説明

ホットプレートユニット

【課題】 支持容器のセラミック基板と接触する部分の平面度を管理する必要がなく、支持容器とセラミック基板との接触面積を小さくすることができ、セラミック基板からの熱の逃散が少なく、セラミック基板の加熱面の温度を均一にすることができるホットプレートユニットを提供すること。
【解決手段】 その表面または内部に抵抗発熱体が形成されたセラミック基板が、支持容器に配設されてなるホットプレートユニットであって、前記セラミック基板と前記支持容器とは、点接触してなることを特徴とするホットプレートユニット。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、主に、半導体の製造や検査に用いるホットプレートユニットに関する。
【0002】
【従来の技術】エッチング装置や、化学的気相成長装置等を含む半導体製造・検査装置等においては、従来、ステンレス鋼やアルミニウム合金などの金属製基材を用いたヒータやウエハプローバ等が用いられてきた。
【0003】ところが、このような金属製のヒータは、以下のような問題があった。まず、金属製であるため、ヒータ板の厚みは、15mm程度と厚くしなければならない。なぜなら、薄い金属板では、加熱に起因する熱膨張により、反り、歪み等が発生していまい、金属板上に載置したシリコンウエハが破損したり傾いたりしてしまうからである。しかしながら、ヒータ板の厚みを厚くすると、ヒータの重量が重くなり、また、嵩張ってしまうという問題があった。
【0004】また、抵抗発熱体に印加する電圧や電流量を変えることにより、シリコンウエハ等の被加熱物を加熱する面(以下、加熱面という)の温度を制御するのであるが、金属板が厚いために、電圧や電流量の変化に対してヒータ板の温度が迅速に追従せず、温度制御しにくいという問題もあった。
【0005】そこで、特開平11−40330号公報には、基板として、熱伝導率が高く、強度も大きい窒化物セラミックや炭化物セラミックを使用し、これらのセラミックからなる板状体の表面に、金属粒子を焼結して形成した抵抗発熱体が設けられたセラミック基板が提案されている。
【0006】図8は、このような構成のセラミック基板が支持容器に設置されたホットプレートユニットを模式的に示した断面図である。このホットプレートユニットでは、底面41bに抵抗発熱体42が形成された円板形状のセラミック基板41が円筒形状の断熱リング61に嵌め込まれており、抵抗発熱体42の端部には、半田層(図示せず)等を介して外部端子13が接続されている。
【0007】断熱リング61の下部の内側には、このセラミック基板41を支持するための基板受け部61aが一体的に形成され、断面がL字形状になっており、断熱リング61の下面には、有底円筒形状の支持容器本体62がボルト68を用いて取り付けられ、固定されている。
【0008】このボルト68は、押さえ用金具67を固定する働きも有しており、この押さえ用金具67により、断熱リング61に嵌め込まれたセラミック基板41が基板受け部61aに押しつけられ、固定されている。
【0009】また、支持容器本体62の底部には、冷媒導入管19が設けられており、この冷媒導入管19を介して冷媒が支持容器60の内部に導入されるとともに、支持容器本体62に設けられた開口62aより排出され、加熱後の冷却時にセラミック基板41が迅速に冷却されるようになっている。
【0010】このような構成のホットプレートユニットに通電すると、抵抗発熱体が発熱する結果、セラミック基板41上に載置されるシリコンウエハ9等の被加熱物を所定の温度に加熱することができる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記した構成のホットプレートユニットでは、セラミック基板41の底面外周の全体が断熱リング61の基板受け部61aと接触している。
【0012】従って、セラミック基板41を支持容器60上に水平に固定するためには、基板受け部61aのセラミック基板41の底面と接触する面の全体が完全な平面となっている必要がある。このためには、断熱リング61を作製する際、基板受け部61aのセラミック基板41と接触する面の平面度を厳密に管理する必要があり、管理項目が増加し、支持容器60(断熱リング61)の製造コストが増加するという問題があった。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、例えば、支持容器上に少なくとも3個の突起を形成し、この突起とセラミック基板の下面とを点接触とすることにより、比較的容易にセラミック基板の水平性を維持することができることを見出し、第一の本発明を完成するに至った。
【0014】また、上記のように、セラミック基板の下面と支持容器とを完全に点接触にすると、セラミック基板を支持固定するための手段が別に必要となることから、支持容器に突起を形成するとともに、セラミック基板の上記突起に対応する部分に窪みを形成し、セラミック基板を載置した際、この窪みに突起を入り込ませることにより、セラミック基板の支持容器への固定が可能なことを見出し、第二の本発明を完成するに至った。
【0015】すなわち、第一の本発明のホットプレートユニットは、その表面または内部に抵抗発熱体が形成されたセラミック基板が、支持容器に配設されてなるホットプレートユニットであって、上記セラミック基板と上記支持容器とは、点接触してなることを特徴とするものである。
【0016】上記ホットプレートユニットによれば、セラミック基板と支持容器とは点接触の関係にあるので、従来の場合のように、支持容器を作製する際、支持容器のセラミック基板と接触する部分の平面度を管理する必要がなくなり、支持容器の製造コストを低減することができる。
【0017】また、支持容器とセラミック基板とは点接触しているので、両者の接触面積は極めて小さく、そのため、接触部分を介してセラミック基板から熱が逃散するのを防止することができ、セラミック基板の加熱面の温度を均一にすることができる。この場合、セラミック基板と支持容器との間には、空気の層が形成されていることになるが、空気層は極めて優れた断熱材であるので、断熱効果は高い。
【0018】なお、セラミック基板を突起を介して支持容器上に載置したのみでは、セラミック基板を完全に支持・固定することが困難であるので、例えば、上側からボルト、バネ等を用いて押さえつけることにより、セラミック基板を支持、固定する必要がある。このセラミック基板の支持固定に、コイルバネ等を用いると、接触面積も小さいので、セラミック基板から熱の逃散を防止することができる。
【0019】ボルト、コイルバネ、板バネの材質としては、金属が挙げられ、上記金属としては、例えば、ステンレス、インコネル、鋼鉄、アルミニウム、ニッケル、銅等が挙げられる。
【0020】上記ホットプレートにおいて、上記セラミック基板は、支持容器に形成された少なくとも3個の突起と点接触していることが望ましい。セラミック基板を少なくとも3点で支持することにより、安定的にセラミック基板を支持することができるからである。セラミック基板は、4点や5点で支持してもよいが、支持点が4点以上であると、4個の突起の最上部の位置を精密に調整する必要が生じるが、3点の支持では、特にそのような精密な調整は必要ないので、3点で支持することが望ましい。
【0021】第二の本発明のホットプレートユニットは、その表面または内部に抵抗発熱体が形成されたセラミック基板が、支持容器に配設されてなるホットプレートユニットであって、上記支持容器には少なくとも3個の突起が形成されるとともに、上記セラミック基板には上記突起に対応する部分に窪みが形成され、上記セラミック基板の窪みに上記支持容器の突起が入り込むことにより、上記セラミック基板が上記支持容器に支持されていることを特徴とするものである。
【0022】上記ホットプレートユニットによれば、セラミック基板は突起により支持されているため、第一の本発明の場合と同様、支持容器の断熱リング下面等を介して接触する部分の平面度を管理する必要がなくなり、支持容器の製造コストを低減することができる。
【0023】また、支持容器とセラミック基板とは点接触の関係にはないものの、両者の接触面積を極めて小さくすることができるため、接触部分を介してセラミック基板から熱が逃散するのを防止することができ、セラミック基板の加熱面の温度を均一にすることができる。
【0024】さらに、支持容器に形成された突起は、セラミック基板に形成された窪みに入り込んでいるため、セラミック基板は支持容器に支持、固定された状態となっており、特に他の固定具を必要としない。セラミック基板をより確実に固定するためには、上記したボルト、バネ等を用いて押さえつけることが望ましい。
【0025】
【発明の実施の形態】第一の本発明のホットプレートユニットは、その表面または内部に抵抗発熱体が形成されたセラミック基板が、支持容器に配設されてなるホットプレートユニットであって、上記セラミック基板と上記支持容器とは、点接触してなることを特徴とする。
【0026】図1は、第一の本発明のホットプレートユニットの一例を模式的に示す断面図であり、図2は、図1R>1に示したホットプレートユニットの平面図である。なお、図1では、支持容器の突起が形成された部分とセラミック基板の中心とを結んだ線でホットプレートユニットを切断した場合の断面を示している。
【0027】セラミック基板41は、円板形状に形成されており、抵抗発熱体42は、セラミック基板41の底面に同心円状のパターンに形成されている。また、これら抵抗発熱体42は、互いに近い二重の同心円同士が1組の回路として、1本の線になるように接続されている。このようなパターンの抵抗発熱体を形成することにより、加熱面41aの温度を均一にすることができる。
【0028】抵抗発熱体42の端部には、半田層(図示せず)等を介して外部端子13が接続されており、外部端子13にはリード線14を有するソケット15が取り付けられ、このリード線14は、支持容器11の外部に引き出され、電源(図示せず)との接続が図られている。
【0029】また、セラミック基板41の中央に近い部分には、シリコンウエハの運搬等に用いるリフターピンを挿入するための複数の貫通孔45が形成されるとともに、支持容器11の底部にも、これらに連通する貫通孔が形成され、両者の間にはピン挿通管18が介装され、リフターピンをスムーズに挿通することができるようになっている。
【0030】セラミック基板41の底面には、熱電対等の測温素子47を挿入するための有底孔44が形成され、この測温素子47より配線46が導出され、支持容器11の底部の貫通孔11aより外部に引き出されている。
【0031】一方、支持容器11は、有底円筒形状であり、上部が内側に屈曲することにより、円環形状の基板受け部11aが形成され、この基板受け部11aには、3か所に突起110が形成されている。突起110は、支持容器11の中心を軸すると回転対象の位置に形成されており、2個の突起110と中心とを結んだ角度は、120°となる。
【0032】そして、この突起110の上に上記構成のセラミック基板41が載置されており、突起110の近傍には、セラミック基板41および基板受け部11aを貫通するボルト等の固定部材16が設置され、この固定部材16によりセラミック基板41が突起110に押しつけられ、支持容器11に固定されている。
【0033】支持容器11を構成する材料としては特に限定されず、例えば、SUS等の金属、ポリアミド、ポリスルホン等のエンジニアリングプラスチック、ポリアセタール、フッ素樹脂、窒化アルミニウム、炭化珪素、アルミナ等のセラミック等が挙げられる。これらの中では、耐熱性に優れる点から、SUS等の金属が望ましい。なお、支持容器11の底部には、従来のホットプレートユニットの場合と同様に、冷媒導入管19が固定され、冷却することができるようになっている。
【0034】上述のように、セラミック基板41には、リフターピンを挿通するための貫通孔45が複数個設けられているが、この複数のリフターピンでシリコンウエハ9を支持することにより、セラミック基板41の上面より一定の距離離間させた状態でシリコンウエハを載置し、加熱等を行うことができる。
【0035】また、セラミック基板41に貫通孔や凹部を形成し、この貫通孔等に先端が尖塔状または半球状の支持ピンをセラミック基板41よりわずかに突出させた状態で挿入、固定し、この上にシリコンウエハ9を載置することにより、シリコンウエハ9をセラミック基板41の上面より一定の距離離間させた状態で載置することができる。
【0036】図1に示したホットプレートユニットでは、このように支持容器11の基板受け部11aに設けられた突起110により、セラミック基板41を支持しているため、基板受け部11aの平面度を厳密に管理する必要がなく、支持容器11の製造原価を低減することができ、比較的安価なホットプレートユニットとなる。
【0037】また、セラミック基板41と突起110との接触面積は極めて小さく、固定部材16を介した伝熱量も小さく、セラミック基板の周囲のその他の部分は、空気層により囲まれているため、セラミック基板41の放熱量を小さく保つことができ、その結果、迅速にセラミック基板の昇温を行うことができるとともに、セラミック基板の加熱面の温度をより均一にすることができる。
【0038】図3は、第一の本発明のホットプレートユニットの別の実施形態を模式的に示す断面図であり、図4R>4(a)は、上記ホットプレートユニットのさらに別の実施形態を模式的に示す断面図であり、(b)は、その一部を示す部分拡大分解斜視図である。これらのホットプレートユニットでは、セラミック基板41やその周囲の外部端子13、測温素子47等の構成は、図1に示したホットプレートユニットと同様であるので、ここでは詳しい説明を省略する。
【0039】図3に示したホットプレートユニットでは、支持容器の構成が図1に示したホットプレートユニットと少し異なる。すなわち、支持容器20は、略円筒形状の支持部材21とその下に設置された有底円筒形状の支持容器本体22とからなる。そして、支持容器本体22の上部が内側に屈曲することにより、支持部材受け部22aが形成され、この支持部材受け部22aの上に支持部材21が載置され、支持部材受け部22aおよび支持部材21を挿通するボルト28により、支持部材21が支持容器本体22に固定されている。
【0040】また、支持部材21の下部内側には基板受け部21aが一体的に形成されて断面視L字形状となっており、基板受け部21aの上面には突起210が形成され、突起210を介してセラミック基板41が支持部材21に載置されている。突起210の形成位置は、図1R>1に示した支持容器11と同様である。
【0041】また、ボルト28は、コイルバネ23を有する押さえ用金具27を固定する働きも有しており、この押さえ用金具27に固定されたコイルバネ23により、突起210の上に載置されたセラミック基板41が突起210に押しつけられ、固定されている。また、図4R>4に示したホットプレートユニットでは、コイルバネ23を用いず、(b)に示したような形状の押さえ用金具27のみにより、セラミック基板41が固定されており、そのほかの部分は、図3に示したホットプレートユニットと同様に構成されている。
【0042】図3、4に示したホットプレートユニットにおいても、支持部材21の基板受け部21aに設けられた突起210により、セラミック基板41を支持しているため、基板受け部21aの平面度を厳密に管理する必要がなく、支持容器21の製造原価を低減することができ、比較的安価なホットプレートユニットとすることができる。
【0043】また、セラミック基板41と突起210との接触面積は極めて小さく、コイルバネ23または押さえ用金具27を介した伝熱量も小さく、セラミック基板の周囲のその他の部分は、空気層により囲まれているため、セラミック基板41の放熱量を小さく保つことができ、その結果、迅速にセラミック基板の昇温を行うことができるとともに、セラミック基板の加熱面の温度をより均一にすることができる。
【0044】図5は、第二の本発明のホットプレートユニットの実施形態を模式的に示す断面図である。このホットプレートユニットでは、セラミック基板51は、円板形状に形成されており、抵抗発熱体52は、セラミック基板51の内部に、図1に示したパターンと同様のパターン、すなわち、同心円形状のパターンで形成されている。
【0045】そして、抵抗発熱体52の端部の直下には、スルーホール58が形成され、さらに、このスルーホール58を露出させる袋孔が底面51bに形成され、袋孔には外部端子13が挿入され、ろう材(図示せず)等で接合されている。そして、外部端子13には、リード線14を有するソケット15が取り付けられ、このリード線14は電源(図示せず)と接続されている。
【0046】支持容器は、図1に示した支持容器11と同様に構成されており、基板受け部11aには、3か所に突起110が形成されている。一方、セラミック基板51には、支持容器11上に載置した際に、突起110に対応する部分に窪み59が形成され、セラミック基板51の窪み59に支持容器11の突起110が入り込むことにより、セラミック基板51が支持容器11に支持、固定されている。
【0047】図5に示したホットプレートユニットでは、セラミック基板51に窪み59を形成し、この窪み59に支持容器11の突起110を入り込ませることにより、セラミック基板51を支持、固定しているため、他に固定部材が必要なく、容易にセラミック基板の支持、固定を行うことができる。
【0048】窪み59の深さ(長さ)は、突起110の高さ(長さ)よりも短い必要がある。窪み59の深さが突起110の高さより短いと、セラミック基板51の底面が支持容器11の基板受け部11bに接触し、基板受け部11bでセラミック基板51を支持することになってしまうからである。
【0049】一方、窪み59の水平方向の大きさは、突起110が入り込んだ際に、充分に余裕が存在する程度であることが望ましい。窪み59に完全に突起110が嵌合する程度の大きさとすると、その位置を厳密に設定する必要が生じ、少しでも狂った場合には、突起110をセラミック基板51の窪み59に嵌合させることができないからである。
【0050】図5に示したホットプレートユニットにおいて、支持容器11の基板受け部11aに設けられた突起110により、セラミック基板51を支持しているため、基板受け部21aの平面度を厳密に管理する必要がなく、支持容器11の製造原価を低減することができ、比較的安価なホットプレートユニットとすることができる。
【0051】また、セラミック基板51と突起110との接触面積は小さく、セラミック基板の周囲のその他の部分は、空気層により囲まれているため、セラミック基板51の放熱量を小さく保つことができ、その結果、迅速にセラミック基板の昇温を行うことができるとともに、セラミック基板の加熱面の温度をより均一にすることができる。
【0052】本発明のホットプレートユニットを構成するセラミック基板に形成する抵抗発熱体のパターンとしては、図1に示した同心円形状のほかに、渦巻き形状、偏心円形状などの単独パターン、同心円形状と屈曲線形状との組み合わせ、または、渦巻き形状や偏心円形状と屈曲線形状との組み合わせなどを挙げることができる。また、抵抗発熱体は螺旋形状でもよい。
【0053】上記ホットプレートユニットにおいて、上記抵抗発熱体からなる回路の数は1以上であれば特に限定されないが、加熱面を均一に加熱するためには、複数の回路が形成されていることが望ましく、複数の同心円状の回路と屈曲線状の回路とを組み合わせたものが好ましい。なお、図1〜5に示したように、本発明のホットプレートユニットでは、抵抗発熱体は、底面に形成されていてもよく、セラミック基板の内部に形成されていてもよい。
【0054】上記抵抗発熱体を、セラミック基板の内部に形成する場合、その形成位置は特に限定されないが、セラミック基板の底面からその厚さの60%までの位置に少なくとも1層形成されていることが好ましい。加熱面まで熱が伝搬する間に拡散し、加熱面での温度が均一になりやすいからである。
【0055】セラミック基板の内部または底面に抵抗発熱体を形成する際には、金属や導電性セラミックからなる導体ペーストを用いることが好ましい。即ち、セラミック基板の内部に抵抗発熱体を形成する場合には、グリーンシート上に導体ペースト層を形成した後、グリーンシートを積層、焼成することにより、内部に抵抗発熱体を形成する。一方、表面に抵抗発熱体を形成する場合には、通常、焼成を行って、セラミック基板を製造した後、その表面に導体ペースト層を形成し、焼成することより、抵抗発熱体を形成する。
【0056】上記導体ペーストとしては特に限定されないが、導電性を確保するため金属粒子または導電性セラミックが含有されているほか、樹脂、溶剤、増粘剤などを含むものが好ましい。
【0057】上記金属粒子としては、例えば、貴金属(金、銀、白金、パラジウム)、鉛、タングステン、モリブデン、ニッケルなどが好ましい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの金属は、比較的酸化しにくく、発熱するに充分な抵抗値を有するからである。
【0058】上記導電性セラミックとしては、例えば、タングステン、モリブデンの炭化物などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これら金属粒子または導電性セラミック粒子の粒径は、0.1〜100μmが好ましい。0.1μm未満と微細すぎると、酸化されやすく、一方、100μmを超えると、焼結しにくくなり、抵抗値が大きくなるからである。
【0059】上記金属粒子の形状は、球状であっても、リン片状であってもよい。これらの金属粒子を用いる場合、上記球状物と上記リン片状物との混合物であってよい。上記金属粒子がリン片状物、または、球状物とリン片状物との混合物の場合は、金属粒子間の金属酸化物を保持しやすくなり、抵抗発熱体とセラミック基板との密着性を確実にし、かつ、抵抗値を大きくすることができるため有利である。
【0060】導体ペーストに使用される樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などが挙げられる。また、溶剤としては、例えば、イソプロピルアルコールなどが挙げられる。増粘剤としては、セルロースなどが挙げられる。
【0061】抵抗発熱体用の導体ペーストをセラミック基板の表面に形成する際には、導体ペースト中に金属粒子のほかに金属酸化物を添加し、金属粒子および金属酸化物を焼結させたものとすることが好ましい。このように、金属酸化物を金属粒子とともに焼結させることにより、セラミック基板と金属粒子とを密着させることができる。
【0062】金属酸化物を混合することにより、セラミック基板との密着性が改善される理由は明確ではないが、金属粒子表面や非酸化物からなるセラミック基板の表面は、その表面がわずかに酸化されて酸化膜が形成されており、この酸化膜同士が金属酸化物を介して焼結して一体化し、金属粒子とセラミックとが密着するのではないかと考えられる。また、セラミック基板を構成するセラミックが酸化物の場合は、当然に表面が酸化物からなるので、密着性に優れた導体層が形成される。
【0063】上記金属酸化物としては、例えば、酸化鉛、酸化亜鉛、シリカ、酸化ホウ素(B23 )、アルミナ、イットリアおよびチタニアからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。これらの酸化物は、抵抗発熱体の抵抗値を大きくすることなく、金属粒子とセラミック基板との密着性を改善することができるからである。
【0064】上記酸化鉛、酸化亜鉛、シリカ、酸化ホウ素(B23 )、アルミナ、イットリア、チタニアの割合は、金属酸化物の全量を100重量部とした場合、重量比で、酸化鉛が1〜10、シリカが1〜30、酸化ホウ素が5〜50、酸化亜鉛が20〜70、アルミナが1〜10、イットリアが1〜50、チタニアが1〜50であって、その合計が100重量部を超えない範囲で調整されていることが好ましい。これらの範囲で、これらの酸化物の量を調整することにより、特にセラミック基板との密着性を改善することができる。
【0065】上記金属酸化物の金属粒子に対する添加量は、0.1重量%以上10重量%未満が好ましい。また、このような構成の導体ペーストを使用して抵抗発熱体を形成した際の面積抵抗率は、1〜45mΩ/□が好ましい。
【0066】面積抵抗率が45mΩ/□を超えると、印加電圧量に対して発熱量は大きくなりすぎて、表面に抵抗発熱体を設けたセラミック基板では、その発熱量を制御しにくいからである。なお、金属酸化物の添加量が10重量%以上であると、面積抵抗率が50mΩ/□を超えてしまい、発熱量が大きくなりすぎて温度制御が難しくなり、温度分布の均一性が低下する。
【0067】抵抗発熱体がセラミック基板の表面に形成される場合には、抵抗発熱体の表面部分に、金属被覆層が形成されていることが好ましい。内部の金属焼結体が酸化されて抵抗値が変化するのを防止するためである。形成する金属被覆層の厚さは、0.1〜10μmが好ましい。
【0068】上記金属被覆層を形成する際に使用される金属は、非酸化性の金属であれば特に限定されないが、具体的には、例えば、金、銀、パラジウム、白金、ニッケルなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのなかでは、ニッケルが好ましい。なお、抵抗発熱体をセラミック基板の内部に形成する場合には、抵抗発熱体表面が酸化されることがないため、被覆は不要である。本発明のセラミック基板は、100℃以上使用することが望ましく、200℃以上で使用することがより望ましい。
【0069】本発明のホットプレートを構成するセラミック基板の材料は特に限定されるものではなく、例えば、窒化物セラミック、炭化物セラミック、酸化物セラミック等が挙げられる。
【0070】上記窒化物セラミックとしては、金属窒化物セラミック、例えば、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化チタン等が挙げられる。また、上記炭化物セラミックとしては、金属炭化物セラミック、例えば、炭化ケイ素、炭化ジルコニウム、炭化チタン、炭化タンタル、炭化タングステン等が挙げられる。
【0071】上記酸化物セラミックとしては、金属酸化物セラミック、例えば、アルミナ、ジルコニア、コージュライト、ムライト等が挙げられる。これらのセラミックは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0072】これらのセラミックのなかでは、窒化物セラミック、炭化物セラミックの方が酸化物セラミックに比べて好ましい。熱伝導率が高いからである。また、窒化物セラミックのなかでは、窒化アルミニウムが最も好適である。熱伝導率が180W/m・Kと最も高いからである。
【0073】また、上記セラミック材料は、焼結助剤を含有していてもよい。上記焼結助剤としては、例えば、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、希土類酸化物等が挙げられる。これらの焼結助剤のなかでは、CaO、Y23 、Na2 O、Li2 O、Rb2 Oが好ましい。これらの含有量としては、0.1〜20重量%が好ましい。また、アルミナを含有していてもよい。
【0074】上記セラミック基板は、明度がJIS Z 8721の規定に基づく値でN4以下のものであることが望ましい。このような明度を有するものが輻射熱量、隠蔽性に優れるからである。また、このようなセラミック基板は、サーモビュアにより、正確な表面温度測定が可能となる。
【0075】ここで、明度のNは、理想的な黒の明度を0とし、理想的な白の明度を10とし、これらの黒の明度と白の明度との間で、その色の明るさの知覚が等歩度となるように各色を10分割し、N0〜N10の記号で表示したものである。そして、実際の測定は、N0〜N10に対応する色票と比較して行う。この場合の小数点1位は0または5とする。
【0076】このような特性を有するセラミック基板は、セラミック基板中にカーボンを100〜5000ppm含有させることにより得られる。カーボンには、非晶質のものと結晶質のものとがあり、非晶質のカーボンは、セラミック基板の高温における体積抵抗率の低下を抑制することでき、結晶質のカーボンは、セラミック基板の高温における熱伝導率の低下を抑制することができるため、その製造する基板の目的等に応じて適宜カーボンの種類を選択することができる。
【0077】非晶質のカーボンは、例えば、C、H、Oだけからなる炭化水素、好ましくは、糖類を、空気中で焼成することにより得ることができ、結晶質のカーボンとしては、グラファイト粉末等を用いることができる。また、アクリル系樹脂を不活性雰囲気下で熱分解させた後、加熱加圧することによりカーボンを得ることができるが、このアクリル系樹脂の酸価を変化させることにより、結晶性(非晶性)の程度を調整することもできる。
【0078】セラミック基板の形状は、円板形状が好ましく、その直径は、200mm以上が好ましく、250mm以上が最適である。円板形状のセラミック基板は、温度の均一性が要求されるが、直径の大きな基板ほど温度が不均一になりやすいからである。セラミック基板の厚さは、50mm以下が好ましく、20mm以下がより好ましい。また、1〜5mmが最適である。上記厚さが薄すぎると、高温で加熱する際に反りが発生しやすく、一方、厚過ぎると熱容量が大きく成りすぎて昇温降温特性が低下するからである。
【0079】また、セラミック基板の気孔率は、0または5%以下が好ましい。上記気孔率はアルキメデス法により測定する。高温での熱伝導率の低下、反りの発生を抑制することができるからである。
【0080】本発明では、必要に応じて、セラミック基板に熱電対を埋め込んでおくことができる。熱電対により抵抗発熱体の温度を測定し、そのデータをもとに電圧、電流量を代えて、温度を制御することができるからである。
【0081】上記熱電対の金属線の接合部位の大きさは、各金属線の素線径と同一か、もしくは、それよりも大きく、かつ、0.5mm以下がよい。このような構成によって、接合部分の熱容量が小さくなり、温度が正確に、また、迅速に電流値に変換されるのである。このため、温度制御性が向上してウエハの加熱面の温度分布が小さくなるのである。上記熱電対としては、例えば、JIS−C−1602(1980)に挙げられるように、K型、R型、B型、E型、J型、T型熱電対が挙げられる。
【0082】本発明のホットプレートユニットは、主に、半導体の製造や半導体の検査を行うために用いられる装置で、抵抗発熱体のみが設けられたセラミック基板を支持容器に設置したものであるが、セラミック基板の内部に静電電極を設けた場合には、静電チャックとして機能し、セラミック基板の表面に導体層を設け、セラミック基板の内部にガード電極やグランド電極を設けた場合には、ウエハプローバとして機能する。
【0083】次に、図6(a)〜(d)に基づき、底面に抵抗発熱体が形成されたセラミック基板を用いたホットプレートユニットの製造方法について説明する。
【0084】(1) セラミック基板の作製工程上述した窒化アルミニウムなどの窒化物セラミックに必要に応じてイットリア等の焼結助剤やバインダ等を配合してスラリーを調製した後、このスラリーをスプレードライ等の方法で顆粒状にし、この顆粒を金型などに入れて加圧することにより板状などに成形し、生成形体(グリーン)を作製する。この際、カーボンを含有させてもよい。
【0085】次に、この生成形体を加熱、焼成して焼結させ、セラミック製の板状体を製造する。この後、所定の形状に加工することにより、セラミック基板41を作製するが、焼成後にそのまま使用することができる形状としてもよい。加圧しながら加熱、焼成を行うことにより、気孔のないセラミック基板41を製造することが可能となる。加熱、焼成は、焼結温度以上であればよいが、窒化物セラミックでは、1000〜2500℃である。
【0086】次に、このセラミック基板に、必要に応じて、シリコンウエハを運搬するためのリフターピンを挿通する貫通孔45、熱電対などの測温素子を埋め込むための有底孔44、シリコンウエハを支持するための支持ピンを埋設するための凹部(図示せず)等を形成する(図6(a))。
【0087】(2) セラミック基板に導体ペーストを印刷する工程上述した導体ペーストを用い、スクリーン印刷などの方法により発熱体パターンに印刷し、導体ペースト層を形成する。抵抗発熱体は、セラミック基板全体を均一な温度にする必要があることから、図1に示すような同心円形状とするか、または、同心円状と屈曲線状とを組み合わせたパターンに印刷することが好ましい。導体ペースト層は、焼成後の抵抗発熱体42の断面が、方形で、偏平な形状となるように形成することが好ましい。
【0088】(3) 導体ペーストの焼成セラミック基板41の底面に印刷したペースト層を加熱焼成して、樹脂、溶剤を除去するとともに、金属粒子を焼結させ、セラミック基板41の底面に焼き付け、抵抗発熱体42を形成する(図6(b))。加熱焼成の温度は、500〜1000℃が好ましい。導体ペースト中に上述した金属酸化物を添加しておくと、金属粒子、金属酸化物およびセラミック基板が焼結して一体化するため、抵抗発熱体とセラミック基板との密着性が向上する。
【0089】(4) 金属被覆層の形成次に、抵抗発熱体42表面には、金属被覆層420を設ける(図6(c))。金属被覆層420は、電解めっき、無電解めっき、スパッタリング等により形成することができるが、量産性を考慮すると、無電解めっきが最適である。
【0090】(5) 端子等の取り付け抵抗発熱体42のパターンの端部に電源との接続のための外部端子13を半田470等を用いて取り付ける。また、有底孔44に測温素子(熱電対)47を挿入し、ポリイミド等の耐熱樹脂、セラミックで封止する(図6(d))。そして、このホットプレートを図1に示したような基板受け部11aに突起110を有する支持容器11に設置し、ソケットから延びたリード線を電源に接続することにより、ホットプレートの製造を終了する。
【0091】上記ホットプレートを製造する際に、セラミック基板の内部に静電電極を設けることにより静電チャックを製造することができ、また、加熱面にチャックトップ導体層を設け、セラミック基板の内部にガード電極やグランド電極を設けることによりウエハプローバを製造することができる。
【0092】セラミック基板の内部に電極を設ける場合には、金属箔等をセラミック基板の内部に埋設すればよい。また、セラミック基板の表面に導体層を形成する場合には、スパッタリング法やめっき法を用いることができ、これらを併用してもよい。
【0093】次に、図7(a)〜(d)に基づき、セラミック基板の内部に抵抗発熱体を有するセラミック基板を用いたホットプレートユニットの製造方法について説明する。
【0094】(1)グリーンシートの作製工程まず、窒化物セラミックの粉末をバインダ、溶剤等と混合してペーストを調製し、これを用いてグリーンシートを作製する。上述したセラミック粉末としては、窒化アルミニウム等を使用することができ、必要に応じて、イットリア等の焼結助剤を加えてもよい。また、グリーンシートを作製する際、結晶質や非晶質のカーボンを添加してもよい。
【0095】また、バインダとしては、アクリル系バインダ、エチルセルロース、ブチルセロソルブ、ポリビニルアルコールから選ばれる少なくとも1種が望ましい。さらに溶媒としては、α−テルピネオール、グリコールから選ばれる少なくとも1種が望ましい。
【0096】これらを混合して得られるペーストをドクターブレード法でシート状に成形してグリーンシート500を作製する。グリーンシート500の厚さは、0.1〜5mmが好ましい。次に、得られたグリーンシートに、必要に応じて、シリコンウエハを支持するための支持ピンを挿入する貫通孔となる部分、シリコンウエハを運搬等するためのリフターピンを挿入する貫通孔となる部分、熱電対などの測温素子を埋め込むための有底孔となる部分、抵抗発熱体を外部端子と接続するためのスルーホールとなる部分280等を形成する。後述するグリーンシート積層体を形成した後に、上記加工を行ってもよい。
【0097】(2)グリーンシート上に導体ペーストを印刷する工程グリーンシート500上に、上述した導体ペーストを用い、導体ペーストからなる導体ペースト層520を形成する。また、スルーホールとなる部分に導体ペーストを充填し、充填層580を形成する。
【0098】これらの導電ペースト中には、金属粒子または導電性セラミック粒子が含まれている。金属粒子の材料としては、例えば、タングステンまたはモリブデン等が挙げられ、導電性セラミックとしては、例えば、タングステンカーバイドまたはモリブデンカーバイドが挙げられる。
【0099】上記金属粒子であるタングステン粒子またはモリブデン粒子等の平均粒子径は、0.1〜5μmが好ましい。平均粒子が0.1μm未満であるか、5μmを超えると、導体ペーストを印刷しにくいからである。
【0100】このような導体ペーストとしては、例えば、金属粒子または導電性セラミック粒子85〜87重量部;アクリル系、エチルセルロース、ブチルセロソルブ、ポリビニルアルコールから選ばれる少なくとも1種のバインダ1.5〜10重量部;および、α−テルピネオール、グリコールから選ばれる少なくとも1種の溶媒を1.5〜10重量部を混合した組成物(ペースト)が挙げられる。
【0101】(3)グリーンシートの積層工程上記(1)の工程で作製した導体ペースト等を印刷していないグリーンシート500を、上記(2)の工程で作製した導体ペースト層520等を有するグリーンシート500の上下に積層する(図7(a))。このとき、上側に積層するグリーンシート500の数を下側に積層するグリーンシート500の数よりも多くして、抵抗発熱体52の形成位置を底面の方向に偏芯させる。
【0102】具体的には、上側のグリーンシート500の積層数は20〜50枚が、下側のグリーンシート500の積層数は5〜20枚が好ましい。
【0103】(4)グリーンシート積層体の焼成工程グリーンシート積層体の加熱、加圧を行い、グリーンシート500および内部の導体ペーストを焼結させ、セラミック基板51を作製する(図7(b))。加熱温度は、1000〜2000℃が好ましく、加圧の圧力は、10〜20MPaが好ましい。加熱は、不活性ガス雰囲気中で行う。不活性ガスとしては、例えば、アルゴン、窒素などを使用することができる。
【0104】得られたセラミック基板51に、リフターピンを挿通するための貫通孔55、測温素子を挿入するための有底孔54や、外部端子53を挿入するための袋孔57等を設ける(図7(c))。貫通孔55、有底孔54および袋孔57は、表面研磨後に、ドリル加工やサンドブラストなどのブラスト処理を行うことにより形成することができる。
【0105】次に、袋孔57より露出したスルーホール58に外部端子13を金ろう等を用いて接続する(図7(d))。さらに、図示はしないが、外部端子13に、例えば、リード線を有するソケットを脱着可能に取り付ける。なお、加熱温度は、半田処理の場合には90〜450℃が好適であり、ろう材での処理の場合には、900〜1100℃が好適である。さらに、測温素子としての熱電対などを耐熱性樹脂で封止し、ホットプレートとする。
【0106】(5)この後、このような内部に抵抗発熱体52を有するセラミック基板51を、図1に示した基板受け部11aに突起110を有する支持容器11に設置し、ソケットから延びたリード線を電源に接続することにより、ホットプレートの製造を終了する。
【0107】上記ホットプレートを製造する際にも、セラミック基板の内部に静電電極を設けることにより静電チャックを製造することができ、また、加熱面にチャックトップ導体層を設け、セラミック基板の内部にガード電極やグランド電極を設けることによりウエハプローバを製造することができる。
【0108】セラミック基板の内部に電極を設ける場合には、グリーンシート上に静電電極やガード電極等のパターンに導体ペースト層を形成し、積層、焼成すればよい。また、セラミック基板の表面に導体層を形成する場合には、セラミック基板を製造した後、スパッタリング法やめっき法を用いることにより導体層を形成すればよい。この際、スパッタリング法とめっき法とを併用してもよい。
【0109】以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【実施例】(実施例1) ホットプレートの製造(図1R>1、6参照)
(1)窒化アルミニウム粉末(トクヤマ社製、平均粒径1.1μm)100重量部、酸化イットリウム(Y23 :イットリア、平均粒径0.4μm)4重量部、アクリル系樹脂バインダ12重量部およびアルコールからなる組成物のスプレードライを行い、顆粒状の粉末を作製した。
【0110】(2)次に、この顆粒状の粉末を金型に入れ、平板状に成形して生成形体(グリーン)を得た。
【0111】(3)加工処理の終わった生成形体を温度:1800℃、圧力:20MPaでホットプレスし、厚さが3mmの窒化アルミニウム焼結体を得た。次に、この板状体から直径210mmの円板体を切り出し、表面を平均粒径1μmのダイヤモンドペーストでポリッシングし、接触部の表面が、JIS R 0601でRmax=2μmであるセラミック製の板状体(セラミック基板41)とした。次に、この板状体にドリル加工を施し、半導体ウエハを運搬するためのリフターピンを挿入する貫通孔45、熱電対を埋め込むための有底孔(直径:1.1mm、深さ:2mm)44を形成した(図6(a))。
【0112】(4)上記(3)で得たセラミック基板41の底面に、スクリーン印刷にて導体ペーストを印刷した。印刷パターンは、図1に示したような同心円形状のパターンとした。導体ペーストとしては、プリント配線板のスルーホール形成に使用されている徳力化学研究所製のソルベストPS603Dを使用した。
【0113】この導体ペーストは、銀−鉛ペーストであり、銀100重量部に対して、酸化鉛(5重量%)、酸化亜鉛(55重量%)、シリカ(10重量%)、酸化ホウ素(25重量%)およびアルミナ(5重量%)からなる金属酸化物を7.5重量部含むものであった。また、銀粒子は、平均粒径が4.5μmで、リン片状のものであった。
【0114】(5)次に、導体ペーストを印刷した焼結体を780℃で加熱、焼成して、導体ペースト中の銀、鉛を焼結させるとともに焼結体に焼き付け、抵抗発熱体を形成した。銀の抵抗発熱体42は、その端子部近傍で、厚さが5μm、幅が2.4mm、面積抵抗率が7.7mΩ/□であった(図6(b))。
【0115】(6)次に、硫酸ニッケル80g/l、次亜リン酸ナトリウム24g/l、酢酸ナトリウム12g/l、ほう酸8g/l、塩化アンモニウム6g/lを含む水溶液からなる無電解ニッケルめっき浴に上記(5)で作製した焼結体を浸漬し、銀の抵抗発熱体42の表面に厚さ1μmの金属被覆層420(ニッケル層)を析出させた(図6(c))。
【0116】(7)電源との接続を確保するために抵抗発熱体42の端部に、スクリーン印刷により、銀−鉛半田ペースト(田中貴金属社製)を印刷して半田層を形成した。ついで、半田層の上に断面がT字形状の外部端子13を載置して、420℃で加熱リフローし、抵抗発熱体の端部に半田層420を介して外部端子13を取り付けた(図6(d))。
(8)温度制御のための熱電対を有底孔44に挿入し、ポリイミド樹脂を充填し、190℃で2時間硬化させ、底面41bに抵抗発熱体42を有するセラミック基板41を得た。
【0117】(9)この後、図1に示したような基板受け部11aに突起110を有する支持容器11にセラミック基板を設置し、セラミック基板41および基板受け部11aを挿通する固定部材(ボルト、ナット)でセラミック基板41を突起110上に固定し、外部端子13から延びたリード線14を支持容器11の貫通孔より外部に引き出し、ホットプレートユニットの製造を終了した。
【0118】(実施例2)ホットプレート(図5、7参照)
(1)窒化アルミニウム粉末(トクヤマ社製、平均粒径:1.1μm)100重量部、酸化イットリウム(Y23 :イットリア、平均粒径:0.4μm)4重量部、アクリルバインダ11.5重量部、分散剤0.5重量部および1−ブタノールとエタノールとからなるアルコール53重量部を混合したペーストを用い、ドクターブレード法により成形を行って、厚さ0.47mmのグリーンシート500を作製した。
【0119】(2)次に、このグリーンシート500を80℃で5時間乾燥させた後、スルーホール58となる貫通孔等をパンチングにより形成した。
【0120】(3)平均粒子径1μmのタングステンカーバイト粒子100重量部、アクリル系バインダ3.0重量部、α−テルピネオール溶媒3.5重量部および分散剤0.3重量部を混合して導体ペーストAを調製した。
【0121】平均粒子径3μmのタングステン粒子100重量部、アクリル系バインダ1.9重量部、α−テルピネオール溶媒3.7重量部および分散剤0.2重量部を混合して導体ペーストBを調製した。この導体ペーストAをグリーンシート上にスクリーン印刷で印刷し、抵抗発熱体52用の導体ペースト層520を形成した。印刷パターンは、図1に示したような同心円パターンとし、導体ペースト層の幅を10mm、その厚さを12μmとした。また、スルーホールとなる部分に導体ペーストBを充填し、充填層580を形成した。
【0122】上記処理の終わったグリーンシート500に、導体ペーストを印刷しないグリーンシート500を上側(加熱面)に37枚、下側に13枚、130℃、8MPaの圧力で積層した(図7(a))。
【0123】(4)次に、得られた積層体を窒素ガス中、600℃で5時間脱脂し、1890℃、圧力15MPaで10時間ホットプレスし、厚さ3mmの窒化アルミニウム焼結体を得た。これを230mmの円板状に切り出し、表面を平均粒径1μmのダイヤモンドペーストでポリッシングして、接触部の表面がJIS R 0601でRmax=2μmである、内部に厚さ6μm、幅10mm(アスペクト比:1666)の抵抗発熱体52およびスルーホール58を有するセラミック基板51とした。
【0124】(5)次に、(4)で得られた板状体を、ダイヤモンド砥石で研磨した後、マスクを載置し、ガラスビーズによるブラスト処理で表面に熱電対のための有底孔54およびシリコンウエハを運搬等するリフターピンを挿入するための貫通孔55、突起110を入り込ませるための窪み59(図5参照)を設けた(図7(b))。
【0125】(6)さらに、スルーホール58の真下を、ドリルでえぐり取って直径3.0mm、深さ0.5mmの袋孔57を形成してスルーホール58を露出させ(図7(c))、この袋孔57にNi−Auからなる金ろうを用い、外部端子13をろう材でスルーホール58に固定した(図7(d))。
【0126】(7)温度制御のための複数の熱電対を有底孔54に埋め込み、ポリイミド樹脂を充填し、190℃で2時間硬化させた。
(8)この後、図5に示したような基板受け部11aに突起110を有する支持容器11にセラミック基板41を設置し、セラミック基板41に形成された窪み59に突起110aを入り込ませることにより、セラミック基板41を支持容器11に固定し、さらに、外部端子13から延びたリード線14を支持容器11の貫通孔より外部に引き出し、ホットプレートユニットの製造を終了した。
【0127】(実施例3)実施例1と同様にして、表面に抵抗発熱体42が形成されたセラミック基板41を製造した後、外部端子13や測温素子47等の設置を行い、続いて図4に示した構成の支持容器20にセラミック基板41を設置し、ホットプレートユニットの製造を終了した。
【0128】(比較例1)実施例1の場合と同様にしてセラミック基板41を製造した後、図8に示した支持容器60に断熱リング61を介してはめ込み、リード線等の配線作業を行うことにより、ホットプレートユニットを製造した。この支持容器60では、断熱リング61にセラミック基板41を嵌め込むが、断熱リング61の基板受け部61aの面を完全に平面にする必要があり、このための精密な加工を行う必要があり、また、断熱リング完成後に平面度の検査を行って平面度をチェックした。このため、加工時間が実施例1や実施例2に比べて大幅に長くなった。
【0129】実施例1〜3および比較例1に係るホットプレートユニットに通電を行って300℃まで加熱し、加熱面全体の温度をサーモビュア(日本データム社製 IR162012−0012)で測定した。
【0130】実施例1〜3に係る製品のセラミック基板では、加熱面全体がほぼ均一な温度であったのに対し、比較例1に係るホットプレートでは、セラミック基板41、51の外周に近い部分の温度が低くなっていた。
【0131】また、このサーモビュアを用いて、加熱面の最高温度と最低温度との差(ΔT℃)を測定した。また、レーザ変位計を用い、セラミック基板の平坦度を測定した。この平坦度とは、1点を0(基点)とし、他の任意の7ヵ所が基点からどれだけ変位しているかを調べ、その平均をとったものである。その結果を表1に示した。
【0132】
【表1】


【0133】表1に示した結果より明らかなように、実施例1〜3に係るセラミックヒータでは、ΔTが0.7〜0.8と小さかったのに対し、比較例1に係るセラミックヒータでは、ΔTは、1.5℃と大きくなっていた。また、平坦度も、実施例1〜3に係るセラミック基板では、15〜20μmと平坦であったのに対し、比較例1に係るセラミックヒータでは、53μmと平坦度が低下している。
【0134】
【発明の効果】以上説明したように、第一の本発明に係るホットプレートユニットによれば、セラミック基板と支持容器とは点接触の関係にあるので、従来の場合のように、支持容器を作製する際、支持容器のセラミック基板と接触する部分の平面度を管理する必要がなくなり、支持容器の製造コストを低減することができる。また、支持容器とセラミック基板とは点接触しているので、両者の接触面積は極めて小さく、そのため、接触部分を介してセラミック基板から熱が逃散するのを防止することができ、セラミック基板の加熱面の温度を均一にすることができる。
【0135】また、第二の本発明に係るホットプレートユニットによれば、セラミック基板は突起により支持されているため、第一の本発明の場合と同様、支持容器の断熱リング下面等を介して接触する部分の平面度を管理する必要がなくなり、支持容器の製造コストを低減することができる。また、支持容器とセラミック基板とは点接触の関係にはないものの、両者の接触面積を極めて小さくすることができるため、接触部分を介してセラミック基板から熱が逃散するのを防止することができ、セラミック基板の加熱面の温度を均一にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のホットプレートユニットの一例を模式的に示す断面図である。
【図2】図1に示すホットプレートユニットの平面図である。
【図3】本発明のホットプレートユニットの別の一例を模式的に示す断面図である。
【図4】(a)は、本発明のホットプレートユニットの別の一例を模式的に示す断面図であり、(b)は、その一部を示す部分拡大分解斜視図である。
【図5】本発明のホットプレートの別の一例を模式的に示す断面図である。
【図6】(a)〜(d)は、本発明の図1に示すホットプレートを構成するセラミック基板の製造工程の一部を模式的に示す断面図である。
【図7】(a)〜(d)は、本発明の図5に示すホットプレートを構成するセラミック基板の製造工程の一部を模式的に示す断面図である。
【図8】従来のホットプレートユニットの一例を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
11、20 支持容器
11a 基板受け部
13 外部端子
14 リード線
15 ソケット
16 固定部材
18 ピン挿通管
19 冷媒導入管
21 支持部材
21a 基板受け部
22 支持容器本体
22a 支持部材受け部
23 コイルバネ
27 押さえ用金具
28 ボルト
42、52 抵抗発熱体
44、54 有底孔
45、55 貫通孔
46 配線
47 測温素子
58 スルーホール
110、210 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】 その表面または内部に抵抗発熱体が形成されたセラミック基板が、支持容器に配設されてなるホットプレートユニットであって、前記セラミック基板と前記支持容器とは、点接触してなることを特徴とするホットプレートユニット。
【請求項2】 前記セラミック基板は、支持容器に形成された少なくとも3個の突起と点接触してなる請求項1に記載のホットプレート。
【請求項3】 その表面または内部に抵抗発熱体が形成されたセラミック基板が、支持容器に配設されてなるホットプレートであって、前記支持容器には少なくとも3個の突起が形成されるとともに、前記セラミック基板には前記突起に対応する部分に窪みが形成され、前記セラミック基板の窪みに前記支持容器の突起が入り込むことにより、前記セラミック基板が前記支持容器に支持されていることを特徴とするホットプレート。

【図1】
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【図2】
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【図6】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2002−164157(P2002−164157A)
【公開日】平成14年6月7日(2002.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−356540(P2000−356540)
【出願日】平成12年11月22日(2000.11.22)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【Fターム(参考)】