説明

モノホスフィン化合物、その遷移金属錯体および該錯体を不斉触媒として用いる光学活性化合物の製造方法

【課題】 不斉付加反応、不斉共役付加反応や不斉ヒドロホウ素化反応等を高選択的に行うことを可能にし、さらに容易かつ安価に調製しうる不斉配位子およびそれを含む不斉遷移金属錯体を提供すること。
【解決手段】 一般式(I):
【化1】


(式中、A環は存在しないかまたは置換基を有していてもよいベンゼン環を示し、RおよびRはそれぞれ独立して、置換基を有していてもよいフェニル基、シクロヘキシル基等を示し、RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基等を示し、Xは、−ORまたは−NHR(ここで、RおよびRは置換基を有していてもよい低級アルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基等を示す。)で表される残基を示す。)で表される化合物、当該化合物を配位子として含有する不斉遷移金属錯体および当該錯体を不斉触媒として用いる光学活性化合物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規モノホスフィン化合物、該モノホスフィン化合物を配位子として含有する不斉遷移金属錯体および該不斉遷移金属錯体を不斉触媒として用いる光学活性化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、不斉触媒反応の触媒として多くの不斉遷移金属錯体が報告されており、そのための不斉配位子が数多く開発されてきた。
そのような不斉配位子の多くは、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビスナフチル(BINAP)に代表される不斉ジホスフィン化合物であり、特に不斉水素化反応において、極めて優れた選択性と収率を達成できることが報告されている。しかしながら、これら不斉ジホスフィン化合物を用いた不斉遷移金属錯体の不斉水素化反応以外への不斉反応への応用は限られており、不斉環化反応、不斉アルドール反応などへの適用が報告されているものの(非特許文献1〜5参照)、選択性や収率が十分とは言い難い。特に不斉反応として有用性が高い不斉付加反応、不斉共役付加反応や不斉ヒドロホウ素化反応への応用については、適応可能な基質に限りがあり、選択性や収率が十分とは言い難い。
【0003】
非特許文献6には、不斉遷移金属錯体のモノホスフィン配位子として、1−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)イソキノリン(以下、QUINAPと略すこともある。)が開示されており、QUINAPを配位子として有する不斉遷移金属錯体が、BINAP等の使用では困難な不斉ヒドロホウ素化反応(非特許文献7)またはエナミンおよびイミニウムイオンへのアルキン類の不斉付加反応(非特許文献8および9)を高い選択性で触媒することが報告されている。
【非特許文献1】「ザジャーナルオブオルガニックケミストリー(The Journal of Organic Chemistry)」,(米国),2000年,第65巻,p.5806−5816.
【非特許文献2】「ジャーナルオブザアメリカンケミカルソサイアティー(Journal of the American Chemical Society)」,(米国),2000年,第122巻,p.4528−4529.
【非特許文献3】「テトラヘドロンレターズ(Tetrahedron Letters)」,(オランダ),2000年,第41巻,p.891−895.
【非特許文献4】「シンレット(Synlett)」,(ドイツ),1999年,第5巻,p.605−607.
【非特許文献5】「テトラヘドロンアシメトリー(Tetrahedron Asymmetry)」,(オランダ),2000年,第11巻,p.3561−3568.
【非特許文献6】「テトラヘドロンアシメトリー(Tetrahedron Asymmetry)」,(オランダ),1993年,第4巻,p.743−756.
【非特許文献7】「ジャーナルオブザケミカルソサイアティ,ケミカルコミュニケーションズ(Journal of the Chemical Society, Chemical Communications)」,(英国),1993年,p.1673−1674.
【非特許文献8】「アンギヴァンテケミーインターナショナルエディション(Angewandte Chemie International Edition)」,(米国),2002年,第41巻,p.2535−2541.
【非特許文献9】「アンギヴァンテケミーインターナショナルエディション(Angewandte Chemie International Edition)」,(米国),2003年,第42巻,p.5763−5766.
【非特許文献10】「アンギヴァンテケミーインターナショナルエディション(Angewandte Chemie International Edition)」,(米国),2004年,第43巻,p.5971−5973.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、QUINAPの調製にはラセミ体を得るのに7工程という長い工程を要し、コストが極めて高くなる上に、その光学分割においては0.5当量の不斉パラジウム化合物とのジアステレオマー複合体の形成が必要であり(非特許文献8参照)、さらに、不斉パラジウム化合物はラセミ化しやすく、ジアステレオマー複合体の分離精製が困難であるため実用的ではなかった。
本発明の解決しようとする課題は、従来のBINAP等を使用した不斉遷移金属錯体では適用することが難しかった不斉付加反応、不斉共役付加反応や不斉ヒドロホウ素化反応等を高選択的に行うことを可能にし、さらに容易かつ安価に調製しうる不斉配位子およびそれを含む不斉遷移金属錯体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意研究をした結果、QUINAPのイソキノリン環に代わり、4位に置換基を有するフタラジン環を有する化合物を配位子とした不斉遷移金属錯体においてもQUINAPと同等以上の選択性と収率を達成することができ、当該配位子が既知化合物から容易に調製できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]一般式(I):
【0006】
【化1】

【0007】
(式中、A環は存在しないかまたは置換基を有していてもよいベンゼン環を示し、RおよびRはそれぞれ独立して、置換基を有していてもよいフェニル基、シクロヘキシル基、2−フリル基または3−フリル基を示し、RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を示し、Xは、−ORまたは−NHR(ここで、RおよびRは置換基を有していてもよい低級アルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基または置換基を有していてもよいヘテロアリール基を示す。)で表される残基を示す。)で表される化合物(以下、化合物(I)ともいう。)。
[2]RおよびRがそれぞれ独立してフェニル基、トリル基またはシクロヘキシル基である、上記[1]記載の化合物。
[3]RまたはRが不斉中心を有する残基である、上記[1]または[2]記載の化合物。
[4]光学活性化合物である、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の化合物。
【0008】
[5]上記[4]記載の化合物を配位子として含有することを特徴とする、不斉遷移金属錯体。
[6]遷移金属が、Ru、Pd、Rh、CuおよびAgから選ばれる金属である、上記[5]記載の不斉遷移金属錯体。
[7]上記[4]記載の化合物と遷移金属塩またはその錯体とを反応させることにより調製される、上記[5]または[6]記載の遷移金属錯体。
[8]遷移金属塩またはその錯体が、CuX、Cu(X、Rh(cod)、(nbd)Rh(acac)、CyRu(XおよびAgX(Xはハロゲン原子、BF、アセトキシ、SbF、PFおよびOSOCFから選ばれる対イオンを示し、codは1,5−シクロオクタジエンを示し、nbdはノルボナジエンを示し、Cyはシメンを示し、acacはアセチルアセトンを示す。)から選ばれる、上記[7]記載の不斉遷移金属錯体。
【0009】
[9]上記[5]〜[8]のいずれかに記載の不斉遷移金属錯体を含有することを特徴とする、不斉触媒。
【0010】
[10]不斉反応による光学活性化合物の製造方法であって、基質と上記[5]〜[8]のいずれかに記載の不斉遷移金属錯体を接触させることを特徴とする光学活性化合物の製造方法。
[11]不斉反応が不斉付加反応、不斉共役付加反応、不斉ヒドロホウ素化反応、不斉ジホウ素化反応、不斉[3+2]環化反応、不斉置換反応または不斉ディールスアルダー[4+2]環化反応である、上記[10]記載の製造方法。
【0011】
[12]不斉反応が不斉付加反応である、上記[11]記載の製造方法。
[13]不斉遷移金属錯体が、上記[4]記載の化合物とCuX(Xは前記と同義を示す。)との反応により調製されたものである、上記[12]記載の製造方法。
[14]基質が、一般式(II):RCHO(II)(式中、Rは置換基を有していてもよい低級アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよい低級アルケニル基、置換基を有していてもよい低級アルキニル基、置換基を有していてもよいアラルキル基または置換基を有していてもよいヘテロアリール基を示す。)で表される化合物(以下、化合物(II)ともいう。)、一般式(III):HNR(III)(式中、RおよびRはそれぞれ独立して、置換基を有していてもよい低級アルキル基、置換基を有していてもよい低級アルケニル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基または置換基を有していてもよいヘテロアリール基を示すか、あるいはRとRが隣接する窒素原子と一緒になって、置換基を有していてもよい脂肪族含窒素複素環を形成してもよい。)で表される化合物(以下、化合物(III)ともいう。)および一般式(IV):HC≡CR10(IV)(式中、R10は水素原子、置換基を有していてもよい低級アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、トリアルキルシリル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基または置換基を有していてもよいヘテロアリール基を示す。)で表される化合物(以下、化合物(IV)ともいう。)であり、光学活性化合物が一般式(V):
【0012】
【化2】

【0013】
(式中、R、R、RおよびR10は前記と同義を示し、*は不斉炭素を示す。)で表される化合物(以下、化合物(V)ともいう。)である、上記[12]または[13]記載の製造方法。
【0014】
[15] RとRが隣接する窒素原子と一緒になって4−ピペリジノンを形成する、上記[14]記載の製造方法。
[16]上記[15]記載の方法により製造される一般式(Va):
【0015】
【化3】

【0016】
(式中、各記号は前記と同義を示す。)で表される化合物(以下、化合物(Va)ともいう。)またはその塩を脱保護することを特徴とする、一般式(Vb):
【0017】
【化4】

【0018】
(式中、各記号は前記と同義を示す。)で表される化合物(以下、化合物(Vb)ともいう。)またはその塩の製造方法。
【0019】
[17]不斉反応が不斉共役付加反応である、上記[11]記載の製造方法。
[18]不斉遷移金属錯体が、上記[4]記載の化合物、Cu(X(Xはハロゲン原子、BF、アセトキシ、SbF、PFおよびOSOCFから選ばれる対イオンを示す。)および還元剤との反応により調製されたものである、上記[17]記載の製造方法。
[19]基質が、一般式(XXVI):
【0020】
【化5】

【0021】
(式中、YおよびYはそれぞれ独立して、酸素原子またはNR26(ここで、R26は置換基を有していてもよい低級アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基または置換基を有していてもよいヘテロアリール基を示す。)を示し、Yは炭素原子、硫黄原子を示し、R23およびR24はそれぞれ独立して、水素原子、オキソ、置換基を有していてもよい低級アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基または置換基を有していてもよいヘテロアリール基を示すか、またはR23およびR24が一緒になってオキソを形成してもよく、R25は置換基を有していてもよい低級アルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいヘテロアリール基、置換基を有していてもよいヘテロアリールアルキル基、置換基を有していてもよいヘテロアルキル基、−OCOR27、−NR2829または−SR30(ここで、R27、R28、R29およびR30はそれぞれ独立して、置換基を有していてもよい低級アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基または置換基を有していてもよいヘテロアリール基を示すか、あるいはR28とR29が隣接する窒素原子と一緒になって、置換基を有していてもよい脂肪族含窒素複素環を形成してもよい。)を示す。)で表される化合物(以下、化合物(XXVI)ともいう。)および化合物(IV)であり、光学活性化合物が一般式(XXVII):
【0022】
【化6】

【0023】
(式中、Y、Y、Y、R10、R23、R24およびR25は前記と同義を示し、*は不斉炭素を示す。)で表される化合物(以下、化合物(XXVII)ともいう。)である、上記[17]または[18]記載の製造方法。
【0024】
[20]不斉反応が不斉ヒドロホウ素化反応である、上記[11]記載の製造方法。
[21]不斉遷移金属錯体が、上記[4]記載の化合物とRh(cod)(Xおよびcodは前記と同義を示す。)との反応により調製されたものである、上記[20]記載の製造方法。
[22]基質が一般式(VI):R11−HC=CH−R12(VI)(式中、R11は置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよい低級アルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基または置換基を有していてもよいヘテロアリール基を示し、R12は、水素原子、置換基を有していてもよい低級アルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基または置換基を有していてもよいヘテロアリール基を示す。)で表される化合物(以下、化合物(VI)ともいう。)および一般式(VII):HBR1314(VII)(式中、R13およびR14はそれぞれ独立して、水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基またはアリールアルコキシ基を示すか、あるいはR13とR14が結合するホウ素原子と一緒になって、置換基を有していてもよい複素環またはその縮合環を形成してもよい。)で表されるホウ素化合物(以下、ホウ素化合物(VII)ともいう。)またはその錯体であり、光学活性化合物が、一般式(VIII):
【0025】
【化7】

【0026】
(式中、R11、R12、R13およびR14は前記と同義を示し、*は不斉炭素を示す。)で表される化合物(以下、化合物(VIII)ともいう。)である、上記[20]または[21]記載の製造方法。
[23]上記[22]で製造される化合物(VIII)を酸化剤と反応させる工程を包含する、一般式(IX):
【0027】
【化8】

【0028】
(式中、R11およびR12は前記と同義を示し、*は不斉炭素を示す。)で表される化合物(以下、化合物(IX)ともいう。)の製造方法。
[24]上記[22]で製造される化合物(VIII)をヒドロキシルアミン−O−スルホン酸と反応させる工程を包含する、一般式(X):
【0029】
【化9】

【0030】
(式中、R11およびR12は前記と同義を示し、*は不斉炭素を示す。)で表される化合物(以下、化合物(X)ともいう。)の製造方法。
[25]上記[22]で製造される化合物(VIII)を一般式(XI):MCH(XI)(式中、MはLi、Na、MgXまたはZnX(ここで、Xはハロゲン原子を示す。)を示し、Xはハロゲン原子を示す。)で表される化合物(以下、化合物(XI)ともいう。)と反応させる工程を包含する、一般式(XII):
【0031】
【化10】

【0032】
(式中、R11およびR12は前記と同義を示し、*は不斉炭素を示す。)で表される化合物(以下、化合物(XII)ともいう。)の製造方法。
[26]上記[22]で製造される化合物(VIII)を一般式(XIII):MCH(X(XIII)(式中、MはLi、Na、MgXまたはZnX(ここで、Xはハロゲン原子を示す。)を示し、Xはハロゲン原子を示す。)で表される化合物(以下、化合物(XIII)ともいう。)と反応させる工程を包含する、一般式(XIV):
【0033】
【化11】

【0034】
(式中、R11およびR12は前記と同義を示し、*は不斉炭素を示す。)で表される化合物(以下、化合物(XIV)ともいう。)の製造方法。
[27]不斉反応が不斉ジホウ素化反応である、上記[11]記載の製造方法。
[28]不斉遷移金属錯体が、上記[4]記載の化合物と(nbd)Rh(acac)(nbdおよびacacは前記と同義を示す。)との反応により調製されたものである、上記[27]記載の製造方法。
[29]基質が一般式(XV):
【0035】
【化12】

【0036】
(式中、R15およびR16はそれぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい低級アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基または置換基を有していてもよいヘテロアリール基を示し(但し、R15およびR16は同一の置換基になる場合はない。)、R17は水素原子、置換基を有していてもよい低級アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基または置換基を有していてもよいヘテロアリール基を示すか、あるいはR16とR17がそれぞれ結合する炭素原子と一緒になって同素環またはその縮合環を形成してもよい。)で表される化合物(以下、化合物(XV)ともいう。)および一般式(XVI):R1819B−BR1819(XVI)(式中、R18およびR19はそれぞれ独立して、水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基またはアリールアルコキシ基を示すか、あるいはR18とR19が結合するホウ素原子と一緒になって、置換基を有していてもよい複素環またはその縮合環を形成してもよい。)で表されるホウ素化合物(以下、ホウ素化合物(XVI)ともいう。)またはその錯体であり、光学活性化合物が、一般式(XVII):
【0037】
【化13】

【0038】
(式中、R15、R16、R17、R18およびR19は前記と同義を示し、*は不斉炭素を示す。)で表される化合物(以下、化合物(XVII)ともいう。)である、上記[27]または[28]記載の製造方法。
[30]上記[29]で製造される化合物(XVII)を酸化剤と反応させる工程を包含する、一般式(XVIII):
【0039】
【化14】

【0040】
(式中、R15、R16およびR17は前記と同義を示し、*は不斉炭素を示す。)で表される化合物(以下、化合物(XVIII)ともいう。)の製造方法。
[31]一般式(XIX):
【0041】
【化15】

【0042】
(式中、A環,RおよびRは前記と同義を示し、Xはハロゲン原子、p−トルエンスルホニルオキシ、メタンスルホニルオキシまたはトリフルオロメタンスルホニルオキシを示す。)で表される化合物(以下、化合物(XIX)ともいう。)を下記工程(i)〜(iii):
(i)一般式(XX):HOR(XX)または一般式(XXI):HNR(XXI)(式中、RおよびRは前記と同義を示す。)で表される化合物(以下それぞれ、化合物(XX)および化合物(XXI)ともいう。)と反応させて、Xで表される残基をX(Xは、前記と同義を示す。)で表される残基に変換する工程;
(ii)トリフルオロメタンスルホン酸無水物と塩基の存在下反応させて、水酸基を−OTf(ここで、Tfはトリフルオロメタンスルホニル基を示す。)に変換する工程;および
(iii)前記工程(i)および(ii)により得られる一般式(XIX’):
【0043】
【化16】

【0044】
(式中、各記号は前記と同義を示す。)で表される化合物(以下、化合物(XIX’)ともいう。)の−OTfを、ホスフィン類を含む遷移金属錯体の存在下、一般式(XXII):HPR(XXII)(式中、RおよびRは前記と同義を示す。)で表される化合物(以下、化合物(XXII)ともいう。)と反応させて、−PR(式中、RおよびRは前記と同義を示す。)で表される残基に変換する工程;
に付することを包含する化合物(I)の製造方法。
[32]RまたはRが不斉中心を有する残基である、上記[31]記載の製造方法。
[33]ジアステレオマー混合物である化合物(I)を分離する工程を包含する上記[32]記載の製造方法。
【発明の効果】
【0045】
本発明の化合物(I)を不斉配位子として含有する不斉遷移金属錯体は、BINAP等の従来の不斉配位子を用いた触媒では適用困難であった不斉付加反応、不斉共役付加反応や不斉ヒドロホウ素化反応等を高選択率かつ高収率で行うことを可能にした。
また化合物(I)は、公知化合物から3工程と比較的短い工程数で、特殊な操作を行うことなく調製することができ、その光学分割においてもQUINAPのように光学活性パラジウム化合物とのジアステレオマー複合体を形成する必要がないため、簡便かつ低コストに調製することができる。
さらに当該製造方法は、化合物(I)の置換基や構造変換がQUINAPに比べ容易であるため、様々な不斉反応に適したリガンドを設計する上で有用性が高い方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
以下、本発明について詳細に説明する。
まず、本明細書で使用している各記号の定義を行う。
【0047】
、R、X、X、X、XおよびXに示される「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子である。RおよびRは、好ましくは塩素原子またはフッ素原子である。XおよびXは、好ましくは塩素原子または臭素原子である。Xは、好ましくは塩素原子または臭素原子である。XおよびXは、好ましくは塩素原子または臭素原子である。
【0048】
に示される対イオンとしての「ハロゲン原子」とはフッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオンであり、好ましくは塩素イオンまたは臭素イオンである。
【0049】
、R、R13、R14、R18およびR19に示される「低級アルコキシ基」としては、炭素数1〜12の直鎖または分枝のアルコキシ基、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、ペントキシ、イソペントキシ、ネオペントキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ、ウンデシルオキシ、ドデシルオキシ等が挙げられ、好ましくはメトキシ、エトキシ、イソプロポキシまたはtert−ブトキシである。
【0050】
、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R29およびR30に示される「低級アルキル基」としては、炭素数1〜12の直鎖または分枝のアルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、2−エチルブチル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル等が挙げられ、好ましくはメチル、エチル、プロピル、ブチル、sec−ブチルまたはtert−ブチルである。
【0051】
、R、R、R、R、R10、R11、R12、R15、R16、R17、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R29およびR30に示される「低級アルキル基」は置換可能な位置に置換基を有していてもよく、当該置換基としては上記で定義されたハロゲン原子、上記で定義された低級アルコキシ基、水酸基、オキソ、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、アルキル部分が上記で定義された「低級アルキル基」であるアルコキシカルボニル基等が挙げられる。当該置換基の数は特に限定はなく、1〜3個が好ましく、同一または異なっていてもよい。
【0052】
25に示される「ヘテロアルキル基」とは、上記の低級アルキル基の炭素原子の1〜3個が、酸素原子、窒素原子および硫黄原子から選ばれる少なくとも一種のヘテロ原子で置換されたものを意味し、例えば、メトキシメチル、1−、または2−メトキシエチル、1−、または2−エトキシエチル、メトキシエトキシエチル、メチルアミノメチル、ジメチルアミノメチル、メチルチオメチル等が挙げられる。
当該「ヘテロアルキル基」は置換可能な位置に置換基を有していてもよく、当該置換基としては、上記「置換基を有していてもよい低級アルキル基」で例示された置換基と同じ置換基が挙げられる。当該置換基の数は特に限定はなく、1〜3個が好ましく、同一または異なっていてもよい。
【0053】
、RおよびRに示される「置換基を有していてもよい低級アルケニル基」の「低級アルケニル基」としては、炭素数2〜10の直鎖または分枝のアルケニル基、例えばエテニル、1−プロペニル、アリル、1−メチル−2−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、1−ヘキセニル、2−ヘキセニル、1−ヘプテニル、2−ヘプテニル、1−オクテニル、2−オクテニル、1−ノネニル、2−ノネニル、1−デセニル、2−デセニル等が挙げられ、好ましくはアリルである。当該アルケニル基は置換可能な位置に置換基を有していてもよく、そのような置換基としては、上記で定義されたハロゲン原子、上記で定義された低級アルコキシ基、水酸基、オキソ、アミノ基、ニトロ基、シアノ基,カルボキシル基,アルキル部分が上記で定義された「低級アルキル基」であるアルコキシカルボニル基、下記で定義するアリール基等が挙げられる。当該置換基の数は特に限定はなく、1〜3個が好ましく、同一または異なっていてもよい。
【0054】
に示される「置換基を有していてもよい低級アルキニル基」の「低級アルキニル基」としては、炭素数2〜10の直鎖または分枝のアルキニル基、例えばエチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−メチル−2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−ペンチニル、2−ペンチニル、1−ヘキシニル、2−ヘキシニル、1−ヘプチニル、2−ヘプチニル、1−オクチニル、2−オクチニル、1−ノニニル、2−ノニニル、1−デシニル、2−デシニル等が挙げられる。当該アルキニル基は置換可能な位置に置換基を有していてもよく、そのような置換基としては、上記「置換基を有していてもよいアルケニル基」で例示された置換基と同じ置換基が挙げられる。当該置換基の数は特に限定はなく、1〜3個が好ましく、同一または異なっていてもよい。
【0055】
、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R29およびR30に示される「アリール基」としては、炭素数6〜20のアリール基、例えばフェニル、1−、または2−ナフチル、ビフェニル等が挙げられる。
、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R15、R16、R17、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R29およびR30に示されるアリール基は置換可能な位置に置換基を有していてもよく、そのような置換基としては、上記で定義されたハロゲン原子、上記で定義された低級アルキル基、上記で定義された低級アルコキシ基、水酸基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基,カルボキシル基,アルキル部分が上記で定義された「低級アルキル基」であるアルコキシカルボニル基、上記で定義されたアリール基、下記で定義するアラルキル基等が挙げられる。当該置換基の数は特に限定はなく、1〜3個が好ましく、同一または異なっていてもよい。
【0056】
およびRに示される「置換基を有していてもよいフェニル基」の置換基としては、上記アリール基が有していてもよい置換基と同様である。当該置換基の数は特に限定はなく、1〜3個が好ましく、同一または異なっていてもよい。
「置換基を有していてもよいフェニル基」の具体例としては、p−トリル基、m−トリル基、o−トリル基、キシリル基(2,3−キシリル基、2,4−キシリル基、2,5−キシリル基、2,6−キシリル基、3,4−キシリル基または3,5−キシリル基)が挙げられる。
【0057】
、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R29およびR30に示される「ヘテロアリール基」としては、例えば炭素原子以外に酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選ばれるヘテロ原子を1〜3個含む5〜10員の芳香性を有する複素環基、及びその縮合ヘテロ環基等が挙げられる。例えば2−、又は3−チエニル、2−、又は3−フリル、1−、2−、又は3−ピロリル、1−、2−、4−、又は5−イミダゾリル、2−、4−、又は5−オキサゾリル、2−、4−、又は5−チアゾリル、1−、3−、4−、又は5−ピラゾリル、3−、4−、又は5−イソオキサゾリル、3−、4−、又は5−イソチアゾリル、1,2,4−トリアゾール−1−、3−、4−、又は5−イル、1,2,3−トリアゾール−1−、2−、又は4−イル、1H−テトラゾール−1−、又は5−イル、2H−テトラゾール−2−、又は5−イル、2−、3−、又は4−ピリジル、2−、4−、又は5−ピリミジニル、1−、2−、3−、4−、5−、6−、又は7−インドリル、2−、3−、4−、5−、6−、又は7−ベンゾフリル、2−、3−、4−、5−、6−、又は7−ベンゾチエニル、1−、2−、4−、5−、6−、又は7−ベンズイミダゾリル、2−、3−、4−、5−、6−、7−、又は8−キノリル、1−、3−、4−、5−、6−、7−、又は8−イソキノリル等が挙げられる。
【0058】
、R、R、R、R、R10、R11、R12、R15、R16、R17、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R29およびR30に示されるヘテロアリール基は置換可能な位置に置換基を有していてもよく、そのような置換基としては、上記「置換基を有していてもよいアリール基」で例示された置換基と同じ置換基が挙げられる。当該置換基の数は特に限定はなく、1〜3個が好ましく、同一または異なっていてもよい。
【0059】
、R、R、R、R、R10、R11、R12、R15、R16、R17およびR25に示される「置換基を有していてもよいシクロアルキル基」の「シクロアルキル基」としては、炭素数3〜7個のシクロアルキル基、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルまたはシクロヘプチルが挙げられる。当該シクロアルキル基は置換可能な位置に置換基を有していてもよく、そのような置換基としては、上記「置換基を有していてもよいアリール基」で例示された置換基と同じ置換基またはオキソが挙げられる。当該置換基の数は特に限定はなく、1〜3個が好ましく、同一または異なっていてもよい。
【0060】
、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R15、R16、R17、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R29およびR30に示される「置換基を有していてもよいアラルキル基」の「アラルキル基」としては、上記で定義された「低級アルキル基」の任意の位置に上記で定義された「アリール基」が置換して形成されるアラルキル基、例えばベンジル、1−または2−フェニルエチル、1−、2−または3−フェニルプロピル、1−または2−ナフチルメチル、1−または2−(1−ナフチル)エチル、1−または2−(2−ナフチル)エチル、2−エチル−1−フェニルブチル、ベンズヒドリル、トリチル等が挙げられる。当該アラルキル基は置換可能な位置に置換基を有していてもよく、そのような置換基としては、上記「置換基を有していてもよいアリール基」で例示された置換基と同じ置換基またはオキソが挙げられる。当該置換基の数は特に限定はなく、1〜3個が好ましく、同一または異なっていてもよい。
「置換基を有していてもよいアラルキル基」としては、2−フェニルエチル、2−(4−トリル)エチル、2−エチル−2−ヒドロキシ−1−フェニルブチル、2−(1−ナフチル)エチル、2−(2−ナフチル)エチル等が挙げられる。
【0061】
25に示される「置換基を有していてもよいヘテロアリールアルキル基」の「ヘテロアリールアルキル基」としては、上記で定義された「低級アルキル基」の任意の位置に上記で定義された「ヘテロアリール基」が置換して形成されるヘテロアリールアルキル基、例えば2−、又は3−チエニルメチル、2−、又は3−フリルメチル、1−、2−、又は3−ピロリルメチル、1−、2−、4−、又は5−イミダゾリルメチル、2−、4−、又は5−オキサゾリルメチル、2−、4−、又は5−チアゾリルメチル、1−、3−、4−、又は5−ピラゾリルメチル、3−、4−、又は5−イソオキサゾリルメチル、3−、4−、又は5−イソチアゾリルメチル、1,2,4−トリアゾール−1−、3−、4−、又は5−イルメチル、1,2,3−トリアゾール−1−、2−、又は4−イルメチル、1H−テトラゾール−1−、又は5−イルメチル、2H−テトラゾール−2−、又は5−イルメチル、2−、3−、又は4−ピリジルメチル、2−、4−、又は5−ピリミジニルメチル、1−、2−、3−、4−、5−、6−、又は7−インドリルメチル、2−、3−、4−、5−、6−、又は7−ベンゾフリルメチル、2−、3−、4−、5−、6−、又は7−ベンゾチエニルメチル、1−、2−、4−、5−、6−、又は7−ベンズイミダゾリルメチル、2−、3−、4−、5−、6−、7−、又は8−キノリルメチル、1−、3−、4−、5−、6−、7−、又は8−イソキノリルメチル、1−、または2−(2−、又は3−チエニル)エチル、1−、または2−(2−、又は3−フリル)エチル、1−、または2−(1−、2−、又は3−ピロリル)エチル、1−、または2−(1−、2−、4−、又は5−イミダゾリル)エチル、1−、または2−(2−、4−、又は5−オキサゾリル)エチル、1−、または2−(2−、4−、又は5−チアゾリル)エチル、1−、または2−(1−、3−、4−、又は5−ピラゾリル)エチル、1−、または2−(3−、4−、又は5−イソオキサゾリル)エチル、1−、または2−(3−、4−、又は5−イソチアゾリル)エチル、1−、または2−(1,2,4−トリアゾール−1−、3−、4−、又は5−イル)エチル、1−、または2−(1,2,3−トリアゾール−1、2−、又は4−イル)エチル、1−、または2−(1H−テトラゾール−1−、又は5−イル)エチル、1−、または2−(2H−テトラゾール−2−、又は5−イル)エチル、1−、または2−(2−、3−、又は4−ピリジル)エチル、1−または2−(2−、4−、又は5−ピリミジニル)エチル、1−、または2−(1−、2−、3−、4−、5−、6−、又は7−インドリル)エチル、1−、または2−(2−、3−、4−、5−、6−、又は7−ベンゾフリル)エチル、1−、または2−(2−、3−、4−、5−、6−、又は7−ベンゾチエニル)エチル、1−、または2−(1−、2−、4−、5−、6−、又は7−ベンズイミダゾリル)エチル、1−、または2−(2−、3−、4−、5−、6−、7−、又は8−キノリル)エチル、1−、または2−(1−、3−、4−、5−、6−、7−、又は8−イソキノリル)エチル等が挙げられる。当該ヘテロアリールアルキル基は置換可能な位置に置換基を有していてもよく、そのような置換基としては、上記「置換基を有していてもよいアリール基」で例示された置換基と同じ置換基またはオキソが挙げられる。当該置換基の数は特に限定はなく、1〜3個が好ましく、同一または異なっていてもよい。
【0062】
A環がベンゼン環の場合に有していてもよい置換基としては、RおよびRで示されるハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基等が挙げられる。
【0063】
およびRまたはR28およびR29が結合する窒素原子と一緒になって形成してもよい脂肪族含窒素複素環としては、RおよびRまたはR28およびR29が結合する窒素原子以外に、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる1〜4個のヘテロ原子を含んでいてもよい脂肪族複素環、例えば、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、チオモルホリン、ピペラジン等が挙げられる。当該脂肪族含窒素複素環は置換可能な位置に置換基を有していてもよく、そのような置換基としては、上記「置換基を有していてもよいアリール基」で例示された置換基と同じ置換基またはオキソが挙げられる。当該置換基の数は特に限定はなく、1〜3個が好ましく、同一または異なっていてもよい。
およびRに示される「置換基を有していてもよい脂肪族含窒素複素環」としては、4−ピペリジノンが好ましい。
【0064】
13、R14、R18およびR19に示される「アリールアルコキシ基」としては、上記で定義された「低級アラルキル基」を有するアリールアルコキシ基、例えばベンジルオキシ、1−、または2−フェニルエトキシ、1−、2−、または3−フェニルプロポキシ、1−、または2−ナフチルメトキシ、ベンズヒドリルオキシ、トリチルオキシ等が挙げられる。
【0065】
10に示される「トリアルキルシリル基」としては、トリメチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基等が挙げられ、トリメチルシリル基またはトリエチルシリル基が好ましい。
【0066】
13とR14またはR18とR19が結合するホウ素原子と一緒になって形成されてもよい、置換基を有していてもよい複素環またはその縮合環としては、ホウ素原子以外に1〜3個の酸素原子、窒素原子または硫黄原子を有していてもよい複素環またはその縮合環、例えば1,3,2−ジオキサボロラン、1,3,2−ベンゾジオキサボロール、9−ボラビシクロ[3.3.1]ノナン等が挙げられ、1,3,2−ベンゾジオキサボロールが好ましい。当該複素環またはその縮合環は、置換可能な位置に置換基を有していてもよく、そのような置換基としては、上記「置換基を有していてもよいアリール基」で例示された置換基と同じ置換基が挙げられる。当該置換基の数は特に限定はなく、1〜3個が好ましく、同一または異なっていてもよい。
【0067】
化合物(XV)においてR16およびR17がそれぞれ結合する炭素原子と一緒になって形成してもよい同素環またはその縮合環としては、シクロペンテン、シクロヘキセン、インデン、1,2−ジヒドロナフタレン等が挙げられる。
【0068】
ホウ素化合物(VII)または(XVI)の錯体としては、例えばテトラヒドロフラン、ジメチルスルフィド、アンモニア、tert−ブチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、ジメチルアミン、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、モルホリン、ピリジン等が配位した錯体が挙げられる。
【0069】
化合物(V)、(Va)、(Vb)、(VIII)、(IX)、(X)、(XII)、(XIV)、(XVII)、(XVIII)および(XXVII)における*は、付された炭素原子が不斉炭素であることを示し、それぞれの化合物が光学活性な化合物であることを意味する。
本明細書において光学活性とは、不斉炭素においてその立体配置が異なる異性体の等量混合物(例えば、ラセミ体)でないことを意味し、一方の立体異性体が過剰に存在する場合(例えば、6:4の混合物)であれば、光学活性と定義される。
【0070】
化合物(I)、(XIX)および(XIX’)は、フタラジン環とナフタレン環を繋ぐ単結合の回転障害に基づくアトロプ異性を示し、室温において分割可能な不斉を示す。
【0071】
本明細書で定義される化合物は、塩の形態であってもよい。そのような塩としては、例えば無機酸塩(例えば塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等);有機酸塩(例えば酢酸塩、プロピオン酸塩、メタンスルホン酸塩、4−トルエンスルホン酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩等);アルカリ金属塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩等);アルカリ土類金属塩(例えばカルシウム塩、マグネシウム塩等);有機塩基塩(例えばトリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ピリジン塩、ピコリン塩、ジシクロヘキシルアミン塩等)等が挙げられる。
【0072】
化合物(I)において、RおよびRとしては置換基を有していてもよいフェニル基またはシクロヘキシル基が好ましく、フェニル基、トリル基(p−トリル基またはm−トリル基)またはシクロヘキシル基がより好ましい。RおよびRとしては水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、シクロアルキル基が好ましく、水素原子、メトキシ基がより好ましい。
【0073】
化合物(I)のXにおけるRおよびRとしては、置換基を有していてもよいアラルキル基が好ましく、さらに不斉中心を有する残基である態様がより好ましい。具体的には、(R)−、または(S)−2−フェニルエチル基、(R)−、または(S)−2−(4−トリル)エチル、(R)−、または(S)−2−エチル−2−ヒドロキシ−1−フェニルブチル、(R)−、または(S)−2−(1−ナフチル)エチル、(R)−、または(S)−2−(2−ナフチル)エチル等が好ましい。
【0074】
本発明の化合物(I)は、下記反応スキームによって示される製法1によって製造することができる。
【0075】
【化17】

【0076】
(式中、各記号は前記と同義を示す。)
すなわち、化合物(XIX)を原料として、
(i)化合物(XX)または化合物(XXI)と反応させて、Xで表される残基をXで表される残基に変換する工程;
(ii)トリフルオロメタンスルホン酸無水物と塩基の存在下反応させて、水酸基を−OTfに変換する工程;および
(iii)前記工程(i)および(ii)により得られた化合物(XIX’)の−OTfを、ホスフィン類を含む遷移金属錯体の存在下、化合物(XXII)と反応させて、−PR(式中、RおよびRは前記と同義を示す。)で表される残基に変換する工程を包含する方法によって、化合物(I)を製造することができる。
【0077】
このような製法1を採用することにより、公知化合物である化合物(XIX)から特殊な操作を行うことなく、3工程という短い工程で化合物(I)を容易に製造することができる。
また、XにおけるRおよびRが、好ましい態様である不斉中心を有する残基である場合は、化合物(I)自身がジアステレオマー混合物となるため、QUINAPの場合のように光学活性パラジウム化合物とのジアステレオマー複合体とするまでもなく、光学分割が可能である。
【0078】
さらに当該製法1により、化合物(I)の置換基であるX、RおよびRなどの置換基や母核自体も容易に変換することができ、電子的または立体的効果が異なる様々なリガンドを容易に調製することが可能であるので、製法1は様々な不斉反応に適したリガンドを設計する上において有用性が高い方法である。
【0079】
以下、製法1について説明する。工程(i)〜(iii)において、製造される各化合物は、通常の処理操作、例えば抽出操作後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーなどに付することによって単離精製することができる。
【0080】
製法1において、工程(i)と工程(ii)の順番は特に限定されるものではなく、どちらを先に行ってもよいが、工程(i)において化合物(XXI)と反応させる場合は、工程(i)を先に行うと変換された−NHRで表される基のプロトンが工程(ii)によりトリフルオロメタンスルホニル化される虞があるため、工程(ii)を先に行う方が好ましい。
【0081】
工程(i)において、化合物(XX)と反応させる場合(以下、工程(i−1)という。)と化合物(XXI)と反応させる場合(以下、工程(i−2)という。)は反応条件が異なるため、以下、場合分けして説明する。
【0082】
工程(i−1)は、原料化合物(化合物(XIX)またはそのトリフラート)と化合物(XX)を溶媒中において、塩基の存在下反応させることで行うことができる。試薬の添加順序は特に限定はないが、化合物(XX)と塩基を予め溶媒中で反応させて化合物(XX)のアルコラートに十分変換後、原料化合物を添加する順序が好ましい。
【0083】
工程(i−1)に用いる塩基としては、例えば水素化ナトリウム、ナトリウムアミド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられるが、水素化ナトリウムが好ましい。塩基の使用量は、化合物(XX)に対して1〜5当量が好ましく、1.1〜2.5当量がより好ましい。塩基の使用量がこの範囲外でも反応を行うことができるが、この範囲より少ないと化合物(XX)のアルコラートが十分生成しない場合があり、多い場合は副生成物が生成する虞がある。
【0084】
化合物(XX)の使用量は、原料化合物に対して1〜5当量が好ましく、1〜1.5当量がより好ましい。
【0085】
工程(i−1)で用いる溶媒は、当該反応を阻害しないものであればよく、例えばテトラヒドロフラン(THF)、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、N,N−ジメチルホルムアミド、1,2−ジメトキシエタン、メチルtert−ブチルエーテル、1,4−ジオキサン、ジメチルスルホキシドの単独または混合溶媒が挙げられる。溶媒の使用量は、原料化合物1kgに対して0.2〜50Lの範囲である。
【0086】
工程(i−1)の反応温度は、通常は−20℃〜100℃であるが、0℃〜40℃が好ましい。反応時間は、用いられる試薬や反応温度にも依存するが、通常4時間〜40時間である。
【0087】
工程(i−2)は、原料化合物(化合物(XIX)またはそのトリフラート)と化合物(XXI)を溶媒中または無溶媒で反応させることで行うことができる。試薬の添加順序は特に限定はない。化合物(XXI)はそれ自身の求核性が高いため、塩基を要することなく反応が進行する。
【0088】
化合物(XXI)の使用量は、原料化合物に対して1〜20当量が好ましく、1〜7当量がより好ましい。化合物(XXI)の使用量がこの範囲外でも反応を行うことができるが、この範囲より少ないと反応が完結しない場合があり、多い場合はコストが高くなり不利になる。
【0089】
工程(i−2)は溶媒中で行うこともできるが、化合物(XXI)を比較的多く用いた場合は無溶媒で行うことが好ましい。溶媒を用いる場合は、当該反応を阻害しないものであればよく、例えばトルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、N,N−ジメチルホルムアミド、1,2−ジメトキシエタン、メチルtert−ブチルエーテル,1,4−ジオキサン等の単独または混合溶媒を用いて行うこともできる。溶媒の使用量は、原料化合物1kgに対して0.1L〜50Lの範囲が好ましい。
【0090】
工程(i−2)の反応温度は、通常は0℃〜180℃であるが、20℃〜150℃が好ましい。反応時間は、用いられる試薬や反応温度にも依存するが、通常0.5時間〜40時間である。
【0091】
工程(ii)は、原料化合物(化合物(XIX)またはそのXがXに変換された化合物)とトリフルオロメタンスルホン酸無水物を溶媒中において、塩基の存在下反応させることで行うことができる。試薬の添加順序は特に限定はなく、各試薬を順次または同時に添加すればよい。
【0092】
工程(ii)に用いる塩基としては、例えばピリジン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、4−ジメチルアミノピリジン等が挙げられるが、ピリジンまたはトリエチルアミンが好ましい。塩基の使用量は、原料化合物に対して1〜10当量が好ましい。塩基の使用量がこの範囲外でも反応を行うことができるが、この範囲より少ないと反応が完結しない場合があり、多い場合はコストが高くなり不利になる。
【0093】
トリフルオロメタンスルホン酸無水物の使用量は、原料化合物に対して1〜5当量が好ましく、1〜1.2当量がより好ましい。トリフルオロメタンスルホン酸無水物の使用量がこの範囲外でも反応を行うことができるが、この範囲より少ないと反応が完結しない場合があり、多い場合は副反応が起こり、副生成物ができる虞がある。
【0094】
工程(ii)で用いる溶媒は、当該反応を阻害しないものであればよく、例えばジクロロメタン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、N,N−ジメチルホルムアミド、1,2−ジメトキシエタン、メチルtert−ブチルエーテル、1,4−ジオキサン、酢酸エチル、アセトニトリル、クロロホルム、1,2−ジクロロエタンの単独または混合溶媒が挙げられる。溶媒の使用量は、原料化合物に対して0.2〜50倍重量の範囲である。
【0095】
工程(ii)の反応温度は、通常は−78℃〜100℃であるが、―20℃〜40℃が好ましい。反応時間は、用いられる試薬や反応温度にも依存するが、通常0.5時間〜40時間である。
【0096】
工程(iii)では、例えば溶媒中において、化合物(XIX’)をホスフィン類を含む遷移金属錯体の存在下、化合物(XXII)と反応させることにより、化合物(I)を製造することができる。試薬の添加順序は特に限定はなく、各試薬を順次または同時に添加すればよい。
【0097】
工程(iii)に用いるホスフィン類を含む遷移金属錯体としては、例えばNiCl(dppe)、NiCl(dppp)、NiCl(dppb)、PdCl(dppe)、PdCl(dppp)、PdCl(dppb)(ここで、dppeは1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタンを示し、dpppは1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパンを示し、dppbは1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタンを示す。)等が挙げられるが、NiCl(dppe)が好ましい。ホスフィン類を含む遷移金属錯体の使用量は、化合物(XIX’)に対して0.01〜1当量が好ましく、0.02〜0.2当量がより好ましい。ホスフィン類を含む遷移金属錯体の使用量がこの範囲外でも反応を行うことができるが、この範囲より少ないと反応が遅くなる傾向があり、多い場合はコストが高くなり不利になる。
【0098】
化合物(XXII)の使用量は、化合物(XIX’)に対して1〜10当量が好ましく、1〜3当量がより好ましい。化合物(XXII)の使用量がこの範囲外でも反応を行うことができるが、この範囲より少ないと反応が完結しない場合があり、多い場合はコストが高くなり不利になる。
【0099】
工程(iii)は、副成するトリフルオロメタンスルホン酸の酸性をトラップする目的で、塩基を添加して行うのが好ましい。当該塩基としては、例えば、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン等の3級アミンが挙げられる。当該塩基の使用量は、化合物(XIX’)に対して1〜30当量が好ましく、3〜10当量がより好ましい。塩基の使用量がこの範囲外でも反応を行うことができるが、この範囲より少ないと原料または生成物が分解し、副生成物ができる虞があり、多い場合はコストが高くなり不利になる。
【0100】
工程(iii)で用いる溶媒は、当該反応を阻害しないものであればよく、例えばN,N−ジメチルホルムアミド、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、1,2−ジメトキシエタン、メチルtert−ブチルエーテル、1,4−ジオキサン、酢酸エチル、アセトニトリル、1,2−ジクロロエタンの単独または混合溶媒が挙げられる。溶媒の使用量は、化合物(XIX’)に対して0.2〜50倍重量の範囲である。
【0101】
工程(iii)の反応温度は、通常は0℃〜180℃であるが、40℃〜140℃が好ましい。反応時間は、用いられる試薬や反応温度にも依存するが、通常2時間〜40時間である。
【0102】
XにおけるRおよびRが不斉中心を有する残基である場合は、製法1により得られる化合物(I)はジアステレオマー混合物であり、分離精製することにより光学活性な化合物(I)を得ることができる。分離精製は、通常の分別再結晶またはシリカゲルクロマトグラフィーなどにより行うことができる。
【0103】
製法1の原料である化合物(XIX)は公知化合物であり、J. Org. Chem., 2003, 68, p.6806-2609に記載の方法に準じて調製することができる。
【0104】
本発明の化合物(I)が光学活性化合物である場合(以下、光学活性化合物(I)という。)は、光学活性化合物(I)を配位子として含有する不斉遷移金属錯体は、不斉反応のための触媒、すなわち不斉触媒として用いることができる。
【0105】
当該遷移金属錯体の遷移金属としては、Ru、Pd、Rh、CuまたはAg等が挙げられ、Rh、CuまたはAgが好ましい。
【0106】
当該不斉遷移金属錯体は、例えば溶媒中において、光学活性化合物(I)と遷移金属塩またはその錯体とを反応させることにより調製することができる。
【0107】
不斉遷移金属錯体調製に使用される遷移金属塩またはその錯体としては、例えばCuX、Cu(X、Rh(cod)、(nbd)Rh(acac)、CyRu(XまたはAgX(ここで、記号または略号は前記と同義を示す)等が挙げられ、CuX、Rh(cod)、(nbd)Rh(acac)またはAgXが好ましい。
【0108】
遷移金属塩またはその錯体の使用量はその種類にもよるが、光学活性化合物(I)に対して0.5〜2当量が好ましく、1〜1.3当量がより好ましい。
【0109】
遷移金属の酸化数を変えるために、必要により、還元剤を添加してもよい。かかる還元剤としてはアスコルビン酸またはその塩(例えば、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カリウム等)、ホスフィン類(例えば、トリフェニルホスフィン、トリn−ブチルホスフィン等)等が挙げられる。
かかる還元剤の使用量は、変化させる酸化数に応じて適宜決定すればよく、例えば酸化数を一価変化させる場合は、遷移金属塩またはその錯体に対して1当量〜40当量添加すればよい。
【0110】
不斉遷移金属錯体調製に用いる溶媒は、当該反応を阻害しないものであればよく、例えばテトラヒドロフラン、トルエン、ジクロロメタン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、1,2−ジメトキシエタン、メチルtert−ブチルエーテル、1,4−ジオキサン、酢酸エチル、アセトニトリル、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール溶媒等の単独または混合溶媒が挙げられる。溶媒の使用量は、光学活性化合物(I)に対して0.2〜50倍重量の範囲である。
【0111】
不斉遷移金属錯体調製の反応温度は、通常は−20℃〜130℃であるが、0℃〜40℃が好ましい。反応時間は、用いられる試薬や反応温度にも依存するが、通常0.5時間〜40時間である。
【0112】
得られた不斉遷移金属錯体は常法により単離精製してもよいが、反応混合物の溶液をそのまま不斉触媒として使用してもよい。
【0113】
本発明の不斉遷移金属錯体で触媒される不斉反応としては特に限定はなく、例えば不斉水素化反応、不斉付加反応、不斉共役付加反応、不斉ヒドロホウ素化反応、不斉ジホウ素化反応、不斉環化反応、不斉アルドール反応、不斉置換反応または不斉ディールスアルダー[4+2]環化反応等が挙げられるが、従来の不斉触媒で適用困難な不斉付加反応、不斉共役付加反応、不斉ヒドロホウ素化反応、不斉ジホウ素化反応または不斉[2+3]環化反応,不斉Sn2’置換反応等が好ましい。
【0114】
当該不斉反応においては、例えば溶媒中において基質を不斉遷移金属錯体に接触させることにより光学活性化合物を得ることができる。
ここで、基質とは当該不斉反応の原料となる化合物を意味し、アキラルまたはプロキラルな化合物が好ましいが、不斉中心を有する光学活性化合物またはラセミ体等をも包含するものである。また、基質は単独の化合物でもよいし、2種以上の化合物の組み合わせであってもよい。
【0115】
不斉付加反応の一態様を製法2として下記反応スキームに示す。製法2は、例えば溶媒中において、基質として化合物(II)、化合物(III)および化合物(IV)を用い、不斉触媒として本発明の不斉遷移金属錯体を用いて反応させることにより、化合物(V)を製造することができる。この場合、不斉遷移金属錯体としては、光学活性化合物(I)とCuX(Xは前記と同義を示す。)との反応により調製されたものであるのが好ましい。
【0116】
【化18】

【0117】
(式中、各記号は前記と同義を示す。)
製法2において、試薬の添加順序は特に限定はないが、好ましくは不斉遷移金属錯体を調製した溶液に化合物(II)〜(IV)を順次または同時に添加する。
【0118】
不斉遷移金属錯体の使用量は、化合物(II)に対して0.001〜2当量が好ましく、0.01〜0.2当量がより好ましい。不斉遷移金属錯体の使用量がこの範囲外でも反応を行うことができるが、この範囲より少ないと反応が完結しない場合があり、多い場合はコストが高くなり、不利になる。
【0119】
化合物(III)の使用量は、化合物(II)に対して1〜10当量が好ましく、1〜2当量がより好ましい。化合物(IV)の使用量は、化合物(II)に対して1〜20当量が好ましく、1〜5当量がより好ましい。
【0120】
製法2においては、反応を促進するため乾燥剤を添加するのが好ましい。かかる乾燥剤としては、モルキュラシーブ、シリカゲル、セライト等が挙げられ、モルキュラシーブ4Åが好ましい。当該乾燥剤の使用量は、化合物(II)に対して、0.5〜40重量倍が好ましく、1〜10重量倍がより好ましい。
【0121】
製法2においては、反応を促進するため塩基を添加するのが好ましい。かかる塩基としては、第3級アミンが用いられる。例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンなどが挙げられる。当該塩基の使用量は、化合物(IV)に対して、0.1〜5当量が好ましく、0.4〜2当量がより好ましい。
【0122】
製法2において使用される溶媒は、触媒調製時の溶媒と同じものが好ましく、例えばトルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、1,2−ジメトキシエタン、メチルtert−ブチルエーテル、1,4−ジオキサン、酢酸エチル、アセトニトリル、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、ジクロロメタン、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール溶媒の単独または混合溶媒が挙げられる。溶媒の使用量は、化合物(II)に対して0.2〜50倍重量の範囲である。
【0123】
反応温度は、通常は−78℃〜130℃であるが、−20℃〜40℃が好ましい。反応温度が低いと立体選択性が向上する傾向にあるが、反応速度が遅くなる。反応時間は、用いられる試薬や反応温度にも依存するが、通常1時間〜300時間である。
【0124】
得られる化合物(V)は、常法により単離精製することができる。例えば、抽出操作を行った後か、あるいは反応混合物を直接シリカゲルカラムクロマトグラフィーに付することにより、化合物(V)を単離精製することができる。
【0125】
製法2で得られる化合物(V)のRとRが隣接する窒素原子と一緒になって4−ピペリジノンを形成する態様、すなわち化合物(Va)は、下記スキームに示すように4−ピペリジノン環を脱保護することにより、一級プロパルギルアミンである化合物(Vb)に導くことができるので、有用な態様である。
【0126】
【化19】

【0127】
(式中、各記号は前記と同義を示す。)
4−ピペリジノン環を脱保護して一級アミンへ変換するこのような方法は、三重結合のような不安定な基が存在していても、光学純度を保持して収率よく進行する。したがって、この反応は種々の不安定な官能基が存在していても副反応を伴うことなく簡便かつ収率よく進行すると考えられる。このように、4−ピペリジノン誘導体からアミン誘導体への一般的な変換に応用可能であり、一級アミンの新規製法として有用である。
当該脱保護は、例えば、アルコール溶媒中、化合物(Va)をアンモニアおよびアンモニウム塩と反応させることにより行うことができる。以下に当該態様について説明するが、これに限定されるものではない。
【0128】
使用するアンモニウム塩としては、塩化アンモニウムが好ましい。アンモニウム塩の使用量は、化合物(Va)に対して1〜40当量が好ましく、1〜5当量がより好ましい。
【0129】
アンモニアとしては、使用するアルコール溶媒に飽和させた形態で使用すればよい。アルコール溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ブタノールを使用することができる。
アンモニアを飽和させたアルコール溶媒の使用量は、化合物(Va)に対して、1〜100重量倍の範囲である。
【0130】
反応温度は、通常は0℃〜130℃であるが、40℃〜100℃が好ましい。反応時間は、用いられる試薬や反応温度にも依存するが、通常0.5時間〜48時間である。
【0131】
得られる化合物(Vb)は、常法により単離精製することができる。例えば、抽出操作を行った後か、あるいは反応混合物を直接シリカゲルカラムクロマトグラフィーに付することにより、化合物(Vb)を単離精製することができる。
【0132】
不斉ヒドロホウ素化反応の一態様を、製法3として下記反応スキームに示す。製法3は例えば溶媒中において、基質として化合物(VI)およびホウ素化合物(VII)を用い、不斉触媒として本発明の不斉遷移金属錯体を用いて反応させることにより、化合物(VIII)を製造することができる。この場合、不斉遷移金属錯体としては、光学活性化合物(I)とRh(cod)(Xおよびcodは前記と同義を示す。)との反応により調製されたものであるのが好ましい。
【0133】
【化20】

【0134】
(式中、各記号および略号は前記と同義を示す。)
製法3において、試薬の添加順序は特に限定はないが、好ましくは触媒を溶解した溶液に、化合物(VI)およびホウ素化合物(VII)を順次または同時に添加する。
【0135】
不斉遷移金属錯体の使用量は、化合物(VI)に対して0.001〜2当量が好ましく、0.01〜0.2当量がより好ましい。不斉遷移金属錯体の使用量がこの範囲外でも反応を行うことができるが、この範囲より少ないと反応が完結しない場合があり、多い場合はコストが高くなり、不利になる。
【0136】
製法3に使用されるホウ素化合物(VII)としては特に限定はないが、カテコールボラン、ピナコールボラン等が挙げられ、カテコールボラン好ましい。ここで、ホウ素化合物(VII)は使用前に蒸留等で精製したものを用いるのが好ましい。ホウ素化合物(VII)の使用量は、化合物(VI)に対して1〜10当量が好ましく、1〜3当量がより好ましい。
【0137】
当該ヒドロホウ素化反応において使用される溶媒は反応を阻害しないものであればよく、例えばトルエン、テトラヒドロフラン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、1,2−ジメトキシエタン、メチルtert−ブチルエーテル、1,4−ジオキサン等の単独または混合溶媒が挙げられる。溶媒の使用量は、化合物(VI)に対して0.2〜50倍重量の範囲である。
【0138】
反応温度は、通常は−78℃〜120℃であるが、−20℃〜40℃が好ましい。反応時間は、用いられる試薬や反応温度にも依存するが、通常0.1時間〜40時間である。
【0139】
得られる化合物(VIII)は不安定であるため、通常単離精製することなく、反応混合物を続く工程に付することにより、有用な光学活性化合物へと導くことができる。
【0140】
例えば、化合物(VIII)を含む反応混合物にエタノール等を添加して反応を停止させた後、酸化剤を添加して反応させるか、または直接反応混合物に酸化剤を添加することにより、化合物(IX)を得ることができる。
【0141】
酸化剤としては、通常、過酸化水素水溶液を用いる。この時、水酸化ナトリウム水溶液等を添加することが好ましい。酸化剤の使用量は、化合物(VI)に対して5〜60当量が好ましく、10〜40当量がより好ましい。
【0142】
当該酸化の反応温度は、通常は−78℃〜50℃であるが、−20℃〜30℃が好ましい。反応時間は、用いられる試薬や反応温度にも依存するが、通常0.5時間〜24時間である。
【0143】
得られる化合物(IX)は常法に従い単離精製することができる。例えば、抽出等を行った後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーなどに付して単離精製することができる。
【0144】
また、下記スキームに示すように、J. M. Chem. Eur. J., 2000, 6, p.1840-1846に記載の方法に従い、化合物(VIII)をヒドロキシルアミン−O−スルホン酸(すなわち、ヒドロキシルアミンの硫酸エステル)と反応させることにより化合物(X)を製造することができ、また、J. Org. Chem., 1999, 64, p.9704-9710に記載の方法に従い、化合物(VIII)を化合物(XI)と反応させた後に過酸化水素水溶液と反応させることにより化合物(XII)を製造でき、あるいは、化合物(VIII)を化合物(XIII)と反応させた後に亜塩素酸ナトリウムと反応させることにより化合物(XIV)を製造することができる。
【0145】
【化21】

【0146】
(式中、各記号は前記と同義を示す。)
不斉ジホウ素化反応の一態様を、製法4として下記反応スキームに示す。製法4は、J. Am. Chem. Soc., 2003, 125, p.8702-8703の記載の方法に準じて、QUINAPの代わりに光学活性化合物(I)を使用することにより、化合物(XVII)および化合物(XVIII)を製造することができる。この場合、不斉遷移金属錯体としては、光学活性化合物(I)と(nbd)Rh(acac)(nbdおよびacacは前記と同義を示す。)との反応により調製されたものであるのが好ましい。
【0147】
【化22】

【0148】
(式中、各記号および略号は前記と同義を示す。)
不斉置換反応(Sn2’)の一態様を、製法5として下記反応スキームに示す。製法5は、Tetrahedron, 1994, 50, p.4493-4506の記載の方法に準じて、QUINAPの代わりに光学活性化合物(I)を使用することにより、式(XXIII)で表される化合物を製造することができる。
【0149】
【化23】

【0150】
(式中、各記号前記と同義を示す。)
不斉ディールスアルダー環化反応の一態様を、製法6として下記反応スキームに示す。製法6は、J. Organometallics, 2001, 20, p.2454-2458の記載の方法に準じて、QUINAPの代わりに光学活性化合物(I)を使用することにより、一般式(XXIV)で表される化合物を製造することができる。この場合、不斉遷移金属錯体としては、光学活性化合物(I)、CyRu(X(CyおよびXは前記と同義を示す。)およびAgSbFとの反応により調製されたものであるのが好ましい。
【0151】
【化24】

【0152】
(式中、R20は、上記でR等として定義された低級アルキル基を示し、他の記号および略号は前記と同義を示す。)
不斉[3+2]環化反応の一態様を、製法7として下記反応スキームに示す。製法7は、J. Am. Chem. Soc., 2003, 125, p.10174-10175の記載の方法に準じて、QUINAPの代わりに光学活性化合物(I)を使用することにより、一般式(XXV)で表される化合物を製造することができる。この場合、不斉遷移金属錯体としては、光学活性化合物(I)とAgX(Xは前記と同義を示す。)との反応により調製されたものであるのが好ましい。
【0153】
【化25】

【0154】
(式中、R21およびR22は、同一または異なって、上記でR等として定義された低級アルキル基を示し、Arは上記でR等として定義された置換基を有していてもよいアリール基を示し、他の記号は前記と同義を示す。)
【0155】
不斉共役付加反応の一態様を、製法8として下記反応スキームに示す。製法8は、J. Am. Chem. Soc., 2003, 125, p.6054-6055の記載の方法に準じて、本発明の不斉遷移金属錯体を適用することによって行うことができる。例えば溶媒中において、基質として化合物(XXVI)および化合物(IV)を用い、不斉触媒として本発明の不斉遷移金属錯体を用いて反応させることにより、化合物(XXVII)を製造することができる。この場合、不斉遷移金属錯体としては、光学活性化合物(I)、Cu(X(Xは前期と同義を示す。)および還元剤との反応により調製されたものであるのが好ましい。
化合物(XXVII)は、環構造を開裂させることにより様々なアルキンカルボン酸誘導体に導くことができる有用なシントンである。
【0156】
【化26】

【0157】
(式中、各記号および略号は前記と同義を示す。)
製法8において、試薬の添加順序は特に限定はないが、好ましくは触媒を溶解した溶液に、化合物(XXVI)および化合物(IV)を順次または同時に添加する。
【0158】
原料化合物(XXVI)は、Tetrahedron, Vol.41, p.1919-1929(1985)、Tetrahedron Lett., Vol.42, p.5203-5205(2001) または Synth. Commun., Vol.10, p.661-665(1980)に記載の方法に従って合成することができる。
化合物(XXVI)としては、メルドラム酸誘導体(YおよびYが酸素原子であり、Yが炭素原子であり、R23およびR24がメチルである)またはバルビツール酸誘導体(YおよびYがNR26であり、Yが炭素原子であり、R23およびR24が一緒になってオキソを形成する)が好ましい。
【0159】
触媒調製時に使用する還元剤としてはアスコルビン酸塩が好ましく、アスコルビン酸ナトリウムがより好ましい。還元剤の使用量は、Cu(Xに対して1〜30当量が好ましく、1〜5当量がより好ましい。
【0160】
不斉遷移金属錯体の使用量は、化合物(XXVI)に対して0.01〜1当量が好ましく、0.05〜0.5当量がより好ましい。不斉遷移金属錯体の使用量がこの範囲外でも反応を行うことができるが、この範囲より少ないと反応が完結しない場合があり、多い場合はコストが高くなり、不利になる。
【0161】
化合物(IV)の使用量は、化合物(XXVI)に対して1〜10当量が好ましい。
【0162】
共役付加反応において使用される溶媒は反応を阻害しないものであればよいが、水または水と共溶媒の混合溶媒が挙げられる。かかる共溶媒としてはブタノール、イソプロパノール、エタノール、メタノール等のアルコール溶媒、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジオキサン、酢酸エチル、トルエン等またはこれらの混合溶媒が挙げられる。溶媒の使用量は、反応溶液の濃度が0.1M〜10Mとなる量を使用すればよい。
【0163】
反応温度は、通常は−20℃〜100℃であるが、−20℃〜40℃が好ましい。反応時間は用いられる試薬や反応温度にも依存するが、通常1時間〜120時間である。
【0164】
得られる化合物(XXVII)は、常法により単離精製することができる。例えば、抽出操作を行った後か、あるいは反応混合物を直接シリカゲルカラムクロマトグラフィーに付することにより、化合物(XXVII)を単離精製することができる。
【実施例】
【0165】
以下、本発明について、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
なお、NMRデータ中J値はHzを表す。
【0166】
参考例1:1−(4−クロロフタラジン−1−イル)−ナフタレン−2−オール
1,4−ジクロロフタラジン(9.96g, 50mmol)のジクロロエタン溶液(180ml)に2−ナフトール(7.24g,50mmol)と塩化アルミニウム(7.38g, 55mmol)を加え、80℃で17時間撹拌した。赤暗色溶液を水(600ml)に注ぎ、得られた茶褐色懸濁液を1時間激しく撹拌した。固体を濾過し、ジエチルエーテルで洗浄し、乾燥して、11.8gの表題化合物をベージュ色の固体として得た。(収率:77%)
1H-NMR (300MHz, DMSO-d6) δ: 6.99(d, J=8.0, 1H), 7.24-7.35(m, 2H), 7.37(d, J =8.9, 1H), 7.49(d, J=8.3, 1H), 7.91-8.01(m, 2H), 8.04(d, J=9.0, 1H), 8.13-8.19(m, 1H), 8.41(d, J=8.4, 1H), 9.94(s, 1H).
【0167】
参考例2:1−(4−クロロフタラジン−1−イル)−7−メトキシ−ナフタレン−2−オール
1Lのフラスコに、窒素下、1,4−ジクロロフタラジン(11.4g, 57.3mmol)と7−メトキシ−ナフタレン−2−オール(10.0g, 57.7mmol)を混合し、これに1,2−ジクロロエタン(450ml)を加えた。10分間攪拌後、塩化アルミニウム(7.64g,57.4mmol)を加えた。得られた懸濁物を80℃で20時間攪拌した。室温に冷却後、黒色の懸濁物を氷水(500ml)に注ぎ、1時間攪拌した。二つの層に分離し、水層をジクロロメタン(3x200ml)で抽出した。合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下濃縮した。粗製の固体をジクロロメタン(35ml)で1時間トリチュレートし、ろ過して、15.2gの表題化合物を灰色結晶として得た。(収率:80%)
【0168】
mp: > 210 ℃
1H-NMR(300 MHz, DMSO-d6) δ3.50(s, 3H), 6.33(d, J=2.4, 1H), 7.01(dd, J=2.4, J=8.7, 1H), 7.20(d, J=8.7, 1H), 7.52(d, J=8.4, 1H), 7.86(d, J=9.0, 1H), 7.94(d, J=8.7, 1H), 7.96-8.02(m, 1H), 8.13-8.18(m, 1H), 8.40(d, J=8.4, 1H).
13C-NMR(75 MHz, DMSO-d6) δ55.6, 103.6, 113.9, 115.5, 116.2, 123.9, 125.6, 126.1, 127.4, 129.1, 130.5, 131.5, 134.9, 135.0, 135.5, 154.7, 154.8, 158.8, 159.2.
FTIR(thin film, cm-1): 3017(w), 1625(m), 1513(s), 1462(w), 1342(m), 1290(m), 1221(s), 772(s).
HRMS(ESI, pos.) calcd for C19H13N2O2Cl (M+H)+337.07. found 337.07.
Anal. Calcd for C19H13N2O2Cl: C, 67.76; H, 3.89. Found: C, 67.58; H, 4.13.
【0169】
参考例3:5−(シクロプロピルメチレン)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−4,6−ジオン
シクロプロピルマグネシウムブロミドの0.5Mテトラヒドロフラン溶液(13ml,6.6mmol)を5−ジメチルアミノメチレン−2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−4,6−ジオン(1.0g,5.0mmol)のテトラヒドロフラン(12ml)溶液に23℃で滴下した。混合物を1時間攪拌した後、反応液を飽和塩化アンモニウム水溶液でクェンチした。有機層を分離し、水層をジクロロメタンで抽出した。合わせた有機層を水および食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル 5:1)で精製し、ヘキサンから結晶化して、498mgの純粋な表題化合物を淡黄色粉末として得た。(収率:51%)
【0170】
mp: 91-92 ℃.
1H-NMR(300MHz, CDCl3) δ 1.06-1.12(m, 2H), 1.42-1.49(m, 2H), 1.73(s, 6H), 3.15-3.25(m, 1H), 7.18(d, J=11.9, 1H).
13C-NMR(75MHz, CDCl3) δ 14.2, 16.8, 27.7, 104.6, 114.5, 160.8, 162.2, 174.2.
FTIR(thin film, cm-1): 2998(w), 1725(s), 1603(s), 1396(s), 1276(s), 1201(s), 1005(m), 931(s), 856(m), 796(m).
MS(ESI, pos.) calcd for C10H12NaO4+(M+Na+) 219.1, found 219.1.
Anal. Calcd for C10H12O4: C, 61.22; H, 6.16. Found: C, 61.19; H, 6.21.
【0171】
実施例1:(R)−1−[4−(1−フェニルエトキシ)−フタラジン−1−イル]−ナフタレン−2−オール
水素化ナトリウム(1.21g, 50.4mmol)のテトラヒドロフラン懸濁液(100ml)に23℃で、(R)−フェニルエタノール(3.11g, 25.5mmol)のテトラヒドロフラン溶液(5ml)を10分間以上かけて、注意深く添加した。反応混合物を15分間撹拌し、次いで、1−(4−クロロフタラジン−1−イル)−ナフタレン−2−オール(7.66g, 25.0mmol)を分割滴下した。得られた赤色の懸濁液を23℃で26時間撹拌し、次いで溶媒を減圧下留去した。残渣をジクロロメタンに溶かし、食塩水に注いだ。有機層を分離し、水層をさらにジクロロメタンで2回抽出した。合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=5:1から2:1)で精製し、8.07gの表題化合物を白色泡状物として得た。(ジアステレオマーの1:1混合物、収率:82%)
【0172】
1H-NMR(400MHz, CDCl3) δ: 1.80(d, J=6.5, 3H), 1.82(d, J=6.5, 3H), 6.63-6.70(m, 2H), 7.05-7.38(m, 15H), 7.49-7.57(m, 7H), 7.66-7.80(m, 5H), 8.30-8.37(m, 2H).
13C-NMR(100MHz, CDCl3) δ: 22.6, 22.7, 74.6, 74.7, 114.5, 114.6, 119.4, 119.6, 120.6, 120.7, 123.0, 123.1, 123.1, 124.6, 124.6, 126.2, 126.2, 126.3, 126.9, 127.0, 127.8, 127.8, 128.0, 128.1, 128.5, 128.5, 128.6, 128.6, 129.3, 129.3, 130.9, 132.0, 132.1, 132.1, 132.2, 133.3, 133.3, 142.2, 142.3, 153.8, 153.8, 154.2, 154.2, 159.5, 159.5.
HRMS(MALDI) calcd. for C26H21N2O2[M+H]+393.1598. found 393.1603.
Anal. Calcd for C26H20N2O2: C, 79.57; H, 5.14; N, 7.14. Found: C, 79.42; H, 5.25; N, 7.21.
【0173】
実施例2:トリフルオロメタンスルホン酸 (R)−1−[4−(1−フェニルエトキシ)−フタラジン−1−イル]−ナフタレン−2−イル エステル
(R)−1−[4−(1−フェニルエトキシ)−フタラジン−1−イル]−ナフタレン−2−オール(0.91g, 2.3mmol)のピリジン(0.56ml, 6.9mmol)とジクロロメタン溶液(10ml)に0℃で、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(0.41ml, 2.4mmol)を滴下した。得られた溶液を0℃で2時間撹拌し、飽和塩化アンモニウム水溶液でクェンチした。有機層を分離し、水層をジクロロメタンで2回洗浄した。合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥して、濃縮した。残渣をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(トルエン/ヘキサン=20:1)で精製し、1.1gの表題化合物を白色の泡状物として得た。(収率;91%)
【0174】
1H-NMR(400MHz, CDCl3) δ: 1.89(d, J=6.5, 3H), 1.91(d, J=6.5, 3H), 6.87(sextet, J=6.5, 2H), 7.27-7.47(m, 12H), 7.53-7.64(m, 6H), 7.65-7.71(m, 4H), 7.85-7.90(m, 2H), 7.97-8.01(m, 2H), 8.09-8.13(m, 2H), 8.43-8.46(m, 2H).
13C-NMR(100MHz, CDCl3) δ: 22.4, 22.5, 74.8, 74.9, 118.0(q, JCF=320), 118.2 (q, JCF=320), 119.5, 119.6, 120.0, 123.4, 123.4, 125.4, 125.4, 125.9, 126.1, 126.3, 126.4, 126.4, 126.5, 126.5, 126.7, 127.2, 127.4, 127.7, 127.8, 127.9, 128.2, 128.3, 128.4, 128.5, 129.1, 129.1, 131.6, 131.7, 132.1, 132.1, 132.3, 132.4, 132.4, 132.4, 133.3, 133.3, 133.5, 142.2, 142.4, 145.3, 145.4, 150.5, 150.6, 159.7, 159.7.
HRMS(MALDI) calcd. for C27H20F3N2O4S [M+H]+ 525.1090. found 525.1085.
【0175】
実施例3:(R,Sax)−1−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)−4−(1−フェニルエトキシ)フタラジンおよび(R,Rax)−1−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)−4−(1−フェニルエトキシ)フタラジン
NiCl(dppe)(201mg, 0.381mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド溶液(20ml)にジフェニルホスフィン(1.33ml, 7.64mmol)を23℃で添加した。得られた赤暗色溶液を100℃で1時間撹拌した。次いで、トリフルオロメタンスルホン酸 (R)−1−[4−(1−フェニルエトキシ)−フタラジン−1−イル]−ナフタレン−2−イル エステル(2.00g, 3.81mmol)および1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(1.71g, 15.3mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド溶液(20ml)をカニューレで添加した。得られた緑暗色溶液を100℃で11時間撹拌した。混合物を23℃に冷却し、次いでジエチルエーテル(400ml)を手早く加えた。得られた混合物を水および飽和食塩水(それぞれ300ml)で洗浄した。有機層をシリカゲル中に注いで、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(トルエン/酢酸エチル=10:1)で精製して、1.21gの表題化合物をオフホワイトの固体として得た。(ジアステレオマーの1:1混合物,収率:57%)該ジアステレオマー混合物は、さらにシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(トルエン/酢酸エチル=200:3)で分離精製した。(R,Sax)−1−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)−4−(1−フェニルエトキシ)フタラジンをジエチルエーテル−ヘキサンから再結晶することによりX線グレードのサンプル(無色板状晶)を得、X線結晶回析よりSの軸性キラリティーの立体配置を有することが立証された。
【0176】
(R,Sax)−1−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)−4−(1−フェニルエトキシ)フタラジン:
mp: 179-180 ℃
[α]D27= -160.4(c= 0.53, CHCl3).
1H-NMR(400MHz, CDCl3) δ: 1.84(d, J =6.5, 3H), 6.84(q, J=6.5, 1H), 7.06(d, J=8.2, 1H), 7.11-7.32(m, 13H), 7.35-7.48(m, 5H), 7.61-7.65(m, 1H), 7.71-7.76(m, 1H), 7.85(d, J=8.2, 1H), 7.88(d, J=8.3, 1H), 8.35 (d, J=8.2, 1H).
13C-NMR(100MHz, CDCl3) δ: 22.6 (CH3), 74.4(CH), 119.8(C), 123.1(CH), 126.0(CH), 126.5(CH), 126.6(CH), 126.6(CH), 126.7(CH), 126.9(CH), 127.6(CH),127.9(CH), 128.1(CH), 128.2(CH), 128.3(CH), 128.3(CH), 128.3(CH), 128.4(CH), 128.5(CH), 129.1(CH), 129.9(C), 129.9(C), 130.1(CH), 131.4(CH), 131.6(CH), 133.0(C), 133.0(C), 133.1(CH), 133.3(CH), 133.5(C), 133.7(CH), 133.9(CH), 135.8(C), 135.9(C), 137.1(C), 137.2(C), 137.3(C), 137.5(C), 141.0(C), 141.4(C), 142.7(C), 156.2(C), 156.3(C), 159.2(C).
31P-NMR(121MHz, CDCl3) δ: -13.2.
FTIR(KBr, cm-1): 1581(m), 1537(m), 1493(m), 1479(m), 1378(s), 1358(s), 1310(s), 1056(m), 884(m), 819(m) 741(s), 692(s).
HRMS(MALDI) calcd. for C39H29N2OP [M+H]+ 561.2090. found 561.2089.
Anal. Calcd for C38H29N2OP: C, 81.41; H, 5.21; N, 5.00. Found: C, 81.14; H, 5.32; N, 4.84.
【0177】
(R,Rax)−1−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)−4−(1−フェニルエトキシ)フタラジン:
mp: 64-65 ℃
[α]D25= 78.5(c=0.25, CHCl3).
1H-NMR(400MHz, CDCl3) δ: 1.88(d, J=6.5, 3H), 6.83 (q, J=6.5, 1H), 7.07-7.76 (m, 14H), 7.39-7.52 (m, 5H), 7.63-7.67 (m, 2H), 7.72-7.78 (m, 1H), 7.87-7.92 (m, 2H), 8.33-8.37(m, 1H).
13C-NMR(100MHz, CDCl3) δ: 22.5(CH3), 74.4(CH), 119.8(C), 123.1(CH), 126.0(CH), 126.5(CH), 126.5(CH), 126.5(CH), 126.7(CH), 126.9(CH), 127.7(CH), 128.0(CH), 128.2(CH), 128.2(CH), 128.2(CH), 128.2(CH), 128.3(CH), 128.4(CH), 128.4(CH), 129.0(CH), 129.9(C), 129.9(C), 130.0(CH), 131.4(CH), 131.7(CH), 133.0(C), 133.0(C), 133.1(C), 133.3(CH), 133.5(CH), 133.6(CH), 133.8(CH), 136.2(C), 136.3(C), 136.8(C), 136.9(C), 137.3(C), 137.4(C), 140.7(C), 141.0(C), 142.6(C), 156.2(C), 156.2(C), 159.3(C).
31P-NMR(121MHz, CDCl3) δ: -12.3
FTIR(KBr, cm-1): 1582(m), 1537(m), 1491(m), 1433(m), 1410(m), 1378(s), 1307(s), 1164(w), 1111(w) 1068(m), 817(w), 742(s), 693(s).
HRMS(MALDI) calcd. for C39H29N2OP [M+H]+ 561.2090. found 561.2085.
Anal. Calcd for C38H29N2OP: C, 81.41; H, 5.21; N, 5.00. Found: C, 81.34; H, 5.49; N, 4.86.
【0178】
実施例4:(R, Sax)−1−[2−ジ(p−トリル)ホスファニルナフタレン−1−イル]−4−[1−フェニルエトキシ]フタラジンおよび(R, Rax)−1−[2−ジ(p−トリル)ホスファニルナフタレン−1−イル]−4−[1−フェニルエトキシ]フタラジン
ジ(p−トリル)ホスフィン(300mg, 1.4mmol)、NiCl(dppe)(37mg, 0.07mmol)およびN,N−ジメチルホルムアミド(2ml)の混合物をアルゴン雰囲気下、100℃で0.5時間撹拌した。トリフルオロメタンスルホン酸 (R)−1−[4−(1−フェニルエトキシ)−フタラジン−1−イル]−ナフタレン−2−イル エステル(367mg, 0.7mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド溶液(1ml)を1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(314mg,2.8mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド溶液(1ml)に加え、この混合物をカニューレで先の反応溶液に一度に移した。反応混合物を100℃で24時間撹拌した。混合物を0℃に冷却し、水(10ml)に注ぎ、ジエチルエーテル(10ml)で2回抽出した。有機層を水(10ml)と飽和食塩水(10ml)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧下留去し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(トルエン/酢酸エチル=100:1,v/v)で精製し、表題化合物を二つのジアステレオマーの混合物(低極性ジアステレオマー:高極性ジアステレオマー=1/1.1)として175mg得た。(収率:42%)該ジアステレオマー混合物は、さらにシリカゲルクロマトグラフィー(トルエン/酢酸エチル=200:1−100/1,v/v)に付し、低極性ジアステレオマー(55.1mg, 0.094mmol)を白色のアモルファス状の粉末として得た。高極性ジアステレオマーは、同定できる程度にまだ精製されていない。
【0179】
低極性ジアステレオマー:
1H-NMR(400MHz, CDCl3) δ: 1.58(3H, d, J=6.5 Hz), 2.28(3H, s), 2.32(3H, s), 6.85(1H, q, J=6.5Hz), 6.97-7.45(17H, m), 7.64(2H, d, J=6.8Hz), 7.45(1H, t, J=7.2Hz), 7.87(2H, t, J=7.2Hz), 8.35 (1H, d, J=8.4Hz).
31P-NMR(121MHz, CDCl3) δ: -14.20.
HRMS(MALDI) Calcd for C40H33N2OP+H: 589.2409. Found: M+H =589.2397.
【0180】
実施例5:(R, Sax)−1−(2−ジシクロヘキシルホスファニルナフタレン−1−イル)−4−[1−フェニルエトキシ]フタラジンおよび(R, Rax)−1−(2−ジシクロヘキシルホスファニルナフタレン−1−イル)−4−[1−フェニルエトキシ]フタラジン
10mlのシュレンクフラスコ中で、ジシクロヘキシルホスフィン(139mg, 0.7mmol)、NiCl(dppe)(18.5mg, 0.035mmol)およびN,N−ジメチルホルムアミド(2ml)の混合物をアルゴン雰囲気下、100℃で0.5時間撹拌した。トリフルオロメタンスルホン酸 (R)−1−[4−(1−フェニルエトキシ)−フタラジン−1−イル]−ナフタレン−2−イル エステル(138.6mg,0.35mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド溶液(1ml)を1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(157mg, 1.4mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド溶液(1ml)に加え、この混合物をカニューレで先の反応溶液に一度に移した。反応混合物を100℃で20時間撹拌した。混合物を0℃に冷却し、水(10ml)に注ぎ、ジエチルエーテル(10ml)で2回抽出した。有機層を水(10ml)と飽和食塩水(10ml)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧下留去し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(トルエン/酢酸エチル=100:1,v/v)で精製し、表題化合物を二つのジアステレオマーの混合物(低極性ジアステレオマー:高極性ジアステレオマー=1/1)として14.4mg得た。(収率:7.2%)
【0181】
ジアステレオマー混合物:
1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ: 0.72-2.19(26H, m), 1.87(1.5H, d, J=6.5Hz), 1.90(1.5H, d, J=6.5Hz), 6.82(0.5H, q, J=6.5Hz), 6.88(0.5H, q, J=6.5Hz), 7.02-8.39(15H, m).31P-NMR (121MHz, CDCl3) δ: -9.228, 9.284.
HRMS (MALDI) Calcd for C38H41N2OP+H: 573.3035. Found: M+H =589.3023.
【0182】
実施例6:7−メトキシ-1−[4−((R)−1−フェニルエトキシ)−フタラジン−1−イル]−ナフタレン−2−オール
水素化ナトリウム(0.80g, 33mmol)のテトラヒドロフラン(80 ml)懸濁液に23℃で(R)−フェニルエタノール(2.0g, 17mmol)のテトラヒドロフラン(3ml)溶液を注意深く10分間かけて加えた。混合物を15分間撹拌し、次いで、1−(4−クロロフタラジン−1−イル)−7−メトキシ−ナフタレン−2−オール(5.1g, 15mmol)少しずつ加えた。得られた赤色懸濁物を23℃で20時間撹拌し、次いで、溶媒を減圧下留去した。残渣をジクロロメタンに溶かし、食塩水に注いだ。有機層を分離し、水層をジクロロメタンで2回抽出した。合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル 4:1−1:1)で精製し、5.5g(13mmol)の白色泡状物の表題化合物を1:1のジアステレオマー混合物として得た。
HRMS (MALDI, pos.) calcd: for C27H22N2O3[M+H] 423.16. found: 423.17.
【0183】
実施例7:パーフルオロ−1−ブタンスルホン酸 7−メトキシ−1−[4−((R)−1−フェニル−エトキシ)−フタラジン−1−イル]−ナフタレン−2−イル エステル
7−メトキシ-1−[4−((R)−1−フェニルエトキシ)−フタラジン−1−イル]−ナフタレン−2−オール(1.0g, 2.4mmol)のジイソプロピルエチルアミン(0.94ml, 7.1mmol)およびジクロロメタン(35ml)の溶液をN,N−ジメチルアミノピリジン(DMAP, 50mg, 0.41mmol)と0℃で処理した。次いで、パーフルオロ−1−ブタンスルホニルフルオリド(0.51ml, 2.8mmol)を滴下し、得られた溶液を23℃で19時間攪拌した。得られた溶液を塩化アンモニウム水溶液でクエンチした。有機層を分離し、水層をジクロロメタンで2回抽出した。合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(へキサン/酢酸エチル 3:1)で精製し、1.4g(2.0mmol)の表題化合物を油状物として得た。
HRMS (MALDI, pos.) calcd for C31H21F9N2O5S (M+H) 705.10. found 705.11.
【0184】
実施例8:1−(2−ジフェニルホスホニル−7−メトキシナフタレン−1−イル)−4−((R)−1−フェニルエトキシ)−フタラジン
NiCl(dppe)(0.24g, 0.46mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(10ml)溶液を23℃でジフェニルホスフィン(1.6ml, 9.2mmol)で処理した。得られる暗赤色溶液を120℃で30分間攪拌した。次いで、パーフルオロ−1−ブタンスルホン酸 7−メトキシ−1−[4−((R)−1−フェニルエトキシ)−フタラジン−1−イル]−ナフタレン−2−イル エステル(2.3g, 4.2mmol)と1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO, 2.1g, 18mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(18ml)溶液をシリンジを介して添加し、N,N−ジメチルホルムアミド(2ml)でフラスコを洗い込んだ。得られた緑色溶液を105℃で17時間攪拌した。混合物を減圧下(20mbar,バス温70℃)で濃縮した。残渣をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(トルエン→トルエン/酢酸エチル 10:1)で精製して、1.4g(2.3mmol)の油状の表題化合物を1:1のジアステレオマー混合物を得た。ジアステレオマーの分離は、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(トルエン→トルエン/酢酸エチル 10:1)で行った。
(1stジアステレオマー)
HRMS(MALDI, pos.) calcd for C39H31N2O2P (M+H) 591.21. found 591.22.
[α]D31= -102.3(c=0.50, CHCl3)
(2ndジアステレオマー)
HRMS(MALDI, pos.) calcd for C39H31N2O2P (M+H) 591.21. found 591.22.
[α]D29= 16.9(c=0.50, CHCl3)
【0185】
実施例9:トリフルオロメタンスルホン酸 1−(4−クロロフタラジン−1−イル)−ナフタレン−2−イル エステル
1−(4−クロロフタラジン−1−イル)−ナフタレン−2−オール(1.0g, 3.3mmol)およびピリジン(0.80ml, 9.8mmol)のジクロロメタン懸濁液(10ml)に、0℃でトリフルオロメタンスルホン酸無水物(0.58ml,3.4mmol)を2時間で滴下し、得られた溶液を飽和塩化アンモニウム水溶液でクェンチした。有機層を分離し、水層をジクロロメタンで2回洗浄した。合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥して、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=3:1)で精製し、1.3gの表題化合物を明茶色の泡状物として得た。(収率;93%)
【0186】
mp: 54-55 ℃ (泡状物).
1H-NMR(300MHz, CDCl3) δ: 7.27(d, J=6.9, 1H), 7.41-7.47(m, 2H), 7.57-7.66(m, 2H), 7.80-7.87(m, 1H), 8.00-8.07(m, 2H), 8.17(d, J=9.3, 1H), 8.46(d, J=8.4, 1H).
13C-NMR(100MHz, CDCl3) δ: 118.0(C, q, JCF=312), 119.3(CH), 125.1(C), 125.5(CH), 125.7(C), 125.8(CH), 126.2(CH), 127.4(CH), 128.3(CH), 128.4(CH), 132.3(C),132.3 (CH), 132.8(C), 133.8(CH), 134.0(CH), 145.1(C), 155.0(C), 155.6(C).
FTIR(thin film, cm-1): 3073(w), 1583(w), 1569(w), 1528(w), 1512(m), 1423(s), 1376(m), 1290(s), 1217(s), 1138(s), 1072(m), 950(s), 833(s), 770(m), 639(m), 622 (m).
HRMS(MALDI) calcd. for C19H11ClF3N2O3S [M+H]+ 439.0126, found 439.0131.
Anal. Calcd for C19H10ClF3N2O3S: C, 52.01; H, 2.30; N, 6.38. Found: C, 52.27; H, 2.56; N, 6.31.
【0187】
実施例10:トリフルオロメタンスルホン酸 (R)−1−[4−(1−フェニルエチルアミノ)−フタラジン−1−イル]−ナフタレン−2−イル エステル
トリフルオロメタンスルホン酸 1−(4−クロロフタラジン−1−イル)−ナフタレン−2−イル エステル(4.9g, 11mmol)の(R)−1−フェニルエチルアミン溶液(7.2ml, 56mmol)を120℃で4時間撹拌し、次いで23℃に冷却した。得られた粘性の溶液をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(トルエン/酢酸エチル=7:1)で精製し、5.4gの表題化合物を明茶色の固体として得た。(ジアステレオマーの1:1混合物,収率:93%)
【0188】
1H-NMR(300MHz, CDCl3) δ: 1.79(t, J =6.7Hz, 6H), 5.49(d, J=7.0Hz, 2H), 5.88(quint, J=6.8Hz, 2H), 7.13-7.65(m, 22H), 7.73-7.82(m, 2H), 7.85-7.90(m, 2H), 7.94-8.00(m, 2H), 8.08(d, J=9.1Hz, 2H).
13C-NMR(100MHz, CDCl3) δ: 21.9, 22.0, 50.7, 50.7, 117.8, 117.8, 118.0(q, JCF=320), 118.7(q, JCF=320), 119.4, 119.5, 120.8, 126.1, 126.1, 126.4, 126.5, 126.7, 126.7, 127.1, 127.2, 127.2, 127.4, 127.5, 127.5, 127.7, 128.1, 128.2, 128.5, 128.6, 131.3, 131.3, 131.4, 131.4, 131.4, 131.5, 132.5, 132.5, 133.6, 133.6, 144.0, 144.3, 145.5, 145.6, 146.5, 146.5, 152.7, 152.8.
HRMS (MALDI) calcd. for C27H21F3N3O3S [M+H]+ 524.1250, found 524.1258.
Anal. Calcd for C27H20F3N3O3S: C, 61.94; H, 3.85; N, 8.03. Found: C, 62.15; H, 3.99; N, 7.79.
【0189】
実施例11:(R,Sax)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)−フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンおよび(R,Rax)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)−フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミン
NiCl(dppe)(540mg, 1.0mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド溶液(40ml)にジフェニルホスフィン(3.6ml, 20mmol)を23℃で添加した。得られた赤暗色溶液を100℃で1時間撹拌した。次いで、トリフルオロメタンスルホン酸 (R)−1−[4−(1−フェニルエチルアミノ)−フタラジン−1−イル]−ナフタレン−2−イル エステル(5.3g, 10mmol)および1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(4.6g, 41mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド溶液(40ml)をカニューレで添加した。得られた緑暗色溶液を100℃で15時間撹拌した。次いで、N,N−ジメチルホルムアミドを50℃で留去し、残渣をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(トルエン/酢酸エチル=10:1)で精製して、4.5gの表題化合物をオフホワイトの固体として得た。(2.5:1ジアステレオマー混合物,収率:79%)
ジアステレオマー混合物をトルエン(50ml)とジクロロメタン(100ml)に溶解させた。ジクロロメタンのほとんどを減圧下除去し、ヘキサン(50ml)を加え、(R,Sax)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)−フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンを純粋な白色沈殿(2.0g,収率36%)として得た。得られた沈殿は、トルエン−ヘキサンから再結晶することにより、 X線グレードのサンプル(無色板状晶)を得、X線結晶回析よりSの軸性キラリティーの立体配置が立証された。
濾液に含有されるジアステレオマー混合物は、さらに、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(トルエン/酢酸エチル=200:5)で分離精製した。
【0190】
(R,Sax)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)−フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミン:
mp: > 210 ℃
[α]D29= -162.0 (c=0.54, CHCl3).
1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ: 1.68(d, J=6.8, 3H), 5.34(d, J=7.2, 1H), 5.81(quint, J=6.9Hz, 1H), 7.01(d, J =8.1Hz, 1H), 7.11-7.18(m, 5H), 7.18-7.24(m, 8H), 7.28-7.33(m, 3H), 7.36-7.43(m, 2H), 7.50-7.53(m, 2H), 7.55-7.59(m, 1H), 7.70(d, J=8.3Hz, 1H), 7.79-7.84(m, 2H).
13C-NMR(100 MHz) 22.2(CH3), 50.4(CH), 117.7(C), 120.3(CH), 126.5(CH), 126.7(CH), 126.8(CH), 126.8(CH), 126.9(CH), 126.9(CH), 127.2(CH), 127.8(CH), 128.0(CH), 128.2(CH), 128.2(CH), 128.2(CH), 128.3(CH), 128.3(C), 128.3(C), 128.4(CH), 128.6(CH), 128.8(CH), 130.1(CH), 130.7(CH), 130.8(CH), 133.1(CH), 133.2(C), 133.3(CH), 133.3(C), 133.6(C), 133.7(CH), 133.9(CH), 135.8(C), 136.0(C), 137.3(C), 137.4(C), 137.7(C), 137.8(C), 141.8(C), 142.1(C), 144.6(C), 152.2(C), 152.5(C), 152.6(C).
31P-NMR(121 MHz, CDCl3) δ: -13.18.
FTIR(thin film, cm-1): 3351(br, s), 1654(w), 1559(w), 1508(s), 1420(w), 1361(w), 1217(w), 820(w), 772(s), 698(m).
HRMS(MALDI) calcd. for C38H31N3P+[M+H]+ 560.2250. found 560.2257.
Anal. Calcd for C17H21NO3: C, 81.55; H, 5.40; N, 7.51; P, 5.53. Found: C, 81.44; H, 5.52; N, 7.39; P, 5.67.
【0191】
(R,Rax)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)−フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミン(十分同定できる程度にはまだ精製されていない):
31P-NMR(121MHz, CDCl3) δ: -12.77.
HRMS(MALDI) calcd. for C38H31N3P+[M+H]+ 560.2250, found 560.2249.
【0192】
実施例12:トリフルオロメタンスルホン酸 1−[4−((R)−2−エチル−2−ヒドロキシ−1−フェニルブチルアミノ)フタラジン−1−イル]−ナフタレン−2−イル エステル
トリフルオロメタンスルホン酸 1−(4−クロロフタラジン−1−イル)−ナフタレン−2−イル エステル (600 mg, 1.37 mmol)に、3−((R)−アミノフェニル−メチル)ペンタン−3−オール (1.06 g, 5.49 mmol)を加えた。得られた懸濁液を120℃で24時間攪拌した。混合物をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(トルエン/酢酸エチル 10:0 → 5:1)で精製し、ジエチルエーテルから再結晶して、451mgの表題化合物のジアステレオマー混合物を白色粉末として得た。(収率:55%)
【0193】
mp: 117-119 ℃.
1H-NMR(400MHz, CDCl3) δ 0.84-1.00(m, 12H), 1.18-1.32(m, 2H), 1.39-1.50(m, 2H), 1.71-1.95(m, 4H), 2.05-2.33(m, 2H), 5.67(d, J=8.4, 1H), 5.7387(d, J=8.5, 1H), 6.54-6.73(m, 2H), 7.15-7.36(m, 10 H), 7.43(d, J=3.4, 1H), 7.51-7.65(m, 9H), 7.75-7.79(m, 2H), 7.97-8.11(m, 6H).
13C-NMR(125 MHz, CDCl3) δ 7.6, 7.8, 8.4, 8.5, 28.1, 28.2, 29.1, 29.1, 59.1, 59.7, 78.0, 78.1, 118.1, 118.3, 118.4(q, JCF=318), 118.7 (q, JCF=318), 119.9, 119.9, 121.1, 121.2, 126.2, 126.9, 127.0, 127.5, 127.6, 127.7, 127.8, 127.8, 128.2, 128.2, 128.4, 128.5, 128.6, 128.6, 129.0, 129.3, 131.7, 131.7, 131.8, 131.9, 133.0, 133.0, 133.9, 134.0, 140.6, 140.9, 145.8, 145.9, 146.5, 146.7, 153.3, 153.4.
FTIR(thin film, cm-1): 3395(w), 3052(w), 2964(w), 1508(s), 1420(s), 1544(w), 1213(s), 1138(s).
HRMS (MALDI, pos.) calcd for C32H31N3O5F3S+(M+H+) 596.1825, found 596.1828.
【0194】
実施例13:(R, P)−3−{[4−(2−ジフェニルホスファニル−ナフタレン−1−イル)−フタラジン−1−イルアミノ]フェニルメチル}ペンタン−3−オール(1st ジアステレオマー)および(R, M)−3−{[4−(2−ジフェニルホスファニル−ナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イルアミノ]フェニルメチル}ペンタン−3−オール(2nd ジアステレオマー)
NiCl(dppe)(37mg,0.07mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(2.5ml)溶液を23℃でジフェニルホスフィン(0.244ml, 1.40mmol)で処理した。得られる暗赤色溶液を120℃で30分間攪拌した。次いで、トリフルオロメタンスルホン酸 1−[4−((R)−2−エチル−2−ヒドロキシ−1−フェニルブチルアミノ)−フタラジン−1−イル]ナフタレン−2−イル エステル(417mg, 0.70mmol)と1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO, 449mg, 2.8mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(2.5ml)溶液をシリンジを介して添加した。得られた緑色溶液を120℃で12時間攪拌した。混合物を減圧下(20mbar,バス温70℃)で濃縮した。残渣をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(トルエン→トルエン/EtOAc5:1)で精製して、364mgの表題化合物のジアステレオマー混合物を灰白色固体として得た。(収率:82%)
ジアステレオマーの分離は、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(トルエン→トルエン/EtOAc5:1)で行った。
【0195】
(1st ジアステレオマー)
mp: 162-164 ℃.
[α]D27 = 134.9 (c = 0.50, CHCl3).
1H-NMR(400MHz, CDCl3) δ 0.86(t, J=7.5, 3H), 0.93(t, J=7.6, 3H), 1.18-1.27(m, 1H), 1.35-1.45(m, 1H), 1.74-1.89(m, 2H),1.99(bs, 1 H), 5.64(d, J=8.4, 1H), 5.57(d, J=8.4, 1H), 7.02(d, J=8.0, 1H), 7.10-7.45(m, 17H), 7.60-7.68(m, 3H), 7.58-7.89(m, 2H), 7.96(d, J=8.3, 1H).
13C-NMR(125MHz, CDCl3) δ 7.8, 8.5, 28.2, 29.1, 59.2, 78.1, 118.1, 120.9, 126.8, 126.9, 127.2, 127.6, 128.3, 128.5, 128.5, 128.5, 128.6, 128.7, 128.7, 128.7, 129.1, 129.2, 130.4, 131.2, 131.4, 133.5, 133.5, 133.7, 133.8, 133.9, 134.0, 136.3, 136.5, 137.5, 137.6, 138.2, 138.3, 141.1, 142.1, 142.4, 152.6, 152.7, 152.9.
31P-NMR(121MHz, CDCl3) δ -12.58.
FTIR(KBr, cm-1): 3365(s), 3052(m), 2965(m), 2879(m), 1576(w), 1505(s), 1478(m), 1435(m), 1392(m), 1138(w), 912(s), 728(s).
HRMS(MALDI, pos.) calcd for C42H39N3O2P+(M+H+) 632.2825, found 632.2814.
Anal. Calcd for C42H38N3O2P: C, 79.85; H, 6.06. Found: C, 80.06; H, 6.02.
【0196】
(2nd ジアステレオマー)
mp: ≧ 200 ℃
[α]D26 = -68.3 (c = 0.665, CHCl3)
1H-NMR(400MHz, CDCl3) δ 0.89(t, J=7.4, 3H), 0.98(t, J=7.5, 3H), 1.23-1.32(m, 2H), 1.39-1.48(m, 1H), 1.76-1.95(m, 3H), 5.68(bs, 1H), 6.52(bs, 1H), 6.99-7.48(m, 17H), 7.49-7.57(m, 1H), 7.61-7.63(m, 2H), 7.68-7.72(m, 1H), 7.89-7.91(m, 2H), 7.98(d, J=8.1, 1H).
13C-NMR(125MHz, CDCl3) δ 7.8, 8.5, 28.2, 29.2, 59.5, 78.2, 118.2, 121.0, 126.9, 127.0, 127.2, 127.7, 128.4, 128.5, 128.6, 128.6, 128.7, 129.1, 129.1, 130.4, 131.3, 131.4, 133.6, 133.6, 133.8, 134.0, 134.0, 134.0, 136.7, 136.8, 137.4, 137.5, 137.9, 138.0, 140.9, 141.9, 142.2, 152.7, 153.0.
31P-NMR(121 MHz, CDCl3) δ -11.74.
FTIR(KBr, cm-1): 3354(m), 3052(m), 2954(m), 2868(w), 1581(w), 1505(s), 1435(m), 1392(m), 911(s), 739(s).
MS (HiResMALDI, pos.) calcd for C42H39N3O2P+(M+H+) 632.2825, found 632.2830.
【0197】
実施例14:トリフルオロメタンスルホン酸 1−(4−クロロフタラジン−1−イル)−7−メトキシナフタレン−2−イル エステル
1−(4−クロロフタラジン−1−イル)−7−メトキシナフタレン−2−オール(5.5g, 16mmol)およびピリジン(4.2ml, 54mmol)のジクロロメタン(500ml)中の懸濁物にトリフルオロメタンスルホン酸無水物(3.2ml, 19mmol)を40分間かけて滴下し、得られた混合物を0℃で1時間攪拌した。得られた溶液を飽和塩化アンモニウム水溶液でクェンチした。有機層を分離し、水層をジクロロメタンで2回抽出した。合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下濃縮した。得られた灰色固体をジクロロメタンに溶解し、シリカゲルのショートプラグに通した。濾液を減圧下濃縮した。残渣をペンタンでトリチュレートして、6.3g(14mmol)の表題化合物を灰色粉末として得た。
【0198】
mp: 140 ℃.
1H-NMR(300MHz, CDCl3) δ3.54(s, 3H), 6.50(s, 1H), 7.22(dd, J=9.0, J=1.5), 7.45(d, J=8.4, 1H), 7.47(d, J=8.4, 1H), 7.81-7.90(m, 2H), 8.00-8.06(m, 2H), 8.43(d, J=8.1, 1H).
13C-NMR(100MHz, CDCl3) δ 55.3, 104.3, 116.7, 117.9 (q, JCF=315), 123.6, 125.5, 125.8, 126.2, 127.9, 128.2, 129.9, 131.9, 133.8, 134.0, 134.3, 145.8, 155.2, 155.5, 159.3.
FTIR(thin film, cm-1): 3072(w), 3008(w), 2941(w), 2835(w), 1625(s), 1508(s), 1468(s), 1422(s), 1378(s), 1344(m), 1290(s), 1229(s), 1139(s), 989(s), 870(s).
HRMS(ESI, pos.) calcd for C20H12N2O2F3SCl (M+H)+ 469.02. found 469.02.
Anal. Calcd for C20H12N2O2F3SCl: C, 51.24; H, 2.58. Found: C, 51.47; H, 2.73.
【0199】
実施例15:トリフルオロメタンスルホン酸 7−メトキシ−1−[4−((R)−1−フェニルエチルアミノ)−フタラジン−1−イル]−ナフタレン−2−イル エステル
トリフルオロメタンスルホン酸 7−メトキシ−1−(4−クロロフタラジン−1−イル)−ナフタレン−2−イル エステル(2.2g, 4.7mmol)の(R)−1−フェニルエチルアミン(3.5ml, 27mmol)溶液を130℃で8時間撹拌し、次いで23℃に冷却した。得られた粘凋な混合物をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(トルエン/酢酸エチル 5:1−3:1)で精製し、2.1g(3.8mmol)の明茶色泡状物の表題化合物をジアステレオマーの1:1混合物として得た。
HRMS(MALDI, pos.) calcd for C28H22F3N3O4S (M+H) 554.13. found 554.13.
【0200】
実施例16:[4−(2−ジフェニルホスファニル−7−メトキシ−ナフタレン−1−イル)−フタラジン−1−イル]−((R)−1−フェニルエチル)−アミン
NiCl(dppe)(0.22g, 0.42mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(10 ml)溶液を23℃でジフェニルホスフィン(1.5 ml, 8.4 mmol)で処理した。得られる暗赤色溶液を120℃で30分間攪拌した。次いで、トリフルオロメタンスルホン酸 7−メトキシ−1−[4−((R)−1−フェニルエチルアミノ)−フタラジン−1−イル]−ナフタレン−2−イル エステル(2.3g, 4.2mmol)と1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO, 1.9g, 17mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(13ml)溶液をシリンジを介して添加し、N,N−ジメチルホルムアミド(2ml)でフラスコを洗い込んだ。得られた緑色溶液を120℃で17時間攪拌した。混合物を減圧下(20 mbar,バス温70℃)で濃縮した。残渣をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(トルエン→トルエン/酢酸エチル5:1)で精製して、1.5g(2.5 mmol)のオフホワイトの表題化合物をジアステレオマーの1.7:1(1stジアステレオマー:2ndジアステレオマー)混合物として得た。ジアステレオマーの分離は、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(トルエン→トルエン/酢酸エチル4:1)で行った。
【0201】
(1stジアステレオマー)
[α]D28 = -171.8(c=0.50, CHCl3)
HRMS(MALDI, pos.) calcd for C39H32N3OP (M+H) 589.23. found 589.23.
(2ndジアステレオマー)
[α]D28 = 65.3(c=0.50, CHCl3)
HRMS(MALDI, pos.) calcd for C39H32N3OP (M+H) 589.23. found 589.23.
【0202】
実施例17:トリフルオロメタンスルホン酸 1−[4−((R)−2−エチル−2−ヒドロキシ−1−フェニルブチルアミノ)−フタラジン−1−イル]−7−メトキシナフタレン−2−イル エステル
トリフルオロメタンスルホン酸 1−(4−クロロフタラジン−1−イル)−7−メトキシナフタレン−2−イル エステル(5.0g, 11mmol)に、3−((R)−α−アミノ−ベンジル)−ペンタン−3−オール(10g, 52mmol)を添加し、懸濁物を120℃で18時間攪拌した。25℃に冷却後、混合物にジクロロメタンを加え、ろ過し、ろ液を減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(トルエン/酢酸エチル=10:1−5:1)で精製して、表題化合物を茶色固体として得た。これをヘキサン/ジエチルエーテルからトリチュレートし、4.8 g(7.7 mmol)の純品をジアステレオマー混合物として得た。
【0203】
mp: 175-177 ℃
1H-NMR(400MHz, CDCl3) δ 0.88-1.02(m, 12H), 1.21-1.40(m, 2H), 1.41-1.49(m, 2H), 1.72-1.97(m, 4H), 3.41(s, 3H), 3.60(s, 3H), 5.71(d, J=8.7, 1H), 5.87 (d, J=8.8, 1H), 6.52-6.58(m, 3H), 6.74(d, J=2.4, 1H), 7.14-7.42(m, 12H), 7.54-7.64(m, 6H), 7.76-7.85(m, 4H), 7.93-8.00(m, 4H).
13C-NMR(125MHz, CDCl3) δ7.5, 7.6, 8.2, 8.3, 27.7, 27.7, 28.9, 28.9, 55.2, 55.2, 58.6, 59.4, 77.8, 78.2, 105.0, 105.2, 117.8 (q, J = 319), 117.0, 117.1, 117.8, 118.0, 118.2(q, JCF=318), 119.7, 119.9, 120.5, 125.4, 125.9, 126.1, 126.2, 127.3, 127.3, 128.0, 128.1, 128.2, 128.5, 128.9, 129.7, 129.7, 130.7, 130.8, 131.4, 131.4, 131.4, 135.1, 135.2, 140.0, 140.4, 146.1, 146.2. 146.3, 152.8, 152.9, 158.9, 159.0.
FTIR(thin film, cm-1): 2996(w), 1625(w), 1579(w), 1544(w), 1508(s), 1420(m), 1219(s), 1139(m), 772(s).
HRMS(MALDI, pos.) calcd for C32H30N3O5F3S (M+H) 626.19. found 626.19.
Anal. Calcd for C32H30N3O5F3S: C, 61.43; H, 4.83. Found: C, 61.53; H, 4.74.
【0204】
実施例18:(R,M)−3−{[4−(2−ジフェニルホスファニル−7−メトキシナフタレン−1−イル)−フタラジン−1−イルアミノ]−フェニル-メチル}−ペンタン−3−オール(1st ジアステレオマー) および(R, P)−3−{[4−(2−ジフェニルホスファニル−7−メトキシナフタレン−1−イル)−フタラジン−1−イルアミノ]−フェニル-メチル}−ペンタン−3−オール(2nd ジアステレオマー)
NiCl(dppe)(0.61g, 1.2mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(30ml)溶液を23℃でジフェニルホスフィン(4.0ml, 23mmol)で処理した。得られる暗赤色溶液を120℃で30分間攪拌した。次いで、トリフルオロメタンスルホン酸 1−[4−((R)−2−エチル−2−ヒドロキシ−1−フェニルブチルアミノ)−フタラジン−1−イル]−7−メトキシナフタレン−2−イル エステル(7.3g, 12mmol)と1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO, 5.2g, 46mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(65ml)溶液をシリンジを介して添加し、N,N−ジメチルホルムアミド(5ml)でフラスコを洗い込んだ。得られた緑色溶液を120℃で12時間攪拌した。混合物を減圧下(20mbar,バス温70℃)で濃縮した。残渣をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(トルエン→トルエン/EtOAc4:1)で精製して、5.2g(7.8mmol)の灰白色の表題化合物をジアステレオマーの1.7:1(1stジアステレオマー:2ndジアステレオマー)混合物として得た。ジアステレオマーの分離は、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(トルエン→トルエン/EtOAc4:1)で行った。
【0205】
(1st ジアステレオマー)
mp: 180 ℃.
[α]D28 = 151.7(c=0.50, CHCl3).
1H-NMR(400MHz, CDCl3) δ 0.87(t, J=5.9, 3H), 0.97(t, J=6.0, 3H), 1.21-1.26(m, 1H), 1.39-1.47(m, 1H), 1.79-1.93(m, 2H), 3.30(s, 3H), 5.63(d, J=6.8, 1H), 6.31(d, J=1.8, 1H). 6.54(d, J=6.7, 1H), 7.08-7.42(m, 11H), 7.46(app t, J=5.8, 1H), 7.58(d, J=5.7, 2H), 7.71(app t, J=6.2, 1H), 7.79(dd, J=11.2, 7.2, 2H), 8.00 (d, J=6.6, 1H).
13C-NMR(125MHz, CDCl3) δ 7.8, 8.61, 28.1, 29.2, 55.4, 59.4, 78.1, 105.4, 105.4, 118.3, 119.7, 120.9, 126.8, 127.5, 128.2, 128.4, 128.5, 128.6, 128.6, 128.6, 128.7, 128.7, 129.2, 129.5, 129.8, 131.2, 131.4, 133.7, 133.8, 133.9, 134.0, 134.7, 134.7, 137.0, 137.1, 137.6, 137.7, 138.2, 138.3, 140.5, 140.8, 141.1, 152.6, 152.7, 153.0, 158.5.
FTIR(KBr, cm-1): 3337(s), 3048(m), 2963(m), 2936(m), 2878(m), 1619(s), 1579(s), 1552(s), 1504(s), 1405(s), 1370(s), 1225(s), 1141(m), 1028(s), 838(s) 696(s).
HRMS(MALDI, pos.) calcd for C43H40N3O2P (M+H) 662.29. found 662.29.
Anal. Calcd for C43H40N3O2P : C, 78.04; H, 6.09. Found: C, 78.11; H, 6.02.
【0206】
(2nd ジアステレオマー)
mp: 143-145 ℃.
[α]D29= -41.5(c = 0.50, CHCl3).
1H-NMR(400MHz, CDCl3) δ 0.85-0.96(m, 6H), 1.23-1.30(m, 1H), 1.41-1.45(m, 1H), 1.78-1.82(m, 1H), 1.87-1.92(m, 1H), 3.50(s, 3H), 5.68 (s, 1H), 6.49 (d, J=1.9, 1H), 6.99-7.42 (m, 19H), 7.62-7.67 (m, 3H), 7.80-7.82 (m, 2H), 8.08 (s, 1H).
13C-NMR(125 MHz, CDCl3) δ 7.8, 8.5, 28.1, 29.0, 55.4, 59.5, 78.0, 105.6, 119.4, 126.8, 127.6, 127.7, 128.1, 128.2, 128.3, 128.3, 128.4, 128.4, 128.5, 128.5, 128.6, 128.6, 128.7, 129.2, 129.4, 129.9, 130.0, 131.2, 131.3, 131.4, 133.8, 133.8, 133.9, 134.0, 134.7, 134.7, 137.4, 137.4, 137.5, 137.8, 137.9, 140.8, 152.5, 152.9, 158.5.
FTIR(KBr, cm-1): 3389(m), 3053(m), 2961(s), 2877(m), 1619(s), 1579(m), 1504(s), 1432(s), 1262(m), 1224(s), 1092(m), 1028(m), 838(s), 695(s).
HRMS(MALDI, pos.) calcd for C43H40N3O2P (M+H) 662.29. found 662.29.
【0207】
実施例19:(S, M)−3−{[4−(2−ジフェニルホスファニル−7−メトキシナフタレン−1−イル)−フタラジン−1−イルアミノ]−フェニル-メチル}−ペンタン−3−オール
3−((R)−α−アミノ−ベンジル)−ペンタン−3−オールの代わりに3−((S)−α−アミノ−ベンジル)−ペンタン−3−オールを用いたこと以外は実施例17および18と同様に行い、表題化合物を得た。
mp: 180 ℃
[α]D25 = -160.0(c=0.50, CHCl3)
1H-NMR(400MHz, CDCl3) δ 0.87(t, J=5.9, 3H), 0.97(t, J=6.0, 3H), 1.21-1.26(m, 1H), 1.39-1.47(m, 1H), 1.79-1.93(m, 2H), 3.30(s, 3H), 5.63(d, J=6.8, 1H), 6.31 (d, J=1.8, 1H). 6.54(d, J=6.7, 1H), 7.08-7.42(m, 11H), 7.46(app t, J=5.8, 1H), 7.58 (d, J=5.7, 2H), 7.71 (app t, J=6.2, 1H), 7.79 (dd, J=11.2, 7.2, 2H), 8.00 (d, J=6.6, 1H).
13C NMR(125MHz, CDCl3) δ 7.8, 8.61, 28.1, 29.2, 55.4, 59.4, 78.1, 105.4, 105.4, 118.3, 119.7, 120.9, 126.8, 127.5, 128.2, 128.4, 128.5, 128.6, 128.6, 128.6, 128.7, 128.7, 129.2, 129.5, 129.8, 131.2, 131.4, 133.7, 133.8, 133.9, 134.0, 134.7, 134.7, 137.0, 137.1, 137.6, 137.7, 138.2, 138.3, 140.5, 140.8, 141.1, 152.6, 152.7, 153.0, 158.5.
FTIR(KBr, cm-1): 3337 (s), 3048(m), 2963(m), 2936(m), 2878(m), 1619(s), 1579(s), 1552(s), 1504(s), 1405(s), 1370(s), 1225(s), 1141(m), 1028(s), 838(s) 696(s).
HRMS(MALDI, pos.) calcd for C43H40N3O2P (M+H) 662.29. found 662.29.
Anal. Calcd for C43H40N3O2P : C, 78.04; H, 6.09. Found: C, 77.78; H, 6.12.
【0208】
実施例20:N,N−ジベンジル−2−メチル−5−デシン−4−アミン
臭化銅(I)(3.6mg, 0.025mmol)、(R,Sax)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)−フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミン(15.4mg, 0.028mmol)および4Åモルキュラシーブス(0.3g)をシュレンクチューブに入れ、5分間アルゴンでフラッシュし、次いで、トルエン(2ml)を添加した。得られた懸濁液を23℃で1時間撹拌した。続いて、反応混合物に1−へキシン(41mg, 0.50mmol)、3−メチルブタナル(43mg, 0.50mmol)およびジベンジルアミン(99mg, 0.50mmol)を添加した。得られた反応混合物を23℃で5日間撹拌した後、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィーで精製し、128mgの表題化合物を無色油状物として得た。(収率:74%,92%e.e.)
【0209】
[α]D32 = +167(c=1.09, CHCl3).
HPLC条件:
カラム:キラルセルOD−H(25cm,ダイセル化学),移動相:99.5% ヘキサン/0.5%iPrOH,流速:0.1 ml/min,保持時間:(minor)=45.3分, (major)=50.3分.
【0210】
実施例21:N,N−ジベンジル−4−メチル−1−フェニル−1−ペンチン−3−アミン
1−へキシンの代わりにフェニルアセチレン(51mg, 0.50mmol)、3−メチルブタナルの代わりに2−メチルプロパナル(36mg, 0.50mmol)を用いたこと以外は実施例20と同様に行い、表題化合物を無色油状物として156mg得た。(収率:88%,90%e.e.)
【0211】
[α]D26 = +313(c=1.06, CHCl3).
HPLC条件:カラム:キラルセルOD−H×2(25cm,ダイセル化学),移動相:99.5% ヘキサン/0.5%iPrOH,流速:0.2ml/min,保持時間:(minor)=36.9分, (major)=41.0分.
【0212】
実施例22:N,N−ジベンジル−4−メチル−1−ペンチン−3−アミン
1−へキシンの代わりにトリメチルシリルアセチレン(74mg, 0.75mmol)、3−メチルブタナルの代わりに2−メチルプロパナル(36mg, 0.50mmol)を用い、反応時間を3日間にした以外は実施例20と同様に行い、N,N−ジベンジル−4−メチル−1−(トリメチルシリル)−1−ペンチン−3−アミンを無色油状物として147mg得た。(収率:84%)
[α]D33 = +237(c=0.99, CHCl3).
【0213】
上記で得られたN,N−ジベンジル−4−メチル−1−(トリメチルシリル)−1−ペンチン−3−アミン(105mg, 0.300mmol)をテトラヒドロフラン(2ml)に溶かし、0℃に冷却した。この溶液に、テトラブチルアンモニウムフルオリド(0.330ml, 0.330mmol)を滴下した。反応終了後、トルエン(2ml)を加え、テトラヒドロフランを減圧下留去した後、トルエン層を直接シリカゲルフラッシュクロマトグラフィーに付し、表題化合物を無色油状物として77.4mg得た。(収率:93%,80%e.e.)
【0214】
[α]D35 = +205(c=1.07, CHCl3).
HPLC条件:カラム:キラルセルOD−H×2(25cm,ダイセル化学),移動相:ヘキサン,流速:0.2ml/min,保持時間:(minor)=53.0分, (major)=60.2分.
【0215】
実施例23:1−(1−(トリメチルシリル)オクト−1−イン−3−イル)ピペリジン−4−オン
臭化銅(I)(3.6mg, 0.025mmol)、(R,Rax)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)−フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミン(15.7mg, 0.028mmol)および4Åモルキュラシーブ(粉末、0.25g)を10mlのシュレンクチューブに入れ、次いで、5分間アルゴンでパージした。ジクロロメタン(1ml)を加え、得られた懸濁物を60分間攪拌した。反応混合物にトリエチルアミン(56mg, 0.55mmol)、4−ピペリジノン一塩酸塩一水和物(154mg, 1.0mmol)、(トリメチルシリル)アセチレン(98mg, 0.50mmol)およびn−ヘキサナール(50mg, 0.50mmol)を添加した。フラスコをジクロロメタン(1ml)でリンスし、シールした。反応混合物を23℃で22時間激しく攪拌した。反応混合物をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=9:1)で精製し、102mgの表題化合物を得た。(収率:73%)
【0216】
[α]D25: -11.0 °
1H-NMR(300MHz, CDCl3) δ 0.13 (s, 9H, TMS), 0.89(t, J=6.9, 3H), 1.28-1.34(m, 4H), 1.43-1.48(m, 2H), 1.63(q, J=7.5, 2H), 2.42-2.48(m, 4H), 2.64-2.72(m, 2H), 2.84-2.93(m, 2H), 3.42(t, J=7.5, 1H).
13C-NMR(75MHz, CDCl3) δ 0.3, 14.1, 22.6, 26.2, 31.5, 33.6, 41.5, 49.1, 57.4, 90.0, 103.0, 209.0.
FTIR(thin film, cm-1): 2957(s), 2860(m), 2160(m), 1723(s), 1469(w), 1337(m), 1250(s), 843(s).
MS(EI) calcd for C16H29NOSi [M-H]+ 278.1935 found 278.1936.
表題化合物をメタノール中炭酸カリウムと23℃で4時間処理して、脱シリル体に導いた後、ガスクロマトグラフィー(Gamma 1, 115 ℃,保持時間:(minor)=70.472分,(major)=71.593分)でキラル分析を行った。光学純度は90%eeであった。
[α]D25: -18.0 °(脱シリル体)
【0217】
実施例24:1−(4−メチル−1−(トリメチルシリル)ペント−1−イン−3−イル)ピペリジン−4−オン
n―ヘキサナールの代わりにイソブタナール(108mg, 1.50mmol)を用いたこと以外は、実施例23と同様に反応を行い、111mgの表題化合物を無色油状物として得た。(収率:88%)
[α]D23: -25.1 °
1H-NMR(300MHz, CDCl3) δ 0.15(s, 9H, TMS), 1.03(dd, J1=6.5, J2=16.2, 6H), 1.73-1.83(m, 1H), 2.42-2.53(m, 4H), 2.61-2.69(m, 2H), 2.82-2.90(m, 2H), 2.95(d, J=10.3, 1H).
13C-NMR(75MHz, CDCl3) δ 0.3, 19.8, 20.6, 30.9, 41.6, 49.3, 64.6, 90.5, 102.4, 209.3.
FTIR(thin film, cm-1): 2959(s), 2905(m), 2815(m), 2160(m), 1720(s), 1467(w), 1249(m), 1212(m), 1075(m), 1008(m), 843(s), 760(m).
MS (EI) calcd for C14H25NOSi [M-H]+ 250.1622 found 250.1621.
表題化合物をメタノール中炭酸カリウムと23℃で4時間処理して、脱シリル体に導いた後、ガスクロマトグラフィー(Gamma 1, 120 ℃,保持時間:(minor)=15.837分,(major)=16.211分)でキラル分析を行った。光学純度は96%eeであった。
[α]D25: -37.9 °(脱シリル体)
【0218】
実施例25:1−(1−(フラン−2−イル)−3−(トリメチルシリル)プロプ−2−イニル)ピペリジン−4−オン
n―ヘキサナールの代わりにフルフラール(48mg, 0.50mmol)を用いたこと以外は、実施例23と同様に反応を行い、81mgの表題化合物を白色固体として得た。(収率:58%)
[α]D26: -2.5 °
1H-NMR(300 MHz, CDCl3) δ 0.17(s, 9H, TMS), 2.38-2.54(m, 4H), 2.73-2.82(m, 4H), 4.8(s, 1H), 6.31-6.32(m, 1H), 6.41(d, J=3.43, 1H), 7.38-7.39(m, 1H).
13C-NMR(75MHz, CDCl3) δ 0.1, 41.3, 49.0, 55.5, 91.9, 98.1, 109.6, 110.0, 142.8, 150.7, 208.4.
FTIR(thin film, cm-1): 3117(w), 2959(s), 2903(m), 2817(s), 2168(m), 1718(s), 1501(w), 1330(m), 1250(s), 1204(s), 1070(m), 995(s), 844(s).
MS (EI) calcd for C15H21NO2Si [M-H]+ 274.1258 found 274.1258.
表題化合物をガスクロマトグラフィー(Gamma 1, 135 ℃,保持時間:(minor)=97.006分,(major)=98.568分)でキラル分析を行った。光学純度は90%eeであった。
【0219】
実施例26:1−(4−メチル−1−フェニルペント−1−イン−3−イル)ピペリジン−4−オン
n―ヘキサナールの代わりにイソブタナール(108mg, 1.50mmol)、(トリメチルシリル)アセチレンの代わりにフェニルアセチレン(51 mg,0.05 mmol)を用いたこと以外は、実施例23と同様に反応を行い、105mgの表題化合物を白色固体として得た。(収率:82%、光学純度:85%ee)
HPLC分析条件:
カラム:キラルセル OD−H(25cm×4.6mm,ダイセル化学)およびキラルセル OD−H(15cm×4.6mm,ダイセル化学),移動相:98.5%ヘキサン/1.5%iPrOH,流速:0.25ml/min,検出:254nm,保持時間:(major)=53.65分,(minor)=60.95分.
1H-NMR(300MHz, CDCl3) δ 1.11(dd, J1=6.5, J2=20.2, 6H), 1.86-1.99(m, 1H), 2.41-2.56(m, 4H), 2.73-2.79(m, 2H), 2.81-3.03(m, 2H), 3.19 (d, J=10.0, 1H), 7.26-7.43(m, 5H).
13C-NMR(75MHz, CDCl3) δ 20.0, 20.8, 41.7, 49.5, 64.4, 86.2, 86.5, 123.0, 127.9, 128.2, 131.5, 209.2.
FTIR(thin film, cm-1): 3055(w), 2960(s), 2908(m), 2869(w), 2813(m), 2360(w), 1717(s), 1680(w), 1598(w), 1489(m), 1334(m), 1212(s), 1074(m), 757(s).
MS(EI) calcd for C17H21NO [M-H]+254.1539 found 254.1541.
【0220】
実施例27:4−メチル−1−フェニルペント−1−イン−3−アミン
25mlの耐圧チューブに1−(4−メチル−1−フェニルペント−1−イン−3−イル)ピペリジン−4−オン(76.6 mg, 0.30 mmol)および塩化アンモニウム(48 mg, 0.90 mmol)を入れた。耐圧チューブをアルゴンで5分間パージし、ついで、飽和アンモニアエタノール溶液(2 ml)を加えた。耐圧チューブをきつくシールして、反応混合物を90℃で24時間攪拌した。反応混合物を減圧下濃縮し、茶色の残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/メタノール = 19:1)で精製して、33.3mgの純粋な表題化合物を黄色油状物として得た。(収率:64%)
1H-NMR(300MHz, CDCl3) δ 1.06(d, J=6.7, 6H), 1.81-1.92(m, 1H), 3.62(d, J=5.4, 1H), 7.26-7.43(m, 5H).
【0221】
実施例28:Rh錯体の調製
10mlのシュレンクフラスコ中で、[Rh(cod)]BF(41mg, 0.1mmol)および(R,Sax)−1−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)−4−(1-フェニルエトキシ)フタラジン(59mg, 0.105mmol)の混合物にアルゴン脱気したジクロロメタン(5ml)を加えた。混合物を20分間撹拌した後、溶媒を減圧下留去した。得られた黄橙色の残渣をスパチュラでフラスコの壁からこすり落とし、アルゴン脱気したジエチルエーテル(5ml)中で粉砕した。ジエチルエーテルをカニューラで除き、黄橙色の残渣を減圧下乾燥し、Rh錯体を得た。得られた複合体は空気中で安定ではなく、25℃で酸素と湿気を除いたグローブボックスに保管した。
【0222】
実施例29:(S)−1−フェニルエタノール
実施例28で得られたロジウム錯体(3.4mg, 4μmol)のアルゴン脱気したジクロロメタン溶液をシリンジで反応容器に移した。ジクロロメタンを減圧下留去し、次いでアルゴン脱気した乾燥トルエン(1ml)、スチレン(41.7mg, 0.40mmol)およびフレッシュに蒸留したカテコールボラン(56μl, 0.45mmol)を添加した。反応混合物を2時間室温で撹拌し、氷浴で冷却し、エタノール(1ml)でクェンチした。2M水酸化ナトリウム水溶液(1ml)および30%過酸化水素水溶液(1ml)を加え、混合物を30分間かけて室温まで放置し、次いで同温で2時間撹拌した。ジエチルエーテル(10ml)を加え、橙色の有機層を1M水酸化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去後、生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(ペンタン/ジエチルエーテル=2:1)で精製し、35.7mgの表題化合物を得た。(収率:73%,92%e.e.)
【0223】
[α]D29 = -49.5(c=0.525, CHCl3).
HPLC条件:カラム:キラルセルOD−H(25cm,ダイセル化学),移動相:99% ヘキサン/1%iPrOH,流速:0.9 ml/min,保持時間:R体=24.5分, S体=32.5分.
【0224】
実施例30:(S)−1−(4−メチルフェニル)エタノール
スチレンの代わりに4−メチルスチレン(47.3mg, 0.40mmol)を用いたこと以外は実施例29と同様に行い、51.2mgの表題化合物を得た。(収率:94%,92%e.e.)
【0225】
1−(4−メチルフェニル)エタノール:2−(4−メチルフェニル)エタノール=98:2(1H−NMRより)
[α]D27 = -53.0(c=0.55, CHCl3).
HPLC条件:カラム:キラルセルOD−H(25cm,ダイセル化学),移動相:99.5% ヘキサン/0.5%iPrOH,流速:0.9 ml/min,保持時間:R体=39.8分, S体=42.6分.
【0226】
実施例31:(S)−1−(3−メチルフェニル)エタノール
スチレンの代わりに3−メチルスチレン(47.3mg, 0.40mmol)を用いたこと以外は実施例29と同様に行い、46.4mgの表題化合物を得た。(収率:85%,84%e.e.)
【0227】
1−(3−メチルフェニル)エタノール:2−(3−メチルフェニル)エタノール=92:8(H−NMRより)
[α]D26 = -42.6(c=0.62, CHCl3).
HPLC条件:カラム:キラルセルOD−H(25cm,ダイセル化学),移動相:99% ヘキサン/1%iPrOH,流速:0.8 ml/min,保持時間:R体=20.1分, S体=28.6分.
【0228】
実施例32:(S)−1−(2−メチルフェニル)エタノール
スチレンの代わりに2−メチルスチレン(47.3mg, 0.40mmol)を用いたこと以外は実施例29と同様に行い、44.2mgの表題化合物を得た。(収率:81%,91%e.e.)
【0229】
1−(2−メチルフェニル)エタノール:2−(2−メチルフェニル)エタノール=91:9(H−NMRより)
[α]D29 = -72.1(c=0.535, CHCl3).
HPLC条件:カラム:キラルセルOB−H(25cm,ダイセル化学),移動相:90% ヘキサン/10%iPrOH,流速:0.5 ml/min,保持時間:S体=10.0分, R体=13.7分.
【0230】
実施例33:(S)−1−(4−メトキシフェニル)エタノール
スチレンの代わりに4−メトキシスチレン(53.7mg, 0.40mmol)を用い、酸化処理前の反応時間を3時間にしたこと以外は実施例29と同様に行い、48.5mgの表題化合物を得た。(収率:80%,90%e.e.)
【0231】
1−(4−メトキシフェニル)エタノール:2−(4−メトキシフェニル)エタノール=95:5(H−NMRより)
[α]D28 = -45.5(c=0.545, CHCl3).
HPLC条件:カラム:キラルセルOD−H(25cm,ダイセル化学),移動相:99% ヘキサン/1%iPrOH,流速:0.9 ml/min,保持時間:R体=40.0分, S体=45.6分.
【0232】
実施例34:(S)−1−(4−クロロフェニル)エタノール
スチレンの代わりに4−クロロスチレン(55.4mg, 0.40mmol)を用い、酸化処理前の反応時間を3時間にしたこと以外は実施例29と同様に行い、54.2mgの表題化合物を得た。(収率:87%,87%e.e.)
【0233】
1−(4−クロロフェニル)エタノール:2−(4−クロロフェニル)エタノール=98:2(H−NMRより)
[α]D27 = -42.4(c=0.495, CHCl3).
HPLC条件:カラム:キラルセルOD−H(25cm,ダイセル化学),移動相:99% ヘキサン/1%iPrOH,流速:0.9 ml/min,保持時間:S体=24.8分, R体=27.6分.
【0234】
実施例35:(S)−1−(2−ナフチル)エタノール
スチレンの代わりに2−ビニルナフタレン(61.7mg, 0.40mmol)を用い、酸化処理前の反応時間を4時間にしたこと以外は実施例29と同様に行い、56.9mgの表題化合物を得た。(収率:80%,81%e.e.)
【0235】
1−(2−ナフチル)エタノール:2−(2−ナフチル)エタノール=86:14(H−NMRより)
[α]D29 = -31.7(c=0.51, CHCl3).
HPLC条件:カラム:キラルセルOB−H(25cm,ダイセル化学),移動相:90% ヘキサン/10%iPrOH,流速:0.5 ml/min,保持時間:S体=17.9分, R体=20.7分.
【0236】
実施例36:(R)−(+)−5−(1−イソプロピル−3−フェニルプロピン−2−イル)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−4,6−ジオン
酢酸銅(II)一水和物(5.0 mg, 0.025 mmol)の水(0.2 ml)溶液を(L)−アスコルビン酸ナトリウム(10 mg, 0.050 mmol)で処理し、混合物が明橙色になるまで(3分間)攪拌した。続いて、(R, M)−3−{[4−(2−ジフェニルホスファニル−7−メトキシ−ナフタレン−1−イル)−フタラジン−1−イルアミノ]−フェニル−メチル}−ペンタン−3−オール(1stジアステレオマー, 16.5 mg, 0.025 mmol)およびフェニルアセチレン(0.275 ml, 2.5 mmol)を加えた。得られた混合物を23℃で10分間攪拌し、0℃に冷却して5分間撹拌した後、5−イソブチリデン−2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−4,6−ジオン(50mg, 0.25 mmol)で処理した。反応混合物を0℃で14時間激しく撹拌し、ジクロロメタン(2ml)で希釈し、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル 3:1)に直接付して、71mgの純粋な表題化合物を白色固体として得た。(収率:94%)
【0237】
mp: 111-113℃.
[α]D25= 7.93 (c = 0.5, CHCl3).
他のスペクトルデータは、文献(J. Am. Chem. Soc., 2003, 125, 6054-6055)記載のものと一致した。
表題化合物をN,N−ジメチルホルムアミド中、アニリンと100℃で1時間処理して、(R)−3−イソプロピル−5−フェニル−4−ペンチンアニリドに導き、これをHPLCでキラル分析した。光学純度は95%eeであった。
HPLC分析条件:
カラム:キラルセル OD−H(25cm×4.6mm,ダイセル化学)およびキラルセル OD−H(15cm×4.6mm,ダイセル化学),移動相:87%ヘキサン/13%iPrOH,流速:0.7ml/min,検出:254nm,保持時間:(minor)=25.4分,(major)=27.5分.
絶対配置は、表題化合物を(S)−3−イソプロピル−5−フェニルペンタン酸に導き(1.HO, DMF, 100℃;2. H, PtO, EtOAc)、公知文献(J. Org. Chem. 2002, 67, 4680-4683)と比較して決定した。
【0238】
実施例37:(R)−(+)−5−(1−シクロヘキシル−3−フェニルプロピン−2−イル)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−4,6−ジオン
酢酸銅(II)一水和物(5.0 mg, 0.025 mmol)の水(0.2 ml)溶液を(L)−アスコルビン酸ナトリウム(10 mg, 0.050 mmol)で処理し、混合物が明橙色になるまで(3分間)攪拌した。続いて、(R, M)−3−{[4−(2−ジフェニルホスファニル−7−メトキシ−ナフタレン−1−イル)−フタラジン−1−イルアミノ]−フェニル−メチル}−ペンタン−3−オール(1stジアステレオマー, 16.5 mg, 0.025 mmol)およびフェニルアセチレン(0.275 ml, 2.5 mmol)を加えた。得られた混合物を23℃で10分間攪拌し、0℃に冷却して5分間撹拌した後、5−(シクロヘキシルメチレン)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−4,6−ジオン(59mg, 0.25mmol)で処理した。反応混合物を0℃で13時間激しく撹拌し、ジクロロメタン(2ml)で希釈し、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル3:1)に直接付して、69mgの純粋な表題化合物を白色固体として得た。(収率:81%)
【0239】
mp: 136-138 ℃.
[α]D31 = 8.93 (c = 0.50, CHCl3).
1H-NMR(300MHz, CDCl3) δ 0.98-1.40(m, 5H), 1.55-1.81(m, 10H), 2.11-2.24(m. 1H), 2.32(d, J=12.6, 1H), 3.34 (dd, J=2.7, 10.2, 1H), 3.78(d, J=2.7, 1H), 7.26-7.28(m, 3H), 7.36-7.39(m, 2H).
13C-NMR (75MHz, CDCl3) δ 26.0, 26.0, 26.2, 28.0, 28.6, 30.8, 32.4, 38.9, 39.4, 46.8, 84.3, 87.7, 105.2, 122.8, 128.0, 128.0, 131.6, 163.6, 165.5.
FTIR(thin film, cm-1): 3063(w), 3000(w), 2932(m), 2848(m), 1790(m), 1750(s), 1394(m), 1384(m), 1314(m), 1207(m), 1059(m).
MS(ESI, pos.) calcd for C21H24NaO4+(M+Na+) 363.16 found 363.45.
Anal. Calcd for C21H24O4: C, 74.09; H, 7.11. Found: C, 73.85; H, 7.13.
【0240】
表題化合物をN,N−ジメチルホルムアミド中、アニリンと100℃で1時間処理して、(R)−3−シクロヘキシル−5−フェニル−4−ペンチンアニリドに導き、これをHPLCでキラル分析した。光学純度は94%eeであった。
HPLC分析条件:
カラム:キラルセル OD−H(25cm×4.6mm,ダイセル化学)およびキラルセル OD−H(15cm×4.6mm,ダイセル化学),移動相:87%ヘキサン/13%iPrOH,流速:0.7ml/min,検出:254nm,保持時間:(major)=25.4分,(minor)=30.4分.
絶対配置は、表題化合物を(S)−3−シクロヘキシル−5−フェニル−5−ペンチン酸(4−ブロモフェニル)アミドに導き(DMF/4−ブロモアニリン 10:1, 1時間, 100℃)、公知化合物(Cambridge Crystallographic Data Centre, No. 268029)と比較して決定した。
【0241】
実施例38:(R)−(+)−5−(1−シクロプロピル−3−フェニルプロピン−2−イル)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−4,6−ジオン
酢酸銅(II)一水和物(5.0 mg, 0.025 mmol)の水(0.2 ml)溶液を(L)−アスコルビン酸ナトリウム(10 mg, 0.050 mmol)で処理し、混合物が明橙色になるまで(3分間)攪拌した。続いて、(R, M)−3−{[4−(2−ジフェニルホスファニル−7−メトキシ−ナフタレン−1−イル)−フタラジン−1−イルアミノ]−フェニル−メチル}−ペンタン−3−オール(1stジアステレオマー, 16.5 mg, 0.025 mmol)およびフェニルアセチレン(0.275 ml, 2.5 mmol)を加えた。得られた混合物を23℃で10分間攪拌し、0℃に冷却して5分間撹拌した後、5−(シクロプロピルメチレン)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−4,6−ジオン(49mg, 0.25mmol)で処理した。反応混合物を0℃で51時間激しく撹拌し、ジクロロメタン(2ml)で希釈し、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン/ジクロロメタン 1:3)に直接付して、59mgの純粋な表題化合物を白色固体として得た。(収率:79%)
【0242】
mp: 96-97 ℃
[α]D25 = 105.4 (c = 0.505, CHCl3).
1H-NMR(300MHz, CDCl3) δ 0.30-0.37(m, 1H), 0.51-0.65(m, 2H), 0.70-0.79(m, 1H), 1.66-1.76(m, 1H), 1.80(s, 6H), 2.98(dd, J=2.6, 9.5, 1H), 3.76(d, J=2.6, 1H), 7.25-7.29(m, 3H), 7.37-7.42(m, 2H).
13C-NMR(75 MHz, CDCl3) δ 4.9, 6.3, 14.7, 27.8, 28.5, 37.7, 50.7, 83.4, 86.9, 105.2, 122.7, 128.0, 131.7, 163.6, 164.5.
FTIR(thin film, cm-1): 3003(w), 2881(w), 1785(m), 1749(s), 1490(w), 1334(m), 1298(s), 1204(m), 1005(m), 758(m), 693(m).
MS(ESI, neg.) calcd for C18H17O4-(M-H+) 297.1 found 297.2.
Anal. Calcd for C18H18O4: C, 72.47; H, 6.08. Found: C, 72.34; H, 6.11.
【0243】
表題化合物をN,N−ジメチルホルムアミド中、アニリンと100℃で1時間処理して、(R)−3−シクロプロピル−5−フェニル−4−ペンチンアニリドに導き、これをHPLCでキラル分析した。光学純度は97%eeであった。
HPLC分析条件:
カラム:キラルパック AD−H(25cm×4.6mm,ダイセル化学),移動相:90%ヘキサン/10%iPrOH,流速:0.8ml/min,検出:254nm,保持時間:(minor)=14.5分,(major)=16.5分.
【0244】
実施例39:(R)−(+)−5−(1−イソブチル−3−フェニルプロピン−2−イル)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−4,6−ジオン
酢酸銅(II)一水和物(10.0 mg, 0.050 mmol)の水(0.2 ml)溶液を(L)−アスコルビン酸ナトリウム(20 mg, 0.10 mmol)で処理し、混合物が明橙色になるまで(3分間)攪拌した。続いて、(R, M)−3−{[4−(2−ジフェニルホスファニル−7−メトキシ−ナフタレン−1−イル)−フタラジン−1−イルアミノ]−フェニル−メチル}−ペンタン−3−オール(1stジアステレオマー, 33.1 mg, 0.050 mmol)およびフェニルアセチレン(0.275 ml, 2.5 mmol)を加えた。得られた混合物を23℃で10分間攪拌し、0℃に冷却して5分間撹拌した後、5−(1−イソペンチリデン)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−4,6−ジオン(53mg, 0.25mmol)で処理した。反応混合物を0℃で24時間激しく撹拌し、ジクロロメタン(2ml)で希釈し、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル5:1)に直接付して、67mgの純粋な表題化合物を白色固体として得た。(収率:85%)
【0245】
mp: 100-102 ℃.
[α]D27 = 18.1 (c = 0.52, CHCl3).
1H-NMR(300 MHz, CDCl3) δ 0.99(d, J=2.5, 3H), 1.01(d, J=2.5, 3H), 1.35-1.44(m, 1H), 1.78(s, 6H), 1.87-2.00(m, 1H), 2.10-2.20(m, 1H), 3.65(d, J=2.7, 1H), 3.72-3.79 (m, 1H), 7.24-7.30(m, 3H), 7.35-7.42(m, 2H).
13C-NMR(75 MHz, CDCl3) δ 21.6, 23.3, 26.4, 27.7, 28.6, 30.4, 41.4, 50.3, 83.5, 88.0, 105.2, 122.9, 128.0, 128.1, 131.7, 163.5, 164.3.
FTIR(thin film, cm-1): 2956(m), 1791(m), 1750(s), 1384(m), 1306(s), 1206(m), 1060(m), 1006(m), 884(w), 756(m).
MS(ESI, neg.) calcd for C19H21O4-(M-H+) 313.15 found 313.3.
Anal. Calcd for C19H22O4: C, 72.59; H, 7.05. Found: C, 72.52; H, 7.11.
【0246】
表題化合物をN,N−ジメチルホルムアミド中、アニリンと100℃で1時間処理して、(R)−3−イソブチル−5−フェニル−4−ペンチンアニリドに導き、これをHPLCでキラル分析した。光学純度は90%eeであった。
HPLC分析条件:
カラム:キラルセル OD−H(25cm×4.6mm,ダイセル化学)およびキラルセル OD−H(15cm×4.6mm,ダイセル化学),移動相:87%ヘキサン/13%iPrOH,流速:0.7ml/min,検出:254nm,保持時間:(minor)=25.0分,(major)=26.8分.
【0247】
実施例40:(R)−(+)−5−(1−エチル−3−フェニルプロピン−2−イル)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−4,6−ジオン
酢酸銅(II)一水和物(10 mg, 0.050 mmol)の水(0.2 ml)溶液を(L)−アスコルビン酸ナトリウム(20 mg, 0.10 mmol)で処理し、混合物が明橙色になるまで(3分間)攪拌した。続いて、(R, M)−3−{[4−(2−ジフェニルホスファニル−7−メトキシ−ナフタレン−1−イル)−フタラジン−1−イルアミノ]−フェニル−メチル}−ペンタン−3−オール(1stジアステレオマー, 33.1 mg, 0.050 mmol)およびフェニルアセチレン(0.275 ml, 2.5 mmol)を加えた。得られた混合物を23℃で10分間攪拌し、0℃に冷却して5分間撹拌した後、5−(1−プロピリデン)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−4,6−ジオン(46mg, 0.25mmol)で処理した。反応混合物を0℃で24時間激しく撹拌し、ジクロロメタン(2ml)で希釈し、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル3:1→2:1)に直接付して、59mgの純粋な表題化合物を白色固体として得た。(収率:83%)
【0248】
mp: 105-110 ℃.
[α]D25 = 20.5 (c = 0.54, CHCl3).
他のスペクトルデータは、文献(J. Am. Chem. Soc., 2003, 125, 6054-6055)記載のものと一致した。
表題化合物をN,N−ジメチルホルムアミド中、アニリンと100℃で1時間処理して、(R)−3−エチル−5−フェニル−4−ペンチンアニリドに導き、これをHPLCでキラル分析した。光学純度は82%eeであった。
HPLC分析条件:
カラム:キラルセル OD−H(25cm×4.6mm,ダイセル化学)およびキラルセル OD−H(15cm×4.6mm,ダイセル化学),移動相:87%ヘキサン/13%iPrOH,流速:0.7ml/min,検出:254nm,保持時間:(major)=27.0分,(minor)=33.5分.
【0249】
実施例41:(S)−(+)−5−(1,3−ジフェニルプロピン−2−イル)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−4,6−ジオン
酢酸銅(II)一水和物(20 mg, 0.10 mmol)の水(0.4 ml)溶液を(L)−アスコルビン酸ナトリウム(40 mg, 0.20 mmol)で処理し、混合物が明橙色になるまで(3分間)攪拌した。続いて、(R, M)−3−{[4−(2−ジフェニルホスファニル−7−メトキシ−ナフタレン−1−イル)−フタラジン−1−イルアミノ]−フェニル−メチル}−ペンタン−3−オール(1stジアステレオマー, 66.2 mg, 0.10 mmol)およびフェニルアセチレン(0.55 ml, 5.0 mmol)を加えた。得られた混合物を23℃で10分間攪拌し、0℃に冷却して5分間撹拌した後、5−ベンジリデン−2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−4,6−ジオン(116mg, 0.50mmol)で処理した。反応混合物を0℃で66時間激しく撹拌し、ジクロロメタン(2ml)で希釈し、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル3:1→1:1)に直接付して、110mgの純粋な表題化合物を白色固体として得た。(収率:64%)
【0250】
mp: 153-156 ℃ (分解).
[α]D27 = 59.5 (c = 0.31, CHCl3).
他のスペクトルデータは、文献(J. Am. Chem. Soc., 2003, 125, 6054-6055)記載のものと一致した。
表題化合物をN,N−ジメチルホルムアミド中、アニリンと100℃で1時間処理して、(R)−3,5−ジフェニル−4−ペンチンアニリドに導き、これをHPLCでキラル分析した。光学純度は83%eeであった。
HPLC分析条件:
カラム:キラルセル OD−H(25cm×4.6mm,ダイセル化学),移動相:87%ヘキサン/13%iPrOH,流速:0.7ml/min,検出:254nm,保持時間:(minor)=21.5分,(major)=24.4分.
絶対配置は、表題化合物を(S)−メチル−3,5−ジフェニル−2−メトキシカルボニル−5−オキソペンタンに導き(1.H, Pd/C, MeOH;2.cat. HCl, MeOH, 還流;3.CrO, AcOH,rt)、公知文献(J. Am. Chem. Soc., 1995, 117, 6194-6198)と比較して決定した。
【0251】
実施例42:(S)−(+)−5−(3−フェニル−1−m−トリルプロピン−2−イル)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−4,6−ジオン
酢酸銅(II)一水和物(20 mg, 0.10 mmol)の水(0.4 ml)溶液を(L)−アスコルビン酸ナトリウム(40 mg, 0.20 mmol)で処理し、混合物が明橙色になるまで(3分間)攪拌した。続いて、(R, M)−3−{[4−(2−ジフェニルホスファニル−7−メトキシ−ナフタレン−1−イル)−フタラジン−1−イルアミノ]−フェニル−メチル}−ペンタン−3−オール(1stジアステレオマー, 66.2 mg, 0.10 mmol)およびフェニルアセチレン(0.55 ml, 5.0 mmol)を加えた。得られた混合物を23℃で10分間攪拌し、0℃に冷却して5分間撹拌した後、5−(3−メチルベンジリデン)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−4,6−ジオン(123mg, 0.50mmol)で処理した。反応混合物を0℃で66時間激しく撹拌し、ジクロロメタン(2ml)で希釈し、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル3:1→1:1)に直接付して、151mgの純粋な表題化合物を白色固体として得た。(収率:87%)
mp: 136-137 ℃ (分解).
【0252】
[α]D27 = 61.3 (c = 0.53, CHCl3).
1H-NMR(300MHz, CDCl3) δ 1.63(s, 3H), 1.74(s, 3H), 2.38(s, 3H), 4.00(d, J=2.6, 1H), 5.12(d, J=2.6, 1H), 7.11(d, J=7.5, 1H), 7.26(t, J=7.5, 1H), 7.30-7.33(m, 3H), 7.43(d, J=7.5, 2H), 7.46-7.51(m, 2H).
13C-NMR (75MHz, CDCl3) δ 21.7, 27.9, 28.4, 37.1, 52.9, 85.4, 86.3, 105.2, 122.7, 125.6, 128.1. 128.2, 128.3 128.5. 129.1, 131.7, 136.9, 138.1, 162.9, 163.7.
FTIR(thin film, cm-1): 3003(w), 1786(m), 1749(s), 1607(w), 1490(m), 1296(s), 1205(m), 1006(m), 758(m), 692(m).
MS(ESI, neg.) calcd for C22H19O4-(M-H+) 347.1 found 347.2.
Anal. Calcd for C22H20O4: C, 75.84; H, 5.79. Found: C, 75.66; H, 5.93.
【0253】
表題化合物をN,N−ジメチルホルムアミド中、アニリンと100℃で1時間処理して、(R)−5−フェニル−3−(m−トリル)−4−ペンチンアニリドに導き、これをHPLCでキラル分析した。光学純度は90%eeであった。
HPLC分析条件:
カラム:キラルセル OD−H(25cm×4.6mm,ダイセル化学),移動相:87%ヘキサン/13%iPrOH,流速:0.7ml/min,検出:254nm,保持時間:(minor)=19.8分,(major)=21.7分.
得られた固体(123mg)を40℃の酢酸エチルから再結晶し、光学純度98%の白色結晶(85mg)を得た。(回収率69%)
[α]D30 = 67.9 (c = 0.53, CHCl3).
mp: 136-137 ℃ (分解).
【0254】
実施例43:(S)−5−(1−(4−メトキシフェニル)−3−フェニルプロピン−2−イル)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−4,6−ジオン
酢酸銅(II)一水和物(10 mg, 0.050 mmol)の水(0.2 ml)溶液を(L)−アスコルビン酸ナトリウム(20 mg, 0.10 mmol)で処理し、混合物が明橙色になるまで(3分間)攪拌した。続いて、(R, M)−3−{[4−(2−ジフェニルホスファニル−7−メトキシ−ナフタレン−1−イル)−フタラジン−1−イルアミノ]−フェニル−メチル}−ペンタン−3−オール(1stジアステレオマー, 33.1 mg, 0.05 mmol)およびフェニルアセチレン(0.275 ml, 2.5 mmol)を加えた。得られた混合物を23℃で10分間攪拌し、0℃に冷却して5分間撹拌した後、5−(4−メトキシベンジリデン)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−4,6−ジオン(65.6mg, 0.25mmol)で処理した。反応混合物を0℃で64時間激しく撹拌し、ジクロロメタン(2ml)で希釈し、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル3:1→1:1)に直接付して、25mgの純粋な表題化合物を白色固体として得た。(収率:27%)
スペクトルデータは、文献(J. Am. Chem. Soc., 2003, 125, 6054-6055)記載のものと一致した。
【0255】
表題化合物をN,N−ジメチルホルムアミド中、アニリンと100℃で1時間処理して、(R)−3−(4−メトキシフェニル)−5−フェニル−4−ペンチンアニリドに導き、これをHPLCでキラル分析した。光学純度は81%eeであった。
HPLC分析条件:
カラム:キラルセル OD−H(25cm×4.6mm,ダイセル化学),移動相:87%ヘキサン/13%iPrOH,流速:1ml/min,検出:254nm,保持時間:(minor)=18.7分,(major)=21.5分.
【0256】
実施例44:(S)−5−(1−(4−ブロモフェニル)−3−フェニルプロピン−2−イル)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−4,6−ジオン
酢酸銅(II)一水和物(10 mg, 0.050 mmol)の水(0.2 ml)溶液を(L)−アスコルビン酸ナトリウム(20 mg, 0.10 mmol)で処理し、混合物が明橙色になるまで(3分間)攪拌した。続いて、(R, M)−3−{[4−(2−ジフェニルホスファニル−7−メトキシ−ナフタレン−1−イル)−フタラジン−1−イルアミノ]−フェニル−メチル}−ペンタン−3−オール(1stジアステレオマー, 33.1 mg, 0.050 mmol)およびフェニルアセチレン(0.275 ml, 2.5 mmol)を加えた。得られた混合物を23℃で10分間攪拌し、0℃に冷却して5分間撹拌した後、5−(4−ブロモベンジリデン)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−4,6−ジオン(77.7mg, 0.25mmol)で処理した。反応混合物を0℃で42時間激しく撹拌し、ジクロロメタン(2ml)で希釈し、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル3:1→1:1)に直接付して、53mgの純粋な表題化合物を白色固体として得た。(収率:39%)
スペクトルデータは、文献(J. Am. Chem. Soc., 2003, 125, 6054-6055)記載のものと一致した。
【0257】
表題化合物をN,N−ジメチルホルムアミド中、アニリンと100℃で1時間処理して、(R)−3−(4−ブロモフェニル)−5−フェニル−4−ペンチンアニリドに導き、これをHPLCでキラル分析した。光学純度は80%eeであった。
HPLC分析条件:
カラム:キラルセル OD−H(25cm×4.6mm,ダイセル化学)およびキラルセル OD−H(15cm×4.6mm,ダイセル化学),移動相:87%ヘキサン/13%iPrOH,流速:1ml/min,検出:254nm,保持時間:(minor)=14.8分,(major)=19.6分.
【0258】
実施例45:(S)−5−(1−(フラン−2−イル)−3−フェニルプロピン−2−イル)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−4,6−ジオン
酢酸銅(II)一水和物(10 mg, 0.050 mmol)の水(0.2 ml)溶液を(L)−アスコルビン酸ナトリウム(20 mg, 0.10 mmol)で処理し、混合物が明橙色になるまで(3分間)攪拌した。続いて、(R, M)−3−{[4−(2−ジフェニルホスファニル−7−メトキシ−ナフタレン−1−イル)−フタラジン−1−イルアミノ]−フェニル−メチル}−ペンタン−3−オール(1stジアステレオマー, 33.1 mg, 0.050 mmol)およびフェニルアセチレン(0.275 ml, 2.5 mmol)を加えた。得られた混合物を23℃で10分間攪拌し、0℃に冷却して5分間撹拌した後、5−(2−フルフリデン)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−4,6−ジオン(55.6mg, 0.25mmol)で処理した。反応混合物を0℃で64時間激しく撹拌し、ジクロロメタン(2ml)で希釈し、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル3:1→1:1)に直接付して、26mgの純粋な表題化合物を白色固体として得た。(収率:32%)
スペクトルデータは、文献(J. Am. Chem. Soc., 2003, 125, 6054-6055)記載のものと一致した。
【0259】
表題化合物をN,N−ジメチルホルムアミド中、アニリンと100℃で1時間処理して、(R)−3−(フラン−2−イル)−5−フェニル−4−ペンチンアニリドに導き、これをHPLCでキラル分析した。光学純度は83%eeであった。
HPLC分析条件:
カラム:キラルセル OD−H(25cm×4.6mm,ダイセル化学)およびキラルセル OD−H(15cm×4.6mm,ダイセル化学),移動相:93%ヘキサン/7%iPrOH,流速:0.7ml/min,検出:254nm,保持時間:(major)=72.4分,(minor)=79.5分.
【産業上の利用可能性】
【0260】
本発明の化合物を配位子として有する不斉遷移金属錯体は不斉反応、特に不斉付加反応、不斉共役付加反応、不斉ヒドロホウ素化反応または不斉ジホウ素化反応等の優れた不斉触媒である。特に、本発明の不斉遷移金属錯体を化合物(XXVI)からの化合物(XXVII)の製造方法などの不斉共役付加反応に用いた場合、光学純度が比較的低い不斉遷移金属錯体を用いても高い光学純度の目的化合物を得ることができる。
したがって、当該不斉遷移金属錯体を不斉触媒として使用する不斉反応は、医薬(例えば、イブプロフェンなど)、農薬等の光学活性な合成中間体の有用な製造方法となり得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I):
【化1】


(式中、A環は存在しないかまたは置換基を有していてもよいベンゼン環を示し、RおよびRはそれぞれ独立して、置換基を有していてもよいフェニル基、シクロヘキシル基、2−フリル基または3−フリル基を示し、RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を示し、Xは、−ORまたは−NHR(ここで、RおよびRは置換基を有していてもよい低級アルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基または置換基を有していてもよいヘテロアリール基を示す。)で表される残基を示す。)で表される化合物。
【請求項2】
およびRがそれぞれ独立してフェニル基、トリル基またはシクロヘキシル基である、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
またはRが不斉中心を有する残基である、請求項1または2記載の化合物。
【請求項4】
光学活性化合物である、請求項1〜3のいずれかに記載の化合物。
【請求項5】
請求項4記載の化合物を配位子として含有することを特徴とする、不斉遷移金属錯体。
【請求項6】
遷移金属が、Ru、Pd、Rh、CuおよびAgから選ばれる金属である、請求項5記載の不斉遷移金属錯体。
【請求項7】
請求項4記載の化合物と遷移金属塩またはその錯体とを反応させることにより調製される、請求項5または6記載の不斉遷移金属錯体。
【請求項8】
遷移金属塩またはその錯体が、CuX、Cu(X、Rh(cod)、(nbd)Rh(acac)、CyRu(XおよびAgX(Xはハロゲン原子、BF、アセトキシ、SbF、PFおよびOSOCFから選ばれる対イオンを示し、codは1,5−シクロオクタジエンを示し、nbdはノルボナジエンを示し、Cyはシメンを示し、acacはアセチルアセトンを示す。)から選ばれる、請求項7記載の不斉遷移金属錯体。
【請求項9】
請求項5〜8のいずれかに記載の不斉遷移金属錯体を含有することを特徴とする、不斉触媒。
【請求項10】
不斉反応による光学活性化合物の製造方法であって、基質と請求項5〜8のいずれかに記載の不斉遷移金属錯体を接触させることを特徴とする光学活性化合物の製造方法。
【請求項11】
不斉反応が不斉付加反応、不斉共役付加反応、不斉ヒドロホウ素化反応、不斉ジホウ素化反応、不斉[3+2]環化反応、不斉置換反応または不斉ディールスアルダー[4+2]環化反応である、請求項10記載の製造方法。
【請求項12】
不斉反応が不斉付加反応である、請求項11記載の製造方法。
【請求項13】
不斉遷移金属錯体が、請求項4記載の化合物とCuX(Xはハロゲン原子、BF、アセトキシ、SbF、PFおよびOSOCFから選ばれる対イオンを示す。)との反応により調製されたものである、請求項12記載の製造方法。
【請求項14】
基質が、一般式(II):RCHO(II)(式中、Rは置換基を有していてもよい低級アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよい低級アルケニル基、置換基を有していてもよい低級アルキニル基、置換基を有していてもよいアラルキル基または置換基を有していてもよいヘテロアリール基を示す。)で表される化合物、一般式(III):HNR(III)(式中、RおよびRはそれぞれ独立して、置換基を有していてもよい低級アルキル基、置換基を有していてもよい低級アルケニル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基または置換基を有していてもよいヘテロアリール基を示すか、あるいはRとRが隣接する窒素原子と一緒になって、置換基を有していてもよい脂肪族含窒素複素環を形成してもよい。)で表される化合物および一般式(IV):HC≡CR10(IV)(式中、R10は水素原子、置換基を有していてもよい低級アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、トリアルキルシリル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基または置換基を有していてもよいヘテロアリール基を示す。)で表される化合物であり、光学活性化合物が一般式(V):
【化2】


(式中、R、R、RおよびR10は前記と同義を示し、*は不斉炭素を示す。)で表される化合物である、請求項12または13記載の製造方法。
【請求項15】
とRが隣接する窒素原子と一緒になって4−ピペリジノンを形成する、請求項14記載の製造方法。
【請求項16】
請求項15記載の方法により製造される一般式(Va):
【化3】


(式中、Rは置換基を有していてもよい低級アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよい低級アルケニル基、置換基を有していてもよい低級アルキニル基、置換基を有していてもよいアラルキル基または置換基を有していてもよいヘテロアリール基を示し、R10は水素原子、置換基を有していてもよい低級アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、トリアルキルシリル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基または置換基を有していてもよいヘテロアリール基を示し、*は不斉炭素を示す。)で表される化合物またはその塩を脱保護することを特徴とする、一般式(Vb):
【化4】


(式中、各記号は前記と同義を示す。)で表される化合物またはその塩の製造方法。
【請求項17】
不斉反応が不斉共役付加反応である、請求項11記載の製造方法。
【請求項18】
不斉遷移金属錯体が、請求項4記載の化合物、Cu(X(Xはハロゲン原子、BF、アセトキシ、SbF、PFおよびOSOCFから選ばれる対イオンを示す。)および還元剤との反応により調製されたものである、請求項17記載の製造方法。
【請求項19】
基質が、一般式(XXVI):
【化5】


(式中、YおよびYはそれぞれ独立して、酸素原子またはNR26(ここで、R26は置換基を有していてもよい低級アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基または置換基を有していてもよいヘテロアリール基を示す。)を示し、Yは炭素原子、硫黄原子を示し、R23およびR24はそれぞれ独立して、水素原子、オキソ、置換基を有していてもよい低級アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基または置換基を有していてもよいヘテロアリール基を示すか、またはR23およびR24が一緒になってオキソを形成してもよく、R25は置換基を有していてもよい低級アルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいヘテロアリール基、置換基を有していてもよいヘテロアリールアルキル基、置換基を有していてもよいヘテロアルキル基、−OCOR27、−NR2829または−SR30(ここで、R27、R28、R29およびR30はそれぞれ独立して、置換基を有していてもよい低級アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基または置換基を有していてもよいヘテロアリール基を示すか、あるいはR28とR29が隣接する窒素原子と一緒になって、置換基を有していてもよい脂肪族含窒素複素環を形成してもよい。)を示す。)で表される化合物および一般式(IV):HC≡CR10(IV)(式中、R10は水素原子、置換基を有していてもよい低級アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、トリアルキルシリル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基または置換基を有していてもよいヘテロアリール基を示す。)で表される化合物であり、光学活性化合物が一般式(XXVII):
【化6】


(式中、Y、Y、Y、R10、R23、R24およびR25は前記と同義を示し、*は不斉炭素を示す。)で表される化合物である、請求項17または18記載の製造方法。
【請求項20】
不斉反応が不斉ヒドロホウ素化反応である、請求項11記載の製造方法。
【請求項21】
不斉遷移金属錯体が、請求項4記載の化合物とRh(cod)(Xはハロゲン原子、BF、アセトキシ、SbF、PFおよびOSOCFから選ばれる対イオンを示し、codは1,5−シクロオクタジエンを示す。)との反応により調製されたものである、請求項20記載の製造方法。
【請求項22】
基質が一般式(VI):R11−HC=CH−R12(VI)(式中、R11は置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよい低級アルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基または置換基を有していてもよいヘテロアリール基を示し、R12は、水素原子、置換基を有していてもよい低級アルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基または置換基を有していてもよいヘテロアリール基を示す。)で表される化合物および一般式(VII):HBR1314(VII)(式中、R13およびR14はそれぞれ独立して、水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基またはアリールアルコキシ基を示すか、あるいはR13とR14が結合するホウ素原子と一緒になって、置換基を有していてもよい複素環またはその縮合環を形成してもよい。)で表されるホウ素化合物またはその錯体であり、光学活性化合物が、一般式(VIII):
【化7】


(式中、R11、R12、R13およびR14は前記と同義を示し、*は不斉炭素を示す。)で表される化合物である、請求項20または21記載の製造方法。
【請求項23】
請求項22で製造される一般式(VIII)で表される化合物を酸化剤と反応させる工程を包含する、一般式(IX):
【化8】


(式中、R11は置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよい低級アルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基または置換基を有していてもよいヘテロアリール基を示し、R12は、水素原子、置換基を有していてもよい低級アルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基または置換基を有していてもよいヘテロアリール基を示し、*は不斉炭素を示す。)で表される化合物の製造方法。
【請求項24】
請求項22で製造される一般式(VIII)で表される化合物をヒドロキシルアミン−O−スルホン酸と反応させる工程を包含する、一般式(X):
【化9】


(式中、R11は置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよい低級アルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基または置換基を有していてもよいヘテロアリール基を示し、R12は、水素原子、置換基を有していてもよい低級アルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基または置換基を有していてもよいヘテロアリール基を示し、*は不斉炭素を示す。)で表される化合物の製造方法。
【請求項25】
請求項22で製造される一般式(VIII)で表される化合物を一般式(XI):MCH(XI)(式中、MはLi、Na、MgXまたはZnX(ここで、Xはハロゲン原子を示す。)を示し、Xはハロゲン原子を示す。)で表される化合物と反応させる工程を包含する、一般式(XII):
【化10】


(式中、R11は置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよい低級アルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基または置換基を有していてもよいヘテロアリール基を示し、R12は、水素原子、置換基を有していてもよい低級アルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基または置換基を有していてもよいヘテロアリール基を示し、*は不斉炭素を示す。)で表される化合物の製造方法。
【請求項26】
請求項22で製造される一般式(VIII)で表される化合物を一般式(XIII):MCH(X(XIII)(式中、MはLi、Na、MgXまたはZnX(ここで、Xはハロゲン原子を示す。)を示し、Xはハロゲン原子を示す。)で表される化合物と反応させる工程を包含する、一般式(XIV):
【化11】


(式中、R11は置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよい低級アルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基または置換基を有していてもよいヘテロアリール基を示し、R12は、水素原子、置換基を有していてもよい低級アルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基または置換基を有していてもよいヘテロアリール基を示し、*は不斉炭素を示す。)で表される化合物の製造方法。
【請求項27】
不斉反応が不斉ジホウ素化反応である、請求項11記載の製造方法。
【請求項28】
不斉遷移金属錯体が、請求項4記載の化合物と(nbd)Rh(acac)(nbdはノルボナジエンを示し、acacはアセチルアセトンを示す。)との反応により調製されたものである、請求項27記載の製造方法。
【請求項29】
基質が一般式(XV):
【化12】


(式中、R15およびR16はそれぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい低級アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基または置換基を有していてもよいヘテロアリール基を示し(但し、R15およびR16は同一の置換基になる場合はない。)、R17は水素原子、置換基を有していてもよい低級アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基または置換基を有していてもよいヘテロアリール基を示すか、あるいはR16とR17がそれぞれ結合する炭素原子と一緒になって同素環またはその縮合環を形成してもよい。)で表される化合物および一般式(XVI):R1819B−BR1819(XVI)(式中、R18およびR19はそれぞれ独立して、水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基またはアリールアルコキシ基を示すか、あるいはR18とR19が結合するホウ素原子と一緒になって、置換基を有していてもよい複素環またはその縮合環を形成してもよい。)で表されるホウ素化合物またはその錯体であり、光学活性化合物が、一般式(XVII):
【化13】


(式中、R15、R16、R17、R18およびR19は前記と同義を示し、*は不斉炭素を示す。)で表される化合物である、請求項27または28記載の製造方法。
【請求項30】
請求項29で製造される一般式(XVII)で表される化合物を酸化剤と反応させる工程を包含する、一般式(XVIII):
【化14】


(式中、*は不斉炭素を示し、R15およびR16はそれぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい低級アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基または置換基を有していてもよいヘテロアリール基を示し(但し、R15およびR16は同一の置換基になる場合はない。)、R17は水素原子、置換基を有していてもよい低級アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基または置換基を有していてもよいヘテロアリール基を示すか、あるいはR16とR17がそれぞれ結合する炭素原子と一緒になって同素環またはその縮合環を形成してもよい。)で表される化合物の製造方法。
【請求項31】
一般式(XIX):
【化15】


(式中、A環は存在しないかまたは置換基を有していてもよいベンゼン環を示し、RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を示し、Xはハロゲン原子、p−トルエンスルホニルオキシ、メタンスルホニルオキシまたはトリフルオロメタンスルホニルオキシを示す。)で表される化合物を下記工程(i)〜(iii):
(i)一般式(XX):HOR(XX)または一般式(XXI):HNR(XXI)(式中、RおよびRは置換基を有していてもよい低級アルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基または置換基を有していてもよいヘテロアリール基を示す。)で表される化合物と反応させて、Xで表される残基をX(Xは、−ORまたは−NHR(ここで、RおよびRは前記と同義を示す。)で表される残基を示す。)で表される残基に変換する工程;
(ii)トリフルオロメタンスルホン酸無水物と塩基の存在下反応させて、水酸基を−OTf(ここで、Tfはトリフルオロメタンスルホニル基を示す。)に変換する工程;および
(iii)前記工程(i)および(ii)により得られる一般式(XIX’):
【化16】


(式中、各記号は前記と同義を示す。)で表される化合物の−OTfを、ホスフィン類を含む遷移金属錯体の存在下、一般式(XXII):HPR(XXII)(式中、RおよびRはそれぞれ独立して、置換基を有していてもよいフェニル基、シクロヘキシル基、2−フリル基または3−フリル基を示す。)で表される化合物と反応させて、−PR(式中、RおよびRは前記と同義を示す。)で表される残基に変換する工程;
に付することを包含する、一般式(I):
【化17】


(式中、各記号は、前記と同義を示す。)で表される化合物の製造方法。
【請求項32】
またはRが不斉中心を有する残基である、請求項31記載の製造方法。
【請求項33】
ジアステレオマー混合物である一般式(I)で表される化合物を分離する工程を包含する請求項32記載の製造方法。

【公開番号】特開2006−347884(P2006−347884A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−170219(P2005−170219)
【出願日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(502079801)
【氏名又は名称原語表記】ERICK M. CARREIRA
【住所又は居所原語表記】LABORATORY OF ORGANIC CHEMISTRY ETH HOENGGERBERG, ZUERICH, SWITZERLAND
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】