説明

リサイクル性に優れた容器およびそのリサイクル方法

【課題】主原料樹脂層に加えて、ガスバリヤー性の良好なポリグリコール酸系樹脂層を含む積層構造を有しながらリサイクル性に優れた容器、ならびに該容器の効率的なリサイクル方法を提供する。
【解決手段】厚さが120〜600μmの主原料樹脂層に加えて、厚さが2〜200μmの少なくとも一層のポリグリコール酸系樹脂層を含む積層構造を有する容器を得る。該容器を破砕した後、破砕物を、アルカリ水にて洗浄することにより、ポリグリコール酸系樹脂層を取り除いて、主原料樹脂を回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主原料樹脂層に加えて、ポリグリコール酸系樹脂層を含むリサイクル性に優れた容器ならびにそのリサイクル方法に関する。なお、本明細書において「容器」の語は、内容量に比べて口径の比較的小さい狭義あるいは通常の用法における「ボトル」に加えて、広く内容物を収容するために用いる中空成形容器の意義に用いている。本発明の効果が、容器の厳密な形状に制約されないことは、以下の記載より容易に理解されよう。
【背景技術】
【0002】
樹脂製容器は、軽量であることや、透明で中身が良く見えることなどから飲料水、調味料、食用油、アルコール性飲料、燃料、洗剤などさまざまな液状物の容器として広くかつ大量に利用されている。特に、いわゆるペットボトル(すなわち、ポリエステル樹脂製ボトル)、なかでもPET(ポリエチレンテレフタレート製)ボトル、については然りである。
【0003】
しかし昨今の環境への負荷低減やごみの減量という都市問題などから、大量に使用される樹脂容器については、リサイクルされることが求められるようになってきている。リサイクルには、焼却による熱エネルギー回収型、モノマーヘ戻すケミカルリサイクル型、粉砕および精製工程を経て樹脂原料へ戻す原料型、再び容器として再利用するリターナブル型などがあるが、特にPET容器の場合は粉砕および精製工程を経て樹脂原料へ戻す原料型が採用され、回収された樹脂原料は繊維等へ再利用されることが多い。
【0004】
他方、昨今、中空容器においても、中身の保存性向上のため、炭酸ガスや酸素ガスの透過性を押さえることが要求されてきている。これらを改良する技術として、ガスバリヤー性のコーティングやガスバリヤー性の樹脂層を中間層に配置する多層化などが提案されている。
【0005】
このようなガスバリヤー性のコーティングやガスバリヤー性の樹脂層を中間層に配置する多層化などを施されたPET容器の場合、PET樹脂原料と他の樹脂成分を充分に分別することが出来にくいと、リサイクル樹脂原料としての品質や安全性に支障をきたす可能性がある。
【0006】
また、例えばビールのように内容物の光劣化を防止するため、あるいは意匠的効果を出すため等の目的で、着色されたペットボトルの利用も試みられてはいるが、色混じり等によるリサイクルの困難性から利用が制限されてきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、主原料樹脂層に加えて付加的な樹脂層を含む積層構造を有しながらリサイクル性に優れた容器、およびその効率的なリサイクル方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らの研究によれば厚さを限定した主原料樹脂層に加えて、付加的な樹脂層として特定の厚さのポリグリコール酸系樹脂の層を設けることが上述の目的の達成のために極めて有効であることが見出された。
【0009】
すなわち、本発明のリサイクル性に優れた容器は、主原料樹脂層に加えて、ポリグリコール酸系樹脂の少なくとも一層を含む積層構造を有し、主原料樹脂層の厚さが120〜600μm、ポリグリコール酸系樹脂の厚さが2〜200μmであることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の容器のリサイクル方法は、厚さが120〜600μmの主原料樹脂層に加えて、厚さが2〜200μmの少なくとも一層のポリグリコール酸系樹脂の層を含む積層構造を有する容器を破砕した後、破砕物を、アルカリ水にて洗浄することにより、ポリグリコール酸系樹脂層をできるだけ取り除いて、主原料樹脂を回収することを特徴とするものである。
【0011】
本発明で用いたポリグリコール酸系樹脂がリサイクル容器の付加的な樹脂層の構成樹脂として特に優れている理由は次の通りである。すなわち、ポリグリコール酸系樹脂は、従来から用いられている代表的ガスバリヤー性樹脂であるEVOH(エチレン−ビニルアルコール共重合体)の約3倍以上(酸素透過係数として約1/3以下)という極めて大なるガスバリヤー性を有し、主原料樹脂層に加えて、その薄層を含めることにより著しくガスバリヤー性の改善された容器が得られる。従って内容物の酸化による劣化や内容物からの炭酸ガスの抜け等による品質劣化が効果的に防止される。また、一般にPET容器等に採用される原料型リサイクルにおいては、容器を破砕後、蛋白質の分解等の目的で破砕物をアルカリ洗浄する工程を経て樹脂原料を回収する方法が採られる。ここにおいて、本発明で使用するポリグリコール酸系樹脂は、アルカリ洗浄液による加水分解性が大なるため容易に回収対象としての主原料樹脂から洗浄分離することができる。また洗浄廃液中のポリグリコール酸系樹脂の加水分解物としてのグリコール酸は、洗浄廃液を中和後、活性汚泥処理することにより容易に炭酸ガスと水に生分解され、環境への負荷要因とならない。これに対し、従来より知られている代表的な生分解性樹脂であるポリ乳酸系重合体は、ポリグリコール酸系樹脂のようなガスバリヤー性を示さず、またアルカリによる加水分解速度もポリグリコール酸系樹脂よりも遅い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(ポリグリコール酸系樹脂)
ポリグリコール酸系樹脂は下記(1)式で示される繰り返し単位を有する加水分解性のポリエステルである:
−(OCHCO)− (1)
上記繰り返し単位のみからなるグリコール酸単独重合体(PGA)が好ましく用いられるほか、他の繰り返し単位を含むことも可能であるが、加水分解により主鎖が切断される構造が好ましい。好ましくはカルボン酸エステルおよび炭酸エステルを含むエステル構造や、アミド構造などで、特に加水分解のしやすさから脂肪族エステル構造が好ましい。その例としては、例えば以下のものが挙げられる:
−(OCHCHCO)− (2)
−(OCHCHCHOCO)− (3)
−(OCHCHCHCHCO)− (4)
他の繰り返し単位構造の割合は50重量%未満、好ましくは30重量%未満、更に好ましくは15重量%未満である。重量平均分子量(GPCによるポリメタクリル酸メチル換算測定値)で5万〜60万のポリグリコール酸系樹脂を用いることが強度的に好ましい。
【0013】
(主原料樹脂)
また、ポリグリコール酸系樹脂には、結晶核剤や結晶遅延剤、更には、可塑剤、熱安定剤、熱吸収剤、紫外線吸収剤、滑剤、顔料等の助剤を含ませることができる。
【0014】
ポリグリコール酸系樹脂の層とともに容器を形成する主原料樹脂は、PET(すなわちポリエチレンテレフタレート)、ポリエチレンナフタレート(PEN)をはじめとするポリエステル、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリ乳酸(PLA)など多種多様な熱可塑性樹脂を用いることができる。先にも述べたようにポリグリコール酸系樹脂は、これら汎用樹脂に比べて、著しく大なるガスバリヤー性を有し、いずれの樹脂と積層した場合においても、ガスバリヤー性の改良された容器を形成できる。特にPET容器が現在主流を占めており回収リサイクルを行う際の経済性、エネルギー消費量などからもPETを主原料とする容器が好ましい。主原料樹脂、特にPETの層は厚さが120〜600μmの厚さに設定される。
【0015】
複数の樹脂を混合して用いることもできるが、リサイクル時に品質低下が起きやすいので単独原料を用いることが好ましい。また、着色することも可能だがリサイクル時に色混じりによる品質低下が起きやすいので単独原料を用いることが好ましい。
【0016】
主原料樹脂層中にポリグリコール酸系樹脂が少量含まれることもあるが、その量は好ましくは10重量%以下、更に好ましくは3重量%以下、最も好ましくは1重量%以下である。このようにポリグリコール酸系樹脂を含む主原料樹脂層は、主原料樹脂にポリグリコール酸系樹脂などの混ざった樹脂として形成される場合がある。この場合、主原料樹脂層を形成する回収樹脂は、リサイクル回収された主原料樹脂(ポリグリコール酸系樹脂が少量含まれることもある)、あるいはこれと市販されている、所謂、バージン樹脂の主原料樹脂とが混合されたもので、特に後者のバージンの主原料樹脂の割合が全体の90%を超えたものが、加工性の観点からより好ましい。
【0017】
(積層構造)
ポリグリコール酸系樹脂層は、主として容器を形成する主原料樹脂層で構成される外層および内層の間に挟まれる中間層として形成されることが好ましい。中間層は一層でも二層以上でもかまわない。内外層の樹脂とポリグリコール酸系樹脂の構成比は容器に求められる性能や品質によって任意に決定することができる。良好なガスバリヤー性を付与しつつ、主原料樹脂のリサイクルを効率的にするために、主原料樹脂とグリコール酸重合体の重量比(ほぼ厚さ比に相当する)が99/1〜55/45、特に98/2〜60/40、の範囲であることが好ましい。なおポリグリコール酸系樹脂層は厚さが少なくとも2μmとして良好なガスバリヤー性を発揮させることが好ましい。ボトルの場合、主たる面積を占める胴部でこの厚さが維持されることが好ましく、底部あるいは、首部では、ポリグリコール酸系樹脂層が存在しない場合もある。また、回収樹脂層として主原料樹脂とポリグリコール酸系樹脂の混合樹脂が用いられる場合もあるが、その場合の回収樹脂層中のポリグリコール酸系樹脂の存在量は好ましくは50重量%以下、更に好ましくは30重量%以下、最も好ましくは10重量%以下である。積層構造は、バージンの主原料樹脂からなる主原料樹脂層を(S1)、リサイクル回収された主原料樹脂とバージンの主原料樹脂からなる主原料樹脂層を(S2)、回収樹脂層を(R)、ポリグリコール酸系樹脂層を(PGA)、でそれぞれ表示したときに、たとえば(S1)/(R)/(PGA)/(S1)、(S1)/(PGA)/(R)、(S2)/(PGA)/(S2)、(S2)/(PGA)/(S1)、(S2)/(PGA)/(S2)/(PGA)/(S2)、(S1)/(PGA)/(S2)/(PGA)/(S1)、などである。
【0018】
本発明の容器は、容器本体に加えて、必要に応じて、厚さが50〜100μmのラベル層(通常は一部であるが全周に設けてもよい)およびキャップを含む。ラベルの材質は、ポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂などからなり、熱収縮性を有するものが好ましく、またキャップの材質は比重が1未満のものがよく用いられる。
【0019】
例えば主原料樹脂層とポリグリコール酸系樹脂層の間或いは容器の表面とラベルの間に、接着性樹脂層を適宜挿入することもでき、リサイクル性に支障をきたさない範囲で使用してもよい。
【0020】
(リサイクル方法)
容器のリサイクルは、PET容器で実際に行われており、そのリサイクル工程には、容器の粉砕、PET以外の容器、ラベル、キャップ等の選別除去、洗浄、アルカリ洗浄、乾燥等の工程が含まれる。本発明の容器をリサイクルする場合も、上記のPET容器と同様のリサイクル工程を経由させることが好ましい。
【0021】
回収された容器に残存するラベルは一般的に比重分離または風選分離によって除去される。PETは通常比重がおよそ1.3であり、ラベルは通常比重が1.3未満のものが用いられるため、洗浄液内において比重分離され易い。また、ラベルは通常50〜100μmの厚みであり、PETが通常120〜600μm程度の厚みであることから風選分離され易い。
【0022】
キャップは比重が1.0未満のものを用いると、洗浄液、例えば水において比重分離され易い。一方で、ポリグリコール酸系樹脂はガスバリヤー性を発揮させるために、通常、比重が1.4以上、最も多くは1.5以上と高比重のものが用いられる。
【0023】
多層PET容器において、容器がフレークに裁断される場合に容易なPET層などと分離することが望ましい。裁断によって分離すると、風選分離され易くなる。
【0024】
ポリグリコール酸系樹脂は一層ないしはそれ以上の層を形成することがあるが、その厚みは使用されるラベルと同等以下が望ましい。一般にラベルは通常40〜200μm、特に多くは50〜100μmの厚みなのでポリグリコール酸系樹脂層も200μm以下、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下である。さらに、ポリグリコール酸系樹脂の比重がラベルのそれより高いため、40μm未満が特に好ましく、30μm未満が特に好ましい。
【0025】
ポリグリコール酸系樹脂層を含む多層PET容器において、ポリグリコール酸系樹脂層はガスバリヤー性や加工性を最適化させるために厚み分布を有することがあるが、風選分離され易くするためには、最も厚いところでも200μm以下であることが好ましく、100μm以下がより好ましい。更に好ましくは80μm以下である。
【0026】
ポリグリコール酸系樹脂層の厚み分布は、最も平均的な厚みを示す、容器胴部のポリグリコール酸系樹脂層の厚みに対して最大で10倍、最小で10分の1の範囲が好ましい。10倍を超えるとリサイクル工程後、ポリグリコール酸系樹脂層が残り易く、10分の1に満たないとガスバリヤー性を発揮しにくい。
【0027】
容器リサイクルの洗浄工程において、好ましくはアルカリ水溶液が用いられる。通常80〜98℃に熱された1〜1.5%苛性ソーダ水溶液が用いられる。洗浄時間は10〜20分程度であることが多い。
【0028】
ポリグリコール酸系樹脂は通常、ランダムに加水分解を受け、徐々に分子量を低下させ、最終的にグリコール酸にまで加水分解し、水溶性を示すが、本発明者等が注意深くアルカリ性溶液中でのポリグリコール酸系樹脂のリサイクル性について検討したところ、ポリグリコール酸系樹脂は、表面から高温のアルカリ洗浄液中に容易に溶解することを見出した。
【0029】
すなわち、ポリグリコール酸系樹脂層はアルカリ洗浄液によるリサイクル工程において、短時間の洗浄においては樹脂層の厚みは薄い方が好ましい。好ましい厚さは2〜200μm、より好ましくは3〜100μm、さらに好ましくは5〜50μm、特に好ましくは7〜40μm、最も好ましくは10〜30μmである。薄過ぎると本来のガスバリヤー性を発揮しにくくなる。厚いと、風選分離性も悪くなるばかりか、洗浄工程においてもポリグリコール酸系樹脂層が残存し易くなる。
【0030】
洗浄工程ではポリグリコール酸系樹脂層が洗浄液、特にアルカリと接触するような装置や条件を整えることが必要で、比重の重いポリグリコール酸系樹脂が沈降しない程度に撹拌や流動化がなされていることが好ましい。洗浄工程でポリグリコール酸系樹脂層を除去するためには温度は高いほど好ましく、時間も長い程好ましいが、PETの分解を抑制するためには60〜100℃の範囲で5〜30分、好ましくは10〜20分の範囲で行われる。アルカリ洗浄液もアルカリ濃度が高いほどポリグリコール酸系樹脂層の除去には好ましいが、アルカリ洗浄の本来の目的、経済性、PETへの影響等から0.1〜2.0%、好ましくは1〜1.5%が用いられ、TRITONX−100のような界面活性剤と一緒に用いられることもある。
【0031】
(廃液処理)
ポリグリコール酸系樹脂の加水分解により生じたグリコール酸を含むアルカリ洗浄廃液は、グリコール酸が自然界にも存在する有機酸であるため、中和後、そのまま排出することもできないわけではないが、活性汚泥処理によりグリコール酸をHOとCOへ生分解してより生態系への負荷を軽減することが好ましい。活性汚泥処理は、従来のPET容器リサイクル処理にも含まれていたものであり、本発明の容器リサイクル方法は、本質的に新たな設備投資等することなく実施することができる。わずかに活性汚泥処理の負荷が増大するだけである。
【0032】
(着色)
本発明の好ましい態様に従いポリグリコール酸系樹脂の層が着色されていることが好ましい。この場合、得られた容器はカラー容器であり、光線透過抑制により内容物の光劣化等を抑制することができる。ポリグリコール酸系樹脂層は一様な着色をすることになるが、その上に任意の態様の着色層を付すことにより意匠効果を増大することもできる。着色剤は公知のさまざまなものを用い、所望の発色をさせることができるが、リサイクル後の環境負荷を考慮し、例えば赤色なら食紅のような生分解性の着色剤や顔料が好ましい。
【0033】
ポリグリコール酸系樹脂層を着色することのもう一つの利点は、リサイクル時の洗浄回数や時間等を目視で決めることが可能となることである。つまり、ポリグリコール酸系樹脂が残っていると固体状の着色樹脂が残るため容易に分別の不完全性が判断できる。これにより、リサイクル後の回収原料樹脂の品質管理が大幅に省力化できる。
【実施例】
【0034】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。以下の例中で「部」は「重量部」を意味する。
【0035】
(実施例1)
ポリグリコール酸系樹脂(240℃、100/sの溶融粘度1800Pa・s)を260℃で加熱溶融成形し、平面寸法が200mm×200mmで、厚みがそれぞれ20,45,90,130および220μmの5種のプレスシートを成形した。得られた各プレスシートを10mm×10mm角に切り出した角片を、90℃、1.5質量%NaOH水溶液に投じ、沈降しない程度に緩やかに撹拌させながら角片の形状変化を目視観察した。PGAが洗浄液に溶解し、目視でその存在を確認できなくなった時点の時間を読み取って、消失時間とした。結果を、下表に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
(実施例2)
シリンダーを二つ有する射出成型機にそれぞれ、PET(IV=0.8)とPGA(240℃、100/sの溶融粘度1500Pa・s)を投入し、PET/PGA/PET(厚さ比=45/10/45)の三層のプリフオームを成型し、ブロー成型機にてボトル(内容量=500cc、厚さ800μm、重量40g)を製作した。
【0038】
得られたボトルを2cm角に裁断し、1規定の苛性ソーダ水溶液中、80℃にて5時間洗浄した。洗浄された裁断物を濾別後水洗し、乾燥させて36gの回収樹脂を得た。得られた回収樹脂の赤外吸収スペクトルを測定したところPET由来の吸収のみが観測され、PGAが完全に除去されていることを確認した。
【0039】
(実施例3)
その100部に対し0.1部のカーボンブラックで着色したPGAを用いる以外は、実施例2と同様にして、ボトルを製作した。
【0040】
得られたボトルを2cm角に裁断し、1規定の苛性ソーダ水溶液中、80℃にて5時間洗浄した。裁断物を濾別後水洗し、乾燥させて無色の回収樹脂を得た。得られた回収樹脂の赤外吸収スペクトルを測定したところPET由来の吸収のみが観測され、カーボンブラックおよびPGAが完全に除去されていることを確認した。
【0041】
(実施例4)
実施例3と同様にして製作したボトルを2cm角に裁断し、1規定の苛性ソーダ水溶液中、80℃にて3分間洗浄した。洗浄された裁断物を濾別したところ、まだ黒色に着色した固形物が残っていたため再び1規定の苛性ソーダ水溶液中、80℃にて3時間洗浄した。再洗浄後の裁断物を濾別後水洗し、乾燥させて無色の回収樹脂を得た。得られた回収樹脂の赤外吸収スペクトルを測定したところPET由来の吸収のみが観測され、カーボンブラックおよびPGAが完全に除去されていることを確認した。
【0042】
(実施例5)
実施例3で回収したPET樹脂を270℃で溶融プレスし、室温の冷却プレスで冷却することにより無色透明なPETシートが得られた。これにより、回収樹脂は成形可能であり、主原料樹脂PETのリサイクル性が確認できた。
【0043】
(実施例6)
実施例2で洗浄処理に用いたアルカリ水溶液を液体クロマトグラフィーで分析したところグリコール酸が検出された。この溶液を中和後、水で100倍に希釈し、ばっ気により熟成された活性汚泥に投じて好気的雰囲気下室温環境で一ヶ月培養した。一ヶ月後、反応液を再び液体クロマトグラフィーで分析したところグリコール酸はまったく検出されなかった。全有機炭素計(島津製作所TOC−5000A)により溶存有機炭素の分析を行ったが、有機炭素は検出されなかったためそのまま廃棄した。
【産業上の利用可能性】
【0044】
上述したように、本発明によれば、厚さが120〜600μmの主原料樹脂層に加えて、ガスバリヤー性の良好な厚さが2〜200μmのポリグリコール酸系樹脂層を含む積層構造を有しながらリサイクル性に優れた容器、ならびに該容器の効率的なリサイクル方法が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主原料樹脂層に加えて、ポリグリコール酸系樹脂の少なくとも一層を含む積層構造を有し、主原料樹脂層の厚さが120〜600μm、ポリグリコール酸系樹脂層の厚さが2〜200μmであるリサイクル性に優れた容器。
【請求項2】
主原料樹脂がポリエステルである請求項1に記載の容器。
【請求項3】
更に厚さが50〜100μmのラベル層を有する請求項1または2に記載の容器。
【請求項4】
ポリグリコール酸系樹脂層が着色されている請求項1〜3のいずれかに記載の容器。
【請求項5】
厚さが120〜600μmの主原料樹脂層に加えて、厚さが2〜200μmの少なくとも一層のポリグリコール酸系樹脂の層を含む積層構造を有する容器を破砕した後、破砕物を、アルカリ水にて洗浄することにより、ポリグリコール酸系樹脂層を取り除いて、主原料樹脂を回収することを特徴とする容器のリサイクル方法。
【請求項6】
ポリグリコール酸系樹脂層が着色されており、破砕物からの着色の除去を確認して洗浄工程を終了する請求項5に記載のリサイクル方法。
【請求項7】
洗浄工程からの廃液を、中和後、活性汚泥により生分解する工程を含む請求項5または6に記載のリサイクル方法。


【公開番号】特開2006−232317(P2006−232317A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−48449(P2005−48449)
【出願日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(000001100)株式会社クレハ (477)
【Fターム(参考)】