説明

メンバマウント及びその組付構造

【課題】従来に増して軽量でコストも安価な、内筒部材の内周面に位置決用の内周樹脂層を有し、且つその内周樹脂層が成形後において変形を生じるのを有効に防止可能なメンバマウントを提供する。
【解決手段】内筒部材56と、外筒部材58と、それらを連結するゴム弾性体60とを有するメンバマウント14において、内筒部材56の内周面に位置決孔としての内孔84Aを有する内周樹脂層74を、外周面に外周樹脂層76をそれぞれ積層形成してそれらを、周方向に等間隔で4個所に内筒部材56に形成した貫通の連結孔78の各孔内で樹脂連結部80にて互いに連結しておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は自動車のサスペンションメンバと車体とを弾性連結し、それらの間で防振作用するメンバマウント及びその組付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
サブフレーム等のサスペンションメンバは、サスペンションを取り付けるための車両の部分的な骨格部材で、サスペンションはこのサスペンションメンバを介して車体に組み付けられる。
一般にサスペンションメンバと車体とはメンバマウントにて弾性連結される。
ここでメンバマウントは、それらサスペンションメンバと車体との相対位置関係を正しく保つことと、サスペンションメンバを介して車体に伝達される懸架系の振動を遮断し、また逆に駆動力,制動力を車体に伝達する働きをなす。
またサブフレームの場合には、サスペンションに加えてエンジンやトランスミッション等も取り付けられ、この場合サブフレームと車体とを弾性連結するメンバマウントはエンジンからの振動も遮断作用する。
【0003】
一般にこの種メンバマウントは、下記特許文献1に開示されているように、剛性の内筒部材と、径方向に離隔した位置で内筒部材を取り囲む剛性の外筒部材と、それら内筒部材と外筒部材とを径方向に連結するゴム弾性体とを有する形態をなし、外筒部材においてサスペンションメンバに、また内筒部材において車体に固定され、以てそれらサスペンションメンバと車体とを弾性連結し、防振作用する。
【0004】
図7は、従来公知のメンバマウントの一例を示している。
図において200は車体側部材、202はサスペンションメンバとしてのサブフレーム(井型サブフレーム)、204はメンバマウント、206はアッパーストッパである。
メンバマウント204は、円筒形状をなす金属製の剛性の内筒部材208と、径方向に離隔した位置でこれを取り囲む円筒形状の金属製の剛性の外筒部材210と、それらを径方向に連結する状態に一体に加硫接着された円筒形状のゴム弾性体212とを有している。
【0005】
このメンバマウント204は、外筒部材210においてサブフレーム202に圧入固定され、また内筒部材208において締結ボルト218にて車体側部材200に固定されている。
詳しくは、内筒部材208の内側には内孔214が形成されていて、そこに車体側部材200から位置決部材を兼ねた円筒部を有する位置決ナット216が図中下向きに内挿され、そして図中下側から上向きに内筒部材208に挿入された締結ボルト218が、位置決ナット216の中心部の雌ねじ孔220にねじ込まれることで、内筒部材208が締結ボルト218と位置決ナット216とで車体側部材200に締結固定されている。
【0006】
尚、内筒部材208の外周面には、全周に亘って径方向外方に突出する突出部222が形成されており、この突出部222の形成部分において、内筒部材208が軸方向において部分的に厚肉部224を成している。
突出部222は、ゴム弾性体204の軸直角方向のばね硬さを硬くし、車両の走行安定性を高める等の目的で設けられているもので、その全体がゴム弾性体212の内部に埋り込んでいる。
【0007】
上記位置決ナット216はメンバマウント204、具体的にはその内筒部材208を車体側部材200に対して位置決めする働きを有する部材で、外周形状が円形をなす円筒部217を有しており、溶接等にて車体側部材200に予め固定されている。
【0008】
従来においては、このメンバマウント204の内筒部材208として鍛造品が用いられていた。
内筒部材208の内周面の形状、即ち内孔214の形状及び外周面の形状の形状出しは、内筒部材208の鍛造成形の際に同時に行われる。
【0009】
しかしながらこのメンバマウント204において、鍛造品から成る金属製の内筒部材208は必然的に重量が重くなり、また内筒金具208を1個ずつ鍛造し成形することとなるため加工コストが高くなり、ひいてはメンバマウント204のコストを高めてしまうといった問題があり、その改善が望まれていた。
【0010】
ところで、サブフレーム202をメンバマウント204を介して車体側部材200に連結するには、予めメンバマウント204をサブフレーム202に固定しておき、そしてその状態でメンバマウント204を、詳しくは内筒部材208を車体側部材200に固定して、サブフレーム202と車体側部材200とを連結状態とする。
その際、サブフレーム202は車体側部材200に対し、予め定めた正しい相対位置関係をもって連結することが必要である。
【0011】
その場合、通常図8に示すサブフレーム202の4個所のコーナ部に配置される4つのメンバマウント204の全ての内筒部材208の内孔214を、車体側部材200の対応する4個所の位置決ナット216に対して全周に亘り隙間無く嵌り合う、同一内径の円形の孔となしておくと、4つのメンバマウント204を予めサブフレーム202に装着した状態で、それらメンバマウント204を、内筒部材208の内部に位置決ナット216を内挿させる状態に車体側部材200に組み付けるといったことが実際上できなくなる。
4個所の位置決ナット216の軸心と、対応する4個所のメンバマウント204の内筒部材208の軸心との間には、通常位置誤差が生じているからである。
【0012】
そこで従来においては、4つのメンバマウント204の何れか、例えば図8中の位置Pに用いられるメンバマウント204については、内筒部材208の内孔を、位置決ナット216に全周に亘り丁度嵌り合う円形の内孔214Aとなしてこれを基準孔となし、また位置Pとは異なった位置Pのメンバマウント204については、内筒部材208の内孔を、短径を位置決ナット216に丁度嵌り合う寸法,長径をこれよりも寸法が大で位置決ナット216との間に遊隙形成可能な寸法の長穴形状の内孔214Bとなしてこれを副基準孔となし、更にこれらとは別の位置P,Pのメンバマウント204については、内筒部材208の内孔を、位置決ナット216に対し全周に亘り遊隙形成可能な孔径の大きな内孔214Cとなし、そして基準孔をなす円形の孔214Aに対し位置決ナット216を嵌め合せることで、サブフレーム202を位置Pにおいて車体側部材200に軸直角方向の直交する2方向に位置決めし、また長穴形状の内孔214Bの短径部に対する位置決ナット216の嵌め合せにより軸直角方向の一方向(図8中左右方向)に位置決めを行うようにしている。
このとき、長穴形状の内孔214Bの軸直角方向の他方向(図8中上下方向)においては、位置決ナット216と内孔214Bとの間には遊隙が生じ、その遊隙によって位置決ナット216と内孔214Bの各軸心の位置ずれを吸収する。
【0013】
一方、他の位置P,Pのメンバマウント204については、その内孔が位置決ナット216よりも孔径の大きな内孔214Cとされていて、全周に亘り位置決ナット216に対し遊隙形成可能な形状であるため、これら位置P,Pの内孔214Cにおいては軸直角方向の直交する2方向の位置誤差を、それら遊隙にて吸収する。
そしてこのようにすることで、サブフレーム202を適正な相対関係位置をもって車体側部材200に組み付けることができる。
尚、図8において位置PとPのメンバマウント204は内孔の形状を除く他の構成については同様の構成を有する同種のものが用いられ、一方位置PとPのメンバマウントは、これらとは構成,特性の異なった別種のメンバマウント204が用いられる。
【0014】
しかしながらこの場合、位置PとPとのメンバマウント204が互いに同種のものであるにも拘らず、それぞれの内筒部材208として、内孔214の形状の異なった別々のものを用いなければならない。即ちそれぞれの内筒部材208として別々の鍛造品を用いなければならない。
そうすると2種類の鍛造品から成る内筒部材208が必要となって、それらを別々に製造(鍛造)することが必要となり、内筒部材208に要する所要コストが高くなってしまう。
【0015】
そこで本発明者は、内筒部材208として内径が位置決ナット216の外径よりも大径の円筒形状の金属パイプ材を用いて、その内周面に筒状の内周樹脂層を積層形成し、また外周面にも筒状の外周樹脂層を形成して、それらを内筒部材208に形成した貫通の連結孔内で樹脂連結部により連結し、そしてその内周樹脂層により上記の内孔214を形成して、そこに位置決ナット216等の位置決部材を内挿させることを案出した。
【0016】
図9はその具体例を示している。
図において208は金属パイプ材から成る内筒部材、226はその内周面に積層形成された内周樹脂層、228は内筒部材208の外周面に積層形成された外周樹脂層、230は円筒部材208に形成された貫通の連結孔、232はその連結孔230内の樹脂連結部で、内周樹脂層226と外周樹脂層228とは、この樹脂連結部232で互いに内外に連結されている。
【0017】
ここで内周樹脂層226及び外周樹脂層228は、金属製のパイプ材から成る内筒部材208に対し非接着であり、内周樹脂層226と外周樹脂層228とは、樹脂連結部232による連結によって内筒部材208に保持されている。
また連結孔230及び樹脂連結部232は、周方向に180°隔たった2個所において、軸直角方向に互いに対向する位置に設けてある。
【0018】
このように金属製の剛性の内筒部材208の内周面に内周樹脂層226を積層形成して、その内周樹脂層226にて内孔214を構成するようにすれば、金属製の剛性の内筒部材208として同じものを用いつつ、内周樹脂層226の形状を異ならせることで、図8の位置Pの基準孔をなす内孔214Aと、位置Pの副基準孔をなす内孔214Bとを、各内筒部材208の内側に容易に形成することができる。
【0019】
ところが本発明者が、円形の内孔214を有する、金属の内筒部材208と内周樹脂層226及び外周樹脂層228との複合部材を試作したところ、図9(B)に示しているように内周樹脂層226が内筒部材208の内周面から剥離して、その形状が楕円形状化してしまう問題を生じることが判明した。
【0020】
この楕円形状化の現象は、図9(B)に示しているように内周樹脂層226が成形後の冷却によって収縮し、その結果樹脂連結部232で拘束されている部分を除いた部分が、内筒部材208の内周面から剥離して縮径方向に変形を生じ、結果として内周樹脂層226全体が楕円形状化したものである。
【0021】
而してこのように内周樹脂層226が楕円形状化してしまうと、即ち内孔214が楕円形状化してしまうと、その内孔214に対し位置決部材としての位置決ナット216を内挿できなくなり、メンバマウント204即ちサブフレーム202を車体側部材200に対して組付けできなくなってしまう。
尚図9(B)において、aは楕円形状化した後の長径側の孔径を、bは短径側の孔径を表している。
【0022】
以上は内周樹脂層226にて円形の内孔214を形成する場合の例であるが、長穴形状の内孔214を内周樹脂層226にて形成する場合においても同様の問題が生ずる。
即ち、内周樹脂層226が短径側で縮径方向に変形を生じれば、そこに位置決ナット216を内挿することができなくなり、また長径側において縮径方向の変形を生じれば、位置決ナット216との間の遊隙が小となり、本来の目的を達せられなくなる。
【0023】
尚本発明に関連する先行技術として、下記特許文献2には金属製の内筒部材の内周面に内周樹脂層を、また外周面に外周樹脂層を形成して、それらを樹脂連結部で内筒部材を貫通して連結した形態のメンバマウントが開示されている。
しかしながらこの特許文献2に開示のものは、ゴム弾性体に対して内周側から予圧縮を与えることを目的としたもので、本発明の解決課題及び解決手段について開示しておらず、本発明とは別異のものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】特開平7−4457号公報
【特許文献2】特開2007−263148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明は以上のような事情を背景とし、従来に増して軽量でコストも安価な、内筒部材の内周面に位置決用の内周樹脂層を有し、且つその内周樹脂層が成形後において変形を生じるのを有効に防止可能なメンバマウント及びその組付構造を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
而して請求項1はメンバマウントに関するもので、剛性の内筒部材と、径方向に離隔した位置で該内筒部材を取り囲む剛性の外筒部材と、それら内筒部材と外筒部材とを径方向に連結するゴム弾性体と、を有し、前記外筒部材がサスペンションメンバに固定され、前記内筒部材が車体側から突き出した位置決部材を内挿させることにより該車体に対し位置決めされた状態で該車体に固定されて、それら車体とサスペンションメンバとを弾性連結し、防振作用するメンバマウントにおいて、前記内筒部材の内周面に、内側に形成される内孔に対して前記位置決部材を内挿させる筒状の内周樹脂層を、該内筒部材の位置決用として積層形成するとともに、該内筒部材の外周面に、該外周面から径方向外方に突出し、前記ゴム弾性体の軸直角方向のばね硬さを高める働きを有する筒状の外周樹脂層を積層形成して、それら内周樹脂層と外周樹脂層とを、周方向に等間隔で4個所以上の複数個所に亘って前記内筒部材に形成した貫通の連結孔の各孔内で樹脂連結部にて互いに連結してあることを特徴とする。
【0027】
請求項2のものは、請求項1において、前記位置決部材の外周形状が円形であり、前記内周樹脂層が、該位置決部材の外径に対応した孔径を有し、該位置決部材に対し全周に亘り嵌り合う円形の内孔を有する形状に形成してあることを特徴とする。
【0028】
請求項3のものは、請求項1において、前記位置決部材の外周形状が円形であり、前記内周樹脂層が、該位置決部材の外径に対応した寸法の短径と該外径よりも大径の長径とを有する長穴形状の内孔を有する形状に形成してあることを特徴とする。
【0029】
請求項4のものは、請求項1〜3の何れかにおいて、前記連結孔及び樹脂連結部は、軸方向にストレート形状をなす前記内筒部材の該軸方向の中央部に設けてあることを特徴とする。
【0030】
請求項5のものは、請求項1〜4の何れかにおいて、前記外周樹脂層は、軸方向にストレート形状をなす前記内筒部材の該軸方向の片側に偏って形成してあることを特徴とする。
【0031】
請求項6はメンバマウントの組付構造に関するもので、剛性の内筒部材と、径方向に離隔した位置で該内筒部材を取り囲む剛性の外筒部材と、それら内筒部材と外筒部材とを径方向に連結するゴム弾性体と、を有し、前記外筒部材がサスペンションメンバに固定され、前記内筒部材が車体側から突き出した位置決部材を内挿させることにより該車体に対し位置決めされた状態で該車体に固定されて、それら車体とサスペンションメンバ側とを弾性連結し、防振作用するメンバマウントを、前記車体に対して位置の異なった2個所で且つ互いの相対関係位置を保った状態で組み付けるに際して、一方のメンバマウントの前記内筒部材の内側の内孔を、車体側から突き出した外周形状が円形の位置決部材に全周に亘り嵌合する、該位置決部材の外径に対応した孔径の円形の基準孔とし、他方のメンバマウントの内筒部材の内側の内孔を、短径が前記位置決部材の外径に対応した径を有し、長径が該外径よりも大径の長穴形状の副基準孔として、前記基準孔と前記位置決部材との全周に亘る嵌り合いにより前記一方のメンバマウントを軸直角方向の直交する2方向に位置決めし、前記副基準孔の短径部と前記位置決部材との嵌り合いにより前記他方のメンバマウントを軸直角方向の一方向且つ前記一方のメンバマウントとの並びの方向と直交方向に位置決めし、長径方向において前記位置決部材と該副基準孔を成す前記内孔との位置誤差を吸収するメンバマウントの組付構造において、前記メンバマウントは、前記内筒部材の内周面に、内側に形成される内孔に対して前記位置決部材を内挿させる筒状の内周樹脂層を該内筒部材の位置決用として積層形成するとともに、該内筒部材の外周面に、該外周面から径方向外方に突出し、前記ゴム弾性体の軸直角方向のばね硬さを高める働きを有する筒状の外周樹脂層を積層形成して、それら内周樹脂層と外周樹脂層とを、周方向に等間隔で4個所以上の複数個所に亘って前記内筒部材に形成した貫通の連結孔の各孔内で樹脂連結部にて互いに連結した形態となし、且つ前記一方のメンバマウントについては、前記内筒部材として前記位置決部材の外径よりも内径の大きな円筒形状のものを用いて、該内筒部材の内周面に、該位置決部材の外径に対応した孔径を有し、該位置決部材に対し全周に亘り嵌り合う円形の内孔を有する形状の前記内周樹脂層を積層形成して、該内孔を前記基準孔となし、前記他方のメンバマウントについては、前記一方のメンバマウントの前記内筒部材と同寸法の円筒形状のものを用いて、該内筒部材の内周面に、前記位置決部材の外径に対応した寸法の短径と、該外径よりも大径の長径とを有する長穴形状の内孔を有する形状の前記内周樹脂層を積層形成して、該内孔を前記副基準孔となしてあることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0032】
以上のように本発明は、メンバマウントにおける内筒部材の内周面に、内側に形成される内孔に対して車体側から突き出した位置決部材を内挿させる筒状の内周樹脂層を、内筒部材の位置決用として積層形成するとともに、内筒部材の外周面に、ゴム弾性体の軸直角方向のばね硬さを高める働きを有する筒状の外周樹脂層を積層形成して、それら内周樹脂層と外周樹脂層とを、周方向に等間隔で4個所以上の複数個所に亘って内筒部材に形成した貫通の連結孔の各孔内で樹脂連結部にて互いに連結するようになしたものである。
【0033】
本発明によれば、従来の鍛造品に比べて薄肉且つ安価な金属パイプ材を用いつつ、その内周面に積層形成した内周樹脂層によって、車体側から突き出した位置決部材に対する所望の位置決機能を付与することができる。
その際に、内周樹脂層の形状を異ならせるだけで、同一の金属パイプ材を内筒部材として用いつつ、位置決部材が内挿される内孔の形状を異ならせることができ、内筒部材に要するコストをより一層低減することができる。
【0034】
本発明では、上記の内周樹脂層と外周樹脂層とを、周方向に等間隔で4個所以上の複数個所に亘って内筒部材に形成した貫通の連結孔の各孔内で樹脂連結部にて互いに連結しており、かかる本発明では、1つの樹脂連結部から周方向に隣接する他の1つの樹脂連結部に到るまでの内周樹脂層の周長を短くすることができ、且つ隣接する樹脂連結部と樹脂連結部との間の周長を全て均等となすことができるため、内周樹脂層が成形後の冷却による収縮によって、内筒部材の内周面からの剥離を伴って変形を生じるのを有効に防止することができ、内周樹脂層の変形による内孔の形状の変形を防ぐことができる。
ここで上記連結孔及び樹脂連結部は、偶数個所に設けておくことが望ましい。
このようにすることで、連結孔形成のための加工を容易に行うことができ、加工コストを安価となすことができる。
【0035】
本発明においては、位置決部材の円形の外周形状に対応して、内周樹脂層を、位置決部材の外径に対応した孔径を有し、位置決部材に対し全周に亘り嵌り合う円形(真円形)の内孔を有する形状に形成しておくことができる(請求項2)。
ここで位置決部材の外径に対応した孔径とは、位置決部材の外周面との間の隙間が設計中央値として片側0.25mm以下の微小隙間とするような孔径を言う。
【0036】
本発明ではまた、内周樹脂層を、位置決部材の外径に対応した寸法の短径と、位置決部材の外径よりも大径の長径とを有する長穴形状の内孔を有する形状に形成しておくことができる(請求項3)。
【0037】
本発明ではまた、上記の連結孔及び樹脂連結部を、軸方向にストレート形状をなす内筒部材の軸方向の中央部に設けておくことが望ましい(請求項4)。
連結孔及び樹脂連結部の位置が、軸方向の中央部から一端側に偏っていると、内周樹脂層に対する樹脂連結部による拘束作用が、軸方向の一端側と他端側とで違ったものとなり、軸方向の他端側において内周樹脂層に対する変形への抑制力が相対的に小さくなってしまう。
しかるに連結孔及び樹脂連結部の位置を軸方向の中央部としておけば、軸方向の一端側と他端側とにおいて、内周樹脂層に対する変形の抑制を均等に行うことができる。
【0038】
一方において外周樹脂層は、軸方向にストレート形状をなす内筒部材の軸方向の片側に偏って形成しておくことができる(請求項5)。
このようにしておけば、樹脂層付きの内筒部材をゴム弾性体の成形金型に差し込む際に、これを軸方向の誤った向きで差し込むこと、即ち逆差しを有効に防止できる利点が得られる。
【0039】
請求項6は、メンバマウントの組付構造に関するもので、この組付構造によれば、同一寸法,形状の内筒部材を用いつつ、内周樹脂層を積層形成することによって、また内周樹脂層の形状を変えることによって、メンバマウントに所要の基準孔と副基準孔とを付与することができ、それら基準孔と副基準孔とによって一対のメンバマウントを、それらの間の相対位置関係を保ったまま良好に車体側に組み付けられるようになる。
また内周樹脂層は複数個所の連結孔内の樹脂連結部で外周樹脂層と連結されており、このことによって内周樹脂層が収縮変形して内孔の形状を変化させてしまうのを有効に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施形態のメンバマウントを車両組付状態で示した図である。
【図2】同実施形態のメンバマウントの軸方向及び軸直角方向の断面図である。
【図3】同実施形態のメンバマウントの底面図である。
【図4】同実施形態における内筒部材を樹脂層とともに示した図である。
【図5】図4の内筒部材の連結孔の加工方法の説明図である。
【図6】本発明の他の実施形態のメンバマウントの図である。
【図7】従来公知のメンバマウントを車両組付状態で示した図である。
【図8】メンバマウントの内孔と車体側の位置決ナットとの嵌め合せの関係を示した図である。
【図9】本発明の背景説明のために示した比較例図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において、10はパネル状をなす車体側部材で、12はサスペンションメンバとしてのサブフレーム(井型サブフレーム)、14Aはそれらサブフレーム12と車体側部材10とを弾性連結し、それらの間で防振作用するメンバマウントである。
サブフレーム12には、メンバマウント14Aを圧入させてこれを保持する保持孔16が設けられている。
18はアッパーストッパで、組付状態で車体側部材10に重ねられる板状且つ平面視円環状の保持金具20と、これに一体に加硫接着されて下向きに立ち下がるストッパゴム部22とを有している。
ここでストッパゴム部22は円環状(平面視)をなしており、サブフレーム12のストッパ当り部24に当接してストッパ作用をなす。
このストッパゴム部22には、断面形状が舌片状をなして径方向内向きに延出する、平面視円環状の嵌合部26が設けられており、この嵌合部26が、その内端部において後述の内筒部材56の外周面に弾性嵌合している。
尚、車体側部材10及び保持金具20にはそれぞれ開口28,30が形成されている。
【0042】
32は、ロアストッパ33の要部をなす金属製のストッパプレートで、このストッパプレート32は、アッパーストッパ18の上記の保持金具20とともにメンバマウント14Aの内筒部材56を軸方向に挟持する、中央部の円環状をなす挟持部31と、挟持部31に対し段下がり形状で径方向(軸直角方向)に拡がる円環状のストッパ当り部36とを有している。
このストッパプレート32には、その中心部に開口42が設けられている。
【0043】
44は車体側部材10から下向きに突き出した、位置決部材を兼ねた位置決ナットで、フランジ部46と円筒部48とを有しており、溶接等にて車体側部材10に固定されている。
この位置決ナット44は、円筒部48の内側に雌ねじ孔50を有している。
52は締結ボルトで、軸部の先端側に雄ねじ部54を有している。
【0044】
メンバマウント14Aは、後述の外筒部材58においてサブフレーム12の保持孔16に圧入され、そこに保持された状態で、後述の内筒部材56に対し位置決ナット44の円筒部48を車体側部材10及び保持金具20の各開口28,30を通じて図中下向きに内挿させ、また締結ボルト52をストッパプレート32の開口42を通じて同じく内筒部材56の内部に挿入し、そして雄ねじ部54を位置決ナット44の雌ねじ孔50にねじ込むことで、サブフレーム12とともに車体側部材10に組み付けられる。
【0045】
メンバマウント14Aは、図2にも示しているように金属パイプ材から成る剛性の円筒形状の内筒部材56と、径方向に離隔した位置でこれを取り囲む円筒形状の金属製の剛性の外筒部材58と、それらを径方向に連結する円筒形状のゴム弾性体60とを有している。
ここでゴム弾性体60は、内筒部材56及び外筒部材58に一体に加硫接着されている。
【0046】
外筒部材58は、図中上端部の曲げ部62Aを除いて車両上下方向即ち図2中上下方向にストレート形状で延びる円筒形状の本体部62と、その下端部で径方向外方に張り出した円環状のフランジ部64とを有している。
一方ゴム弾性体60は、内筒部材56と外筒部材58の本体部62とで径方向に挟まれた円筒形状の本体ゴム部66と、これに連続して形成され、外筒部材58のフランジ部64の下面に形成された、下向きに立ち下がる形態のストッパゴム部68を有している。
このストッパゴム部68は、上記のストッパプレート32のストッパ当り部36に当接してストッパ作用をなす。
図1におけるロアストッパ33は、このストッパゴム部68とストッパプレート32とで構成されている。
【0047】
本体ゴム部66は、図3に示しているように周方向に180°隔たった2個所に軸方向に貫通するすぐり部72が設けられている。
またゴム本体部66の、ストッパゴム部68とは軸方向の反対側の端部には、すぐり部72と同じ周方向位置の180°異なった2個所の位置に突部73が設けてある。
【0048】
上記内筒部材56は、金属パイプ材を所定寸法に切断して成るもので、図4に詳しく示しているように内周面,外周面の何れも断面円形をなしており、それぞれ軸方向にストレート形状をなしている。
この内筒部材56の内周面には、全周に亘って内周樹脂層74が積層形成されている。
また外周面においても、全周に亘って外周樹脂層76が積層形成されている。
【0049】
そしてそれら内周樹脂層74と外周樹脂層76とが、周方向に90°ごとの等間隔で内筒部材56を貫通して形成された連結孔78内の樹脂連結部80にて内外に連結されている。
これら内周樹脂層74及び外周樹脂層76は金属製の内筒部材56に対し非接着であり、樹脂連結部80による連結によって内筒部材56に保持されている。
【0050】
この実施形態において、内周樹脂層74,外周樹脂層76,樹脂連結部80は何れも同材質のもので、ここでは樹脂としてポリアミド66樹脂に補強材としてガラス繊維を含有させたものが用いられている。
ガラス繊維の含有量は、樹脂材を基準として30質量%である。但し樹脂として他の樹脂を用いることも可能である。
上記連結孔78及び樹脂連結部80は、何れも内筒部材56の軸方向中央部に設けられている。
また各連結孔78は、ここでは孔径がφ6mmである。
【0051】
外周樹脂層76は、全周に亘り均等な肉厚で内筒部材56の外周面から、且つ軸方向において部分的に径方向外方に突出形成されている。
この外周樹脂層76は、本体ゴム部66の軸直角方向のばね硬さを高くする目的で設けられているもので、その全体が本体ゴム部66の軸方向の図2中上端と下端との間に位置せしめられている。
その結果外周樹脂層76は、図4において連結孔78よりも僅かに図中上側位置から軸方向の下向きに長く延び、内筒部材56の軸方向の片側に偏って形成されている。
【0052】
一方内周樹脂層74は、内筒部材56のほぼ全長に亘って形成されている。
詳しくは、内筒部材56の軸方向の各端部の寸法Lの部分を除いて、内筒部材56の全長に亘り形成されている。
この内周樹脂層74の軸方向の両端部内面は、それぞれテーパ面82とされている。
また他の部分については軸方向にストレート形状をなしている。
【0053】
この実施形態において、内周樹脂層74は全周に亘り均等な肉厚で形成されており、その全体形状は円筒形状をなしていて、その内側に形成される内孔84Aが、図1の位置決ナット44の円筒部48に対し、全周に亘り嵌り合う孔径の円形の孔とされている。ここでは内孔84Aは孔径φ22.5mmとされている。
この内周樹脂層74の内孔84Aは、メンバマウントを車体側部材10に組み付けるに際しての基準位置を定めるための基準孔をなすものである。
【0054】
この内周樹脂層74及び外周樹脂層76,更に樹脂連結部80は、内筒部材56を樹脂成形型にセットした状態で樹脂材を例えば射出成形等の成形方法で成形することにより得られる。
その際、内周樹脂層74は成形後の冷却によって収縮し、そしてその収縮によって内筒部材56の内周面から剥離し、縮径方向に変形しようとする。
【0055】
しかしながらこの実施形態では、樹脂連結部80が90°ごとの等間隔で周方向4個所に設けてあって、その樹脂連結部80により内周樹脂層74が外周樹脂層76と連結され、それら連結部分で強く拘束作用を受けているため、内周樹脂層74の縮径方向の変形が効果的に防止される。
例えばこの実施形態において、冷却後における内周樹脂層74の内孔84Aは、最大径と最小径との差が0.2mm程度で、良好にほぼ真円形状を保つ。
因みに図9に示す比較例のものは、最大寸法と最小寸法との差が0.7mm程度と大きい。
【0056】
図2のメンバマウント14Aは、内筒部材56と内周樹脂層74,外周樹脂層76,樹脂連結部80とを有する樹脂複合品86を製造した後、これをゴム成形型に外筒部材58とともに軸方向に差し込んでセットし、その状態でゴム弾性体60を加硫成形することにより得られる。
その成形状態で、内筒部材56は図1中下端が外筒部材58から僅かに下向きに突き出して、ロアストッパ33における環状のストッパゴム部68の内側空間に位置し、また上端が外筒部材58から図中上向きに大きく突出した状態となる。
車両への組付状態において、その内筒部材56の上向きの突出部分に対し図1のアッパーストッパ18の上記の嵌合部26が外嵌状態に嵌合せしめられる。
【0057】
尚、図4における内筒部材56の4個所の連結孔78は次のようにして形成することができる。
即ち、図5(I)に示しているように周方向に180°隔たった位置で互いに対向する一対のダイス孔90を有する中空構造の円筒形状のダイス92を、内筒部材56の内側に挿入状態とし、その状態で一対のパンチ94で円筒部材56を打ち抜くことで、周方向に180°隔たった一対の連結孔78を形成することができる。
【0058】
次いで(II)に示すように内筒部材56を90°回転させ、そして図1の工程で形成した連通孔78を用いてそこに位置決めし、その状態で図5(III)に示すように再び一対のパンチ94とダイス92を用いて、互いに対向する一対の連結孔78を打抜加工することで、周方向に90°ごと隔たった4つの連通孔78を容易に加工形成することができる。
【0059】
この場合、連結孔78の個数が奇数個であると、このような加工方法でそれらの連通孔78を形成することは難しく、またこれに伴って加工コストも高くなるが、連通孔78の個数を4個の偶数個としておくことで、加工を容易に且つ低コストで行うことができる。
【0060】
図6は、上記のメンバマウント14Aとは異なったメンバマウント14Bを示している。
この図6に示すメンバマウント14Bは、内筒部材56として図1〜図4に示すメンバマウント14Aと同じものが用いられ、またこの内筒部材56の内周面に内周樹脂層74が、外周面に外周樹脂層76がそれぞれ積層形成され、そしてそれら内周樹脂層74と外周樹脂層76とが、周方向に90°ごと異なった位置の4個所の連結孔78内で樹脂連結部80により互いに連結されている点で、上記のメンバマウント14Aと同様である。
更にメンバマウント14Bにおける他の構成についても、図1〜図4に示すメンバマウント14Aと同様である。
【0061】
但しこの例のメンバマウント14Bでは、内周樹脂層74の肉厚が周方向に不均等で、その内側に形成される内孔84Bの形状が、上記メンバマウント14Aにおける内孔84Aとは異なった形状をなしている。
具体的には、ここでは内孔84Bの形状が、図1〜図4におけるメンバマウント14Aの内孔84Aの孔径D(図4参照)と同じ寸法の短径Dと、これよりも大径即ち位置決ナット44における円筒部48の外径よりも大径をなす長径Dとを有する長穴形状をなしている。
【0062】
従って図6に示すメンバマウント14Bにあっては、内孔84B内に、図1の位置決ナット44の円筒部48を内挿したとき、内孔84Bは短径部において円筒部48に丁度嵌り合うが、長径方向においては円筒部48との間に遊隙を生ずる。
つまり内孔84Bは、メンバマウントを車体側部材10に組み付ける際に位置決めを行うときの副基準孔としての働きを有する。
【0063】
尚ここでは、図6(B)中上下に対向する一対の樹脂連結部80を結ぶ方向が内孔84Bの長径方向をなし、また他の2つの相対向する一対の樹脂連結部80を左右方向に結ぶ方向が内孔84Bの短径方向をなしている。
また内孔84Bは、短径方向に位置する左右一対の樹脂連結部80の内側に位置する部分が図6(B)中上下方向、つまり長径方向と平行方向に部分的にストレート形状をなすストレート部96をなしている。
【0064】
尚この図6に示すメンバマウント14Bにおいて、内孔84Bにおける長孔Dの寸法は25.3mmである。
この図6に示すメンバマウント14Bにおいても、内周樹脂層74形成後における収縮による変形が良好に抑制され、これによって内孔84Bの形状が良好に設定した形状に保持される。
【0065】
この実施形態において、図1〜図4に示すメンバマウント14Aは図8の位置Pのメンバマウントとして、また図6のメンバマウント14Bは図8の位置Pのメンバマウントとして用いることができる。
この場合、位置Pのメンバマウント14Aの基準孔としての内孔84Aによって、サブフレーム202の車体側部材10に対する組付けの基準位置を定めること、詳しくはメンバマウント14Aにおける軸直角方向の直交する2方向にサブフレーム202の車体側部材10に対する組付けの位置を定めることができ、また位置Pのメンバマウント14Bの内孔84Bによって軸直角方向の一方向、詳しくは図8における左右方向の位置を、内孔84Bの短径部と位置決ナット44の円筒部48との嵌り合いによって定めることができ、そしてこれと直交方向である図8中上下方向については、長径部と位置決ナット44の円筒部48との間に生じる遊隙によって位置誤差を吸収することができる。
【0066】
以上のように本実施形態によれば、従来の鍛造品に比べて薄肉且つ安価な金属パイプ材を用いつつ、その内周面に積層形成した内周樹脂層74によって、車体側部材10から突き出した位置決ナット44に対する所望の位置決機能を付与することができる。
その際に、内周樹脂層74の形状を異ならせるだけで、同一の金属パイプ材を内筒部材56として用いつつ、位置決ナット44が内挿される内孔84の形状を異ならせることができ、内筒部材56に要するコストをより一層低減することができる。
【0067】
本実施形態では、上記の内周樹脂層74と外周樹脂層76とを、周方向に等間隔で4個所以上の複数個所に亘って内筒部材56に形成した貫通の連結孔78の各孔内で樹脂連結部80にて互いに連結しているため、1つの樹脂連結部80から周方向に隣接する他の1つの樹脂連結部80に到るまでの内周樹脂層74の周長を短くでき、且つ隣接する樹脂連結部80と樹脂連結部80との間の周長を全て均等となすことができるため、内周樹脂層74が成形後の冷却による収縮によって、内筒部材56の内周面からの剥離を伴って変形を生じるのを有効に防止することができ、内周樹脂層74の変形による内孔84の形状の変形を防ぐことができる。
【0068】
本実施形態ではまた、連結孔78及び樹脂連結部80を、軸方向にストレート形状をなす内筒部材56の軸方向の中央部に設けてあり、このことから次の利点が得られる。
連結孔78及び樹脂連結部80の位置が、軸方向の中央部から一端側に偏っていると、内周樹脂層74に対する樹脂連結部80による拘束作用が、軸方向の一端側と他端側とで違ったものとなり、軸方向の他端側において内周樹脂層74に対する変形への抑制力が相対的に小さくなってしまう。
しかるに連結孔78及び樹脂連結部80の位置を軸方向の中央部としておくことで、軸方向の一端側と他端側とにおいて、内周樹脂層74に対する変形の抑制を均等に行うことができる。
【0069】
一方において外周樹脂層76は、軸方向にストレート形状をなす内筒部材56の軸方向の片側に偏って形成してあるため、樹脂層付きの内筒部材56をゴム弾性体60の成形金型に差し込む際に、これを軸方向の誤った向きで差し込むこと、即ち逆差しを有効に防止できる利点が得られる。
【0070】
また本実施形態の組付構造によれば、同一寸法,形状の内筒部材56を用いつつ、内周樹脂層74を積層形成することによって、また内周樹脂層74の形状を変えることによって、メンバマウントに所要の基準孔と副基準孔とを付与することができ、それら基準孔と副基準孔とによって、一対のメンバマウント14A,14Bを、それらの間の相対位置関係を保ったまま、良好に車体側部材10に組み付けること、即ちサブフレーム12を組み付けることができる。
【0071】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示である。
例えば上記実施形態では内筒部材の連結孔及び樹脂連結部を、周方向に等間隔で4個所に設けているが、場合によってこれを4個所以上の偶数個所、例えば6個所,8個所に設けるといったことも可能である。
また上記実施形態はサスペンションメンバとしてのサブフレームを車体にメンバマウントにて取り付ける場合の例であるが、本発明はサブフレーム以外のサスペンションメンバをメンバマウントを介し車体に組み付けるに際しても適用可能である等、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【符号の説明】
【0072】
10 車体側部材
14 サブフレーム(サスペンションメンバ)
44 位置決ナット(位置決部材)
56 内筒部材
58 外筒部材
60 ゴム弾性体
74 内周樹脂層
76 外周樹脂層
78 連結孔
80 樹脂連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
剛性の内筒部材と、径方向に離隔した位置で該内筒部材を取り囲む剛性の外筒部材と、それら内筒部材と外筒部材とを径方向に連結するゴム弾性体と、を有し、前記外筒部材がサスペンションメンバに固定され、前記内筒部材が車体側から突き出した位置決部材を内挿させることにより該車体に対し位置決めされた状態で該車体に固定されて、それら車体とサスペンションメンバとを弾性連結し、防振作用するメンバマウントにおいて、
前記内筒部材の内周面に、内側に形成される内孔に対して前記位置決部材を内挿させる筒状の内周樹脂層を、該内筒部材の位置決用として積層形成するとともに、
該内筒部材の外周面に、該外周面から径方向外方に突出し、前記ゴム弾性体の軸直角方向のばね硬さを高める働きを有する筒状の外周樹脂層を積層形成して、それら内周樹脂層と外周樹脂層とを、周方向に等間隔で4個所以上の複数個所に亘って前記内筒部材に形成した貫通の連結孔の各孔内で樹脂連結部にて互いに連結してあることを特徴とするメンバマウント。
【請求項2】
請求項1において、前記位置決部材の外周形状が円形であり、前記内周樹脂層が、該位置決部材の外径に対応した孔径を有し、該位置決部材に対し全周に亘り嵌り合う円形の内孔を有する形状に形成してあることを特徴とするメンバマウント。
【請求項3】
請求項1において、前記位置決部材の外周形状が円形であり、前記内周樹脂層が、該位置決部材の外径に対応した寸法の短径と該外径よりも大径の長径とを有する長穴形状の内孔を有する形状に形成してあることを特徴とするメンバマウント。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかにおいて、前記連結孔及び樹脂連結部は、軸方向にストレート形状をなす前記内筒部材の該軸方向の中央部に設けてあることを特徴とするメンバマウント。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかにおいて、前記外周樹脂層は、軸方向にストレート形状をなす前記内筒部材の該軸方向の片側に偏って形成してあることを特徴とするメンバマウント。
【請求項6】
剛性の内筒部材と、径方向に離隔した位置で該内筒部材を取り囲む剛性の外筒部材と、それら内筒部材と外筒部材とを径方向に連結するゴム弾性体と、を有し、前記外筒部材がサスペンションメンバに固定され、前記内筒部材が車体側から突き出した位置決部材を内挿させることにより該車体に対し位置決めされた状態で該車体に固定されて、それら車体とサスペンションメンバ側とを弾性連結し、防振作用するメンバマウントを、前記車体に対して位置の異なった2個所で且つ互いの相対関係位置を保った状態で組み付けるに際して、
一方のメンバマウントの前記内筒部材の内側の内孔を、車体側から突き出した外周形状が円形の位置決部材に全周に亘り嵌合する、該位置決部材の外径に対応した孔径の円形の基準孔とし、他方のメンバマウントの内筒部材の内側の内孔を、短径が前記位置決部材の外径に対応した径を有し、長径が該外径よりも大径の長穴形状の副基準孔として、前記基準孔と前記位置決部材との全周に亘る嵌り合いにより前記一方のメンバマウントを軸直角方向の直交する2方向に位置決めし、前記副基準孔の短径部と前記位置決部材との嵌り合いにより前記他方のメンバマウントを軸直角方向の一方向且つ前記一方のメンバマウントとの並びの方向と直交方向に位置決めし、長径方向において前記位置決部材と該副基準孔を成す前記内孔との位置誤差を吸収するメンバマウントの組付構造において、
前記メンバマウントは、前記内筒部材の内周面に、内側に形成される内孔に対して前記位置決部材を内挿させる筒状の内周樹脂層を該内筒部材の位置決用として積層形成するとともに、該内筒部材の外周面に、該外周面から径方向外方に突出し、前記ゴム弾性体の軸直角方向のばね硬さを高める働きを有する筒状の外周樹脂層を積層形成して、それら内周樹脂層と外周樹脂層とを、周方向に等間隔で4個所以上の複数個所に亘って前記内筒部材に形成した貫通の連結孔の各孔内で樹脂連結部にて互いに連結した形態となし、
且つ前記一方のメンバマウントについては、前記内筒部材として前記位置決部材の外径よりも内径の大きな円筒形状のものを用いて、該内筒部材の内周面に、該位置決部材の外径に対応した孔径を有し、該位置決部材に対し全周に亘り嵌り合う円形の内孔を有する形状の前記内周樹脂層を積層形成して、該内孔を前記基準孔となし、
前記他方のメンバマウントについては、前記一方のメンバマウントの前記内筒部材と同寸法の円筒形状のものを用いて、該内筒部材の内周面に、前記位置決部材の外径に対応した寸法の短径と、該外径よりも大径の長径とを有する長穴形状の内孔を有する形状の前記内周樹脂層を積層形成して、該内孔を前記副基準孔となしてあることを特徴とするメンバマウントの組付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−107748(P2012−107748A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230194(P2011−230194)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】