説明

ポリアミド絡合体及びその製造方法

【課題】本発明は、厳密な温度制御及び溶解度制御、取り扱いが困難な溶媒等を必須としない簡便なポリアミド絡合体の製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明のポリアミド絡合体の製造方法は、下記一般式(1):



で表される構成単位を含むポリアミドを合成する方法であって、
(a)4,4’−ビフェニルジカルボニルクロライドを含む第一溶液と、ビストリフルオロメチルベンジジンを含む第二溶液とをそれぞれ調製する第一工程、及び
(b)第一溶液及び第二溶液のいずれの溶媒にも可溶である溶媒の存在下に、第一溶液と第二溶液とを混合し、混合溶液からポリアミド絡合体を析出させる第二工程、
を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なポリアミド絡合体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミドは、耐熱性、耐薬品性、機械的特性等に優れた材料であり、電子・電気部品、自動車、医療等の用途のほか、金属又はセラミックスの代替材料として幅広く利用されている。
【0003】
ポリアミド絡合体及び微粒子などの製造方法としては、予め重合されたナイロン6、ナイロン66、ナイロン12等(ポリマー)を蟻酸、クレゾール等の良溶媒等に溶かし、その後貧溶媒である蒸留水、メタノール、アセトン等を添加し、厳密な温度制御の下、溶解性などを調整しながら目的物を析出させる方法等が提案されている。
【0004】
しかしながら、このような方法では、ポリマーを重合する過程と、そのポリマーから目的物を調製する過程の2段階が必要となる。特に後者の過程においては、温度等の調整条件を厳密に制御する必要があり、その工程が煩雑であるという問題がある。また、これらの方法では、ポリアミドを溶媒に溶解させる必要がある。しかしながら、ポリアミドは耐薬品性が高いため、蟻酸,硫酸等のごく一部の有機溶媒にしか溶解せず、取り扱いが困難であるという問題が生じている。
【特許文献1】特開2001−113143号公報
【特許文献2】特開2002−226598号公報
【特許文献3】特開2002−327084号公報
【特許文献4】特開2003−2988号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明は、厳密な温度制御及び溶解度制御、取り扱いが困難な溶媒等を必須としない簡便なポリアミド絡合体の製造方法を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記問題点に鑑み、鋭意研究を重ねた結果,特定の化合物を原料及び特定の工程を採用することによって、上記目的を達成できることを見出し、ついに本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、下記のポリアミド絡合体及びその製造方法に係るものである。
【0007】
項1.下記一般式(1):
【0008】
【化1】

【0009】
で表される構成単位を含むポリアミドを合成する方法であって、
(a)4,4’−ビフェニルジカルボニルクロライドを含む第一溶液と、ビストリフルオロメチルベンジジンを含む第二溶液とをそれぞれ調製する第一工程、及び
(b)第一溶液及び第二溶液のいずれの溶媒にも可溶である溶媒の存在下に、第一溶液と第二溶液とを混合し、混合溶液からポリアミド絡合体を析出させる第二工程、
を含むことを特徴とするポリアミド絡合体の製造方法。
【0010】
項2.第二溶液が、さらに機能性基を有するジアミン化合物を含む、上記項1に記載の製造方法。
【0011】
項3.第一溶液における溶媒が、ジオキサン及びアセトンの少なくとも1種を含む、上記項1又は2に記載の方法。
【0012】
項4.第二溶液における溶媒が、ジオキサン及びアセトンの少なくとも1種を含む、上記項1又は2に記載の方法。
【0013】
項5.第一溶液及び第二溶液のいずれの溶媒にも可溶である溶媒が、水及び水酸基を有する溶媒の少なくとも1種である、上記項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【0014】
項6.水酸基を有する溶媒が、炭素数1〜10のアルコールの少なくとも1種を含む、上記項5に記載の製造方法。
【0015】
項7.第二工程を超音波による撹拌下で行う、上記項1〜6のいずれかに記載の方法。
【0016】
項8.請求項1〜7のいずれかに記載の方法により得ることができるポリアミド絡合体であって、
(1)前記ポリアミド絡合体は、繊維状ポリアミドが互いに絡み合った外観を呈し、
(2)少なくとも一部の繊維状ポリアミドどうしの接点で両者が接合している、
ことを特徴とするポリアミド絡合体。
【0017】
項9.嵩密度が0.3g/cm〜1.35g/cmである、上記項8に記載のポリアミド絡合体。
【0018】
項10.一般式(1)の構成単位を50〜100(モル)%含む、上記項8又は9に記載のポリアミド絡合体。
【0019】
項11.前記繊維状ポリアミドの平均繊維径が0.005μm〜0.5μmである、上記項8〜10のいずれかに記載のポリアミド絡合体。
【0020】
本発明のポリアミド絡合体の製造方法は、
下記一般式(1):
【0021】
【化2】

【0022】
で表される構成単位を含むポリアミドを合成する方法であって、
(a)4,4’−ビフェニルジカルボニルクロライドを含む第一溶液と、ビストリフルオロメチルベンジジンを含む第二溶液とをそれぞれ調製する第一工程、及び
(b)第一溶液及び第二溶液のいずれの溶媒にも可溶である溶媒の存在下に、第一溶液と第二溶液とを混合し、混合溶液からポリアミド絡合体を析出させる第二工程、
を含むことを特徴とする。
【0023】
以下、本発明の製造方法を、各工程ごとに詳細に説明する。
【0024】
(1)第一工程
本発明では、4,4’−ビフェニルジカルボニルクロライド及びビストリフルオロメチルベンジジンを原料として用いる。まず、第一工程として、4,4’−ビフェニルジカルボニルクロライドを含む第一溶液と、ビストリフルオロメチルベンジジンを含む第二溶液とをそれぞれ調製する。すなわち、本発明では、4,4’−ビフェニルジカルボニルクロライドとビストリフルオロメチルベンジジンとは、それぞれ別個の溶液として調製しておくことを必須とする。
【0025】
(イ)第一溶液
第一溶液は、4,4’−ビフェニルジカルボニルクロライド(以下、「BDC」とも略記する。)を必須成分(主成分)として含有する。
【0026】
第一溶液は、BDC以外の酸クロライドを含んでいてもよい。そのような併用する酸クロライドとしては、従来のポリアミド合成で用いられているものと同様のものが使用できる。併用する酸クロライドとしては、ジクロライドのほか、トリクロライド、テトラクロライド等が挙げられるが、一般的にはジクロライドを好適に用いることができる。例えば、シュウ酸ジクロライド、マロン酸ジクロライド、コハク酸ジクロライド、フマル酸ジクロライド、グルタル酸ジクロライド、アジピン酸ジクロライド、ムコン酸ジクロライド、セバシン酸ジクロライド、ノナン酸ジクロライド、ウンデカン酸ジクロライド等の脂肪族ジカルボン酸ジクロライド;1,2−シクロプロパンジカルボン酸ジクロライド、1,3−シクロブタンジカルボン酸ジクロライド、1,3−シクロペンタンジカルボン酸ジクロライド、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロライド、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロライド等の脂環族ジカルボン酸ジクロライド;フタル酸ジクロライド、イソフタル酸ジクロライド、テレフタル酸ジクロライド、4―メチルフタル酸ジクロライド、1,4−ナフタレンジカルボン酸ジクロライド、1,5−(9−オキソフルオレン)ジカルボン酸ジクロライド、1,4−アントラセンジカルボン酸ジクロライド、1,4−アントラキノンジカルボン酸ジクロライド、2,5−ビフェニルジカルボン酸ジクロライド、1,5−ビフェニレンジカルボン酸ジクロライド、4,4'−メチレン二安息香酸ジクロライド、4,4’−イソプロピリデン二安息香酸ジクロライド、4,4'−ビベンジルジカルボン酸ジクロライド、4,4’−スチルベンジカルボン酸ジクロライド、4,4’−トランジカルボン酸ジクロライド、4,4’−カルボニル二安息香酸ジクロライド、4,4’−オキシ二安息香酸ジクロライド、4,4’−スルホニル二安息香酸ジクロライド、4,4’−ジチオ二安息香酸ジクロライド、p−フェニレン二酢酸ジクロライド、3,3’−p−フェニレンジプロピオン酸ジクロライド等の芳香族ジカルボン酸ジクロライドを挙げることができる。これら酸クロライドは、1種又は2種以上を用いることができる。
【0027】
機能性基を有する酸クロライドを併用することもできる。機能性基としては、例えば、水酸基(−OH)、カルボキシル基(−COOH)、アミノ基(−NH2)、アルケン類(−CH=CH−)、アルキン類(−C≡C−)、ビニルエーテル類(−CH=CH−O−)、アミド基(−CONH2)、ニトリル基(−C≡N)、イソシアネート基(−N=C=O)、ニトロ基(−NO2)、スルホン基(−SO3H)、チオール基(−SH)、クラウンエーテル基等の官能基のほか、−CF3基、−CCl3基、−CBr3等を挙げることができる。なお、原料として併用されるアミン化合物及び酸クロライドにあっては、それぞれ−NH2基及び−COCl基を有しているが、最終的に得られる絡合体表面上にそれらの基が存在する場合には、本発明の機能性基に包含される。
【0028】
機能性基を有する酸クロライドの具体例としては、4,4’−(2,2−ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸ジクロライド)、4−ニトロフタル酸ジクロライド、3−ニトロフタル酸ジクロライド、テトラクロロフタル酸ジクロライド等を挙げることができる。
【0029】
第一溶液で用いる溶媒は、実質的にBDCが溶解(他の酸クロライドを併用する場合は当該他の酸クロライドも溶解)し、かつ、生成する一般式(1)で表される構成単位を含むポリアミドが溶解しないものであれば特に制限されない。例えば、アセトン、ジオキサン、アセチルアセトン、メチルエチルケトン、酢酸メチル等の、水又は水酸基を有するような溶媒に可溶な溶媒が挙げられ、これらの少なくとも1種を含む溶媒を使用することができる。第一溶液においては、これらの中でも、ジオキサン、及びアセトンの少なくとも1種を含む溶媒が好ましい。なお、用いる酸クロライドの種類によって、ジオキサン等の溶媒にすぐ溶解しない場合があるが、このような場合には水又は水酸基を有するような溶媒に予め溶解させた後にジオキサン等に溶解させれば良い。
【0030】
第一溶液におけるBDCの濃度は、併用する酸クロライドの使用量及び種類、第二溶液の濃度等に応じて適宜設定すれば良いが、通常は0.005〜1モル/リットル程度、好ましくは0.01〜0.5モル/リットル程度とする。第一溶液におけるBDCの濃度がかかる範囲内であると、生成するポリアミド絡合体の繊維間の凝集及び合一を制御できる。
【0031】
他の酸クロライドと併用する場合は、BDC及び併用する酸クロライドの総量に対するBDCの含有量(モル比)は、通常60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上である。この範囲とすることにより、生成するポリアミドを繊維状(ポリアミド絡合体)とすることができる。
【0032】
(ロ) 第二溶液
第二溶液は、ビストリフルオロメチルベンジジン(以下、「BTMB」とも略記する。)を必須成分(主成分)として含有する。
【0033】
本発明で使用するビストリフルオロメチルベンジジンは、トリフルオロメチル基がベンゼン環に結合している位置は限定的でなく、例えば、2,2’−ビストリフルオロメチルベンジジン、3,3’−ビストリフルオロメチルベンジジン、2,3’−ビストリフルオロメチルベンジジン等のいずれであってもよい。特に、2,2’−ビストリフルオロメチルベンジジンを用いると、より均一な繊維径を有するポリアミド絡合体が得られるので好ましい。
【0034】
第二溶液は、BTMB以外のジアミン化合物を含んでいてもよい。そのようなジアミン化合物としては、従来のポリアミド合成で用いられているものと同様のものが使用できる。例えば、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルケトン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、1,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3’−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,3'−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、2,6’−ジアミノトルエン、2,4−ジアミノクロロベンゼン、4,4’−ジアミノオクタフルオロビフェニル、1,2−ジアミノアントラキノン、1,4−ジアミノアントラキノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノビベンジル、R(+)−2,2’−ジアミノ−1,1’−ビナフタレン、S(+)−2,2’−ジアミノ−1,1’−ビナフタレン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)アルカン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)アルカン、1,5−ビス(4−アミノフェノキシ)アルカン等の1,n−ビス(4−アミノフェノキシ)アルカン(nは、3〜10)、1,2−ビス[2−(4−アミノフェノキシ)エトキシ]エタン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、4,4’−ジアミノベンズアニリド等の芳香族ジアミン;1,2−ジアミノメタン、1,4−ジアミノブタン、テトラメチレンジアミン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,8−ジアミノオクタン、1,10−ジアミノドデカン、1,11−ジアミノウンデカン等の脂肪族ジアミン;1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン等の脂環族ジアミンのほか、3,4−ジアミノピリジン、1,4−ジアミノ−2−ブタノン等を使用することができる。これらは、1種又は2種以上を用いることができる。
【0035】
また、本発明では、ジアミン化合物のほかに、他のアミン系化合物(モノアミン化合物、多価アミン化合物等)も用いることができる。これらにより、得られるポリアミド絡合体の特性を変えることができる。
【0036】
また、本発明では、併用するジアミン化合物の中でも、機能性基を有するジアミン化合物を用いることができる。機能性基を有するジアミン化合物としては、前記ジアミン化合物であって、前記で挙げた機能性基を有するものを使用することができる。例えば、1,3−ジアミノ−2−プロピルアルコール、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、3,5−ジアミノ安息香酸、3,4−ジアミノ安息香酸、2,4,6−トリアミノピリミジン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,4−ジアミノ−6−ヒドロキシピリミジン、3,5−ジアミノベンゾトリフルオライド、3,4−ジアミノベンゾトリフルオライド、4,4’−ジアミノビフェニル−2,2’−ジスルホン酸、4,4’−ジアミノビフェニル−3,3’−ジスルホン酸等を用いることができる。
【0037】
第二溶液で用いる溶媒は、実質的にBTMBが溶解(他のジアミン化合物を併用する場合は当該他のジアミン化合物も溶解)し、かつ、生成する一般式(1)の構成単位を含むポリアミド絡合体が溶解しないものであれば特に制限されない。例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジオキサン、アセチルアセトン、酢酸メチル等の、水あるいは水酸基を有する溶媒に可溶な溶媒が挙げられ、これらの少なくとも1種を含む溶媒を使用できる。第二溶液においては、これらの中でも、ジオキサン及びアセトンの少なくとも1種を含む溶媒が好ましい。なお、用いるジアミン化合物の種類によって、ジオキサン等の溶媒にすぐ溶解しない場合があるが、このような場合には水又は水酸基を有するような溶媒に予め溶解させた後にジオキサン等に溶解させれば良い。
【0038】
また、第二溶液の溶媒は、第一溶液の溶媒と同一であっても良いし、互いに相溶性を有していれば異なっていても良い。
【0039】
第二溶液におけるBTMBの濃度は、併用するジアミン化合物の使用量及び種類、第一溶液の濃度等に応じて適宜設定すれば良いが、通常は0.005〜1モル/リットル程度、好ましくは0.01〜0.5モル/リットルとする。第二溶液におけるジアミン化合物の濃度がかかる範囲内であると、繊維間の凝集及び合一を制御できる。
【0040】
他のジアミン化合物と併用する場合は、BTMB及び併用するジアミン化合物の総量に対するBTMBの含有量(モル比)は、通常50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上である。この範囲とすることにより、生成するポリアミドを繊維状(ポリアミド絡合体)とすることができる。
【0041】
(2)第二工程
第二工程では、第一溶液と第二溶液とを混合し、両溶液のいずれの溶媒にも可溶である溶媒(以下、「可溶性溶媒」という場合がある)の存在下に反応を行い、混合溶液からポリアミド絡合体を析出させる。第一溶液と第二溶液との混合比率は、各溶液の濃度等によって適宜変更できるが、通常はBDC:BTMB=1:0.5〜1.5程度(モル比)、好ましくは1:0.65〜1.3となるような比率で混合すれば良い。
【0042】
可溶性溶媒としては、第一溶液と第二溶液の溶媒のいずれにも可溶である溶媒であれば特に制限されるものではないが、水及び水酸基を有する溶媒が好ましい。具体的には、水;炭素数1〜10程度のアルコール類、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等の炭素数1〜10程度の1価アルコール、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール等の炭素数2〜5程度の2価アルコール、1,2,3−プロパントリオール等の炭素数3〜6程度の3〜6価アルコール等が挙げられる。これらの中でも、可溶性溶媒としては、溶媒極性の点から水を用いるのが好ましい。なお、可溶性溶媒として水や水酸基を有する溶媒を用いる場合は、第一溶液と第二溶液の溶媒は、当然、これらに可溶な溶媒である。例えば、水を用いる場合は、第一溶液と第二溶液の溶媒として水と相溶性の高いジオキサン及びアセトンを用いるのが好ましい。
【0043】
可溶性溶媒は、第一溶液と第二溶液の混合直前に、第一溶液及び/又は第二溶液に加えれば良いが、第二溶液へ加えておくのが好ましい。
【0044】
可溶性溶媒の添加量は、併用する酸クロライド及びジアミン化合物の種類、第一溶液及び第二溶液の濃度、得られるポリアミド絡合体の所望の(平均)繊維径等に応じて適宜設定すれば良いが、通常は、第一溶液又は第二溶液100mlに対して1〜100ml程度、好ましくは1〜50ml程度である。
【0045】
可溶性溶媒を添加することによって、繊維状で熱分解温度が高いポリアミド絡合体を得ることが可能となる。
【0046】
第二工程では、特に撹拌しながらポリアミドを析出させることが好ましい。撹拌は、公知の撹拌方法(撹拌装置)によって実施することができる。本発明では、特に超音波によって撹拌することがより好ましい。超音波撹拌により、繊維径が均一で細いポリアミド絡合体が得られる。超音波による撹拌は、公知の超音波装置(例えば超音波洗浄器)及び操作条件をそのまま採用できる。超音波の周波数は、所望の繊維形状等に応じて適宜設定すれば良く、通常は28〜1000kHz程度、好ましくは28〜100kHz程度、より好ましくは28〜45kHz程度とすれば良い。
【0047】
第二工程における温度は、特に制限されず、通常0〜100℃程度、好ましくは0〜40℃程度とすれば良い。混合溶液を冷却し、反応速度を小さくした方が、繊維径が均一なポリアミド絡合体が得られるので、第二工程の温度は、室温(25℃)以下程度、特に0〜15℃程度がさらに好ましい。なお、撹拌はポリアミドの析出が実質的に完了するまで行えば良く、撹拌時間は、通常5〜60分間程度であるが、かかる範囲外となっても差し支えない。
【0048】
第二工程で沈殿生成したポリアミド絡合体は、遠心分離法等の公知の方法に従って固液分離して回収すれば良い。
【0049】
また、必要に応じて、得られたポリアミド絡合体の洗浄、成形、乾燥等を行えばよい。これら洗浄、成形、乾燥等の方法を適宜選択することにより、得られるポリアミド絡合体の嵩密度を適宜変更することが可能である。
【0050】
洗浄方法は、例えば、水;アセトン等の有機溶媒等を用いて公知の方法により行うことができる。
【0051】
成形方法は公知の方法で行えばよい。例えば、遠心分離等により得られたポリアミド絡合体(湿潤状態)を所望の型枠へ入れることにより、膜状、板状等に成形する方法;当該ポリアミド絡合体(湿潤状態)を水、有機溶媒(例えば、アセトン等)に再度浸漬させた後、当該水(又は有機溶媒)を用いてスピンコートを行うことにより、膜状等に成形する方法等が挙げられる。
【0052】
乾燥方法は、例えば、自然乾燥、凍結乾燥、真空乾燥、加熱乾燥、熱風乾燥等の公知の方法により行うことができる。
【0053】
2.ポリアミド絡合体
本発明の製造方法によって得られるポリアミド絡合体は、
(1)前記ポリアミド絡合体は、繊維状ポリアミドが互いに絡み合った外観を呈し、
(2)少なくとも一部の繊維状ポリアミドどうしの接点で両者が接合している。
【0054】
本発明のポリアミド絡合体は、上記一般式(1)の構成単位(モル比)を50〜100%程度、好ましくは60〜100%程度、最も好ましくは70〜100%程度含む。
【0055】
本発明のポリアミド絡合体は、機能性基として、CF基を有しているため、耐熱性、耐薬品性、撥水性、耐候性等に優れる。
【0056】
また、本発明のポリアミド絡合体は、所望の機能を持たせるために、構成単位の一部に他のポリアミド等を含んでいても良い。
【0057】
繊維状ポリアミドの平均繊維径は、通常、0.005〜0.5μm程度、好ましくは0.01〜0.3μm程度、最も好ましくは0.015〜0.1μm程度である。
【0058】
本発明方法によるポリアミド絡合体は、一般には嵩密度が0.3〜1.35g/cm程度、好ましくは0.35〜1.2g/cm程度、最も好ましくは0.35〜1.15g/cm程度である。
【0059】
さらに、本発明方法によるポリアミド絡合体は、ガラス転移温度(Tg)を示すもの及びそれを示さないものの双方を包含する。
【発明の効果】
【0060】
本発明の製造方法によれば、特定の化合物を原料とし、かつ特定の工程を得ているため、厳密な温度制御及び溶解度制御を行わずに、ポリアミド絡合体を製造でき、またナノオーダーの繊維径を有するポリアミド絡合体も容易に製造できる。
【0061】
本発明の製造方法によれば、蟻酸、硫酸等の取り扱いが困難である溶媒を必須としないため、ポリアミド絡合体の工業的生産として適している。
【0062】
さらには、本発明の製造方法によれば、製造条件等を適宜変更することにより、製造できるポリアミド絡合体の嵩密度、当該絡合体を形成する繊維状ポリアミドの繊維径等を比較的容易に調節できる。
【0063】
本発明のポリアミド絡合体は、当該絡合体を構成する繊維状ポリアミド同士の接合が強固なものであり、絡合体として耐久性に優れている。
【0064】
従って、分離膜、電子材料、層間絶縁膜用材料、建材、プラスチックの改質材、医療用材料、食品用包装材等の多種多様の用途に好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0065】
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されない。
【0066】
実施例1
第一溶液として4,4’−ビフェニルジカルボニルクロライド 0.0005molをジオキサンに溶解させた50ml溶液(4,4’−ビフェニルジカルボニルクロライド / ジオキサン=0.0005mol / 50ml溶液という。以下同じ。)、第二溶液として2,2’−ビストリフルオロメチルベンジジン / ジオキサン=0.0005mol / 50ml溶液をそれぞれ調製し、両溶液を約12℃まで冷却した。その後、第二溶液である2,2’−ビストリフルオロメチルベンジジン/ジオキサン=0.0005mol / 50ml溶液には、イオン交換水5mlを加え攪拌した。次いで、両溶液を混合して周波数28kHzの超音波で60分間攪拌し、反応させることにより、ポリアミドを析出した。
【0067】
得られたポリアミドを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、ポリアミドが絡合体を形成していることを確認した。そのSEM写真を図1に示す。このポリアミド絡合体の平均繊維径は0.09μm、熱分解温度(Td(5wt% loss))は508℃であった。また、水・アセトンで洗浄後、得られたポリアミド絡合体をそのまま100℃で1晩真空加熱乾燥した時の嵩密度は、0.46g/cmであった。
【0068】
ポリアミド絡合体を再度アセトンに浸漬し、超音波照射したところ、当該ポリアミド絡合体の各繊維状ポリアミドの接合は分離されなかった。これにより絡合体を構成する繊維状ポリアミド同士の接合は強固なものであることが分かる。
【0069】
実施例2
第一溶液として4,4’−ビフェニルジカルボニルクロライド 0.0005molをジオキサンに溶解させた50ml溶液(4,4’−ビフェニルジカルボニルクロライド / ジオキサン=0.0005mol / 50ml溶液という。以下同じ。)、第二溶液として2,2’−ビストリフルオロメチルベンジジン / ジオキサン=0.0005mol / 50ml溶液をそれぞれ調製し、両溶液を約12℃まで冷却した。その後、第二溶液である2,2’−ビストリフルオロメチルベンジジン / ジオキサン=0.0005mol / 50ml溶液には、イオン交換水10mlを加え攪拌した。次いで、両溶液を混合して周波数28kHzの超音波で60分間攪拌し、反応させることにより、ポリアミドを析出した。
【0070】
得られたポリアミドを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、ポリアミドが絡合体を形成していることを確認した。そのSEM写真を図2に示す。このポリアミド絡合体の平均繊維径は0.05μm、熱分解温度(Td(5wt% loss))は512℃であった。また、水・アセトンで洗浄後、得られたポリアミド絡合体をそのまま100℃で1晩真空加熱乾燥した時の嵩密度は、1.04g/cmであった。
【0071】
ポリアミド絡合体を再度アセトンに浸漬し、超音波照射したところ、当該ポリアミド絡合体の各繊維状ポリアミドの接合は分離されなかった。これにより絡合体を構成する繊維状ポリアミド同士の接合は強固なものであることが分かる。
【0072】
実施例3
第一溶液として4,4’−ビフェニルジカルボニルクロライド 0.0005molをジオキサンに溶解させた50ml溶液(4,4’−ビフェニルジカルボニルクロライド / ジオキサン=0.0005mol / 50ml溶液という。以下同じ。)、第二溶液として2,2’−ビストリフルオロメチルベンジジン / ジオキサン=0.0005mol / 50ml溶液をそれぞれ調製し、両溶液を約12℃まで冷却した。その後、第二溶液である2,2’−ビストリフルオロメチルベンジジン / ジオキサン=0.0005mol / 50ml溶液には、イオン交換水10mlを加え攪拌した。次いで、両溶液を混合して周波数45kHzの超音波で60分間攪拌し、反応させることにより、ポリアミドを析出した。
【0073】
得られたポリアミドを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、ポリアミドが絡合体を形成していることを確認した。そのSEM写真を図3に示す。このポリアミド絡合体の平均繊維径は0.04μm、熱分解温度(Td(5wt% loss))は495℃であった。また、水・アセトンで洗浄後、得られたポリアミド絡合体をそのまま100℃で1晩真空加熱乾燥した時の嵩密度は、0.82g/cmであった。
【0074】
ポリアミド絡合体を再度アセトンに浸漬し、超音波照射したところ、当該ポリアミド絡合体の各繊維状ポリアミドの接合は分離されなかった。これにより絡合体を構成する繊維状ポリアミド同士の接合は強固なものであることが分かる。
【0075】
実施例4
第一溶液として4,4’−ビフェニルジカルボニルクロライド 0.001molをジオキサンに溶解させた50ml溶液(4,4’−ビフェニルジカルボニルクロライド / ジオキサン=0.001mol / 50ml溶液という。以下同じ。)、第二溶液として2,2’−ビストリフルオロメチルベンジジン / ジオキサン=0.001mol / 50ml溶液をそれぞれ調製し、両溶液を約12℃まで冷却した。その後、第二溶液である2,2’−ビストリフルオロメチルベンジジン / ジオキサン=0.0005mol / 50ml溶液には、イオン交換水5mlを加え攪拌した。次いで、両溶液を混合して周波数28kHzの超音波で60分間攪拌し、反応させることにより、ポリアミドを析出した。
【0076】
得られたポリアミドを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、ポリアミドが絡合体を形成していることを確認した。そのSEM写真を図4に示す。このポリアミド絡合体の平均繊維径は0.06μm、熱分解温度(Td(5wt% loss))は491℃であった。また、水・アセトンで洗浄後、得られたポリアミド絡合体をそのまま100℃で1晩真空加熱乾燥した時の嵩密度は、0.56g/cmであった。
【0077】
ポリアミド絡合体を再度アセトンに浸漬し、超音波照射したところ、当該ポリアミド絡合体の各繊維状ポリアミドの接合は分離されなかった。これにより絡合体を構成する繊維状ポリアミド同士の接合は強固なものであることが分かる。
【0078】
実施例5
第一溶液として4,4’−ビフェニルジカルボニルクロライド 0.00045molおよびイソフタル酸クロライド0.00005molをジオキサンに順次溶解させた50ml溶液(4,4’−ビフェニルジカルボニルクロライド+イソフタル酸クロライド / ジオキサン=0.00045mol+0.00005mol / 50ml溶液という。以下同じ。)、第二溶液として2,2’−ビストリフルオロメチルベンジジン 0.0005molをジオキサンに溶解させた50ml溶液(2,2’−ビストリフルオロメチルベンジジン / ジオキサン=0.0005mol / 50ml溶液という。以下同じ。)をそれぞれ調製し、約12℃まで冷却した。その後、第二溶液である2,2’−ビストリフルオロメチルベンジジン / ジオキサン=0.0005mol / 50ml溶液には、イオン交換水10mlを加え攪拌した。次いで、両溶液を混合して周波数28kHzの超音波で60分間攪拌し、反応させることにより、ポリアミドを析出した。
【0079】
得られたポリアミドを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、ポリアミドが絡合体を形成していることを確認した。そのSEM写真を図5に示す。このポリアミド絡合体の平均繊維径は0.02μm、熱分解温度(Td(5wt% loss))は452℃であった。また、水・アセトンで洗浄後、得られたポリアミド絡合体をそのまま100℃で1晩真空加熱乾燥した時の嵩密度は、0.78g/cmであった。
【0080】
ポリアミド絡合体を再度アセトンに浸漬し、超音波照射したところ、当該ポリアミド絡合体の各繊維状ポリアミドの接合は分離されなかった。これにより絡合体を構成する繊維状ポリアミド同士の接合は強固なものであることが分かる。
【0081】
実施例6
第一溶液として4,4’−ビフェニルジカルボニルクロライド 0.0005molをジオキサンに溶解させた50ml溶液(4,4’−ビフェニルジカルボニルクロライド / ジオキサン=0.0005mol / 50ml溶液という。以下同じ。)、第二溶液として2,2’−ビストリフルオロメチルベンジジン 0.00045molおよび4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニル 0.00005molをジオキサンに順次溶解させた50ml溶液(2,2’−ビストリフルオロメチルベンジジン+4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニル / ジオキサン=0.00045+0.00005mol / 50ml溶液という。以下同じ。)をそれぞれ調製し、約12℃まで冷却した。その後、第二溶液である2,2’−ビストリフルオロメチルベンジジン+4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニル/ジオキサン=0.00045+0.00005mol / 50ml溶液には、イオン交換水10mlを加え攪拌した。次いで、両溶液を混合して周波数28kHzの超音波で60分間攪拌し、反応させることにより、ポリアミドを析出した。
【0082】
得られたポリアミドを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、ポリアミドが絡合体を形成していることを確認した。そのSEM写真を図6に示す。このポリアミド絡合体の平均繊維径は0.03μm、熱分解温度(Td(5wt% loss))は501℃であった。また、水・アセトンで洗浄後、得られたポリアミド絡合体をそのまま100℃で1晩真空加熱乾燥した時の嵩密度は、0.51g/cmであった。
【0083】
ポリアミド絡合体を再度アセトンに浸漬し、超音波照射したところ、当該ポリアミド絡合体の各繊維状ポリアミドの接合は分離されなかった。これにより絡合体を構成する繊維状ポリアミド同士の接合は強固なものであることが分かる。
【0084】
実施例7
第一溶液として4,4’−ビフェニルジカルボニルクロライド 0.0005molをジオキサンに溶解させた50ml溶液(4,4’−ビフェニルジカルボニルクロライド / ジオキサン=0.0005mol / 50ml溶液という。以下同じ。)、第二溶液として2,2’−ビストリフルオロメチルベンジジン 0.00035molおよび4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン 0.00015molをジオキサンに順次溶解させた50ml溶液(2,2’−ビストリフルオロメチルベンジジン+4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン / ジオキサン=0.00035+0.00015mol / 50ml溶液という。以下同じ。)をそれぞれ調製し、約12℃まで冷却した。その後、第二溶液である2,2’−ビストリフルオロメチルベンジジン+4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン / ジオキサン=0.00035+0.00015mol / 50ml溶液には、イオン交換水10mlを加え攪拌した。次いで、両溶液を混合して周波数28kHzの超音波で60分間攪拌し、反応させることにより、ポリアミドを析出した。
【0085】
得られたポリアミドを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、ポリアミドが絡合体を形成していることを確認した。そのSEM写真を図7に示す。このポリアミド絡合体の平均繊維径は0.08μm、熱分解温度(Td(5wt% loss))は479℃であった。また、水・アセトンで洗浄後、得られたポリアミド絡合体をそのまま100℃で1晩真空加熱乾燥した時の嵩密度は、0.85g/cmであった。
【0086】
ポリアミド絡合体を再度アセトンに浸漬し、超音波照射したところ、当該ポリアミド絡合体の各繊維状ポリアミドの接合は分離されなかった。これにより絡合体を構成する繊維状ポリアミド同士の接合は強固なものであることが分かる。
【0087】
実施例8
第一溶液として4,4’−ビフェニルジカルボニルクロライド 0.0005molをジオキサンに溶解させた50ml溶液(4,4’−ビフェニルジカルボニルクロライド / ジオキサン=0.0005mol / 50ml溶液という。以下同じ。)、第二溶液として2,2’−ビストリフルオロメチルベンジジン 0.0004molおよび3,5−ジアミノベンゾトリフルオライド 0.0001molをジオキサンに順次溶解させた50ml溶液(2,2’−ビストリフルオロメチルベンジジン+3,5−ジアミノベンゾトリフルオライド / ジオキサン=0.0004+0.0001mol / 50ml溶液という。以下同じ。)をそれぞれ調製し、約12℃まで冷却した。その後、第二溶液である2,2’−ビストリフルオロメチルベンジジン+3,5−ジアミノベンゾトリフルオライド / ジオキサン=0.0004+0.0001mol / 50ml溶液には、イオン交換水15mlを加え攪拌した。次いで、両溶液を混合して周波数28kHzの超音波で60分間攪拌し、反応させることにより、ポリアミドを析出した。
【0088】
得られたポリアミドを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、ポリアミドが絡合体を形成していることを確認した。そのSEM写真を図8に示す。このポリアミド絡合体の平均繊維径は0.03μm、熱分解温度(Td(5wt% loss))は470℃であった。また、水・アセトンで洗浄後、得られたポリアミド絡合体をそのまま100℃で1晩真空加熱乾燥した時の嵩密度は、0.74g/cmであった。
【0089】
ポリアミド絡合体を再度アセトンに浸漬し、超音波照射したところ、当該ポリアミド絡合体の各繊維状ポリアミドの接合は分離されなかった。これにより絡合体を構成する繊維状ポリアミド同士の接合は強固なものであることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】図1は実施例1で得られたポリアミド絡合体の形状を示す図である。
【図2】図2は実施例2で得られたポリアミド絡合体の形状を示す図である。
【図3】図3は実施例3で得られたポリアミド絡合体の形状を示す図である。
【図4】図4は実施例4で得られたポリアミド絡合体の形状を示す図である。
【図5】図5は実施例5で得られたポリアミド絡合体の形状を示す図である。
【図6】図6は実施例6で得られたポリアミド絡合体の形状を示す図である。
【図7】図7は実施例7で得られたポリアミド絡合体の形状を示す図である。
【図8】図8は実施例8で得られたポリアミド絡合体の形状を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1):
【化1】


で表される構成単位を含むポリアミドを合成する方法であって、
(a)4,4’−ビフェニルジカルボニルクロライドを含む第一溶液と、ビストリフルオロメチルベンジジンを含む第二溶液とをそれぞれ調製する第一工程、及び
(b)第一溶液及び第二溶液のいずれの溶媒にも可溶である溶媒の存在下に、第一溶液と第二溶液とを混合し、混合溶液からポリアミド絡合体を析出させる第二工程、
を含むことを特徴とするポリアミド絡合体の製造方法。
【請求項2】
第二溶液が、さらに機能性基を有するジアミン化合物を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
第一溶液における溶媒が、ジオキサン及びアセトンの少なくとも1種を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
第二溶液における溶媒が、ジオキサン及びアセトンの少なくとも1種を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
第一溶液及び第二溶液のいずれの溶媒にも可溶である溶媒が、水及び水酸基を有する溶媒の少なくとも1種である、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
水酸基を有する溶媒が、炭素数1〜10のアルコールの少なくとも1種を含む、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
第二工程を超音波による撹拌下で行う、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の方法により得ることができるポリアミド絡合体であって、
(1)前記ポリアミド絡合体は、繊維状ポリアミドが互いに絡み合った外観を呈し、
(2)少なくとも一部の繊維状ポリアミドどうしの接点で両者が接合している、
ことを特徴とするポリアミド絡合体。
【請求項9】
嵩密度が0.3g/cm〜1.35g/cmである、請求項8に記載のポリアミド絡合体。
【請求項10】
一般式(1)の構成単位を50〜100(モル)%含む、請求項8又は9に記載のポリアミド絡合体。
【請求項11】
前記繊維状ポリアミドの平均繊維径が0.005μm〜0.5μmである、請求項8〜10のいずれかに記載のポリアミド絡合体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2007−262214(P2007−262214A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−88190(P2006−88190)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000205627)大阪府 (238)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】