説明

ボルト

【課題】手間と労力とを要せずに設置することができ、繰り返して使用することができるボルトを提供する。
【解決手段】ボルト10Aでは、ボルト本体11の頭部17を先頭に、頭部17およびワッシャー13Aと軸部15を包被する筒部材12とワッシャー13Bおよび六角ナット14とがボルト穴に挿入され、係合部19を利用して軸部を反時計回り方向へ回転させると、六角ナット14が軸部15の軸方向前方へ移動しつつ筒部材12を頭部17に向かって押圧し、それによって筒部材12が径方向外方へ弾性変形し、筒部材12の外周面29がボルト穴の内周面に密着し、ボルト10Aがボルト孔に固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新設構造物または既設構造物の所定の箇所に穿孔されたボルト孔に着脱可能に固定されるボルトに関する。
【背景技術】
【0002】
先端部に螺旋状突起を有する打込みピンと、ピン穴が形成されたアンカーボルト本体とから形成され、建造物のモルタル層やコンクリート層に穿孔されたアンカーホールにアンカーボルト本体を挿入した後、アンカーボルト本体のピン穴に打込みピンを打ち込むことによって本体の開脚部を拡開させてアンカーホールに固定するピン打込み式拡開アンカーボルトがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−27599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に開示のピン打込み式拡開アンカーボルトは、アンカーボルト本体をアンカーホールに挿入した後、打込みピンをピン穴に打ち込んでアンカーボルト本体の開脚部を径方向外方へ拡開させるため、アンカーボルト本体とは別に打ち込みピンを必要とするとともに、打ち込み工具を別途用意しなければならず、あわせて、打込みピンの打ち込みに大きな力が必要となり、その設置に手間と労力とを要する。また、打込みピンをピン穴に打ち込んでアンカーボルト本体をアンカーホールに固定した後、打込みピンを含むアンカーボルト本体をアンカーホールから取り外すことができず、繰り返して使用することができない。
【0005】
このピン打込み式拡開アンカーボルトは、ピン穴への打ち込みピンの打ち込み時における衝撃により、構造物のモルタル層やコンクリート層を破損してしまう場合があるとともに、打ち込みピンの打ち込み時に大きな騒音が発生し、近隣への騒音公害の原因になる場合がある。さらに、打ち込みピンとしてその打込み時の衝撃に耐えることができる硬質材を使用する必要があるため、アンカーボルトの製造コストが高くなり、ボルトを廉価に作ることができない。
【0006】
本発明の目的は、手間と労力とを要せずに設置することができ、繰り返して使用することができるボルトを提供することにある。本発明の他の目的は、設置時に構造物の破損を防ぐことができるとともに大きな騒音が発生せず、廉価に作ることができるボルトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための本発明の前提は、新設構造物または既設構造物の所定の箇所に穿孔されたボルト穴に着脱可能に設置されるボルトである。
【0008】
前記前提における本発明の特徴は、ボルトが、軸方向へ延びていてその外周面に螺子が形成された軸部と、軸部の上端部分に位置して軸部の径方向外方へ延出する頭部と、軸部の下端部分に位置して軸部を一方向とその反対方向とのいずれかに回転させるときに使用する係合部と、軸部に螺着されて軸部を一方向とその反対方向とのいずれかに回転させることによって軸部の軸方向前方と軸方向後方とのいずれかへ移動可能な締結部材と、軸方向へ延びていて頭部と締結部材との間に配置され、軸部に着脱可能に挿入されて軸部の外周面を包被する弾性変形可能な筒部材とから形成され、ボルトでは、それがボルト穴に挿入された後、係合部を利用して軸部を一方向へ回転させると、締結部材が軸部の軸方向前方へ移動しつつ筒部材を頭部に向かって押圧し、それによって筒部材が径方向外方へ弾性変形することで、ボルトがボルト孔に固定されることにある。
【0009】
本発明の一例として、ボルトでは、係合部を利用して軸部を反対方向へ回転させると、締結部材が軸部の軸方向後方へ移動し、それによって筒部材が径方向内方へ弾性変形し、ボルト穴に対するボルトの固定が解除される。
【0010】
本発明の他の一例として、筒部材には、筒部材の周り方向へ所定寸法離間して軸方向へ延びる複数の切り込みが形成されている。
【0011】
本発明の他の一例として、筒部材の外周面には、筒部材の周り方向へ所定寸法離間して軸方向へ延びる複数の凸部と、凸部の間に位置して軸方向へ延びる複数の凹部とが形成されている。
【0012】
本発明の他の一例として、筒部材の外周面には、軸方向へ所定寸法離間して筒部材の周り方向へ延びる複数の凸部と、凸部の間に位置して周り方向へ延びる複数の凹部とが形成されている。
【0013】
本発明の他の一例として、筒部材の外周面には、筒部材の周り方向と軸方向とへ所定寸法離間する複数の凸部が形成されている。
【0014】
本発明の他の一例としては、筒部材の内径が軸部の外径と略同一または軸部の外径よりも0.1〜2mm大きい。
【0015】
本発明の他の一例としては、筒部材の外径がボルト孔の内径と略同一またはボルト孔の内径よりも0.2〜4mm小さい。
【0016】
本発明の他の一例としては、筒部材の軸方向における長さ寸法が軸部の長さ寸法の30〜70%の範囲にある。
【0017】
本発明の他の一例としては、筒部材がゴム系素材から作られたゴム管またはゴム系素材から作られた布巻きゴム管である。
【発明の効果】
【0018】
本発明にかかるボルトによれば、それをボルト穴に挿入した後、係合部にたとえばインパクトドライバー(電動工具)のソケットレンチビットを嵌合させ、ドライバーのスイッチをONにして軸部を一方向へ回転させることで、締結部材が軸部の軸方向前方へ移動しつつ筒部材を頭部に向かって押圧し、それによって筒部材が径方向外方へ弾性変形することで、筒部材の外周面がボルト穴の内周面に密着し、ボルトがボルト孔に固定されるから、簡単な作業でボルトをボルト穴に固定することができ、手間と労力とを要せずに設置することができる。ボルトは、その係合部にインパクトドライバーのソケットレンチビットを嵌合させ、ドライバーによって軸部を一方向へ回転させることで、ボルト穴に設置することができるから、設置時に構造物の破損を防ぐことができるとともに大きな騒音が発生することはなく、騒音公害の原因になることもない。また、ボルトは、その軸部に螺着された締結部材と軸部に着脱可能に挿入された筒部材とを備えるだけであり、打込みピンを必要としないから、廉価に作ることができる。ボルトは、筒部材が径方向外方へ弾性変形することで、その筒部材の外周面がボルト穴の内周面に強固に密着し、ボルト穴に対してボルトを強固に固定することができるから、ボルト穴から露出するボルトの軸部に他の機械器具を取り付けて所定の作業を行うことで軸部に強い外力が加わったとしても、ボルトがボルト穴から外れることはなく、所定の作業を安全に行うことができる。
【0019】
係合部を利用して軸部を反対方向へ回転させると、締結部材が軸部の軸方向後方へ移動し、それによって筒部材が径方向内方へ弾性変形し、ボルト穴に対する固定が解除されるボルトは、係合部にたとえばインパクトドライバーのソケットレンチビットを嵌合させ、ドライバーのスイッチをONにして軸部を反対方向へ回転させることで、締結部材が軸部の軸方向後方へ移動し、それによって筒部材が径方向内方へ弾性変形し、筒部材の外周面とボルト穴の内周面との密着が解除され、ボルト穴に対する固定が解除されるから、手間と労力とを要せずに簡単な作業でボルトをボルト穴から取り外すことができる。ボルトは、ボルト穴から取り外したそれを再びボルト穴に設置することができるから、繰り返して使用することができ、ボルトの無駄を省くことができる。
【0020】
筒部材の周り方向へ所定寸法離間して軸方向へ延びる複数の切り込みが筒部材に形成されたボルトは、締結部材によって筒部材がボルトの頭部に向かって押圧されたときに、それら切り込みの間に延びる筒部材の部位が径方向外方へ容易かつ整然と弾性変形するから、筒部材の部位がボルト穴の内周面に確実かつ強固に密着し、筒部材の外周面の大部分をボルト穴の内周面に密着させることができ、ボルト穴に対してボルトを強固に固定することができる。ボルトは、それをボルト穴に強固に固定することができるから、ボルト穴から露出するボルトの軸部に他の機械器具を取り付けて所定の作業を行うことで軸部に強い外力が加わったとしても、ボルトがボルト穴から外れることはなく、所定の作業を安全に行うことができる。
【0021】
筒部材の周り方向へ所定寸法離間して軸方向へ延びる複数の凸部と凸部の間に位置して軸方向へ延びる複数の凹部とが筒部材の外周面に形成されたボルトは、締結部材によって筒部材がボルトの頭部に向かって押圧されたときに、筒部材が径方向外方へ弾性変形しつつそれら凸部または凸部とともに凹部を含む筒部材の外周面がボルト穴の内周面に強固かつ確実に密着するのみならず、それら凸部によってボルト穴の内周面に対する筒部材の外周面の密着度合いが向上するから、ボルト穴に対してボルトを強固に固定することができる。ボルトは、それをボルト穴に強固に固定することができるから、ボルト穴から露出するボルトの軸部に他の機械器具を取り付けて所定の作業を行うことで軸部に強い外力が加わったとしても、ボルトがボルト穴から外れることはなく、所定の作業を安全に行うことができる。
【0022】
軸方向へ所定寸法離間して筒部材の周り方向へ延びる複数の凸部と凸部の間に位置して周り方向へ延びる複数の凹部とが筒部材の外周面に形成されたボルトは、締結部材によって筒部材がボルトの頭部に向かって押圧されたときに、筒部材が径方向外方へ弾性変形しつつそれら凸部または凸部とともに凹部を含む筒部材の外周面がボルト穴の内周面に強固かつ確実に密着するのみならず、それら凸部によってボルト穴の内周面に対する筒部材の外周面の密着度合いが向上するから、ボルト穴に対してボルトを強固に固定することができる。ボルトは、それをボルト穴に強固に固定することができるから、ボルト穴から露出するボルトの軸部に他の機械器具を取り付けて所定の作業を行うことで軸部に強い外力が加わったとしても、ボルトがボルト穴から外れることはなく、所定の作業を安全に行うことができる。
【0023】
筒部材の周り方向と軸方向とへ所定寸法離間する複数の凸部が筒部材の外周面に形成されたボルトは、締結部材によって筒部材がボルトの頭部に向かって押圧されたときに、筒部材が径方向外方へ弾性変形しつつそれら凸部または凸部を含む筒部材の外周面がボルト穴の内周面に強固かつ確実に密着するのみならず、それら凸部によってボルト穴の内周面に対する筒部材の外周面の密着度合いが向上するから、ボルト穴に対してボルトを強固に固定することができる。ボルトは、それをボルト穴に強固に固定することができるから、ボルト穴から露出するボルトの軸部に他の機械器具を取り付けて所定の作業を行うことで軸部に強い外力が加わったとしても、ボルトがボルト穴から外れることはなく、所定の作業を安全に行うことができる。
【0024】
筒部材の内径が軸部の外径と略同一または軸部の外径よりも0.1〜2mm大きいボルトは、ボルトの軸部を筒部材に対して摺動可能に回転させることができ、それによって締結部材が軸部の軸方向後方または軸方向後方へ移動し、筒部材が径方向外方または径方向内方へ弾性変形するから、ボルトをボルト穴に確実に固定することができるとともに、ボルト穴に対するボルトの固定を確実に解除することができる。
【0025】
筒部材の外径がボルト孔の内径と略同一またはボルト孔の内径よりも0.2〜4mm小さいボルトは、ボルトの頭部と筒部材と締結部材とをボルト穴に挿入することができ、頭部を含むボルトの軸部をボルト穴に対して回転させることができ、それによって締結部材が軸部の軸方向後方または軸方向後方へ移動し、筒部材が径方向外方または径方向内方へ弾性変形するから、ボルトをボルト穴に確実に固定することができるとともに、ボルト穴に対するボルトの固定を確実に解除することができる。
【0026】
筒部材の軸方向における長さ寸法がボルトの軸部の長さ寸法の30〜70%の範囲にあるボルトは、筒部材の長さ寸法が前記範囲にあるから、締結部材によって筒部材がボルトの頭部に向かって押圧されたときに、筒部材が径方向外方へ弾性変形しつつ前記長さ寸法の筒部材の外周面がボルト穴の内周面に強固に密着し、ボルト穴に対してボルトを強固に固定することができる。ボルトは、それをボルト穴に強固に固定することができるから、ボルト穴から露出するボルトの軸部に他の機械器具を取り付けて所定の作業を行うことで軸部に強い外力が加わったとしても、ボルトがボルト穴から外れることはなく、所定の作業を安全に行うことができる。
【0027】
筒部材がゴム系素材から作られたゴム管またはゴム系素材から作られた布巻きゴム管であるボルトは、摩擦係数が大きいゴム管や布巻きゴム管を使用することで、締結部材によって筒部材がボルトの頭部に向かって押圧されたときに、筒部材が径方向外方へ弾性変形しつつその筒部材の外周面がボルト穴の内周面に強固かつ確実に密着するから、ボルト穴に対してボルトを強固に固定することができる。ボルトは、それをボルト穴に強固に固定することができるから、ボルト穴から露出するボルトの軸部に他の機械器具を取り付けて所定の作業を行うことで軸部に強い外力が加わったとしても、ボルトがボルト穴から外れることはなく、所定の作業を安全に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】一例として示すボルトの斜視図。
【図2】ボルトの分解斜視図。
【図3】図1のA−A線端面図。
【図4】ボルトの設置手順を説明する図。
【図5】図4から続くボルトの設置手順を説明する図。
【図6】図5から続くボルトの設置手順を説明する図。
【図7】図6から続くボルトの設置手順を説明する図。
【図8】図7から続くボルトの設置手順を説明する図。
【図9】他の一例として示すボルトの斜視図。
【図10】ボルト穴に固定された状態で示すボルトの側面図。
【図11】図10のB−B線端面図。
【図12】他の一例として示すボルトの斜視図。
【図13】ボルト穴に固定された状態で示すボルトの側面図。
【図14】図13のC−C線端面図。
【図15】他の一例として示すボルトの斜視図。
【図16】ボルト穴に固定された状態で示すボルトの側面図。
【図17】図16のD−D線端面図。
【図18】他の一例として示すボルトの斜視図。
【図19】ボルト穴に固定された状態で示すボルトの側面図。
【図20】図19のE−E線端面図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
一例として示すボルト10Aの斜視図である図1等の添付の図面を参照し、本発明にかかるボルトの詳細を説明すると、以下のとおりである。なお、図2は、ボルト10Aの分解斜視図であり、図3は、図1のA−A線端面図である。図1,3では、軸方向を矢印Xで示し(図2を除く)、径方向を矢印Yで示すとともに、周り方向を矢印Zで示す。ボルト10Aは、新設構造物または既設構造物の所定の箇所に穿孔されたボルト穴26に着脱可能に設置される。
【0030】
ボルト10Aは、ボルト本体11と、弾性変形可能な筒部材12と、ワッシャー13A,13Bおよび六角ナット14(締結部材)とから形成されている。なお、ボルト10Aでは、ワッシャー13A,13Bの両方を省くことができ、または、ワッシャー13A,13Bのうちのいずれか一方を省くこともできる。ボルト本体11は、軸方向へ長い棒状に成形された軸部15と、軸部15の上端部分16に位置する頭部17と、軸部15の下端部分18に位置する係合部19とから形成されている。ボルト本体11の軸部15には、図2に示すように、筒部材12やワッシャー13A,13B、六角ボルト14が頭部17の側からワッシャー13A→筒部材12→ワッシャー13B→六角ボルト14の順で取り付けられる。
【0031】
ボルト本体11は、鋼から作られているが、鋼の他に、ステンレスやアルミ合金、チタン合金等の金属、または、樹脂から作られていてもよい。軸部15の中間部分20における外周面21には、雄螺子22(螺子)が作られている。頭部17は、その形状が正六角形に成形され、軸部15の径方向外方へ延出している。なお、頭部17の形状に特に限定はなく、頭部17が円柱状や他の多角柱状に成形されていてもよく、平板円形状や平板多角形状に成形されていてもよい。
【0032】
係合部19は、その形状が正六角形に成形されている。なお、係合部19には、六角棒スパナが係合する六角形の穴が作られていてもよい。係合部19は、後記するインパクトドライバー27(電動工具)(図6参照)のソケットレンチビット28を嵌合させ、ドライバー27のスイッチをONにすることで、軸部15を反時計回り方向(一方向)と時計回り方向(反対方向)とのいずれかに回転させるときに使用する。係合部19が六角形の穴である場合は、インパクトドライバー27のソケットレンチ用アダプタ(ソケットレンチ六角棒)を嵌合させ、軸部15を反時計回り方向と時計回り方向とのいずれかに回転させる。
【0033】
六角ナット14は、ボルト本体11の軸部15の雄螺子22に着脱可能に螺着されている。六角ナット14は、鋼から作られているが、ステンレスやアルミ合金、チタン合金等の金属、または、樹脂から作られていてもよい。六角ナット14は、軸部15(頭部17を含む)を反時計回り方向へ回転させることによって軸方向前方へ移動(係合部19の側から頭部17に向かって移動)し、軸部15(頭部17を含む)を時計回り方向へ回転させることによって軸方向後方へ移動(頭部17の側から係合部19に向かって移動)する。なお、締結部材として六角ナット14を使用しているが、六角ナット14の他に、円柱状のナットや他の多角柱状のナットを使用することもできる。
【0034】
筒部材12は、軸方向へ長い中空の筒状に成形され、ボルト本体11の頭部17(ワッシャー13A)と六角ナット14(ワッシャー13B)との間に配置されている。筒部材12は、ボルト本体11の軸部15の中央部分20に挿入され、軸部15の外周面21全域を包被している。ワッシャー13Aは、ボルト本体11の頭部17と筒部材12の上端24との間に配置されている。ワッシャー13Bは、筒部材12の下端23と六角ナット14との間に配置されている。ボルト10Aでは、軸部15の中央部分20の約半分が筒部材12から露出している。
【0035】
筒部材12には、ゴム系素材から作られたゴム管またはゴム系素材から作られた布巻きゴム管が使用されている。ゴム系素材としては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンゴム(EPM、EPDM)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、ウレタンゴム(U)、アクリルゴム(ANM、ACM)、シリコンゴム(Q)等を使用することができる。
【0036】
図4は、ボルト10Aの設置手順(設置方法)を説明する図であり、図5は、図4から続くボルト10Aの設置手順を説明する図である。図6は、図5から続くボルト10Aの設置手順を説明する図であり、図7は、図6から続くボルト10Aの設置手順を説明する図である。図8は、図7から続くボルト10Aの設置手順を説明する図である。
【0037】
それら図に基づいてボルト10Aの設置手順を説明すると、以下のとおりである。なお、ボルト穴26に対するボルト10Aの設置前(固定前)の状態は、図1に示すように、六角ナット14が軸部15の雄螺子22に螺着され、筒部材12の上端24がワッシャー13Aを介して頭部17に当接し、ワッシャー13Bが筒部材12の下端23に当接し、ナット14がそのワッシャー13Bに当接しているが、ナット14が筒部材12を頭部17に向かって押圧してはおらず、筒部材12がその径方向外方へ弾性変形していない。
【0038】
ボルト10Aの設置手順の説明では、ボルト10Aが新設構造物または既設構造物の壁の所定の箇所におけるモルタル層25やコンクリート層25(コンクリート躯体)に設置されるものとする。なお、ボルト10Aは、壁のみならず、柱や梁、スラブ、天井に設置することもでき、それら箇所のモルタル層25やコンクリート層25の他に、ボルト穴26を穿孔することができる素地であれば、構造物を構成する木や金属、プラスチックに設置することもできる。
【0039】
最初にボルト10Aを設置する構造物の箇所のモルタル層25やコンクリート層25に振動ドリル(電動工具)(図示せず)によって円筒状のボルト穴26(アンカーホール)を穿孔する。ボルト穴26の深さ寸法について特に限定はないが、図1の状態のボルト10Aのうちの、少なくとも頭部17と筒部材12とをプラスした長さと同一の深さ寸法以上(ボルト10Aの頭部17と筒部材12とを挿入可能な深さ寸法以上)である必要がある。ボルト穴26を穿孔した後、ボルト10Aをそのボルト穴26に挿入する。ボルト穴26には、図4に示すように、ボルト本体11の頭部17を先頭として、頭部17からワッシャー13A、筒部材12、ワッシャー13B、六角ナット14の順に挿入する。
【0040】
なお、ワッシャー13A,13Bを省く場合は、頭部17から筒部材12、六角ナット14の順に挿入する。ワッシャー13Aを省く場合は、頭部17から筒部材12、ワッシャー13B、六角ナット14の順に挿入する。また、ワッシャー13Bを省く場合は、頭部17からワッシャー13A、筒部材12、六角ナット14の順に挿入する。
【0041】
ボルト穴26に挿入されたボルト10Aは、図5に示すように、その頭部17がボルト穴26の底面に当接し、軸部15を包被する筒部材12と六角ナット14(ワッシャー13A,13Bを含む)と軸部15の中間部分20の一部とがボルト穴26の内部に位置している。なお、ボルト10Aをボルト穴26に挿入した状態では、ボルト10Aのうちの少なくとも頭部17と筒部材12とがボルト穴26の内部に位置すればよい。
【0042】
ボルト10Aをボルト穴26に挿入した後、図6に示すように、インパクトドライバー27(電動工具)のソケットレンチビット28をボルト本体11の係合部19に嵌合させ、ドライバー27のスイッチをONにしてボルト10Aの軸部15を反時計回り方向(一方向)へ回転させる。軸部15(頭部17を含む)を反時計回り方向へ回転させると、図6に矢印X1で示すように、六角ナット14が軸部15の雄螺子22上を軸方向前方へ向かって次第に移動(係合部19の側から頭部17に向かって移動)し、ナット14が筒部材12を頭部17に向かって次第に押圧する。
【0043】
六角ナット14によってボルト本体11の頭部17に向かって押圧された筒部材12は、図6に矢印Y1で示すように、径方向外方へ弾性変形し、その外周面29が径方向外方へ次第に膨らむ。筒部材12が弾性変形すると、その外周面29がボルト穴26の内周面30に当接し、その状態において筒部材12がボルト穴26に固定され、筒部材12の自由な回転が規制されるとともに、ワッシャー13を介して筒部材12の下端23に密着する六角ナット14が筒部材12に固定され、軸部15とともにナット14が回転するいわゆるナット14の空回りがなくなる。
【0044】
インパクトドライバー27によってボルト本体11の軸部15をさらに反時計回り方向へ回転させると、六角ナット14が軸部15を軸方向前方へ向かってさらに移動し、図7に示すように、筒部材12がさらに径方向外方へ弾性変形し、筒部材12の外周面29の大部分がボルト穴26の内周面30に密着し、ボルト10Aがボルト孔26に固定される。なお、六角ナット14が筒部材12に強固に固定されるとともに、筒部材12の上端24近傍の部位および下端23近傍の部位がボルト本体11の軸部15に強固に密着することで、軸部15(頭部17を含む)が固定される。
【0045】
ボルト本体11の軸部15を反時計回りに十分に回転させ、筒部材12の外周面29をボルト穴26の内周面30に密着させた後、インパクトドライバー27のソケットレンチビット28をボルト本体11の係合部19から抜き取ると、図8に示すように、ボルト10Aがボルト穴26(モルタル層25やコンクリート層25)に強固に固定される。図8の状態において、ボルト穴26から露出するボルト本体11の軸部15に他の機械器具を取り付けて所定の作業を行う。
【0046】
図8の状態からボルト10Aをボルト穴26から取り外すには、ボルト本体11の係合部19に再びインパクトドライバー27のソケットレンチビット28を嵌合させ、ドライバー27のスイッチをONにしてボルト本体11の軸部15を時計回り方向(反対方向)へ回転させる。軸部15(頭部17を含む)を時計回り方向へ回転させると、六角ナット14が軸部15の雄螺子22上を軸方向後方へ向かって移動(頭部17の側から係合部19に向かって移動)し、ナット14の筒部材12に対する押圧が次第に解除される。
【0047】
六角ナット14による筒部材12の押圧が解除されると、筒部材12が径方向内方へ弾性変形し、筒部材12の外周面29が径方向内方へ凹み、ボルト穴26の内周面30に対する筒部材12の外周面29の密着が解除され、ボルト孔26に対するボルト10Aの固定が解除され、図6の状態に戻る。インパクトドライバー27のソケットレンチビット28をボルト本体11の係合部19から抜き取り、図5の状態にあるボルト10Aをボルト穴26から取り外す。なお、取り外したボルト10Aは、他に穿孔したボルト穴26に前記手順によって設置して使用する。
【0048】
筒部材12の内径S1(図3参照)は、ボルト本体11の軸部15の外径S2(雄螺子22の外径)と略同一または軸部15の外径S2よりも0.1〜2mm大きい。筒部材12の内径S1が軸部15の外径S2よりも小さいと、筒部材12の内周面が軸部15の外周面に密着し、筒部材12が軸部15に固定され、ボルト10Aの設置時に筒部材12とは別に軸部15だけを回転させることができない。筒部材12の内径S1が軸部15の外径S2に対して2mmを超過すると、ボルト10Aをボルト穴26に固定した設置状態において、筒部材12の上端24近傍の部位および下端23近傍の部位が軸部15の外周面に十分に密着せず、軸部15が筒部材12に固定されず、ボルト穴26に対するボルト10Aの設置状態において、軸部15が不用意に遊動する場合がある。ボルト10Aは、筒部材12の内径S1が軸部15の外径S2に対して前記範囲にあるから、ボルト本体11の軸部15を筒部材12とは別に回転させることができるとともに、ボルト10Aをボルト穴26に固定した設置状態において、軸部15が筒部材12に強固に固定され、軸部15の不用意な遊動を防ぐことができる。
【0049】
筒部材12の外径S3(図3参照)は、ボルト孔26の内径S4(図4参照)と略同一またはボルト孔26の内径S4よりも0.2〜4mm小さい。筒部材12の外径S3がボルト孔26の内径S4よりも大きいと、筒部材12をボルト穴26に挿入することができない。筒部材12の外径S3がボルト孔26の内径S4に対して4mmを超過すると、六角ナット14によって筒部材12を押圧し、筒部材12をその径方向外方へ弾性変形させたボルト10Aの設置状態において、筒部材12の外周面29がボルト穴26の内周面30に十分に密着しない場合があり、ボルト10Aをボルト穴26に強固に固定することができない場合がある。ボルト10Aは、筒部材12の外径S3がボルト孔26の内径S4に対して前記範囲にあるから、筒部材12を装着したボルト10Aをボルト穴26に挿入することができるとともに、ボルト10Aをボルト穴26に固定した設置状態において、筒部材12の外周面29がボルト穴26の内周面30に十分に密着し、ボルト10Aをボルト穴26に強固に固定することができる。
【0050】
筒部材12の軸方向における長さ寸法T1(図2参照)は、軸部15の長さ寸法T2の30〜70%の範囲、好ましくは、40〜60%の範囲にある。筒部材12の長さ寸法T1が軸部15の長さ寸法T2の30%未満では、ボルト10Aをボルト穴26に固定した設置状態において、ボルト穴26の内周面30に対する筒部材12の外周面29の密着面積が少なく、ボルト10Aをボルト穴26に強固に固定することができない場合がある。筒部材12の長さ寸法T1が軸部15の長さ寸法T2の70%を超過すると、筒部材12の硬度にもよるが、六角ナット14が筒部材12を頭部17に向かって押圧したときに、筒部材12をその径方向外方へ弾性変形させることができない場合がある。ボルト10Aは、筒部材12の長さ寸法T1が軸部15の長さ寸法T2に対して前記範囲にあるから、六角ナット14によって筒部材12を頭部17に向かって押圧したときに、筒部材12をその径方向外方へ確実に弾性変形させることができるとともに、ボルト10Aをボルト穴26に固定した設置状態において、ボルト穴26の内周面40に対して筒部材12の外周面29が十分な面積で密着し、ボルト10Aをボルト穴26に強固に固定することができる。
【0051】
筒部材12の内周面と外周面29との間の厚み寸法S5は、ボルト本体11の軸部15の外径S2の30〜150%の範囲、好ましくは、50〜100%の範囲にある。筒部材12の厚み寸法S5が軸部15の外径S2の30%未満では、筒部材12の強度が低下し、ボルト10Aをボルト穴26に固定した設置状態において、軸部15に他の機械器具を取り付けて作業を行う際に筒部材12が不用意に破損する場合があり、作業を安全に行うことができない場合がある。筒部材12の厚み寸法S5が軸部14の外径S2の150%を超過すると、筒部材12の硬度にもよるが、六角ナット14が筒部材12を頭部17に向かって押圧したときに、筒部材12をその径方向外方へ十分に弾性変形させることができない場合がある。ボルト10Aは、筒部材12の厚み寸法S5が軸部15の外径S2に対して前記範囲にあるから、六角ナット14によって筒部材12をその径方向外方へ十分に弾性変形させることができ、ボルト10Aをボルト穴26に強固に固定することができるとともに、筒部材12が不用意に破損することはなく、作業を安全に行うことができる。
【0052】
ボルト10Aは、ボルト本体11の頭部17と軸部15を包被する筒部材12と六角ナット14(ワッシャー13A,13Bを含む)とをボルト穴26に挿入した後、係合部19にインパクトドライバー27のソケットレンチビット28を嵌合させ、ドライバー27のスイッチをONにして軸部15を反時計回り方向(一方向)へ回転させることで、六角ナット14によって筒部材12を頭部17に向かって押圧し、それによって筒部材12をその径方向外方へ弾性変形させることで、筒部材12の外周面29がボルト穴26の内周面30に密着し、ボルト10Aがボルト孔26に固定されるから、簡単な作業でボルト10Aをボルト穴26に固定することができ、手間と労力とを要せずに設置することができる。
【0053】
ボルト10Aは、ボルト本体11の係合部19にインパクトドライバー27のソケットレンチビット28を嵌合させ、ドライバー27によって軸部15を反時計回り方向へ回転させることで、ボルト穴26に設置することができるから、その設置時に構造物のモルタル層25やコンクリート層25の破損を防ぐことができるとともに大きな騒音が発生することはなく、騒音公害の原因になることもない。
【0054】
ボルト10Aは、ボルト本体11の軸部15に螺着された六角ナット14と軸部15に着脱可能に挿入された筒部材12とを備えるだけであり、打込みピンを必要としないから、廉価に作ることができる。ボルト10Aは、筒部材12を径方向外方へ弾性変形させることで、筒部材12の外周面29がボルト穴26の内周面30に強固に密着し、ボルト穴26に対してボルト10Aを強固に固定することができるから、ボルト穴26から露出するボルト本体11の軸部15に他の機械器具を取り付けて所定の作業を行うことで軸部15に強い外力が加わったとしても、ボルト10Aがボルト穴26から外れることはなく、所定の作業を安全に行うことができる。
【0055】
ボルト10Aは、係合部19を利用して軸部15を時計回り方向(反対方向)へ回転させると、六角ナット14が軸部15の軸方向後方へ移動し、それによって筒部材12が径方向内方へ弾性変形し、ボルト穴26に対する固定が解除されるから、手間と労力とを要せずに簡単な作業でボルト10Aをボルト穴26から取り外すことができる。ボルト10Aは、ボルト穴26から取り外したそれを再びボルト穴26に設置することができるから、繰り返して使用することができ、ボルト10Aの無駄を省くことができる。
【0056】
図9は、他の一例として示すボルト10Bの斜視図であり、図10は、ボルト穴26に固定された状態で示すボルト10Bの側面図である。図11は、図10のB−B線端面図である。図9では、軸方向を矢印Xで示し、径方向を矢印Yで示すとともに、周り方向を矢印Zで示す。このボルト10Bが図1に示すそれと異なるところは、筒部材12に周り方向へ所定寸法離間して軸方向へ延びる複数の切り込み31が形成されている点にある。なお、ボルト10Bのその他の構成は図1のボルト10Aのそれらと同一であるから、図1と同一の符号を付すとともに、図1の説明を援用することで、このボルト10Bにおけるその他の構成の詳細な説明は省略する。
【0057】
ボルト10Bは、ボルト本体11と、弾性変形可能な筒部材12と、ワッシャー13A,13Bおよび六角ナット14(締結部材)とから形成されている。ボルト本体11は、軸方向へ長い棒状に成形された軸部15と、軸部15の上端部分16に位置する頭部17と、軸部15の下端部分18に位置する係合部19とから形成されている。軸部15や頭部17、係合部19、ワッシャー13A,13B、六角ナット14は、図1のボルト10Aのそれらと同一である。
【0058】
筒部材12は、軸方向へ長い中空の筒状に成形され、ボルト本体11の頭部17(ワッシャー13A)と六角ナット14(ワッシャー13B)との間に配置されている。筒部材12は、ボルト本体11の軸部15の中央部分20に挿入され、軸部15の外周面21全域を包被している。筒部材12には、図1のそれと同様にゴム系素材から作られたゴム管またはゴム系素材から作られた布巻きゴム管が使用されている。筒部材12には、その周り方向へ等間隔離間(所定寸法離間)して軸方向へ延びる複数の切り込み31が形成されている。切り込み31は、筒部材12の上端24および下端23の間であって、上下端23,24近傍の部位をわずかに残して形成され、筒部材12の内外周面間を貫通している。
【0059】
ボルト穴26に対するボルト10Bの設置手順は、図1のボルト10Aのそれと同一であるから、図4〜図8を援用するとともに、図4〜図8に基づいて説明したボルト10Aの設置手順を援用することで、このボルト10Bの設置手順の説明は省略する。また、ボルト穴26からのボルト10Bの取り外し手順は、図1のボルト10Aのそれと同一であるから、図4〜図8を援用するとともに、図4〜図8に基づいて説明したボルト10Aの取り外し手順を援用することで、このボルト10Bの取り外し手順の説明は省略する。
【0060】
なお、ボルト穴26に対するボルト10Bの設置前(固定前)の状態は、図9に示すように、六角ナット14が軸部15の雄螺子22に螺着され、筒部材12の上端24がワッシャー13Aを介して頭部17に当接し、ワッシャー13が筒部材12の下端23に当接し、ナット14がそのワッシャー13に当接しているが、ナット14が筒部材12を頭部17に向かって押圧してはおらず、筒部材12がその径方向外方へ弾性変形していない。
【0061】
ボルト10Bをボルト穴26に固定した設置状態では、図10,11に示すように、筒部材12が径方向外方へ弾性変形し、筒部材12の外周面29が径方向外方へ膨らみ、外周面29の大部分がボルト穴26の内周面30に密着するとともに、切り込み31において筒部材12が周り方向へ離間し、切り込み31においてボルト本体11の軸部15が露出している。ボルト10Bはボルト穴26(モルタル層25やコンクリート層25)に強固に固定され、図10の状態において、ボルト穴26から露出するボルト本体11の軸部15に他の機械器具を取り付けて所定の作業を行う。
【0062】
ボルト10Bでは、図1のボルト10Aと同様に、筒部材12の内径S1(図3援用)がボルト本体11の軸部15の外径S2(雄螺子22の外径)と略同一または軸部15の外径S2よりも0.1〜2mm大きい。ボルト10Bは、筒部材12の内径S1が軸部15の外径S2に対して前記範囲にあるから、ボルト本体11の軸部15を筒部材12とは別に回転させることができるとともに、ボルト10Bをボルト穴26に固定した設置状態において、軸部15が筒部材12に強固に固定され、軸部15の不用意な遊動を防ぐことができる。
【0063】
ボルト10Bでは、図1のボルト10Aと同様に、筒部材12の外径S3(図3援用)がボルト孔26の内径S4(図4援用)と略同一またはボルト孔26の内径S4よりも0.2〜4mm小さい。ボルト10Bは、筒部材12の外径S3がボルト孔26の内径S4に対して前記範囲にあるから、筒部材12を装着したボルト10Bをボルト穴26に挿入することができるとともに、ボルト10Bをボルト穴26に固定した設置状態において、筒部材12の外周面29がボルト穴26の内周面30に十分に密着し、ボルト10Bをボルト穴26に強固に固定することができる。
【0064】
ボルト10Bでは、図1のボルト10Aと同様に、筒部材12の軸方向における長さ寸法T1(図2援用)が軸部15の長さ寸法T2の30〜70%の範囲、好ましくは、40〜60%の範囲にある。ボルト10Bは、筒部材12の長さ寸法T1が軸部15の長さ寸法T2に対して前記範囲にあるから、六角ナット14によって筒部材12を頭部17に向かって押圧したときに、筒部材12をその径方向外方へ確実に弾性変形させることができるとともに、ボルト10Bをボルト穴26に固定した設置状態において、ボルト穴26の内周面40に対して筒部材12の外周面29が十分な面積で密着し、ボルト10Bをボルト穴26に強固に固定することができる。
【0065】
ボルト10Bでは、図1のボルト10Aと同様に、筒部材12の内周面と外周面29との間の厚み寸法S5がボルト本体11の軸部15の外径S2の30〜150%の範囲、好ましくは、50〜100%の範囲にある。ボルト10Bは、筒部材12の厚み寸法S5が軸部15の外径S2に対して前記範囲にあるから、六角ナット14によって筒部材12をその径方向外方へ十分に弾性変形させることができ、ボルト10Bをボルト穴26に強固に固定することができるとともに、筒部材12が不用意に破損することはなく、作業を安全に行うことができる。
【0066】
ボルト10Bは、図1のそれが有する効果に加え、以下の効果を有する。ボルト10Bは、六角ナット14によって筒部材12がボルト本体11の頭部17に向かって押圧されたときに、それら切り込み31の間に延びる筒部材12の部位が径方向外方へ容易かつ整然と弾性変形するから、筒部材12の部位がボルト穴26の内周面30に確実かつ強固に密着し、筒部材12の外周面29の大部分をボルト穴26の内周面30に密着させることができ、ボルト穴26に対してボルト10Bを強固に固定することができる。
【0067】
図12は、他の一例として示すボルト10Cの斜視図であり、図13は、ボルト穴26に固定された状態で示すボルト10Cの側面図である。図14は、図13のC−C線端面図である。図12では、軸方向を矢印Xで示し、径方向を矢印Yで示すとともに、周り方向を矢印Zで示す。このボルト10Cが図1に示すそれと異なるところは、筒部材12の外周面29に周り方向へ所定寸法離間して軸方向へ延びる複数の凸部32と、凸部32の間に位置して軸方向へ延びる複数の凹部33とが形成されている点にある。なお、ボルト10Cのその他の構成は図1のボルト10Aのそれらと同一であるから、図1と同一の符号を付すとともに、図1の説明を援用することで、このボルト10Cにおけるその他の構成の詳細な説明は省略する。
【0068】
ボルト10Cは、ボルト本体11と、弾性変形可能な筒部材12と、ワッシャー13A,13Bおよび六角ナット14(締結部材)とから形成されている。ボルト本体11は、軸方向へ長い棒状に成形された軸部15と、軸部15の上端部分16に位置する頭部17と、軸部15の下端部分18に位置する係合部19とから形成されている。軸部15や頭部17、係合部19、ワッシャー13A,13B、六角ナット14は、図1のボルト10Aのそれらと同一である。
【0069】
筒部材12は、軸方向へ長い中空の筒状に成形され、ボルト本体11の頭部17(ワッシャー13A)と六角ナット14(ワッシャー13B)との間に配置されている。筒部材12は、ボルト本体11の軸部15の中央部分20に挿入され、軸部15の外周面21全域を包被している。筒部材12には、図1のそれと同様にゴム系素材から作られたゴム管またはゴム系素材から作られた布巻きゴム管が使用されている。筒部材12の外周面29には、周り方向へ等間隔離間(所定寸法離間)し、上端24から下端23に向かって軸方向へ延びる複数の凸部32が形成され、それら凸部32の間に位置して軸方向へ延びる複数の凹部33が形成されている。凸部32は、筒部材12の外周面29から径方向外方へ隆起している。凸部32および凹部33は、筒部材12の上端24と下端23とに達している。
【0070】
ボルト穴26に対するボルト10Cの設置手順は、図1のボルト10Aのそれと同一であるから、図4〜図8を援用するとともに、図4〜図8に基づいて説明したボルト10Aの設置手順を援用することで、このボルト10Cの設置手順の説明は省略する。また、ボルト穴26からのボルト10Cの取り外し手順は、図1のボルト10Aのそれと同一であるから、図4〜図8を援用するとともに、図4〜図8に基づいて説明したボルト10Aの取り外し手順を援用することで、このボルト10Cの取り外し手順の説明は省略する。
【0071】
なお、ボルト穴26に対するボルト10Cの設置前(固定前)の状態は、図12に示すように、六角ナット14が軸部15の雄螺子22に螺着され、筒部材12の上端24がワッシャー13Aを介して頭部17に当接し、ワッシャー13Bが筒部材12の下端23に当接し、ナット14がそのワッシャー13Bに当接しているが、ナット14が筒部材12を頭部17に向かって押圧してはおらず、筒部材12がその径方向外方へ弾性変形していない。
【0072】
ボルト10Cをボルト穴26に固定した設置状態では、図13,14に示すように、筒部材12が径方向外方へ弾性変形し、筒部材12の外周面29が径方向外方へ膨らみ、筒部材12の凸部32または凸部32とともに凹部33を含む筒部材12の外周面29の大部分がボルト穴26の内周面30に強固に密着する。ボルト10Cはボルト穴26(モルタル層25やコンクリート層25)に強固に固定され、図13の状態において、ボルト穴26から露出するボルト本体11の軸部15に他の機械器具を取り付けて所定の作業を行う。
【0073】
ボルト10Cでは、図1のボルト10Aと同様に、筒部材12の内径S1(図3援用)がボルト本体11の軸部15の外径S2(雄螺子22の外径)と略同一または軸部15の外径S2よりも0.1〜2mm大きい。ボルト10Cは、筒部材12の内径S1が軸部15の外径S2に対して前記範囲にあるから、ボルト本体11の軸部15を筒部材12とは別に回転させることができるとともに、ボルト10Cをボルト穴26に固定した設置状態において、軸部15が筒部材12に強固に固定され、軸部15の不用意な遊動を防ぐことができる。
【0074】
ボルト10Cでは、図1のボルト10Aと同様に、筒部材12の凸部32を含む外径S3(図3援用)がボルト孔26の内径S4(図4援用)と略同一またはボルト孔26の内径S4よりも0.2〜4mm小さい。ボルト10Cは、筒部材12の凸部32を含む外径S3がボルト孔26の内径S4に対して前記範囲にあるから、筒部材12を装着したボルト10Cをボルト穴26に挿入することができるとともに、ボルト10Cをボルト穴26に固定した設置状態において、筒部材12の凸部32または凸部32とともに凹部33を含む筒部材12の外周面29がボルト穴26の内周面30に十分に密着し、ボルト10Cをボルト穴26に強固に固定することができる。
【0075】
ボルト10Cでは、図1のボルト10Aと同様に、筒部材12の軸方向における長さ寸法T1(図2援用)が軸部15の長さ寸法T2の30〜70%の範囲、好ましくは、40〜60%の範囲にある。ボルト10Cは、筒部材12の長さ寸法T1が軸部15の長さ寸法T2に対して前記範囲にあるから、六角ナット14によって筒部材12を頭部17に向かって押圧したときに、筒部材12をその径方向外方へ確実に弾性変形させることができるとともに、ボルト10Cをボルト穴26に固定した設置状態において、ボルト穴26の内周面40に対して筒部材12の外周面29が十分な面積で密着し、ボルト10Cをボルト穴26に強固に固定することができる。
【0076】
ボルト10Cでは、図1のボルト10Aと同様に、筒部材12の内周面と外周面29との間の厚み寸法S5(凸部32を含まず)がボルト本体11の軸部15の外径S2の30〜150%の範囲、好ましくは、50〜100%の範囲にある。ボルト10Cは、筒部材12の厚み寸法S5が軸部15の外径S2に対して前記範囲にあるから、六角ナット14によって筒部材12をその径方向外方へ十分に弾性変形させることができ、ボルト10Cをボルト穴26に強固に固定することができるとともに、筒部材12が不用意に破損することはなく、作業を安全に行うことができる。
【0077】
ボルト10Cは、図1のそれが有する効果に加え、以下の効果を有する。ボルト10Cは、六角ナット14によって筒部材12がボルト本体11の頭部17に向かって押圧されたときに、筒部材12が径方向外方へ弾性変形しつつそれら凸部32または凸部32とともに凹部33を含む筒部材12の外周面29がボルト穴26の内周面30に強固かつ確実に密着するのみならず、それら凸部32によってボルト穴26の内周面30に対する筒部材12の外周面29の密着度合いが向上するから、ボルト穴26に対してボルト10Cを強固に固定することができる。
【0078】
図15は、他の一例として示すボルト10Dの斜視図であり、図16は、ボルト穴26に固定された状態で示すボルト10Dの側面図である。図17は、図16のD−D線端面図である。図15では、軸方向を矢印Xで示し、径方向を矢印Yで示すとともに、周り方向を矢印Zで示す。このボルト10Dが図1に示すそれと異なるところは、筒部材12の外周面29に軸方向へ所定寸法離間して周り方向へ延びる複数の凸部34と、凸部34の間に位置して周り方向へ延びる複数の凹部35とが形成されている点にある。なお、ボルト10Dのその他の構成は図1のボルト10Aのそれらと同一であるから、図1と同一の符号を付すとともに、図1の説明を援用することで、このボルト10Dにおけるその他の構成の詳細な説明は省略する。
【0079】
ボルト10Dは、ボルト本体11と、弾性変形可能な筒部材12と、ワッシャー13A,13Bおよび六角ナット14(締結部材)とから形成されている。ボルト本体11は、軸方向へ長い棒状に成形された軸部15と、軸部15の上端部分16に位置する頭部17と、軸部15の下端部分18に位置する係合部19とから形成されている。軸部15や頭部17、係合部19、ワッシャー13A,13B、六角ナット14は、図1のボルト10Aのそれらと同一である。
【0080】
筒部材12は、軸方向へ長い中空の筒状に成形され、ボルト本体11の頭部17(ワッシャー13A)と六角ナット14(ワッシャー13B)との間に配置されている。筒部材12は、ボルト本体11の軸部15の中央部分20に挿入され、軸部15の外周面21全域を包被している。筒部材12には、図1のそれと同様にゴム系素材から作られたゴム管またはゴム系素材から作られた布巻きゴム管が使用されている。筒部材12の外周面29には、軸方向へ等間隔離間(所定寸法離間)して周り方向へ延びる複数の凸部34が形成され、凸部34の間に位置して周り方向へ延びる複数の凹部35が形成されている。凸部34は、筒部材12の外周面29から径方向外方へ隆起している。凸部34および凹部35は、筒部材12の周り方向の全周に形成されている。
【0081】
ボルト穴26に対するボルト10Dの設置手順は、図1のボルト10Aのそれと同一であるから、図4〜図8を援用するとともに、図4〜図8に基づいて説明したボルト10Aの設置手順を援用することで、このボルト10Dの設置手順の説明は省略する。また、ボルト穴26からのボルト10Dの取り外し手順は、図1のボルト10Aのそれと同一であるから、図4〜図8を援用するとともに、図4〜図8に基づいて説明したボルト10Aの取り外し手順を援用することで、このボルト10Dの取り外し手順の説明は省略する。
【0082】
なお、ボルト穴26に対するボルト10Dの設置前(固定前)の状態は、図15に示すように、六角ナット14が軸部15の雄螺子22に螺着され、筒部材12の上端24がワッシャー13Aを介して頭部17に当接し、ワッシャー13Bが筒部材12の下端23に当接し、ナット14がそのワッシャー13Bに当接しているが、ナット14が筒部材12を頭部17に向かって押圧してはおらず、筒部材12がその径方向外方へ弾性変形していない。
【0083】
ボルト10Dをボルト穴26に固定した設置状態では、図16,17に示すように、筒部材12が径方向外方へ弾性変形し、筒部材12の外周面29が径方向外方へ膨らみ、筒部材12の凸部34または凸部34とともに凹部35を含む筒部材12の外周面29の大部分がボルト穴26の内周面30に強固に密着する。ボルト10Dはボルト穴26(モルタル層25やコンクリート層25)に強固に固定され、図16の状態において、ボルト穴26から露出するボルト本体11の軸部15に他の機械器具を取り付けて所定の作業を行う。
【0084】
ボルト10Dでは、図1のボルト10Aと同様に、筒部材12の内径S1(図3援用)がボルト本体11の軸部15の外径S2(雄螺子22の外径)と略同一または軸部15の外径S2よりも0.1〜2mm大きい。ボルト10Dは、筒部材12の内径S1が軸部15の外径S2に対して前記範囲にあるから、ボルト本体11の軸部15を筒部材12とは別に回転させることができるとともに、ボルト10Dをボルト穴26に固定した設置状態において、軸部15が筒部材12に強固に固定され、軸部15の不用意な遊動を防ぐことができる。
【0085】
ボルト10Dでは、図1のボルト10Aと同様に、筒部材12の凸部34を含む外径S3(図3援用)がボルト孔26の内径S4(図4援用)と略同一またはボルト孔26の内径S4よりも0.2〜4mm小さい。ボルト10Dは、筒部材12の凸部34を含む外径S3がボルト孔26の内径S4に対して前記範囲にあるから、筒部材12を装着したボルト10Dをボルト穴26に挿入することができるとともに、ボルト10Dをボルト穴26に固定した設置状態において、筒部材12の凸部34または凸部34とともに凹部35を含む筒部材12の外周面29がボルト穴26の内周面30に十分に密着し、ボルト10Dをボルト穴26に強固に固定することができる。
【0086】
ボルト10Dでは、図1のボルト10Aと同様に、筒部材12の軸方向における長さ寸法T1(図2援用)が軸部15の長さ寸法T2の30〜70%の範囲、好ましくは、40〜60%の範囲にある。ボルト10Dは、筒部材12の長さ寸法T1が軸部15の長さ寸法T2に対して前記範囲にあるから、六角ナット14によって筒部材12を頭部17に向かって押圧したときに、筒部材12をその径方向外方へ確実に弾性変形させることができるとともに、ボルト10Dをボルト穴26に固定した設置状態において、ボルト穴26の内周面40に対して筒部材12の外周面29が十分な面積で密着し、ボルト10Dをボルト穴26に強固に固定することができる。
【0087】
ボルト10Dでは、図1のボルト10Aと同様に、筒部材12の内周面と外周面29との間の厚み寸法S5(凸部34を含まず)がボルト本体11の軸部15の外径S2の30〜150%の範囲、好ましくは、50〜100%の範囲にある。ボルト10Dは、筒部材12の厚み寸法S5が軸部15の外径S2に対して前記範囲にあるから、六角ナット14によって筒部材12をその径方向外方へ十分に弾性変形させることができ、ボルト10Dをボルト穴26に強固に固定することができるとともに、筒部材12が不用意に破損することはなく、作業を安全に行うことができる。
【0088】
ボルト10Dは、図1のそれが有する効果に加え、以下の効果を有する。ボルト10Dは、六角ナット14によって筒部材12がボルト本体11の頭部17に向かって押圧されたときに、筒部材12が径方向外方へ弾性変形しつつそれら凸部34または凸部34とともに凹部35を含む筒部材12の外周面29がボルト穴26の内周面30に強固かつ確実に密着するのみならず、それら凸部34によってボルト穴26の内周面30に対する筒部材12の外周面29の密着度合いが向上するから、ボルト穴26に対してボルト10Dを強固に固定することができる。
【0089】
図18は、他の一例として示すボルト10Eの斜視図であり、図19は、ボルト穴26に固定された状態で示すボルト10Eの側面図である。図20は、図19のE−E線端面図である。図18では、軸方向を矢印Xで示し、径方向を矢印Yで示すとともに、周り方向を矢印Zで示す。このボルト10Eが図1に示すそれと異なるところは、筒部材12の外周面29に周り方向と軸方向とへ所定寸法離間する複数の凸部36が形成されている点にある。なお、ボルト10Eのその他の構成は図1のボルト10Aのそれらと同一であるから、図1と同一の符号を付すとともに、図1の説明を援用することで、このボルト10Eにおけるその他の構成の詳細な説明は省略する。
【0090】
ボルト10Eは、ボルト本体11と、弾性変形可能な筒部材12と、ワッシャー13A,13Bおよび六角ナット14(締結部材)とから形成されている。ボルト本体11は、軸方向へ長い棒状に成形された軸部15と、軸部15の上端部分16に位置する頭部17と、軸部15の下端部分18に位置する係合部19とから形成されている。軸部15や頭部17、係合部19、ワッシャー13A,13B、六角ナット14は、図1のボルト10Aのそれらと同一である。
【0091】
筒部材12は、軸方向へ長い中空の筒状に成形され、ボルト本体11の頭部17(ワッシャー13A)と六角ナット14(ワッシャー13B)との間に配置されている。筒部材12は、ボルト本体11の軸部15の中央部分20に挿入され、軸部15の外周面21全域を包被している。筒部材12には、図1のそれと同様にゴム系素材から作られたゴム管またはゴム系素材から作られた布巻きゴム管が使用されている。筒部材12の外周面29には、周り方向へ等間隔離間(所定寸法離間)するとともに軸方向へ等間隔離間(所定寸法離間)する複数の凸部36が形成されている。それら凸部36は、筒部材12の外周面29から径方向外方へ隆起している。
【0092】
ボルト穴26に対するボルト10Eの設置手順は、図1のボルト10Aのそれと同一であるから、図4〜図8を援用するとともに、図4〜図8に基づいて説明したボルト10Aの設置手順を援用することで、このボルト10Eの設置手順の説明は省略する。また、ボルト穴26からのボルト10Eの取り外し手順は、図1のボルト10Aのそれと同一であるから、図4〜図8を援用するとともに、図4〜図8に基づいて説明したボルト10Aの取り外し手順を援用することで、このボルト10Eの取り外し手順の説明は省略する。
【0093】
なお、ボルト穴26に対するボルト10Eの設置前(固定前)の状態は、図18に示すように、六角ナット14が軸部15の雄螺子22に螺着され、筒部材12の上端24がワッシャー13Aを介して頭部17に当接し、ワッシャー13Bが筒部材12の下端23に当接し、ナット14がそのワッシャー13Bに当接しているが、ナット14が筒部材12を頭部17に向かって押圧してはおらず、筒部材12がその径方向外方へ弾性変形していない。
【0094】
ボルト10Eをボルト穴26に固定した設置状態では、図19,20に示すように、筒部材12が径方向外方へ弾性変形し、筒部材12の外周面が径方向外方へ膨らみ、筒部材12の凸部36または凸部36を含む筒部材12の外周面29の大部分がボルト穴26の内周面30に密着する。ボルト10Eはボルト穴26(モルタル層25やコンクリート層25)に強固に固定され、図19の状態において、ボルト穴26から露出するボルト本体11の軸部15に他の機械器具を取り付けて所定の作業を行う。
【0095】
ボルト10Eでは、図1のボルト10Aと同様に、筒部材12の内径S1(図3援用)がボルト本体11の軸部15の外径S2(雄螺子22の外径)と略同一または軸部15の外径S2よりも0.1〜2mm大きい。ボルト10Eは、筒部材12の内径S1が軸部15の外径S2に対して前記範囲にあるから、ボルト本体11の軸部15を筒部材12とは別に回転させることができるとともに、ボルト10Eをボルト穴26に固定した設置状態において、軸部15が筒部材12に強固に固定され、軸部15の不用意な遊動を防ぐことができる。
【0096】
ボルト10Eでは、図1のボルト10Aと同様に、筒部材12の凸部36を含む外径S3(図3援用)がボルト孔26の内径S4(図4援用)と略同一またはボルト孔26の内径S4よりも0.2〜4mm小さい。ボルト10Eは、筒部材12の凸部36を含む外径S3がボルト孔26の内径S4に対して前記範囲にあるから、筒部材12を装着したボルト10Eをボルト穴26に挿入することができるとともに、ボルト10Eをボルト穴26に固定した設置状態において、筒部材12の凸部36または凸部36を含む筒部材12の外周面29がボルト穴26の内周面30に十分に密着し、ボルト10Eをボルト穴26に強固に固定することができる。
【0097】
ボルト10Eでは、図1のボルト10Aと同様に、筒部材12の軸方向における長さ寸法T1(図2援用)が軸部15の長さ寸法T2の30〜70%の範囲、好ましくは、40〜60%の範囲にある。ボルト10Eは、筒部材12の長さ寸法T1が軸部15の長さ寸法T2に対して前記範囲にあるから、六角ナット14によって筒部材12を頭部17に向かって押圧したときに、筒部材12をその径方向外方へ確実に弾性変形させることができるとともに、ボルト10Dをボルト穴26に固定した設置状態において、ボルト穴26の内周面40に対して筒部材12の外周面29が十分な面積で密着し、ボルト10Eをボルト穴26に強固に固定することができる。
【0098】
ボルト10Eでは、図1のボルト10Aと同様に、筒部材12の内周面と外周面29との間の厚み寸法S5(凸部36を含まず)がボルト本体11の軸部15の外径S2の30〜150%の範囲、好ましくは、50〜100%の範囲にある。ボルト10Eは、筒部材12の厚み寸法S5が軸部15の外径S2に対して前記範囲にあるから、六角ナット14によって筒部材12をその径方向外方へ十分に弾性変形させることができ、ボルト10Eをボルト穴26に強固に固定することができるとともに、筒部材12が不用意に破損することはなく、作業を安全に行うことができる。
【0099】
ボルト10Eは、図1のそれが有する効果に加え、以下の効果を有する。ボルト10Eは、六角ナット14によって筒部材12がボルト本体11の頭部17に向かって押圧されたときに、筒部材12が径方向外方へ弾性変形しつつそれら凸部36または凸部36を含む筒部材12の外周面29がボルト穴26の内周面30に強固かつ確実に密着するのみならず、それら凸部36によってボルト穴26の内周面30に対する筒部材12の外周面29の密着度合いが向上するから、ボルト穴26に対してボルト10Eを強固に固定することができる。
【符号の説明】
【0100】
10A ボルト
10B ボルト
10C ボルト
10D ボルト
10E ボルト
11 ボルト本体
12 筒部材
13A ワッシャー
13B ワッシャー
14 六角ナット(締結部材)
15 軸部
16 上端部分
17 頭部
18 下端部分
19 係合部
20 中間部分
21 外周面
22 雄螺子(螺子)
29 外周面
30 内周面
31 切り込み
32 凸部
33 凹部
34 凸部
35 凹部
36 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
新設構造物または既設構造物の所定の箇所に穿孔されたボルト穴に着脱可能に設置されるボルトにおいて、
前記ボルトが、軸方向へ延びていてその外周面に螺子が形成された軸部と、前記軸部の上端部分に位置して該軸部の径方向外方へ延出する頭部と、前記軸部の下端部分に位置して該軸部を一方向とその反対方向とのいずれかに回転させるときに使用する係合部と、前記軸部に螺着されて該軸部を一方向とその反対方向とのいずれかに回転させることによって該軸部の軸方向前方と軸方向後方とのいずれかへ移動可能な締結部材と、前記軸方向へ延びていて前記頭部と前記締結部材との間に配置され、前記軸部に着脱可能に挿入されて該軸部の外周面を包被する弾性変形可能な筒部材とから形成され、
前記ボルトでは、それが前記ボルト穴に挿入された後、前記係合部を利用して前記軸部を一方向へ回転させると、前記締結部材が前記軸部の軸方向前方へ移動しつつ前記筒部材を前記頭部に向かって押圧し、それによって前記筒部材が径方向外方へ弾性変形することで、前記ボルトが前記ボルト孔に固定されることを特徴とするボルト。
【請求項2】
前記ボルトでは、前記係合部を利用して前記軸部を反対方向へ回転させると、前記締結部材が前記軸部の軸方向後方へ移動し、それによって前記筒部材が径方向内方へ弾性変形し、前記ボルト穴に対する前記ボルトの固定が解除される請求項1に記載のボルト。
【請求項3】
前記筒部材には、該筒部材の周り方向へ所定寸法離間して軸方向へ延びる複数の切り込みが形成されている請求項1または請求項2に記載のボルト。
【請求項4】
前記筒部材の外周面には、該筒部材の周り方向へ所定寸法離間して軸方向へ延びる複数の凸部と、前記凸部の間に位置して軸方向へ延びる複数の凹部とが形成されている請求項1または請求項2に記載のボルト。
【請求項5】
前記筒部材の外周面には、軸方向へ所定寸法離間して該筒部材の周り方向へ延びる複数の凸部と、前記凸部の間に位置して周り方向へ延びる複数の凹部とが形成されている請求項1または請求項2に記載のボルト。
【請求項6】
前記筒部材の外周面には、該筒部材の周り方向と軸方向とへ所定寸法離間する複数の凸部が形成されている請求項1または請求項2に記載のボルト。
【請求項7】
前記筒部材の内径が、前記軸部の外径と略同一または該軸部の外径よりも0.1〜2mm大きい請求項1ないし請求項6いずれかに記載のボルト。
【請求項8】
前記筒部材の外径が、前記ボルト孔の内径と略同一または該ボルト孔の内径よりも0.2〜4mm小さい請求項1ないし請求項7いずれかに記載のボルト。
【請求項9】
前記筒部材の軸方向における長さ寸法が、前記軸部の長さ寸法の30〜70%の範囲にある請求項1ないし請求項8いずれかに記載のボルト。
【請求項10】
前記筒部材が、ゴム系素材から作られたゴム管またはゴム系素材から作られた布巻きゴム管である請求項1ないし請求項9いずれかに記載のボルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−108544(P2013−108544A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252590(P2011−252590)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(510118101)株式会社丸高工業 (13)
【Fターム(参考)】