リチウム電池用スズ合金電極組成物
【課題】電極組成物は、繰り返しサイクルにかけた後でも保持される高い初期能力を有する。電極組成物はまた、高いクーロン効率を示す。
【解決手段】(a)サイクルにかける前に金属間化合物または元素の金属の形状である電気化学的に活性の金属元素及び(b)電気化学的に不活性の金属元素を含む電極組成物。
【解決手段】(a)サイクルにかける前に金属間化合物または元素の金属の形状である電気化学的に活性の金属元素及び(b)電気化学的に不活性の金属元素を含む電極組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、二次リチウム電池に有用な電極組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
材料の2つの種類が、二次リチウム電池のためのアノードとして提案されている。1つの種類には、リチウムを挿入することができる黒鉛及び炭素などの材料がある。前記の挿入アノードは概して十分なサイクル寿命及びクーロン効率を示すが、他方、それらの容量は相対的に低い。第2の種類には、リチウム金属を合金化した金属などがある。これらの合金タイプのアノードは概して挿入タイプのアノードに対してより高い容量を示すが、それらは相対的に不十分なサイクル寿命及びクーロン効率になる。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、電極組成物が繰り返しサイクルにかけた後でも保持される高い初期能力を有する二次リチウム電池に使用するのに適した電極組成物を提供する。前記の電極組成物はまた、高いクーロン効率を示す。前記の電極組成物及びこれらの組成物を混入させる電池もまた容易に製造される。
【0004】
これらの目的を達成するために、本発明は、第1の態様において、(a)電気化学的に活性の金属元素及び(b)電気化学的に不活性の金属元素を含む電極組成物を特長とする。リチウム電池中に混入されて全充電−放電の1サイクル全体にかけられるときに、前記の組成物は、約500オングストローム以下(好ましくは約100オングストローム以下、より好ましくは約50オングストローム以下)である少なくとも1つの寸法を有しかつ少なくとも合計10サイクル(好ましくは少なくとも100サイクル、より好ましくは少なくとも1000サイクル)の後に実質的に増大しない結晶域を含む。
【0005】
前記の結晶域はサイクルにかける前に存在していてもよく、または全充電−放電の1サイクルの後だけに生じてもよい。前者の場合、前記の領域は全充電−放電の1サイクルの後に存続する。
【0006】
「電気化学的に活性の金属元素」は一般に、リチウム電池の充電及び放電の間に直面する条件下でリチウムと反応する元素である。「電気化学的に不活性の金属元素」は、それらの条件下でリチウムと反応しない元素である。両方の場合において、前記の金属元素は、元素それ自体だけを含有する金属(すなわち、元素の金属)または金属元素であってもなくてもよい1つ以上の元素と組合せた前記の元素を含有する化合物の形で電極組成物中に見いだされることがある。後者の例は、1つ以上の金属元素と組合せた前記の金属元素を含有する金属間化合物である。しかしながら、サイクルにかける前に、電気化学的に活性の金属元素は金属間化合物または元素の金属の形状である。
【0007】
電気化学的に活性の金属元素が化合物の一部である場合、化合物それ自体は電気化学的に活性である必要はないが、活性であってもよい。同様に、電気化学的に不活性の金属元素が化合物の一部である場合、化合物それ自体は電気化学的に不活性である必要はないが、不活性であってもよい。
【0008】
好ましい電気化学的に活性の金属元素の例は、スズである。好ましい電気化学的に不活性の金属元素の例には、モリブデン、ニオブ、タングステン、タンタル、鉄、銅及びそれらの組合せなどがある。特に好ましい電極組成物は、(a)電気化学的に活性の金属元素がスズであり、電気化学的に不活性の金属元素がモリブデンであるか、(b)電気化学的に活性の金属元素がスズであり、電気化学的に不活性の金属元素が鉄であるか、(c)電気化学的に活性の金属元素がスズであり、電気化学的に不活性の金属元素がニオブであるか、(d)電気化学的に活性の金属元素がスズであり、電気化学的に不活性の金属元素がタングステンであるか、(e)電気化学的に活性の金属元素がスズであり、電気化学的に不活性の金属元素がタンタルである電極組成物である。
【0009】
前記の結晶域は、結晶材料に特有のはっきりと認められるX線回折パターンを特徴とする。化学組成に関して、結晶域の少なくとも1つは好ましくは電気化学的に活性の金属元素を含有し、結晶域の少なくとも別の1つは電気化学的に不活性の金属元素を含有する。
【0010】
前記結晶域は好ましくは、相対的な比率が電極組成物の厚さ方向にわたって変化する前記電気化学的に活性の金属元素及び前記電気化学的に不活性の金属元素を含む領域によって隔てられている。電極組成物が薄膜状である場合については、「組成物の厚さ方向」は、上に膜が堆積される支持体に垂直な方向を指す。電極組成物が単一の粒子の集まりに相当する粉末の形状である場合、「組成物の厚さ方向」は、単一の粒子の厚さ方向を指す。
【0011】
結晶域を隔てている領域は、結晶材料の特有の電子線回折パターンを示さない。それらは、サイクルにかける前に、サイクルにかけた後に、サイクルの前と後の両方に存在していてもよい。
【0012】
前記の電極組成物がリチウム電池中に組入れられてサイクルにかけられて約100mAh/gを達成するときに、前記の電極組成物は好ましくは、100回の全放電サイクルの後に少なくとも約99.0%の(より好ましくは少なくとも約99.8%の、更により好ましくは約99.9%の)クーロン効率を示す。電極組成物は、薄膜または粉末の形で提供されてもよい。
【0013】
第2の態様において、本発明は、(a)電気化学的に活性の金属元素及び(b)電気化学的に不活性の金属元素を含む電極組成物を特徴とする。リチウム電池中に混入されて全充電−放電の1サイクル全体にかけられるときに、前記の組成物は結晶域を含有する。更に、リチウム電池中に組入れられてサイクルにかけられて電極組成物の約100mAh/gを達成するときに、前記の電極組成物は好ましくは、100回の全放電サイクルの後に少なくとも約99.0%の(好ましくは少なくとも約99.8%の、より好ましくは約99.9%の)クーロン効率を示す。
【0014】
前記の結晶域はサイクルにかける前に存在してもよく、または全充電−放電の1サイクルの後だけに生じてもよい。前者の場合、前記の領域は全充電−放電の1サイクルの後に存続する。
【0015】
電気化学的に活性の金属元素及び電気化学的に不活性の金属元素は上に記載された定義を有する。両方の場合において、前記の金属元素は、元素それ自体だけを含有する金属(すなわち、元素の金属)または金属元素であってもなくてもよい1つ以上の元素と組合せた前記の元素を含有する化合物の形で電極組成物中に見いだされることがある。後者の例は、1つ以上の金属元素と組合せた金属元素を含有する金属間化合物である。しかしながら、サイクルにかける前に、電気化学的に活性の金属元素は金属間化合物または元素の金属の形状である。
【0016】
前記の電極組成物は、薄い膜または粉末の形で提供されてもよい。好ましい電気化学的に活性の金属元素の例はスズである。好ましい電気化学的に不活性の金属元素の例には、モリブデン、ニオブ、タングステン、タンタル、鉄、銅及びそれらの組合せなどがある。特に好ましい電極組成物は、(a)電気化学的に活性の金属元素がスズであり、電気化学的に不活性の金属元素がモリブデンであるか、(b)電気化学的に活性の金属元素がスズであり、電気化学的に不活性の金属元素は鉄であるか、(c)電気化学的に活性の金属元素はスズであり、電気化学的に不活性の金属元素がニオブであるか、(d)電気化学的に活性の金属元素がスズであり、電気化学的に不活性の金属元素がタングステンであるか、(e)電気化学的に活性の金属元素がスズであり、電気化学的に不活性の金属元素がタンタルである電極組成物である。
【0017】
前記の結晶域は、はっきりと認められるX線回折パターンを特徴とする。化学組成に関して、結晶域の少なくとも1つは好ましくは電気化学的に活性の金属元素を含有し、結晶域の少なくとも別の1つは電気化学的に不活性の金属元素を含有する。
【0018】
前記結晶域は好ましくは、相対的な比率が電極組成物の厚さ方向にわたって変化する前記電気化学的に活性の金属元素及び前記電気化学的に不活性の金属元素を含む領域によって隔てられている(上に規定した通りである)。結晶域を隔てているこれらの領域は、結晶材料に特有のはっきりと認められる電子線回折パターンを示さない。それらは、サイクルにかける前に、サイクルにかけた後に、サイクルの前と後の両方に存在していてもよい。
【0019】
第3の態様において、本発明は、(a)前記電気化学的に活性の金属元素を含む供給源及び(b)前記電気化学的に不活性の金属元素を含む供給源を組み合わせて電極組成物を形成する電極組成物の作製方法を特徴とし、(i)リチウム電池中に組入れられて全充電−放電の1サイクル全体にかけられるときに、前記の電極組成物が結晶域を含み、(ii)リチウム電池中に組入れられてサイクルにかけられて約100mAh/gを達成するときに、前記の電極組成物が100回の全放電サイクルの後に少なくとも約99.0%のクーロン効率を示す。
【0020】
1つの好ましい実施態様において、電気化学的に活性の金属元素の供給源及び電気化学的に不活性の元素の供給源は支持体上に連続的にスパッタ堆積される。別の好ましい実施態様において、2つの供給源はボールミル粉砕によって組み合わせられる。
【0021】
上に記載した電極組成物は、対向電極及び電極と対向電極とを隔てる電解質と組み合わられてリチウム電池を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1a】54重量%のスズ及び46重量%のモリブデンを有するスパッタ堆積されたスズ−モリブデン電極の、可逆比容量を用いたサイクル性能を示す。
【図1b】54重量%のスズ及び46重量%のモリブデンを有するスパッタ堆積されたスズ−モリブデン電極の、クーロン効率を用いたサイクル性能を示す。
【図2a】54.5重量%のスズ及び45.5重量%のモリブデンを有するスパッタ堆積されたスズ−モリブデン電極の、可逆比容量を用いたサイクル性能を示す。
【図2b】54.5重量%のスズ及び45.5重量%のモリブデンを有するスパッタ堆積されたスズ−モリブデン電極の、クーロン効率を用いたサイクル性能を示す。
【図3a】45重量%のスズ及び55の重量%のモリブデンを有するスパッタ堆積されたスズ−モリブデン電極の、可逆比容量を用いたサイクル性能を示す。
【図3b】45重量%のスズ及び55の重量%のモリブデンを有するスパッタ堆積されたスズ−モリブデン電極の、クーロン効率を用いたサイクル性能を示す。
【図4a】65.5重量%のスズ及び34.5の重量%のニオブを有するスパッタ堆積されたスズ−ニオブ電極の、可逆比容量を用いたサイクル性能を示す。
【図4b】65.5重量%のスズ及び34.5の重量%のニオブを有するスパッタ堆積されたスズ−ニオブ電極の、クーロン効率を用いたサイクル性能を示す。
【図5a】55.2重量%のスズ及び44.8重量%の銅を有するスパッタ堆積されたスズ−銅電極の、可逆比容量を用いたサイクル性能を示す。
【図5b】55.2重量%のスズ及び44.8重量%の銅を有するスパッタ堆積されたスズ−銅電極の、クーロン効率を用いたサイクル性能を示す。
【図6a】43.7重量%のスズ及び56.3重量%のタングステンを有するスパッタ堆積されたスズ−タングステン電極の、可逆比容量を用いたサイクル性能を示す。
【図6b】43.7重量%のスズ及び56.3重量%のタングステンを有するスパッタ堆積されたスズ−タングステン電極の、クーロン効率を用いたサイクル性能を示す。
【図7a】54重量%のスズ及び46重量%のモリブデンを有するスパッタ堆積されたスズ−モリブデンアノード及びLiCoO2含有カソードを特徴とする全電池の、可逆比容量を用いたサイクル性能を示す。
【図7b】54重量%のスズ及び46重量%のモリブデンを有するスパッタ堆積されたスズ−モリブデンアノード及びLiCoO2含有カソードを特徴とする全電池の、クーロン効率を用いたサイクル性能を示す。
【図8】0、1、4、及び10回のサイクル後に得られた54重量%のスズ及び46重量%のモリブデンを有するスズ−モリブデン膜についての一連のX線回折の分布である。
【図9】スズ金属電極及びSn2Fe電極を含むin situX線回折実験の結果を記録する。
【図10】図1の主題であるスズ−モリブデン膜の電子線回折パターンである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の他の特徴及び利点は、それらの好ましい実施態様の以下の説明から、及びクレームから明白であろう。
【0024】
本発明は、二次リチウム電池のためのアノードとして特に有用な電極組成物を特徴とする。前記の電極組成物は、繰り返しサイクルにかけた後に実質的に保持される高い初期能力を示す電極組成物をもたらすことを本発明者が発見したミクロ構造体中で組み合わせられた、電気化学的に活性の金属元素及び電気化学的に不活性の金属元素を特徴とする。
【0025】
適した電気化学的に活性の金属元素の例はスズである。適した電気化学的に不活性の金属元素の例は、モリブデン、ニオブ、タングステン、タンタル、鉄、銅及びそれらの組合せであるが、モリブデンが特に好ましい。これらの元素は、単一元素の金属、金属間化合物、または1つ以上の非金属元素と組み合わせた金属元素を特徴とする化合物の形で存在していてもよい。更に、元素が存在している特定の形が、繰り返されるサイクルの間に変化することがある。例えば、合金は、電極組成物中に存在している他の材料によってできる場合がある。しかしながら、最適な性能のために、電気化学的に活性の金属元素は、元素の金属(例えば、スズ金属)の形で、または金属間化合物としてサイクルにかける前に存在している。
【0026】
前記の電極組成物のミクロ構造は、小さい結晶域の存在を特徴とする。これらの領域は、結晶材料の特有のX線及び電子線回折パターンを生じさせる。いくつかの実施態様において、例えば、スパッタリングによって作製されたいくつかの組成物の場合、これらの領域はサイクルにかける前に存在し、全充電−放電の少なくとも1サイクルの後に残る。他の実施態様において、例えば、ボールミル粉砕によって作製されたいくつかの組成物の場合、これらの領域は、前記の組成物が全充電−放電の1サイクルを経た後にだけ、形成される。
【0027】
前記の結晶域はx−、y−、及びz−次元によって特性決定される非常に小さい、3次元の構造体である。これらの次元の少なくとも1つが、材料の透過電子顕微鏡写真の検査から求めると、約500オングストローム以下である(好ましくは約100オングストローム以下、より好ましくは約50オングストローム以下である)。サイクルにかけるとき、この次元は、少なくとも合計10サイクル(好ましくは少なくとも100サイクル、より好ましくは少なくとも1000サイクル)の後に実質的に増大しない。結晶域は、従って、繰り返しサイクルにかけた後でも非常に小さいままである。この性質は、繰り返しサイクルにかけた後に前記の電極組成物が実質的にその初期能力を保持できることに寄与すると考えられている。
【0028】
所与の電極組成物中に、好ましくは、電気化学的に活性の金属元素を含有する結晶域及び電気化学的に不活性の金属元素を含有する別の結晶域が存在する。例えば、スパッタ堆積されたスズ−モリブデン電極組成物の場合、サイクルにかける前にスズ金属を含有する結晶域及びモリブデン金属を含有する結晶域が存在することがある。
【0029】
前記の結晶域は好ましくは、透過電子顕微鏡検査によって調べられるとき、結晶材料に特有の電子線回折パターンを生じない領域によって隔てられている。特に、これらの領域は、結晶材料に特有の相対的に鋭い環または点を示さない。更に、原子(2オングストローム)のスケールの構造的情報を提供することができる高解像度電子顕微鏡検査は、同様に、結晶材料の存在を認めることができない。電子顕微鏡検査のデータに基づいて、これらの領域は、約20オングストローム以下、好ましくは約10オングストローム以下の長さのスケールの高度に不規則な原子配列を含有する材料として記載され得る。
【0030】
これらの領域のX線微量分析(X線エネルギー分散性分光分析法とも称される)を用いる組成分析は、それらが電気化学的に活性の金属元素及び電気化学的に不活性の金属元素の両方を含有すると共に、これらの2つの元素の相対的な比率が試料の厚さ方向にわたり変化することを明らかにする。我々はこの特徴を「組成変調」と称する。前記の組成物は好ましくは、約50オングストローム以下、好ましくは約20オングストローム以下のスケールで変化する。
【0031】
組成変調は、結晶域も存在している限り、サイクルにかける前及び/または後に存在していることがある。これらの組成変調領域の存在は、これらの領域が前記の結晶域より柔軟であり、全体として組成物が、さもなければ電極を割って不良にするサイクルによって引き起こされた応力を散逸することができるため、サイクルにかけた後に電極がその容量を保持する能力に寄与する。
【0032】
前記の電極組成物は、いろいろな方法に従って薄膜または粉末の形で作製されてもよい。例には、スパッタリング、化学蒸着、真空蒸着、溶融紡糸、スプラット冷却、スプレー噴霧化、及びボールミル粉砕などがある。技術の選択は、前記の電極組成物が薄膜または粉末の形で作製されるかどうか決定する。スパッタリングは、例えば、薄膜の形で電極組成物を製造するのに対して、ボールミル粉砕は易流動性の粉末の形の電極組成物を製造し、次に、例えば、高分子結合剤と組み合わせて電池に組入れさせるのに適した電極を形成することができる。
【0033】
前記の電極組成物を作製するための好ましいプロセスはスパッタリングであり、そこにおいて、電気化学的に活性の金属元素及び電気化学的に不活性の金属元素が支持体(例えば、銅支持体)上に連続的にスパッタ被覆される。好ましくは、前記の電極は、前記の元素の1つのスパッタ堆積された予備層及び前記の元素の1つのスパッタ堆積された上層を備える。概して、前記の支持体は、連続的に作動される2つの直径6インチのマグネトロンスパッタリング供給源の下で連続的に回転する直径が公称25インチのターンテーブルの端縁の近くに配置される。1つの材料の層が、前記の支持体が第1の供給源の下を通過するときに堆積され、第2の材料の層が、前記の支持体が第2の供給源の下を通過するときに堆積される。ターンテーブルの回転速度及び2つの供給源のスパッタリング率を知ることによって、それぞれの層の公称の厚さを予測及び制御することができる。全堆積時間を計算することによって、全試料の厚さ及び単一層の数を求めることができる。
【0034】
非常に薄い単一層を有する試料の場合、最終構造体は層状構造体の形跡がないことがある。他方、層状構造体の形跡がより厚い層の場合に見いだされることがある。
【0035】
前記の電極組成物は、二次リチウム電池のためのアノードとして特に有用である。電池を作製するために、電極は電解質及びカソード(対向電極)と組み合わせられる。前記の電解質は固体または液体の電解質であってもよい。固体の電解質の例には、ポリエチレンオキシド、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素含有コポリマー及びそれらの組合せなどの高分子電解質などがある。液体電解質の例には、エチレンカーボネート、ジエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート及びそれらの組合せなどがある。前記の電解質はリチウム電解質の塩を提供される。適した塩の例には、LiPF6、LiBF4及びLiClO4などがある。
【0036】
液体電解質を含有する電池のための適したカソード組成物の例には、LiCoO2、LiCo0.2Ni0.8O2、及びLi1.07Mn1.93O4などがある。固体電解質を含有する電池のための適したカソード組成物の例には、LiV3O8及びLiV2O5などがある。
【0037】
本発明は以下の例によって更に記載される。
【実施例】
【0038】
A.スパッタリングによって作製された電極組成物
一連の電極膜をスパッタリングによって作製し、いくつかの場合には、次の一般的な方法に従って特性を決定した。
【0039】
スパッタリング方法
薄膜状の電極組成物を、改良パーキン・エルマーランデックスモデル2400−8SAスパッタリング装置を用いて連続スパッタリングによって作製した。最初の直径8インチのrfスパッタ供給源を、カリフォルニア州、サンディエゴのマテリアルズサイエンス製の直径6インチのDCマグネトロンスパッタリング供給源と取り替えた。前記のスパッタリング供給源に、定電流モードで作動するアドバンストエネルギーモデルMDX−10dcスパッタリング電源を用いて電力を供給した。前記のランデックス装置のターンテーブル駆動ユニットをステッパモータと取り替え、回転速度の範囲及び制御を改善した。前記の装置は、従来の回転ベーンポンプによって補強されたトラップなしの油拡散ポンプでポンプされた。
【0040】
スパッタリングは、3〜30mTorrの範囲のアルゴン圧で行われた。圧力を維持するために、拡散ポンプの上に置かれたベネッシャンブラインドスタイルのコンダクタンスリミッターと組合せてアルゴン流を制御した。
【0041】
銅箔(厚さ=0.001インチ)を、両面接着テープ(ミネソタ州、セントポールの3Mカンパニー製の3MブランドY9415)を用いてランデックス装置の水冷支持ターンテーブルに接着した。前記の装置を閉じ、一般に1×10-5トールより低い基礎圧力に下がるまでポンプを動かした(堆積前の基礎圧力は重要ではない)。いくつかの場合には、試料は、13.56MHzの電力が支持ターンテーブルに適用されると共にスパッタリング室のアルゴン圧が8mTorrであるランデックス装置の「スパッタ腐蝕」モードを用いて堆積前に腐蝕された。この方法により、銅箔表面に適度なエネルギーアルゴンイオン(100〜150eV)で衝撃を与え、前記の銅を更にきれいにしてスパッタリングされた膜の銅表面への十分な付着力を確実にした。典型的な清浄サイクルは、30分間、150Wであり、支持テーブルが前記のサイクルの間、回転していた。
【0042】
腐蝕の後に、スパッタリング供給源は同供給源と銅支持体との間の機械シャッターを用いて始動された。これは、汚染物質をそれらを支持体表面の上に堆積させずに供給源表面から取り除いた。次に、周知の身元の単一材料から作られた「予備層」を、支持体上に堆積させた。予備層の目的は、支持体とスパッタ堆積された膜との間の十分な付着力を確実にすることであった。次に、両方の供給源が予め決めた電流レベルで始動され、堆積を開始した。適した堆積時間の後に、一方または両方の供給源が止められた。次いで、周知の身元の単一の材料の「二次層(post−layer)」が堆積され、その後に前記の装置を脱気し、試料を取り除いた。
【0043】
7つの膜(例1〜7に相当する)を上に記載された方法に従って作製した。スパッタリング条件を下の表Iにまとめた。表Iにおいて、「電流」は、単一のスパッタリング供給源の、アンペア単位の電流のレベルを指す。「圧力」は、スパッタリング室の、mTorr単位のアルゴンの圧力を指す。「ランタイム」は、予備−及び二次層を除いて、堆積のために必要とされる時間の量を指す。
【0044】
【表1】
【0045】
これらの膜の組成、ミクロ構造体及びサイクル挙動を、下に更に詳細に記載する。
【0046】
化学組成
重量%及び容量%の化学組成を、一定時間、単一の供給源が固定電流で作動される一連の較正実験を用いて求めた。次いで、得られた試料の厚さをプロフィルメーターを用いて求めた。試料の容量%を、何れか1つの材料の全厚堆積電流及び堆積時間に直線的に比例していると仮定して、較正実験に基づいて予測した。重量%の値を、材料密度の便覧値を用いて容量%の値から計算した。
【0047】
透過電子顕微鏡検査
透過電子顕微鏡検査(「TEM」)を用いて、サイクルの前及び後のスパッタリングされた電極膜のミクロ構造を調べた。この技術は、試料の構造の空間的変化、化学的性質、及び/または厚さに相関して透過された強度の空間的変化を用いてミクロ構造の画像を提示する。これらの画像を形成するために用いられた放射線は非常に短い波長の高エネルギーの電子からなるので、高解像度電子顕微鏡検査(HREM)の画像形成条件下で原子のスケールの情報を得ることが可能である。更に、試料とこれらの電子との相互作用は、結晶構造(電子線回折)、及び画像に含まれる情報を補足する局所的な化学的性質(X線微量分析)についての情報を提示する。
【0048】
サイクルにかける前に、試料は、粉末に粉砕することによって、または、径方向(すなわち、スライスが膜の径方向に沿ってとられた)または膜の垂直な方向(すなわち、スライスが膜の接線方向に沿ってとられた)のどちらかに膜を切断することによって、スパッタリングされた膜から作製された。次に、切断試料を3M ScotchcastTMエレクトリカルレジン#5(ミネソタ州、セントポールの3M カンパニー製)中に埋め込み、超ミクロトームにかけ、TEM検査のために十分薄いスライスを得た。スライスの厚さは公称約20nm未満であった。
【0049】
TEM計装の2つのタイプを用いて、ミクロ構造のデータを得た。第1のタイプは、300キロボルトの加速電圧で作動する日立H9000NAR透過電子顕微鏡からなった。それは、X線微量分析について1.75オングストロームのPTP(ポイントツーポイント)解像度及び16オングストロームのマイクロプローブ解像度の能力がある。前記の微量分析の計装は、NORANボイジャーIIIからなった。ダイレクトからデジタルへの画像取得及び定量的な長さ測定を、GATANスロースキャンCCD(電荷結合素子)カメラによって行った。
【0050】
TEM計装の第2のタイプは、200キロボルトの加速電圧で作動するJEOL4000 FEXからなった。それは、X線微量分析について2オングストロームのPTP解像度及び20オングストロームのマイクロプローブ解像度の能力がある。
【0051】
試料は、特定のサイクル数の後に不活性雰囲気中で電気化学電池を開け、カミソリの歯で電極表面に繰り返し筋をつけることによって銅支持体からスパッタリングされた膜を取り除くことにより、サイクルにかけた後にTEMによって調べられた。次に、粉末の形の得られた材料を、銅グリッドによって支持された炭素メッシュ上に集め、構造分析のために顕微鏡中に挿入した。
【0052】
サイクル挙動
電極を、スパッタリングされた膜から、直径7.1または7.5mmの大きさのダイで切り分けた。次に、試験用のセルの2つのタイプを作製した。第1のタイプにおいて、前記のスパッタリングされた膜はカソードを形成し、リチウム箔(ウィスコンシン州、ミルウォーキーのアルドリッチケミカルカンパニー製、厚さ約300マイクロメータ)が1225コイン電池のアノード及び参照電極の両方を形成した。第2のタイプ(全電池)において、スパッタリングされた膜がアノードを形成し、LiCoO2含有組成物がカソードを形成した。前記のLiCoO2含有組成物を作製するために、83重量%のLiCoO2(日本ケミカルセルシード製の商品名「C−10」)、7重量%のフルオロポリマー結合剤(アトケムエルフ製の商品名「Kynar 461」)、7.5重量%のKS−6炭素(ティムカル製)、及び2.5%のスーパーP炭素(MMMカーボン製)を配合した。
【0053】
両方のタイプの電池を厚さ50マイクロメータのポリエチレンセパレータで作製した。すべての電池内の電解質はエチレンカーボネート及びジエチルカーボネートの1:1v/v混合物中に溶かした1モルのLiPF6であった。スペーサを集電装置として、及び電池内のボイド領域を充填するために用いた。電池がLiCoO2を含有する時にはアルミニウムをスペーサーとして用いたが、この場合を除いて、全ての場合に銅またはステンレス鋼スペーサを用いた。
【0054】
前記の電池の電気化学性能を、MACCORサイクラーを用いて測定した。前記のサイクル条件は一般に、約C/3の率(0.5mA/cm2)の定電流充電及び放電、5mV及び1.4Vの代表的のカットオフ電圧に設定された。前記のアノードがリチウム箔であった場合、クーロン効率は、充電の回復または脱リチウム化(delithiation)の容量をリチウム化(lithiation)の容量によって割った値として求めた。アノードが前記のスパッタリングされた膜であった場合、クーロン効率は、放電容量の充電容量に対する比として求めた。
【0055】
スパッタリングされた膜の多くにおいて、抵抗はサイクル寿命の始めにより高く、10〜20サイクル後に下がる。この抵抗効果は電池の容量を初期に下げ、次いで10〜20サイクル後に安定させる。前記の抵抗効果はまた、脱リチウム化の容量がサイクル数が10〜20サイクルへ移ると増大するので、クーロン効率の測定値を、最初の数回のサイクルにおいて100%より高くする。
【0056】
X線回折
サイクルにかけられた材料のX線調査を以下のように行った。前記の電池が所望の電圧に充電または放電され、平衡させられた後、それをアルゴンが充填されたグローブボックス内に置き、確実に短絡が起こらないように注意深く開けた。前記の電極を元の状態に戻し、カプトンX線ウインドウを備えた気密試料ホルダー内に取り付けた。次に、試料をグローブボックスから取り除き、回折計内に置いた。粉末X線回折パターンを、銅ターゲットエックス線管及び回折ビームモノクロメーターを備えたシーメンスD5000回折計を用いて集めた。データを散乱角10度〜80度の間で集めた。
【0057】
特定のスパッタリングされた電極膜の作製及び特性評価について記載する。
【0058】
例1
55.2重量%のスズ及び44.8重量%の銅を含有する膜を、表Iに示した条件下でスパッタリング堆積することによって作製した。前記のスズを555オングストローム/分の速度でスパッタ堆積し、他方、前記の銅を367オングストローム/分の速度でスパッタ堆積した。前記膜は、これらのスパッタ速度に基づいて計算すると、60容量%のスズ及び40容量%の銅を含有した。膜厚さは、7.1マイクロメータであり、膜密度は約7.8g/cm3であった。膜は、厚さ約600オングストロームの高純度の銅の予備層及び厚さ約2500オングストロームの高純度のスズの二次層を有した。
【0059】
前記の電極膜のサイクル挙動を、リチウム箔アノード及びカソードとしてのスパッタリングされた膜を特徴とするコイン電池を用いて上に記載したように試験した。電池が少なくとも400mAh/gにリチウム化されるように5mVの電流を漸減するサイクル条件を設定することによって、前記の膜の第1の放電またはリチウム化を制御した。次に、電池を0.5mA/cm2の電流及び5mV及び1.4Vのカットオフ電圧を用いる充電及び放電サイクル条件下に置いた。前記の電池の比容量及びクーロン効率を図5に示す。結果は、電気化学的に活性の金属元素としてのスズ及び電気化学的に不活性の金属元素としての銅を用いる電極組成物は少なくとも100サイクルの間、125mAh/gの安定した可逆容量をもたらし、それは、高純度のスズより長いサイクル寿命であるが、クーロン効率は数サイクルの後に99.0%より小さかったことを示す。
【0060】
例2
54重量%のスズ及び46重量%のモリブデンを含有する膜を、表Iに示した条件下でスパッタ堆積することによって作製した。前記のスズを550オングストローム/分の速度でスパッタ堆積し、他方、前記のモリブデンを340オングストローム/分の速度でスパッタ堆積した。前記の膜は、これらのスパッタ速度に基づいて計算すると、62容量%のスズ及び38容量%のモリブデンを含有した。膜厚さは、5.3マイクロメータであり、膜密度は約7.3g/cm3であった。膜は、厚さ約700オングストロームの高純度のモリブデンの予備層及び厚さ約2500オングストロームの高純度のスズの二次層を有した。
【0061】
サイクルにかける前の前記の膜のTEM分析は、前記の膜のミクロ構造体が組成変調したマトリックス相中に結晶スズ粒子を含有することを明らかにした。電子回折パターン(図10)は二相ミクロ構造体の存在を示した。すなわち、結晶スズ(正方晶系スズを示すリングパターン中の鮮明な点によって明らかにされる)と、規則結晶材料が存在しないことを示す広い拡散したリングパターンを特徴とするマトリックス相との二相である。高解像度電子顕微鏡検査は、マトリックス相が10オングストロームスケールで不規則であったことを実証した。
【0062】
半径方向に切断された試料のTEM分析は、測定された平均のスズ粒度が5±1.3nm×19±5.9nmであることを示した。粒度の測定された範囲は、3×17nm(最小)〜7×31nm(最大)であった。スズ粒子のアスペクト比は、約2:1〜6:1の範囲であり、長い次元が膜の平面に平行していた。
【0063】
垂直に切断された試料のTEM分析は、測定された平均のスズ粒度が7±2.0nm×33±12.7nmであることを示した。粒度の測定された範囲は4×12nm(最小)〜8×67nm(最大)であった。スズ粒子のアスペクト比は、約1.2:1〜7:1の範囲であり、長い次元が膜の平面に平行していた。
【0064】
マトリックス相のTEM分析は、この相が、TEM画像中の移動「ストライプ」によって明らかにされるように、膜の平面に垂直に組成変調されることを示した。前記の画像の焦点を合わせないことによって、高スズ及び高モリブデン領域(バルク組成に対して)の間のコントラスト差を強化することができた。
【0065】
マトリックス相のX線微量分析は、組成変調構造体の存在を確認した。X線データは、膜の平面に垂直な方向のスズ粒子に隣接したステップに沿って移動される16オングストロームのTEMプローブの大きさを用いて得られた。2つのセットのデータを集めた。第1のセットは、長い走査を用いて膜の上端の近くに位置している相対的に小さいスズ粒子を中心とした。第2のセットは、短い走査を用いて膜の中央に位置している相対的に大きいスズ粒子を中心とした。組成の結果を、規格のない定量分析の機械的作業を用いて求め、表II(小さいスズ粒子)及びIII(大きいスズ粒子)に示す。表II及びIIIに示すように、大きい粒子を囲むマトリックス及び小さい粒子の両方が、組成変調を示した。比較のために、100nmのプローブを用いて確認された平均バルク組成は、45.6重量%のスズ及び54.4重量%のモリブデンであった。
【0066】
【表2】
【0067】
【表3】
【0068】
前記の電極膜のサイクル挙動を、リチウム箔アノード及びカソードとしてのスパッタリングされた膜を特徴とするコイン電池を用いて上に記載したように試験した。電池が少なくとも400mAh/gにリチウム化されるように5mVの電流を漸減するサイクル条件に設定することによって、前記の膜の第1の放電またはリチウム化を制御した。次に、電池を0.5mA/cm2の電流及び5mV及び1.4Vのカットオフ電圧を用いる充電及び放電サイクル条件下に置いた。前記の電池の比容量及びクーロン効率を図1に示す。結果は、スパッタリングされたスズ−モリブデン膜が、クーロン効率が99.0%より下がる前に少なくとも50サイクルの間、約300mAh/gの可逆容量を示すことを表す。
【0069】
前記の膜の第2の試料を、1、2、10、及び30サイクルの間、上に記載した条件下でサイクルにかけた。それぞれのサイクル時間後に、電極膜の試料を上に記載したように取り除き、TEM分析にかけた。TEMの結果は、単一の結晶域が暗視野技術を用いて2、10、及び30サイクル後に材料で分解され得ることを表した。これらの試料の微結晶の大きさは直径150オングストロームより小さく、微結晶の大部分が100オングストロームより小さい直径を有する。更に、1、2、及び10サイクルにかけられた材料は、20オングストロームの固有波長で単一の特定方向に沿って透過された強度で高周波の空間変化を示した。これは、化学組成の高周波空間変調を示し、前記の構造体は銅支持体に垂直な単一の波数ベクトルを特徴とする。これは、約20オングストロームの周期性を有する高モリブデン及び高スズ分のスラブの交互層によって堆積されたマクロ組織と一致している。
【0070】
サイクル後のTEMの結果はまた、結晶の成長プロセスが少なくとも第30回目のサイクルまで抑制されることを表した。更に、最初のモリブデン/スズ構造体の空間変調化学組成と一致した画像が、第10回目のサイクルまで観察された。
【0071】
アノードとしてのスパッタリングされた膜及びカソードとしてのLiCoO2含有組成物を用いて、全電池を、上に記載したように作った。カソードのLiCoO2部分の重量及び全スズ−モリブデンアノードの重量に基づいて計算された質量バランスは、3.3:1であった。次に、電池は、0.5mA/cmの一定充電及び放電電流において2.2〜4.2Vにサイクルにかけられた。放電電流を、充電電流の開始前に50マイクロアンペア/cm2まで低下させた。
【0072】
電池の比容量及びクーロン効率を図7に示す。サイクル15あたりのプロットの下落は、0.25mA/cm2〜0.50mA/cm2の電流の変化を表す。第1の充電容量は、LiCoO2について145mAh/g及びアノード中のスズ−モリブデン材料について450mAh/gであった。第1回目のサイクルの不可逆容量は30%であった。スズ−モリブデンの比容量は、リチウム箔をアノードとして用いる上に記載されたコイン電池において得られた比容量に類似している。LiCoO2の比容量は100mAh/gに維持され、それはこの材料について適当な容量である。
【0073】
前記の結果は、前記のスズ−モリブデン組成物が、リチウムイオン電池で一般に用いられるカソード材料(LiCoO2)と組合せてアノードとして電気化学電池において用いられてもよいことを表す。前記の電池のクーロン効率は、少なくとも70サイクルの間、99.0%より高いままである。
【0074】
次に、上に記載した膜と同一のスズ−モリブデン膜を測定したが、ただし、それはスズの二次層を含有しなかった。次いで、前記の膜を、リチウム箔アノードを含有するコイン電池に組み入れ、上に記載したように、電気化学サイクルにかけた。X線回折データを、0、1、4、及び10回の全サイクル後に膜について集められた。結果を図8(a)〜(d)に示す。
【0075】
図8(a)は、前記の膜が堆積されたときのそのX線回折パターンを示す。31度付近のピークはスズの小さいグレーンによるものであり、39度付近の広いピークは、スズ−モリブデンマトリックス相によるものである。40.6度の垂直線は、高純度の結晶モリブデンについて予想される位置を表わす。
【0076】
図8(b)は、1回の全充電−放電サイクルの完了後の充電された状態の膜のX線回折パターンを示す。マトリックス相によるピークは、位置及び幅がサイクルにかけられていない膜のピークに類似している。滑らかな実線は、粒径が5nmである、Z.Naturforsch28B、246〜248ページ(1973年)に開示された結晶構造体を用いて計算された、LiSnについて計算されたパターンである。
【0077】
図8(c)は、4回の全充電−放電サイクルの完了後の充電された状態の膜のX線回折パターンを示す。スズについて及びマトリックス相についてのピークを再び観察し、前記の膜のミクロ構造体がサイクルの間に実質的に維持されることを明らかにした。
【0078】
図8(d)は、10回の全充電−放電サイクルの完了後の充電された状態の膜のX線回折パターンを示す。モリブデン予備層及び銅支持体によるX線のピーク(50度の末端を有するピーク)によって示されるように、前記の電極は銅支持体から割れ始めた。にもかかわらず、その結果を図8(c)のデータと比較し、2つの図の間の強度のスケールの変化に注目すると、前記のスズのピークは、4サイクル後に前記の膜と実質的に同じ強度及び半値幅を有することが理解できる。同じことがマトリックス相によるピークについて言えるが、前記の結果は、モリブデン予備層によるピークの存在によって不明瞭にされる。
【0079】
例3
54.5重量%のスズ及び45.5重量%のモリブデンを含有する膜を、表Iに示した条件下でスパッタ堆積することによって作製した。前記のスズを110オングストローム/分の速度でスパッタ堆積し、他方、前記のモリブデンを60オングストローム/分の速度でスパッタ堆積した。前記の膜は、これらのスパッタ速度に基づいて計算すると、62.6容量%のスズ及び37.4容量%のモリブデンを含有した。膜厚さは、4.1マイクロメータであり、膜密度は約9.2g/cm3であった。膜は、厚さ約200オングストロームの高純度のモリブデンの予備層及び厚さ約500オングストロームの高純度のスズの二次層を有した。
【0080】
サイクルにかける前の膜のTEM分析は、何れの結晶域の存在をも検出しなかった。電子線回折パターンは、広い拡散した環だけを示した。何れかの形の結晶性が存在した場合、それは10オングストロームより小さいスケールであった。更に、X線微量分析は、組成変調を1.6nmのスケール(プローブの大きさ)で測定できなかったことを示した。1回の全サイクル後に、LiSnの結晶域が見えた。
【0081】
前記の電極膜のサイクル挙動を、リチウム箔アノード及びカソードとしてのスパッタリングされた膜を特徴とするコイン電池を用いて上に記載したように試験した。電池が少なくとも400mAh/gにリチウム化されるように5mVの電流を漸減するサイクル条件に設定することによって、前記の膜の第1の放電またはリチウム化を制御した。次に、電池を0.5mA/cm2の電流及び5mV及び1.4Vのカットオフ電圧を用いる充電及び放電サイクル条件下に置いた。前記の電池の比容量及びクーロン効率を図2に示す。結果は、例2と比較してより低いスズ及びモリブデンの率でスパッタリングした、スパッタリングされたスズ−モリブデン膜が、少なくとも50サイクルの間、約300mAh/gの可逆容量を示し、約99.0%のクーロン効率を示したことを表す。
【0082】
例4
45重量%のスズ及び55重量%のモリブデンを含有する膜を、表Iに示した条件下でスパッタ堆積することによって作製した。前記のスズを555オングストローム/分の速度でスパッタ堆積し、他方、前記のモリブデンを487オングストローム/分の速度でスパッタ堆積した。前記の膜は、これらのスパッタ速度に基づいて計算すると、53.3容量%のスズ及び46.7容量%のモリブデンを含有した。膜厚さは、5.6マイクロメータであり、膜密度は約9.2g/cm3であった。膜は、厚さ約1000オングストロームの高純度のモリブデンの予備層及び厚さ約2500オングストロームの高純度のスズの二次層を有した。
【0083】
前記の電極膜のサイクル挙動を、リチウム箔アノード及びカソードとしてのスパッタリングされた膜を特徴とするコイン電池を用いて上に記載したように試験した。電池が少なくとも400mAh/gにリチウム化されるように5mVの電流を漸減するサイクル条件に設定することによって、前記の膜の第1の放電またはリチウム化を制御した。次に、電池を0.5mA/cm2の電流及び5mV及び1.4Vのカットオフ電圧を用いる充電及び放電サイクル条件下に置いた。前記の電池の比容量及びクーロン効率を図3に示す。結果は、モリブデンの重量%が例2の膜より高い、スパッタリングされたスズ−モリブデン膜が、少なくとも400サイクルの間、約200mAh/gの可逆容量及び約99.0%のクーロン効率を示したことを表す。これらの結果と例2の結果との比較は、モリブデンの重量%が増大するとき、比容量が減少するが、サイクル寿命(99.0%のクーロン効率のサイクル数によって規定される)は増大することを示す。
【0084】
例5
65.5重量%のスズ及び34.5重量%のニオブを含有する膜を、表Iに示した条件下でスパッタ堆積することによって作製した。前記のスズを555オングストローム/分の速度でスパッタ堆積し、他方、前記のニオブを250オングストローム/分の速度でスパッタ堆積した。前記の膜は、これらのスパッタ速度に基づいて計算すると、69容量%のスズ及び31容量%のニオブを含有した。膜厚さは、4.8マイクロメータであり、膜密度は約8.6g/cm3であった。膜は、厚さ約500オングストロームの高純度のニオブの予備層及び厚さ約2500オングストロームの高純度のスズの二次層を有した。
【0085】
サイクルにかける前の前記の膜のTEM分析は、前記の膜のミクロ構造体が組成変調したマトリックス相(しまの領域としてTEM顕微鏡写真に存在している)中に結晶粒子(暗い葉巻き形をした領域としてTEM顕微鏡写真中に存在している)を含有することを明らかにした。X線微量分析は、結晶粒子はバルク組成に対してスズリッチであることを明らかにした。しまの領域の間に点在させられたバルク「白色」領域は、X線微量分析によってバルク組成に対して高ニオブであることが明らかにされた。
【0086】
電子回折パターンはまた、二相ミクロ構造体の存在を示した。結晶スズと、結晶材料が存在しないことを示す広い拡散したリングパターンを特徴とするマトリックス相の二相。高解像度電子顕微鏡検査は、マトリックス相が10オングストロームスケールで不規則であったことを実証した。
【0087】
半径方向に切断された試料のTEM分析は、測定された平均の結晶粒度が5±1.8nm×33±8.0nmであることを示した。粒度の測定された範囲は、3×20nm(最小)〜6×42nm(最大)であった。スズ粒子のアスペクト比は、約3:1〜10:1の範囲であり、長い次元が膜の平面に平行していた。
【0088】
垂直に切断された試料のTEM分析は、測定された平均の結晶粒度が8±1.8nm×44±12.4nmであることを示した。粒度の測定された範囲は6×26nm(最小)〜5×80nm(最大)であった。スズ粒子のアスペクト比は、約1.1:1〜15:1の範囲であった。
【0089】
マトリックス相のTEM分析は、この相が、TEM画像中の移動「ストライプ」によって明らかにされるように、膜の平面に垂直に組成変調されることを示した。マトリックス相のX線微量分析は、組成変調構造体の存在を確認した。X線データは、膜の平面に垂直な方向の結晶粒子に隣接したステップに沿って移動される1.6nmのTEMプローブの大きさを用いて得られた。前記の組成の結果を、規格のない定量分析の機械的作業を用いて求め、表IVに示す。表IVに示すように、前記のマトリックスは組成変調を示した。比較のために、100nmのプローブを用いて求めた平均のバルク組成は、58.9重量%のスズ及び41.1重量%のニオブであった。
【0090】
【表4】
【0091】
前記の電極膜のサイクル挙動を、リチウム箔アノード及びカソードとしてのスパッタリングされた膜を特徴とするコイン電池を用いて上に記載したように試験した。電池が少なくとも400mAh/gにリチウム化されるように5mVの電流を漸減するサイクル条件に設定することによって、前記の膜の第1の放電またはリチウム化を制御した。次に、電池を0.5mA/cm2の電流及び5mV及び1.4Vのカットオフ電圧を用いる充電及び放電サイクル条件下に置いた。前記の電池の比容量及びクーロン効率を図4に示す。前記の結果は、ニオブを電気化学的に不活性の金属元素として用いる膜が少なくとも70サイクルの間、225mAh/gの可逆容量及び99.0%のより大きいクーロン効率を示すことを表す。
【0092】
例6
43.7重量%のスズ及び56.3重量%のタングステンを含有する膜を、表Iに示した条件下でスパッタリング堆積することによって作製した。前記のスズを560オングストローム/分の速度でスパッタ堆積し、他方、前記のタングステンを275オングストローム/分の速度でスパッタ堆積した。前記の膜は、これらのスパッタ速度に基づいて計算すると、67.3容量%のスズ及び32.7容量%のタングステンを含有した。膜厚さは、8.8マイクロメータであり、膜密度は約6g/cm3であった。膜は、厚さ約680オングストロームの高純度のタングステンの予備層及び厚さ約2800オングストロームの高純度のスズの二次層を有した。
【0093】
前記の電極膜のサイクル挙動を、リチウム箔アノード及びカソードとしてのスパッタリングされた膜を特徴とするコイン電池を用いて上に記載したように試験した。電池が少なくとも400mAh/gにリチウム化されるように5mVの電流を漸減するサイクル条件に設定することによって、前記の膜の第1の放電またはリチウム化を制御した。次に、電池を0.25mA/cm2の電流及び5mV及び1.4Vのカットオフ電圧を用いる充電及び放電サイクル条件下に置いた。前記の電池の比容量及びクーロン効率を図6に示す。結果は、電気化学的に不活性の金属元素がタングステンであるスパッタリングされた膜は、少なくとも40サイクルの間、200mAh/gの可逆容量及び99.0%のクーロン効率を示すことを表す。
【0094】
例7
62重量%のスズ及び38重量%のモリブデンを含有する膜を、表Iに示した条件下でスパッタ堆積することによって作製した。前記のスズを780オングストローム/分の速度でスパッタ堆積し、他方、前記のモリブデンを340オングストローム/分の速度でスパッタ堆積した。前記の膜は、これらのスパッタ速度に基づいて計算すると、69容量%のスズ及び31容量%のモリブデンを含有した。膜厚さは、5.1マイクロメータであり、膜密度は約9.9g/cm3であった。膜は、厚さ約700オングストロームの高純度のモリブデンの予備層を有した。それは、二次層を有しなかった。
【0095】
B.ボールミル粉砕によって作製された電極組成物
電極組成物をボールミル粉砕によって作製し、いくつかの場合には、以下の一般的な方法に従って特性を決定した。
【0096】
ボールミル粉砕の方法
Spex8000高衝撃ミキサミルを用いて、最高40時間までの時間、密封された焼入れ鋼バイアルを激しく振とうした。アルゴンを充填したグローブボックス中で、元素の粉末または金属間化合物の所望の量を、直径12.7mmのいろいろな焼入れ鋼ボールと共に、焼入れ鋼バイアルに加えた。次に、前記のバイアルを密封し、Spex8000高衝撃ミキサミルに移し、そこでそれを激しく振とうした。ミル粉砕時間は概して、約20時間のオーダーであった。
【0097】
サイクル挙動
電極を作成するために、前記の粉末のスラリーを銅箔上に塗布し、次いでキャリヤ溶剤を蒸発させた。特に、約86重量%の粉末(ボールミル粉砕によって作製された)、8重量%のスーパーSカーボン・ブラック(ベルギーのMMMカーボン製)、及び6重量%のポリビニリデンフルオリド(アトケム製)を、密封した瓶内で撹拌してスラリーを作製することによってN−メチルピロリジノンと十分に混合した。前記のポリビニリデンフルオリドを、前記の粉末及びカーボン・ブラックを添加する前にN−メチルピロリジノン中に前もって溶解した。前記のスラリーを、ドクター−ブレードスプレッダーで銅箔上に薄い層(厚さ約150マイクロメータ)で塗布した。次に、前記の試料を、105℃に維持されたマッフル炉内に置き、3時間にわたってN−メチルピロリジノン溶剤を蒸発させた。
【0098】
直径1cmの円形電極を、電極パンチを用いて乾燥した膜から切り分けた。前記の電極を秤量し、その後に銅の重量を引き、電極の活性質量を計算した(すなわち、電極の総重量に活性電極粉末から作製された電極の率を乗じた値)。
【0099】
前記の電極を用いて、試験用のコイン電池を作製した。厚さ125マイクロメータのリチウム箔がアノード及び参照電極の働きをした。前記の電池は、スペーサープレート(304ステンレス鋼)及び円板ばね(軟鋼)を備えた2325ハードウエアを特徴とした。前記の円板ばねは、電池がクリンプされて閉じられたときに約15バールの圧力が電池の電極のそれぞれに適用されるように選択された。前記のセパレータは、エチレンカーボネート及びジエチルカーボネートの30:70容量混合物中に溶解したLiPF6の1M溶液(三菱化学)で湿潤されたCelgard#2502の微孔性ポリプロピレンフィルム(ホークスト・セラニーズ)であった。サイクル条件を一般に、活性材料の37mA/gの一定電流に設定した。0.0V及び1.3Vのカットオフ電圧を用いた。
【0100】
X線回折
粉末X線回折パターンを、銅ターゲットエックス線管及び回折ビームモノクロメーターを備えたシーメンスD5000回折計を用いて集めた。データを散乱角10度〜80度の間で集めた。
【0101】
サイクルの間に電極材料を検査するために、in situX線回折実験を行った。前記のサイクル実験の場合、上に記載したようにin situX線回折のための電池を集成したが、以下の点が異なっている。前記のコイン電池の缶は、直径18mmの大きさの孔を提供された。直径21mmのベリリウムのウインドウ(厚さ=250マイクロメータ)を、感圧接着剤(ニューヨーク州、ポートチェスターのロスコ製のロスコボンド)を用いて孔の内側に付けた。電極材料をウインドウに直接に塗布してから、それを缶に付着させた。
【0102】
前記の電池をシーメンスD5000回折計内に取り付け、X線回折走査を連続的に行う間に、ゆっくりと放電及び充電した。一般に、完全な走査は2〜5時間かかり、放電及び充電時間は40〜60時間かかり、充電のその状態の関数として電極の結晶構造の約10〜30の「スナップ写真」を提供した。電池の電圧をサイクルの間に連続的に記録した。
【0103】
以下のように特定の試料を作製し、試験した。
【0104】
例8
金属間化合物、Sn2Fe、を作製するために、不活性ガス下で高周波誘導電気炉内で(ウィスコンシン州、ミルウォーキーのアルドリッチカンパニーから粉末の形で得られた)スズ及び鉄の化学量論比を互いに溶融した。均一な溶融体が得られた後、試料を炉から取り除き、管状炉に移し、500(Cで約60時間、アルゴン流下でアニールした。次に、試料をハンマーでチャンクに破断し、その後に、2gの試料を2つの直径12.7mmの焼入れ鋼ボールと共に焼入れ鋼バイアル中に置き、前記のバイアルを密封した。装入及び密封はアルゴンが充填されたグローブボックス内で行われた。次に、試料を上に記載した一般的な方法に従って20時間、ミル粉砕した。前記の試料は、66.6原子%のスズ及び33.3原子%の鉄を含有した。
【0105】
ミル粉砕の後に、電気化学電池を上に記載したように作製し、そのサイクル挙動を試験した。不可逆容量(mAh/gで最高1.3V)、可逆容量(mAh/g)、及び前記の容量がC/10の初期の可逆容量の50%に下がるまでのサイクル寿命を表Vに記録する。3つの試料を試験した。
【0106】
例9
ボールミル粉砕された粉末を例8の方法に従って作製したが、ただし、鋼バイアル内に置く前に、前記の試料を乳鉢及び乳棒を用いて微粉砕して50ミクロンサイズの粒子を形成した。ミル粉砕の後に、電気化学電池を上に記載したように作製し、そのサイクル挙動を試験した。不可逆容量(mAh/gで最高1.3V)及び可逆容量(mAh/g)を表Vに記録する。サイクル寿命は試験されなかった(「NT」)。
【0107】
例10
ボールミル粉砕された粉末を例8の方法に従って作製したが、ただし、前記の粉末を作製するために、0.402gの鉄、1.715gのスズ、及び0.026gの黒鉛粉末(2650(Cに加熱された、大阪ガス製のメソカーボンマイクロビーズ)を直接に前記のミル粉砕バイアルに添加した。前記の試料は、60.6原子%のスズ、30.3原子%の鉄、及び9.1原子%の炭素を含有した。X線回折データは、試料がSn2Fe相及び炭素相の混合物を含有することを示した。
【0108】
ミル粉砕の後に、電気化学電池を上に記載したように作製し、そのサイクル挙動を試験した。不可逆容量(mAh/gで最高1.3V)、可逆容量(mAh/g)、及び前記の容量がC/10の初期の可逆容量の50%に下がるまでのサイクル寿命を表Vに記録する。
【0109】
サイクルの間のSn2Feとリチウムとの反応を調べるために、2つのin situX線回折電池を作製した。第1の電池はスズ金属粉末から作製された活性電極を有し、他方、第2の電池は上に記載された電極粉末から作製された活性電極を有した。電池が約40時間にわたってゼロボルトに放電された後、両方の電極のX線回折パターンを観察した。結果を図9に示す。23(付近の広い回折ピーク及び38.5(付近のより鋭いピークが、リチウムと反応した活性電極から生ずる。他のピークは、電池のベリリウムのウインドウによるものであり、及び、少量の不活性電極材料に由来する。パターンの間の類似性は、Li/Sn及びLi/Sn2Feの放電生成物が似ていることを示す。これは、ナノメートルのスケールの微結晶サイズを有するLi−Sn合金及び、微結晶のサイズが同じくナノメートルのスケールである鉄リッチ結晶相の存在を示す。
【0110】
例11
ボールミル粉砕された粉末を例8の方法に従って作製したが、ただし、前記の粉末を作製するために、0.404gの鉄、1.711gのスズ、及び0.066gの黒鉛粉末(2650(Cに加熱された、大阪ガス製のメソカーボンマイクロビーズ)を直接に前記のミル粉砕バイアルに添加した。前記の試料は、54.1原子%のスズ、27.0原子%の鉄、及び18.9原子%の炭素を含有した。X線回折データは、試料がSn2Fe相及び炭素相の混合物を含有することを示した。
【0111】
ミル粉砕の後に、電気化学電池を上に記載したように作製し、そのサイクル挙動を試験した。不可逆容量(mAh/gで最高1.3V)、可逆容量(mAh/g)、及び前記の容量がC/10の初期の可逆容量の50%に下がるまでのサイクル寿命を表Vに記録する。第2の試料のサイクル寿命は試験されなかった(「NT」)。
【0112】
例12
ボールミル粉砕された粉末を例8の方法に従って作製したが、ただし、前記の粉末を作製するために、0.406gの鉄、1.725gのスズ、及び0.104gの黒鉛粉末(2650(Cに加熱された、大阪ガス製のメソカーボンマイクロビーズ)を直接に前記のミル粉砕バイアルに添加した。前記の試料は、47.6原子%のスズ、23.8原子%の鉄、及び28.6原子%の炭素を含有した。X線回折データは、試料がSn2Fe相及び炭素相の混合物を含有することを示した。
【0113】
ミル粉砕の後に、電気化学電池を上に記載したように作製し、そのサイクル挙動を試験した。不可逆容量(mAh/gで最高1.3V)、可逆容量(mAh/g)、及び前記の容量がC/10の初期の可逆容量の50%に下がるまでのサイクル寿命を表Vに記録する。第1の試料のサイクル寿命は試験されなかった(「NT」)。
【0114】
例13
ボールミル粉砕された粉末を例8の方法に従って作製したが、ただし、鉄及びスズの相対量が、50.0原子%のスズ及び50.0原子%の鉄を有する試料をもたらすように選択された。更に、鉄及びスズは、互いに溶融されるのではなく、直接に前記のミル粉砕バイアルに添加された。ミル粉砕の後に、電気化学電池を上に記載したように作製し、そのサイクル挙動を試験した。不可逆容量(mAh/gで最高1.3V)、可逆容量(mAh/g)、及び前記の容量がC/10の初期の可逆容量の50%に下がるまでのサイクル寿命を表Vに記録する。
【0115】
例14
ボールミル粉砕された粉末を例8の方法に従って作製したが、ただし、鉄及びスズの相対量が、40.0原子%のスズ及び60.0原子%の鉄を有する試料をもたらすように選択された。更に、前記の試料を38時間、ミル粉砕した。ミル粉砕の後に、電気化学電池を上に記載したように作製し、そのサイクル挙動を試験した。不可逆容量(mAh/gで最高1.3V)、可逆容量(mAh/g)、及び前記の容量がC/10の初期の可逆容量の50%に下がるまでのサイクル寿命を表Vに記録する。2つの試料を試験した。
【0116】
例15
ボールミル粉砕された粉末を例8の方法に従って作製したが、ただし、鉄及びスズの相対量が、37.5原子%のスズ及び62.5原子%の鉄を有する試料をもたらすように選択された。更に、前記の試料を19時間、ミル粉砕した。ミル粉砕の後に、電気化学電池を上に記載したように作製し、そのサイクル挙動を試験した。不可逆容量(mAh/gで最高1.3V)、可逆容量(mAh/g)、及び前記の容量がC/10の初期の可逆容量の50%に下がるまでのサイクル寿命を表Vに記録する。2つの試料を試験した。
【0117】
例16
ボールミル粉砕された粉末を例8の方法に従って作製したが、ただし、前記の粉末を作製するために、0.866gの鉄、1.277gのスズ、及び0.049gの黒鉛粉末(2650(Cに加熱された、大阪ガス製のメソカーボンマイクロビーズ)を直接に前記のミル粉砕バイアルに添加した。前記の試料は、35.4原子%のスズ、51.2原子%の鉄、及び13.4原子%の炭素を含有した。X線回折データは、試料がSn2Fe相及びSnFe3C相の混合物であることを示した。
【0118】
ミル粉砕の後に、電気化学電池を上に記載したように作製し、そのサイクル挙動を試験した。不可逆容量(mAh/gで最高1.3V)、可逆容量(mAh/g)、及び前記の容量がC/10の初期の可逆容量の50%に下がるまでのサイクル寿命を表Vに記録する。2つの試料を試験した。
【0119】
例17
ボールミル粉砕された粉末を例8の方法に従って作製したが、ただし、前記の粉末を作製するために、0.866gの鉄、1.277gのスズ、及び0.136gの黒鉛粉末(2650(Cに加熱された、大阪ガス製のメソカーボンマイクロビーズ)を直接に前記のミル粉砕バイアルに添加した。前記の試料は、28.7原子%のスズ、41.6原子%の鉄、及び29.7原子%の炭素を含有した。X線回折データは、試料がSn2Fe相及びSnFe3C相の混合物であることを示した。
【0120】
ミル粉砕の後に、電気化学電池を上に記載したように作製し、そのサイクル挙動を試験した。不可逆容量(mAh/gで最高1.3V)、可逆容量(mAh/g)、及び前記の容量がC/10の初期の可逆容量の50%に下がるまでのサイクル寿命を表Vに記録する。第1の試料のサイクル寿命は試験されなかった(「NT」)。
【0121】
例18
ボールミル粉砕された粉末を例8の方法に従って作製したが、ただし、前記の粉末を作製するために、1.017gの鉄、1.083gのスズ、及び0.066gの黒鉛粉末(2650(Cに加熱された、大阪ガス製のメソカーボンマイクロビーズ)を直接に前記のミル粉砕バイアルに添加した。前記の試料は、27.8原子%のスズ、55.6原子%の鉄、及び16.7原子%の炭素を含有した。X線回折データは、試料がSn2Fe相及びSnFe3C相の混合物であることを示した。
【0122】
ミル粉砕の後に、電気化学電池を上に記載したように作製し、そのサイクル挙動を試験した。不可逆容量(mAh/gで最高1.3V)、可逆容量(mAh/g)、及び前記の容量がC/10の初期の可逆容量の50%に下がるまでのサイクル寿命を表Vに記録する。
【0123】
例19
ボールミル粉砕された粉末を例8の方法に従って作製したが、ただし、前記の粉末を作製するために、1.044gの鉄、1.070gのスズ、及び0.164gの黒鉛粉末(2650(Cに加熱された、大阪ガス製のメソカーボンマイクロビーズ)を直接に前記のミル粉砕バイアルに添加した。前記の試料は、22.1原子%のスズ、44.2原子%の鉄、及び33.6原子%の炭素を含有した。X線回折データは、試料がSn2Fe相及びSnFe3C相の混合物であることを示した。
【0124】
ミル粉砕の後に、電気化学電池を上に記載したように作製し、そのサイクル挙動を試験した。不可逆容量(mAh/gで最高1.3V)、可逆容量(mAh/g)、及び前記の容量がC/10の初期の可逆容量の50%に下がるまでのサイクル寿命を表Vに記録する。2つの試料を試験した。
【0125】
例20
ボールミル粉砕された粉末を例8の方法に従って作製したが、ただし、前記の粉末を作製するために、1.160gの鉄、1.823gのスズ、及び0.084gの黒鉛粉末(2650(Cに加熱された、大阪ガス製のメソカーボンマイクロビーズ)を直接に前記のミル粉砕バイアルに添加した。前記の試料は、20.0原子%のスズ、60.0原子%の鉄、及び20.0原子%の炭素を含有した。X線回折データは、試料がSn2Fe相及びSnFe3C相の混合物であることを示した。
【0126】
ミル粉砕の後に、電気化学電池を上に記載したように作製し、そのサイクル挙動を試験した。不可逆容量(mAh/gで最高1.3V)、可逆容量(mAh/g)、及び前記の容量がC/10の初期の可逆容量の50%に下がるまでのサイクル寿命を表Vに記録する。
【0127】
【表5】
【技術分野】
【0001】
この発明は、二次リチウム電池に有用な電極組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
材料の2つの種類が、二次リチウム電池のためのアノードとして提案されている。1つの種類には、リチウムを挿入することができる黒鉛及び炭素などの材料がある。前記の挿入アノードは概して十分なサイクル寿命及びクーロン効率を示すが、他方、それらの容量は相対的に低い。第2の種類には、リチウム金属を合金化した金属などがある。これらの合金タイプのアノードは概して挿入タイプのアノードに対してより高い容量を示すが、それらは相対的に不十分なサイクル寿命及びクーロン効率になる。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、電極組成物が繰り返しサイクルにかけた後でも保持される高い初期能力を有する二次リチウム電池に使用するのに適した電極組成物を提供する。前記の電極組成物はまた、高いクーロン効率を示す。前記の電極組成物及びこれらの組成物を混入させる電池もまた容易に製造される。
【0004】
これらの目的を達成するために、本発明は、第1の態様において、(a)電気化学的に活性の金属元素及び(b)電気化学的に不活性の金属元素を含む電極組成物を特長とする。リチウム電池中に混入されて全充電−放電の1サイクル全体にかけられるときに、前記の組成物は、約500オングストローム以下(好ましくは約100オングストローム以下、より好ましくは約50オングストローム以下)である少なくとも1つの寸法を有しかつ少なくとも合計10サイクル(好ましくは少なくとも100サイクル、より好ましくは少なくとも1000サイクル)の後に実質的に増大しない結晶域を含む。
【0005】
前記の結晶域はサイクルにかける前に存在していてもよく、または全充電−放電の1サイクルの後だけに生じてもよい。前者の場合、前記の領域は全充電−放電の1サイクルの後に存続する。
【0006】
「電気化学的に活性の金属元素」は一般に、リチウム電池の充電及び放電の間に直面する条件下でリチウムと反応する元素である。「電気化学的に不活性の金属元素」は、それらの条件下でリチウムと反応しない元素である。両方の場合において、前記の金属元素は、元素それ自体だけを含有する金属(すなわち、元素の金属)または金属元素であってもなくてもよい1つ以上の元素と組合せた前記の元素を含有する化合物の形で電極組成物中に見いだされることがある。後者の例は、1つ以上の金属元素と組合せた前記の金属元素を含有する金属間化合物である。しかしながら、サイクルにかける前に、電気化学的に活性の金属元素は金属間化合物または元素の金属の形状である。
【0007】
電気化学的に活性の金属元素が化合物の一部である場合、化合物それ自体は電気化学的に活性である必要はないが、活性であってもよい。同様に、電気化学的に不活性の金属元素が化合物の一部である場合、化合物それ自体は電気化学的に不活性である必要はないが、不活性であってもよい。
【0008】
好ましい電気化学的に活性の金属元素の例は、スズである。好ましい電気化学的に不活性の金属元素の例には、モリブデン、ニオブ、タングステン、タンタル、鉄、銅及びそれらの組合せなどがある。特に好ましい電極組成物は、(a)電気化学的に活性の金属元素がスズであり、電気化学的に不活性の金属元素がモリブデンであるか、(b)電気化学的に活性の金属元素がスズであり、電気化学的に不活性の金属元素が鉄であるか、(c)電気化学的に活性の金属元素がスズであり、電気化学的に不活性の金属元素がニオブであるか、(d)電気化学的に活性の金属元素がスズであり、電気化学的に不活性の金属元素がタングステンであるか、(e)電気化学的に活性の金属元素がスズであり、電気化学的に不活性の金属元素がタンタルである電極組成物である。
【0009】
前記の結晶域は、結晶材料に特有のはっきりと認められるX線回折パターンを特徴とする。化学組成に関して、結晶域の少なくとも1つは好ましくは電気化学的に活性の金属元素を含有し、結晶域の少なくとも別の1つは電気化学的に不活性の金属元素を含有する。
【0010】
前記結晶域は好ましくは、相対的な比率が電極組成物の厚さ方向にわたって変化する前記電気化学的に活性の金属元素及び前記電気化学的に不活性の金属元素を含む領域によって隔てられている。電極組成物が薄膜状である場合については、「組成物の厚さ方向」は、上に膜が堆積される支持体に垂直な方向を指す。電極組成物が単一の粒子の集まりに相当する粉末の形状である場合、「組成物の厚さ方向」は、単一の粒子の厚さ方向を指す。
【0011】
結晶域を隔てている領域は、結晶材料の特有の電子線回折パターンを示さない。それらは、サイクルにかける前に、サイクルにかけた後に、サイクルの前と後の両方に存在していてもよい。
【0012】
前記の電極組成物がリチウム電池中に組入れられてサイクルにかけられて約100mAh/gを達成するときに、前記の電極組成物は好ましくは、100回の全放電サイクルの後に少なくとも約99.0%の(より好ましくは少なくとも約99.8%の、更により好ましくは約99.9%の)クーロン効率を示す。電極組成物は、薄膜または粉末の形で提供されてもよい。
【0013】
第2の態様において、本発明は、(a)電気化学的に活性の金属元素及び(b)電気化学的に不活性の金属元素を含む電極組成物を特徴とする。リチウム電池中に混入されて全充電−放電の1サイクル全体にかけられるときに、前記の組成物は結晶域を含有する。更に、リチウム電池中に組入れられてサイクルにかけられて電極組成物の約100mAh/gを達成するときに、前記の電極組成物は好ましくは、100回の全放電サイクルの後に少なくとも約99.0%の(好ましくは少なくとも約99.8%の、より好ましくは約99.9%の)クーロン効率を示す。
【0014】
前記の結晶域はサイクルにかける前に存在してもよく、または全充電−放電の1サイクルの後だけに生じてもよい。前者の場合、前記の領域は全充電−放電の1サイクルの後に存続する。
【0015】
電気化学的に活性の金属元素及び電気化学的に不活性の金属元素は上に記載された定義を有する。両方の場合において、前記の金属元素は、元素それ自体だけを含有する金属(すなわち、元素の金属)または金属元素であってもなくてもよい1つ以上の元素と組合せた前記の元素を含有する化合物の形で電極組成物中に見いだされることがある。後者の例は、1つ以上の金属元素と組合せた金属元素を含有する金属間化合物である。しかしながら、サイクルにかける前に、電気化学的に活性の金属元素は金属間化合物または元素の金属の形状である。
【0016】
前記の電極組成物は、薄い膜または粉末の形で提供されてもよい。好ましい電気化学的に活性の金属元素の例はスズである。好ましい電気化学的に不活性の金属元素の例には、モリブデン、ニオブ、タングステン、タンタル、鉄、銅及びそれらの組合せなどがある。特に好ましい電極組成物は、(a)電気化学的に活性の金属元素がスズであり、電気化学的に不活性の金属元素がモリブデンであるか、(b)電気化学的に活性の金属元素がスズであり、電気化学的に不活性の金属元素は鉄であるか、(c)電気化学的に活性の金属元素はスズであり、電気化学的に不活性の金属元素がニオブであるか、(d)電気化学的に活性の金属元素がスズであり、電気化学的に不活性の金属元素がタングステンであるか、(e)電気化学的に活性の金属元素がスズであり、電気化学的に不活性の金属元素がタンタルである電極組成物である。
【0017】
前記の結晶域は、はっきりと認められるX線回折パターンを特徴とする。化学組成に関して、結晶域の少なくとも1つは好ましくは電気化学的に活性の金属元素を含有し、結晶域の少なくとも別の1つは電気化学的に不活性の金属元素を含有する。
【0018】
前記結晶域は好ましくは、相対的な比率が電極組成物の厚さ方向にわたって変化する前記電気化学的に活性の金属元素及び前記電気化学的に不活性の金属元素を含む領域によって隔てられている(上に規定した通りである)。結晶域を隔てているこれらの領域は、結晶材料に特有のはっきりと認められる電子線回折パターンを示さない。それらは、サイクルにかける前に、サイクルにかけた後に、サイクルの前と後の両方に存在していてもよい。
【0019】
第3の態様において、本発明は、(a)前記電気化学的に活性の金属元素を含む供給源及び(b)前記電気化学的に不活性の金属元素を含む供給源を組み合わせて電極組成物を形成する電極組成物の作製方法を特徴とし、(i)リチウム電池中に組入れられて全充電−放電の1サイクル全体にかけられるときに、前記の電極組成物が結晶域を含み、(ii)リチウム電池中に組入れられてサイクルにかけられて約100mAh/gを達成するときに、前記の電極組成物が100回の全放電サイクルの後に少なくとも約99.0%のクーロン効率を示す。
【0020】
1つの好ましい実施態様において、電気化学的に活性の金属元素の供給源及び電気化学的に不活性の元素の供給源は支持体上に連続的にスパッタ堆積される。別の好ましい実施態様において、2つの供給源はボールミル粉砕によって組み合わせられる。
【0021】
上に記載した電極組成物は、対向電極及び電極と対向電極とを隔てる電解質と組み合わられてリチウム電池を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1a】54重量%のスズ及び46重量%のモリブデンを有するスパッタ堆積されたスズ−モリブデン電極の、可逆比容量を用いたサイクル性能を示す。
【図1b】54重量%のスズ及び46重量%のモリブデンを有するスパッタ堆積されたスズ−モリブデン電極の、クーロン効率を用いたサイクル性能を示す。
【図2a】54.5重量%のスズ及び45.5重量%のモリブデンを有するスパッタ堆積されたスズ−モリブデン電極の、可逆比容量を用いたサイクル性能を示す。
【図2b】54.5重量%のスズ及び45.5重量%のモリブデンを有するスパッタ堆積されたスズ−モリブデン電極の、クーロン効率を用いたサイクル性能を示す。
【図3a】45重量%のスズ及び55の重量%のモリブデンを有するスパッタ堆積されたスズ−モリブデン電極の、可逆比容量を用いたサイクル性能を示す。
【図3b】45重量%のスズ及び55の重量%のモリブデンを有するスパッタ堆積されたスズ−モリブデン電極の、クーロン効率を用いたサイクル性能を示す。
【図4a】65.5重量%のスズ及び34.5の重量%のニオブを有するスパッタ堆積されたスズ−ニオブ電極の、可逆比容量を用いたサイクル性能を示す。
【図4b】65.5重量%のスズ及び34.5の重量%のニオブを有するスパッタ堆積されたスズ−ニオブ電極の、クーロン効率を用いたサイクル性能を示す。
【図5a】55.2重量%のスズ及び44.8重量%の銅を有するスパッタ堆積されたスズ−銅電極の、可逆比容量を用いたサイクル性能を示す。
【図5b】55.2重量%のスズ及び44.8重量%の銅を有するスパッタ堆積されたスズ−銅電極の、クーロン効率を用いたサイクル性能を示す。
【図6a】43.7重量%のスズ及び56.3重量%のタングステンを有するスパッタ堆積されたスズ−タングステン電極の、可逆比容量を用いたサイクル性能を示す。
【図6b】43.7重量%のスズ及び56.3重量%のタングステンを有するスパッタ堆積されたスズ−タングステン電極の、クーロン効率を用いたサイクル性能を示す。
【図7a】54重量%のスズ及び46重量%のモリブデンを有するスパッタ堆積されたスズ−モリブデンアノード及びLiCoO2含有カソードを特徴とする全電池の、可逆比容量を用いたサイクル性能を示す。
【図7b】54重量%のスズ及び46重量%のモリブデンを有するスパッタ堆積されたスズ−モリブデンアノード及びLiCoO2含有カソードを特徴とする全電池の、クーロン効率を用いたサイクル性能を示す。
【図8】0、1、4、及び10回のサイクル後に得られた54重量%のスズ及び46重量%のモリブデンを有するスズ−モリブデン膜についての一連のX線回折の分布である。
【図9】スズ金属電極及びSn2Fe電極を含むin situX線回折実験の結果を記録する。
【図10】図1の主題であるスズ−モリブデン膜の電子線回折パターンである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の他の特徴及び利点は、それらの好ましい実施態様の以下の説明から、及びクレームから明白であろう。
【0024】
本発明は、二次リチウム電池のためのアノードとして特に有用な電極組成物を特徴とする。前記の電極組成物は、繰り返しサイクルにかけた後に実質的に保持される高い初期能力を示す電極組成物をもたらすことを本発明者が発見したミクロ構造体中で組み合わせられた、電気化学的に活性の金属元素及び電気化学的に不活性の金属元素を特徴とする。
【0025】
適した電気化学的に活性の金属元素の例はスズである。適した電気化学的に不活性の金属元素の例は、モリブデン、ニオブ、タングステン、タンタル、鉄、銅及びそれらの組合せであるが、モリブデンが特に好ましい。これらの元素は、単一元素の金属、金属間化合物、または1つ以上の非金属元素と組み合わせた金属元素を特徴とする化合物の形で存在していてもよい。更に、元素が存在している特定の形が、繰り返されるサイクルの間に変化することがある。例えば、合金は、電極組成物中に存在している他の材料によってできる場合がある。しかしながら、最適な性能のために、電気化学的に活性の金属元素は、元素の金属(例えば、スズ金属)の形で、または金属間化合物としてサイクルにかける前に存在している。
【0026】
前記の電極組成物のミクロ構造は、小さい結晶域の存在を特徴とする。これらの領域は、結晶材料の特有のX線及び電子線回折パターンを生じさせる。いくつかの実施態様において、例えば、スパッタリングによって作製されたいくつかの組成物の場合、これらの領域はサイクルにかける前に存在し、全充電−放電の少なくとも1サイクルの後に残る。他の実施態様において、例えば、ボールミル粉砕によって作製されたいくつかの組成物の場合、これらの領域は、前記の組成物が全充電−放電の1サイクルを経た後にだけ、形成される。
【0027】
前記の結晶域はx−、y−、及びz−次元によって特性決定される非常に小さい、3次元の構造体である。これらの次元の少なくとも1つが、材料の透過電子顕微鏡写真の検査から求めると、約500オングストローム以下である(好ましくは約100オングストローム以下、より好ましくは約50オングストローム以下である)。サイクルにかけるとき、この次元は、少なくとも合計10サイクル(好ましくは少なくとも100サイクル、より好ましくは少なくとも1000サイクル)の後に実質的に増大しない。結晶域は、従って、繰り返しサイクルにかけた後でも非常に小さいままである。この性質は、繰り返しサイクルにかけた後に前記の電極組成物が実質的にその初期能力を保持できることに寄与すると考えられている。
【0028】
所与の電極組成物中に、好ましくは、電気化学的に活性の金属元素を含有する結晶域及び電気化学的に不活性の金属元素を含有する別の結晶域が存在する。例えば、スパッタ堆積されたスズ−モリブデン電極組成物の場合、サイクルにかける前にスズ金属を含有する結晶域及びモリブデン金属を含有する結晶域が存在することがある。
【0029】
前記の結晶域は好ましくは、透過電子顕微鏡検査によって調べられるとき、結晶材料に特有の電子線回折パターンを生じない領域によって隔てられている。特に、これらの領域は、結晶材料に特有の相対的に鋭い環または点を示さない。更に、原子(2オングストローム)のスケールの構造的情報を提供することができる高解像度電子顕微鏡検査は、同様に、結晶材料の存在を認めることができない。電子顕微鏡検査のデータに基づいて、これらの領域は、約20オングストローム以下、好ましくは約10オングストローム以下の長さのスケールの高度に不規則な原子配列を含有する材料として記載され得る。
【0030】
これらの領域のX線微量分析(X線エネルギー分散性分光分析法とも称される)を用いる組成分析は、それらが電気化学的に活性の金属元素及び電気化学的に不活性の金属元素の両方を含有すると共に、これらの2つの元素の相対的な比率が試料の厚さ方向にわたり変化することを明らかにする。我々はこの特徴を「組成変調」と称する。前記の組成物は好ましくは、約50オングストローム以下、好ましくは約20オングストローム以下のスケールで変化する。
【0031】
組成変調は、結晶域も存在している限り、サイクルにかける前及び/または後に存在していることがある。これらの組成変調領域の存在は、これらの領域が前記の結晶域より柔軟であり、全体として組成物が、さもなければ電極を割って不良にするサイクルによって引き起こされた応力を散逸することができるため、サイクルにかけた後に電極がその容量を保持する能力に寄与する。
【0032】
前記の電極組成物は、いろいろな方法に従って薄膜または粉末の形で作製されてもよい。例には、スパッタリング、化学蒸着、真空蒸着、溶融紡糸、スプラット冷却、スプレー噴霧化、及びボールミル粉砕などがある。技術の選択は、前記の電極組成物が薄膜または粉末の形で作製されるかどうか決定する。スパッタリングは、例えば、薄膜の形で電極組成物を製造するのに対して、ボールミル粉砕は易流動性の粉末の形の電極組成物を製造し、次に、例えば、高分子結合剤と組み合わせて電池に組入れさせるのに適した電極を形成することができる。
【0033】
前記の電極組成物を作製するための好ましいプロセスはスパッタリングであり、そこにおいて、電気化学的に活性の金属元素及び電気化学的に不活性の金属元素が支持体(例えば、銅支持体)上に連続的にスパッタ被覆される。好ましくは、前記の電極は、前記の元素の1つのスパッタ堆積された予備層及び前記の元素の1つのスパッタ堆積された上層を備える。概して、前記の支持体は、連続的に作動される2つの直径6インチのマグネトロンスパッタリング供給源の下で連続的に回転する直径が公称25インチのターンテーブルの端縁の近くに配置される。1つの材料の層が、前記の支持体が第1の供給源の下を通過するときに堆積され、第2の材料の層が、前記の支持体が第2の供給源の下を通過するときに堆積される。ターンテーブルの回転速度及び2つの供給源のスパッタリング率を知ることによって、それぞれの層の公称の厚さを予測及び制御することができる。全堆積時間を計算することによって、全試料の厚さ及び単一層の数を求めることができる。
【0034】
非常に薄い単一層を有する試料の場合、最終構造体は層状構造体の形跡がないことがある。他方、層状構造体の形跡がより厚い層の場合に見いだされることがある。
【0035】
前記の電極組成物は、二次リチウム電池のためのアノードとして特に有用である。電池を作製するために、電極は電解質及びカソード(対向電極)と組み合わせられる。前記の電解質は固体または液体の電解質であってもよい。固体の電解質の例には、ポリエチレンオキシド、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素含有コポリマー及びそれらの組合せなどの高分子電解質などがある。液体電解質の例には、エチレンカーボネート、ジエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート及びそれらの組合せなどがある。前記の電解質はリチウム電解質の塩を提供される。適した塩の例には、LiPF6、LiBF4及びLiClO4などがある。
【0036】
液体電解質を含有する電池のための適したカソード組成物の例には、LiCoO2、LiCo0.2Ni0.8O2、及びLi1.07Mn1.93O4などがある。固体電解質を含有する電池のための適したカソード組成物の例には、LiV3O8及びLiV2O5などがある。
【0037】
本発明は以下の例によって更に記載される。
【実施例】
【0038】
A.スパッタリングによって作製された電極組成物
一連の電極膜をスパッタリングによって作製し、いくつかの場合には、次の一般的な方法に従って特性を決定した。
【0039】
スパッタリング方法
薄膜状の電極組成物を、改良パーキン・エルマーランデックスモデル2400−8SAスパッタリング装置を用いて連続スパッタリングによって作製した。最初の直径8インチのrfスパッタ供給源を、カリフォルニア州、サンディエゴのマテリアルズサイエンス製の直径6インチのDCマグネトロンスパッタリング供給源と取り替えた。前記のスパッタリング供給源に、定電流モードで作動するアドバンストエネルギーモデルMDX−10dcスパッタリング電源を用いて電力を供給した。前記のランデックス装置のターンテーブル駆動ユニットをステッパモータと取り替え、回転速度の範囲及び制御を改善した。前記の装置は、従来の回転ベーンポンプによって補強されたトラップなしの油拡散ポンプでポンプされた。
【0040】
スパッタリングは、3〜30mTorrの範囲のアルゴン圧で行われた。圧力を維持するために、拡散ポンプの上に置かれたベネッシャンブラインドスタイルのコンダクタンスリミッターと組合せてアルゴン流を制御した。
【0041】
銅箔(厚さ=0.001インチ)を、両面接着テープ(ミネソタ州、セントポールの3Mカンパニー製の3MブランドY9415)を用いてランデックス装置の水冷支持ターンテーブルに接着した。前記の装置を閉じ、一般に1×10-5トールより低い基礎圧力に下がるまでポンプを動かした(堆積前の基礎圧力は重要ではない)。いくつかの場合には、試料は、13.56MHzの電力が支持ターンテーブルに適用されると共にスパッタリング室のアルゴン圧が8mTorrであるランデックス装置の「スパッタ腐蝕」モードを用いて堆積前に腐蝕された。この方法により、銅箔表面に適度なエネルギーアルゴンイオン(100〜150eV)で衝撃を与え、前記の銅を更にきれいにしてスパッタリングされた膜の銅表面への十分な付着力を確実にした。典型的な清浄サイクルは、30分間、150Wであり、支持テーブルが前記のサイクルの間、回転していた。
【0042】
腐蝕の後に、スパッタリング供給源は同供給源と銅支持体との間の機械シャッターを用いて始動された。これは、汚染物質をそれらを支持体表面の上に堆積させずに供給源表面から取り除いた。次に、周知の身元の単一材料から作られた「予備層」を、支持体上に堆積させた。予備層の目的は、支持体とスパッタ堆積された膜との間の十分な付着力を確実にすることであった。次に、両方の供給源が予め決めた電流レベルで始動され、堆積を開始した。適した堆積時間の後に、一方または両方の供給源が止められた。次いで、周知の身元の単一の材料の「二次層(post−layer)」が堆積され、その後に前記の装置を脱気し、試料を取り除いた。
【0043】
7つの膜(例1〜7に相当する)を上に記載された方法に従って作製した。スパッタリング条件を下の表Iにまとめた。表Iにおいて、「電流」は、単一のスパッタリング供給源の、アンペア単位の電流のレベルを指す。「圧力」は、スパッタリング室の、mTorr単位のアルゴンの圧力を指す。「ランタイム」は、予備−及び二次層を除いて、堆積のために必要とされる時間の量を指す。
【0044】
【表1】
【0045】
これらの膜の組成、ミクロ構造体及びサイクル挙動を、下に更に詳細に記載する。
【0046】
化学組成
重量%及び容量%の化学組成を、一定時間、単一の供給源が固定電流で作動される一連の較正実験を用いて求めた。次いで、得られた試料の厚さをプロフィルメーターを用いて求めた。試料の容量%を、何れか1つの材料の全厚堆積電流及び堆積時間に直線的に比例していると仮定して、較正実験に基づいて予測した。重量%の値を、材料密度の便覧値を用いて容量%の値から計算した。
【0047】
透過電子顕微鏡検査
透過電子顕微鏡検査(「TEM」)を用いて、サイクルの前及び後のスパッタリングされた電極膜のミクロ構造を調べた。この技術は、試料の構造の空間的変化、化学的性質、及び/または厚さに相関して透過された強度の空間的変化を用いてミクロ構造の画像を提示する。これらの画像を形成するために用いられた放射線は非常に短い波長の高エネルギーの電子からなるので、高解像度電子顕微鏡検査(HREM)の画像形成条件下で原子のスケールの情報を得ることが可能である。更に、試料とこれらの電子との相互作用は、結晶構造(電子線回折)、及び画像に含まれる情報を補足する局所的な化学的性質(X線微量分析)についての情報を提示する。
【0048】
サイクルにかける前に、試料は、粉末に粉砕することによって、または、径方向(すなわち、スライスが膜の径方向に沿ってとられた)または膜の垂直な方向(すなわち、スライスが膜の接線方向に沿ってとられた)のどちらかに膜を切断することによって、スパッタリングされた膜から作製された。次に、切断試料を3M ScotchcastTMエレクトリカルレジン#5(ミネソタ州、セントポールの3M カンパニー製)中に埋め込み、超ミクロトームにかけ、TEM検査のために十分薄いスライスを得た。スライスの厚さは公称約20nm未満であった。
【0049】
TEM計装の2つのタイプを用いて、ミクロ構造のデータを得た。第1のタイプは、300キロボルトの加速電圧で作動する日立H9000NAR透過電子顕微鏡からなった。それは、X線微量分析について1.75オングストロームのPTP(ポイントツーポイント)解像度及び16オングストロームのマイクロプローブ解像度の能力がある。前記の微量分析の計装は、NORANボイジャーIIIからなった。ダイレクトからデジタルへの画像取得及び定量的な長さ測定を、GATANスロースキャンCCD(電荷結合素子)カメラによって行った。
【0050】
TEM計装の第2のタイプは、200キロボルトの加速電圧で作動するJEOL4000 FEXからなった。それは、X線微量分析について2オングストロームのPTP解像度及び20オングストロームのマイクロプローブ解像度の能力がある。
【0051】
試料は、特定のサイクル数の後に不活性雰囲気中で電気化学電池を開け、カミソリの歯で電極表面に繰り返し筋をつけることによって銅支持体からスパッタリングされた膜を取り除くことにより、サイクルにかけた後にTEMによって調べられた。次に、粉末の形の得られた材料を、銅グリッドによって支持された炭素メッシュ上に集め、構造分析のために顕微鏡中に挿入した。
【0052】
サイクル挙動
電極を、スパッタリングされた膜から、直径7.1または7.5mmの大きさのダイで切り分けた。次に、試験用のセルの2つのタイプを作製した。第1のタイプにおいて、前記のスパッタリングされた膜はカソードを形成し、リチウム箔(ウィスコンシン州、ミルウォーキーのアルドリッチケミカルカンパニー製、厚さ約300マイクロメータ)が1225コイン電池のアノード及び参照電極の両方を形成した。第2のタイプ(全電池)において、スパッタリングされた膜がアノードを形成し、LiCoO2含有組成物がカソードを形成した。前記のLiCoO2含有組成物を作製するために、83重量%のLiCoO2(日本ケミカルセルシード製の商品名「C−10」)、7重量%のフルオロポリマー結合剤(アトケムエルフ製の商品名「Kynar 461」)、7.5重量%のKS−6炭素(ティムカル製)、及び2.5%のスーパーP炭素(MMMカーボン製)を配合した。
【0053】
両方のタイプの電池を厚さ50マイクロメータのポリエチレンセパレータで作製した。すべての電池内の電解質はエチレンカーボネート及びジエチルカーボネートの1:1v/v混合物中に溶かした1モルのLiPF6であった。スペーサを集電装置として、及び電池内のボイド領域を充填するために用いた。電池がLiCoO2を含有する時にはアルミニウムをスペーサーとして用いたが、この場合を除いて、全ての場合に銅またはステンレス鋼スペーサを用いた。
【0054】
前記の電池の電気化学性能を、MACCORサイクラーを用いて測定した。前記のサイクル条件は一般に、約C/3の率(0.5mA/cm2)の定電流充電及び放電、5mV及び1.4Vの代表的のカットオフ電圧に設定された。前記のアノードがリチウム箔であった場合、クーロン効率は、充電の回復または脱リチウム化(delithiation)の容量をリチウム化(lithiation)の容量によって割った値として求めた。アノードが前記のスパッタリングされた膜であった場合、クーロン効率は、放電容量の充電容量に対する比として求めた。
【0055】
スパッタリングされた膜の多くにおいて、抵抗はサイクル寿命の始めにより高く、10〜20サイクル後に下がる。この抵抗効果は電池の容量を初期に下げ、次いで10〜20サイクル後に安定させる。前記の抵抗効果はまた、脱リチウム化の容量がサイクル数が10〜20サイクルへ移ると増大するので、クーロン効率の測定値を、最初の数回のサイクルにおいて100%より高くする。
【0056】
X線回折
サイクルにかけられた材料のX線調査を以下のように行った。前記の電池が所望の電圧に充電または放電され、平衡させられた後、それをアルゴンが充填されたグローブボックス内に置き、確実に短絡が起こらないように注意深く開けた。前記の電極を元の状態に戻し、カプトンX線ウインドウを備えた気密試料ホルダー内に取り付けた。次に、試料をグローブボックスから取り除き、回折計内に置いた。粉末X線回折パターンを、銅ターゲットエックス線管及び回折ビームモノクロメーターを備えたシーメンスD5000回折計を用いて集めた。データを散乱角10度〜80度の間で集めた。
【0057】
特定のスパッタリングされた電極膜の作製及び特性評価について記載する。
【0058】
例1
55.2重量%のスズ及び44.8重量%の銅を含有する膜を、表Iに示した条件下でスパッタリング堆積することによって作製した。前記のスズを555オングストローム/分の速度でスパッタ堆積し、他方、前記の銅を367オングストローム/分の速度でスパッタ堆積した。前記膜は、これらのスパッタ速度に基づいて計算すると、60容量%のスズ及び40容量%の銅を含有した。膜厚さは、7.1マイクロメータであり、膜密度は約7.8g/cm3であった。膜は、厚さ約600オングストロームの高純度の銅の予備層及び厚さ約2500オングストロームの高純度のスズの二次層を有した。
【0059】
前記の電極膜のサイクル挙動を、リチウム箔アノード及びカソードとしてのスパッタリングされた膜を特徴とするコイン電池を用いて上に記載したように試験した。電池が少なくとも400mAh/gにリチウム化されるように5mVの電流を漸減するサイクル条件を設定することによって、前記の膜の第1の放電またはリチウム化を制御した。次に、電池を0.5mA/cm2の電流及び5mV及び1.4Vのカットオフ電圧を用いる充電及び放電サイクル条件下に置いた。前記の電池の比容量及びクーロン効率を図5に示す。結果は、電気化学的に活性の金属元素としてのスズ及び電気化学的に不活性の金属元素としての銅を用いる電極組成物は少なくとも100サイクルの間、125mAh/gの安定した可逆容量をもたらし、それは、高純度のスズより長いサイクル寿命であるが、クーロン効率は数サイクルの後に99.0%より小さかったことを示す。
【0060】
例2
54重量%のスズ及び46重量%のモリブデンを含有する膜を、表Iに示した条件下でスパッタ堆積することによって作製した。前記のスズを550オングストローム/分の速度でスパッタ堆積し、他方、前記のモリブデンを340オングストローム/分の速度でスパッタ堆積した。前記の膜は、これらのスパッタ速度に基づいて計算すると、62容量%のスズ及び38容量%のモリブデンを含有した。膜厚さは、5.3マイクロメータであり、膜密度は約7.3g/cm3であった。膜は、厚さ約700オングストロームの高純度のモリブデンの予備層及び厚さ約2500オングストロームの高純度のスズの二次層を有した。
【0061】
サイクルにかける前の前記の膜のTEM分析は、前記の膜のミクロ構造体が組成変調したマトリックス相中に結晶スズ粒子を含有することを明らかにした。電子回折パターン(図10)は二相ミクロ構造体の存在を示した。すなわち、結晶スズ(正方晶系スズを示すリングパターン中の鮮明な点によって明らかにされる)と、規則結晶材料が存在しないことを示す広い拡散したリングパターンを特徴とするマトリックス相との二相である。高解像度電子顕微鏡検査は、マトリックス相が10オングストロームスケールで不規則であったことを実証した。
【0062】
半径方向に切断された試料のTEM分析は、測定された平均のスズ粒度が5±1.3nm×19±5.9nmであることを示した。粒度の測定された範囲は、3×17nm(最小)〜7×31nm(最大)であった。スズ粒子のアスペクト比は、約2:1〜6:1の範囲であり、長い次元が膜の平面に平行していた。
【0063】
垂直に切断された試料のTEM分析は、測定された平均のスズ粒度が7±2.0nm×33±12.7nmであることを示した。粒度の測定された範囲は4×12nm(最小)〜8×67nm(最大)であった。スズ粒子のアスペクト比は、約1.2:1〜7:1の範囲であり、長い次元が膜の平面に平行していた。
【0064】
マトリックス相のTEM分析は、この相が、TEM画像中の移動「ストライプ」によって明らかにされるように、膜の平面に垂直に組成変調されることを示した。前記の画像の焦点を合わせないことによって、高スズ及び高モリブデン領域(バルク組成に対して)の間のコントラスト差を強化することができた。
【0065】
マトリックス相のX線微量分析は、組成変調構造体の存在を確認した。X線データは、膜の平面に垂直な方向のスズ粒子に隣接したステップに沿って移動される16オングストロームのTEMプローブの大きさを用いて得られた。2つのセットのデータを集めた。第1のセットは、長い走査を用いて膜の上端の近くに位置している相対的に小さいスズ粒子を中心とした。第2のセットは、短い走査を用いて膜の中央に位置している相対的に大きいスズ粒子を中心とした。組成の結果を、規格のない定量分析の機械的作業を用いて求め、表II(小さいスズ粒子)及びIII(大きいスズ粒子)に示す。表II及びIIIに示すように、大きい粒子を囲むマトリックス及び小さい粒子の両方が、組成変調を示した。比較のために、100nmのプローブを用いて確認された平均バルク組成は、45.6重量%のスズ及び54.4重量%のモリブデンであった。
【0066】
【表2】
【0067】
【表3】
【0068】
前記の電極膜のサイクル挙動を、リチウム箔アノード及びカソードとしてのスパッタリングされた膜を特徴とするコイン電池を用いて上に記載したように試験した。電池が少なくとも400mAh/gにリチウム化されるように5mVの電流を漸減するサイクル条件に設定することによって、前記の膜の第1の放電またはリチウム化を制御した。次に、電池を0.5mA/cm2の電流及び5mV及び1.4Vのカットオフ電圧を用いる充電及び放電サイクル条件下に置いた。前記の電池の比容量及びクーロン効率を図1に示す。結果は、スパッタリングされたスズ−モリブデン膜が、クーロン効率が99.0%より下がる前に少なくとも50サイクルの間、約300mAh/gの可逆容量を示すことを表す。
【0069】
前記の膜の第2の試料を、1、2、10、及び30サイクルの間、上に記載した条件下でサイクルにかけた。それぞれのサイクル時間後に、電極膜の試料を上に記載したように取り除き、TEM分析にかけた。TEMの結果は、単一の結晶域が暗視野技術を用いて2、10、及び30サイクル後に材料で分解され得ることを表した。これらの試料の微結晶の大きさは直径150オングストロームより小さく、微結晶の大部分が100オングストロームより小さい直径を有する。更に、1、2、及び10サイクルにかけられた材料は、20オングストロームの固有波長で単一の特定方向に沿って透過された強度で高周波の空間変化を示した。これは、化学組成の高周波空間変調を示し、前記の構造体は銅支持体に垂直な単一の波数ベクトルを特徴とする。これは、約20オングストロームの周期性を有する高モリブデン及び高スズ分のスラブの交互層によって堆積されたマクロ組織と一致している。
【0070】
サイクル後のTEMの結果はまた、結晶の成長プロセスが少なくとも第30回目のサイクルまで抑制されることを表した。更に、最初のモリブデン/スズ構造体の空間変調化学組成と一致した画像が、第10回目のサイクルまで観察された。
【0071】
アノードとしてのスパッタリングされた膜及びカソードとしてのLiCoO2含有組成物を用いて、全電池を、上に記載したように作った。カソードのLiCoO2部分の重量及び全スズ−モリブデンアノードの重量に基づいて計算された質量バランスは、3.3:1であった。次に、電池は、0.5mA/cmの一定充電及び放電電流において2.2〜4.2Vにサイクルにかけられた。放電電流を、充電電流の開始前に50マイクロアンペア/cm2まで低下させた。
【0072】
電池の比容量及びクーロン効率を図7に示す。サイクル15あたりのプロットの下落は、0.25mA/cm2〜0.50mA/cm2の電流の変化を表す。第1の充電容量は、LiCoO2について145mAh/g及びアノード中のスズ−モリブデン材料について450mAh/gであった。第1回目のサイクルの不可逆容量は30%であった。スズ−モリブデンの比容量は、リチウム箔をアノードとして用いる上に記載されたコイン電池において得られた比容量に類似している。LiCoO2の比容量は100mAh/gに維持され、それはこの材料について適当な容量である。
【0073】
前記の結果は、前記のスズ−モリブデン組成物が、リチウムイオン電池で一般に用いられるカソード材料(LiCoO2)と組合せてアノードとして電気化学電池において用いられてもよいことを表す。前記の電池のクーロン効率は、少なくとも70サイクルの間、99.0%より高いままである。
【0074】
次に、上に記載した膜と同一のスズ−モリブデン膜を測定したが、ただし、それはスズの二次層を含有しなかった。次いで、前記の膜を、リチウム箔アノードを含有するコイン電池に組み入れ、上に記載したように、電気化学サイクルにかけた。X線回折データを、0、1、4、及び10回の全サイクル後に膜について集められた。結果を図8(a)〜(d)に示す。
【0075】
図8(a)は、前記の膜が堆積されたときのそのX線回折パターンを示す。31度付近のピークはスズの小さいグレーンによるものであり、39度付近の広いピークは、スズ−モリブデンマトリックス相によるものである。40.6度の垂直線は、高純度の結晶モリブデンについて予想される位置を表わす。
【0076】
図8(b)は、1回の全充電−放電サイクルの完了後の充電された状態の膜のX線回折パターンを示す。マトリックス相によるピークは、位置及び幅がサイクルにかけられていない膜のピークに類似している。滑らかな実線は、粒径が5nmである、Z.Naturforsch28B、246〜248ページ(1973年)に開示された結晶構造体を用いて計算された、LiSnについて計算されたパターンである。
【0077】
図8(c)は、4回の全充電−放電サイクルの完了後の充電された状態の膜のX線回折パターンを示す。スズについて及びマトリックス相についてのピークを再び観察し、前記の膜のミクロ構造体がサイクルの間に実質的に維持されることを明らかにした。
【0078】
図8(d)は、10回の全充電−放電サイクルの完了後の充電された状態の膜のX線回折パターンを示す。モリブデン予備層及び銅支持体によるX線のピーク(50度の末端を有するピーク)によって示されるように、前記の電極は銅支持体から割れ始めた。にもかかわらず、その結果を図8(c)のデータと比較し、2つの図の間の強度のスケールの変化に注目すると、前記のスズのピークは、4サイクル後に前記の膜と実質的に同じ強度及び半値幅を有することが理解できる。同じことがマトリックス相によるピークについて言えるが、前記の結果は、モリブデン予備層によるピークの存在によって不明瞭にされる。
【0079】
例3
54.5重量%のスズ及び45.5重量%のモリブデンを含有する膜を、表Iに示した条件下でスパッタ堆積することによって作製した。前記のスズを110オングストローム/分の速度でスパッタ堆積し、他方、前記のモリブデンを60オングストローム/分の速度でスパッタ堆積した。前記の膜は、これらのスパッタ速度に基づいて計算すると、62.6容量%のスズ及び37.4容量%のモリブデンを含有した。膜厚さは、4.1マイクロメータであり、膜密度は約9.2g/cm3であった。膜は、厚さ約200オングストロームの高純度のモリブデンの予備層及び厚さ約500オングストロームの高純度のスズの二次層を有した。
【0080】
サイクルにかける前の膜のTEM分析は、何れの結晶域の存在をも検出しなかった。電子線回折パターンは、広い拡散した環だけを示した。何れかの形の結晶性が存在した場合、それは10オングストロームより小さいスケールであった。更に、X線微量分析は、組成変調を1.6nmのスケール(プローブの大きさ)で測定できなかったことを示した。1回の全サイクル後に、LiSnの結晶域が見えた。
【0081】
前記の電極膜のサイクル挙動を、リチウム箔アノード及びカソードとしてのスパッタリングされた膜を特徴とするコイン電池を用いて上に記載したように試験した。電池が少なくとも400mAh/gにリチウム化されるように5mVの電流を漸減するサイクル条件に設定することによって、前記の膜の第1の放電またはリチウム化を制御した。次に、電池を0.5mA/cm2の電流及び5mV及び1.4Vのカットオフ電圧を用いる充電及び放電サイクル条件下に置いた。前記の電池の比容量及びクーロン効率を図2に示す。結果は、例2と比較してより低いスズ及びモリブデンの率でスパッタリングした、スパッタリングされたスズ−モリブデン膜が、少なくとも50サイクルの間、約300mAh/gの可逆容量を示し、約99.0%のクーロン効率を示したことを表す。
【0082】
例4
45重量%のスズ及び55重量%のモリブデンを含有する膜を、表Iに示した条件下でスパッタ堆積することによって作製した。前記のスズを555オングストローム/分の速度でスパッタ堆積し、他方、前記のモリブデンを487オングストローム/分の速度でスパッタ堆積した。前記の膜は、これらのスパッタ速度に基づいて計算すると、53.3容量%のスズ及び46.7容量%のモリブデンを含有した。膜厚さは、5.6マイクロメータであり、膜密度は約9.2g/cm3であった。膜は、厚さ約1000オングストロームの高純度のモリブデンの予備層及び厚さ約2500オングストロームの高純度のスズの二次層を有した。
【0083】
前記の電極膜のサイクル挙動を、リチウム箔アノード及びカソードとしてのスパッタリングされた膜を特徴とするコイン電池を用いて上に記載したように試験した。電池が少なくとも400mAh/gにリチウム化されるように5mVの電流を漸減するサイクル条件に設定することによって、前記の膜の第1の放電またはリチウム化を制御した。次に、電池を0.5mA/cm2の電流及び5mV及び1.4Vのカットオフ電圧を用いる充電及び放電サイクル条件下に置いた。前記の電池の比容量及びクーロン効率を図3に示す。結果は、モリブデンの重量%が例2の膜より高い、スパッタリングされたスズ−モリブデン膜が、少なくとも400サイクルの間、約200mAh/gの可逆容量及び約99.0%のクーロン効率を示したことを表す。これらの結果と例2の結果との比較は、モリブデンの重量%が増大するとき、比容量が減少するが、サイクル寿命(99.0%のクーロン効率のサイクル数によって規定される)は増大することを示す。
【0084】
例5
65.5重量%のスズ及び34.5重量%のニオブを含有する膜を、表Iに示した条件下でスパッタ堆積することによって作製した。前記のスズを555オングストローム/分の速度でスパッタ堆積し、他方、前記のニオブを250オングストローム/分の速度でスパッタ堆積した。前記の膜は、これらのスパッタ速度に基づいて計算すると、69容量%のスズ及び31容量%のニオブを含有した。膜厚さは、4.8マイクロメータであり、膜密度は約8.6g/cm3であった。膜は、厚さ約500オングストロームの高純度のニオブの予備層及び厚さ約2500オングストロームの高純度のスズの二次層を有した。
【0085】
サイクルにかける前の前記の膜のTEM分析は、前記の膜のミクロ構造体が組成変調したマトリックス相(しまの領域としてTEM顕微鏡写真に存在している)中に結晶粒子(暗い葉巻き形をした領域としてTEM顕微鏡写真中に存在している)を含有することを明らかにした。X線微量分析は、結晶粒子はバルク組成に対してスズリッチであることを明らかにした。しまの領域の間に点在させられたバルク「白色」領域は、X線微量分析によってバルク組成に対して高ニオブであることが明らかにされた。
【0086】
電子回折パターンはまた、二相ミクロ構造体の存在を示した。結晶スズと、結晶材料が存在しないことを示す広い拡散したリングパターンを特徴とするマトリックス相の二相。高解像度電子顕微鏡検査は、マトリックス相が10オングストロームスケールで不規則であったことを実証した。
【0087】
半径方向に切断された試料のTEM分析は、測定された平均の結晶粒度が5±1.8nm×33±8.0nmであることを示した。粒度の測定された範囲は、3×20nm(最小)〜6×42nm(最大)であった。スズ粒子のアスペクト比は、約3:1〜10:1の範囲であり、長い次元が膜の平面に平行していた。
【0088】
垂直に切断された試料のTEM分析は、測定された平均の結晶粒度が8±1.8nm×44±12.4nmであることを示した。粒度の測定された範囲は6×26nm(最小)〜5×80nm(最大)であった。スズ粒子のアスペクト比は、約1.1:1〜15:1の範囲であった。
【0089】
マトリックス相のTEM分析は、この相が、TEM画像中の移動「ストライプ」によって明らかにされるように、膜の平面に垂直に組成変調されることを示した。マトリックス相のX線微量分析は、組成変調構造体の存在を確認した。X線データは、膜の平面に垂直な方向の結晶粒子に隣接したステップに沿って移動される1.6nmのTEMプローブの大きさを用いて得られた。前記の組成の結果を、規格のない定量分析の機械的作業を用いて求め、表IVに示す。表IVに示すように、前記のマトリックスは組成変調を示した。比較のために、100nmのプローブを用いて求めた平均のバルク組成は、58.9重量%のスズ及び41.1重量%のニオブであった。
【0090】
【表4】
【0091】
前記の電極膜のサイクル挙動を、リチウム箔アノード及びカソードとしてのスパッタリングされた膜を特徴とするコイン電池を用いて上に記載したように試験した。電池が少なくとも400mAh/gにリチウム化されるように5mVの電流を漸減するサイクル条件に設定することによって、前記の膜の第1の放電またはリチウム化を制御した。次に、電池を0.5mA/cm2の電流及び5mV及び1.4Vのカットオフ電圧を用いる充電及び放電サイクル条件下に置いた。前記の電池の比容量及びクーロン効率を図4に示す。前記の結果は、ニオブを電気化学的に不活性の金属元素として用いる膜が少なくとも70サイクルの間、225mAh/gの可逆容量及び99.0%のより大きいクーロン効率を示すことを表す。
【0092】
例6
43.7重量%のスズ及び56.3重量%のタングステンを含有する膜を、表Iに示した条件下でスパッタリング堆積することによって作製した。前記のスズを560オングストローム/分の速度でスパッタ堆積し、他方、前記のタングステンを275オングストローム/分の速度でスパッタ堆積した。前記の膜は、これらのスパッタ速度に基づいて計算すると、67.3容量%のスズ及び32.7容量%のタングステンを含有した。膜厚さは、8.8マイクロメータであり、膜密度は約6g/cm3であった。膜は、厚さ約680オングストロームの高純度のタングステンの予備層及び厚さ約2800オングストロームの高純度のスズの二次層を有した。
【0093】
前記の電極膜のサイクル挙動を、リチウム箔アノード及びカソードとしてのスパッタリングされた膜を特徴とするコイン電池を用いて上に記載したように試験した。電池が少なくとも400mAh/gにリチウム化されるように5mVの電流を漸減するサイクル条件に設定することによって、前記の膜の第1の放電またはリチウム化を制御した。次に、電池を0.25mA/cm2の電流及び5mV及び1.4Vのカットオフ電圧を用いる充電及び放電サイクル条件下に置いた。前記の電池の比容量及びクーロン効率を図6に示す。結果は、電気化学的に不活性の金属元素がタングステンであるスパッタリングされた膜は、少なくとも40サイクルの間、200mAh/gの可逆容量及び99.0%のクーロン効率を示すことを表す。
【0094】
例7
62重量%のスズ及び38重量%のモリブデンを含有する膜を、表Iに示した条件下でスパッタ堆積することによって作製した。前記のスズを780オングストローム/分の速度でスパッタ堆積し、他方、前記のモリブデンを340オングストローム/分の速度でスパッタ堆積した。前記の膜は、これらのスパッタ速度に基づいて計算すると、69容量%のスズ及び31容量%のモリブデンを含有した。膜厚さは、5.1マイクロメータであり、膜密度は約9.9g/cm3であった。膜は、厚さ約700オングストロームの高純度のモリブデンの予備層を有した。それは、二次層を有しなかった。
【0095】
B.ボールミル粉砕によって作製された電極組成物
電極組成物をボールミル粉砕によって作製し、いくつかの場合には、以下の一般的な方法に従って特性を決定した。
【0096】
ボールミル粉砕の方法
Spex8000高衝撃ミキサミルを用いて、最高40時間までの時間、密封された焼入れ鋼バイアルを激しく振とうした。アルゴンを充填したグローブボックス中で、元素の粉末または金属間化合物の所望の量を、直径12.7mmのいろいろな焼入れ鋼ボールと共に、焼入れ鋼バイアルに加えた。次に、前記のバイアルを密封し、Spex8000高衝撃ミキサミルに移し、そこでそれを激しく振とうした。ミル粉砕時間は概して、約20時間のオーダーであった。
【0097】
サイクル挙動
電極を作成するために、前記の粉末のスラリーを銅箔上に塗布し、次いでキャリヤ溶剤を蒸発させた。特に、約86重量%の粉末(ボールミル粉砕によって作製された)、8重量%のスーパーSカーボン・ブラック(ベルギーのMMMカーボン製)、及び6重量%のポリビニリデンフルオリド(アトケム製)を、密封した瓶内で撹拌してスラリーを作製することによってN−メチルピロリジノンと十分に混合した。前記のポリビニリデンフルオリドを、前記の粉末及びカーボン・ブラックを添加する前にN−メチルピロリジノン中に前もって溶解した。前記のスラリーを、ドクター−ブレードスプレッダーで銅箔上に薄い層(厚さ約150マイクロメータ)で塗布した。次に、前記の試料を、105℃に維持されたマッフル炉内に置き、3時間にわたってN−メチルピロリジノン溶剤を蒸発させた。
【0098】
直径1cmの円形電極を、電極パンチを用いて乾燥した膜から切り分けた。前記の電極を秤量し、その後に銅の重量を引き、電極の活性質量を計算した(すなわち、電極の総重量に活性電極粉末から作製された電極の率を乗じた値)。
【0099】
前記の電極を用いて、試験用のコイン電池を作製した。厚さ125マイクロメータのリチウム箔がアノード及び参照電極の働きをした。前記の電池は、スペーサープレート(304ステンレス鋼)及び円板ばね(軟鋼)を備えた2325ハードウエアを特徴とした。前記の円板ばねは、電池がクリンプされて閉じられたときに約15バールの圧力が電池の電極のそれぞれに適用されるように選択された。前記のセパレータは、エチレンカーボネート及びジエチルカーボネートの30:70容量混合物中に溶解したLiPF6の1M溶液(三菱化学)で湿潤されたCelgard#2502の微孔性ポリプロピレンフィルム(ホークスト・セラニーズ)であった。サイクル条件を一般に、活性材料の37mA/gの一定電流に設定した。0.0V及び1.3Vのカットオフ電圧を用いた。
【0100】
X線回折
粉末X線回折パターンを、銅ターゲットエックス線管及び回折ビームモノクロメーターを備えたシーメンスD5000回折計を用いて集めた。データを散乱角10度〜80度の間で集めた。
【0101】
サイクルの間に電極材料を検査するために、in situX線回折実験を行った。前記のサイクル実験の場合、上に記載したようにin situX線回折のための電池を集成したが、以下の点が異なっている。前記のコイン電池の缶は、直径18mmの大きさの孔を提供された。直径21mmのベリリウムのウインドウ(厚さ=250マイクロメータ)を、感圧接着剤(ニューヨーク州、ポートチェスターのロスコ製のロスコボンド)を用いて孔の内側に付けた。電極材料をウインドウに直接に塗布してから、それを缶に付着させた。
【0102】
前記の電池をシーメンスD5000回折計内に取り付け、X線回折走査を連続的に行う間に、ゆっくりと放電及び充電した。一般に、完全な走査は2〜5時間かかり、放電及び充電時間は40〜60時間かかり、充電のその状態の関数として電極の結晶構造の約10〜30の「スナップ写真」を提供した。電池の電圧をサイクルの間に連続的に記録した。
【0103】
以下のように特定の試料を作製し、試験した。
【0104】
例8
金属間化合物、Sn2Fe、を作製するために、不活性ガス下で高周波誘導電気炉内で(ウィスコンシン州、ミルウォーキーのアルドリッチカンパニーから粉末の形で得られた)スズ及び鉄の化学量論比を互いに溶融した。均一な溶融体が得られた後、試料を炉から取り除き、管状炉に移し、500(Cで約60時間、アルゴン流下でアニールした。次に、試料をハンマーでチャンクに破断し、その後に、2gの試料を2つの直径12.7mmの焼入れ鋼ボールと共に焼入れ鋼バイアル中に置き、前記のバイアルを密封した。装入及び密封はアルゴンが充填されたグローブボックス内で行われた。次に、試料を上に記載した一般的な方法に従って20時間、ミル粉砕した。前記の試料は、66.6原子%のスズ及び33.3原子%の鉄を含有した。
【0105】
ミル粉砕の後に、電気化学電池を上に記載したように作製し、そのサイクル挙動を試験した。不可逆容量(mAh/gで最高1.3V)、可逆容量(mAh/g)、及び前記の容量がC/10の初期の可逆容量の50%に下がるまでのサイクル寿命を表Vに記録する。3つの試料を試験した。
【0106】
例9
ボールミル粉砕された粉末を例8の方法に従って作製したが、ただし、鋼バイアル内に置く前に、前記の試料を乳鉢及び乳棒を用いて微粉砕して50ミクロンサイズの粒子を形成した。ミル粉砕の後に、電気化学電池を上に記載したように作製し、そのサイクル挙動を試験した。不可逆容量(mAh/gで最高1.3V)及び可逆容量(mAh/g)を表Vに記録する。サイクル寿命は試験されなかった(「NT」)。
【0107】
例10
ボールミル粉砕された粉末を例8の方法に従って作製したが、ただし、前記の粉末を作製するために、0.402gの鉄、1.715gのスズ、及び0.026gの黒鉛粉末(2650(Cに加熱された、大阪ガス製のメソカーボンマイクロビーズ)を直接に前記のミル粉砕バイアルに添加した。前記の試料は、60.6原子%のスズ、30.3原子%の鉄、及び9.1原子%の炭素を含有した。X線回折データは、試料がSn2Fe相及び炭素相の混合物を含有することを示した。
【0108】
ミル粉砕の後に、電気化学電池を上に記載したように作製し、そのサイクル挙動を試験した。不可逆容量(mAh/gで最高1.3V)、可逆容量(mAh/g)、及び前記の容量がC/10の初期の可逆容量の50%に下がるまでのサイクル寿命を表Vに記録する。
【0109】
サイクルの間のSn2Feとリチウムとの反応を調べるために、2つのin situX線回折電池を作製した。第1の電池はスズ金属粉末から作製された活性電極を有し、他方、第2の電池は上に記載された電極粉末から作製された活性電極を有した。電池が約40時間にわたってゼロボルトに放電された後、両方の電極のX線回折パターンを観察した。結果を図9に示す。23(付近の広い回折ピーク及び38.5(付近のより鋭いピークが、リチウムと反応した活性電極から生ずる。他のピークは、電池のベリリウムのウインドウによるものであり、及び、少量の不活性電極材料に由来する。パターンの間の類似性は、Li/Sn及びLi/Sn2Feの放電生成物が似ていることを示す。これは、ナノメートルのスケールの微結晶サイズを有するLi−Sn合金及び、微結晶のサイズが同じくナノメートルのスケールである鉄リッチ結晶相の存在を示す。
【0110】
例11
ボールミル粉砕された粉末を例8の方法に従って作製したが、ただし、前記の粉末を作製するために、0.404gの鉄、1.711gのスズ、及び0.066gの黒鉛粉末(2650(Cに加熱された、大阪ガス製のメソカーボンマイクロビーズ)を直接に前記のミル粉砕バイアルに添加した。前記の試料は、54.1原子%のスズ、27.0原子%の鉄、及び18.9原子%の炭素を含有した。X線回折データは、試料がSn2Fe相及び炭素相の混合物を含有することを示した。
【0111】
ミル粉砕の後に、電気化学電池を上に記載したように作製し、そのサイクル挙動を試験した。不可逆容量(mAh/gで最高1.3V)、可逆容量(mAh/g)、及び前記の容量がC/10の初期の可逆容量の50%に下がるまでのサイクル寿命を表Vに記録する。第2の試料のサイクル寿命は試験されなかった(「NT」)。
【0112】
例12
ボールミル粉砕された粉末を例8の方法に従って作製したが、ただし、前記の粉末を作製するために、0.406gの鉄、1.725gのスズ、及び0.104gの黒鉛粉末(2650(Cに加熱された、大阪ガス製のメソカーボンマイクロビーズ)を直接に前記のミル粉砕バイアルに添加した。前記の試料は、47.6原子%のスズ、23.8原子%の鉄、及び28.6原子%の炭素を含有した。X線回折データは、試料がSn2Fe相及び炭素相の混合物を含有することを示した。
【0113】
ミル粉砕の後に、電気化学電池を上に記載したように作製し、そのサイクル挙動を試験した。不可逆容量(mAh/gで最高1.3V)、可逆容量(mAh/g)、及び前記の容量がC/10の初期の可逆容量の50%に下がるまでのサイクル寿命を表Vに記録する。第1の試料のサイクル寿命は試験されなかった(「NT」)。
【0114】
例13
ボールミル粉砕された粉末を例8の方法に従って作製したが、ただし、鉄及びスズの相対量が、50.0原子%のスズ及び50.0原子%の鉄を有する試料をもたらすように選択された。更に、鉄及びスズは、互いに溶融されるのではなく、直接に前記のミル粉砕バイアルに添加された。ミル粉砕の後に、電気化学電池を上に記載したように作製し、そのサイクル挙動を試験した。不可逆容量(mAh/gで最高1.3V)、可逆容量(mAh/g)、及び前記の容量がC/10の初期の可逆容量の50%に下がるまでのサイクル寿命を表Vに記録する。
【0115】
例14
ボールミル粉砕された粉末を例8の方法に従って作製したが、ただし、鉄及びスズの相対量が、40.0原子%のスズ及び60.0原子%の鉄を有する試料をもたらすように選択された。更に、前記の試料を38時間、ミル粉砕した。ミル粉砕の後に、電気化学電池を上に記載したように作製し、そのサイクル挙動を試験した。不可逆容量(mAh/gで最高1.3V)、可逆容量(mAh/g)、及び前記の容量がC/10の初期の可逆容量の50%に下がるまでのサイクル寿命を表Vに記録する。2つの試料を試験した。
【0116】
例15
ボールミル粉砕された粉末を例8の方法に従って作製したが、ただし、鉄及びスズの相対量が、37.5原子%のスズ及び62.5原子%の鉄を有する試料をもたらすように選択された。更に、前記の試料を19時間、ミル粉砕した。ミル粉砕の後に、電気化学電池を上に記載したように作製し、そのサイクル挙動を試験した。不可逆容量(mAh/gで最高1.3V)、可逆容量(mAh/g)、及び前記の容量がC/10の初期の可逆容量の50%に下がるまでのサイクル寿命を表Vに記録する。2つの試料を試験した。
【0117】
例16
ボールミル粉砕された粉末を例8の方法に従って作製したが、ただし、前記の粉末を作製するために、0.866gの鉄、1.277gのスズ、及び0.049gの黒鉛粉末(2650(Cに加熱された、大阪ガス製のメソカーボンマイクロビーズ)を直接に前記のミル粉砕バイアルに添加した。前記の試料は、35.4原子%のスズ、51.2原子%の鉄、及び13.4原子%の炭素を含有した。X線回折データは、試料がSn2Fe相及びSnFe3C相の混合物であることを示した。
【0118】
ミル粉砕の後に、電気化学電池を上に記載したように作製し、そのサイクル挙動を試験した。不可逆容量(mAh/gで最高1.3V)、可逆容量(mAh/g)、及び前記の容量がC/10の初期の可逆容量の50%に下がるまでのサイクル寿命を表Vに記録する。2つの試料を試験した。
【0119】
例17
ボールミル粉砕された粉末を例8の方法に従って作製したが、ただし、前記の粉末を作製するために、0.866gの鉄、1.277gのスズ、及び0.136gの黒鉛粉末(2650(Cに加熱された、大阪ガス製のメソカーボンマイクロビーズ)を直接に前記のミル粉砕バイアルに添加した。前記の試料は、28.7原子%のスズ、41.6原子%の鉄、及び29.7原子%の炭素を含有した。X線回折データは、試料がSn2Fe相及びSnFe3C相の混合物であることを示した。
【0120】
ミル粉砕の後に、電気化学電池を上に記載したように作製し、そのサイクル挙動を試験した。不可逆容量(mAh/gで最高1.3V)、可逆容量(mAh/g)、及び前記の容量がC/10の初期の可逆容量の50%に下がるまでのサイクル寿命を表Vに記録する。第1の試料のサイクル寿命は試験されなかった(「NT」)。
【0121】
例18
ボールミル粉砕された粉末を例8の方法に従って作製したが、ただし、前記の粉末を作製するために、1.017gの鉄、1.083gのスズ、及び0.066gの黒鉛粉末(2650(Cに加熱された、大阪ガス製のメソカーボンマイクロビーズ)を直接に前記のミル粉砕バイアルに添加した。前記の試料は、27.8原子%のスズ、55.6原子%の鉄、及び16.7原子%の炭素を含有した。X線回折データは、試料がSn2Fe相及びSnFe3C相の混合物であることを示した。
【0122】
ミル粉砕の後に、電気化学電池を上に記載したように作製し、そのサイクル挙動を試験した。不可逆容量(mAh/gで最高1.3V)、可逆容量(mAh/g)、及び前記の容量がC/10の初期の可逆容量の50%に下がるまでのサイクル寿命を表Vに記録する。
【0123】
例19
ボールミル粉砕された粉末を例8の方法に従って作製したが、ただし、前記の粉末を作製するために、1.044gの鉄、1.070gのスズ、及び0.164gの黒鉛粉末(2650(Cに加熱された、大阪ガス製のメソカーボンマイクロビーズ)を直接に前記のミル粉砕バイアルに添加した。前記の試料は、22.1原子%のスズ、44.2原子%の鉄、及び33.6原子%の炭素を含有した。X線回折データは、試料がSn2Fe相及びSnFe3C相の混合物であることを示した。
【0124】
ミル粉砕の後に、電気化学電池を上に記載したように作製し、そのサイクル挙動を試験した。不可逆容量(mAh/gで最高1.3V)、可逆容量(mAh/g)、及び前記の容量がC/10の初期の可逆容量の50%に下がるまでのサイクル寿命を表Vに記録する。2つの試料を試験した。
【0125】
例20
ボールミル粉砕された粉末を例8の方法に従って作製したが、ただし、前記の粉末を作製するために、1.160gの鉄、1.823gのスズ、及び0.084gの黒鉛粉末(2650(Cに加熱された、大阪ガス製のメソカーボンマイクロビーズ)を直接に前記のミル粉砕バイアルに添加した。前記の試料は、20.0原子%のスズ、60.0原子%の鉄、及び20.0原子%の炭素を含有した。X線回折データは、試料がSn2Fe相及びSnFe3C相の混合物であることを示した。
【0126】
ミル粉砕の後に、電気化学電池を上に記載したように作製し、そのサイクル挙動を試験した。不可逆容量(mAh/gで最高1.3V)、可逆容量(mAh/g)、及び前記の容量がC/10の初期の可逆容量の50%に下がるまでのサイクル寿命を表Vに記録する。
【0127】
【表5】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)サイクルにかける前に金属間化合物または元素の金属の形状である電気化学的に活性の金属元素及び(b)電気化学的に不活性の金属元素を含む電極組成物であって、リチウム電池中に組入れられて全充電−放電の1サイクルをかけられたときに、約500オングストローム以下である少なくとも1つの寸法を有しかつ少なくとも合計10サイクルの後に実質的に増大しない結晶域を含む電極組成物。
【請求項2】
前記寸法が、少なくとも合計100サイクルの後に実質的に増大しない請求項1に記載の電極組成物。
【請求項3】
サイクルにかける前に前記結晶域を含む請求項1に記載の電極組成物。
【請求項4】
前記電気化学的活性金属元素がスズである請求項1に記載の電極組成物。
【請求項5】
前記電気化学的不活性金属元素が、モリブデン、ニオブ、タングステン、タンタル、鉄、銅及びそれらの組合せからなる群から選択される請求項1に記載の電極組成物。
【請求項6】
前記結晶域の少なくとも1つが、前記電気化学的活性金属元素を含む請求項1に記載の電極組成物。
【請求項7】
前記結晶域の少なくとも1つが、前記電気化学的不活性金属元素を含む請求項1に記載の電極組成物。
【請求項8】
前記結晶域の少なくとも1つが前記電気化学的活性金属元素を含み、前記結晶域の少なくとも別の1つが前記電気化学的不活性金属元素を含む請求項1に記載の電極組成物。
【請求項9】
前記結晶域が、前記電気化学的活性金属元素及び前記電気化学的不活性金属元素を含む領域によって隔てられており、前記電気化学的活性金属元素と前記電気化学的不活性金属元素の相対的な比率が前記電極組成物の厚さ方向にわたって変化する請求項1に記載の電極組成物。
【請求項10】
サイクルにかける前に、前記結晶域が、前記電気化学的活性金属元素及び前記電気化学的不活性金属元素を含む領域によって隔てられており、前記電気化学的活性金属元素と前記電気化学的不活性金属元素の相対的な比率が前記電極組成物の厚さ方向にわたって変化する請求項3に記載の電極組成物。
【請求項11】
リチウム電池中に組入れられてサイクルにかけられて約100mAh/gを達成するとき、100回の全放電サイクルの後に少なくとも約99.0%のクーロン効率を示す請求項1に記載の電極組成物。
【請求項12】
リチウム電池中に組入れられてサイクルにかけられて約100mAh/gを達成するとき、100回の全放電サイクルの後に少なくとも約99.8%のクーロン効率を示す請求項1に記載の電極組成物。
【請求項13】
薄膜の形状である請求項1に記載の電極組成物。
【請求項14】
粉末の形状である請求項1に記載の電極組成物。
【請求項15】
(a)サイクルにかける前に金属間化合物または元素の金属の形状である電気化学的に活性の金属元素及び(b)電気化学的に不活性の金属元素を含む電極組成物であって、
(a)リチウム電池中に組入れられて全充電−放電の1サイクル全体にかけられるときに、結晶域を含み、
(b)リチウム電池中に組入れられてサイクルにかけられて約100mAh/gを達成するとき、100回の全放電サイクルの後に少なくとも約99.0%のクーロン効率を示す電極組成物。
【請求項16】
サイクルにかける前に前記結晶域を含む請求項15に記載の電極組成物。
【請求項17】
前記電気化学的活性金属元素がスズである請求項15に記載の電極組成物。
【請求項18】
前記電気化学的不活性金属元素が、モリブデン、ニオブ、タングステン、タンタル、鉄、銅及びそれらの組合せからなる群から選択される請求項15に記載の電極組成物。
【請求項19】
前記結晶域の少なくとも1つが、前記電気化学的活性金属元素を含む請求項15に記載の電極組成物。
【請求項20】
前記結晶域の少なくとも1つが、前記電気化学的不活性金属元素を含む請求項15に記載の電極組成物。
【請求項21】
前記結晶域の少なくとも1つが前記電気化学的活性金属元素を含み、前記結晶域の少なくとも別の1つが前記電気化学的不活性金属元素を含む請求項15に記載の電極組成物。
【請求項22】
前記結晶域が、前記電気化学的活性金属元素及び前記電気化学的不活性金属元素を含む領域によって隔てられており、前記電気化学的活性金属元素と前記電気化学的不活性金属元素の相対的な比率が前記電極組成物の厚さ方向にわたって変化する請求項15に記載の電極組成物。
【請求項23】
リチウム電池中に組入れられてサイクルにかけられて約100mAh/gを達成するとき、100回の全放電サイクルの後に少なくとも約99.8%のクーロン効率を示す請求項15に記載の電極組成物。
【請求項24】
リチウム電池中に組入れられてサイクルにかけられて約100mAh/gを達成するとき、100回の全放電サイクルの後に少なくとも約99.9%のクーロン効率を示す請求項15に記載の電極組成物。
【請求項25】
薄膜の形状である請求項15に記載の電極組成物。
【請求項26】
粉末の形状である請求項15に記載の電極組成物。
【請求項27】
リチウム電池であって、
(a)(i)サイクルにかける前に金属間化合物または元素の金属の形状である電気化学的に活性の金属元素及び(ii)電気化学的に不活性の金属元素を含む第1の電極であって、前記電池が全充電−放電の1サイクルをかけられた後、約500オングストローム以下である少なくとも1つの寸法を有しかつ少なくとも合計10サイクルの後に実質的に増大しない結晶域を含む第1の電極、
(b)対向電極、及び
(c)前記電極と前記対向電極とを隔てている電解質、を含むリチウム電池。
【請求項28】
リチウム電池であって、
(A)(i)サイクルにかける前に金属間化合物または元素の金属の形状である電気化学的に活性の金属元素及び(ii)電気化学的に不活性の金属元素を含む第1の電極であって、
(a)前記電池が全充電−放電の1サイクルをかけられた後に、結晶域を含み、
(b)前記電池がサイクルにかけられて前記組成物の約100mAh/gを達成した後に、100回の全放電サイクルの後に少なくとも約99.0%のクーロン効率を示す第1の電極、
(B)対向電極、及び
(C)前記電極と前記対向電極とを隔てている電解質、を含むリチウム電池。
【請求項29】
(a)電気化学的に活性の金属元素を含む供給源及び(b)電気化学的に不活性の金属元素を含む供給源を組み合わせて電極組成物を作成する電極組成物の調製方法であって、
(i)サイクルにかける前に前記電気化学的に活性の金属元素が金属間化合物または元素の金属の形であり、
(ii)リチウム電池中に組入れられて全充電−放電の1サイクルにかけられるときに、前記電極組成物が結晶域を含み、
(iii)リチウム電池中に組入れられてサイクルにかけられて前記組成物の約100mAh/gを達成するとき、100回の全放電サイクルの後に少なくとも約99.0%のクーロン効率を示すことを特徴とする、電極組成物の調製方法。
【請求項30】
前記電気化学的活性金属元素の前記供給源及び前記電気化学的不活性金属元素の前記供給源を支持体上に逐次的にスパッタ堆積させて薄膜状で前記電極組成物を形成することによる前記供給源の組み合わせ工程を含む、請求項29に記載の電極組成物の作製方法。
【請求項31】
ボールミル粉砕して粉末の形状で前記電極組成物を作成することによって前記供給源の組み合わせ工程を含む、請求項29に記載の電極組成物の作製方法。
【請求項1】
(a)サイクルにかける前に金属間化合物または元素の金属の形状である電気化学的に活性の金属元素及び(b)電気化学的に不活性の金属元素を含む電極組成物であって、リチウム電池中に組入れられて全充電−放電の1サイクルをかけられたときに、約500オングストローム以下である少なくとも1つの寸法を有しかつ少なくとも合計10サイクルの後に実質的に増大しない結晶域を含む電極組成物。
【請求項2】
前記寸法が、少なくとも合計100サイクルの後に実質的に増大しない請求項1に記載の電極組成物。
【請求項3】
サイクルにかける前に前記結晶域を含む請求項1に記載の電極組成物。
【請求項4】
前記電気化学的活性金属元素がスズである請求項1に記載の電極組成物。
【請求項5】
前記電気化学的不活性金属元素が、モリブデン、ニオブ、タングステン、タンタル、鉄、銅及びそれらの組合せからなる群から選択される請求項1に記載の電極組成物。
【請求項6】
前記結晶域の少なくとも1つが、前記電気化学的活性金属元素を含む請求項1に記載の電極組成物。
【請求項7】
前記結晶域の少なくとも1つが、前記電気化学的不活性金属元素を含む請求項1に記載の電極組成物。
【請求項8】
前記結晶域の少なくとも1つが前記電気化学的活性金属元素を含み、前記結晶域の少なくとも別の1つが前記電気化学的不活性金属元素を含む請求項1に記載の電極組成物。
【請求項9】
前記結晶域が、前記電気化学的活性金属元素及び前記電気化学的不活性金属元素を含む領域によって隔てられており、前記電気化学的活性金属元素と前記電気化学的不活性金属元素の相対的な比率が前記電極組成物の厚さ方向にわたって変化する請求項1に記載の電極組成物。
【請求項10】
サイクルにかける前に、前記結晶域が、前記電気化学的活性金属元素及び前記電気化学的不活性金属元素を含む領域によって隔てられており、前記電気化学的活性金属元素と前記電気化学的不活性金属元素の相対的な比率が前記電極組成物の厚さ方向にわたって変化する請求項3に記載の電極組成物。
【請求項11】
リチウム電池中に組入れられてサイクルにかけられて約100mAh/gを達成するとき、100回の全放電サイクルの後に少なくとも約99.0%のクーロン効率を示す請求項1に記載の電極組成物。
【請求項12】
リチウム電池中に組入れられてサイクルにかけられて約100mAh/gを達成するとき、100回の全放電サイクルの後に少なくとも約99.8%のクーロン効率を示す請求項1に記載の電極組成物。
【請求項13】
薄膜の形状である請求項1に記載の電極組成物。
【請求項14】
粉末の形状である請求項1に記載の電極組成物。
【請求項15】
(a)サイクルにかける前に金属間化合物または元素の金属の形状である電気化学的に活性の金属元素及び(b)電気化学的に不活性の金属元素を含む電極組成物であって、
(a)リチウム電池中に組入れられて全充電−放電の1サイクル全体にかけられるときに、結晶域を含み、
(b)リチウム電池中に組入れられてサイクルにかけられて約100mAh/gを達成するとき、100回の全放電サイクルの後に少なくとも約99.0%のクーロン効率を示す電極組成物。
【請求項16】
サイクルにかける前に前記結晶域を含む請求項15に記載の電極組成物。
【請求項17】
前記電気化学的活性金属元素がスズである請求項15に記載の電極組成物。
【請求項18】
前記電気化学的不活性金属元素が、モリブデン、ニオブ、タングステン、タンタル、鉄、銅及びそれらの組合せからなる群から選択される請求項15に記載の電極組成物。
【請求項19】
前記結晶域の少なくとも1つが、前記電気化学的活性金属元素を含む請求項15に記載の電極組成物。
【請求項20】
前記結晶域の少なくとも1つが、前記電気化学的不活性金属元素を含む請求項15に記載の電極組成物。
【請求項21】
前記結晶域の少なくとも1つが前記電気化学的活性金属元素を含み、前記結晶域の少なくとも別の1つが前記電気化学的不活性金属元素を含む請求項15に記載の電極組成物。
【請求項22】
前記結晶域が、前記電気化学的活性金属元素及び前記電気化学的不活性金属元素を含む領域によって隔てられており、前記電気化学的活性金属元素と前記電気化学的不活性金属元素の相対的な比率が前記電極組成物の厚さ方向にわたって変化する請求項15に記載の電極組成物。
【請求項23】
リチウム電池中に組入れられてサイクルにかけられて約100mAh/gを達成するとき、100回の全放電サイクルの後に少なくとも約99.8%のクーロン効率を示す請求項15に記載の電極組成物。
【請求項24】
リチウム電池中に組入れられてサイクルにかけられて約100mAh/gを達成するとき、100回の全放電サイクルの後に少なくとも約99.9%のクーロン効率を示す請求項15に記載の電極組成物。
【請求項25】
薄膜の形状である請求項15に記載の電極組成物。
【請求項26】
粉末の形状である請求項15に記載の電極組成物。
【請求項27】
リチウム電池であって、
(a)(i)サイクルにかける前に金属間化合物または元素の金属の形状である電気化学的に活性の金属元素及び(ii)電気化学的に不活性の金属元素を含む第1の電極であって、前記電池が全充電−放電の1サイクルをかけられた後、約500オングストローム以下である少なくとも1つの寸法を有しかつ少なくとも合計10サイクルの後に実質的に増大しない結晶域を含む第1の電極、
(b)対向電極、及び
(c)前記電極と前記対向電極とを隔てている電解質、を含むリチウム電池。
【請求項28】
リチウム電池であって、
(A)(i)サイクルにかける前に金属間化合物または元素の金属の形状である電気化学的に活性の金属元素及び(ii)電気化学的に不活性の金属元素を含む第1の電極であって、
(a)前記電池が全充電−放電の1サイクルをかけられた後に、結晶域を含み、
(b)前記電池がサイクルにかけられて前記組成物の約100mAh/gを達成した後に、100回の全放電サイクルの後に少なくとも約99.0%のクーロン効率を示す第1の電極、
(B)対向電極、及び
(C)前記電極と前記対向電極とを隔てている電解質、を含むリチウム電池。
【請求項29】
(a)電気化学的に活性の金属元素を含む供給源及び(b)電気化学的に不活性の金属元素を含む供給源を組み合わせて電極組成物を作成する電極組成物の調製方法であって、
(i)サイクルにかける前に前記電気化学的に活性の金属元素が金属間化合物または元素の金属の形であり、
(ii)リチウム電池中に組入れられて全充電−放電の1サイクルにかけられるときに、前記電極組成物が結晶域を含み、
(iii)リチウム電池中に組入れられてサイクルにかけられて前記組成物の約100mAh/gを達成するとき、100回の全放電サイクルの後に少なくとも約99.0%のクーロン効率を示すことを特徴とする、電極組成物の調製方法。
【請求項30】
前記電気化学的活性金属元素の前記供給源及び前記電気化学的不活性金属元素の前記供給源を支持体上に逐次的にスパッタ堆積させて薄膜状で前記電極組成物を形成することによる前記供給源の組み合わせ工程を含む、請求項29に記載の電極組成物の作製方法。
【請求項31】
ボールミル粉砕して粉末の形状で前記電極組成物を作成することによって前記供給源の組み合わせ工程を含む、請求項29に記載の電極組成物の作製方法。
【図1a】
【図1b】
【図2a】
【図2b】
【図3a】
【図3b】
【図4a】
【図4b】
【図5a】
【図5b】
【図6a】
【図6b】
【図7a】
【図7b】
【図8】
【図9】
【図10】
【図1b】
【図2a】
【図2b】
【図3a】
【図3b】
【図4a】
【図4b】
【図5a】
【図5b】
【図6a】
【図6b】
【図7a】
【図7b】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2012−23053(P2012−23053A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−213134(P2011−213134)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【分割の表示】特願2000−538401(P2000−538401)の分割
【原出願日】平成10年7月23日(1998.7.23)
【出願人】(590000422)スリーエム カンパニー (144)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213134(P2011−213134)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【分割の表示】特願2000−538401(P2000−538401)の分割
【原出願日】平成10年7月23日(1998.7.23)
【出願人】(590000422)スリーエム カンパニー (144)
【Fターム(参考)】
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