説明

ベルト駆動装置及び画像形成装置

【課題】周回駆動される無端のベルト部材の端に接触し、ベルト部材の幅方向の移動に伴って移動する移動部材を有するベルト位置検出装置を備えた画像形成装置において、ベルト部材を交換する際、交換後のベルト部材がベルト位置検出装置の移動部材に乗り上げた状態で装着されるのを抑制する技術を提供すること。
【解決手段】画像形成装置(10)は、周回駆動される無端のベルト部材(141)を有するベルトモジュール(140)と、ベルトモジュールに設けられたベルト位置検出手段(200)であって、ベルト部材の端に接触して当該ベルト部材の幅方向の移動に伴って移動する移動部材(202)を有し、当該移動部材の移動量に応じてベルト部材の幅方向の位置を検出するベルト位置検出手段と、ベルト部材の交換のための準備動作に連動して、移動部材をベルト部材の端から離れる方向に移動させる移動機構(300)とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト駆動装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
中間転写ベルト等のベルト部材を有するベルト駆動装置を備えた画像形成装置において、このベルト部材の蛇行(又は斜行)を補正する技術が知られている。例えば、特許文献1には、トナー像を搬送する搬送ベルト(中間転写ベルト)の位置変動を検出するベルト位置検出装置と、ベルト位置検出装置の出力に基づいて搬送ベルトの位置を修正する位置修正装置とを有する画像形成装置が記載されている。この位置検出装置は、搬送ベルトの側端部に押圧され、搬送ベルトがトナー像の搬送方向と垂直方向に移動すると搬送ベルトの移動に倣って移動する移動部材を有し、この移動部材の位置を検出することによって、搬送ベルトの位置を検出する。
【0003】
特許文献2には、中間転写ベルトの幅方向の端部に当接し、中間転写ベルトの幅方向の位置に応じて変位する接触子と、接触子の位置を検知する変位センサが設けられ、変位センサの検知結果に基づき、中間転写ベルトの幅方向の位置を制御する画像形成装置において、中間転写ベルトが交換されたことに応じて、中間転写ベルトを幅方向かつ接触子から離れる方向に移動させる技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−249145号公報
【特許文献2】特開2010−145654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、周回駆動される無端のベルト部材の端に接触し、ベルト部材の幅方向の移動に伴って移動する移動部材を有してベルト部材の幅方向の位置を検出するベルト位置検出装置を備えたベルト駆動装置において、ベルト部材を交換する際、交換後のベルト部材がベルト位置検出装置の移動部材に乗り上げた状態で装着されるのを抑制する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するため、本願の請求項1に係るベルト駆動装置は、複数のベルト支持部材に支持されて周回駆動される無端のベルト部材を有するベルトモジュールと、前記ベルトモジュールに設けられたベルト位置検出手段であって、前記ベルト部材の端に接触して当該ベルト部材の幅方向の移動に伴って移動する移動部材を有し、当該移動部材の移動量に応じて前記ベルト部材の幅方向の位置を検出するベルト位置検出手段と、前記ベルトモジュールの前記ベルト部材の交換のための準備動作に連動して、前記ベルト位置検出手段の前記移動部材を前記ベルト部材の端から離れる方向に移動させる移動機構とを有する。
【0007】
本願の請求項2に係るベルト駆動装置は、請求項1に記載の態様において、前記ベルト部材の交換のための準備動作は、前記ベルトモジュールを前記ベルト部材の交換が可能な位置であるベルト交換位置へ移動させる動作であることを特徴とする。
【0008】
本願の請求項3に係るベルト駆動装置は、請求項2に記載の態様において、前記ベルトモジュールを収容する筐体と、前記ベルトモジュールを前記筐体から引出し可能に支持するモジュール支持手段とを有し、前記ベルト交換位置は、前記ベルトモジュールが前記筐体から引出された後、当該ベルトモジュールの引出し方向における下流側が上流側に対して持上げられた状態となる位置であることを特徴とする。
【0009】
本願の請求項4に係るベルト駆動装置は、請求項3に記載の態様において、前記移動機構は、前記モジュール支持手段に固定された固定部材と、前記ベルトモジュールに固定された支持体と、前記支持体に回転可能に支持される軸部と、前記軸部の一端から前記移動部材から離れる方向に延びる第1アームと、前記軸部の他端から前記移動部材に向かう方向に延びる第2アームとを有するレバーとを有し、前記ベルトモジュールを前記ベルト交換位置に移動させたとき、前記レバーの前記第1アームが前記固定部材に押し当てられることで、前記レバーが前記軸部を中心に回転し、前記レバーの前記第2アームが前記移動部材に引っ掛かり、前記移動部材を前記ベルト部材の端から離れる方向に移動させ、前記第1アームの前記固定部材に押し当てられる部分から前記軸部までの距離は、前記第2アームの前記移動部材に引っ掛かる部分から前記軸部までの距離より長いことを特徴とする。
【0010】
本願の請求項5に係る画像形成装置は、画像を形成する画像形成部と、請求項1から4のいずれかに記載のベルト駆動装置とを有し、前記ベルト部材は、前記画像形成部により形成された前記画像または前記画像が転写された用紙を搬送することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1及び5に記載の構成によれば、ベルト部材の交換のための準備動作に連動して、ベルト位置検出手段の移動部材をベルト部材の端から離れる方向に移動させる移動機構を有さない場合と比べて、ベルト部材を交換する際、交換後のベルト部材がベルト位置検出装置の移動部材に乗り上げた状態で装着されるのを抑制することができる。
【0012】
請求項2に記載の構成によれば、ベルトモジュールがベルト交換位置にあるとき、ベルト位置検出手段の移動部材をベルト部材の端から離れる方向に移動させることができる。
【0013】
請求項3に記載の構成によれば、ベルトモジュールの引出し方向における下流側を上流側に対して持上げない場合と比べて、ベルト交換作業が容易である。
【0014】
請求項4に記載の構成によれば、第1アームの固定部材に押し当てられる部分から軸部までの距離が、第2アームの移動部材に引っ掛かる部分から軸部までの距離より長くない場合と比べて、移動部材を容易にベルト部材の端から離れる方向に移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の構成を模式的に示す図である。
【図2】ベルト位置検出装置の構成を示す模式図である。
【図3】ベルトモジュールにおける中間転写ベルトとベルト位置検出装置の関係を示す斜視図である。
【図4】ベルトモジュールの筐体からの引出し及びベルト交換位置への移動を示す図である。
【図5】退避機構をベルトモジュール及びモジュール支持部と共に示す斜視図である。
【図6】退避機構のレバー及び支持体を示す斜視図である。
【図7】ベルトモジュールのベルト交換位置への移動に対する退避機構の動きを模式的に示す図である。
【図8】ベルトモジュールのベルト交換位置への移動に対する第2アームの端部と接触部の位置関係を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[実施形態]
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係る画像形成装置10の構成を模式的に示す図であり、前側から見た画像形成装置10を示している。説明の便宜上、図1において、左右方向をX軸方向、前後方向をY軸方向、上下方向をZ軸方向とする。また、画像形成装置10の左方向をX(+)方向、右方向をX(−)方向、画像形成装置10の後方向をY(+)方向、前方向をY(−)方向、及び、画像形成装置10の上方向をZ(+)方向、下方向をZ(−)方向と呼ぶ。
【0018】
本実施形態の画像形成装置10は、電子写真方式のプリンタであり、同図に示すように、給紙部110と、複数の感光体ユニット120Y、120M、120C、120Kと、露光部130と、ベルトモジュール140と、定着部150と、ベルト位置検出装置200とを備える。なお、給紙部110、感光体ユニット120Y、120M、120C、120K、露光部130、ベルトモジュール140及び定着部150は、図面の前後方向(Y軸方向)に、記録媒体のサイズに応じた幅を有している。
【0019】
給紙部110は、収容した記録媒体を供給する。ここで、記録媒体とは、画像形成装置10により画像が形成されるシート状の媒体をいい、例えば、いわゆる用紙である。記録媒体のサイズや材質は、画像形成装置10に応じたものであれば、特に限定されない。給紙部110から供給された記録媒体は、図中の破線の矢印が示す経路で搬送され、画像が形成されて排出される。
【0020】
感光体ユニット120Y、120M、120C、120Kは、それぞれ、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色に対応するものであり、各色のトナーによる像(以下、「トナー像」という。)の形成及び保持に用いられる。これら感光体ユニット120Y、120M、120C、120Kは、中間転写ベルト141の周回方向に対して上流側から下流側に向けて感光体ユニット120Y、120M、120C、120Kの順に配置される。ここで、「下流側」は、換言すれば、後述する二次転写が行われる位置に近い側である。感光体ユニット120Y、120M、120C、120Kは、回転するロール状の感光体ドラム、帯電器、現像器などをそれぞれ備える。感光体ドラムは、表面に光導電層が形成された円筒状の部材であり、帯電された光導電層に形成された静電潜像や、静電潜像の現像により形成されたトナー像を保持する。各色の感光体ドラムは、それぞれが相異なる位置において中間転写ベルト141と接触する。
【0021】
なお、以下において、感光体ユニット120Y、120M、120C、120Kのそれぞれを区別する必要がない場合には、これらを総称して「感光体ユニット120」という。感光体ユニット120は、画像形成装置10に対して着脱され、交換可能な構成であってもよい。感光体ユニット120は、本発明に係る画像形成部の一例である。
【0022】
露光部130は、感光体ユニット120のそれぞれに光を照射し、光導電層に電位差を生じさせて静電潜像を形成する。本実施形態においては、露光部130と感光体ユニット120の現像器とが協働することにより、感光体ドラムにトナー像を形成する手段が実現されている。尚、露光部130が感光体ドラムを1ラインずつ走査する方向を主走査方向といい、本例では、主走査方向は中間転写ベルト141の幅方向(Y軸方向)と一致する。
【0023】
ベルトモジュール140は、中間転写ベルト141と、複数の一次転写ロール142Y、142M、142C、142Kと、複数の支持ロール143、144、145、146、147と、二次転写ロール148とを備える。中間転写ベルト141は、感光体ユニット120により形成された各色のトナー像が転写され、転写されたトナー像を搬送する無端のベルト部材である。中間転写ベルト141は、支持ロール143〜147によって張力をもって支持され、図中の矢印Aの方向に回転する。一次転写ロール142Y、142M、142C、142Kは、感光体ユニット120Y、120M、120C、120Kに対応し、対向する感光体ドラムに形成されたトナー像を中間転写ベルト141に転写する。この転写(一次転写)は、電位差を利用して行われる。支持ロール143〜147は、本発明に係るベルト支持部材の一例であり、中間転写ベルト141を回転可能な状態で支持するロール状の部材である。支持ロール143〜147の少なくともいずれかは、図示せぬ駆動手段により駆動力を与えられて回転し、中間転写ベルト141を回転させる。二次転写ロール148は、中間転写ベルト141と対向してニップ領域(トナーや記録媒体を挟み込む領域)を形成し、中間転写ベルト141に転写されたトナー像をこのニップ領域において記録媒体に転写する。この転写(二次転写)も、一次転写と同様に、電位差を利用して行われる。
【0024】
定着部150は、対向する1対の部材によって記録媒体を加熱及び加圧し、記録媒体に転写されたトナー像を定着させる。記録媒体は、各色のトナー像が重ねられた状態で定着されることによって、使用者が視認可能な画像が形成された状態となり、排出される。
【0025】
ベルト位置検出装置200は、ベルトモジュール140の予め決められた位置に設けられ、中間転写ベルト141の周回方向と垂直な方向の位置変動(図のY軸方向の位置変動)を検出する。本例では、ベルト位置検出装置200は、感光体ユニット120Mと感光体ユニット120Yとの間の位置において、中間転写ベルト141の奥側(Y(+)側)に配置され、中間転写ベルト141の上側走行部分の端の位置変動を検出する。
【0026】
図2は、ベルト位置検出装置200の構成の一例を示す模式図であり、ベルト位置検出装置200を中間転写ベルト141の端部とともに示している。この例において、ベルト位置検出装置200は、装置本体201と、装置本体201によって支点205を中心に回転可能に支持された移動部材202と、移動部材202の位置変動を検出する検出部を構成する発光部206及び受光部207とを有する。装置本体201の移動部材202に向いた側には凹部201Aが形成され、発光部206と受光部207はこの凹部201A内において互いに対向して配置されている。移動部材202の一端部は中間転写ベルト141の端に接触する接触部203として機能する。移動部材202はばね部材208によって図2の矢印a方向(反時計回り)に付勢され、それによって接触部203は中間転写ベルト141に押しつけられた状態で接触している。移動部材202の他端部は装置本体201の凹部201A内へと延び、遮光部204をなしている。即ち、凹部201A内に設けられた発光部206から受光部207に向けて照射される光の一部は遮光部204によって遮られ、遮られなかった光が受光部207によって受光される。このような構成において、中間転写ベルト141の端の幅方向の位置が変動すると、移動部材202の接触部203が支点205を中心に矢印a、b方向に移動し、それに応じて遮光部204によって遮られる光量が変化し、受光部207の受光量が変化する。即ち、ベルト位置検出装置200は、中間転写ベルト141の端の位置の変動を、受光部207の受光量の変化として検出する。
【0027】
また、移動部材202はばね部材208によって接触部203が矢印a方向に付勢されるようになっているため、例えば交換のため中間転写ベルト141がベルトモジュール140から取り外されたとき、後述する退避機構300が備えられていない場合には、接触部203は矢印a方向に倒れこむことになる。接触部203は矢印a方向に倒れこんだ状態で交換用の中間転写ベルト141をベルトモジュール140に装着すると、中間転写ベルト141が接触部203上に乗り上げる恐れがある。なお、図2においては、ばね部材208をコイルばねとして記載したが、接触部203を矢印a方向に付勢するばねであれば、どのような形状であってもよく、例えば、捩りばねであってもよい。
【0028】
図3は、ベルトモジュール140における中間転写ベルト141とベルト位置検出装置200の関係を示す斜視図である。図3に示すように、ベルト位置検出装置200は、ベルトモジュール140の側面をなす板体140Aの内側面(中間転写ベルト141側に向いた面)に取り付けられ、中間転写ベルト141の端にベルト位置検出装置200の接触部203(移動部材202)が接触する。また、接触部203の上端部は、板体140Aの上端よりも上に突出している。ベルト位置検出装置200は、その装置本体201が板体140Aにネジ止め等の手段によって固定される。尚、図3においては、中間転写ベルト141とベルト位置検出装置200の関係を明示するため、後述する退避機構300の図示は省略している。
【0029】
図4は、ベルトモジュール140の画像形成装置10の筐体1からの引出し及びベルト交換位置への移動を示す図である。図4(a)は、ベルトモジュール140を画像形成装置10の筐体1から引出した状態を示し、図4(b)は、ベルトモジュール140を筐体1から引出した後、ベルト交換位置へ移動させた状態を示す。
【0030】
図示されているように、画像形成装置10の外形をなす筐体1は、左右、前後、上下(X、Y、Z軸)方向に延びるフレーム構造2を有する。このフレーム構造2のうち、高さ方向(Z軸)の中間部分に位置して画像形成装置10の前後方向(Y軸方向)に延びる梁部3は、ベルトモジュール140を支持するモジュール支持部4が矢印P方向(この例では、画像形成装置10の前方向)及びその逆方向へスライド式に移動可能なように支持し、モジュール支持部4と共に引出機構を形成する。モジュール支持部4は、矢印P方向に引き出された後に、ベルトモジュール140の引出し方向に関する下流側(Y(−)側)を矢印U方向に移動させる持上げ機構を有する。
【0031】
通常動作時、ベルトモジュール140はモジュール支持部4と共に筐体1内に収容されている(このときのベルトモジュール140の位置を収容位置という)。中間転写ベルト141の交換をする際、図4(a)に示すように、ベルトモジュール140及びモジュール支持部4は矢印Pの方向に移動されて筐体1から引き出され(このときのベルトモジュール140の位置を引出位置という)、更に、図4(b)に示すように、ベルトモジュール140は、持上げ機構によって引出し方向における下流側(本例では、前側)が上流側に対して持上げられ、姿勢変更される。本実施形態では、このベルトモジュール140の前側を持上げた状態(即ち、ベルトモジュール140を後側に傾けた状態)で、中間転写ベルト141の交換(脱着)が可能となる。中間転写ベルト141の交換が可能なベルトモジュール140の位置をベルト交換位置といい、図4(b)に示したベルトモジュール140の位置はベルト交換位置の一例である。尚、ベルトモジュール140の前側を持ち上げる持上げ機構は、中間転写ベルト141の交換を行う作業員が操作可能なものであってよい。
【0032】
図5は、本発明の実施形態に係る退避機構300を、ベルトモジュール140及びモジュール支持部4と共に示す斜視図である。図5(a)は、引出位置における退避機構300、ベルトモジュール140及びモジュール支持部4を示し、図5(b)はベルト交換位置における退避機構300、ベルトモジュール140及びモジュール支持部4を示す。尚、収容位置と引出位置との間で移動するとき、ベルトモジュール140とモジュール支持部4は一体に移動され、それらの相対位置は変化しないので、図5(a)は収容位置における退避機構300、ベルトモジュール140及びモジュール支持部4を示していると言うこともできる。退避機構300は、中間転写ベルト141の交換の際、ベルト位置検出装置200の接触部203(移動部材202)を退避位置に移動させる。
【0033】
図5に示すように、退避機構300は、レバー301、支持体305および固定板310を有する。支持体305は、ベルトモジュール140の側面をなす板体140Aの外側面(中間転写ベルト141から離れる方向に向いた面)にネジ止め等により固定され、後述するレバー301の軸部302を回転可能に支持する。固定板310は、モジュール支持部4に固定されZ軸方向に延びる板体である。レバー301は、図6の斜視図に示すように、支持体305に回転可能に支持された状態でX軸方向に延びる軸部302と、軸部302の一端から移動部材202から離れる方向に延びる第1アーム303と、軸部302の他端から移動部材202に向かう方向に延びる第2アーム304とを有する。より詳細には、第1アーム303は、軸部302の一端から下方(Z(−)方向)且つ後方(Y(+)方向)に延びた後、更に折れ曲がって下方に延びている。第2アーム304は、軸部302の他端から上方(Z(+)方向)に延びた後、折れ曲がって板体140Aを越えて前方(Y(−)方向)に延びている。第1アーム303の端部は、後述するように、ベルトモジュール140をベルト交換位置に移動したとき(ベルト部材の交換のための準備動作の一例)に、固定板310に押し当たる。第2アーム304の端部は、ベルト位置検出装置200の接触部203の前側(Y(−)側)においてX軸方向に延び、ベルトモジュール140が引出位置(または収容位置)にあるときは(図5(a))、接触部203からY軸方向に離れて位置する。レバー301の軸部302および支持体305には、レバー301を図6の矢印Rで示す方向に付勢する捩りばね306が設けられている。ベルトモジュール140が引出位置(または収容位置)にあるときは(図5(a))、レバー301の第2アーム304の垂直方向延在部分が板体140Aに当たり、レバー301のR方向の回転が規制されている。
【0034】
ベルトモジュール140を引出位置からベルト交換位置に移動させるべく、当該ベルトモジュール140をモジュール支持部4に対し矢印U方向に傾けると(図5(b))、ベルトモジュール140の板体140Aに設けられたレバー301も共に移動し、その結果、レバー301の第1アーム303の端部が固定板310に当たる。それにより、レバー301が軸部302を中心に回転し、レバー301の第2アーム304の端部は、捩りばね306の付勢力に抗して矢印Rの逆方向(図8の矢印S方向)に移動する。その際、第2アーム304の端部は、ベルト位置検出装置200の接触部203(移動部材202)に引っ掛かり、接触部203を退避位置へと移動させる。尚、梃子の原理で、接触部203を移動し易くするため、固定板310に当たる第1アーム303の端部から軸部302までの距離は、接触部203に引っ掛かる第2アーム304の端部から軸部302までの距離より長くなっている。
【0035】
上記した退避機構300の動作について、図7および図8を参照しつつ更に詳細に説明する。図7はベルトモジュール140のベルト交換位置への移動に対する退避機構300の動作を模式的に示した図であり、図8はベルトモジュール140のベルト交換位置への移動に対する第2アーム304の端部とベルト位置検出装置200の接触部203の位置関係を模式的に示す図である。
【0036】
図7(a)はベルトモジュール140を筐体1から引出した引出位置での状態を、図7(b)はベルトモジュール140をベルト交換位置に移動させる途中で、固定板310がレバー300の第1アーム303に当たった状態を、図7(c)はベルトモジュール140をベルト交換位置まで移動した状態をそれぞれ示している。図8(a)〜図8(c)は図7(a)〜図7(c)にそれぞれ対応している。また、これらの図において、中間転写ベルト141は、幅方向にずれていないニュートラル位置にあるものとする。
【0037】
ベルトモジュール140が引出位置にあるとき、固定板310と第1アーム303の端部とは離れており、退避機構300はベルト位置検出装置200に作用していない。つまり、図8(a)に示すように、退避機構300の第2アーム304の端部と接触部203とは隙間Δaだけ離れている。尚、上述したように、引出位置と収容位置とではベルトモジュール140とモジュール支持部4の相対的な位置関係は変化しないので、ベルトモジュール140の収容位置においても、この隙間Δaは保たれる。従って、収容位置において、中間転写ベルト141がニュートラル位置からY(−)方向に移動しても、隙間Δaの範囲内であれば、退避機構300はベルト位置検出装置200の接触部203(移動部材202)の移動に干渉せず、ベルト位置検出の邪魔をしない。
【0038】
前述した如く、ベルトモジュール140を筐体1から引出した後に、当該ベルトモジュール140を矢印U方向に移動させて交換位置に移動させる際、ベルトモジュール140に設けられたレバー301も共に移動する。この移動によって、レバー301の第1アーム303の端部が固定板310に押し当てられ、レバー301が支持体305によって支持された軸部302を中心に矢印Sの方向に回転し、図7(b)及び図8(b)に示すように、レバー301の第2アーム304が接触部203に到達する。
【0039】
さらに、ベルトモジュール140を傾けてベルト交換位置まで移動させると、図7(c)及び図8(c)に示すように、レバー301が軸部302を中心にさらに矢印Sの方向に回転する。その結果、レバー301の第2アーム304の端部が接触部203に引っ掛かり、接触部203を支点205を中心に中間転写ベルト141の端から離れる方向に(図の時計周り)回転移動させる。これにより、接触部203とニュートラル位置にある中間転写ベルト141の端との間には隙間Δbが形成される。図7(c)及び図8(c)に示した接触部203(移動部材202)の位置を退避位置という。ベルトモジュール140がベルト交換位置にある間、レバー301の第1アーム303の端部がモジュール支持部4の固定板310に押し当てられた状態が維持される。従って、退避機構300は、ベルトモジュール140がベルト交換位置にある間、接触部203(移動部材202)を、退避位置に保持する。
【0040】
このように、本実施形態によれば、ベルトモジュール140をベルト交換位置に移動させる動作に連動して、退避機構300は、接触部203(移動部材202)を退避位置に移動させ、ニュートラル位置にある中間転写ベルト141と接触部203(移動部材202)との間に隙間Δbが自動的に形成される。この隙間Δbは、ベルト交換作業中(即ち、ベルトモジュール140がベルト交換位置にある間)保たれるので、中間転写ベルト141を交換する際に、交換後の中間転写ベルト141がベルト位置検出装置200の接触部203に乗り上げた状態で装着されるのが抑制される。
【0041】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、上述した実施形態を以下のように変形してもよい。また、以下の変形例を組み合わせてもよい。
【0042】
(変形例1)
上述した実施形態では、ベルト部材は、感光体ユニットにより形成された各色のトナー像が転写され、転写されたトナー像を搬送する中間転写ベルトであった。しかしながら、本発明はこれに限定されない。例えば、ベルト部材は、トナー像が転写された記録媒体を搬送してもよく、ベルト部材がそれを支持する支持ロール等と共にモジュール化され、交換可能であればよい。
【0043】
(変形例2)
上述した実施形態では、退避機構300は、ベルトモジュール140を筐体から引出した後、引出し方向における下流側を上流側に対し持上げて傾ける動作(即ち、引出位置からベルト交換位置に移動させる動作)に連動して、ベルト位置検出装置200の移動部材202を退避位置へ移動させた。しかしながら、本発明はこれに限定されない。退避機構300は、ベルト部材の交換のための別の準備動作に連動して、移動部材202を退避位置へ移動させるものでもよい。例えば、退避機構300は、ベルトモジュール140を筐体1から引出す動作に連動して、移動部材202を退避位置へ移動させるものであってもよい。あるいは、退避機構300は、中間転写ベルト141の交換前に、中間転写ベルト141の張力を弱めるべく、中間転写ベルト141を支持する支持ロールの少なくとも一つを内側に移動させる動作に連動して、移動部材202を退避位置へ移動させるものでもよい。ベルトモジュール140をベルト交換位置に移動させるために、ベルトモジュール140の前側を持上げて傾ける動作に加えて、またはそれとは別に、他の姿勢変更動作を行う場合、退避機構300は、ベルトモジュール140の他の姿勢変更動作に連動して、移動部材202を退避位置へ移動させてもよい。要は、ベルト部材の交換時に、移動部材202が退避位置へ移動されていればよい。
【0044】
(変形例3)
上記実施形態では、画像形成装置1をプリンタとして説明したが、画像形成装置1はコピー機でもよい。その場合、画像形成装置1は画像読取部(スキャナ)を有し、画像読取部は読み取った画像から画像データを生成し、画像データ取得部に送る。画像形成装置1は、プリンタの機能だけでなく、ファクシミリ通信やスキャナの機能を兼備するものでもよい。
【0045】
(変形例4)
上記実施形態では、筐体1からベルトモジュール140を画像形成装置10の前方へ引出したが、本発明はこれに限定されない。ベルトモジュール140を画像形成装置10の背面側に引出す構成でもよい。
【符号の説明】
【0046】
1…筐体、2…フレーム構造、3…梁部、4…モジュール支持部、10…画像形成装置、110…給紙部、120Y、120M、120C、120K…感光体ユニット、130…露光部、140…ベルトモジュール、140A…板体、141…中間転写ベルト、142Y、142M、142C、142K…一次転写ロール、143、144、145、146、147…支持ロール、148…二次転写ロール、150…定着部、200…ベルト位置検出装置、201…ベルト位置検出装置本体、201A…凹部、202…移動部材、203…接触部、204…遮光部、205…支点、206…発光部、207…受光部、208…ばね部材、300…退避機構、301…レバー、302…軸部、303…第1アーム、304…第2アーム、305…支持体、306…捩りばね、310…固定板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のベルト支持部材に支持されて周回駆動される無端のベルト部材を有するベルトモジュールと、
前記ベルトモジュールに設けられたベルト位置検出手段であって、前記ベルト部材の端に接触して当該ベルト部材の幅方向の移動に伴って移動する移動部材を有し、当該移動部材の移動量に応じて前記ベルト部材の幅方向の位置を検出するベルト位置検出手段と、
前記ベルトモジュールの前記ベルト部材の交換のための準備動作に連動して、前記ベルト位置検出手段の前記移動部材を前記ベルト部材の端から離れる方向に移動させる移動機構と
を有するベルト駆動装置。
【請求項2】
前記ベルト部材の交換のための準備動作は、前記ベルトモジュールを前記ベルト部材の交換が可能な位置であるベルト交換位置へ移動させる動作であることを特徴とする請求項1に記載のベルト駆動装置。
【請求項3】
前記ベルトモジュールを収容する筐体と、
前記ベルトモジュールを前記筐体から引出し可能に支持するモジュール支持手段とを有し、
前記ベルト交換位置は、前記ベルトモジュールが前記筐体から引出された後、当該ベルトモジュールの引出し方向における下流側が上流側に対して持上げられた状態となる位置であることを特徴とする請求項2に記載のベルト駆動装置。
【請求項4】
前記移動機構は、前記モジュール支持手段に固定された固定部材と、
前記ベルトモジュールに固定された支持体と、
前記支持体に回転可能に支持される軸部と、前記軸部の一端から前記移動部材から離れる方向に延びる第1アームと、前記軸部の他端から前記移動部材に向かう方向に延びる第2アームとを有するレバーと
を有し、
前記ベルトモジュールを前記ベルト交換位置に移動させたとき、前記レバーの前記第1アームが前記固定部材に押し当てられることで、前記レバーが前記軸部を中心に回転し、前記レバーの前記第2アームが前記移動部材に引っ掛かり、前記移動部材を前記ベルト部材の端から離れる方向に移動させ、
前記第1アームの前記固定部材に押し当てられる部分から前記軸部までの距離は、前記第2アームの前記移動部材に引っ掛かる部分から前記軸部までの距離より長いことを特徴とする請求項3に記載のベルト駆動装置。
【請求項5】
画像を形成する画像形成部と、
請求項1から4のいずれかに記載のベルト駆動装置とを有し、
前記ベルト部材は、前記画像形成部により形成された前記画像または前記画像が転写された用紙を搬送する画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−25227(P2013−25227A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161945(P2011−161945)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】