マイクロニードル製造方法とマイクロニードル基板
【課題】 貫通孔付のマイクロニードルを容易に製造することができるマイクロニードル製造方法を提供すると共にそのようなマイクロニードル製造方法により製造されたマイクロニードル基板を提供することにある。
【解決手段】 硬化性樹脂に熱又は光エネルギーを付与し、且つ、そのエネルギーを制御することにより上記硬化性樹脂の外周部を硬化部とすると共に内周部を未硬化部とし、次に、上記未硬化部の硬化性樹脂を除去することにより貫通孔を備えたマイクロニードルを得るようにしたもの。
【解決手段】 硬化性樹脂に熱又は光エネルギーを付与し、且つ、そのエネルギーを制御することにより上記硬化性樹脂の外周部を硬化部とすると共に内周部を未硬化部とし、次に、上記未硬化部の硬化性樹脂を除去することにより貫通孔を備えたマイクロニードルを得るようにしたもの。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロニードル製造方法とマイクロニードル基板に係り、特に、予め薬剤が充填されていると共に該薬剤を貫通孔を介して投与できるように構成されたマイクロニードルを容易に製造できるように工夫したものに関し、又、そのような製造方法により製造されたマイクロニードル基板に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロニードルは、例えば、医療、生物現象、創薬等の分野で実施されている経皮薬剤投与に使用されるものである。上記経皮薬剤投与は、ワクチンやインシュリン等の薬剤投与に有効であると考えられていて、昨今その研究開発が盛んに行われている。
【0003】
上記マイクロニードルは、例えば、特許文献1、特許文献2に開示されているようなマイクロニードル製造方法によって製造される。まず、インプリントやキャスティング等のプレス加工法がある。又、射出成形法、シリコン等のエッチング加工法がある。上記エッチング加工法にはウェットとドライの両方がある。
【0004】
又、これらの方法以外にも、例えば、レーザ加工法、マシニングによる直接研磨加工法等がある。
【0005】
さらに、光硬化性樹脂を用いた選択硬化による光造形法がある。この種の光造形法によるマイクロニードル製造方法を開示したものとして、例えば、特許文献3がある。この特許文献3に開示されているマイクロニードル製造方法の場合には、硬化部・未硬化部を作り出し、それによって、所望のマイクロニードルを作製するものである。未硬化部については洗い流すことによりこれを除去するものである。
因みに、このマイクロニードル製造方法の場合には、その寸法が比較的大きなマイクロニードルが対象となり、ニードル先端の寸法サイズは小さくても10μm程度となる。
【0006】
又、研究段階ではあるが、二光子吸収を利用した三次元サブマイクロ光造形法が提案されている。この三次元サブマイクロ光造形法の場合には最高0.2μm程度の分解能があり、よって、より細かなマイクロニードルの製造が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−78074号公報
【特許文献2】特開2003−88514号公報
【特許文献3】特表2006−502831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来の構成によると次のような問題があった。
まず、インプリントやキャスティング等のプレス加工、射出成型法、シリコン等のエッチング加工法の場合には、樹脂製の貫通孔付マイクロニードルや薬剤を充填するための中空部及び貫通孔を有する樹脂製のマイクロニードル基板の作製は困難であった。これは、レーザ加工法、マシニングによる直接研磨加工法等の場合も同様であった。
又、光硬化性樹脂を用いた選択硬化による光造形法の場合には、既に説明したように、その精度は10μm程度であってそれほど高くはなく、そのため、樹脂製の貫通孔付マイクロニードルや薬剤を充填するための中空部及び貫通孔を備えた樹脂製のマイクロニードルの製造は困難であった。
又、光造形法の場合には光反応性樹脂を層状に順次硬化させながら積層すねことにより所望の形状を作製する必要があり、非常に手間が掛かってしまうという問題もあった。
又、二光子吸収を利用した三次元サブマイクロ光造形法(最高0.2μm分解能)の場合には、設備・コスト・作製時間等の点で、大量生産には不向きであった。
【0009】
本願発明はこのような点に基づいてなされたものでその目的とするところは、貫通孔付のマイクロニードルを容易に製造することができるマイクロニードル製造方法を提供すると共にそのような製造方法により製造されたマイクロニードル基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するべく本願発明の請求項1によるマイクロニードル製造方法は、硬化性樹脂に熱又は光エネルギーを付与し、且つ、そのエネルギーを制御することにより上記硬化性樹脂の外周部を硬化部とすると共に内周部を未硬化部とし、次に、上記未硬化部の硬化性樹脂を除去することにより貫通孔を備えたマイクロニードルを得るようにしたことを特徴とするものである。
又、請求項2によるマイクロニードル製造方法は、請求項1記載のマイクロニードル製造方法において、貫通孔付きマイクロニードルを複数成形可能な型を用意し該型内に硬化性樹脂を注入し、次に、上記型の外側から硬化性樹脂に熱又は光エネルギーを付与し、且つ、そのエネルギーを制御することにより上記硬化性樹脂の外周部を硬化部とすると共に内周部を未硬化部とし、次に、上記未硬化部の硬化性樹脂を除去することにより貫通孔を備えたマイクロニードルを複数得るようにしたことを特徴とするものである。
又、請求項3によるマイクロニードル製造方法は、請求項1又は請求項2記載のマイクロニードル製造方法にいて、上記未硬化部の硬化性樹脂を除去した後薬剤を充填するようにしたことを特徴とするものである。
又、請求項4によるマイクロニードル製造方法は、請求項1〜請求項3の何れかに記載のマイクロニードル製造方法において、上記硬化性樹脂は熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂であることを特徴とするものである。
又、請求項5によるマイクロニードル製造方法は、中空部を有する本体と、上記本体の一方の外面に設けられ上記中空部と連絡する貫通孔を有する1個又は複数個のマイクロニードルと、上記本体の一方の外面の外周に沿って設けられた凸部と、上記本体の他方の外面に設けられた窪み状の保持梁と、を具備したことを特徴とするものである。
又、請求項6によるマイクロニードル製造方法は、請求項5記載のマイクロニードル基板において、上記中空部には薬剤が充填されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
まず、請求項1によるマイクロニードル製造方法によると、硬化性樹脂を使用して必要な部位のみを硬化させ、貫通孔を備えた任意の形状を容易に得ることができるので、貫通孔が設けられたマイクロニードルを容易に、且つ、大量生産することができる。
又、請求項2によるマイクロニードル製造方法によると、貫通孔を有するマイクロニードルを複数備えたものを容易に、且つ、大量生産することができる。
又、請求項3によるマイクロニードル製造方法によると、薬剤入りのマイクロニードルを容易に、且つ、大量に生産することができる。
又、請求項4によるマイクロニードル製造方法によると、硬化性樹脂として熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂を使用することにより、マイクロニードルを容易に、且つ、大量に生産することができる。
又、請求項5によるマイクロニードル基板によると、薬剤充填用の中空部と該中空部と外部を連絡する貫通孔が設けられたマイクロニードルを有するため、例えば、上記中空部内に予め薬剤を充填しておくことにより、注射器を用いることなく容易に薬剤投与が可能であり、使用者の負担を軽減できる。又、マイクロニードルの設けられた外面の外周に沿って凸部が設けられているため、薬剤投与時において、上記凸部により皮膚を押し下げることにより凸部の内側の皮膚を盛り上げ、上記マイクロニードルがその盛り上がった皮膚内により深く刺さり易くしている。それによって、薬剤を漏らすことなく皮膚内に確実に投与することができ、薬剤の投与量やその薬剤により期待される効果を把握しやすくなる。
又、請求項6によるマイクロニードル基板によると、薬剤が予め充填されているため、上記した効果を確実に得ることができ、また、予め決められた種類の薬剤が所定量充填されていて、且つ、その所定量の薬剤を漏らすことなく確実に皮膚内に投与することができるので、投与ミスを防止することができる。
また、薬剤を予め充填しているので、従来のように注射器と薬剤を別個に携帯する必要はなく、単に薬剤入りのマイクロニードル基板を携帯すれば事足りるので、持ち運びにも便利である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本願発明の第1の実施の形態を示す図で、マイクロニードル製造方法を実施する際に使用する型を示す平面図である。
【図2】本願発明の第1の実施の形態を示す図で、図1のII−II断面図である。
【図3】本願発明の第1の実施の形態を示す図で、マイクロニードル製造方法の実施に際して、型内に硬化性樹脂を注入した状態を示す断面図である。
【図4】本願発明の第1の実施の形態を示す図で、マイクロニードル製造方法の実施に際して、型内に注入された硬化性樹脂に紫外線を照射し、型の内周面付近の硬化性樹脂のみを半硬化させた状態を示す断面図である。
【図5】本願発明の第1の実施の形態を示す図で、マイクロニードル製造方法の実施に際して、未硬化の樹脂を抜き出した状態を示す断面図である。
【図6】本願発明の第1の実施の形態を示す図で、マイクロニードル製造方法の実施に際して、型を撤去し、マイクロニードル基板を取り出した状態を示す断面図である。
【図7】本願発明の第1の実施の形態を示す図で、図7(a)はマイクロニードル製造方法の実施に際して、突起部の先端を切り落とし、マイクロニードル基板を完成させた状態を示す平面図であり、図7(b)は図7(a)におけるb−b断面図である。
【図8】本願発明の第1の実施の形態を示す図で、マイクロニードル製造方法の実施に際して、マイクロニードル基板の中空部に薬剤を充填した状態を示す断面図である。
【図9】本願発明の第2の実施の形態を示す図で、マイクロニードル製造方法を実施する際に使用する型を示す平面図である。
【図10】本願発明の第2の実施の形態を示す図で、図9のX−X断面図である。
【図11】本願発明の第2の実施の形態を示す図で、図11(a)は、型を撤去して突起部の先端を切り落としてマイクロニードル基板を完成させた状態を示す平面図であり、図11(b)は頭11(a)におけるb−b断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図1〜図8を参照して本願発明の第1の実施の形態を説明する。
【0014】
まず、本実施の形態によるマイクロニードル製造方法の実施に際して使用する型1の構成を説明する。上記型1は、図1及び図2に示すように、上型3と下型5を組み合わせたものであり、内側には空間7が設けられている。又、上記型1は紫外線(UV)を透過する材料から構成されており、本実施の形態においては、石英ガラスが使用されている。
【0015】
尚、上記型1の材料としては、紫外線を透過するものであれば、石英ガラスに限定されるものではない。強度が高く加工しやすい材料であればよく、例えば、シリコン基板、ニッケル(Ni)等でもよい。又、マイクロニードル基板の材料の硬化方法によっては、紫外線を透過するものでなくてもよい。
【0016】
又、上記上型3及び下型5の作製は、例えば、リソグラフィによるシリコン加工法、Ni電鋳法、金属精密加工法等によって行われる。又、上記型1には剥離剤処理を行い、離型を容易とさせ、繰り返し使用できるようにする。剥離剤処理としてはフッ素樹脂によるもの等が考えられる。
【0017】
又、図1に示すように、上記上型3は略正四角形の板状のものであり、又、図1、図2に示すように、その下面部9には十字型の凸部11が設けられている。一方、上記下型5は有底器状であって中空部を備えた形状となっており、上記上型3側の一面が開放された形状になっている。そして、上記上型3と上記下型5を対向・配置させて組み合わせることにより、上記下型5の中空部と上記上型3の下面部9とによって既に説明した空間7が形成されることになる。
【0018】
上記下型5の中空部の底部13の中央部には略逆四角錘状の凹部15が4箇所に設けられており、その縮径された端部(図2中下端)には貫通孔17が設けられている。又、上記下型5の中空部の底部13の外周部には溝19が全周にわたって連続して設けられている。
【0019】
次に、上記型1を使用したマイクロニードル製造方法を順次説明していく。
まず、図3に示すように、既に説明した型1の下型5に設けられた貫通孔17から上記空間7内に硬化性樹脂としての紫外線硬化性樹脂21を注入する。上記紫外線硬化性樹脂21は、紫外線により硬化するものであり、粘性の低いものが好ましい。これは、追って説明する未硬化部分の取り出しを容易化させるためである。
【0020】
又、追って説明する半硬化部分のコントロールのため、紫外線硬化性樹脂21は感度曲線に特徴があるものが望ましい。例えば、紫外線の照射量がある値を超えると急激に硬化するような紫外線硬化性樹脂が望ましい。それは、半硬化部分と未硬化部分を明瞭に区分けすることが容易になるからである。
尚、硬化性樹脂としては、紫外線硬化性樹脂以外にも、例えば、熱硬化性樹脂等様々な種類が考えられる。
【0021】
次に、図4に示すように、上記紫外線硬化性樹脂21に上記型1の外部から紫外線を照射し、紫外線硬化性樹脂21と型1の境界付近のみを半硬化させる。照射する紫外線の波長・強度、照射時間、照射する部位等の諸条件は、上記紫外線硬化性樹脂21を、図4に示すように、紫外線硬化性樹脂21と型1の境界付近のみを半硬化させることができるようなものとする。
【0022】
前述の紫外線照射処理により、図4に示すように、上記紫外線硬化性樹脂21には半硬化部21aと未硬化部21bが形成される。すなわち、上記紫外線硬化性樹脂21の外側部分が半硬化部21aとなり、内側部分が未硬化部21bとなる。下型5の貫通孔17の部分に注入されている紫外線硬化性樹脂21についても、外側部分が半硬化部21aとなり、内側部分が未硬化部21bとなっており、この内側部分の未硬化部21bの部位が後述する貫通孔23となる(未硬化部21b除去後)。
【0023】
次に、上記下型5の貫通孔17から、上記未硬化部21bを上記型1の外部へと、例えば、図示しない真空ポンプによる吸引により吸い出す。それによって、図5に示すように、上記半硬化部21aの内部に空洞部25が形成されるとともに、貫通孔23が形成される。
尚、上記貫通孔17の部分に注入された紫外線硬化性樹脂21が全て半硬化してしまった場合は、この時点で上記未硬化部21bを吸い出すことはできないことになるので、そのような状態にならいないように諸条件を設定するものである。
【0024】
次に、図5において、上記型1を取り外し、図6に示すような状態とする。 次に、図6において、下型5の貫通孔17の位置に突起31が突出形成されており、この突起31の先端部27を図6中の破線部分で切断・除去する。除去した状態を図7に示す。その後、再び紫外線を照射し上記半硬化部21aを完全に硬化させる。以上により、図7に示すようなマイクロニードル基板29を得ることができる。
【0025】
次に、上記製造方法により得られた上記マイクロニードル基板29の構成を説明する。まず、図7に示すように、上記マイクロニードル基板29は、背の低い略四角柱形状の本体30を有しており、この本体30の内部には既に説明した空洞部25が形成されている。上記本体30には4つの突起部31が設けられている。上記突起部31は略逆錐形状(逆四角錐又は逆円錐)となっていて、その中心部には貫通孔33が形成されている。上記突起部31の高さ(h1)は、例えば、100〜数100μm程度である。上記突起部31はマイクロニードルとして機能し、上記貫通孔33を通じて上記空洞部25内に充填されている薬剤(薬剤の充填については追って説明する)が、例えば、人間の経皮内に投入されることになる。
【0026】
上記本体30の上記突起部31が設けられた下面壁32の外周側には環状凸部35が設けられている。この環状凸部35の高さ(h2)は上記突起部31の高さ(h1)よりも低く設定されている。そのため、薬剤投与時、上記マイクロニードル基板29を皮膚に押し付けたとき、上記環状凸部35により皮膚表面が引っ張られ、上記突起部31を皮膚に突き刺し易くする効果が得られる。
【0027】
又、上記本体30の上面壁34には保持梁37が凹んだ状態で設けられており、その保持梁37の図7(b)中下端は上記下面壁32に至っている。又、この保持梁37は、図7(a)に示すように、上記上面壁34の中心を通る十文字状の溝として設けられている。上記保持梁37は、上記マイクロニードル基板29の機械的強度を高める働きがあるとともに、薬剤投与時の上記マイクロニードル基板29の不必要な変形を防止する作用もある。
【0028】
さらに、上記マイクロニードル基板29の空洞部25に薬剤39を注入し、上記貫通孔33に封をすることにより、図8に示すような、薬剤39を封入した薬剤入りのマイクロニードル基板29を得ることができる。このような薬剤入りマイクロニードル基板29を使用して、例えば、ワクチンやインシュリン等の薬剤投与を行うものである。
【0029】
以上本実施の形態によると、次のような効果を奏することができる。
まず、本実施の形態による製造方法の場合には、紫外線硬化性樹脂21に紫外線を照射する条件を適宜制御することで任意の部分を半硬化させることができるので、大掛かりでコストの掛かる機材を用いることなく、貫通孔を有するマイクロニードルを備えたマイクロニードル基板29を容易に、且つ、大量に得ることができる。
又、薬剤入りのマイクロニードル基板29についても容易に、且つ、大量に製造することができる。
又、本実施の形態による薬剤入りのマイクロニードル基板29は、薬剤39を充填した空洞部25と外部を連絡する貫通孔33を有する突起部31が設けられているため、皮膚に押し当てるだけで容易に薬剤39の投与が可能となり、従来のように、注射器を用いる必要もなく、且つ、患者に対する痛みについてもこれを大幅に軽減することができる。
又、薬剤入りのマイクロニードル基板29の外周部に設けられた環状凸部35によって皮膚表面を突っ張ることにより、マイクロニードルである突起部31を皮膚に突き刺し易くすることができ、それによって、薬剤漏れを防ぐことができる。そして、薬剤39の投与量や期待効果の把握をより確実なものとすることができる。
さらに、この薬剤39が充填されたマイクロニードル基板29は予め薬剤39を封入してあるため、投薬する薬剤の種類や量を間違えるようなことを防止することができ、又、持ち運びも便利である。
【0030】
次に、図9〜図11を参照して本願発明の第2の実施の形態を説明する。
【0031】
前記第1の実施の形態の場合には、略四角形の型1を使用して、略四角形のマイクロニードル基板29を製造するようにしたが、この第2の実施の形態では、図9及び図10に示すように、円形の型43を用いて、図11に示すような略円形のマイクロニードル基板45を製造するようにしたものである。上記型43は上型47及び下型49から構成されている。それ以外は前記第1の実施の形態の場合と同様であり、又、マイクロニードル基板45の製造方法についても前記第1の実施の形態と同様であるので、その説明は省略する。
【0032】
この第2の実施の形態によるマイクロニードル基板45は、図11に示すように、背の低い略円柱状の本体50を有しており、この本体50は、前記第1の実施の形態の場合と同様、内部に空洞部51を有していて、4つの突起部53が設けられた構成になっている。上記突起部53は略逆円錐形状であり、貫通孔55が設けられている。上記突起部53はマイクロニードルとして機能する。
【0033】
上記本体50の上記突起部53が設けられた下面壁54の外周側には環状凸部57が設けられている。この環状凸部57には、前記第1の実施の形態の場合と同様、上記突起部53が皮膚に突き刺し易くなるように機能する。又、上記本体50の上面壁58には保持梁59が凹んだ状態で設けられている。この保持梁59は略逆円錐台形状の窪みであり、上記マイクロニードル基板45の機械的強度を高める働きがある。
【0034】
又、図示していないが、上記マイクロニードル基板45についても、前記第1の実施の形態の場合と同様に、上記空洞部51内に薬剤を封入して薬剤入りのマイクロニードル基板45とすることもできる。
【0035】
以上本実施の形態によると、紫外線硬化性樹脂21に紫外線を照射する条件を適宜制御することで任意の部分を半硬化させることができるので、大掛かりでコストの掛かる機材を用いることなく、貫通孔を有するマイクロニードルを備えたマイクロニードル基板45を容易に、且つ、大量に得ることができる等、前記第1の実施の形態の場合と同様の効果を奏することができる。
【0036】
尚、本願発明は前記第1、第2の実施の形態に限定されるものではない。
例えば、マイクロニードル基板、突起部、保持梁等の形状は、前記第1、第2の実施の形態の例に限られず、様々な形状のものが考えられる。
又、環状凸部の高さ(h1)が突起部の高さ(h2)より高い場合も考えられ、その場合は環状凸部が皮膚表面を盛り上げることで、突起部を皮膚に突き刺し易くする。
又、保持梁はマイクロニードル基板全体の構造を保持することができれば、その位置・形状等は上記実施の形態の例に限られず、マイクロニードル基板の構造によっては保持梁がない場合も考えられる。
又、突起部の形状も、皮膚に突き刺さり易い形状であれば、前記第1、第2の実施の形態の例に限られない。
又、マイクロニードル基板の材料も、紫外線硬化性樹脂や熱硬化性樹脂に限られず、様々な硬化性樹脂を用いることが考えられる。
又、前記第1、第2の実施の形態のような製造方法によりマイクロニードルのみを作製し、そのマイクロニードルを他の部材と接着させたり、シリコン基板及びガラス基板上に配置することも考えられる。
又、前記第1、第2の実施の形態の場合には、1個のマイクロニードル基板に4個のマイクロニードル(突起)が設けられた構成を例に挙げて説明したが、それに限定されるものではなく、マイクロニードルが1個の場合、5個以上の場合等、様々な構成が想定される。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、例えば、マイクロニードル基板の製造方法に係り、特に、大掛かりでコストのかかる機材を用いることなく、短時間で容易にマイクロニードル基板を製造できるように工夫したものに係り、例えば、経皮薬剤投与用のマイクロニードル基板の製造に好適である。
【符号の説明】
【0038】
1 型
3 上型
5 下型
21 紫外線硬化性樹脂
21a 半硬化部
21b 未硬化部
25 空洞部(中空部)
29 マイクロニードル基板
30 本体
31 突起部(マイクロニードル)
32 下面壁
33 貫通孔
34 上面壁
35 環状凸部(凸部)
37 保持梁
39 薬剤
43 型
45 マイクロニードル基板
47 上型
49 下型
50 本体
51 空洞部(中空部)
53 突起部(マイクロニードル)
54 下面壁
55 貫通孔
57 環状凸部(凸部)
58 上面壁
59 保持梁
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロニードル製造方法とマイクロニードル基板に係り、特に、予め薬剤が充填されていると共に該薬剤を貫通孔を介して投与できるように構成されたマイクロニードルを容易に製造できるように工夫したものに関し、又、そのような製造方法により製造されたマイクロニードル基板に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロニードルは、例えば、医療、生物現象、創薬等の分野で実施されている経皮薬剤投与に使用されるものである。上記経皮薬剤投与は、ワクチンやインシュリン等の薬剤投与に有効であると考えられていて、昨今その研究開発が盛んに行われている。
【0003】
上記マイクロニードルは、例えば、特許文献1、特許文献2に開示されているようなマイクロニードル製造方法によって製造される。まず、インプリントやキャスティング等のプレス加工法がある。又、射出成形法、シリコン等のエッチング加工法がある。上記エッチング加工法にはウェットとドライの両方がある。
【0004】
又、これらの方法以外にも、例えば、レーザ加工法、マシニングによる直接研磨加工法等がある。
【0005】
さらに、光硬化性樹脂を用いた選択硬化による光造形法がある。この種の光造形法によるマイクロニードル製造方法を開示したものとして、例えば、特許文献3がある。この特許文献3に開示されているマイクロニードル製造方法の場合には、硬化部・未硬化部を作り出し、それによって、所望のマイクロニードルを作製するものである。未硬化部については洗い流すことによりこれを除去するものである。
因みに、このマイクロニードル製造方法の場合には、その寸法が比較的大きなマイクロニードルが対象となり、ニードル先端の寸法サイズは小さくても10μm程度となる。
【0006】
又、研究段階ではあるが、二光子吸収を利用した三次元サブマイクロ光造形法が提案されている。この三次元サブマイクロ光造形法の場合には最高0.2μm程度の分解能があり、よって、より細かなマイクロニードルの製造が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−78074号公報
【特許文献2】特開2003−88514号公報
【特許文献3】特表2006−502831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来の構成によると次のような問題があった。
まず、インプリントやキャスティング等のプレス加工、射出成型法、シリコン等のエッチング加工法の場合には、樹脂製の貫通孔付マイクロニードルや薬剤を充填するための中空部及び貫通孔を有する樹脂製のマイクロニードル基板の作製は困難であった。これは、レーザ加工法、マシニングによる直接研磨加工法等の場合も同様であった。
又、光硬化性樹脂を用いた選択硬化による光造形法の場合には、既に説明したように、その精度は10μm程度であってそれほど高くはなく、そのため、樹脂製の貫通孔付マイクロニードルや薬剤を充填するための中空部及び貫通孔を備えた樹脂製のマイクロニードルの製造は困難であった。
又、光造形法の場合には光反応性樹脂を層状に順次硬化させながら積層すねことにより所望の形状を作製する必要があり、非常に手間が掛かってしまうという問題もあった。
又、二光子吸収を利用した三次元サブマイクロ光造形法(最高0.2μm分解能)の場合には、設備・コスト・作製時間等の点で、大量生産には不向きであった。
【0009】
本願発明はこのような点に基づいてなされたものでその目的とするところは、貫通孔付のマイクロニードルを容易に製造することができるマイクロニードル製造方法を提供すると共にそのような製造方法により製造されたマイクロニードル基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するべく本願発明の請求項1によるマイクロニードル製造方法は、硬化性樹脂に熱又は光エネルギーを付与し、且つ、そのエネルギーを制御することにより上記硬化性樹脂の外周部を硬化部とすると共に内周部を未硬化部とし、次に、上記未硬化部の硬化性樹脂を除去することにより貫通孔を備えたマイクロニードルを得るようにしたことを特徴とするものである。
又、請求項2によるマイクロニードル製造方法は、請求項1記載のマイクロニードル製造方法において、貫通孔付きマイクロニードルを複数成形可能な型を用意し該型内に硬化性樹脂を注入し、次に、上記型の外側から硬化性樹脂に熱又は光エネルギーを付与し、且つ、そのエネルギーを制御することにより上記硬化性樹脂の外周部を硬化部とすると共に内周部を未硬化部とし、次に、上記未硬化部の硬化性樹脂を除去することにより貫通孔を備えたマイクロニードルを複数得るようにしたことを特徴とするものである。
又、請求項3によるマイクロニードル製造方法は、請求項1又は請求項2記載のマイクロニードル製造方法にいて、上記未硬化部の硬化性樹脂を除去した後薬剤を充填するようにしたことを特徴とするものである。
又、請求項4によるマイクロニードル製造方法は、請求項1〜請求項3の何れかに記載のマイクロニードル製造方法において、上記硬化性樹脂は熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂であることを特徴とするものである。
又、請求項5によるマイクロニードル製造方法は、中空部を有する本体と、上記本体の一方の外面に設けられ上記中空部と連絡する貫通孔を有する1個又は複数個のマイクロニードルと、上記本体の一方の外面の外周に沿って設けられた凸部と、上記本体の他方の外面に設けられた窪み状の保持梁と、を具備したことを特徴とするものである。
又、請求項6によるマイクロニードル製造方法は、請求項5記載のマイクロニードル基板において、上記中空部には薬剤が充填されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
まず、請求項1によるマイクロニードル製造方法によると、硬化性樹脂を使用して必要な部位のみを硬化させ、貫通孔を備えた任意の形状を容易に得ることができるので、貫通孔が設けられたマイクロニードルを容易に、且つ、大量生産することができる。
又、請求項2によるマイクロニードル製造方法によると、貫通孔を有するマイクロニードルを複数備えたものを容易に、且つ、大量生産することができる。
又、請求項3によるマイクロニードル製造方法によると、薬剤入りのマイクロニードルを容易に、且つ、大量に生産することができる。
又、請求項4によるマイクロニードル製造方法によると、硬化性樹脂として熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂を使用することにより、マイクロニードルを容易に、且つ、大量に生産することができる。
又、請求項5によるマイクロニードル基板によると、薬剤充填用の中空部と該中空部と外部を連絡する貫通孔が設けられたマイクロニードルを有するため、例えば、上記中空部内に予め薬剤を充填しておくことにより、注射器を用いることなく容易に薬剤投与が可能であり、使用者の負担を軽減できる。又、マイクロニードルの設けられた外面の外周に沿って凸部が設けられているため、薬剤投与時において、上記凸部により皮膚を押し下げることにより凸部の内側の皮膚を盛り上げ、上記マイクロニードルがその盛り上がった皮膚内により深く刺さり易くしている。それによって、薬剤を漏らすことなく皮膚内に確実に投与することができ、薬剤の投与量やその薬剤により期待される効果を把握しやすくなる。
又、請求項6によるマイクロニードル基板によると、薬剤が予め充填されているため、上記した効果を確実に得ることができ、また、予め決められた種類の薬剤が所定量充填されていて、且つ、その所定量の薬剤を漏らすことなく確実に皮膚内に投与することができるので、投与ミスを防止することができる。
また、薬剤を予め充填しているので、従来のように注射器と薬剤を別個に携帯する必要はなく、単に薬剤入りのマイクロニードル基板を携帯すれば事足りるので、持ち運びにも便利である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本願発明の第1の実施の形態を示す図で、マイクロニードル製造方法を実施する際に使用する型を示す平面図である。
【図2】本願発明の第1の実施の形態を示す図で、図1のII−II断面図である。
【図3】本願発明の第1の実施の形態を示す図で、マイクロニードル製造方法の実施に際して、型内に硬化性樹脂を注入した状態を示す断面図である。
【図4】本願発明の第1の実施の形態を示す図で、マイクロニードル製造方法の実施に際して、型内に注入された硬化性樹脂に紫外線を照射し、型の内周面付近の硬化性樹脂のみを半硬化させた状態を示す断面図である。
【図5】本願発明の第1の実施の形態を示す図で、マイクロニードル製造方法の実施に際して、未硬化の樹脂を抜き出した状態を示す断面図である。
【図6】本願発明の第1の実施の形態を示す図で、マイクロニードル製造方法の実施に際して、型を撤去し、マイクロニードル基板を取り出した状態を示す断面図である。
【図7】本願発明の第1の実施の形態を示す図で、図7(a)はマイクロニードル製造方法の実施に際して、突起部の先端を切り落とし、マイクロニードル基板を完成させた状態を示す平面図であり、図7(b)は図7(a)におけるb−b断面図である。
【図8】本願発明の第1の実施の形態を示す図で、マイクロニードル製造方法の実施に際して、マイクロニードル基板の中空部に薬剤を充填した状態を示す断面図である。
【図9】本願発明の第2の実施の形態を示す図で、マイクロニードル製造方法を実施する際に使用する型を示す平面図である。
【図10】本願発明の第2の実施の形態を示す図で、図9のX−X断面図である。
【図11】本願発明の第2の実施の形態を示す図で、図11(a)は、型を撤去して突起部の先端を切り落としてマイクロニードル基板を完成させた状態を示す平面図であり、図11(b)は頭11(a)におけるb−b断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図1〜図8を参照して本願発明の第1の実施の形態を説明する。
【0014】
まず、本実施の形態によるマイクロニードル製造方法の実施に際して使用する型1の構成を説明する。上記型1は、図1及び図2に示すように、上型3と下型5を組み合わせたものであり、内側には空間7が設けられている。又、上記型1は紫外線(UV)を透過する材料から構成されており、本実施の形態においては、石英ガラスが使用されている。
【0015】
尚、上記型1の材料としては、紫外線を透過するものであれば、石英ガラスに限定されるものではない。強度が高く加工しやすい材料であればよく、例えば、シリコン基板、ニッケル(Ni)等でもよい。又、マイクロニードル基板の材料の硬化方法によっては、紫外線を透過するものでなくてもよい。
【0016】
又、上記上型3及び下型5の作製は、例えば、リソグラフィによるシリコン加工法、Ni電鋳法、金属精密加工法等によって行われる。又、上記型1には剥離剤処理を行い、離型を容易とさせ、繰り返し使用できるようにする。剥離剤処理としてはフッ素樹脂によるもの等が考えられる。
【0017】
又、図1に示すように、上記上型3は略正四角形の板状のものであり、又、図1、図2に示すように、その下面部9には十字型の凸部11が設けられている。一方、上記下型5は有底器状であって中空部を備えた形状となっており、上記上型3側の一面が開放された形状になっている。そして、上記上型3と上記下型5を対向・配置させて組み合わせることにより、上記下型5の中空部と上記上型3の下面部9とによって既に説明した空間7が形成されることになる。
【0018】
上記下型5の中空部の底部13の中央部には略逆四角錘状の凹部15が4箇所に設けられており、その縮径された端部(図2中下端)には貫通孔17が設けられている。又、上記下型5の中空部の底部13の外周部には溝19が全周にわたって連続して設けられている。
【0019】
次に、上記型1を使用したマイクロニードル製造方法を順次説明していく。
まず、図3に示すように、既に説明した型1の下型5に設けられた貫通孔17から上記空間7内に硬化性樹脂としての紫外線硬化性樹脂21を注入する。上記紫外線硬化性樹脂21は、紫外線により硬化するものであり、粘性の低いものが好ましい。これは、追って説明する未硬化部分の取り出しを容易化させるためである。
【0020】
又、追って説明する半硬化部分のコントロールのため、紫外線硬化性樹脂21は感度曲線に特徴があるものが望ましい。例えば、紫外線の照射量がある値を超えると急激に硬化するような紫外線硬化性樹脂が望ましい。それは、半硬化部分と未硬化部分を明瞭に区分けすることが容易になるからである。
尚、硬化性樹脂としては、紫外線硬化性樹脂以外にも、例えば、熱硬化性樹脂等様々な種類が考えられる。
【0021】
次に、図4に示すように、上記紫外線硬化性樹脂21に上記型1の外部から紫外線を照射し、紫外線硬化性樹脂21と型1の境界付近のみを半硬化させる。照射する紫外線の波長・強度、照射時間、照射する部位等の諸条件は、上記紫外線硬化性樹脂21を、図4に示すように、紫外線硬化性樹脂21と型1の境界付近のみを半硬化させることができるようなものとする。
【0022】
前述の紫外線照射処理により、図4に示すように、上記紫外線硬化性樹脂21には半硬化部21aと未硬化部21bが形成される。すなわち、上記紫外線硬化性樹脂21の外側部分が半硬化部21aとなり、内側部分が未硬化部21bとなる。下型5の貫通孔17の部分に注入されている紫外線硬化性樹脂21についても、外側部分が半硬化部21aとなり、内側部分が未硬化部21bとなっており、この内側部分の未硬化部21bの部位が後述する貫通孔23となる(未硬化部21b除去後)。
【0023】
次に、上記下型5の貫通孔17から、上記未硬化部21bを上記型1の外部へと、例えば、図示しない真空ポンプによる吸引により吸い出す。それによって、図5に示すように、上記半硬化部21aの内部に空洞部25が形成されるとともに、貫通孔23が形成される。
尚、上記貫通孔17の部分に注入された紫外線硬化性樹脂21が全て半硬化してしまった場合は、この時点で上記未硬化部21bを吸い出すことはできないことになるので、そのような状態にならいないように諸条件を設定するものである。
【0024】
次に、図5において、上記型1を取り外し、図6に示すような状態とする。 次に、図6において、下型5の貫通孔17の位置に突起31が突出形成されており、この突起31の先端部27を図6中の破線部分で切断・除去する。除去した状態を図7に示す。その後、再び紫外線を照射し上記半硬化部21aを完全に硬化させる。以上により、図7に示すようなマイクロニードル基板29を得ることができる。
【0025】
次に、上記製造方法により得られた上記マイクロニードル基板29の構成を説明する。まず、図7に示すように、上記マイクロニードル基板29は、背の低い略四角柱形状の本体30を有しており、この本体30の内部には既に説明した空洞部25が形成されている。上記本体30には4つの突起部31が設けられている。上記突起部31は略逆錐形状(逆四角錐又は逆円錐)となっていて、その中心部には貫通孔33が形成されている。上記突起部31の高さ(h1)は、例えば、100〜数100μm程度である。上記突起部31はマイクロニードルとして機能し、上記貫通孔33を通じて上記空洞部25内に充填されている薬剤(薬剤の充填については追って説明する)が、例えば、人間の経皮内に投入されることになる。
【0026】
上記本体30の上記突起部31が設けられた下面壁32の外周側には環状凸部35が設けられている。この環状凸部35の高さ(h2)は上記突起部31の高さ(h1)よりも低く設定されている。そのため、薬剤投与時、上記マイクロニードル基板29を皮膚に押し付けたとき、上記環状凸部35により皮膚表面が引っ張られ、上記突起部31を皮膚に突き刺し易くする効果が得られる。
【0027】
又、上記本体30の上面壁34には保持梁37が凹んだ状態で設けられており、その保持梁37の図7(b)中下端は上記下面壁32に至っている。又、この保持梁37は、図7(a)に示すように、上記上面壁34の中心を通る十文字状の溝として設けられている。上記保持梁37は、上記マイクロニードル基板29の機械的強度を高める働きがあるとともに、薬剤投与時の上記マイクロニードル基板29の不必要な変形を防止する作用もある。
【0028】
さらに、上記マイクロニードル基板29の空洞部25に薬剤39を注入し、上記貫通孔33に封をすることにより、図8に示すような、薬剤39を封入した薬剤入りのマイクロニードル基板29を得ることができる。このような薬剤入りマイクロニードル基板29を使用して、例えば、ワクチンやインシュリン等の薬剤投与を行うものである。
【0029】
以上本実施の形態によると、次のような効果を奏することができる。
まず、本実施の形態による製造方法の場合には、紫外線硬化性樹脂21に紫外線を照射する条件を適宜制御することで任意の部分を半硬化させることができるので、大掛かりでコストの掛かる機材を用いることなく、貫通孔を有するマイクロニードルを備えたマイクロニードル基板29を容易に、且つ、大量に得ることができる。
又、薬剤入りのマイクロニードル基板29についても容易に、且つ、大量に製造することができる。
又、本実施の形態による薬剤入りのマイクロニードル基板29は、薬剤39を充填した空洞部25と外部を連絡する貫通孔33を有する突起部31が設けられているため、皮膚に押し当てるだけで容易に薬剤39の投与が可能となり、従来のように、注射器を用いる必要もなく、且つ、患者に対する痛みについてもこれを大幅に軽減することができる。
又、薬剤入りのマイクロニードル基板29の外周部に設けられた環状凸部35によって皮膚表面を突っ張ることにより、マイクロニードルである突起部31を皮膚に突き刺し易くすることができ、それによって、薬剤漏れを防ぐことができる。そして、薬剤39の投与量や期待効果の把握をより確実なものとすることができる。
さらに、この薬剤39が充填されたマイクロニードル基板29は予め薬剤39を封入してあるため、投薬する薬剤の種類や量を間違えるようなことを防止することができ、又、持ち運びも便利である。
【0030】
次に、図9〜図11を参照して本願発明の第2の実施の形態を説明する。
【0031】
前記第1の実施の形態の場合には、略四角形の型1を使用して、略四角形のマイクロニードル基板29を製造するようにしたが、この第2の実施の形態では、図9及び図10に示すように、円形の型43を用いて、図11に示すような略円形のマイクロニードル基板45を製造するようにしたものである。上記型43は上型47及び下型49から構成されている。それ以外は前記第1の実施の形態の場合と同様であり、又、マイクロニードル基板45の製造方法についても前記第1の実施の形態と同様であるので、その説明は省略する。
【0032】
この第2の実施の形態によるマイクロニードル基板45は、図11に示すように、背の低い略円柱状の本体50を有しており、この本体50は、前記第1の実施の形態の場合と同様、内部に空洞部51を有していて、4つの突起部53が設けられた構成になっている。上記突起部53は略逆円錐形状であり、貫通孔55が設けられている。上記突起部53はマイクロニードルとして機能する。
【0033】
上記本体50の上記突起部53が設けられた下面壁54の外周側には環状凸部57が設けられている。この環状凸部57には、前記第1の実施の形態の場合と同様、上記突起部53が皮膚に突き刺し易くなるように機能する。又、上記本体50の上面壁58には保持梁59が凹んだ状態で設けられている。この保持梁59は略逆円錐台形状の窪みであり、上記マイクロニードル基板45の機械的強度を高める働きがある。
【0034】
又、図示していないが、上記マイクロニードル基板45についても、前記第1の実施の形態の場合と同様に、上記空洞部51内に薬剤を封入して薬剤入りのマイクロニードル基板45とすることもできる。
【0035】
以上本実施の形態によると、紫外線硬化性樹脂21に紫外線を照射する条件を適宜制御することで任意の部分を半硬化させることができるので、大掛かりでコストの掛かる機材を用いることなく、貫通孔を有するマイクロニードルを備えたマイクロニードル基板45を容易に、且つ、大量に得ることができる等、前記第1の実施の形態の場合と同様の効果を奏することができる。
【0036】
尚、本願発明は前記第1、第2の実施の形態に限定されるものではない。
例えば、マイクロニードル基板、突起部、保持梁等の形状は、前記第1、第2の実施の形態の例に限られず、様々な形状のものが考えられる。
又、環状凸部の高さ(h1)が突起部の高さ(h2)より高い場合も考えられ、その場合は環状凸部が皮膚表面を盛り上げることで、突起部を皮膚に突き刺し易くする。
又、保持梁はマイクロニードル基板全体の構造を保持することができれば、その位置・形状等は上記実施の形態の例に限られず、マイクロニードル基板の構造によっては保持梁がない場合も考えられる。
又、突起部の形状も、皮膚に突き刺さり易い形状であれば、前記第1、第2の実施の形態の例に限られない。
又、マイクロニードル基板の材料も、紫外線硬化性樹脂や熱硬化性樹脂に限られず、様々な硬化性樹脂を用いることが考えられる。
又、前記第1、第2の実施の形態のような製造方法によりマイクロニードルのみを作製し、そのマイクロニードルを他の部材と接着させたり、シリコン基板及びガラス基板上に配置することも考えられる。
又、前記第1、第2の実施の形態の場合には、1個のマイクロニードル基板に4個のマイクロニードル(突起)が設けられた構成を例に挙げて説明したが、それに限定されるものではなく、マイクロニードルが1個の場合、5個以上の場合等、様々な構成が想定される。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、例えば、マイクロニードル基板の製造方法に係り、特に、大掛かりでコストのかかる機材を用いることなく、短時間で容易にマイクロニードル基板を製造できるように工夫したものに係り、例えば、経皮薬剤投与用のマイクロニードル基板の製造に好適である。
【符号の説明】
【0038】
1 型
3 上型
5 下型
21 紫外線硬化性樹脂
21a 半硬化部
21b 未硬化部
25 空洞部(中空部)
29 マイクロニードル基板
30 本体
31 突起部(マイクロニードル)
32 下面壁
33 貫通孔
34 上面壁
35 環状凸部(凸部)
37 保持梁
39 薬剤
43 型
45 マイクロニードル基板
47 上型
49 下型
50 本体
51 空洞部(中空部)
53 突起部(マイクロニードル)
54 下面壁
55 貫通孔
57 環状凸部(凸部)
58 上面壁
59 保持梁
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性樹脂に熱又は光エネルギーを付与し、且つ、そのエネルギーを制御することにより上記硬化性樹脂の外周部を硬化部とすると共に内周部を未硬化部とし、
次に、上記未硬化部の硬化性樹脂を除去することにより貫通孔を備えたマイクロニードルを得るようにしたことを特徴とするマイクロニードル製造方法。
【請求項2】
請求項1記載のマイクロニードル製造方法において、
貫通孔付きマイクロニードルを複数成形可能な型を用意し該型内に硬化性樹脂を注入し、
次に、上記型の外側から硬化性樹脂に熱又は光エネルギーを付与し、且つ、そのエネルギーを制御することにより上記硬化性樹脂の外周部を硬化部とすると共に内周部を未硬化部とし、
次に、上記未硬化部の硬化性樹脂を除去することにより貫通孔を備えたマイクロニードルを複数得るようにしたことを特徴とするマイクロニードル製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のマイクロニードル製造方法において、
上記未硬化部の硬化性樹脂を除去した後薬剤を充填するようにしたことを特徴とするマイクロニードル製造方法。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れかに記載のマイクロニードル製造方法において、
上記硬化性樹脂は熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂であることを特徴とするマイクロニードル製造方法。
【請求項5】
中空部を有する本体と、上記本体の一方の外面に設けられ上記中空部と連絡する貫通孔を有する1個又は複数個のマイクロニードルと、上記本体の一方の外面の外周に沿って設けられた凸部と、上記本体の他方の外面に設けられた窪み状の保持梁と、を具備したことを特徴とするマイクロニードル基板。
【請求項6】
請求項5記載のマイクロニードル基板において、
上記中空部には薬剤が充填されていることを特徴とするマイクロニードル基板。
【請求項1】
硬化性樹脂に熱又は光エネルギーを付与し、且つ、そのエネルギーを制御することにより上記硬化性樹脂の外周部を硬化部とすると共に内周部を未硬化部とし、
次に、上記未硬化部の硬化性樹脂を除去することにより貫通孔を備えたマイクロニードルを得るようにしたことを特徴とするマイクロニードル製造方法。
【請求項2】
請求項1記載のマイクロニードル製造方法において、
貫通孔付きマイクロニードルを複数成形可能な型を用意し該型内に硬化性樹脂を注入し、
次に、上記型の外側から硬化性樹脂に熱又は光エネルギーを付与し、且つ、そのエネルギーを制御することにより上記硬化性樹脂の外周部を硬化部とすると共に内周部を未硬化部とし、
次に、上記未硬化部の硬化性樹脂を除去することにより貫通孔を備えたマイクロニードルを複数得るようにしたことを特徴とするマイクロニードル製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のマイクロニードル製造方法において、
上記未硬化部の硬化性樹脂を除去した後薬剤を充填するようにしたことを特徴とするマイクロニードル製造方法。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れかに記載のマイクロニードル製造方法において、
上記硬化性樹脂は熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂であることを特徴とするマイクロニードル製造方法。
【請求項5】
中空部を有する本体と、上記本体の一方の外面に設けられ上記中空部と連絡する貫通孔を有する1個又は複数個のマイクロニードルと、上記本体の一方の外面の外周に沿って設けられた凸部と、上記本体の他方の外面に設けられた窪み状の保持梁と、を具備したことを特徴とするマイクロニードル基板。
【請求項6】
請求項5記載のマイクロニードル基板において、
上記中空部には薬剤が充填されていることを特徴とするマイクロニードル基板。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−142968(P2011−142968A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−4487(P2010−4487)
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【出願人】(391008537)ASTI株式会社 (73)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【出願人】(391008537)ASTI株式会社 (73)
【Fターム(参考)】
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