説明

ホログラム記録再生装置及びホログラム記録再生方法

【課題】
レーザ光源から出射されるレーザ光の波長を安定化することができるホログラム記録再生装置及びホログラム記録再生方法を提供すること。
【解決手段】
レーザチップモードによるモードホップ帯域を避けつつレーザ電流の値を波長の急変する2つのモードホップの間の安定帯域のほぼ中央の値となるように設定して記録モードを実行し、しかも温度変化に応じてレーザ光源電流設定モードを実行しているので、レーザ光源111から出射されるレーザ光の波長を安定化することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラム記録再生装置及びホログラム記録再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホログラフィを使ってデータを記録するホログラム記録再生装置の開発が進められている。
【0003】
ホログラム記録再生装置では、変調された(データが重畳された)信号光、変調されない参照光の2つをレーザ光から生成し、これらをホログラム記録媒体の同一場所に照射する。その結果、ホログラム記録媒体上で信号光と参照光が干渉して照射点に回折格子(ホログラム)が形成され、ホログラム記録媒体にデータが記録される。
【0004】
記録済みのホログラム記録媒体に参照光を照射することで、記録時に形成された回折格子から回折光(再生光)が発生する。この再生光は記録時の信号光に重畳されたデータを含んでいるので、これを受光素子で受光して記録した信号を再生できる。
【0005】
従来のホログラム記録再生装置において、レーザ光源として固体レーザやガスレーザを用いた場合にはレーザの直接変調はできないため、メカニカルシャッターやAOM (Acoust Optic Modulator)などの変調素子を用いてレーザが光源を出た後にビームの変調をかける装置が提案されてきた。それらの装置を用いた場合には光学系として小型化という意味ではどうしても制限されてしまい、また装置としても安価に作成することが不可能となる。
【0006】
このようなホログラム記録再生装置において、レーザダイオードを用いることができればそれらの問題を解決できる。そこで、レーザダイオードのコヒーレンスをあげるために外部共振器型レーザの提案も行われている(例えば、特許文献1参照。)。レーザダイオードを光源として用いた場合には、レーザの直接変調が可能となるため、出射後に記録のためのビーム変調用の装置を用いる必要がなくなる。
【特許文献1】特開11−107377号公報(段落[0028]〜[0031]、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような外部共振器型レーザにおいては、レーザダイオードに流す電流に対して発振する波長が急峻に変化するモードホップの帯域が細かく存在している。このため、このようなモードホップ帯域の付近の電流でレーザダイオードを発振させると、発振する波長が不安定となり、ホログラム記録媒体に対する記録再生特性が悪化するという欠点があった。
【0008】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、レーザ光源から出射されるレーザ光の波長を安定化することができるホログラム記録再生装置及びホログラム記録再生方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
A.かかる課題を解決するため、本発明に係るホログラム記録再生装置は、レーザ光を信号光と参照光とに分離し、分離した信号光及び参照光をホログラム記録媒体に入射してホログラムを記録する及び/又は参照光をホログラム記録媒体に入射してホログラムを再生するホログラム記録再生装置であって、前記レーザ光を出射するレーザ光源と、前記レーザ光の波長を計測する計測手段と、前記レーザ光源に供給される電流を増減させて前記計測手段によりレーザ光の波長を測定し、当該測定結果に基づき波長変動の影響が小さくなるように前記レーザ光源に供給される電流を設定する設定手段とを具備するものである。
【0010】
ここで、レーザ光源としては、外部共振器型レーザを代表的なものとして挙げることができる。また、レーザ光源から出射されるレーザ光の波長変動とは、レーザ光源に供給される電流に応じて起こりうることで、特に所定の電流の帯域では電流の増加に伴い波長の変動が急峻に上昇するモードホップが生じる。本発明は、このモードホップが生じる電流の帯域を避けるように、つまり波長変動の影響が小さくなるようにレーザ光源に供給される電流を設定するものである。本発明では、モードホップする波長の帯域を避けるようにレーザ光源に供給される電流を設定することで、レーザ光源から出射されるレーザ光の波長を安定化することが可能となる。
【0011】
また、本発明では、このようにレーザ光源に供給される電流を設定する際にレーザ光源に供給される電流を増減させ、それに応じて計測手段によりレーザ光の波長を測定し、上記のモードホップ帯域を検出していることになるので、小さなモードホップ帯域も漏らさず検出可能となる。よって、この小さく細かなモードホップ帯域までも避けるようにしてレーザ光源に供給される電流を設定することができ、レーザ光源から出射されるレーザ光の波長を高精度に安定化することが可能となる。
(1)前記設定手段により前記レーザ光源に供給される電流を設定するときには、前記ホログラム記録媒体に入射するレーザ光を遮蔽する遮蔽手段を設けることが好ましい。
【0012】
遮蔽手段としては、メカニカルなシャッターや液晶装置等を用いることができる。
【0013】
遮蔽手段を設けることで、電流設定のための期間(波長が不安定な期間)、ホログラム記録媒体にレーザ光が照射されなくなり、ホログラム記録媒体にノイズが記録されることを防止することができる。
(2)前記設定手段は、前記レーザ光源に供給される電流を増加させてレーザ光の波長が急激に変化する第1の電流値を検出し、前記レーザ光源に供給される電流を減少させてレーザ光の波長が急激に変化する第2の電流値を検出し、前記第1の電流値と前記第2の電流値とのほぼ中間の電流値を前記レーザ光源に供給する電流として設定することが好ましい形態である。
【0014】
隣り合う2つのモードホップの中間付近における電流値をレーザ光源に供給する電流として設定することで、モードホップの影響を極力避けることが可能となる。
(3)前記設定手段は、前記レーザ光源に供給される電流を増加させてレーザ光の波長が最大となる第3の電流値を検出し、前記レーザ光源に供給される電流を減少させてレーザ光の波長が最小となる第4の電流値を検出し、前記第1の電流値が前記第3の電流値を超えず、かつ、前記第2の電流値が前記第4の電流値よりも小さくならないような範囲を設定し、当該範囲内で前記第1及び第2の電流値を検出して前記レーザ光源に供給する電流を設定することがより好ましい形態である。
【0015】
レーザ光の波長が最大及び最小となる帯域は電流の増加に伴い波長が急峻に減少する。これはレーザチップモードによるモードホップ帯域である。このようなレーザチップモードによるモードホップ帯域を避けるようにレーザ光源に供給する電流を設定することが可能となる。
(4)前記レーザ光源の温度を検出する温度検出手段を更に具備し、前記設定手段は、前記温度検出手段により検出される温度が所定以上変化したとき、前記レーザ光源に供給する電流を再設定することが一の形態である。
【0016】
例えば、隣り合う2つのモードホップの中間付近における電流値をレーザ光源に供給する電流として設定しても温度変化によってその中間からずれ、ときにはレーザチップモードによるモードホップ帯域にまでずれる可能性がある。よって、温度変化をトリガーとしてレーザ光源に供給する電流を再設定することで、長期に亘りレーザ光源から出射されるレーザ光の波長を安定化することが可能となる。
(5)前記設定手段は、前記第1及び第2の電流値を検出して前記レーザ光源に供給する電流を再設定する動作については、所定時間が経過するごとにも行うことが一の形態である。
【0017】
2つのモードホップの中間付近における電流値は経時変化するので、時間をトリガーとしてレーザ光源に供給する電流を再設定することで、長期に亘りレーザ光源から出射されるレーザ光の波長を高精度に安定化することが可能となる。
(6)前記設定手段は、前記計測手段により計測される波長が所定以上変化したとき、前記レーザ光源に供給する電流を再設定することも一の形態である。
【0018】
波長をトリガーとしてレーザ光源に供給する電流を再設定することで、長期に亘りレーザ光源から出射されるレーザ光の波長を高精度に安定化することが可能となる。
(7)前記設定手段は、所定時間が経過するごとに、前記レーザ光源に供給する電流を再設定することが一の形態である。
【0019】
時間をトリガーとしてレーザ光源に供給する電流を再設定することで、長期に亘りレーザ光源から出射されるレーザ光の波長を安定化することが可能となる。
B.本発明の別の観点に係るホログラム記録再生方法は、レーザ光を信号光と参照光とに分離し、分離した信号光及び参照光をホログラム記録媒体に入射してホログラムを記録する及び/又は参照光をホログラム記録媒体に入射してホログラムを再生するホログラム記録再生方法であって、前記レーザ光をレーザ光源から出射し、前記レーザ光源に供給される電流を増減させて前記レーザ光源から出射されるレーザ光の波長を測定し、前記測定した結果に基づき波長変動の影響が小さくなるように前記レーザ光源に供給される電流を設定することを特徴とするものである。
【0020】
本発明では、モードホップする波長の帯域を避けるようにレーザ光源に供給される電流を設定することで、レーザ光源から出射されるレーザ光の波長を安定化することが可能となる。加えて、小さく細かなモードホップ帯域までも避けるようにしてレーザ光源に供給される電流を設定することができるので、レーザ光源から出射されるレーザ光の波長を高精度に安定化することが可能となる。
(1)前記レーザ光の波長を測定するとき及び前記レーザ光源に供給される電流を設定するときには、前記ホログラム記録媒体に入射するレーザ光を遮蔽することが好ましい。
【0021】
これにより、ホログラム記録媒体にノイズが記録されることを防止することができる。
(2)前記レーザ光の波長の測定及び前記レーザ光源に供給される電流の設定は、前記レーザ光源に供給される電流を増加させてレーザ光の波長が急激に変化する第1の電流値を検出し、前記レーザ光源に供給される電流を減少させてレーザ光の波長が急激に変化する第2の電流値を検出し、前記第1の電流値と前記第2の電流値とのほぼ中間の電流値を前記レーザ光源に供給する電流として設定することが好ましい形態である。
【0022】
これにより、モードホップの影響を極力避けることが可能となる。
(3)前記レーザ光の波長の測定及び前記レーザ光源に供給される電流の設定は、前記レーザ光源に供給される電流を増加させてレーザ光の波長が最大となる第3の電流値を検出し、前記レーザ光源に供給される電流を減少させてレーザ光の波長が最小となる第4の電流値を検出し、前記第1の電流値が前記第3の電流値を超えず、かつ、前記第2の電流値が前記第4の電流値よりも小さくならないような範囲を設定し、当該範囲内で前記第1及び第2の電流値を検出して前記レーザ光源に供給する電流を設定することがより好ましい形態である。
【0023】
これにより、レーザチップモードによるモードホップ帯域を避けるようにレーザ光源に供給する電流を設定することが可能となる。
(4)前記レーザ光の波長の測定及び前記レーザ光源に供給される電流の設定は、前記レーザ光源の温度が所定以上変化したとき、前記レーザ光源に供給する電流を再設定することが一の形態である。
【0024】
これにより、長期に亘りレーザ光源から出射されるレーザ光の波長を安定化することが可能となる。
(5)前記レーザ光の波長の測定及び前記レーザ光源に供給される電流の設定は、前記第1及び第2の電流値を検出して前記レーザ光源に供給する電流を再設定する動作については、所定時間が経過するごとにも行うことが一の形態である。
【0025】
これにより、長期に亘りレーザ光源から出射されるレーザ光の波長を高精度に安定化することが可能となる。
(6)前記レーザ光の波長の測定及び前記レーザ光源に供給される電流の設定は、前記計測される波長が所定以上変化したとき、前記レーザ光源に供給する電流を再設定することも一の形態である。
【0026】
これにより、長期に亘りレーザ光源から出射されるレーザ光の波長を高精度に安定化することが可能となる。
(7)前記レーザ光の波長の測定及び前記レーザ光源に供給される電流の設定は、所定時間が経過するごとに、前記レーザ光源に供給する電流を再設定することが一の形態である。
【0027】
これにより、長期に亘りレーザ光源から出射されるレーザ光の波長を安定化することが可能となる。
【発明の効果】
【0028】
以上のように、本発明によれば、モードホップする波長の帯域を避けるようにレーザ光源に供給される電流を設定しているので、レーザ光源から出射されるレーザ光の波長を安定化することが可能となる。また、本発明では、このようにレーザ光源に供給される電流を設定する際にレーザ光源に供給される電流を増減させてレーザ光の波長を測定し、上記のモードホップ帯域を検出しているので、小さく細かなモードホップ帯域までも避けるようにしてレーザ光源に供給される電流を設定することができ、レーザ光源から出射されるレーザ光の波長を高精度に安定化することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
[ホログラム記録装置の構成例]
【0030】
図1は、本発明の一実施形態に係るホログラム記録装置を表す模式図である。
【0031】
図1に示すように、ホログラム記録装置100は、ホログラム記録媒体101にホログラムを記録するものである。なお、ここでは、記録系だけを示したが、再生系が混在していても勿論構わない。
【0032】
ホログラム記録装置100は、レーザ光源111、シャッター112、ビームエキスパンダー113、ビームスプリッタ114、空間光変調器115、ミラー116、信号光用対物レンズ117、ミラー118、参照光用対物レンズ119を有すると共に、波長安定化制御回路120、ホストコンピュータ121を有する。
【0033】
ホログラム記録媒体101は、図示を省略するが、例えば記録層及び記録層を外界から保護するための保護層などを有し、信号光と参照光による干渉縞を記録する記録媒体である。
【0034】
記録層は、この干渉縞を屈折率(あるいは、透過率)の変化として記録するものであり、光の強度に応じて屈折率(あるいは、透過率)の変化が行われる材料であれば、有機材料、無機材料の別を問うことなく利用可能である。
【0035】
無機材料として、例えば、ニオブ酸リチウム(LiNbO)のような電気光学効果によって露光量に応じ屈折率が変化するフォトリフラクティブ材料を用いることができる。有機材料として、例えば、光重合型フォトポリマを用いることができる。光重合型フォトポリマは、その初期状態では、モノマがマトリクスポリマに均一に分散している。これに光が照射されると、露光部でモノマが重合し、屈折率が変化する。
【0036】
以上のように、記録層の屈折率(あるいは透過率)が露光量に応じて変化することで、参照光と信号光との干渉によって生じる干渉縞を屈折率(あるいは透過率)の変化としてホログラム記録媒体101に記録できる。
【0037】
ホログラム記録媒体101は、図示しない駆動手段でカード型の場合は移動、またはディスク型の場合は回転され、空間光変調器115の像を多数のホログラムとして記録することができる。ホログラム記録媒体101が移動することから、ホログラム記録媒体101上への記録・再生は移動方向に形成されたトラックに沿って行われる。
【0038】
なお、ホログラム記録媒体101には、ホログラム記録媒体101へのトラッキング、フォーカス等のサーボ制御を行うためのグルーブを有する層を設けることが好ましい。
【0039】
また、ホログラム記録媒体101に反射層を設けることで、反射型の記録媒体を構成することができる。
【0040】
レーザ光源111は、レーザ光を出射するものであり、例えば図2に示すように構成され、レーザダイオード131、コリメートレンズ132、回折格子133、温度検出部134を有する。
【0041】
レーザダイオード131は、マルチモードのレーザ光を発光、例えば410nm程度のブルーのレーザ光を発光するものである。コリメートレンズ132は、レーザダイオード131により発光されたレーザ光を平行光とする。回折格子132は、波長ごとに異なる方向へ1次光を発生し、そのうち特定波長(例えば410nm)の1次光がレーザダイオード131戻るようにレーザダイオード131との間の角度が設定されている。これにより、レーザダイオード131内でその波長成分だけが増大し、シングルモードとなる。レーザダイオード131により発光されるレーザ光の大半は、1次光ではなく0次光であり、回折格子133でミラーのように反射する。つまり、このレーザ光源111は、基本的にはLittrow型外部共振器レーザである。また、温度検出部134は、レーザダイオード131の温度を検出するもので、例えばサーミスタや半導体温度センサにより構成され、その検出結果はホストコンピュータ121に送られる。
【0042】
シャッター112は、例えば液晶装置により構成され、ホストコンピュータ121の制御により、開閉が制御される。具体的には、ホログラム記録媒体101にホログラムを記録するときにはシャッター112は開とされ、後述するレーザダイオード131の電流設定時にはシャッター112は閉とされる。
【0043】
ビームエキスパンダー113は、レーザ光源111から出射されたレーザ光のビーム径を空間光変調器115により変調可能な大きさに拡張する光学素子である。
【0044】
ビームスプリッタ113は、シャッター112を介してレーザ光源111から入射した平行光を信号光と参照光に分割する光学素子である。
【0045】
空間光変調器115は、信号光を空間的に(ここでは、2次元的に)変調して、データを重畳する光学素子である。空間光変調器115は、透過型の素子である透過型液晶素子を用いることができる。なお、空間光変調器に反射型の素子であるDMD (Digital micro mirror) や反射型液晶、GLV (Grating Light Value)素子を用いることが可能である。なお、空間光変調器115は、速い応答性をもったものである必要があり、応答速度として例えば1ms以下であることが望ましい。また、空間光変調器115は、ホストコンピュータ121によりその駆動が制御される。
【0046】
ミラー116、117は、それぞれ入射したレーザ光の光路を所望の方向に変更する光学素子である。
【0047】
信号光用対物レンズ117及び参照光用対物レンズ119は、それぞれ信号光、参照光をホログラム記録媒体101に集光するための光学素子である。
【0048】
本実施形態に係るホログラム記録装置100では、図1には図示をしていないが、レーザ光源111とシャッター112との間に、レーザ光源111から出射されるレーザ光の波長を検出するための波長検出手段を備える。図3はその一例を示すものである。
【0049】
レーザ光源111から出射されたレーザ光はグレーティング141で反射回折され、0次光と1次光とに分離される。1次光の回折角θは入射するレーザ光の波長に依存するため、波長が変化するとディテクタ142上で矢印Xの方向に移動する。
【0050】
従って、波長の変化はディテクタ142上のレーザ光の位置を検出すればよい。よって、例えば図4に示すように、ディテクタ142として位置検出素子(PSD)を使用することができる。PSDは1素子により構成されており、その受光素子上にレーザ光S1が入射され、波長の変化に伴いXで示した矢印の方向に移動するようにされている。
【0051】
PSDから出力される光電流A、Bの検出結果はホストコンピュータ121に送られる。そして、レーザ光の発振波長の変化は、光電流A、Bを以下の演算式により求めることができる。
【0052】
波長の変化=(A−B)/(A+B)
【0053】
なお、図3に示した0次光は、波長変化の影響を受けず、ホログラムの記録用に使用される。
【0054】
図5は波長検出手段の別の例を示したものである。
【0055】
この例では、レーザ光源111より出射したレーザ光は長さ方向でわずかに厚みの違うオプティカルウエッジ143に入射し、オプティカルウエッジ143の表面で反射したレーザ光S2及びオプティカルウエッジ143の裏面で反射したレーザ光S3がフォトディテクタ144に入射する。
【0056】
フォトディテクタ144上では、図6に示すように、レーザ光S2とS3とが干渉縞Iが発生する。発生する干渉縞Iは複数本あり、そのうちの2本が2分割されたフォトディテクタ144上に照射されるように2分割されたフォトディテクタ144の間隔と幅が設定されている。
【0057】
レーザ光源111より出射したレーザ光の発振波長がわずかに変化するとオプティカルウエッジ143の作用により干渉縞Iはフォトディテクタ144上で矢印Xの方向に移動する。フォトディテクタ144の出力電流A、Bの検出結果はホストコンピュータ121に送られる。そして、レーザ光の発振波長の変化は、出力電流A、Bを以下の演算式により求めることができる。
【0058】
波長の変化=(A−B)/(A+B)
【0059】
なお、ホログラム記録にはオプティカルウエッジ143を透過しレーザ光により行われる。
[ホログラム記録装置の動作]
【0060】
この実施形態に係るホログラム記録装置では記録モードとレーザ光源電流設定モードがある
【0061】
ここで、図7(a)に示すように、記録モードではホストコンピュータ121の制御によりシャッター112は開とされ、レーザ光源電流設定モードではホストコンピュータ121の制御によりシャッター112は閉とされる。なお、図7(c)は後述するレーザダイオード131へのレーザ電流を示し、図7(b)はこれに応じた発振波長の変化を示している。
A.記録モード
【0062】
レーザ光源111から出射されたレーザ光はシャッター112を通過して、ビームエキスパンダー113によりビーム径が拡張される。
【0063】
ビーム径が拡張されたレーザ光はビームスプリッタ114によって信号光と参照光とに分割される。
【0064】
信号光は空間光変調器115によって空間的に強度変調される。空間光変調器115で光変調されたレーザ光はミラー116によって反射され、信号光用対物レンズ117を介してホログラム記録媒体101に照射される。
【0065】
参照光はミラー118で反射され、参照光用対物レンズ119を介してホログラム記録媒体101に照射される。
【0066】
そして、信号光用対物レンズ117及び参照光用対物レンズ119がそれぞれ信号光と参照光とをホログラム記録媒体101上の略同一の箇所に集光することで、ホログラム記録媒体101上に干渉縞が形成される。この結果、空間光変調器115によって空間変調された情報がホログラム記録媒体101上にホログラムとして記録される。
B.レーザ光源電流設定モード
【0067】
レーザ光源111としてレーザダイオード131を使用した外部共振器型レーザでは、レーザダイオード131に供給される電流(レーザ電流)の変化により発振波長が変化し、既に述べた通りホログラムの記録再生に不具合な波長帯域がある。また、温度変化によっても発振波長の変化が起こる。
【0068】
図8はレーザ電流と波長変化との関係を示したグラフである。図8中の「A」「C」の電流の帯域では、電流の増加に伴い波長の変動が急峻に上昇するモードホップEが細かく生じていることが分かる。また、図8中のレーザ光の波長が最大及び最小となる「B」「D」の電流の帯域では、電流の増加に伴い波長が極めて大きく急峻に減少する。
【0069】
図9は温度変化によっても発振波長が変化する様子を示した概略グラフであり、例えば温度変化によって波長変化特性がFからGに変動する。
【0070】
レーザ光源電流設定モードは、このような波長変動する帯域を避けるようにレーザ光源のレーザ電流を設定するものである。
【0071】
以下、図10に示すフローチャートに基づいてレーザ光源電流設定モードを説明する。
【0072】
レーザ光源111の温度検出部134の検出結果はホストコンピュータ121に送られている。
【0073】
ホストコンピュータ121は、温度検出部134の検出結果からレーザダイオード131の温度が所定以上変化したと判断すると、ホストコンピュータ121は波長安定化制御回路120にレーザ光源電流設定モードの制御指令を出力する(ステップ1001)。
【0074】
波長安定化制御回路120では、レーザ光源電流設定モードの制御指令を入力すると、ステップ1002に示す以下の動作を実行する。
(1)現在レーザダイオード131に供給されているレーザ電流の値を記憶する(ステップ1003)。
(2)図11の矢印Aに示すように、除々にレーザ電流を増加して行き波長電圧の最大値Vmaxを記憶する(ステップ1004)。
(3)図11の矢印Bに示すように、除々にレーザ電流を減少して行き波長電圧の最小値Vminを記憶する(ステップ1005)。
(4)レーザ電流を最初の値にセットする(ステップ1006)。
(5)以上の動作により波長電圧の最大値Vmaxと最小値Vminが測定され、この値よりホログラム記録にとって有害なレーザチップモードによるモードホップ帯域のレーザパワーにならないよう各リミット値が設定される(ステップ1007)。
(6)図12はレーザ電流対波長変化の特性の一部を拡大したもので、現在流しているレーザ電流に対応した波長変化の電圧値をPとする。ステップ1008において、P点よりレーザ電流を図12中矢印Aに示すように増加させて行き急激に波長が変化した電圧値V1を検出し、ここでのレーザ電流値をLD1とする。
【0075】
電圧値V1を検出したら今度はレーザ電流を図12中矢印Bに示すように減少させて行き、Pよりも1段低く波長が変化した電圧値V2を検出し、ここでのレーザ電流値をLD2とする。
【0076】
そして、(LD1+LD2)/2(本発明はこれに近似した計算手法、値でも勿論構わない。)の演算を行い、この結果の電流値をレーザダイオード131に流すと、図12中Qで示した位置にレーザ電流が設定される。すなわち、その電流値は、波長の急変する2つのモードホップの間の安定帯域のほぼ中央の値となる。
【0077】
このときの動作波形を図13に示す。
(7)このように設定された値のレーザ電流によって上記した記録モードを実行する(ステップ1009)。
【0078】
以上のように本実施形態では、レーザチップモードによるモードホップ帯域を避けつつレーザ電流の値を波長の急変する2つのモードホップの間の安定帯域のほぼ中央の値となるように設定して記録モードを実行し、しかも温度変化に応じてレーザ光源電流設定モードを実行しているので、レーザ光源111から出射されるレーザ光の波長を安定化することが可能となる。
[他の実施形態]
(1)上記の実施形態では、温度変化をトリガーとしてレーザ光源電流設定モードを実行していたが、図14に示すように、ディテクタ142等の波長検出手段を用いて波長の変化があったとき、すなわち波長電圧の変化があったときに(ステップ1401)、レーザ光源電流設定モードを実行するようにしてもよい。
(2)また、図15に示すように、一定時間が経過したときに(ステップ1501)、レーザ光源電流設定モードを実行するようにしてもよい。
(3)更に、図16に示すように、温度変化があったときに(ステップ1601)、レーザ光源電流設定モードを実行するようととも、一定時間が経過したときに(ステップ1602)、ステップ1009を実行するようにしてもよい。
(4)また更に、以上のトリガーを組み合わせても勿論構わない。
(5)上記の実施形態は、ホログラム記録装置を例にとり説明したが、ホログラムの再生だけを行う装置やホログラムの記録及び再生の両方を行う装置にも本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の一実施形態に係るホログラム記録装置を表す模式図である。
【図2】図1に示したホログラム記録装置におけるレーザ光源を表す模式図である。
【図3】レーザ光源の波長を検出する構成を示す図である。
【図4】図3に示したディテクタを構成する位置検出素子の説明図である。
【図5】レーザ光源の波長を検出する他の構成を示す図である。
【図6】図5に示したフォトディテクタの説明図である。
【図7】図1に示したシャッターの動作を説明図である。
【図8】レーザ電流対波長変化の一例を示すグラフである。
【図9】温度変化による波長の変化の一例を示すグラフである。
【図10】レーザ光源電流設定モードの動作を示すフローチャートである。
【図11】レーザチップモードによるモードホップ帯域のレーザパワーを避けるためのリミット値を設定するための動作説明図である。
【図12】モードホップを避けるレーザ電流の設定のための動作説明図である。
【図13】図12に示す動作時のレーザ電流と波長の変化の測定結果を示すグラフである。
【図14】レーザ光源電流設定モードの他の動作を示すフローチャートである。
【図15】レーザ光源電流設定モードの更に別の動作を示すフローチャートである。
【図16】レーザ光源電流設定モードのまた別の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0080】
100 ホログラム記録装置
111 レーザ光源
112 シャッター
113 ビームエキスパンダー
114 ビームスプリッタ
115 空間光変調器
116 ミラー
117 信号光用対物レンズ
118 ミラー
119 参照光用対物レンズ
120 波長安定化制御回路
121 ホストコンピュータ
131 レーザダイオード
132 コリメートレンズ
133 回折格子
134 温度検出部
141 グレーティング
142 ディテクタ
143 オプティカルウエッジ
144 フォトディテクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を信号光と参照光とに分離し、分離した信号光及び参照光をホログラム記録媒体に入射してホログラムを記録する及び/又は参照光をホログラム記録媒体に入射してホログラムを再生するホログラム記録再生装置であって、
前記レーザ光を出射するレーザ光源と、
前記レーザ光の波長を計測する計測手段と、
前記レーザ光源に供給される電流を増減させて前記計測手段によりレーザ光の波長を測定し、当該測定結果に基づき波長変動の影響が小さくなるように前記レーザ光源に供給される電流を設定する設定手段と
を具備することを特徴とするホログラム記録再生装置。
【請求項2】
請求項1に記載のホログラム記録再生装置であって、
前記設定手段により前記レーザ光源に供給される電流を設定するときには、前記ホログラム記録媒体に入射するレーザ光を遮蔽する遮蔽手段
を更に具備することを特徴とするホログラム記録再生装置。
【請求項3】
請求項1に記載のホログラム記録再生装置であって、
前記設定手段は、前記レーザ光源に供給される電流を増加させてレーザ光の波長が急激に変化する第1の電流値を検出し、前記レーザ光源に供給される電流を減少させてレーザ光の波長が急激に変化する第2の電流値を検出し、前記第1の電流値と前記第2の電流値とのほぼ中間の電流値を前記レーザ光源に供給する電流として設定する
ことを特徴とするホログラム記録再生装置。
【請求項4】
請求項3に記載のホログラム記録再生装置であって、
前記設定手段は、前記レーザ光源に供給される電流を増加させてレーザ光の波長が最大となる第3の電流値を検出し、前記レーザ光源に供給される電流を減少させてレーザ光の波長が最小となる第4の電流値を検出し、前記第1の電流値が前記第3の電流値を超えず、かつ、前記第2の電流値が前記第4の電流値よりも小さくならないような範囲を設定し、当該範囲内で前記第1及び第2の電流値を検出して前記レーザ光源に供給する電流を設定する
ことを特徴とするホログラム記録再生装置。
【請求項5】
請求項4に記載のホログラム記録再生装置であって、
前記レーザ光源の温度を検出する温度検出手段を更に具備し、
前記設定手段は、前記温度検出手段により検出される温度が所定以上変化したとき、前記レーザ光源に供給する電流を再設定する
ことを特徴とするホログラム記録再生装置。
【請求項6】
請求項5に記載のホログラム記録再生装置であって、
前記設定手段は、前記第1及び第2の電流値を検出して前記レーザ光源に供給する電流を再設定する動作については、所定時間が経過するごとにも行う
ことを特徴とするホログラム記録再生装置。
【請求項7】
請求項4に記載のホログラム記録再生装置であって、
前記設定手段は、前記計測手段により計測される波長が所定以上変化したとき、前記レーザ光源に供給する電流を再設定する
ことを特徴とするホログラム記録再生装置。
【請求項8】
請求項4に記載のホログラム記録再生装置であって、
前記設定手段は、所定時間が経過するごとに、前記レーザ光源に供給する電流を再設定する
ことを特徴とするホログラム記録再生装置。
【請求項9】
請求項1に記載のホログラム記録再生装置であって、
前記レーザ光源は、外部共振器型レーザである
ことを特徴とするホログラム記録再生装置。
【請求項10】
レーザ光を信号光と参照光とに分離し、分離した信号光及び参照光をホログラム記録媒体に入射してホログラムを記録する及び/又は参照光をホログラム記録媒体に入射してホログラムを再生するホログラム記録再生方法であって、
前記レーザ光をレーザ光源から出射し、
前記レーザ光源に供給される電流を増減させて前記レーザ光源から出射されるレーザ光の波長を測定し、
前記測定した結果に基づき波長変動の影響が小さくなるように前記レーザ光源に供給される電流を設定する
ことを特徴とするホログラム記録再生方法。
【請求項11】
請求項10に記載のホログラム記録再生方法であって、
前記レーザ光の波長を測定するとき及び前記レーザ光源に供給される電流を設定するときには、前記ホログラム記録媒体に入射するレーザ光を遮蔽する
ことを特徴とするホログラム記録再生方法。
【請求項12】
請求項10に記載のホログラム記録再生方法であって、
前記レーザ光の波長の測定及び前記レーザ光源に供給される電流の設定は、前記レーザ光源に供給される電流を増加させてレーザ光の波長が急激に変化する第1の電流値を検出し、前記レーザ光源に供給される電流を減少させてレーザ光の波長が急激に変化する第2の電流値を検出し、前記第1の電流値と前記第2の電流値とのほぼ中間の電流値を前記レーザ光源に供給する電流として設定する
ことを特徴とするホログラム記録再生方法。
【請求項13】
請求項12に記載のホログラム記録再生方法であって、
前記レーザ光の波長の測定及び前記レーザ光源に供給される電流の設定は、前記レーザ光源に供給される電流を増加させてレーザ光の波長が最大となる第3の電流値を検出し、前記レーザ光源に供給される電流を減少させてレーザ光の波長が最小となる第4の電流値を検出し、前記第1の電流値が前記第3の電流値を超えず、かつ、前記第2の電流値が前記第4の電流値よりも小さくならないような範囲を設定し、当該範囲内で前記第1及び第2の電流値を検出して前記レーザ光源に供給する電流を設定する
ことを特徴とするホログラム記録再生方法。
【請求項14】
請求項13に記載のホログラム記録再生方法であって、
前記レーザ光の波長の測定及び前記レーザ光源に供給される電流の設定は、前記レーザ光源の温度が所定以上変化したとき、前記レーザ光源に供給する電流を再設定する
ことを特徴とするホログラム記録再生方法。
【請求項15】
請求項14に記載のホログラム記録再生方法であって、
前記レーザ光の波長の測定及び前記レーザ光源に供給される電流の設定は、前記第1及び第2の電流値を検出して前記レーザ光源に供給する電流を再設定する動作については、所定時間が経過するごとにも行う
ことを特徴とするホログラム記録再生方法。
【請求項16】
請求項13に記載のホログラム記録再生方法であって、
前記レーザ光の波長の測定及び前記レーザ光源に供給される電流の設定は、前記計測される波長が所定以上変化したとき、前記レーザ光源に供給する電流を再設定する
ことを特徴とするホログラム記録再生方法。
【請求項17】
請求項13に記載のホログラム記録再生方法であって、
前記レーザ光の波長の測定及び前記レーザ光源に供給される電流の設定は、所定時間が経過するごとに、前記レーザ光源に供給する電流を再設定する
ことを特徴とするホログラム記録再生方法。
【請求項18】
請求項10に記載のホログラム記録再生方法であって、
前記レーザ光源は、外部共振器型レーザである
ことを特徴とするホログラム記録再生方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2006−171380(P2006−171380A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−364024(P2004−364024)
【出願日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】