説明

ペースト塗布装置及びペースト塗布方法

【課題】 ノズルを用いて修理ペーストを塗布するペースト塗布装置において、ノズルの吐出口におけるペーストの乾燥を抑制し、塗布量を安定させる。
【解決手段】 塗布対象に塗布されるペースト1を吐出口より吐出するノズル2と、ノズル2内に配置され、ノズル2の吐出口を閉塞する位置と、ノズル2内のペースト1を吐出口を介して吐出可能な位置と、に移動可能な針状部3と、を備える。吐出口を介してペースト1を吐出可能な位置に針状部3を移動させた際に、ペースト1が針状部3の先端に供給され、針状部3により吐出口を閉塞した状態では、針状部3の先端が吐出口を介してノズル2外に突出した状態となる。針状部3の先端に供給されたペースト1を塗布対象に転写することにより塗布を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペースト塗布装置及びペースト塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、プラズマディスプレイパネル(以下、PDP)の製造工程において発生する電極の断線は重大な欠陥である。このため、断線が生じた場合には、電極を修理することによって製品を救済する措置がなされる。
【0003】
電極の断線箇所の修理としては、断線部分にのみ修理用ペーストを塗布して焼成仕上げをすることが一般的である。
【0004】
修理用ペーストの塗布方法としては、針の先端に付着させたペーストを転写する塗布方法(針塗布方法)や、ノズルよりペーストを滴下する塗布方法(ノズル式塗布方法)が用いられている。
【0005】
先ず、これら2つの方法のうちノズル式塗布方法について説明する。
【0006】
図1は従来のノズル式塗布方法を説明するための図であり、このうち図1(a)はノズルの要部の構造を示す正面断面図、図1(b)は電極の断線部分に対しペーストを塗布する状態を示す正面断面図、図3(c)は塗布後のノズルの状態を示す要部正面断面図である。
【0007】
図1(a)に示すように、ノズル1002の下部はテーパ状に次第に先細りとなっており、その先端部(下端部)には修理ペースト1006を吐出するための開口部1003が形成されている。
【0008】
図1(b)に示すように、PDPを構成する基板1004(以下、PDP基板1004)上に形成された電極1005が断線している場合のペースト塗布工程について、以下に説明する。
【0009】
先ず、ノズル1002の先端から電極1005(以下、修理対象電極1005)までの距離を高さ測定センサ1007により測定し、所定の距離(例えば、30μm)となるまでノズル1002の先端を修理対象電極1005まで近づける。
【0010】
次に、ノズル1002内の修理ペースト1006を所定時間の間、一定の圧力で加圧することにより、ノズル1002から修理ペースト1006を吐出し、該修理ペースト1006を修理対象電極1005に付着させる。
【0011】
すなわち、図1(b)に示すように、修理対象電極1005の相互に分断された第1部分1005aと第2部分1005aとを繋げるように修理ペースト1006を塗布する。
【0012】
ここで、線状に塗布する場合は、修理ペース1006を吐出しながらノズル1005を修理対象電極1005の長手方向(図1の矢印A方向)に移動させる。
【0013】
1回の修理に使用されるペーストの量は、例えば0.01mg程度と微量であるため、ノズル1002から修理ペースト1006を吐出させるための圧力や加圧時間には微妙な加減が必要である。
【0014】
また、ノズル1002の先端から修理対象電極1005までの距離やノズル移動速度も、修理ペースト1006の塗布量や塗布幅を決める重要なパラメータである。
【0015】
具体的には、距離を遠ざければ転写が起こらず、ノズル移動速度を速くすれば塗布幅は細くなる。
【0016】
よって、常時一定の距離とノズル移動速度を維持することはノズル式塗布方法において重要である。
【0017】
塗布によって形成される修理ペースト1006の塗布径及び塗布幅は、ノズル1002の先端の開口部1003の内径r(内径rは、例えば、30μm程度)、ノズル1002と修理対象電極1005までの距離、ペースト加圧力、ペースト加圧時間、ペースト粘度、ペーストを吐出しながらのノズル移動速度によって決定される。
【0018】
次に、従来の針塗布方法について説明する。
【0019】
図2は従来の針塗布方法を説明するための一連の工程図である。
【0020】
図2(a)に示すように、針塗布方法は、針2001と、修理ペースト1006を貯留したペーストポット2002と、を用いて行う。
【0021】
図2(e)に示すように、PDP基板1004上に形成された電極1005が断線している場合のペースト塗布工程について、以下に説明する。
【0022】
先ず、図2(b)に示すように、ペーストポット2002を針2001の真下の位置に移動させる。
【0023】
次に、図2(c)に示すように、針2001を下降させて、該針2001の下端にペーストポット2002内の修理ペースト1006を付着させる。
【0024】
次に、図2(d)に示すように、針2001を上昇させる。この段階で、針2001の下端部には、修理ペースト1006の滴点が形成されている。
【0025】
次に、図2(e)に示すように、針2001を修理対象電極1005の断線箇所の真上に移動させる。
【0026】
次に、図2(f)に示すように、針2001を下降させて、該針2001の下端に付着していた修理ペースト1006の滴点を修理対象電極1005の断線箇所に転写した後で、図2(g)に示すように針2001を上昇させる。
【0027】
これにより、図2(g)に示すように、修理対象電極1005の相互に分断された第1部分1005aと第2部分1005aとが修理ペースト1006により相互に繋げられた状態となる。
【0028】
なお、転写される修理ペースト1006の量及び大きさは、針2001の先端(下端)の径、滴点の量、転写時間、ペーストの粘度によって決定される。
【0029】
また、修理ペースト1006を線状に塗布する場合は、針2001の先端への滴点形成と転写とを、転写位置を徐々に移動させながら繰り返し行う。
【0030】
上記のようにペーストを塗布して電極を修理するに際しては、ペーストを精度良く塗布しないと修理痕が目立ってしまうため、正常な電極部分と同一幅程度に仕上がるような塗布方法を実施しなければならない。
【0031】
PDPの電極幅は50μm程度であることから、転写用針から供給するペーストやノズル先端から吐出させるペーストはごく微量で仕上がりのペースト塗布幅は50μm以下を維持しなければならないこととなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0032】
ところで、従来のノズル式塗布方法では、ノズル1002の先端に付着している修理ペースト1006は、例えば30μm程の狭い範囲で常時空気に触れている。
【0033】
修理ペースト1006は揮発性溶剤を含むため、空気に触れる状態では乾燥しやすい。
【0034】
このため、ノズル1002の開口部1003の内部に修理ペースト1006の詰まりが生じてしまうという問題があった。
【0035】
修理ペースト1006の詰まりが発生した場合、ノズル1002の内部を加圧して修理ペースト1006を捨て打ちするか、ノズル1002の先端を溶剤に浸して詰まりを除去しなければならない。
【0036】
捨て打ち動作及び溶剤に浸す動作は、装置の稼動ロスとなる。
【0037】
また、捨て打ちするペースト量は、乾燥し始めた部分を全て吐出させるため、実際の塗布作業に使用する量より捨てる量の方が多くなってしまう。具体的には、例えば、塗布に使用するペーストに対し、5〜10倍以上ものペーストを捨て打ちにより捨てることとなっていた。
【0038】
更に、塗布量を制御するためのパラメータとして、ノズル1002の先端の開口部1003の内径r、ノズル1002と修理対象電極1005までの距離、ペースト加圧力、ペースト加圧時間、ペースト粘度、ペーストを吐出しながらのノズル移動速度といった、多くの項目を管理する必要があるため、塗布量を安定させるのは困難であった。
【0039】
また、針塗布方法では、修理対象電極1005に修理ペースト1006を一度転写させた後は、次に針2001の先端に修理ペースト1006を補給するまでには、数回の動作がかかる。
【0040】
すなわち、針2001をPDP基板1004上から移動させる動作、針2001の下にペーストポット2002を移動させる動作、針2001を下降させてその先端にペーストポット2002内の修理ペースト1006を付着させる動作、及び、針2001を再び上昇させる動作などが必要である。
【0041】
よって、針塗布方法では、連続的に塗布を実施する場合は稼動ロスが発生するという問題があった。
【0042】
本発明が解決しようとする課題には、上述したような問題が一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0043】
請求項1に記載の発明は、塗布対象に塗布されるペーストを吐出口より吐出するノズルと、前記ノズル内に配置され、前記ノズルの前記吐出口を閉塞する位置と、前記ノズル内のペーストを前記吐出口を介して吐出可能な位置との間を移動可能な針状部と、を備えることを特徴としている。
【0044】
また、請求項8に記載の発明は、請求項1乃至7の何れか一項に記載のペースト塗布装置を用いて前記塗布対象にペーストを塗布する方法において、ペーストを塗布しない際には、前記針状部の位置を、前記吐出口を閉塞する位置に維持させることを特徴としている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
次に、実施形態を説明する。
【0046】
本実施形態に係るペースト塗布装置は、塗布対象に塗布されるペーストを吐出口より吐出するノズルと、前記ノズル内に配置され、前記ノズルの前記吐出口を閉塞する位置と、前記ノズル内のペーストを前記吐出口を介して吐出可能な位置との間を移動可能な針状部と、を備えることを特徴としている。
【0047】
本実施形態に係るペースト塗布装置によれば、前記ノズル内のペーストを前記吐出口を介して吐出可能な位置に前記針状部を移動させることができる一方で、ペーストを塗布しない際には、前記吐出口を閉塞する位置に前記針状部の位置を維持させることができるので、吐出口におけるペーストの乾燥を抑制することができる。よって、ノズルの吐出口におけるペーストの詰まりは発生せず、捨て打ちをする必要が無くなるので、捨て打ち動作によるロスを低減することができるとともに、ペーストの廃棄量も抑えられる。
【0048】
本実施形態に係るペースト塗布装置においては、前記ノズル内のペーストを前記吐出口を介して吐出可能な位置に前記針状部を移動させた際に、前記ノズル内のペーストが前記針状部の先端に供給され、前記針状部により前記吐出口を閉塞した状態では、前記針状部の先端が前記吐出口を介して前記ノズルの外に突出した状態となり、前記針状部の先端に供給されたペーストを前記塗布対象に転写することにより塗布を行うように構成されていることが好ましい。
【0049】
この場合、針塗布方法によってペーストを塗布することが可能となる。よって、ノズル式塗布方法とは異なり、多くのパラメータを管理する必要がないため、容易に塗布量を安定させることが可能となる。すなわち、針状部の先端の表面積と、ノズルの吐出口の開口面積は一定であるため、そこに付着するペーストもほぼ一定に維持することができ、塗布量は常に一定となる。つまり、塗布量は、針状部の先端の表面積と、ノズルの吐出口の開口面積とを、予め適宜の値に設定することにより制御することができる。また、針状部の先端を塗布対象に接触させるため、塗布対象と針状部(ノズル)との間の隙間を微細な条件で調節する必要がない。
【0050】
本実施形態に係るペースト塗布装置においては、前記針状部は、その自重により前記吐出口を閉塞する位置に移動することが好ましい一例であり、この場合、針状部を吐出口を閉塞する位置へと自動的に移動させることが可能となる。
【0051】
或いは、本実施形態に係るペースト塗布装置においては、前記吐出口を閉塞する位置に向けて前記針状部を付勢する付勢手段を備えることも好ましい一例である。
【0052】
また、本実施形態に係るペースト塗布装置においては、前記ノズル内のペーストを前記吐出口を介して吐出可能な位置へと前記針状部を移動させる移動手段を備えることも好ましい一例である。
【0053】
また、本実施形態に係るペースト塗布装置においては、前記ノズルの動作を制御するノズル制御手段を備え、前記ノズル制御手段は、前記吐出口がペーストの塗布対象へと移動するように前記ノズルを移動させる第1の制御と、前記ノズルを前記塗布対象から離間させる第2の制御と、前記針状部の先端が前記塗布対象へと移動するように前記ノズルを移動させる第3の制御と、をこの順に行い、前記第1の制御を行う過程で、前記針状部の先端が前記塗布対象に突き当たって前記ノズル内に押し込まれることにより、前記針状部の先端にペーストが供給され、前記第2の制御を行う過程で、ペーストが供給された前記針状部の先端が前記吐出口を介して前記ノズルの外に突出した状態となり、前記第3の制御を行うことにより、前記針状部の先端のペーストが前記塗布対象に転写されることが好ましい。
【0054】
また、本実施形態に係るペースト塗布装置においては、前記ノズルの動作を制御するノズル制御手段を備え、前記ノズル制御手段は、前記吐出口がペーストの塗布対象へと移動するように前記ノズルを移動させる第1の制御と、前記ノズルを前記塗布対象から離間させる第2の制御と、前記針状部の先端が前記塗布対象へと移動するように前記ノズルを移動させる第3の制御と、を行った後で、前記ノズルを前記塗布対象から離間させる第4の制御と、前記塗布対象において、前記第3の制御により前記針状部の先端を移動させた位置と隣接する位置へと前記針状部の先端が移動するように前記ノズルを移動させる第5の制御と、を繰り返し行い、前記第1の制御を行う過程で、前記針状部の先端が前記塗布対象に突き当たって前記ノズル内に押し込まれることにより、前記針状部の先端にペーストが供給され、前記第2及び第4の制御を行う過程で、ペーストが供給された前記針状部の先端が前記吐出口を介して前記ノズルの外に突出した状態となり、前記第3及び第5の制御を行うことにより、前記針状部の先端のペーストが前記塗布対象に転写されるとともに、前記ノズル内のペーストが前記針状部の先端に新たに供給されることが好ましい。
【0055】
この場合、第4の制御と第5の制御を繰り返し行うことにより、ペーストを連続的に点状に塗布することができる。つまり、ペーストを総体として線状に塗布する動作を高速で安定的に行うことができる。すなわち、第5の制御の後で第4の制御を行うことにより、先端に新たにペーストが供給された針状部がノズルから突出した状態となるため、連続的に滴点を形成して線状に塗布する際の動作ロスを削減できる。
【0056】
また、本実施形態に係るペースト塗布方法は、本実施形態に係るペースト塗布装置を用いて前記塗布対象にペーストを塗布する方法において、ペーストを塗布しない際には、前記針状部の位置を、前記吐出口を閉塞する位置に維持させることを特徴としている。
【0057】
また、本実施形態に係るペースト塗布方法は、本実施形態に係るペースト塗布装置を用いて前記塗布対象にペーストを塗布する方法において、前記吐出口がペーストの塗布対象へと移動するように前記ノズルを移動させることにより、前記針状部の先端を前記塗布対象に突き当てて前記ノズル内に押し込み、前記針状部の先端にペーストを供給する第1の過程と、前記ノズルを前記塗布対象から離間させる一方で、ペーストが供給された前記針状部の先端を再び前記ノズルの前記吐出口より突出させた状態とする第2の過程と、前記針状部の先端が前記塗布対象へと移動するように前記ノズルを移動させることにより、前記針状部の先端のペーストを前記塗布対象に転写する第3の過程と、を備えることを特徴としている。
【0058】
また、本実施形態に係るペースト塗布方法は、本実施形態に係るペースト塗布装置を用いて前記塗布対象にペーストを塗布する方法において、前記吐出口がペーストの塗布対象へと移動するように前記ノズルを移動させることにより、前記針状部の先端を前記塗布対象に突き当てて前記ノズル内に押し込み、前記針状部の先端にペーストを供給する第1の過程と、前記ノズルを前記塗布対象から離間させる一方で、ペーストが供給された前記針状部の先端を再び前記ノズルの前記吐出口より突出させた状態とする第2の過程と、前記針状部の先端が前記塗布対象へと移動するように前記ノズルを移動させることにより、前記針状部の先端のペーストを前記塗布対象に転写するとともに、前記ノズル内のペーストを前記針状部の先端に新たに供給する第3の過程と、を行った後で、前記ノズルを前記塗布対象から離間させる一方で、ペーストが供給された前記針状部の先端を再び前記ノズルの前記吐出口より突出させた状態とする第4の過程と、前記塗布対象において、前記第3の過程により前記針状部の先端を移動させた位置と隣接する位置へと前記針状部の先端が移動するように前記ノズルを移動させることにより、前記針状部の先端のペーストを前記塗布対象に転写するとともに、前記ノズル内のペーストを前記針状部の先端に新たに供給する第5の過程と、を繰り返し行うことを特徴としている。
【実施例1】
【0059】
図3は実施例1に係るペースト塗布装置100の構造を示す正面断面図、図4はペースト塗布装置100の主要なブロック構成を示すブロック図、図5はペースト塗布装置100を用いた一連のペースト塗布動作を示す工程図(正面断面図)である。
【0060】
図3に示すように、ペースト塗布装置100は、塗布対象に塗布される修理ペースト1を吐出口2aより吐出するノズル2と、ノズル2内に配置された針(針状部)3と、を備えている。
【0061】
更に、ペースト塗布装置100は、図4に示すように、ノズル2を駆動させるノズル駆動部4と、このノズル駆動部4の動作制御を行う制御部(ノズル制御手段)5と、を備えている。
【0062】
ノズル駆動部4は、例えば、モータなどを備えて構成され、ノズル2を上昇、下降及び水平移動させることが可能となっている。
【0063】
針3は、ノズル2内において、ノズル2の吐出口2aを閉塞する位置(図3、図5(a)、図5(c)、図5(e))と、ノズル2内の修理ペースト1を吐出口2aを介して吐出可能な位置(図5(b)、図5(d))との間を移動可能となっている。
【0064】
図3に示すように、針3の先端部(下部)3aは、次第に先細りとなっており、ノズル2の下部2bも、内周及び外周がともに次第に先細りとなっている。
【0065】
針3の先端部3aはノズル2の吐出口2aよりも大径となっており、ノズル2の吐出口2aから脱落することなく、該吐出口2aを閉塞可能である。
【0066】
図3に示すように、針3の先端部3aは、吐出口2aを閉塞した状態で、ノズル2の下端よりも下方に突出した状態となる。
【0067】
次に、動作を説明する。
【0068】
なお、以下では、例えば、プラズマディスプレイパネルを構成するガラス基板7上に形成された電極6(以下、修理対象電極6)に断線が発生しており、この電極6を修理する動作を説明する。
【0069】
先ず、予め、ノズル2の内部に修理ペースト1を供給しておく。
【0070】
そして、図5(a)に示すように、制御部5の制御下でノズル駆動部4がノズル2をガラス基板7上の修理対象電極6の修理箇所8、すなわち、ガラス基板7において、断線した修理対象電極6の第1部分6aと第2部分6bとの間隔に位置する部分の上方に移動させる。
【0071】
なお、ここまでの段階では、図5(a)に示すように、針3がノズル2の吐出口2aを閉塞した状態となっている。
【0072】
次に、図5(b)に示すように、制御部5の制御下でノズル駆動部4がノズル2を下降させる。すなわち、吐出口2aが修理箇所8へと移動するようにノズル2を移動させる。この過程で、針3の先端が修理箇所8に突き当たってノズル2内に押し込まれ、該針3の先端部に修理ペースト1が付着する(供給される)。
【0073】
次に、図5(c)に示すように、制御部5の制御下でノズル駆動部4がノズル2を上昇させる。すなわち、ノズル2を修理箇所8から離間させる。この過程で、針3が自重によりノズル2に対し相対的に下降することにより、再び針3によりノズル2の吐出口2aが閉塞されるとともに、修理ペースト1が供給された針3の先端が吐出口2aを介して下方に突出した状態となる。
【0074】
次に、図5(d)に示すように、制御部5の制御下でノズル駆動部4がノズル2を下降させる。すなわち、針3の先端が修理箇所8へと移動するようにノズル2を移動させる。これにより、針3の先端の修理ペースト1が修理対象電極6の第1部分6aと第2部分6bとを繋げるようにしてガラス基板7上に塗布される。
【0075】
次に、図5(e)に示すように、制御部5の制御下でノズル駆動部4がノズル2を上昇させる。すなわち、ノズル2を修理箇所8から離間させる。この過程で、針3が自重によりノズル2に対し相対的に下降して図5(e)に示す状態となり、再び針3によりノズル2の吐出口2aが閉塞されるとともに、ノズル2内の修理ペースト1が針3の先端に供給された状態となる。このように、針3によりノズル2の吐出口2aが閉塞されるので、ノズル2の内部の修理ペースト1の乾燥が抑制される。
【0076】
なお、図5(e)に示すようにノズル2の先端に修理ペースト1が付着した状態で放置すると、ノズル2の先端の修理ペースト1は乾燥するが、ノズル2の先端をその後の塗布動作により塗布対象に押し付けることにより、乾燥した修理ペースト1を粉砕してノズル2から除去することができる。このように、乾燥した修理ペースト1を塗布対象(修理対象電極6)に押し付けるとともに粉砕し、次工程の焼成を実施することにより、該修理ペースト1を修理対象電極6と結合させることができ、廃棄しないで済む。
【0077】
以上のような実施例1によれば、針3によりノズル2の吐出口2aを閉塞することができるので、吐出口2aにおける修理ペースト1の乾燥を抑制することができる。よって、ノズル2の吐出口2aにおける修理ペースト1の詰まりは発生せず、捨て打ちをする必要が無くなるので、捨て打ち動作によるロスを低減することができるとともに、修理ペースト1の廃棄量も抑えることができる。
【0078】
また、針塗布方法によって修理ペースト1を塗布することが可能であるので、ノズル式塗布方法とは異なり、多くのパラメータを管理する必要がなく、容易に塗布量を安定させることが可能となる。すなわち、針3の先端の表面積と、ノズル2の吐出口2aの開口面積は一定であるため、そこに付着する修理ペースト1の量もほぼ一定に維持することができ、塗布量は常に一定となる。つまり、塗布量は、針3の先端の表面積と、ノズル2の吐出口2aの開口面積とを、予め適宜の値に設定することにより制御することができる。また、針3の先端を塗布対象に接触させるため、塗布対象と針3(及びノズル2)との間の隙間を微細な条件で調節する必要がない。
【0079】
実施例1によれば、塗布対象に塗布される修理ペースト1を吐出口2aより吐出するノズル2と、ノズル2内に配置され、ノズル2の吐出口2aを閉塞する位置と、ノズル2内の修理ペースト1を吐出口2aを介して吐出可能な位置との間を移動可能な針3と、を備えるので、ノズル2内の修理ペースト1を吐出口2aを介して吐出可能な位置に針3を移動させることができる一方で、修理ペースト1を塗布しない際には、吐出口2aを閉塞する位置に針3の位置を維持させることができるので、吐出口2aにおける修理ペースト1の乾燥を抑制することができる。よって、ノズル2の吐出口2aにおける修理ペースト1の詰まりは発生せず、捨て打ちをする必要が無くなるので、捨て打ち動作によるロスを低減することができるとともに、修理ペースト1の廃棄量も抑えられる。
【実施例2】
【0080】
上記の実施例1では、針3を塗布対象に突き当てて押し付けることにより、針3をノズル2に対して相対的に上昇させる例を説明したが、実施例2では、針3を上昇させる手段(移動手段)と、針3を下方に付勢する手段(付勢手段)と、を備える例について説明する。
【0081】
図6は、実施例2の場合の制御ブロック図である。
【0082】
図6に示すように、針3を上昇させる針上昇部8を更に備えている。この針上昇部8は、例えば、モータなどを備えて構成されている。
【0083】
更に、実施例2の場合、針3を下方に付勢する付勢手段として、例えば、コイルスプリング(図示略)を備えている。このコイルスプリングは、針3の上部(図示略)を下方に付勢している。
【0084】
実施例2の場合、図5(a)から図5(b)にかけて、並びに、図5(c)から図5(d)にかけて、それぞれ制御部5の制御下で針上昇部8がコイルスプリングによる付勢に抗して針3をノズル2に対して相対的に上昇させる。
【0085】
また、実施例2の場合、図5(b)並びに図5(d)の動作の後は、針上昇部8による針3の上昇動作が解除される。このため、図5(b)から図5(c)にかけて、並びに、図5(d)から図5(e)にかけては、コイルスプリングの付勢に従って、針3がノズル2に対して相対的に下降し、該針3によりノズル2の吐出口2aが閉塞される。
【0086】
以上のような実施例2によれば、針3の昇降動作を、実施例1の場合よりも好適に行うことができる。
【0087】
なお、上記の実施例2では、付勢手段としてのコイルスプリングと、移動手段としての針上昇部8と、をともに備える例を説明したが、これらのうちの何れか一方のみを備えることとしても良い。
【実施例3】
【0088】
上記の実施例1では、修理ペースト1を1箇所(1点)にのみ塗布する例を説明したが、実施例3では、複数の部分に連続的に塗布することにより、総体として線状に修理ペースト1を塗布する例について説明する。
【0089】
図7は実施例3の場合の修理ペースト1(修理ペースト1a、1b、1c)を塗布後の状態を示す正面断面図である。
【0090】
実施例3の場合、先ず、図5(a)〜図5(e)の動作を実施例1と同様に行う。これにより、図7に示す修理ペースト1a、1b、1cのうち修理ペースト1aのみを塗布した状態とするとともに、針3の先端に新たに修理ペースト1bを供給した状態とする。
【0091】
次に、ガラス基板7上において、先のノズル2の下降動作(図5(d)に相当する動作、すなわち、図7の修理ペースト1aを塗布する動作)により針3の先端を移動させた位置と隣接する位置へと針3の先端が移動するようにノズル2を移動させる。
【0092】
これにより、針3の先端の修理ペースト1bを、ガラス基板7上において修理ペースト1aに隣接する位置に転写する。
【0093】
次に、再びノズル2をガラス基板7から離間させることにより、針3の先端に新たに修理ペースト1cを供給した状態とする。
【0094】
次に、ガラス基板7上において、先のノズル2の下降動作(図7の修理ペースト1bを塗布する動作)により針3の先端を移動させた位置と隣接する位置へと針3の先端が移動するようにノズル2を移動させる。
【0095】
これにより、針3の先端の修理ペースト1cを、ガラス基板7上において修理ペースト1bに隣接する位置に転写する。
【0096】
次に、再びノズル2をガラス基板7から離間させる。
【0097】
このように、実施例3では、制御部5は、ノズル2を塗布対象としてのガラス基板7から離間させる制御(第4の制御)と、塗布対象において先の下降動作により針3の先端を移動させた位置と隣接する位置へと針3の先端が移動するようにノズル2を移動させる制御(第5の制御)と、を繰り返し行う。
【0098】
以上のような実施例3によれば、例えば、断線された第1部分6aと第2部分6bとの距離が長くても、好適に修理対象電極6の修理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】従来のノズル式塗布方法を説明するための図である。
【図2】従来の針塗布方法を説明するための一連の工程図である。
【図3】実施例1に係るペースト塗布装置の構造を示す正面断面図である。
【図4】実施例1に係るペースト塗布装置の主要なブロック構成を示すブロック図である。
【図5】実施例1に係るペースト塗布装置を用いたペースト塗布方法を説明するための一連の工程図である。
【図6】実施例2に係るペースト塗布装置の主要なブロック構成を示すブロック図である。
【図7】実施例3の場合のペースト塗布方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0100】
100 ペースト塗布装置
1 修理ペースト(ペースト)
2 ノズル
2a 吐出口
3 針(針状部)
5 制御部(ノズル制御手段)
8 針上昇部(移動手段)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布対象に塗布されるペーストを吐出口より吐出するノズルと、
前記ノズル内に配置され、前記ノズルの前記吐出口を閉塞する位置と、前記ノズル内のペーストを前記吐出口を介して吐出可能な位置との間を移動可能な針状部と、
を備えることを特徴とするペースト塗布装置。
【請求項2】
前記ノズル内のペーストを前記吐出口を介して吐出可能な位置に前記針状部を移動させた際に、前記ノズル内のペーストが前記針状部の先端に供給され、
前記針状部により前記吐出口を閉塞した状態では、前記針状部の先端が前記吐出口を介して前記ノズルの外に突出した状態となり、
前記針状部の先端に供給されたペーストを前記塗布対象に転写することにより塗布を行うように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のペースト塗布装置。
【請求項3】
前記針状部は、その自重により前記吐出口を閉塞する位置に移動することを特徴とする請求項1又は2に記載のペースト塗布装置。
【請求項4】
前記吐出口を閉塞する位置に向けて前記針状部を付勢する付勢手段を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のペースト塗布装置。
【請求項5】
前記ノズル内のペーストを前記吐出口を介して吐出可能な位置へと前記針状部を移動させる移動手段を備えることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載のペースト塗布装置。
【請求項6】
前記ノズルの動作を制御するノズル制御手段を備え、
前記ノズル制御手段は、
前記吐出口がペーストの塗布対象へと移動するように前記ノズルを移動させる第1の制御と、
前記ノズルを前記塗布対象から離間させる第2の制御と、
前記針状部の先端が前記塗布対象へと移動するように前記ノズルを移動させる第3の制御と、
をこの順に行い、
前記第1の制御を行う過程で、前記針状部の先端が前記塗布対象に突き当たって前記ノズル内に押し込まれることにより、前記針状部の先端にペーストが供給され、
前記第2の制御を行う過程で、ペーストが供給された前記針状部の先端が前記吐出口を介して前記ノズルの外に突出した状態となり、
前記第3の制御を行うことにより、前記針状部の先端のペーストが前記塗布対象に転写されることを特徴とする請求項2に記載のペースト塗布装置。
【請求項7】
前記ノズルの動作を制御するノズル制御手段を備え、
前記ノズル制御手段は、
前記吐出口がペーストの塗布対象へと移動するように前記ノズルを移動させる第1の制御と、
前記ノズルを前記塗布対象から離間させる第2の制御と、
前記針状部の先端が前記塗布対象へと移動するように前記ノズルを移動させる第3の制御と、
を行った後で、
前記ノズルを前記塗布対象から離間させる第4の制御と、
前記塗布対象において、前記第3の制御により前記針状部の先端を移動させた位置と隣接する位置へと前記針状部の先端が移動するように前記ノズルを移動させる第5の制御と、
を繰り返し行い、
前記第1の制御を行う過程で、前記針状部の先端が前記塗布対象に突き当たって前記ノズル内に押し込まれることにより、前記針状部の先端にペーストが供給され、
前記第2及び第4の制御を行う過程で、ペーストが供給された前記針状部の先端が前記吐出口を介して前記ノズルの外に突出した状態となり、
前記第3及び第5の制御を行うことにより、前記針状部の先端のペーストが前記塗布対象に転写されるとともに、前記ノズル内のペーストが前記針状部の先端に新たに供給されることを特徴とする請求項2に記載のペースト塗布装置。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一項に記載のペースト塗布装置を用いて前記塗布対象にペーストを塗布する方法において、
ペーストを塗布しない際には、前記針状部の位置を、前記吐出口を閉塞する位置に維持させることを特徴とするペースト塗布方法。
【請求項9】
請求項2に記載のペースト塗布装置を用いて前記塗布対象にペーストを塗布する方法において、
前記吐出口がペーストの塗布対象へと移動するように前記ノズルを移動させることにより、前記針状部の先端を前記塗布対象に突き当てて前記ノズル内に押し込み、前記針状部の先端にペーストを供給する第1の過程と、
前記ノズルを前記塗布対象から離間させる一方で、ペーストが供給された前記針状部の先端を再び前記ノズルの前記吐出口より突出させた状態とする第2の過程と、
前記針状部の先端が前記塗布対象へと移動するように前記ノズルを移動させることにより、前記針状部の先端のペーストを前記塗布対象に転写する第3の過程と、
を備えることを特徴とするペースト塗布方法。
【請求項10】
請求項2に記載のペースト塗布装置を用いて前記塗布対象にペーストを塗布する方法において、
前記吐出口がペーストの塗布対象へと移動するように前記ノズルを移動させることにより、前記針状部の先端を前記塗布対象に突き当てて前記ノズル内に押し込み、前記針状部の先端にペーストを供給する第1の過程と、
前記ノズルを前記塗布対象から離間させる一方で、ペーストが供給された前記針状部の先端を再び前記ノズルの前記吐出口より突出させた状態とする第2の過程と、
前記針状部の先端が前記塗布対象へと移動するように前記ノズルを移動させることにより、前記針状部の先端のペーストを前記塗布対象に転写するとともに、前記ノズル内のペーストを前記針状部の先端に新たに供給する第3の過程と、
を行った後で、
前記ノズルを前記塗布対象から離間させる一方で、ペーストが供給された前記針状部の先端を再び前記ノズルの前記吐出口より突出させた状態とする第4の過程と、
前記塗布対象において、前記第3の過程により前記針状部の先端を移動させた位置と隣接する位置へと前記針状部の先端が移動するように前記ノズルを移動させることにより、前記針状部の先端のペーストを前記塗布対象に転写するとともに、前記ノズル内のペーストを前記針状部の先端に新たに供給する第5の過程と、
を繰り返し行うことを特徴とするペースト塗布方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−69141(P2007−69141A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−260338(P2005−260338)
【出願日】平成17年9月8日(2005.9.8)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【出願人】(000232151)パイオニアプラズマディスプレイ株式会社 (27)
【Fターム(参考)】