説明

ホームエージェント及びモバイルルータ、これらの制御方法、並びにパケット転送制御プログラム

【課題】特別な情報を共有すること無くノード間の通信経路を削減可能なホームエージェント及びモバイルルータを提供する。
【解決手段】ホームエージェントは、中継する制御パケットを監視して、管理対象であるモバイルルータの下位に接続された他のモバイルルータの位置情報を取得した時、モバイルルータを管理するホームエージェントに対して、モバイルルータが形成するネットワーク宛てのデータパケットをモバイルルータへ転送するよう指示する。また、モバイルルータは、下位に接続されたモバイルルータからデータパケットを受信して解析し、データパケットがカプセル化されている時、データパケットを上位に接続された外部のネットワーク及びモバイルルータへそのまま転送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホームエージェント及びモバイルルータに関し、特にモバイルルータが階層的に接続されるネットワークシステムに用いるのに好適なホームエージェント及びモバイルルータに関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1〜3等に記載される従来のモバイルIP技術を採用したネットワークシステムにおいてモバイルルータが階層化した場合、或るモバイルルータが形成するネットワーク(以下、モバイルネットワークと呼称することがある)内のノードとその通信相手となる固定IP網に接続されたノード(以下、通信相手ノードと呼称することがある)との間で送受信されるデータパケットが、通信経路上の他のモバイルルータを管理するホームエージェント全てを経由する。
【0003】
このようにデータパケットが直接関係の無いホームエージェントを経由するため、ノード間の通信経路が長くなってしまうという問題があった。この場合、データパケットに伝送遅延が生じる虞れがあり、また、ホームエージェントの処理負荷を増大させてしまう虞れもある。
【0004】
この問題に対処するための関連技術[1]及び[2]が、下記の通り提案されている。
【0005】
関連技術[1]
各モバイルルータが生成した階層化情報(モバイルルータのアドレスリスト)を位置情報として各ホームエージェントに登録して置き、各モバイルルータ及び各ホームエージェントが、モバイルネットワーク内のノード及び通信相手ノードからデータパケットをそれぞれ受信した際に前記階層化情報をルーティングヘッダに付与して前記データパケットを転送する位置管理方法(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
この方法によれば、モバイルネットワーク内のノードから通信相手ノードに対して送信されたデータパケットを1つのホームエージェント(通信相手ノードとのインタフェースであるホームエージェント)に経由させ、通信相手ノードからモバイルネットワーク内のノードに対して送信されたデータパケットを2つのホームエージェント(通信相手ノードとのインタフェースであるホームエージェント、及び固定IP網に接続された最上位のモバイルルータを管理するホームエージェント)に経由させるため、ノード間の通信経路を削減することが可能となる。
【0007】
関連技術[2]
各モバイルルータ及びモバイルネットワーク内のノードが、自分自身のホームアドレスと最上位のモバイルルータのホームアドレスとから成る位置情報をそれぞれ各ホームエージェント及び通信相手ノードに対して登録する経路削減方法(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
この方法によれば、モバイルネットワーク内のノードと通信相手ノードの間で送受信されるデータパケットが最上位のモバイルルータを管理するホームエージェントのみを経由することとなるため、ノード間の通信経路を削減することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−260302号公報
【特許文献2】特開2005−033470号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】V. Devarapalli他, RFC3963, "Network Mobility (NEMO) Basic Support Protocol".
【非特許文献2】D. Johnson他, RFC3775, "Mobility support in IPv6".
【非特許文献3】C. Perkins, RFC3344, "IP Mobility Support for IPv4".
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記の関連技術[1]では、ホームエージェントとモバイルルータとが協働して階層化情報に基づくルーティング処理を実行する必要があるため、導入が困難であるという課題があった。すなわち、通信経路の削減効果を得るためには、このようなルーティング処理を実行できるようルーティングヘッダを改編し、且つこれに合わせてネットワークシステム内の全てのホームエージェント及びモバイルルータを改造しなければならない。
【0012】
また、上記の関連技術[2]では、モバイルネットワーク内のノードが通信相手ノードに対して位置情報を登録可能でなければならず(すなわち、ネットワークシステムを利用する全てのノードがモバイルIPv6の経路最適化方式を採用するものでなければならず)、上記の関連技術[1]よりも導入が困難である。
【0013】
従って、本発明は、特別な情報を共有すること無くノード間の通信経路を削減可能なホームエージェント及びモバイルルータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するため、本発明の一態様に係るホームエージェントは、中継する制御パケットを監視して、管理対象である一のモバイルルータの下位に接続された他のモバイルルータ又はモバイルノードの位置情報を取得する監視部と、前記位置情報を取得した時、前記他のモバイルルータ又は前記モバイルノードを管理するホームエージェントに対して、前記他のモバイルルータが形成するネットワーク宛て又は前記モバイルノード宛てのデータパケットを最上位に位置するモバイルルータへ転送するよう指示する指示部とを備える。
【0015】
また、本発明の一態様に係るモバイルルータは、自分自身の下位に接続されたモバイルルータからデータパケットを受信して解析する解析部と、前記データパケットがカプセル化されている時、前記データパケットを上位に接続されたモバイルルータ又は外部のネットワークへそのまま転送する処理部とを備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ホームエージェントは、一般的な制御メッセージを監視することによってモバイルルータの階層構造を自律的に認識し、通信相手ノードからモバイルネットワーク内のノード宛てのデータパケットを最上位に位置するモバイルルータに直接転送することが可能である。また、モバイルルータは、自律的にカプセル化処理を抑制することによって、モバイルネットワーク内のノードから通信相手ノード宛てのデータパケットを通信相手ノードとのインタフェースであるホームエージェントに直接転送することが可能である。
【0017】
このように、ホームエージェント及びモバイルルータ同士間で上記の関連技術[1]のような階層化情報を共有すること無く、直接関係の無いホームエージェントへのデータパケットの転送を回避してノード間の通信経路を削減できる。このため、データパケットを遅延無く伝送でき、また、ホームエージェントの処理負荷を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るホームエージェント及びモバイルルータの実施の形態[1]を適用するネットワークシステムの一構成例を示したブロック図である。
【図2】本発明に係るホームエージェント及びモバイルルータの実施の形態[1]の構成例を示したブロック図である。
【図3】本発明に係るホームエージェント及びモバイルルータの実施の形態[1]を適用するネットワークシステムの構築課程(1)(モバイルルータが階層化していない場合)を示したブロック図である。
【図4】ネットワークシステムの構築課程(1)におけるデータパケットの転送処理例を示したブロック図である。
【図5】本発明に係るホームエージェント及びモバイルルータの実施の形態[1]を適用するネットワークシステムの構築課程(2)(モバイルルータが2階層化している場合)を示したブロック図である。
【図6】ネットワークシステムの構築課程(2)におけるデータパケットの通信相手ノードからモバイルネットワークへの転送処理例を示したブロック図である。
【図7】ネットワークシステムの構築課程(2)におけるデータパケットのモバイルネットワークから通信相手ノードへの転送処理例を示したブロック図である。
【図8】本発明に係るホームエージェント及びモバイルルータの実施の形態[1]を適用するネットワークシステムの構築課程(3)(モバイルルータが3階層化している場合)を示したブロック図である。
【図9】ネットワークシステムの構築課程(3)におけるデータパケットの通信相手ノードからモバイルネットワークへの転送処理例を示したブロック図である。
【図10】ネットワークシステムの構築課程(3)におけるデータパケットのモバイルネットワークから通信相手ノードへの転送処理例を示したブロック図である。
【図11】本発明に係るホームエージェント及びモバイルルータの実施の形態[2]を適用するネットワークシステムの一構成例を示したブロック図である。
【図12】本発明に係るホームエージェント及びモバイルルータの実施の形態[3]を適用するネットワークシステムの一構成例を示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るホームエージェント及びモバイルルータの実施の形態[1]〜[3]を、図1〜図12を参照して説明する。
【0020】
実施の形態[1]:図1〜図10
構成例:図1及び図2
図1は、本実施の形態に係るホームエージェント及びモバイルルータを用いて構築したネットワークシステムの一構成例を示している。このネットワークシステム1は、図示の如く、ネットワーク(固定IP網)1000と、このネットワーク1000に対して階層的に接続され、各々がモバイルネットワークNW1〜NWnを形成するn個のモバイルルータ10_1〜10_n(以下、符号10で総称することがある)と、これらのモバイルルータ10_1〜10_nをネットワーク1000を介してそれぞれ管理するn個のホームエージェント20_1〜20_n(以下、符号20で総称することがある)とで構成され、例えばモバイルネットワークNWn内の固定ノード30とネットワーク1000に接続する通信相手ノード40との通信を可能にしている。
【0021】
ここで、図2(a)に示すように、モバイルルータ10(10_1〜10_n)は、受信したデータパケットDP及び制御パケットCPを転送するルーティング処理部11(11_1〜11_n)と、データパケットDPを解析し、データパケットDPが下位に接続された他のモバイルルータから受信したカプセル化されたものである時、データパケットDPをカプセル化しないよう指示する信号(以下、非カプセル化指示信号)INS1を生成してルーティング処理部11に与えるパケット解析部12(12_1〜12_n)とを備えている。
【0022】
また、同図(b)に示すように、ホームエージェント20(20_1〜20_n)は、バインディングキャッシュBCとルーティング情報テーブルTBLとに基づき、受信したデータパケットDP及び制御パケットCPを転送するルーティング処理部21(21_1〜21_n)と、制御パケットCPを監視することにより、管理対象であるモバイルルータの下位に接続された他のモバイルルータの位置情報INFOを取得するパケット監視部22(22_1〜22_n)と、この位置情報INFOを取得した際に前記他のモバイルルータを管理する他のホームエージェントに対してルーティング変更指示INS2を通知するルーティング変更指示部23(23_1〜23_n)とを備えている。なお、ルーティング変更指示INS2はホームエージェント同士間でのみ送受信されれば良いため、これを通知するためのパケットのフォーマットを問わない(データパケットDP又は制御パケットCPのいずれのフォーマットを用いても良い)。
【0023】
動作例:図3〜図10
以下、本実施の形態の動作を、図3〜図10を参照し、モバイルルータ20_1〜20_nが階層化して行くネットワークシステム構築過程(1)〜(3)を順に追って詳細に説明する。なお、下記の説明においては、図2(a)に示したモバイルルータ10及び同図(b)に示したホームエージェント20の両者を用いてネットワークシステムを構築する場合を扱うが、モバイルルータ10又はホームエージェント20のいずれか一方を用いてネットワークシステムを構築しても良い。これは、後述するように、モバイルルータ10が、モバイルネットワーク内のノードから通信相手ノードに対するデータパケットの通信経路を削減する役割を担うのに対して、ホームエージェント20が、通信相手ノードからモバイルネットワーク内のノードに対するデータパケットの通信経路を削減する役割を担うためである。
【0024】
ネットワークシステム構築過程(1):図3並びに図4(a)及び(b)
まず、図3に示す如くモバイルルータ10_1をネットワーク1000に接続した場合、モバイルルータ10_1内のルーティング処理部11_1が、ホームエージェント20_1に対し、制御パケットCPとして、自分自身のホームアドレスHoA1、気付けアドレスCoA1、及びモバイルネットワークNW1のプレフィックスPF1を含む位置登録要求(バインディングアップデート:Binding Update)メッセージBU1を通知する(ステップS1)。
【0025】
メッセージBU1を受信したホームエージェント20_1内のルーティング処理部21_1は、通知されたホームアドレスHoA1、気付けアドレスCoA1、及びネットワークプレフィックスPF1をバインディングキャッシュBCに保存(登録)すると共に下記の表1に示す如くルーティング情報テーブルTBLを作成し、位置登録が正常に完了したことを示す応答(Binding Acknowledgement)メッセージBA1をモバイルルータ10_1に対して通知する(ステップS2)。
【0026】
【表1】

【0027】
これにより、図4(a)に示すように、通信相手ノード40からモバイルネットワークNW1に対して送信されたデータパケットDPは、ネットワーク1000を介してホームエージェント20_1に到達した後、ホームエージェント20_1によりカプセル化されてモバイルルータ10_1に転送されることとなる。
【0028】
すなわち、まずホームエージェント20_1(ルーティング処理部21_1)が、バインディングキャッシュBCからモバイルルータ10_1に関するエントリを検索する。この時、一致するエントリ(上記のステップS1で登録したホームアドレスHoA1、気付けアドレスCoA1、及びネットワークプレフィックスPF1)が存在するため、ホームエージェント20_1は、上記の表1に示したルーティング情報テーブルTBLに従い、データパケットDPにルーティングヘッダHDを付加してカプセル化した後にモバイルルータ10_1の気付けアドレスCoA1宛に送信し、以てデータパケットDPが、モバイルルータ10_1(ルーティング処理部11_1)を経由してモバイルネットワークNW1内の所望の宛先ノード(図示せず)等に到着する。
【0029】
一方、同図(b)に示すように、モバイルネットワークNW1から通信相手ノード40に対してデータパケットDPが送信された場合には、データパケットDPは、モバイルルータ10_1、ネットワーク1000、及びホームエージェント20_1を順に経由した後、通信相手ノード40に到着する。
【0030】
すなわち、モバイルルータ10_1(ルーティング処理部11_1)は、データパケットDPにルーティングヘッダHDを付加してカプセル化した後にホームエージェント20_1宛に送信し、以てデータパケットDPが、ホームエージェント20_1(ルーティング処理部21_1)を経由して通信相手ノード40に到着する。
【0031】
なお、この過程(1)におけるルーティング処理は、非特許文献1等に記載される一般的なルーティング処理と同様である。すなわち、モバイルルータ10_1内のデータパケット解析部12_1、並びにホームエージェント20_1内の制御パケット監視部22_1及びルーティング変更指示部23_1は何ら動作しない。
【0032】
ネットワークシステム構築過程(2):図5〜図7
次に、図5に示す如くモバイルルータ10_2をモバイルネットワークNW1に接続した場合、モバイルルータ10_2内のルーティング処理部11_2が、ホームエージェント20_2に対して自分自身のホームアドレスHoA2、気付けアドレスCoA2、及びモバイルネットワークNW2のプレフィックスPF2を通知するため、モバイルルータ10_1経由で位置登録要求メッセージBU2を送信する(ステップS3)。
【0033】
モバイルルータ10_1内のルーティング処理部11_2は、このメッセージBU2をカプセル化してホームエージェント20_1に送信する(ステップS4)。
【0034】
ホームエージェント20_1内のルーティング処理部21_1は、デカプセル化を行って抽出したメッセージBU2が自分自身に対する位置登録要求では無いため(メッセージBU2の宛先アドレス(図示せず)がホームエージェント20_2であるため)、メッセージBU2をホームエージェント20_2に転送する(ステップS5)。
【0035】
ホームエージェント20_2内のルーティング処理部21_2は、メッセージBU2により通知されたモバイルルータ10_2のホームアドレスHoA2、気付けアドレスCoA2、及びネットワークプレフィックスPF2をバインディングキャッシュBCに登録し、モバイルルータ10_2に向けて応答メッセージBA2を送信する(ステップS6)。
【0036】
この応答メッセージBA2は、ネットワーク1000を介して(ネットワーク1000内のルータが保持するルーティング情報に従い)ホームエージェント20_1に到着する。この時、ホームエージェント20_1内の制御パケット監視部22_1は、メッセージBA2を解析し、モバイルルータ10_2がホームエージェント20_2に正常に位置登録されたことを確認する。また同時に、制御パケット監視部22_1は、ルーティング変更指示部23_1に対して、ホームアドレスHoA2、気付けアドレスCoA2、及びネットワークプレフィックスPF2を位置情報INFOとして通知する。なお、制御パケット(メッセージ)の解析及び位置情報の通知は、上記のステップS5のタイミングで行っても良い。
【0037】
この後、ルーティング変更指示部23_1は、ホームエージェント20_2に対して、モバイルネットワークNW2宛てのデータパケットDPについては、モバイルルータ10_1の気付けアドレスCoA1に転送するようルーティング変更指示INS2を通知する(ステップS7)。また、ルーティング処理部21_1は、応答メッセージBA2をカプセル化してモバイルルータ10_1経由でモバイルルータ10_2に送信する(ステップS8)。
【0038】
ルーティング変更指示INS2を受信したホームエージェント20_2内のルーティング処理部21_2は、この指示INS2に基づき下記の表2に示す如くルーティング情報テーブルTBLを作成する。
【0039】
【表2】

【0040】
また、モバイルルータ10_1は、デカプセル化を行って抽出した応答メッセージBA2の宛先が自分自身では無いため、メッセージBA2をモバイルルータ10_2に転送する(ステップS9)。メッセージBA2を受信したモバイルルータ10_2は、ホームエージェント20_2に対する位置登録が正常に完了したことを確認する。
【0041】
これにより、図6に示すように、通信相手ノード40からモバイルネットワークNW2に対して送信されたデータパケットDPは、ネットワーク1000を介してホームエージェント20_2に到達した後、ホームエージェント20_2によりカプセル化されてモバイルルータ10_1に直接転送されることとなる。
【0042】
すなわち、まずホームエージェント20_2(ルーティング処理部21_2)は、バインディングキャッシュBCにモバイルネットワークNW2のエントリが登録されていることを確認した後、上記の表2に示したルーティング情報テーブルTBL中の処理(1)に従い、モバイルルータ10_2の気付けアドレスCoA2に送信するようにデータパケットDPをカプセル化する。そして、ホームエージェント20_2は、テーブルTBL中の処理(2)に従い、モバイルルータ10_1の気付けアドレスCoA1を宛先として設定したルーティングヘッダHDaをカプセル化されたデータパケットDPcにさらに付加して送出する。
【0043】
モバイルルータ10_1(ルーティング処理部11_1)は、ルーティングヘッダHDaを除去して得たカプセル化データパケットDPcをモバイルルータ10_2に転送する。これを受けたモバイルルータ10_2(ルーティング処理部11_2)は、デカプセル化を行って抽出したデータパケットDPをモバイルネットワークNW2に送信し、以てデータパケットDPが宛先に到着する。
【0044】
一方、図7に示すように、モバイルネットワークNW2から通信相手ノード40に対してデータパケットDPが送信された場合には、データパケットDPは、モバイルルータ10_2、モバイルルータ10_1、ネットワーク1000、ホームエージェント20_2を順に経由した後、通信相手ノード40に到着する。
【0045】
すなわち、モバイルルータ10_2(ルーティング処理部11_2)は、データパケットDPをホームエージェント20_2に向けてカプセル化してモバイルルータ10_1に転送する。モバイルルータ10_1内のデータパケット解析部12_1は、モバイルルータ10_2から受信したパケットDPcを解析してカプセル化されていることを確認し、この時、非カプセル化指示信号INS1をルーティング処理部11_1に与える。ルーティング処理部11_1は、モバイルルータ10_2から受信したパケットDPcをネットワーク1000へそのまま送出する。
【0046】
これにより、カプセル化データパケットDPcは、ホームエージェント20_2に直接転送され、デカプセル化された後にネットワーク1000を経由して通信相手ノード40に到着する。
【0047】
ネットワークシステム構築過程(3):図8〜図10
次に、図8に示す如くモバイルルータ10_3をモバイルネットワークNW3に接続した場合、モバイルルータ10_3内のルーティング処理部11_3が、ホームエージェント20_3に対して自分自身のホームアドレスHoA3、気付けアドレスCoA3、及びモバイルネットワークNW3のプレフィックスPF3を通知するため、モバイルルータ10_2経由で位置登録要求メッセージBU3を送信する(ステップS10)。
【0048】
モバイルルータ10_2内のルーティング処理部11_2は、このメッセージBU3をホームエージェント20_2に向けてカプセル化し、モバイルルータ10_1へ転送する(ステップS11)。
【0049】
モバイルルータ10_1内のルーティング処理部11_1は、さらにカプセル化したメッセージBU3をホームエージェント20_1に送信する(ステップS12)。
【0050】
ホームエージェント20_1内のルーティング処理部21_1は、デカプセル化を行って抽出したカプセル化メッセージBU3cが自分自身に対する位置登録要求では無いため(この段階では宛先がホームエージェント20_2であるため)、カプセル化メッセージBU3cをホームエージェント20_2に転送する(ステップS13)。
【0051】
ホームエージェント20_2内のルーティング処理部21_2は、デカプセル化を行って抽出したメッセージBU3の宛先(図示せず)がホームエージェント20_3であるため、メッセージBU3をホームエージェント20_3に転送する(ステップS14)。
【0052】
ホームエージェント20_3内のルーティング処理部21_3は、メッセージBU3により通知されたモバイルルータ10_3のホームアドレスHoA3、気付けアドレスCoA3、及びネットワークプレフィックスPF3をバインディングキャッシュBCに登録し、モバイルルータ10_3に向けて応答メッセージBA3を送信する(ステップS15)。
【0053】
この応答メッセージBA3は、ネットワーク1000を介してホームエージェント20_2に到着する。この時、ホームエージェント20_2内の制御パケット監視部22_2は、メッセージBA3を解析し、モバイルルータ10_3がホームエージェント20_3に正常に位置登録されたことを確認する。また同時に、制御パケット監視部22_2は、ルーティング変更指示部23_2に対して、ホームアドレスHoA3、気付けアドレスCoA3、及びネットワークプレフィックスPF3を通知する。
【0054】
この後、ルーティング変更指示部23_2は、ホームエージェント20_3に対して、モバイルネットワークNW3宛てのデータパケットDPについては、モバイルルータ10_1の気付けアドレスCoA1に転送するようルーティング変更指示INS2を通知する(ステップS16)。
【0055】
ルーティング変更指示INS2を受信したホームエージェント20_3内のルーティング処理部21_3は、この指示INS2に基づき下記の表3に示す如くルーティング情報テーブルTBLを作成する。
【0056】
【表3】

【0057】
また、ホームエージェント20_2内のルーティング処理部21_2は、応答メッセージBA3をモバイルルータ10_2に向けてカプセル化してホームエージェント20_1に転送する(ステップS17)。ホームエージェント20_1内のルーティング処理部21_1は、さらにカプセル化したメッセージBA3をモバイルルータ10_1に送信する(ステップS18)。
【0058】
モバイルルータ10_1は、デカプセル化を行って抽出したカプセル化メッセージBA3cの宛先が自分自身では無いため(この段階ではモバイルルータ10_2であるため)、カプセル化メッセージBA3cをモバイルルータ10_2に転送する(ステップS19)。モバイルルータ10_2は、デカプセル化を行って抽出した応答メッセージBA3をモバイルルータ10_3に転送する(ステップS20)。モバイルルータ10_3は、ホームエージェント20_3に対する位置登録が正常に完了したことを確認する。
【0059】
これにより、図9に示すように、通信相手ノード40からモバイルネットワークNW3に対して送信されたデータパケットDPは、ネットワーク1000を介してホームエージェント20_3に到達した後、ホームエージェント20_3によりカプセル化されてモバイルルータ10_1に直接転送されることとなる。
【0060】
すなわち、まずホームエージェント20_3(ルーティング処理部21_3)は、バインディングキャッシュBCにモバイルネットワークNW3のエントリが登録されていることを確認した後、上記の表3に示したルーティング情報テーブルTBL中の処理(1)に従い、モバイルルータ10_3の気付けアドレスCoA3に送信するようにデータパケットDPをカプセル化する。そして、ホームエージェント20_2は、テーブルTBL中の処理(2)に従い、モバイルルータ10_1の気付けアドレスCoA1を宛先として設定したルーティングヘッダHDaをカプセル化データパケットDPcにさらに付加して送出する。
【0061】
モバイルルータ10_1(ルーティング処理部11_1)は、ルーティングヘッダHDaを除去して得たカプセル化データパケットDPcをモバイルルータ10_2に転送する。モバイルルータ10_2(ルーティング処理部11_2)は、カプセル化データパケットDPcの宛先が自分自身で無いため、カプセル化データパケットDPcをモバイルルータ10_3に転送する。モバイルルータ10_3は、デカプセル化を行って抽出したデータパケットDPをモバイルネットワークNW3に送信し、以てデータパケットDPが宛先に到着する。
【0062】
一方、図10に示すように、モバイルネットワークNW3から通信相手ノード40に対してデータパケットDPが送信された場合には、データパケットDPは、モバイルルータ10_3、モバイルルータ10_2、モバイルルータ10_1、ネットワーク1000、ホームエージェント20_3を順に経由した後、通信相手ノード40に到着する。
【0063】
すなわち、モバイルルータ10_3(ルーティング処理部11_3)は、データパケットDPをホームエージェント20_3に向けてカプセル化してモバイルルータ10_2に転送する。モバイルルータ10_2内のデータパケット解析部12_2は、モバイルルータ10_3から受信したパケットDPcを解析してカプセル化されていることを確認し、この時、非カプセル化指示信号INS1をルーティング処理部11_2に与える。ルーティング処理部11_2は、モバイルルータ10_3から受信したパケットDPcをモバイルルータ10_1へそのまま転送する。モバイルルータ10_1は、モバイルルータ10_2から受信したパケットDPcをネットワーク1000へそのまま送出する。
【0064】
これにより、カプセル化データパケットDPcは、ホームエージェント20_3に直接転送され、デカプセル化された後にネットワーク1000を経由して通信相手ノード40に到着する。
【0065】
図1に示したモバイルルータ10_4〜10_nが接続された場合も上記の過程(3)と同様にして、ホームエージェント20_3〜20_n-1が、ホームエージェント20_4〜20_nに対して、相手ノード40からモバイルネットワークNW4〜NWn宛てに送信されたデータパケットDPをモバイルルータ10_1へ直接転送するよう指示し、以てデータパケットDPの通信経路が削減されることとなる。
【0066】
一方、モバイルネットワークNW4〜NWnから相手ノード40宛てに送信されたデータパケットDPは、上記の過程(3)と同様にして、モバイルルータ10_1からモバイルルータ10_4〜10_nの各々を管理するホームエージェント10_4〜10_nへ直接転送され、以てデータパケットDPの通信経路が削減されることとなる。
【0067】
実施の形態[2]:図11
図11は、本実施の形態に係るホームエージェント及びモバイルルータを用いて構築したネットワークシステムの一構成例を示している。このネットワークシステム2は、モバイルネットワークNWn-1に、図1に示したモバイルルータ10_nに代えてネットワークを移動可能なモバイルノード50を接続した点が上記の実施の形態[1]で示したネットワークシステム1と異なる。なお、以下の説明は、モバイルノード50が他のモバイルネットワークに接続した場合も同様に適用される。
【0068】
動作においては、モバイルノード50がホームエージェント20_mへの位置登録の際にネットワークプレフィックスを通知しない。このため、モバイルルータ10_n-1を管理するホームエージェント20_n-1内の制御パケット監視部22_n-1は、モバイルノード50からホームエージェント20_mへの位置登録要求メッセージ又はその応答メッセージを中継した際に、ルーティング変更指示部23_n-1に対して、モバイルノード50のホームアドレス及び気付けアドレスを位置情報INFOとして通知する。そして、ルーティング変更指示部23_n-1は、ホームエージェント20_mに対して、モバイルノード50宛てのデータパケットDPについては、モバイルルータ10_1の気付けアドレスCoA1に転送するようルーティング変更指示INS2を通知する。なお、他の動作は上記の実施の形態[1]と同様であるため、その説明を省略する。
【0069】
これにより、本実施の形態においても上記の実施の形態[1]と同様に、通信相手ノード40からモバイルノード50へのデータパケット、及びモバイルノード50から通信相手ノード40へのデータパケットの各々の通信経路の削減効果を得ることができる。
【0070】
実施の形態[3]:図12
図12は、本実施の形態に係るホームエージェント及びモバイルルータを用いて構築したネットワークシステムの一構成例を示す。このネットワークシステム3は、モバイルネットワークNWn-1に、モバイルルータ10_nに加えてモバイルルータ10_kが接続され、これらのモバイルルータ10_n及び10_kをホームエージェント20_nが共通に管理する点が図1に示したネットワークシステム1と異なる。
【0071】
今、モバイルネットワークNW_n-1に先にモバイルルータ10_nを接続し、次いでモバイルルータ10_kを接続したとする。この場合、モバイルルータ10_nが接続された時のホームエージェント20_n-1及び20_nの動作は、上記の実施の形態[1]と同様である。
【0072】
一方、モバイルルータ10_kが接続された時には、既に通信相手ノード40から送出されたモバイルネットワークNWk宛てのデータパケットがホームエージェント20_nからモバイルルータ10_1へ直接転送されるよう設定されているため(すなわち、冗長なルーティング変更指示を回避するため)、ホームエージェント20_n-1は、ホームエージェント20_nに対してルーティング変更指示INS2を通知しない。
【0073】
なお、図示されないが、モバイルルータ10_n及び10_kを異なるホームエージェントが管理する場合には、各ホームエージェントが上記の実施の形態[1]と同様の動作を行えば良い。また、モバイルルータ10_1〜10_n及び10_kの動作は、モバイルルータ10_n及び10_kを管理するホームエージェントが同一であるか否かに関わらず、上記の実施の形態[1]と同様である。
【0074】
従って、このネットワークシステム3においても、上記の実施の形態[1]と同様の通信経路削減効果を得ることができる。
【0075】
なお、上記の実施の形態によって本発明は限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づき、当業者によって種々の変更が可能なことは明らかである。例えば、上記の実施の形態で示したホームエージェント及びモバイルルータの各処理をコンピュータに実行させるためのプログラムとして提供することもできる。
【符号の説明】
【0076】
1, 2, 3 ネットワークシステム
10, 10_1〜10_n, 10_m, 10_k モバイルルータ
20, 20_1〜20_n, 20_m ホームエージェント
30, 30m, 30k 固定ノード
40 通信相手ノード
50 モバイルノード
1000 ネットワーク
NW, NW1〜NWn, NWk モバイルネットワーク
CP 制御パケット
BU, BU1〜BU3 位置登録要求メッセージ
BU3c カプセル化メッセージ
BA, BA1〜BA3 応答メッセージ
DP データパケット
DPc カプセル化データパケット
INS1 非カプセル化指示信号
INS2 ルーティング変更指示
INFO 位置情報
HoA, HoA1〜HoA3 ホームアドレス
CoA, CoA1〜CoA3 気付けアドレス
PF, PF1〜PF3 ネットワークプレフィックス
HD, HDa ルーティングヘッダ
BC バインディングキャッシュ
TBL ルーティング情報テーブル
図中、同一符号は同一又は相当部分を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自分自身の下位に接続されたモバイルルータからデータパケットを受信して解析する解析部と、
前記データパケットがカプセル化されている時、前記データパケットを上位に接続されたモバイルルータ又は外部のネットワークへそのまま転送する処理部と、
を備えたことを特徴とするモバイルルータ。
【請求項2】
モバイルルータの制御方法であって、
前記モバイルルータの下位に接続されたモバイルルータからデータパケットを受信して解析するステップと、
前記データパケットがカプセル化されている時、前記データパケットを上位に接続されたモバイルルータ又は外部のネットワークへそのまま転送するステップと、
を備えたことを特徴とするモバイルルータの制御方法。
【請求項3】
モバイルルータに実行させるためのパケット転送制御プログラムであって、
前記モバイルルータの下位に接続されたモバイルルータからデータパケットを受信して解析するステップと、
前記データパケットがカプセル化されている時、前記データパケットを上位に接続されたモバイルルータ又は外部のネットワークへそのまま転送させるステップと、
を実行させることを特徴とするパケット転送制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−199931(P2012−199931A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−104712(P2012−104712)
【出願日】平成24年5月1日(2012.5.1)
【分割の表示】特願2008−6859(P2008−6859)の分割
【原出願日】平成20年1月16日(2008.1.16)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】