説明

ポジ型感光性樹脂組成物、パターン硬化膜の製造方法及び電子部品

【課題】耐熱性、機械特性、化学薬品耐性、基板密着性に優れた硬化物となり、低温プロセスで硬化可能な、感度及び解像度に優れたポジ型感光性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(a)アルカリ水溶液に可溶なポリイミド、ポリベンゾオキサゾール及びこれらの前駆体、(b)光の照射により酸を発生する化合物、(c)分子内に1つだけエポキシ基を有する化合物、(d)分子内にエポキシ基を有さない架橋剤を含有してなることを特徴とするポジ型感光性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポジ型感光性樹脂組成物、硬化膜、パターン硬化膜の製造方法及び電子部品に関する。さらに詳しくは、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール及びこれらの前駆体から選択されるポリマーを含有する耐熱性に優れたポジ型感光性樹脂組成物、特に、感度、解像度、現像時の密着性、耐熱性及び耐薬品性に優れ、良好な形状のパターンが得られるポジ型感光性樹脂組成物、該樹脂組成物を用いたパターン硬化膜の製造方法及び電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子の表面保護膜、層間絶縁膜には優れた耐熱性と電気特性、機械特性等を併せ持つポリイミド樹脂が用いられている。このポリイミド樹脂膜は、一般にはテトラカルボン酸二無水物とジアミンを極性溶媒中で常温常圧で反応させ、ポリイミド前駆体(ポリアミド酸)溶液(いわゆるワニス)をスピンコート等で薄膜化して熱的に脱水閉環(硬化)して形成する(例えば、非特許文献1)。
【0003】
近年、ポリイミド樹脂自身に感光特性を付与した感光性ポリイミドが用いられてきている。この感光性ポリイミドを用いるとパターン形成工程が簡略化でき、煩雑なパターン製造工程を短縮できる(例えば、特許文献1〜3)。
【0004】
従来、感光性ポリイミドの現像にはN−メチルピロリドン等の有機溶剤が用いられてきたが、最近は環境やコストの観点からアルカリ水溶液で現像ができるポジ型の感光性樹脂の提案がなされている。このようなアルカリ現像可能なポジ型の感光性樹脂を得る方法として、ポリイミド前駆体にエステル結合を介してo−ニトロベンジル基を導入する方法(例えば、非特許文献2)、可溶性ヒドロキシルイミド又はポリベンゾオキサゾール前駆体にナフトキノンジアジド化合物を混合する方法(例えば、特許文献4、5)等がある。かかる方法により得られる樹脂には低誘電率化が期待でき、この観点からも感光性ポリイミドとともに感光性ポリベンゾオキサゾールが注目されている。
【0005】
また、ポリベンゾオキサゾールの特徴を付与するために、ポリイミド樹脂中にオキサゾール環を形成しうる前駆体を使用したポジ型の感光性樹脂も提案されている(例えば、特許文献6)。この感光性樹脂によれば現像時の膜減りの低減や熱硬化後のパターン形状を良好に得ることができるが、樹脂を構成するモノマー成分の製造法が煩雑である、ポリイミド前駆体部のカルボン酸に起因して安定性が低下する等の問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭49−115541号公報
【特許文献2】特開昭59−108031号公報
【特許文献3】特開昭59−219330号公報
【特許文献4】特開昭64−60630号公報
【特許文献5】米国特許第4395482号公報
【特許文献6】特開2000−39714号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】日本ポリイミド研究会編「最新ポリイミド〜基礎と応用〜」(2002年)
【非特許文献2】J.Macromol.Sci.,Chem.,vol.A24,12,1407(1987年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
また、感光性ポリイミド又は感光性ポリベンゾオキサゾールは、パッケージ形態の変化に伴い、再配線層等の層間絶縁膜として用いられるケースが増えており、従来の材料以上に化学薬品に対する耐性が求められている。しかしながら、従来のポリイミド、ポリベンゾオキサゾール系材料においては、化学薬品耐性と感光特性又は膜特性を両立するものは未だ得られていない。
【0009】
本発明の目的は、耐熱性、機械特性、化学薬品耐性、基板密着性に優れた硬化物となり、低温プロセスで硬化可能な、感度及び解像度に優れたポジ型感光性樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、以下のポジ型感光性樹脂組成物等が提供される。
1.(a)ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール及びこれらの前駆体から選択されるアルカリ水溶液に可溶なポリマー、
(b)光の照射により酸を発生する化合物、
(c)分子内に1つだけエポキシ基を有する化合物、
(d)分子内にエポキシ基を有さない架橋剤
を含有してなることを特徴とするポジ型感光性樹脂組成物。
2.前記(b)成分が、ジアゾナフトキノン化合物であることを特徴とする1に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
3.前記(a)成分が、下記式(1)で示される構造単位を有するポリベンゾオキサゾール前駆体であることを特徴とする1又は2に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【化1】

(式中、U及びVは各々独立して2価の有機基を示し、U及びVの少なくとも一方が炭素数1〜30の脂肪族鎖状構造を含む基である。)
4.前記(c)成分が、式(2)で表される化合物、又は式(2)で表される構造を部分構造として有する化合物であることを特徴とする1〜3のいずれか1項に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【化2】

(式中、Rは複数ある場合は各々独立して1価の有機基を示し、Aは炭化水素基、カルボニル結合を含む有機基、エステル結合を含む有機基及びエーテル結合を含む有機基から選択される2価の有機基を示し、nは0〜5の整数である。)
5.前記(c)成分が、分子内にケイ素原子を有することを特徴とする1〜4のいずれか1項に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
6.前記(d)成分が、分子内に少なくとも1つのメチロール基又はアルコキシアルキル基を有することを特徴とする1〜5のいずれか1項に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
7.前記(d)成分が、式(3)で表される化合物であることを特徴とする1〜5のいずれか1項に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【化3】

(式(3)中、Xは単結合、水素原子又は1〜4価の有機基を示し、R及びRは複数ある場合は各々独立に水素原子又は1価の有機基を示し、mは1〜4の整数であり、p及びqは各々独立に0〜4の整数である。)
8.前記(d)成分が、式(4)で表される化合物であることを特徴とする7に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【化4】

(式(4)中、R、R、p及びqは式(3)と同じ意味である。Yは各々独立に水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、フェニル基又はその一部に酸素原子若しくはフッ素原子を含む基である。)
9.前記(d)成分が、下記式(5)で表される化合物であることを特徴とする1〜6のいずれか1項に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【化5】

(式(5)中、Rは各々独立して水素原子又は1価の有機基を示し、Rは各々独立して水素原子又は1価の有機基を示し、Rは互いに結合して置換されていてもよい環構造を形成してもよい。)
10.1〜9のいずれか1項に記載のポジ型感光性樹脂組成物を硬化させたことを特徴とする硬化膜。
11.1〜9のいずれか1項に記載のポジ型感光性樹脂組成物を支持基板上に塗布し乾燥して感光性樹脂膜を形成する工程と、前記感光性樹脂膜を所定のパターンに露光する工程と、前記露光後の感光性樹脂膜をアルカリ水溶液を用いて現像してパターン樹脂膜を得る工程と、前記パターン樹脂膜を加熱処理してパターン硬化膜を得る工程とを含むことを特徴とするパターン硬化膜の製造方法。
12.10に記載の硬化膜を、層間絶縁膜層及び/又は表面保護膜層として有することを特徴とする電子部品。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば耐熱性、機械特性、化学薬品耐性、基板密着性に優れた硬化物となり、低温プロセスで硬化可能な、感度及び解像度に優れたポジ型感光性樹脂組成物が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態である半導体装置の製造工程を説明する概略断面図であり、第1の工程を示している。
【図2】本発明の一実施形態である半導体装置の製造工程を説明する概略断面図であり、第2の工程を示している。
【図3】本発明の一実施形態である半導体装置の製造工程を説明する概略断面図であり、第3の工程を示している。
【図4】本発明の一実施形態である半導体装置の製造工程を説明する概略断面図であり、第4の工程を示している。
【図5】本発明の一実施形態である半導体装置の製造工程を説明する概略断面図であり、第5の工程を示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物、該樹脂組成物を用いたパターン硬化膜の製造方法及び電子部品の一実施形態を図面を参照して詳細に説明する。尚、以下の実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0014】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は以下の(a)〜(d)成分を含む。
(a)ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール及びこれらの前駆体から選択されるアルカリ水溶液に可溶なポリマー
(b)光の照射により酸を発生する化合物
(c)分子内に1つだけエポキシ基を有する化合物
(d)分子内にエポキシ基を有さない架橋剤
【0015】
(a)成分は、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール及びこれらの前駆体から選択される、アルカリ水溶液可溶性のポリマーであれば特に構造上の制限はない。尚、(a)成分はイミド又はその前駆体を構成する部分とベンゾオキサゾール又はその前駆体を構成する部分を共に含むポリマーであってもよいし、また上記の各ポリマーを二種以上含むものであってもよい。
【0016】
アルカリ水溶液とは、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液、金属水酸化物水溶液、有機アミン水溶液等のアルカリ性の水溶液である。一般には、濃度が2.38重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液が用いられるので、(a)成分はこの水溶液に対して可溶性であることが好ましい。
【0017】
(a)成分がアルカリ性現像液で可溶であることの1つの基準を以下に説明する。(a)成分単独又は以下に順を追って説明する(b)、(c)の各成分とともに任意の溶剤に溶解して得られたワニスを、シリコンウエハ等の基板上にスピン塗布して形成された膜厚5μm程度の塗膜とする。これをテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液、金属水酸化物水溶液、有機アミン水溶液のいずれか1つに、20〜25℃において浸漬する。この結果、均一な溶液として溶解しうるとき、用いた(a)成分はアルカリ性現像液で可溶である。
【0018】
(a)成分についてさらに説明する。
ポリイミドは、例えばテトラカルボン酸二無水物とジアミンを反応させ、脱水閉環することにより得ることができる。ポリイミド前駆体としては、例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミンを反応させて得られるポリアミド酸、テトラカルボン酸ジエステルジクロリド(例えばエステル部分に炭素数1〜10のアルキル基を有するもの)とジアミンを反応させて得られるポリアミド酸エステル等を用いることができる。これらは公知の材料を用い、公知の方法により製造することができる。これらをアルカリ水溶液可溶性とするためには、その構造中にカルボキシル基やフェノール性水酸基をもたせることで可能である。前記ポリアミド酸エステルにおいては、例えば、その原料ジアミンとしてジヒドロキシジアミンを用いることでフェノール性水酸基をもたせることができる。
ポリベンゾオキサゾールは、例えばジカルボン酸ジクロリドとジヒドロキシジアミンを反応させ、脱水閉環することにより得ることができる。
中でも、加熱によりポリベンゾオキサゾールに閉環しうるポリヒドロキシアミド(ポリベンゾオキサゾール前駆体)は、耐熱性、機械特性、電気特性に優れ、現在電子部品用として多用されつつあり、好ましいものである。ポリヒドロキシアミドは、例えばジカルボン酸ジクロリドとビスアミノフェノールを反応させることにより得ることができる。ポリヒドロキシアミドは例えば下記式(6)で表される構造単位を有する。ヒドロキシ基を含有するアミドユニットは、最終的には硬化時の脱水閉環により、耐熱性、機械特性、電気特性に優れるオキサゾール体に変換される。
【0019】
【化6】

式中、R11は4価の有機基を示し、R12は2価の有機基を示す。
【0020】
式(6)で表される構造単位を有するポリヒドロキシアミドは、上記構造単位を有していればよいが、ポリヒドロキシアミドのアルカリ水溶液に対する可溶性はフェノール性水酸基に由来するため、ヒドロキシ基を含有するアミドユニットが、ある割合以上含まれていることが好ましく、即ち次式(7)で表されるポリヒドロキシアミドであることが好ましい。
【0021】
【化7】

式中、R11は4価の有機基を示し、R12及びR13は各々独立して2価の有機基を示す。jとkはモル分率を示し、jとkの和は100モル%であり、jは60〜100モル%、kは40〜0モル%である。好ましくはj=80〜100モル%、k=20〜0モル%である。
【0022】
式(6)で表される構造単位を有するポリヒドロキシアミドは、一般的にジカルボン酸誘導体とヒドロキシ基含有ジアミン類とから合成できる。具体的には、ジカルボン酸誘導体をジハライド誘導体に変換後、ジアミン類との反応を行うことにより合成できる。ジハライド誘導体としては、ジクロリド誘導体が好ましい。
【0023】
ジクロリド誘導体は、ジカルボン酸誘導体にハロゲン化剤を作用させて合成することができる。ハロゲン化剤としては通常のカルボン酸の酸クロリド化反応に使用される、塩化チオニル、塩化ホスホリル、オキシ塩化リン、五塩化リン等が使用できる。
【0024】
ジクロリド誘導体を合成する方法としては、ジカルボン酸誘導体と上記ハロゲン化剤を溶媒中で反応させる方法、過剰のハロゲン化剤中で反応を行った後、過剰分を留去する方法等で合成できる。反応溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチル−2−ピリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、トルエン、ベンゼン等が使用できる。
【0025】
これらのハロゲン化剤の使用量は、溶媒中で反応させる場合は、ジカルボン酸誘導体に対して1.5〜3.0モルが好ましく、1.7〜2.5モルがより好ましい。ハロゲン化剤中で反応させる場合は4.0〜50モルが好ましく、5.0〜20モルがより好ましい。反応温度は、−10〜70℃が好ましく、0〜20℃がより好ましい。
【0026】
ジクロリド誘導体とジアミン類との反応は、脱ハロゲン化水素剤の存在下に有機溶媒中で行うことが好ましい。脱ハロゲン化水素剤としては、通常ピリジン、トリエチルアミン等の有機塩基が使用される。また、有機溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチル−2−ピリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等が使用できる。反応温度は、−10〜30℃が好ましく、0〜20℃がより好ましい。
【0027】
ここで、式(6)において、R11で表される4価の有機基としては芳香環を含んで構成される有機基(単に芳香族基という)が好ましく、一般にジカルボン酸と反応してポリアミド構造を形成し、2個のヒドロキシ基がそれぞれアミンのオルト位に位置した構造を有するジアミンの残基が好ましい。4価の芳香族基の炭素原子数は好ましくは6〜40であり、より好ましくは炭素原子数6〜40である。4価の芳香族基としては、4個の結合部位がいずれも芳香環上に存在するものが好ましい。
【0028】
このようなジアミン類としては、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
また、式(7)において、R13で表される2価の有機基とは一般に、ジカルボン酸と反応してポリアミド構造を形成するジアミンの残基であり、R11を形成するジアミン以外の残基であり、2価の芳香族基又は脂肪族基が好ましく、炭素原子数としては4〜40のものが好ましく、炭素原子数4〜40の2価の芳香族基がより好ましい。
【0030】
このようなジアミン類としては、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、ベンジシン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、1,5−ナフタレンジアミン、2,6−ナフタレンジアミン、ビス(4−アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(3−アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン等の芳香族ジアミン化合物、シリコーン基を含むジアミンとしては、LP−7100、X−22−161AS、X−22−161A、X−22−161B、X−22−161C及びX−22−161E(いずれも信越化学工業株式会社製)等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
これらの化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
また、式(6)において、R12で表される2価の有機基とは、ジアミンと反応してポリアミド構造を形成するジカルボン酸の残基であり、2価の芳香族基が好ましく、炭素原子数としては6〜40のものが好ましく、炭素原子数6〜40の2価の芳香族基が硬化膜の耐熱性の観点でより好ましい。2価の芳香族基としては、2個の結合部位がいずれも芳香環上に存在するものが好ましい。
また、R12は炭素数1〜30の2価のアルキレン基でもよい。
【0032】
このようなジカルボン酸としては、イソフタル酸、テレフタル酸、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジカルボキシビフェニル、4,4’−ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4’−ジカルボキシテトラフェニルシラン、ビス(4−カルボキシフェニル)スルホン、2,2−ビス(p−カルボキシフェニル)プロパン、5−tert−ブチルイソフタル酸、5−ブロモイソフタル酸、5−フルオロイソフタル酸、5−クロロイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、マロン酸、ジメチルマロン酸、エチルマロン酸、イソプロピルマロン酸、ジ−n−ブチルマロン酸、スクシン酸、テトラフルオロスクシン酸、メチルスクシン酸、2,2−ジメチルスクシン酸、2,3−ジメチルスクシン酸、ジメチルメチルスクシン酸、グルタル酸、ヘキサフルオログルタル酸、2−メチルグルタル酸、3−メチルグルタル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、3,3−ジメチルグルタル酸、3−エチル−3−メチルグルタル酸、アジピン酸、オクタフルオロアジピン酸、3−メチルアジピン酸、オクタフルオロアジピン酸、ピメリン酸、2,2,6,6−テトラメチルピメリン酸、スベリン酸、ドデカフルオロスベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ヘキサデカフルオロセバシン酸、1,9−ノナン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸、ノナデカン二酸、エイコサン二酸、ヘンエイコサン二酸、ドコサン二酸、トリコサン二酸、テトラコサン二酸、ペンタコサン二酸、ヘキサコサン二酸、ヘプタコサン二酸、オクタコサン二酸、ノナコサン二酸、トリアコンタン二酸、ヘントリアコンタン二酸、ドトリアコンタン二酸、ジグリコール酸等が挙げられ、さらに下記式で示されるジカルボン酸等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらの化合物を、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0033】
【化8】

式中、Zは各々独立して炭素数1〜6の炭化水素基であり、nは1〜6の整数である。
【0034】
式(6)に含まれる、式(1)の構造を有するポリベンゾオキサゾール前駆体は、熱硬化する際の温度を280℃以下と低くしても十分な物性が得られる点で好ましい。(a)成分としてこのポリマーを選択することで低温プロセスで硬化可能なポジ型感光性樹脂組成物とすることができ、これによりデバイスへのダメージが避けられ、信頼性の高い電子部品を歩留まりよく提供できる。
【0035】
【化9】

式中、U及びVは各々独立して2価の有機基を示し、U及びVの少なくとも一方が炭素数1〜30の脂肪族鎖状構造を含む基である。例えば、Uが炭素数1〜6の鎖状アルキレンである。例えば、Vが炭素数6〜12の鎖状アルキレンである。
中でも、特にVが炭素数1〜30の脂肪族鎖状構造を含む基であることが、モノマー材料の合成の容易さの点で好ましい。
【0036】
Vは、ジアミンと反応してポリアミド構造を形成するジカルボン酸の残基であり、このようなジカルボン酸としては上記式(6)のR12で挙げたものと同じものが挙げられる。Vが炭素数1〜30の脂肪族鎖状構造を含む基であるとき、上記例示において脂肪族鎖状構造を含むジカルボン酸を用いることができる。
【0037】
本発明における(a)成分と(c)成分は、硬化時の熱の作用により、共有結合、イオン結合、水素結合のいずれかの形態にて結合が生ずることが、エポキシ化合物による耐溶剤性や、基板密着性の向上が効果的に発現し、好ましい。この場合、(a)成分の反応点としては、ポリマー鎖中のカルボキシル基やフェノール性水酸基等の極性基の他に、ポリマーの末端基を挙げることができる。特に末端に反応点がある場合、硬化膜の機械特性向上に効果的であるため、末端基に(c)成分と架橋反応しうる基(架橋反応性基)があるのが好ましい。また、ここで挙げた反応点は後述する(d)成分との架橋反応の反応点としても機能し好ましい。
【0038】
中でも反応性即ち最終的に得られる膜の機械特性、耐薬品性、密着性の観点で、(a)成分の架橋反応性基として好ましいものは、水酸基、アルキルアミノ基、チオール等を挙げることができる。さらに好ましいものは水酸基で、特に好ましいのは(a)成分への導入の容易さと、感光特性の点で優れるフェノール性水酸基である。
【0039】
例えば、(a)成分は、主鎖を構成する上述したような1又は2以上のモノマーを重合させた後、モノマーとは異なる架橋反応性基を含む基を末端に導入して製造できる。即ち、(a)成分は架橋反応性基を含む基で末端がキャッピンクされていることが好ましい。末端は1以上即ち一部又は全部がキャッピンクされていればよい。
【0040】
反応活性が高すぎる場合、ワニス状態での保存安定性が悪化したり、塗布時の乾燥工程(プリベーク)中に反応が進行するおそれがある。従って、反応の起こる温度としては、120℃以上であることが特に好ましい。
【0041】
また、上記の各官能基を、保護した官能基や官能基の誘導体とする方法等で潜在化させ、露光による光化学反応又はその後の露光後加熱工程の際の熱による化学変化で、所望の官能基に変換する手法等を併せて採ることもできる。特にカルボキシ基、アミノ基はそのままの状態では加熱工程前に(c)成分のエポキシ基と反応してしまう恐れがあるため、誘導体に変換して用いることが好ましい。
【0042】
フェノール性水酸基の誘導体を含む末端基としては、炭素数6〜30のアニリン誘導体や安息香酸誘導体、以下の構造を有するフェノール誘導体、アルコキシ置換ベンゼン誘導体等が挙げられる。
【0043】
【化10】

式中、Rは複数ある場合は各々独立して1価の有機基、R10は複数ある場合は各々独立して水素原子あるいは炭素数6以下の1価の有機基である。xは0〜4の整数、yは0〜3の整数を示す。
上記末端基は、対応するアミノフェノールやヒドロキシ安息香酸誘導体等を用いることで主鎖骨格に導入することができる。
【0044】
カルボキシ基、アミノ基の誘導体としては、エステル、酸アミド、ヘミアセタールエステル、スルホンアミド、イソシアナ−ト前駆体等を挙げることができる。
【0045】
カルボキシ基、アミノ基の誘導体を用いる場合、末端に存在しうるカルボキシ基又はアミノ基全体の30〜100%を誘導体に置換することが好ましく、50%〜100%を置換することがより好ましい。置換率が低いと十分な安定性が得られない恐れがある。またこれらの誘導体への変換を、高分子反応で行う際には、主鎖中にフェノール性水酸基が存在する場合、その一部が同時に上記の誘導体へと変換される場合がある。このとき変換される主鎖に存在するフェノール性水酸基の割合は全体の40モル%以下であることが好ましい。特に好ましいのは20モル%以下である。
【0046】
上記の架橋反応性基で置換された基を(a)成分の末端に導入する際に用いるに好ましい化合物(末端基を構成する化合物)を以下例示する。
エステル化には炭素数1〜20のアルコール類、炭素数6〜30のフェノール類が好ましく用いられる。
イソシアナート前駆体は、炭素数1〜20のアルコキシカルボニルハライドや炭素数6〜30のフェノキシカルボニルハライド等をアミン残基のアミノ基に作用させて誘導すると、合成が容易になり好ましい。
【0047】
(a)成分において(c)成分と反応しうる末端基の数は、全末端合わせて1〜6が好ましく、2〜4がより好ましい。これらと構造単位との割合は、モル比率で末端基2に対して構造単位(酸残基とアミン残基からなる構造単位)1〜100であることが好ましく、2〜50であることがより好ましい。これよりも末端基比率が小さいと、硬化膜の機械特性又は耐薬液性が低下してしまう恐れがある。逆にこれよりも比率が大きいと、分子量の低下により、架橋反応が十分に進行しても十分な膜物性が得られない恐れがある。
なお、(a)成分は、直鎖状のポリマーである場合、通常末端は2つであるが、分岐構造を有するポリマーは末端が3つ以上となり、(a)成分はこれを含むため、上記説明のような末端基の数となりうる。
【0048】
酸残基とアミン残基のモル比は特に制限はないが、末端基が両末端ともアミノフェノールに起因する場合、酸残基がアミン残基より1つ多く、2:1〜100:99が好ましく、3:2〜50:49がより好ましい。末端基が両末端とも酸誘導体由来の場合、酸残基がアミン残基より1つ少なく、1:2〜99:100が好ましく、2:3〜49:50がより好ましい。その定量方法としては、H−NMRの測定により行うことができる。
【0049】
(a)成分の分子量は、重量平均分子量で3,000〜200,000が好ましく、5,000〜100,000がより好ましい。分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定し、標準ポリスチレン検量線より換算して得た値である。
【0050】
本発明の組成物において、(a)成分として用いるアルカリ水溶液可溶性のポリマーとともに、(b)成分として光活性光線照射により酸を発生する化合物(光酸発生剤)を用いる。
(b)成分の量は、感光時の感度、解像度を良好にするために(a)成分100重量部に対して、0.01〜50重量部とすることが好ましく、0.01〜20重量部とすることがより好ましく、0.5〜20重量部とすることがさらに好ましい。例えば5〜20重量部とする。
【0051】
光酸発生剤は、光照射部のアルカリ水溶液可溶性を増大させる機能を有するものである。光酸発生剤としてはジアゾナフトキノン化合物、アリールジアゾニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩等が挙げられ、ジアゾナフトキノン化合物が感度が高く好ましい。
【0052】
ジアゾナフトキノン化合物は、例えばo−キノンジアジドスルホニルクロリド類とヒドロキシ化合物、アミノ化合物等とを脱塩酸剤の存在下で縮合反応させることで得られる。o−キノンジアジドスルホニルクロリド類としては、例えば、ベンゾキノン−1,2−ジアジド−4−スルホニルクロリド、ナフトキノン−1,2−ジアジド−5−スルホニルクロリド、ナフトキノン−1,2−ジアジド−4−スルホニルクロリド等が使用できる。
【0053】
ヒドロキシ化合物としては、例えば、ヒドロキノン、レゾルシノール、ピロガロール、ビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,2’,3’−ペンタヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,3’,4’,5’−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)プロパン、4b,5,9b,10−テトラヒドロ−1,3,6,8−テトラヒドロキシ−5,10−ジメチルインデノ[2,1−a]インデン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等が使用できる。
【0054】
アミノ化合物としては、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、o−アミノフェノール、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン等が使用できる。
【0055】
o−キノンジアジドスルホニルクロリドとヒドロキシ化合物及び/又はアミノ化合物は、o−キノンジアジドスルホニルクロリド1モルに対して、ヒドロキシ基とアミノ基の合計が0.5〜1当量になるように配合されることが好ましい。脱塩酸剤とo−キノンジアジドスルホニルクロリドの好ましい割合は、0.95/1〜1/0.95である。好ましい反応温度は0〜40℃、好ましい反応時間は1〜10時間である。
【0056】
上記反応の反応溶媒としては、ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、N−メチルピロリドン等の溶媒が用いられる。脱塩酸剤としては、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン等が挙げられる。
【0057】
本発明に使用される(c)成分であるエポキシ基を有する化合物は、感光性樹脂組成物を塗布、露光、現像後に加熱処理する工程においてポリマーと反応する。または加熱処理する工程において化合物自身が重合する。これによって、機械特性や薬品耐性、基板との密着性を向上させることができる。
【0058】
この(c)成分は、分子内にエポキシ基を1つだけ持っていれば特に制限はない。下記式(2)の構造を有する化合物又は式(2)の構造を部分構造して少なくとも1つ有する化合物は、(a)成分のアルカリ水溶液への溶解を適度に阻害し、露光部と未露光部との溶解速度差を向上させることができるので好ましい。なお、式(2)の部分構造を有する化合物とは、例えば式(2)におけるベンゼン環を通じて他の部分構造と結合している化合物である。
【0059】
【化11】

式中、Rは複数ある場合は各々独立して1価の有機基を示し、好ましくは、炭素数1〜10(例えば1〜6)のアルキル基であり、酸素原子、硫黄原子、ハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)を含んでいてもよい。例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、イソアミル基及びこれらに対応するアルコキシ基、パーフルオロアルキル基である。
Aは炭化水素基、カルボニル結合を含む有機基、エステル結合を含む有機基及びエーテル結合を含む有機基から選択される2価の有機基を示す。
nは0〜5、好ましくは0〜2の整数である。
【0060】
(c)成分は好ましくは式(2)の構造を有する化合物であり、例として、以下の式を表される化合物を挙げられる。
【0061】
【化12】

式中、R、nは式(2)と同じである。q、sは各々独立に整数を表し、好ましくはそれぞれq=0〜10(例えば1〜4)、s=0〜10(例えば1〜4)である。
【0062】
また、(c)成分において、エポキシ基のほかに、分子内にケイ素原子を有するものは、基板密着性が向上し、更に好ましい。特に好ましくは、アルキルシリルあるいはアルコキシシリル基を有する化合物である。このような化合物として、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン等を挙げることができる。
【0063】
本発明の感光性樹脂組成物において(c)成分の配合量は、現像時間、未露光部残膜率の許容幅及び硬化膜物性の点から(a)成分(ベース樹脂)100重量部に対して1〜50重量部が好ましく、一方、硬化膜の耐薬品性、基板との密着性の観点では5重量部以上がより好ましい。例えば5〜30重量部とする。
【0064】
(d)エポキシ基を有さない架橋剤は、例えば感光性樹脂組成物を塗布、露光、現像後に加熱処理する工程においてポリマーと反応し、即ち架橋する。または加熱処理する工程において化合物自身が重合する。(c)成分とのバランスを取ることで、(c)成分の効果を相補い、最適な機械特性や薬品耐性を実現することができる。
【0065】
中でも下記式(3)に挙げられるものが、適度なアルカリ溶解性を付与し、かつ低温で硬化した際でも膜物性の落ち込みが小さく、膜の物性に優れ好ましい。
【0066】
【化13】

(式(3)中、Xは単結合、水素原子又は1〜4価の有機基を示し、R及びRは複数ある場合は各々独立に水素原子又は1価の有機基を示し、mは1〜4の整数であり、p及びqは各々独立に0〜4の整数である。)
【0067】
式(3)において、mは2が好ましく、Xは2価の有機基が好ましい。2価の有機基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等の炭素数が1〜10(例えば1〜4)のアルキレン基、エチリデン基等の炭素数が2〜10のアルキリデン基、フェニレン基等の炭素数が6〜30のアリーレン基、フェニルで置換された炭素数が1〜4のアルキレン基、これら炭化水素基の水素原子の一部又は全部をフッ素原子等のハロゲン原子で置換した基、スルホン基、カルボニル基、エーテル結合、チオエーテル結合、アミド結合等が挙げられ、また下記式で示される有機基を好ましいものとして挙げられる。
【0068】
【化14】

式中、X’は各々独立にアルキレン基(例えば炭素原子数が1〜10のもの)、アルキリデン基(例えば炭素数が2〜10のもの)、これらの水素原子の一部又は全部をハロゲン原子で置換した基、スルホン基、カルボニル基、エーテル結合、チオエーテル結合、アミド結合等から選択されるものであり、Rは水素原子、ヒドロキシ基、アルキル基又はハロアルキル基であり、複数存在する場合は互いに同一でも異なっていてもよく、mは1〜10である。
【0069】
また、式(3)において、R、Rの一価の有機基として、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、アミル基等の炭素数1〜4のアルキル基等の炭化水素基が典型的な例として例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0070】
更に下記式(4)に挙げられるものは感光特性、特に解像度を向上させる点で特に好ましいものとして挙げられる。
【化15】

式(4)中、R、R、p及びqは式(3)と同じ意味である。Yは各々独立に水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、フェニル基又はその一部に酸素原子若しくはフッ素原子を含む基である。
具体的には、Yとして酸素原子を含むものとしてはアルキルオキシ基等があり、フッ素原子を含むものとしてはパーフルオロアルキル基等がある。
【0071】
また(d)成分として、硬化膜の吸水性、耐薬品性の点で好ましいものとして以下の構造を有するものを挙げることができる。
【化16】

式(5)中、Rはそれぞれ水素原子又は1価の有機基を示し、Rはそれぞれ水素原子又は1価の有機基を示し、Rは互いに結合して環構造を形成してもよい。環構造は置換基を有してもよく、単環でも複環でもよい。
【0072】
式(5)の化合物としては、例えば以下の化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの化合物を、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【化17】

式中、Zは炭素数1〜10の1価のアルキル基を示し、Rは炭素数1〜20(例えば炭素数1〜10、1〜6又は1〜4)のアルキル基を示す。
【0073】
(d)成分の配合量は、現像時間、未露光部残膜率の許容幅及び硬化膜物性の点から(a)成分(ベース樹脂)100重量部に対して50重量部以下が好ましく、硬化膜の薬品耐性の観点では5重量部以上が好ましい。例えば5〜25重量部とする。
(c)成分と(d)成分の配合量の総量としては、1〜50重量部が好ましく、5〜50部とすることが特に好ましい。
【0074】
本発明において、さらに(e)成分として(a)成分であるベース樹脂のアルカリ水溶液に対する溶解性を阻害する化合物である溶解阻害剤を含有することができる。ただし、(e)成分は、紫外線の照射によって酸を生じる化合物は含まない。
(e)成分は、樹脂組成物への添加の前後で(a)成分単独又は(b)、(c)の各成分とともに任意の溶剤に溶解して得られたワニスを、シリコンウエハ等の基板上にスピン塗布して形成された塗膜のアルカリ水溶液への溶解速度を低下させる効果が発現するものであれば特に制限はない。
【0075】
好ましいものとして、オニウム塩が挙げられ、オニウム塩としては、ジフェニルヨードニウム塩等のジアリールヨードニウム塩、ジ(t−ブチルフェニル)ヨードニウム塩等のジ(アルキルアリール)ヨードニウム塩、トリメチルスルホニウム塩等のトリアルキルスルホニウム塩、ジメチルフェニルスルホニウム塩等のジアルキルモノアリールスルホニウム塩、ジフェニルメチルスルホニウム塩等のジアリールモノアルキルヨードニウム塩等を挙げることができる。特に好ましいものはジフェニルヨードニウムニトラート、ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムニトラート、ジフェニルヨードニウムブロマイド、ジフェニルヨードニウムクロリド、ジフェニルヨードニウムヨーダイト等である。
【0076】
また、これらオニウム塩は溶解阻害剤の目的で用いるため、露光に用いる波長領域に対して吸収を持たないものを選択するのが好ましい。吸収を持つものは(b)成分の光反応を阻害し感度低下を招く恐れがある。
【0077】
(e)成分の添加により、残膜厚や現像時間を適正にコントロールすることができるため、他成分の添加量の許容量に幅を持たせ、より個々の成分の効果を際立たせることができる。(e)成分の配合量は、感度と現像時間の許容幅の点から、(a)成分(ベース樹脂)100重量部に対して0.01〜30重量部が好ましく、0.01〜20重量部がより好ましく、0.01〜10重量部がさらに好ましい。
【0078】
本発明の感光性樹脂組成物は、硬化膜の基板との接着性を高めるために、有機シラン化合物、アルミキレート化合物等の密着性付与剤を含むことができる。
【0079】
有機シラン化合物としては、例えば、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、尿素プロピルトリエトキシシラン、メチルフェニルシランジオール、エチルフェニルシランジオール、n−プロピルフェニルシランジオール、イソプロピルフェニルシランジオール、n−ブチルフェニルシランジオール、イソブチルフェニルシランジオール、tert−ブチルフェニルシランジオール、ジフェニルシランジオール、エチルメチルフェニルシラノール、n−プロピルメチルフェニルシラノール、イソプロピルメチルフェニルシラノール、n−ブチルメチルフェニルシラノール、イソブチルメチルフェニルシラノール、tert−ブチルメチルフェニルシラノール、エチルn−プロピルフェニルシラノール、エチルイソプロピルフェニルシラノール、n−ブチルエチルフェニルシラノール、イソブチルエチルフェニルシラノール、tert−ブチルエチルフェニルシラノール、メチルジフェニルシラノール、エチルジフェニルシラノール、n−プロピルジフェニルシラノール、イソプロピルジフェニルシラノール、n−ブチルジフェニルシラノール、イソブチルジフェニルシラノール、tert−ブチルジフェニルシラノール、フェニルシラントリオール、1,4−ビス(トリヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(メチルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(エチルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(プロピルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ブチルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジメチルヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジエチルヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジプロピルヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジブチルヒドロキシシリル)ベンゼン、3−[ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ]プロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。アルミキレート化合物としては、例えば、トリス(アセチルアセトネート)アルミニウム、アセチルアセテートアルミニウムジイソプロピレート等が挙げられる。
【0080】
これらの密着性付与剤を用いる場合は、(a)成分(ベース樹脂)100重量部に対して、0.1〜30重量部が好ましく、0.5〜20重量部がより好ましい。
【0081】
また、本発明の感光性樹脂組成物には、塗布性(例えばストリエーション(膜厚のムラ)を防ぐ)や現像性を向上させたりするために、適当な界面活性剤又はレベリング剤を添加することができる。
【0082】
界面活性剤又はレベリング剤としては、例えば、ポリオキシエチレンウラリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル等があり、市販品としては、商品名「メガファックスF171」、「F173」、「R−08」(以上、大日本インキ化学工業株式会社製)、商品名「フロラードFC430」、「FC431」(以上、住友スリーエム株式会社製)、商品名「オルガノシロキサンポリマーKP341」、「KBM303」、「KBM403」、「KBM803」(以上、信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0083】
本発明の組成物には、通常、溶剤(f)が含まれ、上記各成分が溶解又は分散している。溶剤は特に制限はなく、γ−ブチロラクトン(BLO)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、N−メチルピロリドン(NMP)、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、アルコール等が使用できる。
上記溶剤の使用量は、特に制限されないが、好ましくは(a)成分に対して100重量部〜2000重量部となるように使用する。
【0084】
本発明の組成物は(f)溶媒を除いて、例えば、70%重量以上、80重量%以上、90重量%以上、100重量%が、(a)〜(d)成分のみからなってもよい。本発明の組成物は、これらの成分の他に、上記の(e)成分等、本発明の新規で基本的な特性を実質的に損なわない物質を含むことができる。
【0085】
次に、本発明によるパターン硬化膜の製造方法について説明する。
本発明のパターン硬化膜の製造方法は、上述した感光性樹脂組成物を支持基板上に塗布し乾燥して感光性樹脂膜を形成する感光性樹脂膜形成工程、感光性樹脂膜を所定のパターンに露光する露光工程、露光後の感光性樹脂膜を現像してパターン樹脂膜を得る現像工程、及びパターン樹脂膜を加熱処理してパターン硬化膜を得る加熱処理工程を経て、パターン硬化膜を得ることができる。
本発明の製造方法によれば、感度、解像度、耐薬品性、基板密着性に優れた、良好な形状のパターンが得られる。
以下、各工程について説明する。
【0086】
感光性樹脂膜形成工程では、ガラス基板、半導体、金属酸化物絶縁体(例えばTiO、SiO等)、窒化ケイ素等の支持基板上に、上記本発明の感光性樹脂組成物を、スピンナーを用いた回転塗布等の塗布後、ホットプレート、オーブン等を用いて乾燥する。これにより、感光性樹脂組成物の被膜である感光性樹脂膜が得られる。
【0087】
次に露光工程では、支持基板上で被膜となった感光性樹脂膜に、例えばマスクを介して紫外線、可視光線、放射線等の活性光線を照射することにより露光を行う。
【0088】
現像工程では、活性光線が露光した感光性樹脂膜の露光部を現像液で除去することによりパターン硬化膜が得られる。現像液としては例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等のアルカリ水溶液が好ましいものとして挙げられる。これらの水溶液の塩基濃度は、0.1〜10重量%とされることが好ましい。さらに上記現像液にアルコール類や界面活性剤を添加して使用することもできる。これらはそれぞれ、現像液100重量部に対して、好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.1〜5重量部の範囲で配合することができる。
【0089】
加熱処理工程では、現像後得られたパターンを加熱処理することにより、耐熱性の高い樹脂のパターン硬化膜を形成することができる。加熱処理工程における加熱温度は、通常160〜400℃である。
【0090】
また、加熱処理は、石英チューブ炉、ホットプレート、ラピッドサーマルアニール、縦型拡散炉、赤外線硬化炉、電子線硬化炉、及びマイクロ波硬化炉等を用いて行うことができる。また、大気中、又は窒素等の不活性雰囲気中いずれを選択することもできるが、窒素下で行う方が感光性樹脂組成物膜の酸化を防ぐことができるので望ましい。上記加熱温度範囲は従来の加熱温度よりも低いため、支持基板やデバイスへのダメージを小さく抑えることができる。従って、本発明のパターンの製造方法を用いることによって、デバイスが歩留りよく製造できる。また、プロセスの省エネルギー化につながる。
【0091】
また、本発明の加熱処理としては、通常の窒素置換されたオーブンを用いる以外にマイクロ波硬化装置や周波数可変マイクロ波硬化装置を用いることもできる。これらを用いることにより、感光性樹脂組成物膜のみを効果的に加熱することが可能である。
【0092】
例えば、特許第2587148号明細書及び特許第3031434号明細書では、マイクロ波を用いたポリイミド前駆体の脱水閉環が検討されている。また米国特許第5738915号明細書では、マイクロ波を用いてポリイミド前駆体薄膜を脱水閉環する際に、周波数を短い周期で変化させて照射することにより、ポリイミド薄膜や基材のダメージを避ける方法が提案されている。
【0093】
周波数を変化させながらマイクロ波をパルス状に照射した場合は定在波を防ぐことができ、基板面を均一に加熱することができる点で好ましい。さらに基板として電子部品のように金属配線を含む場合は、周波数を変化させながらマイクロ波をパルス状に照射すると金属からの放電等の発生を防ぐことができ、電子部品を破壊から守ることができる点で好ましい。
【0094】
本発明の感光性樹脂膜を熱硬化させる際に照射するマイクロ波の周波数は0.5〜20GHzの範囲であるが、実用的には1〜10GHzの範囲が好ましく、さらに2〜9GHzの範囲がより好ましい。
【0095】
照射するマイクロ波の周波数は連続的に変化させることが望ましいが、実際は周波数を階段状に変化させて照射する。その際、単一周波数のマイクロ波を照射する時間はできるだけ短い方が定在波や金属からの放電等が生じにくく、その時間は1ミリ秒以下が好ましく、100マイクロ秒以下が特に好ましい。
【0096】
照射するマイクロ波の出力は装置の大きさや被加熱体の量によっても異なるが、概ね10〜2000Wの範囲であり、実用上は100〜1000Wがより好ましく、100〜700Wがさらに好ましく、100〜500Wが最も好ましい。出力が10W以下では被加熱体を短時間で加熱することが難しく、2000W以上では急激な温度上昇が起こりやすいので好ましくない。
【0097】
本発明の感光性樹脂膜を熱硬化させる際に照射するマイクロ波はパルス状に入/切させることが好ましい。マイクロ波をパルス状に照射することにより、設定した加熱温度を保持することができ、また、ポリベンゾオキサゾール薄膜や基材へのダメージを避けることができる点で好ましい。パルス状のマイクロ波を1回に照射する時間は条件によって異なるが、概ね10秒以下である。
【0098】
本発明の感光性樹脂膜を熱硬化させる時間は、脱水閉環反応が十分進行するまでの時間であるが、作業効率との兼ね合いから概ね5時間以下である。また、脱水閉環の雰囲気は大気中、又は窒素等の不活性雰囲気中いずれを選択することができる。
【0099】
次に、本発明によるパターンの製造方法の一例として、半導体装置の製造工程を図面に基づいて説明する。図1〜図5は、多層配線構造を有する半導体装置の製造工程を説明する概略断面図であり、第1の工程から第5の工程へと一連の工程を表している。
【0100】
これらの図において、回路素子(図示しない)を有するSi基板等の半導体基板1は、回路素子の所定部分を除いてシリコン酸化膜等の保護膜2で被覆され、露出した回路素子上に第1導体層3が形成されている。上記半導体基板上にスピンコート法等で層間絶縁膜層4としてのポリイミド樹脂等の膜が形成される(第1の工程、図1)。
【0101】
次に、塩化ゴム系、フェノールノボラック系等の感光性樹脂層5が、マスクとして層間絶縁膜層4上にスピンコート法で形成され、公知の写真食刻技術によって所定部分の層間絶縁膜層4が露出するように窓6Aが設けられる(第2の工程、図2)。この窓6Aの層間絶縁膜層4は、酸素、四フッ化炭素等のガスを用いるドライエッチング手段によって選択的にエッチングされ、窓6Bが空けられている。次いで、窓6Bから露出した第1導体層3を腐食することなく、感光樹脂層5のみを腐食するようなエッチング溶液を用いて感光樹脂層5が完全に除去される(第3の工程、図3)。
【0102】
さらに、公知の写真食刻技術を用いて、第2導体層7を形成させ、第1導体層3との電気的接続が完全に行われる(第4の工程、図4)。3層以上の多層配線構造を形成する場合は、上記の工程を繰り返して行い各層を形成することができる。
【0103】
次に、表面保護膜8を形成する。図1〜図5の例では、この表面保護膜を次のようにして形成する。即ち、本発明の感光性樹脂組成物をスピンコート法にて塗布、乾燥し、所定部分に窓6Cを形成するパターンを描いたマスク上から光を照射した後、アルカリ水溶液にて現像してパターン樹脂膜を形成する。その後、このパターン樹脂膜を加熱して表面保護膜層8としての感光性樹脂のパターン硬化膜とする(第5の工程、図5)。この表面保護膜層(感光性樹脂のパターン硬化膜)8は、導体層を外部からの応力、α線等から保護するものであり、得られる半導体装置は信頼性に優れる。
【0104】
次に、本発明による電子部品について説明する。本発明の電子部品は、上記のパターン硬化膜を有する。ここで、電子部品としては、半導体装置や多層配線板、各種電子デバイス等を含む。
【0105】
また、上記パターン硬化膜は、具体的には、半導体装置等電子部品の表面保護膜や層間絶縁膜、多層配線板の層間絶縁膜等の形成に使用することができる。本発明による電子部品は、上記のポジ型感光性樹脂組成物を用いて形成される表面保護膜や層間絶縁膜を有すること以外は特に制限されず、様々な構造をとることができる。
【0106】
本発明の組成物は特にアルミ配線に対し用いたとき、メッキプロセスにおいて薬液の染み込みが少なく有用である。従って、アルミ配線とそのアルミ配線の上に本発明からなる硬化膜を形成することが好ましい。
【実施例】
【0107】
以下、実施例及び比較例に基づき、本発明についてさらに具体的に説明する。尚、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0108】
合成例1
ポリベンゾオキサゾール前駆体の合成
攪拌機、温度計を備えた0.5リットルのフラスコ中に、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸15.48g(60mmol)、N−メチルピロリドン90gを仕込み、フラスコを5℃に冷却した後、塩化チオニル23.9g(120mmol)を滴下し、30分間反応させて、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸クロリドの溶液を得た。次いで、攪拌機、温度計を備えた0.5リットルのフラスコ中に、N−メチルピロリドン87.5gを仕込み、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン18.30g(50mmol)とm−アミノフェノール2.18g(20mmol)を攪拌溶解した後、ピリジン9.48g(120mmol)を添加し、温度を0〜5℃に保ちながら、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸クロリドの溶液を30分間で滴下した後、30分間攪拌を続けた。溶液を3リットルの水に投入し、析出物を回収、純水で3回洗浄した後、減圧乾燥して水酸基末端のポリヒドロキシアミドを得た(以下、ポリマーIとする)。ポリマーIのGPC法標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は23,400、分散度は1.8であった。
【0109】
合成例2
合成例1でm−アミノフェノールを添加しなかった以外は合成例1と同様の条件にて合成を行った。得られたカルボキシ基末端のポリヒドロキシアミドの標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は17,600、分散度は1.6であった。
このポリマー20gを次に、攪拌機及び温度計を備えた0.5リットルのフラスコ中に、N−メチルピロリドン100gとともに仕込み、攪拌溶解させた後、温度を0〜5℃に保ちながら、クロロメチルエチルエーテル6.0gを滴下し、さらにトリエチルアミン6.0gを滴下した後、30分間攪拌を続けた。溶液を2リットルの水に投入し、析出物を回収、純水で3回洗浄した後、減圧乾燥して末端にエトキシメチル基を導入したポリヒドロキシアミドを得た(以下、ポリマーIIとする)。H−NMRによりエトキシメチル基の導入率を求めた結果、末端カルボキシ基は99%エトキシメチル基に変換されており、分子鎖中のフェノール性水酸基は全体の8%だけが置換されていた。
【0110】
合成例3
合成例1でジフェニルエーテルジカルボン酸を用いず、セバシン酸に置き換えた。それ以外は合成例1と同様の条件にて合成を行った。得られたポリヒドロキシアミド(以下、ポリマーIIIとする)の標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は26,600、分散度は2.0であった。
【0111】
合成例4
合成例1でジフェニルエーテルジカルボン酸を用いず、ドデカン二酸に置き換えた。それ以外は合成例1と同様の条件にて合成を行った。得られたポリヒドロキシアミド(以下、ポリマーIVとする)の標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は29,500、分散度は2.1であった。
【0112】
合成例5
N−メチル−2−ピロリドン150mlに2,2’−ジメチルベンジジン9.54g(45mmol)、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン14.4g(45mmol)、m−アミノフェノール2.18g(20mmol)を添加して溶解させた後、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物31.0g(100mmol)を添加して重合させた。このポリアミド酸溶液を2リットルの水に投入し、析出物を回収、純水で3回洗浄した。こうして得られたポリアミド酸(以下、ポリマーVとする)の標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量が41,400、分散度は2.5であった。
【0113】
GPC法による重量平均分子量の測定条件
測定装置:検出器 株式会社日立製作所社製L4000UV
ポンプ:株式会社日立製作所社製L6000、株式会社島津製作所社製C−R4A Chromatopac
測定条件:カラム Gelpack GL−S300MDT−5 x2本
溶離液:THF(テトラヒドロフラン)/DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)=1/1(容積比)、LiBr(0.03mol/l)、H3PO4(0.06mol/l)
流速:1.0ml/min、検出器:UV270nm
ポリマー0.5mgに対して溶媒(THF/DMF=1/1(容積比))1mlの溶液を用いて測定した。
【0114】
実施例1〜10及び比較例1〜3
前記(a)成分であるポリマー100重量部に対し、(b)、(c)、(d)成分を溶剤とともに表1に示した所定量で配合し、感光性樹脂組成物の溶液を得た。
【0115】
【表1】

【0116】
表中、BLOはγ−ブチロラクトンを表し、PGMEAはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを表し、NMPはN−メチルピロリドンを表し、BLO/PGMEAは両者を重量比9:1で混合して用いたことを表す。括弧内はポリマー100重量部に対する添加量を重量部で示した。溶剤の使用量は、いずれもポリマー100重量部に対し250重量部である。
【0117】
また、表2中、B1,B2,C1〜5,C’1,D1〜4は、それぞれ下記の化学式に示す化合物である。ここでC’1は本発明の(c)成分には該当しない。
【0118】
【化18】

【0119】
【化19】

【0120】
評価例1
組成物の溶液をシリコンウエハ上にスピンコートして、乾燥膜厚7〜12μmの塗膜を形成し、その後干渉フィルターを介して超高圧水銀灯を用いて100〜1000mJ/cmのi線露光を行った。露光後、120℃で3分間加熱し、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)の2.38重量%水溶液にて露光部のシリコンウエハが露出するまで現像した。その後水でリンスし、残膜率(現像前後の膜厚の比)80%以上が得られるパターン形成に必要な最小露光量(感度)と解像度を求めた。結果を表2に示す。
【0121】
【表2】

【0122】
比較例4では、プリベーク時に膜がアルカリ現像液に難溶化し、10分以上の長時間現像を行ってもパターンの開口が確認できなかった。
【0123】
評価例2
組成物の溶液をシリコンウエハ上にスピンコートして、120℃で3分間加熱し、膜厚15μmの塗膜を形成した。
その後、上記塗膜をイナートガスオーブン中、窒素雰囲気下で100℃で60分加熱した後、さらに実施例1〜7,12、比較例1,4では320℃で、実施例8〜11、比較例2,3では220℃で、1時間加熱して硬化膜を得た。この硬化膜をシリコン基板ごとフッ酸水溶液に浸漬し、基板から硬化膜を剥離し、水洗、乾燥した後、破断伸び(引っ張り試験機で測定)を測定した。結果を表3に示す。
【0124】
【表3】

【0125】
以上に示したように、実施例で示したものはいずれも実用上問題ない機械特性を有することが分かった。一方、(d)成分を用いなかった比較例1、3では、破断伸びが低かった。
【0126】
評価例3
さらに評価例2と同じ温度で硬化した膜を、以下に示す各溶剤に浸漬した際のクラックの有無及び膜の膨潤の有無を調べた。結果を表4に示す。
【0127】
【表4】

【0128】
表中、クラック有り、膨潤有りを×、クラックなし、膨潤なしを○とした。溶剤浸漬前後で1μm以上膜厚が増加したものを膨潤有りとした。
【0129】
評価例4
上記組成物の溶液をアルミを蒸着したシリコンウエハ上にスピンコートして、120℃で3分間加熱し、膜厚8μmの塗膜を形成した。これを露光、現像を行いパターン形成し、イナートガスオーブン中、窒素雰囲気下で100℃で60分加熱した後、さらに実施例1〜7,12、比較例1,4では320℃で、実施例8〜11、比較例2,3では220℃で1時間加熱して硬化膜を得た。このアルミ基板上でパターン化した硬化膜を23℃でアルカリ性水溶液を主成分とするメルテックス製無電解ニッケルめっき用薬液メルプレートFZ−7350、同FBZ2の混合水溶液(FZ−7350/FBZ2/水=200ml/10ml/790ml)に10分間浸漬した。開口パターンから、基板と樹脂層の界面への薬液の染み込みの有無を、上方からの金属顕微鏡観察、又は断面SEMによる観察により確認した。結果を表5に示す。
【0130】
【表5】

【0131】
表中、金属顕微鏡でも染み込みが確認できる程度のものを×、金属顕微鏡では確認できず、SEMにより開口部から5μm以内の染み込みが確認できる程度のものを△、全く染み込みのないものを○とした。
【0132】
実施例では、基板との密着性、耐薬品性ともに良好で実用レベルの結果が得られた。一方、特に比較例1、2では(c)成分を用いていないため密着性が弱く、薬液の染み込みが大きかった。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、電子部品の表面保護膜や層間絶縁膜等となるパターン硬化膜の材料として使用できる。
【符号の説明】
【0134】
1 半導体基板
2 保護膜
3 第1導体層
4 層間絶縁膜層
5 感光樹脂層
6A、6B、6C 窓
7 第2導体層
8 表面保護膜層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール及びこれらの前駆体から選択されるアルカリ水溶液に可溶なポリマー、
(b)光の照射により酸を発生する化合物、
(c)分子内に1つだけエポキシ基を有する化合物、
(d)分子内にエポキシ基を有さない架橋剤
を含有してなることを特徴とするポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(b)成分が、ジアゾナフトキノン化合物であることを特徴とする請求項1に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(a)成分が、下記式(1)で示される構造単位を有するポリベンゾオキサゾール前駆体であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【化20】

(式中、U及びVは各々独立して2価の有機基を示し、U及びVの少なくとも一方が炭素数1〜30の脂肪族鎖状構造を含む基である。)
【請求項4】
前記(c)成分が、式(2)で表される化合物、又は式(2)で表される構造を部分構造として有する化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【化21】

(式中、Rは複数ある場合は各々独立して1価の有機基を示し、Aは炭化水素基、カルボニル結合を含む有機基、エステル結合を含む有機基及びエーテル結合を含む有機基から選択される2価の有機基を示し、nは0〜5の整数である。)
【請求項5】
前記(c)成分が、分子内にケイ素原子を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記(d)成分が、分子内に少なくとも1つのメチロール基又はアルコキシアルキル基を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項7】
前記(d)成分が、式(3)で表される化合物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【化22】

(式(3)中、Xは単結合、水素原子又は1〜4価の有機基を示し、R及びRは複数ある場合は各々独立に水素原子又は1価の有機基を示し、mは1〜4の整数であり、p及びqは各々独立に0〜4の整数である。)
【請求項8】
前記(d)成分が、式(4)で表される化合物であることを特徴とする請求項7に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【化23】

(式(4)中、R、R、p及びqは式(3)と同じ意味である。Yは各々独立に水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、フェニル基又はその一部に酸素原子若しくはフッ素原子を含む基である。)
【請求項9】
前記(d)成分が、下記式(5)で表される化合物であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【化24】

(式(5)中、Rは各々独立して水素原子又は1価の有機基を示し、Rは各々独立して水素原子又は1価の有機基を示し、Rは互いに結合して置換されていてもよい環構造を形成してもよい。)
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のポジ型感光性樹脂組成物を硬化させたことを特徴とする硬化膜。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のポジ型感光性樹脂組成物を支持基板上に塗布し乾燥して感光性樹脂膜を形成する工程と、前記感光性樹脂膜を所定のパターンに露光する工程と、前記露光後の感光性樹脂膜をアルカリ水溶液を用いて現像してパターン樹脂膜を得る工程と、前記パターン樹脂膜を加熱処理してパターン硬化膜を得る工程とを含むことを特徴とするパターン硬化膜の製造方法。
【請求項12】
請求項10に記載の硬化膜を、層間絶縁膜層及び/又は表面保護膜層として有することを特徴とする電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−150165(P2011−150165A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−11828(P2010−11828)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(398008295)日立化成デュポンマイクロシステムズ株式会社 (81)
【Fターム(参考)】