マルチビタミン剤
【課題】有効成分の安定性を従来よりも長期間にわたって確保することが可能なマルチビタミン剤を提供する。
【解決手段】少なくともビタミンB1と、ビタミンB6とを含有するマルチビタミン剤であって、1日摂取量あたり、ビタミンB1として2mg〜20mgのベンフォチアミンを含有し、かつ、ビタミンB6として5mg〜10mgの塩酸ピリドキシンを含有することを特徴とするマルチビタミン剤。パントテン酸カルシウムと、イノシトールとをさらに含有することもでき、希塩酸、酢酸又はクエン酸からなるpH調整剤をさらに含有することもできる。
【解決手段】少なくともビタミンB1と、ビタミンB6とを含有するマルチビタミン剤であって、1日摂取量あたり、ビタミンB1として2mg〜20mgのベンフォチアミンを含有し、かつ、ビタミンB6として5mg〜10mgの塩酸ピリドキシンを含有することを特徴とするマルチビタミン剤。パントテン酸カルシウムと、イノシトールとをさらに含有することもでき、希塩酸、酢酸又はクエン酸からなるpH調整剤をさらに含有することもできる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチビタミン剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のビタミン類を含有するマルチビタミン剤(商品名:ARSOA ジオ ビタモルト(医薬部外品)。但し、「ARSOA」及び「ジオ」は株式会社アルソア央粧の登録商標であり、「ビタモルト」は株式会社アルソア本社の登録商標である。)が知られている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
図11は、従来のマルチビタミン剤における有効成分の含有量を示す図である。
従来のマルチビタミン剤は、図11に示すように、有効成分として、タウリン、ローヤルゼリーに加えて7種類のビタミン類(ビタミンE、ニコチン酸アミド、ビタミンB2、コリン、ルチン、ビタミンB6、ビタミンB1)がバランスよく配合されているため、滋養強壮、虚弱体質、肉体疲労、病中病後、食欲不振、栄養障害、発熱性消耗性疾患、産前産後などの場合の栄養補給や毎日の健康維持に適したマルチビタミン剤となっている。
【0004】
ところで、ビタミン類は熱や光などに弱いため、複数のビタミン類を含有するマルチビタミン剤において、有効期間の安定性を長期間にわたって確保するのは容易ではないとされているが、従来のマルチビタミン剤によれば、タウリン、ローヤルゼリーに加えて上記した7種類のビタミン類がバランスよく配合されているため、有効成分の安定性を常温で1年間以上確保することが可能である。
【0005】
【非特許文献1】「ARSOA ジオ ビタモルト(医薬部外品)」、[online]、株式会社アルソア本社、[平成19年3月26日検索]、インターネット<URL:http://www.arsoa.co.jp/product/health/geo/g08.php>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のマルチビタミン剤においては、有効成分の安定性をさらに長期間(例えば、常温で3年間。)にわたって確保することが要望されている。
【0007】
そこで、本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、有効成分の安定性を従来よりも長期間にわたって確保することが可能なマルチビタミン剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するため、従来のマルチビタミン剤において、有効成分の安定性を阻害する要因を徹底的に調査した。その結果、ア)従来のマルチビタミン剤を長期間保存するとビタミンB1が顕著に減少することが明らかになった。また、イ)その一方において、それを考慮してビタミンB1の含有量を多くしすぎるとビタミンB6が顕著に減少することも明らかになった。このことは、ビタミンB1とビタミンB6とが互いに長期安定性に悪影響を及ぼしあっていることを示唆する。
【0009】
そこで、本発明者らは、以上の知見に基づいてさらなる研究を重ねた結果、ビタミンB1及びビタミンB6として所定のビタミンB1及び所定のビタミンB6を用いるとともに、当該所定のビタミンB1及び所定のビタミンB6の含有量をそれぞれ所定範囲の含有量とすることによって、ビタミンB1及びビタミンB6の安定性を高くすることが可能となり、もって、有効成分の安定性を従来よりも長期間にわたって確保することが可能なマルチビタミン剤を提供することが可能となることに想到し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
(1)すなわち、本発明のマルチビタミン剤は、少なくともビタミンB1と、ビタミンB6とを含有するマルチビタミン剤であって、1日摂取量あたり、ビタミンB1として2mg〜20mgのベンフォチアミンを含有し、かつ、ビタミンB6として5mg〜10mgの塩酸ピリドキシンを含有することを特徴とする。
【0011】
このため、本発明のマルチビタミン剤によれば、後述する実施例及び試験例からも明らかなように、有効成分の安定性を従来よりも長期間にわたって確保することが可能となる。
【0012】
(2)本発明のマルチビタミン剤においては、パントテン酸カルシウムと、イノシトールとをさらに含有することが好ましい。
【0013】
このように構成することにより、後述する実施例及び試験例からも明らかなように、有効成分の安定性をさらに長期間にわたって確保することが可能となる。
【0014】
(3)本発明のマルチビタミン剤においては、希塩酸、酢酸又はクエン酸からなるpH調整剤をさらに含有することが好ましい。
【0015】
このように構成することにより、後述する実施例及び試験例からも明らかなように、有効成分の安定性をさらに長期間にわたって確保することが可能となる。
【0016】
(4)本発明のマルチビタミン剤においては、ビタミンE、ニコチン酸アミド、ビタミンB2、コリン、ルチン、タウリン及びローヤルゼリーをさらに含有することが好ましい。
【0017】
このように構成することにより、滋養強壮、虚弱体質、肉体疲労、病中病後、食欲不振、栄養障害、発熱性消耗性疾患、産前産後などの場合の栄養補給や毎日の健康維持に適したマルチビタミン剤とすることができる。
【0018】
(5)本発明のマルチビタミン剤においては、有効成分を含有する内容液をカプセル皮膜で包んだソフトカプセル構造を有することが好ましい。
【0019】
このように構成することにより、内容液が空気に触れることがなくなるため、有効成分の安定性をさらに長期間にわたって確保することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明のマルチビタミン剤を実施形態に基づいてさらに詳細に説明する。
【0021】
[実施形態]
実施形態に係るマルチビタミン剤は、少なくともビタミンB1と、ビタミンB6とを含有するマルチビタミン剤であって、1日摂取量あたり、ビタミンB1として2mg〜20mgのベンフォチアミンを含有し、かつ、ビタミンB6として5mg〜10mgの塩酸ピリドキシンを含有するマルチビタミン剤である。
【0022】
実施形態に係るマルチビタミン剤は、有効成分として、ビタミンB1及びビタミンB6以外のビタミン類(ビタミンE、ニコチン酸アミド、ビタミンB2、コリン及びルチン)、タウリン及びローヤルゼリーを含有する。また、実施形態に係るマルチビタミン剤は、有効成分以外の成分として、ミツロウ、グリセリン脂肪酸エステル、パントテン酸カルシウム、イノシトール、希塩酸及び小麦胚芽油を含有する。
【0023】
実施形態に係るマルチビタミン剤は、有効成分を含有する内容液をカプセル皮膜で包んだソフトカプセル構造を有する。
【0024】
実施形態に係るマルチビタミン剤によれば、少なくともビタミンB1と、ビタミンB6とを含有するマルチビタミン剤であって、1日摂取量あたり、ビタミンB1として2mg〜20mgのベンフォチアミンを含有し、かつ、ビタミンB6として5mg〜10mgの塩酸ピリドキシンを含有するため、後述する実験例及び試験例からも明らかなように、有効成分の安定性を従来よりも長期間にわたって確保することが可能となる。
【0025】
[実施例]
実施例は、実施形態に係るマルチビタミン剤の効果(有効成分の長期安定性)を確認するための実施例である。実施例においては、実施形態に係るマルチビタミン剤の効果を確認するために所定の加速試験を行った。
【0026】
図1は、実施例に係るマルチビタミン剤についての加速試験の結果を示す図である。図1(a)は実施例に係るマルチビタミン剤の組成を示す図であり、図1(b)は実施例に係るマルチビタミン剤におけるベンフォチアミン及び塩酸ピリドキシンの残存率を示す図である。図2は、比較例に係るマルチビタミン剤についての加速試験の結果を示す図である。図2(a)は比較例に係るマルチビタミン剤の組成を示す図であり、図2(b)は比較例に係るマルチビタミン剤における塩酸チアミン及び塩酸ピリドキシンの残存率を示す図である。
【0027】
なお、図1(b)及び図2(b)において、横軸はマルチビタミン剤の保存日数を示し、縦軸はマルチビタミン剤に含まれるベンフォチアミン又は塩酸チアミン(図中VB1と表記)及び塩酸ピリドキシン(図中VB6と表記)の残存率を示す。
【0028】
ところで、従来のマルチビタミン剤は、使用者に1日2粒摂取してもらうことを想定して組成が定められた内容液をカプセル皮膜で包んだソフトカプセル構造を有するマルチビタミン剤であるので、実施例においても、同様の構造を有するマルチビタミン剤を作成し、当該マルチビタミン剤を用いて加速試験を行った。後述する比較例及び試験例2〜6についても同様である。なお、後述する試験例1及び7については、同様の構造を有するマルチビタミン剤1粒に含まれる内容液と同じ組成・分量(従って1日摂取量の半分の量)の内容液をガラス製容器に入れたマルチビタミン剤について加速試験を行った。詳細は後述する。
【0029】
実施例に係るマルチビタミン剤は、図1(a)に示すように、有効成分として、タウリン、ローヤルゼリーに加えて7種類のビタミン類(ビタミンE、ニコチン酸アミド、ビタミンB2、コリン、ルチン、ビタミンB1及びビタミンB6)を含有するとともに、有効成分以外の成分として、ミツロウ、グリセリン脂肪酸エステル、パントテン酸カルシウム、イノシトール、希塩酸(pH調整剤)及び小麦胚芽油を含有する。
【0030】
一方、比較例に係るマルチビタミン剤は、図2(a)に示すように、実施例に係るマルチビタミン剤とよく似た組成を有するが、「ビタミンB1として塩酸チアミンを含有すること」、「ビタミンB1及びビタミンB6の含有量がそれぞれ異なること」並びに「希塩酸を含有しないこと」の点で、実施例に係るマルチビタミン剤の場合とは異なる。比較例に係るマルチビタミン剤は、従来のマルチビタミン剤(商品名:ARSOA ジオ ビタモルト)の内容液をカプセル皮膜で包んだソフトカプセル構造を有するマルチビタミン剤である。
【0031】
実施例に係るマルチビタミン剤は、ビタミンB1として10mgのベンフォチアミンを含有し、かつ、ビタミンB6として2.5mgの塩酸ピリドキシンを含有する。従って、実施例に係るマルチビタミン剤は、1日摂取量あたりに換算すると、ビタミンB1として20mgのベンフォチアミンを含有し、かつ、ビタミンB6として5mgの塩酸ピリドキシンを含有することとなる。
【0032】
実施例における試料調整及び加速試験の手順は、以下のとおりである。
(1)図1(a)に示す組成の内容液1と、図2(a)に示す組成の内容液2とを作成する。
(2)内容液1及び内容液2のそれぞれについて所定のカプセル充填工程を行って、内容液1及び内容液2の所定量をそれぞれカプセル皮膜で包んだソフトカプセル構造を有するマルチビタミン剤(実施例に係るマルチビタミン剤及び比較例に係るマルチビタミン剤)を作成する。
(3)各マルチビタミン剤を40℃、湿度75%の恒温恒湿槽に入れて60日間及び180日間静置(保存)する。
(4)その後、各マルチビタミン剤の内容液を全量採取し、液体クロマトグラフィーを用いてビタミンB1及びビタミンB6を定量する。
【0033】
実施例に係るマルチビタミン剤及び比較例に係るマルチビタミン剤における加速試験の結果は以下のとおりである。
すなわち、実施例に係るマルチビタミン剤においては、図1(b)からわかるように、実施例に係るマルチビタミン剤においては、ビタミンB1及びビタミンB6のいずれについても、60日保存後及び180日保存後における残存率が90%以上である。これに対して、比較例に係るマルチビタミン剤においては、図2(b)からわかるように、ビタミンB1及びビタミンB6のうちビタミンB1については、60日保存後及び180日保存後における残存率が70%未満である。すなわち、実施例に係るマルチビタミン剤によれば、有効成分の安定性を従来よりも長期間にわたって確保することが可能であることがわかった。
【0034】
また、実施例に係るマルチビタミン剤によれば、図1(b)からわかるように、ビタミンB1(ベンフォチアミン)及びビタミンB6(塩酸ピリドキシン)のいずれについても、180日保存後における残存率が90%以上であり、実施例に係るマルチビタミン剤が、有効成分の安定性を極めて長期間(例えば常温で3年間)にわたって確保することが可能であることが明らかとなり、実施形態に係るマルチビタミン剤の効果(有効成分の長期安定性)を確認することができた。
【0035】
なお、実施例に係るマルチビタミン剤の組成として図1(a)に示す組成を採用するにあたっては、以下の試験例1〜7における加速試験の結果を参考にした。
【0036】
試験例1
試験例1は、ビタミンB1として、塩酸チアミン、チアミンジスルフィド又はベンフォチアミンのいずれを用いれば、有効成分の安定性を最も長期間にわたって確保することが可能となるかを明らかにするための試験例である。
【0037】
図3は、試験例1における加速試験の結果を示す図である。図3(a)は各試験例(試験例1−1〜1−3)の組成を示す図であり、図3(b)は各試験例(試験例1−1〜1−3)における塩酸チアミン、チアミンジスルフィド又はベンフォチアミン及び塩酸ピリドキシンの残存率を示す図である。
なお、図3(b)において、横軸は試験例の種別を示し、縦軸は塩酸チアミン、チアミンジスルフィド又はベンフォチアミン(図中VB1と表記)及び塩酸ピリドキシン(図中VB6と表記)の残存率を示す。
【0038】
試験例1に係るマルチビタミン剤はいずれも、図3(a)に示すように、有効成分として、タウリン、ローヤルゼリーに加えて7種類のビタミン類(ビタミンE、ニコチン酸アミド、ビタミンB2、コリン、ルチン、ビタミンB1及びビタミンB6)を含有するとともに、有効成分以外の成分として、ミツロウ、グリセリン脂肪酸エステル、パントテン酸カルシウム、イノシトール及び小麦胚芽油を含有する。
【0039】
但し、試験例1−1に係るマルチビタミン剤は、ビタミンB1として10mgの塩酸チアミンを含有し、試験例1−2に係るマルチビタミン剤は、ビタミンB1として10mgのチアミンジスルフィドを含有し、試験例1−3に係るマルチビタミン剤は、ビタミンB1として10mgのベンフォチアミンを含有する。
【0040】
試験例1における試料調整及び加速試験の手順は、以下のとおりである。
(1)図3(a)に示す組成(但し、10倍量。)のマルチビタミン剤(試験例1−1に係るマルチビタミン剤、試験例1−2に係るマルチビタミン剤及び試験例1−3に係るマルチビタミン剤)を作成する。
(2)各試験例に係るマルチビタミン剤をそれぞれ脱泡後10等分してガラスビンに小分けする。
(3)各試験例に係るマルチビタミン剤が入ったガラスビンに蓋をした後、40℃、湿度75%の恒温恒湿槽に入れて30日間静置(保存)する。
(4)その後、各試験例に係るマルチビタミン剤を全量採取し、液体クロマトグラフィーを用いてビタミンB1及びビタミンB6を定量する。
【0041】
試験例1に係るマルチビタミン剤についての加速試験の結果は以下のとおりである。
すなわち、図3(b)からわかるように、試験例1−1に係るマルチビタミン剤及び試験例1−2に係るマルチビタミン剤においては、ビタミンB1(塩酸チアミン、チアミンジスルフィド)及びビタミンB6(塩酸ピリドキシン)のうちビタミンB1(塩酸チアミン、チアミンジスルフィド)については、30日保存後における残存率が90%未満である。これに対して、試験例1−3に係るマルチビタミン剤においては、ビタミンB1(ベンフォチアミン)及びビタミンB6(塩酸ピリドキシン)のいずれについても30日保存後における残存率が90%以上である。
【0042】
従って、試験例1の試験結果からは、ビタミンB1としてベンフォチアミンを用いれば、有効成分の安定性を最も長期間にわたって確保することが可能となることが明らかとなった。
【0043】
試験例2
試験例2は、ビタミンB6として、塩酸ピリドキシン又はリン酸ピリドキサールのいずれを用いれば、有効成分の安定性をより長期間にわたって確保することが可能となるかを明らかにするための試験例である。
【0044】
図4は、試験例2における加速試験の結果を示す図である。図4(a)は各試験例(試験例2−1及び2−2)の組成を示す図であり、図4(b)は各試験例(試験例2−1及び2−2)におけるベンフォチアミン及び塩酸ピリドキシン又はリン酸ピリドキサールの残存率を示す図である。
なお、図4(b)において、横軸は試験例の種別を示し、縦軸はベンフォチアミン(図中VB1と表記)及び塩酸ピリドキシン又はリン酸ピリドキサール(図中VB6と表記)の残存率を示す。
【0045】
試験例2に係るマルチビタミン剤はいずれも、図4(a)に示すように、有効成分として、タウリン、ローヤルゼリーに加えて7種類のビタミン類(ビタミンE、ニコチン酸アミド、ビタミンB2、コリン、ルチン、ビタミンB1及びビタミンB6)を含有するとともに、有効成分以外の成分として、ミツロウ、グリセリン脂肪酸エステル、パントテン酸カルシウム、イノシトール及び小麦胚芽油を含有する。
【0046】
但し、試験例2−1に係るマルチビタミン剤は、ビタミンB6として1mgの塩酸ピリドキシンを含有し、試験例2−2に係るマルチビタミン剤は、ビタミンB6として1mgのリン酸ピリドキサールを含有する。
【0047】
試験例2における試料調整及び加速試験の手順は、上述した実施例の場合と同様である。但し、マルチビタミン剤の保存日数は30日とした。
【0048】
試験例2に係るマルチビタミン剤における加速試験の結果は以下のとおりである。
すなわち、図4(b)からわかるように、試験例2−1に係るマルチビタミン剤においては、ビタミンB1(ベンフォチアミン)及びビタミンB6(塩酸ピリドキシン)のいずれについても30日保存後における残存率は90%以上である。これに対して、試験例2−2に係るマルチビタミン剤においては、ビタミンB1(ベンフォチアミン)及びビタミンB6(リン酸ピリドキサール)のうちビタミンB6(リン酸ピリドキサール)についての30日保存後における残存率は極めて低い(痕跡量程度)。
【0049】
従って、試験例2の試験結果からは、ビタミンB6として塩酸ピリドキシンを用いれば、有効成分の安定性をより長期間にわたって確保することが可能となることが明らかとなった。
【0050】
試験例3
試験例3は、ビタミンB1として、どれ位の量のベンフォチアミンを用いれば、有効成分の安定性を長期間にわたって確保することが可能となるかを明らかにするための試験例である。
【0051】
図5は、試験例3における加速試験の結果を示す図である。図5(a)は各試験例(試験例3−1及び3−2)の組成を示す図であり、図5(b)は各試験例(試験例3−1及び3−2)におけるベンフォチアミン及び塩酸ピリドキシンの残存率を示す図である。
なお、図5(b)において、横軸は試験例の種別を示し、縦軸はベンフォチアミン(図中VB1と表記)及び塩酸ピリドキシン(図中VB6と表記)の残存率を示す。
【0052】
試験例3に係るマルチビタミン剤はいずれも、図5(a)に示すように、有効成分として、タウリン、ローヤルゼリーに加えて7種類のビタミン類(ビタミンE、ニコチン酸アミド、ビタミンB2、コリン、ルチン、ビタミンB1及びビタミンB6)を含有するとともに、有効成分以外の成分として、ミツロウ、グリセリン脂肪酸エステル、パントテン酸カルシウム、イノシトール及び小麦胚芽油を含有する。
【0053】
但し、試験例3−1に係るマルチビタミン剤は、ビタミンB1として0.5mgのベンフォチアミンを含有し、試験例3−2に係るマルチビタミン剤は、ビタミンB1として10mgのベンフォチアミンを含有する。
【0054】
試験例3における試料調整及び加速試験の手順は、上述した実施例の場合と同様である。但し、マルチビタミン剤の保存日数は90日とした。
【0055】
試験例3に係るマルチビタミン剤における加速試験の結果は以下のとおりである。
すなわち、図5(b)からわかるように、試験例3−1に係るマルチビタミン剤においては、ベンフォチアミン及び塩酸ピリドキシンのうちベンフォチアミンについては、90日保存後における残存率が70%未満である。これに対して、試験例3−2に係るマルチビタミン剤においては、ベンフォチアミン及び塩酸ピリドキシンのいずれについても90日保存後における残存率が70%以上である。
【0056】
従って、試験例3の試験結果からは、ビタミンB1としてある程度多量のベンフォチアミンを用いれば、有効成分の安定性を長期間にわたって確保することが可能となることが明らかとなった。
【0057】
試験例4
試験例4は、ビタミンB6として、どれ位の量の塩酸ピリドキシンを用いれば、有効成分の安定性を長期間にわたって確保することが可能となるかを明らかにするための試験例である。
【0058】
図6は、試験例4における加速試験の結果を示す図である。図6(a)は各試験例(試験例4−1〜4−3)の組成を示す図であり、図6(b)は各試験例(試験例4−1〜4−3)におけるベンフォチアミン及び塩酸ピリドキシンの残存率を示す図である。
なお、図6(b)において、横軸は試験例の種別を示し、縦軸はベンフォチアミン(図中VB1と表記)及び塩酸ピリドキシン(図中VB6と表記)の残存率を示す。
【0059】
試験例4に係るマルチビタミン剤はいずれも、図6(a)に示すように、有効成分として、タウリン、ローヤルゼリーに加えて7種類のビタミン類(ビタミンE、ニコチン酸アミド、ビタミンB2、コリン、ルチン、ビタミンB1及びビタミンB6)を含有するとともに、有効成分以外の成分として、ミツロウ、グリセリン脂肪酸エステル、パントテン酸カルシウム、イノシトール及び小麦胚芽油を含有する。
【0060】
但し、試験例4−1に係るマルチビタミン剤は、ビタミンB6として1mgの塩酸ピリドキシンを含有し、試験例4−2に係るマルチビタミン剤は、ビタミンB6として2.5mgの塩酸ピリドキシンを含有し、試験例4−3に係るマルチビタミン剤は、ビタミンB6として5mgの塩酸ピリドキシンを含有する。
【0061】
試験例4における試料調整及び加速試験の手順は、上述した実施例の場合と同様である。但し、マルチビタミン剤の保存日数は150日とした。
【0062】
試験例4に係るマルチビタミン剤における加速試験の結果は以下のとおりである。
すなわち、図6(b)からわかるように、試験例4−1に係るマルチビタミン剤においては、ベンフォチアミン及び塩酸ピリドキシンのうち塩酸ピリドキシンについては、150日保存後における残存率が70%未満である。これに対して、試験例4−2に係るマルチビタミン剤及び試験例4−3に係るマルチビタミン剤においては、ベンフォチアミン及び塩酸ピリドキシンのいずれについても150日保存後における残存率は80%以上である。
【0063】
従って、試験例4の試験結果からは、ビタミンB6としてある程度多量の塩酸ピリドキシンを用いれば、有効成分の安定性を長期間にわたって確保することが可能となることが明らかとなった。
【0064】
試験例5
試験例5は、pH調整剤として希塩酸を用いることによって有効成分の安定性を長期間にわたって確保することが可能となるかどうかを明らかにするための試験例である。
【0065】
図7は、試験例5における加速試験の結果を示す図である。図7(a)は各試験例(試験例5−1〜5−4)の組成を示す図であり、図7(b)は各試験例(試験例5−1〜5−4)におけるベンフォチアミン及び塩酸ピリドキシンの残存率を示す図である。
なお、図7(b)において、横軸は試験例の種別を示し、縦軸はベンフォチアミン(図中VB1と表記)及び塩酸ピリドキシン(図中VB6と表記)の残存率を示す。
【0066】
試験例5に係るマルチビタミン剤はいずれも、図7(a)に示すように、有効成分として、タウリン、ローヤルゼリーに加えて7種類のビタミン類(ビタミンE、ニコチン酸アミド、ビタミンB2、コリン、ルチン、ビタミンB1及びビタミンB6)を含有するとともに、有効成分以外の成分として、ミツロウ、グリセリン脂肪酸エステル、パントテン酸カルシウム、イノシトール及び小麦胚芽油を含有する。
【0067】
但し、試験例5−1に係るマルチビタミン剤及び試験例5−3に係るマルチビタミン剤は、pH調整剤として10.5mgの希塩酸を含有し、試験例5−2に係るマルチビタミン剤及び試験例5−4に係るマルチビタミン剤は、pH調整剤としての希塩酸を含有しない。
なお、試験例5−1に係るマルチビタミン剤及び試験例5−2に係るマルチビタミン剤は、ビタミンB6として2.5mgの塩酸ピリドキシンを含有し、試験例5−3に係るマルチビタミン剤及び試験例5−4に係るマルチビタミン剤は、ビタミンB6として5mgの塩酸ピリドキシンを含有する。
【0068】
試験例5における試料調整及び加速試験の手順は、上述した実施例の場合と同様である。但し、マルチビタミン剤の保存日数は150日とした。
【0069】
試験例5に係るマルチビタミン剤における加速試験の結果は以下のとおりである。
すなわち、図7(b)からわかるように、試験例5−1に係るマルチビタミン剤及び試験例5−3に係るマルチビタミン剤においては、ベンフォチアミン及び塩酸ピリドキシンのいずれについても150日保存後における残存率が90%以上である。これに対して、試験例5−2に係るマルチビタミン剤においては、ベンフォチアミン及び塩酸ピリドキシンのうち塩酸ピリドキシンについての150日保存後における残存率は90%未満であり、試験例5−4に係るマルチビタミン剤においては、ベンフォチアミン及び塩酸ピリドキシンのうちベンフォチアミンについての150日保存後における残存率は90%未満である。
【0070】
従って、試験例5の試験結果からは、pH調整剤として希塩酸を用いることによって有効成分の安定性を長期間にわたって確保することが可能となることが明らかとなった。
【0071】
試験例6
試験例6は、パントテン酸カルシウム及びイノシトールを用いることによって有効成分の安定性を長期間にわたって確保することが可能となるかどうかを明らかにするための試験例である。
【0072】
図8は、試験例6における加速試験の結果を示す図である。図8(a)は各試験例(試験例6−1〜6−4)の組成を示す図であり、図8(b)は各試験例(試験例6−1〜6−4)におけるベンフォチアミン及び塩酸ピリドキシンの残存率を示す図である。
なお、図8(b)において、横軸は試験例の種別を示し、縦軸はベンフォチアミン(図中VB1と表記)及び塩酸ピリドキシン(図中VB6と表記)の残存率を示す。
【0073】
試験例6に係るマルチビタミン剤はいずれも、図8(a)に示すように、有効成分として、タウリン、ローヤルゼリーに加えて7種類のビタミン類(ビタミンE、ニコチン酸アミド、ビタミンB2、コリン、ルチン、ビタミンB1及びビタミンB6)を含有するとともに、有効成分以外の成分として、ミツロウ、グリセリン脂肪酸エステル及び小麦胚芽油を含有する。
【0074】
但し、試験例6−1に係るマルチビタミン剤及び試験例6−3に係るマルチビタミン剤は、パントテン酸カルシウム及びイノシトールを含有し、試験例6−2に係るマルチビタミン剤及び試験例6−4に係るマルチビタミン剤は、パントテン酸カルシウム及びイノシトールのいずれも含有しない。
なお、試験例6−1に係るマルチビタミン剤及び試験例6−2に係るマルチビタミン剤は、ビタミンB6として2.5mgの塩酸ピリドキシンを含有し、試験例6−3に係るマルチビタミン剤及び試験例6−4に係るマルチビタミン剤は、ビタミンB6として5mgの塩酸ピリドキシンを含有する。
【0075】
試験例6における試料調整及び加速試験の手順は、上述した実施例の場合と同様である。但し、マルチビタミン剤の保存日数は30日とした。
【0076】
試験例6に係るマルチビタミン剤における加速試験の結果は以下のとおりである。
すなわち、図8(b)からわかるように、試験例6−1に係るマルチビタミン剤においては、ベンフォチアミン及び塩酸ピリドキシンのうちいずれについても30日保存後における残存率は97%以上である。これに対して、試験例6−2に係るマルチビタミン剤においては、ベンフォチアミン及び塩酸ピリドキシンのいずれについても30日保存後における残存率は95%未満である。また、試験例6−3に係るマルチビタミン剤においては、ベンフォチアミン及び塩酸ピリドキシンのいずれについても30日保存後における残存率が94%以上である。これに対して、試験例6−4に係るマルチビタミン剤においては、ベンフォチアミン及び塩酸ピリドキシンのいずれについても30日保存後における残存率は94%未満である。
【0077】
従って、試験例6の試験結果からは、パントテン酸カルシウム及びイノシトールを用いることによって有効成分の安定性を長期間にわたって確保することが可能となることが明らかとなった。
【0078】
試験例7
試験例7は、ビタミンB1及びビタミンB6として、ベンフォチアミン及び塩酸ピリドキシンをそれぞれどれ位の量用いると、有効成分の安定性を長期間にわたって確保することが可能となるかを明らかにするための試験例である。
【0079】
図9は、試験例7(試験例7−1〜7−30)におけるマルチビタミン剤の組成を示す図である。図10は、試験例7における加速試験の結果を示す図である。
なお、図10(a)〜図10(c)において、横軸は試験例の種別を示し、縦軸はベンフォチアミン(図中VB1と表記)及び塩酸ピリドキシン(図中VB6と表記)の残存率を示す。
【0080】
試験例7に係るマルチビタミン剤はいずれも、図9に示すように、有効成分として、タウリン、ローヤルゼリーに加えて7種類のビタミン類(ビタミンE、ニコチン酸アミド、ビタミンB2、コリン、ルチン、ビタミンB1及びビタミンB6)を含有するとともに、有効成分以外の成分として、ミツロウ、グリセリン脂肪酸エステル、パントテン酸カルシウム、イノシトール、希塩酸及び小麦胚芽油を含有する。
【0081】
但し、試験例7−1に係るマルチビタミン剤〜試験例7−10に係るマルチビタミン剤は、ビタミンB1として1mgのベンフォチアミンを含有し、試験例7−11に係るマルチビタミン剤〜試験例7−20に係るマルチビタミン剤は、ビタミンB1として10mgのベンフォチアミンを含有し、試験例7−21に係るマルチビタミン剤〜試験例7−30に係るマルチビタミン剤は、ビタミンB1として50mgのベンフォチアミンを含有する。
【0082】
また、試験例7−1に係るマルチビタミン剤〜試験例7−10に係るマルチビタミン剤、試験例7−11に係るマルチビタミン剤〜試験例7−20に係るマルチビタミン剤及び試験例7−21に係るマルチビタミン剤〜試験例7−30に係るマルチビタミン剤はそれぞれ、ビタミンB6として1mg〜50mgの塩酸ピリドキシンを含有する。
【0083】
試験例7における試料調整及び加速試験の手順は、上述した試験例1の場合と同様である。但し、マルチビタミン剤の保存日数は90日とした。
【0084】
試験例7に係るマルチビタミン剤における加速試験の結果は以下のとおりである。
すなわち、図10(a)に示すように、試験例7−1に係るマルチビタミン剤〜試験例7−10に係るマルチビタミン剤を比較すると、試験例7−1に係るマルチビタミン剤及び試験例7−2に係るマルチビタミン剤においては、ベンフォチアミン及び塩酸ピリドキシンのうち塩酸ピリドキシンについては90日保存後における残存率が70%以下である。これに対して、試験例7−3に係るマルチビタミン剤〜試験例7−10に係るマルチビタミン剤においては、ベンフォチアミン及び塩酸ピリドキシンのいずれについても90日保存後における残存率が80%以上である。
【0085】
また、図10(b)に示すように、試験例7−11に係るマルチビタミン剤〜試験例7−20に係るマルチビタミン剤を比較すると、試験例7−11に係るマルチビタミン剤〜試験例7−13に係るマルチビタミン剤においては、ベンフォチアミン及び塩酸ピリドキシンのうち塩酸ピリドキシンについては90日保存後における残存率が71%以下である。これに対して、試験例7−14に係るマルチビタミン剤〜試験例7−20に係るマルチビタミン剤においては、ベンフォチアミン及び塩酸ピリドキシンのいずれについても90日保存後における残存率が78%以上である。
【0086】
また、図10(c)に示すように、試験例7−21に係るマルチビタミン剤〜試験例7−30に係るマルチビタミン剤を比較すると、試験例7−21に係るマルチビタミン剤〜試験例7−27に係るマルチビタミン剤においては、ベンフォチアミン及び塩酸ピリドキシンのうち塩酸ピリドキシンについては90日保存後における残存率が76%以下である。これに対して、試験例7−28に係るマルチビタミン剤〜試験例7−30に係るマルチビタミン剤においては、ベンフォチアミン及び塩酸ピリドキシンのいずれについても90日保存後における残存率が88%以上である。
【0087】
なお、ビタミンB6についての医薬部外品の製造(輸入)承認基準から、塩酸ピリドキシンについてはカプセル1粒の量(1日摂取量2粒の半分の量)に相当するマルチビタミン剤中に1.0mg〜5.0mgの範囲で含有されていることが必要であるため、これを考慮すれば、試験例7−7に係るマルチビタミン剤〜試験例7−10に係るマルチビタミン剤、試験例7−17に係るマルチビタミン剤〜試験例7−20に係るマルチビタミン剤及び試験例7−27に係るマルチビタミン剤〜試験例7−30に係るマルチビタミン剤については、上記基準を満たさないためマルチビタミン剤の組成としては好ましくない。
【0088】
従って、試験例7の試験結果からは、ビタミンB1としてベンフォチアミンを1mg〜10mg含有し、かつ、ビタミンB6として塩酸ピリドキシンを2.5mg〜5.0mg含有する場合に、ビタミンB6についての医薬部外品の製造(輸入)承認基準を満たし、かつ、有効成分の安定性を長期間にわたって確保することが可能となることが明らかとなった。
【0089】
以上、本発明のマルチビタミン剤を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0090】
上記実施形態のマルチビタミン剤においては、pH調整剤として希塩酸を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、pH調整剤として、酢酸又はクエン酸を用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】実施例に係るマルチビタミン剤についての加速試験の結果を示す図である。
【図2】比較例に係るマルチビタミン剤についての加速試験の結果を示す図である。
【図3】試験例1における加速試験の結果を示す図である。
【図4】試験例2における加速試験の結果を示す図である。
【図5】試験例3における加速試験の結果を示す図である。
【図6】試験例4における加速試験の結果を示す図である。
【図7】試験例5における加速試験の結果を示す図である。
【図8】試験例6における加速試験の結果を示す図である。
【図9】試験例7におけるマルチビタミン剤の組成を示す図である。
【図10】試験例7における加速試験の結果を示す図である。
【図11】従来のマルチビタミン剤における有効成分の含有量を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチビタミン剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のビタミン類を含有するマルチビタミン剤(商品名:ARSOA ジオ ビタモルト(医薬部外品)。但し、「ARSOA」及び「ジオ」は株式会社アルソア央粧の登録商標であり、「ビタモルト」は株式会社アルソア本社の登録商標である。)が知られている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
図11は、従来のマルチビタミン剤における有効成分の含有量を示す図である。
従来のマルチビタミン剤は、図11に示すように、有効成分として、タウリン、ローヤルゼリーに加えて7種類のビタミン類(ビタミンE、ニコチン酸アミド、ビタミンB2、コリン、ルチン、ビタミンB6、ビタミンB1)がバランスよく配合されているため、滋養強壮、虚弱体質、肉体疲労、病中病後、食欲不振、栄養障害、発熱性消耗性疾患、産前産後などの場合の栄養補給や毎日の健康維持に適したマルチビタミン剤となっている。
【0004】
ところで、ビタミン類は熱や光などに弱いため、複数のビタミン類を含有するマルチビタミン剤において、有効期間の安定性を長期間にわたって確保するのは容易ではないとされているが、従来のマルチビタミン剤によれば、タウリン、ローヤルゼリーに加えて上記した7種類のビタミン類がバランスよく配合されているため、有効成分の安定性を常温で1年間以上確保することが可能である。
【0005】
【非特許文献1】「ARSOA ジオ ビタモルト(医薬部外品)」、[online]、株式会社アルソア本社、[平成19年3月26日検索]、インターネット<URL:http://www.arsoa.co.jp/product/health/geo/g08.php>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のマルチビタミン剤においては、有効成分の安定性をさらに長期間(例えば、常温で3年間。)にわたって確保することが要望されている。
【0007】
そこで、本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、有効成分の安定性を従来よりも長期間にわたって確保することが可能なマルチビタミン剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するため、従来のマルチビタミン剤において、有効成分の安定性を阻害する要因を徹底的に調査した。その結果、ア)従来のマルチビタミン剤を長期間保存するとビタミンB1が顕著に減少することが明らかになった。また、イ)その一方において、それを考慮してビタミンB1の含有量を多くしすぎるとビタミンB6が顕著に減少することも明らかになった。このことは、ビタミンB1とビタミンB6とが互いに長期安定性に悪影響を及ぼしあっていることを示唆する。
【0009】
そこで、本発明者らは、以上の知見に基づいてさらなる研究を重ねた結果、ビタミンB1及びビタミンB6として所定のビタミンB1及び所定のビタミンB6を用いるとともに、当該所定のビタミンB1及び所定のビタミンB6の含有量をそれぞれ所定範囲の含有量とすることによって、ビタミンB1及びビタミンB6の安定性を高くすることが可能となり、もって、有効成分の安定性を従来よりも長期間にわたって確保することが可能なマルチビタミン剤を提供することが可能となることに想到し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
(1)すなわち、本発明のマルチビタミン剤は、少なくともビタミンB1と、ビタミンB6とを含有するマルチビタミン剤であって、1日摂取量あたり、ビタミンB1として2mg〜20mgのベンフォチアミンを含有し、かつ、ビタミンB6として5mg〜10mgの塩酸ピリドキシンを含有することを特徴とする。
【0011】
このため、本発明のマルチビタミン剤によれば、後述する実施例及び試験例からも明らかなように、有効成分の安定性を従来よりも長期間にわたって確保することが可能となる。
【0012】
(2)本発明のマルチビタミン剤においては、パントテン酸カルシウムと、イノシトールとをさらに含有することが好ましい。
【0013】
このように構成することにより、後述する実施例及び試験例からも明らかなように、有効成分の安定性をさらに長期間にわたって確保することが可能となる。
【0014】
(3)本発明のマルチビタミン剤においては、希塩酸、酢酸又はクエン酸からなるpH調整剤をさらに含有することが好ましい。
【0015】
このように構成することにより、後述する実施例及び試験例からも明らかなように、有効成分の安定性をさらに長期間にわたって確保することが可能となる。
【0016】
(4)本発明のマルチビタミン剤においては、ビタミンE、ニコチン酸アミド、ビタミンB2、コリン、ルチン、タウリン及びローヤルゼリーをさらに含有することが好ましい。
【0017】
このように構成することにより、滋養強壮、虚弱体質、肉体疲労、病中病後、食欲不振、栄養障害、発熱性消耗性疾患、産前産後などの場合の栄養補給や毎日の健康維持に適したマルチビタミン剤とすることができる。
【0018】
(5)本発明のマルチビタミン剤においては、有効成分を含有する内容液をカプセル皮膜で包んだソフトカプセル構造を有することが好ましい。
【0019】
このように構成することにより、内容液が空気に触れることがなくなるため、有効成分の安定性をさらに長期間にわたって確保することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明のマルチビタミン剤を実施形態に基づいてさらに詳細に説明する。
【0021】
[実施形態]
実施形態に係るマルチビタミン剤は、少なくともビタミンB1と、ビタミンB6とを含有するマルチビタミン剤であって、1日摂取量あたり、ビタミンB1として2mg〜20mgのベンフォチアミンを含有し、かつ、ビタミンB6として5mg〜10mgの塩酸ピリドキシンを含有するマルチビタミン剤である。
【0022】
実施形態に係るマルチビタミン剤は、有効成分として、ビタミンB1及びビタミンB6以外のビタミン類(ビタミンE、ニコチン酸アミド、ビタミンB2、コリン及びルチン)、タウリン及びローヤルゼリーを含有する。また、実施形態に係るマルチビタミン剤は、有効成分以外の成分として、ミツロウ、グリセリン脂肪酸エステル、パントテン酸カルシウム、イノシトール、希塩酸及び小麦胚芽油を含有する。
【0023】
実施形態に係るマルチビタミン剤は、有効成分を含有する内容液をカプセル皮膜で包んだソフトカプセル構造を有する。
【0024】
実施形態に係るマルチビタミン剤によれば、少なくともビタミンB1と、ビタミンB6とを含有するマルチビタミン剤であって、1日摂取量あたり、ビタミンB1として2mg〜20mgのベンフォチアミンを含有し、かつ、ビタミンB6として5mg〜10mgの塩酸ピリドキシンを含有するため、後述する実験例及び試験例からも明らかなように、有効成分の安定性を従来よりも長期間にわたって確保することが可能となる。
【0025】
[実施例]
実施例は、実施形態に係るマルチビタミン剤の効果(有効成分の長期安定性)を確認するための実施例である。実施例においては、実施形態に係るマルチビタミン剤の効果を確認するために所定の加速試験を行った。
【0026】
図1は、実施例に係るマルチビタミン剤についての加速試験の結果を示す図である。図1(a)は実施例に係るマルチビタミン剤の組成を示す図であり、図1(b)は実施例に係るマルチビタミン剤におけるベンフォチアミン及び塩酸ピリドキシンの残存率を示す図である。図2は、比較例に係るマルチビタミン剤についての加速試験の結果を示す図である。図2(a)は比較例に係るマルチビタミン剤の組成を示す図であり、図2(b)は比較例に係るマルチビタミン剤における塩酸チアミン及び塩酸ピリドキシンの残存率を示す図である。
【0027】
なお、図1(b)及び図2(b)において、横軸はマルチビタミン剤の保存日数を示し、縦軸はマルチビタミン剤に含まれるベンフォチアミン又は塩酸チアミン(図中VB1と表記)及び塩酸ピリドキシン(図中VB6と表記)の残存率を示す。
【0028】
ところで、従来のマルチビタミン剤は、使用者に1日2粒摂取してもらうことを想定して組成が定められた内容液をカプセル皮膜で包んだソフトカプセル構造を有するマルチビタミン剤であるので、実施例においても、同様の構造を有するマルチビタミン剤を作成し、当該マルチビタミン剤を用いて加速試験を行った。後述する比較例及び試験例2〜6についても同様である。なお、後述する試験例1及び7については、同様の構造を有するマルチビタミン剤1粒に含まれる内容液と同じ組成・分量(従って1日摂取量の半分の量)の内容液をガラス製容器に入れたマルチビタミン剤について加速試験を行った。詳細は後述する。
【0029】
実施例に係るマルチビタミン剤は、図1(a)に示すように、有効成分として、タウリン、ローヤルゼリーに加えて7種類のビタミン類(ビタミンE、ニコチン酸アミド、ビタミンB2、コリン、ルチン、ビタミンB1及びビタミンB6)を含有するとともに、有効成分以外の成分として、ミツロウ、グリセリン脂肪酸エステル、パントテン酸カルシウム、イノシトール、希塩酸(pH調整剤)及び小麦胚芽油を含有する。
【0030】
一方、比較例に係るマルチビタミン剤は、図2(a)に示すように、実施例に係るマルチビタミン剤とよく似た組成を有するが、「ビタミンB1として塩酸チアミンを含有すること」、「ビタミンB1及びビタミンB6の含有量がそれぞれ異なること」並びに「希塩酸を含有しないこと」の点で、実施例に係るマルチビタミン剤の場合とは異なる。比較例に係るマルチビタミン剤は、従来のマルチビタミン剤(商品名:ARSOA ジオ ビタモルト)の内容液をカプセル皮膜で包んだソフトカプセル構造を有するマルチビタミン剤である。
【0031】
実施例に係るマルチビタミン剤は、ビタミンB1として10mgのベンフォチアミンを含有し、かつ、ビタミンB6として2.5mgの塩酸ピリドキシンを含有する。従って、実施例に係るマルチビタミン剤は、1日摂取量あたりに換算すると、ビタミンB1として20mgのベンフォチアミンを含有し、かつ、ビタミンB6として5mgの塩酸ピリドキシンを含有することとなる。
【0032】
実施例における試料調整及び加速試験の手順は、以下のとおりである。
(1)図1(a)に示す組成の内容液1と、図2(a)に示す組成の内容液2とを作成する。
(2)内容液1及び内容液2のそれぞれについて所定のカプセル充填工程を行って、内容液1及び内容液2の所定量をそれぞれカプセル皮膜で包んだソフトカプセル構造を有するマルチビタミン剤(実施例に係るマルチビタミン剤及び比較例に係るマルチビタミン剤)を作成する。
(3)各マルチビタミン剤を40℃、湿度75%の恒温恒湿槽に入れて60日間及び180日間静置(保存)する。
(4)その後、各マルチビタミン剤の内容液を全量採取し、液体クロマトグラフィーを用いてビタミンB1及びビタミンB6を定量する。
【0033】
実施例に係るマルチビタミン剤及び比較例に係るマルチビタミン剤における加速試験の結果は以下のとおりである。
すなわち、実施例に係るマルチビタミン剤においては、図1(b)からわかるように、実施例に係るマルチビタミン剤においては、ビタミンB1及びビタミンB6のいずれについても、60日保存後及び180日保存後における残存率が90%以上である。これに対して、比較例に係るマルチビタミン剤においては、図2(b)からわかるように、ビタミンB1及びビタミンB6のうちビタミンB1については、60日保存後及び180日保存後における残存率が70%未満である。すなわち、実施例に係るマルチビタミン剤によれば、有効成分の安定性を従来よりも長期間にわたって確保することが可能であることがわかった。
【0034】
また、実施例に係るマルチビタミン剤によれば、図1(b)からわかるように、ビタミンB1(ベンフォチアミン)及びビタミンB6(塩酸ピリドキシン)のいずれについても、180日保存後における残存率が90%以上であり、実施例に係るマルチビタミン剤が、有効成分の安定性を極めて長期間(例えば常温で3年間)にわたって確保することが可能であることが明らかとなり、実施形態に係るマルチビタミン剤の効果(有効成分の長期安定性)を確認することができた。
【0035】
なお、実施例に係るマルチビタミン剤の組成として図1(a)に示す組成を採用するにあたっては、以下の試験例1〜7における加速試験の結果を参考にした。
【0036】
試験例1
試験例1は、ビタミンB1として、塩酸チアミン、チアミンジスルフィド又はベンフォチアミンのいずれを用いれば、有効成分の安定性を最も長期間にわたって確保することが可能となるかを明らかにするための試験例である。
【0037】
図3は、試験例1における加速試験の結果を示す図である。図3(a)は各試験例(試験例1−1〜1−3)の組成を示す図であり、図3(b)は各試験例(試験例1−1〜1−3)における塩酸チアミン、チアミンジスルフィド又はベンフォチアミン及び塩酸ピリドキシンの残存率を示す図である。
なお、図3(b)において、横軸は試験例の種別を示し、縦軸は塩酸チアミン、チアミンジスルフィド又はベンフォチアミン(図中VB1と表記)及び塩酸ピリドキシン(図中VB6と表記)の残存率を示す。
【0038】
試験例1に係るマルチビタミン剤はいずれも、図3(a)に示すように、有効成分として、タウリン、ローヤルゼリーに加えて7種類のビタミン類(ビタミンE、ニコチン酸アミド、ビタミンB2、コリン、ルチン、ビタミンB1及びビタミンB6)を含有するとともに、有効成分以外の成分として、ミツロウ、グリセリン脂肪酸エステル、パントテン酸カルシウム、イノシトール及び小麦胚芽油を含有する。
【0039】
但し、試験例1−1に係るマルチビタミン剤は、ビタミンB1として10mgの塩酸チアミンを含有し、試験例1−2に係るマルチビタミン剤は、ビタミンB1として10mgのチアミンジスルフィドを含有し、試験例1−3に係るマルチビタミン剤は、ビタミンB1として10mgのベンフォチアミンを含有する。
【0040】
試験例1における試料調整及び加速試験の手順は、以下のとおりである。
(1)図3(a)に示す組成(但し、10倍量。)のマルチビタミン剤(試験例1−1に係るマルチビタミン剤、試験例1−2に係るマルチビタミン剤及び試験例1−3に係るマルチビタミン剤)を作成する。
(2)各試験例に係るマルチビタミン剤をそれぞれ脱泡後10等分してガラスビンに小分けする。
(3)各試験例に係るマルチビタミン剤が入ったガラスビンに蓋をした後、40℃、湿度75%の恒温恒湿槽に入れて30日間静置(保存)する。
(4)その後、各試験例に係るマルチビタミン剤を全量採取し、液体クロマトグラフィーを用いてビタミンB1及びビタミンB6を定量する。
【0041】
試験例1に係るマルチビタミン剤についての加速試験の結果は以下のとおりである。
すなわち、図3(b)からわかるように、試験例1−1に係るマルチビタミン剤及び試験例1−2に係るマルチビタミン剤においては、ビタミンB1(塩酸チアミン、チアミンジスルフィド)及びビタミンB6(塩酸ピリドキシン)のうちビタミンB1(塩酸チアミン、チアミンジスルフィド)については、30日保存後における残存率が90%未満である。これに対して、試験例1−3に係るマルチビタミン剤においては、ビタミンB1(ベンフォチアミン)及びビタミンB6(塩酸ピリドキシン)のいずれについても30日保存後における残存率が90%以上である。
【0042】
従って、試験例1の試験結果からは、ビタミンB1としてベンフォチアミンを用いれば、有効成分の安定性を最も長期間にわたって確保することが可能となることが明らかとなった。
【0043】
試験例2
試験例2は、ビタミンB6として、塩酸ピリドキシン又はリン酸ピリドキサールのいずれを用いれば、有効成分の安定性をより長期間にわたって確保することが可能となるかを明らかにするための試験例である。
【0044】
図4は、試験例2における加速試験の結果を示す図である。図4(a)は各試験例(試験例2−1及び2−2)の組成を示す図であり、図4(b)は各試験例(試験例2−1及び2−2)におけるベンフォチアミン及び塩酸ピリドキシン又はリン酸ピリドキサールの残存率を示す図である。
なお、図4(b)において、横軸は試験例の種別を示し、縦軸はベンフォチアミン(図中VB1と表記)及び塩酸ピリドキシン又はリン酸ピリドキサール(図中VB6と表記)の残存率を示す。
【0045】
試験例2に係るマルチビタミン剤はいずれも、図4(a)に示すように、有効成分として、タウリン、ローヤルゼリーに加えて7種類のビタミン類(ビタミンE、ニコチン酸アミド、ビタミンB2、コリン、ルチン、ビタミンB1及びビタミンB6)を含有するとともに、有効成分以外の成分として、ミツロウ、グリセリン脂肪酸エステル、パントテン酸カルシウム、イノシトール及び小麦胚芽油を含有する。
【0046】
但し、試験例2−1に係るマルチビタミン剤は、ビタミンB6として1mgの塩酸ピリドキシンを含有し、試験例2−2に係るマルチビタミン剤は、ビタミンB6として1mgのリン酸ピリドキサールを含有する。
【0047】
試験例2における試料調整及び加速試験の手順は、上述した実施例の場合と同様である。但し、マルチビタミン剤の保存日数は30日とした。
【0048】
試験例2に係るマルチビタミン剤における加速試験の結果は以下のとおりである。
すなわち、図4(b)からわかるように、試験例2−1に係るマルチビタミン剤においては、ビタミンB1(ベンフォチアミン)及びビタミンB6(塩酸ピリドキシン)のいずれについても30日保存後における残存率は90%以上である。これに対して、試験例2−2に係るマルチビタミン剤においては、ビタミンB1(ベンフォチアミン)及びビタミンB6(リン酸ピリドキサール)のうちビタミンB6(リン酸ピリドキサール)についての30日保存後における残存率は極めて低い(痕跡量程度)。
【0049】
従って、試験例2の試験結果からは、ビタミンB6として塩酸ピリドキシンを用いれば、有効成分の安定性をより長期間にわたって確保することが可能となることが明らかとなった。
【0050】
試験例3
試験例3は、ビタミンB1として、どれ位の量のベンフォチアミンを用いれば、有効成分の安定性を長期間にわたって確保することが可能となるかを明らかにするための試験例である。
【0051】
図5は、試験例3における加速試験の結果を示す図である。図5(a)は各試験例(試験例3−1及び3−2)の組成を示す図であり、図5(b)は各試験例(試験例3−1及び3−2)におけるベンフォチアミン及び塩酸ピリドキシンの残存率を示す図である。
なお、図5(b)において、横軸は試験例の種別を示し、縦軸はベンフォチアミン(図中VB1と表記)及び塩酸ピリドキシン(図中VB6と表記)の残存率を示す。
【0052】
試験例3に係るマルチビタミン剤はいずれも、図5(a)に示すように、有効成分として、タウリン、ローヤルゼリーに加えて7種類のビタミン類(ビタミンE、ニコチン酸アミド、ビタミンB2、コリン、ルチン、ビタミンB1及びビタミンB6)を含有するとともに、有効成分以外の成分として、ミツロウ、グリセリン脂肪酸エステル、パントテン酸カルシウム、イノシトール及び小麦胚芽油を含有する。
【0053】
但し、試験例3−1に係るマルチビタミン剤は、ビタミンB1として0.5mgのベンフォチアミンを含有し、試験例3−2に係るマルチビタミン剤は、ビタミンB1として10mgのベンフォチアミンを含有する。
【0054】
試験例3における試料調整及び加速試験の手順は、上述した実施例の場合と同様である。但し、マルチビタミン剤の保存日数は90日とした。
【0055】
試験例3に係るマルチビタミン剤における加速試験の結果は以下のとおりである。
すなわち、図5(b)からわかるように、試験例3−1に係るマルチビタミン剤においては、ベンフォチアミン及び塩酸ピリドキシンのうちベンフォチアミンについては、90日保存後における残存率が70%未満である。これに対して、試験例3−2に係るマルチビタミン剤においては、ベンフォチアミン及び塩酸ピリドキシンのいずれについても90日保存後における残存率が70%以上である。
【0056】
従って、試験例3の試験結果からは、ビタミンB1としてある程度多量のベンフォチアミンを用いれば、有効成分の安定性を長期間にわたって確保することが可能となることが明らかとなった。
【0057】
試験例4
試験例4は、ビタミンB6として、どれ位の量の塩酸ピリドキシンを用いれば、有効成分の安定性を長期間にわたって確保することが可能となるかを明らかにするための試験例である。
【0058】
図6は、試験例4における加速試験の結果を示す図である。図6(a)は各試験例(試験例4−1〜4−3)の組成を示す図であり、図6(b)は各試験例(試験例4−1〜4−3)におけるベンフォチアミン及び塩酸ピリドキシンの残存率を示す図である。
なお、図6(b)において、横軸は試験例の種別を示し、縦軸はベンフォチアミン(図中VB1と表記)及び塩酸ピリドキシン(図中VB6と表記)の残存率を示す。
【0059】
試験例4に係るマルチビタミン剤はいずれも、図6(a)に示すように、有効成分として、タウリン、ローヤルゼリーに加えて7種類のビタミン類(ビタミンE、ニコチン酸アミド、ビタミンB2、コリン、ルチン、ビタミンB1及びビタミンB6)を含有するとともに、有効成分以外の成分として、ミツロウ、グリセリン脂肪酸エステル、パントテン酸カルシウム、イノシトール及び小麦胚芽油を含有する。
【0060】
但し、試験例4−1に係るマルチビタミン剤は、ビタミンB6として1mgの塩酸ピリドキシンを含有し、試験例4−2に係るマルチビタミン剤は、ビタミンB6として2.5mgの塩酸ピリドキシンを含有し、試験例4−3に係るマルチビタミン剤は、ビタミンB6として5mgの塩酸ピリドキシンを含有する。
【0061】
試験例4における試料調整及び加速試験の手順は、上述した実施例の場合と同様である。但し、マルチビタミン剤の保存日数は150日とした。
【0062】
試験例4に係るマルチビタミン剤における加速試験の結果は以下のとおりである。
すなわち、図6(b)からわかるように、試験例4−1に係るマルチビタミン剤においては、ベンフォチアミン及び塩酸ピリドキシンのうち塩酸ピリドキシンについては、150日保存後における残存率が70%未満である。これに対して、試験例4−2に係るマルチビタミン剤及び試験例4−3に係るマルチビタミン剤においては、ベンフォチアミン及び塩酸ピリドキシンのいずれについても150日保存後における残存率は80%以上である。
【0063】
従って、試験例4の試験結果からは、ビタミンB6としてある程度多量の塩酸ピリドキシンを用いれば、有効成分の安定性を長期間にわたって確保することが可能となることが明らかとなった。
【0064】
試験例5
試験例5は、pH調整剤として希塩酸を用いることによって有効成分の安定性を長期間にわたって確保することが可能となるかどうかを明らかにするための試験例である。
【0065】
図7は、試験例5における加速試験の結果を示す図である。図7(a)は各試験例(試験例5−1〜5−4)の組成を示す図であり、図7(b)は各試験例(試験例5−1〜5−4)におけるベンフォチアミン及び塩酸ピリドキシンの残存率を示す図である。
なお、図7(b)において、横軸は試験例の種別を示し、縦軸はベンフォチアミン(図中VB1と表記)及び塩酸ピリドキシン(図中VB6と表記)の残存率を示す。
【0066】
試験例5に係るマルチビタミン剤はいずれも、図7(a)に示すように、有効成分として、タウリン、ローヤルゼリーに加えて7種類のビタミン類(ビタミンE、ニコチン酸アミド、ビタミンB2、コリン、ルチン、ビタミンB1及びビタミンB6)を含有するとともに、有効成分以外の成分として、ミツロウ、グリセリン脂肪酸エステル、パントテン酸カルシウム、イノシトール及び小麦胚芽油を含有する。
【0067】
但し、試験例5−1に係るマルチビタミン剤及び試験例5−3に係るマルチビタミン剤は、pH調整剤として10.5mgの希塩酸を含有し、試験例5−2に係るマルチビタミン剤及び試験例5−4に係るマルチビタミン剤は、pH調整剤としての希塩酸を含有しない。
なお、試験例5−1に係るマルチビタミン剤及び試験例5−2に係るマルチビタミン剤は、ビタミンB6として2.5mgの塩酸ピリドキシンを含有し、試験例5−3に係るマルチビタミン剤及び試験例5−4に係るマルチビタミン剤は、ビタミンB6として5mgの塩酸ピリドキシンを含有する。
【0068】
試験例5における試料調整及び加速試験の手順は、上述した実施例の場合と同様である。但し、マルチビタミン剤の保存日数は150日とした。
【0069】
試験例5に係るマルチビタミン剤における加速試験の結果は以下のとおりである。
すなわち、図7(b)からわかるように、試験例5−1に係るマルチビタミン剤及び試験例5−3に係るマルチビタミン剤においては、ベンフォチアミン及び塩酸ピリドキシンのいずれについても150日保存後における残存率が90%以上である。これに対して、試験例5−2に係るマルチビタミン剤においては、ベンフォチアミン及び塩酸ピリドキシンのうち塩酸ピリドキシンについての150日保存後における残存率は90%未満であり、試験例5−4に係るマルチビタミン剤においては、ベンフォチアミン及び塩酸ピリドキシンのうちベンフォチアミンについての150日保存後における残存率は90%未満である。
【0070】
従って、試験例5の試験結果からは、pH調整剤として希塩酸を用いることによって有効成分の安定性を長期間にわたって確保することが可能となることが明らかとなった。
【0071】
試験例6
試験例6は、パントテン酸カルシウム及びイノシトールを用いることによって有効成分の安定性を長期間にわたって確保することが可能となるかどうかを明らかにするための試験例である。
【0072】
図8は、試験例6における加速試験の結果を示す図である。図8(a)は各試験例(試験例6−1〜6−4)の組成を示す図であり、図8(b)は各試験例(試験例6−1〜6−4)におけるベンフォチアミン及び塩酸ピリドキシンの残存率を示す図である。
なお、図8(b)において、横軸は試験例の種別を示し、縦軸はベンフォチアミン(図中VB1と表記)及び塩酸ピリドキシン(図中VB6と表記)の残存率を示す。
【0073】
試験例6に係るマルチビタミン剤はいずれも、図8(a)に示すように、有効成分として、タウリン、ローヤルゼリーに加えて7種類のビタミン類(ビタミンE、ニコチン酸アミド、ビタミンB2、コリン、ルチン、ビタミンB1及びビタミンB6)を含有するとともに、有効成分以外の成分として、ミツロウ、グリセリン脂肪酸エステル及び小麦胚芽油を含有する。
【0074】
但し、試験例6−1に係るマルチビタミン剤及び試験例6−3に係るマルチビタミン剤は、パントテン酸カルシウム及びイノシトールを含有し、試験例6−2に係るマルチビタミン剤及び試験例6−4に係るマルチビタミン剤は、パントテン酸カルシウム及びイノシトールのいずれも含有しない。
なお、試験例6−1に係るマルチビタミン剤及び試験例6−2に係るマルチビタミン剤は、ビタミンB6として2.5mgの塩酸ピリドキシンを含有し、試験例6−3に係るマルチビタミン剤及び試験例6−4に係るマルチビタミン剤は、ビタミンB6として5mgの塩酸ピリドキシンを含有する。
【0075】
試験例6における試料調整及び加速試験の手順は、上述した実施例の場合と同様である。但し、マルチビタミン剤の保存日数は30日とした。
【0076】
試験例6に係るマルチビタミン剤における加速試験の結果は以下のとおりである。
すなわち、図8(b)からわかるように、試験例6−1に係るマルチビタミン剤においては、ベンフォチアミン及び塩酸ピリドキシンのうちいずれについても30日保存後における残存率は97%以上である。これに対して、試験例6−2に係るマルチビタミン剤においては、ベンフォチアミン及び塩酸ピリドキシンのいずれについても30日保存後における残存率は95%未満である。また、試験例6−3に係るマルチビタミン剤においては、ベンフォチアミン及び塩酸ピリドキシンのいずれについても30日保存後における残存率が94%以上である。これに対して、試験例6−4に係るマルチビタミン剤においては、ベンフォチアミン及び塩酸ピリドキシンのいずれについても30日保存後における残存率は94%未満である。
【0077】
従って、試験例6の試験結果からは、パントテン酸カルシウム及びイノシトールを用いることによって有効成分の安定性を長期間にわたって確保することが可能となることが明らかとなった。
【0078】
試験例7
試験例7は、ビタミンB1及びビタミンB6として、ベンフォチアミン及び塩酸ピリドキシンをそれぞれどれ位の量用いると、有効成分の安定性を長期間にわたって確保することが可能となるかを明らかにするための試験例である。
【0079】
図9は、試験例7(試験例7−1〜7−30)におけるマルチビタミン剤の組成を示す図である。図10は、試験例7における加速試験の結果を示す図である。
なお、図10(a)〜図10(c)において、横軸は試験例の種別を示し、縦軸はベンフォチアミン(図中VB1と表記)及び塩酸ピリドキシン(図中VB6と表記)の残存率を示す。
【0080】
試験例7に係るマルチビタミン剤はいずれも、図9に示すように、有効成分として、タウリン、ローヤルゼリーに加えて7種類のビタミン類(ビタミンE、ニコチン酸アミド、ビタミンB2、コリン、ルチン、ビタミンB1及びビタミンB6)を含有するとともに、有効成分以外の成分として、ミツロウ、グリセリン脂肪酸エステル、パントテン酸カルシウム、イノシトール、希塩酸及び小麦胚芽油を含有する。
【0081】
但し、試験例7−1に係るマルチビタミン剤〜試験例7−10に係るマルチビタミン剤は、ビタミンB1として1mgのベンフォチアミンを含有し、試験例7−11に係るマルチビタミン剤〜試験例7−20に係るマルチビタミン剤は、ビタミンB1として10mgのベンフォチアミンを含有し、試験例7−21に係るマルチビタミン剤〜試験例7−30に係るマルチビタミン剤は、ビタミンB1として50mgのベンフォチアミンを含有する。
【0082】
また、試験例7−1に係るマルチビタミン剤〜試験例7−10に係るマルチビタミン剤、試験例7−11に係るマルチビタミン剤〜試験例7−20に係るマルチビタミン剤及び試験例7−21に係るマルチビタミン剤〜試験例7−30に係るマルチビタミン剤はそれぞれ、ビタミンB6として1mg〜50mgの塩酸ピリドキシンを含有する。
【0083】
試験例7における試料調整及び加速試験の手順は、上述した試験例1の場合と同様である。但し、マルチビタミン剤の保存日数は90日とした。
【0084】
試験例7に係るマルチビタミン剤における加速試験の結果は以下のとおりである。
すなわち、図10(a)に示すように、試験例7−1に係るマルチビタミン剤〜試験例7−10に係るマルチビタミン剤を比較すると、試験例7−1に係るマルチビタミン剤及び試験例7−2に係るマルチビタミン剤においては、ベンフォチアミン及び塩酸ピリドキシンのうち塩酸ピリドキシンについては90日保存後における残存率が70%以下である。これに対して、試験例7−3に係るマルチビタミン剤〜試験例7−10に係るマルチビタミン剤においては、ベンフォチアミン及び塩酸ピリドキシンのいずれについても90日保存後における残存率が80%以上である。
【0085】
また、図10(b)に示すように、試験例7−11に係るマルチビタミン剤〜試験例7−20に係るマルチビタミン剤を比較すると、試験例7−11に係るマルチビタミン剤〜試験例7−13に係るマルチビタミン剤においては、ベンフォチアミン及び塩酸ピリドキシンのうち塩酸ピリドキシンについては90日保存後における残存率が71%以下である。これに対して、試験例7−14に係るマルチビタミン剤〜試験例7−20に係るマルチビタミン剤においては、ベンフォチアミン及び塩酸ピリドキシンのいずれについても90日保存後における残存率が78%以上である。
【0086】
また、図10(c)に示すように、試験例7−21に係るマルチビタミン剤〜試験例7−30に係るマルチビタミン剤を比較すると、試験例7−21に係るマルチビタミン剤〜試験例7−27に係るマルチビタミン剤においては、ベンフォチアミン及び塩酸ピリドキシンのうち塩酸ピリドキシンについては90日保存後における残存率が76%以下である。これに対して、試験例7−28に係るマルチビタミン剤〜試験例7−30に係るマルチビタミン剤においては、ベンフォチアミン及び塩酸ピリドキシンのいずれについても90日保存後における残存率が88%以上である。
【0087】
なお、ビタミンB6についての医薬部外品の製造(輸入)承認基準から、塩酸ピリドキシンについてはカプセル1粒の量(1日摂取量2粒の半分の量)に相当するマルチビタミン剤中に1.0mg〜5.0mgの範囲で含有されていることが必要であるため、これを考慮すれば、試験例7−7に係るマルチビタミン剤〜試験例7−10に係るマルチビタミン剤、試験例7−17に係るマルチビタミン剤〜試験例7−20に係るマルチビタミン剤及び試験例7−27に係るマルチビタミン剤〜試験例7−30に係るマルチビタミン剤については、上記基準を満たさないためマルチビタミン剤の組成としては好ましくない。
【0088】
従って、試験例7の試験結果からは、ビタミンB1としてベンフォチアミンを1mg〜10mg含有し、かつ、ビタミンB6として塩酸ピリドキシンを2.5mg〜5.0mg含有する場合に、ビタミンB6についての医薬部外品の製造(輸入)承認基準を満たし、かつ、有効成分の安定性を長期間にわたって確保することが可能となることが明らかとなった。
【0089】
以上、本発明のマルチビタミン剤を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0090】
上記実施形態のマルチビタミン剤においては、pH調整剤として希塩酸を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、pH調整剤として、酢酸又はクエン酸を用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】実施例に係るマルチビタミン剤についての加速試験の結果を示す図である。
【図2】比較例に係るマルチビタミン剤についての加速試験の結果を示す図である。
【図3】試験例1における加速試験の結果を示す図である。
【図4】試験例2における加速試験の結果を示す図である。
【図5】試験例3における加速試験の結果を示す図である。
【図6】試験例4における加速試験の結果を示す図である。
【図7】試験例5における加速試験の結果を示す図である。
【図8】試験例6における加速試験の結果を示す図である。
【図9】試験例7におけるマルチビタミン剤の組成を示す図である。
【図10】試験例7における加速試験の結果を示す図である。
【図11】従来のマルチビタミン剤における有効成分の含有量を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともビタミンB1と、ビタミンB6とを含有するマルチビタミン剤であって、
1日摂取量あたり、ビタミンB1として2mg〜20mgのベンフォチアミンを含有し、かつ、ビタミンB6として5mg〜10mgの塩酸ピリドキシンを含有することを特徴とするマルチビタミン剤。
【請求項2】
請求項1に記載のマルチビタミン剤において、
パントテン酸カルシウムと、イノシトールとをさらに含有することを特徴とするマルチビタミン剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のマルチビタミン剤において、
希塩酸、酢酸又はクエン酸からなるpH調整剤をさらに含有することを特徴とするマルチビタミン剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のマルチビタミン剤において、
ビタミンE、ニコチン酸アミド、ビタミンB2、コリン、ルチン、タウリン及びローヤルゼリーをさらに含有することを特徴とするマルチビタミン剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のマルチビタミン剤において、
有効成分を含有する内容液をカプセル皮膜で包んだソフトカプセル構造を有することを特徴とするマルチビタミン剤。
【請求項1】
少なくともビタミンB1と、ビタミンB6とを含有するマルチビタミン剤であって、
1日摂取量あたり、ビタミンB1として2mg〜20mgのベンフォチアミンを含有し、かつ、ビタミンB6として5mg〜10mgの塩酸ピリドキシンを含有することを特徴とするマルチビタミン剤。
【請求項2】
請求項1に記載のマルチビタミン剤において、
パントテン酸カルシウムと、イノシトールとをさらに含有することを特徴とするマルチビタミン剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のマルチビタミン剤において、
希塩酸、酢酸又はクエン酸からなるpH調整剤をさらに含有することを特徴とするマルチビタミン剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のマルチビタミン剤において、
ビタミンE、ニコチン酸アミド、ビタミンB2、コリン、ルチン、タウリン及びローヤルゼリーをさらに含有することを特徴とするマルチビタミン剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のマルチビタミン剤において、
有効成分を含有する内容液をカプセル皮膜で包んだソフトカプセル構造を有することを特徴とするマルチビタミン剤。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−266231(P2008−266231A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−112910(P2007−112910)
【出願日】平成19年4月23日(2007.4.23)
【出願人】(398050777)株式会社アルソア本社 (10)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月23日(2007.4.23)
【出願人】(398050777)株式会社アルソア本社 (10)
【Fターム(参考)】
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