けられる。
【0043】
図2〜図4に示すように、可動部3′に含まれるミラー部3aは、拡大ミラー3a1、モータギアボックス3a2及びミラーホルダー軸3a3を有している。拡大ミラー3a1は、矩形状の凹面鏡である。モータギアボックス3a2は、アイレンジ調整用のモータ及びギアを内蔵している。ミラーホルダー軸3a3は、アイレンジ調整用のミラー3a1の回転軸である。
【0044】
ミラー部3aは、インパネカバー部3bとベセル部3cとに挟み込まれるようにして、インパネカバー部3bに収容されている。インパネカバー部3bは、拡大ミラー3a1を収容するのに十分な浅皿状をしており、その短辺には一対の壁3b2が立設されており、更に壁3b2には上記起伏動作時に利用されるガイドピン3b3、3b4が外向けに突設されている。また、ベセル部3cは、上記拡大ミラー3a1に対応した矩形状の窓3c1及び一対の壁3b2にそれぞれ対応した形状の一対の切り込み3c2を有している。
【0045】
図2に示すように、固定部3dは、上記インパネカバー部3bよりやや大きな矩形状の枠体をしており、その短辺には上記一対の壁3b2を外側から挟むように一対の壁3d2が立設されており、更に一対の壁3d2には上記ガイドピン3b3、3b4が挿通されるガイド溝3d3、3d4がそれぞれ形成されている。ガイド溝3d3はV字型であり、ガイド溝3d4は円弧型であるが、この理由は図6を用いた説明で明らかになる。ガイドピン3b3、3b4及びガイド溝3d3、3d4は、本発明の特徴となる起伏動作を実現するリンク機構を構成する。
【0046】
固定部3dはまた、一対のネジ軸3d5、駆動軸3d6、一対のナット3d7、一対のギアボックス3d8及びモータギアボックス3d9を有している。一対のナット3d7には、上記一対のガイドピン3b4がそれぞれ嵌合されて、一対のネジ軸3d5上を移動する。一対のギアボックス3d8は共に、駆動軸3d6の回転をネジ軸3d5の回転に伝達するためのギアを内蔵しており、モータギアボックス3d9は、上記起伏動作用のモータ及びギアを内蔵している。なお、上記対になった壁、ガイド溝、ガイドピン、ネジ軸、ナットは共に同等の形状をしている。
【0047】
そして、可動部3′の起伏動作を指令するための所定のスイッチ操作が行われると、モータギアボックス3d9内のモータが回転して、駆動軸3d6を回転させ、この回転がギアボックス3d8を介してネジ軸3d5に伝達され、ナット3d7がネジ軸3d5上を所定方向に移動し、これによりガイドピン3b4が、ガイド溝3d4に沿って所定方向に移動する。このとき、可動部3′を円滑に動作させるために、一対のガイドピン3b4が同時に動くようにモータが駆動する。
【0048】
このような可動部3′の起伏動作によって、ミラー一体カバーユニット3は、使用状態では図2に示すようになり、不使用状態では図5に示すようになる。したがって、ミラー一体カバーユニット3の固定部3dが収容部1aの内壁1a1に取り付けられている場合には、使用状態では図1(A)に示すようになり、不使用状態では図1(B)に示すようになる。
【0049】
更に、図6を用いて、収容部1aに取り付けられたミラー一体カバーユニット3の可動部3′の起伏動作について説明する。図6(A)〜図6(E)は、本発明の実施形態における可動部の起伏動作を示す図である。
【0050】
図6(A)に示すように、使用状態においては、可動部3′は、表示デバイス4の表示像をミラー3a1によりウインドシールド5に反射させるように、収容部1aの内壁に沿って起立した状態になる。この状態から、不使用状態へ移行させるための所定のスイッチ操作が行われると、可動部3′は、モータギアボックス3d9内のモータが回転して、駆動軸3d6を回転させ、この回転がギアボックス3d8を介してネジ軸3d5に伝達され、ナット3d7がネジ軸3d5上を図2の矢印方向に移動し、これによりガイドピン3b4、3b3が、ガイド溝3d4、3d3に沿って図2の矢印方向に徐々に移動する。これにより、図6(B)、図6(C)、図6(D)に示す順序で、可動部3′は、徐々に倒置していき、図6(E)に示すような不使用状態で安定する。なお、図6(E)に示す不使用状態から図6(A)に示す使用状態に移行する場合には、上記と逆の順序で、可動部3′は徐々に起立していくことになる。
【0051】
このような使用状態と使用状態との間の起伏動作にともない、可動部3′の下端(インパネカバー部3bの下端)は、TR1で示すように収容部1aの内壁1a1に沿って徐々に上方(又は下方)に移動し、その上端(インパネカバー部3bの上端)は、TR2で示すように収容部1aの開口部の上方で弧を描くように移動する。すなわち、可動部3′は、使用時には収容部1aの内壁1a1に沿って起立するにもかかわらず、起伏動作時に、可動部3′が、この内壁1a1に干渉することがない。したがって、収容部1aがコンパクトになり、収容部1aが、エアダクト、補強部材、ワイヤーハーネス等が配置されるスペース6への張り出しも抑制することができる。すなわち、インストルメントパネル1内のスペース効率が向上する。
【0052】
以上説明したように、本発明の実施形態によれば、収容部がコンパクトになり、インストルメントパネル内のスペース効率も向上させることができる。例えば、エアダクトが収容部の裏側にすっきり収容できるので、インストルメントパネル内側に補強部材やワイヤーハーネス等の他の部材のための収容スペースを十分確保することも可能になる。また、使用状態から不使用状態への移行が、ミラー一体カバーユニットの可動部の回転動作としても認識できるいう視覚的な効果も得られる。
【0053】
なお、上記実施形態中で示したリンク機構、すなわち、ガイドピン及びガイド溝の配置や形状は、本発明の主旨の範囲内で種々の変形が可能であり、このような変形例も本発明に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】図1(A)及び図1(B)は、本発明の一実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置の使用状態及び不使用状態を概略的に示す図である。
【図2】使用状態にあるミラー一体カバーユニットを示す斜視図である。
【図3】ミラー一体カバーユニットの可動部の斜視図である。
【図4】ミラー一体カバーユニットの可動部の分解斜視図である。
【図5】不使用状態にあるミラー一体カバーユニットを示す斜視図である。
【図6】図6(A)〜図6(E)は、本発明の実施形態における可動部の起伏動作を示す図である。
【図7】図7(A)〜図7(E)は、想定される従来のヘッドアップディスプレイ装置の可動部の起伏動作を示す図である。
【符号の説明】
【0055】
1 インストルメントパネル
2 メータ
3 ミラー一体カバーユニット
4 表示デバイス
5 ウインドシールド
3a ミラー部(可動部)
3b インパネカバー部(可動部)
3c ベセル部(可動部)
3d 固定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の表示像を表示出力する表示デバイスと、
前記表示像をウインドシールド側に反射させるミラー部と、
インストルメントパネルに埋設され、前記表示デバイス及び前記ミラー部を収容する収容部と、
前記収容部の開口部を覆うインパネカバー部と、を備え、
前記ミラー部と前記インパネカバー部とを可動部として一体化し、
前記可動部を、使用時には起立し、不使用時には前記収容部の開口部を覆うように、起伏動作可能にした、
ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項2】
請求項1記載のヘッドアップディスプレイ装置において、
前記可動部の前記使用時から前記不使用時への動作及びその逆の動作にともなって、前記可動部の下端が前記収容部の内壁に沿って徐々に上方及び下方にそれぞれ移動するように、前記可動部と前記収容部側とを連結するリンク機構、
を備えることを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項3】
請求項2記載のヘッドアップディスプレイ装置において、
前記リンク機構は、
前記動作にともなって、前記可動部の下端を前記収容部の内壁に沿って徐々に上方に移動させ、その上端を前記開口部の上方で弧を描くように移動させる、円弧型及びV字型のガイド溝と、これらガイド溝を移動するガイドピンと、を含む、
ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項4】
請求項3記載のヘッドアップディスプレイ装置において、
前記ガイドピンは、前記可動部側に設けられ、
前記ガイド溝は、前記収容部側に設けられている、
ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のヘッドアップディスプレイ装置において、
前記収容部は、
前記内壁の裏側に前記インストルメントパネル内に配置すべき部材が配置可能なスペースを確保して、前記インストルメントパネルに埋設されている、
ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載のヘッドアップディスプレイ装置において、
前記可動部に一体化された、運転席に着座したドライバーのアイレンジの高低に応じて、前記使用時における前記ミラー部の前記アイレンジに対する角度を調整可能なアイレンジ調整機構、
を更に備えることを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項7】
インストルメントパネルに埋設され、所定の表示像を表示出力する表示デバイスを収容する収容部を備えるヘッドアップディスプレイ装置に用いられ、
前記表示像をウインドシールド側に反射させるミラー部と前記収容部の開口部を覆うインパネカバー部とが一体化されて構成されて、使用時には起立され不使用時には前記収容部の開口部を覆うように倒置される可動部と、
前記可動部の駆動機構を含むと共に前記収容部の平面状の内壁に固定される固定部と、
を備えることを特徴とするミラー一体カバーユニット。
【請求項8】
請求項7記載のミラー一体カバーユニットにおいて、
前記可動部の前記使用時から前記不使用時への移行及びその逆の移行にともなって、前記可動部の下端が前記収容部の内壁に沿って徐々に上方及び下方にそれぞれ移動するように、前記可動部と前記固定部とを連結するリンク機構、
を備えることを特徴とするミラー一体カバーユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−36018(P2006−36018A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−218784(P2004−218784)
【出願日】平成16年7月27日(2004.7.27)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】