マイクロメカニカルマイクロフォン構造体を有する素子、および、マイクロメカニカルマイクロフォン構造体を有する素子の製造方法
安定的かつ音響的感度が高いマイクロフォン構造体を有する素子と、このようなマイクロフォン構造体を有する素子を簡単かつ低コストで製造する方法とを提供する。このマイクロフォン素子は、音響的に動作するダイヤフラム(11)と、音響透過性であり固定された対向エレメント(12)とを有する。前記ダイヤフラムは、マイクロフォンコンデンサの変位可能な電極として機能し、前記対向エレメントは、該マイクロフォンコンデンサの対向電極として機能する。さらに前記マイクロフォン構造体は、前記マイクロフォンコンデンサの容量変化を検出および評価するための手段を有する。前記ダイヤフラム(11)は、前記素子の半導体基板(1)上のダイヤフラム層(3)で実現され、該半導体基板の裏面に設けられた音響空洞(13)上に架かるように形成されている。前記対向エレメント(12)は、前記ダイヤフラム(11)上の別の層(5)で実現されている。本発明では、前記別の層(5)が実質的に素子面全体にわたって延在し、該別の層(5)に応じて素子表面が十分に平坦になるように該別の層(5)は高低差を補償する。このことにより、ウェハ結合体において露出されたマイクロフォン構造体の層構成体上に膜を設けることができ、この膜により、本発明の複数の素子の分離を標準的なソーイング法で行うことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
先行技術
本発明は、マイクロメカニカルマイクロフォン構造体を有する素子に関する。このマイクロフォン構造体は、音響的に動作するダイヤフラムと、音響透過性である固定された対向エレメントとを有する。前記ダイヤフラムは、マイクロフォンコンデンサの変位可能な電極として機能し、前記対向エレメントは、該マイクロフォンコンデンサの対向電極として機能する。さらに前記マイクロフォン構造体は、前記マイクロフォンコンデンサの容量変化を検出および評価するための手段を有する。前記ダイヤフラムは、前記素子の半導体基板の上方のダイヤフラム層で実現され、該半導体基板の裏面に設けられた音響空洞上に架かるように設けられている。前記対向エレメントは、前記ダイヤフラムより上方の別の層で実現されている。
【0002】
さらに本発明は、マイクロメカニカルマイクロフォン構造体を有する素子をウェハ結合体で製造した後に該ウェハ構造体を分離するための方法に関する。
【0003】
US2002/0067663A1に、冒頭に述べた形式のマイクロフォン素子が開示されており、このマイクロフォン素子のマイクロメカニカルマイクロフォン構造体は、半導体基板上の層構成体で実現されている。この文献では、孔が開けられたこの対向エレメントは、素子表面にソケット状の隆起部を成し、その下に設けられたダイヤフラムの大きさに適合される。このダイヤフラムは、基板裏面に設けられた音響空洞の上方に架かるように設けられている。前記対向エレメントと前記ダイヤフラムとの間にエアギャップが設けられている。このエアギャップは、犠牲層エッチングによって形成されたものである。上記文献に開示されたマイクロフォン素子では、対向エレメントの剛性は基本的に、該対向エレメントの周縁部の形状に依存する。すなわち、前記ダイヤフラムとの間に間隔をおいて前記対向エレメントを保持するためのソケット縁部領域の形状に依存する。
【0004】
コスト上の理由から、このようなマイクロフォン素子の製造の可能な限り大部分は、ウェハ結合体で行われる。こうするためには通常、半導体ウェハ上に、ラスタ配置された多数のマイクロフォン構造体が形成される。その後に初めて、これらの複数の素子を分離する。その際には、上記文献に開示されたマイクロフォン素子の、非常に脆弱かつ水に影響を受けやすい構造が問題であることが判明している。
【0005】
このような素子において、水冷される丸鋸を用いて行われマイクロ技術で広く使用されている低コストのソーイングは、付加的な保護手段を用いないと問題になる。この問題は、噴射された水柱に対して、影響を受けやすいマイクロフォン構造体が耐えられないという事実に起因する。さらに、マイクロフォンコンデンサの両電極間に水が達すると、ダイヤフラムが対向エレメントに付着して元に戻らなくなり、このことによってもマイクロフォン機能が働かなくなってしまう。それゆえ、冒頭に述べた形式のマイクロメカニカルマイクロフォン素子の分離は、従来は特殊な処理を用いて行われていた。特に、いわゆるステルスダイシングを使用することが多く、このステルスダイシングでは、ウェハ材料中に目標脆弱箇所を形成する。その後、この目標脆弱箇所に沿って、一部ではドクターブレードを用いてウェハを分割し、個別チップに分離する。こうするためには特別な機器が必要であり、この特別な機器を用いることにより、投資コストの追加が必要となってしまう。さらに、通常使用される400μm〜800μmの厚さのウェハの場合、とりわけ、必要とされる「レーザ切断」回数が多いことにより、処理時間は比較的長くなる。
【0006】
本発明の概要
本発明では、安定的かつ音響的感度が高いマイクロフォン構造体を有する素子と、このようなマイクロフォン構造体を有する素子を簡単かつ低コストで製造する方法とを提供する。
【0007】
このことは本発明では、‐US2002/0067663A1に開示されたマイクロフォン素子と異なり‐前記対向エレメントが形成される前記別の層が実質的に素子面全体にわたって延在して高低差を補償することにより、素子表面全体が前記別の層に相応して十分に平坦になるようにすることによって実現される。
【0008】
本発明では、マイクロフォン構造体の対向エレメントが比較的厚い層に形成され、この厚い層が、素子表面全体にわたって延在して高低差を補償することにより、該対向エレメントの剛性に好影響が及ぼされるという認識が得られた。この場合、前記対向エレメントはどの側でも等しい強度で綴じ込まれ、該対向エレメントの強度は実質的に、層厚さにのみ依存するようになる。層が厚くなり、対向エレメントの剛性が高くなり、該対向エレメントが素子の層構成体内により高強度で綴じ込められると、平坦化作用がとりわけ対向エレメントの縁部領域においてより良好になる。また本発明では、公知の素子をこのように改良して実現されたマイクロフォン構造体を、たとえば慣性センサの製造ですでに使用されているバルクマイクロ技術や表面マイクロ技術の工程の流れで、簡単に製造できるという認識も得られた。このような十分に平坦な素子表面によってとりわけ、本発明のマイクロフォン素子の分離が簡略化する。本発明の製造方法に基づいてこのことを詳細に説明する。
【0009】
基本的には、本発明のマイクロフォン構造体を実現するために種々の手段が存在する。
【0010】
音響的特性が可能な限り等しい複数のマイクロフォン素子を大量生産するという観点では、本発明のマイクロフォン素子のダイヤフラム層が薄い多結晶シリコン層の形態で実現され、該薄い多結晶シリコン層が第1の絶縁層によって半導体基板から電気的に絶縁され、かつ、対向エレメントが厚い多結晶シリコンエピタキシャル層に形成され、該多結晶シリコンエピタキシャル層が第2の絶縁層によって前記ダイヤフラム層から電気的に絶縁されるのが有利であることが判明した。このような方法では、この第2の絶縁層の層厚さが、前記ダイヤフラムと前記対向エレメントとの間の距離を決定する。予め決定された層厚さを有する上述のような層構成体を製造するためには、制御性が良好である標準的なバルクマイクロマシン技術や表面マイクロマシン技術を使用することができる。
【0011】
しかし、ここで説明しているマイクロフォン素子の音響的特性は、ダイヤフラムと対向エレメントとの間の間隔によってのみ決定されるのではなく、層構成体内部に発生する内部応力、とりわけダイヤフラム内部に発生する内部応力によっても決定される。ダイヤフラム内部に制御されない応力が生じることにより、ダイヤフラムの不所望な事前変位が生じ、感度を決定するマイクロフォンコンデンサの特性が変化してしまう。それゆえ、本発明のマイクロフォン素子の有利な実施形態では、ダイヤフラム層に、該ダイヤフラムの応力を弛緩するばね懸架部が形成される。このばね要素はダイヤフラムと同じ材料から作製され、該ばね要素は可能な限り、薄い多結晶シリコン層の作製時に発生し制御が困難な層応力を補償するように形成される。このような層応力補償により、ダイヤフラムの音圧感度は実質的に、該ダイヤフラムのたわみ剛性によってのみ決定されるようになる。さらに、前記ダイヤフラムのばね懸架部はマイクロフォン有効信号を最大化するのにも寄与する。というのも、測定容量に寄与するダイヤフラムが対向電極に対してほぼ面平行に変位する間、有利には、音圧に起因する変形はばね要素の領域において発生するからである。ダイヤフラムの接続領域において発生する寄生容量は、ばね要素相互間の切欠部により、比較的小さくなる。このことにより、ダイヤフラムの共振周波数、ひいては、本発明のマイクロフォン素子の音響的動作領域を、ばね懸架部の構成とダイヤフラムの層厚さの事前設定とによって非常に良好に制御できるようにすることができる。
【0012】
前記ばね懸架部は有利には、少なくとも3つのばね要素を有する。これらのばね要素の固定位置は、前記第1の絶縁層と前記第2の絶縁層との間に埋め込むことができ、このことによって、半導体基板と前記対向エレメントとに結合することができる。また上述の構成の代わりに、前記第1の絶縁層および前記第2の絶縁層のうちいずれか1つの絶縁層を介してのみ、前記ばね要素を半導体基板に結合するか、または前記対向エレメントに結合することができる。
【0013】
すでに述べたように、ここで説明されたマイクロフォン素子の他に、このマイクロフォン素子の特に有利な製造方法も提供する。この製造方法ではまず、半導体基板上に、電気絶縁性の第1の犠牲層を設ける。その後、この第1の犠牲層上にダイヤフラム層を設け、各素子ごとに、ばね懸架部を有する少なくとも1つのダイヤフラムが形成されるように、該ダイヤフラム層をパターニングする。その後、電気絶縁性の第2の犠牲層を、パターニングされた前記ダイヤフラム層上に設け、その上にさらに、少なくとも1つの別の層を設け、各ダイヤフラムに対して音響透過性の対向エレメントが形成されるように該少なくとも1つの別の層をパターニングする。さらに、前記半導体基板の裏面に少なくとも1つの音響空洞を、各ダイヤフラムの下方に形成する。その後、少なくとも各ダイヤフラムの上方および下方の領域と、各ダイヤフラムのばね懸架部の上方および下方の領域とにおいて、前記第1の犠牲層と前記第2の犠牲層とを除去する。マイクロフォン構造体を露出させた後に初めて、最後に各マイクロフォン素子を分離する。
【0014】
ダイヤフラム層として有利には、薄い多結晶シリコン層を前記第1の犠牲層上に成膜する。さらに前記第2の犠牲層上に、前記対向エレメントが形成される前記別の層として、厚い多結晶シリコンエピタキシャル層を成長させるのが有利であることが判明した。マイクロフォン素子の製造方法のこのような実施形態の工程順序は、すでに実証済みであり制御性が良好である、慣性センサの作製方法に基づいている。それゆえ、本発明においてダイヤフラム層として使用される多結晶シリコン層は、慣性センサを作製する場合には、埋込導体路を実現するために使用されるものであり、本発明では対向エレメントが形成される厚い多結晶シリコンエピタキシャル層は、慣性センサでは機能層として使用されるものである。
【0015】
電気絶縁性である前記第1の犠牲層および前記第2の犠牲層は、マイクロフォンコンデンサの両電極間を電気的に絶縁する機能と、該マイクロフォンコンデンサの電極を半導体基板から電気的に絶縁する機能とを有し、さらに、前記第1の犠牲層および前記第2の犠牲層を用いてダイヤフラムを露出させる。本発明の製造方法では、両犠牲層はそれぞれさらに、エッチングストップ境界の機能を有することができる。その際には、対向エレメントないしは厚い多結晶シリコンエピタキシャル層のパターニングが異方性エッチング法で行われる場合、とりわけトレンチ法またはDRIE処理法で行われる場合、前記第2の犠牲層は有利には、このパターニング時にエッチングストップとして機能する。第1の犠牲層は有利には、音響空洞を異方性エッチング法で形成する場合、とりわけDRIE法で形成する場合に、エッチングストップとして機能する。
【0016】
ダイヤフラムを露出させるために有利なのは、第1の犠牲層および第2の犠牲層を等方性エッチング法で除去する。その際には、音響空洞と、対向エレメントに設けられた貫通口とを介してエッチングを施す。犠牲層の材料としては、SiO2またはSiGeが特に適している。
【0017】
マイクロシステム技術において使用される数多くの材料と比較して、とりわけシリコンと比較してエッチング処理の選択性が高いことから、SiGe犠牲層を使用し、ClF3をエッチングガスとして使用するのが特に有利である。このようなエッチング処理は、エッチング速度が高く、この高いエッチング速度により、大きなアンダーエッチング幅を実現できることを特徴とする。さらに、SiGe犠牲層は特に低応力性であるため、この材料を使用して、素子構造にさらに付加的な応力をかけることなく、比較的厚い犠牲層を実現することができ、この厚い犠牲層によって電極間隔を大きくすることができる。このことにより、マイクロフォン素子の設計時の構成自由度が高くなる。
【0018】
すでに述べたように、本発明のマイクロフォン構造体はウェハ結合体の状態で露出され、その後に初めて各マイクロフォン構造体が分離される。その際には、本発明の製造方法の特に有利な実施形態では、本発明のマイクロフォン素子の構造を利用する。すなわち、対向エレメントが形成された層が層構成体の上側にあり、該対向エレメントが形成された層が比較的厚くて安定的であり、本発明では十分に平坦になっていることを利用する。このような層の特徴により、マイクロフォン構造体に粒子や液体が侵入するのを高信頼性で阻止する保護膜を設けることができ、この保護膜により、マイクロメカニカル技術において標準的に使用されているソーイング法で個々のマイクロフォン素子を分離することができる。このことは、マイクロフォン素子の分離に現在使用されている手法と比較してコスト上非常に有利である。このマイクロフォン素子の分離後、前記保護膜を可能な限り残さないように除去する。
【0019】
この保護膜の除去に関しては、UV照射によって付着力を失う保護膜を使用するか、または、熱処理によって付着力を失う保護膜を使用するか、または、UV照射と熱処理とを併用することにより付着力を失う保護膜を使用するのが有利であることが判明した。このような保護膜は、真空中で層構成体の十分に平坦な表面上に簡単に積層することができ、分離工程後には、UV照射と熱処理とを併用することにより、該保護膜を残さないように、かつマイクロフォン構造体を損傷させないように、該保護膜を素子表面から剥離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の素子10のマイクロフォン構造体の概略的な断面図である。
【図2】図1に示されたマイクロフォン構造体を作製するための本発明の製造方法の層構成を概略的に示す断面図である。
【図3】本発明のマイクロフォン素子のばね懸架部を備えた円形のダイヤフラムの上面図である。
【図4】ウェハ結合体で作製された複数のマイクロフォン構造体を分離する本発明の分離工程を概略的に示す断面図である。
【0021】
既に上で述べたように、本発明の思想を有利に実施し発展させるには様々な方法がある。これらの方法に関しては、独立請求項に従属している請求項と、図面に基づく本発明のいくつかの実施例の以下の説明とを参照されたい。
【0022】
本発明の実施形態
図1に示された素子10は、音響的に動作する変位可能なダイヤフラム11を備えたマイクロメカニカルマイクロフォン構造体と、音響透過性である固定された対向エレメント12とを有する。この対向エレメント12はバックプレートとも称される。ここではダイヤフラム11および対向エレメント12は、半導体基板1上に設けられた層構成体で実現されている。前記半導体基板1の裏面に音響空洞13が形成されている。この音響空洞13は、前記半導体基板1の厚さ全体にわたって延在し、この音響空洞13の上方に、該半導体基板1の上面に配置されたダイヤフラム11が架かるように設けられている。前記ダイヤフラム11は薄い多結晶シリコン層3で実現されており、第1の絶縁層2によって半導体基板1から電気的に絶縁されている。この薄いダイヤフラム11は、多結晶シリコン層3に形成された、該薄いダイヤフラム11のばね懸架部14によって、さらに変位しやすくなる。このことと対照的に対向エレメント12は、ダイヤフラム11の上方に設けられた比較的厚い多結晶シリコンエピタキシャル層5に形成され、層構成体に固定的に結合されている。この対向エレメント12は第2の絶縁層4によって、ダイヤフラム11からも半導体基板1からも電気的に絶縁されている。さらに、前記第2の絶縁層4の厚さが、静止状態のダイヤフラム11と対向エレメント12との間の距離を決定する。前記対向エレメント12の中央領域に貫通口15が形成されており、この貫通口15によって、対向エレメント12は音響透過性となり、音波に起因して生じる前記ダイヤフラム11の変位が妨害されなくなる。
【0023】
ダイヤフラム11および対向エレメント12が、マイクロフォンコンデンサの電極となり、このマイクロフォンコンデンサの容量は、該ダイヤフラム11と該対向エレメント12との間の距離に応じて変化する。このマイクロフォンコンデンサの容量変化を検出するためには、前記ダイヤフラム11と前記対向電極12との間に蓄電電圧が印加される。この蓄電電圧はバイアス電圧とも称される。この図では、前記マイクロフォンコンデンサの容量変化を検出および評価するための手段は詳細に示されていない。
【0024】
本発明では、対向エレメント12が形成された多結晶シリコンエピタキシャル層5は素子面全体にわたって延在し、高低差を補償する。このことにより、素子表面全体がこの多結晶シリコンエピタキシャル層5に相応して十分に平坦になる。このことはとりわけ、複数のこれらの素子を分離する際に有利であることが判明している。このことについては以下で、図4a〜4fを参照して再度詳細に説明する。
【0025】
以下、図2a〜2fを参照して、図1に示された素子10のマイクロフォン構造体を作製するための方法の有利な実施形態を説明する。この方法は半導体基板1から出発する。この半導体基板1はたとえば、図2aに示されたようなシリコンウェハである。第1のステップでは、電気絶縁性の第1の犠牲層2をウェハ表側に設ける。この第1の犠牲層2は、SiO2層またはSiGe層とすることができる。その後、この第1の犠牲層2上にダイヤフラム層3を成膜し、各素子ごとに、ばね懸架部を有する少なくとも1つのダイヤフラムが形成されるように、該ダイヤフラム層3をパターニングする。図3に、このようなダイヤフラム構造の一例を示しており、図3を参照してこのダイヤフラム構造例を説明する。同図に示された実施例では、ダイヤフラム層3は多結晶シリコン層であり、該多結晶シリコン層の層厚さは、マイクロフォン素子に対して課される要件に応じて、0.1μm〜3μmである。
【0026】
図2bに、パターニングされたダイヤフラム層3上に電気絶縁性の第2の犠牲層4が設けられパターニングされた後の層構成を示す。ここでは、第2の犠牲層をパターニングすることによって、マイクロフォン構造体の電気的コンタクトを行うための準備を行った。有利には、第1の犠牲層2および第2の犠牲層4の双方に対して同じ材料を選定する。このことにより、後の工程において1つのエッチング工程で、ダイヤフラムの表側と裏面とから第1の犠牲層2および第2の犠牲層4の双方の材料を除去することができる。
【0027】
その後、第2の犠牲層4上に厚い多結晶シリコンエピタキシャル層5を生成する。図2cにこのことを示している。こうするためには、層材料は有利には、LPCVD多結晶シリコン薄膜から成る開始層から、気相でエピタキシャル成長させることによって形成される。このようにして形成される多結晶シリコンエピタキシャル層5の厚さは、マイクロフォン素子に課される要件に応じて、3μm〜20μmのオーダとすることができる。図2cでは、層構成体が多結晶シリコンエピタキシャル層5によって平坦化されたのが分かる。このことは、比較的大きな層厚さで成膜手法を実施することによって改善される。次に、多結晶シリコンエピタキシャル層5のこの平坦な表面に、パターニングされたメタライジング6を設ける。これも、マイクロフォン構造体の個々の構成要素をコンタクトするのに使用される。またこのメタライジングは、製造方法のより後の時点で層構成体に設けることもできる。
【0028】
図2dに、多結晶シリコンエピタキシャル層5が異方性トレンチ処理またはDRIE法でパターニングされた後の層構成体を示す。ここでは、第2の犠牲層4をエッチングストップ境界として使用した。このパターニングでは、多結晶シリコンエピタキシャル層5においてマイクロフォン構造体の対向エレメント12を露出させ、貫通口15を設けた。トレンチ溝7は、多結晶シリコンエピタキシャル層5の個々の領域を画定するだけでなく、これらの個々の領域を電気的に分離するのにも使用される。これにより、多結晶シリコンエピタキシャル層5のパターニングでは、基板1およびダイヤフラムとに対するコンタクト領域16および17も形成された。
【0029】
その後、同図中に示された実施例では、基板裏面から行われる異方性DRIE法で音響空洞13を形成した。このことを図2eに示す。犠牲層2はこの裏面エッチング工程のためのエッチングストップ境界として使用された。この裏面エッチング工程は、多結晶シリコンエピタキシャル層5のパターニング前にも行うことができる。
【0030】
最後に、犠牲層を等方性エッチングすることにより、マイクロフォン構造体のダイヤフラム11と、該ダイヤフラム11のばね懸架部14とを露出させた。そのために必要なエッチング作用は、層構成体の両側から同時に行われた。その際にはエッチングガスは、表側からはトレンチ溝7と貫通口15とを介して犠牲層4に達し、裏面からは音響空洞13を介して犠牲層2に達する。SiO2犠牲層の場合には、犠牲層材料は有利にはHF蒸気によって剥離される。SiGe犠牲層の場合には、ClF3がエッチングガスとして使用される。図2fに、上記エッチング工程によって得られたものとして、図1のマイクロフォン構造体を示す。同図から、ダイヤフラム11と対向エレメント12との間隔が犠牲層4の層厚さによって決定されるのが分かる。
【0031】
上記で説明した方法では、本発明のマイクロフォン素子のダイヤフラムは、該ダイヤフラムのばね懸架部とともに、1つの薄い多結晶シリコン層で形成された。その際には、個々のダイヤフラムのばね要素は可能な限り、該ダイヤフラムがダイヤフラム材料の層応力に十分に依存せずに懸架されるように設けられる。図3に、円形のダイヤフラム30のばね懸架部の有利な配置構成を示す。ダイヤフラム30はここでは、全部で6つのばね要素31で懸架されている。これらのばね要素31は、湾曲されたウェブの形態で実現されており、これらのウェブはダイヤフラム周縁に沿って配置されており、各ウェブはそれぞれ、該ダイヤフラム周縁の1/6にわたって延在する。各ばね要素31の一端はダイヤフラム30に結合されており、各ばね要素31の他端は、層構成体の周縁の縁部領域に埋め込まれている。こうするためにはたとえば、各ばね要素31の前記他端が対向エレメントにも基板にも結合されるように、該他端を両犠牲層間に埋め込むことができる。この構成の代わりに、これらのばねの端部の片面のみを、対向エレメントまたは基板のいずれかに結合することもできる。多結晶シリコンダイヤフラム層の多結晶シリコンが引張状態で成膜された場合にも、またこの多結晶シリコンが圧縮状態で成膜された場合にも、図中に示されたばね懸架部が、該多結晶シリコンダイヤフラム層の生成時に発生し制御が困難である層応力を少なくともある程度の限界内で補償できるように構成されている。図中に示されたダイヤフラム30はばね要素31によって安定的に懸架されている。圧力が加えられたときの変形は主に、ばね要素31の領域で生じる。このことにより、マイクロフォン機能に決定的に重要であり可動電極として機能するダイヤフラム面は、対向エレメントに対してほぼ面平行に変位する。このことは、マイクロフォン有効信号に好影響を及ぼす。
【0032】
ここで説明した実施例では、マイクロフォン構造体を過負荷から保護する過負荷保護部として、簡単な電子回路機能が設けられている。評価電子回路が、ダイヤフラムが対向エレメントに当たったことを自動的に識別する。過負荷がかかった場合、たとえば音圧が非常に高い場合や衝撃の作用で、このようにダイヤフラムが対向エレメントに当たることがある。その際に発生する静電付着力を緩和させ、静電力に起因してダイヤフラムが対向エレメントに永続的に付着するのを避けるためには、バイアス電圧を一時的に中断する。電圧がない状態になると、ダイヤフラムは自然に対向エレメントから離れる。このコンセプトはとりわけ、5Vを下回るバイアス電圧に適している。というのも、このように低いバイアス電圧の場合、ダイヤフラムと対向エレメントとが電気的に溶接することがないからである。
【0033】
図2a〜2fを参照して説明したように、本発明のマイクロフォン構造体の作製は、ダイヤフラムをウェハ結合体の状態で露出させることも含めて行われる。以下、図4a〜4fを参照して、これらのマイクロフォン構造体の分離を行うのに特に有利な方法を説明する。
【0034】
まず、真空積層機器を使用して、特別な付着特性を有する保護膜41を、本発明によって十分に平坦にされた、層構成体40の上面に設ける。このことは図4aに示されている。この保護膜41は、UV光と熱とが併用されてこれらが作用することにより付着力を失うものであり、このことにより、分離工程後に保護膜41を残さないように簡単に剥離することができる。
【0035】
図4bに、ソーイング膜42が被覆されたソーイングフレームに層構成体40が接着された後の、保護膜41を有する該層構成体40を示す。ソーイング膜42は少なくとも、保護膜41が付着力を失う温度に対して耐性を有するように耐熱性でなければならない。さらに、保護膜41の付着力およびソーイング膜42の付着力は、たとえば1×1mm2のチップ寸法のチップをソーイング工程中は付着させたままにできる程度の付着力でなければならない。
【0036】
層構成体40と、とりわけ該層構成体40において露出されたマイクロフォン構造体とは、保護膜41によって保護されるので、水冷される丸鋸を使用して該層構成体40をソーイング分離できるようになる。その際には保護膜41は、マイクロフォン構造体に水やソーイング粒子が侵入するのを有効に阻止する。図4cには、保護膜41が設けられた層構成体40がすでにソーイング分離された状態が示されている。しかし、ソーイング分離された個々の素子50は未だ、繋がったままのソーイング膜42に付着している。
【0037】
このソーイング工程の後、保護膜41を前記個々の素子50の上面から除去することができる。こうするためにはまず、保護膜41にUV光を照射する。その後に熱処理を行う。この熱処理中、積層された保護膜41は素子上面から完全に剥離される。このようにして、熱処理後には各素子50上に保護膜40の膜片が残る。この膜片は、吸引またはブローにより除去することができる。ここで説明した実施例では、保護膜41の膜片はスタンプ法(Stempelverfahren)によって捕捉される。このことは、図4dおよび4eに示されている。こうするためには、さらに別の第2のウェハ43を使用する。この第2のウェハ43のスタンプ表面上に、両面接着性の膜44と、軟質のポリマー層または軟質のレジスト層とが設けられている。
【0038】
その後、ソーイング膜42を膨張させ、個々の素子50をピックアンドプレイス器具によって該ソーイング膜42からピックアップおよびパッケージングする。図4fにこのことを示している。
【0039】
素子表面が十分に平坦になった本発明のマイクロフォン構造体により、ウェハ層構成体の上面に保護膜を設けることができるようになる。このことにより、本発明のマイクロフォン素子を標準的なソーイング工程で分離することができる。その際には、前記第2の層を設けて除去することによって生じる付加的な工程上の手間は無視できる程度である。保護膜41自体も比較的低コストであるから、この保護膜41を分離方法で使用することによって個々の素子全体にかかる全コストが有意に増加することはない。
【技術分野】
【0001】
先行技術
本発明は、マイクロメカニカルマイクロフォン構造体を有する素子に関する。このマイクロフォン構造体は、音響的に動作するダイヤフラムと、音響透過性である固定された対向エレメントとを有する。前記ダイヤフラムは、マイクロフォンコンデンサの変位可能な電極として機能し、前記対向エレメントは、該マイクロフォンコンデンサの対向電極として機能する。さらに前記マイクロフォン構造体は、前記マイクロフォンコンデンサの容量変化を検出および評価するための手段を有する。前記ダイヤフラムは、前記素子の半導体基板の上方のダイヤフラム層で実現され、該半導体基板の裏面に設けられた音響空洞上に架かるように設けられている。前記対向エレメントは、前記ダイヤフラムより上方の別の層で実現されている。
【0002】
さらに本発明は、マイクロメカニカルマイクロフォン構造体を有する素子をウェハ結合体で製造した後に該ウェハ構造体を分離するための方法に関する。
【0003】
US2002/0067663A1に、冒頭に述べた形式のマイクロフォン素子が開示されており、このマイクロフォン素子のマイクロメカニカルマイクロフォン構造体は、半導体基板上の層構成体で実現されている。この文献では、孔が開けられたこの対向エレメントは、素子表面にソケット状の隆起部を成し、その下に設けられたダイヤフラムの大きさに適合される。このダイヤフラムは、基板裏面に設けられた音響空洞の上方に架かるように設けられている。前記対向エレメントと前記ダイヤフラムとの間にエアギャップが設けられている。このエアギャップは、犠牲層エッチングによって形成されたものである。上記文献に開示されたマイクロフォン素子では、対向エレメントの剛性は基本的に、該対向エレメントの周縁部の形状に依存する。すなわち、前記ダイヤフラムとの間に間隔をおいて前記対向エレメントを保持するためのソケット縁部領域の形状に依存する。
【0004】
コスト上の理由から、このようなマイクロフォン素子の製造の可能な限り大部分は、ウェハ結合体で行われる。こうするためには通常、半導体ウェハ上に、ラスタ配置された多数のマイクロフォン構造体が形成される。その後に初めて、これらの複数の素子を分離する。その際には、上記文献に開示されたマイクロフォン素子の、非常に脆弱かつ水に影響を受けやすい構造が問題であることが判明している。
【0005】
このような素子において、水冷される丸鋸を用いて行われマイクロ技術で広く使用されている低コストのソーイングは、付加的な保護手段を用いないと問題になる。この問題は、噴射された水柱に対して、影響を受けやすいマイクロフォン構造体が耐えられないという事実に起因する。さらに、マイクロフォンコンデンサの両電極間に水が達すると、ダイヤフラムが対向エレメントに付着して元に戻らなくなり、このことによってもマイクロフォン機能が働かなくなってしまう。それゆえ、冒頭に述べた形式のマイクロメカニカルマイクロフォン素子の分離は、従来は特殊な処理を用いて行われていた。特に、いわゆるステルスダイシングを使用することが多く、このステルスダイシングでは、ウェハ材料中に目標脆弱箇所を形成する。その後、この目標脆弱箇所に沿って、一部ではドクターブレードを用いてウェハを分割し、個別チップに分離する。こうするためには特別な機器が必要であり、この特別な機器を用いることにより、投資コストの追加が必要となってしまう。さらに、通常使用される400μm〜800μmの厚さのウェハの場合、とりわけ、必要とされる「レーザ切断」回数が多いことにより、処理時間は比較的長くなる。
【0006】
本発明の概要
本発明では、安定的かつ音響的感度が高いマイクロフォン構造体を有する素子と、このようなマイクロフォン構造体を有する素子を簡単かつ低コストで製造する方法とを提供する。
【0007】
このことは本発明では、‐US2002/0067663A1に開示されたマイクロフォン素子と異なり‐前記対向エレメントが形成される前記別の層が実質的に素子面全体にわたって延在して高低差を補償することにより、素子表面全体が前記別の層に相応して十分に平坦になるようにすることによって実現される。
【0008】
本発明では、マイクロフォン構造体の対向エレメントが比較的厚い層に形成され、この厚い層が、素子表面全体にわたって延在して高低差を補償することにより、該対向エレメントの剛性に好影響が及ぼされるという認識が得られた。この場合、前記対向エレメントはどの側でも等しい強度で綴じ込まれ、該対向エレメントの強度は実質的に、層厚さにのみ依存するようになる。層が厚くなり、対向エレメントの剛性が高くなり、該対向エレメントが素子の層構成体内により高強度で綴じ込められると、平坦化作用がとりわけ対向エレメントの縁部領域においてより良好になる。また本発明では、公知の素子をこのように改良して実現されたマイクロフォン構造体を、たとえば慣性センサの製造ですでに使用されているバルクマイクロ技術や表面マイクロ技術の工程の流れで、簡単に製造できるという認識も得られた。このような十分に平坦な素子表面によってとりわけ、本発明のマイクロフォン素子の分離が簡略化する。本発明の製造方法に基づいてこのことを詳細に説明する。
【0009】
基本的には、本発明のマイクロフォン構造体を実現するために種々の手段が存在する。
【0010】
音響的特性が可能な限り等しい複数のマイクロフォン素子を大量生産するという観点では、本発明のマイクロフォン素子のダイヤフラム層が薄い多結晶シリコン層の形態で実現され、該薄い多結晶シリコン層が第1の絶縁層によって半導体基板から電気的に絶縁され、かつ、対向エレメントが厚い多結晶シリコンエピタキシャル層に形成され、該多結晶シリコンエピタキシャル層が第2の絶縁層によって前記ダイヤフラム層から電気的に絶縁されるのが有利であることが判明した。このような方法では、この第2の絶縁層の層厚さが、前記ダイヤフラムと前記対向エレメントとの間の距離を決定する。予め決定された層厚さを有する上述のような層構成体を製造するためには、制御性が良好である標準的なバルクマイクロマシン技術や表面マイクロマシン技術を使用することができる。
【0011】
しかし、ここで説明しているマイクロフォン素子の音響的特性は、ダイヤフラムと対向エレメントとの間の間隔によってのみ決定されるのではなく、層構成体内部に発生する内部応力、とりわけダイヤフラム内部に発生する内部応力によっても決定される。ダイヤフラム内部に制御されない応力が生じることにより、ダイヤフラムの不所望な事前変位が生じ、感度を決定するマイクロフォンコンデンサの特性が変化してしまう。それゆえ、本発明のマイクロフォン素子の有利な実施形態では、ダイヤフラム層に、該ダイヤフラムの応力を弛緩するばね懸架部が形成される。このばね要素はダイヤフラムと同じ材料から作製され、該ばね要素は可能な限り、薄い多結晶シリコン層の作製時に発生し制御が困難な層応力を補償するように形成される。このような層応力補償により、ダイヤフラムの音圧感度は実質的に、該ダイヤフラムのたわみ剛性によってのみ決定されるようになる。さらに、前記ダイヤフラムのばね懸架部はマイクロフォン有効信号を最大化するのにも寄与する。というのも、測定容量に寄与するダイヤフラムが対向電極に対してほぼ面平行に変位する間、有利には、音圧に起因する変形はばね要素の領域において発生するからである。ダイヤフラムの接続領域において発生する寄生容量は、ばね要素相互間の切欠部により、比較的小さくなる。このことにより、ダイヤフラムの共振周波数、ひいては、本発明のマイクロフォン素子の音響的動作領域を、ばね懸架部の構成とダイヤフラムの層厚さの事前設定とによって非常に良好に制御できるようにすることができる。
【0012】
前記ばね懸架部は有利には、少なくとも3つのばね要素を有する。これらのばね要素の固定位置は、前記第1の絶縁層と前記第2の絶縁層との間に埋め込むことができ、このことによって、半導体基板と前記対向エレメントとに結合することができる。また上述の構成の代わりに、前記第1の絶縁層および前記第2の絶縁層のうちいずれか1つの絶縁層を介してのみ、前記ばね要素を半導体基板に結合するか、または前記対向エレメントに結合することができる。
【0013】
すでに述べたように、ここで説明されたマイクロフォン素子の他に、このマイクロフォン素子の特に有利な製造方法も提供する。この製造方法ではまず、半導体基板上に、電気絶縁性の第1の犠牲層を設ける。その後、この第1の犠牲層上にダイヤフラム層を設け、各素子ごとに、ばね懸架部を有する少なくとも1つのダイヤフラムが形成されるように、該ダイヤフラム層をパターニングする。その後、電気絶縁性の第2の犠牲層を、パターニングされた前記ダイヤフラム層上に設け、その上にさらに、少なくとも1つの別の層を設け、各ダイヤフラムに対して音響透過性の対向エレメントが形成されるように該少なくとも1つの別の層をパターニングする。さらに、前記半導体基板の裏面に少なくとも1つの音響空洞を、各ダイヤフラムの下方に形成する。その後、少なくとも各ダイヤフラムの上方および下方の領域と、各ダイヤフラムのばね懸架部の上方および下方の領域とにおいて、前記第1の犠牲層と前記第2の犠牲層とを除去する。マイクロフォン構造体を露出させた後に初めて、最後に各マイクロフォン素子を分離する。
【0014】
ダイヤフラム層として有利には、薄い多結晶シリコン層を前記第1の犠牲層上に成膜する。さらに前記第2の犠牲層上に、前記対向エレメントが形成される前記別の層として、厚い多結晶シリコンエピタキシャル層を成長させるのが有利であることが判明した。マイクロフォン素子の製造方法のこのような実施形態の工程順序は、すでに実証済みであり制御性が良好である、慣性センサの作製方法に基づいている。それゆえ、本発明においてダイヤフラム層として使用される多結晶シリコン層は、慣性センサを作製する場合には、埋込導体路を実現するために使用されるものであり、本発明では対向エレメントが形成される厚い多結晶シリコンエピタキシャル層は、慣性センサでは機能層として使用されるものである。
【0015】
電気絶縁性である前記第1の犠牲層および前記第2の犠牲層は、マイクロフォンコンデンサの両電極間を電気的に絶縁する機能と、該マイクロフォンコンデンサの電極を半導体基板から電気的に絶縁する機能とを有し、さらに、前記第1の犠牲層および前記第2の犠牲層を用いてダイヤフラムを露出させる。本発明の製造方法では、両犠牲層はそれぞれさらに、エッチングストップ境界の機能を有することができる。その際には、対向エレメントないしは厚い多結晶シリコンエピタキシャル層のパターニングが異方性エッチング法で行われる場合、とりわけトレンチ法またはDRIE処理法で行われる場合、前記第2の犠牲層は有利には、このパターニング時にエッチングストップとして機能する。第1の犠牲層は有利には、音響空洞を異方性エッチング法で形成する場合、とりわけDRIE法で形成する場合に、エッチングストップとして機能する。
【0016】
ダイヤフラムを露出させるために有利なのは、第1の犠牲層および第2の犠牲層を等方性エッチング法で除去する。その際には、音響空洞と、対向エレメントに設けられた貫通口とを介してエッチングを施す。犠牲層の材料としては、SiO2またはSiGeが特に適している。
【0017】
マイクロシステム技術において使用される数多くの材料と比較して、とりわけシリコンと比較してエッチング処理の選択性が高いことから、SiGe犠牲層を使用し、ClF3をエッチングガスとして使用するのが特に有利である。このようなエッチング処理は、エッチング速度が高く、この高いエッチング速度により、大きなアンダーエッチング幅を実現できることを特徴とする。さらに、SiGe犠牲層は特に低応力性であるため、この材料を使用して、素子構造にさらに付加的な応力をかけることなく、比較的厚い犠牲層を実現することができ、この厚い犠牲層によって電極間隔を大きくすることができる。このことにより、マイクロフォン素子の設計時の構成自由度が高くなる。
【0018】
すでに述べたように、本発明のマイクロフォン構造体はウェハ結合体の状態で露出され、その後に初めて各マイクロフォン構造体が分離される。その際には、本発明の製造方法の特に有利な実施形態では、本発明のマイクロフォン素子の構造を利用する。すなわち、対向エレメントが形成された層が層構成体の上側にあり、該対向エレメントが形成された層が比較的厚くて安定的であり、本発明では十分に平坦になっていることを利用する。このような層の特徴により、マイクロフォン構造体に粒子や液体が侵入するのを高信頼性で阻止する保護膜を設けることができ、この保護膜により、マイクロメカニカル技術において標準的に使用されているソーイング法で個々のマイクロフォン素子を分離することができる。このことは、マイクロフォン素子の分離に現在使用されている手法と比較してコスト上非常に有利である。このマイクロフォン素子の分離後、前記保護膜を可能な限り残さないように除去する。
【0019】
この保護膜の除去に関しては、UV照射によって付着力を失う保護膜を使用するか、または、熱処理によって付着力を失う保護膜を使用するか、または、UV照射と熱処理とを併用することにより付着力を失う保護膜を使用するのが有利であることが判明した。このような保護膜は、真空中で層構成体の十分に平坦な表面上に簡単に積層することができ、分離工程後には、UV照射と熱処理とを併用することにより、該保護膜を残さないように、かつマイクロフォン構造体を損傷させないように、該保護膜を素子表面から剥離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の素子10のマイクロフォン構造体の概略的な断面図である。
【図2】図1に示されたマイクロフォン構造体を作製するための本発明の製造方法の層構成を概略的に示す断面図である。
【図3】本発明のマイクロフォン素子のばね懸架部を備えた円形のダイヤフラムの上面図である。
【図4】ウェハ結合体で作製された複数のマイクロフォン構造体を分離する本発明の分離工程を概略的に示す断面図である。
【0021】
既に上で述べたように、本発明の思想を有利に実施し発展させるには様々な方法がある。これらの方法に関しては、独立請求項に従属している請求項と、図面に基づく本発明のいくつかの実施例の以下の説明とを参照されたい。
【0022】
本発明の実施形態
図1に示された素子10は、音響的に動作する変位可能なダイヤフラム11を備えたマイクロメカニカルマイクロフォン構造体と、音響透過性である固定された対向エレメント12とを有する。この対向エレメント12はバックプレートとも称される。ここではダイヤフラム11および対向エレメント12は、半導体基板1上に設けられた層構成体で実現されている。前記半導体基板1の裏面に音響空洞13が形成されている。この音響空洞13は、前記半導体基板1の厚さ全体にわたって延在し、この音響空洞13の上方に、該半導体基板1の上面に配置されたダイヤフラム11が架かるように設けられている。前記ダイヤフラム11は薄い多結晶シリコン層3で実現されており、第1の絶縁層2によって半導体基板1から電気的に絶縁されている。この薄いダイヤフラム11は、多結晶シリコン層3に形成された、該薄いダイヤフラム11のばね懸架部14によって、さらに変位しやすくなる。このことと対照的に対向エレメント12は、ダイヤフラム11の上方に設けられた比較的厚い多結晶シリコンエピタキシャル層5に形成され、層構成体に固定的に結合されている。この対向エレメント12は第2の絶縁層4によって、ダイヤフラム11からも半導体基板1からも電気的に絶縁されている。さらに、前記第2の絶縁層4の厚さが、静止状態のダイヤフラム11と対向エレメント12との間の距離を決定する。前記対向エレメント12の中央領域に貫通口15が形成されており、この貫通口15によって、対向エレメント12は音響透過性となり、音波に起因して生じる前記ダイヤフラム11の変位が妨害されなくなる。
【0023】
ダイヤフラム11および対向エレメント12が、マイクロフォンコンデンサの電極となり、このマイクロフォンコンデンサの容量は、該ダイヤフラム11と該対向エレメント12との間の距離に応じて変化する。このマイクロフォンコンデンサの容量変化を検出するためには、前記ダイヤフラム11と前記対向電極12との間に蓄電電圧が印加される。この蓄電電圧はバイアス電圧とも称される。この図では、前記マイクロフォンコンデンサの容量変化を検出および評価するための手段は詳細に示されていない。
【0024】
本発明では、対向エレメント12が形成された多結晶シリコンエピタキシャル層5は素子面全体にわたって延在し、高低差を補償する。このことにより、素子表面全体がこの多結晶シリコンエピタキシャル層5に相応して十分に平坦になる。このことはとりわけ、複数のこれらの素子を分離する際に有利であることが判明している。このことについては以下で、図4a〜4fを参照して再度詳細に説明する。
【0025】
以下、図2a〜2fを参照して、図1に示された素子10のマイクロフォン構造体を作製するための方法の有利な実施形態を説明する。この方法は半導体基板1から出発する。この半導体基板1はたとえば、図2aに示されたようなシリコンウェハである。第1のステップでは、電気絶縁性の第1の犠牲層2をウェハ表側に設ける。この第1の犠牲層2は、SiO2層またはSiGe層とすることができる。その後、この第1の犠牲層2上にダイヤフラム層3を成膜し、各素子ごとに、ばね懸架部を有する少なくとも1つのダイヤフラムが形成されるように、該ダイヤフラム層3をパターニングする。図3に、このようなダイヤフラム構造の一例を示しており、図3を参照してこのダイヤフラム構造例を説明する。同図に示された実施例では、ダイヤフラム層3は多結晶シリコン層であり、該多結晶シリコン層の層厚さは、マイクロフォン素子に対して課される要件に応じて、0.1μm〜3μmである。
【0026】
図2bに、パターニングされたダイヤフラム層3上に電気絶縁性の第2の犠牲層4が設けられパターニングされた後の層構成を示す。ここでは、第2の犠牲層をパターニングすることによって、マイクロフォン構造体の電気的コンタクトを行うための準備を行った。有利には、第1の犠牲層2および第2の犠牲層4の双方に対して同じ材料を選定する。このことにより、後の工程において1つのエッチング工程で、ダイヤフラムの表側と裏面とから第1の犠牲層2および第2の犠牲層4の双方の材料を除去することができる。
【0027】
その後、第2の犠牲層4上に厚い多結晶シリコンエピタキシャル層5を生成する。図2cにこのことを示している。こうするためには、層材料は有利には、LPCVD多結晶シリコン薄膜から成る開始層から、気相でエピタキシャル成長させることによって形成される。このようにして形成される多結晶シリコンエピタキシャル層5の厚さは、マイクロフォン素子に課される要件に応じて、3μm〜20μmのオーダとすることができる。図2cでは、層構成体が多結晶シリコンエピタキシャル層5によって平坦化されたのが分かる。このことは、比較的大きな層厚さで成膜手法を実施することによって改善される。次に、多結晶シリコンエピタキシャル層5のこの平坦な表面に、パターニングされたメタライジング6を設ける。これも、マイクロフォン構造体の個々の構成要素をコンタクトするのに使用される。またこのメタライジングは、製造方法のより後の時点で層構成体に設けることもできる。
【0028】
図2dに、多結晶シリコンエピタキシャル層5が異方性トレンチ処理またはDRIE法でパターニングされた後の層構成体を示す。ここでは、第2の犠牲層4をエッチングストップ境界として使用した。このパターニングでは、多結晶シリコンエピタキシャル層5においてマイクロフォン構造体の対向エレメント12を露出させ、貫通口15を設けた。トレンチ溝7は、多結晶シリコンエピタキシャル層5の個々の領域を画定するだけでなく、これらの個々の領域を電気的に分離するのにも使用される。これにより、多結晶シリコンエピタキシャル層5のパターニングでは、基板1およびダイヤフラムとに対するコンタクト領域16および17も形成された。
【0029】
その後、同図中に示された実施例では、基板裏面から行われる異方性DRIE法で音響空洞13を形成した。このことを図2eに示す。犠牲層2はこの裏面エッチング工程のためのエッチングストップ境界として使用された。この裏面エッチング工程は、多結晶シリコンエピタキシャル層5のパターニング前にも行うことができる。
【0030】
最後に、犠牲層を等方性エッチングすることにより、マイクロフォン構造体のダイヤフラム11と、該ダイヤフラム11のばね懸架部14とを露出させた。そのために必要なエッチング作用は、層構成体の両側から同時に行われた。その際にはエッチングガスは、表側からはトレンチ溝7と貫通口15とを介して犠牲層4に達し、裏面からは音響空洞13を介して犠牲層2に達する。SiO2犠牲層の場合には、犠牲層材料は有利にはHF蒸気によって剥離される。SiGe犠牲層の場合には、ClF3がエッチングガスとして使用される。図2fに、上記エッチング工程によって得られたものとして、図1のマイクロフォン構造体を示す。同図から、ダイヤフラム11と対向エレメント12との間隔が犠牲層4の層厚さによって決定されるのが分かる。
【0031】
上記で説明した方法では、本発明のマイクロフォン素子のダイヤフラムは、該ダイヤフラムのばね懸架部とともに、1つの薄い多結晶シリコン層で形成された。その際には、個々のダイヤフラムのばね要素は可能な限り、該ダイヤフラムがダイヤフラム材料の層応力に十分に依存せずに懸架されるように設けられる。図3に、円形のダイヤフラム30のばね懸架部の有利な配置構成を示す。ダイヤフラム30はここでは、全部で6つのばね要素31で懸架されている。これらのばね要素31は、湾曲されたウェブの形態で実現されており、これらのウェブはダイヤフラム周縁に沿って配置されており、各ウェブはそれぞれ、該ダイヤフラム周縁の1/6にわたって延在する。各ばね要素31の一端はダイヤフラム30に結合されており、各ばね要素31の他端は、層構成体の周縁の縁部領域に埋め込まれている。こうするためにはたとえば、各ばね要素31の前記他端が対向エレメントにも基板にも結合されるように、該他端を両犠牲層間に埋め込むことができる。この構成の代わりに、これらのばねの端部の片面のみを、対向エレメントまたは基板のいずれかに結合することもできる。多結晶シリコンダイヤフラム層の多結晶シリコンが引張状態で成膜された場合にも、またこの多結晶シリコンが圧縮状態で成膜された場合にも、図中に示されたばね懸架部が、該多結晶シリコンダイヤフラム層の生成時に発生し制御が困難である層応力を少なくともある程度の限界内で補償できるように構成されている。図中に示されたダイヤフラム30はばね要素31によって安定的に懸架されている。圧力が加えられたときの変形は主に、ばね要素31の領域で生じる。このことにより、マイクロフォン機能に決定的に重要であり可動電極として機能するダイヤフラム面は、対向エレメントに対してほぼ面平行に変位する。このことは、マイクロフォン有効信号に好影響を及ぼす。
【0032】
ここで説明した実施例では、マイクロフォン構造体を過負荷から保護する過負荷保護部として、簡単な電子回路機能が設けられている。評価電子回路が、ダイヤフラムが対向エレメントに当たったことを自動的に識別する。過負荷がかかった場合、たとえば音圧が非常に高い場合や衝撃の作用で、このようにダイヤフラムが対向エレメントに当たることがある。その際に発生する静電付着力を緩和させ、静電力に起因してダイヤフラムが対向エレメントに永続的に付着するのを避けるためには、バイアス電圧を一時的に中断する。電圧がない状態になると、ダイヤフラムは自然に対向エレメントから離れる。このコンセプトはとりわけ、5Vを下回るバイアス電圧に適している。というのも、このように低いバイアス電圧の場合、ダイヤフラムと対向エレメントとが電気的に溶接することがないからである。
【0033】
図2a〜2fを参照して説明したように、本発明のマイクロフォン構造体の作製は、ダイヤフラムをウェハ結合体の状態で露出させることも含めて行われる。以下、図4a〜4fを参照して、これらのマイクロフォン構造体の分離を行うのに特に有利な方法を説明する。
【0034】
まず、真空積層機器を使用して、特別な付着特性を有する保護膜41を、本発明によって十分に平坦にされた、層構成体40の上面に設ける。このことは図4aに示されている。この保護膜41は、UV光と熱とが併用されてこれらが作用することにより付着力を失うものであり、このことにより、分離工程後に保護膜41を残さないように簡単に剥離することができる。
【0035】
図4bに、ソーイング膜42が被覆されたソーイングフレームに層構成体40が接着された後の、保護膜41を有する該層構成体40を示す。ソーイング膜42は少なくとも、保護膜41が付着力を失う温度に対して耐性を有するように耐熱性でなければならない。さらに、保護膜41の付着力およびソーイング膜42の付着力は、たとえば1×1mm2のチップ寸法のチップをソーイング工程中は付着させたままにできる程度の付着力でなければならない。
【0036】
層構成体40と、とりわけ該層構成体40において露出されたマイクロフォン構造体とは、保護膜41によって保護されるので、水冷される丸鋸を使用して該層構成体40をソーイング分離できるようになる。その際には保護膜41は、マイクロフォン構造体に水やソーイング粒子が侵入するのを有効に阻止する。図4cには、保護膜41が設けられた層構成体40がすでにソーイング分離された状態が示されている。しかし、ソーイング分離された個々の素子50は未だ、繋がったままのソーイング膜42に付着している。
【0037】
このソーイング工程の後、保護膜41を前記個々の素子50の上面から除去することができる。こうするためにはまず、保護膜41にUV光を照射する。その後に熱処理を行う。この熱処理中、積層された保護膜41は素子上面から完全に剥離される。このようにして、熱処理後には各素子50上に保護膜40の膜片が残る。この膜片は、吸引またはブローにより除去することができる。ここで説明した実施例では、保護膜41の膜片はスタンプ法(Stempelverfahren)によって捕捉される。このことは、図4dおよび4eに示されている。こうするためには、さらに別の第2のウェハ43を使用する。この第2のウェハ43のスタンプ表面上に、両面接着性の膜44と、軟質のポリマー層または軟質のレジスト層とが設けられている。
【0038】
その後、ソーイング膜42を膨張させ、個々の素子50をピックアンドプレイス器具によって該ソーイング膜42からピックアップおよびパッケージングする。図4fにこのことを示している。
【0039】
素子表面が十分に平坦になった本発明のマイクロフォン構造体により、ウェハ層構成体の上面に保護膜を設けることができるようになる。このことにより、本発明のマイクロフォン素子を標準的なソーイング工程で分離することができる。その際には、前記第2の層を設けて除去することによって生じる付加的な工程上の手間は無視できる程度である。保護膜41自体も比較的低コストであるから、この保護膜41を分離方法で使用することによって個々の素子全体にかかる全コストが有意に増加することはない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
・マイクロフォンコンデンサの変位可能な電極として機能し音響的に動作するダイヤフラム(11)と、
・前記マイクロフォンコンデンサの対向電極として機能し固定された、音響透過性の対向エレメント(12)と、
・前記マイクロフォンコンデンサの容量変化を検出および評価するための手段と
を備えた、マイクロメカニカルマイクロフォン構造体を有する素子であって、
前記ダイヤフラム(11)は、前記素子の半導体基板(1)の上方のダイヤフラム層(3)で実現されており、該ダイヤフラム(11)は、前記半導体基板(1)の裏面に設けられた音響空洞(13)の上方に架かるように設けられており、
前記対向エレメント(12)は、前記ダイヤフラム(11)の上方の別の層(5)に形成されており、
前記別の層(5)は実質的に素子面全体にわたって延在しており、該別の層(5)に応じて素子表面が十分に平坦になるように該別の層(5)は高低差を補償する
ことを特徴とする素子。
【請求項2】
前記ダイヤフラム層(3)は薄い多結晶シリコン層の形態で実現されており、該薄い多結晶シリコン層は第1の絶縁層(2)によって前記半導体基板(1)から電気的に絶縁されており、
前記対向エレメント(11)は厚い多結晶シリコンエピタキシャル層(5)に形成されており、該厚い多結晶シリコンエピタキシャル層(5)は第2の絶縁層(4)によって前記ダイヤフラム層(3)から電気的に絶縁されており、
前記第2の絶縁層(4)の層厚さが、前記ダイヤフラム(11)と前記対向エレメント(12)との間の間隔を決定する、請求項1記載の素子。
【請求項3】
前記ダイヤフラム層(3)に、前記ダイヤフラム(11)に対するばね懸架部(14)が形成されている、請求項1または2記載の素子。
【請求項4】
前記ばね懸架部(14)は少なくとも3つのばね要素を有し、
前記少なくとも3つのばね要素は、前記第1の絶縁層および/または前記第2の絶縁層を介して、前記半導体基板および/または前記対向エレメントに結合されている、請求項3記載の素子。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項に記載の複数の素子の製造方法であって、
・電気絶縁性の第1の犠牲層(2)を半導体基板(1)上に設け、
・前記第1の犠牲層(2)上にダイヤフラム層(3)を設け、ばね懸架部(14)を有する少なくとも1つのダイヤフラム(11)が各素子ごとに形成されるように該ダイヤフラム層(3)をパターニングし、
・パターニングされた前記ダイヤフラム層(3)上に、電気絶縁性の第2の犠牲層(4)を設け、
・前記第2の犠牲層(4)上に少なくとも1つの別の層(5)を設け、各ダイヤフラム(11)ごとに音響透過性の対向エレメント(12)が形成されるように、該少なくとも1つの別の層(5)をパターニングし、
・各ダイヤフラム(11)の下方においてそれぞれ、少なくとも1つの音響空洞(13)を前記半導体基板(1)の裏面に形成し、
・少なくとも、各ダイヤフラム(11)の下方および上方の領域と、該ダイヤフラム(11)のばね懸架部(14)の下方および上方の領域とにおいて、前記第1の犠牲層(2)と前記第2の犠牲層(4)とを除去し、
・前記マイクロフォン構造体を露出させた後に初めて、前記複数の素子を分離する
ことを特徴とする、製造方法。
【請求項6】
前記ダイヤフラム層(3)として薄い多結晶シリコン層を前記第1の犠牲層(2)上に成膜し、
前記第2の犠牲層(4)上に厚い多結晶シリコンエピタキシャル層(5)を成長させ、該厚い多結晶シリコンエピタキシャル層(5)に前記対向エレメント(12)を形成する、請求項5記載の製造方法。
【請求項7】
前記第2の犠牲層(4)をエッチングストップとして使用し、前記厚い多結晶シリコンエピタキシャル層(5)を異方性エッチング法で、とりわけトレンチ処理またはDRIE法でパターニングする、請求項6記載の製造方法。
【請求項8】
前記第1の犠牲層(2)をエッチングストップとして使用して、前記音響開口(13)を異方性エッチング法で、とりわけDRIE法で形成する、請求項5から7までのいずれか1項記載の製造方法。
【請求項9】
前記音響空洞(13)と、前記対向エレメント(12)に設けられた貫通口(15)とを介してエッチング作用を施すことにより、前記第1の犠牲層(2)および前記第2の犠牲層(4)を等方性エッチング法で除去する、請求項5から8までのいずれか1項記載の製造方法。
【請求項10】
前記第1の犠牲層(2)および/または前記第2の犠牲層(4)をSiO2またはSiGeから作製する、請求項5から9までのいずれか1項記載の製造方法。
【請求項11】
前記マイクロフォン構造体を露出させた後、前記半導体基板上に作製された層構成体(40)上に、該マイクロフォン構造体に粒子および液体が侵入するのを阻止する保護膜(41)を設け、
前記複数の素子を分離した後、該複数の素子の表面から前記保護膜(41)を残さないように除去する、請求項5から10までのいずれか1項記載の製造方法。
【請求項12】
UV照射によって付着力を失う保護膜(41)、または、熱処理によって付着力を失う保護膜(41)、または、UV照射と熱処理との併用によって付着力を失う保護膜(41)を使用する、請求項11記載の製造方法。
【請求項13】
真空中で、前記層構成体(40)の十分に平坦な表面上に前記保護膜(41)を積層し、
前記複数の素子を分離する工程の後、該複数の素子の表面にUV照射と熱処理とを併用して行うことにより、前記保護膜(41)を剥離する、請求項12記載の製造方法。
【請求項14】
前記複数の素子を、標準的なソーイング法で分離する、請求項11から13までのいずれか1項記載の製造方法。
【請求項1】
・マイクロフォンコンデンサの変位可能な電極として機能し音響的に動作するダイヤフラム(11)と、
・前記マイクロフォンコンデンサの対向電極として機能し固定された、音響透過性の対向エレメント(12)と、
・前記マイクロフォンコンデンサの容量変化を検出および評価するための手段と
を備えた、マイクロメカニカルマイクロフォン構造体を有する素子であって、
前記ダイヤフラム(11)は、前記素子の半導体基板(1)の上方のダイヤフラム層(3)で実現されており、該ダイヤフラム(11)は、前記半導体基板(1)の裏面に設けられた音響空洞(13)の上方に架かるように設けられており、
前記対向エレメント(12)は、前記ダイヤフラム(11)の上方の別の層(5)に形成されており、
前記別の層(5)は実質的に素子面全体にわたって延在しており、該別の層(5)に応じて素子表面が十分に平坦になるように該別の層(5)は高低差を補償する
ことを特徴とする素子。
【請求項2】
前記ダイヤフラム層(3)は薄い多結晶シリコン層の形態で実現されており、該薄い多結晶シリコン層は第1の絶縁層(2)によって前記半導体基板(1)から電気的に絶縁されており、
前記対向エレメント(11)は厚い多結晶シリコンエピタキシャル層(5)に形成されており、該厚い多結晶シリコンエピタキシャル層(5)は第2の絶縁層(4)によって前記ダイヤフラム層(3)から電気的に絶縁されており、
前記第2の絶縁層(4)の層厚さが、前記ダイヤフラム(11)と前記対向エレメント(12)との間の間隔を決定する、請求項1記載の素子。
【請求項3】
前記ダイヤフラム層(3)に、前記ダイヤフラム(11)に対するばね懸架部(14)が形成されている、請求項1または2記載の素子。
【請求項4】
前記ばね懸架部(14)は少なくとも3つのばね要素を有し、
前記少なくとも3つのばね要素は、前記第1の絶縁層および/または前記第2の絶縁層を介して、前記半導体基板および/または前記対向エレメントに結合されている、請求項3記載の素子。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項に記載の複数の素子の製造方法であって、
・電気絶縁性の第1の犠牲層(2)を半導体基板(1)上に設け、
・前記第1の犠牲層(2)上にダイヤフラム層(3)を設け、ばね懸架部(14)を有する少なくとも1つのダイヤフラム(11)が各素子ごとに形成されるように該ダイヤフラム層(3)をパターニングし、
・パターニングされた前記ダイヤフラム層(3)上に、電気絶縁性の第2の犠牲層(4)を設け、
・前記第2の犠牲層(4)上に少なくとも1つの別の層(5)を設け、各ダイヤフラム(11)ごとに音響透過性の対向エレメント(12)が形成されるように、該少なくとも1つの別の層(5)をパターニングし、
・各ダイヤフラム(11)の下方においてそれぞれ、少なくとも1つの音響空洞(13)を前記半導体基板(1)の裏面に形成し、
・少なくとも、各ダイヤフラム(11)の下方および上方の領域と、該ダイヤフラム(11)のばね懸架部(14)の下方および上方の領域とにおいて、前記第1の犠牲層(2)と前記第2の犠牲層(4)とを除去し、
・前記マイクロフォン構造体を露出させた後に初めて、前記複数の素子を分離する
ことを特徴とする、製造方法。
【請求項6】
前記ダイヤフラム層(3)として薄い多結晶シリコン層を前記第1の犠牲層(2)上に成膜し、
前記第2の犠牲層(4)上に厚い多結晶シリコンエピタキシャル層(5)を成長させ、該厚い多結晶シリコンエピタキシャル層(5)に前記対向エレメント(12)を形成する、請求項5記載の製造方法。
【請求項7】
前記第2の犠牲層(4)をエッチングストップとして使用し、前記厚い多結晶シリコンエピタキシャル層(5)を異方性エッチング法で、とりわけトレンチ処理またはDRIE法でパターニングする、請求項6記載の製造方法。
【請求項8】
前記第1の犠牲層(2)をエッチングストップとして使用して、前記音響開口(13)を異方性エッチング法で、とりわけDRIE法で形成する、請求項5から7までのいずれか1項記載の製造方法。
【請求項9】
前記音響空洞(13)と、前記対向エレメント(12)に設けられた貫通口(15)とを介してエッチング作用を施すことにより、前記第1の犠牲層(2)および前記第2の犠牲層(4)を等方性エッチング法で除去する、請求項5から8までのいずれか1項記載の製造方法。
【請求項10】
前記第1の犠牲層(2)および/または前記第2の犠牲層(4)をSiO2またはSiGeから作製する、請求項5から9までのいずれか1項記載の製造方法。
【請求項11】
前記マイクロフォン構造体を露出させた後、前記半導体基板上に作製された層構成体(40)上に、該マイクロフォン構造体に粒子および液体が侵入するのを阻止する保護膜(41)を設け、
前記複数の素子を分離した後、該複数の素子の表面から前記保護膜(41)を残さないように除去する、請求項5から10までのいずれか1項記載の製造方法。
【請求項12】
UV照射によって付着力を失う保護膜(41)、または、熱処理によって付着力を失う保護膜(41)、または、UV照射と熱処理との併用によって付着力を失う保護膜(41)を使用する、請求項11記載の製造方法。
【請求項13】
真空中で、前記層構成体(40)の十分に平坦な表面上に前記保護膜(41)を積層し、
前記複数の素子を分離する工程の後、該複数の素子の表面にUV照射と熱処理とを併用して行うことにより、前記保護膜(41)を剥離する、請求項12記載の製造方法。
【請求項14】
前記複数の素子を、標準的なソーイング法で分離する、請求項11から13までのいずれか1項記載の製造方法。
【図1】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図2d】
【図2e】
【図2f】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図4d】
【図4e】
【図4f】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図2d】
【図2e】
【図2f】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図4d】
【図4e】
【図4f】
【公表番号】特表2012−529207(P2012−529207A)
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513519(P2012−513519)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【国際出願番号】PCT/EP2010/054583
【国際公開番号】WO2010/139498
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【国際出願番号】PCT/EP2010/054583
【国際公開番号】WO2010/139498
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】
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