説明

マイクロ波照射装置

【課題】被処理体に対してマイクロ波を照射しながら、これとは別個独立して被処理体の温度制御を行うことができるマイクロ波照射装置を提供する。
【解決手段】被処理体Wに対してマイクロ波を照射して処理をするマイクロ波照射装置2において、真空排気が可能になされた処理容器4と、被処理体を支持する支持台6と、処理ガスを導入する処理ガス導入手段106と、マイクロ波を導入するマイクロ波導入手段72と、被処理体を加熱する加熱手段16と、被処理体を冷却ガスにより冷却するガス冷却手段104と、被処理体の温度を測定する放射温度計64と、放射温度計の測定値に基づいて加熱手段とガス冷却手段とを制御することにより被処理体の温度を調整する温度制御部70とを備える。これにより、被処理体に対してマイクロ波を照射しながら、これとは別個独立して被処理体の温度制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ等の被処理体に対してマイクロ波を照射することにより改質処理やアニール処理等を行うマイクロ波照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体デバイスを製造するには、半導体ウエハに成膜処理、パターンエッチング処理、酸化拡散処理、改質処理、アニール処理等の各種の熱処理を繰り返し行なって所望のデバイスを製造するが、半導体デバイスが高密度化、多層化及び高集積化するに伴ってその仕様が年々厳しくなっており、これらの各種の熱処理のウエハ面内における均一性の向上、膜質の向上及び熱処理の短時間化等が望まれている。
【0003】
例えば半導体ウエハの表面をアニールや改質する場合には、一般的には加熱ランプや加熱ヒータを有する処理装置を用いて、この処理装置の処理容器内で不活性ガス等の処理ガスの雰囲気中で半導体ウエハを加熱し、アニールや改質処理等を行うようになっている。
【0004】
ところで、最近にあっては、ドーパントの活性化等のアニール処理や改質処理等を行う場合、不純物の拡散を抑制しつつ、浅い活性層を形成でき、更には格子欠損も修復可能であることからマイクロ波を用いたマイクロ波照射装置が提案されている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2009−516375号公報
【特許文献2】特開2010−129790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、マイクロ波を用いることにより各種の処理を短時間で且つ効率的に行うことができる。しかしながら、上記したようなマイクロ波照射装置を用いて各種の処理を行う場合、被処理体である半導体ウエハの温度管理が非常に重要であるが、従来のマイクロ波照射装置にあってはウエハの温度を十分に制御することができない、といった問題があった。また、マイクロ波の投入電力を制御することによりウエハ温度を制御することも考えられるが、処理の態様によっては、マイクロ波の電力とウエハの温度を独立して制御する必要があり、このような態様には対応できないといった問題もあった。このため、上記問題点の早期解決が求められていた。また、別の処理の態様によっては、マイクロ波をウエハに効率的に照射しつつマイクロ波によって加熱されるウエハをできるだけ効率的に冷却することが求められる場合もあった。
【0007】
本発明は、以上のような問題点に着目し、これを有効に解決すべく創案されたものである。本発明の一実施例は、被処理体に対してマイクロ波を照射しながら、これとは別個独立して被処理体の温度制御を行うことができるマイクロ波照射装置である。また本発明の他の一実施例は、被処理体に対してマイクロ波を効率的に照射しつつ被処理体を効率的に冷却することが可能なマイクロ波照射装置である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、被処理体に対してマイクロ波を照射して処理をするマイクロ波照射装置において、真空排気が可能になされた処理容器と、前記被処理体を支持する支持台と、前記処理容器内へ処理ガスを導入する処理ガス導入手段と、前記処理容器内へマイクロ波を導入するマイクロ波導入手段と、前記被処理体を加熱する加熱手段と、前記被処理体を冷却ガスにより冷却するガス冷却手段と、前記被処理体の温度を測定する放射温度計と、前記放射温度計の測定値に基づいて前記加熱手段と前記ガス冷却手段とを制御することにより前記被処理体の温度を調整する温度制御部と、を備えたことを特徴とするマイクロ波照射装置である。
【0009】
このような構成により、被処理体に対してマイクロ波を照射しつつ放射温度計で被処理体の温度を測定し、この測定値に基づいて加熱手段とガス冷却手段とを制御することにより被処理体の温度を調整することができる。
【0010】
請求項2に係る発明は、被処理体に対してマイクロ波を照射して処理をするマイクロ波照射装置において、真空排気が可能になされた処理容器と、前記被処理体を支持する支持台と、前記処理容器内へ処理ガスを導入する処理ガス導入手段と、前記処理容器内へマイクロ波を導入するマイクロ波導入手段と、前記被処理体を冷却ガスにより冷却するガス冷却手段と、前記被処理体の温度を測定する放射温度計と、前記放射温度計の測定値に基づいて前記ガス冷却手段を制御することにより前記被処理体の温度を調整する温度制御部と、を備えたことを特徴とするマイクロ波照射装置である。
【0011】
このような構成により、被処理体に対してマイクロ波を照射しつつ放射温度計で被処理体の温度を測定し、この測定値に基づいてガス冷却手段を制御することにより被処理体の温度を調整することができる。
【0012】
請求項5に係る発明は、被処理体に対してマイクロ波を照射して処理をするマイクロ波照射装置において、真空排気が可能になされた処理容器と、前記被処理体を支持する支持台と、前記処理容器内へ処理ガスを導入する処理ガス導入手段と、前記処理容器内へマイクロ波を導入するマイクロ波導入手段と、前記被処理体を加熱する加熱手段と、前記被処理体の温度を測定する放射温度計と、前記放射温度計の測定値に基づいて前記加熱手段を制御することにより前記被処理体の温度を調整する温度制御部と、を備えたことを特徴とするマイクロ波照射装置である。
【0013】
このような構成により、被処理体に対してマイクロ波を照射しつつ放射温度計で被処理体の温度を測定し、この測定値に基づいて加熱手段を制御することにより被処理体の温度を調整することができる。
【0014】
請求項12に係る発明は、被処理体に対してマイクロ波を照射して処理をするマイクロ波照射装置において、前記被処理体を収容する処理容器と、前記処理容器内の雰囲気を排気する真空排気系と、前記処理容器内へマイクロ波を導入するマイクロ波導入手段と、前記被処理体の下面に対して冷却ガスを噴射して冷却するガス冷却手段と、前記被処理体を支持するリフトピンを有して前記被処理体を昇降させるリフタ機構と、前記リフトピンに形成された吸引孔を有し、前記吸引孔を吸引通路により前記真空排気系に接続することにより形成された真空チャック機構と、を備えたことを特徴とするマイクロ波照射装置である。
【0015】
このような構成により、被処理体に対してマイクロ波を効率的に照射しつつ被処理体を効率的に冷却することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るマイクロ波照射装置によれば、次のように優れた作用効果を発揮することができる。
請求項1及びこれを引用する請求項に係る発明によれば、被処理体に対してマイクロ波を照射しつつ放射温度計で被処理体の温度を測定し、この測定値に基づいて加熱手段とガス冷却手段とを制御することにより被処理体の温度を調整することができる。
請求項2及びこれを引用する請求項に係る発明によれば、被処理体に対してマイクロ波を照射しつつ放射温度計で被処理体の温度を測定し、この測定値に基づいてガス冷却手段を制御することにより被処理体の温度を調整することができる。
請求項5及びこれを引用する請求項に係る発明によれば、被処理体に対してマイクロ波を照射しつつ放射温度計で被処理体の温度を測定し、この測定値に基づいて加熱手段を制御することにより被処理体の温度を調整することができる。
請求項12及びこれを引用する請求項に係る発明によれば、被処理体に対してマイクロ波を効率的に照射しつつ被処理体を効率的に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るマイクロ波照射装置の第1実施例を示す構成図である。
【図2】処理容器の天井部におけるマイクロ波導入手段の導波管の配置を示す図である。
【図3】ガス冷却手段(処理ガス導入手段)のシャワーヘッド部の下面を示す図である。
【図4】本発明に係るマイクロ波照射装置の第2実施例を示す構成図である。
【図5】本発明に係るマイクロ波照射装置の第3実施例を示す構成図である。
【図6】ガス冷却手段(処理ガス導入手段)の変形例を示す図である。
【図7】本発明に係るマイクロ波照射装置の第4実施例を示す構成図である。
【図8】ガス冷却手段の冷却ガス噴射箱の近傍を示す平面図である。
【図9】リフタ機構のリフトピンの部分を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明に係るマイクロ波照射装置の一実施例を添付図面に基づいて詳述する。図1は本発明に係るマイクロ波照射装置の第1実施例を示す構成図、図2は処理容器の天井部におけるマイクロ波導入手段の導波管の配置を示す図、図3はガス冷却手段(処理ガス導入手段)のシャワーヘッド部の下面を示す図である。
【0019】
<第1実施例>
図示するように、このマイクロ波照射装置2は、アルミニウム、アルミニウム合金又はステンレス等により内部が断面円形に成形された筒体状の処理容器4を有している。この処理容器4内には、円板状になされた支持台6が、円筒状になされた支柱8により容器底部より起立されて設けられている。上記支持台6及び支柱8は、アルミニウム、アルミニウム合金又はステンレス等の金属により形成されている。
【0020】
上記支持台6には、上方へ延びる複数本、ここでは3本の支持ピン10(図1では2本のみ示す)が設けられており、この支持ピン10の上端で被処理体である例えば直径が300mmの半導体ウエハWの裏面に当接して、これを支持するようになっている。この支持ピン10は、ウエハWの周方向へ均等に分散されて配置されている。この支持ピン10は、誘電率の小さい、すなわち誘電損失が少ない誘電体材料、例えば石英やセラミック材により形成されていると共に、この支持ピン10は、中空状、すなわち管状に形成されている。この中空状の支持ピン10の内径は、例えば2mm程度である。
【0021】
また上記円筒状の支柱8内は密閉されてチャック用密閉空間12として形成されている。そして、このチャック用密閉空間12は上記管状の支持ピン10と連通されて、真空チャック機構14として構成されている。従って、後述するように、このチャック用密閉空間を真空引きすることにより、上記支持ピン10の上端でウエハWの裏面を吸引して真空吸着するようになっている。
【0022】
また上記支持台6に支持されたウエハWを加熱するために、加熱手段16が設けられている。具体的には、この加熱手段16は、ここでは上記支持台6の上面側に配置された複数の発光素子ユニット18を有している。この発光素子ユニット18は、ウエハWの下面のほぼ全面に対応されて配置されている。そして、各発光素子ユニット18には、LED素子やレーザ素子等の多数の発光素子が搭載されており、この発光素子ユニット18から放射された光によってウエハWを加熱できるようになっている。尚、上記発光素子ユニット18を同心円状に区分して、ウエハWを同心円状にゾーン毎に独立して加熱できるようにしてもよい。この各発光素子ユニット18は、給電ライン20に接続されており、この給電ライン20に設けた加熱電源22より電力を供給できるようになっている。
【0023】
また、上記支持台6とウエハWとの間には、ウエハWの搬出入時にこれを持ち上げ、持ち下げるリフタ機構24が設けられる。具体的には、このリフタ機構24は、円弧状に成形されたリフト板26と、このリフト板26の上面側に設けた複数、例えば3本(図1では2本のみ示す)のリフトピン28とを有している。このリフトピン28は、ウエハWの裏面側の周縁部に沿ってほぼ均等の距離になるように配置されており、このリフトピン28を昇降させることによってウエハWを上方向へ昇降できるようになっている。
【0024】
このため、上記リフト板26は、上記支持台6及び容器底部を貫通して下方へ延びる昇降ロッド30の上端部に係合されており、この昇降ロッド30の下部は、これを上下動させるアクチュエータ32に連結されている。また、上記昇降ロッド30の容器底部の貫通部には、処理容器4内の気密性を維持しつつ昇降ロッド30の上下動を許容する金属製のベローズ34が介設されている。このリフトピン28やリフト板26は、誘電体材料である例えば石英やセラミック材により形成されている。
【0025】
また処理容器4の底部には、処理容器4内の雰囲気を排気する排気口36が形成されており、この排気口36には真空排気系38が接続されている。この真空排気系38は、上記排気口36に接続された排気通路40を有しており、この排気通路40には、その上流側より下流側に向けて圧力調整弁42及び真空ポンプ44が順次介設されて、上述したように処理容器4内の雰囲気を圧力調整しつつ真空引きするようになっている。
【0026】
更に、上記チャック用密閉空間12を区画する容器底部には、チャック用排気口46が設けられている。そして、上記圧力調整弁42と真空ポンプ44との間の排気通路40と上記チャック用排気口46との間はチャック用排気通路48により接続されている。また、このチャック用排気通路48には第1の開閉弁50が介設されており、この第1の開閉弁50を開状態にすることにより上記チャック用密閉空間12内の雰囲気を真空引きしてウエハWを吸引吸着する真空チャック機能を発揮できるようになっている。
【0027】
また上記第1の開閉弁50の上流側のチャック用排気通路48と上記圧力調整弁42の上流側の排気通路40との間は、リリース通路52により接続されている。そして、このリリース通路52には第2の開閉弁54が介設されて、この第2の開閉弁54を開状態(第1の開閉弁50は閉状態)にすることにより、ウエハWが収容されている処理空間とチャック用密閉空間12との圧力を同圧にしてウエハWのチャックを解除できるようになっている。
【0028】
そして、上記処理容器4内の支持台6の周縁部と処理容器4内の側壁との間にはリング状の整流板56が介設されると共に、この整流板56には多数の整流孔58が形成されており、ウエハWが設置されている処理空間Sの雰囲気を下方向へ整流しながら流して排気口36へ排出するようになっている。
【0029】
また、処理容器4の側壁には、ウエハWを搬出入するための搬出入口60が形成されると共に、この搬出入口60にはゲートバルブ62が取り付けられている。そして、この処理容器4には、上記ウエハWの温度を測定するための放射温度計64が設けられている。具体的には、この放射温度計64は、上記処理容器4の底部及び支持台6を貫通して延びる例えば光ファイバよりなるプローブライン66を有しており、このプローブライン66の先端は、ウエハWの裏面に接近させてウエハWの直下に位置されている。そして、このプローブライン66で導いた光に基づいて温度計測部68でウエハWの温度を求めるようになっている。
【0030】
そして、この温度計測部68で求めた測定値を例えばコンピュータよりなる温度制御部70へ通知し、この測定値に基づいて温度制御部70は、この第1実施例では上記加熱電源22と後述するガス冷却手段とを制御することにより、ウエハWの温度を調整して制御するようになっている。
【0031】
一方、上記処理容器4の天井部には、この処理容器4内へマイクロ波を導入するためのマイクロ波導入手段72が設けられている。尚、ここではマイクロ波は、周波数が例えば300MHz〜30GHzまでの電磁波を指すものとする。具体的には、上記マイクロ波導入手段72は、ここでは複数、例えば4基のマイクロ波ユニット74(図1では2基のみ示す)を有している。尚、このマイクロ波ユニット74の数量は特に4基には限定されない。具体的には、上記マイクロ波ユニット74は、それぞれ容器天井部に連結された導波管76を有している。図2にも示すように、この導波管76は、断面矩形状に成形されており、容器天井部に、その周方向に沿って等間隔で配置されている。
【0032】
また、上記容器天井部には開口されたマイクロ波導入ポート78が設けられると共に、このマイクロ波導入ポート78には、例えば石英等の誘電体材料よりなる透過窓80がOリング等のシール部材82を介して取り付けられている。そして、上記各導波管76の下端部が上記透過窓80に取り付けられており、この透過窓80を介してマイクロ波を処理容器4内へ導入するようになっている。
【0033】
上記各導波管76の途中にはサーキュレータ84が介設されると共に、その方向が直角方向に曲げられて、その基端部にはマイクロ波発生器86が設けられている。ここでは2.456GHzや5.8GHzや28GHzのマイクロ波が用いられる。これにより、上記マイクロ波発生器86で発生したマイクロ波は、上記導波管76を伝播されてマイクロ波導入ポート78より処理容器4内へ導入されることになる。また上記サーキュレータ84には、ダミーロード88が連結されており、インシュレータの機能を発揮するようになっている。尚、ダミーロード88は、各マイクロ波ユニット74毎に設けないで、各マイクロ波ユニット74間で共用するようにしてもよい。
【0034】
上記マイクロ波発生器86の動作は、マイクロ波制御部90により制御されており、各マイクロ波発生器86から発生するマイクロ波が例えば重なり合わないようにしている。またこの際、マグネトロンの電源波形は、半波サイン、台形波、矩形波等にすることができる。
【0035】
また、この処理容器4の天井部には、上記マイクロ波導入手段72によって導入されたマイクロ波を撹拌するための撹拌機92が設けられている。具体的には、この撹拌機92は、処理容器4内の天井部の直下に配置された撹拌プロペラ94を有している。この撹拌プロペラ94の回転軸96は、磁性流体シール98を介して天井部を気密に貫通しており、回転モータ99により回転されるようになっている。そして、上記撹拌プロペラ94は、金属やPZT等の複合セラミックやクォーツサファイヤ等よりなる誘電損失の小さな高誘電材料により形成されており、この撹拌プロペラ94を回転することによりマイクロ波を撹拌して処理容器4内にマイクロ波の定在波が発生することを防止するようになっている。
【0036】
また、この撹拌プロペラ94と支持台6との間には、この処理容器4内を上下に区分する仕切板100が設けられており、上記撹拌プロペラ94から落下するパーティクルがウエハWの上面に付着しないようにしている。この仕切板100は、誘電率の小さい誘電体材料、例えば石英やセラミック材やテフロン(登録商標)により形成されており、マイクロ波をできるだけ吸収しないで効率的に透過するようになっている。具体的には、この仕切板100の材料としては、誘電率が4.0以下で、タンデルタ(誘電正接)が0.0001以下の誘電体材料を用いるのが好ましい。また、この仕切板100の周辺部には、複数の連通孔102が形成されており、この仕切板100の上下の空間を連通するようになっている。
【0037】
これにより、仕切板100の上下の空間の差圧が解消されるので、その仕切板100の厚さをできるだけ薄くすることができる。また、上記連通孔102は、この下方に位置する整流板56に形成した整流孔58と、この上下方向において同じ領域に形成するのが好ましく、これによれば、上記撹拌プロペラ94を収容した空間の雰囲気が連通孔102を通って排出される場合にウエハWの方向に拡散することなく、そのまま直下方向の整流孔58に向かってダウンフローとなって排出することが可能となる。
【0038】
また、この処理容器4には、上記半導体ウエハWを冷却ガスにより冷却するガス冷却手段104が設けられている。ここでは、上記ガス冷却手段104は、処理容器4内へ処理ガスを導入する処理ガス導入手段106と兼用されている。具体的には、このガス冷却手段104は、ここではウエハWの上方であって仕切板100の下方に配置されたシャワーヘッド部110を有している。このシャワーヘッド部110は、図3にも示すように、同心円状に配置された複数、図示例では2つの大小のリング状の分散管112A、112Bを有しており、これらの分散管112A、112Bは連通管114で接続されると共に互いに連通されている。
【0039】
そして、上記分散管112A、112Bの下面側には、その周方向に沿って等間隔で多数のガス噴射孔116が形成されており、下方向のウエハWの表面に向けて冷却ガス(処理ガス)を噴射し得るようになっている。このシャワーヘッド部110は、誘電率の低い材料、例えば石英やセラミック材等により形成されており、マイクロ波をできるだけ吸収しないようになっている。
【0040】
またこのシャワーヘッド部110は、容器側壁に支持されていると共に、このシャワーヘッド部110には、ガス通路118が接続されている。そして、このガス通路118にはマスフローコントローラのような流量制御器120が介設されており、冷却ガス(処理ガス)を流量制御しつつ供給できるようになっている。この場合、ウエハWの冷却効率を高めるためには、シャワーヘッド部110をできるだけウエハWに接近させて設けるのがよい。この場合、ウエハWとシャワーヘッド部110との間の距離は例えば10〜300mm程度に設定されている。ここでは、冷却ガスと処理ガスとを兼用するガスとしてArガス或いはN ガス、又はこれらの両ガスを供給している。この冷却ガス及び処理ガスとして、上記の他にHe、Ne等の他の希ガスを用いるようにしてもよい。また、処理の態様によっては、冷却ガスや処理ガスとして水素や酸素等を用いる場合もある。
【0041】
そして、前述したように、上記温度制御部70は、温度計測部68での測定値に基づいて、上記処理ガス導入手段106の流量制御器120及び加熱電源22を制御してウエハWの温度を調整し得るようになっている。
【0042】
そして、このマイクロ波照射装置2の全体の動作は、例えばマイクロコンピュータ等よりなる装置制御部122により制御されるようになっており、この動作を行うコンピュータのプログラムはフレキシブルディスクやCD(Compact Disc)やフラッシュメモリやハードディスク等の記憶媒体124に記憶されている。具体的には、この装置制御部122からの指令により、ガスの供給や流量制御、マイクロ波の供給や電力制御、ウエハ温度やプロセス圧力の制御等が直接的、或いは間接的に行われる。
【0043】
次に、上記マイクロ波照射装置2を用いて行われる処理(アニール処理や改質処理等)について説明する。まず、開かれたゲートバルブ62を介して半導体ウエハWを搬送アーム(図示せず)により処理容器4内に収容し、リフタ機構24のリフトピン28を上下動させることによりウエハWを支持台6の支持ピン10上に載置し、ゲートバルブ62を閉じて処理容器4内を密閉する。この場合、上記半導体ウエハWとしては、単体の半導体基板、例えばシリコン基板を用いてもよい。
【0044】
ここで真空排気系38の真空ポンプ44は連続駆動されており、チャック用排気通路48に介設した第1の開閉弁50を開状態(第2の開閉弁54は閉状態)にすることにより、支持台6の下方のチャック用密閉空間12を真空引きして減圧し、これによりチャック機能が発揮されて中空状の支持ピン10上に載置されているウエハWの裏面を真空吸着してウエハWを吸着固定する。尚、この真空吸着を解除するには、上記第1の開閉弁50を閉状態にすると共に、リリース通路52に介設した第2の開閉弁54を開状態にすることにより、チャック用密閉空間12と処理空間Sとを同圧にすればよい。
【0045】
次に、上述のようにウエハWを吸着したならば、処理容器4内にガス冷却手段104を兼用する処理ガス導入手段106のシャワーヘッド部110より、処理ガスとしてArガスやN ガスを流量制御しつつ供給する。この場合、処理空間Sのプロセス圧力は、処理態様にもよるが、例えば数100Torr程度であり、チャック用密閉空間12の圧力は、チャック機能を発揮するためにこれよりも低い数10mmTorrである。
【0046】
また、加熱手段16の加熱電源22より各発光素子ユニット18へ電力を供給し、この発光素子ユニット18に搭載されているLED素子やレーザ素子から光を放射してウエハWの裏面に当て、ウエハWを昇温して所定の温度まで加熱する。これと同時に、マイクロ波導入手段72の各マイクロ波ユニット74のマイクロ波発生器86を駆動してマイクロ波を発生させる。このマイクロ波は、導波管76を伝播して処理容器4の天井部に形成した各マイクロ波導入ポート78より処理容器4内へ導入され、このマイクロ波は更に仕切板100を透過してウエハWの表面に照射される。このように、マイクロ波がウエハWに照射されると、ジュール加熱、磁性加熱、誘電加熱等の電磁波加熱によりウエハWは更に迅速に加熱されることになり、この結果、アニール処理や改質処理等が行われることになる。
【0047】
ここでウエハのプロセス温度が比較的高い場合には、マイクロ波だけで高温まで加熱しようとすると、ウエハ表面に放電が生ずる場合がある。そこで、上述のように別途に加熱手段16を設けてウエハの加熱を補助することにより、ウエハ表面に放電を生ずることなくこれを高温まで加熱することができる。この時のウエハ温度は、例えば100〜400℃程度の範囲内である。また、このマイクロ波の処理中は、容器天井部に設けた撹拌機92の撹拌プロペラ94を旋回させておく。このように、処理容器4内に導入されたマイクロ波を撹拌プロペラ94により撹拌することにより処理容器4内に定在波が発生することを防止し、ウエハ処理の面内均一性を向上させることができる。
【0048】
このようなウエハ処理中において、ウエハWの裏面側に配置した放射温度計64のプローブライン66によってウエハWの放射光が取り込まれ、温度測定部68によってウエハWの温度が連続的に測定されている。この測定値は温度制御部70へ伝達され、温度制御部70はこの測定値に基づいて加熱電源22を制御して発光素子ユニット18への供給電力を増減すると共に、ガス冷却手段(処理ガス導入手段)104の流量制御器120を制御して冷却ガス(処理ガス)の流量を増減してウエハWの温度を調整、すなわちコントロールする。
【0049】
ここでウエハWの温度に依存して、マイクロ波の吸収率が変動する場合があるので、ここでは例えばマイクロ波の供給電力を一定にしつつ、ウエハWが所定の温度を維持するように発光素子ユニット18への供給電力を制御したり、ウエハWの表面に吹き付ける冷却ガスの流量を制御したりする。これにより、ウエハWの温度をマイクロ波の供給電力とは別個独立に制御することができる。
【0050】
また、上記撹拌プロペラ94の回転によりパーティクル等が発生する危惧が生じるが、発生したパーティクルはこの下方の仕切板100によって受けられるので、ウエハWの表面に落下することはない。また、発生したパーティクルがこの領域空間の雰囲気と共に連通孔102を介して処理空間Sに流れ込んだ場合には、この流れ出た雰囲気はこの真下に位置する整流板56の整流孔58に向けて流れて行くので、この点からもウエハWの表面にパーティクルが付着することを防止することができる。
【0051】
以上のように、被処理体である半導体ウエハWに対してマイクロ波を照射しつつ放射温度計64で被処理体の温度を測定し、この測定値に基づいて加熱手段16とガス冷却手段104とを制御することによりマイクロ波の照射量とは独立して被処理体の温度を調整することができる。
【0052】
<第2実施例>
次に本発明のマイクロ波照射装置の第2実施例について説明する。半導体ウエハWの処理態様によっては、ウエハWの温度をそれ程高くする必要はなく、マイクロ波照射による加熱量で十分に目標とする温度滞域までウエハ温度を昇温できる場合がある。このような場合には、先の第1実施例で用いた加熱手段16を不要にすることができる。図4はこのような本発明に係るマイクロ波照射装置の第2実施例を示す構成図である。尚、図4において、先の図1乃至図3に示した部分と同一構成部分については同一参照符号を付してその説明を省略する。
【0053】
図4に示すように、ここでは図1に示す構成から加熱手段16を構成する発光素子ユニット18及び加熱電源22(図1参照)を取り除いた構成となっており、他の構成は図1に示す構成と同じである。また、加熱手段16を取り除いたので、温度制御部70は、ガス冷却手段104(処理ガス導入手段106)で冷却ガスの流量を制御することにより、ウエハWの温度調整を行うことになる。
【0054】
この場合にも、第1実施例と同様の作用効果を発揮することができる。すなわち、被処理体である半導体ウエハに対してマイクロ波を照射しつつ放射温度計64で被処理体の温度を測定し、この測定値に基づいてガス冷却手段104を制御することにより被処理体の温度を調整することができる。
【0055】
<第3実施例>
次に本発明のマイクロ波照射装置の第3実施例について説明する。半導体ウエハWの処理態様によっては、プロセス温度が比較的高くウエハWの温度をガス冷却手段を用いて冷却する必要はなく、加熱手段の制御で十分に目標とする温度にウエハ温度を制御できる場合がある。このような場合には、先の第1実施例で用いたガス冷却手段104を不要にすることができる。図5はこのような本発明に係るマイクロ波照射装置の第3実施例を示す構成図である。尚、図5において、先の図1乃至図3に示した部分と同一構成部分については同一参照符号を付してその説明を省略する。
【0056】
図5に示すように、ここでは図1に示す構成からガス冷却手段104を取り除いた構成となっており、他の構成は図1に示す構成と同じである。すなわち、図1に示す場合は、ガス冷却手段104と処理ガス導入手段106とは兼用されていたので、ここではシャワーヘッド部110や流量制御器120は処理ガス導入手段106として機能することになる。また、ガス冷却手段104を取り除いたので、温度制御部70は、加熱手段16の加熱電源22のみを制御することにより、ウエハWの温度調整を行うことになる。
【0057】
この場合にも、第1実施例と同様の作用効果を発揮することができる。すなわち、被処理体である半導体ウエハに対してマイクロ波を照射しつつ放射温度計64で被処理体の温度を測定し、この測定値に基づいて加熱手段16を制御することにより被処理体の温度を調整することができる。
【0058】
<ガス冷却手段(処理ガス導入手段)の変形例>
次に、ガス冷却手段(処理ガス導入手段)の変形例について説明する。先に説明した第1〜第3実施例においては、ガス冷却手段104或いは処理ガス導入手段106は、同心円状に配置された2本の分散管112A、112B(図3参照)を有していたが、これに限定されず、ノズルを用いてもよい。図6はガス冷却手段(処理ガス導入手段)の変形例を示す図である。尚、図6において先に説明した図と同一構成部分については同一参照符号を付して、その説明を省略する。
【0059】
図6に示すように、ここではシャワーヘッド部110(図1参照)を設けておらず、これに代えて処理容器4の側壁を貫通させるようにして複数本のガスノズル130を設けており、このガスノズル130の先端をウエハWの表面に斜め上方より接近させて向けている。これにより噴射される冷却ガス(処理ガス)を直接的にウエハWの表面に当てて冷却効率を上げるようになっている。また、このガスノズル130の数は特に制限されない。
【0060】
尚、以上の各実施例(第3実施例を除く)の説明では、ガス冷却手段104と処理ガス導入手段106とを兼用するようにしたが、これに限定されず、両者を分離してそれぞれ別個に設けるようにしてもよい。例えばガス冷却手段104として図6に示したようなガスノズル130を有するものを用い、処理ガス導入手段106として図1に示すようなシャワーヘッド部110を有するものを用いてもよいし、或いは両者を逆にして用いるようにしてもよい。また、ここでは加熱手段16としてLED素子やレーザ素子を備えた発光素子ユニット18(図1参照)を用いたが、これに限定されず、ハロゲンランプ、水銀ランプ、フラッシュランプ等の加熱ランプを用いるようにしてもよい。
【0061】
<第4実施例>
次に、本発明のマイクロ波照射装置の第4実施例について説明する。半導体ウエハの処理態様によっては、先の第2実施例と同様に、例えば下地膜等を熱的に保護する目的でウエハWのプロセス温度を低く抑えたい場合がある。このような場合には、第1実施例で用いた加熱手段16は不要になると共に、マイクロ波照射による加熱量でもウエハ温度はかなり上昇するので、プロセス中にはウエハを効率的に冷却する必要がある。
【0062】
図7はこのような本発明に係るマイクロ波照射装置の第4実施例を示す構成図、図8はガス冷却手段の冷却ガス噴射箱の近傍を示す平面図、図9はリフタ機構のリフトピンの部分を示す拡大断面図である。図7乃至図9において、先の図1乃至図6に示した部分と同一構成部分については同一参照符号を付してその説明を省略する。
【0063】
図7にも示すように、この第4実施例のマイクロ波照射装置では、処理容器4の天井部には、先の第1実施例と同様にマイクロ波導入手段72及び撹拌機92は設けられている。しかし、マイクロ波照射の障害となる仕切板100及びシャワーヘッド部110(図1参照)は設けられておらず、天井部に設けたマイクロ波導入手段72のマイクロ波導入ポート78からマイクロ波を被処理体である半導体ウエハWに向けて直接的に照射できるようになっている。
【0064】
そして、この処理容器4内には、上記半導体ウエハWを支持するリフトピン132を有してこのウエハWを昇降させるリフタ機構134と、上記ウエハWの下面に対して冷却ガスを噴射して冷却するガス冷却手段136とが設けられ、更に、上記リフタ機構134にウエハWを吸着させる真空チャック機構138が設けられる。
【0065】
具体的には、上記リフタ機構134は、上記リフトピン132と、このリフトピン132の下端部に連結されてリフトピン132を支持するリフト板140と、このリフト板140にその上端部が連結された昇降ロッド142と、この昇降ロッド142を昇降させるアクチュエータ144とを有している。上記リフトピン132は複数本、例えば3本(図7では2本のみ記す)が円周上に等間隔で配置されている(図8参照)。
【0066】
そして、上記リフト板140は、例えば円形リング状に形成されており、このリフト板140の上面に上記リフトピン132の下端部が接合して連結されている。尚、このリフト板140は、円弧形状、或いは円板状に成形してもよい。そして、上記リフトピン132の上端を上記ウエハWの下面の周縁部に当接させてこれを支持するようになっている。
【0067】
上記リフト板140の一端部には、上記昇降ロッド142の上端部が接合して連結されており、この昇降ロッド142の下部は、下方向へ延びて処理容器4の底部を貫通している。そして、この昇降ロッド142の下端部側に上記アクチュエータ144を連結しており、上記リフト板140及びリフトピン132を一体的に昇降できるようになっている。また上記昇降ロッド142の容器底部の貫通部には、金属製のベローズ146が介設されており、処理容器4内の気密性を維持しつつ昇降ロッド142の上下動を許容するようになっている。
【0068】
ここで上記リフトピン132、リフト板140及び昇降ロッド142は、マイクロ波に対する吸収が少ない誘電体材料である石英(SiO )やアルミナ(Al )、窒化アルミニウム(AlN)、シリコンカーバイト(SiC)等のセラミック材により形成されている。本実施例では、上記各リフトピン132に、吸引孔150が形成されており、この吸引孔150が上記真空チャック機構138の一部を形成している。具体的には、上記吸引孔150は、リフトピン132の中心部にその長さ方向に沿って形成されており、また上記リフト板140及び昇降ロッド142の内部には、これらに沿って吸引通路152が形成されている。この吸引通路152の先端部は、上記リフトピン132に形成した吸引孔150の下端部に連通されている。
【0069】
更に、上記昇降ロッド142に形成した吸引通路152の下端部は、昇降ロッド142の上下動を許容する金属製のベローズ154を介してチャック用排気通路48に接続されている。そして、このチャック用排気通路48の他端は真空排気系38の圧力調整弁42と真空ポンプ44との間の排気通路40に接続されている。
【0070】
そして、このチャック用排気通路48には第1の開閉弁50が介設されており、この第1の開閉弁50を開状態にすることにより上記吸引通路152内及び吸引孔150内の雰囲気を真空引きしてウエハWを吸引吸着する真空チャック機能を発揮できるようになっている。
【0071】
また上記第1の開閉弁50の上流側のチャック用排気通路48と上記圧力調整弁42の上流側の排気通路40との間は、リリース通路52により接続されている。そして、このリリース通路52には第2の開閉弁54が介設されて、この第2の開閉弁54を開状態(第1の開閉弁50は閉状態)にすることにより、ウエハWが収容されている処理空間と吸引孔150内との圧力を同圧にしてウエハWのチャックを解除できるようになっている。
【0072】
ここで、上記リフトピン132の上端部は、図9にも示すように拡径されており、吸引孔150内の上端部である吸引ポート156の直径を大きくして吸引面積が拡大されており、ウエハWに対して適正な吸引力を発生するようになっている。この場合、吸引ポート156の直径は、後述するようにウエハWの裏面に対して吹き付けられる冷却ガスによりウエハWが上方へ吹き飛ばされず且つ過度に大きな吸引力を発生しないような大きさに設定される。この吸引ポート156の直径D1の大きさは、真空排気系38の排気吸引能力にもよるが、例えば2〜10mmの範囲内の大きさであり、ここでは例えば3mmに設定されている。
【0073】
そして、上記リフトピン132に支持されたウエハWの下面に対して冷却ガスを噴射する上記ガス冷却手段136は、上記ウエハWの下方に配置された冷却ガス噴射箱158を有している。この冷却ガス噴射箱158は、ウエハWの直径よりも少し大きくなされた円形の箱状、或いは容器状に成形されている。この冷却ガス噴射箱158は、処理容器4の底部より起立された支柱8により支持されている。この場合、先の第1実施例のように直径の大きな円筒状の1本の支柱8を用いてもよいし、或いは直径の小さな円柱状の複数本の支柱8を用いてもよい。
【0074】
ここでは直径の小さな円柱状の複数本の支柱8により上記冷却ガス噴射箱158を支持している。そして、この冷却ガス噴射箱158の内部には、ガス拡散室160が形成されている。この冷却ガス噴射箱158の上面区画壁には、複数のガス噴射孔162が全面に亘ってほぼ均等に分散させて設けられており、各ガス噴射孔162からウエハWの下面に向けて冷却ガスを吹き付けることにより、上記ウエハWを冷却できるようになっている。
【0075】
また上記冷却ガス噴射箱158には、上記リフトピン132の設置位置に対応させてピン挿通管164が上下方向に沿って形成されており、このピン挿通管164内に沿って上記リフトピン132を挿通させるようになっている。このピン挿通管164内は、上記ガス拡散室160に対して気密に区画されている。上記冷却ガス噴射箱158は、アルミニウムやアルミニウム合金等の金属汚染の少ない金属や石英やセラミック材等により成形することができる。
【0076】
また上記冷却ガス噴射箱158からは下方に向けてガス導入管166が延びており、このガス導入管166は、Oリング等のシール部材168を介して下方へ貫通されている。そして、このガス導入管166にはガス通路118が接続されている。このガス通路118には、マスフローコントローラのような流量制御器120や開閉弁170が介設されており、ArやN 等の冷却ガスを流量制御しつつ供給できるようになっている。上記冷却ガスとしてHe、Ne等の他の希ガスを用いてもよい。
【0077】
そして、上記冷却ガス噴射箱158の周縁部と処理容器4内の側壁との間にはリング状の整流板56が介設されると共に、この整流板56には多数の整流孔58が形成されており、ウエハWが設置されている処理空間Sの雰囲気を下方向へ整流しながら流して排気口36へ排出するようになっている。
【0078】
次に、上記マイクロ波照射装置を用いて行われる処理(アニール処理や改質処理等)について説明する。まず、開かれたゲートバルブ62を介して半導体ウエハWを搬送アーム(図示せず)により処理容器4内に収容し、リフタ機構134のリフトピン132を上昇させることによってリフトピン132の上端でウエハWの下面を突き上げてウエハWを受け取り、搬送アームを後退させた後にゲートバルブ62を閉じて処理容器4内を密閉する。この場合、上記半導体ウエハWとしては、単体の半導体基板、例えばシリコン基板を用いてもよい。
【0079】
ここで真空排気系38の真空ポンプ44は連続駆動されており、真空チャック機構138のチャック用排気通路48に介設した第1の開閉弁50を開状態(第2の開閉弁54は閉状態)にすることにより、リフタ機構134のリフト板140及び昇降ロッド142に形成した吸引通路152内及びリフトピン132に形成した吸引孔150内の雰囲気を真空引きして減圧し、これによりチャック機能が発揮されてリフトピン132上に載置されているウエハWの裏面を真空吸着してウエハWを吸着固定する。尚、この真空吸着を解除するには、上記第1の開閉弁50を閉状態にすると共に、リリース通路52に介設した第2の開閉弁54を開状態にすることにより、チャック用密閉空間12と処理空間Sとを同圧にすればよい。
【0080】
次に、上述のようにウエハWを吸着したならば、リフトピン132をプロセスを行う位置まで降下させてリフトピン132を停止させる。この場合、ウエハWは冷却ガス噴射箱158の上面に接しないでこの上方に位置させて停止されており、この状態でプロセスが開始される。
【0081】
そして、ガス冷却手段136を駆動してガス拡散室160内へ冷却ガスとしてArガスやN ガスを流量制御しつつ供給して拡散させ、この冷却ガスを各ガス噴射孔162から上方へ吹き出してウエハWの下面全体に亘って冷却ガスを吹き付け、ウエハWの冷却を開始する。この時、ウエハWの下面と冷却ガス噴射箱158の上面との間は所定の幅H1の隙間が形成されており、各ガス噴射孔162から吹き出された冷却ガスがウエハWの裏面全体に均一に行き亘ることができる。上記隙間の幅H1は、例えば数mm〜数cmの範囲内である。この場合、処理空間Sのプロセス圧力は、処理態様にもよるが、例えば数100Torr程度であり、吸引孔150内の圧力は、チャック機能を発揮するためにこれよりも低い数10mmTorrである。
【0082】
これと同時に、マイクロ波導入手段72の各マイクロ波ユニット74のマイクロ波発生器86を駆動してマイクロ波を発生させる。このマイクロ波は、導波管76を伝播して処理容器4の天井部に形成した各マイクロ波導入ポート78より処理容器4内へ導入され、このマイクロ波はウエハWの表面に直接的に照射される。このように、マイクロ波がウエハWに照射されると、ジュール加熱、磁性加熱、誘電加熱等の電磁波加熱によりウエハWは迅速に加熱されることになり、この結果、アニール処理や改質処理等が行われることになる。
【0083】
ここで、マイクロ波の吸収によりウエハWは昇温するので、上述のように冷却ガス噴射箱158の各ガス噴射孔162よりウエハWの下面に冷却ガスを噴射してウエハWを冷却している。この場合、ウエハWの下面に冷却ガスがほぼ均一に吹き付けられるので、ウエハ温度の面内均一性を高くすることができる。この時のウエハのプロセス温度は、例えば100〜400℃程度の範囲内である。
【0084】
また、ウエハWの下面に冷却ガスを吹き付けることでウエハWには上方への浮力が発生するが、ウエハWを裏面から支持するリフトピン132が真空チャック機構138を兼ねているのでウエハWの位置ずれを防ぎつつ確実に冷却することができる。また、ここではリフトピン132の上端に設けた吸引ポート156の直径を適切に調整して最適化してこの吸引ポート156で発生する吸引力とウエハWの下面に吹き付けられる冷却ガスにより発生する浮上力とがほぼ同じになるか、或いは吸引力の方が僅かに大きくなるように設定している。従って、ウエハWが熱伸縮しても、この熱伸縮は容易に許容されてウエハWの下面とリフトピン132の上端面との間で大きな摩擦力が発生せず、パーティクルの発生やウエハ下面が損傷することを抑制することができる。
【0085】
また、ウエハWがマイクロ波を吸収するのに最適なウエハWの下面と冷却ガス噴射箱158の上面との隙間の幅H1は、照射されるマイクロ波の条件により変化するが、ウエハWをリフトピン132に保持したままマイクロ波の照射が行えるので、幅H1を適切な値にした上でウエハWの処理を行うことができる。このように、本実施例では、被処理体である例えば半導体ウエハWに対してマイクロ波を効率的に照射しつつ被処理体を効率的に冷却することができる。
【0086】
尚、ここでは冷却ガスの流量は固定的に設定したが、これに限定されず、第1実施例のようにウエハ温度を測定する放射温度計を設けて、この検出温度で冷却ガスの流量をフィードバック制御することにより、ウエハWの温度を制御するようにしてもよい。
【0087】
またここでは、処理容器4内へは冷却ガスのみ導入しているが、処理態様によってはH 等の還元ガスやO 等の酸化ガス等の処理ガスを用いる場合があり、このような場合には、上記ガス冷却手段136のガス通路118に処理ガス通路を接続して流量制御しつつ処理ガスを導入し、冷却ガスと処理ガスとを混合状態で供給するように構成すればよい。この場合には、ガス冷却手段と処理ガス導入手段とが兼用されることになる。
【0088】
また、上記処理ガスを導入する場合には、ガス冷却手段136とは別個に、図1に示したようにシャワーヘッド部110を有する処理ガス導入手段106を処理容器4内の上方に設けるようにしてもよい。
【0089】
また更に、上記第4実施例では、ガス冷却手段136として冷却ガス噴射箱158を用いたが、これに限定されず、例えば図1及び図3に示すように複数の分散管112A、112Bと連通管114とよりなるシャワーヘッド部110を用いてもよい。この場合には、このシャワーヘッド部110をウエハWの下方に配置し、各ガス噴射孔116を上方に向けてウエハWの下面に冷却ガスを吹き付けるようにする。また、処理態様によっては、ウエハWの下面と冷却ガス噴射箱158の上面との間の隙間の幅H1(図9参照)を異ならせるようにしてもよい。
【0090】
また、ここでは被処理体として半導体ウエハを例にとって説明したが、この半導体ウエハにはシリコン基板やGaAs、SiC、GaNなどの化合物半導体基板も含まれ、更にはこれらの基板に限定されず、液晶表示装置に用いるガラス基板やセラミック基板等にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0091】
2 マイクロ波照射装置
4 処理容器
6 支持台
10 支持ピン
12 チャック用密閉空間
14 真空チャック機構
16 加熱手段
18 発光素子ユニット
22 加熱電源
38 真空排気系
64 放射温度計
66 プローブライン
68 温度測定部
70 温度制御部
72 マイクロ波導入手段
74 マイクロ波ユニット
86 マイクロ波発生器
92 撹拌機
94 撹拌プロペラ
104 ガス冷却手段
106 処理ガス導入手段
110 シャワーヘッド部
132 リフトピン
134 リフタ機構
136 ガス冷却手段
138 真空チャック機構
140 リフト板
142 昇降ロッド
144 アクチュエータ
150 吸引孔
152 吸引通路
158 冷却ガス噴射箱
160 ガス拡散室
162 ガス噴射孔
164 ピン挿通管
W 半導体ウエハ(被処理体)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理体に対してマイクロ波を照射して処理をするマイクロ波照射装置において、
真空排気が可能になされた処理容器と、
前記被処理体を支持する支持台と、
前記処理容器内へ処理ガスを導入する処理ガス導入手段と、
前記処理容器内へマイクロ波を導入するマイクロ波導入手段と、
前記被処理体を加熱する加熱手段と、
前記被処理体を冷却ガスにより冷却するガス冷却手段と、
前記被処理体の温度を測定する放射温度計と、
前記放射温度計の測定値に基づいて前記加熱手段と前記ガス冷却手段とを制御することにより前記被処理体の温度を調整する温度制御部と、
を備えたことを特徴とするマイクロ波照射装置。
【請求項2】
被処理体に対してマイクロ波を照射して処理をするマイクロ波照射装置において、
真空排気が可能になされた処理容器と、
前記被処理体を支持する支持台と、
前記処理容器内へ処理ガスを導入する処理ガス導入手段と、
前記処理容器内へマイクロ波を導入するマイクロ波導入手段と、
前記被処理体を冷却ガスにより冷却するガス冷却手段と、
前記被処理体の温度を測定する放射温度計と、
前記放射温度計の測定値に基づいて前記ガス冷却手段を制御することにより前記被処理体の温度を調整する温度制御部と、
を備えたことを特徴とするマイクロ波照射装置。
【請求項3】
前記ガス冷却手段は、前記支持台の上方に設置されたシャワーヘッド部を有することを特徴とする請求項1又は2記載のマイクロ波照射装置。
【請求項4】
前記ガス冷却手段と前記ガス導入手段とは兼用されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のマイクロ波照射装置。
【請求項5】
被処理体に対してマイクロ波を照射して処理をするマイクロ波照射装置において、
真空排気が可能になされた処理容器と、
前記被処理体を支持する支持台と、
前記処理容器内へ処理ガスを導入する処理ガス導入手段と、
前記処理容器内へマイクロ波を導入するマイクロ波導入手段と、
前記被処理体を加熱する加熱手段と、
前記被処理体の温度を測定する放射温度計と、
前記放射温度計の測定値に基づいて前記加熱手段を制御することにより前記被処理体の温度を調整する温度制御部と、
を備えたことを特徴とするマイクロ波照射装置。
【請求項6】
前記処理容器内の天井部には、前記マイクロ波導入手段より導入されるマイクロ波を撹拌する撹拌機が設けられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のマイクロ波照射装置。
【請求項7】
前記撹拌機と前記支持台との間には、誘電体よりなる仕切板が設けられていることを特徴とする請求項6記載のマイクロ波照射装置。
【請求項8】
前記仕切板の周辺部には、前記仕切板で仕切られた上下の空間を連通するための連通孔が形成されていることを特徴とする請求項7記載のマイクロ波照射装置。
【請求項9】
前記被処理体は、前記支持台上に複数の支持ピンを介して支持されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載のマイクロ波照射装置。
【請求項10】
前記支持ピンは中空になされており、前記被処理体の裏面を真空吸着する真空チャック機構として形成されていることを特徴とする請求項9記載のマイクロ波照射装置。
【請求項11】
前記支持台の下部は、前記真空チャック機構の一部を形成するために真空引きされたチャック用密閉空間として形成されていると共に、前記チャック用密閉空間と前記支持ピンとは連通されていることを特徴とする請求項10記載のマイクロ波照射装置。
【請求項12】
被処理体に対してマイクロ波を照射して処理をするマイクロ波照射装置において、
前記被処理体を収容する処理容器と、
前記処理容器内の雰囲気を排気する真空排気系と、
前記処理容器内へマイクロ波を導入するマイクロ波導入手段と、
前記被処理体の下面に対して冷却ガスを噴射して冷却するガス冷却手段と、
前記被処理体を支持するリフトピンを有して前記被処理体を昇降させるリフタ機構と、
前記リフトピンに形成された吸引孔を有し、前記吸引孔を吸引通路により前記真空排気系に接続することにより形成された真空チャック機構と、
を備えたことを特徴とするマイクロ波照射装置。
【請求項13】
前記ガス冷却手段は、前記被処理体の下方に配置されて、上面に複数のガス噴射孔が形成されると共に内部にガス拡散室が設けられた冷却ガス噴射箱を有することを特徴とする請求項12記載のマイクロ波照射装置。
【請求項14】
前記ガス冷却手段は、前記被処理体の下方に同心円状に配置された複数の分散管を有し、前記分散管には上方に向けて複数のガス噴射孔が形成されていることを特徴とする請求項12記載のマイクロ波照射装置。
【請求項15】
前記リフタ機構は、
前記各リフトピンの下端部が連結されて前記リフトピンを支持するリフト板と、
前記リフト板にその上端部が連結された昇降ロッドと、
前記昇降ロッドを昇降させるアクチュエータとを有することを特徴とする請求項12乃至14のいずれか一項に記載のマイクロ波照射装置。
【請求項16】
前記吸引通路は、前記リフト板と前記昇降ロッドとに沿って形成されていることを特徴とする請求項15記載のマイクロ波照射装置。
【請求項17】
前記処理容器内へ処理ガスを導入する処理ガス導入手段を有することを特徴とする請求項12乃至16のいずれか一項に記載のマイクロ波照射装置。
【請求項18】
前記ガス冷却手段は、前記処理ガス導入手段と兼用されていることを特徴とする請求項17記載のマイクロ波照射装置。
【請求項19】
前記処理容器内の天井部には、前記マイクロ波導入手段より導入されるマイクロ波を撹拌する撹拌機が設けられていることを特徴とする請求項12乃至18のいずれか一項に記載のマイクロ波照射装置。
【請求項20】
前記被処理体の処理時には、前記被処理体の下面と前記ガス冷却手段との間には、所定の幅の隙間が形成されていることを特徴とする請求項12乃至19のいずれか一項に記載のマイクロ波照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−191158(P2012−191158A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192069(P2011−192069)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】