説明

ポジ型感光性樹脂組成物、硬化膜、保護膜、絶縁膜およびそれを用いた半導体装置、表示体装置。

【課題】温湿度処理後の基板密着性に優れるポジ型感光性樹脂組成物が提供することを課題とする。
【解決手段】アルカリ可溶性樹脂(A)、感光性ジアゾナフトキノン化合物(B)、一般式(1)で示されるケイ素化合物(C−1)を含んでいるポジ型感光性樹脂組成物を提供することにより上記課題を解決する。
【化1】


(一般式(1)中、R1、R2は炭素数1〜10のアルキル基、R3は有機基、R4は炭素数
1〜10のアルキレン基である。iは0〜2の整数である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポジ型感光性樹脂組成物、硬化膜、保護膜、絶縁膜およびそれを用いた半導体装置、表示体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置である表面保護膜、層間絶縁膜には、耐熱性に優れ、かつ卓越した電気特性及び機械特性等を有したポリイミド樹脂が用いられてきた。しかし、最近では高極性のイミド環由来のカルボニル基が無いことから耐湿信頼性が良いとされるポリベンゾオキサゾール樹脂が使われ始めており、樹脂自身に感光性を付与することにより、レリーフパターン形成工程の一部の簡略化を可能とする感光性樹脂組成物が開発されている。
現在では、安全性の面からの更なる改良によりアルカリ水溶液で現像が可能であるポリベンゾオキサゾール前駆体と感光剤であるジアゾキノン化合物により構成されるポジ型感光性樹脂組成物が開発されている(特許文献1参照)。ここで、ポジ型感光性樹脂組成物のレリーフパターンの作製を現像メカニズムより説明する。ウェハ上の塗膜に、ステッパー等の露光装置でマスクの上から化学線を照射(露光)することにより、露光された部分(以下露光部)と露光されていない部分(以下未露光部)が出来る。この未露光部中に存在するジアゾキノン化合物はアルカリ水溶液に不溶であり、また樹脂と相互作用することで更にアルカリ水溶液に対し耐性を持つようになる。一方、露光部に存在していたジアゾキノン化合物は化学線の作用によって化学変化を起こし、アルカリ水溶液に可溶となり、樹脂の溶解を促進させる。この露光部と未露光部との溶解性の差を利用し、露光部を溶解除去することにより未露光部のみのレリーフパターンの作製が可能となる。
【0003】
ところが、特許文献1で開示されている感光性樹脂組成物の硬化膜は、シリコンウエハー等の基板との密着性が悪く、温湿度処理後に剥離したりする問題がある場合があった。
【0004】
【特許文献1】特開昭56−27140号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事情にかんがみてなされたものであり、その目的とするところは温湿度処理後のシリコンウエハー等の基板との密着性に優れたポジ型感光性樹脂組成物、硬化膜、保護膜、絶縁膜およびそれを用いた半導体装置、表示体装置を提供するものである。
【0006】
その目的とするところは、引っ張り伸度に優れたポジ型感光性樹脂組成物、硬化膜、保護膜、絶縁膜およびそれを用いた半導体装置、表示体装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記[1]〜[11]に記載の本発明により達成される。
[1]アルカリ可溶性樹脂(A)と、感光性ジアゾキノン化合物(B)と、一般式(1)で示されるケイ素化合物(C−1)を含むことを特徴とするポジ型感光性樹脂組成物。
【化1】

(一般式(1)中、R1、R2は炭素数1〜10のアルキル基、R3はは有機基、R4は炭素数1〜10のアルキレン基である。iは0〜2の整数である。)
[2]前記アルカリ可溶性樹脂(A)が一般式(2)で示される繰り返し単位を有するポリアミド系樹脂を含むものである、[1]に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【化2】

(式中、X、Yは有機基である。R5は水酸基、−O−R7、アルキル基、アシルオキシ基、シクロアルキル基であり、同一でも異なっても良い。R6は水酸基、カルボキシル基、
−O−R7、−COO−R7のいずれかであり、同一でも異なっても良い。mは0〜8の整数、nは0〜8の整数である。R7は炭素数1〜15の有機基である。ここで、R5が複数ある場合は、それぞれ異なっていても同じでもよい。R5として水酸基がない場合は、R6は少なくとも1つはカルボキシル基でなければならない。また、R6としてカルボキシル
基がない場合、R5は少なくとも1つは水酸基でなければならない。)
[3]前記一般式(2)で示される繰り返し単位を有するポリアミド系樹脂のXが、下記式(3)からなる群より選択される1種以上を含み、かつ、Yが下記式(4)からなる群より選択される1種以上を含む、[2]に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【化3】

(ここで*はNH基に結合することを示す。式(3−6)中のDは、−CH2−、−CH
(CH3)−、−C(CH32−、−O−、−S−、−SO2−、−CO−、−NHCO−、−C(CF32−、又は単結合である。R8は、アルキル基、アルコキシ基、アシルオ
キシ基、シクロアルキル基のいずれかであり、同一でも異なっても良い。s=1〜3の整数である。)
【化4】

(ここで*はC=O基に結合することを示す。R9は、アルキル基、アルキルエステル基
、アルキルエーテル基、ベンジルエーテル基、ハロゲン原子の内から選ばれた1つを表し、それぞれ同じでも異なっていてもよい。v=0〜4の整数である。)
[4]前記一般式(2)で示されるケイ素化合物(C−1)のiが0である、[1]ないし[3]のいずれかに記載のポジ型感光性組成物。
[5]前記一般式(2)で示されるケイ素化合物(C−1)のR1がメチル基またはエチ
ル基である、[1]ないし[4]のいずれかに記載のポジ型感光性組成物。
[6]前記一般式(2)で示されるケイ素化合物(C−1)のR4がメチレン基またはエ
チレン基である、[1]ないし[5]のいずれかに記載のポジ型感光性組成物。
[7]前記アルカリ可溶性樹脂(A)100重量部に対して、一般式(1)で示されるケイ素化合物(C−1)を0.1〜20重量部含むものである、[1]ないし[6]のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物。
[8][1]ないし[7]のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物の硬化物で構成されていることを特徴とする硬化膜。
[9][8]に記載の硬化膜で構成されていることを特徴とする保護膜。
[10][8]に記載の硬化膜で構成されていることを特徴とする絶縁膜。
[11][8]に記載の硬化膜を有していることを特徴とする半導体装置。
[12][8]に記載の硬化膜を有していることを特徴とする表示体装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、温湿度処理後のシリコンウエハー等の基板との密着性に優れたポジ型感光性樹脂組成物、硬化膜、保護膜、絶縁膜およびそれを用いた半導体装置、表示体装置を提供することができる。
【0009】
本発明によれば、引っ張り伸度に優れたポジ型感光性樹脂組成物、硬化膜、保護膜、絶縁膜およびそれを用いた半導体装置、表示体装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明のポジ型感光性樹脂組成物、硬化膜、保護膜、絶縁膜、半導体装置、表示体装置の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0011】
本発明は、アルカリ可溶樹脂(A)と、感光性ジアゾキノン化合物(B)と、下記一般式(1)で示されるケイ素化合物(C−1)を含むことを特徴とするポジ型感光性樹脂組成物に関するものである。
【0012】
【化5】

(一般式(1)中、R1、R2は炭素数1〜10のアルキル基、R3はは有機基、R4は炭素数1〜10のアルキレン基である。iは0〜2の整数である。)
【0013】
本発明は、一般式(2)で示されるアルカリ可溶性樹脂(A)を含むことを特徴とするポジ型感光性樹脂組成物であって、Xが、下記式(3)からなる群より選択される1種以上を含み、かつ、Yが下記式(4)からなる群より選択される1種以上を含むことを特徴
とするものである。
【化6】

(ここで*はNH基に結合することを示す。式(3−6)中のDは、−CH2−、−CH
(CH3)−、−C(CH32−、−O−、−S−、−SO2−、−CO−、−NHCO−、−C(CF32−、又は単結合である。R8は、アルキル基、アルコキシ基、アシルオ
キシ基、シクロアルキル基のいずれかであり、同一でも異なっても良い。s=1〜3の整数である。)
【化7】

(ここで*はC=O基に結合することを示す。R9 は、アルキル基、アルキルエステル基、アルキルエーテル基、ベンジルエーテル基、ハロゲン原子の内から選ばれた1つを表し、それぞれ同じでも異なっていてもよい。v=0〜4の整数である。)
【0014】
本発明は、前記アルカリ可溶性樹脂(A)100重量部に対して、ケイ素化合物(C−1)を0.1〜20重量部含むことを特徴とするポジ型感光性樹脂組成物に関するものである。
【0015】
また、本発明の硬化膜は、上記記載の感光性樹脂組成物の硬化物で構成されていることを特徴とする。また、本発明の保護膜、絶縁膜は、上記記載の硬化膜で構成されていることを特徴とする。更に半導体装置、表示体装置は、上記記載の硬化膜を有していることを特徴とする。
以下に本発明のポジ型感光性樹脂組成物の各成分について詳細に説明する。なお下記は例示であり、本発明は何ら下記に限定されるものではない。
【0016】
本発明に係るアルカリ可溶性樹脂(A)としては、特に制限されるものではないが、例えば、クレゾール型ノボラック樹脂、ヒドロキシスチレン樹脂、メタクリル酸樹脂、メタクリル酸エステル樹脂等のアクリル系樹脂、水酸基、カルボキシル基等を含む環状オレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂等が挙げられる。これらの中でも耐熱性に優れ、機械特性が良いという点からポリアミド系樹脂が好ましく、具体的にはポリベンゾオキサゾール構造およびポリイミド構造の少なくとも一方を有し、かつ主鎖または側鎖に水酸基、カルボキシル基、エーテル基またはエステル基を有する樹脂、ポリベンゾオキサゾール前駆体構造を有する樹脂、ポリイミド前駆体構造を有する樹脂、ポリアミド酸エステル構造を有する樹脂等が挙げられる。このようなポリアミド系樹脂としては、例えば下記一般式(2)で示されるポリアミド系樹脂を挙げることができる。
【0017】
【化8】

(式中、X、Yは有機基である。R5は水酸基、−O−R7、アルキル基、アシルオキシ基、シクロアルキル基であり、同一でも異なっても良い。R6は水酸基、カルボキシル基、
−O−R7、−COO−R7のいずれかであり、同一でも異なっても良い。mは0〜8の整数、nは0〜8の整数である。R7は炭素数1〜15の有機基である。ここで、R5が複数
ある場合は、それぞれ異なっていても同じでもよい。R5として水酸基がない場合は、R6は少なくとも1つはカルボキシル基でなければならない。また、R6としてカルボキシル
基がない場合、R5は少なくとも1つは水酸基でなければならない。)
【0018】
一般式(2)で示されるポリアミド系樹脂において、Xの置換基としてのO−R7、Y
の置換基としてのO−R7、COO−R7は、水酸基、カルボキシル基のアルカリ水溶液に対する溶解性を調節する目的で、炭素数1〜15の有機基であるR7で保護された基であ
り、必要により水酸基、カルボキシル基を保護しても良い。R7の例としては、ホルミル
基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ターシャリーブチル基、ターシャリーブトキシカルボニル基、フェニル基、ベンジル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基等が挙げられる。
【0019】
一般式(2)で示される構造を含むポリアミド系樹脂は、例えば、Xを含むジアミン或いはビス(アミノフェノール)、2,4−ジアミノフェノール等から選ばれる化合物と、Yを含むテトラカルボン酸二無水物、トリメリット酸無水物、ジカルボン酸或いはジカルボン酸ジクロライド、ジカルボン酸誘導体等から選ばれる化合物とを反応して得られるものである。なお、ジカルボン酸の場合には反応収率等を高めるため、1−ヒドロキシ−1,2,3−ベンゾトリアゾール等を予め反応させた活性エステル型のジカルボン酸誘導体を用いてもよい。
【0020】
一般式(2)で示されるポリアミド系樹脂のXとしては、例えばベンゼン環、ナフタレン環等の芳香族化合物、ビスフェノール類、ピロール類、フラン類等の複素環式化合物、シロキサン化合物等が挙げられ、より具体的には下記式(5)で示されるものを好ましく挙げることができる。これらは、必要により1種類又は2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0021】
【化9】

(ここで*はNH基に結合することを示す。R12〜R15は有機基である。)
【0022】
一般式(2)で示すように、XにはR5が0〜8個結合される(式(5)において、R5は省略)。
【0023】
式(5)中で好ましいものとしては、耐熱性、機械特性が特に優れる下記式(6)で表されるものが挙げられる。
【0024】
【化10】

(式中、*はNH基に結合することを示す。式中Dは、−CH2−、−CH(CH3)−、−C(CH32−、−O−、−S−、−SO2−、−CO−、−NHCO−、−C(CF32−、又は単結合である。R8は、アルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、シクロ
アルキル基のいずれかであり、同一でも異なっても良い。R16は、アルキル基、アルキルエステル基、ハロゲン原子の内から選ばれた1つを表し、それぞれ同じでも異なっていてもよい。s=1〜3、t=0〜4の整数である。)
【化11】

(式中、*はNH基に結合することを示す。)
【0025】
さらに、式(6)の中でも、下記式(3)で示されるものが特に好ましい。一般式(2)で示されるポリアミド系樹脂のXが下記式(3)である場合、一般式(1)で示されるケイ素化合物(C−1)との組合せにより、温湿度処理後の基板との密着性がより優れる。
【0026】
【化12】

(ここで*はNH基に結合することを示す。式(3−6)中のDは、−CH2−、−CH
(CH3)−、−C(CH32−、−O−、−S−、−SO2−、−CO−、−NHCO−、−C(CF32−、又は単結合である。R8は、アルキル基、アルコキシ基、アシルオ
キシ基、シクロアルキル基のいずれかであり、同一でも異なっても良い。s=1〜3の整数である。)
【0027】
又、一般式(2)で示されるポリアミド系樹脂のYは有機基であり、前記Xと同様のものが挙げられ、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環等の芳香族化合物、ビスフェノール類、ピロール類、ピリジン類、フラン類等の複素環式化合物、シロキサン化合物等が挙げられ、より具体的には下記式(7)で示されるものを好ましく挙げることができる。これらは1種類又は2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0028】
【化13】

(ここで*はC=O基に結合することを示す。R19〜R22は有機基である。)
【0029】
一般式(2)で示すように、Yには、R6が0〜8個結合される(式(7)において、
6は省略)。
【0030】
式(7)の中で好ましいものとしては、耐熱性、機械特性が特に優れる下記式(8)、式(9)で示されるものが挙げられる。
下記式(8)中のテトラカルボン酸二無水物由来の構造については、C=O基に結合する位置が両方メタ位であるもの、両方パラ位であるものを挙げているが、メタ位とパラ位をそれぞれ含む構造でもよい。
【0031】
【化14】

【化15】

(式中、*はC=O基に結合することを示す。R9は、アルキル基、アルキルエステル基
、アルキルエーテル基、ベンジルエーテル基、ハロゲン原子の内から選ばれた1つを表し、それぞれ同じでも異なっていてもよい。R23は、水素原子又は炭素数1〜15の有機基から選ばれた1つを示し、一部が置換されていてもよい。v=0〜4の整数である。)
【0032】
【化16】

(式中、*はC=O基に結合することを示す。)
【0033】
さらに、式(8)、(9)の中でも、下記式(4)で示されるものが特に好ましい。一般式(2)で示されるポリアミド系樹脂のYが下記式(4)である場合、一般式(1)で示されるケイ素化合物(C−1)との組合せにより、温湿度処理後の基板との密着性がより優れる。
【化17】

(ここで*はC=O基に結合することを示す。R9 は、アルキル基、アルキルエステル基、アルキルエーテル基、ベンジルエーテル基、ハロゲン原子の内から選ばれた1つを表し、それぞれ同じでも異なっていてもよい。v=0〜4の整数である。)
【0034】
また、上述の一般式(2)で示されるポリアミド系樹脂は、該ポリアミド系樹脂の末端
をアミノ基とし、該アミノ基をアルケニル基またはアルキニル基を少なくとも1個有する脂肪族基、または環式化合物基を含む酸無水物を用いてアミドとしてキャップすることが好ましい。これにより、保存性を向上することができる。
このような、アミノ基と反応した後のアルケニル基またはアルキニル基を少なくとも1個有する脂肪族基または環式化合物基を含む酸無水物に起因する基としては、例えば式(10)、式(11)で示される基等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上組み合わせて用いても良い。
【0035】
【化18】

【0036】
【化19】

これらの中で特に好ましいものとしては、式(12)で選ばれる基が好ましい。これにより、特に保存性を向上することができる。
【0037】
【化20】

【0038】
またこの方法に限定される事はなく、該ポリアミド系樹脂中に含まれる末端の酸をアルケニル基又はアルキニル基を少なくとも1個有する脂肪族基又は環式化合物基を含むアミ
ン誘導体を用いてアミドとしてキャップすることもできる。
【0039】
本発明に係る感光性ジアゾキノン化合物(B)は、例えば、フェノール化合物と1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホン酸または1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホン酸とのエステルが挙げられる。具体的には、式(13)〜式(16)に示すエステル化合物を挙げることができる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いても良い。
【0040】
【化21】

【0041】
【化22】

【0042】
【化23】

【0043】
【化24】

【0044】
【化25】

式中Qは、水素原子、式(17)、式(18)のいずれかから選ばれるものである。ここで各化合物のQのうち、少なくとも1つは式(17)、式(18)である。
【0045】
本発明に係る感光性ジアゾキノン化合物(B)の添加量は、アルカリ可溶性樹脂(A)100重量部に対して1〜50重量部が好ましい。より好ましくは10〜40重量部である。添加量が上記範囲内であるとすると、特に感度が優れる。
【0046】
本発明に係るケイ素化合物(C−1)は、下記一般式(1)で示される構造である。
【0047】
【化26】

(一般式(1)中、R1、R2は炭素数1〜10のアルキル基、R3は有機基、R4は炭素数1〜10のアルキレン基である。iは0〜2の整数である。)
【0048】
前記ケイ素化合物を適用することにより、塗膜と基板との密着性が向上する為、温湿度処理後のJIS D0202に準拠した密着性試験においてもパターンの剥離等は見られ
ない。
前記ケイ素化合物(C−1)のアルコキシシラン基が、基板と相互作用するのに対し、アルキロールアミノ基が、アルカリ可溶性樹脂(A)と相互作用するため、温湿度処理後においても基板との密着性が良好であると考えられる。
【0049】
前記ケイ素化合物を適用することにより、硬化膜の引っ張り伸度が向上する。また、添加量を増加させる事により、伸度はさらに向上する。
前期ケイ素化合物(C−1)のアルキロールアミノ基がアルカリ可溶性樹脂(A)に架橋するため、硬化膜の引っ張り伸度が向上すると考えられる。
【0050】
一般式(1)中のR1、R2は炭素数1〜10のアルキル基であり、特に限定されるものではないが、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、セカンダリーブチル基、ターシャリーブチル基、ペンチル基、へキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基等が挙げられ、その中でも、加水分解性に優れるメチル基、エチル基が好ましい。
【0051】
一般式(1)中のR3は有機基であり、特に限定されるものではないが、例えばメチレ
ン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、ターシャリブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、フェニレン基、ベンジレン基、フェネチレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基等が挙げられ、その中でも、溶媒溶解性に優れるエチレン基、プロピレン基が好ましい。
【0052】
一般式(1)中のR4は炭素数1〜10のアルキレン基であり、特に限定されるもので
はないが、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、セカンダリーブチレン基、ターシャリーブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、2−エチルヘキシレン基、ノニレン基、デシレン基等が挙げられ、その中でも、アルカリ可溶性樹脂との相互作用に優れるメチレン基、エチレン基が好ましい。
【0053】
一般式(1)中のiは0〜2の整数であるが、i=0の場合、基板との密着性がより優れるため好ましい。
【0054】
前記有機ケイ素化合物(C−1)の添加量は、特に限定されるものではないが、アルカリ可溶性樹脂(A)100重量部に対して、0.05〜50重量部であることが好ましく、0.1〜20重量部が特に好ましい。添加量が上記範囲内であると、基板との密着性とポジ型感光性樹脂組成物の保存性が両立する。
【0055】
一般式(1)で示されるケイ素化合物は、特に限定されるものではないが、例えば、ビ
ス(2−ヒドロキシメチル)−3−アミノメチルトリメトキシシラン、ビス(2−ヒドロキシメチル)−3−アミノエチルトリメトキシシラン、ビス(2−ヒドロキシメチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス(2−ヒドロキシメチル)−3−アミノフェニルトリメトキシシラン、ビス(2−ヒドロキシメチル)−3−アミノメチルトリエトキシシラン、ビス(2−ヒドロキシメチル)−3−アミノエチルトリエトキシシラン、ビス(2−ヒドロキシメチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、ビス(2−ヒドロキシメチル)−3−アミノフェニルトリエトキシシラン、ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノメチルトリメトキシシラン、ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノメチルトリメトキシシラン、ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノエチルトリメトキシシラン、ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノフェニルトリメトキシシラン、ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノメチルトリエトキシシラン、ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノエチルトリエトキシシラン、ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノフェニルトリエトキシシラン等が挙げられ、その中でも、基板との密着性や保存安定性に優れるビス(2−ヒドロキシメチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、ビス(2−ヒドロキシメチル)−3−アミノプロピルトリメトキシしラン、ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランが好ましい。これらは単独でも2種以上混合して用いても良い。
【0056】
さらに本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、高感度で更にパターニング時のスカムを改善する目的で、フェノール性水酸基を有する化合物を併用することができる。
【0057】
具体的な構造としては、式(19)で表されるものが挙げられる。これらは1種類又は2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0058】
【化27】

【0059】
前記フェノール性水酸基を有する化合物の含有量は、特に限定されないが、アルカリ可溶性樹脂(A)100重量部に対して、1〜30重量部が好ましく、より好ましくは1〜20重量部である。添加量が、上記範囲内であると現像時において更にスカムの発生が抑制され、また露光部の溶解性が促進されることにより感度が向上する。
【0060】
本発明における樹脂組成物およびポジ型感光性樹脂組成物には、必要によりアクリル系、シリコーン系、フッ素系、ビニル系等のレベリング剤、あるいは一般式(1)で示される化合物以外のシランカップリング剤等の添加剤等を含んでも良い。
【0061】
前記シランカップリング剤としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、さらに、アミノ基を有するケイ素化合物と酸二無水物又は酸無水物とを反応することにより得られるシランカップリング剤等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
前記アミノ基を有するケイ素化合物としては、特に制限されるわけではないが、例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)―3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0063】
前記酸無水物としては、特に制限されるわけではないが、例えば、無水マレイン酸、クロロ無水マレイン酸、シアノ無水マレイン酸、シトコン酸、無水フタル酸等などが挙げられる。また、使用にあたっては単独、又は2種類以上を併用して使用することができる。
【0064】
前記酸二無水物としては、特に制限されるわけではないが、例えば、ピロメリット酸二無水物、ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ベ
ンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3',4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−1,2,6,7−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,7−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−テトラクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−テトラクロロナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'−ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3',4'−ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3", 4,4"−p−テルフェニルテトラカルボン酸二無水物, 2,2", 3,3"−p−テルフェニルテトラカルボン酸二無水物, 2,3,3",4"−p−テルフェニルテト
ラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−プロパン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボ
キシフェニル)エタン二無水物、ペリレン−2,3,8,9−テトラカルボン酸二無水物、ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ペリレン−4,5,10,11−テトラカルボン酸二無水物、ペリレン−5,6,11,12−テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン−1,2,7,8−テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン−1,2,6,7,8−テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン−1,2,9,10
−テトラカルボン酸二無水物、ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、チオフェン−2,3,4,5,−テトラカルボン酸二無水物、4,4'−ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸
二無水物等などが挙げられる。また、使用にあたっては単独、又は2種類以上を併用して使用することができる。
【0065】
前記アミノ基を有するケイ素化合物と酸二無水物又は酸無水物とを反応することにより得られるシランカップリング剤としては、ポジ型感光性樹脂組成物の保存性と現像時、あるいは加熱処理後のシリコンウエハー等の基板に対する密着性が両立する、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物と3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3,3', 4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物と3−アミノプロピルトリエトキシシラン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物と3−アミノプロピルトリエトキシシラン、無水マレイン酸と3−アミノプロピルトリエトキシシランの組合せが好ましい。
【0066】
本発明においては、これらの成分を溶剤に溶解し、ワニス状にして使用する。溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メチル−1,3−ブチレングリコールアセテート、1,3−ブチレングリコール−3−モノメチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メチル−3−メトキシプロピオネート等が挙げられ、単独でも混合して用いても良い。
【0067】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物の使用方法は、まず該組成物を適当な支持体(基板)、例えば、シリコンウエハー、セラミック基板、アルミ基板等に塗布する。塗布量は、半導体素子上に塗布する場合、硬化後の最終膜厚が0.1〜30μmになるよう塗布する。膜厚が下限値を下回ると、半導体素子の保護表面膜としての機能を十分に発揮することが困難となり、上限値を越えると、微細な加工パターンを得ることが困難となるばかりでなく、加工に時間がかかりスループットが低下する。塗布方法としては、スピンナーを用いた回転塗布、スプレーコーターを用いた噴霧塗布、浸漬、印刷、ロールコーティング等がある。次に、60〜130℃でプリベークして塗膜を乾燥後、所望のパターン形状に化学線を照射する。化学線としては、X線、電子線、紫外線、可視光線等が使用できるが、200〜500nmの波長のものが好ましい。
【0068】
次に照射部を現像液で溶解除去することによりレリーフパターンを得る。現像液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n−プロピルアミン等の第1アミン類、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン等の第2アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第3アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の第4級アンモニウム塩等のアルカリ類の水溶液、及びこれにメタノール、エタノールのごときアルコール類等の水溶性有機溶媒や界面活性剤を適当量添加した水溶液を好適に使用することができる。現像方法としては、スプレー
、パドル、浸漬、超音波等の方式が可能である。
【0069】
次に、現像によって形成したレリーフパターンをリンスする。リンス液としては、蒸留水を使用する。次に加熱処理を行い、オキサゾール環、イミド環、又はオキサゾール環及びイミド環を形成し、耐熱性に富む最終パターンを得る。
加熱処理温度は、180℃〜380℃が好ましく、より好ましくは200℃〜350℃である。ここで行う加熱処理が前述した熱処理工程のことである。
【0070】
次に、本発明によるポジ型感光性樹脂組成物の硬化膜について説明する。ポジ型感光性樹脂組成物の硬化物である硬化膜は、半導体素子等の半導体装置用途のみならず、TFT型液晶や有機EL等の表示体装置用途、多層回路の層間絶縁膜やフレキシブル銅張板のカバーコート、ソルダーレジスト膜や液晶配向膜としても有用である。
【0071】
半導体装置用途の例としては、半導体素子上に上述のポジ型感光性樹脂組成物の硬化膜を形成してなるパッシベーション膜、パッシベーション膜上に上述のポジ型感光性樹脂組成物の硬化膜を形成してなるバッファーコート膜等の保護膜、また、半導体素子上に形成された回路上に上述のポジ型感光性樹脂組成物の硬化膜を形成してなる層間絶縁膜等の絶縁膜、また、α線遮断膜、平坦化膜、突起(樹脂ポスト)、隔壁等を挙げることができる。
【0072】
表示体装置用途の例としては、表示体素子上に上述のポジ型感光性樹脂組成物の硬化膜を形成してなる保護膜、TFT素子やカラーフィルター用等の絶縁膜または平坦化膜、MVA型液晶表示装置用等の突起、有機EL素子陰極用等の隔壁等を挙げることができる。その使用方法は、半導体装置用途に準じ、表示体素子やカラーフィルターを形成した基板上にパターン化されたポジ型感光性樹脂組成物層を、上記の方法で形成することによるものである。表示体装置用途の、特に絶縁膜や平坦化膜用途では、高い透明性が要求されるが、このポジ型感光性樹脂組成物層の硬化前に、後露光工程を導入することにより、透明性に優れた樹脂層が得られることもでき、実用上更に好ましい。
【実施例】
【0073】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
≪実施例1≫
[アルカリ可溶性樹脂(A−1)の合成]
ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸0.900モルと1−ヒドロキシ−1,2,3−ベンゾトリアゾール1.800モルとを反応させて得られたジカルボン酸誘導体(活性エステル)443.21g(0.900モル)とヘキサフルオロ−2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン366.26g(1.000モル)とを温度計、攪拌機、原料投入口、乾燥窒素ガス導入管を備えた4つ口のセパラブルフラスコに入れ、N−メチル−2−ピロリドン3200gを加えて溶解させた。その後オイルバスを用いて75℃にて12時間反応させた。
次にN−メチル−2−ピロリドン100gに溶解させた5−ノルボルネン−2、3−ジカルボン酸無水物32.8g(0.200モル)を加え、更に12時間攪拌して反応を終了した。反応混合物を濾過した後、反応混合物を水/イソプロパノール=3/1(体積比)の溶液に投入、沈殿物を濾集し水で充分洗浄した後、真空下で乾燥し、目的の式(A−1)で示されるアルカリ可溶性樹脂を得た。
【0074】
[感光性ジアゾキノン化合物の合成]
式(Q−1)で示されるフェノール15.82g(0.025モル)と、トリエチルアミン8.40g(0.083モル)とを温度計、攪拌機、原料投入口、乾燥窒素ガス導入管を備えた4つ口のセパラブルフラスコに入れ、テトラヒドロフラン135gを加えて溶
解させた。この反応溶液を10℃以下に冷却した後に、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホニルクロライド22.30g(0.083モル)をテトラヒドロフラン100gと共に10℃以上にならないように徐々に滴下した。その後10℃以下で5分攪拌した後、室温で5時間攪拌して反応を終了させた。反応混合物を濾過した後、反応混合物を水/メタノール=3/1(体積比)の溶液に投入、沈殿物を濾集し水で充分洗浄した後、真空下で乾燥し、式(B−1)で示される感光性ジアゾキノン化合物を得た。
【0075】
[ポジ型感光性樹脂組成物の作製]
合成した式(A−1)で示されるアルカリ可溶性樹脂100g、式(B−1)の構造を有する感光性ジアゾキノン化合物15g、下記式(C−1)の構造を有するケイ素化合物10gを、γ―ブチロラクトン150gに溶解した後、孔径0.2μmのテフロン(登録商標)製フィルターで濾過しポジ型感光性樹脂組成物を得た。
【0076】
[温湿度処理後の密着性評価]
上記ポジ型感光性樹脂組成物をシリコンウエハー上にスピンコーターを用いて塗布した後、ホットプレートにて120℃で4分プリベークし、膜厚約8.0μmの塗膜を得た。
次にクリーンオーブンを用いて酸素濃度1,000ppm以下で、150℃/30分+320℃/30分で加熱硬化を行い、硬化膜を得た。この硬化膜に、JIS K5400
に準拠してカッターナイフにて1×1(mm)サイズの正方形が縦横10列づつ計100個の碁盤目を作製した。このサンプルをプレッシャークッカー(温湿度処理)試験;125℃、100%、0.2MPaの条件下24時間連続処理した後、JIS D0202に
準拠して評価した。その結果、剥れた碁盤目の数は0個であった。碁盤目100個のうち1個でも剥れると実用上問題であることを考えると、温湿度処理後も良好な密着性を示すことが確認された。
【0077】
[硬化膜の引っ張り伸度の測定]
上記ポジ型感光性樹脂組成物を6インチのシリコンウェハー上に硬化膜の膜厚が約10.0μmとなるように塗布し、120℃/4分でプリベークを行った。
次にクリーンオーブンで酸素濃度を1,000ppm以下で、150℃/30分+320℃/30分で加熱硬化を行い、硬化膜を得た。この硬化膜の付いたウェハーをダイシングソーを用いて、10mmの短冊状にカットした後、2%のHF水溶液(フッ酸)に浸漬させることによって、ウェハーから硬化膜を剥離し、乾燥機にて60℃/8時間で剥離し硬化膜を乾燥させ、引張り伸度測定用フィルムを得た。
次に、フィルムを引っ張り試験器にて引っ張り伸度を測定(引張り速度:0.5mm/min)したところ、45%と良好であった。また、引っ張り伸度は下記式より求めた。
引っ張り伸度(%)={(破断時のフィルムの長さ−測定開始前のフィルムの長さ)/(測定開始前のフィルムの長さ)}×100
【0078】
≪実施例2≫
下記式(C−1)の構造を有するケイ素化合物10g添加する代わりに1g添加した以外は実施例1と同様にポジ型感光性樹脂組成物を作製し、評価を行った。
【0079】
≪比較例1≫
下記式(C−1)の構造を有するケイ素化合物の代わりに、下記式(C−2)の構造を有するケイ素化合物を10g添加した以外は実施例1と同様にポジ型感光性樹脂組成物を作製し、評価を行った。
【0080】
≪比較例2≫
下記式(C−1)の構造を有するケイ素化合物の代わりに、下記式(C−3)の構造を有するケイ素化合物を10g添加した以外は実施例1と同様にポジ型感光性樹脂組成物を
作製し、評価を行った。
【0081】
≪比較例3≫
下記式(C−1)の構造を有するケイ素化合物を添加しない以外は実施例1と同様にポジ型感光性樹脂組成物を作製し、評価を行った。
以下に、実施例及び比較例の(Q−1)、(B−1)、(C−1)、(C−2)、(C−3)の構造、及び表1を示す。ここで、表1中のアルカリ可溶性樹脂、及びケイ素化合物の数字は添加重量部を示す。
【0082】
【化28】

【0083】
【化29】

【0084】
表1に示すように、実施例1、及び2は,温湿度処理後の密着評価において剥れは見られず、密着性が良好であり、引っ張り伸度も良好であることが分かる。
【0085】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物の硬化膜は、温湿度処理後の基板との密着性に優れるため、半導体素子、表示素子の表面保護膜、層間絶縁膜等に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ可溶性樹脂(A)と、
感光性ジアゾキノン化合物(B)と、
一般式(1)で示されるケイ素化合物(C−1)と、
を含むことを特徴とするポジ型感光性樹脂組成物。
【化1】

(一般式(1)中、R1、R2は炭素数1〜10のアルキル基、R3は有機基、R4は炭素数1〜10のアルキレン基である。iは0〜2の整数である。)
【請求項2】
前記アルカリ可溶性樹脂(A)が一般式(2)で示される繰り返し単位を有するポリアミド系樹脂を含むものである、請求項1に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【化2】

(式中、X、Yは有機基である。R5は水酸基、−O−R7、アルキル基、アシルオキシ基、シクロアルキル基であり、同一でも異なっても良い。R6は水酸基、カルボキシル基、
−O−R7、−COO−R7のいずれかであり、同一でも異なっても良い。mは0〜8の整数、nは0〜8の整数である。R7は炭素数1〜15の有機基である。ここで、R5が複数ある場合は、それぞれ異なっていても同じでもよい。R5として水酸基がない場合は、R6は少なくとも1つはカルボキシル基でなければならない。また、R6としてカルボキシル
基がない場合、R5は少なくとも1つは水酸基でなければならない。)
【請求項3】
前記一般式(2)で示される繰り返し単位を有するポリアミド系樹脂のXが、下記式(3)からなる群より選択される1種以上を含み、かつ、Yが下記式(4)からなる群より選択される1種以上を含む、請求項2に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【化3】

(ここで*はNH基に結合することを示す。式(3−6)中のDは、−CH2−、−CH
(CH3)−、−C(CH32−、−O−、−S−、−SO2−、−CO−、−NHCO−、−C(CF32−、又は単結合である。R8は、アルキル基、アルコキシ基、アシルオ
キシ基、シクロアルキル基のいずれかであり、同一でも異なっても良い。s=1〜3の整数である。)
【化4】

(ここで*はC=O基に結合することを示す。R9 は、アルキル基、アルキルエステル基、アルキルエーテル基、ベンジルエーテル基、ハロゲン原子の内から選ばれた1つを表し、それぞれ同じでも異なっていてもよい。v=0〜4の整数である。)
【請求項4】
前記一般式(2)で示されるケイ素化合物(C−1)のiが0である、請求項1ないし3のいずれかに記載のポジ型感光性組成物。
【請求項5】
前記一般式(2)で示されるケイ素化合物(C−1)のR1がメチル基またはエチル基で
ある、請求項1ないし4のいずれかに記載のポジ型感光性組成物。
【請求項6】
前記一般式(2)で示されるケイ素化合物(C−1)のR4がメチレン基またはエチレン
基である、請求項1ないし5のいずれかに記載のポジ型感光性組成物。
【請求項7】
前記アルカリ可溶性樹脂(A)100重量部に対して、一般式(1)で示されるケイ素化合物(C−1)を0.1〜20重量部含むものである、請求項1ないし6のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物の硬化物で構成されていることを特徴とする硬化膜。
【請求項9】
請求項8に記載の硬化膜で構成されていることを特徴とする保護膜。
【請求項10】
請求項8に記載の硬化膜で構成されていることを特徴とする絶縁膜。
【請求項11】
請求項8に記載の硬化膜を有していることを特徴とする半導体装置。
【請求項12】
請求項8に記載の硬化膜を有していることを特徴とする表示体装置。

【公開番号】特開2009−175651(P2009−175651A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−94632(P2008−94632)
【出願日】平成20年4月1日(2008.4.1)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】