説明

ミシン

【課題】ミシンモータにより中押さえの上下動ストロークを容易に検出する。
【解決手段】ミシンモータ2aから動力を得て、縫い針の上下動に同期して中押さえ29に上下動させる中押さえ上下動機構M1と、中押さえモータ42を駆動源として、ミシンモータによる中押さえの上下動の上死点位置と下死点位置の高さを上下方向に推移させる中押さえ高さ調節機構M4とを備え、ミシンモータによる中押さえの上死点位置と下死点位置との各々において、中押さえモータによる中押さえの最上位置から針板に当接するまでの下降動作量を検出し、前記ミシンモータによる上死点位置と下死点位置とにおける各下降動作量に基づく中押さえ高さの差からミシンモータによる上下動のストロークを算出するストローク取得制御手段73を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中押さえを備えるミシンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のミシンは、上昇を行う縫い針に被縫製物が引っ張られてばたつきを生じることを防止するために、ミシンモータから動力を得て、縫い針よりも小さいストロークで上下動を行う中押さえを備えていた(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−289336号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記中押さえは、ミシンモータにより回転を行う主軸から偏心カムを介してクランクロッドにより連結された往復回動軸と、往復回動軸により往復回動を行う往復回動腕と、往復回動腕の回動端部と中押さえを支持する中押さえ棒とを連結する複数のリンク体とにより往復上下動が付与される構造となっている。
そして、中押さえの上下動ストロークは、被縫製物の厚さによっては干渉を生じる場合があるので縫製前に把握したいという要請がある。
しかしながら、このように複数の機械要素から上下動が付与される機構構造の場合、上下動ストロークを計算で求めるためには、各部品の設計寸法を全て把握しなければならないため、組み付け後に求めるのは困難である。
従って、主軸操作により中押さえを上死点位置と下死点位置とにそれぞれ固定し、それらの相互間距離を実測して中押さえの上下動ストロークを求めることが行われていた。このため、実測作業は全て作業者が手作業で行う必要があり、作業の繁雑さから負担となっていた。
【0004】
また、ミシンによっては、中押さえの上下動機構の各部材の連結位置を調節可能とし、当該調節により中押さえの上下動ストロークを調節可能とするものが存在する。しかしながら、かかる調節機能により中押さえの上下動ストロークは調節可能となるが、調節後の上下動ストロークを数値として把握するためには、上述した測定作業が不可欠であり、ストローク調節作業ごとに実測作業の必要性を生じ、ストローク調節作業の負担が大きいものとなっていた。
本発明は、中押さえの上下動ストロークの把握を容易に行うことを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、ミシンモータにより縫い針を上下動させる針上下動機構と、前記ミシンモータにより回転駆動される主軸の角度を検出する主軸角度検出手段と、縫製時に被縫製物の浮き上がりを防止する中押さえと、前記ミシンモータから動力を得て、前記縫い針の上下動に同期して前記中押さえに上下動させる中押さえ上下動機構と、中押さえモータを駆動源として、前記ミシンモータによる中押さえの上下動の上死点位置と下死点位置の高さを上下方向に推移させる中押さえ高さ調節機構とを備えるミシンにおいて、前記ミシンモータによる前記中押さえの上死点位置と下死点位置との各々において、前記中押さえモータによる中押さえの最上位置から針板に当接するまでの下降動作量を検出し、前記ミシンモータによる上死点位置と下死点位置とにおける各下降動作量の差から前記ミシンモータによる上下動のストロークを算出するストローク取得制御手段を備えることを特徴とする。
【0006】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明と同様の構成を備えると共に、前記中押さえの縫製時における上下動ストロークを設定するストローク設定手段と、縫製時において、前記ミシンモータによる中押さえの上下動に同期して当該中押さえに上下動を生じるように前記中押さえモータを駆動すると共に、当該中押さえモータの上下動ストロークを前記ストローク設定手段による設定ストロークと前記ストローク取得制御手段により算出された算出ストロークの差と等しくなるように中押さえモータを制御して前記設定ストロークで中押さえを上下動させるストローク可変制御手段とを備えることを特徴とする。
【0007】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明と同様の構成を備えると共に、前記ストローク取得制御手段による前記中押さえの下降制御における針板への当接は、前記中押さえモータのフィードバック電流の変化から検出することを特徴とする。
【0008】
請求項4記載の発明は、請求項1、2又は3記載の発明と同様の構成を備えると共に、前記中押さえモータにその出力軸の角度を検出するモータ軸角度検出手段を備え、前記ストローク取得制御手段による前記中押さえの下降制御における針板への当接は、前記中押さえモータの出力軸の回転状態の変化から検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明は、ミシンモータによる中押さえの上死点位置と下死点位置との各々において、中押さえモータによる中押さえの最上位置から針板に当接するまでの下降動作量を検出し、ミシンモータによる上死点位置と下死点位置とにおける各下降動作量の差からミシンモータによる上下動のストロークを算出するので、手作業による中押さえの高さ測定を不要とし、モータ制御によって中押さえの上下動ストロークを求めることが可能となるため、作業負担を飛躍的に軽減し、迅速にストロークを求めることが可能となる。また、ミシンの組み付け後のいつでもストロークを求めることが可能となる。
【0010】
請求項2記載の発明は、縫製時において、ミシンモータに同期して、設定ストロークと算出ストロークの差と等しくなるように中押さえモータを制御することで、ミシンモータと中押さえモータとの協働により設定ストロークで中押さえを上下動させるので、任意の設定ストロークを実現することが可能となり、手作業による部品の組み直しによるストロークの調節作業を不要とし、作業負担を飛躍的に軽減することが可能となる。また、モータ制御によってストローク調節を行うので、縫製中であってもストロークの調節を行うことができ、任意の針落ち位置でストロークを変更するなど多彩な縫製が可能となり、縫い品質の向上を図ることも可能となる。
【0011】
請求項3記載の発明は、ストローク取得制御手段による中押さえの下降制御における針板への当接は、中押さえモータのフィードバック電流の変化から検出するので、中押さえモータの制御に電流フィードバックを行っているミシンのような場合には、改めて針板への当接を検出するための手段を設ける必要がなく、ミシンの生産性の向上を図ることが可能となる。
【0012】
請求項4記載の発明は、中押さえモータにその出力軸の角度を検出するモータ軸角度検出手段を併設し、中押さえの下降制御における針板への当接時には、中押さえモータが回転を阻止され或いは減速するなどの何らかの回転状態の変化を生じるので、これらいずれかを検出することで中押さえの針板への当接を検出することができ、効果的な検出が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明に係るミシンの実施の形態について詳細に説明する。
なお、本実施形態では、ミシンとして電子サイクルミシンを例に説明する。
電子サイクルミシンは、縫製を行う被縫製物である布を保持する保持枠を有し、その保持枠が縫い針に対し相対的に移動することにより、保持枠に保持される布に所定の縫製データ(縫製パターン)に基づく縫い目を形成するミシンである。
ここで、後述する縫い針108が上下動を行う方向をZ軸方向(上下方向)とし、これと直交する一の方向をX軸方向(左右方向)とし、Z軸方向とX軸方向の両方に直交する方向をY軸方向(前後方向)と定義する。
【0014】
電子サイクルミシン100(以下、ミシン100という)は、図1に示すように、ミシンテーブルTの上面に備えられるミシン本体101と、ミシンテーブルTの下部に備えられミシン本体101を操作するためのペダルRや、ミシンテーブルTの上部に備えられユーザによる入力操作を行うための操作パネル74等を備えている。
【0015】
(ミシンフレーム及び主軸)
図1、図2に示すように、ミシン本体101は、外形が側面視にて略コ字状を呈するミシンフレーム102を備えている。このミシンフレーム102は、ミシン本体101の上部をなし前後方向に延びるミシンアーム部102aと、ミシン本体101の下部をなし、前後方向に延びるミシンベッド部102bと、ミシンアーム部102aとミシンベッド部102bとを連結する縦胴部102cとを有している。
このミシン本体101は、ミシンフレーム102内に動力伝達機構が配され、回動自在で前後方向に延びる主軸2(図4参照)及び図示しない下軸を有している。主軸2はミシンアーム部102aの内部に配され、下軸(図示省略)はミシンベッド部102bの内部に配されている。
【0016】
主軸2は、ミシンモータ2a(図7参照)に接続され、このミシンモータ2aにより回動力が付与される。また、下軸(図示省略)は、縦軸(図示省略)を介して主軸2と連結されており、主軸2が回動すると、主軸2の動力が縦軸を介して下軸側へ伝達し、下軸が回動するようになっている。
主軸2の前端には、主軸2の回動によりZ軸方向に上下動する針棒108aが接続されており、その針棒108aの下端には、縫い針108が交換可能に設けられている。つまり、主軸2の回動により縫い針108はZ軸方向に上下動する。
かかる主軸2とミシンモータ2aと針棒108aと主軸2から針棒108aに上下動の駆動力を付与する図示しない伝達機構により針上下動機構が構成される。
【0017】
なお、主軸2には、主軸角度検出手段としてのエンコーダ2b(図7参照)が設けられている。エンコーダ2bはミシンモータ2aの主軸2の回転角度を検知するものであり、例えば、ミシンモータ2aにより主軸2が1°回転するごとにパルス信号を制御装置1000に出力するようになっている。また、主軸2の1回転に伴い、針棒108aは1往復の運動を行う。
【0018】
また、下軸(図示省略)の前端には、釜(図示省略)が設けられている。主軸2とともに下軸が回動すると、縫い針108と釜(図示省略)との協働により縫い目が形成される。
なお、ミシンモータ2a、主軸2、針棒108a、縫い針108、下軸(図示省略)、釜(図示省略)等の接続構成は従来公知のものと同様であるので、ここでは詳述しない。
【0019】
(位置決め手段)
図1、図2に示すように、ミシンベッド部102b上には、針板110が配設されており、この針板110の上方に布保持部としての保持枠111及び縫い針108が配置されるようになっている。
保持枠111は、ミシンアーム部102aの前端部に配される取付部材113に取り付けられており、その取付部材113にはミシンベッド102b内に配置されたX軸モータ76a及びY軸モータ77aが駆動手段として連結されている(図7参照)。
保持枠111は、被縫製物である布地を保持し、X軸モータ76a及びY軸モータ77aの駆動に伴い、保持した布地を保持枠111ごと前後左右方向に移動するようになっている。そして、保持枠111の移動と、縫い針108や釜(図示省略)の動作が連動することにより、布地に所定の縫製パターンデータの縫い目データに基づく縫い目が形成される。
また、保持枠111は、布押さえ(図示省略)と下板(図示省略)とからなっており、取付部材113はミシンアーム102a内に配置された布押さえモータ79bの駆動により上下駆動が可能であり、布押さえ下降時に下板との間で布地を挟持し保持するようになっている。
そして、これら保持枠111、取付部材113、X軸モータ76a及びY軸モータ77aが、縫い針と布地をX軸方向及びY軸方向に相対的に位置決めする位置決め手段として機能する。
【0020】
ペダルRは、ミシン100を駆動させ、針棒108a(縫い針108)を上下動させたり、保持枠111を動作させたりするための操作ペダルとして作動する。すなわちペダルRには、ペダルRが踏み込まれたその踏み込み操作位置を検出するためのセンサが組み込まれており、センサからの出力信号がペダルRの操作信号として後述する制御装置1000に出力され、制御装置1000はその操作位置、操作信号に応じて、ミシン100を駆動し、動作させるように構成されている。
【0021】
また、ミシン100には、ユーザによる操作入力を行うための操作パネル74が設けられており、操作パネル74に入力された各種データや操作信号は、後述する制御装置1000に出力される。
なお、操作パネル74は、液晶表示パネルとその液晶表示パネルの表示画面上に設けられたタッチパネルとを備えて構成されており、液晶表示パネルに表示される各種操作キー等をタッチ操作することにより、タッチパネルがタッチ指示された位置を検出し、検出した位置に応じた操作信号を後述する制御装置1000に出力するようになっている。
【0022】
(中押さえ装置)
ミシンアーム102aには、縫い針108の上下動による布の浮き上がりを防止するために、針棒108aの上下動と連動して上下動し、縫い針108の周囲の布を下方に押圧する中押さえ29を有する中押さえ装置1(図3参照)が設けられている。なお、中押さえ装置1の本体はミシンアーム部102aの内部に配設されており、縫い針108は、中押さえ29の先端側に形成されている貫通孔に挿入されている。
【0023】
中押さえ装置1は、図3〜図5に示すように、縫製時に布を針板110側に押さえ付ける中押さえ29と、主軸2の回転により上下動する縫い針108に合わせて中押さえ29を上下動させる中押さえ上下動機構M1と、中押さえ29の下降動作阻害時に行われる逃げ動作を可能とすると共に逃げ動作の際に中押さえ29を針板110側に付勢する付勢機構M2と、中押さえ29を縫製終了後に退避高さ位置に上昇させる中押さえ退避機構M3と、ミシンモータ2による中押さえの上下動の上死点位置と下死点位置の高さを調節する中押さえ高さ調節機構M4と、を備えている。
【0024】
中押さえ上下動機構M1は、先端に縫い針108を備える針棒108を上下方向に駆動させる主軸2(図4参照)の回動により、中押さえ29を上下動させるようになっている。
図4に示すように、主軸2には偏心カム3が固定され、その偏心カム3には接続リンク4が連結されている。接続リンク4には揺動軸抱き5が連結され、揺動軸抱き5には揺動軸6の一端部が連結されている。
揺動軸6の他端部には、図5に示すように、中押さえの上下方向D1の移動量を調節する中押さえ調節腕7の基端部が固定されている。中押さえ調節腕7には溝カム7aが形成されている。この溝カム7aは弧状の長孔になっており、この溝カム7aの所望の位置で第1リンク8の一端部が調節ナット9と段ねじ10により軸支されている。第1リンク8の一端部の固定位置は揺動軸6の中心に対して接離移動調節可能であり、中心からの距離に比例して第1リンク8に付与する往復動作量を増減調節することができる。
【0025】
第1リンク8の他端部は、図5に示すように、第2リンク11の長手方向略中間に段ねじ12より回動自在に連結されている。ここで、調節ナット9が係合する溝カム7aは、中押さえ29が上下往復運動の下死点にあるときに、段ねじ12の軸心を中心とした円弧の一部となるように形成されている。つまり、上軸2の角度が中押さえ29を下死点に移動させる位相のときにカム溝7aにおける第1リンク8の位置調節を行うことで、中押さえ29の下死点位置を不動状態のままストローク調節を行うことができる。
なお、かかる機械的なストローク調節機構は、ミシンの出荷前段階で予め規定のストロークに設定するためのものであり、縫製の使用時に任意のストロークに調節するためのものではない。
実使用時におけるストローク調節は、後述するソフトウェアに基づく処理・制御により実施される。
【0026】
そして、第2リンク11の一端部は、後述する位置決めリンク13に軸支されている。第2リンク11の一端部が、位置決めリンク13に軸支されることで、通常の縫製時に中押さえ29が上下動を行う際には、引っ張りばね16の弾性力により第2リンク11の一端部が規制部材19に押し当てられた状態を維持する。そして、中押さえ29が布地の踏みつけ或いは何かに引っかかって予定された下死点位置まで下降できないような場合に、引っ張りばね16の弾性力に抗して位置決めリンク13が回動を行い、第2リンク11の一端部の支点が引っ張りばね16に抗して下降することで中押さえ29を上方に逃がすことが可能となっている。これにより、中押さえ上下動機構M1の破損が防止される。
【0027】
第2リンク11の他端部は、図5に示すように、第3リンク20の一端部に段ねじ21により回動自在に連結されている。第3リンク20の他端部には、第4リンク22の一端部が段ねじ23により第3リンク20の長手方向に対して直列となるように回動自在に連結されている。そして、本実施形態では、この第3リンク20と第4リンク22とで中押さえリンク部材24が構成されている。
第4リンク22の他端部には、リンク中継板25が段ねじ26により連結されている。リンク中継板25には中押さえ棒抱き27が固定されており、中押さえ棒抱き27には上下方向に延びる中押さえ棒28が保持されている。中押さえ棒28の下端部には、縫製時に布地を針板110側に押さえ付ける中押さえ29が取り付けられている。中押さえ棒28の上端部には押圧バネ30が設けられており、ボルト31及びナット32により中押さえ棒抱き27に取り付けられている。押圧バネ30は、中押さえ29が縫製時に縫い針108と同期して上下動を行う際に、中押さえ29を常時下方に押圧している。
そして、本実施形態では、第1リンク8、第2リンク11、第3リンク20、第4リンク22等により、中押さえ上下動機構M1が構成されている。
【0028】
段ねじ23は、角駒33及び案内部材34と共に第3リンク20と第4リンク22とを連結している。すなわち、第4リンク22の正面側には案内部材34が設けられ、この案内部材34の正面側には角駒33が設けられており、第3リンク20、第4リンク22、角駒33及び案内部材34が一つの段ねじ23で連結されている。
【0029】
案内部材34は、略F字状の板材であり、上端部34tが段ねじ35によりミシン筐体(ミシンフレーム102)に回動自在に取り付けられている。案内部材34の下端部近傍には、上下方向に長尺な長孔34aが形成されている。この長孔34aは、内側に角駒33がスライド可能に嵌めこまれており、案内部材34は、第3リンク20と第4リンク22の連結部Pを中押さえ29の上下方向D1に移動可能とし、かつ、第3リンク20と第4リンク22の直列方向D2を横切る方向D3への移動を規制している。
【0030】
また、図5に示すように、案内部材34には、当該案内部材34を第3リンク20と第4リンク22の直列方向D2を横切る方向D3に移動させる移動リンク36の一端部が、段ねじ37により長孔34aの上部近傍に回動自在に連結されている。移動リンク36の他端部には偏心カム38が連結されており、この偏心カム38には可変軸39の一端部が連結されている。
可変軸39の他端部は、図4に示すように、ベアリング40、かさ歯車41を介して中押さえモータ42に連結されている。つまり、中押さえモータ42の駆動が、可変軸39、偏心カム38、移動リンク36の順に伝達され、移動リンク36が案内部材34を移動させるようになっている。
中押さえモータ42は、正逆方向に回動自在であるとともに、その回動量及び駆動のタイミングが制御装置1000により制御可能となっている。
そして、中押さえモータ42、移動リンク36と案内部材34と角駒33等が、ミシンモータ2aによる中押さえ29の上下動の上死点位置と下死点位置の高さを上下方向に推移させる中押さえ高さ調節機構M4として機能する。
【0031】
位置決めリンク13は、その中央部近傍で段ねじ14によりミシン筐体としてのミシンフレーム102に回動自在に取り付けられ、段ねじ14の位置は、中押さえ29が下死点にあるときの段ねじ12の位置と一致するようになっている。
位置決めリンク13の一端部は、ミシン面部側に向かって略コ字状に折り返されており、折り返された先端部にはばね掛13aが形成されている。本実施形態における位置決めリンク13は、その一端のばね掛け13aが、当該位置決めリンク13の回動中心である段ねじ14付近まで折り返されており、回動中心からばね掛け13aまでの距離が短くなるように形成されている。ばね掛け13aには引っ張りばね16の一端(上端)が連結されており、引っ張りばね16の他端(下端)は、ミシンフレームに固定されているばね掛15に連結されている。
引っ張りばね16は、ばね掛13aが形成されている位置決めリンク13の一端部を下方に引き下げるように付勢する。すなわち、引っ張りばね16は、第2リンク11における第3リンク20との接続部位が反力を受けた場合に、中押さえ29による踏みつけの発生により上方への反力を受けた場合に、その接続部位を下方に引き下げるように付勢する。つまり、引っ張りばね16と位置決めリンク13とが、中押さえ29の下降動作阻害時に中押さえ上下動機構M1に対する過剰負荷回避用の逃げ動作を可能とすると共に逃げ動作の際に中押さえ29を針板110側に付勢する付勢機構M2として機能する。そして、引っ張りバネ16は過剰負荷回避用の押さえバネとして機能する。
なお、付勢機構M2は、位置決めリンク13が第2リンク11に連結されることによって中押さえ上下動機構M1に接続されている。
【0032】
位置決めリンク13の他端部にはストッパ17が連結されており、第2リンク11の一端部と位置決めリンク13の他端部とが一つの段ねじ18によって連結されている。また、ストッパ17は、段ねじ14で位置決めリンク13と共にミシンフレーム102に回動自在に取り付けられている。ストッパ17の一端部17aの上方には、当該ストッパ17の一端部の上方への移動を規制するように規制部材19が設けられている。なお、この規制部材19は、ミシンフレーム102の一部で代用してもよい。
【0033】
図4に示すように、かさ歯車41には、かさ歯車43が歯合されており、中押さえモータ42の駆動を可変軸39の軸方向と直交する方向D4に出力することができるようになっている。かさ歯車43の後端にはベアリング44、中押さえ昇降カム45等が同軸上に連結されている。
【0034】
中押さえ昇降カム45は、軸方向端面に図示しない溝を有する溝カムである。
中押さえ昇降カム45は、その溝がカム部となっており、当該中押さえ昇降カム45の回動範囲の半分は、回動中心から溝までの距離がほぼ同一の円弧状に形成され(以下、維持部という)、残る半分は、回動中心から溝までの距離が、その維持部における回動中心から溝までの距離よりも大きく、かつ、滑らかに変化する形状(以下、変化部という)となっている。
この中押さえ昇降カム45は、中押さえ29を縫製終了後の退避位置に上昇させる中押さえ上げ部材46の一端部46aを上下に昇降させるものであり、当該中押さえ昇降カム45の溝の内部には、中押さえ上げ部材46の他端部に設けられた円筒状のコロ47が摺動自在に嵌合されている。そして、コロ47が中押さえ昇降カム45の維持部に沿って移動する際には、中押さえ上げ部材46の一端部46aは昇降しないが、コロ47が中押さえ昇降カム45の変化部に沿って移動する際には、中押さえ上げ部材46の一端部46aが昇降するようになっている。
このような溝カムである中押さえ昇降カム45の図示しない溝の内側にはコロ47を介して押さえ上げ部材46の他端部が係合しているので、中押さえ昇降カム45が回転を行わない限り中押さえ上げ部材46は揺動を行うことがなく、一定の状態を維持することが可能となっている。そして、中押さえ昇降カム45、中押さえ上げ部材46及びコロ47により、中押さえ退避機構M3が構成されている。
【0035】
中押さえ上げ部材46は、その中腹部で軸部材すなわちピン48によりミシンフレーム102に回動自在に取り付けられて支持されている。かかる中押さえ上げ部材46は、その一端部46aが中押さえ棒抱き27の下方に位置するように設けられており、コロ47が中押さえ昇降カム45の変化部に沿って移動し、中押さえ上げ部材46の一端部46aが上昇することで中押さえ棒抱き27を上昇させ、中押さえ29を退避位置に上昇させることができるようになっている。
【0036】
(縫製時における中押さえの動作)
次に、上記構成を有する中押さえ装置1の中押さえ上下動機構M1の動作について説明する。
ミシンモータ2aの駆動により主軸2を回転させて偏心カム3を回動させると、接続リンク4の先端は主軸2の軸線に略直交する方向(第3リンク20と第4リンク22の直列方向D2に対して横切る方向D3)に揺動し、接続リンク4に連結された揺動軸抱き5も同方向に揺動する。その揺動軸抱き5が揺動することにより、揺動軸6も揺動するため、第1リンク8の一端部が揺動支点となって第1リンク8の他端部が揺動軸6の軸線に略直交する方向(第3リンク20と第4リンク22の直列方向D2に対して横切る方向D3)に揺動する。第1リンク8の他端部の揺動に伴い、第2リンク11の他端部は第3リンク20と第4リンク22の直列方向D2に揺動し、第2リンク11の他端部に連結された第3リンク20及び第4リンク22は、その直列方向(上下方向)D2に揺動する。第3リンク20及び第4リンク22の揺動に伴い、第4リンク22に連結された中押さえ棒28は上下方向D1に沿って下方に移動するため、中押さえ29が上下方向に移動する。また、主軸2の回転により縫い針108が上下動するので、その縫い針108の上下動と連動するように中押さえ29は上下動する。
なお、以下の説明では主軸2の角度が0°のときに縫い針108及び中押さえ29が上死点に位置し、主軸2の角度が180°のときに縫い針108及び中押さえ29が下死点に位置するものとする。
【0037】
(中押さえ装置による中押さえの高さの調節動作)
次に、上記構成を有する中押さえ装置1の中押さえ高さ調節機構M4による中押さえ29の高さの調節動作について説明する。
中押さえモータ42の駆動は、かさ歯車41、ベアリング40を介して可動軸39に伝達され、可動軸39は回動を始める。可動軸39の回動により、偏心カム38も回動し、移動リンク36は、可動軸39の軸線に略直交する方向(第3リンク20と第4リンク22の直列方向D2に対して横切る方向D3)に揺動する。移動リンク36の揺動により、案内部材34は第3リンク20と第4リンク22の直列方向D2に対して横切る方向D3に揺動する。
このとき、図6(a)、(b)に示すように、案内部材34の長孔34aで連結された第3リンク20と第4リンク22の連結部Pの段ねじ23(角駒33)は、そのねじ部分が長孔34aによって、第3リンク20と第4リンク22の直列方向D2に対して横切る方向D3への移動が規制されているため(図6(a)参照)、揺動により伝達される力を逃がす場所が無くなり、段ねじ23(角駒33)は長孔34aに沿って上方に移動し、段ねじ23(角駒33)の案内部材34に追随した移動に伴って、直列に並んで連結されていた第3リンク20と第4リンク22同士がなす角度が変化し、中押さえリンク部材24は、略く字状になる(図6(b)参照)。中押さえリンク部材24が略く字状になると、中押さえ29は上下方向D1に沿って上方に移動する。これにより、中押さえ29の針板110からの中押さえ29の高さを調節することができる。
このように、中押さえ高さ調節機構M4は、中押さえモータ42を駆動源として、ミシンモータ(中押さえ上下動機構M1)による中押さえ29の上死点位置及び下死点位置を含む上下動ストローク全域について中押さえ上下動機構M1とは独立した動作により中押さえ29を上下方向に推移させることが可能となっている。
ここで図16は、中押さえ上下動機構M1の溝カム7aに対する第1リンク8の固定位置を調整して中押さえ上下移動量Vを3段階に変更した場合と、中押さえ高さ調節機構M4の中押さえモータ42を回転して、中押さえの下死点位置の高さh2を3段階に変更した場合を組合せて、9種類の中押さえ移動状態N1〜N9を説明する図である。
N1〜N3は前記中押さえ上下移動量VをV=0とし、N4〜N6は同V=0.5maxとし、N7〜N9は同V=maxとした場合であり、N1、N4、N7は中押さえの下死点位置h2をh2=0とし、N2、N5、N8はh2=0.5maxとし、N3、N6、N9はh2=maxに変化した場合を示す。
このとき、本願中押さえ機構は、溝カム7aに対する第1リンク8の位置(中押さえ上下移動量V)を固定した状態で、中押さえモータ42の回転角度を変更して下死点位置の高さh2を移動しても、中押さえ上下移動量Vは変化することなく常に一定である。このため、中押さえモータ42の回転角度を変更して下死点位置の高さh2を変更することは、上死点位置の高さh1も同時に同一高さ変更するように中押さえ機構が設計されている。
【0038】
(ミシンの制御系:制御装置)
また、ミシン100は、図7に示すように、上述した各部、各部材の動作を制御するための動作制御手段としての制御装置1000を備えている。そして、制御装置1000は、縫製プログラム70a,ストローク算出制御プログラム70b及びストローク可変制御プログラム70cが格納されたプログラムメモリ70と、縫製パターンデータ71a及び各種の設定情報(図示略)を記憶した記憶手段としてのデータメモリ71と、プログラムメモリ70内の各プログラム70a,70b,70cを実行するCPU73とを備えている。
【0039】
また、CPU73は、インターフェイス74aを介して操作パネル74に接続されている。かかる操作パネル74は、各種画面や入力ボタンを表示する表示部74bと表示部74bの表面に設けられその接触位置を検知するタッチセンサ74cとを有しており、各種情報の入出力手段として機能する。操作パネル74で用いられる入力ボタンや入力スイッチはいずれも、表示部74bで表示され、タッチセンサ74cで入力が検知されることで押下式のボタンやスイッチと同等に機能するものである。
また、操作パネル74は、中押さえ29の上下動ストロークの大きさを任意に設定する機能を有し、ストローク設定手段としても機能する。
【0040】
また、CPU73は、インターフェイス75を介して、ミシンモータ2aを駆動するミシンモータ駆動回路75bに接続され、ミシンモータ2aの回転を制御する。なお、ミシンモータ2aはエンコーダ2bを備えており、ミシンモータ2aを駆動するミシンモータ駆動回路75bにおいて、エンコーダ2bからミシンモータ2aの一回転ごとに出力されるZ相信号が、インターフェイス75を介してCPU73に入力され、この信号によって、CPU73は主軸2の一回転における原点(0°位置)を認識できる。また、エンコーダ2bからは、ミシンモータ2aの回転角度における1°ごとに出力されるA相信号が、インターフェイス75を介してCPU73に入力され、前述したZ相信号を基準にA相信号のパルス数をカウントして、CPU73は主軸2の現在回転角度を認識できる。
なお、ミシンモータ2aには、例えば、サーボモータを適用することができる。
【0041】
また、CPU73は、インターフェイス76及びインターフェイス77を介して、縫製すべき布地を保持する保持枠111に備えられるX軸モータ76a及びY軸モータ77aをそれぞれ駆動するX軸モータ駆動回路76b及びY軸モータ駆動回路77bが接続され、保持枠111のX軸方向及びY軸方向の動作を制御する。
【0042】
また、CPU73は、インターフェイス78を介して、ミシンモータ2aによる中押さえの上下動の上死点位置と下死点高さ位置を調節する中押さえモータ42を駆動する中押さえモータ駆動回路78bが接続され、中押さえ機構1の動作を制御する。なお、中押さえモータ42の出力軸にはモータ軸角度検出手段としてのエンコーダ81が設けられており、中押さえモータ42を駆動する中押さえモータ駆動回路79bにおいて、エンコーダ81から中押さえモータ42の一回転ごとに出力されるZ相信号が、インターフェイス75を介してCPU73に入力され、この信号によって、CPU73は中押さえモータ42の出力軸の一回転における原点(0°位置)を認識できる。また、エンコーダ81からは、中押さえモータ42の回転角度における1°ごとに出力されるA相信号が、インターフェイス78を介してCPU73に入力され、前述したZ相信号を基準にA相信号のパルス数をカウントして、CPU73は中押さえモータの出力軸の現在回転角度を認識できる。
【0043】
また、CPU73は、インターフェイス79を介して、布押さえ(図示省略)を上下に移動する布押さえモータ79aを駆動する布押さえモータ駆動回路79bが接続され、布押さえの動作を制御する。
なお、X軸モータ76a及びY軸モータ77a、中押さえモータ42、布押さえモータ79aには、例えば、ステッピングモータを適用することができる。
【0044】
上記データメモリ71に記憶された縫製パターンデータ71aは、図8に示すように、縫製を行う際の運針パターンを実行するために、保持枠111を移動させる際のX方向移動量、Y方向移動量のデータ(針落ち位置を示す縫い目データ)を示す縫いコマンド、終了コマンド及び中押さえ29の下死点高さを定める中押さえ高さコマンド、糸切りコマンド及び終了コマンドが組み合わされている。
そして、並び順に従って各種コマンドが実行されることで任意のパターン(模様)による縫いが実行される。
図8に示す縫製パターンデータにおいて、「縫い」のコマンドでは、保持枠111を移動させる際のX方向移動量、Y方向移動量のデータ(パラメータ)が第一設定値と第二設定値とに記録され、X軸モータ76aとY軸モータ77aの回転駆動量がこれらにより決定される。
また、「中押さえ高さ」のコマンドでは、中押さえモータ42により定められる中押さえ29の下死点高さが第一設定値に記録され、縫製時における中押さえモータ42の軸角度がこれにより決定される。
また、「糸切り」は糸切り装置(図示省略)を作動させるコマンド、「終了」はミシン100の布押さえモータ79aを駆動させて布を解放させるコマンドである。
なお、図8のX移動量、Y移動量、中押さえ高さの数値データにおける表記は10倍表記であり、例えば、「15」は、「1.5mm」を示している。
【0045】
(縫製プログラムによる縫製処理)
プログラムメモリ70に格納された縫製プログラム70aは、上記縫製パターンデータ71aの各コマンドを順番に読み出して、コマンドに応じて制御対象を特定し、コマンド内の設定数値に基づいてミシンモータ2a、X軸モータ76a、Y軸モータ77a、中押さえモータ42の動作制御を行い、縫製パターンデータ71aに基づく縫製を実行させるプログラムである。
例えば、上記図8の縫製パターンデータ71aの場合には、ペダルRの入力により縫製パターンデータにおける第一針目に関するデータである「中押さえ高さ」、「縫い」のコマンド及びその設定値が読み込まれ、これらに基づいて、中押さえモータ42、X軸モータ76a及びY軸モータ77aが各々の設定値に応じた動作量で駆動が行われる。また、最初の「縫い」コマンドの読み込みによりミシンモータ2aの駆動が開始される。
そして、ミシンモータ2aの駆動開始以降は、エンコーダ2bのカウントにより主軸角度が監視され、所定の主軸角度で縫製パターンデータ71aにおける毎針のコマンドの読み込みが行われると共に、コマンド毎に定められた所定の主軸角度で制御対象の動作が実行される。
【0046】
(ストローク取得制御プログラムによる処理)
プログラムメモリ70に格納されたストローク取得制御プログラム70bは、非縫製時において、中押さえ上下動機構M1による中押さえ29の上下動ストローク(調節腕7の溝カム7aに対する第1リンク8の一端部の取付位置を調節して得られた調節後の上下動ストローク)を計測して取得するためのプログラムである。
かかるストローク取得制御プログラム70bによりCPU73が行う制御について図9〜図10に基づいて詳細に説明する。
図9(A)は中押さえ上下動機構M1による上下動ストロークにおいて中押さえ29を上死点位置とする主軸角度でミシンモータ2aを固定して中押さえ高さ調節機構M4を作動させた場合の動作状態を示した模式図、図9(B)は下死点位置でミシンモータ2aを固定して中押さえ高さ調節機構M4を作動させた場合の動作状態を示した模式図であり、図10は中押さえ高さ調節機構M4の押圧バネ30が中押さえモータ29にもたらすトルク負荷を説明するための模式図である。なお、図9では各構成の重なりを避けるために便宜上、リンク20,22の屈曲方向と中押さえモータ42の配置を左右逆にしているが、以下の原理説明には何ら影響はない。
【0047】
ストローク取得制御プログラム70bを実行すると、まず、CPU73は、ミシンモータ2aを回転させて中押さえが上死点となる主軸角度(主軸角度0°つまり縫い針の上死点と同じ)に移動し停止する。また、中押さえモータ42は予め定められた設定可動範囲内において最も中押さえ29を上昇させる軸角度(最上位置角度)で停止させておく(図9(A)実線参照)。
そして、ミシンモータ2aの停止状態で中押さえモータ42のみを駆動させて中押さえ9を下降移動させ、当該中押さえ29が針板110の上面に当接した時の中押さえモータ42の動作量からミシンモータ2aによる中押さえ29の上死点位置の高さh1を算出する(図9(A)二点鎖線参照)。
【0048】
なお、中押さえ29の針板110への当接状態の検出は、以下のようにして行われる。まず、前提として、中押さえ高さ調節機構M4は、中押さえ上下動機構M1の二つのリンク20,22の連結位置に設けられた角駒33を案内する案内部材34の傾きを左右に変化させることで、リンク20,22の姿勢に変化を与えると共に上下動を伝達する際のリンク20と22との間の屈曲角度を可変調節し、連結されたリンク20,22の両端部間距離を伸縮させて中押さえ29の下死点を上下に移動させている。そして、中押さえ高さ調節機構M4では、案内部材34の回動動作を偏心カム38を介して中押さえモータ42により行っている。
かかる構造において、中押さえ29は、図10に示すように、押圧バネ30により常に下方に矢印Y1の押圧力で押圧されているため、屈曲状態にあるリンク20,22は真っ直ぐに伸びるようにバネ圧を受けることとなり、その結果、リンク部材20は矢印Y2のトルクを受け、角駒33は矢印Y3の方向に引っ張られ、案内部材34は矢印Y4の方向に回動力が付与され、移動リンク36矢印Y5の方向に引っ張られ、偏心カム38を介して中押さえモータ42の出力軸は矢印Y6の方向に負荷トルクT1が付与される。
一方、中押さえモータ42は、押圧バネ30に基づくトルクT1と同じ回転方向にトルクT2で駆動を行い、その際のトルクの合計が極力小さくなるように、トルクT2が設定されている。即ち、トルクT1+T2は、中押さえ29の下降による被縫製物への当接時に、当接による反力に抗しない大きさとなるように設定する(当接時には第2リンク11に連結された引っ張りばね16が伸びを生じて、中押さえモータ42のトルクT2と逆方向のトルクをモータ42の出力軸に付与することとなるが、少なくとも、この張りばね16に基づくトルクTrよりもトルクT1+T2が小さくなるようにT2は設定される(Tr>T1+T2))。これにより、針板110に中押さえ29が当接すると、中押さえ29は針板110により下降移動を妨げられるので、それまで回転状態にあった中押さえモータ42の出力軸の回転停止がエンコーダ81に検出されることとなる。かかる回転状態の変化を監視することで中押さえ29の針板110への当接を検出することを可能としている。
なお、上述のようなトルクを低く設定する制御を行わず、中押さえモータ42のトルクフィードバックにおける電流の値を監視して、中押さえ29が針板110に当接することでフィードバック制御によるトルク上昇の発生を前記電流値から検出し、これにより中押さえ29による針板110への当接を検出しても良い。
【0049】
上記制御により中押さえ29の針板110への当接が検出されると、CPU73は、当接時の中押さえモータ42の軸角度をエンコーダ81から読み取り、中押さえモータ42による最上位置角度から検出角度までの回転角度量を算出する。そして、当該回転角度量から中押さえ29の下降移動距離を算出する。なお、中押さえモータ42の軸角度変化と中押さえ29の上下方向移動量との対応関係は、主軸角度(リンク11の回動端部がいずれの高さに位置するか)によって変化する。このため、主軸角度が0°における中押さえモータ42の軸角度と中押さえ29の上下移動量との関係を示す第一の中押さえモータ特性テーブル71bがデータメモリ71内に予め用意されている。CPU73は、当接時の中押さえモータ42の軸角度から第一の中押さえモータ特性テーブル71bに基づいて中押さえ29の下降移動距離を取得する。当該下降移動距離が、ミシンモータ2a(主軸角度)が中押さえの上死点位置であって中押さえモータ42が最上位置角度である場合における中押さえ29の高さh1となる。
【0050】
上記処理により、ミシンモータ2aによる主軸角度が中押さえ上死点位置にあるときの中押さえ29の高さh1が求められると、CPU73は、ミシンモータ2aを回転させて主軸角度が中押さえが下死点となる角度(主軸角度180°つまり縫い針の下死点と同じ)に移動し停止する。また、中押さえモータ42は予め定められた可動範囲内において最も中押さえ29を上昇させる軸角度(最下位置角度)で停止させておく(図9(B)実線参照)。
そして、ミシンモータ2aの停止状態で中押さえモータ42のみを駆動させて中押さえ9を下降移動させ、当該中押さえ29が針板110の上面に当接した時の中押さえモータ42の動作量からミシンモータ2aによる中押さえ29の下死点位置の高さh2を算出する(図9(A)二点鎖線参照)。
即ち、前述した中押さえ29の上死点位置の高さh1を求めた場合と同じようにして中押さえ29下降による針板110への当接を検出すると、CPU73は、当接時の中押さえモータ42の軸角度をエンコーダ81から読み取り、中押さえモータ42による最上位置角度から検出角度までの回転角度量を算出する。そして、かかる回転角度量から中押さえ29の下降移動距離を算出する。当該下降移動距離が、ミシンモータ2a(主軸角度)が中押さえの下死点位置であって中押さえモータ42が最上位置角度である場合における中押さえ29の高さh2となる。
なお、前述したように、中押さえモータ42の軸角度変化と中押さえ29の上下方向移動量との対応関係は、主軸角度によって変化するため、この場合も、主軸角度が180°における中押さえモータ42の軸角度と中押さえ29の上下移動量との関係を示す第二の中押さえモータ特性テーブル71cをデータメモリ71内に予め用意する。CPU73は、当接時の中押さえモータ42の軸角度から第二の中押さえモータ特性テーブル71cに基づいて中押さえ29の下降移動量を取得する。
【0051】
そして、CPU73は、中押さえ29の上死点における高さh1から下死点における高さh2を減算し、中押さえ29のミシンモータ2aによる上下動におけるストローク(中押さえ上下移動量)Vを算出する(図16)。
以上のように、ストローク取得制御プログラム70bを実行することにより、CPU73は「ストローク取得制御手段」として機能することとなる。
【0052】
(ストローク取得制御プログラムに基づく動作制御)
ストローク取得制御プログラム70bに基づいてCPU73が実行する処理について図11に示すフローチャートに基づいて説明する。
ストローク取得制御は、例えば、操作パネル74において実行ボタンが押下されることで開始される。まず、CPU73は、中押さえモータ42をその可動範囲内における最上位置となる軸角度まで駆動させる(ステップS1)。次いで、ミシンモータ2aを針棒が上死点位置となる主軸角度(0°)まで駆動させる(ステップS2:図9(A)実線状態)。
かかる状態から中押さえモータ42を下降方向に駆動させ(ステップS3)、1ステップの駆動が行われるとエンコーダ81の出力を読み、中押さえモータ42の軸角度が停止したか否かを判定する(ステップS4)。そして、停止を生じていない場合にはステップS3に処理を戻し、停止を生じた場合には(図9(A)二点鎖線状態)、その時点での中押さえモータ42の軸角度をエンコーダ81により読み取り、当該軸角度から第一の中押さえモータ特性テーブル71bを参照して中押さえ29の高さh1を算出する(ステップS5)。
【0053】
次に、CPU73は、中押さえモータ42を再び最上位置となる軸角度に戻し(ステップS6)、ミシンモータ2aを針棒が下死点位置となる主軸角度(180°)まで駆動させる(ステップS7:図9(B)実線状態)。
そして、中押さえモータ42を下降方向に駆動させ(ステップS8)、1ステップの駆動が行われると、中押さえモータ42の軸角度が停止したか否かを判定し(ステップS9)、停止を生じていない場合にはステップS8に処理を戻し、停止を生じた場合には(図9(B)二点鎖線状態)、その時点での中押さえモータ42の軸角度をエンコーダ81により読み取り、当該軸角度から第二の中押さえモータ特性テーブル71cを参照して中押さえ29の高さh2を算出する(ステップS10)。
そして、針棒上死点位置における中押さえ29の高さh1から針棒下死点位置における中押さえ29の高さh2を減じてミシンモータ2aによる中押さえ29の上下動のストロークVの値を算出する(ステップS11)。
かかるストロークVの値はデータメモリ71内に記憶され、処理が終了する。
【0054】
(ストローク可変制御プログラムによる処理)
プログラムメモリ70に格納されたストローク可変制御プログラム70cは、縫製時において、縫い針と同期して行われる中押さえ29の上下動のストロークを任意の設定値とする動作制御を行うためのプログラムである。
かかるストローク可変制御プログラム70cによりCPU73が行う制御について図12及び図13に基づいて詳細に説明する。
図12はミシンモータ2aによる中押さえ29の算出ストローク(ストローク算出制御プログラム70bで取得されたストローク)よりも大きなストロークで上下動させるための原理説明のための概念図であり、図13は算出ストロークよりも小さなストロークで上下動させるための原理説明のための概念図である。各図において、L1はミシンモータ2aによる中押さえ29の算出ストローク、L2は中押さえモータ42による上下動変位、L3はミシンモータ2aと中押さえモータ42との協働による合成された上下動ストロークであり、縫製時には中押さえ29はこの合成された上下動ストロークで上下動を行う。
【0055】
中押さえ29の縫製時における合成された上下動ストロークの設定は、操作パネル74からの数値入力により行われる。設定された上下動ストローク(以下、「設定ストローク」とする)は、データメモリ71に記憶される。
算出ストロークに比して設定ストロークの方が大きい場合には図12の線図L2の高さ変化を生じ、設定ストロークの方が小さい場合には、図13の線図L2の高さ変化を生じるように中押さえモータ42は制御される。
即ち、中押さえモータ42に対して、
Y=(−(b−a)/2)×sin(X−90°)+offset …(1)
となるように駆動制御が行われる。ここで、Yは中押さえモータ42により中押さえ29に付与される中押さえ29の上下動変位(針板上面高さを0とする)であり、Xは主軸角度、bは設定ストローク、aは算出ストローク、offsetは調整値である。
上式(1)では、sin(X−90°)に(−(b−a)/2)が乗じられているので、算出ストロークに比して設定ストロークの方が大きい場合には図12の線図L2の高さ変化を生じ、設定ストロークの方が小さい場合には、図13の線図L2の高さ変化を生じることとなる。
また、中押さえ29は、前述したように、縫製時には、主軸角度180°において、縫製パターンデータ71aに定める中押さえ高さコマンドに基づく下死点高さとなる軸角度に制御する必要がある。従って、設定下死点高さをcとすると、offset=((b−a)/2)+cに設定される。
【0056】
CPU73は、主軸角度Xに応じて式(1)に基づいて中押さえ29の上下動変位Yを算出し、当該上下動変位が示す高さとなる軸角度を算出し、中押さえモータ42の制御を実行する。
ここで、前述したように、中押さえ29の高さと中押さえモータ42の軸角度との対応関係は、主軸角度の変化に影響されるので、主軸角度が所定角度変化するごとに上式(1)により中押さえモータ42の軸角度を算出する場合には、主軸角度の所定角度変化ごとの中押さえ29の高さと中押さえモータ42の軸角度との対応関係を示す中押さえモータ特性テーブルを用意して、それぞれのテーブルに基づいて中押さえモータ42の軸角度を算出することが望ましいが、少なくとも、主軸角度の0°と180°とにおいて中押さえ29が予定された高さとなれば足りるので、この制御装置1000では、中押さえモータ42の軸角度を算出する主軸角度間隔は微小角度としつつ、主軸角度270〜90°の範囲では前述した第一の中押さえモータ特性テーブル71bを参照し、主軸角度90〜270°の範囲では前述した第二の中押さえモータ特性テーブル71cを参照して中押さえモータ42の軸角度を求めている。
以上のように、ストローク可変制御プログラム70cを実行することにより、CPU73は「ストローク可変制御手段」として機能することとなる。
【0057】
(ストローク可変制御プログラムに基づく動作制御)
ストローク可変制御プログラム70bに基づいてCPU73が実行する処理について図14及び図15に示すフローチャートに基づいて説明する。
まず、図14に示すように、縫製開始前に、操作パネル74から入力された中押さえ29のストローク値が設定ストロークbとしてデータメモリ71に記憶される(ステップS21)。そして、CPU73は、既に求められた算出ストロークaを読み出して(ステップS22)、設定ストロークbから算出ストロークaを減算し、中押さえモータ42による中押さえ29のストロークであるb−aの値がデータメモリ71に記憶される(ステップS23)。
【0058】
そして、図15に示すように、操作パネル74において縫製画面が表示されている状態において、ペダルRが押下されると(ステップS31)、前述した縫製プログラム70aによる縫製制御と並行して、ミシンモータ2aのエンコーダ2bの出力を読んで、予め定められた主軸角度間隔に基づいて動作角度か判定を行い(ステップS32)、動作角度の場合には前述の式(1)に基づいて中押さえモータ42による中押さえ29の上下動変位を算出し(ステップS33)、さらに、現在の主軸角度に対応する中押さえモータ特性テーブルから中押さえモータ42の指令角度を算出し駆動させる(ステップS34)。
次いで、縫製パターンデータ71aによる縫製の終了か否かを判定し(ステップS35)、終了ではない場合にはステップS32に処理を戻し、縫製の終了の場合には、ステップS31に処理を戻して、次の縫製の開始のためのペダルRの入力待ちとなる。
【0059】
(実施形態の効果)
ミシン100の制御装置1000は、ストローク取得制御プログラム70bにより、ミシンモータ2aによる中押さえ29の上死点位置と下死点位置との各々において、中押さえモータ42によるその可動範囲における最上位置から中押さえ29を針板110に当接するまでの下降動作量を検出し、ミシンモータ2aによる上死点位置と下死点位置とにおける各下降動作量に基づく中押さえ高さの差からミシンモータ2aによる上下動のストロークaを算出するので、手作業による中押さえ29の高さ測定を不要とし、モータ制御によって中押さえ29の上下動ストロークを求めることが可能となるため、作業負担を飛躍的に軽減し、迅速にストロークを求めることが可能となる。また、ミシンの組み付け後のいつでもストロークを求めることが可能となる。
【0060】
さらに、ミシン100の制御装置1000は、ストローク可変制御プログラム70bにより、縫製時において、ミシンモータ2aに同期して、設定ストロークbと算出ストロークaの差と等しくなるように中押さえモータ42を制御することで、ミシンモータ2aと中押さえモータ42との協働により設定ストロークbで中押さえ29を上下動させるので、任意の設定ストロークを実現することが可能となり、手作業による部品の組み直しによるストロークの調節作業を不要とし、作業負担を飛躍的に軽減することが可能となる。また、モータ制御によってストローク調節を行うので、縫製中であってもストロークの調節を行うことができ、縫い品質の向上を図ることも可能となる。
【0061】
(その他)
上記ミシン100では、設定ストロークを縫製開始前に一つのみ設定して縫製中は当該単一のストロークのみで動作を中押さえ29の上下動を行うこととしたが、設定ストロークは縫製パターンデータ71aに記憶させても良い。その場合、ストロークの変更を行う針数に対応させて記憶させ、さらには、複数の針数でそれぞれ個別にストローク設定を行うことにより、一連の縫製において、複数回のストロークの調節を行っても良い。
【0062】
また、ストローク可変制御において、中押さえモータ42の駆動は三角関数に従って振幅動作を行うように制御させているが、針棒下死点の主軸角度(180°)で設定中押さえ高さcとなり、針棒上死点の主軸角度(0°)で設定中押さえ高さに設定ストロークと検出ストロークの差を加えた(b−a+c)の高さとなり、その間は直線的な勾配により中押さえ高さを変化させるように中押さえモータ42の制御を行っても良い。また、直線的に限らず、徐々なる変化或いは段階的な変化であっても良い。
【0063】
また、前述したが、ストローク取得制御における中押さえ29の針板110への当接を検出する際には、中押さえモータ42のフィードバック電流の変化から検出しても良い。その場合には、前述した図11のストローク取得制御の処理において、ステップS4とステップS9の処理について、偏差を判定するのではなく、フィードバック電流の上昇(トルク上昇)の発生の有無を判定し、発生している場合に中押さえ29が針板110へ当接しているものと判定する。
【0064】
また、上記ミシン10では、中押さえモータ42の軸角度から中押さえ29の高さを求める或い中押さえ29の高さから中押さえモータ42の軸角度を求めるために、複数の主軸角度に対応した特性テーブル71b、71cを参照しているが、主軸角度、主軸から中押さえ29までの動作伝達を行う各部材の寸法や配置及び向きが分かれば、これらに加えて中押さえモータ42の軸角度が分かれば、中押さえ29の高さを算出することは可能であり、また、逆に、中押さえ29の高さが分かれば、中押さえモータ42の軸角度も算出することが可能である。つまり、主軸角度ごとのテーブルを使用せず、上記必要なパラメータから、中押さえ29の高さ又は中押さえモータ42の軸角度を算出しても良いことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明に係るミシンを示す斜視図である。
【図2】ミシンの保持枠や中押さえの近傍を示す拡大斜視図である。
【図3】ミシンの中押さえ装置を示す側面図である。
【図4】中押さえ装置の分解斜視図である。
【図5】中押さえ装置の分解斜視図である。
【図6】中押さえ装置の中押さえの高さ調節に関する説明図であって、図6(a)は下死点を下方に調節した場合を示し、図6(b)は下死点を調節に当接した場合を示す。
【図7】本発明に係るミシンの制御装置を示すブロック図である。
【図8】縫製パターンデータのデータ構成を示す説明図である。
【図9】図9は(A)は中押さえ上下動機構による上下動ストロークにおいて中押さえを上死点位置とする主軸角度でミシンモータを固定して中押さえ高さ調節機構を作動させた場合の動作状態を示した模式図、図9(B)は下死点位置でミシンモータを固定して中押さえ高さ調節機構を作動させた場合の動作状態を示した模式図である。
【図10】図10は中押さえ高さ調節機構の押圧バネが中押さえモータにもたらすトルク負荷を説明するための模式図である。
【図11】ストローク取得制御プログラムに基づいてCPUが実行する処理を示すフローチャートである。
【図12】ミシンモータによる中押さえの算出ストロークよりも大きなストロークで上下動させるための原理説明のための概念図である。
【図13】算出ストロークよりも小さなストロークで上下動させるための原理説明のための概念図である。
【図14】ストローク可変制御プログラムに基づいてCPUが実行する処理の内で縫製開始前の処理を示すフローチャートである。
【図15】ストローク可変制御プログラムに基づいてCPUが実行する処理の内で縫製開始からの処理を示すフローチャートである。
【図16】中押さえ上下移動量を3段階に変更しながら、それぞれの段階で中押さえ下死点位置の高さを3段階に変更したときの中押さえの移動ストロークを示す説明図である。
【符号の説明】
【0066】
1 中押さえ装置
2 主軸
2a ミシンモータ
2b エンコーダ(主軸角度検出手段)
16 引っ張りばね
20 第3リンク
22 第4リンク
29 中押さえ
30 押圧バネ
33 角駒
34 案内部材
42 中押さえモータ
70a 縫製プログラム
70b ストローク取得制御プログラム
70c ストローク可変制御プログラム
73 CPU(ストローク取得制御手段、ストローク可変制御手段)
74 操作パネル(ストローク設定手段)
81 エンコーダ(モータ軸角度検出手段)
100 電子サイクルミシン
110 針板
1000 制御装置(縫製パターン設定手段、中押さえ高さ切替手段)
a 検出ストローク
b 算出ストローク
M1 中押さえ上下動機構
M2 付勢機構
M3 中押さえ退避機構
M4 中押さえ高さ調節機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミシンモータにより縫い針を上下動させる針上下動機構と、
前記ミシンモータにより回転駆動される主軸の角度を検出する主軸角度検出手段と、
縫製時に被縫製物の浮き上がりを防止する中押さえと、
前記ミシンモータから動力を得て、前記縫い針の上下動に同期して前記中押さえに上下動させる中押さえ上下動機構と、
中押さえモータを駆動源として、前記ミシンモータによる中押さえの上下動の上死点位置と下死点位置の高さを上下方向に推移させる中押さえ高さ調節機構とを備えるミシンにおいて、
前記ミシンモータによる前記中押さえの上死点位置と下死点位置との各々において、前記中押さえモータによる中押さえの最上位置から針板に当接するまでの下降動作量を検出し、前記ミシンモータによる上死点位置と下死点位置とにおける各下降動作量の差から前記ミシンモータによる上下動のストロークを算出するストローク取得制御手段を備えることを特徴とするミシン。
【請求項2】
前記中押さえの縫製時における上下動ストロークを設定するストローク設定手段と、
縫製時において、前記ミシンモータによる中押さえの上下動に同期して当該中押さえに上下動を生じるように前記中押さえモータを駆動すると共に、当該中押さえモータの上下動ストロークを前記ストローク設定手段による設定ストロークと前記ストローク取得制御手段により算出された算出ストロークの差と等しくなるように中押さえモータを制御して前記設定ストロークで中押さえを上下動させるストローク可変制御手段とを備えることを特徴とする請求項1記載のミシン。
【請求項3】
前記ストローク取得制御手段による前記中押さえの下降制御における針板への当接は、前記中押さえモータのフィードバック電流の変化から検出することを特徴とする請求項1又は2記載のミシン。
【請求項4】
前記中押さえモータにその出力軸の角度を検出するモータ軸角度検出手段を備え、
前記ストローク取得制御手段による前記中押さえの下降制御における針板への当接は、前記中押さえモータの出力軸の回転状態の変化から検出することを特徴とする請求項1又は2記載のミシン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−148550(P2010−148550A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−327120(P2008−327120)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(000003399)JUKI株式会社 (1,557)
【Fターム(参考)】