説明

リアプロジェクションテレビ用表面鏡

【課題】
可視光線反射率、反射膜のガラスへの密着性、反射膜の硬度、耐高温・高湿性に関し、リアプロジェクションテレビに用いることのできる性能を有する表面鏡を提供する。
【解決手段】
ガラス基板にCr膜、Al膜、SnOx(ただし0<x≦2)膜、TiOy(ただし0<y≦2)膜を、この順にスパッタリング法を用いて積層し、可視光線反射率が90%以上で、Al膜が、Mn、Mg、Si、Ndの1種以上を5重量%以下でAlに含まれてなる表面鏡。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーンの背面から画像を投影するリアプロジェクションに関し、特に、リアプロジェクションに用いられる、金属膜と酸化物膜とが積層されてなる表面鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大画面表示器法リアプロジェクションテレビ、フラットパネルディスプレイおよびプロジェクションテレビなど、大画面表示をする装置があるが、中でもリアプロジェクションテレビは、安価であるという理由から、かなりの普及がみられる。
【0003】
リアプロジェクションは、CRT等の表示画面に光学系を用いてスクリーンに映すものであり、スクリーンに映すための光学系に鏡が用いられている。
【0004】
リアプロジェクションテレビに用いられる鏡として、ガラスに銀鏡反応でAg膜を成膜し、Ag膜を上にAgの保護膜を形成して成る、いわゆる裏面鏡といわれるものと、ガラスの表面に金属膜を形成してその上に酸化物膜を形成してなる表面鏡とが用いられている。
【0005】
裏面鏡は、反射膜が耐久性のある保護膜を用いて保護されており、浴室などに用いることができるほど耐久性はよいが、Ag膜での反射の他にガラス面でも反射をするため、2重像の問題を生じることや、ガラスによる表示光の吸収のため、反射率が低いといった問題点がある。
【0006】
表面鏡は、物理蒸着法などでガラス面に成膜されている金属膜に、ガラスを通過させず直接表示光を入射し反射させるため、2重像の問題もなく反射率も高いく、例えば、特許文献1にはAgを主成分としてPd、AuおよびRuを添加したスパッタリング法で作成される表面鏡が開示されている。
【0007】
しかし、このような鏡は、一般家庭用で使用されるリアプロジェクションテレビに使用するには、貴金属を用いるため高価であり、また、高温・高湿雰囲気に対する耐久性に問題がある。
【0008】
本願出願人は、安価な表面鏡として特許文献2に示す反射鏡を提案しているが反射率が90%以下であり、また反射膜の硬度に難点がある。
【0009】
特許文献3には、基板にSiO、Al、Cr、Al23の順に薄膜を積層した反射鏡が提案されているが、反射率が低く、リアプロジェクションテレビに用いることは困難である。
【特許文献1】特開2001−226765号公報
【特許文献2】特開平6−51110号公報
【特許文献3】特開平6−130210号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
リアプロジェクションに用いる表面鏡であって、安価で、可視光線反射率、反射膜のガラスへの密着性、硬度、耐高温・高湿性に関し、リアプロジェクションに用いることのできる性能を有する表面鏡を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のリアプロジェクションテレビ用表面鏡は、リアプロジェクションテレビに用いられる表面鏡において、ガラス基板にCr膜、Al膜、SnOX(ただし0<x≦2)膜、TiOY(ただし0<y≦2)膜がこの順に積層してなることを特徴とする表面鏡である。
【0012】
また、本発明の表面鏡は、前記表面鏡において、可視光線反射率が90%以上であることを特徴とする表面鏡である。
【0013】
また、本発明の表面鏡は、前記表面鏡において、Al膜が、Mn、Mg、Si、Ndのなかから選ばれる1種以上の金属を5重量%以下でAlに含まれてなることを特徴とする表面鏡である。
【発明の効果】
【0014】
本発明のリアプロジェクションテレビ用表面鏡は、リアプロジェクションテレビの反射鏡に用いるための、安価で高反射率を有する、反射膜のガラスへの密着性、反射膜の硬度、耐高温・高湿性に優れた表面鏡を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、本発明の表面鏡が用いられる、リアプロジェクションテレビ1の構成を示す概略図である。リアプロジェクションテレビ1は、主に、ケーシング5の中に、映像投射装置2と、映像投射装置2から投射される映像を反射する反射鏡3、反射鏡3で反射される映像を映すスクリーン4等で構成される。映像投射装置2は、CRT等の表示装置と映像を投射するための光学系で構成されている。
【0016】
本発明のリアプロジェクションテレビ用表面鏡(以後単に表面鏡と呼ぶ)は、図1の反射鏡3に用いるものである。
【0017】
リアプロジェクションテレビ1の反射鏡3に用いる本発明の表面鏡は、図2に示すような、ガラス基板11に、Cr膜12、Al膜13、SnOx(ただし0<x≦2)膜14、TiOy(ただし0<y≦2)膜15がこの順に物理蒸着法で積層されてなる表面鏡で、反射膜10は、Cr膜12、Al膜13、SnOx(ただし0<x≦2)膜14、TiOy(ただし0<y≦2)膜15で構成されている。
【0018】
ガラス基板11にはフロート法で製作される板ガラスを用いることができる。また、高平坦度ガラスと呼ばれる表面の凹凸の少ないガラスや、表面を研磨して平坦度に優れたガラスを用いてもよい。
【0019】
物理蒸着法としては、スパッタリング法、真空蒸着法、電子ビーム蒸着法等の方法を用いることができる。なかでも、成膜が容易なこと、膜の密着性が良好なこと等を勘案すればスパッタリング法が推奨される。
【0020】
Cr層12は、その上に形成されるAl層13を直接ガラス基板に積層するものより、Al層のガラス基板への密着性を良好にするために成膜するものである。
Cr層12の膜厚については、20nm以上の膜厚にすれば良好な密着性が得られ、100nm程度に厚くしても密着性はほとんど変化しないので、Cr層12の膜厚は、20nmで十分である。
【0021】
Al層13は、表面鏡の反射層であり、Al層の膜厚は60nm以上とすれば90%以上の可視光線反射率が得られる。Al層の膜厚を60nmより厚くしてもよいが、反射率は大きくならないので、膜厚は60nmとすれば十分である。なお、60nmよりも膜厚を厚くしても特に問題はない。
【0022】
Cr層とAl層は、それぞれ、クロームターゲット、アルミニウムターゲットを用い、Arガスなどの不活性雰囲気下でスパッタリングして得ることができる。
【0023】
Al層には、Alの耐食性向上対策として、5重量%以下のMn、Mg、Si、Ndを含んでよい。但し5%を越えると、Alの反射率が低下するので好ましくない。
【0024】
SnOx層14は、Alの金属層13と最上層のTiOy層15との密着性を向上させるために積層するものである。SnOx層14の厚みを60nm以上にすれば、Al層に直接TiOy層を積層したもの比べ、十分な硬度と耐高温・高湿性を有する表面鏡が得られるので、SnOx層14の膜厚保は、60nmとすれば十分である。また、SnOx層とTiOy層の屈折率の違いによる反射率の増加を考慮すると、SnOx層14の厚みは、80±20nmとすることが好ましい。
【0025】
SnOx層14は、Snターゲットを用い、Arガスに対して50〜100重量%の酸素含有雰囲気下でスパッタリングすることにより得られる。
【0026】
TiOy層15は、チタンターゲットを用い、Arガスに対して50〜100重量%の酸素含有雰囲気下でスパッタリングすることにより得られ、金属層の保護を目的として成膜される。
【0027】
表面鏡3をリアプロジェクションテレビに用いるためには、TiOy層15の厚みを30nm以上とすることにより、十分な耐高温・高湿性と耐摩耗性が得られる。従って、TiOy層15の厚みは30nmとすれば十分である。また、SnOx層とTiOy層の屈折率の違いによる反射率の増加を考慮すると、TiOy層14の厚みは、50±20nmとすることが好ましい。
【実施例1】
【0028】
以下本発明の一例として、スパッタリング法を採用した具体的実施例を詳述す
るが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0029】
実施例
洗浄、乾燥した厚み3mm、サイズ600mm×600mmのフロート法板ガラスを用いて図2に示す膜構成の表面鏡3を作製した。成膜は全てスパッタリング法で行った。
【0030】
最初に、板ガラスにCrターゲットを用いて厚み30nmのCr膜12を成膜した。次いでCr膜の上に、Alターゲットを用いて、厚み80nmのAl膜13を成膜した。Cr膜12およびAl膜13の成膜は、共にArガス雰囲気中で行った。
【0031】
次いで、厚み80nmのSnOx膜14を、Snターゲットを用いて、Arガスに50重量%の酸素ガスを混入したガス雰囲気中で成膜した。
【0032】
さらに、SnOx膜14の上に、Tiターゲットを用いて、TiOy膜15を成膜した。TiOy膜15を成膜したときのガス雰囲気は、SnOx膜14の成膜と同じガス雰囲気とした。
【0033】
得られた表面鏡の可視光線反射率は、分光光度計(U−400型、日立製作所製)により反射率を測定したところ、91%であった。
【0034】
接着テープ (スコッチメンディングテープ 3M#800)を膜上に貼着後、これを引き剥がし、45mmφ当たりの成膜した膜の剥離、膜に発生したピンホール数(個数)を顕微鏡で観察、測定した。剥離はなく、また、ピンホールの数も0で、膜の板ガラスへの密着性に問題の無いことが確認された。
【0035】
さらに、膜表面に6枚重ねのネルを介在させて100g/cm2の重錘を乗せ、これをストローク距離100mmで100回往復摺動して、該摺動部の透過率の変化を測定した。試験前、試験後とも透過率は0%で、従って試験による透過率の変化も0%であり、膜の硬度に問題のないことが確認された。
【0036】
また、50℃、95%RHの雰囲気中に24時間放置するという内容の高温・高湿試験を行い、曇りその他の膜の外観変化を観察した。この高温・硬質試験による外観の変化は認められず、耐高温・高湿性が十分であることを確認した。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の表面鏡の膜構成を示す断面図である。
【図2】リアプロジェクションテレビの構成を示すが概略図である。
【符号の説明】
【0038】
1 リアプロジェクションテレビ
2 映像投射装置
3 表面鏡
4 スクリーン
5 ケーシング
10 反射膜
11 ガラス基板
12 Cr膜
13 Al膜
14 SnOx膜
15 TiOy膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リアプロジェクションに用いられる表面鏡において、ガラス基板にCr膜、Al膜、SnOx(ただし0<x≦2)膜、TiOy(ただし0<y≦2)膜がこの順に積層してなることを特徴とする表面鏡。
【請求項2】
可視光線反射率が90%以上であることを特徴とする請求項1に記載の表面鏡。
【請求項3】
Al膜が、Mn、Mg、Si、Ndの1種以上を5重量%以下でAlに含まれてなることを特徴とする請求項1あるいは請求項2に記載の表面鏡。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−154587(P2006−154587A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−347994(P2004−347994)
【出願日】平成16年12月1日(2004.12.1)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】