ペーストの表裏同時塗工方法および装置
【課題】箔に対してペーストの両面同時塗工を行う場合において、塗工部に導入される箔の位置決め精度を向上させて塗工精度を向上させると同時に、両面同時塗工後の箔を安定して搬送することにより、両面同時塗工による塗工品質の確保を可能とする技術を提供する。
【解決手段】一対の表面塗工用ダイ3および裏面塗工用ダイ4の箔搬入側に備える箔規制手段たる表面側ガイドローラ5および裏面側ガイドローラ6により、表面塗工用ダイ3と箔との距離と、裏面塗工用ダイ4と箔との距離が均等となるように箔を保持して、かつ、一対の塗工用ダイ3・4の箔搬出側に備える張力付与手段たるテンションローラ7により、ペースト塗工後の箔に弛みが生じないように張力を付与する構成とする。
【解決手段】一対の表面塗工用ダイ3および裏面塗工用ダイ4の箔搬入側に備える箔規制手段たる表面側ガイドローラ5および裏面側ガイドローラ6により、表面塗工用ダイ3と箔との距離と、裏面塗工用ダイ4と箔との距離が均等となるように箔を保持して、かつ、一対の塗工用ダイ3・4の箔搬出側に備える張力付与手段たるテンションローラ7により、ペースト塗工後の箔に弛みが生じないように張力を付与する構成とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペーストを箔の表裏に同時塗工するための技術に関し、より詳しくは、同時塗工する場合の塗工品質を向上させるための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来電池用電極の製造等において、電極箔の表裏両面にペーストの塗工をする方法としては、まず電極箔の表面か裏面のいずれか一方の面に対してペーストを塗工し、次に一回目の乾燥工程として乾燥炉によってペーストを乾燥させた後に、再度他方の面にペーストを塗工し、さらに二回目の乾燥工程として乾燥炉によってペーストを乾燥させて箔の表裏両面にペーストを塗工する技術が一般的に良く知られている。しかしながら、この方法では、二回の乾燥工程を経る必要があるため、塗工設備のラインが長くなってしまうという問題点があった。
また、箔の表裏両面にペーストの塗工をする場合には、ペーストの塗工直後には表裏いずれの面にもローラを接触させることができないため、安定した箔の搬送を行うことが困難となる問題点があった。
【0003】
塗工設備のライン長を短縮するべく乾燥工程を一回で済ませるためには、箔の表裏両面に対してペーストを同時に塗工することが有効であり、ペーストの表裏同時塗工に関する種々の技術が検討・開発されており公知となっている。
例えば、一対のダイによりペーストを塗工する塗工部の上流部において、対向して配置する一対の弾性シール材を設けて、箔を弾性シール材により形成する隙間を通して塗工部に供給する構成とし、箔のばたつきを防止しつつ、塗工部の気密性を確保してペーストの劣化(酸化)等を防止して、塗工品質の向上を可能とする技術が開示されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開平9−94509号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術においては、弾性シール材によって箔の位置決めをする構成としており、シール材が弾性変形する範囲では箔が変位することが可能であった。つまり、箔が塗工部に対して、いずれか一方のダイ(表側用または裏側用)に偏って導入される可能性があるため、塗工部に搬入される箔の位置決め精度を確保することが困難であり、これにより、塗工品質を確保することも困難であった。
【0005】
また、塗工品質を確保するためには、塗工精度の確保のみならず、塗工後において、塗工面を傷めないように搬送を行う必要がある。つまり、ペースト塗工後の箔搬送において、特に、乾燥工程に至るまでの搬送経路上で、塗工面を傷めないように搬送することが必要となるが、箔の両面にペーストを塗工した直後には、通常の搬送ローラを表裏いずれの面にも接触させることができず、両面塗工直後の箔を安定して搬送することが困難であった。
【0006】
例えば、従来箔の左右両端に未塗工部を残すようにしてペーストを塗工し、当該左右の未塗工部をクランプやローラによって挟持しつつ、塗工面を傷めないようにして箔の搬送を行う技術が一般的に広く用いられているが、従来のクランプやローラを用いた方法では、箔に対して均等に張力を付与することが困難であり、搬送中の箔にしわや弛みが生じることを完全には防止できず、これにより、挟持部が塗工面に接触することはないが、搬送中に塗工面を傷めてしまう可能性があった。
本発明は、係る現状を鑑みて成されたものであり、箔に対してペーストの両面同時塗工を行う場合において、塗工部に導入される箔の位置決め精度を向上させて塗工精度を向上させると同時に、両面同時塗工後の箔を安定して搬送することにより、両面同時塗工による塗工品質の確保を可能とする技術を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、表面塗工用ダイと裏面塗工用ダイからなる一対の塗工用ダイを対向させて配置し、該一対の塗工用ダイの隙間を通過させる箔の表裏に対して、ペーストを同時に塗工するペーストの表裏同時塗工方法であって、前記一対の塗工用ダイの箔搬入側に備える箔規制手段により、前記表面塗工用ダイと前記箔との距離と、前記裏面塗工用ダイと前記箔との距離が均等となるように前記箔を保持して、かつ、前記一対の塗工用ダイの箔搬出側に備える張力付与手段により、ペースト塗工後の前記箔に弛みが生じないように張力を付与する、ことを特徴としたものである。
【0009】
請求項2においては、前記箔規制手段は、前記表面塗工用ダイに一体的に形成される表面側ガイドローラと、前記裏面塗工用ダイに一体的に形成される裏面側ガイドローラからなる、ことを特徴としたものである。
【0010】
請求項3においては、前記張力付与手段は、前記箔の搬送方向に対して左右に形成される未塗工縁部を挟持する一対のテンションローラからなる、ことを特徴としたものである。
【0011】
請求項4においては、前記テンションローラは、複数のローラ部材からなり、各ローラ部材を前記箔の搬送方向に対して平行となる方向に略等間隔に配置しつつ、前記箔の搬送方向と前記ローラ部材の回転軸が成す角度が90度以下となる範囲で、前記箔の搬送方向下流側に向けて漸次拡大するように前記ローラ部材を配置する、ことを特徴としたものである。
【0012】
請求項5においては、前記テンションローラを構成する前記複数のローラ部材は、リンク機構を介して連結され、前記リンク機構により、前記箔の搬送方向と前記各ローラ部材の回転軸が成す角度を調整可能とする、ことを特徴としたものである。
【0013】
請求項6においては、互いに対向配置される表面塗工用ダイと裏面塗工用ダイからなる一対の塗工用ダイを備え、該一対の塗工用ダイの隙間を通過させる箔の表裏に対して、ペーストを同時に塗工するペーストの表裏同時塗工装置であって、前記一対の塗工用ダイの箔搬入側に配置され、前記表面塗工用ダイと前記箔との距離と、前記裏面塗工用ダイと前記箔との距離が均等となるように前記箔を保持する箔規制手段と、前記一対の塗工用ダイの箔搬出側に配置され、ペースト塗工後の前記箔に弛みが生じないように張力を付与する張力付与手段とを備える、ことを特徴としたものである。
【0014】
請求項7においては、前記箔規制手段は、前記表面塗工用ダイに一体的に形成される表面側ガイドローラと、前記裏面塗工用ダイに一体的に形成される裏面側ガイドローラからなる、ことを特徴としたものである。
【0015】
請求項8においては、前記張力付与手段は、前記箔の搬送方向に対して左右に形成される未塗工縁部を挟持する一対のテンションローラからなる、ことを特徴としたものである。
【0016】
請求項9においては、前記テンションローラは、複数のローラ部材からなり、各ローラ部材を前記箔の搬送方向に対して平行となる方向に略等間隔に配置しつつ、前記箔の搬送方向と前記ローラ部材の回転軸が成す角度が90度以下となる範囲で、前記箔の搬送方向下流側に向けて漸次拡大するように前記ローラ部材を配置する、ことを特徴としたものである。
【0017】
請求項10においては、前記テンションローラを構成する前記複数のローラ部材は、リンク機構を介して連結され、前記リンク機構により、前記箔の搬送方向と前記各ローラ部材の回転軸が成す角度を調整可能とする、ことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0019】
請求項1においては、塗工部の直前にガイドローラを備えることにより、表裏の塗工厚さを均等に揃えることが可能となり、塗工精度の向上に寄与する。また、塗工部の直後のテンションローラを備えることにより、塗工直後に箔に作用する張力の調整を行うことができるため、良好な塗工状態を維持しながら箔の搬送を行うことができる。これにより、箔に対してペーストの両面同時塗工を行う場合の塗工品質を向上させることができる。
【0020】
請求項2においては、容易に表裏の塗工厚さを均等に揃えることが可能となり、塗工精度の向上に寄与することができる。また、塗工厚さの調整を容易にすることができる。
【0021】
請求項3においては、容易に箔に作用する張力の調整を行うことができ、良好な塗工状態を維持しながら箔の搬送を行うことができる。
【0022】
請求項4においては、箔に対して搬送方向下流側に作用する張力と、搬送方向に対する左右方向に作用する張力を付与することができる。
【0023】
請求項5においては、箔に付与する張力の調整を容易にすることができる。
【0024】
請求項6においては、塗工部の直前にガイドローラを備えることにより、表裏の塗工厚さを均等に揃えることが可能となり、塗工精度の向上に寄与する。また、塗工部の直後のテンションローラを備えることにより、塗工直後に箔に作用する張力の調整を行うことができるため、良好な塗工状態を維持しながら箔の搬送を行うことができる。これにより、箔に対してペーストの両面同時塗工を行う場合の塗工品質を向上させることができる。
【0025】
請求項7においては、容易に表裏の塗工厚さを均等に揃えることが可能となり、塗工精度の向上に寄与することができる。また、塗工厚さの調整を容易にすることができる。
【0026】
請求項8においては、容易に箔に作用する張力の調整を行うことができ、良好な塗工状態を維持しながら箔の搬送を行うことができる。
【0027】
請求項9においては、箔に対して搬送方向下流側に作用する張力と、搬送方向に対する左右方向に作用する張力を付与することができる。
【0028】
請求項10においては、箔に付与する張力の調整を容易にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の第一実施例に係る塗工装置の塗工部周辺の構成を示す模式図、図2は同じく斜視図、図3は同じく平面図、図4は本発明の一実施例に係るテンションローラの構成を示す模式図、図5は本発明の第二実施例に係る塗工装置の塗工部周辺の構成を示す模式図、図6は同じく斜視図、図7は同じく塗工厚さの調整状況を示す側面模式図、図8は本発明の一実施例に係るリンク機構の構成を示す模式図、図9は同じくテンションローラを示す模式図、図10は従来の塗工装置に係る両面同時塗工方法を示す模式図、図11は同じく塗工部周辺の構成を示す模式図、図12は従来の両面同時塗工時の搬送方法を示す模式図である。
【0030】
まず始めに、従来の塗工装置の構成について説明をする。
図10(a)に示す如く、従来の塗工装置50においては、箔の両面(表裏)にペーストを塗工する方法として、まず表面塗工用ダイ51により表面にペーストを塗工し、その後第一乾燥炉52によりペーストを乾燥させる。次に裏面塗工用ダイ53により裏面にペーストを塗工し、その後第二乾燥炉54によりペーストを乾燥させる。尚、各乾燥炉52・54内の搬送は、箔に対して鉛直方向略上向きと鉛直方向略下向きに交互に熱風を吹付けることにより、箔を側面視略正弦波形状に蛇行させながら浮上搬送を行って、箔および塗工面に接触すること無く搬送が行われる構成としている。
この方法によれば、表面および裏面の塗工部55・56には、バックアップローラ57・58を設けることができるため、箔に対して精度良くペーストを塗工することが可能であるが、二度の乾燥工程を経る必要があり、塗工ライン長が長くなってしまうという問題点がある。
【0031】
図10(b)に示す如く、また従来の塗工装置60においては、箔の両面(表裏)にペーストを塗工する方法として、まず表面塗工用ダイ61により表面にペーストを塗工し、次に裏面塗工用ダイ62により裏面にペーストを塗工した後に、乾燥炉63によりペーストを乾燥させる方法も採用されている。
この方法によれば、乾燥炉63の上流側で表裏両面に対してペーストの塗工が完了するため乾燥工程を一回で済ませることができる。しかし、表面と裏面の塗工タイミングをずらすと、表面の塗工部66にはバックアップローラ64を設けることができるが、裏面の塗工部67にはバックアップローラ65を設けることができない。このため、図10(c)に示す如く、裏面の塗工部67においては、箔が塗工されるペーストにより押圧されて浮き上がるため、箔の挙動が安定せず、その結果、表面と裏面で塗工面の精度にばらつきが生じてしまい、塗工精度が低下し塗工品質を確保することが困難になるという問題点がある。
【0032】
また、図11(a)に示す如く、従来から表面塗工用ダイ70と裏面塗工用ダイ71を対向させて配置し、箔の両面(表裏)に対して同時にペーストを塗工する構成も採用されているが、各塗工用ダイ70・71に送られる箔の位置を規制する搬送ローラ72と塗工部73の距離が離れており、搬送ローラ72と塗工部73の間では箔の変位を規制することができず、搬送中の箔に振動等が発生すれば、箔と各塗工用ダイ70・71との距離(隙間)を一定に維持することができなかった。
このため、図11(b)に示す如く、各塗工用ダイ70・71による塗工厚さにばらつきが生じてしまい、塗工精度を確保することが困難になるという問題点があった。尚、塗工面の要求品質の条件によっては、このような塗工精度のばらつきが問題とはならない場合もあり、係る場合には、図11(a)に示すような両面同時塗工方法を採用することは従来も可能であった。
【0033】
また、両面同時塗工を行う場合には、両面同時塗工直後の箔は表裏いずれの面に対してもローラを接触させることができないため、搬送方法を考慮する必要がある。そこで従来は、箔の左右両側縁部にペーストを塗工しない範囲(未塗工部)を設けて、この未塗工部を挟持して搬送を行う方法が採用されている。
例えば、図12(a)に示す如く、複数の搬送用クランプ74・74・・・を備える構成とし、搬送用クランプ74により、箔の未塗工部を挟持しつつ搬送を行う構成が知られている。ところが、係る搬送方法においては、搬送用クランプ74・74・・・により挟持する位置にズレが生じると、箔および塗工面に図12(a)に示すような弛みが生じたり、塗布済みのペーストの塗工面に図12(b)に示すようなしわが生じることがあった。つまり、従来の搬送方法では、ペーストの塗工直後においては、適切な張力を付与した状態を維持しながら箔の搬送を行うことができないため、塗工面を傷めてしまう可能性があり、その結果、塗工品質を確保することが困難になるという問題点があった。
【0034】
このような状況から、従来一定の塗工品質を確保することが要求され、箔の両面にペーストの塗工を施す場合には、両面同時塗工を採用せずに、前述した図10(a)に示す方法等により、表面または裏面に対して片側ずつ塗工を行うことが一般的であった。
つまり、一定の塗工品質を確保することが要求される場合において、両面同時塗工による方法を適用可能とするためには、塗工部における塗工精度を確保すると同時に、両面塗工後において、箔の安定した搬送を実現することが必要であった。
本発明は、一定の塗工品質を確保しながら両面同時塗工を行うために従来有していた問題点を解決するものであり、塗工部における塗工精度の確保と両面同時塗工後の箔の安定した搬送を同時に実現し、両面同時塗工の利用可能範囲を拡大するものである。
【0035】
次に、本発明の第一実施例に係る塗工装置の塗工部の構成について説明をする。尚、以下においては、説明の便宜上、図2中に示す矢印Aの方向を右側として説明を行うものとする。
図1に示す如く、本発明の第一実施例に係る塗工装置1の塗工部2は、互いに対向配置される表面塗工用ダイ3と裏面塗工用ダイ4とからなる一対の塗工用ダイを備えており、この一対の塗工用ダイにより、該一対の塗工用ダイの隙間を通過する箔の表裏に対して、ペーストを同時に塗工するように構成されている。
前記塗工部2においては、箔を塗工部2へ搬送するための搬送ローラ25の下流側であって、かつ表面塗工用ダイ3および裏面塗工用ダイ4の上流側に、表面側ガイドローラ5および裏面側ガイドローラ6を設けている。各ガイドローラ5・6は互いに平行に、かつ、ローラ面が互いに接するようにして箔の搬送方向に対して直角となる向きに横設している。そして、箔を各ガイドローラ5・6の接触部を通過させて塗工部2に導入する構成としている。これにより、従来に比して塗工部2に対して、より近い位置で箔の位置を規制することができ、搬送中の箔に発生する振動を抑制し、箔と各塗工用ダイ3・4との距離(隙間)を一定に維持することが可能となる。
【0036】
また、本発明の第一実施例に係る塗工装置1の塗工部2においては、表面塗工用ダイ3および裏面塗工用ダイ4の下流側の左右未塗工縁部に、複数のローラから成るテンションローラ7を設けている。
図1乃至図3に示す如く、テンションローラ7は、上下一対となる表面側テンションローラ8および裏面側テンションローラ9により構成している。
表面側テンションローラ8は、左右一対となる表面左側ローラ群8Lおよび表面右側ローラ群8Rにより構成しており、本実施例では、各ローラ群8L・8Rをそれぞれ4個のローラで構成し、合計8個のローラ(即ち、図2中に示す各ローラ8aL・8bL・8cL・8dL・8aR・8bR・8cR・8dR)により表面側テンションローラ8を構成している。
【0037】
また同様に、裏面側テンションローラ9は、左右一対となる裏面左側ローラ群9Lおよび裏面右側ローラ群9Rにより構成しており、本実施例では、各ローラ群9L・9Rをそれぞれ4個のローラで構成し、合計8個のローラ(即ち、図2中に示す各ローラ9aL・9bL・9cL・9dL・9aR・9bR・9cR・9dR)により裏面側テンションローラ9を構成している。
【0038】
そして、側面視において、箔を挟んで各テンションローラ8・9が互いに線対称となるように配置し、上下(表裏)の対応する各ローラが互いに接触するように位置に配設する構成としている。
つまり、図1(a)に示す各右側ローラ群8R・9Rを例に挙げて説明をすると、表面右側ローラ群8Rを構成する各ローラ8aR・8bR・8cR・8dRと裏面右側ローラ群9Rを構成する各ローラ9aR・9bR・9cR・9dRが対応し、より具体的には、ローラ8aRとローラ9aR、ローラ8bRとローラ9bR、ローラ8cRとローラ9cR、ローラ8dRとローラ9dRがそれぞれ対応する構成としている。そして、各左側ローラ群8L・9Lについても同様の対応関係を有する構成としている。
【0039】
このように、箔に対する張力付与手段を、箔の搬送方向に対して左右に形成される未塗工縁部を挟持するテンションローラ7で構成することにより、各ローラが塗工されたペーストと接触することがないため、乾燥工程よりも上流側のペースト塗工直後において、箔の伸縮等の影響が少ない位置で箔に付与する張力の調整を行うことができ、箔に弛みを生じさせること無く良好な塗工状態を維持しながら箔の搬送を行うことができるのである。
【0040】
また、テンションローラ7を構成する各ローラ(即ち、ローラ8aL・8bL・8cL・8dL・8aR・8bR・8cR・8dRおよびローラ9aL・9bL・9cL・9dL・9aR・9bR・9cR・9dR)は、箔に対して垂直な向きに配設した回動軸(即ち、回動軸8eL・8fL・8gL・8hL・8eR・8fR・8gR・8hRおよび回動軸9eL・9fL・9gL・9hL・9eR・9fR・9gR・9hR)に対して固設しており、これにより各ローラが各回動軸を軸心として回動可能な構成としている。また前記各回動軸は、平面視において、箔の搬送方向と平行に、かつ、箔の搬送方向に沿って略等間隔に配設する構成としている。
【0041】
さらに、図3または図4に示す如く、各テンションローラ8・9は、テンションローラ7を構成する前記各ローラを各回動軸回りに回転させて、平面視において、箔の搬送方向に対して各ローラの回転軸が成す角度(即ち、図4(b)中に示す角度θ1乃至θ4)を、搬送方向下流側に向かうにつれて漸次拡大するように構成している。但し、最も下流側の回転軸が成す角度(ここでは、θ4)が、90度以下となるように構成しており、本実施例ではθ4=90度としている。
【0042】
さらに詳述すると、例えば図4(b)に示す如く、表面右側ローラ群8Rを構成する各ローラ8aR・8bR・8cR・8dRの各回転軸8iR・8jR・8kR・8mRは、箔の搬送方向に対して、それぞれθ1・θ2・θ3・θ4の角度を成して配設されている。各ローラ8aR・8bR・8cR・8dRは、同じ回転数で回転する構成としており、各ローラ8aR・8bR・8cR・8dRと箔が接触する点においては、各ローラ8aR・8bR・8cR・8dRから箔に対して、各ローラの回転接線方向に対する同じ大きさの張力(即ち、図4中に示す張力T1乃至T4)を付与する構成としている。
【0043】
また、図4(c)には、前記各ローラにより付与する各張力T1乃至T4を、箔の搬送方向に対する分力X1乃至X4と、箔の搬送方向に対して直角方向の分力Y1乃至Y4に分けて示している。すると、箔の搬送方向に対する各分力の大きさは、X1<X2<X3<X4の関係を有していることが確認できる。また、箔の搬送方向に対して直角方向の各分力の大きさは、Y1>Y2>Y3>Y4(但し、X4=T4、Y4=0である)の関係を有していることが確認できる。尚、ここでは表面右側ローラ群8Rについてのみ各分力の確認を行っているが、他の各ローラ群においても、箔の搬送方向に対する分力および箔の搬送方向に対して直角方向の分力は同様の関係を有している。
【0044】
つまり、各ローラ8aR・8bR・8cR・8dRを、箔の搬送方向下流側に向かうにつれて、前記角度θ1乃至θ4を漸次拡大する構成とすることにより、箔の搬送方向に対しては、下流側ほど大きな張力を下流方向に向けて付与し、また箔の搬送方向に対する直角方向には、上流側ほど大きな張力を左右方向に向けて付与する構成としている。
このように、搬送方向下流側と左右方向に対する張力を搬送方向に従って漸次変化させながら付与する構成とすることにより、塗工面にローラを接触することができない箇所であっても、箔に適切な張力を付与することができ、これにより、搬送中の箔に弛みが生じることがなく、塗工面の品質を確保した状態で箔を安定して搬送することができるように構成している。
尚、本実施例においては、4個のローラを用いて各ローラ群8L・8R・9L・9Rを構成する例を示しているが、各ローラ群を構成するローラの個数をこれに限定するものではなく、3個以下のローラでローラ群を構成したり、5個以上のローラでローラ群を構成することによりも可能であり、使用する箔の仕様(幅や厚み等)に応じて適宜定めることができる。
また、本実施例においては、同じ回転数で駆動される複数のローラを用いて各テンションローラ8・9を構成する例を示しているが、例えば、下流側のローラほど回転数を大きくする構成とすることも可能であり、本発明に係るテンションローラを構成するローラの駆動回転数を限定するものではない。
【0045】
即ち、一対の表面塗工用ダイ3および裏面塗工用ダイ4の箔搬入側に備える箔規制手段たる表面側ガイドローラ5および裏面側ガイドローラ6により、表面塗工用ダイ3と箔との距離と、裏面塗工用ダイ4と箔との距離が均等となるように箔を保持して、かつ、一対の塗工用ダイ3・4の箔搬出側に備える張力付与手段たるテンションローラ7により、ペースト塗工後の箔に弛みが生じないように張力を付与する構成としている。
このように、塗工部2の直前にガイドローラ5・6を備えることにより、表裏の塗工厚さを均等に揃えることが可能となり、塗工精度の向上に寄与し、さらに、塗工部2の直後にテンションローラ7を備えることにより、塗工直後に箔に作用する張力の調整を行うことができるため、良好な塗工状態を維持しながら箔の搬送を行うことができるのである。これにより、箔に対してペーストの両面同時塗工を行う場合の塗工品質を向上させることができるのである。
【0046】
また、テンションローラ7は、複数のローラ部材(即ち、ローラ8aL・8bL・8cL・8dL・8aR・8bR・8cR・8dRおよびローラ9aL・9bL・9cL・9dL・9aR・9bR・9cR・9dR)からなり、各ローラ部材を箔の搬送方向に対して平行となる方向に略等間隔に配置しつつ、箔の搬送方向と各ローラ部材の回転軸が成す角度が90度以下となる範囲で、箔の搬送方向下流側に向けて漸次拡大するように各ローラ部材を配置する構成としている。
これにより、ペーストに接触すること無く、箔に対して搬送方向下流側に作用する張力と、搬送方向に対する左右方向に作用する張力を効果的に付与することができるのである。
【0047】
次に、本発明の第二実施例に係る塗工装置の塗工部の構成について説明をする。
図5または図6に示す如く、本発明に係る塗工装置10の塗工部11は、前述した第一実施例に係る塗工装置1の塗工部2と同様に、塗工部11の箔の搬送上流側に表面側ガイドローラ14および裏面側ガイドローラ15を備え、かつ、塗工部11の箔の搬送下流側にテンションローラ16を備える構成としている。そして、本第二実施例においては、表面側ガイドローラ14を表面塗工用ダイ12と一体的に構成し、かつ、裏面側ガイドローラ15を裏面塗工用ダイ13と一体的に構成した点で第一実施例に係る塗工装置1と相違しており、この点に特徴を有している。
【0048】
表面塗工用ダイ12の箔の搬送方向に対する上流側下部には、支持軸12aが固設され、支持軸12a上に表面側ガイドローラ14を回転自在に支持する構成としている。また、これと同様に、裏面塗工用ダイ13の箔の搬送方向に対する上流側上部には、支持軸13aが固設され、支持軸13a上に裏面側ガイドローラ15を回転自在に支持する構成としている。
【0049】
このように、各ガイドローラ14・15を各塗工用ダイ12・13と一体的な構成とすることにより、各ガイドローラ14・15を塗工部11に対してより近接させる配置とすることが可能となる。このような構成とすることにより、塗工部11に供給する箔の振動をより効果的に抑制することができ、箔の安定供給に寄与することができる。
【0050】
次に、ペーストの塗工厚さの調整方法について説明をする。
従来は、ペーストの塗工厚さを調整する場合には各塗工用ダイを上下動させて位置調整をする構成としていた。また従来は、基点となる設備ベース等と実際の可動部たる各塗工用ダイの距離が離れている構成であった。このため、各塗工用ダイを支持するベース部材の剛性や寸法精度を確保しなければ、各塗工用ダイの位置決め精度を確保することができなかった。またこの場合、ベース部材の撓み等多くの誤差要素が介在してしまい、塗工厚さの寸法精度を向上させることも困難な状況であった。
【0051】
図7に示す如く、本発明に係る各塗工用ダイ12・13は、各ガイドローラ14・15を基点として、各支持軸12a・13aを中心に各塗工用ダイ12・13を回動させることができる。このような構成とすることにより、各塗工用ダイ12・13の回動角度を変化させることにより、各塗工用ダイ12・13と箔との間の距離(隙間)を調整することが可能となるため、これによりペーストの塗工厚さを容易に調整することが可能となっている。
また、各塗工用ダイ12・13に対して、基点となる各ガイドローラ14・15を一体的に支持する構成としているため、従来の構成に比して基点と可動部の間に介在する誤差要素が少なく、各ガイドローラ14・15、各支持軸12a・13aおよび各塗工用ダイ12・13等の各部材の剛性を確保することにより、容易に塗工厚さの寸法精度を確保することができる。
【0052】
つまり、各塗工用ダイ12・13と各ガイドローラ14・15を一体的な構成とすることにより、各ガイドローラ14・15による箔の規制位置と塗工部11をより近接させることが可能となり、更なる箔の振動抑制に寄与しつつ、各塗工用ダイ12・13の位置決め精度の向上にも寄与して、塗工品質を向上することができる。
【0053】
このように、箔規制手段を、表面塗工用ダイ12に一体的に形成される表側従動ローラたる表面側ガイドローラ14と、裏面塗工用ダイ13に一体的に形成される裏側従動ローラたる裏面側ガイドローラ15からなる構成とすることにより、容易に表裏の塗工厚さを均等に揃えることが可能となり、塗工精度の向上に寄与することができるのである。また、塗工厚さの調整を精度良く容易にすることができるのである。
【0054】
図6に示す如く、テンションローラ16は、第一実施例に係るテンションローラ7と同様に、上下一対となる表面側テンションローラ17および裏面側テンションローラ18により構成している。
また、表面側テンションローラ17は、左右一対となる表面左側ローラ群17Lおよび表面右側ローラ群17Rにより構成しており、本実施例では、各ローラ群17L・17Rをそれぞれ4個のローラで構成し、合計8個のローラ(即ち、図6中に示す各ローラ17aL・17bL・17cL・17dL・17aR・17bR・17cR・17dR)により表面側テンションローラ17を構成している。
【0055】
さらに同様に、裏面側テンションローラ18は、左右一対となる裏面左側ローラ群18Lおよび裏面右側ローラ群18Rにより構成しており、本実施例では、各ローラ群18L・18Rをそれぞれ4個のローラで構成し、合計8個のローラ(即ち、図6中に示す各ローラ18aL・18bL・18cL・18dL・18aR・18bR・18cR・18dR)により裏面側テンションローラ18を構成している。
【0056】
また、第一実施例に係るテンションローラ7と同様に、第二実施例に係るテンションローラ16を構成する各ローラ(即ち、ローラ17aL・17bL・17cL・17dL・17aR・17bR・17cR・17dRおよびローラ18aL・18bL・18cL・18dL・18aR・18bR・18cR・18dR)は、箔に対して垂直な向きに配設した回動軸(即ち、回動軸17eL・17fL・17gL・17hL・17eR・17fR・17gR・17hRおよび回動軸18eL・18fL・18gL・18hL・18eR・18fR・18gR・18hR)に対して固設しており、これにより各ローラが各回動軸を軸心として回動可能な構成としている。また前記各回動軸は、平面視において、箔の搬送方向と平行に、かつ、箔の搬送方向に沿って略等間隔に配設する構成としている。
【0057】
図6に示す如く、本発明の第二実施例に係る塗工装置10においては、各塗工用ダイ12・13の下流側に配設されるテンションローラ16は、各ローラ群(即ち、ローラ群17L・17R・18L・18R)ごとに各ローラ群を構成する各ローラを各リンク機構19・20・21・22により連結する構成としている。各リンク機構19・20・21・22は、主リンクバーと複数の副リンクバーにより構成している。
【0058】
さらに図8に示す如く、表面右側ローラ群17Rを例として詳述すると、リンク機構19を構成する主リンクバー19aおよび4個の副リンクバー19b・19c・19d・19eは、鋼板製の平板部材により構成しており、各副リンクバー19b・19c・19d・19eは、主リンクバー19aに対して相対回転可能に支持されている。
尚、主リンクバー19aの両端に支持される副リンクバー(即ち、副リンクバー19bおよび19e)を除くその他の副リンクバー(即ち、副リンクバー19cおよび19d)は、主リンクバー19aに形成された長孔19f・19gを利用して支持されており、主リンクバー19aの長辺方向に対して長孔19f・19gの範囲内で変位可能に支持される構成としている。これにより、各副リンクバーの長さが異なっていても、主リンクバー19aの変位に従って、副リンクバー19c・19dが変位可能な構成としている。
【0059】
さらに、表面右側ローラ群17Rを構成する各ローラ(即ち、図8中に示す各ローラ17aR・17bR・17cR・17dR)は、それぞれ副リンクバー19b・19c・19d・19eに対して相対回転不能に固設されている。
また、副リンクバー19b・19c・19d・19eの長さ(図8中に示すL1乃至L4)は、L1<L2<L3<L4の関係を有する構成としている。
【0060】
このような構成とすることにより、主リンクバー19aを変位させることにより、各副リンクバー19b・19c・19d・19eを一度に回動させることができるため、各ローラ17aR・17bR・17cR・17dを一斉に回転させることができる。さらに、各副リンクバー19b・19c・19d・19eの長さを前記関係(L1<L2<L3<L4)とすることにより、各ローラ17aR・17bR・17cR・17dの回転角度が副リンクバーの長さに応じて少しずつ異なるように回動される構成としている。
【0061】
具体的には、図8に示す如く、主リンクバー19aを操作することにより、各ローラ17aR・17bR・17cR・17dが一斉に回転され、その回転角度が図8中に示すθb乃至θeとなる構成としている。ここで、各角度θb乃至θeは、副リンクバー19b・19c・19d・19eの長さ(図8中に示すL1乃至L4)に対応して、θb<θc<θd<θeの関係を有している。
このように、各副リンクバーの長さに応じて、各ローラの回転角度を設定することが可能であるため、設計時において副リンクバーの長さを考慮すれば、箔に付与する張力の大きさを設定したり、各ローラ間の張力差を設定することが容易に可能となる。
【0062】
尚、各ローラ17aR・17bR・17cR・17dの角度が変更されても、各ローラの駆動が継続される構成とすることが望ましい。図9に示す如く、ローラ17aRを例として説明をすると、駆動源となるモータ23をローラ17aRと一体的に構成し、副リンクバー19bが回動され回動軸17eR回りにローラ17aRが回動されると、それに伴ってモータ23も回動される構成とすることができる。あるいは、駆動源とローラの回転軸をユニバーサルジョイント等を介して連結する構成とし、駆動源の駆動軸と回転軸が同一直線上になくともローラを駆動可能な構成とし、各ローラの回転方向の変化に対応する構成とすることも可能である。
【0063】
尚、表面右側ローラ群17R以外の各ローラ群17L・18R・18Lに備えられるリンク機構20・21・22についての詳細な説明は割愛するが、これらの他のリンク機構についても主リンクバーおよび複数の副リンクバーを備える構成としており、上下左右等の配置勝手は異なるものの表面右側ローラ群17Rに備えられるリンク機構19と同様の構成としている。
【0064】
即ち、テンションローラ7を構成する複数のローラ部材(即ち、各ローラ群17L・17R・18L・18R)は、リンク機構19・20・21・22を介して連結され、リンク機構19・20・21・22により箔の搬送方向と各ローラ部材の回転軸が成す角度を調整可能な構成としている。
これにより、箔に付与する張力を、使用する箔の仕様(幅や厚み等)に応じて容易に調整することができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の第一実施例に係る塗工装置の塗工部周辺の構成を示す模式図。
【図2】同じく斜視図。
【図3】同じく平面図。
【図4】本発明の一実施例に係るテンションローラの構成を示す模式図。
【図5】本発明の第二実施例に係る塗工装置の塗工部周辺の構成を示す模式図。
【図6】同じく斜視図。
【図7】同じく塗工厚さの調整状況を示す側面模式図。
【図8】本発明の一実施例に係るリンク機構の構成を示す模式図。
【図9】同じくテンションローラを示す模式図。
【図10】従来の塗工装置に係る両面同時塗工方法を示す模式図。
【図11】同じく塗工部周辺の構成を示す模式図。
【図12】従来の両面同時塗工時の搬送方法を示す模式図。
【符号の説明】
【0066】
1 塗工装置
2 塗工部
3 表面塗工用ダイ
4 裏面塗工用ダイ
5 表面側ガイドローラ
6 裏面側ガイドローラ
7 テンションローラ
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペーストを箔の表裏に同時塗工するための技術に関し、より詳しくは、同時塗工する場合の塗工品質を向上させるための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来電池用電極の製造等において、電極箔の表裏両面にペーストの塗工をする方法としては、まず電極箔の表面か裏面のいずれか一方の面に対してペーストを塗工し、次に一回目の乾燥工程として乾燥炉によってペーストを乾燥させた後に、再度他方の面にペーストを塗工し、さらに二回目の乾燥工程として乾燥炉によってペーストを乾燥させて箔の表裏両面にペーストを塗工する技術が一般的に良く知られている。しかしながら、この方法では、二回の乾燥工程を経る必要があるため、塗工設備のラインが長くなってしまうという問題点があった。
また、箔の表裏両面にペーストの塗工をする場合には、ペーストの塗工直後には表裏いずれの面にもローラを接触させることができないため、安定した箔の搬送を行うことが困難となる問題点があった。
【0003】
塗工設備のライン長を短縮するべく乾燥工程を一回で済ませるためには、箔の表裏両面に対してペーストを同時に塗工することが有効であり、ペーストの表裏同時塗工に関する種々の技術が検討・開発されており公知となっている。
例えば、一対のダイによりペーストを塗工する塗工部の上流部において、対向して配置する一対の弾性シール材を設けて、箔を弾性シール材により形成する隙間を通して塗工部に供給する構成とし、箔のばたつきを防止しつつ、塗工部の気密性を確保してペーストの劣化(酸化)等を防止して、塗工品質の向上を可能とする技術が開示されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開平9−94509号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術においては、弾性シール材によって箔の位置決めをする構成としており、シール材が弾性変形する範囲では箔が変位することが可能であった。つまり、箔が塗工部に対して、いずれか一方のダイ(表側用または裏側用)に偏って導入される可能性があるため、塗工部に搬入される箔の位置決め精度を確保することが困難であり、これにより、塗工品質を確保することも困難であった。
【0005】
また、塗工品質を確保するためには、塗工精度の確保のみならず、塗工後において、塗工面を傷めないように搬送を行う必要がある。つまり、ペースト塗工後の箔搬送において、特に、乾燥工程に至るまでの搬送経路上で、塗工面を傷めないように搬送することが必要となるが、箔の両面にペーストを塗工した直後には、通常の搬送ローラを表裏いずれの面にも接触させることができず、両面塗工直後の箔を安定して搬送することが困難であった。
【0006】
例えば、従来箔の左右両端に未塗工部を残すようにしてペーストを塗工し、当該左右の未塗工部をクランプやローラによって挟持しつつ、塗工面を傷めないようにして箔の搬送を行う技術が一般的に広く用いられているが、従来のクランプやローラを用いた方法では、箔に対して均等に張力を付与することが困難であり、搬送中の箔にしわや弛みが生じることを完全には防止できず、これにより、挟持部が塗工面に接触することはないが、搬送中に塗工面を傷めてしまう可能性があった。
本発明は、係る現状を鑑みて成されたものであり、箔に対してペーストの両面同時塗工を行う場合において、塗工部に導入される箔の位置決め精度を向上させて塗工精度を向上させると同時に、両面同時塗工後の箔を安定して搬送することにより、両面同時塗工による塗工品質の確保を可能とする技術を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、表面塗工用ダイと裏面塗工用ダイからなる一対の塗工用ダイを対向させて配置し、該一対の塗工用ダイの隙間を通過させる箔の表裏に対して、ペーストを同時に塗工するペーストの表裏同時塗工方法であって、前記一対の塗工用ダイの箔搬入側に備える箔規制手段により、前記表面塗工用ダイと前記箔との距離と、前記裏面塗工用ダイと前記箔との距離が均等となるように前記箔を保持して、かつ、前記一対の塗工用ダイの箔搬出側に備える張力付与手段により、ペースト塗工後の前記箔に弛みが生じないように張力を付与する、ことを特徴としたものである。
【0009】
請求項2においては、前記箔規制手段は、前記表面塗工用ダイに一体的に形成される表面側ガイドローラと、前記裏面塗工用ダイに一体的に形成される裏面側ガイドローラからなる、ことを特徴としたものである。
【0010】
請求項3においては、前記張力付与手段は、前記箔の搬送方向に対して左右に形成される未塗工縁部を挟持する一対のテンションローラからなる、ことを特徴としたものである。
【0011】
請求項4においては、前記テンションローラは、複数のローラ部材からなり、各ローラ部材を前記箔の搬送方向に対して平行となる方向に略等間隔に配置しつつ、前記箔の搬送方向と前記ローラ部材の回転軸が成す角度が90度以下となる範囲で、前記箔の搬送方向下流側に向けて漸次拡大するように前記ローラ部材を配置する、ことを特徴としたものである。
【0012】
請求項5においては、前記テンションローラを構成する前記複数のローラ部材は、リンク機構を介して連結され、前記リンク機構により、前記箔の搬送方向と前記各ローラ部材の回転軸が成す角度を調整可能とする、ことを特徴としたものである。
【0013】
請求項6においては、互いに対向配置される表面塗工用ダイと裏面塗工用ダイからなる一対の塗工用ダイを備え、該一対の塗工用ダイの隙間を通過させる箔の表裏に対して、ペーストを同時に塗工するペーストの表裏同時塗工装置であって、前記一対の塗工用ダイの箔搬入側に配置され、前記表面塗工用ダイと前記箔との距離と、前記裏面塗工用ダイと前記箔との距離が均等となるように前記箔を保持する箔規制手段と、前記一対の塗工用ダイの箔搬出側に配置され、ペースト塗工後の前記箔に弛みが生じないように張力を付与する張力付与手段とを備える、ことを特徴としたものである。
【0014】
請求項7においては、前記箔規制手段は、前記表面塗工用ダイに一体的に形成される表面側ガイドローラと、前記裏面塗工用ダイに一体的に形成される裏面側ガイドローラからなる、ことを特徴としたものである。
【0015】
請求項8においては、前記張力付与手段は、前記箔の搬送方向に対して左右に形成される未塗工縁部を挟持する一対のテンションローラからなる、ことを特徴としたものである。
【0016】
請求項9においては、前記テンションローラは、複数のローラ部材からなり、各ローラ部材を前記箔の搬送方向に対して平行となる方向に略等間隔に配置しつつ、前記箔の搬送方向と前記ローラ部材の回転軸が成す角度が90度以下となる範囲で、前記箔の搬送方向下流側に向けて漸次拡大するように前記ローラ部材を配置する、ことを特徴としたものである。
【0017】
請求項10においては、前記テンションローラを構成する前記複数のローラ部材は、リンク機構を介して連結され、前記リンク機構により、前記箔の搬送方向と前記各ローラ部材の回転軸が成す角度を調整可能とする、ことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0019】
請求項1においては、塗工部の直前にガイドローラを備えることにより、表裏の塗工厚さを均等に揃えることが可能となり、塗工精度の向上に寄与する。また、塗工部の直後のテンションローラを備えることにより、塗工直後に箔に作用する張力の調整を行うことができるため、良好な塗工状態を維持しながら箔の搬送を行うことができる。これにより、箔に対してペーストの両面同時塗工を行う場合の塗工品質を向上させることができる。
【0020】
請求項2においては、容易に表裏の塗工厚さを均等に揃えることが可能となり、塗工精度の向上に寄与することができる。また、塗工厚さの調整を容易にすることができる。
【0021】
請求項3においては、容易に箔に作用する張力の調整を行うことができ、良好な塗工状態を維持しながら箔の搬送を行うことができる。
【0022】
請求項4においては、箔に対して搬送方向下流側に作用する張力と、搬送方向に対する左右方向に作用する張力を付与することができる。
【0023】
請求項5においては、箔に付与する張力の調整を容易にすることができる。
【0024】
請求項6においては、塗工部の直前にガイドローラを備えることにより、表裏の塗工厚さを均等に揃えることが可能となり、塗工精度の向上に寄与する。また、塗工部の直後のテンションローラを備えることにより、塗工直後に箔に作用する張力の調整を行うことができるため、良好な塗工状態を維持しながら箔の搬送を行うことができる。これにより、箔に対してペーストの両面同時塗工を行う場合の塗工品質を向上させることができる。
【0025】
請求項7においては、容易に表裏の塗工厚さを均等に揃えることが可能となり、塗工精度の向上に寄与することができる。また、塗工厚さの調整を容易にすることができる。
【0026】
請求項8においては、容易に箔に作用する張力の調整を行うことができ、良好な塗工状態を維持しながら箔の搬送を行うことができる。
【0027】
請求項9においては、箔に対して搬送方向下流側に作用する張力と、搬送方向に対する左右方向に作用する張力を付与することができる。
【0028】
請求項10においては、箔に付与する張力の調整を容易にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の第一実施例に係る塗工装置の塗工部周辺の構成を示す模式図、図2は同じく斜視図、図3は同じく平面図、図4は本発明の一実施例に係るテンションローラの構成を示す模式図、図5は本発明の第二実施例に係る塗工装置の塗工部周辺の構成を示す模式図、図6は同じく斜視図、図7は同じく塗工厚さの調整状況を示す側面模式図、図8は本発明の一実施例に係るリンク機構の構成を示す模式図、図9は同じくテンションローラを示す模式図、図10は従来の塗工装置に係る両面同時塗工方法を示す模式図、図11は同じく塗工部周辺の構成を示す模式図、図12は従来の両面同時塗工時の搬送方法を示す模式図である。
【0030】
まず始めに、従来の塗工装置の構成について説明をする。
図10(a)に示す如く、従来の塗工装置50においては、箔の両面(表裏)にペーストを塗工する方法として、まず表面塗工用ダイ51により表面にペーストを塗工し、その後第一乾燥炉52によりペーストを乾燥させる。次に裏面塗工用ダイ53により裏面にペーストを塗工し、その後第二乾燥炉54によりペーストを乾燥させる。尚、各乾燥炉52・54内の搬送は、箔に対して鉛直方向略上向きと鉛直方向略下向きに交互に熱風を吹付けることにより、箔を側面視略正弦波形状に蛇行させながら浮上搬送を行って、箔および塗工面に接触すること無く搬送が行われる構成としている。
この方法によれば、表面および裏面の塗工部55・56には、バックアップローラ57・58を設けることができるため、箔に対して精度良くペーストを塗工することが可能であるが、二度の乾燥工程を経る必要があり、塗工ライン長が長くなってしまうという問題点がある。
【0031】
図10(b)に示す如く、また従来の塗工装置60においては、箔の両面(表裏)にペーストを塗工する方法として、まず表面塗工用ダイ61により表面にペーストを塗工し、次に裏面塗工用ダイ62により裏面にペーストを塗工した後に、乾燥炉63によりペーストを乾燥させる方法も採用されている。
この方法によれば、乾燥炉63の上流側で表裏両面に対してペーストの塗工が完了するため乾燥工程を一回で済ませることができる。しかし、表面と裏面の塗工タイミングをずらすと、表面の塗工部66にはバックアップローラ64を設けることができるが、裏面の塗工部67にはバックアップローラ65を設けることができない。このため、図10(c)に示す如く、裏面の塗工部67においては、箔が塗工されるペーストにより押圧されて浮き上がるため、箔の挙動が安定せず、その結果、表面と裏面で塗工面の精度にばらつきが生じてしまい、塗工精度が低下し塗工品質を確保することが困難になるという問題点がある。
【0032】
また、図11(a)に示す如く、従来から表面塗工用ダイ70と裏面塗工用ダイ71を対向させて配置し、箔の両面(表裏)に対して同時にペーストを塗工する構成も採用されているが、各塗工用ダイ70・71に送られる箔の位置を規制する搬送ローラ72と塗工部73の距離が離れており、搬送ローラ72と塗工部73の間では箔の変位を規制することができず、搬送中の箔に振動等が発生すれば、箔と各塗工用ダイ70・71との距離(隙間)を一定に維持することができなかった。
このため、図11(b)に示す如く、各塗工用ダイ70・71による塗工厚さにばらつきが生じてしまい、塗工精度を確保することが困難になるという問題点があった。尚、塗工面の要求品質の条件によっては、このような塗工精度のばらつきが問題とはならない場合もあり、係る場合には、図11(a)に示すような両面同時塗工方法を採用することは従来も可能であった。
【0033】
また、両面同時塗工を行う場合には、両面同時塗工直後の箔は表裏いずれの面に対してもローラを接触させることができないため、搬送方法を考慮する必要がある。そこで従来は、箔の左右両側縁部にペーストを塗工しない範囲(未塗工部)を設けて、この未塗工部を挟持して搬送を行う方法が採用されている。
例えば、図12(a)に示す如く、複数の搬送用クランプ74・74・・・を備える構成とし、搬送用クランプ74により、箔の未塗工部を挟持しつつ搬送を行う構成が知られている。ところが、係る搬送方法においては、搬送用クランプ74・74・・・により挟持する位置にズレが生じると、箔および塗工面に図12(a)に示すような弛みが生じたり、塗布済みのペーストの塗工面に図12(b)に示すようなしわが生じることがあった。つまり、従来の搬送方法では、ペーストの塗工直後においては、適切な張力を付与した状態を維持しながら箔の搬送を行うことができないため、塗工面を傷めてしまう可能性があり、その結果、塗工品質を確保することが困難になるという問題点があった。
【0034】
このような状況から、従来一定の塗工品質を確保することが要求され、箔の両面にペーストの塗工を施す場合には、両面同時塗工を採用せずに、前述した図10(a)に示す方法等により、表面または裏面に対して片側ずつ塗工を行うことが一般的であった。
つまり、一定の塗工品質を確保することが要求される場合において、両面同時塗工による方法を適用可能とするためには、塗工部における塗工精度を確保すると同時に、両面塗工後において、箔の安定した搬送を実現することが必要であった。
本発明は、一定の塗工品質を確保しながら両面同時塗工を行うために従来有していた問題点を解決するものであり、塗工部における塗工精度の確保と両面同時塗工後の箔の安定した搬送を同時に実現し、両面同時塗工の利用可能範囲を拡大するものである。
【0035】
次に、本発明の第一実施例に係る塗工装置の塗工部の構成について説明をする。尚、以下においては、説明の便宜上、図2中に示す矢印Aの方向を右側として説明を行うものとする。
図1に示す如く、本発明の第一実施例に係る塗工装置1の塗工部2は、互いに対向配置される表面塗工用ダイ3と裏面塗工用ダイ4とからなる一対の塗工用ダイを備えており、この一対の塗工用ダイにより、該一対の塗工用ダイの隙間を通過する箔の表裏に対して、ペーストを同時に塗工するように構成されている。
前記塗工部2においては、箔を塗工部2へ搬送するための搬送ローラ25の下流側であって、かつ表面塗工用ダイ3および裏面塗工用ダイ4の上流側に、表面側ガイドローラ5および裏面側ガイドローラ6を設けている。各ガイドローラ5・6は互いに平行に、かつ、ローラ面が互いに接するようにして箔の搬送方向に対して直角となる向きに横設している。そして、箔を各ガイドローラ5・6の接触部を通過させて塗工部2に導入する構成としている。これにより、従来に比して塗工部2に対して、より近い位置で箔の位置を規制することができ、搬送中の箔に発生する振動を抑制し、箔と各塗工用ダイ3・4との距離(隙間)を一定に維持することが可能となる。
【0036】
また、本発明の第一実施例に係る塗工装置1の塗工部2においては、表面塗工用ダイ3および裏面塗工用ダイ4の下流側の左右未塗工縁部に、複数のローラから成るテンションローラ7を設けている。
図1乃至図3に示す如く、テンションローラ7は、上下一対となる表面側テンションローラ8および裏面側テンションローラ9により構成している。
表面側テンションローラ8は、左右一対となる表面左側ローラ群8Lおよび表面右側ローラ群8Rにより構成しており、本実施例では、各ローラ群8L・8Rをそれぞれ4個のローラで構成し、合計8個のローラ(即ち、図2中に示す各ローラ8aL・8bL・8cL・8dL・8aR・8bR・8cR・8dR)により表面側テンションローラ8を構成している。
【0037】
また同様に、裏面側テンションローラ9は、左右一対となる裏面左側ローラ群9Lおよび裏面右側ローラ群9Rにより構成しており、本実施例では、各ローラ群9L・9Rをそれぞれ4個のローラで構成し、合計8個のローラ(即ち、図2中に示す各ローラ9aL・9bL・9cL・9dL・9aR・9bR・9cR・9dR)により裏面側テンションローラ9を構成している。
【0038】
そして、側面視において、箔を挟んで各テンションローラ8・9が互いに線対称となるように配置し、上下(表裏)の対応する各ローラが互いに接触するように位置に配設する構成としている。
つまり、図1(a)に示す各右側ローラ群8R・9Rを例に挙げて説明をすると、表面右側ローラ群8Rを構成する各ローラ8aR・8bR・8cR・8dRと裏面右側ローラ群9Rを構成する各ローラ9aR・9bR・9cR・9dRが対応し、より具体的には、ローラ8aRとローラ9aR、ローラ8bRとローラ9bR、ローラ8cRとローラ9cR、ローラ8dRとローラ9dRがそれぞれ対応する構成としている。そして、各左側ローラ群8L・9Lについても同様の対応関係を有する構成としている。
【0039】
このように、箔に対する張力付与手段を、箔の搬送方向に対して左右に形成される未塗工縁部を挟持するテンションローラ7で構成することにより、各ローラが塗工されたペーストと接触することがないため、乾燥工程よりも上流側のペースト塗工直後において、箔の伸縮等の影響が少ない位置で箔に付与する張力の調整を行うことができ、箔に弛みを生じさせること無く良好な塗工状態を維持しながら箔の搬送を行うことができるのである。
【0040】
また、テンションローラ7を構成する各ローラ(即ち、ローラ8aL・8bL・8cL・8dL・8aR・8bR・8cR・8dRおよびローラ9aL・9bL・9cL・9dL・9aR・9bR・9cR・9dR)は、箔に対して垂直な向きに配設した回動軸(即ち、回動軸8eL・8fL・8gL・8hL・8eR・8fR・8gR・8hRおよび回動軸9eL・9fL・9gL・9hL・9eR・9fR・9gR・9hR)に対して固設しており、これにより各ローラが各回動軸を軸心として回動可能な構成としている。また前記各回動軸は、平面視において、箔の搬送方向と平行に、かつ、箔の搬送方向に沿って略等間隔に配設する構成としている。
【0041】
さらに、図3または図4に示す如く、各テンションローラ8・9は、テンションローラ7を構成する前記各ローラを各回動軸回りに回転させて、平面視において、箔の搬送方向に対して各ローラの回転軸が成す角度(即ち、図4(b)中に示す角度θ1乃至θ4)を、搬送方向下流側に向かうにつれて漸次拡大するように構成している。但し、最も下流側の回転軸が成す角度(ここでは、θ4)が、90度以下となるように構成しており、本実施例ではθ4=90度としている。
【0042】
さらに詳述すると、例えば図4(b)に示す如く、表面右側ローラ群8Rを構成する各ローラ8aR・8bR・8cR・8dRの各回転軸8iR・8jR・8kR・8mRは、箔の搬送方向に対して、それぞれθ1・θ2・θ3・θ4の角度を成して配設されている。各ローラ8aR・8bR・8cR・8dRは、同じ回転数で回転する構成としており、各ローラ8aR・8bR・8cR・8dRと箔が接触する点においては、各ローラ8aR・8bR・8cR・8dRから箔に対して、各ローラの回転接線方向に対する同じ大きさの張力(即ち、図4中に示す張力T1乃至T4)を付与する構成としている。
【0043】
また、図4(c)には、前記各ローラにより付与する各張力T1乃至T4を、箔の搬送方向に対する分力X1乃至X4と、箔の搬送方向に対して直角方向の分力Y1乃至Y4に分けて示している。すると、箔の搬送方向に対する各分力の大きさは、X1<X2<X3<X4の関係を有していることが確認できる。また、箔の搬送方向に対して直角方向の各分力の大きさは、Y1>Y2>Y3>Y4(但し、X4=T4、Y4=0である)の関係を有していることが確認できる。尚、ここでは表面右側ローラ群8Rについてのみ各分力の確認を行っているが、他の各ローラ群においても、箔の搬送方向に対する分力および箔の搬送方向に対して直角方向の分力は同様の関係を有している。
【0044】
つまり、各ローラ8aR・8bR・8cR・8dRを、箔の搬送方向下流側に向かうにつれて、前記角度θ1乃至θ4を漸次拡大する構成とすることにより、箔の搬送方向に対しては、下流側ほど大きな張力を下流方向に向けて付与し、また箔の搬送方向に対する直角方向には、上流側ほど大きな張力を左右方向に向けて付与する構成としている。
このように、搬送方向下流側と左右方向に対する張力を搬送方向に従って漸次変化させながら付与する構成とすることにより、塗工面にローラを接触することができない箇所であっても、箔に適切な張力を付与することができ、これにより、搬送中の箔に弛みが生じることがなく、塗工面の品質を確保した状態で箔を安定して搬送することができるように構成している。
尚、本実施例においては、4個のローラを用いて各ローラ群8L・8R・9L・9Rを構成する例を示しているが、各ローラ群を構成するローラの個数をこれに限定するものではなく、3個以下のローラでローラ群を構成したり、5個以上のローラでローラ群を構成することによりも可能であり、使用する箔の仕様(幅や厚み等)に応じて適宜定めることができる。
また、本実施例においては、同じ回転数で駆動される複数のローラを用いて各テンションローラ8・9を構成する例を示しているが、例えば、下流側のローラほど回転数を大きくする構成とすることも可能であり、本発明に係るテンションローラを構成するローラの駆動回転数を限定するものではない。
【0045】
即ち、一対の表面塗工用ダイ3および裏面塗工用ダイ4の箔搬入側に備える箔規制手段たる表面側ガイドローラ5および裏面側ガイドローラ6により、表面塗工用ダイ3と箔との距離と、裏面塗工用ダイ4と箔との距離が均等となるように箔を保持して、かつ、一対の塗工用ダイ3・4の箔搬出側に備える張力付与手段たるテンションローラ7により、ペースト塗工後の箔に弛みが生じないように張力を付与する構成としている。
このように、塗工部2の直前にガイドローラ5・6を備えることにより、表裏の塗工厚さを均等に揃えることが可能となり、塗工精度の向上に寄与し、さらに、塗工部2の直後にテンションローラ7を備えることにより、塗工直後に箔に作用する張力の調整を行うことができるため、良好な塗工状態を維持しながら箔の搬送を行うことができるのである。これにより、箔に対してペーストの両面同時塗工を行う場合の塗工品質を向上させることができるのである。
【0046】
また、テンションローラ7は、複数のローラ部材(即ち、ローラ8aL・8bL・8cL・8dL・8aR・8bR・8cR・8dRおよびローラ9aL・9bL・9cL・9dL・9aR・9bR・9cR・9dR)からなり、各ローラ部材を箔の搬送方向に対して平行となる方向に略等間隔に配置しつつ、箔の搬送方向と各ローラ部材の回転軸が成す角度が90度以下となる範囲で、箔の搬送方向下流側に向けて漸次拡大するように各ローラ部材を配置する構成としている。
これにより、ペーストに接触すること無く、箔に対して搬送方向下流側に作用する張力と、搬送方向に対する左右方向に作用する張力を効果的に付与することができるのである。
【0047】
次に、本発明の第二実施例に係る塗工装置の塗工部の構成について説明をする。
図5または図6に示す如く、本発明に係る塗工装置10の塗工部11は、前述した第一実施例に係る塗工装置1の塗工部2と同様に、塗工部11の箔の搬送上流側に表面側ガイドローラ14および裏面側ガイドローラ15を備え、かつ、塗工部11の箔の搬送下流側にテンションローラ16を備える構成としている。そして、本第二実施例においては、表面側ガイドローラ14を表面塗工用ダイ12と一体的に構成し、かつ、裏面側ガイドローラ15を裏面塗工用ダイ13と一体的に構成した点で第一実施例に係る塗工装置1と相違しており、この点に特徴を有している。
【0048】
表面塗工用ダイ12の箔の搬送方向に対する上流側下部には、支持軸12aが固設され、支持軸12a上に表面側ガイドローラ14を回転自在に支持する構成としている。また、これと同様に、裏面塗工用ダイ13の箔の搬送方向に対する上流側上部には、支持軸13aが固設され、支持軸13a上に裏面側ガイドローラ15を回転自在に支持する構成としている。
【0049】
このように、各ガイドローラ14・15を各塗工用ダイ12・13と一体的な構成とすることにより、各ガイドローラ14・15を塗工部11に対してより近接させる配置とすることが可能となる。このような構成とすることにより、塗工部11に供給する箔の振動をより効果的に抑制することができ、箔の安定供給に寄与することができる。
【0050】
次に、ペーストの塗工厚さの調整方法について説明をする。
従来は、ペーストの塗工厚さを調整する場合には各塗工用ダイを上下動させて位置調整をする構成としていた。また従来は、基点となる設備ベース等と実際の可動部たる各塗工用ダイの距離が離れている構成であった。このため、各塗工用ダイを支持するベース部材の剛性や寸法精度を確保しなければ、各塗工用ダイの位置決め精度を確保することができなかった。またこの場合、ベース部材の撓み等多くの誤差要素が介在してしまい、塗工厚さの寸法精度を向上させることも困難な状況であった。
【0051】
図7に示す如く、本発明に係る各塗工用ダイ12・13は、各ガイドローラ14・15を基点として、各支持軸12a・13aを中心に各塗工用ダイ12・13を回動させることができる。このような構成とすることにより、各塗工用ダイ12・13の回動角度を変化させることにより、各塗工用ダイ12・13と箔との間の距離(隙間)を調整することが可能となるため、これによりペーストの塗工厚さを容易に調整することが可能となっている。
また、各塗工用ダイ12・13に対して、基点となる各ガイドローラ14・15を一体的に支持する構成としているため、従来の構成に比して基点と可動部の間に介在する誤差要素が少なく、各ガイドローラ14・15、各支持軸12a・13aおよび各塗工用ダイ12・13等の各部材の剛性を確保することにより、容易に塗工厚さの寸法精度を確保することができる。
【0052】
つまり、各塗工用ダイ12・13と各ガイドローラ14・15を一体的な構成とすることにより、各ガイドローラ14・15による箔の規制位置と塗工部11をより近接させることが可能となり、更なる箔の振動抑制に寄与しつつ、各塗工用ダイ12・13の位置決め精度の向上にも寄与して、塗工品質を向上することができる。
【0053】
このように、箔規制手段を、表面塗工用ダイ12に一体的に形成される表側従動ローラたる表面側ガイドローラ14と、裏面塗工用ダイ13に一体的に形成される裏側従動ローラたる裏面側ガイドローラ15からなる構成とすることにより、容易に表裏の塗工厚さを均等に揃えることが可能となり、塗工精度の向上に寄与することができるのである。また、塗工厚さの調整を精度良く容易にすることができるのである。
【0054】
図6に示す如く、テンションローラ16は、第一実施例に係るテンションローラ7と同様に、上下一対となる表面側テンションローラ17および裏面側テンションローラ18により構成している。
また、表面側テンションローラ17は、左右一対となる表面左側ローラ群17Lおよび表面右側ローラ群17Rにより構成しており、本実施例では、各ローラ群17L・17Rをそれぞれ4個のローラで構成し、合計8個のローラ(即ち、図6中に示す各ローラ17aL・17bL・17cL・17dL・17aR・17bR・17cR・17dR)により表面側テンションローラ17を構成している。
【0055】
さらに同様に、裏面側テンションローラ18は、左右一対となる裏面左側ローラ群18Lおよび裏面右側ローラ群18Rにより構成しており、本実施例では、各ローラ群18L・18Rをそれぞれ4個のローラで構成し、合計8個のローラ(即ち、図6中に示す各ローラ18aL・18bL・18cL・18dL・18aR・18bR・18cR・18dR)により裏面側テンションローラ18を構成している。
【0056】
また、第一実施例に係るテンションローラ7と同様に、第二実施例に係るテンションローラ16を構成する各ローラ(即ち、ローラ17aL・17bL・17cL・17dL・17aR・17bR・17cR・17dRおよびローラ18aL・18bL・18cL・18dL・18aR・18bR・18cR・18dR)は、箔に対して垂直な向きに配設した回動軸(即ち、回動軸17eL・17fL・17gL・17hL・17eR・17fR・17gR・17hRおよび回動軸18eL・18fL・18gL・18hL・18eR・18fR・18gR・18hR)に対して固設しており、これにより各ローラが各回動軸を軸心として回動可能な構成としている。また前記各回動軸は、平面視において、箔の搬送方向と平行に、かつ、箔の搬送方向に沿って略等間隔に配設する構成としている。
【0057】
図6に示す如く、本発明の第二実施例に係る塗工装置10においては、各塗工用ダイ12・13の下流側に配設されるテンションローラ16は、各ローラ群(即ち、ローラ群17L・17R・18L・18R)ごとに各ローラ群を構成する各ローラを各リンク機構19・20・21・22により連結する構成としている。各リンク機構19・20・21・22は、主リンクバーと複数の副リンクバーにより構成している。
【0058】
さらに図8に示す如く、表面右側ローラ群17Rを例として詳述すると、リンク機構19を構成する主リンクバー19aおよび4個の副リンクバー19b・19c・19d・19eは、鋼板製の平板部材により構成しており、各副リンクバー19b・19c・19d・19eは、主リンクバー19aに対して相対回転可能に支持されている。
尚、主リンクバー19aの両端に支持される副リンクバー(即ち、副リンクバー19bおよび19e)を除くその他の副リンクバー(即ち、副リンクバー19cおよび19d)は、主リンクバー19aに形成された長孔19f・19gを利用して支持されており、主リンクバー19aの長辺方向に対して長孔19f・19gの範囲内で変位可能に支持される構成としている。これにより、各副リンクバーの長さが異なっていても、主リンクバー19aの変位に従って、副リンクバー19c・19dが変位可能な構成としている。
【0059】
さらに、表面右側ローラ群17Rを構成する各ローラ(即ち、図8中に示す各ローラ17aR・17bR・17cR・17dR)は、それぞれ副リンクバー19b・19c・19d・19eに対して相対回転不能に固設されている。
また、副リンクバー19b・19c・19d・19eの長さ(図8中に示すL1乃至L4)は、L1<L2<L3<L4の関係を有する構成としている。
【0060】
このような構成とすることにより、主リンクバー19aを変位させることにより、各副リンクバー19b・19c・19d・19eを一度に回動させることができるため、各ローラ17aR・17bR・17cR・17dを一斉に回転させることができる。さらに、各副リンクバー19b・19c・19d・19eの長さを前記関係(L1<L2<L3<L4)とすることにより、各ローラ17aR・17bR・17cR・17dの回転角度が副リンクバーの長さに応じて少しずつ異なるように回動される構成としている。
【0061】
具体的には、図8に示す如く、主リンクバー19aを操作することにより、各ローラ17aR・17bR・17cR・17dが一斉に回転され、その回転角度が図8中に示すθb乃至θeとなる構成としている。ここで、各角度θb乃至θeは、副リンクバー19b・19c・19d・19eの長さ(図8中に示すL1乃至L4)に対応して、θb<θc<θd<θeの関係を有している。
このように、各副リンクバーの長さに応じて、各ローラの回転角度を設定することが可能であるため、設計時において副リンクバーの長さを考慮すれば、箔に付与する張力の大きさを設定したり、各ローラ間の張力差を設定することが容易に可能となる。
【0062】
尚、各ローラ17aR・17bR・17cR・17dの角度が変更されても、各ローラの駆動が継続される構成とすることが望ましい。図9に示す如く、ローラ17aRを例として説明をすると、駆動源となるモータ23をローラ17aRと一体的に構成し、副リンクバー19bが回動され回動軸17eR回りにローラ17aRが回動されると、それに伴ってモータ23も回動される構成とすることができる。あるいは、駆動源とローラの回転軸をユニバーサルジョイント等を介して連結する構成とし、駆動源の駆動軸と回転軸が同一直線上になくともローラを駆動可能な構成とし、各ローラの回転方向の変化に対応する構成とすることも可能である。
【0063】
尚、表面右側ローラ群17R以外の各ローラ群17L・18R・18Lに備えられるリンク機構20・21・22についての詳細な説明は割愛するが、これらの他のリンク機構についても主リンクバーおよび複数の副リンクバーを備える構成としており、上下左右等の配置勝手は異なるものの表面右側ローラ群17Rに備えられるリンク機構19と同様の構成としている。
【0064】
即ち、テンションローラ7を構成する複数のローラ部材(即ち、各ローラ群17L・17R・18L・18R)は、リンク機構19・20・21・22を介して連結され、リンク機構19・20・21・22により箔の搬送方向と各ローラ部材の回転軸が成す角度を調整可能な構成としている。
これにより、箔に付与する張力を、使用する箔の仕様(幅や厚み等)に応じて容易に調整することができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の第一実施例に係る塗工装置の塗工部周辺の構成を示す模式図。
【図2】同じく斜視図。
【図3】同じく平面図。
【図4】本発明の一実施例に係るテンションローラの構成を示す模式図。
【図5】本発明の第二実施例に係る塗工装置の塗工部周辺の構成を示す模式図。
【図6】同じく斜視図。
【図7】同じく塗工厚さの調整状況を示す側面模式図。
【図8】本発明の一実施例に係るリンク機構の構成を示す模式図。
【図9】同じくテンションローラを示す模式図。
【図10】従来の塗工装置に係る両面同時塗工方法を示す模式図。
【図11】同じく塗工部周辺の構成を示す模式図。
【図12】従来の両面同時塗工時の搬送方法を示す模式図。
【符号の説明】
【0066】
1 塗工装置
2 塗工部
3 表面塗工用ダイ
4 裏面塗工用ダイ
5 表面側ガイドローラ
6 裏面側ガイドローラ
7 テンションローラ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面塗工用ダイと裏面塗工用ダイからなる一対の塗工用ダイを対向させて配置し、
該一対の塗工用ダイの隙間を通過させる箔の表裏に対して、
ペーストを同時に塗工するペーストの表裏同時塗工方法であって、
前記一対の塗工用ダイの箔搬入側に備える箔規制手段により、
前記表面塗工用ダイと前記箔との距離と、
前記裏面塗工用ダイと前記箔との距離が均等となるように前記箔を保持して、かつ、
前記一対の塗工用ダイの箔搬出側に備える張力付与手段により、
ペースト塗工後の前記箔に弛みが生じないように張力を付与する、
ことを特徴とするペーストの表裏同時塗工方法。
【請求項2】
前記箔規制手段は、
前記表面塗工用ダイに一体的に形成される表面側ガイドローラと、
前記裏面塗工用ダイに一体的に形成される裏面側ガイドローラからなる、
ことを特徴とする請求項1記載のペーストの同時塗工方法。
【請求項3】
前記張力付与手段は、
前記箔の搬送方向に対して左右に形成される未塗工縁部を挟持する一対のテンションローラからなる、
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載のペーストの表裏同時塗工方法。
【請求項4】
前記テンションローラは、
複数のローラ部材からなり、
各ローラ部材を前記箔の搬送方向に対して平行となる方向に略等間隔に配置しつつ、
前記箔の搬送方向と前記ローラ部材の回転軸が成す角度が90度以下となる範囲で、前記箔の搬送方向下流側に向けて漸次拡大するように前記ローラ部材を配置する、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のペーストの表裏同時塗工方法。
【請求項5】
前記テンションローラを構成する前記複数のローラ部材は、
リンク機構を介して連結され、
前記リンク機構により、前記箔の搬送方向と前記各ローラ部材の回転軸が成す角度を調整可能とする、
ことを特徴とする請求項4記載のペーストの表裏同時塗工方法。
【請求項6】
互いに対向配置される表面塗工用ダイと裏面塗工用ダイからなる一対の塗工用ダイを備え、該一対の塗工用ダイの隙間を通過させる箔の表裏に対して、ペーストを同時に塗工するペーストの表裏同時塗工装置であって、
前記一対の塗工用ダイの箔搬入側に配置され、前記表面塗工用ダイと前記箔との距離と、前記裏面塗工用ダイと前記箔との距離が均等となるように前記箔を保持する箔規制手段と、
前記一対の塗工用ダイの箔搬出側に配置され、ペースト塗工後の前記箔に弛みが生じないように張力を付与する張力付与手段とを備える、
ことを特徴とするペーストの表裏同時塗工装置。
【請求項7】
前記箔規制手段は、
前記表面塗工用ダイに一体的に形成される表面側ガイドローラと、
前記裏面塗工用ダイに一体的に形成される裏面側ガイドローラからなる、
ことを特徴とする請求項6記載のペーストの表裏同時塗工装置。
【請求項8】
前記張力付与手段は、
前記箔の搬送方向に対して左右に形成される未塗工縁部を挟持する一対のテンションローラからなる、
ことを特徴とする請求項6または請求項7記載のペーストの表裏同時塗工装置。
【請求項9】
前記テンションローラは、
複数のローラ部材からなり、
各ローラ部材を前記箔の搬送方向に対して平行となる方向に略等間隔に配置しつつ、
前記箔の搬送方向と前記ローラ部材の回転軸が成す角度が90度以下となる範囲で、前記箔の搬送方向下流側に向けて漸次拡大するように前記ローラ部材を配置する、
ことを特徴とする請求項6乃至請求項8のいずれか一項に記載のペーストの表裏同時塗工装置。
【請求項10】
前記テンションローラを構成する前記複数のローラ部材は、
リンク機構を介して連結され、
前記リンク機構により、前記箔の搬送方向と前記各ローラ部材の回転軸が成す角度を調整可能とする、
ことを特徴とする請求項9記載のペーストの表裏同時塗工装置。
【請求項1】
表面塗工用ダイと裏面塗工用ダイからなる一対の塗工用ダイを対向させて配置し、
該一対の塗工用ダイの隙間を通過させる箔の表裏に対して、
ペーストを同時に塗工するペーストの表裏同時塗工方法であって、
前記一対の塗工用ダイの箔搬入側に備える箔規制手段により、
前記表面塗工用ダイと前記箔との距離と、
前記裏面塗工用ダイと前記箔との距離が均等となるように前記箔を保持して、かつ、
前記一対の塗工用ダイの箔搬出側に備える張力付与手段により、
ペースト塗工後の前記箔に弛みが生じないように張力を付与する、
ことを特徴とするペーストの表裏同時塗工方法。
【請求項2】
前記箔規制手段は、
前記表面塗工用ダイに一体的に形成される表面側ガイドローラと、
前記裏面塗工用ダイに一体的に形成される裏面側ガイドローラからなる、
ことを特徴とする請求項1記載のペーストの同時塗工方法。
【請求項3】
前記張力付与手段は、
前記箔の搬送方向に対して左右に形成される未塗工縁部を挟持する一対のテンションローラからなる、
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載のペーストの表裏同時塗工方法。
【請求項4】
前記テンションローラは、
複数のローラ部材からなり、
各ローラ部材を前記箔の搬送方向に対して平行となる方向に略等間隔に配置しつつ、
前記箔の搬送方向と前記ローラ部材の回転軸が成す角度が90度以下となる範囲で、前記箔の搬送方向下流側に向けて漸次拡大するように前記ローラ部材を配置する、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のペーストの表裏同時塗工方法。
【請求項5】
前記テンションローラを構成する前記複数のローラ部材は、
リンク機構を介して連結され、
前記リンク機構により、前記箔の搬送方向と前記各ローラ部材の回転軸が成す角度を調整可能とする、
ことを特徴とする請求項4記載のペーストの表裏同時塗工方法。
【請求項6】
互いに対向配置される表面塗工用ダイと裏面塗工用ダイからなる一対の塗工用ダイを備え、該一対の塗工用ダイの隙間を通過させる箔の表裏に対して、ペーストを同時に塗工するペーストの表裏同時塗工装置であって、
前記一対の塗工用ダイの箔搬入側に配置され、前記表面塗工用ダイと前記箔との距離と、前記裏面塗工用ダイと前記箔との距離が均等となるように前記箔を保持する箔規制手段と、
前記一対の塗工用ダイの箔搬出側に配置され、ペースト塗工後の前記箔に弛みが生じないように張力を付与する張力付与手段とを備える、
ことを特徴とするペーストの表裏同時塗工装置。
【請求項7】
前記箔規制手段は、
前記表面塗工用ダイに一体的に形成される表面側ガイドローラと、
前記裏面塗工用ダイに一体的に形成される裏面側ガイドローラからなる、
ことを特徴とする請求項6記載のペーストの表裏同時塗工装置。
【請求項8】
前記張力付与手段は、
前記箔の搬送方向に対して左右に形成される未塗工縁部を挟持する一対のテンションローラからなる、
ことを特徴とする請求項6または請求項7記載のペーストの表裏同時塗工装置。
【請求項9】
前記テンションローラは、
複数のローラ部材からなり、
各ローラ部材を前記箔の搬送方向に対して平行となる方向に略等間隔に配置しつつ、
前記箔の搬送方向と前記ローラ部材の回転軸が成す角度が90度以下となる範囲で、前記箔の搬送方向下流側に向けて漸次拡大するように前記ローラ部材を配置する、
ことを特徴とする請求項6乃至請求項8のいずれか一項に記載のペーストの表裏同時塗工装置。
【請求項10】
前記テンションローラを構成する前記複数のローラ部材は、
リンク機構を介して連結され、
前記リンク機構により、前記箔の搬送方向と前記各ローラ部材の回転軸が成す角度を調整可能とする、
ことを特徴とする請求項9記載のペーストの表裏同時塗工装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−284528(P2008−284528A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−134710(P2007−134710)
【出願日】平成19年5月21日(2007.5.21)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月21日(2007.5.21)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]