説明

マデカソサイドおよびターミノロサイドに富むセンテラアシアチカ抽出物を調製するための方法

本発明は、マデカソサイドと、ターミノロサイドと、任意にアシアチコサイドとの混合物を含む抽出物、抽出物の総重量に対してマデカソサイドとターミノロサイドとアシアチコサイドとの混合物を75重量%より多く含むセンテラアシアチカの抽出物、および抽出物の総重量に対してマデカソサイドとターミノロサイドとの混合物を95重量%より多く含むセンテラアシアチカの抽出物を調製するための方法、ならびに炎症機構を調節するためのその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マデカソサイド(madecassoside)と、ターミノロサイド(terminoloside)と、必要に応じて、アシアチコサイド(asiaticoside)との混合物を含む抽出物、抽出物の総重量に対してマデカソサイドとターミノロサイドとアシアチコサイドとの混合物を75重量%より多く含むセンテラアシアチカ(Centella asiatica)の抽出物、および抽出物の総重量に対してマデカソサイドとターミノロサイドとの混合物を95重量%より多く含むセンテラアシアチカの抽出物を調製するための方法、ならびに炎症機構を調節するためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
センテラアシアチカは、バイオレットマロニエ(Violette marronne)(レユニオン島)として、ゴツコラ(Gotu Kola)もしくはインディアンペニーワート(Indian pennywort)(インド)として、またはセンテラレパンダ(Centella repanda)(北アメリカ)として、およびタラペトラカ(Talapetraka)(マダガスカル)としても知られ、理想的高度600メートルの湿潤で日陰の部分の野生に生育する多様な性質を持ったハーブである。
【0003】
センテラアシアチカはセリ(Umbelliferae/Apiaceae)科に、特にチドメグサ(Hydrocotyle)亜科に属する。センテラは植物の属名にあたり、アシアチカはその種にあたる。センテラアシアチカにはティピカ(Typica)、アビシニカ(Abyssinica)およびフロリダーナ(Floridana)と呼ばれる三品種が含まれる。センテラアシアチカは3000年以上にわたってマダガスカル、インド、中国、アメリカンインディアン、またはインドネシアの薬として知られ使用されてきた。センテラアシアチカは国によって多種多様な用途がある。センテラアシアチカはその治癒作用、鎮痛(sedative)作用、鎮痛(analgesic)作用、抗うつ作用、抗ウイルス作用、および抗菌作用で特に好都合である。センテラアシアチカは一般に、局所的にまたは経口的に使用される。しかし、センテラアシアチカは1884年になってようやく薬局方への登録が行われ、最初の乾燥抽出物は1941年になってようやく製造されたので、現代西洋医学におけるセンテラアシアチカの登場は遅かった。
【0004】
センテラアシアチカの活性物質は、ゲニン(これにはアシアチン酸(式I)およびマデカシン酸(式II)がある)およびヘテロシド(これにはアシアチコサイド(式III)およびマデカソサイド(式IV)がある)の形態をとる、五環トリテルペンである。

【0005】
アシアチコサイド、マデカソサイド、アシアチン酸、およびマデカシン酸の分子は、植物の自然防御に寄与する。センテラアシアチカの活性物質を工業的に十分に搾取できるように、この植物を野生の状態で収集することが不可欠である。この耐寒性植物が高いトリテルペン含量を有するには、環境ストレスが必要であるためである。
【0006】
センテラアシアチカのヘテロシド、つまりマデカソサイドおよびアシアチコサイドは、本質的には雨季に合成される、この植物のマデカシン酸およびアシアチン酸の貯蔵型を成す糖含有複合体である。植物に対する細菌、酵母、または真菌の攻撃により、ゲニン放出性の加水分解酵素が活性化される。トリテルペン分子は、コラーゲン合成に対するその調節および活性化作用のため、特に好ましい。センテラアシアチカから抽出されるゲニンおよびヘテロシドは、特に1型および3型コラーゲンの合成を促進させる。これらの活性物質は医薬品分野において、主に治癒を促すため、また静脈不全の治療に使用される。これらは化粧品分野において、主に抗シワ剤および抗脂肪沈着剤として使用される。先行技術において最もよく用いられるセンテラアシアチカの活性物質は、アシアチン酸およびマデカシン酸、そしてアシアチコサイドである。マデカソサイドは極めて水溶性であるため、脂溶性の活性物質を抽出するための従来の方法の際には、これは洗浄水に取り込まれることが最も多い。
【0007】
先行技術の方法により、アシアチコサイドとマデカソサイドとの混合物を得ることが可能である。この混合物には、混合物の総重量に対しておよそ25重量%のアシアチコサイド、60重量%のマデカソサイド、ならびに主に脂肪酸とオシドとからなる15重量%の副産物が含まれる。先行技術の他の方法により、抽出物の総重量に対して81重量%の純度であるマデカソサイドを得ることも可能であるが、この抽出物には、マデカソサイドとよく似た異性体、脂肪酸、主にリノール酸、リノレン酸、パルミチン酸、またはオレイン酸、およびオシドのような糖も含まれる。
【発明の開示】
【0008】
驚いたことに、本出願人は、マデカソサイドとアシアチコサイドと、ターミノロサイドと呼ばれる新規分子との混合物であって、混合物の総重量に対して75重量%の純度を超える混合物を得ること、およびマデカソサイドとターミノロサイドとの混合物であって、混合物の総重量に対して95重量%の純度を超える混合物を得ることを可能にする新規の抽出方法を開発した。同様に、本出願人は、マデカソサイドと、ターミノロサイドと、必要に応じて、アシアチコサイドとの混合物を含むセンテラアシアチカの抽出物を発見した。
【0009】
驚いたことに、本出願人はまた、センテラアシアチカの地上の部分から抽出されるマデカソサイドとターミノロサイドとの混合物は、炎症機構を調節するための薬剤に使用できることを発見した。
【0010】
さらに、センテラアシアチカの地上の部分から抽出されるマデカソサイドとターミノロサイドとアシアチコサイドとの混合物は、皮膚の早期老化を予防および遅延させるための化粧品組成物に使用することができる。
【0011】
本発明との関連で、「ターミノロサイド」という用語は、下記式Vの一般名1-[O-α-L-ラムノピラノシル-(1-4)-O-β-グルコピラノソール-(1-6)]-O-β-D-グルコピラノース2α,3β,6β,23-テトラヒドロキシオレア-12-エン-28-オエートの化学分子を指すように意図される:

【0012】
この分子は、マデカソサイドと同じ糖の系列、すなわち、グルコース-グルコース-ラムノースの系列を有する。ターミノロサイドのテルペン環の構造は、下記式VIの、ターミノリン酸(terminolic acid)のテルペン環の構造に相当する:

【0013】
ターミノロサイドは従って、マデカソサイドの位置異性体である。この分子は先行技術では単離されたことはない。さらに、ターミノロサイドが、センテラアシアチカの抽出物と考えられることは決して触れられておらず、従って、センテラアシアチカからターミノロサイドを抽出するための方法は知られていない。
【0014】
アシアチコサイドの未検出の異性体が存在することも考えられる。従って、本発明との関連で、「アシアチコサイド」という用語は、恐らくはそのオレアノール異性体の一つ(存在する場合)との混合物として、式IIIの化学分子を指すように意図される。
【0015】
本発明との関連で、「二成分混合物」という表現は、マデカソサイドおよびターミノロサイドを主に含んだ混合物を指すこととし、この混合物にはアシアチコサイドが実質的に含まれず、「三成分混合物」という表現は、マデカソサイド、ターミノロサイド、およびアシアチコサイドを主に含んだ混合物を指すこととする。
【0016】
本発明の主題は従って、以下の段階を含むことを特徴とする、マデカソサイドとターミノロサイドとアシアチコサイドとの混合物を含む抽出物を調製するための方法である:
a) アルコール溶媒を用いてセンテラアシアチカの地上の部分を抽出する段階;
b) 段階a)で得られるアルコール溶液を、陰イオン樹脂に通す段階;
c) 段階b)で得られる溶出液の液/液抽出により選択的に脱脂する段階;
d) 脱脂された水性アルコール相(aqueous-alcoholic)を連続ろ過により水相に濃縮する段階;
e) 段階d)で得られる水相を、陽イオン樹脂に次いで陰イオン樹脂に連続的に通す段階;
f) 段階e)で得られる水相をアルコールの添加により安定化させる段階、およびマデカソサイドとターミノロサイドとアシアチコサイドとを含む混合物を得る段階。
【0017】
本発明の主題は、以下の段階を含むことを特徴とする、マデカソサイドとターミノロサイドとの混合物を含む抽出物を調製するための方法である:
a) アルコール溶媒を用いてセンテラアシアチカの地上の部分を抽出する段階;
b) 段階a)で得られるアルコール溶液を、陰イオン樹脂に通す段階;
c) 段階b)で得られる溶出液の液/液抽出により選択的に脱脂する段階;
d) 脱脂された水性アルコール相を連続ろ過により水相に濃縮する段階;
e) 段階d)で得られる水相を、陽イオン樹脂に次いで陰イオン樹脂に連続的に通す段階;
f) 段階e)で得られる水相をアルコールの添加により安定化させる段階;
g) 段階f)で得られる予備精製した水性アルコール相を選択的にクロマトグラフにかける段階; および
h) マデカソサイドとターミノロサイドとの混合物をその最終的な形で回収する段階。
【0018】
センテラアシアチカ植物の活性成分の抽出は、その根を傷つけないこと、従ってこの耐寒性植物の自然再生を可能とすることを主眼として、植物の地上の部分を用いて行われることが好ましい。
【0019】
本発明による方法の好ましい変形として、地上の部分を抽出段階の前にアルコール溶媒に漬け込む。本発明により使用できるアルコール溶媒は、エタノールおよび特に70%エタノールのような、当業者により従来使用されているものである。このようにして得られるアルコール溶液を次いで、陰イオン樹脂に通すことにより浄化する(段階b)。本発明による方法で使用される陰イオン樹脂は、第四級アンモニウム型の官能基を有する強力な陰イオン樹脂であることが好ましい。こうしてアルコール溶液を陰イオン樹脂に通すことで、陰イオン性の副産物、特にフェノール物質を捕捉することが可能となる。
【0020】
本発明による方法の好ましい変形によれば、段階a)の後で得られるアルコール溶液を陰イオン樹脂に通す前に浄化する。この好ましい浄化段階は、そのアルコール溶液に水酸化ナトリウムの溶液のような強力な塩基の溶液、および活性炭を加えることにある。強力な塩基を加えることで、沈殿、従ってろ過による金属およびこれらの強力な塩基と反応可能な存在する他の物質の除去が可能となる。活性炭を加えることで、さらにアルコール溶液をその浄化により脱色すること、および脂肪酸または酸化生成物を固着することが可能となる。
【0021】
好ましくは浄化段階を先に行って樹脂に通すことからなる段階b)に続いて、得られる溶出液をこれらの脂肪分画に対して浄化する。このため、この溶出液を液/液抽出にかける。使用される抽出溶媒は無極性溶媒、好ましくはヘプタンのようなアルカンである。当業者に知られる液/液抽出法のいずれかを本発明による本方法との関連で設定することができる。特に、その抽出を遠心とすることができる。マデカソサイドは水溶性であるため、水性アルコール相を回収する。
【0022】
このようにして得られる水性アルコール相を次いで、水相に不溶性の化合物を沈殿させるため、好ましくは連続して数回、水相に濃縮し、連続的にろ過する。
【0023】
本発明による方法のこれら最初の段階の後に、センテラアシアチカの二つの既知ヘテロシド、すなわちアシアチコサイドおよびマデカソサイド、ならびにターミノロサイドが溶解している水相が得られる。この水相を次に、陽イオン樹脂、次いで陰イオン樹脂に連続的に通して浄化する。陽イオン樹脂に次いで陰イオン樹脂に連続的に通すことからなるこの段階は、本発明による方法の必須段階である。使用される陽イオン樹脂は、スルホン酸型の官能基を有する強力な陽イオン樹脂であることが好ましい。使用される陰イオン樹脂は、第四級アンモニウム型の官能基を有する強力な陰イオン樹脂であることが好ましい。本発明による方法との関連では、イオン交換樹脂の順序は、残留する酸分画の結合を促進させるために重要である。
【0024】
本発明の好ましい変形によれば、段階e)の陽イオン樹脂に次いで陰イオン樹脂に連続的に通した後で、段階f)の前に、得られる水相をまた活性炭に通す。活性炭により、溶液の着色に関与する二次的なフェノール化合物を取り込むことが可能となる。
【0025】
本発明の別の好ましい変形によれば、段階e)の後、段階f)の前、および任意で活性炭に通すことからなる段階の後に、得られる水相に一回または複数回の濃縮段階を行う。
【0026】
段階e)の後に、任意で活性炭に通したおよび/または脱色した後に得られる水相を次いで、アルコールの添加により安定化させる(段階f))。その後、センテラアシアチカの二つの既知ヘテロシドおよびターミノロサイドが溶解している浄化済みの水性アルコール相が得られる。マデカソサイド、ターミノロサイド、およびアシアチコサイドの混合物は、その混合物の総重量に対して75重量%を超える純度で得られることが好ましい。
【0027】
段階f)で得られる、マデカソサイド、ターミノロサイド、およびアシアチコサイドを含有する浄化済みの水性アルコール相を次いで、選択的クロマトグラフィーにより精製することができる。選択的クロマトグラフィー技術は、当業者によく知られている。この技術により、各分子を固定相とのその親和性に応じて分離することが可能となる。この選択的クロマトグラフィー段階により、マデカソサイドおよびターミノロサイドからなる混合物からアシアチコサイドを分離することが可能となる。
【0028】
本発明との関連では、選択的クロマトグラフィーの間に使用される溶出液は、極性溶媒である。この溶媒は、容量比50/50〜90/10の範囲にわたる、通常75/25の水/エタノール比の水およびエタノールの混合液であることが好ましい。
【0029】
本発明との関連では、選択的クロマトグラフィーの間に使用される固定相は、無極性の固定相である。固定相はグラフト化無極性シリカからなることが好ましい。無極性グラフトは、2〜18個の炭素原子、さらにより好ましくは、12〜18個の炭素原子を有することが好ましい。
【0030】
本方法のこれらの段階、すなわち、段階h)の後に、マデカソサイドとターミノロサイドとの混合物が得られる。この混合物は、30〜70重量%の、より好ましくは40〜60重量%のマデカソサイド:ターミノロサイド比を有することが好ましい。この混合物は、その混合物の総重量に対して95重量%を超える純度で得られることが好ましい。この二成分混合物には、実質的にそれ以上のアシアチコサイドが(場合によりほぼ微量にしか)含まれない。
【0031】
本発明の主題は同様に、上記の方法を用いて得ることができる、マデカソサイドとターミノロサイドとの混合物を95重量%より多く含む、センテラアシアチカの抽出物である。存在する不純物は、特に脂肪酸である。本発明の好ましい変形によれば、マデカソサイドとターミノロサイドとの混合物は、マデカソサイドが30重量%〜70重量%の、好ましくはマデカソサイドが40重量%〜60重量%の、全体に対するマデカソサイドの質量比を有する。本発明による抽出物は、抗炎症薬および免疫調節薬であることが好ましい。
【0032】
本発明の別の好ましい変形によれば、本発明による方法は同様に、本発明による方法を用いて段階h)の後に得ることができる本発明によるセンテラアシアチカの非常に純粋な抽出物、すなわち95%を超える純度を有するマデカソサイドとターミノロサイドとの混合物(二成分混合物)の適当量を添加することにより、段階f)の後に得られるマデカソサイドとターミノロサイドとアシアチコサイドとの混合物(三成分混合物)を標準化することからなる並行段階を含むこともでき、このようにして得られる最終抽出物は、最終抽出物の総重量に対して90〜98重量%の純度を有する。三成分混合物は従って、このようにして得られる最終抽出物を最終抽出物の総重量に対して90〜98重量%の純度に相当する範囲内に固定するため、二成分混合物の添加により標準化される。例えば、90%の純度を有する最終抽出物を得るには、二成分混合物の1部を三成分混合物の1部と混合する; 98%の最終純度とするには、二成分混合物の9部を三成分混合物の1部と混合する。
【0033】
本発明の主題は同様に、本発明による方法の標準化段階の後に得ることができる、マデカソサイドとターミノロサイドとアシアチコサイドとの混合物を少なくとも75重量%、好ましくは少なくとも85重量%含む、標準化されたセンテラアシアチカ抽出物(標準化された三成分混合物)である。存在する他の不純物は、特に脂肪酸である。この標準化されたセンテラアシアチカ抽出物において、アシアチコサイド:(マデカソサイド + ターミノロサイド)の質量比は、5:95〜25:75であることが好ましい。アシアチコサイドの質量パーセントが大きすぎる場合、相分離の恐れがある。具体的に言えば、アシアチコサイドは有機可溶性であるが、マデカソサイドおよびターミノロサイドは水溶性である。マデカソサイドとターミノロサイドとからなる混合物はかなり水溶性であり、したがってアシアチコサイドを約25重量%まで可溶化することができる。この標準化されたセンテラアシアチカ抽出物において、マデカソサイド:ターミノロサイドの質量比は、30:70〜70:30、さらにより好ましくは40:60〜60:40であることが好ましい。
【0034】
本発明の主題は同様に、上記のような、マデカソサイドとターミノロサイドとの混合物を95重量%より多く含むセンテラアシアチカの抽出物または標準化されたセンテラアシアチカ抽出物と、薬学的に許容される担体とを含む薬剤である。実践上の薬理学的理由のため、三成分混合物よりもむしろ二成分混合物が薬剤として使用されることが好ましい。
【0035】
マデカソサイドおよびターミノロサイドは、特に皮膚の細菌叢との接触により、それぞれマデカシン酸におよびターミノリン酸に加水分解し得る。しかしながら、これらの各酸は、免疫調節活性を示さない。
【0036】
我々の身体に細菌またはウイルスのような異物が入ると、我々の身体は異物と戦うために、免疫系と呼ばれる防御系を開始する。免疫系は、それぞれの生物を破壊することなく異物を排除しなければならない。自己免疫疾患の場合、免疫系はもはや生物のある種の「自己」構造体をそれ自身のものとは認識せず、免疫系は無秩序となって、これらの「自己」構造体を攻撃し得る。
【0037】
乾癬のある種の症例では、免疫防御を回避した生物の抗原は、その個体の皮膚を攻撃し、これにより炎症への傾斜が引き起こされる。調節系の過剰反応により、角化細胞の過剰増殖、従って角化細胞および角質細胞の非常に厚くて不均質なプラークの形成が引き起こされる。本発明による薬剤は、免疫防御の病理学的発生を阻害することを目的としている。その薬剤は、炎症機構の調節を目的とすることが好ましい。その薬剤は、自己免疫疾患、慢性炎症性疾患、アトピー性炎症性疾患、または腸疾患の治療を目的とすることがより好ましい。その薬剤は、乾癬、白斑、粃糠疹、強皮症、水疱症、湿疹、アトピー性皮膚炎、アレルギー、または関節リウマチの治療を目的とすることが好ましい。
【0038】
皮膚科学の分野では、本発明による薬剤は同様に、老化およびその結果と関連した慢性炎症への傾斜の予防および治療を目的とする。その薬剤は、アナフィラキシー感作、皮膚の色素異常症、皮膚の過剰増殖血管病、および炎症性のひび割れから選択される疾患の予防および治療を目的とすることが好ましい。その薬剤は同様に、真皮・上皮相互作用に寄与する細胞外マトリクスの増強をもたらす細胞の保護および刺激を介した皮膚組織の恒常性の調節を目的とすることが好ましい。
【0039】
本発明の主題はまた、上記の標準化されたセンテラアシアチカ抽出物と化粧品的に許容される担体とを含む化粧品組成物である。その化粧品組成物は、皮膚の自然老化から生じ得る自己免疫への任意の病的傾斜を予防するために有利に使用される。その化粧品組成物はまた、細胞機能の増強のレベルで自然老化を遅らせるために有利に使用される。その化粧品組成物は、外部攻撃にさらされる皮膚の老化の促進を予防するために、特に光による皮膚の老化を予防するためにさらに有利に使用される。
【0040】
外部環境は、紫外線を通してであれ、放電ランプから放出される放射線またはさまざまな天然の環境抗原もしくは人的活動、都市公害などに起因して存在する環境抗原を通してであれ、皮膚を持続的に攻撃して、これにより自然老化を加速する生物学的プロセスが起こる。従って、抗炎症系は持続的に働いており、これにより皮膚における角化細胞の再生の促進、または場合によっては過剰増殖、特定タンパク質の過剰発現による組織のエントロピーの悪質化、そしてついには機能の喪失が引き起こされる。その結果が角化細胞の自然保護を激減させる再生であり、したがって皮膚の早期老化が引き起こされる。本発明による組成物の化粧品的使用により、炎症性疾患を阻害し、従って皮膚の老化を予防することが有利に可能になる。
【0041】
薬剤または化粧品組成物は、固形状、ペースト状、または液状であることが好ましい。本発明によれば、薬剤または化粧品組成物は、局所的に、経口的に、皮下に、注入により、経直腸的に、および生殖経路を介して投与されるように製剤化されることが好ましい。本発明によれば、薬剤または化粧品組成物が局所的に投与されるように製剤化される場合、その薬剤またはその組成物は、水溶液、白色のもしくは有色のクリーム、軟膏(ointment)、ミルク、ローション、ゲル、軟膏(salve)、血清、ペースト、泡、エアロゾル、シャンプー、または棒状の形態であることが好ましい。本発明によれば、薬剤または化粧品組成物が経口的に投与されるように製剤化される場合、その薬剤またはその組成物は、水溶液、乳濁液、錠剤、ゼラチンカプセル、カプセル、粉末、顆粒、溶液、または経口懸濁液の形態であることが好ましいかもしれない。本発明によれば、薬剤または化粧品組成物が皮下に投与されるように製剤化される場合、その薬剤またはその組成物は、無菌の注射可能なアンプルの形態であることが好ましいかもしれない。本発明によれば、薬剤または化粧品組成物が経直腸的に投与されるように製剤化される場合、その薬剤またはその組成物は、坐薬の形態であることが好ましいかもしれない。本発明によれば、薬剤または化粧品組成物が生殖経路を介して投与されるように製剤化される場合、その薬剤またはその組成物は、卵子の形態であることが好ましいかもしれない。
【0042】
投与される本発明による薬剤の量は、治療される症状の深刻さおよび治療される症状がどのくらいの期間存在していたかに依存する。当然ながら、医師が患者に応じて用量を調整することもできる。混合物の総重量に対してマデカソサイドとターミノロサイドとの混合物を95重量%より多く含むセンテラアシアチカの抽出物を用いた、自己免疫疾患に苦しむ患者の治療は、特に、その抽出物を経皮担体中で、賦形剤の量に対して1〜3重量%の割合としたその薬剤の、1日あたり1回または2回の局所投与からなる。上記に画定される用量でのその薬剤の投与は、1〜3各日投与に分割されることが特に好ましい。
【0043】
以下の実施例により本発明を説明するが、その範囲を限定するものではない。
【0044】
実施例1: 本発明によるクリームの組成
【0045】
【表1】

【0046】
実施例2: 本発明によるクリームの組成
【0047】
【表2】

【0048】
実施例3: 抽出物の総重量に対して95重量%の純度を超えるマデカソサイドとターミノロサイドとの混合物を抽出するための方法:
a) カラムにおける初期のアルコール溶液の化学的清澄および浄化
センテラアシアチカの地上にある本実施例で使用される部分には、約2〜3 cmの茎を持つ葉が含まれる。センテラアシアチカの地上の部分250 kgを等量の3バッチに分ける。センテラアシアチカの活性成分を向流抽出の原理により、その地上の部分から抽出する。センテラアシアチカの地上の新たな部分、すなわち漬け込みまたはろ過がまだ全く行われておらず、従って活性成分が非常に豊富である部分のバッチを第二の抽出溶液、すなわち活性成分でほぼ飽和した欠乏(depleted)溶媒で1回抽出する。このようにして得られる溶液(終溶液と呼ぶ)はその後、化学的清澄槽にそのまま送られる。そのバッチを次に、第一の漬け込み溶液、すなわち先に使用した溶液よりも取り込みが少なく、従ってより多くの活性成分を可溶化できる溶液を用いた第二の抽出にかける。第二の抽出溶液として使用されるのがこの溶液である。そのバッチを最後に、新鮮な、従ってバッチ中に依然として存在する最終割合の活性成分を可溶化できる溶媒を用いた第三の抽出にかける。第一の抽出溶液として使用されるのがこの溶液である。
【0049】
本実施例との関連で、使用される漬け込みおよびろ過溶媒は70%エタノールである。センテラアシアチカの地上の部分250 kgに対し、70%エタノール1600 lを使用する。
【0050】
先の抽出段階が静槽で行われるか動槽で行われるかに応じて、活性成分で多かれ少なかれ飽和した70%エタノール中での、センテラアシアチカの地上の部分に対する漬け込み時間は、1日〜数時間に及ぶ。60℃の温度に加熱された動槽の具体的な事例では、漬け込み時間は2時間である。30%水酸化ナトリウム溶液10 lを次いで終溶液に加え、続いて活性炭10 kgを加える。活性炭は、撹拌により溶液を脱色することを可能とする。この溶液を40分間撹拌放置し、その後ろ過する。ろ液を、第四級アンモニウム型の官能基を有する強力な陰イオン樹脂に300 l/時間の流速で通す。
【0051】
このようにして得られる水性アルコール溶出液を次に、水酸化ナトリウムで5.3〜6.9の見かけpHに中和して、その後液/液抽出にかける。液/液抽出はヘプタンで遠心分離されることが好ましい。
【0052】
このようにして得られる脱脂相を減圧下、70℃を超えない温度で連続蒸発させることにより濃縮する。この濃縮により、脱脂相に含まれるアシアチコサイドを除去することが可能となる。 脱脂相の初期容量の約90容量%に相当するエタノール容量が回収されるまで、およびアシアチコサイドが脱脂相から沈殿するまで、生成物を濃縮する。この相を次にろ過して、母液を回収する。マデカソサイドはかなり水溶性であり、したがってこれは先の濃縮段階の間に沈殿したアシアチコサイドの約20重量%を可溶化する。
【0053】
b) 浄化済みの水性アルコール相の調製からなる段階
回収された濃縮水相を、陽イオン樹脂に次いで陰イオン樹脂に通して浄化する。陽イオン樹脂は、スルホン酸型の官能基を有する強力な陽イオン樹脂である。陰イオン樹脂は、第四級アンモニウム型の官能基を有する強力な陰イオン樹脂である。このようにして得られる溶出液は水性アルコール相であり、これを次に塩酸でpH 6.75+/-0.25の間に中和し、活性炭に通して脱色する。
【0054】
このようにして得られる溶液をろ過し、その後、先の濃縮と同じ原理により、水相が得られるまで減圧下の反応器中で濃縮する。これを次いで1リットルあたり200+/-20 gの固形成分含有量および容量比35+/-3.5%のアルコール割合を有する安定化した水性アルコール溶液を得るため、エタノールの添加により再調整する。マデカソサイドおよびターミノロサイドに富む、依然としてアシアチコサイドを含有する浄化済みの相がこのようにして得られる。
【0055】
c) 精製段階
このようにして得られる浄化済みの水性アルコール相を次に、選択的クロマトグラフィーによる分離にかける。この選択的クロマトグラフィーの間に使用される固定相は、グラフト化無極性シリカからなる相であって、その無極性グラフトは18個の炭素原子を有し、10μmの長さがある。使用される溶媒は、混合液の総容量に対して65容量%の水と35容量%のエタノールとの混合液である。このようにして得られる溶出液を濃縮、乾燥して粉にする。これらの各種の段階により、センテラアシアチカの乾燥抽出物を得ることが可能となる。
【0056】
この乾燥抽出物は、質量比51:49のマデカソサイドとターミノロサイドとの混合物(二成分混合物)を、抽出物の総重量に対して99.8重量%含む。
【0057】
実施例4: 標準化されたマデカソサイド、ターミノロサイド、およびアシアチコサイド混合物を抽出および調製するための方法:
抽出方法は、マデカソサイドおよびターミノロサイドに富み依然としてアシアチコサイドを含有する浄化済みの相、つまり三成分混合物を得ることからなる段階(精製段階の前)までは実施例3に記述されているのと同じである。
【0058】
この浄化済みの相は、マデカソサイド、ターミノロサイド、およびアシアチコサイドに関して80重量%の純度を有する。存在する不純物は、特に脂肪酸である。マデカソサイドとターミノロサイドとアシアチコサイドとの量を100%に戻して関連付ける場合、この混合物は、マデカソサイドをおよそ39重量%、ターミノロサイドを39重量%、およびアシアチコサイドを22重量%含む。
【0059】
この抽出物は、実施例3で得られる二成分混合物を100重量%加えること(すなわち二成分混合物と同量の三成分混合物)により標準化される。
【0060】
その結果、純度90重量%の標準化されたセンテラアシアチカ抽出物が得られる。この抽出物は、マデカソサイドとターミノロサイドとアシアチコサイドとの量を100%に戻して関連付ける場合、マデカソサイドを45.7重量%、ターミノロサイドを44.5重量%、およびアシアチコサイドを9.8重量%含む。
【0061】
実施例5: 二つのマデカソサイドおよびターミノロサイド異性体の単離:
マデカソサイドとターミノロサイドとの混合物300 mgを、30℃で、移動相が容量比81:19の水:アセトニトリルの分取用カラム(商標Hypurity C18 (250×4.6)の)でのクロマトグラフィーにかける。検出は210 nmの波長で行う。その結果、95 mgのターミノロサイドおよび85 mgのマデカソサイドが得られる。
【0062】
マデカソサイドおよびターミノロサイドの化学構造を分光分析(1H NMR、13C NMR、および質量分析)により確認する。
【0063】
実施例6: 過剰増殖性のヒト角化細胞における細胞増殖に対するマデカソサイドとターミノロサイドとの混合物の調節効果の評価:
本実施例および以下の実施例では、抽出物は、本発明によるマデカソサイドとターミノロサイドとの混合物を、抽出物の総重量に対して99.8重量%含み、その混合物は、混合物の総重量に対してマデカソサイドを51重量%およびターミノロサイドを49重量%含む。
【0064】
本発明による抽出物は、主にマデカソサイドとターミノロサイドとの混合物を含むので、その抽出物は、本実施例および以下の実施例では、「マデカソサイドとターミノロサイドとの混合物」という表現により、または「本発明による混合物」という表現により区別なく示される。
【0065】
本実施例の主題は、過剰増殖性のヒト角化細胞における細胞増殖に対するマデカソサイドとターミノロサイドとの混合物の調節効果の評価である。本実施例は、角化細胞増殖因子(以下KGFという)および/またはヒト白血球エラスターゼ(以下HLEという)で刺激したヒト角化細胞HaCaTにて行われた。
【0066】
a) マデカソサイドとターミノロサイドとの混合物の細胞毒性研究
本細胞毒性研究は、細胞毒性を引き起こさない生成物の最大用量を決定することにある。細胞毒性を、1ウェルあたり細胞20×103個(広範囲)および10×103個(限定範囲)の割合で96ウェルプレートに播いたヒト角化細胞HaCaTにて調べた。細胞生存度を、ニュートラルレッド(Neutral Red)を用いた比色アッセイにより評価する。ニュートラルレッドは、非イオン性拡散現象により細胞膜を透過する弱い陽イオン性色素であって、リソソームマトリクスのリン酸基および/またはカルボキシル基に細胞内結合する。ニュートラルレッドの蓄積および貯留の変化は、細胞膜が損なわれるときに観測される。ニュートラルレッド存在下での細胞のインキュベーション後に得られる溶液の吸光度は従って、生細胞の数に比例する。
【0067】
広範囲の、0.001〜1 mg/mlの9濃度を初めに試験した。各種の試験溶液は、10容量%のFCS(ウシ胎児血清)を添加したDMEM培地(ダルベッコ改変必須培地)で調製した。接触から24時間後、1 mg/ml以下の濃度では、ニュートラルレッドに関する細胞応答の顕著な変化は示されない。10%の阻害に相当するニュートラルレッドの取込みのごくわずかな減少が、試験した最高濃度1 mg/mlでのみ認められる。これらの結果に基づき、最大の細胞無毒性用量を特定するため、限定範囲0.05〜5 mg/mlを設定した。細胞生存度をインキュベーションから72時間後、ニュートラルレッド比色アッセイにより評価した。この結果は、1 mg/ml以下の濃度の無毒性を裏付けている。1 mg/mlから、わずかな用量依存性の細胞毒性効果が認められる。試験した最高濃度5 mg/mlでは、ニュートラルレッドに関する細胞応答が43%阻害される。
【0068】
0.075〜5 mg/mlの第二の限定範囲について試験した。アッセイは、マデカソサイドとターミノロサイドとの混合物をジメチルスルホキシド(以下DMSOという)に1%の濃度で可溶化後、HaCaT細胞にて行われた。インキュベーションから72時間後、細胞生存度をニュートラルレッド比色アッセイにより評価した。得られた結果は、DMSOの非存在下で記録されたものと同様であった。
【0069】
下記表3に結果が全て一まとめになっている; 細胞生存度は対照アッセイの割合として表されている。
【0070】
【表3】

【0071】
略語n.t.は、試験していない(not tested)ことを意味する。
【0072】
これらの結果を考慮して、マデカソサイドとターミノロサイドとの混合物の抗増殖活性を試験するのに、最大用量として300μg/mlの濃度を選択することとした。
【0073】
b) 細胞増殖に対する効果:
アッセイの原理は、マデカソサイドとターミノロサイドとの混合物の非存在下および存在下における過剰増殖性のヒト角化細胞の増殖の評価に基づいている。この方法は、KGFまたはHLEで刺激した培養物における細胞密度の測定に基づいている。細胞密度は、ニュートラルレッドを用いた比色アッセイにより評価される。マイクロプレートリーダーを用いて、溶液の吸光度を540 nmで測定する。
【0074】
マデカソサイドとターミノロサイドとの混合物を次の4濃度で試験した:
C1=10μg/ml C2=30μg/ml C3=100μg/ml C4=300μg/ml
【0075】
b.1) KGFでの刺激:
次の6試験バッチを調製する: 対照バッチ(非刺激細胞)、KGF対照バッチ(濃度100 ng/mlのKGFで刺激した細胞)および4処理バッチ(KGFで刺激し、マデカソサイドとターミノロサイドとの混合物で処理した細胞)。吸光度をt=0日、t=2日、およびt=5日で測定する。吸光度(O.D.)の平均を次の回帰直線により細胞密度(細胞/ウェル)に変換する: O.D. = 0.00355×(103細胞/ウェル) + 0.0018。
【0076】
下記表4に、KGFでの細胞の活性化から2日および5日後に記録された細胞密度が一まとめになっている。
【0077】
【表4】

【0078】
略語n.s.は、結果が統計学的に有意でないことを意味する。
【0079】
得られた結果から、本発明による混合物の存在下での培養の2日または5日後の、KGFで刺激したHaCaT細胞の増殖に顕著な変化がないことが明らかである。
【0080】
b.2) HLEでの刺激:
次の6試験バッチを調製する: 対照バッチ(非刺激細胞)、HLE対照バッチ(濃度3 nM、すなわち90 ng/mlのHLEで刺激した細胞)および4処理バッチ(HLEで刺激し、マデカソサイドとターミノロサイドとの混合物で処理した細胞)。吸光度をt=0日、t=2日、およびt=5日で測定する。吸光度(O.D.)の平均を次の回帰直線により細胞密度(細胞/ウェル)に変換する: O.D. = 0.00458×(103細胞/ウェル) + 0.041。
【0081】
下記表5に、HLEでの細胞の活性化から2日および5日後に記録された細胞密度が一まとめになっている。
【0082】
【表5】

【0083】
略語n.s.は、結果が統計学的に有意でないことを意味する。
【0084】
p≦0.05は、結果が0.05%の誤差で統計学的に有意であることを意味する。
【0085】
得られた結果から、本発明による混合物の存在下での培養の2日または5日後の、HLEで刺激したHaCaT細胞の増殖のわずかな減少が明らかである。このわずかな阻害効果は高濃度で現れるだけである。マデカソサイドとターミノロサイドとの混合物は300μg/mlで、HLEで活性化された細胞の増殖を対照と比べて処理の5日後に18%低下させる。
【0086】
c) 結論:
結論として、KGFは100 ng/mlの濃度で、およびHLEは90 ng/mlの濃度でHaCaT細胞の増殖を刺激する。
【0087】
マデカソサイドとターミノロサイドとの混合物は、試験した濃度の範囲内では、KGFで刺激したHaCaT細胞の増殖を調節することができない。本発明による混合物は、HLEで刺激したHaCaT細胞の増殖を用量依存的に調節することができる。マデカソサイドとターミノロサイドとの混合物は300μg/mlの用量にて、HLEで刺激したHaCaT細胞の増殖を18%低下させることができる。
【0088】
実施例7: 培養ヒト角化細胞に対するマデカソサイドとターミノロサイドとの混合物の抗炎症活性の証明:
本実施例の主題は、刺激性ストレスにさらした培養ヒト角化細胞による、炎症性上皮サイトカインIL-1αおよびPGE-2の産生および放出に対する本発明による混合物の抗炎症活性の評価である。
【0089】
a) マデカソサイドとターミノロサイドとの混合物の細胞毒性研究
本細胞毒性研究は実施例4と同じ方法で行って、同じ結果を得た。さらに、その各濃度が標的細胞に対して無毒性であることを確認するため、ヒト角化細胞の株K02-1H4に対するアッセイを細胞毒性研究に加えた。
【0090】
0.075〜5 mg/mlの範囲の8濃度について調べた。予めDMSOに可溶化したマデカソサイドとターミノロサイドとの混合物を選択の濃度で培地に加えた; DMSOの終濃度は1%である。細胞生存度をニュートラルレッド・アッセイにより決定した。
【0091】
この結果は、インキュベーションの72時間後、2.5 mg/ml以下の濃度の無毒性を裏付けている。試験した最高濃度5 mg/mlでは、ニュートラルレッドの取込みの30%阻害が引き起こされる。
【0092】
下記表6に結果が一まとめになっている; 細胞生存度は対照アッセイの割合として表されている。
【0093】
【表6】

【0094】
これらの結果を考慮して、マデカソサイドとターミノロサイドとの混合物の抗炎症活性を試験するのに、最大用量として1 mg/mlの濃度を選択することとした。
【0095】
b) 抗炎症活性:
アッセイの原理は、刺激性ストレスに応答したヒト角化細胞による炎症性サイトカインの産生の評価に基づいている。その方法は、マデカソサイドとターミノロサイドとの混合物の非存在下および存在下で培養され、PMA、すなわちホルボール1,2-ミリステート-13-アセテートで刺激された角化細胞による、細胞内のIL-1αの量および細胞外培地に放出されたPGE-2の量の測定に基づいている。
【0096】
この研究は、小児の包皮から単離された角化細胞の株K02-1H4にて行われた。マデカソサイドとターミノロサイドとの混合物を次の3濃度で試験した:
C1=0.1 mg/ml C2=0.5 mg/ml C3=1.0 mg/ml
【0097】
b.1) PGE-2の放出:
下記表7に、pg/μgタンパク質として表した、細胞の活性化後に得られたPGE-2の量、およびその基底量が一まとめになっている。PMA誘発性のPGE-2の産生および抗炎症活性(以下AIAという)を各濃度について以下により計算した:
PGE-2産生 = PGE-2PMAあり - PGE-2PMAなし
およびAIA = [(PGE-2産生対照細胞 - PGE-2産生処理細胞)/PGE-2産生対照細胞]×100
【0098】
【表7】

【0099】
角化細胞をPMAにさらすことで、対照培養物の培地中へのかなり大量のPGE-2の産生および放出が引き起こされる。具体的に言えば、PMAで刺激後には、非刺激培養物で記録された基底量が8倍に倍加される。これらの結果から、PGE-2は、PMAのような炎症性物質を用いてその発現、産生および放出を誘発できるサイトカインであることが裏付けられる。
【0100】
マデカソサイドとターミノロサイドとの混合物で処理した培養物においてPMAで刺激後に記録されたPGE-2の量は、対照培養物で観測されたものよりもかなり明瞭に低い。PMA誘発性のPGE-2の放出に対する本発明による混合物の阻害効果は用量依存性である。バッチC1、C2およびC3で記録された相違は、統計学的に有意(p≦0.01、スチューデントのt検定)であることが分かった。試験したマデカソサイドとターミノロサイドとの混合物の最高濃度1 mg/mlでは、PMA誘発性のPGE-2の産生を完全に阻害することができる。
【0101】
b.2) 細胞内IL-1αの産生:
下記表8に、pg/μgタンパク質として表した、細胞の活性化後に得られた細胞内IL-1αの量、およびその基底量が一まとめになっている。PMA誘発性のIL-1αの産生および抗炎症活性(以下AIAという)を各濃度について以下により計算した:
IL-1α産生 = IL-1αPMAあり - IL-1αPMAなし
およびAIA = [(IL-1α産生対照細胞 - IL-1α産生処理細胞)/IL-1α産生対照細胞]×100
【0102】
【表8】

【0103】
角化細胞をPMAにさらすことで、対照培養物の培地中へのかなり大量のIL-1αの産生および放出が引き起こされる。具体的に言えば、PMAで刺激後には、非刺激培養物で記録された基底量が4倍に倍加される。これらの結果から、IL-1αは、PMAのような炎症性物質を用いてその発現、産生および放出を誘発できるサイトカインであることが裏付けられる。
【0104】
マデカソサイドとターミノロサイドとの混合物で処理した培養物においてPMAで刺激後に記録されたIL-1αの量は、対照培養物で観測されたものよりも明瞭に低い。PMA誘発性のIL-1αの産生および蓄積に対する本発明による混合物の阻害効果は用量依存性である。バッチC1、C2およびC3で記録された相違は、統計学的に有意(p≦0.01、スチューデントのt検定)であることが分かった。試験したマデカソサイドとターミノロサイドとの混合物の最高濃度1 mg/mlでは、PMA誘発性のIL-1αの産生を80%低下させることができる。
【0105】
c) 結論:
マデカソサイドとターミノロサイドとの混合物の抗炎症活性を、炎症過程の各工程で重要な役割を果たす二つの上皮サイトカインPGE-2およびIL-1αの産生を調節するその能力によるインビトロモデルで評価した。この研究は、刺激性物質PMAで刺激した正常ヒト角化細胞の培養物で行われた。本実施例から、PMAは、毒性のない10 ng/mlの用量で、第一に、細胞内IL-1αの量のかなり明瞭な増加を誘発し、第二に、培地中へのPGE-2の産生および放出を引き起こすことが明らかである。
【0106】
マデカソサイドとターミノロサイドとの混合物は、PMA誘発性のPGE-2の放出をかなり明瞭に減少させることができる。混合物は1 mg/mlの用量でPGE-2の放出を完全に阻害することができる。本発明による混合物は、用量依存的に、PMA誘発性のIL-1αの産生および細胞内蓄積を調節することができる。
【0107】
炎症過程におけるこれら二つのサイトカインの重要な役割を考慮すると、インビトロで刺激された角化細胞によるPGE-2の発現および放出ならびにまたIL-1αの産生を用量依存的に調節する、マデカソサイドとターミノロサイドとの混合物が示す能力は、抗炎症活性であると考えることができる。
【0108】
実施例8: 培養ヒト角化細胞に対するマデカソサイドとターミノロサイドとの混合物の抗炎症活性の評価:
本実施例の主題は、インターフェロン-γにより誘発されたTNF-αおよびIL-8の産生に対するマデカソサイドとターミノロサイドとの混合物の抗炎症活性の評価である。
【0109】
a) 細胞毒性研究
本細胞毒性研究は実施例4と同じ方法で行って、同じ結果を得た。
【0110】
これらの結果を考慮して、マデカソサイドとターミノロサイドとの混合物の抗炎症活性を試験するのに、最大用量として1 mg/mlの濃度を選択することとした。
【0111】
b) 上皮サイトカインの産生に対するインターフェロン-γの効果
この研究は正常ヒト角化細胞にて行う。細胞を最初に4濃度のインターフェロン-γ(IFN-γ)で24時間処理する。
【0112】
次に、対照培養物において、およびIFN-γで処理した培養物において、培養上清のIL-8およびTNF-αをアッセイすることにより、ならびに細胞タンパク質をアッセイすることにより、炎症メディエータを測定する。使用する測定方法はクマシーブルー試験である; これは標準化された方法である。この結果を下記の表9および10に示す。
【0113】
【表9】

【0114】
【表10】

【0115】
得られた結果から、インターフェロン-γは、試験した濃度範囲100〜2000 U/mlで、用量依存的にTNF-αおよびIL-8の産生の明らかな刺激を誘発することが明らかである。文字Uは単位(unit)の略語である; 1Uは1単位のインターフェロン-γに相当する。
【0116】
上皮サイトカインTNF-αの場合、非刺激培養物で記録された基底量は1000および2000 U/mlのインターフェロンで刺激後、それぞれ3.3倍および4.5倍に倍加される。上皮サイトカインIL-8の場合、非刺激培養物で記録された基底量は1000および2000 U/mlのインターフェロンで刺激後、それぞれ26倍および38倍に倍加される。
【0117】
これらの結果は、インターフェロンがこれらの二つの上皮サイトカインの発現、産生および放出を刺激できることを裏付けている。これらの結果を考慮して、角化細胞を刺激するのに1000 U/mlの濃度を選択することとした。
【0118】
c) マデカソサイドとターミノロサイドとの混合物の抗炎症活性
この研究は正常ヒト角化細胞にて行う。刺激性ストレスを誘発する前に、細胞を最初に研究対象生成物で48時間処理する。次に、刺激性ストレスをインターフェロン-γ(IFN-γ)溶液の添加により誘発する。このようにして活性化された細胞を研究対象生成物の存在下で24時間インキュベートする。最後に、培養上清中のIL-8およびTNF-αの量をアッセイし、細胞タンパク質を同様にアッセイする。
【0119】
c.1) サイトカインIL-8に関する結果:
下記表にpg/μgタンパク質として表した、細胞の活性化後に得られたIL-8の量、およびその基底量が一まとめになっている。抗炎症活性(AIA)を各濃度について以下の式により計算した:
AIA = [(IL-8(対照細胞 + IFN) - IL-8(処理細胞 + IFN))/IL-8(対照細胞 + IFN)]×100
【0120】
マデカソサイドとターミノロサイドとの混合物で処理した角化細胞の試料の結果を下記表11に示す:
【0121】
【表11】

【0122】
得られた結果から、100 U/mlの濃度のインターフェロン-γで刺激後には、対照培地中へのIL-8のかなり明瞭な産生および放出が明らかである。IFN-γで刺激後には、非刺激培養物で記録された基底量が18倍に倍加される。さらに、これらの結果からまた、IFN-γで刺激した処理培養物におけるIL-8の量の、用量依存的な極めて大きな減少が明らかである。インターフェロン誘発性のIL-8の産生は、対照バッチの培養物で観測されたものよりもかなり明瞭に低い。マデカソサイドとターミノロサイドとの混合物の最高濃度では、IFN-γ誘発性のIL-8の放出を63%阻害することができる。バッチC1、C2、C3およびC4で記録された相違は、対照バッチと比較して統計学的に有意(p≦0.01、スチューデントのt検定)であることが分かった。
【0123】
c.2) サイトカインTNF-αに関する結果:
下記表に、細胞の活性化後に得られたTNF-αの量(pg/mgタンパク質)、およびその基底量が一まとめになっている。抗炎症活性(AIA)を各濃度について以下の式により計算した:
AIA = [(TNF-α(対照細胞 + IFN) - TNF-α(処理細胞 + IFN))/TNF-α(対照細胞 + IFN)]×100
【0124】
マデカソサイドとターミノロサイドとの混合物で処理した角化細胞の試料の結果を下記表12に示す:
【0125】
【表12】

【0126】
得られた結果から、インターフェロン-γによる、100 U/mlの濃度での刺激後の対照培地中への相当な量のTNF-αの産生および放出が明らかである。IFN-γにより、1000 U/mlの濃度で刺激後には、非刺激培養物で記録された基底量が2.2倍に倍加される。得られた結果から同様に、IFN-γで刺激した処理培養物におけるTNF-αの量の、用量依存的なわずかな減少が明らかである。マデカソサイドとターミノロサイドとの混合物の最高濃度では、IFN-γ誘発性のTNF-αの放出を26%阻害することができる。
【0127】
d) 結論
マデカソサイドとターミノロサイドとの混合物の抗炎症活性を、炎症過程の各工程で重要な役割を果たす二つの上皮サイトカインIL-8およびTNF-αの産生を調節するその能力によるインビトロモデルで評価した。この研究は、刺激性物質IFN-γで刺激した正常ヒト角化細胞の培養物で行われた。
【0128】
本実施例から、IFN-γは、毒性のない1000 U/mlの用量で、第一に、IL-8の量のかなり明瞭な増加を誘発し、第二に、培地中へのTNF-αの産生および放出を引き起こすことが明らかである。本発明による混合物は、用量依存的に、IFN-γ誘発性のIL-8の産生および細胞内蓄積を調節することができる。混合物は1 mg/mlの用量でIL-8の放出を63%阻害することができる。
【0129】
マデカソサイドとターミノロサイドとの混合物は、IFN-γ誘発性のTNF-αの放出を減少させることができる。混合物は1 mg/mlの用量でTNF-αの放出を26%阻害することができる。
【0130】
閉じた系、すなわちインビトロで行ったアッセイで得られた結果を基にインビボで有効な化学活性の機構に対する仮説を推定できるとした場合、以下の所見を具体化することができるであろう: TNF-αは、角化細胞においてだけでなく、同様におよび特にマクロファージおよびBリンパ球において、IL8産生の活性化因子の一つである。
【0131】
第一に、混合物がTNF-αの発現を部分的とはいえ減少させるという事実は、炎症シグナルの発現の軽減を超えて、抑制されることのない免疫系の活性を制御する現れである。TNF-αは皮膚の細胞制御および監視で、特にアポトーシスの局面で主要な役割を果たすためである。第二に、この混合物はIL-8の発現を減少させ、従って多形核好中球および多形核好塩基球の走化性の抑制とタンパク質分解の「圧力」の減少に関わる結果とをもたらし、従って炎症シグナルの伝播の軽減と、さらには血管透過性の減少とをもたらす。別の結果は、代償として、IL8による皮膚のTリンパ球の活性化が低下することである。
【0132】
実施例9: ヒト角化細胞によるSKALPの産生に対するマデカソサイドとターミノロサイドとの混合物の効果:
本実施例の主題は、分化の状態にあるヒト角化細胞によるサイトケラチン10、特にエラフィン(以下略称をCK10またはSKALPという)の発現に対するマデカソサイドとターミノロサイドとの混合物の抗乾癬活性の評価である。
【0133】
a) 細胞毒性研究
本細胞毒性研究は実施例4と同じ方法で行って、同じ結果を得た。これらの結果を考慮して、マデカソサイドとターミノロサイドとの混合物の抗乾癬活性を試験するのに、最大用量として1 mg/mlの濃度を選択することとした。
【0134】
b) SKALPの発現および角化細胞の分化
この研究は正常ヒト角化細胞にて行う。細胞を次の3種の異なる培地の培養下に置く:
-「増殖」培地: gf(増殖因子)が入ったKGM培地、つまり増殖因子を添加した培地、
-「正常分化」培地: gfが入っていないKGM培地、つまり増殖因子を欠如する培地、
-「乾癬型の分化」培地: FCSが入ったKGM培地、つまりウシ胎児血清(以下FCS(5%)という)を添加した培地。
【0135】
次に、これら各種の培地中で72時間培養した細胞に対し、インキュベーション培地中のSKALPの量を測定する。測定アッセイは、Skin pharmacology and applied skin physiology, 2002; 15:152-261に記述されているELISAアッセイである。
【0136】
この結果は次の通りである:
1. gfが入ったKGM培地 SKALP = 1.17+/-0.18 ng/μgタンパク質 100
2. gfが入っていないKGM培地 SKALP = 1.34+/-0.20 ng/μgタンパク質 115
3. FCSが入ったKGM培地 SKALP = 2.76+/-0.08 ng/μgタンパク質 236
【0137】
得られた結果から、SKALPの発現が細胞の分化状態に応じて変化することが明らかである。SKALPの産生は、細胞をFCS含有培地で培養すると、かなり明瞭に増加する。乾癬型の分化培地におけるSKALPの量は、増殖培地で記録されたSKALPの量と比較して2.4倍に倍加される。
【0138】
c) 研究対象生成物の「抗乾癬」効果
アッセイ条件は次の通りである: 細胞を本発明による混合物の非存在下(対照バッチに相当)で、およびその存在下で「正常」分化培地、すなわちgfが入っていないKGM培地の培養下に、および「乾癬型」の分化培地、すなわちFCSが入ったKGM培地の培養下に72時間置く。その後、培養上清中のSKALPの量をアッセイする。細胞タンパク質を同様にアッセイする。下記の表13および14に、gfが入っていないKGM培地での、およびFCSが入ったKGM培地での細胞の培養後に得られた、ng/μgタンパク質として表したSKALPの量が一まとめになっている。
【0139】
α) 「正常」分化培地: gfが入っていないKGM培地での培養
【0140】
【表13】

【0141】
得られた結果から、本発明による混合物で処理した培養物でのSKALPの量の減少が明らかである。バッチC4で記録された相違だけが、「KGM gfなし」の対照と比較して統計学的に有意(p≦0.01、スチューデントのt検定)であることが分かった。マデカソサイドとターミノロサイドとの混合物の最高濃度では、「正常」分化培地でのSKALPの分泌を60%阻害することができる。
【0142】
β) 「乾癬型」の分化培地: FCSが入ったKGM培地での培養
【0143】
【表14】

【0144】
得られた結果から、本発明による混合物で処理した培養物でのSKALPの量の用量依存的な減少が明らかである。バッチC1、C2、C3およびC4で記録された相違は「KGM FCSあり」の対照と比較して統計学的に有意(p≦0.01、スチューデントのt検定)であることが分かった。マデカソサイドとターミノロサイドとの混合物の最高濃度では、「乾癬型」の分化培地でのSKALPの分泌を40%阻害することができる。
【0145】
d) 結論
マデカソサイドとターミノロサイドとの混合物の抗乾癬活性を、乾癬型の疾患で重要な役割を果たすと考えられるSKALPの分泌を調節するその能力によるインビトロモデルで評価した。この研究は、各種の培地中での正常ヒト角化細胞の培養物で行われた。
【0146】
本実施例から、SKALPの発現は細胞の分化の状態に応じて変化し、「乾癬型」の培地、すなわちFCS含有培地でかなり明瞭に増加することが明らかである。
【0147】
本発明による混合物は用量依存的に、「正常」分化培地および「乾癬型」の分化培地でのSKALPの分泌を阻害することができる。混合物は1 mg/mlの用量で、「正常」分化培地でのSKALPの分泌を60%阻害することができ、「乾癬型」の分化培地でのSKALPの分泌を40%阻害することができる。乾癬におけるSKALPの分泌の重要な役割を考慮すると、インビトロの各種の分化培地での角化細胞によるSKALPの分泌を用量依存的に調節する、マデカソサイドとターミノロサイドとの混合物が示す能力は、抗乾癬活性であると考えることができる。この結果から、炎症性過形成反応に即した細胞脱感作の方法により、乾癬型のモデルを特徴付けるタンパク質分解的な関連での上皮細胞に対する本発明による混合物の防護効果が証明される。
【0148】
実施例10: 線維芽細胞培養物におけるNFκBの活性化に対するマデカソサイドとターミノロサイドとの混合物の効果:
核因子-κBは、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子、細胞接着分子、および特定の寿命の短いタンパク質をコードする遺伝子の発現を統制する転写因子である。NFκBは、サイトカイン、遊離ラジカル、吸入粒子、紫外線照射、および細菌またはウイルスを含むさまざまな作用物質により活性化される。
【0149】
TNF-αのような炎症性物質は、とりわけ転写因子NFκB の活性化を介して標的炎症性遺伝子の転写を誘発する。非刺激条件の下では、転写因子NFκBは、細胞質内で阻害タンパク質IkBに結合している。TNF-αがその受容体に結合することで、この複合体のリン酸化や阻害因子からのNFκBの解離が引き起こされる。その後、活性化したNFκBは、核内に移行して、NFκBによりトランス活性化される遺伝子に特異的なNFκB共通配列と呼ばれるプロモーター配列に結合する。この配列により、標的遺伝子の転写が引き起こされる。NFκBの活性化は従って、刺激したまたは刺激していない核抽出物を、支持体に固定化したNFκBオリゴヌクレオチド共通配列と接触させることにより、および抗NFκB抗体を用いたELISA法のような酵素抗体法を利用して、結合したNFκBを定量化することにより測定することができる。
【0150】
本研究は、プラスチック支持体に固定化したオリゴヌクレオチド共通配列との転写因子NFκBの結合の測定に基づいた極めて高感度な特異的方法を利用して、NFκBの活性化に対する本発明による混合物の効果を評価することを可能とする。結合したNFκBは、抗NFκB特異抗体により二次的に認識される。
【0151】
このアッセイは、正常ヒト線維芽細胞の単離核にて行われた。
【0152】
培地は以下を含むDMEMである:
・ 2 mM L-グルタミン
・ 50 IU/mlペニシリン、50μg/mlストレプトマイシン
・ 前培養には10%(容量比)ウシ胎児血清、その後は無血清培地に交換
【0153】
【表15】

【0154】
【表16】

【0155】
a) マデカソサイドとターミノロサイドとの混合物の細胞毒性研究
本細胞毒性研究は実施例4と同じ方法で行って、同じ結果を得た。これらの結果を考慮して、マデカソサイドとターミノロサイドとの混合物の抗乾癬活性を試験するのに、最大用量として0.01%の濃度を選択することとした。
【0156】
b) 処理、抽出およびアッセイ
線維芽細胞をコンフルエントになるまで175 cm2フラスコ内で10容量%のFCSを含有するDMEM培地に入れて前培養し、その後培地を無血清DMEM培地と交換した。その後、細胞をアッセイ対象生成物または対照標準の存在下で1時間培養した。次に、炎症性物質の形質転換成長因子α(終濃度25 ng/mlのTNF-α; Sigma T0157)を培地に添加して、細胞を再び37℃および5% CO2で1時間インキュベートした。インキュベーション後、細胞を氷上に収集して、各種試料の細胞核をSigma NUC-101キットにより供給業者推奨の手順に従って単離した。それぞれの核抽出物のタンパク質の量は、Biorad 500-0116アッセイキットにより決定した。特異的オリゴヌクレオチドに結合した活性化NFκBの量は、抗NFκB特異抗体による可視化の後、各試料の同量、すなわち50μl(50/50希釈)の核抽出物に関して測定した。このアッセイは、Mercury transfactor NFκBアッセイキット(BD Biosciences K2058-1)を用い、供給業者推奨の手順に従って行った。
【0157】
c) NFκBアッセイ
この結果を下記表17に示す:
【0158】
【表17】

【0159】
AUは抽出物中の任意単位のNFκBを表す; これは測定値とバックグラウンドノイズとの間の相違である。
【0160】
線維芽細胞核内のNFκBの基底量はかなり低い。25 ng/mlのTNF-αで処理することにより、TNF-αなしの対照と比べて転写因子NFκBが約37倍と大幅に活性化された。過剰なオリゴヌクレオチドを用いた対照により、実質的に、観測された反応全体がNFκBの結合に特異的であったことを示すことが可能とされた。5 mMスルファサラジン、つまりNFκBの移行に対する対照標準阻害剤では、TNF-α誘発性の転写因子NFκBの活性化が明瞭に、すなわちTNF-αによる対照の44% (p<0.01)に低下した。
【0161】
0.1μMデキサメタゾンでは、TNF-α誘発性のNFκBの核移行が阻害されなかった。実際に、デキサメタゾンは、NFκB誘導性遺伝子のトランス活性化を抑制するが、しかしNFκBの活性化または核へのその移行を阻害しない。従って、転写に対する阻害効果はあるが、NFκBの移行に対する効果はない; デキサメタゾンの作用は、グルココルチコイド受容体を介して核の段階で起こり、従ってその作用はスルファサラジンの作用の後で起こる。
【0162】
0.01%で試験した本発明による生成物では、TNF-α誘発性のNFκBの活性化が、対照の95%と、有意に変化しなかった。この結果は、別の機構を介した抗炎症活性を排除するものではない。
【0163】
d) 結論
マデカソサイドまたはその異性体がNFκBの活性化に干渉しないことで、病原性抗原による攻撃が認められる場合に細胞を操作可能とする、炎症性サイトカインおよびケモカインのようなリガンドの転写が引き起こされる。
【0164】
マデカソサイドおよびその異性体は、繊維芽細胞がもたらすNFκBの活性化とのまたはその活性化に対する相互作用がない。自己免疫の脱制御での炎症性リガンド、つまり膜でのIL1、IL8、TNF-α、PGE2の軽減から、マデカソサイドおよびその異性体はむしろ、翻訳の段階で(炎症への傾斜の場合にはいっそう寛容に)、ならびにタンパク質、ペプチドもしくは他のリガンドの発現系のおよび/または合成系の段階で(インターロイキンの細胞内発現を抑えるように)作用できることが示唆される。
【0165】
実施例11: 皮膚炎等価モデルで培養したヒト線維芽細胞による細胞外マトリクス・メタロプロテイナーゼの産生に対するアシアチコサイドの調節効果およびマデカソサイドとターミノロサイドとの混合物(重量比50/50)の調節効果のインビトロ評価:
本実施例の目的は、皮膚等価物(コラーゲン格子)中で培養したヒト皮膚線維芽細胞によるメタロプロテイナーゼ(MMP)およびその特異的阻害因子(TIMP)の保護に対するアシアチコサイドおよびマデカソサイドとターミノロサイドとの混合物(重量比50/50)の調節効果を評価することである。生成物の非存在下および存在下で培養した、ならびにTNF-αで刺激したヒト線維芽細胞により培地中に放出されるMMP-1の量およびTIMP-1の量の測定に基づいたインビトロの実験的手法を提案する。この研究は、外植方法に従って皮膚生検から樹立したヒト線維芽細胞培養物で行われた。線維芽細胞は、実験室で使用される方法に従い、ウシ胎児血清(10% FCS)および抗生物質を添加したDMEM培地(Life Technologies社からInvitrogen(商標)の名で売られている)に入れて、37%で湿潤空気-CO2(95%-5%)の雰囲気中培養する。
【0166】
a) 細胞毒性
本細胞毒性研究は実施例6と同じ方法で行った。
【0167】
・アシアチコサイド:
生成物のストック溶液をDMSOで予め調製し、その後各種の試験溶液を得るために培地で希釈した(DMSOの終濃度: 1%)。最大の細胞無毒性用量(NCD)に近づけるため、広範囲[5〜1000μg/ml]の8濃度を初めに試験した。24時間接触後、試験した濃度の範囲では、顕著な細胞毒性効果は記録されなかった。これらの結果に基づき、48時間接触後の最大の細胞無毒性用量(NCD)を特定するため、限定範囲10〜1000μg/mlを設定した。この結果(表18)は、48時間インキュベーション後、1 mg/ml未満の濃度の無毒性を裏付けている。細胞の生存度は、細胞を1 mg/mlの活性物質の存在下でインキュベートする場合、12%しか減少しない。
【0168】
【表18】

【0169】
・マデカソサイド-ターミノロサイド混合物:
生成物のストック溶液をDMSOで予め調製し、その後各種の試験溶液を得るために培地で希釈した(DMSOの終濃度: 1%)。最大の細胞無毒性用量(NCD)に近づけるため、広範囲(0.005〜100 mg/ml)の8濃度をヒト線維芽細胞にて試験した。24時間接触後、1 mg/mlに相当する濃度では、ニュートラルレッドの取込みの顕著な変化は起こらなかった。これを超えると、用量依存的な細胞毒性効果が記録された。これらの結果に基づき、最大の細胞無毒性用量(NCD)を特定するため、限定範囲0.1〜10 mg/mlを設定した。
【0170】
この結果(表19)は、48時間インキュベーション後、1 mg/mlに相当する濃度の無毒性を裏付けている。
【0171】
【表19】

【0172】
細胞毒性の結果に基づいて、MMPの産生に対して活性物質のアシアチコサイドとマデカソサイド-ターミノロサイド混合物とを試験するのに、最大の細胞無毒性用量(NCD)として「1 mg/ml」の濃度を選択した。
【0173】
b) メタロプロテイナーゼの産生
単層として培養したヒト皮膚線維芽細胞をトリプシン処理によりその支持体から剥がして、完全培地に懸濁させる。計測後、細胞懸濁液を培地で希釈して、濃縮培地(1.76×DMEM)、ウシ胎児血清(FCS)、およびI型コラーゲン(ラット尾腱からの酢酸抽出物)の混合物に、規定の割合で添加する。次に、この混合物を低温条件下にて、1 ml/ウェルの割合で24ウェルプレートに注ぎ込む。次に、この皮膚等価物を37℃に置いて、空気-CO2(95%/5%)の雰囲気中、72時間インキュベートする。皮膚等価物のゲルは、線維芽細胞の作用の下で徐々に収縮する。
【0174】
播種後72時間で培地を除去して、各種の研究対象生成物を含有する新たな培地と交換する(「予防的」処理)。ゲルを37℃のインキュベーターに戻して、空気-CO2(95%/5%)の雰囲気中、24時間インキュベートする。
【0175】
インキュベーション後、プレートの培地をあける。プレートの培養物を洗浄し、その後各種濃度の各研究対象生成物の非存在下(対照培養物)または存在下(処理培養物)でTNF-α(10 ng/ml)の溶液にさらす。TNF-αの添加後、これらの培養物を37℃のインキュベーターに24時間戻す。インキュベーションが終わったら、MMP-1およびTIMP-1のアッセイのため、培地を取り除き、遠心して、分注する。
【0176】
この研究は、コラーゲンの三次元ゲル(皮膚等価物)中で培養したヒト線維芽細胞にて行われた。
【0177】
作業条件:
1. TNF-αによるMMP-1の誘導前、細胞を24時間処理。
2. TNF-α (10 ng/ml)の添加によるMMP-1の誘導。24時間インキュベーション。
3. 対照および処理培養上清における細胞生存度およびMMP-1の量の測定。
【0178】
・アシアチコサイド:
アシアチコサイドを次の3濃度で試験した:
C1=0.2 mg/ml C2=0.5 mg/ml C3=1.0 mg/ml
【0179】
≫細胞生存度 (ニュートラルレッド・アッセイ)
10 ng/ml TNF-αによる細胞の処理では、細胞生存度の変化は起こらない。TNF-αへの曝露後、ニュートラルレッドの取込みの減少は観測されない。同様に、アシアチコサイドで処理した培養物の生存度は、TNF-αによる処理後に変化しない。
【0180】
≫MMP-1の産生
下記表20に、細胞の活性化後に培養上清中に得られたMMP-1 (ng/ml)の量(+TNF)、および同様にその基底量(-TNF)が一まとめになっている。
【0181】
【表20】

【0182】
対照細胞の場合、得られた結果から、TNF-αがMMP-1の産生の明瞭な刺激を誘発することが明らかである。非刺激細胞で記録された基底量は、TNF-αによる刺激後、503倍に倍加される。
【0183】
処理細胞の場合、アシアチコサイドで処理した培養物においてTNF-αによる刺激後に記録されたMMP-1の量は、(+)TNF-α対照で観測されたものよりも低い。
【0184】
TNF-α誘発性のMMP-1の産生に対するアシアチコサイドの効果は用量依存性である。バッチC1 (p≦0.05)、C2 (p≦0.01)およびC3 (p≦0.01)で記録された相違は、(+)TNF-α対照と比べて統計学的に有意(スチューデントのt検定)であることが分かった。
・C1: MMP-1の量が18%減少
・C2: MMP-1の量が49%減少
・C3: MMP-1の量が72%減少
【0185】
・マデカソサイド-ターミノロサイド混合物
マデカソサイド-ターミノロサイド混合物を次の3濃度で試験した:
C1=0.2 mg/ml C2=0.5 mg/ml C3=1.0 mg/ml
【0186】
≫細胞生存度 (ニュートラルレッド・アッセイ)
マデカソサイド-ターミノロサイド混合物で処理した培養物の生存度は、TNF-αによる処理後に変化しない。
【0187】
≫MMP-1の産生
この結果から、マデカソサイド-ターミノロサイド混合物で処理し且つTNF-αで刺激した培養物の上清におけるMMP-1の量の用量依存的な減少が明らかである。試験バッチC2およびC3で記録された相違だけが統計学的に有意(p≦0.01、スチューデントのt検定)である。
・C1: MMP-1の量が3%減少
・C2: MMP-1の量が39%減少
・C3: MMP-1の量が61%減少
【0188】
下記表21に、細胞の活性化後に培養上清中に得られたMMP-1の量(ng/ml) (+TNF)、および同様にその基底量(-TNF)が一まとめになっている。
【0189】
【表21】

【0190】
c) TIMP-1の産生
MMP-1に対する特異的阻害因子TIMP-1の量を同様に、アシアチコサイドまたはマデカソサイド-ターミノロサイド混合物で処理した培養物の上清で測定した。各活性物質を次の3濃度で試験した:
C1=0.2 mg/ml C2=0.5 mg/mlおよび C3=1.0 mg/ml
【0191】
下記表22に、細胞の活性化後に培養上清中に得られたTIMP-1の量(ng/ml) (+TNF)、および同様にその基底量(-TNF)が一まとめになっている。
【0192】
【表22】

【0193】
得られた結果から、次のことが明らかである:
・コラーゲンゲル中で培養した線維芽細胞によるTIMP-1の産生はTNF-αにより変化しない;
・アシアチコサイドからなる活性物質およびマデカソサイド-ターミノロサイド混合物からなる活性物質は、試験した濃度の範囲内で、TIMP-1の産生に対して効果を示さない。
【0194】
d) 結論:
メタロプロテイナーゼ(MMP)およびその特異的阻害因子(TIMP)の産生に対するアシアチコサイドからなる活性物質およびマデカソサイド-ターミノロサイド混合物からなる活性物質の調節効果を、インビトロで、ヒト皮膚のモデルに関して評価した。この研究は、三次元コラーゲンマトリクス中で培養した正常ヒト線維芽細胞で行われた。活性物質の効果は、TNF-αによる細胞の活性化後、培養上清中のMMP-1およびTIMP-1の量を測定することにより評価した。
【0195】
選択の実験条件の下で、本研究の結果から、次のことが明らかとなった:
・TNF-αは、細胞無毒性用量(10 ng/ml)で、MMP-1の産生の大幅な増加を引き起こす。いっぽう、TNF-αによる細胞の処理後、TIMP-1の産生は変化しない;
・アシアチコサイドからなる活性物質およびマデカソサイド-ターミノロサイド混合物からなる活性物質は、用量依存的に、TNF-α誘発性のMMP-1の産生を低下させることができる。試験した最高濃度(1 mg/ml)で、これらの二つの活性物質は、TNF-α誘発性のMMP-1の量をそれぞれ72%および61%低下させることができる;
・アシアチコサイドおよびマデカソサイド-ターミノロサイド混合物は、試験した濃度の範囲内で、TIMP-1の産生に対して効果がない。
【0196】
ヒト繊維芽細胞で行われた本研究により、TNF-αの炎症性刺激の下で、培地中へのMMP1(コラゲナーゼ)の放出の大幅な増加(530%)を観測することが可能になる。マデカソサイド-ターミノロサイド混合物は、アシアチコサイドと同様、用量依存的にMMP-1の濃度を著しく減少させる(500μg/kgで、マデカソサイド-ターミノロサイド混合物 = -39%およびアシアチコサイド = -49%)。MMP1阻害因子TIMPおよび特にTIMP1の放出は変化しない。この結果をSKALPに関して行った研究(実施例9)と比較することができる。マデカソサイド-ターミノロサイド混合物の存在下で、高濃度のロイコプロテアーゼは、阻害因子の分泌を増加させないが、角化細胞による炎症性リガンドの分泌を大幅に減少させるためである。
【0197】
このことから、マデカソサイド-ターミノロサイド混合物およびアシアチコサイドは、二つの皮膚区画、すなわち表皮および真皮に対する活性物質であることも示唆される。
【0198】
実施例12: ターミノロサイド、マデカソサイド、およびヘテロシド混合物(マデカソサイド、ターミノロサイド、およびアシアチコサイド)の抗炎症活性:
本実施例の場合、ヘテロシド混合物は、混合物の総重量に対して40重量%のターミノロサイド、40重量%のマデカソサイド、および20重量%のアシアチコサイドからなる。
【0199】
ターミノロサイド、マデカソサイド、およびヘテロシド混合物の抗炎症活性を評価するため、本発明者らは、インターフェロン-γ(IFN-γ)またはPMAで誘発した刺激性ストレスにさらされたヒト培養角化細胞による炎症性上皮サイトカイン(IL-1α、IL-8、PGE-2)の産生および放出に対するこれらの三つの活性物質の調節効果を調べた。ヒト角化細胞はヒトの皮膚から単離した。細胞は、実験室で樹立された通常の方法に従い、無血清KGM培地(角化細胞増殖培地、Clonetics(登録商標)社が販売している)に入れて、湿潤空気-CO2(95%-5%)の雰囲気中、37℃で培養した。細胞は、25 cm2フラスコ内に播いて、コンフルエントになる前に定期的に継代した。アッセイの原理は、刺激性ストレスに応答したヒト角化細胞による炎症性サイトカインの産生の評価に基づいている。その方法は、研究対象生成物の非存在下でおよび存在下で培養され且つインターフェロン-γ(IFN-γ)でまたはPMA(ホルボール-12-ミリステート-13-アセテート)でさらに刺激された角化細胞による、細胞内のIL-1αの量ならびに細胞外培地に放出されたIL-8およびPGE-2の量の測定に基づいている。
【0200】
a) 細胞毒性
本細胞毒性研究は、ヒト角化細胞HaCaTおよび正常ヒト角化細胞にて、実施例6と同じ方法で行った。
【0201】
・ターミノロサイド:
ヒト角化細胞HaCaTに対する細胞毒性
下記表23に結果が全て一まとめになっている(細胞生存度は対照の%として表されている)。
【0202】
【表23】

n.t.: 試験していない
【0203】
24時間接触後、2.5 mg/ml以下の濃度では、RNに対する細胞応答の有意な変化は起こらない。2.5 mg/mlを超えると、わずかな用量依存性の細胞毒性効果が記録される。
【0204】
ヒト角化細胞に対する細胞毒性
細胞毒性研究に、ヒト角化細胞(K02-1H4細胞株)に対するアッセイを、その「標的」細胞に対する各濃度の無毒性を確認するために加えた。下記表24に結果が全て一まとめになっている(細胞生存度は対照の%として表されている)。
【0205】
【表24】

【0206】
この結果は、72時間のインキュベーション後、2.5 mg/ml以下の濃度の無毒性を裏付けている。
【0207】
・マデカソサイド:
ヒト角化細胞HaCaTに対する細胞毒性
下記表25に結果が全て一まとめになっている:
【0208】
【表25】

【0209】
24時間接触後、1.0 mg/ml未満の濃度では、RNに対する細胞応答の有意な変化は起こらない。1.0 mg/mlを超えると、わずかな用量依存性の細胞毒性効果が記録される。
【0210】
ヒト角化細胞に対する細胞毒性
細胞毒性研究に、ヒト角化細胞(K02-1H4細胞株)に対するアッセイを、その「標的」細胞に対する各濃度の無毒性を確認するために加えた。
【0211】
下記表26に結果が全て一まとめになっている(細胞生存度は対照の%として表されている)。
【0212】
【表26】

【0213】
この結果は、2.5 mg/ml未満の濃度の無毒性を裏付けている。これを超えると、わずかな用量依存性の細胞毒性効果が記録される。
【0214】
・ヘテロシド:
ヒト角化細胞HaCaTに対する細胞毒性
表27に結果が全て一まとめになっている(細胞生存度は対照の%として表されている)。
【0215】
【表27】

【0216】
24時間接触後、1.0 mg/ml未満の濃度では、RNに対する細胞応答の有意な変化は起こらない。1.0 mg/mlを超えると、わずかな用量依存性の細胞毒性効果が記録される。
【0217】
ヒト角化細胞に対する細胞毒性
細胞毒性研究に、ヒト角化細胞(K02-1H4細胞株)に対するアッセイを、その「標的」細胞に対する各濃度の無毒性を確認するために加えた。表28に結果が全て一まとめになっている(細胞生存度は対照の%として表されている)。
【0218】
【表28】

【0219】
この結果は、0.75 mg/ml未満の濃度の無毒性を裏付けている。これを超えると、わずかな用量依存性の細胞毒性効果が記録される。これらの結果に基づき、三つの活性物質の抗炎症活性を試験するため、1 mg/mlに相当する濃度を最大用量として選択した。
【0220】
b) インターフェロン-γの効果
上皮サイトカインの産生および放出に対するインターフェロン-γ(IFN-γ)の効果を正常ヒト角化細胞(K02-1H4細胞株)にて調べた。IFN-γを次の4濃度で試験した:
C1 = 100 U/ml C2 = 500 U/ml C3 = 1000 U/ml C4 = 2000 U/ml
【0221】
細胞内IL-1αの産生
この結果は、下記表29に示されている:
【0222】
【表29】

【0223】
得られた結果から、インターフェロン-γは、試験した濃度の範囲で、用量依存的に細胞内IL-1αの産生の明瞭な刺激を誘発することが明らかである。非刺激細胞で記録された基底量(3.25 +/- 0.05 pg/μgタンパク質)は、1000および2000 pg/mlのIFN-γによる刺激後、それぞれ、2.6倍および3.8倍に倍加される。
【0224】
IL-8の放出
IL-8の産生および放出に対するIFN-γの効果を同じ実験条件の下で調べた。この結果は、下記表30に示されている:
【0225】
【表30】

【0226】
IFN-γで刺激していない培養物(-IFN-γ)で得られた結果は、角化細胞に対する基底状態のインキュベーション培地にはIL-8が存在しないかまたは非常に少量のIL-8が存在することを裏付けている。いっぽう、IFN-γで刺激後には、IL-8の産生および放出の明瞭な刺激が記録される。その培養物(+IFNγ)における細胞内IL-8の量のこの用量依存的な増加は、IL-8の産生および放出に対するこの炎症性サイトカインの役割を裏付けている。
【0227】
PGE-2の放出
PGE-2の産生および放出に対するIFN-γの効果を前述したのと同じ実験条件の下で調べた(表31)。
【0228】
【表31】

【0229】
この結果から、IFNγは、試験した濃度の範囲内で、PGE-2の産生および放出を刺激できないことが明らかである。
【0230】
c) 抗炎症活性:
この研究は、小児の包皮から単離された角化細胞(K02-1H6細胞株)にて行われた。
【0231】
各活性物質、つまりターミノロサイド、マデカソサイド、およびヘテロシドを次の4濃度で試験した:
C1=0.01 mg/ml C2=0.25 mg/ml C3=0.50 mg/ml C4=1.00 mg/ml
【0232】
アッセイ条件:
1. 刺激性ストレスの誘発前に細胞を研究対象生成物で48時間処理; 2. 刺激性ストレスの誘発: IFN-γ (1000 U/ml); 3. 「活性化」細胞を研究対象生成物の存在下で、24時間インキュベーション; 4. アッセイ: IL-8 (細胞外)およびIL-1α (細胞内)。細胞タンパク質のアッセイ。
【0233】
IL-8の放出
下記表32〜34に細胞の活性化後に得られたIL-8の量(+IFN-γ)、および同様にその基底量(-IFN-γ)が一まとめになっている。IFN-γ誘発性のIL-8の産生および抗炎症活性(AIA)を、活性物質の各濃度について、以下により計算した:
AIA = [(IL-8(対照細胞+IFN) - IL-8(処理細胞-IFN))/IL-8(対照細胞+IFN)]×100
【0234】
・ターミノロサイド
【0235】
【表32】

【0236】
IFN-γで刺激後の対照培養物では、かなり大量のIL-8の放出が認められる。非刺激培養物で記録される基底量がごく少量であることから、IL-8は基底状態で存在していないこと、但しその発現およびその放出をIFN-γで誘発できることが示唆される。IFN-γで刺激後、基底量は8.5倍に倍加される。活性物質ターミノロサイドで処理した培養物においてIFN-γで刺激後に記録されたIL-8の量は、(+)IFN-γ対照のそれよりも低い。
【0237】
IFN-γ誘発性のIL-8の放出に対する活性物質ターミノロサイドの効果は用量依存性である。バッチC2 (p≦0.05)、C3 (p≦0.01)およびC4 (p≦0.01)で記録された相違は、(+)IFN-γ対照と比べて統計学的に有意(スチューデントのt検定)であることが分かった。試験した最高濃度(1 mg/ml)では、IFN-γ誘発性のIL-8の産生を42%低下させることができる。
【0238】
・マデカソサイド:
【0239】
【表33】

【0240】
この結果から、マデカソサイドで処理し且つIFN-γで刺激したバッチにおける用量依存的なIL-8の減少が明らかである。バッチC1、C2、C3およびC4の相違は、統計学的に有意(p≦0.01、スチューデントのt検定)である。濃度1 mg/mlでは、IL-8の産生を56%低下させることができる。
【0241】
・ヘテロシド:
【0242】
【表34】

【0243】
この結果から、ヘテロシド(マデカソサイド、ターミノロサイド、およびアシアチコサイド)混合物で処理し且つIFN-γで刺激したバッチにおける用量依存的なIL-8の減少が明らかである。バッチC1、C2、C3およびC4の相違は、統計学的に有意(p≦0.01、スチューデントのt検定)である。濃度1 mg/mlでは、IL-8の産生を57%低下させることができる。
【0244】
細胞内IL-1αの産生
下記表34〜36に細胞の活性化後の細胞内IL-1αの量(+IFN-γ)、およびその基底量(-IFN-γ)が一まとめになっている。IFN-γ誘発性のIL-1αの産生および抗炎症活性(AIA)を各濃度について、以下により計算した:
IL-1α産生 = IL-1α(+IFN) - IL-1α(-IFN)
AIA = [(IL-1α産生(対照細胞) - IL-1α産生(処理細胞))/IL-1α産生(対照細胞)]×100
【0245】
・ターミノロサイド
【0246】
【表35】

【0247】
対照(+IFN-γ)バッチの場合、IFN-γで処理後、IL-1αの基底量が3.7倍に倍加されることから、IL-1αは、その細胞内産生をIFN-γで誘発できるサイトカインであることを裏付けている。IL-1αの量の明瞭な減少が活性物質ターミノロサイドで処理した培養物において記録される。その阻害効果は用量依存性である。C1 (p≦0.05)、C2 (p≦0.01)、C3 (p≦0.01)およびC4 (p≦0.01)の相違は、対照(+IFN-γ)と比べて統計学的に有意(スチューデントのt検定)である。
【0248】
この活性物質は1 mg/mlで、IFN-γ誘発性のIL-1αの産生を68%低下させることができる。
【0249】
・マデカソサイド
【0250】
【表36】

【0251】
この結果から、1 mg/mlの活性物質マデカソサイドで処理した培養物では、IL-1αの量の54%の減少(p≦0.01)が明らかである。いっぽう、濃度C1、C2およびC3は等価であるように思われる: IL-1αの量の25%の減少(p≦0.01)が認められる。
【0252】
・ヘテロシド
【0253】
【表37】

【0254】
この結果から、1 mg/mlのヘテロシド混合物で処理した培養物では、IL-1αの量の61%の減少(p≦0.01)が明らかである。
【0255】
d) 抗炎症活性-PMAストレス:
PGE-2の産生および放出に対しIFN-γの効果がないことを考慮して、これらの活性物質の抗炎症効果をPMAで刺激した正常ヒト角化細胞(K02-1H6細胞株)にて調べた。各活性物質を次の4濃度で試験した:
C1=0.10 mg/ml C2=0.25 mg/ml C3=0.50 mg/ml C4=1.00 mg/ml
【0256】
アッセイ条件:
1. 刺激性ストレスの誘発前に細胞を研究対象生成物で48時間処理。
2. 刺激性ストレスの誘発: PMA (10 ng/ml)。
3. 「活性化」細胞を研究対象生成物の存在下で、24時間インキュベーション。
4. PGE-2(細胞外)のアッセイおよび細胞タンパク質のアッセイ。
【0257】
PGE-2の放出
下記表37〜39に細胞の活性化後に得られたPGE-2の量(pg/μgタンパク質)(+PMA)、および同様にその基底量(-PMA)が一まとめになっている。PMA誘発性のPGE-2の産生および抗炎症活性(AIA)を各濃度について、以下により計算した:
PGE-2産生 = [PGE-2(+PMA) - PGE-2(-PMA)]
AIA = [(PGE-2産生(対照細胞) - PGE-2産生(処理細胞))/PGE-2産生(対照細胞)]×100
【0258】
・ターミノロサイド
【0259】
【表38】

【0260】
対照(+PMA)バッチの場合、角化細胞をPMAにさらすことで、対照培地中への非常に大量のPGE-2の産生および放出が起こる。PMAで刺激後、非刺激培養物で記録された基底量が4倍に倍加されることから、PGE-2は、その発現、産生および放出をPMAで誘発できるサイトカインであることを裏付けている。この結果から、ターミノロサイドで処理し且つPMAで刺激したバッチにおける用量依存的なPGE-2の減少が明らかである。バッチC3およびC4の相違は、統計学的に有意(p≦0.01、スチューデントのt検定)である。濃度1 mg/mlでは、PGE-2の放出を69%低下させることができる。
【0261】
・マデカソサイド
【0262】
【表39】

【0263】
PGE-2の量の明瞭な減少が活性物質マデカソサイドで処理した培養物において記録される。その阻害効果は用量依存性である。C3およびC4の相違だけが(+)PMA対照と比べて統計学的に有意(p≦0.01、スチューデントのt検定)である。活性物質マデカソサイドは1 mg/mlの濃度で、PMA誘発性のPGE-2の産生を63%低下させることができる。
【0264】
・ヘテロシド
【0265】
【表40】

【0266】
その阻害効果は用量依存性である。ヘテロシド混合物は1 mg/mlの濃度で、PMA誘発性のPGE-2の産生を完全に阻害することができる。
【0267】
e) 結論
活性物質ターミノロサイド、マデカソサイド、およびヘテロシドの抗炎症活性を、炎症過程の各工程で重要な役割を果たす上皮サイトカイン(IL-8、IL-1α、およびPGE-2)の産生を調節するその能力によるインビトロモデルで評価した。この研究は、インターフェロン-γ(IFN-γ)でまたはPMAで刺激した正常ヒト角化細胞にて行われた。
【0268】
研究対象活性物質の抗炎症活性を以下の量の測定により評価した:
・IFN-γで活性化後のIL-8およびIL-1α。
・PMAで刺激後のPGE-2。
【0269】
選択の実験条件の下で、本研究から、以下のことが明らかとなった:
【0270】
≫IFN-γは、試験した濃度の範囲内(100〜2000 U/ml)で、用量依存的にIL-1α(細胞内)の産生の明瞭な刺激を誘発して、培地中へのIL-8の産生および放出を引き起こす。いっぽう、同じ濃度のIFN-γは、PGE-2の放出を刺激することができない。
【0271】
≫PMAは、無毒性用量(10 ng/ml)で、培地中へのPGE-2の放出を引き起こす。
【0272】
≫活性物質ターミノロサイド、マデカソサイドおよびヘテロシドは、インターロイキンIL-8およびIL-1αの産生、ならびに同様に炎症性ストレスに応答したプロスタグランジン-2の産生を調節することができる。サイトカインの量の比較から、研究対象生成物、対象サイトカインのタイプおよび観測する変化に応じて変動する抗炎症効果が実証された:
【0273】
・IL-8に関して
試験した三つの活性物質は、このサイトカインの産生および細胞外放出を用量依存的に調節することができる。
【0274】
活性物質の最高濃度で細胞を処理後に記録されるサイトカインの量を考慮する場合、試験した三つの生成物をその抗炎症性の潜在能力に応じて、以下のように格付けすることができる:
ヘテロシド > マデカソサイド > ターミノロサイド
【0275】
・IL-1αに関して
試験した三つの活性物質は、IFN-γ誘発性のIL-1αの産生および細胞内蓄積を同様に低下させることができる。試験したこの三つの生成物を最大の抗炎症効果に応じて、以下のように格付けすることができる:
ターミノロサイド≧ヘテロシド≧マデカソサイド
【0276】
・PGE-2に関して
二つの活性物質マデカソサイドおよびターミノロサイドは、PMA誘発性のPGE-2の放出をかなり明瞭に低下させることができる。ヘテロシド混合物は、PMA誘発性のPGE-2の産生を完全に阻害することができる。これらの結果から、生成物を以下のように格付けすることが可能である:
ヘテロシド > マデカソサイド≒ターミノロサイド
【0277】
炎症過程におけるこれらのサイトカインの重要な役割を考慮すると、インビトロで刺激された角化細胞によるインターロイキンIL-8およびIL-1αの産生ならびに同様にプロスタグランジン-2の産生を実質的に調節する、活性物質ターミノロサイド、マデカソサイドおよびヘテロシドが示す能力は、所望の「抗炎症」活性に非常に有利な要素であると考えることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の段階を含むことを特徴とする、マデカソサイドとターミノロサイドとアシアチコサイドとの混合物を含むセンテラアシアチカの抽出物を調製するための方法:
a) アルコール溶媒を用いてセンテラアシアチカの地上の部分を抽出する段階;
b) 段階a)で得られるアルコール溶液を、陰イオン樹脂に通す段階;
c) 段階b)で得られる溶出液の液/液抽出により選択的に脱脂する段階;
d) 脱脂された水性アルコール相を連続ろ過により水相に濃縮する段階;
e) 段階d)で得られる水相を、陽イオン樹脂に次いで陰イオン樹脂に連続的に通す段階;
f) 段階e)で得られる水相をアルコールの添加により安定化させる段階、およびマデカソサイドとターミノロサイドとアシアチコサイドとを含む混合物を得る段階。
【請求項2】
以下の段階を含むことを特徴とする、マデカソサイドとターミノロサイドとの混合物を含むセンテラアシアチカの抽出物を調製するための方法:
a) アルコール溶媒を用いてセンテラアシアチカの地上の部分を抽出する段階;
b) 段階a)で得られるアルコール溶液を、陰イオン樹脂に通す段階;
c) 段階b)で得られる溶出液の液/液抽出により選択的に脱脂する段階;
d) 脱脂された水性アルコール相を連続ろ過により水相に濃縮する段階;
e) 段階d)で得られる水相を、陽イオン樹脂に次いで陰イオン樹脂に連続的に通す段階;
f) 段階e)で得られる水相をアルコールの添加により安定化させる段階;
g) 段階f)で得られる予備精製した水性アルコール相を選択的にクロマトグラフにかける段階; および
h) マデカソサイドとターミノロサイドとの混合物をその最終的な形で回収する段階。
【請求項3】
段階b)で使用される陰イオン樹脂が、第四級アンモニウム型の官能基を有する強力な陰イオン樹脂であることを特徴とする、請求項1または2記載の抽出方法。
【請求項4】
段階e)で使用される陽イオン樹脂が、スルホン酸型の官能基を有する強力な陽イオン樹脂であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項記載の抽出方法。
【請求項5】
段階e)で使用される陰イオン樹脂が、第四級アンモニウム型の官能基を有する強力な陰イオン樹脂であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項記載の抽出方法。
【請求項6】
段階g)の選択的クロマトグラフィーの間に使用される溶媒が、容量比50/50〜90/10の範囲にわたる水/エタノール比の水およびエタノールの混合液であることを特徴とする、請求項2〜5のいずれか一項記載の抽出方法。
【請求項7】
選択的クロマトグラフィーの間に使用される固定相が、無極性の固定相、特にグラフト化無極性シリカからなる固定相であって、その無極性グラフトは2〜18個の炭素原子を有することを特徴とする、請求項2〜6のいずれか一項記載の抽出方法。
【請求項8】
マデカソサイドとターミノロサイドとの混合物が、抽出物の重量に対して95重量%を超える純度で得られることを特徴とする、請求項2〜7のいずれか一項記載の抽出方法。
【請求項9】
請求項2〜8のいずれか一項記載の方法を用いて得ることができ、マデカソサイドとターミノロサイドとの混合物を95重量%より多く含む、センテラアシアチカの抽出物。
【請求項10】
混合物が、30重量%〜70重量%、有利には40〜60重量%のマデカソサイド:全体比を有することを特徴とする、請求項9記載のセンテラアシアチカの抽出物。
【請求項11】
並行して、請求項9または10記載の抽出物の適当量を添加することによって段階f)で得られる混合物を標準化することからなる段階も含み、このようにして得られる最終抽出物が、最終抽出物の総重量に対して90〜98重量%の純度を有することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項記載の抽出方法。
【請求項12】
請求項11記載の方法を用いて得ることができ、マデカソサイドとターミノロサイドとアシアチコサイドとの混合物を、全体に対して少なくとも75重量%、有利には少なくとも85重量%含む、標準化されたセンテラアシアチカ抽出物。
【請求項13】
アシアチコサイド:(マデカソサイド + ターミノロサイド)の質量比が、5:95〜25:75であることを特徴とする、請求項12記載の標準化された抽出物。
【請求項14】
マデカソサイド:ターミノロサイドの質量比が、30:70〜70:30、有利には40:60〜60:40であることを特徴とする、請求項12または13記載の標準化された抽出物。
【請求項15】
請求項9または10記載のセンテラアシアチカの抽出物と薬学的に許容される担体とを含む薬剤。
【請求項16】
炎症機構の調節を目的とする、請求項15記載の薬剤。
【請求項17】
自己免疫疾患、慢性炎症性疾患、アトピー性炎症性疾患、または腸疾患の治療を目的とする、請求項15または16記載の薬剤。
【請求項18】
乾癬、白斑、粃糠疹、強皮症、水疱症、湿疹、アトピー性皮膚炎、アレルギー、または関節リウマチの治療を目的とする、請求項15〜17のいずれか一項記載の薬剤。
【請求項19】
老化およびその結果と関連した慢性炎症への傾斜の予防および治療を目的とする、請求項15〜18のいずれか一項記載の薬剤。
【請求項20】
アナフィラキシー感作、皮膚の色素異常症、皮膚の過剰増殖血管病、および炎症性のひび割れから選択される疾患の予防および治療を目的とする、請求項19記載の薬剤。
【請求項21】
皮膚組織の恒常性の調節を目的とする、請求項19記載の薬剤。
【請求項22】
請求項12〜14のいずれか一項記載のセンテラアシアチカの抽出物と化粧品的に許容される担体とを含む化粧品組成物。
【請求項23】
皮膚の老化から生じ得る自己免疫への任意の病的傾斜を予防するための、皮膚の自然老化を遅らせるための、外部攻撃にさらされる皮膚の老化の促進を予防するため、特に光による皮膚の老化を予防するための、請求項22記載の組成物の化粧品的使用。

【公表番号】特表2006−516962(P2006−516962A)
【公表日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−566117(P2004−566117)
【出願日】平成15年12月10日(2003.12.10)
【国際出願番号】PCT/FR2003/003651
【国際公開番号】WO2004/062678
【国際公開日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(302041280)エフ. ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1)
【Fターム(参考)】