説明

ホイール式走行作業車の走行駆動回路装置

【課題】走行モータに圧油を供給する油圧ポンプの出力を十分に活用させることができるホイール式走行作業車の走行駆動回路装置の提供。
【解決手段】本発明は、第1油圧ポンプ1の圧油によって作動する走行モータ8と、この走行モータ8を制御する走行用方向制御弁4と、この走行用方向制御弁4を切り換えるアクセルペダル装置18とを備えるとともに、走行用方向制御弁4の下流側のバイパスライン20に設けた切換弁11と、アクセルペダル装置18の操作量の増加に応じて、切換弁11の開口面積を最大開口面積よりも小さくなるように制御する弁体制御手段と、この弁体制御手段によって切換弁11の開口面積を小さくなるように制御した際に、走行用方向制御弁4と切換弁11との間のセンタバイパスライン20を流れる流量を走行用方向制御弁4に供給可能なパイロット管路27及びチェック弁26とを備えた構成にしてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホイール式油圧ショベル等のホイール式作業車に備えられ、走行モータを走行用方向制御弁によってブリードオフ制御するホイール式走行作業車の走行駆動回路装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ホイール式作業車であるホイール式油圧ショベルに設けられる走行駆動回路装置は、エンジンで作動される油圧ポンプと、複数の作業用アクチュエータ及び走行モータと、作業用操作装置の操作に応じて切り換えられ、油圧ポンプから作業用アクチュエータに供給される圧油の流れを制御する作業用方向制御弁と、走行用操作装置すなわちアクセルペダル装置の踏み込み操作量に応じて切り換えられ、油圧ポンプから走行モータに供給される圧油の流れを制御する走行用方向制御弁とを備えている。すなわち、アクセルペダル装置のアクセルペダルの操作量を調節することによって走行モータを回転させて、当該ホイール式油圧ショベルを前進、後進させ、またその車速を制御するようになっている。
【0003】
このような走行駆動回路装置は、油圧ポンプの吐出管路に連通するセンタバイパスラインを有し、このセンタバイパスラインに上述したオープンセンタ型の走行用方向制御弁が配置されている。アクセルペダル装置のアクセルペダル操作時には、走行用方向制御弁が切り換えられて油圧ポンプからの圧油が、この走行用方向制御弁を介して走行モータに供給され、走行モータが作動する。アクセルペダル装置の中立時には、走行モータの戻り油は走行モータに付設されたブレーキ装置に含まれるカウンタバランス弁を通り、走行用方向制御弁内でメータアウト回路からメータイン回路に流入し、走行モータと走行用方向制御弁との間を圧油が循環するようになっている。この種の従来技術として特許文献1に示されるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−295675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来技術にあっては、アクセルペダル装置の中立時には、走行モータの戻り油はブレーキ装置のオーバロードリリーフ弁でリリーフし、さらにその圧油がブレーキ装置の入力側と出力側とを接続する回路に介在された絞りを通ることで温度上昇する。その後上述のように、走行用方向制御弁内でメータアウト回路はメータイン回路に流入し、再び走行モータに供給される。このように走行モータと走行用方向制御弁とを圧油が温度上昇しながら循環するため、圧油の温度は非常に高くなりやすい。そのためアクセルペダル装置の中立に保たれている時間が長時間となると、走行用方向制御弁のスプールの熱変形が起こり、走行用方向制御弁のハウジング部とスプールとの摺動クリアランスが小さくなる。
【0006】
このように摺動クリアランスが小さくなっている状況にあって、アクセルペダル装置を操作すると、走行用方向制御弁のハウジング部のセンタバイパス通路とスプールとが引っ掛かりを起こし、スティックすることがある。このようなことから通常、走行用方向制御弁のスプールの切り欠けを予め大きく設定することが行われている。このように設定することにより、走行用方向制御弁のセンタバイパス通路からセンタバイパスラインを介してタンクに流れるブリードオフ流量を多くして圧油の発熱による影響、すなわち上述した引っ掛かりを防ぐようにしている。
【0007】
ところで、上述のようにスプールの切り欠けを大きく設定することは、圧油の発熱による影響を抑えるためには有効であるが、アクセルペダル操作に伴うブリードオフ流量が多くなってしまう。このため従来技術にあっては、油圧ポンプの出力を十分に活用することができず、エネルギロスが大きくなりやすい。
【0008】
本発明は、上述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、走行モータに圧油を供給する油圧ポンプの出力を十分に活用させることができるホイール式走行作業車の走行駆動回路装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために、本発明は、エンジンと、このエンジンによって駆動される油圧ポンプと、この油圧ポンプから吐出される圧油によって作動する走行モータと、上記油圧ポンプとタンクとを接続するバイパスラインに設けられ、上記油圧ポンプから上記走行モータに供給される圧油の流れを制御する走行用方向制御弁と、この走行用方向制御弁を切り換え操作する走行用操作装置とを備えたホイール式走行作業車の走行駆動回路装置において、上記走行用方向制御弁の下流側の上記バイパスラインに設けた弁体と、上記走行用操作装置の操作量の増加に応じて、上記弁体の開口面積を最大開口面積よりも小さくなるように制御する弁体制御手段と、上記弁体制御手段によって上記弁体の開口面積を小さくなるように制御した際に、上記走行用方向制御弁と上記弁体との間の上記センタバイパスラインを流れる流量を上記走行用方向制御弁に供給可能な流量誘導手段とを備えたことを特徴としている。
【0010】
このように構成した本発明は、走行用操作装置が操作されたときには、弁体制御手段によってセンタバイパスラインに設けた弁体が、走行用操作装置の操作量の増加に応じて、その開口面積が最大開口面積よりも小さくなるように制御される。これにより弁体からバイパスラインを通ってタンクに逃がされる流量、すなわちブリードオフ流量が少なくなるように抑えられ、弁体においてタンクへの流れを阻止された流量を流量誘導手段を介して走行用方向制御弁に供給し、走行モータの作動に活用させることができる。すなわち本発明は、走行用方向制御弁のスプールの切り欠けを大きく設定したものにあってもブリードオフ流量を少なくし、走行モータに圧油を供給する油圧ポンプの出力を十分に活用させることができる。
【0011】
また、本発明は、上記発明において、上記油圧ポンプから吐出される圧油によって作動する作業用アクチュエータと、上記油圧ポンプから上記作業用アクチュエータに供給される圧油の流れを制御し、上記弁体の下流側の上記センタバイパスラインに設けた作業用方向制御弁と、この作業用方向制御弁を切り換え操作する作業用操作装置を備えるとともに、上記弁体制御手段は、上記作業用操作装置の操作に伴って上記弁体の開口面積が上記最大開口面積となるように制御することを特徴としている。
【0012】
このように構成した本発明は、作業用操作装置が操作されたときには、弁体制御手段によって弁体が、その開口面積が最大開口面積となるように制御される。すなわち、弁体からセンタバイパスラインに流れた流量は、この弁体の下流側に配置され、作業用操作装置によって切り換え操作される作業用方向制御弁を介して作業用アクチュエータに供給され、この作業用アクチュエータの作動に活用される。
【0013】
また本発明は、上記発明において、上記弁体は、切換弁またはパイロットチェック弁から成ることを特徴としている。
【0014】
また本発明は、上記発明において、上記弁体制御手段は、上記弁体を切り換え制御する比例電磁弁と、この比例電磁弁を制御するコントローラとを含む電気作動手段から成ることを特徴としている。
【0015】
また本発明は、上記発明において、上記弁体制御手段は、上記作業用操作装置の操作に伴って発生するパイロット圧により作動し、上記弁体を切り換え制御する操作弁またはパイロットチェック弁を含む油圧作動手段から成ることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るホイール式走行作業車の走行作動回路装置は、油圧ポンプから走行モータに供給される圧油の流れを制御する走行用方向制御弁の下流側のバイパスラインに設けた弁体と、走行用操作装置の操作量の増加に応じて、弁体の開口面積を最大開口面積よりも小さくなるように制御する弁体制御手段と、この弁体制御手段によって弁体の開口面積を小さくなるように制御した際に、走行用方向制御弁と弁体との間のセンタバイパスラインを流れる流量を走行用方向制御弁に供給可能な流量誘導手段とを備えたことから、走行用操作装置が操作されたときには、弁体制御手段によって弁体の開口面積を最大開口面積よりも小さくして、走行用方向制御弁のスプールの切り欠けを大きく設定したものにあってもブリードオフ流量を少なくし、弁体で阻止された流量を流量誘導手段を介して走行用方向制御弁に供給し、さらに走行モータに供給することができる。これにより、油圧ポンプの出力を十分に活用させることができ、従来に比べてエネルギロスを小さくすることができる。これに伴って、エンジンの出力を抑え、燃費を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るホイール式走行作業車の走行駆動回路装置の第1実施形態を示す電気・油圧回路図である。
【図2】図1に示す第1実施形態に備えられる走行モータに付設されるブレーキ装置を示す油圧回路図である。
【図3】第1実施形態に備えられるコントローラの要部構成を示すブロック図である。
【図4】図3に示すコントローラに含まれる各関数発生器で設定される関数関係を示す図で、(a)図は関数発生器13aで設定される走行操作量と切換弁開口面積との関係を示す図、(b)図は関数発生器13cで設定される切換弁開口面積と比例電磁弁制御圧との関係を示す図、(c)図は関数発生器13dで設定される比例電磁弁制御圧と比例電磁弁出力との関係を示す図である。
【図5】本発明の第2実施形態を示す電気・油圧回路図である。
【図6】本発明の第3実施形態を示す油圧回路図である。
【図7】本発明の第4実施形態を示す油圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るホイール式走行作業車の走行駆動回路装置の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0019】
図1は本発明に係るホイール式走行作業車の走行駆動回路装置の第1実施形態を示す電気・油圧回路図、図2は図1に示す第1実施形態に備えられる走行モータに付設されるブレーキ装置を示す油圧回路図である。図3は第1実施形態に備えられるコントローラの要部構成を示すブロック図、図4は図3に示すコントローラに含まれる各関数発生器で設定される関数関係を示す図で、(a)図は関数発生器13aで設定される走行操作量と切換弁開口面積との関係を示す図、(b)図は関数発生器13cで設定される切換弁開口面積と比例電磁弁制御圧との関係を示す図、(c)図は関数発生器13dで設定される比例電磁弁制御圧と比例電磁弁出力との関係を示す図である。
【0020】
第1実施形態に係る走行駆動回路装置は、例えばホイール式油圧ショベルに備えられるもので、図1に示すように、エンジン22と、このエンジン22によって駆動される第1油圧ポンプ1、第2油圧ポンプ2、及びパイロットポンプ3を備えている。また、第1油圧ポンプ1から吐出される圧油によって作動する走行モータ8と、第1油圧ポンプ1の吐出管路に接続されるセンタバイパスライン20に設けられ、第1油圧ポンプ1から走行モータ8に供給される圧油の流れを制御するオープンセンタ型の走行用方向制御弁4と、この走行用方向制御弁4を切り換え操作する走行用操作装置、すなわちアクセルペダル装置18とを備えている。センタバイパスライン20はタンク21に接続されている。また、第2油圧ポンプ2から吐出される圧油によって作動する作業用アクチュエータ9と、第2油圧ポンプ2及び第1油圧ポンプ1から吐出される圧油によって作動する作業用アクチュエータ10と、第2油圧ポンプ2から作業用アクチュエータ9に供給される圧油の流れを制御する作業用方向制御弁6と、第2油圧ポンプ2から作業用アクチュエータ10に供給される圧油の流れを制御する作業用方向制御弁7とを備えている。上述した作業用アクチュエータ9,10は、当該ホイール式油圧ショベルにあっては、ブームシリンダ、アームシリンダ等によって構成されている。
【0021】
上述した走行モータ8には、図2に示すブレーキ装置25が付設されている。このブレーキ装置25には、オーバロードリリーフ弁23とカウンタバランス弁24が含まれている。走行用方向制御弁4が切り換えられた際に、第1油圧ポンプ1から吐出される圧油は、走行用方向制御弁4及びブレーキ装置25を介して走行モータ8に供給される。
【0022】
この第1実施形態は、図1に示すように、走行用方向制御弁4の下流側のバイパスライン20に設けた弁体、例えば開位置11bと閉位置11cを有する切換弁11と、アクセルペダル装置18の操作量、すなわちアクセルペダルの踏み込み量の増加に応じて、切換弁11の開口面積を開位置11bにおける最大開口面積よりも小さくなるように、すなわち閉位置11c側へと作動するように制御する弁体制御手段とを備えている。また、弁体制御手段によって切換弁11の開口面積を小さくなるように制御した際に、走行用方向制御弁4と切換弁11との間のセンタバイパスライン20を流れる流量を走行用方向制御弁4に供給可能な流量誘導手段とを備えている。
【0023】
上述した弁体制御手段は、例えば、パイロットポンプ3に接続され、切換弁11を切り換え制御する比例電磁弁12と、この比例電磁弁12を制御するコントローラ13とを含む電気作動手段によって構成してある。比例電磁弁12は、パイロットポンプ3と切換弁11の制御部11dとを接続するパイロット管路34に設けてあり、コントローラ13から出力される制御信号に応じて下段位置12aまたは上段位置12bに切り換えられる。また、上述した流量誘導手段は、一端が走行用方向制御弁4と切換弁11との間のセンタバイパスライン20に接続され、他端が走行用方向制御弁4の圧力供給ポートに接続されるパイロット管路27と、このパイロット管路27に設けられ、センタバイパスライン20側から走行用方向制御弁4の圧油供給ポート側への圧油の流れを許容し、逆方向への圧油の流れを阻止するチェック弁26とによって構成してある。
【0024】
アクセルペダル装置18の操作量、すなわち走行操作量を検出する圧力センサ14,15を備え、この圧力センサ14,15の検出圧、すなわち走行操作量はコントローラ13に出力されるようになっている。
【0025】
また、この第1実施形態は、第1油圧ポンプ1から上述の作業用アクチュエータ10に供給される圧油の流れを制御し、切換弁11の下流側のセンタバイパスライン20に設けた作業用方向制御弁5と、この作業用方向制御弁5を切り換え操作する作業用操作装置19とを備えている。また、作業用操作装置19が操作されたことを検出する圧力センサ16,17を備え、これらの圧力センサ16,17の検出信号はコントローラ13に出力されるようになっている。
【0026】
コントローラ13は、図3に示すように、圧力センサ14,15から出力されるアクセルペダル装置18の操作量、すなわち走行操作量に応じて切換弁11の開口面積を演算する関数発生器13aと、作業用操作装置19が操作されたか否かに応じて切り換えられるスイッチング部13bと、作業用操作装置19が操作されているときにスイッチング部13bを介して出力される関数発生器13aで演算された切換弁11の開口面積に応じた比例電磁弁12の制御圧を演算する関数発生器13cと、この関数発生器13cで演算された比例電磁弁12の制御圧に応じた比例電磁弁12の出力を演算する関数発生器13dとを含んでいる。
【0027】
図4の(a)図に示すように、関数発生器13aには、走行操作量が大きくなるに従って次第に切換弁11の開口面積が小さくなる走行操作量と切換弁開口面積の関係が設定されている。同図4の(b)図に示すように、関数発生器13cには、切換弁開口面積が大きくなるに従って次第に比例電磁弁12の制御圧が小さくなる切換弁開口面積と比例電磁弁制御圧の関係が設定されている。同図4の(c)図に示すように、関数発生器13dには、比例電磁弁12の制御圧が大きくなるに従って次第に比例電磁弁12の出力が大きくなる比例電磁弁制御圧と比例電磁弁出力との関係が設定されている。
【0028】
なお、上述した図3に示すスイッチング部13bは、作業用操作装置19が操作され、圧力センサ16,17の信号が入力されたときに、関数発生器13aと関数発生器13cとを接続するように切り換えられ、作業用操作装置19が操作されず、圧力センサ16,17の信号がコントローラ13に入力されないときに、関数発生器13aと関数発生器13cとの間を遮断するように切り換えられる。このスイッチング部13bが、関数発生器13aと関数発生器13cとの間を遮断するように切り換えられたときは、このコントローラ13から比例電磁弁12の制御部に、切換弁11を最大開口面積を保持する開位置11bに切り換える制御信号が出力されるようになっている。
【0029】
以下に、上述のように構成した第1実施形態における処理動作について説明する。
【0030】
図1に示すように、例えば作業用操作装置19が操作されず、作業用方向制御弁5が中立に保持されるとともに、アクセルペダル装置18が操作されず、走行用方向制御弁4が中立に保持されているときは、第1油圧ポンプ1から吐出される圧油はセンタバイパスライン20を経てタンク21に戻され、当該ホイール式油圧ショベルは停止状態となる。このとき、走行モータ8の内部は閉回路となり、圧油の温度が上昇して機器に悪影響を及ぼす虞がある。そのため、図2に示すブレーキ装置25のカウンタバランス弁24の中立絞りから小流量の圧油を逃がして走行用方向制御弁4に導き、走行用方向制御弁4内で上述したようにメータアウト回路とメータイン回路とが連通し、再度、走行モータ8の吸入側に圧油を戻す循環回路が形成される。これによって圧油の温度の上昇が抑えられる。
【0031】
この間、圧力センサ14,15から非操作状態に相応する信号がコントローラ13に出力される。これに応じて図4に示す関数発生器13aは、非操作状態に相応する信号、すなわち走行操作量P2以下の操作量に応じて切換弁11の開口面積として最大開口面積Amaxを求め、この最大開口面積Amaxをスイッチング部13bを介して関数発生器13cに出力する。この最大開口面積Amaxに応じて関数発生器13cは比例電磁弁12の最小制御圧P3を求め、この最小制御圧P3を関数発生器13dに出力する。関数発生器13dでは、比例電磁弁12の最小制御圧P3に応じて比例電磁弁12の最小出力A1を求め、この最小出力A1が比例電磁弁12の制御部に出力される。これにより、比例電磁弁12はそのばねの力により図1に示すように、パイロットポンプ3と切換弁11の制御部11dとの間を遮断する下段位置12aに保持される。したがって切換弁11は、そのばね11aの力により最大開口面積である開位置11bに保持される。すなわち、センタバイパスライン20が全開状態に保持される。これによって上述したように、第1油圧ポンプ1から吐出される圧油が、走行用方向制御弁4、切換弁11の開位置11b、センタバイパスライン20を介してタンク21に戻される。
【0032】
このような中立状態から、例えばアクセルペダル装置18のアクセルペダルを踏み込むと、そのアクセルペダルの踏み込み量、すなわち走行操作量に応じて走行用方向制御弁4が切り換えられ、第1油圧ポンプ1から吐出される圧油が走行用方向制御弁4、図2に示したブレーキ装置25を介して走行モータ8に供給される。これによって走行モータ8が作動し、当該ホイール式油圧ショベルが走行する。
【0033】
この間、圧力センサ14,15から出力される走行操作量がコントローラ13に出力される。これに応じて、関数発生器13aにおいて、切換弁11の開口面積としてアクセルペダル装置18の操作量、すなわち走行操作量に応じた開口面積が求められる。ここで説明を簡単にするために、例えば走行操作量が図4の(a)図の最大操作量P1とすると、この関数発生器13aで最大操作量P1に応じて、切換弁11の開口面積として最小開口面積Aminが求められる。この最小開口面積Aminがスイッチング部13bを介して関数発生器13cに出力される。関数発生器13cでは、切換弁11の最小開口面積Aminに応じて比例電磁弁12の最大制御圧P4を求め、この最大制御圧P4を関数発生器13dに出力する。関数発生器13dでは、比例電磁弁12の最大制御圧P4に応じて比例電磁弁12の最大出力A2が求められ、この最大出力A2が比例電磁弁12の制御部に出力される。これにより比例電磁弁12は、そのばねの力に抗してパイロットポンプ3と切換弁11の制御部11dとを連通させる図1の上段位置12bに切り換えられる。したがって、パイロットポンプ3から吐出された圧油が比例電磁弁12の上段位置12b、パイロット管路34を介して切換弁11の制御部11dに与えられ、この切換弁11がばね11aの力に抗して閉位置11cに切り換えられる。これにより、センタバイパスライン20は切換弁11において遮断される。
【0034】
したがって、走行モータ8を作動させている間に走行用方向制御弁4からセンタバイパスライン20に流れた圧油すなわちブリードオフ流量は、パイロット管路27及びチェック弁26を介して走行用方向制御弁4の圧油供給ポートに、第1油圧ポンプ1から吐出される圧油に合流して供給される。すなわち、走行用方向制御弁4からバイパスライン20に流れた流量を走行モータ8の作動に活用させることができる。
【0035】
また例えば、上述のようにアクセルペダル装置18だけが操作されている状態から、作業用操作装置19を操作すると、作業用操作装置19が操作されたことが圧力センサ16,17で検出され、これらの信号がコントローラ13に入力される。コントローラ13は、圧力センサ16,17の信号に基づいて図3に示すスイッチング部13bを、関数発生器13aと関数発生器13cとの間を遮断する位置に切り換え、切換弁11の最大開口面積に相応する制御信号を比例電磁弁12の制御部に出力させる処理を行う。この制御信号により、比例電磁弁12はそのばねの力により図1に示す下段位置12aに切り換えられ、切換弁11はそのばね11aの力により最大開口面積となる開位置11bに切り換えられる。すなわち、アクセルペダル装置18が操作されて走行モータ8が作動し、当該ホイール式油圧ショベルが走行している状態にあっても、作業用操作装置19が操作されたときには、切換弁11が最大開口面積を保持する開位置11bに切り換えられる。したがって、走行用方向制御弁4からバイパスライン20に流れた流量が、切換弁11、センタバイパスライン20を介して作業用方向制御弁5に供給され、この作業用方向制御弁5を介して第2油圧ポンプ2から吐出される圧油とともに作業用アクチュエータ10に供給され、この作業用アクチュエータ10の作動に活用させることができる。なお、アクセルペダル装置18が操作されていない状態で作業用操作装置19が操作された場合にも、切換弁11は最大開口面積である開位置11bに保たれ、第1油圧ポンプ1から吐出された圧油は、走行用方向制御弁4及び切換弁11の開位置11bを介して作業用方向制御弁5に供給される。
【0036】
このように構成した第1実施形態によれば、上述のように作業用操作装置19が操作されていない状態にあって、アクセルペダル装置18が操作されたときには、コントローラ13から出力される制御信号により比例電磁弁12が図1の上段位置12bに切り換えられ、切換弁11の開口面積が最大開口面積よりも小さくなるように制御される。これにより、切換弁11からセンタバイパスライン20を通ってタンク21に逃がされる流量、すなわちブリードオフ流量が少なくなるように抑えられ、切換弁11においてタンク21への流れを阻止された流量をパイロット管路27及びチェック弁26を介して走行用方向制御弁4に供給し、走行モータ8の作動に活用させることができる。すなわち、走行用方向制御弁4のスプールの切り欠けを大きく設定したものにあってもブリードオフ流量を少なくし、走行モータ8に圧油を供給する第1油圧ポンプ1の出力を十分に活用させることができ、エネルギロスを小さくすることができる。これに伴って、エンジン22の出力を抑え、燃費を向上させることができる。すなわち、従来と同等の性能を確保しようとする場合に、第1油圧ポンプ1の容量を小さくすることができ、これに伴ってエンジン22の出力を抑えることができる。
【0037】
そして、作業用操作装置19が操作されたときには、切換弁11が最大開口面積となる開位置11bに切り換えられ、切換弁11の開位置11bからセンタバイパスライン20に流れた流量を作業用方向制御弁5を介して作業用アクチュエータ10の作動に活用させることができる。この点でも第1油圧ポンプ1の出力を活用させることができる。
【0038】
図5は本発明の第2実施形態を示す電気・油圧回路図である。この図5に示す第2実施形態は、走行用方向制御弁4の下流側のセンタバイパスライン20に設ける弁体が、パイロットチェック弁40から成る構成にしてある。その他の構成は、上述した第1実施形態と同等である。
【0039】
このように構成した第2実施形態は、作業用操作装置19が操作されていない状態にあって、アクセルペダル装置18が操作されたときには、例えばコントローラ13から出力される制御信号により比例電磁弁12が図1の下段位置12aに切り換えられ、パイロットチェック弁40が逆止弁として機能し、走行用方向制御弁4からバイパスライン20に流れた流量を阻止する。すなわちパイロットチェック弁40の開口面積が、パイロットチェック弁40を作動させ逆止弁機能を喪失させた際の開放状態における最大開口面積よりも小さくなるように制御される。これにより、パイロットチェック弁40においてタンク21への流れを阻止された流量をパイロット管路27及びチェック弁26を介して走行用方向制御弁4の圧油供給ポートに供給して走行モータ8の作動に活用させることができ、第1実施形態と同等の作用効果が得られる。
【0040】
また、作業用操作装置19が操作されたときには、コントローラ13から出力される制御信号により比例電磁弁12が上段位置12bに切り換えられ、パイロットポンプ3のパイロット圧がパイロット管路35を介してパイロットチェック弁40の制御部に供給される。これによってパイロットチェック弁40が逆止弁機能を喪失して最大開口面積である開放状態となり、パイロットチェック弁40からセンタバイパスライン20に流れる流量を、作業用アクチュエータ10の駆動に活用されることができる。この点でも第1実施形態と同等の作用効果が得られる。なお、アクセルペダル装置18が操作されないときには、コントローラ13からの制御信号により比例電磁弁12は上段位置12bに切り換えられ、パイロットポンプ3のパイロット圧がパイロット管路35を介してパイロットチェック弁40の制御部に供給され、このパイロットチェック弁40の逆止弁機能が喪失されるようになっている。
【0041】
図6は本発明の第3実施形態を示す油圧回路図である。この図6に示す第3実施形態は、アクセルペダル装置18の操作量の増加に応じて、弁体の開口面積を最大開口面積よりも小さくなるように制御する弁体制御手段が、作業用操作装置19の操作に伴って発生するパイロットポンプ3の二次圧により作動し、弁体すなわち第1実施形態と同等の切換弁11を切り換え制御する操作弁43を含む油圧作動手段から成っている。
【0042】
すなわち、この第3実施形態は、アクセルペダル装置18の操作に伴って発生するパイロットポンプ3の二次圧を取り出し、切換弁11の制御部11dに接続されたパイロット管路36に導くシャトル弁41と、作業用操作装置19の操作に伴って発生するパイロットポンプ3の二次圧を取り出すシャトル弁42と、パイロット管路36に設けられ、シャトル弁42から導かれた二次圧に応じてパイロット管路36を遮断可能な操作弁43とを備えた構成にしてある。その他の構成は、上述した第1実施形態の構成のうちの電気機器部分、すなわち圧力センサ14,15,16,17、比例電磁弁12、及びコントローラ13を除いた構成と同等である。
【0043】
このように構成した第3実施形態は、作業用操作装置19が操作されていない状態にあっては、操作弁43は、そのばね11aの力により開位置43aに保持され、シャトル弁41と切換弁11の制御部11dとはパイロット管路36を介して導通状態に保たれる。例えばこのような状態からアクセルペダル装置18を操作すると、その操作量に相応するパイロット圧がシャトル弁41から取り出され、操作弁43を介して切換弁11は、その開口面積が、最大開口面積よりも小さくなるように閉位置11c側に作動するように制御される。したがって、第1,第2実施形態と同様に、切換弁11においてタンク21への流れを阻止された流量をパイロット管路27及びチェック弁26を介して走行用方向制御弁4の圧油供給ポートに供給し、走行モータ8の作動に活用させることができ、第1,第2実施形態と同等の作用効果が得られる。
【0044】
また、作業用操作装置19が操作されたときには、シャトル弁42から取り出されたパイロットポンプ3の二次圧が操作弁43の制御部に与えられ、操作弁43がばねの力に抗して閉位置43bに切り換えられる。これによりパイロット管路36は遮断され、切換弁11は、そのばね11aの力により最大開口面積を保持する開位置11bに切り換えられる。したがって、切換弁11からセンタバイパスライン20に流れた流量を、作業用アクチュエータ10の作動に活用させることができる。この点でも第1実施形態と同等の作用効果が得られる。なお、アクセルペダル装置18が操作されなくなったときには、切換弁11の制御部11dにパイロットポンプ3の二次圧が供給されず、ばね11aの力により切換弁11は開位置11bに保持される。
【0045】
図7は本発明の第4実施形態を示す油圧回路図である。この図7に示す第4実施形態は、第3実施形態のようにシャトル弁41と切換弁11の制御部11dとを接続するパイロット管路36に操作弁43を設けずに、パイロットポンプ3と切換弁11のばね11aが設けられる側の制御部11eとを接続するパイロット管路46を設け、このパイロット管路46にシャトル弁42から取り出されたパイロット圧に応じて逆止弁機能を喪失して開放状態となるパイロットチェック弁45を設けた構成にしてある。この第4実施形態も、弁体制御手段、すなわち切換弁11を制御する手段が油圧作動手段から成っている。その他の構成は第3実施形態と同等である。
【0046】
このように構成した第4実施形態は、作業用操作装置19が操作されていない状態にあっては、パイロットチェック弁45が逆止弁として機能し、パイロットポンプ3側から制御弁11の制御部11eへの圧油の流れを阻止する状態に保たれる。また、アクセルペダル装置18が操作されない中立時には、切換弁11の制御部11dにパイロットポンプ3の二次圧が供給されず、ばね11aの力により切換弁11は最大開口面積を保持する開位置11bに切り換えられる。例えばこのような状態からアクセルペダル装置18を操作すると、その操作量に相応するパイロットポンプ3の二次圧がシャトル弁41から取り出され、切換弁11の制御部11dに与えられる。これにより切換弁11は、その開口面積が最大開口面積よりも小さくなるように閉位置11c側に作動するように制御される。したがって、第3実施形態と同様に、切換弁11においてタンク21への流れを阻止された流量をパイロット管路27及びチェック弁26を介して走行用方向制御弁4の圧油供給ポートに供給し、走行モータ8の作動に活用させることができ、第3実施形態と同等の作用効果が得られる。
【0047】
また、作業用操作装置19が操作されたときには、シャトル弁42から取り出されたパイロットポンプ3の二次圧がパイロットチェック弁45に与えられ、このパイロットチェック弁45が逆止弁機能を喪失して開放状態となる。これにより、パイロット管路46を介してパイロットポンプ3と切換弁11の制御部11eとが導通し、パイロットポンプ3の二次圧がパイロット管路46、パイロットチェック弁45を介して切換弁11の制御部11eに供給される。したがって、切換弁11は、ばね11aの力とパイロットポンプ3の二次圧による力に応じて最大開口面積を保持する開位置11bに切り換えられ、この切換弁11からセンタバイパスライン20に流れた流量を、作業用アクチュエータ10の作動に活用させることができる。この点でも第3実施形態と同等の作用効果が得られる。
【符号の説明】
【0048】
1 第1油圧ポンプ
3 パイロットポンプ
4 走行用方向制御弁
5 作業用方向制御弁
8 走行モータ
10 作業用アクチュエータ
11 切換弁(弁体)
12 比例電磁弁
13 コントローラ
13a 関数発生器
13b スイッチング部
13c 関数発生器
13d 関数発生器
14 圧力センサ
15 圧力センサ
16 圧力センサ
17 圧力センサ
18 アクセルペダル装置(走行操作装置)
19 作業用操作装置
20 センタバイパスライン
21 タンク
22 エンジン
25 ブレーキ装置
26 チェック弁
27 パイロット管路
40 パイロットチェック弁(弁体)
43 操作弁
45 パイロットチェック弁(弁体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、このエンジンによって駆動される油圧ポンプと、この油圧ポンプから吐出される圧油によって作動する走行モータと、上記油圧ポンプとタンクとを接続するバイパスラインに設けられ、上記油圧ポンプから上記走行モータに供給される圧油の流れを制御する走行用方向制御弁と、この走行用方向制御弁を切り換え操作する走行用操作装置とを備えたホイール式走行作業車の走行駆動回路装置において、
上記走行用方向制御弁の下流側の上記バイパスラインに設けた弁体と、
上記走行用操作装置の操作量の増加に応じて、上記弁体の開口面積を最大開口面積よりも小さくなるように制御する弁体制御手段と、
上記弁体制御手段によって上記弁体の開口面積を小さくなるように制御した際に、上記走行用方向制御弁と上記弁体との間の上記センタバイパスラインを流れる流量を上記走行用方向制御弁に供給可能な流量誘導手段とを備えたことを特徴とするホイール式走行作業車の走行駆動回路装置。
【請求項2】
請求項1に記載のホイール式走行作業車の走行駆動回路装置において、
上記油圧ポンプから吐出される圧油によって作動する作業用アクチュエータと、上記油圧ポンプから上記作業用アクチュエータに供給される圧油の流れを制御し、上記弁体の下流側の上記センタバイパスラインに設けた作業用方向制御弁と、この作業用方向制御弁を切り換え操作する作業用操作装置を備えるとともに、
上記弁体制御手段は、上記作業用操作装置の操作に伴って上記弁体の開口面積が上記最大開口面積となるように制御することを特徴とするホイール式走行作業車の走行駆動回路装置。
【請求項3】
請求項2に記載のホイール式走行作業車の走行駆動回路装置において、
上記弁体は、切換弁またはパイロットチェック弁から成ることを特徴とするホイール式走行作業車の走行駆動回路装置。
【請求項4】
請求項3に記載のホイール式走行作業車の走行駆動回路装置において、
上記弁体制御手段は、上記弁体を切り換え制御する比例電磁弁と、この比例電磁弁を制御するコントローラとを含む電気作動手段から成ることを特徴とするホイール式走行作業車の走行駆動回路装置。
【請求項5】
請求項3に記載のホイール式走行作業車の走行駆動回路装置において、
上記弁体制御手段は、上記作業用操作装置の操作に伴って発生するパイロット圧により作動し、上記弁体を切り換え制御する操作弁またはパイロットチェック弁を含む油圧作動手段から成ることを特徴とするホイール式走行作業車の走行駆動回路装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−149554(P2012−149554A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−7871(P2011−7871)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】